以下、図面を参照しながら、本開示に係る測距装置の実施形態について説明する。
〈第1の実施形態〉
図1は、第1の実施形態による測距装置を含む車両の構成の一例を模式的に示すブロック図である。
車両1は、ソナー10と、ECU(Electronic Control Unit)20と、報知部30と、駆動制御部40とを備える。
ECU20は、ソナー10を制御して車両1の周辺にある物体までの距離を検知し、検知結果に応じて車両1の動作を制御する制御部である。例えば、ECU20は、ソナー10から得た距離情報から、障害物が車両1の進行方向に位置することを特定した場合、車両1を制動させる等の各種制御を実行する。また、ECU20は、ソナー10以外の各種センサからも情報を取得する。例えば、ECU20は、公知のセンサから、速度情報、方向情報、および加速度情報を取得する。
報知部30は、障害物を検知したことを通知する。例えば、報知部30は、表示出力したり、音声出力したりする装置である。
駆動制御部40は、車両1の運動制御をする装置であり、ブレーキ、エンジンなどの駆動デバイスを制御する装置である。ソナー10と報知部30と駆動制御部40は、ECU20とLANケーブルなどで有線接続されており、障害物を検知したことを通知する指示や、ブレーキを作動させる指示は、ECU20から電気的な制御信号の形で送出される。
ソナー10は、圧電素子11と、駆動回路12と、受信回路13と、コントローラ14とを備える。ソナー10は、コントローラ14による制御により、駆動回路12を動作させて、圧電素子11に50KHzの交流電圧を印加し、圧電素子11は交流電圧に応じて変形し、同じ周波数の超音波を発信する。交流電圧を印加する期間は短期間なので、ソナー10は、パルス状の超音波を発信する。図2に示すように、車両1に搭載されたソナー10が発信したパルス状の超音波は、路面RSや障害物OBに当たると反射して、一部が圧電素子11に返ってくる。圧電素子11は表面に加わった圧力を電圧に変換するので、受信した音の音圧に比例する電圧を出力する。受信した音には、上記反射した反射波も含まれる。このように、圧電素子11は、超音波の送信と受信を行うので、送受信部と呼んで良い。受信回路13は、圧電素子11が出力する電圧を増幅して受信信号とし、当該受信信号をコントローラ14へ送出する。
コントローラ14は、当該受信信号に基づいた受信波形を取得する。ここで、受信波形とは、圧電素子11が音圧から電圧に変換した交流の音波波形を包絡線検波して、音波受信強度に変換したものであり、受信信号の強度の時間変化を示すものである。この、コントローラ14の受信信号を受信波形に変換する部分を、検波部と呼んでも良い。この検波部は受信回路13にあっても良い。つまり、受信回路13が出力する電圧を増幅した上で包絡線検波し、受信波形を取得してコントローラ14に出力する構成でも良い。
ソナー10が発信した超音波が、障害物OBに当たって反射した場合、障害物OBが遠いほど反射波が返るまでの時間が長くなるので、受信波形から反射波を検出して反射波の受信時刻を特定できれば、発信時刻と受信時刻との時間差に基づいて距離を算出することができる。また、超音波は路面RSに当たった場合も反射する。この路面からの反射波を路面反射と呼ぶ。路面反射の受信強度は障害物OBからの反射波の受信強度より小さいので、予め路面反射の受信強度が越えない様な曲線を検出閾値として設定して、受信波形が当該検出閾値を超える部分は反射波がある、と判定し、当該検出閾値以下の部分は反射波が無い、と判定する。路面反射は測距装置の検出対象でないので、不要反射と呼んだり、ノイズと路面反射を区別せず、ノイズに含めて扱ったりする事がある。一般的に、超音波は、空気中で急速に減衰するので、遠くで反射した超音波ほど受信強度が小さくなる。そこで、当該検出閾値は距離が長いほど低くなるように設定される。以後、簡便のため、検出閾値を、閾値、と呼ぶ事にする。
ここで、受信波形において反射波の時間的変化を示す受信波形状態図を図3に示す。反射波は、障害物の反射部分ОBと、路面反射部分RSを含む。反射部分ОBと、路面反射部分RSに付記した波形を包むような線が包絡線である。前述の様に、包絡線は交流である音波波形を包絡線検波する事により得られる。車両1は、定めた閾値に伴い、障害物の反射波OBを検出し、送波から当該反射OBまでの時間遅れに基づき距離を算出することができる。図3において、左端はソナーが発信した時点であり、そこから減衰曲線に従って減衰する部分まで、平坦部が続いている。この平坦部は、発信した振動が残留する残響によって受信回路が飽和し、その為に振幅が最大値に制限されたものであり、実際には、減衰曲線を左上に延長した様な、右下がりに減衰する波形があるものと理解されたい。平坦部の途中に一箇所、波形が凹んだ様に見える部分があるが、これは交流である音波波形をサンプリングした際に生じた凹みであり、包絡線検波をすれば平坦になる。つまり、残響の様態とは関係ない。残響については、後に説明を加える。
なお、車両1は、1つのソナー10を備えるようにしてもよいし、図4に示すように、複数のソナー10(ソナー10a~ソナー10e)を備えるようにしてもよい。図4に示すように、複数のソナー10を備える場合、隣接するソナー10の検知範囲は重複することがある。
