本発明の実施形態において、前記動力源は、例えば燃料の燃焼によって動力を発生するガソリンエンジンやディーゼルエンジン等のエンジンである。又、前記車両は、動力源として、このエンジンに加えて、又は、このエンジンに替えて、電動機等を備えていても良い。前記動力伝達装置は、例えば変速機を備えている。この変速機は、例えば公知の遊星歯車式自動変速機、公知の同期噛合型平行2軸式自動変速機、同期噛合型平行2軸式自動変速機であって入力軸を2系統備える型式の公知のDCT(Dual Clutch Transmission)、公知のベルト式又はトロイダル式の無段変速機、公知の電気式無段変速機などである。
図1は、本発明が適用される車両10の概略構成を説明する図であると共に、車両10における各種制御の為の制御機能及び制御系統の要部を説明する図である。図1において、車両10は、動力源としてのエンジン12と、駆動輪14と、エンジン12の動力を駆動輪14へ伝達する動力伝達装置16とを備えている。又、車両10は、送受信機30を備えている。
動力伝達装置16は、エンジン12に連結された変速機18、変速機18の出力回転部材に連結された差動歯車装置20、及び差動歯車装置20に連結された左右の車軸22等を備えている。動力伝達装置16において、エンジン12から出力された動力は、変速機18へ伝達され、その変速機18から差動歯車装置20等を介して駆動輪14へ伝達される。前記動力は、特に区別しない場合にはトルクや力も同義である。
変速機18は、エンジン12と駆動輪14との間の動力伝達経路の一部を構成する自動変速機である。変速機18は、例えば複数組の遊星歯車装置と、クラッチ、ブレーキ等の複数の摩擦係合装置とを備えている公知の遊星歯車式自動変速機である。上記摩擦係合装置は、例えば変速機18の入力クラッチとして機能するクラッチCinを含んでいる。クラッチCinは、前記動力伝達経路を選択的に接続したり、切断したりする係合装置として機能する。前記動力伝達経路を接続したり、切断したりすることとは、動力伝達装置16における動力伝達を可能としたり、遮断したりすることである。変速機18は、クラッチCinが解放されることで動力伝達装置16における動力伝達を遮断したニュートラル状態とされる。
送受信機30は、車両10とは別に存在する、車両10とは別の車外装置としてのセンター100と通信する機器である。後述する電子制御装置60は、センター100との間で、送受信機30を介して各種情報を送受信する。センター100は、各種情報を、受け付けたり、処理したり、解析したり、蓄積したり、提供したりするサーバー、及び/又は、道路交通情報通信センターなどである。センター100は、車両10との間でと同様に、車両10とは別の他車両110a,110b,…(特に区別しない場合には他車両110という)との間で、各種情報を送受信するものであっても良い。他車両110は、基本的には車両10と同様の機能を有している。又、送受信機30は、センター100を介さずに車両10の近傍にいる他車両110との間で直接的に車車間通信を行う機能を有していても良い。
又、車両10は、車両10の制御装置を含むコントローラとしての電子制御装置60を備えている。電子制御装置60は、例えばCPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより車両10の各種制御を実行する。
電子制御装置60には、車両10に備えられた各種センサや各装置等(例えば送受信機30、エンジン回転速度センサ32、車速センサ34、アクセル開度センサ36、ブレーキペダルセンサ38、ステアリングセンサ40、Gセンサ42、ヨーレートセンサ44、車両周辺情報センサ46、位置センサ48、ナビゲーションシステム50、運転支援設定スイッチ群52など)による検出値や取得情報に基づく各種信号等(例えば通信信号Scom、エンジン回転速度Ne、車速V、アクセルペダルなどのアクセル操作部材の操作量であるアクセル開度θacc、ホイールブレーキを作動させる為のブレーキペダルが運転者によって操作されている状態を示す信号であるブレーキオン信号Bon、ブレーキペダルの踏力に対応する、運転者によるブレーキペダルの踏込操作の大きさを表すブレーキ操作量Bra、車両10に備えられたステアリングホイールの操舵角θsw及び操舵方向Dsw、車両10の前後加速度Gx、車両10の左右加速度Gy、車両10の鉛直軸まわりの回転角速度であるヨーレートRyaw、車両周辺情報Iard、位置情報Ivp、ナビ情報Inavi、自動運転制御やクルーズ制御等の運転支援制御における運転者による設定を示す信号である運転支援設定信号Ssetなど)が、それぞれ供給される。又、電子制御装置60からは、車両10に備えられた各装置(例えばエンジン12、変速機18、送受信機30、ホイールブレーキ装置54、操舵装置56など)に各種指令信号(例えばエンジン12を制御する為のエンジン制御指令信号Se、変速機18を制御する為の変速機制御指令信号Sat、通信信号Scom、ホイールブレーキによる制動トルクを制御する為のブレーキ制御指令信号Sbra、車輪(特には前輪)の操舵を制御する為の操舵制御指令信号Ssteなど)が、それぞれ出力される。
