JP7251992B2 - 古紙パルプの製造方法及び古紙パルプ - Google Patents

古紙パルプの製造方法及び古紙パルプ Download PDF

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Description

本発明は、古紙パルプの製造方法及び古紙パルブに関するものである。
石膏分を含む古紙には、一例に石膏ボードを剥離して得られる剥離紙がある。この石膏ボードの一例に、石膏(主に二水石膏)に紙を貼り合せて形成されたものを挙げることができる。石膏ボードは、家屋等の建築材料その他の材料として利用され、安定性、耐水性、耐熱性、断熱性、防音性、加工容易性等に優れ幅広い利用用途を有する。
家屋等を解体すると、建築材料として使用されていた廃石膏ボードが大量に発生することになる。従来廃石膏ボードは、廃棄方法が確立されていなかったこともあり、産業廃棄物として廃棄処分されるのが一般的であった。
近年、産業廃棄物の処理場の選定難等で石膏を再加熱してリサイクルすることが検討されてきている。これを踏まえ、特許文献1は石膏をリサイクルするため、リサイクルに不要となる、石膏ボードに貼り合わされた原紙を容易に分離する装置に関する技術を開示している。また、特許文献2は石膏ボード廃材における石膏と貼着紙の分離回収機に関する技術を開示している。これらの特許文献は石膏の再利用を目的とする技術であり、石膏ボードから分離された紙(剥離紙)をリサイクルする技術ではない。
剥離紙は、針状の石膏等を含み、公益財団法人古紙再生促進センターの古紙標準品質規格に規定される禁忌品と評価される、いわゆる難処理性古紙に該当し、そのままではリサイクルできない。古紙処理施設で剥離紙のリサイクル化が試みられているが、リサイクル化するには剥離紙から石膏を除去する専用の設備を要する場合がある。この設備を備えるには、既存の古紙処理施設に大規模な改造等を行わなければならず、多額の設備投資費用をかける必要がある。このことが足かせとなって剥離紙のリサイクル化が十分に確立されていない現状にある。
しかしながら、資源の有効活用の観点からは、剥離紙をリサイクルすることは有用であり、剥離紙から石膏分が除去された古紙パルプを安価に製造する技術の確立が望まれている。ここで、古紙パルプは、例えば、新聞、雑誌等の回収古紙からリサイクルされたパルプをいう。
特開2002-28509号公報 特開2002-159957号公報
本発明が解決しようとする主たる課題は、石膏を含む古紙が含有される古紙パルプ原料から古紙パルプを製造する方法及び古紙パルプを提供することにある。
<請求項1に記載の発明>
石膏分を含む古紙を0.1~10質量%含有する古紙パルプ原料を混合させて、スラリを調整する離解工程と、
前記スラリに含まれる重異物を比重差で分離して第1残分を得る粗選工程と、
前記第1残分に含まれる大異物を大きさ基準で分離して第2残分を得る精選工程を備え、
前記離解工程では、イオン封鎖剤を添加させて50℃未満の温度で混合し、
前記第2残分を古紙パルプとする、
ことを特徴とする古紙パルプの製造方法。
石膏分を含む古紙に付着している石膏片(主に二水石膏(CaSO・2HO))の一部は、古紙パルプの製造の一工程である離解処理で水に溶解する。二水石膏の溶解度は溶媒、例えば、水の温度に従属し、50℃未満で高くなる。溶解したカルシウム分は後の古紙パルプの製造工程でスケール化して、製造設備に付着するなどして、製造に悪影響を及ぼす。そこで、イオン封鎖剤を添加して、溶解されているカルシウムイオンを固体として析出させることで、スラリに溶解しているカルシウム分を低減化できる。また、離解処理されたスラリはカルシウム分が低減されているので、結果として製造される古紙パルプは、カルシウム分の含有量が相対的に少ない良質のものとなる。また、本発明によれば、従来の雑誌や新聞等の古紙パルプ原料から古紙パルプを製造する古紙処理施設に大幅な改造をしなくてもよく、設備投資費用を抑えることができる。
<請求項2に記載の発明>
前記古紙パルプ原料の乾燥固形分濃度が3~18質量%である、
請求項1に記載の古紙パルプの製造方法。
乾燥固形分濃度を3~18質量%とすると、イオン封鎖剤も当該濃度に応じて適量添加すればよく、スラリのpHも大きく変化せず安定した処理をすることができる。
<請求項3に記載の発明>
前記粗選工程では50℃以上の温度で分離する、
請求項1に記載の古紙パルプの製造方法。
粗選工程でスラリを50℃以上の温度にすると、石膏分の溶解が抑制され、石膏分の析出が促進される。析出された石膏分が分離除去されるので、後の工程でのスケール化を抑制できる。
<請求項4に記載の発明>
前記粗選工程が、下部に向かうに従い細まる円錐形状の分離装置を備えた工程であり、
前記分離装置は、
投入された前記スラリを旋回流させつつ比重差で分離し、下部に備わる排出部から前記重異物を排出し、上部に備わる回収部から前記第1残分を得るものであり、
前記分離装置の上部に、前記スラリの投入部が備わり、
前記投入部の投入方向が旋回流の流れ方向に沿って配されるものである、
請求項1に記載の古紙パルプの製造方法。
分離装置に投入されたスラリを旋回流させると、スラリに含まれる種々の物質は、同物質各々の比重差で分離される。比重が相対的に大きいものは遠心力を強く受け、分離装置内の壁面沿いにらせん状に回転しながら下部側に到達し、排出される。比重が相対的に小さいもの、例えば、繊維物は遠心力を弱く受け、分離装置内の軸心寄りに集まり、上部側に達し第1残分32として回収される。石膏分は比重2.3g/cmであり、石膏分を含むスラリを一般的な分離装置で処理すると、石膏分の一部が下部から排出され、第1残分が回収部から回収される。そのため古紙パルプの繊維分と石膏分との確実な分離がなされない。