また、図4に示す車両1は、直進時の進行方向の障害物をソナー10bおよびソナー10cを用いて検知する。また、車両1は、車両1が曲がる方向の障害物をソナー10aおよびソナー10dを用いて検知する。また、外寄りのソナー10aおよびソナー10dは、コーナーソナーとも呼ばれる。車両1の側方から進行方向に障害物が進入する時、コーナーソナーが最初に検知する。
また、車両1の周囲の車両もソナーを備えている場合、ソナー10が、他の車両から発信した超音波の反射波を受信してしまい、誤検知をする可能性がある。そこで、ソナー10は、図5に示すように、所定の周期で超音波を発信して、所定回数連続して同じタイミングで反射波を受信した場合に、障害物があると判定する。ソナー10が超音波を発信するタイミングは、図3で説明した平坦部が始まる時点、つまり、図5で波形が飽和レベルまで立ち上がる時点である。
続いて、障害物の検知とトラッキングについて、図6を用いて説明する。図6は、障害物に車両1が接近していく場合の反射波RW1の位置の移動を模式的に示す図である。また、図6は、図5に示した波形を距離による反射波の減衰を補償して、グラフを平坦化したものである。
ソナー10は、反射波RW1が、予め定めている障害物閾値THを超えると障害物があると判断する。なお、障害物閾値THは、ノイズNZより高い値であることが望まれる。このノイズNZは、路面反射を含む。超音波を発信した時点から反射波を検知した時点までの時間は、発信された超音波が障害物等の物体で反射されて戻ってくるまでの飛行時間である。よって、車両1は、飛行時間を音速で除算して半分にすると、ソナー10から物体までの距離を算出することができる。
また、車両1は、図6に示すように物体の検知を繰り返し、その都度、距離を算出して、距離情報の変化を追跡する、トラッキングと呼ばれる処理を行う。車両1は、例えば、トラッキングにより物体の距離の減少する速さ、つまり接近速度を算出して、車速と接近速度が誤差範囲内で一致するなら、物体は移動しておらず、静止物であると判定する事ができる。また、車両1は、一つの物体が反射した音波を複数のソナーで受信した時のFTを三辺測量の原理で処理すると、物体の座標情報を特定することができる。この座標上の追跡もトラッキングに含まれる。
また、ソナー10の圧電素子11は、発信、つまり交流電圧の印加を停止した後も振動が持続する。この交流電圧の印加停止後の振動が図6に示す残響RBである。この残響RBは、指数曲線を描いて徐々に減衰する。本実施形態の測距装置は、この残響RBの影響を受ける範囲でも適切に距離を算出するものである。
続いて、本実施形態の測距装置100について図7を用いて説明する。図7は、測距装置100のブロック図である。測距装置100は、ソナー10のコントローラ14により実現してもよいし、ECU20により実現してもよい。また、測距装置100は、ソナー10およびECU20の組み合わせにより実現してもよい。また、測距装置100は、ソナー10およびECU20から独立した装置であってもよい。
測距装置100は、特徴量検出部101、測定距離算出部102、予測距離算出部103、検出条件制御部104、および出力制御部105を備える。
特徴量検出部101は、受信波形に基づいて、送信波が物体に反射して生じた反射波RW1の特徴量を検出する。特徴量検出部101は、検出条件制御部104により調整された検出条件に基づいて特徴量を検出する。後に詳述するが、特徴量検出部101は、特徴量として、受信波形上の反射波RW1のピークの位置情報、閾値との交点の位置情報、飽和値との交点の位置情報、などを検出する。位置情報は、特定された時点の時刻と超音波を発信した時刻との時間差と、特定された時点の強度値の組み合わせであり、この時間はソナーを起点とする距離に換算できるので、距離と強度の組み合わせである、と言っても良い。以後、説明が煩雑になる事を避けるために、反射波RW1の特徴量を検出する事を、反射波を検出する、と言い、受信波形上の位置情報を、位置、と略して言う事がある。また、受信波形の横軸は時間であるが、時間が距離に換算される事を前提に、受信波形の横軸が距離である様に言う事がある。
測定距離算出部102は、反射波RW1に基づいてソナー10から障害物等の物体までの距離を測距距離として算出する。例えば、測定距離算出部102は、ソナー10による反射波RW1と閾値との交点の位置を検出した場合、反射波RW1が閾値と交差した時点と、超音波を発信した時点との時間差に基づいて、ソナー10から物体までの距離を測定距離として算出する。なお、閾値との交点の位置から距離を算出する算出方法は一例にすぎず、後に他の算出方法も紹介する。
予測距離算出部103は、次回の測定における測定距離を予測した予測距離を算出する。予測距離算出部103は、車両1の速度、加速度、および走行方向の情報と、直近の測定距離とを用いた公知の方法により、予測距離を算出する。検出条件制御部104は、特徴量の検出に関わる検出条件を制御する。検出条件制御部104は、例えば、残響の減衰過程を示す残響曲線を特定し、当該残響曲線に基づいて特徴量の検出条件を調整する。特徴量の検出条件は、例えば閾値である。出力制御部105は、距離として出力する内容を制御する。例えば、出力制御部105は、測定距離または予測距離の一方を出力する。
