先に述べたように、低温低湿環境において装置の高速化を進めると、トナー担持体上のトナーを十分に帯電させる時間が取れなくなり、トナーの均一帯電が難しくなってくる。そのため、トナー粒子内及びトナー粒子間の帯電が不均一になることで耐静電オフセット性が悪くなる傾向があった。また、装置の高速化により、トナーにかかる摺擦も強くなるため、トナーはより一層の耐久性を有する必要がある。
そこで、本発明者らは、長期使用においても、静電オフセットを抑制できる方法を検討した。
まず、トナーの帯電性を改良する方法として、磁性体の存在状態に注目した。
上述した通り、磁性体をただ均一に存在させるだけだと帯電のリークが低く、帯電が不均一になりやすい。また、磁性体を凝集させることでリークは強まるが、凝集し過ぎるとリークしすぎてしまい、帯電が不均一になりやすい。そこで、本発明者等は磁性体を軽凝集させることで適度なリークを促し、帯電を均一にすることを考えた。しかし、これらのトナーでは静電オフセット抑制が向上しなかった。
これは、磁性体を偏在させることでトナー表面に固い部分と柔らかい部分が生じてしまい、装置の高速化を伴ったトナーへの摺擦が強まる系においては、従来の外添剤だと柔らかい樹脂部では埋没しやすく、トナーの帯電が不均一になったためであると考えられる。
そこで、本発明者らは次に、有機ケイ素重合体粒子の有する弾性と帯電性により、帯電を均一にする方法を検討した。
ここで弾性とは、カートリッジ内での摺擦などの外力を受けたとしても塑性変形せずに復元する特性のことを意味する。有機ケイ素重合体粒子は一般的な無機材料に比べると、硬度が低く、弾性体であるため、これらの微粒子を外添剤として用いることで、装置の高速化に伴うトナーへの摺擦においてもトナー粒子への外添剤の埋没を抑制することができるのではないかと考えた。
また、有機ケイ素重合体粒子であれば他の弾性が高い樹脂微粒子と異なり、帯電性も同時に満たすことができると考えられる。
したがって、本発明者らは、トナー粒子間の磁性体の均一性を維持しながら、トナー内部の磁性体を偏在させることで、磁性体の有する微弱な帯電のリークを得られた。加えて、有機ケイ素重合体粒子の有する弾性と帯電性を活用することで帯電の不均一化を抑制させ、静電オフセットを抑制できることを見出した。
以上の観点から、トナー母体に含まれる磁性体を粒子間での偏りは抑制させつつも、粒子内では軽偏在する制御に加えて有機ケイ素重合体粒子を用いることで、低温低湿環境における静電オフセットを抑制できることを見出し、本発明に至った。
具体的には、本発明は、結着樹脂、磁性体を含有するトナー粒子と有機ケイ素重合体粒子を有する磁性トナーであって、
該有機ケイ素重合体粒子の個数平均径が30nm以上300nm以下であり、
該トナー粒子表面の有機ケイ素重合体粒子による被覆率が5%以上60%以下であり、
該トナーの個数平均径をDn(μm)としたとき、該トナーのDn-0.500以上Dn+0.500以下の粒径範囲における平均輝度が30.0以上60.0以下であり、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いた該トナーの断面観察において、一辺が0.8μmの正方形のグリッドでトナーの断面画像を区切った際の各グリッド間の磁性体の占有面積率の変動係数CV3が40.0%以上80.0%以下であることを特徴とするものである。
本発明に用いられる有機ケイ素重合体粒子の一次粒子の個数平均粒径が30nm以上300nm以下であることが重要である。有機ケイ素重合体粒子の個数平均粒径が30nm以上である場合、有機ケイ素重合体粒子の弾性の効果が発揮されやすくなり、耐久性が良化しやすくなり、長期に渡って静電オフセットを抑制できる。有機ケイ素重合体粒子の個数平均粒径が300nm以下である場合、有機ケイ素重合体粒子の帯電の均一性が良化しやすくなり、トナーの帯電が均一になりやすくなり、静電オフセットを抑制できる。
有機ケイ素重合体粒子の個数平均粒径が50nm以上200nm以下であると、高い外力が加わったとしても長期に渡って静電オフセットを抑制する効果をより得やすくなる。特に好ましくは、有機ケイ素重合体粒子の個数平均粒径が50nm以上150nm以下である。
本発明に用いられる有機ケイ素重合体粒子のトナー粒子表面に対する被覆率は5%以上60%以下であることが重要である。被覆率が上記範囲にあると、有機ケイ素重合体粒子とトナー表面の摩擦が発生しやすくなり、帯電均一性が向上し、静電オフセットを抑制できる。有機ケイ素重合体粒子のトナー表面に対する被覆率が5%以上である場合、有機ケイ素重合体粒子とトナー表面との摩擦が発生しやすくなり、帯電の均一性が向上するため静電オフセットを抑制しやすくなる。有機ケイ素重合体粒子のトナー表面に対する被覆率が60%以下である場合、有機ケイ素重合体粒子とトナー粒子表面との間に適度な摩擦が発生することで帯電均一性が向上し、静電オフセットを抑制できる。
有機ケイ素重合体粒子のトナー粒子表面に対する被覆率は、より好ましくは5%以上40%以下である。
次に、本発明に用いられる磁性トナーについて説明する。
磁性トナーの個数平均粒径をDn(μm)とした場合、磁性トナーのDn-0.500以上Dn+0.500以下の粒径範囲における平均輝度は、30.0以上60.0以下であることが必要である。また、平均輝度は、35.0以上50.0以下であることがより好ましい。
トナーの輝度は例えば、フロー式粒子像分析装置「FPIA-3000」(シスメックス社製)を用い、後述する解析条件で測定することにより得られる値であり、トナーの光の散乱の程度を表す指標である。一般的に、着色剤や光を吸収する磁性体のような物質を含有することでトナーの輝度は低下する。平均輝度を上記範囲に制御することにより、良好な帯電特性を維持でき、長期に渡って、静電オフセットが抑制される。
平均輝度が30.0以上である場合、磁性体の含有量が多すぎることなく、適度なリークが発生することで帯電性が安定し、帯電の不均一性が抑制されやすくなるため、静電オフセットを抑制できる。
平均輝度が60.0以下である場合、磁性体の含有量が少なすぎることなく、トナーの帯電性が均一になりやすくなり静電オフセットを抑制できる。
平均輝度を上記範囲に制御するためには、磁性体の含有量を調整するとよい。
なお、平均輝度の測定方法は後述する。
磁性トナーは、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いた磁性トナーの断面において、一辺が0.8μmの正方グリッドで磁性トナーの断面を区切った際の、各正方グリッドに存在する磁性体の占有面積率の変動係数CV3が、40.0%以上80.0%以下であることが好ましく、50.0%以上70.0%以下であることがより好ましい。
CV3が上記範囲にあるということは、磁性トナー粒子中で磁性体が局所に偏在していることを意味する。すなわち、磁性トナー粒子中で磁性体を偏在させることにより、トナー粒子表面と有機ケイ素重合体粒子による摩擦で生じた帯電をほどよくリークし、帯電を均一にさせることが可能となる。その結果、静電オフセットを抑制できる。
CV3が40.0%以上の場合、磁性トナーの断面を区切った各グリッド間において、磁性体の占有面積率の差がいずれにおいても大きくなる、すなわち、磁性体が偏在しているため、適度なリーク現象が発生しやすくなり、静電オフセットを抑制できる。
一方、CV3が80.0%以下の場合、トナー内部で磁性体が過度に局在することなく、適度にリークしやすくなる。その結果、帯電性を悪くすることがなくなるため、帯電の不均一化を生じにくくなり、静電オフセットを抑制できる。
CV3を上記範囲に調整する方法としては、磁性体の表面の親疎水性を制御すること、トナー粒子の製造時に磁性体の凝集度合いを制御することなどが挙げられる。例えば、乳化凝集法を用いる場合、予め磁性体を凝集させてトナー粒子中に導入する方法や、合一工程において、キレート剤の添加、及び/又はpH調整を行うことで磁性体の凝集度合いを調整する方法などが挙げられる。
磁性トナーは、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いた磁性トナーの断面において、一辺が0.8μmの正方グリッドで磁性トナーの断面を区切った際の、磁性体の占有面積率の平均値は、10.0%以上40.0%以下であることが好ましく、15.0%以上30.0%以下であることがより好ましい。
占有面積率の平均値が上記範囲である場合、トナー粒子中の磁性体の分散状態が適正な状態となり、適度な凝集状態により帯電の均一性を維持することができるため、耐静電オフセット性に優れる。
なお、該磁性体の占有面積率の平均値を上記範囲に制御するための手法としては、磁性体の表面の親疎水性を制御すること、トナー粒子の製造時に磁性体の凝集度合いを制御することなどが挙げられる。
以下、本発明の磁性トナーに関して、好ましい形態について説明する。
本発明に用いられる有機ケイ素重合体粒子について説明する。
有機ケイ素重合体粒子の組成は特に限定されるわけではないが、ケイ素原子と酸素原子が交互に結合した構造を有し、該有機ケイ素重合体粒子の一部が、下記式(6)
RaSiO3/2 ・・・(6)
で表されるT3単位構造を有していることが好ましい。なお、式中の該Raは炭化水素基であることが好ましく、炭素数1以上6以下(好ましくは1以上3以下、より好ましくは1又は2、さらに好ましくは1)のアルキル基またはフェニル基であることがより好ましい。