投入部が旋回流の流れ方向にスラリを投入するように配されていることで、スラリが分離装置内に投入されると、スラリに含まれる石膏分が、投入されると同時に同流れ方向に加速度を得て、強い遠心力を受けることになる。結果、石膏分がらせん状に旋回しながら下部側に到達し、排出される。よって、石膏分の確実な分離がなされる。
<請求項5に記載の発明>
前記精選工程では50℃以上の温度で分離する、
請求項1に記載の古紙パルプの製造方法。
精選工程を50℃以上の温度で行うと、石膏分の溶解が抑制され、石膏分の析出が促進される。析出された石膏分が大異物として分離除去され、カルシウム分の濃度が軽減された第2残分が後の工程に導かれるので、スケール化を抑制できる、との効果を有する。
<請求項6に記載の発明>
前記石膏分を含む古紙は、この石膏分を含む古紙から発生する塵分を除去したものである、
請求項1に記載の古紙パルプの製造方法。
離解工程前に、石膏分を含む古紙中の塵分を除去することで、離解工程以降で石膏分由来の灰分が低減され、古紙パルプの強度が向上される。
その他の発明>
石膏分を含む古紙を0.1~10質量%含有する古紙パルプ原料に、イオン封鎖剤を添加して混合させたスラリを原料とし、
フリーネスが400ml~580mlであり、
比破裂強度が14(N・cm)×100/(g/m)~30(N・cm)×100/(g/m)であり、
比リング強度が132N・m/g・100~206N・m/g・100であり、
灰分が10.0%~25.0%であり、
6カット残渣が0.1%~6.0%である、
ことを特徴とする古紙パルプ。
本発明の古紙パルプは、石膏分が確実に除去された良質のものとなる。
本発明によると、石膏を含む古紙を含む古紙パルプ原料から古紙パルプを製造でき、良質の古紙パルプとなる。
古紙パルプの製造方法のフロー図である。 硫酸カルシウムの溶解度の図である。 分離装置の平面図である。 図3のA-A線断面図である。 図3のB―B線断面図である。
次に、本発明を実施するための形態を説明する。なお、本実施の形態は、本発明の一例である。
石膏分を含む古紙には、一例に石膏ボードから剥離された紙(剥離紙)や石膏が付着された紙を挙げることができる。石膏分を含む古紙10が含有された古紙パルプ原料11から古紙パルプを製造するフロー(製造フロー)の一例を図1に示してある。この図1に従って処理の概要を説明する。
このフローに示す実施の形態を要すれば次のとおりである。
(1)石膏分を含む古紙10が含有された古紙パルプ原料11の、パルパー12による離解工程
(2)分離装置13による粗選工程
(3)スクリーンによる精選工程
(4)脱水工程
を有するものである。
(石膏分を含む古紙)
一般的に石膏ボードは次記のとおりに製造される。二水石膏を焼いて脱水されたもの(焼石膏)が、結晶化するための結晶水を含むことで結晶化される。この結晶化された石膏には微細な針状が無数に存在し、結晶相互が密に絡み合う。この石膏と石膏以外の材料とでボード状に加工し、ボード表面に原紙を貼ることで、針状の石膏が原紙の繊維に絡み、密着して石膏ボードが形成される。この石膏ボードから剥離した紙を「石膏ボードの剥離紙」という。一般的に使用される石膏ボードに含有される石膏分は、75%以下であると有用性に富み、特に5~70%であるとより好ましく、さらに40~65%であると好適である。
(古紙の原料)
古紙パルプ原料11には、前述の石膏分を含む古紙10を含むほか、例えば、雑誌、新聞用紙、中質紙、上質紙、塗工紙、微塗工紙、PPC用紙(トナー印刷用紙)、段ボール、白板紙、所謂古紙禁忌品に相当する感熱記録紙、ノーカーボン紙、帳票、色上質紙、紙器、シール・ラベルが含まれてもよく、光沢のある印刷物やOPニスやUVクリアコート等の表面加工処理した印刷物が含まれてもよい。
<離解工程>
離解工程は、パルパー(離解機)12に乾燥固形分濃度で0.1~10質量%の石膏分を含む古紙10が含有された古紙パルプ原料11を水と共に投入し混合水とし、離解処理を行う工程である。離解処理することで古紙パルプ原料11がスラリ化される。特に乾燥固形分濃度で4~8質量%の石膏分を含む古紙10を含有する古紙パルプ原料11であると好適である。この混合水に対して古紙パルプ原料11を5~18質量%(乾燥固形分濃度)とするとよい。0.1質量%未満だと、石膏分を含む古紙10の離解効率が低く、10質量%を超えると石膏の遊離物が古紙パルプ原料に付着するおそれがあったり、パルパー12を摩耗させたりする原因となる。
離解処理中の水温は50℃未満とすると好ましい。また45℃未満とするとより好ましい。石膏ボードの成分には硫酸カルシウムが支配的に含まれる。ここで硫酸カルシウムは硫酸カルシウム無水和物、硫酸カルシウム水和物(例えば、CaSO・2HO、CaSO・1/2HO等)を含む概念である。離解処理中の水温を50℃以上にすると、水に対する硫酸カルシウムの溶解度が相対的に小さくなる。石膏ボードのうちの石膏が相対的に水に溶けにくくなり、結果、石膏と剥離紙との分離性能の低下を招く。
(溶解度)
図2は、常温常圧で水100gに対する硫酸カルシウム無水和物の溶解度31を測定した結果を示すグラフである。同図の横軸は温度(℃)、縦軸は溶解度(%)を示す。
(イオン封鎖剤)
前述の離解工程でイオン封鎖剤を添加して離解処理を行うこともできる。イオン封鎖剤を添加することで、石膏ボードが離解処理されて水に溶け出すカルシウムイオンの濃度を低減化することができる。カルシウムイオンが、離解処理されたスラリに含まれると、後の工程でカルシウムイオンがスケール化し、古紙パルプの製造設備や古紙パルプにスケールが付着し、製造設備の摩耗や製造製品の品質の低下を招く原因となる。ここで、スケールとは、一例として、処理工程の水に含まれる炭酸カルシウムや硫酸カルシウム等が固化して析出されたものをいう。