通信信号Scomは、例えばセンター100との間で送受信された、車両10における走行情報、道路交通情報などを含んでいる。及び/又は、通信信号Scomは、例えばセンター100を介さずに車両10の近傍にいる他車両110との間で直接的に送受信された車車間通信情報などを含んでいる。前記走行情報には、例えば車速V、操舵角θsw、前後加速度Gx、左右加速度Gy、ヨーレートRyaw、位置情報Ivp、ブレーキペダルの操作情報、ターンシグナルランプの点滅情報、ハザードランプの点滅情報などの情報が含まれる。前記道路交通情報には、例えば道路の状態、道路の渋滞、事故、工事、所要時間、駐車場などの情報が含まれる。前記車車間通信情報は、例えば前記走行情報、交通環境情報などを含んでいる。前記交通環境情報には、例えば道路の渋滞、工事などの情報が含まれる。
車両周辺情報センサ46は、例えばライダー、レーダー、及び車載カメラなどのうちの少なくとも一つを含んでおり、走行中の道路に関する情報や車両周辺に存在する物体に関する情報を直接的に取得する。前記ライダーは、例えば車両10の前方の物体、側方の物体、後方の物体などを各々検出する複数のライダー、又は、車両10の全周囲の物体を検出する一つのライダーであり、検出した物体に関する物体情報を車両周辺情報Iardとして出力する。前記レーダーは、例えば車両10の前方の物体、前方近傍の物体、後方近傍の物体などを各々検出する複数のレーダーなどであり、検出した物体に関する物体情報を車両周辺情報Iardとして出力する。前記ライダーやレーダーによる物体情報には、検出した物体の車両10からの距離と方向とが含まれる。前記車載カメラは、例えば車両10のフロントガラスの裏側に設けられた、車両10の前方を撮像する単眼カメラ又はステレオカメラであり、撮像情報を車両周辺情報Iardとして出力する。この撮像情報には、走行路の車線、走行路における標識、及び走行路における他車両や歩行者や障害物などの情報が含まれる。
位置センサ48は、GPSアンテナなどを含んでいる。位置情報Ivpは、GPS(Global Positioning System)衛星が発信するGPS信号(軌道信号)などに基づく地表又は地図上における車両10の位置を示す自車位置情報を含んでいる。
ナビゲーションシステム50は、ディスプレイやスピーカ等を有する公知のナビゲーションシステムである。ナビゲーションシステム50は、位置情報Ivpに基づいて、予め記憶された地図データ上に自車位置を特定する。ナビゲーションシステム50は、ディスプレイに表示した地図上に自車位置を表示する。ナビゲーションシステム50は、目的地が入力されると、出発地から目的地までの走行経路を演算し、ディスプレイやスピーカ等で運転者に走行経路などの指示を行う。ナビ情報Inaviは、例えばナビゲーションシステム50に予め記憶された地図データに基づく道路情報や施設情報などの地図情報などを含んでいる。前記道路情報には、市街地道路、郊外道路、山岳道路、高速自動車道路すなわち高速道路などの道路の種類、道路の分岐や合流、道路の勾配、制限車速などの情報が含まれる。前記施設情報には、スーパー、商店、レストラン、駐車場、公園、車両10を修理する拠点、自宅、高速道路におけるサービスエリアなどの拠点の種類、所在位置、名称などの情報が含まれる。上記サービスエリアは、例えば高速道路で、駐車、食事、給油などの設備のある拠点である。
運転支援設定スイッチ群52は、自動運転制御を実行させる為の自動運転選択スイッチ、クルーズ制御を実行させる為のクルーズスイッチ、クルーズ制御における車速を設定するスイッチ、クルーズ制御における先行車との車間距離を設定するスイッチ、設定された車線を維持して走行するレーンキープ制御を実行させる為のスイッチなどを含んでいる。