トナーを用いた29Si-NMR測定において、全ケイ素元素に由来するピークの合計面積に対する、T3単位構造を有するケイ素に由来するピークの面積の割合が、0.50以上1.00以下であることが好ましい。これにより、有機ケイ素重合体粒子に適切な弾性を持たせることができるため、本発明の効果が得られる。
T3単位構造を有するケイ素に由来するピークの面積の割合は、より好ましくは0.70以上1.00以下であり、さらに好ましくは0.80以上1.00以下である。また、T3単位構造を有するケイ素に由来するピークの面積の割合は、有機ケイ素重合体粒子の重合に使用する有機ケイ素化合物、特に三官能性シランの種類および割合の少なくとも一方を変更することにより制御することができる。
有機ケイ素重合体粒子の製造方法は特に限定されず、公知の方法で製造することができる。例えば、水にシラン化合物を滴下し、触媒により加水分解、縮合反応させた後、得られた懸濁液を濾過、乾燥することで得ることができる。触媒の種類、配合比、反応開始温度、滴下時間などを適宜変更することにより、有機ケイ素重合体粒子の一次粒子の個数平均粒径をコントロールすることができる。
触媒は、酸性触媒としては塩酸、フッ化水素酸、硫酸、硝酸などが挙げられ、塩基性触媒としてはアンモニア水、水酸ナトリウム、水酸化カリウムなどが挙げられるが、これらに限定はされない。
本発明に用いられる有機ケイ素重合体粒子は、下記式(2)で表される構造を有する有機ケイ素化合物を重合させて得られることが好ましい。
(式(2)中、R
2、R
3、R
4及びR
5は、それぞれ独立して、炭素数1以上6以下(より好ましくは1以上4以下)のアルキル基、フェニル基、又は反応基(例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アセトキシ基、又は、アルコキシ基)を表す。)
本発明に用いられる有機ケイ素重合体粒子を得るには、
式(2)の一分子中に4つの反応基を有する有機ケイ素化合物(4官能性シラン)、
式(2)中のR2がアルキル基、又はフェニル基であり、3つの反応基(R3、R4、R5)を有する有機ケイ素化合物(3官能性シラン;RSi(O1/2)3)、
式(2)中のR2、R3がアルキル基、又はフェニル基であり、2つの反応基(R4、R5)を有する有機ケイ素化合物(2官能性シラン;R2Si(O1/2)2)、
式(2)中のR2、R3、R4がアルキル基、又はフェニル基であり、1つの反応基(R5)を有する有機ケイ素化合物(1官能性シラン;R3SiO1/2)
を用いることができるが、T3単位構造に由来するピークの面積の割合を0.50以上1.00以下とするためには、有機ケイ素化合物として3官能性シラン(3官能性のシロキサン構造単位)を50モル%以上使用することが好ましい。
これらの反応基が加水分解、付加重合及び縮合重合させて架橋構造を形成し、有機ケイ素重合体粒子を得ることができる。R3、R4及びR5の加水分解、付加重合及び縮合重合は、反応温度、反応時間、反応溶媒及びpHによって制御することができる。
4官能性シランとしては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソシアネートシランなどが挙げられる。
3官能性シランとしては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルジエトキシメトキシシラン、メチルエトキシジメトキシシラン、メチルトリクロロシラン、メチルメトキシジクロロシラン、メチルエトキシジクロロシラン、メチルジメトキシクロロシラン、メチルメトキシエトキシクロロシラン、メチルジエトキシクロロシラン、メチルトリアセトキシシラン、メチルジアセトキシメトキシシラン、メチルジアセトキシエトキシシラン、メチルアセトキシジメトキシシラン、メチルアセトキシメトキシエトキシシラン、メチルアセトキシジエトキシシラン、メチルトリヒドロキシシラン、メチルメトキシジヒドロキシシラン、メチルエトキシジヒドロキシシラン、メチルジメトキシヒドロキシシラン、メチルエトキシメトキシヒドロキシシラン、メチルジエトキシヒドロキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリクロロシラン、エチルトリアセトキシシラン、エチルトリヒドロキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、プロピルトリクロロシラン、プロピルトリアセトキシシラン、プロピルトリヒドロキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、ブチルトリクロロシラン、ブチルトリアセトキシシラン、ブチルトリヒドロキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、ヘキシルトリクロロシラン、ヘキシルトリアセトキシシラン、ヘキシルトリヒドロキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリクロロシラン、フェニルトリアセトキシシラン、フェニルトリヒドロキシシラン、ペンチルトリメトキシシランなどが挙げられる。
2官能性シランとしては、
ジ-tert-ブチルジクロロシラン、ジ-tert-ブチルジメトキシシラン、ジ-tert-ブチルジエトキシシラン、ジブチルジクロロシラン、ジブチルジメトキシシラン、ジブチルジエトキシシラン、ジクロロデシルメチルシラン、ジメトキシデシルメチルシラン、ジエトキシデシルメチルシラン、ジクロロジメチルシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジエトキシジメチルシラン、ジエチルジメトキシシランなどが挙げられる。
1官能性シランとしては、
t-ブチルジメチルクロロシラン、t-ブチルジメチルメトキシシラン、t-ブチルジメチルエトキシシラン、t-ブチルジフェニルクロロシラン、t-ブチルジフェニルメトキシシラン、t-ブチルジフェニルエトキシシラン、クロロジメチルフェニルシラン、メトキシジメチルフェニルシラン、エトキシジメチルフェニルシラン、クロロトリメチルシラン、トリメチルメトキシシラン、エトキシトリメチルシラン、トリエチルメトキシシラン、トリエチルエトキシシラン、トリプロピルメトキシシラン、トリブチルメトキシシラン、トリペンチルメトキシシラン、トリフェニルクロロシラン、トリフェニルメトキシシラン、トリフェニルエトキシシランなどが挙げられる。
有機ケイ素重合体粒子においては、ポリマーの基本構造単位について、基本構造単位の全存在量に対する4官能性シランから1官能性シランに由来するユニットの割合をそれぞれW、X、Y、Z(W+X+Y+Z=1.00)としたときに、帯電性の立ち上がりと帯電の安定性を満足させるためには、Xが0.50以上であることが好ましく、より好ましくは0.70以上であることが好ましく、さらに好ましくは0.90以上1.00以下である。上記範囲に制御することで、連続での印字においても帯電性が安定しやすくなり、規制不良が抑制できる。
また、3官能性の構造(T単位構造)をとるSi元素に関して、該Si元素に結合する酸素原子にSi元素が結合している数(ケイ素に結合するシロキシ基の数)について解析を行った。Si元素が結合する数が1~3個である構造は、それぞれT1単位構造、T2単位構造、T3単位構造と呼ばれ、それぞれの割合をT1、T2、T3としたとき、T2/T3が0.20以上0.60以下であることが好ましく、0.25以上0.50以下であることがより好ましいことがわかった。有機ケイ素重合体粒子のユニット構造の存在比が上記範囲にあることにより、有機ケイ素重合体粒子の硬さの比から弾性が発現しやすくなる。
上述した両方の特性により、強い摺擦を受けたときのトナーの割れや外添剤の埋没を抑制することができるとともに、優れた帯電特性も発揮するため、長期に渡って規制不良を抑制できる。
W、X、Y、Zの割合、T1、T2、T3の割合は、該トナーを用いた29Si-NMR測定において、全ケイ素元素に由来するピークの合計面積に対する、ピークの面積から求めることができる。
T2/T3は、有機ケイ素重合体粒子の製造条件を変更することにより制御することができる。
有機ケイ素重合体粒子は、3官能性の構造のみから構成され、(Xが1.00であり)、かつ反応基ではない官能基が炭素数1以上6以下(好ましくは1以上3以下、より好ましくは1又は2、さらに好ましくは1)のアルキル基であることがより好ましい。この場合は、該有機ケイ素重合体粒子はポリアルキルシルセスキオキサン[(R-SiO3/2)n]と呼ばれている。有機ケイ素重合体粒子がポリアルキルシルセスキオキサン微粒子であると、帯電の立ち上がりがさらに良化するため、高温高湿環境におけるドット再現性が良好になりやすい。
本発明に用いられるトナーは、トナーの性能を向上させるために、さらに他の外添剤を含んでいても良い。この場合、トナー粒子100質量部に対して、有機ケイ素重合体粒子を含む無機および有機の微粒子が、総量で0.5質量部以上5質量部以下含有されていると好ましい。
本発明に用いられる磁性トナーについて説明する。
磁性トナーの、Dn-0.500以上Dn+0.500以下の粒径範囲における輝度分散値の変動係数をCV1(%)とし、
磁性トナーの、Dn-1.500以上Dn-0.500以下の粒径範囲における輝度分散値の変動係数をCV2(%)としたときに、