イオン封鎖剤は、混合水に含まれるイオン封鎖剤の濃度が4.0~20.0kg/パルプ1000kgとなるように添加するとよい。4.0kg/パルプ1000kgよりも低いとカルシウム分を析出させる効果が弱い。一方20.0kg/パルプ1000kgよりも高いと副生成物が生成したりイオン封鎖剤自身が固化して製造設備に付着したりする等、古紙パルプの製造に不具合を生じさせる原因となる場合がある。
イオン封鎖剤を添加すると石膏ボードの溶解でイオン化されるカルシウムイオンを固体化して析出させることができる。また、後の工程でなされる石膏の除去を効果的に行うことができる。さらに、後の工程で使用される紙力増強剤やサイズ剤等の抄紙薬品の使用量を低減できる。結果、製造製品の原単位を低く抑えることができ好適である。
水に溶解されるカルシウムイオンとイオン封鎖剤との化学反応の一例は次記のとおりである。石膏ボードの主な構成要素である二水石膏(CaSO・2HO)を水に溶かすとカルシウムイオン(Ca2+)が生成される(式(1))。このカルシウムイオン(Ca2+)を含む水にイオン封鎖剤(一例として、HPO)を添加すると、水に難溶性のリン酸カルシウムが生成される(式(2))。なお、式(2)では生成されるリン酸カルシウムの例として、リン酸二水素カルシウムを挙げるが、このほか、リン酸二水素カルシウム水和物、リン酸一水素カルシウム、リン酸一水素カルシウム水和物等、リン酸とカルシウムイオンを含んでなる生成物が生成される。
(化1)
CaSO・2HO → Ca2++SO 2-+2HO ・・・式(1)
(化2)
Ca2++HPO → Ca(HPO↓ +2H・・・式(2)
なお、離解工程後にスラリを一時貯留するタンクを設け、このタンクに貯留されるスラリにイオン封鎖剤を添加してもよい。この場合、離解工程でイオン封鎖剤を添加してもよいし、添加しなくてもよい。
本実施形態で用いられるイオン封鎖剤としては、水中のカルシウムイオンと化学反応して水難溶性の沈殿物を生成するものであればよく、特に限定されない。一例にリン酸、リン酸塩類、シュウ酸、シュウ酸塩類等を挙げることができる。リン酸及びリン酸塩類としては、オルトリン酸、アルカリ金属の第一、第二、第三リン酸塩、ピロリン酸、トリポリリン酸等の縮合リン酸、ピロリン酸のアルカリ金属塩、トリポリリン酸等の縮合リン酸のアルカリ金属塩を例示できるが、これらに限るものではない。
(離解時間)
離解工程で使用されるパルパー12ではパルパー12に備わる刃により古紙パルプ原料11がせん断される。この離解工程で離解処理を行う時間(離解時間)は15~30分、より好ましくは15~25分である。30分を超えると、パルパー12内での攪拌、離解で石膏分の破片化が促進され、石膏の残渣が微細化される。石膏は、比重が2.2g/cm程度であり、次工程の粗選工程や精選工程において分離装置で除去可能であるが、石膏の微細化が進行しすぎると、分離装置での除去効率の低下を招くおそれがある。離解時間が15分より短いと、石膏分を含む古紙10以外の古紙パルプ原料11が十分に離解されないおそれがある。
(pH)
離解工程で行う離解処理時の混合水のpHは6~10とするとよい。また、pHが6~7であると好ましく、pHが6~6.8であるとより好ましい。この範囲のpHでは石膏の溶解度はほとんど変動しない。pHが6よりも酸性側であると、pH調整剤等の薬品を多量に添加する必要がある場合がある。この薬品が古紙パルプの製造工程に内在する炭酸カルシウムを溶解させ、結果、硫酸カルシウム等が発生し、スケールの原因となる。一方、pHが10より大きいアルカリ性側であると、古紙パルプの製造設備、例えば、配管等にアルカリ由来のスケールが発生することがある。このスケールの発生原因は明らかではないが、おそらくアルカリ性溶液で溶解された石膏が、その後のpHの変化等で析出されたことによるものと考えられる。
(パルパー)
石膏分を含む古紙10が含有された古紙パルプ原料11はパルパー12に投入され離解される。パルパー12の構造は限定されず、例えば、パルパー12に備わるタブ内に古紙パルプ原料と水を投入し混合水とし、タブ下部や側面に設けられるロータの回転で混合水が攪拌されて離解される。パルパー12は特に制限なく使用でき、低濃度パルパー、中濃度パルパー、高濃度パルパーのいずれでもよい。およそ低濃度パルパーは古紙パルプ原料を3~5質量%(乾燥固形分濃度)で離解し、中濃度パルパーは5~13質量%(乾燥固形分濃度)で離解し、高濃度パルパーは13~18質量%(乾燥固形分濃度)で離解できる。混合水に対して古紙パルプ原料11を3~18質量%(乾燥固形分濃度)となるようパルパー12に投入するとよく、この古紙パルプ原料11の乾燥固形分濃度に応じて適宜のパルパー12を用いることができる。しかしながら、この範囲に限るものではない。
前述の乾燥固形分濃度の高低がパルパー12で攪拌される古紙パルプ原料11のせん断力に影響を与える。乾燥固形分濃度が3質量%より低い濃度だと、石膏分を含む古紙10から溶解されるカルシウムイオンの濃度が相対的に低くイオン封鎖剤を添加する利点が乏しい。また、パルパー12に備わる離解刃や攪拌羽の回転でパルプ原料11が機械的なせん断力を受ける。結果、石膏分を含む古紙10に付着された石膏分が細分化され、その後の工程、例えば、分離装置13による重力差で分離され難くなる。一方、18質量%より高い濃度だとイオン封鎖剤も多く添加する必要が生じる。イオン封鎖剤の多量添加は、前述したとおり好ましくない。また、混合水の流れで古紙パルプ原料11相互の繊維間の摩擦力が支配的に働き、石膏分が分散し破片化がなされ分離装置13を摩耗させる原因となる。
石膏分を含む古紙10が含有された古紙パルプ原料を離解するパルパー12として、タブ式パルバー、ドラム式パルパー等を例示できる。また、パルパーの稼働はバッチ式であっても連続式であってもよい。
(集塵)