ホイールブレーキ装置54は、車輪にホイールブレーキによる制動トルクを付与するブレーキ装置である。ホイールブレーキ装置54は、運転者による例えばブレーキペダルの踏込操作などに応じて、ホイールブレーキに設けられたホイールシリンダへブレーキ油圧を供給する。このホイールブレーキ装置54では、通常時には、ブレーキマスタシリンダから発生させられる、ブレーキペダルの踏力に対応した大きさのマスタシリンダ油圧が直接的にブレーキ油圧としてホイールシリンダへ供給される。一方で、ホイールブレーキ装置54では、例えばABS制御時、横滑り抑制制御時、車速制御時、自動運転制御時などには、ホイールブレーキによる制動トルクの発生の為に、各制御で必要なブレーキ油圧がホイールシリンダへ供給される。上記車輪は、駆動輪14及び不図示の従動輪である。
操舵装置56は、例えば車速V、操舵角θsw及び操舵方向Dsw、ヨーレートRyawなどに応じたアシストトルクを車両10の操舵系に付与する。操舵装置56では、例えば自動運転制御時などには、前輪の操舵を制御するトルクを車両10の操舵系に付与する。
電子制御装置60は、車両10における各種制御を実現する為に、エンジン制御手段すなわちエンジン制御部62、変速機制御手段すなわち変速機制御部64、運転制御手段すなわち運転制御部66、及びコースティング制御手段すなわちコースティング制御部68を備えている。
エンジン制御部62は、予め実験的に或いは設計的に求められて記憶された関係すなわち予め定められた関係である例えば駆動要求量マップにアクセル開度θacc及び車速Vを適用することで駆動要求量としての駆動輪14における要求駆動力Frdem[N]を算出する。エンジン制御部62は、変速機18の変速比等を考慮して、要求駆動力Frdemを実現するエンジントルクTeが得られるようにエンジン12を制御する為のエンジン制御指令信号Seを出力する。前記駆動要求量としては、要求駆動力Frdemの他に、駆動輪14における要求駆動トルクTrdem[Nm]、駆動輪14における要求駆動パワーPrdem[W]、変速機18の出力回転部材における要求出力トルク等を用いることもできる。尚、後述する自動運転制御では、自動運転制御での走行を実現する為の駆動要求量が算出される。
変速機制御部64は、予め定められた関係である例えば変速マップを用いて変速機18の変速判断を行い、必要に応じて変速機18の変速制御を実行する為の変速機制御指令信号Satを出力する。上記変速マップは、例えば車速V及び要求駆動力Frdemを変数とする二次元座標上に、変速機18の変速が判断される為の変速線を有する所定の関係である。
運転制御部66は、車両10の運転制御として、運転者の運転操作に基づいて走行する手動運転制御と、運転者の運転操作に因らず車両10の運転制御を自動的に行うことで予定の走行路としての予定ルートを走行する自動運転制御とを行うことが可能である。前記手動運転制御は、運転者の運転操作による手動運転にて走行する運転制御である。その手動運転は、アクセル操作、ブレーキ操作、操舵操作などの運転者の運転操作によって車両10の通常走行を行う運転方法である。前記自動運転制御は、例えば運転者により入力された目的地や地図情報などに基づいて自動的に目標走行状態を設定し、その目標走行状態に基づいて加減速と操舵とを自動的に行うことで、自動運転にて走行する運転制御である。その自動運転は、運転者の運転操作(意思)に因らず、各種センサからの信号や情報等に基づく電子制御装置60による制御により加減速、制動、操舵などを自動的に行うことによって車両10の走行を行う運転方法である。尚、広義には、操舵操作を運転者が行うものの、加減速、制動などを自動的に行うクルーズ制御を前記自動運転制御に含めても良い。
運転制御部66は、運転支援設定スイッチ群52における自動運転選択スイッチにおいて自動運転が選択されていない場合には、手動運転モードを成立させて手動運転制御を実行する。運転制御部66は、エンジン12を制御する指令をエンジン制御部62に出力し、変速機18を制御する指令を変速機制御部64に出力することで手動運転制御を実行する。
運転制御部66は、運転者によって運転支援設定スイッチ群52における自動運転選択スイッチが操作されて自動運転が選択されている場合には、自動運転モードを成立させて自動運転制御を実行する。具体的には、運転制御部66は、運転者により入力された目的地や燃費優先度や車速Vや車間距離等の各種設定と、位置情報Ivpに基づく自車位置情報と、ナビ情報Inavi及び/又は通信信号Scomに基づく、カーブ等の道路状態や勾配や高度や法定速度等の地図情報、インフラ情報、及び天候等と、車両周辺情報Iardに基づく走行路の車線、走行路における標識、走行路における他車両や歩行者などの情報とに基づいて、自動的に目標走行状態を設定する。運転制御部66は、その目標走行状態に基づいて加減速と制動と操舵とを自動的に行うことで自動運転制御を行う。この加減速は車両10の加速と車両10の減速とであり、ここでの減速には制動を含めても良い。