CV1及びCV2が、下記式(5)の関係を満たすことが好ましい。
CV2/CV1≦1.00 (5)
トナーの輝度分散値は、輝度の測定においてトナー粒子の粒子1つの中で輝度にどれだけバラつきがあるかを見る指標である。そのため、輝度分散値の変動係数はトナー粒子の粒子間でどれだけ輝度にバラつきがあるかを見る指標となる。
図1は、トナーの粒径と輝度分散値の変動係数との関係を表した一例を示すグラフである。図1では、Dnが7.5μmであり、CV1は7.0μm以上8.0μm以下の粒径範囲での、CV2は6.0μm以上7.0μm以下の粒径範囲での、輝度分散値の変動係数になる。
CV2/CV1は、0.70以上0.95以下であることがより好ましい。
CV2/CV1が1.00以下である場合、磁性トナー粒子中の磁性体の含有量が、トナー粒子の粒径に依存しにくくなる。その結果、トナー粒子間の帯電均一性が良化し、長期に渡って、規制不良が抑制される。
CV2/CV1を上記範囲に制御する手段としては、磁性体の粒径を調整することが挙げられる。また、磁性体が小径粒子に取り込まれやすい、粉砕法や乳化凝集法などを用いてトナー粒子を製造するとよい。なお、輝度分散値及びその変動係数の測定方法は後述する。
CV1は1.00%以上4.00%以下であることが好ましく、1.00%以上3.50%以下であることがより好ましい。なお、CV1は、1.00%が下限値となる。
CV1が上記範囲である場合、トナー粒子間での磁性体の存在状態に差が少なく、連続で画出しを行った後の帯電性が安定する。
CV1は、トナー粒子の製造時に磁性体の分散状態を制御することによって調整することができる。
結着樹脂は、特に限定されるものではなく、トナー用の公知の樹脂を用いることができる。結着樹脂の具体例としては、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、及びビニル樹脂が挙げられる。
ビニル樹脂の製造に使用可能なモノマーとしては、以下のモノマーが挙げられる。
脂肪族ビニル炭化水素:アルケン類、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン、イソブチレン、ペンテン、ヘプテン、ジイソブチレン、オクテン、ドデセン、オクタデセン、前記以外のα-オレフィン;
アルカジエン類、例えば、ブタジエン、イソプレン、1,4-ペンタジエン、1,5-ヘキサジエン及び1,7-オクタジエン。
脂環式ビニル炭化水素:モノ-又はジ-シクロアルケン及びアルカジエン類、例えば、シクロヘキセン、シクロペンタジエン、ビニルシクロヘキセン、エチリデンビシクロヘプテン;
テルペン類、例えば、ピネン、リモネン、インデン。
芳香族ビニル炭化水素:スチレン及びそのハイドロカルビル(アルキル、シクロアルキル、アラルキル及び/又はアルケニル)置換体、例えば、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、2,4-ジメチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、ブチルスチレン、フェニルスチレン、シクロヘキシルスチレン、ベンジルスチレン、クロチルベンゼン、ジビニルベンゼン、ジビニルトルエン、ジビニルキシレン、トリビニルベンゼン;及びビニルナフタレン。
カルボキシ基含有ビニル系モノマー及びその金属塩:炭素数3以上30以下の不飽和モノカルボン酸、不飽和ジカルボン酸並びにその無水物及びそのモノアルキル(炭素数1以上27以下)エステル。例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、マレイン酸モノアルキルエステル、フマル酸、フマル酸モノアルキルエステル、クロトン酸、イタコン酸、イタコン酸モノアルキルエステル、イタコン酸グリコールモノエーテル、シトラコン酸、シトラコン酸モノアルキルエステル、桂皮酸のカルボキシ基含有ビニル系モノマー。
ビニルエステル、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ジアリルフタレート、ジアリルアジペート、イソプロペニルアセテート、ビニルメタクリレート、メチル4-ビニルベンゾエート、シクロヘキシルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、フェニルアクリレート、フェニルメタクリレート、ビニルメトキシアセテート、ビニルベンゾエート、エチルα-エトキシアクリレート、炭素数1以上22以下のアルキル基(直鎖若しくは分岐)を有するアルキルアクリレート及びアルキルメタクリレート(メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、プロピルアクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、ラウリルアクリレート、ラウリルメタクリレート、ミリスチルアクリレート、ミリスチルメタクリレート、セチルアクリレート、セチルメタクリレート、ステアリルアクリレート、ステアリルメタクリレート、エイコシルアクリレート、エイコシルメタクリレート、ベヘニルアクリレート、ベヘニルメタクリレートなど)、ジアルキルフマレート(フマル酸ジアルキルエステル、2個のアルキル基は、炭素数2以上8以下の、直鎖、分枝鎖又は脂環式の基である)、ジアルキルマレエート(マレイン酸ジアルキルエステル、2個のアルキル基は、炭素数2以上8以下の、直鎖、分枝鎖又は脂環式の基である)、ポリアルキレングリコール鎖を有するビニル系モノマー(ポリエチレングリコール(分子量300)モノアクリレート、ポリエチレングリコール(分子量300)モノメタクリレート、ポリプロピレングリコール(分子量500)モノアクリレート、ポリプロピレングリコール(分子量500)モノメタクリレート、メチルアルコールエチレンオキサイド(エチレンオキサイドを以下EOと略記する)10モル付加物アクリレート、メチルアルコールエチレンオキサイド10モル付加物メタクリレート、ラウリルアルコールEO30モル付加物アクリレート、ラウリルアルコールEO30モル付加物メタクリレート)、ポリアクリレート類及びポリメタクリレート類(多価アルコール類のポリアクリレート及びポリメタクリレート:エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート)。
カルボキシ基含有ビニルエステル:例えば、炭素数3以上20以下のアルキル鎖を有するカルボキシアルキルアクリレート、炭素数3以上20以下のアルキル鎖を有するカルボキシアルキルメタクリレート。
これらの中でも、スチレン、ブチルアクリレート、β-カルボキシエチルアクリレートなどが好ましい。
ポリエステル樹脂の製造に使用可能なモノマーとしては、従来公知の2価又は3価以上のカルボン酸と、2価又は3価以上のアルコールが挙げられる。これらモノマーの具体例としては、以下のものが挙げられる。
2価のカルボン酸としては、蓚酸、マロン酸、琥珀酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,9-ノナンジカルボン酸、1,10-デカンジカルボン酸、1,11-ウンデカンジカルボン酸、1,12-ドデカンジカルボン酸、1,13-トリデカンジカルボン酸、1,14-テトラデカンジカルボン酸、1,16-ヘキサデカンジカルボン酸、1,18-オクタデカンジカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ドデセニルコハク酸などの二塩基酸、及びこれらの無水物又はこれらの低級アルキルエステル、並びに、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸及びシトラコン酸などの脂肪族不飽和ジカルボン酸などが挙げられる。これらジカルボン酸の低級アルキルエステルや酸無水物も使用できる。
また、3価以上のカルボン酸としては、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸、1,2,5-ベンゼントリカルボン酸、及びこれらの無水物又はこれらの低級アルキルエステルなどが挙げられる。
これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
2価のアルコールとしては、アルキレングリコール(1,2-エタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,13-トリデカンジオール、1,14-テトラデカンジオール、1,18-オクタデカンジオール及び1,20-イコサンジオール。);アルキレンエーテルグリコール(ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコール);脂環式ジオール(1,4-シクロヘキサンジメタノール);ビスフェノール類(ビスフェノールA);脂環式ジオールのアルキレンオキサイド(エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド)付加物、ビスフェノール類(ビスフェノールA)のアルキレンオキサイド(エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド)が挙げられる。