石膏を含む古紙は、離解工程に直接投入されてもよいが、離解工程に投入される前に、溶解し易いよう破砕等して適宜細かなサイズへ調整後に投入されてもよい。破砕などする際、石膏を含む古紙から塵分が発生する。そこで、集塵装置25(例えば電気集塵機や排風ダクト、ドラフトチャンバ等)を用いて、塵分を除塵して除去するとよい。石膏を含む古紙を離解工程に投入する前に同石膏を含む古紙から発生する塵分をあらかじめ除くことで、微細なカルシウム分がスラリに溶け込んだり、製造される古紙パルプに付着するのを低減でき、灰分を低減でき良質な古紙パルプを得ることができる。
<粗選工程>
離解工程で離解処理された古紙パルプ原料11はスラリとして次工程である粗選工程に送られる。しかしながら、スラリは粗選工程を経ずに精選工程に送られてもよい。離解工程で石膏分を含む古紙10に含まれる石膏分の破片化・微細化が促進されると精選工程において、石膏分がスクリーンを通過し、回収されない。そうすると、製造される古紙パルプが石膏分やカルシウム分を含むものとなり、品質の良いものとならないおそれがある。
粗選工程は粗選設備(分離装置13)を用いて比重差で重異物とそれ以外の残分(請求項における第1残分)に分離を行う工程である。この粗選設備に加え、後述する、除塵するためのスクリーン設備や比重差の相対的に小さい異物を除去するためのスクリーン設備や、残分を一時貯留するタンク14等を設ける場合は、当該設備及びタンク14を含めて粗選工程としてもよい。分離装置13にスラリが投入され、適宜、水が注入された状態で分離装置13内で旋回流を起こす。スラリに含まれる重異物が旋回流で遠心力を受けて分離し、除去(排出)され、第1残分が回収される。分離装置13は例えば、被処理物の乾燥固形分濃度3~5質量%に使用される高濃度分離装置や乾燥固形分濃度1~3質量%に使用される中濃度分離装置を使用できる。分離装置13は1台又は複数台設けてもよく、複数台設ける場合は、分離装置13を直列又は並列に配置してスラリを分離装置13各々に対し、直列又は並列に投入させてもよい。分離装置13による処理ではスラリに適宜水を注入して、石膏分の微細化を抑えつつ石膏分を除去するとよい。ここで、重異物には、金属類(例えば、鉄、銅、アルミニウムその他の金属)の他、石膏や砂分等を含んでよい。
(分離装置)
分離装置13は高濃度分離装置を1台又は複数台設置してもよいし、中濃度分離装置を1台又は複数台設置してもよい。また高濃度分離装置と中濃度分離装置を組み合わせて設置してもよい。一例に高濃度分離装置で第1粗選処理してその残分を、中濃度分離装置で第2粗選処理してもよい。また、中濃度分離装置で第1粗選処理してその残分を、高濃度分離装置で第2粗選処理してもよい。高濃度分離装置と中濃度分離装置を組み合わせて粗選処理すると次の利点があり好適である。第1粗選処理で石膏分が除去された残分に微細化された石膏分が含まれる場合がある。この残分について第2粗選処理をすることでより石膏分が除去されることになり、古紙パルプの品質の向上化が図られる。
分離装置13は分離装置13内に内容物(例えば、スラリ)を投入し、旋回流を発生させ、スラリに遠心力を与え、比重差で分離して第1残分を得るものである。図3~図5を参照しつつ説明すると、分離装置13は下部に向かうに従い細まる円錐形状の装置であり、分離装置13上部は平面視ほぼ円形になっている。分離装置13本体の上部には、同分離装置13の壁面を貫通してスラリを投入する投入部13aが備わる。この投入部13aを通じて分離装置13外部から分離装置13内にスラリが投入される。そして、投入部13aから投入されたスラリが、投入直後において旋回流に沿って流れるように、投入方向13cを定めるとよい。投入部13aは筒状やチューブ状とすることができる。スラリが投入部13aを通じて分離装置13内に流れ込む投入方向13cと分離装置13本体の軸心13bとのなす角度θは鋭角とするとよい。なお、同角度θとは、同投入方向13cと分離装置13本体の軸心13bがねじれの位置関係にあるが、軸心13bと投入方向13cとが交わる位置関係に平行移動させたときの角度をいう。換言すると、軸心13bを通り、同投入方向13cに平行に切断した断面(すなわち、図4に示す紙面)において、軸心13bと投入方向13cとのなす角度θ)をいう。分離装置13の下部に備わる排出部13fから重異物33が排出され、上端中央に備わる回収部13dから第1残分32が回収される。投入部13aから投入されたスラリのうちの重異物33が旋回流に沿ってらせん状に旋回しつつ重力で落下する。同角度θを鋭角とすることで、スラリが分離装置13内に投入された直後から、旋回流に沿って旋回し、大きな遠心力を得ることになる。結果、比重差の違いにより高い分離能をもって内容物が分離される。なお、スラリの投入方向13cと旋回流の方向は、分離装置13内部における投入部13aの先端においてほぼ一致している。ここで、同角度θは10°~80°であると好ましく、20°~70であるとより好ましく、30°~60°であると好適である。角度θが10°を下回ると、スラリが遠心力を得にくくなり、角度が80°を上回るとスラリを投入しづらくなる。
石膏の比重は、2.3g/cmであり、古紙パルプ原料11に含まれる他の異物、例えば、鉄や銅、アルミニウムの比重よりも小さく、分離装置13による十分な分離が行えない場合がある。前述の角度θでスラリを投入すると、スラリが大きな遠心力を得ることになる。結果、古紙パルプとの比重差が相対的に小さい石膏分においても大きな遠心力を得ることができ、石膏分の大部分が重異物33として排出可能となる、ことを発明者は知見している。
分離装置13で粗選処理する場合のスラリ乾燥固形分濃度は、0.5~2.0質量%にするとよく、0.8~1.8質量%にするとより好ましい。0.5質量%を下回ると生産性の低下を招き、2.0質量%を上回るとカルシウムイオン濃度が高濃度となり、その後の工程に悪影響を及ぼしたり、比重差による分離が好適になされなかったりする原因となる。0.5~2.0質量%で粗選処理するために粗選工程に先立ち、適宜、スラリを希釈したり、脱水して濃縮したりする濃度調整工程を設けてもよい。