運転制御部66は、前記目標走行状態として、予定ルート及び予定進路、実際の車間距離などに基づく安全マージンを考慮した目標車速、目標車速や走行抵抗分などに基づく目標駆動トルク又は目標加減速度などを設定する。運転制御部66は、目標駆動トルクが得られるように、エンジン12を制御する指令をエンジン制御部62に出力し、変速機18を制御する指令を変速機制御部64に出力する。目標駆動トルクが負値の場合すなわち制動トルクが必要な場合は、エンジン12によるエンジンブレーキトルク及びホイールブレーキ装置54によるホイールブレーキトルクのうちの少なくとも一つのブレーキトルクが車両10に作用させられる。例えば、運転制御部66は、利用可能な範囲でホイールブレーキトルクを演算し、目標駆動トルクが得られるように、そのホイールブレーキトルクを作用させる為のブレーキ制御指令信号Sbraをホイールブレーキ装置54に出力する。加えて、運転制御部66は、設定した目標走行状態に基づいて前輪の操舵を制御する為の操舵制御指令信号Ssteを操舵装置56に出力する。
コースティング制御部68は、動力伝達装置16における動力伝達を遮断した状態で、すなわち変速機18をニュートラル状態とした状態で、車両10を惰行させるコースティング制御を実行することでコースティング走行を行う。コースティング制御部68は、コースティング制御を実行する際は、例えばエンジン12をアイドリング状態に制御するか、又は、エンジン12に対する燃料供給を停止するフューエルカットなどを行う指令をエンジン制御部62に出力することでエンジン12を停止状態とする。又、コースティング制御部68は、コースティング制御を実行する際は、クラッチCinを解放する指令を変速機制御部64に出力することで変速機18をニュートラル状態とする。
コースティング制御部68は、手動運転制御での走行中か自動運転制御での走行中かに拘わらず、コースティング制御を実行することができる。コースティング制御部68は、手動運転制御での走行中に、アクセルオフ且つブレーキオフなどの所定の惰行開始条件Aが成立した場合には、コースティング制御を実行する。前記アクセルオフは、アクセル開度θaccがゼロと判断される状態である。前記ブレーキオフは、ブレーキオン信号Bonがオフとされている状態である。コースティング制御部68は、手動運転制御でのコースティング走行中に、運転者によってアクセル操作又はブレーキ操作が為されるなどして所定の惰行開始条件Aが不成立となった場合には、コースティング制御を中止してコースティング走行を解除し、通常走行に復帰する。
コースティング制御部68は、自動運転制御での走行中に、例えば設定車速に到達した後に車速Vが多少低下しても問題ない場合、近い将来に停車することが分かっておりゆっくりと減速しても問題ない場合、先行車両に近づいていく場合などのうちの何れかの場合のような、所定の惰行開始条件Bが成立した場合には、コースティング制御を実行する。コースティング制御部68は、自動運転制御でのコースティング走行中に、所定の惰行開始条件Bが不成立となった場合には、又は、運転者によってアクセル操作又はブレーキ操作が為されるなどした場合には、コースティング制御を中止してコースティング走行を解除し、通常走行に復帰する。
ところで、自動運転制御でのコースティング走行中に、低下した車速Vを上昇させる為にコースティング走行を解除して駆動力を付与したり、車両10をより減速させる為にコースティング走行を解除して制動力を付与したりなどすることが考えられる。この際、走行路が低μ路や凹凸路等であると、車両挙動が変化し易く、車両挙動が不安定になり易い。手動運転制御での走行中であれば運転者がアクセルオンしたりブレーキオンしたりなどすることでコースティング走行が解除されて駆動力又は制動力が付与されるので、車両挙動が変化した場合でも運転者はその変化を理解でき、違和感を感じ難い。しかしながら、自動運転制御での走行中におけるコースティング走行の解除は運転者の操作を伴わない為、自動運転制御での走行中にコースティング走行が解除された際に車両挙動が変化すると運転者は違和感を感じ易い。自動運転制御での走行中にコースティング走行を解除する際に、運転者に違和感を感じ難くさせることが望まれる。