アルキレングリコール及びアルキレンエーテルグリコールのアルキル部分は、直鎖であっても分岐であってもよい。本発明においては、分岐構造のアルキレングリコールも好ましく用いることができる。
また、二重結合を持つ脂肪族ジオールを用いることもできる。二重結合を持つ脂肪族ジオールとしては、以下の化合物を挙げることができる。
2-ブテン-1,4-ジオール、3-ヘキセン-1,6-ジオール及び4-オクテン-1,8-ジオール。
また、3価以上のアルコールとしては、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン及びペンタエリスリトールなどが挙げられる。
これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
なお、酸価や水酸基価の調整を目的として、必要に応じて酢酸及び安息香酸などの1価の酸や、シクロヘキサノール及びベンジルアルコールなどの1価のアルコールも使用することができる。
ポリエステル樹脂の合成方法については特に限定されないが、例えばエステル交換法や直接重縮合法を、単独で又は組み合わせて用いることができる。
次に、ポリウレタン樹脂について述べる。
ポリウレタン樹脂は、ジオールとジイソシアネート基を含有する化合物との反応物である。種々のジオール及びジイソシアネート基を含有する化合物を組み合わせることにより、各種機能性を有するポリウレタン樹脂を得ることができる。
ジイソシアネート基を含有する化合物としては、炭素数(NCO基中の炭素を除く、以下同様)が6以上20以下の芳香族ジイソシアネート、炭素数2以上18以下の脂肪族ジイソシアネート、炭素数4以上15以下の脂環式ジイソシアネート、及びこれらジイソシアネートの変性物(ウレタン基、カルボジイミド基、アロファネート基、ウレア基、ビューレット基、ウレトジオン基、ウレトイミン基、イソシアヌレート基又はオキサゾリドン基含有変性物。以下、「変性ジイソシアネート」ともいう。)、並びに、これらの2種以上の混合物などが挙げられる。
芳香族ジイソシアネートとしては、m-及び/又はp-キシリレンジイソシアネート(XDI)及びα,α,α’,α’-テトラメチルキシリレンジイソシアネートなどが挙げられる。
また、脂肪族ジイソシアネートとしては、エチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)及びドデカメチレンジイソシアネートなどが挙げられる。
また、脂環式ジイソシアネートとしては、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート及びメチルシクロヘキシレンジイソシアネートなどが挙げられる。
これらの中でも、炭素数6以上15以下の芳香族ジイソシアネート、炭素数4以上12以下の脂肪族ジイソシアネート、及び炭素数4以上15以下の脂環式ジイソシアネートが好ましく、XDI、IPDI及びHDIがより好ましい。また、上記ジイソシアネートに加えて、3官能以上のイソシアネート化合物を用いることもできる。
ポリウレタン樹脂に用いることのできるジオールとしては、前述したポリエステルに用いることのできる2価のアルコールと同様のものを例示することができる。
結着樹脂は、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、及びビニル樹脂などの樹脂を1種単独で用いてもよく、2種以上を併用して用いてもよい。2種類以上を併用する際は、樹脂同士が化学的に結合した複合樹脂の形態でもよい。
ワックスとしては、公知のワックスを用いることができる。
具体的には、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラクタムなどの石油系ワックス及びその誘導体、モンタンワックス及びその誘導体、フィッシャートロプシュ法による炭化水素ワックス及びその誘導体、ポリエチレン、ポリプロピレンに代表されるポリオレフィンワックス及びその誘導体、カルナバワックス、キャンデリラワックスなどの天然ワックス及びその誘導体、エステルワックスなどが挙げられる。
ここで、誘導体とは酸化物や、ビニル系モノマーとのブロック共重合物、グラフト変性物を含む。また、エステルワックスとしては、1分子中にエステル結合を1つ含有する1官能エステルワックス、エステル結合を2つ含有する2官能エステルワックスをはじめ、4官能や6官能などの多官能エステルワックスを用いることができる。
ワックスの含有量は、結着樹脂100.0質量部に対して、1.0質量部以上30.0質量部以下であることが好ましく、3.0質量部以上20.0質量部以下であることがより好ましい。
また、磁性体としては、磁性体の個数平均粒径に対する有機ケイ素重合体粒子の個数平均粒径の比が0.20以上1.00以下であると好ましい。上記範囲に制御することで連続印字における帯電性と耐久性が制御しやすくなり、規制不良が抑制される。
磁性体としては、マグネタイト、マグヘマイト、フェライトなどの酸化鉄;鉄、コバルト、ニッケルのような金属、又はこれらの金属とアルミニウム、銅、マグネシウム、亜鉛、ベリリウム、カルシウム、セレン、チタン、タングステン、バナジウムのような金属の合金及びそれらの混合物などが挙げられる。
磁性体の一次粒子の個数平均粒径は、0.50μm以下であることが好ましく、0.05μm以上0.30μm以下であることがより好ましい。
また、磁性体の個数平均粒径に対する有機ケイ素重合体粒子の個数平均粒径の比が、0.20以上1.00以下であることが好ましい。
トナー粒子中に存在する磁性体の一次粒子の個数平均粒径は、透過型電子顕微鏡を用いて測定できる。具体的には、エポキシ樹脂中へ観察すべきトナー粒子を十分に分散させた後、温度40℃の雰囲気中で2日間硬化させて硬化物を得る。得られた硬化物をミクロトームにより薄片状のサンプルとして、透過型電子顕微鏡(TEM)において1万~4万倍の拡大倍率の画像を撮影し、画像中の100個の磁性体の一次粒子の投影面積を測定する。そして、投影面積に等しい円の相当径を磁性体の一次粒子の粒子径とし、100個の平均値を磁性体の一次粒子の個数平均粒径とする。
磁性体の795.8kA/m印加での磁気特性として、抗磁力(Hc)は、1.6kA/m以上12.0kA/m以下であることが好ましい。また、磁化の強さ(σs)は、50Am2/kg以上200Am2/kg以下であることが好ましく、より好ましくは50Am2/kg以上100Am2/kg以下である。一方、残留磁化(σr)は、2Am2/kg以上20Am2/kg以下であることが好ましい。
磁性トナー中の磁性体の含有量は、トナー粒子100質量部に対して35質量部以上50質量部以下であることが好ましく、40質量部以上50質量部以下であることがより好ましい。
なお、磁性トナー中の磁性体の含有量は、パーキンエルマー社製熱分析装置TGA Q5000IRを用いて測定することができる。測定方法は、窒素雰囲気下において昇温速度25℃/分で常温から900℃まで磁性トナーを加熱し、100~750℃の減量質量を磁性トナーから磁性体を除いた成分の質量とし、残存質量を磁性体量とする。
磁性体は、例えば、下記の方法で製造することができる。
第一鉄塩水溶液に、鉄成分に対して当量又は当量以上の水酸化ナトリウムなどのアルカリを加え、水酸化第一鉄を含む水溶液を調製する。調製した水溶液のpHを7以上に維持しながら空気を吹き込み、水溶液を70℃以上に加温しながら水酸化第一鉄の酸化反応を行い、磁性酸化鉄の芯となる種晶をまず生成する。
次に、種晶を含むスラリー液に前に加えたアルカリの添加量を基準として約1当量の硫酸第一鉄を含む水溶液を加える。混合液のpHを5から10に維持し、空気を吹き込みながら水酸化第一鉄の反応を進め、種晶を芯にして磁性酸化鉄を成長させる。この時、任意のpH及び反応温度、撹拌条件を選択することにより、磁性体の形状及び磁気特性をコントロールすることが可能である。酸化反応が進むにつれて混合液のpHは酸性側に移行していくが、液のpHは5未満にしない方がよい。このようにして得られた磁性体を定法によりろ過、洗浄、乾燥することにより磁性体を得ることができる。
また、磁性体は必要に応じて公知の表面処理を行ってもよい。
磁性トナー粒子は、荷電制御剤を含有してもよく、磁性トナーは、負帯電性トナーであることが好ましい。
負帯電用の荷電制御剤としては、有機金属錯化合物、キレート化合物が有効であり、モノアゾ金属錯化合物;アセチルアセトン金属錯化合物;芳香族ハイドロキシカルボン酸又は芳香族ダイカルボン酸の金属錯化合物などが例示される。市販品の具体例として、Spilon Black TRH、T-77、T-95(保土谷化学工業(株))、BONTRON(登録商標)S-34、S-44、S-54、E-84、E-88、E-89(オリエント化学工業(株))が挙げられる。
荷電制御剤は単独、又は二種以上組み合わせて用いることが可能である。
荷電制御剤の含有量は、帯電量の観点から、結着樹脂100質量部に対して、0.1質量部以上10.0質量部以下であることが好ましく、0.1質量部以上5.0質量部以下であるとより好ましい。
磁性トナーの平均円形度は、0.960以上1.000以下であることが好ましく、0.970以上0.990以下であることがより好ましい。平均円形度が上記範囲にある場合、カートッリッジ内で摺擦を受けても、有機ケイ素重合体粒子がトナー表面で偏在し難くなり、多数の画像出力を行う際、後半での帯電低下をより抑制できる。その結果、高温高湿環境でのドット再現性を良化することができる。平均円形度は、トナーの製造時に、一般的に用いられる方法で円形度を制御すればよく、例えば、乳化凝集法では合一工程の時間や界面活性剤の添加量を制御するとよい。