例えば、スラリに石膏分のほか、例えば、鉄、銅、アルミニウム等、砂分が含有される場合、分離装置13を2台直列に配置し、第1分離装置13で重量異物を除去し、残分を続く第2分離装置13に流入させ、石膏を除去する手法を採ることもできる。分離装置13のスラリ投入圧、軽量物の出口圧、重異物の出口圧、注入水の水圧、スラリ13の濃度等の条件を適宜調節することで、軽量物と重異物の分離性能が変わる。これら条件を調節することで、所望の大きさの石膏分をスラリから分離することができる。なお、比重(g/cm)は鉄7.8、銅8.5、アルミニウム2.7、石膏2.3である。
(処理時間)
十分な粗選処理がされる限り、分離装置13の処理時間は特に限定されず、例えば作業性等を考慮して適宜調節できる。一例としては、分離装置13を複数台設置して直列的にスラリを処理する場合は、第1粗選処理の処理時間を相対的に短く調節して古紙パルプに対して比重の大きいもの(比重差の相対的に大きいもの)を中心に除去し、第2粗選処理の処理時間を相対的に長く調節して、古紙パルプに対して比重のわずかに大きいもの(比重差の相対的に小さいもの)を中心に除去するよう調節することができる。
(イオン封鎖剤)
粗選工程では、イオン封鎖剤を添加して粗選処理を行うことができる。スラリが含まれる混合水(白水)中には、カルシウムイオンが含まれる。このカルシウムイオンとイオン封鎖剤との反応で水難溶性のリン酸カルシウムやシュウ酸カルシウムが生成され、固体として析出する。カルシウム分が固体化されるので、カルシウム分を古紙パルプの製造工程の系外に排出し易くなる。カルシウムイオン分が抄紙工程に存在すると、サイズ剤や紙力剤等の薬剤と反応し、薬剤効果を低下させる原因となる。また、白水中でピッチ状物質を発生させる原因ともなる。
(タンク)
分離装置13で処理された残分の品質を均一にするため分離装置13の下流にタンク14を設けることができる。このタンク14においてもイオン封鎖剤を添加してカルシウム分を析出させるとよい。
(温度)
粗選工程で行う被処理物(スラリや白水、希釈に使用される水、循環に使用される水等)の処理は常温で行うことができる。また50℃以上、より好ましくは55℃以上で処理すると硫酸カルシウム無水和物の溶解度31が相対的に小さいため好適である。作業上の安全性、諸設備の摩耗防止の観点から同処理の温度の上限を80℃にするとよい。このように50℃以上でスラリを処理することで、スラリを含む被処理物の液分(例えば、水分)に溶解されていたカルシウムイオンの一部と硫酸イオンの一部が結合して硫酸カルシウムとして析出される。析出された硫酸カルシウムが分離装置13やスクリーン、次工程で除去される。また、被処理物の液分のカルシウムイオン濃度が低下するのでスケールの発生が抑制される。
しかしながら、硫酸カルシウムの溶解度は低温度でも低下する傾向にある(図2参照)。例えば、25℃以下、より好ましくは20℃以下で処理するのも同様の理由から好ましい。しかしながら、イオン封鎖剤や凝結剤、凝集剤等の活性温度、設備機器の安定稼働を考慮し、処理温度の下限を10℃にするとよい。
(除塵工程)
粗選工程を経た残分を精選工程に投入するに先立ち、除塵工程を挿入してもよい。同残分に古紙パルプ以外の異物が混入されている場合にこの異物を除塵工程で除去できる。除塵工程では公知の各種スクリーン設備を用いることができる。
前述したように金属類や砂分、石膏等は古紙パルプとの比重差を利用した分離装置13で除去することができるが、古紙パルプとの比重差の相対的に小さい異物(例えば、ビニル系樹脂含有物等)は分離装置13で除去することが困難である。このような異物を除去するために公知の各種スクリーン設備を設けるとよい。このスクリーン設備は分離装置13の下流側に設けると好ましい。このスクリーン設備を設ける場合は、このスクリーンの被通過物に適宜、水を加えて希釈させることができる。スクリーンの一例としてホール
スクリーンを用いることできる。
<精選工程>
精選工程は、大きさ基準で第1残分32に含まれる大異物を分離除去して第2残分を得る工程である。具体的には粗選工程により重異物が除去された第1残分32は次工程である精選工程に投入される。精選工程ではスクリーン設備が設けられ、同残分をスクリーン設備を通過させて、通過しなかった大異物と通過した第2残分(通過物)に分離する工程である。同大異物は製造フローの系外に除去される。除去される大異物は主に粗い未溶解古紙等の未溶解原料や分離装置13で除去しきれなかった軽量異物等である。
(スクリーン設備)
スクリーン設備の一例として、貫通した丸穴形状を多数有するホールスクリーンを提示できる。同丸穴の径が1.2~2mmであると好ましく、1.7~2mmであるとより好ましい。スクリーン設備を通過させる被通過物(前述した第1残分32)は乾燥固形分濃度3質量%以下とするとよい。この濃度より高いとスクリーン設備の閉塞をきたすおそれがある。このスクリーン設備を通過した第2残分(通過物)は、次工程である脱水工程に導かれる。スクリーン設備で通過されなかった大異物は製造フローの系外に除去される。
前述の残分を効率よく処理するためスクリーン設備を複数台設けて並列して処理することができる。
また、異なる径からなる2種類又は3種類以上のスクリーン設備を備え、直列に配置して処理することができる。2種類のスクリーン設備を設ける場合、例えば、始めのスクリーン設備の通過物を、さらに別のスクリーン設備に通過させるとよい。別のスクリーン設備の一例として、スリット幅が0.25~0.4mm、さらには0.25~0.3mmのスリットスクリーンを提示できる。このスクリーン設備でスリット幅より大きい石膏分や未溶解分を除去でき好ましい。