ここで、図8を用いて、検出条件制御部104が、残響曲線を特定する方法を説明する。図8は、残響期間RBTRを含む受信波形RWを示す図である。受信波形RWには、残響の減衰過程を示す残響期間RBTRの部分の波形、障害物OBからの反射波RW1、および路面RSからの反射波RW2を含む。検出条件制御部104は、受信波形RWの残響期間RBTRの部分の波形を処理することにより、残響曲線RBCを特定してもよい。
受信波形RWの底辺は路面RSからの反射(路面反射)であり、路面反射から立ち上がった部分が残響期間RBTRの部分である。残響期間RBTRは、残響が路面反射より弱くなるまでの期間といえる。残響期間RBTRでは、残響曲線RBCに雑音や反射波RW1が重なっている。このうち、雑音は、ランダムに発生するものであるので、検出条件制御部104は、受信波形RWを複数回取得し、残響期間RBTRの部分の受信波形RWを平均化する平均処理により雑音成分を抑圧する。障害物OBからの反射波は、常時あるものではないので、検出条件制御部104は、障害物OBからの反射波RW1の検知がある時の受信波形RWを、先の平均処理の対象から除外してもよいし、障害物OBからの反射波RW2を除去した受信波形RWを平均処理するようにしてもよい。
また、残響は、指数曲線に従って減衰するので、検出条件制御部104は、回帰分析の手法を用いて残響曲線を特定するようにしてもよい。検出条件制御部104は、例えば、残響期間RBTRの受信強度を対数変換し、回帰方程式に指数関数の係数を特定して、残響曲線RBCを特定するようにしてもよい。このような処理により、検出条件制御部104は、受信波形RWに基づいて残響曲線を特定することが出来る。コントローラ14は、受信波形RWに基づいて特定した残響曲線を記憶しておき、以後の検知に利用することが出来る。
また、残響は指数関数に従って減衰するが、減衰の速さは個々のソナー10によって異なるので、減衰の速さを特性値として特定しておき、この特性値を残響曲線の代わりに記憶しておいても良い。例えば、検出条件制御部104は測距装置または測距装置を備えた車両の出荷時に、この指数関数の係数や、係数に関係する値をソナー10の残響減衰の特性を示す特性値として特定し、特定した特性値を記憶しておいて、当該特性値に基づいて残響曲線を特定してもよい。
例えば、ソナー10のインピーダンスと残響曲線の間には所定の関係があるので、検出条件制御部104は、測距装置100の起動時などにソナー10のインピーダンスを求め、これを特性値として記憶してもよい。
このように、検出条件制御部104は、特性値に基づいて残響曲線を補正することで、より適切に残響曲線を特定することができる。
続いて、図9を用いて、残響曲線に基づいて検出条件を調整する例を説明する。図9は、反射波RW1を検出するための閾値を示す図である。図9に示すように、検出条件制御部104は、残響期間RBTRにおいては、残響曲線RBCにノイズマージンNMを加えることにより、上側にシフトした曲線を、反射波RW1を検出するための閾値TH1とする。上記ノイズマージンNMは、例えば、約3dBである。検出条件制御部104は、残響期間RBTRでない路面反射期間においても、路面からの反射波のレベル(時間軸上で平均化された強度)に、残響期間RBTRと同じノイズマージンを加えたものを閾値としてもよい。この場合、残響期間RBTRを残響曲線が路面からの反射波のレベルまで減衰する迄の期間としておけば、残響期間と路面反射期間との境界で、閾値TH1の不連続は生じない。
検出条件制御部104は、ノイズマージンを固定値としてもよいし、残響期間RBTRでない期間の受信波形からノイズの振幅を算出し、このノイズの振幅を下回らないようにノイズマージンを決めてもよい。
このように、検出条件制御部104が、残響曲線RBCを上側にシフトした曲線を閾値TH1に設定し、特徴量検出部101が、当該閾値TH1に基づいて反射波RW1を検出することで、残響期間RBTRでも反射波RW1を検出する可能性を高めることができる。
ところで、受信波形のデータには、上限値があり、残響や反射波の強度が、上限値相当の強度を越えていると、実際の強度に関係なくデータは一律に上限値になる。この上限値相当の強度を飽和値と呼ぶ。ここで、図10を用いて、飽和値と反射波RW1との関係を説明する。図10は、飽和値と反射波との関係を示す図である。図10では、接近によりソナーを起点とする距離が段々と短くなる物体からの反射波を、一つの受信波形上に並べて示している。
図10に示すように、飽和値がSV2の場合、反射波RW1cを受信する以前から、残響曲線RBCで示す残響強度が飽和値SV2を超えているので、データは一律に上限値になっている。反射波RW1cしているタイミングでも、データは引き続き上限値のままなので、測距装置100は反射波RW1cを検出することができない。検出条件制御部104が、ソナー10の発信強度を下げたり、受信信号の増幅度を下げたりすることにより、調整して受信強度を下げると、相対的に飽和値を上げることができる。そうして、飽和値がSV1のようになれば特徴量検出部101は、RW1cの様な反射波を検出することができる。
なお、飽和値がSV1になったとしても、RW1dの様な反射波は検知できない。この時、検知が出来る最短距離は残響曲線と飽和値の交点で決まるので、検知が必要な最短距離が決まっている場合は、予め、残響曲線に応じて飽和値を決定してもよい。