磁性トナーの製造方法は、特に限定されず、乾式製法(例えば、混練粉砕法など)、湿式製法(例えば、乳化凝集法、懸濁重合法、溶解懸濁法など)のいずれを用いてもよい。これらのうち、乳化凝集法を用いることが好ましい。
乳化凝集法を用いた場合、磁性トナーの輝度分散値の変動係数、磁性体の占有面積率の変動係数などの上記範囲への調整が容易である。乳化凝集法を用いたトナー粒子の製造方法について、具体例を挙げて説明する。
乳化凝集法は大きく分けて以下の4つの工程を含む。
(a)微粒子分散液を調製する工程、(b)凝集粒子を形成する凝集工程、(c)溶融、合一によりトナー粒子を形成する合一工程、(d)洗浄、乾燥工程。
(a)微粒子分散液を調製する工程
微粒子分散液は水系媒体中に微粒子が分散したものである。水系媒体としては、蒸留水、イオン交換水などの水、アルコール類が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
水系媒体中に微粒子を分散させるための助剤を用いてもよく、助剤として界面活性剤が挙げられる。界面活性剤としては、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤が挙げられる。
具体的には、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、リン酸エステルのようなアニオン界面活性剤;アルキルアミン塩、アミノアルコール脂肪酸誘導体、ポリアミン脂肪酸誘導体、イミダゾリンのようなアミン塩型、アルキルトリメチルアンモニム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、ピリジニウム塩、アルキルイソキノリニウム塩、塩化ベンゼトニウムのような四級アンモニウム塩型のカチオン界面活性剤;脂肪酸アミド誘導体、多価アルコール誘導体のようなノニオン界面活性剤;アラニン、ドデシルジ(アミノエチル)グリシン、ジ(オクチルアミノエチル)グリシンやN-アルキル-N,N-ジメチルアンモニウムベタインのような両性界面活性剤が挙げられる。
界面活性剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
微粒子分散液の調製方法は、分散質の種類により適宜選択することができる。例えば、回転せん断型ホモジナイザーや、メディアを有するボールミル、サンドミル、ダイノミルなどの一般的な分散機を用い、分散質を分散させる方法が挙げられる。また、有機溶剤に溶解する分散質の場合、転相乳化法を用いて水系媒体中に分散させてもよい。転相乳化法とは、分散すべき材料を、材料が可溶な有機溶剤中に溶解し、有機連続相(O相)を中和した後、水媒体(W相)を投入することによって、W/OからO/Wへの、樹脂の変換(いわゆる転相)が行われて不連続相化し、水媒体中に粒子状に分散する方法である。
転相乳化法で用いられる溶剤は樹脂が溶解する溶剤であれば特に制限されるものではないが、液滴を形成する目的から疎水性、又は両親媒性の有機溶剤を用いることが好ましい。
乳化重合のように水系媒体中で液滴を形成したのちに重合を行うことで微粒子分散液を調製することも可能である。乳化重合は、まず分散すべき材料の前駆体、水系媒体、重合開始剤を混合した後に撹拌又は剪断することで材料が水系媒体に分散した微粒子分散液を得る方法である。この際、乳化の助剤として有機溶剤、界面活性剤を用いてもよい。また、撹拌又は剪断する装置は一般的な装置を用いればよく、回転せん断型ホモジナイザーなどの一般的な分散機が挙げられる。
磁性体の分散は、一次粒径が目的の粒径のものを水系媒体に分散するとよい。分散には、例えば、回転せん断型ホモジナイザー、メディアを有するボールミル、サンドミル、ダイノミルなどの一般的な分散機を用いるとよい。磁性体は、水に比べ比重が重く、沈降速度が速いため、分散後は即座に凝集工程に進むことが好ましい。
微粒子分散液の分散質の個数平均粒子径は、凝集速度の制御、合一の簡便性の観点から、例えば、0.01μm以上1μm以下であることが好ましく、0.08μm以上0.8μm以下であることがより好ましく、0.1μm以上0.6μm以下であることがさらに好ましい。
微粒子分散液中の分散質は、凝集速度の制御の観点から、分散液全量100質量部に対して、5質量部以上50質量部以下であることが好ましく、10質量部以上40質量部以下であることがより好ましい。
(b)凝集工程
微粒子分散液を調製した後、1種類の微粒子分散液、又は2種類以上の微粒子分散液を混合し、微粒子を凝集させた凝集粒子が分散した凝集粒子分散液を調製する。
混合方法は特に制限されるものではなく、一般的な撹拌機を用いて混合することができる。
凝集は凝集粒子分散液の温度、pH、凝集剤などで制御させるものであり、どの方法を用いてもよい。凝集粒子を形成する温度に関しては、結着樹脂のガラス転移温度-30℃以上、ガラス転移温度以下であることが好ましい。
凝集剤としては無機金属塩、2価以上の金属錯体などが挙げられる。また、微粒子分散液に助剤として界面活性剤を用いた場合、逆極性の界面活性剤を用いることも有効である。特に、凝集剤として金属錯体を用いた場合には、界面活性剤の使用量が低減され、帯電特性が向上する。無機金属塩としては、例えば、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、塩化バリウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化亜鉛、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウムなどの金属塩、及び、ポリ塩化アルミニウム、ポリ水酸化アルミニウム、多硫化カルシウムなどの無機金属塩重合体などが挙げられる。
キレート剤としては、水溶性のキレート剤を用いてもよい。キレート剤の具体例としては、例えば、酒石酸、クエン酸、グルコン酸などのオキシカルボン酸、イミノジ酸(IDA)、ニトリロトリ酢酸(NTA)、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)などが挙げられる。キレート剤の添加量としては、例えば、樹脂粒子100質量部に対して、0.01質量部以上5.0質量部以下であることが好ましく、0.1質量部以上3.0質量部未満であることがより好ましい。
微粒子分散液の混合のタイミングは特に制限されるものではなく、一度凝集粒子分散液を形成した後又は形成途中にさらに微粒子分散液を添加し、凝集させても構わない。
微粒子分散液の添加タイミングを制御することで、トナー中の構造を制御することが可能となる。
また、凝集工程では、撹拌速度を制御しうる撹拌装置を用いるとよい。該撹拌装置に関しては特に限定するものではなく、乳化機、分散機として汎用のものであれば使用可能である。
例えば、ウルトラタラックス(IKA社製)、ポリトロン(キネマティカ社製)、TKオートホモミキサー(特殊機化工業(株)製)、エバラマイルダー(荏原製作所(株)製)、TKホモミックラインフロー(特殊機化工業(株)製)、クレアミックス(エムテクニック社製)、フィルミックス(特殊機化工業(株)製)のバッチ式、又は連続両用乳化機が挙げられる。
製造スケールに応じて撹拌速度を適宜調整するとよい。特に比重の重い磁性体は撹拌速度の影響を受けやすい。撹拌速度と撹拌時間を調整することで、目的の粒径に制御することが可能となる。撹拌速度が速い場合、凝集が促進されやすく、磁性体の凝集が進み、輝度の低いトナーが最終的に形成されやすい。また、撹拌速度が遅い場合、磁性体が沈降しやすく、凝集粒子分散液が不均一となり、粒子間での磁性体の導入量に差が出やすくなる。一方、界面活性剤を添加することでも凝集状態を制御することが可能である。
凝集粒子が目的の粒径に達した段階で凝集を停止させることが好ましい。凝集の停止には、希釈、温度の制御、pHの制御、キレート剤の添加、界面活性剤の添加などが挙げられ、キレート剤の添加が製造面から好ましい。また、キレート剤の添加とpHの調整により凝集の停止を行うことが、より好ましい方法である。キレート剤の添加とpHの調整を併用した場合、その後の合一工程後に磁性体がやや凝集したトナー粒子を形成させることができる。
(c)合一工程
凝集粒子を形成した後に加熱することで溶融、合一により、トナー粒子を形成する。
加熱温度は結着樹脂のガラス転移温度以上であることが好ましい。
また、凝集粒子を加熱、合一した後に微粒子分散液を混合し、さらに(b)凝集粒子を形成する工程、(c)溶融、合一工程を経ることでコア/シェル構造のトナー粒子を形成させてもよい。
(d)洗浄、乾燥工程
公知の洗浄方法、固液分離方法、乾燥方法を用いてよく、特に制限されるものではない。
ただし、洗浄工程は、帯電性の観点から、充分にイオン交換水による置換洗浄を施すことがよい。また、固液分離工程は、生産性の観点から吸引濾過、加圧濾過などを施すことがよい。また、乾燥工程は生産性の観点から、凍結乾燥、フラッシュジェット乾燥、流動乾燥、振動型流動乾燥などを施すことがよい。
磁性トナーの体積平均粒径(Dv)は、3.0μm以上8.0μm以下であることが好ましく、5.0μm以上7.0μm以下であることがより好ましい。トナーの体積平均粒径(Dv)を上記範囲とすることで、トナーのハンドリング性を良好にしつつ、ドットの再現性を十分に満足することができる。