さらに、スクリーン設備の変形例として、図1に示す配置を提示できる。前述の第1残分32を2台のスクリーン設備(15、16)で並列に処理し、同スクリーン(15.16)の通過物が次工程に送られる。また、同2台のスクリーン設備(15、16)で通過されなかった大異物がタンク17に回収される。タンク17内でこの異物が離解を促され、その後スクリーン設備18に送られる。スクリーン設備18の通過物(第2残分)が次工程に送られ、スクリーン設備18で通過されなかった大異物が例えば、タンク19に回収され製造フローの系外に除去される。
(温度)
精選工程で行う被処理物(スラリや白水、希釈に使用される水、循環に使用される水等)の処理は常温で行うことができる。また50℃以上、より好ましくは55℃以上で処理すると硫酸カルシウム無水和物の溶解度31が相対的に小さく、カルシウム分が析出され好適である。作業上の安全性、諸設備の摩耗防止の観点から同処理の温度の上限を80℃にするとよい。
しかしながら、硫酸カルシウムの溶解度は低温度でも低下する傾向にある。例えば、25℃以下、より好ましくは20℃以下で処理するのも同様の理由から好ましい。しかしながら、イオン封鎖剤や凝結剤、凝集剤等の活性温度、設備機器の安定稼働を考慮し、処理温度の下限を10℃にするとよい。
<脱水工程>
精選工程でスクリーン設備を通過した精選物(第2残分)は、次工程である脱水工程に導入される。脱水工程は同精選物に含まれる水分量を減らす工程である。脱水工程には、脱水設備20による脱水処理と、予備脱水装置を設ける場合は同予備脱水装置による脱水処理と、が含まれる。脱水工程では、特に精選物が乾燥固形分濃度に限定されずに脱水処理される。一例に0.1~2質量%程度の精選物が5~25質量%程度まで脱水されるとよい。この範囲内に脱水することで、精選物に含まれる水分中のカルシウムイオンや微細な石膏を確実に除去することができる。
(脱水設備)
脱水工程に用いる脱水設備20の一例に、ディスクエキスト、ディスクシックナー等のパルプマットを用いる濾過脱水装置やスクリーンプレート(エキストラクションプレート)、SPフィルタ、トロンメル等のフィルタ、脱水エレメントを用いた自然脱水装置を提示できる。
(脱水時間)
脱水設備20及び後述の予備脱水装置で精選物(第2残分)を脱水する時間は、特に限定されない。古紙パルプ原料11の物性や精選物(第2残分)の乾燥固形分濃度により適宜調節するとよい。
(予備脱水装置)
精選物(第2残分)を前述の脱水設備20に導入するに先立ち、予備脱水装置を備えてもよい。予備脱水装置では、乾燥固形分濃度1%程度の精選物(第2残分)を脱水して乾燥固形分濃度3%以上にすることができる。カルシウムイオンや微細な石膏を予備脱水装置で所定量除去された精選物(第2残分)を脱水設備20に導入して処理することで、よりカルシウム分や微細な石膏の除去効率が向上する。
(温度)
脱水工程で行う精選物(第2残分)の処理は常温で行うことができる。また50℃以上、より好ましくは55℃以上で処理すると硫酸カルシウム無水和物の溶解度31が相対的に小さくカルシウム分が析出され好適である。作業上の安全性、諸設備の摩耗防止の観点から同処理の温度の上限を80℃にするとよい。
(凝集剤等)
精選物を脱水工程に導入する際、凝集剤や凝結剤を添加することができる。添加は、例えば、精選物(第2残分)を脱水設備20に導入する直前、又は/及び予備脱水装置を設ける場合は精選物(第2残分)を予備脱水装置に導入する直前、に行うことができる。
凝集剤や凝結剤の添加率は、精選物(第2残分)に対して乾燥固形分濃度0.005~0.05質量%にするとよく、0.01~0.04質量%にするとより好ましい。添加率が0.005質量%よりも低いと、精選物(繊維凝集体)への無機分の取り込みが不十分となり凝集効果、凝結効果が小さい。添加率が0.05質量%よりも高いと、精選物のパルプ繊維が極端に凝集され紙の風合いの悪化を招き、凝集剤・凝結剤のコストも嵩み実用的ではない。
本実施形態において用いられる凝集剤の成分としては、従来から歩留り向上剤として使用されてきた高分子凝集剤、無機凝集剤のいずれをも使用することができる。高分子凝集剤としては、ポリアクリルアミド(PAM)、ポリビニルアミン(PVAm)、ポリアミン(PAm)、ポリエチレンオキシド(PEO)等の有機高分子系凝集剤を一例に挙げることができる。特に、PAM及びPAmの少なくとも1種を用いることが好ましい。凝結剤としては、例えば、ポリアクリルアミド(PAM)、ポリビニルアミン(PVAm)、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド(ポリダドマック、PDADMAC)、ポリアミン(PAm)、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリエチレンオキシド(PEO)、メタクリル酸等の有機高分子系凝結剤や、硫酸バンド、ポリ塩化アルミニウム等の無機系凝結剤を一例に挙げることができる。
(洗浄工程)
前述の離解工程、粗選工程、精選工程の少なくともいずれかの一工程以上の工程を経た処理物(例えば、スラリ、第1残分32(分離装置13からの回収分)、精選物(第2残分)等)に対して、適宜洗浄する洗浄工程を挿入することもできる。
(水の循環)
離解工程、粗選工程、精選工程、脱水工程での除去物には水分が含まれる。この水分を離解工程、粗選工程、精選工程のうちの少なくともいずれか一工程以上の工程に再度循環水として流入させることで、古紙パルプの製造フローから系外に排出される水分量を低減できる。再度循環水を流入させる場合、除去物中の水分に含まれるカルシウム分を除去した後に流入させるとよい。カルシウム分の除去手法としてイオン封鎖剤を添加して析出させる手法を一例に挙げることができる。