電子制御装置60は、自動運転制御での走行中にコースティング走行を解除する際に運転者に違和感を感じ難くさせるという制御機能を実現する為に、更に、状態判定手段すなわち状態判定部70、車両状態演算手段すなわち車両状態演算部72、及び解除領域決定手段すなわち解除領域決定部74を備えている。
状態判定部70は、運転モードが自動運転モードであるか否か、すなわち自動運転制御の実行中であるか否かを判定する。又、状態判定部70は、コースティング走行中であるか否かを判定する。状態判定部70は、コースティング走行中であると判定した場合には、コースティング走行を解除する操作であるコースティング解除操作が為されたか否かを判定する。コースティング解除操作は、例えば運転者によるブレーキ操作、操舵操作、アクセル操作などである。又、コースティング解除操作には、自動運転制御におけるブレーキオン、操舵、アクセルオンなども含まれる。
車両状態演算部72は、状態判定部70により自動運転制御の実行中であると判定された場合には、特には、状態判定部70により、自動運転制御の実行中であり、且つコースティング走行中であり、且つコースティング解除操作が為されていないと判定された場合には、運転制御部66により設定された自動運転制御における予定ルートにおいて予測される車両状態を演算する。予定ルートにおいて予測される車両状態は、例えば車速Vの変化の状態、車両10として行う予定のブレーキ操作、加速操作、シフト操作などの車両操作の状態、コースティング走行の実行状態などである。コースティング走行の実行状態は、例えば予定ルートにおいてコースティング走行を開始する予定の走行路位置とコースティング走行を解除する予定の走行路位置とで特定され得る。
解除領域決定部74は、状態判定部70により自動運転制御の実行中であると判定された場合には、運転制御部66により設定された自動運転制御における予定ルートと、車両状態演算部72により演算された予定ルートにおいて予測される車両状態の演算結果とに基づいて、車両挙動が所定以上変化することが回避されるように自動運転制御におけるコースティング走行を解除する走行路領域を決定する。車両挙動が所定以上変化することとは、例えばコースティング走行が解除された際に、又は車両10として行う予定の車両操作が為された際に、運転者が違和感を感じる程に車両挙動が変化することである。
低μ路や凹凸路では、車両挙動が所定以上変化する現象が生じ易い。解除領域決定部74は、コースティング走行を解除する予定の走行路位置が低μ路又は凹凸路の区間にある場合には、その低μ路又は凹凸路の区間の前又は後でコースティング走行が解除されるようにコースティング走行を解除する走行路領域を決定する。又は、解除領域決定部74は、低μ路又は凹凸路の区間でコースティング走行後の再加速操作が為される場合には、コースティング走行を継続して低μ路又は凹凸路の区間をコースティング走行で通過するようにコースティング走行を解除する走行路領域を決定する。
急な車速Vの変化、大きな操舵、前後加速度Gxの大きな変化、又は左右加速度Gyの大きな変化などが発生している区間である車両状態変化区間では、コースティング走行を解除しない方が望ましい。又は、車両状態変化区間では、駆動力が付与されている方が車両10の安定化には望ましい。解除領域決定部74は、車両状態変化区間の前でコースティング走行が解除されるようにコースティング走行を解除する走行路領域を決定する。
解除領域決定部74は、例えばセンター100との間での通信を介して取得された情報に基づいて、又は、先行車両などの他車両110との間での車車間通信を介して取得された情報に基づいて、低μ路の区間、凹凸路の区間、及び車両状態変化区間などを各々決定する。解除領域決定部74は、例えば上記各種通信を介した情報、低μ路の区間の情報、凹凸路の区間の情報、及び車両状態変化区間の情報などに基づいて、コースティング走行を解除する予定の走行路領域を変動させる。
以上のように、車両状態演算部72及び解除領域決定部74によって、コースティング走行の解除時までの車両挙動が演算され、コースティング制御部68によるコースティング走行の解除要求が為される時点よりも前からコースティング走行を解除可能な走行路領域が予め決定される。
状態判定部70は、車両状態演算部72及び解除領域決定部74により演算されたコースティング走行を解除する予定の走行路領域に車両10が到達したか否か、すなわちコースティング走行の解除が必要であるか否かを判定する。