また、磁性トナーの個数平均粒径(Dn)は、3.0μm以上7.0μm以下であることが好ましい。
さらに、磁性トナーの体積平均粒径(Dv)の個数平均粒径(Dn)に対する比(Dv/Dn)は、1.25未満であることが好ましい。
本発明に使用される、有機ケイ素重合体粒子を含む外添剤をトナー粒子に外添するための好ましい製造方法について説明する。
トナー粒子に外添剤を外添する混合機としては、特に制限されず、乾式湿式問わず公知の混合機を用いることができる。例えば、FMミキサ(日本コークス工業株式会社製)、スーパーミキサー(カワタ社製)、ノビルタ(ホソカワミクロン社製)、ハイブリダイザー(奈良機械社製)等が挙げられる。
また、外添後に粗粒子をふるい分けるために用いられる篩い装置としては、ウルトラソニック(晃栄産業社製);レゾナシーブ、ジャイロシフター(徳寿工作所社製);バイブラソニックシステム(ダルトン社製);ソニクリーン(新東工業社製);ターボスクリーナー(ターボ工業社製);ミクロシフター(槙野産業社製)等が挙げられる。
本発明のトナーの各種物性の測定方法について以下に説明する。
<有機ケイ素重合体粒子の同定>
トナー中に含まれる有機ケイ素重合体粒子の構成化合物の組成と比率の同定は、熱分解ガスクロマトグラフィー質量分析計(以下、熱分解GC/MSともいう。)及びNMRを用いる。なお、有機ケイ素重合体粒子を単独で入手できる場合は、有機ケイ素重合体粒子を単独で測定することもできる。
有機ケイ素重合体粒子の構成化合物の種類の分析には熱分解GC/MSが用いられる。トナーを550℃~700℃程度で熱分解させた際に生じる、有機ケイ素重合体粒子由来の分解物の成分のマススペクトルを分析することで、有機ケイ素重合体粒子の構成化合物の種類を同定する。具体的な測定条件は以下の通りである。
[熱分解GC/MSの測定条件]
熱分解装置:JPS-700(日本分析工業)
分解温度:590℃
GC/MS装置:Focus GC/ISQ(Thermo Fisher)
カラム:HP-5MS 長さ60m、内径0.25mm、膜厚0.25μm
注入口温度:200℃
フロー圧:100kPa
スプリット:50mL/min
MSイオン化:EI
イオン源温度:200℃ Mass Range 45-650
続いて同定した有機ケイ素重合体粒子の構成化合物の存在量比を、固体29Si-NMRで測定・算出する。
固体29Si-NMRでは、有機ケイ素重合体粒子の構成化合物のSiに結合する官能基数によって、異なるシフト領域にピークが検出される。
各ピークの官能基数は標準サンプルを用いて特定する。また得られたピーク面積から各構成化合物の存在量比を算出する。
固体29Si-NMRの測定条件は、下記の通りである。
装置:JNM-ECX5002 (JEOL RESONANCE)
温度:室温
測定法:DDMAS法 29Si 45°
試料管:ジルコニア3.2mmφ
試料:試験管に粉末状態で充填
試料回転数:10kHz
relaxation delay:180s
Scan:2000
トナー中に、有機ケイ素重合体粒子以外のケイ素含有物が含まれる場合、トナーをクロロホルムなどの溶媒に分散させ、その後に遠心分離等で比重の差で有機ケイ素重合体粒子以外のケイ素含有物を除去する。その方法は以下の通りである。
まずトナー1gをバイアル瓶に入れたクロロホルム31gに添加して分散し、有機ケイ素重合体粒子以外のケイ素含有物をトナーから分離させる。分散には超音波式ホモジナイザーを用いて30分間処理して分散液を作製する。処理条件は以下の通りである。
超音波処理装置:超音波式ホモジナイザーVP-050(タイテック株式会社製)
マイクロチップ:ステップ型マイクロチップ、先端径φ2mm
マイクロチップの先端位置:ガラスバイアルの中央部、且つバイアル底面から5mmの高さ
超音波条件:強度30%、30分。このとき、分散液が昇温しないようにバイアルを氷水で冷却しながら超音波を掛ける。
分散液をスイングローター用ガラスチューブ(50mL)に入れ替えて、遠心分離機(H-9R;株式会社コクサン社製)にて、3500rpm、30分間の条件で遠心分離を行う。遠心分離後のガラスチューブ内では、有機ケイ素重合体粒子以外のケイ素含有物と、トナーから有機ケイ素重合体粒子以外のケイ素含有物が除かれた残渣が分離している。トナーから有機ケイ素重合体粒子以外のケイ素含有物が除かれた残渣を抽出して、真空条件下(40℃/24時間)で乾燥し、トナーから有機ケイ素重合体粒子以外のケイ素含有物を除去したサンプルを得る。上記と同様の手順により、トナー中に含まれる有機ケイ素重合体粒子の構成化合物の組成と比率を同定することができる。
<トナー中に含まれる有機ケイ素重合体粒子の定量方法>
トナー中に含まれる有機ケイ素重合体粒子の含有量は、蛍光X線を用いる。
蛍光X線の測定は、JIS K 0119-1969に準ずるが、具体的には以下の通りである。測定装置としては、波長分散型蛍光X線分析装置「Axios」(PANalytical社製)と、測定条件設定及び測定データ解析をするための付属の専用ソフト「SuperQ ver.5.0L」(PANalytical社製)を用いる。尚、X線管球のアノードとしてはRhを用い、測定雰囲気は真空、測定径(コリメーターマスク径)は27mmとする。測定は、Omnianのメソッドを用いて元素FからUまでの範囲を測定し、軽元素を測定する場合にはプロポーショナルカウンタ(PC)、重元素を測定する場合にはシンチレーションカウンタ(SC)で検出する。また、X線発生装置の加速電圧、電流値は、出力2.4kWとなるように設定する。測定サンプルとしては、専用のプレス用アルミリングの中にトナー4gを入れて平らにならし、錠剤成型圧縮機「BRE-32」(前川試験機製作所社製)を用いて、20MPaで、60秒間加圧し、厚さ2mm、直径39mmに成型したペレットを用いる。
前述条件で成形したペレットにX線を照射して、発生する特性X線(蛍光X線)を分光素子にて分光する。次に、サンプルに含まれる各元素固有の波長に対応する角度に分光された蛍光X線の強度を、FP法(ファンダメンタルパラメータ法)により分析し、トナーに含まれる各元素の含有比率を分析結果として得て、トナー中のケイ素原子の含有量を求める。
蛍光X線で求めたトナー中のケイ素の含有量と、固体29SiNMR及び熱分解GC/MSなどを用いて構造を特定した有機ケイ素重合体粒子の構成化合物中のケイ素の含有量比の関係から、計算によってトナー中の有機ケイ素重合体粒子の含有量を求めることができる。
トナー中に、有機ケイ素重合体粒子以外のケイ素含有物が含まれる場合、上記と同様の方法で、トナーから有機ケイ素重合体粒子以外のケイ素含有物を除去したサンプルを得て、トナー中に含まれる有機ケイ素重合体粒子を定量することができる。
<有機ケイ素重合体粒子のT3単位構造の有無およびT3単位構造を有するケイ素に由来するピークの面積の割合の測定方法>
有機ケイ素重合体粒子中のT3単位構造の有無およびT3単位構造を有するケイ素に由来するピークの面積の割合は、「有機ケイ素重合体粒子の同定」で測定された固体29Si-NMRの結果を用いる。
固体29Si-NMRで、有機ケイ素重合体粒子の構成化合物のSiに結合する官能基数(1官能~4官能)およびその官能基種によって、異なるシフト領域にピークが検出される。1官能から4官能までの全てのピーク面積の合計に対する、T3単位構造に帰属されるピークの割合が、もとめる割合である。またT単位構造のピーク面積の合計から、そのピークの詳細位置からT2、T3の割合を定量することができる。
<有機ケイ素重合体粒子の一次粒子の個数平均粒径>
有機ケイ素重合体粒子の一次粒子の個数平均粒径の測定は、走査型電子顕微鏡「S-4800」(商品名;日立製作所製)を用いて行う。有機ケイ素重合体粒子が添加されたトナーを観察して、最大5万倍に拡大した視野において、ランダムに100個の有機ケイ素重合体粒子の一次粒子の長径を測定して個数平均粒径を求める。観察倍率は、有機ケイ素重合体粒子の大きさによって適宜調整する。なお、有機ケイ素重合体粒子を単独で入手できる場合は、該微粒子を単独で測定することもできる。
トナー中に、有機ケイ素重合体粒子以外の微粒子が含まれる場合、トナー観察において、外添剤の各粒子に対してEDS分析を行い、Si元素ピークの有無から、分析した粒子が有機ケイ素重合体粒子であるか否かを判断する。
トナー中に、有機ケイ素重合体粒子とシリカ微粒子の両方が含まれている場合には、Si、Oの元素含有量(atomic%)の比(Si/O比)を標品と比較することで有機ケイ素重合体粒子の同定を行う。有機ケイ素重合体粒子、シリカ微粒子それぞれの標品に対して、同条件でEDS分析を行い、Si、Oそれぞれの元素含有量(atomic%)を得る。有機ケイ素重合体粒子のSi/O比をAとし、シリカ微粒子のSi/O比をBとする。AがBに対して、有意に大きくなる測定条件を選択する。具体的には、標品に対して、同条件で10回の測定を行い、A,Bそれぞれの相加平均値を得る。得られた平均値がA/B>1.1となる測定条件を選択する。
判別対象の微粒子のSi/O比が[(A+B)/2]よりもA側にある場合に当該微粒子を有機ケイ素重合体粒子と判断する。