(その他設備)
脱水工程で脱水された脱水物、すなわち古紙パルプは、紙の製造に送られる。紙の製造の進捗状況に応じて、同脱水物が一時貯留されるタンク21、22、23を順に脱水工程の下流側に設けることができる。タンク21は脱水工程を経た脱水物を一時貯留するタンクである。タンク22は、前述脱水物ならなる古紙パルプを、抄紙工程に所定の間隔で送るために古紙パルプを一時的に貯留するタンクである。タンク23は、抄紙工程の原料を貯蔵するタンクである。同原料には古紙パルプのみならず、各種の原料が配合されたパルプも混在する。種箱24は抄紙工程に抄紙の原料を安定供給するための装置である。
(古紙パルプの物性)
本実施形態の製造フローを経て得られた、石膏分を含む古紙パルプは後述する物性値を満たすことで、紙原料に用いることができ、好適には、板紙、ダンボール原紙、中芯原紙等の厚紙で強度が必要な紙の原料に用いることができる。
カナディアンスタンダードフリーネスは、400ml~580mlが好ましく、450ml~520ml以下がさらに好ましい。この範囲とすることで、板紙、ダンボール原紙、中芯原紙等のような厚紙の紙原料とした際、脱水が良好となり抄紙し易く、得られる用紙の各強度と伸びが最適なものとなる。
比破裂強度は、14(N・cm)×100/(g/m)~30(N・cm)×100/(g/m)が好ましく、18(N・cm)×100/(g/m)~22(N・cm)×100/(g/m)がさらに好ましい。この範囲とすることで、板紙、ダンボール原紙、中芯原紙等の厚紙で強度が必要な紙の原料として適切である。
比リング強度は、132N・m/g・100~206N・m/g・100が好ましく、160N・m/g・100~190N・m/g・100がさらに好ましい。この範囲とすることで、板紙、ダンボール原紙、中芯原紙等の厚紙で強度が必要な紙の原料として適切である。
灰分は、10.0%~25.0%以下が好ましく、12.0%~15.0%がさらに好ましい。この範囲とすることで、得られる用紙が灰分(填料)の影響により、サイズ度の低下を低減でき、さらに剛直性を付与できる。これは、上記灰分中の石膏が填料としての機能をはたしているためと推測される。10.0%を下回ると石膏分由来の填料としての効果が得られないものとなる。また、25.0%を超えると無機塩等の無機物質の含有割合が高くパルプの強度が十分でないものとなる。
6カット残渣は0.1%~6.0%が好ましく、0.6%~2.0%であることがさらに好ましい。この範囲とすることで、得られる用紙の各強度と伸びが最適なものとなる。0.1%を下回ると、石膏が填料としての機能を十分にはたさなくなる。6.0%を上回るとパルプ繊維が結束されている可能性があり、パルプの強度が十分でないものとなる。
(紙の製造)
本実施形態の製造フローを経て得られた脱水物(古紙パルプ)を用いて紙が製造される。紙の製造のうちの抄紙工程は、公知の手法を採用することができ、特に限定されない。本発明ではこれまで困難とされてきた石膏分を含む古紙10を含有する古紙パルプ原料11を用いて古紙パルプの製造を行っている。本発明によれば石膏分を含む古紙10に付着される石膏分が確実に除去される。よって、紙の抄造する場合や加工する場合、紙を長期保管した場合に斑点の発生や異物の付着が効果的に抑制される。このことからも本発明は、従来は廃棄処分されていた石膏分を含む古紙10を有効活用でき資源の再利用化の観点からも極めて有用性の高いものである。
抄紙工程に使用される原料は、本実施形態により得られた古紙パルプとすることができる。しかしながら、古紙パルプに限らず他のパルプを本実施形態により得られた古紙パルプに任意の比率で配合した原料を抄紙工程に使用することができる。ここで他のパルプとしては、以下のものを用いることができる。
例えば、脱墨パルプ(DIP)、針葉樹または広葉樹クラフトパルプ(NKPまたはLKP)、針葉樹または広葉樹を用いた機械パルプ、例えば、砕木パルプ(GP)、リファイナー砕木パルプ(RGP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、ケミグランドパルプ(CGP)、セミケミカルパルプ(SCP)等、段ボールを離解した古紙パルプ、塗工紙や塗工原紙、その他の紙を含む損紙を離解してなるコートブローク、及び、これらのパルプの2種以上の混合物を併用して抄紙してもよい。
また本発明においては、紙を抄造する際に薬品や填料を添加してもよい。添加する薬品としては、ロジンエマルションや中性ロジン、アルキルケテンダイマー、アルケニル無水コハク酸、スチレン/アクリル共重合体などのサイズ剤、カチオン性や両イオン性、アニオン性のポリアクリルアミド、ポリビニルアミン、ポリアクリル酸を含む樹脂、グアーガムなどの乾燥紙力増強剤、カチオン性や両イオン性、アニオン性の変性澱粉、ポリアミドアミンエピクロロヒドリン、カルボキシメチルセルロースなどの湿潤紙力増強剤、濾水性向上剤、着色剤、染料、蛍光染料、凝結剤、嵩高剤、歩留剤などが挙げられる。また、填料としては、一般に無機填料及び有機填料と呼ばれる粒子であれば良く、特に限定はない。具体的には、無機填料として、炭酸カルシウム(軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム)、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛、クレー(カオリン、焼成カオリン、デラミカオリン)、タルク、酸化亜鉛、ステアリン酸亜鉛、二酸化チタン、ケイ酸ナトリウムと鉱酸から製造されるシリカ(ホワイトカーボン、シリカ/炭酸カルシウム複合体、シリカ/二酸化チタン複合体)、白土、ベントナイト、珪藻土、硫酸カルシウム、脱墨工程から得られる灰分を再生して利用する再生填料が好ましく使用される。