飽和値を上げる為に、発信の強度を下げたり、受信信号の増幅度を下げたりすると、微弱な反射波を検知し難くなるので、検出条件制御部104は、例えば駐車時の様に、近距離の検知が必要な時だけ、予め飽和値を上げる様に制御してもよいし、予測距離を算出した結果、残響期間に反射波を受信する接近状態になる事が判った時だけ、飽和値を上げる様に制御してもよい。測距装置100は、ECU20から駐車状態を示す情報を取得することで、飽和値を制御することができる。
続いて、反射波RW1を検出できる条件について、図11を用いて説明する。図11は、飽和値SVと閾値TH1と残響曲線RBCとの関係を示す図である。図11に示すように、残響期間RBTRでは、検出条件制御部104は、残響曲線RBCにノイズマージンを加えた曲線を閾値TH1とするので、閾値TH1が飽和値SVを超える事がある。閾値TH1が飽和値SVを超える区間では、受信データは閾値TH1を超えないので、測距装置100は、反射波RW1を検知することができない。
また、反射波RW1dが残響曲線RBCに届かない区間でも反射波RW1dを検知できないが、閾値TH1が飽和値SVを超える為に検知できない区間の方がより広い。閾値TH1は残響曲線で決まっているので、検知できない期間は残響曲線RBCで決まっているといえる。測距装置100は、予測距離を算出した結果、閾値TH1が飽和値SVを超える距離である場合に、検知可能に検出条件を調整できない場合に当たると判定してもよい。また、測距装置100が、反射波RW1の検出を試みて、検出できなかった場合に、反射波RW1を検出しない場合に当たると判定してもよい。このように、測距装置100は、閾値TH1で反射波RW1を検出できない場合は、測距装置100の出力制御部105は、測定距離の代わりに、予測距離を出力する。これにより、測距装置100は、残響曲線RBC、閾値TH1、および飽和値SVの関係上、反射波RW1を検出できない状況でも、距離を出力することができる。
続いて、図12を用いて反射波RW1のうち、距離を算出するための位置について説明する。図12(a)に示すように、ソナー10から超音波を出力し、これに応じて障害物OBで反射する場合、ソナー10に最も近い点である最近点が反射した音波だけでなく、当該最近点の周囲で反射した音波もソナー10に届く。
図12(b)に示すように、エリアAR2にエリアAR1のような突起物が存在する場合について考える。上記最近点のエリアAR1で反射した音波は、最も早くソナー10に届くが、その後でソナー10に届く、エリアAR1より面積の大きい周囲エリアAR2で反射した音波の方が、強度が強い。
よって、図12(c)に示すように、反射波RW1は、信号強度のピークPP1とPP2を有する2つの山を形成することになるが、どちらのピーク時点を用いて距離を算出すべきかの選択としては、ソナーは衝突防止を目的に装備され、衝突防止に必要な距離は最近点までの距離であるので、より早いPP1の方を選択して距離を算出すべきである。しかし、検知閾値によっては二つのピークを分離して検出できるとは限らず、合体した一つのピークとして検出された場合のピーク位置は、より強度が大きいPP2の位置になる。また、二つのピークのうち片方だけ検出される場合は、より強度が大きいPP2が検出される確率が高い。したがって、信号強度のピーク時点であるPP1やPP2ではなく、立ち上がり時点SPに基づいて距離を算出することが望まれる。
しかし、残響期間中は、反射波の裾の部分が残響で隠されるため、立ち上がり時点SPの付近は反射波の波形を観測できなくなる。そこで、図12(d)に示すように、測定距離算出部102は、例えば、反射波RW1aを検出した時点でピークの位置と立ち上がりの位置とを特定して、ピーク時点と立ち上がり時点との時間差を算出しておく。立ち上がりの位置は反射波RW1cの時点では残響に隠されて推定が困難だが、反射波RW1aの時点では残響の影響や路面反射の影響が少ないので、比較的小さな誤差で推定する事ができる。反射波RW1cの時点でもピークの位置と立ち上がりの位置との時間差は同じだとすると、測定距離算出部102は、反射波RW1cの時点のピーク位置と、上記の時間差から立ち上がりの位置を推定できる。反射波と残響の強度値の差が小さくなっても、ピーク位置は特定できるので、近距離になっても立ち上がり位置を特定できる。
続いて、図13を用いて、ピークの位置と立ち上がりの位置とを特定する方法について説明する。真の立ち上がり時点は反射波の強度がゼロから立ち上がる時点であるが、残響曲線RBCが示す様に、残響は指数関数に従って減衰するので、受信波形がゼロになる事はない。つまり、反射波の強度がゼロから立ち上がる様な波形は観測できない。そこで、ゼロより大きい実用的なゼロレベルZLを定めて、反射波とゼロレベルZLのラインとの交点を実用的な立ち上がり点とする。図13(a)は、実用的なゼロレベルZLを例えば-50dBと定め、実用的なゼロレベルと反射波の強度分布とが交差する時点、つまり、ゼロレベルZLと反射波RW1の交点を実用的な立ち上がり時点とする例を示す。但し、反射波がゼロレベルZLと交差する点の付近では、反射波が残響や路面反射の影響で隠されて観測できないでの、観測できない範囲の反射波の波形を推定して、ゼロレベルZLのラインまで延長する処理が必要になる。図13(b)は、閾値TH1と、反射波RW1の強度分布とが交差する時点、つまり、閾値TH1と反射波RW1との交点を実用的な立ち上がり時点とする例を示す。この場合、観測できる範囲内の反射波の波形と閾値との比較で立ち上がり時点が決まるので、より実施が容易である。精度の面では、後者の方が、実用的な立ち上がり時点と真の立ち上がり時点の差が大きいので精度が劣ると言えるが、大差は無いとも言えるので、要求される精度によっては、後者を採用してもよい。