有機ケイ素重合体粒子の標品として、トスパール120A(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社)を、シリカ微粒子の標品として、HDK V15(旭化成)を用いる。
<有機ケイ素重合体粒子の被覆率の測定方法>
トナー粒子表面の有機ケイ素重合体粒子による被覆率は、走査型電子顕微鏡による観察と画像計測を用いて測定する(単位は面積%)。有機ケイ素重合体粒子の被覆率は、走査型電子顕微鏡による観察において、有機ケイ素重合体粒子を観察する観察倍率は、下記の条件設定に記載の倍率を採用する。走査型電子顕微鏡としては、上記の日立超高分解能電界放出走査電子顕微鏡S-4800(商品名)を用いる。トナー中に、有機ケイ素重合体粒子以外の微粒子が含まれる場合、トナー観察において、外添剤の各粒子に対してEDS分析を行い、Si元素ピークの有無から、分析した粒子が有機ケイ素重合体粒子であるか否かを判断する。具体的には、有機ケイ素重合体粒子の一次粒子の個数平均粒径と同様の操作を行う。
画像撮影条件は以下の通りである。
(1)試料作製
試料台(アルミニウム試料台15mm×6mm)に導電性ペーストを薄く塗り、その上にトナーを吹きつける。さらにエアブローして、余分なトナーを試料台から除去し十分乾燥させる。試料台を試料ホルダにセットし、試料高さゲージにより試料台高さを36mmに調節する。
(2)S-4800観察条件設定
有機ケイ素重合体粒子の被覆率の算出は、S-4800の反射電子像観察により得られた画像を用いて行う。反射電子像は2次電子像と比べてチャージアップが少ないため、有機ケイ素重合体粒子の被覆率を精度良く測定することができる。
S-4800の筺体に取り付けられているアンチコンタミネーショントラップに液体窒素を溢れるまで注入し、30分間置く。S-4800の「PC-SEM」を起動し、フラッシング(電子源であるFEチップの清浄化)を行う。画面上のコントロールパネルの加速電圧表示部分をクリックし、[フラッシング]ボタンを押し、フラッシング実行ダイアログを開く。フラッシング強度が2であることを確認し実行する。フラッシングによるエミッション電流が20~40μAであることを確認する。試料ホルダをS-4800筺体の試料室に挿入する。コントロールパネル上の[原点]を押し試料ホルダを観察位置に移動させる。加速電圧表示部をクリックしてHV設定ダイアログを開き、加速電圧を0.8kV]、エミッション電流を[20μA]に設定する。オペレーションパネルの[基本]のタブ内にて、信号選択を[SE]に設置し、SE検出器を[上(U)]及び[+BSE]を選択し、[+BSE]の右の選択ボックスで[L.A.100]を選択し、反射電子像で観察するモードにする。
同じくオペレーションパネルの[基本]のタブ内にて、電子光学系条件ブロックのプローブ電流を[Normal]に、焦点モードを[UHR]に、WDを[3.0mm]に設定する。コントロールパネルの加速電圧表示部の[ON]ボタンを押し、加速電圧を印加する。
(3)焦点調整
コントロールパネルの倍率表示部内をドラッグして、倍率を5000(5k)倍に設定する。操作パネルのフォーカスつまみ[COARSE]を回転させ、視野内全体にある程度焦点が合ったところでアパーチャアライメントの調整を行う。コントロールパネルの[Align]をクリックし、アライメントダイアログを表示し、[ビーム]を選択する。操作パネルのSTIGMA/ALIGNMENTつまみ(X,Y)を回転し、表示されるビームを同心円の中心に移動させる。次に[アパーチャ]を選択し、STIGMA/ALIGNMENTつまみ(X,Y)を一つずつ回し、像の動きを止める又は最小の動きになるように合わせる。アパーチャダイアログを閉じ、オートフォーカスで、ピントを合わせる。この操作を更に2度繰り返し、ピントを合わせる。
次に対象のトナーについて、最大径の中点を測定画面の中央に合わせた状態でコントロールパネルの倍率表示部内をドラッグして、倍率を10000(10k)倍に設定する。操作パネルのフォーカスつまみ[COARSE]を回転させ、ある程度焦点が合ったところでアパーチャアライメントの調整を行う。コントロールパネルの[Align]をクリックし、アライメントダイアログを表示し、[ビーム]を選択する。操作パネルのSTIGMA/ALIGNMENTつまみ(X,Y)を回転し、表示されるビームを同心円の中心に移動させる。
次に[アパーチャ]を選択し、STIGMA/ALIGNMENTつまみ(X,Y)を一つずつ回し、像の動きを止める又は最小の動きになるように合わせる。アパーチャダイアログを閉じ、オートフォーカスで、ピントを合わせる。その後、倍率を50000(50k)倍に設定し、上記と同様にフォーカスつまみ、STIGMA/ALIGNMENTつまみを使用して焦点調整を行い、再度オートフォーカスでピントを合わせる。この操作を再度繰り返し、ピントを合わせる。ここで、観察面の傾斜角度が大きいと被覆率の測定精度が低くなりやすいので、ピント調整の際に観察面全体のピントが同時に合うものを選ぶことで、表面の傾斜が極力無いものを選択して解析する。
(4)画像保存
ABCモードで明るさ合わせを行い、サイズ640×480ピクセルで写真撮影して保存する。この画像ファイルを用いて下記の解析を行う。トナー一つに対して写真を1枚撮影し、少なくともトナー100粒子以上について画像を得る。
観察した画像を、画像解析ソフトウェアであるImage J(https://imagej.nih.gov/ij/より入手可能)を用いて二値化する。二値化した後、[Analayze]-[Analyze Particles]より該当する有機ケイ素重合体粒子の粒径と円形度を設定し、有機ケイ素重合体粒子のみを抽出し、トナー粒子上における、有機ケイ素重合体粒子の被覆率(単位:面積%)を求める。
上記測定を二値化した画像100枚について行い、有機ケイ素重合体粒子の被覆率(単位:面積%)の平均値を有機ケイ素重合体粒子の被覆率とする。
<磁性トナーの体積平均粒径(Dv)及び個数平均粒径(Dn)の測定方法>
磁性トナーの体積平均粒径(Dv)及び個数平均粒径(Dn)は、以下のようにして算出する。
測定装置としては、100μmのアパーチャーチューブを備えた細孔電気抵抗法による精密粒度分布測定装置「コールター・カウンター Multisizer 3」(登録商標、ベックマン・コールター社製)を用いる。測定条件の設定及び測定データの解析は、付属の専用ソフト「ベックマン・コールター Multisizer 3 Version3.51」(ベックマン・コールター社製)を用いる。なお、測定は実効測定チャンネル数25000にて行う。
測定に使用する電解水溶液は、特級塩化ナトリウムをイオン交換水に溶解して濃度が約1質量%となるようにしたもの、例えば、「ISOTON II」(ベックマン・コールター社製)が使用できる。
なお、測定、解析を行う前に、以下のように専用ソフトの設定を行う。
専用ソフトの「標準測定方法(SOM)を変更」画面において、コントロールモードの総カウント数を50000粒子に設定し、測定回数を1回、Kd値は「標準粒子10.0μm」(ベックマン・コールター社製)を用いて得られた値を設定する。「閾値/ノイズレベルの測定ボタン」を押すことで、閾値とノイズレベルを自動設定する。また、カレントを1600μAに、ゲインを2に、電解水溶液をISOTON IIに設定し、「測定後のアパーチャーチューブのフラッシュ」にチェックを入れる。
専用ソフトの「パルスから粒径への変換設定」画面において、ビン間隔を対数粒径に、粒径ビンを256粒径ビンに、粒径範囲を2μmから60μmまでに設定する。
具体的な測定法は以下の通りである。
(1)Multisizer 3専用のガラス製250mL丸底ビーカーに前記電解水溶液約200mLを入れ、サンプルスタンドにセットし、スターラーロッドの撹拌を反時計回りで24回転/秒にて行う。そして、専用ソフトの「アパーチャーチューブのフラッシュ」機能により、アパーチャーチューブ内の汚れと気泡を除去しておく。
(2)ガラス製の100mL平底ビーカーに前記電解水溶液約30mLを入れる。この中に分散剤として「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)をイオン交換水で約3質量倍に希釈した希釈液を約0.3mL加える。
(3)発振周波数50kHzの発振器2個を、位相を180°ずらした状態で内蔵し、電気的出力120Wの超音波分散器「Ultrasonic Dispersion System Tetora150」(日科機バイオス社製)を準備する。超音波分散器の水槽内に約3.3Lのイオン交換水を入れ、この水槽中にコンタミノンNを約2mL添加する。
(4)前記(2)のビーカーを前記超音波分散器のビーカー固定穴にセットし、超音波分散器を作動させる。そして、ビーカー内の電解水溶液の、液面の共振状態が最大となるようにビーカーの高さ位置を調整する。
(5)前記(4)のビーカー内の電解水溶液に超音波を照射した状態で、トナー約10mgを少量ずつ前記電解水溶液に添加し、分散させる。そして、さらに60秒間超音波分散処理を継続する。なお、超音波分散については、水槽の水温が10℃以上40℃以下となる様に適宜調節する。
(6)サンプルスタンド内に設置した前記(1)の丸底ビーカーに、ピペットを用いてトナーを分散した前記(5)の電解水溶液を滴下し、測定濃度が約5%となるように調整する。そして、測定粒子数が50000個になるまで測定を行う。