コースティング制御部68は、状態判定部70によりコースティング走行の解除が必要であると判定された場合には、コースティング走行の解除を要求する。コースティング制御部68は、コースティング走行の解除を要求した場合には、又は、状態判定部70によりコースティング解除操作が為されたと判定された場合には、コースティング制御を終了してコースティング走行を解除する。コースティング制御部68は、コースティング制御を終了する際は、要求駆動力Frdemを実現するエンジン12の制御などを行う指令をエンジン制御部62に出力する。又、コースティング制御部68は、コースティング制御を終了する際は、クラッチCinを係合する指令を変速機制御部64に出力する。
図2は、電子制御装置60の制御作動の要部すなわち自動運転制御での走行中にコースティング走行を解除する際に運転者に違和感を感じ難くさせる為の制御作動を説明するフローチャートであり、例えば繰り返し実行される。図3は、図2のフローチャートに示す制御作動を実行した場合の実施態様の一例である。
図2において、先ず、状態判定部70の機能に対応するステップ(以下、ステップを省略する)S10において、運転モードが自動運転モードであるか否かが判定される。このS10の判断が否定される場合は本ルーチンが終了させられる。このS10の判断が肯定される場合は状態判定部70の機能に対応するS20において、コースティング走行中であるか否かが判定される。このS20の判断が否定される場合は本ルーチンが終了させられる。このS20の判断が肯定される場合は状態判定部70の機能に対応するS30において、コースティング解除操作が為されたか否かが判定される。このS30の判断が否定される場合は車両状態演算部72及び解除領域決定部74の機能に対応するS40において、コースティング走行の解除時までの車両挙動が演算され、コースティング走行を解除する予定の走行路領域が決定される。次いで、状態判定部70の機能に対応するS50において、コースティング走行の解除が必要であるか否かが判定される。このS50の判断が否定される場合は上記S20に戻される。このS50の判断が肯定される場合はコースティング制御部68の機能に対応するS60において、コースティング走行の解除が要求される。上記S30の判断が肯定される場合は、又は、上記S60に次いで、コースティング制御部68の機能に対応するS70において、コースティング走行が解除される。
図3は、自動変速制御での予定ルートに、コースティング走行の解除動作によって車両挙動が不安定になり易い低μ路や凹凸路等の走行路領域を含むときの実施態様の一例を示している。図3において、路面状態における網掛け部分は低μ路や凹凸路等の走行路領域を示している。比較例は、運転者による操作すなわちドライバ操作によって、又は、車両挙動が不安定になったことに基づく低μ路等の判定によってコースティング走行が解除された一例を示している(走行路位置のp2a位置参照)。本実施例では、車両挙動が不安定となることが生じる走行路領域外で、つまり低μ路や凹凸路等の走行路領域外で、自動でコースティング走行が解除される(走行路位置のp1a位置,p3a位置参照)。
上述のように、本実施例によれば、自動運転制御の実行中に、予定ルートとその予定ルートにおいて予測される車両状態の演算結果とに基づいて、車両挙動が所定以上変化することが回避されるようにコースティング走行を解除する走行路領域が決定されるので、車両挙動が安定する走行路領域でコースティング走行を解除することができたり、又は、車両挙動が変化し易い走行路領域をコースティング走行で通過した後にコースティング走行を解除することができる。よって、自動運転制御での走行中にコースティング走行を解除する際に、運転者に違和感を感じ難くさせることができる。
次に、本発明の他の実施例を説明する。なお、以下の説明において実施例相互に共通する部分には同一の符号を付して説明を省略する。
コースティング走行中に車両挙動が不安定になった場合、車両10を安定化させる制御を行うことが望ましい。車両10を安定化させる制御は、例えば公知のABS制御、VSCと称される横滑り抑制制御、レーンキープ制御などである。ABS制御時や横滑り抑制制御時には、ホイールブレーキ操作が為される。又、横滑り抑制制御時に操舵トルクをアシストしたり前輪切れ角を制御するステアリング協調制御時やレーンキープ制御時には、操舵操作が為される。又、コースティング走行時に弱いエンジンブレーキ作用を付与して減速度を制御する場合、変速機18のクラッチCinをスリップ状態とするシフト操作が為される。