また、反射波にはノイズが重なるので、ノイズが加わる位置によって、最大値を取る点が変わるので、反射波が最大値を取る位置がピーク位置であるとして算出すると、算出される距離が不安定になる事がある。図13(c)は、ピーク時点を安定して特定する方法を示すものである。例えば、閾値と反射波RW1の交点の時点と、反射波RW1の下り斜面で強度が交点と同じである時点を求め、これらの時点の中点の時点をピーク時点とする。このように、観測できる反射波RW1の全体の波形情報を利用すると、反射波にノイズが乗っていても安定して距離を算出できる。
続いて、図14を用いてピーク付近が飽和した場合の処理について説明する。図13(c)に示した、ピークの上り斜面と下り斜面で強度が同じである線上の2点を特定し、2点の中点にピークがあると推定する方法は、幾何学的には反射波RW1の波形を二等辺三角形で近似し、下辺の2頂点を上り斜面と下り斜面に当てはめる操作だと、言い換えてもよい。この方法は、ピークを挟む上り斜面上の点と下り斜面上の点を用い、ピーク付近の波形を用いないので、飽和によってピーク付近の波形が観測できない場合にも適用できる。
反射波RW1に二等辺三角形の左下の頂点を当てはめる点は、図14(a)の様に、反射波RW1と残響曲線との交点であってもよいし、または路面反射曲線との交点であってもよい。図14(a)のRBCは残響曲線と路面反射曲線を連続させた曲線である。路面反射曲線は、障害物が無い時の路面反射の強度曲線を推定したものであり、先に説明した受信波形から残響曲線を推定する方法と同様の方法で得られる。更に、図14(b)のように、二等辺三角形の左下の頂点は反射波RW1と閾値TH1の交点であってもよい。図14(a)や図14(b)の図の反射波RW1cのように、ピーク付近が飽和するとピークの強度を特定できなくなるが、距測は距離が特定できれば良いので、強度情報が無くても問題ない。
図14(c)は、二等辺三角形の下辺の頂点を斜辺に当てはめる方法を示すもので、頂点付近を拡大して描いている。SVは飽和値に当たる受信強度の水準であり、飽和値SVと呼ぶ事にする。反射強度曲線が飽和値SVを超える区間では、波形データが最大値で飽和するため同じ値になる。最大値は、例えば波形データが8ビットデータであれば255である。つまり、反射強度曲線が飽和値SVを超えると、反射波のピークの位置を波形データが最大値を取る点として特定する事が出来ない。しかし、反射波RW1dの波形データが最大値で飽和した区間の、左端から右端までがピーク部の波形を近似した二等辺三角形の下辺であるとすると、その中点にピークがある、と特定できる。
この方法は、反射波の頂点が飽和値SVを超える場合だけ適用可能なので、例えば、ピークが飽和値SVを超えた場合は、反射波RW1dの波形データが飽和した区間の、左端から右端までを二等辺三角形の下辺として、そうでない場合は反射波RW1と残響曲線との交点の強度値か、路面反射曲線との交点の強度値を、飽和値SVに代わる基準強度値とし、波形データが基準強度値を超える範囲を二等辺三角形の下辺として、下辺の中点の距離にピークがある、と特定する方法を適用すればよい。
続いて、ピーク位置と立ち上がり位置のオフセットの調整について図15を用いて説明する。図14等では説明を平易にするため、ピーク位置と立ち上がり位置のオフセットが一定であるとして説明したが、オフセットを調整してもよい。ピーク位置と立ち上がり位置のオフセットは、最大反射面までの距離と、最近点までの距離(最短距離)の差と言い換えてもよい。この距離差は物体の形状に依存し、接近すると変化する事がある。図15(a)は、支柱等の障害物OBがガードレールGDの手前にある場合の配置図である。最短距離は障害物OBまでの距離、最大反射面までの距離は、概ねガードレールGDまでの距離となり、その距離差はソナー10が接近しても大きく変化しない。図15(b)では、最近点がガードレールGDにある。最大反射面は、音波が当たる範囲内にあり、ソナー10が位置Aだと距離差DS1だけ遠い。
ソナー10がソナー位置Bに接近すると、音波が当たる範囲は相似の関係を保って狭くなる。そのため、最大反射面までの距離と最近点までの距離の距離差DS2は、ソナー10がソナー位置Aの時の距離差DS1と比較して、ガードレールGDまでの距離の比で小さくなる。図15(b)の場合、GDまでの距離は約半分になるので、距離差DS2は距離差DS1も約半分になる。物体が図15(a)の様に凸部を持つ場合は反射波の幅が広かったり、ピーク部が二つに割れたりするのに対し、物体の反射面が平面である時は、ピークの幅が狭いシャープな反射波になり、物体に近づくほど更にシャープになる。よって、障害物OBの形状を推定し、推定結果に応じて、オフセットを調整するか否かを判断しても良い。例えば、位置Aの時にピーク位置と立ち上がり位置のオフセットが小さければ、凸部が無いと判定して、オフセットを距離に比例して小さくする補正を加えてもよい。