以下に具体例を挙げて本発明を説明するが、本発明はかかる以下の例に限定されるものではない。図1の製造フローに従って古紙パルプを製造した。
(1)離解工程
タブ式低濃度パルパーに石膏ボード石膏分を含む古紙10500kg(風乾)と段ボール古紙を含む古紙パルプ原料、イオン封鎖剤を投入し、これに水を加え、離解温度20~60℃、処理濃度5.0質量%で表1に示す条件にて離解処理を行った。
(2)粗選工程
上記(1)のタブ式低濃度パルパーで処理されたスラリに水を加え、高濃度分離装置(処理濃度:4.0質量%)で処理した。
(3)精選工程
上記(2)の粗選工程を経た残分をホールスクリーン(口径:2.0mm、丸穴形状)に通過させ通過されなかった未溶解原料及び軽量異物を除去し、通過物についてスリットスクリーン(スリット幅:0.25mm)を通過させ、通過されなかった微小石膏分を除去し、通過物(精選物)を脱水工程に導いた。
(4)脱水工程
上記(3)で得られた精選物を、表2に示す脱水濃度(乾燥固形分濃度)となるまで脱水濃縮設備で脱水濃縮し、古紙パルプを得た。
得られた古紙パルプについて、以下の方法にて各特性(物性)を測定した。
<品質評価>
(a)灰分
JIS P 8251「紙、板紙及びパルプ-灰分試験方法-525℃燃焼法」に記載の方法に準拠して測定した。
(b)パルプスラリのpH
サンプルスラリを濾紙(C5、ADVANTEC社製)にて約250mL濾過し、濾液のpHをガラス電極式水素イオン濃度計(形式:D-13、(株)堀場製作所製)にて測定した。
(c)カナディアンスタンダードフリーネス(CSF)
JIS P 8121-2「パルプのろ水度試験方法」に記載の方法に準拠し、カナディアンスタンダードフリーネステスター(型番:カナダ標準濾水度計、(株)東洋精機製作所製)を用いて測定した。
(d)比破裂強度
JIS P 8222「試験用手抄き紙の調整方法」に記載の方法に準拠して作成したパルプシートを、JIS P 8223「試験用手抄き紙-物理的特性の試験方法」に規定されている、JIS P 8112「紙及び板紙のミューレン低圧破裂試験機による破裂強さ試験方法」に記載の方法に準拠して測定した。
(e)比リング強度
JIS P 8222「試験用手抄き紙の調整方法」に記載の方法に準拠して作成したパルプシートを、JIS P 8223「試験用手抄き紙-物理的特性の試験方法」に規定されている、JIS P 8126「紙及び板紙-圧縮強さ試験方法-リングクラッシュ法」に記載の方法に準拠して測定した。
(f)6カット残渣
平成18年10月17日付け印刷用粘着紙メーカー会により発布された「リサイクル対応型シール(全離解可能粘着紙)の暫定業界基準と運用について」に記載される1.1)評価試験方法に準拠して測定した。
測定条件及び測定結果を表1及び表2に示す。
Figure 0007251992000001
Figure 0007251992000002
結果から、本発明の実施形態に係る製造方法にて得られた古紙パルプは、灰分が比較的少なく、かつ良好な品質を具備したものであることがわかる。
(その他)
本実施形態の各工程で使用される水は、特に限定されないが、一例に水道水、イオン交換水、純水、蒸留水、下水二次処理水、下水高度処理水、工業用水、アルカリイオン水、バナジウム水、水素水、還元水、温泉水、海洋深層水、炭酸水、蒸留水、シリカ水、酸素水、物質が混入された水、薬品や試薬などが溶解された水、その他の水を使用できる。これらの水には、通常カルシウムイオンに代表されるカルシウム分が含有される。カルシウム分とは、一例としてCa2が溶解されている溶液、析出されたカルシウム塩をいうが、これらに限定されない。
本発明で製造された古紙パルプは、特に限定されないが、石膏ボード用紙としてリサイクルでき、また、板紙やクラフト紙等の産業用紙として適用可能である。 例えば板紙に代表される産業用紙の具体例としては、高級白板紙・特殊白板紙・白ボール等を含む白板紙、ライナー、中芯原紙、紙管原紙、建材用原紙、紙器用原紙等を挙げることができる。
10 剥離紙
11 古紙パルプ原料
13 分離装置
13a 投入部
13f 排出部

Claims (6)

  1. 石膏分を含む古紙を0.1~10質量%含有する古紙パルプ原料を混合させて、スラリを調整する離解工程と、
    前記スラリに含まれる重異物を比重差で分離して第1残分を得る粗選工程と、
    前記第1残分に含まれる大異物を大きさ基準で分離して第2残分を得る精選工程を備え、
    前記離解工程では、イオン封鎖剤を添加させて50℃未満の温度で混合し、
    前記第2残分を古紙パルプとする、
    ことを特徴とする古紙パルプの製造方法。
  2. 前記古紙パルプ原料の乾燥固形分濃度が3~18質量%である、
    請求項1に記載の古紙パルプの製造方法。
  3. 前記粗選工程では50℃以上の温度で分離する、
    請求項1に記載の古紙パルプの製造方法。
  4. 前記粗選工程が、下部に向かうに従い細まる円錐形状の分離装置を備えた工程であり、
    前記分離装置は、
    投入された前記スラリを旋回流させつつ比重差で分離し、下部に備わる排出部から前記重異物を排出し、上部に備わる回収部から前記第1残分を得るものであり、
    前記分離装置の上部に、前記スラリの投入部が備わり、
    前記投入部の投入方向が旋回流の流れ方向に沿って配されるものである、
    請求項1に記載の古紙パルプの製造方法。
  5. 前記精選工程では50℃以上の温度で分離する、
    請求項1に記載の古紙パルプの製造方法。
  6. 前記石膏分を含む古紙は、この石膏分を含む古紙から発生する塵分を除去したものである、
    請求項1に記載の古紙パルプの製造方法。
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