コースティング制御部68は、コースティング走行中にコースティング解除操作が為された場合、基本的にはコースティング走行を解除するが、自動運転制御でのコースティング走行中に自動運転制御による車両10を安定化させる制御の為の操作が為されたことでは、コースティング走行を解除しない。コースティング制御部68は、自動運転制御によるホイールブレーキ操作時には、コースティング走行を解除しない。コースティング制御部68は、自動運転制御による操舵操作時には、コースティング走行を解除しない。コースティング制御部68は、自動運転制御によるシフト操作時には、コースティング走行を解除しない。
図5は、電子制御装置60の制御作動の要部すなわち自動運転制御での走行中にコースティング走行を解除する際に運転者に違和感を感じ難くさせる為の制御作動を説明するフローチャートであり、例えば繰り返し実行される。図5は、図2のフローチャートとは別の実施例である。図6は、図5のフローチャートに示す制御作動を実行した場合の実施態様の一例である。
図5において、先ず、状態判定部70の機能に対応するS10において、運転モードが自動運転モードであるか否かが判定される。このS10の判断が否定される場合は本ルーチンが終了させられる。このS10の判断が肯定される場合は車両状態演算部72及び解除領域決定部74の機能に対応するS22において、コースティング走行の解除時までの車両挙動が演算され、コースティング走行を解除する予定の走行路領域が決定される。次いで、状態判定部70の機能に対応するS28において、コースティング走行が開始されたか否かが判定される。このS28の判断が否定される場合は本ルーチンが終了させられる。このS28の判断が肯定される場合は状態判定部70の機能に対応するS30において、コースティング解除操作が為されたか否かが判定される。このS30の判断が否定される場合は状態判定部70の機能に対応するS55において、コースティング走行の解除地点であるか否かが判定される。このS55の判断が否定される場合は上記S30に戻される。一方で、上記S30の判断が肯定される場合は状態判定部70の機能に対応するS58において、コースティング解除操作が車両挙動を安定させる為の自動運転制御による操作であるか否かが判定される。このS58の判断が肯定される場合は上記S30に戻される。上記S55の判断が肯定される場合は、又は、上記S58の判断が否定される場合は、コースティング制御部68の機能に対応するS60において、コースティング走行の解除が要求される。次いで、コースティング制御部68の機能に対応するS70において、コースティング走行が解除される。
図6は、自動変速制御での予定ルートに、車両挙動が不安定になり易い走行路領域を含むときの実施態様の一例を示している。図6において、路面状態における網掛け部分はコースティング走行中に車両挙動が不安定になる走行路領域を示している。比較例は、ドライバ操作によって、又は、車両挙動が不安定になったとの判定によってコースティング走行が解除された一例を示している(走行路位置のp2b位置参照)。本実施例では、車両挙動が不安定になる走行路領域に対して、自動運転制御による車両挙動を安定させる為の操作がコースティング走行中も実施され得る。本実施例では、車両挙動が不安定となることが生じる走行路領域外で自動でコースティング走行が解除される(走行路位置のp1b位置,p3b位置参照)。
上述のように、本実施例によれば、前述の実施例1と同様の効果が得られる。加えて、自動運転制御でのコースティング走行中に自動運転制御による車両10を安定化させる制御の為の操作が為されたことではコースティング走行が解除されないので、コースティング走行中に車両挙動を安定化させる為の操作ができ、運転者は違和感を発生し難くされる。
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
例えば、前述の実施例2では、コースティング走行開始時の車速Vが自動運転制御により調整されて、コースティング走行を解除する走行路領域が変動させられたが、車速Vの調整に替えて或いは加えて、例えば自動運転制御における予定ルートを変更することによってコースティング走行を解除する走行路領域が変動させられても良い。
尚、上述したのはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。