続いて、図16を用いて、反射波RW1の上り斜面の波形から立ち上がり点を推定する方法について説明する。ここまで、反射波RW1のピークの位置を特定し、物体が接近する前に立ち上がり位置とピーク位置のオフセットを特定し、物体が接近した時は、ピーク位置から前記オフセット(または補正したオフセット)を引いた位置を立ち上がり位置と推定する方法を説明したが、ピークの上り斜面のデータから、立ち上がり位置を推定してもよい。この方法は、反射波の受信波形全体を三角形で近似し、斜辺を受信波形上の2点を通る直線と特定して、左下の頂点を決める処理と言い換えてよい。立ち上り位置の強度、すなわち反射波の強度のゼロ基準を例えば-50dBとすると、斜辺である受信波形上の2点を通る直線と-50dBラインとの交点として立ち上がり位置が特定される。
図16(a)の場合、斜辺には反射波と飽和値SVの交点である点P1、反射波と閾値の交点である点P2、反射波と残響曲線の交点である点P3があるので、点P1~点P3から、いずれか2点を選べば斜辺を特定できる。例えば、点P3が点P1・点P2を結ぶ線上から大きく外れている時は、点P1と点P2で斜辺を特定し、そうでなければ点P2と点P3で斜辺を特定してもよい。図16(b)の場合、点P2は飽和値SVを越えていて特定できないので、点P1と点P3で斜辺を特定すれば良い。図16(c)の図の場合、飽和値SVとの交点である点P1が無いので、点P2と点P3で斜辺を特定すればよい。
続いて、図17を用いて、残響曲線に応じた検出条件の動的制御の方法について説明する。反射波RW1の斜辺上の2点から立ち上がり位置を特定する場合、2点の間に所定値以上のマージンがあった方が良い。例えば、図17(a)の状態に至るまでは、反射波RW1と残響曲線RBCとの交点である点P4と飽和値SVとの間に、所定の閾値(例えば10dB)以上のマージンM1があり、図17(a)の時に当該マージンM1を少し下回ったと仮定する。図17(a)の状態で飽和値SVを変更せず、反射波RW1の到達時刻が早くなると、反射波RW1と残響曲線RBCとの交点である点P4が飽和値SVに近づき、ラインL1を越える位置ではP4が飽和値SVを超えるので、P4を用いて立ち上がり位置を特定する事が出来なくなる。
この時に、検出条件制御部104は、予測距離算出部103により算出された予測距離を用いて、それまでの車両1の接近速度から次回の検知での、反射波RW1の斜辺と残響曲線RBCの交点である点P5を予測し、点P5と飽和値SVがマージンM1分だけ上回るよう、ソナー10の送信強度または増幅度を調整する。動的に飽和値SVを制御する場合、アナログ回路での増幅度を調整するよりも、送信強度をデジタル制御する方が、時間遅れが発生し難く、精度を出し易い。
物体が予測通りに接近した場合、図17(b)の状態になる。ここで予測と飽和値SVの調整を繰り返すと図17(c)の状態になる。飽和値SVが図17(a)の時のままである場合、ラインL1を越えて反射波RW1が接近すると、残響が飽和値SVを超えるので検知不能になる。しかし、以上の様に、飽和値SVを物体の予測距離と飽和曲線に応じて制御することにより、反射波RW1と残響曲線RBCとの交点である点P4がラインL1を越えても検知可能になっている。
このように、検出条件制御部104は、予測距離に基づいて、受信波形RWに含まれる反射波RW1の位置を予測し、予測した反射波RW1と残響曲線RBCとの交点を特定し、当該交点と飽和値とのマージンとに基づいて飽和値を引き上げるように制御する。これにより、測距装置100は、上記の飽和値SVの引き上げにより、残響の影響があるにも関わらず距離を計測できる範囲を広げることができる。
続いて、図18を用いて、予測距離に基づいて反射波RW1を検出できないと判定する条件について説明する。以下、反射波RW1と閾値の交点を利用する場合について説明するが、反射波RW1の斜辺上の2点から立ち上がり位置を特定する方法では、反射波RW1と閾値の交点を利用しない事も可能なので、任意に選択した2点に当てはめて適用すれば良い。
飽和値SVを動的に制御しない場合、図18(a)の時に、反射波RW1の斜辺と飽和値SVとの交点P11と残響曲線RBCと飽和値SVの交点の間の距離をDS3とする。図18(a)の時は、反射波RW1の斜辺上の交点P11と、反射波RW1の斜辺と残響曲線RBCとの交点P12とを結ぶ直線を延長する事で、反射波RW1の立ち上がり位置を推定できる。しかし、図18(a)の状態から物体が接近するにつれてP11とP12も接近し、物体が距離DS3だけ接近した時は、反射波RW1の斜辺と飽和値SVとの交点P11と、残響曲線RBCと反射波RW1の斜辺の交点P12とが重なって1点になるため、2点を結ぶ線を延長して反射波の立ち上がり位置を特定する事が出来ない。つまり、測距装置100は、図18(a)の時の距離から距離DS3だけ進んだら、反射波RW1を検出できないと判定してもよい。また、図18(b)に示すように、反射波RW1が進んだ距離が距離DS3未満でも、2点が接近すると反射波RW1の立ち上がり位置を安定して特定する事が困難になる。そこで、2点の強度値の差が所定値(例えば3dB)未満の時も、反射波RW1を検出できないと判定しても良い。また、図18(c)に示すように、反射波RW1が飽和値SVと交差せず交点を生じない時は、反射波RW1の斜辺上の2点から立ち上がり位置を特定する方法を適用できないので、反射波RW1を検知できない場合にあたる、と判定しても良い。更に、反射波RW1と閾値の交点を利用する場合に、反射波RW1と閾値が交差せず、交点を生じない時や、反射波RW1と閾値の交点と、反射波RW1と残響曲線RBCの交点との強度値の差が所定値未満の時も、同様に反射波RW1を検知できないと判定しても良い。いずれかの条件により反射波RW1を検知できないと判定した時は、測距装置100は、測定距離の代わりに、予測距離を出力する。
続いて、図19を用いて、測距装置100が距離を測定する処理手順を説明する。まず、測距装置100の特徴量検出部101は、受信波形RWを取得し(ステップS1)、検出条件制御部104により制御された検出条件に基づいて反射波RW1の特徴量を検出する。
測定距離算出部102は、反射波RW1の特徴量を検出した場合、例えば、反射波RW1と閾値THの交点の位置を特定した場合には、反射波RW1の特徴量(この場合、受信波形上の原点から閾値との交点までの、横軸方向の距離)に基づいて測定距離を算出する(ステップS2)。予測距離算出部103は、車両1の速度等の車両走行の情報と、測定距離とに基づいて予測距離を算出する(ステップS3)。
当該予測距離と、予め特定している残響曲線RBCとに基づいて、障害物OBの予測距離が残響期間に入る場合、検出条件制御部104は、検出条件(閾値TH)を、残響曲線RBCを超える閾値TH1に修正する(ステップS4)。この時、閾値TH1は、障害物OBの予測距離における残響の強度値に、例えば、所定のマージンを加算した値であっても良い。
次回、受信波形RWを取得した場合、特徴量検出部101は、新たな検出条件に基づいて反射波RW1の特徴量を検出して、当該反射波RW1の特徴量に基づいて測定距離を算出する(ステップS5)。このようにして、出力制御部105は、新たな測定距離を出力する(ステップS6)。
上述のように、測距装置100は、予測距離に基づいて、障害物OBの位置が残響の影響を受ける位置に属する場合、反射波RW1の検出条件を調整する。例えば、測距装置100は、残響曲線RBCを超える閾値TH1に基づいて反射波RW1を検出するようにする。これにより、測距装置100は、残響の影響を受ける位置に障害物OBが位置する場合でも、障害物OBまでの距離を算出することができる。残響曲線RBCは障害物を検知する以前に特定できるので、閾値TH1は障害物を検知する以前に特定できる。つまり、ステップS4を、測距装置100の起動後の最初の回だけ実行し、以後は設定された検出条件を変更しない様にしても良い。この様に、検出条件である閾値TH1を一連の検出を行う以前に決定して変更しない場合、検出条件は静的に制御されている、と言える。なお、ステップS4の処理は、障害物OBの予測距離が残響期間に入る最初の回にだけ実行して、2回目からはスキップする様にしても良いし、障害物OBの予測距離が残響期間に入っている間は、毎回、実行する様にしても良い。これらの場合は、検出条件は一連の検出を行う毎に、その時々の残響曲線に応じて変更されるので、検出条件は動的に制御されている、と言える。
〈第2の実施形態〉
第2の実施形態では、測距装置100は、予測距離に基づいて、障害物OBの位置が残響の影響を受ける位置に属する場合、反射波RW1を検出するための閾値を反射波RW1の強度に基づいて動的に変更する例を説明する。
ここで、図20に閾値を動的に変更する例を説明する。測距装置100は、予測距離に基づいて、障害物OBの位置が残響の影響を受ける位置に属すると判断した場合、検出条件制御部104は、反射波RW1を検出するための閾値を反射波RW1の強度に基づいて変更する。例えば、図20に示すように、検出条件制御部104は、反射波RW1が近づくほど閾値を高く設定する。すなわち、検出条件制御部104は、反射波RW1aの位置の場合の閾値TH11より、反射波RW1bの位置の場合の閾値TH12の方が高い値になるように設定する。このように、測距装置100は、閾値を動的に高めるので、残響の影響度合いが高まるソナー10の近くの位置でも距離を算出することができる。
具体的には、検出条件制御部104は、反射波RW1のピーク値の推移に基づいて閾値を動的に変更するようにしてもよい。図20は、反射波RW1aのピークの強度値をもとに次の予測距離における反射波RW1bのピークの強度値の予測値を求め、この次の予測距離におけるピークの強度値から所定の値を差し引いた値を、次の検知における閾値TH12としている。反射波RW1bを受信した時点で次の予測距離を算出し、次の予測距離における反射波RW1cのピークの強度値の予測値を求めて、次の検知における閾値TH13を求める、という様に、閾値の設定を動的に繰り返す。なお、検出条件制御部104は、反射波RW1bのピーク値の推移を空気減衰率に基づいて予測するようにしてもよい。
ここで、図21に空気減衰曲線の例を示す。図21は、温度毎の空気減衰曲線の例を示す図である。図21のグラフの縦軸が受信信号の強度であり、横軸が距離である。いずれの温度でも距離が離れるにつれて受信信号の強度が下がることを示している。また、図21は、受信信号の強度が温度の影響を受ける事を示し、温度が低い方が受信信号の強度の下降度合いが少ないことを示している。
続いて、図22に、閾値の形態の例を示す。例えば、図22(a)に示すように、閾値TH11~TH14が、曲線状であるようにしてもよいし、図22(b)に示すように、閾値TH21~TH24が、折線状であるようにしてもよい。また、図22(c)に示すように、閾値TH31~TH34が、階段状であるようにしてもよい。前述の様に、閾値THは反射波を受信する毎に動的に更新しても良いが、折衷的な方法として、反射波RW1aの受信強度と空気減衰曲線に基づいて、距離ごとの受信強度の予測値を予測受信強度曲線として求め、予測受信強度曲線を基に図22(a)に示すような曲線状の閾値を設定してもよい。設定した閾値は、反射波RW1bや反射波RW1cを受信する毎に更新しても良いし、反射波が予測に沿って変化している事を条件として、閾値を維持しても良い。
また、検出条件制御部104は、さらに、閾値が残響曲線RBCより上になるように、閾値を設定してもよい。つまり、図22に示す閾値を設定する際に、残響曲線RBCより上になる事を条件として加えても良い。例えば、予測受信強度曲線に従って設定した閾値が、一部の区間で残響曲線RBCより下になる場合は、その区間の閾値を残響曲線RBCより上になる様に補正しても良い。
図23を用いて、第2実施形態にかかる測距装置100が距離を測定する処理手順を説明する。まず、ソナー10が、超音波を送信する(ステップS11)。特徴量検出部101は、受信波形RWを取得する(ステップS12)。特徴量検出部101は、当該反射波の信号強度が閾値以上(ステップS13:Yes)である場合、当該反射波RW1の特徴量を検出し、測定距離算出部102は、当該反射波RW1の位置に基づいて距離を算出する(ステップS14)。ECU20は、算出した距離が警報範囲内であると判断した場合(ステップS15:Yes)、報知部30に警報に基づく表示・音声出力させる(ステップS16)。
また、ECU20は、算出した距離が衝突判断範囲内であると判断した場合(ステップS17:Yes)、駆動制御部40にブレーキを作動させる(ステップS18)。
また、上記距離が、残響の影響範囲に属する場合(ステップS19:Yes)、検出条件制御部104は、反射波RW1のピーク値を取得する(ステップS20)。続いて、検出条件制御部104は、次回の受信における反射波RW1のピーク値を推定する(ステップS21)。例えば、検出条件制御部104は、過去の反射波RW1のピーク値の増加度合いに基づいて次回の受信における反射波RW1のピーク値を推定してもよい。つまり、検出条件制御部104は、距離と反射波RW1の信号強度とを対応付けた情報を予め記憶しておき、当該情報に基づいて次回の受信における反射波RW1のピーク値を推定してもよい(ステップS21)。または、検出条件制御部104は、当該反射波RW1のピーク値と、空気減衰曲線と温度情報とから、予測距離における当該反射波RW1のピーク値を推定しても良い。検出条件制御部104は、推定した反射波RW1のピーク値に基づいて閾値を更新する(ステップS22)。この様な閾値制御を車両の走行中は繰り返すので、車両1が停止していない場合(ステップS23:No)、ステップS11へ進む。この場合、ステップS13において、特徴量検出部101は、新たな閾値を用いて特徴量を検出することになる。
上述のように、測距装置100は、反射波が残響期間中に到達する場合に、特徴量の推移に基づいて、特徴量の検出の閾値を動的に変更するので、残響の影響を受ける位置に障害物OBが位置する場合でも、障害物OBまでの距離を算出することができる。
本実施形態の測距装置100で実行されるプログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでDVD(Digital Versatile Disk)等の光記録媒体、USBメモリ、SSD(Solid State Disk)等の半導体メモリ装置等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録されて提供される。
また、本実施形態の測距装置100で実行されるプログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成しても良い。また、本実施形態の測距装置100で実行されるプログラムをインターネット等のネットワーク経由で提供または配布するように構成しても良い。
また、本実施形態の測距装置100のプログラムを、ROM等に予め組み込んで提供するように構成してもよい。
以上、本開示の実施形態を説明したが、上述の実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら新規な実施形態及びその変形は、発明の範囲及び要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。さらに、異なる実施形態及び変形例にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
また、本明細書に記載された実施形態における効果はあくまで例示であって限定されるものでは無く、他の効果があってもよい。