(7)測定データを装置付属の前記専用ソフトにて解析を行い、体積平均粒径(Dv)及び個数平均粒径(Dn)を算出する。なお、前記専用ソフトでグラフ/体積%と設定したときの、「分析/体積統計値(算術平均)」画面の「50%D径」が体積平均粒径(Dv)、前記専用ソフトでグラフ/個数%と設定したときの、「分析/個数統計値(算術平均)」画面の「算術径」を個数平均粒径(Dn)とした。
<磁性トナーの平均輝度、輝度分散値及びその変動係数、平均円形度の測定方法>
磁性トナーの平均輝度、輝度分散値及びその変動係数、平均円形度は、フロー式粒子像分析装置「FPIA-3000」(シスメックス社製)を用い、校正作業時の測定及び解析条件で測定する。
具体的な測定方法は、以下の通りである。
まず、ガラス製の容器中に予め不純固形物などを除去したイオン交換水約20mLを入れる。この中に分散剤として「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)をイオン交換水で約3質量倍に希釈した希釈液を約0.2mL加える。さらに測定試料を約0.02g加え、超音波分散器を用いて2分間分散処理を行い、測定用の分散液とする。その際、分散液の温度が10℃以上40℃以下となる様に適宜冷却する。超音波分散器としては、発振周波数50kHz、電気的出力150Wの卓上型の超音波洗浄器分散器「VS-150」(ヴェルヴォクリーア社製)を用い、水槽内には所定量のイオン交換水を入れ、この水槽中に前記コンタミノンNを約2mL添加する。
測定には、対物レンズとして「LUCPLFLN」(倍率20倍、開口数0.40)を搭載した前記フロー式粒子像分析装置を用い、シース液にはパーティクルシース「PSE-900A」(シスメックス社製)を使用する。前記手順に従い調製した分散液を前記フロー式粒子像分析装置に導入し、HPF測定モード、トータルカウントモードにて2000個の磁性トナーを計測する。その結果からトナーの平均輝度、輝度分散値、平均円形度を算出する。
磁性トナーの平均輝度は、該磁性トナーの個数平均粒径(Dn)の結果に対して、本フロー式粒子像分析装置の円相当径を、Dn-0.500(μm)以上Dn+0.500(μm)以下の粒径範囲に限定し、平均輝度を算出した値である。
CV1は輝度分散値の測定結果において、前記磁性トナーの個数平均粒径(Dn)の結果に対して、本フロー式粒子像分析装置の円相当径を、Dn-0.500(μm)以上Dn+0.500(μm)以下の範囲に限定し、輝度分散値の変動係数を計算した値である。
CV2は輝度分散値の測定結果において、前記磁性トナーの個数平均粒径(Dn)の結果に対して、本フロー式粒子像分析装置の円相当径を、Dn-1.500(μm)以上Dn-0.500(μm)以下の範囲に限定し、輝度分散値の変動係数を計算した値である。
測定にあたっては、測定開始前に標準ラテックス粒子(Duke Scientific社製の「RESEARCH AND TEST PARTICLES Latex Microsphere Suspensions 5100A」をイオン交換水で希釈)を用いて自動焦点調整を行う。その後、測定開始から2時間毎に焦点調整を実施することが好ましい。
なお、本件では、シスメックス社による校正作業が行われた、シスメックス社が発行する校正証明書の発行を受けたフロー式粒子像分析装置を使用する。
解析粒子径を円相当径1.977μm以上39.54μm未満に限定した以外は、校正証明を受けた時の測定及び解析条件で測定を行う。
<微粒子分散液における分散体の粒径の測定方法>
各微粒子分散液の分散体の粒径は、レーザー回折/散乱式粒径分布測定装置を用いて測定した。具体的には、JIS Z 8825-1(2001年)に準じて測定される。
測定装置としては、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置「LA-920」(堀場製作所社製)を用いる。
測定条件の設定及び測定データの解析は、LA-920に付属の専用ソフト「HORIBA LA-920 for Windows(登録商標) WET(LA-920) Ver.2.02」を用いる。また、測定溶媒としては、予め不純固形物などを除去したイオン交換水を用いる。測定手順は、以下の通りである。
(1)バッチ式セルホルダーをLA-920に取り付ける。
(2)所定量のイオン交換水をバッチ式セルに入れ、バッチ式セルをバッチ式セルホルダーにセットする。
(3)専用のスターラーチップを用いて、バッチ式セル内を撹拌する。
(4)「表示条件設定」画面の「屈折率」ボタンを押し、相対屈折率を微粒子に対応した値に設定する。
(5)「表示条件設定」画面において、粒径基準を体積基準とする。
(6)1時間以上の暖気運転を行った後、光軸の調整、光軸の微調整、ブランク測定を行う。
(7)ガラス製の100mL平底ビーカーに微粒子分散液を3mL入れる。さらに、57mLのイオン交換水を入れて樹脂微粒子分散液を希釈する。この中に分散剤として、「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)をイオン交換水で3質量倍に希釈した希釈液を0.3mL加える。
(8)発振周波数50kHzの発振器2個を、位相を180度ずらした状態で内蔵し、電気的出力120Wの超音波分散器「Ultrasonic Dispersion System Tetora150」(日科機バイオス社製)を準備する。超音波分散器の水槽内に3.3Lのイオン交換水を入れ、この水槽中にコンタミノンNを2mL添加する。
(9)前記(7)のビーカーを前記超音波分散器のビーカー固定穴にセットし、超音波分散器を作動させる。そして、ビーカー内の水溶液の液面の共振状態が最大となるようにビーカーの高さ位置を調整する。
(10)60秒間超音波分散処理を継続する。また、超音波分散にあたっては、水槽の水温が10℃以上40℃以下となる様に適宜調節する。
(11)前記(10)で調製した微粒子分散液を、気泡が入らないように注意しながら直ちにバッチ式セルに少量ずつ添加して、タングステンランプの透過率が90%~95%となるように調整する。そして、粒度分布の測定を行う。得られた体積基準の粒度分布のデータを元に、微粒子分散液中の分散体の粒径を算出する。
<磁性トナー中の磁性体の占有面積率及びその変動係数(CV3)の算出方法>
磁性トナー中の磁性体の占有面積率及びその変動係数(CV3)は、以下のように算出する。
まず、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、磁性トナーの断面の画像を取得する。得られた断面画像を区画法に基づき、各区画グリッドにおける磁性体の占有面積率の頻度ヒストグラムを得る。
さらに、得られた各区画グリッドの占有面積率の変動係数を求め、占有面積率の変動係数(CV3)とする。
具体的には、まず、磁性トナーを圧縮形成して錠剤とする。直径8mmの錠剤形成器に100mgの磁性トナーを充填し、35kNの力をかけて1分間静置することで錠剤を得る。
得られた錠剤を、超音波ウルトラミクロトーム(Leica社、UC7)により切削し、膜厚250nmの薄片サンプルを得る。
得られた薄片サンプルを、透過型電子顕微鏡(JEOL社、JEM2800)を用いてSTEM画像を撮影する。
STEM画像の撮影に用いるプローブサイズを1.0nmとし、画像サイズを1024×1024pixelとする。この際、明視野像のDetector ControlパネルのContrastを1425、Brightnessを3750、Image ControlパネルのContrastを0.0、Brightnessを0.5、Gammmaを1.00に調整することで、磁性体部分のみを暗く撮影することができる。該設定により、画像処理に好適なSTEM画像が得られる。
得られたSTEM画像は、画像処理装置(株式会社ニレコ、LUZEX AP)を用いて数値化する。
具体的には、区画法により、一辺が0.8μmの正方グリッドにおける磁性体の占有面積率の頻度ヒストグラムを得る。この際、ヒストグラムの階級間隔は5%とする。
さらに、得られた各区画グリッドの占有面積率から変動係数を求め、占有面積率の変動係数CV3とする。また、占有面積率の平均値は各区画グリッドの占有面積率の平均をとったものである。
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明は何らこれに制約されるものではない。実施例10、12、13、18、23は参考例である。なお、実施例及び比較例の部数は特に断りが無い場合、すべて質量基準である。
<ポリエステル1の製造例>
・テレフタル酸 30.0部
・イソフタル酸 12.0部
・ドデセニルコハク酸 40.0部
・トリメリット酸 4.2部
・ビスフェノールAエチレンオキサイド(2モル)付加物 80.0部
・ビスフェノールAプロピレンオキサイド(2モル)付加物 74.0部
・ジブチルスズオキシド 0.1部
上記材料を加熱乾燥した二口フラスコに入れ、容器内に窒素ガスを導入して不活性雰囲気に保ち撹拌しながら昇温した。その後、150~230℃で約12時間縮重合反応させた後、210~250℃で徐々に減圧して、ポリエステル1を得た。
ポリエステル1の数平均分子量(Mn)は18200、重量平均分子量(Mw)は74100、ガラス転移温度(Tg)は58.6℃であった。
<樹脂粒子分散液1の製造例>
撹拌装置のついたビーカーに、100.0部の酢酸エチル、30.0部のポリエステル1、0.1mol/Lの水酸化ナトリウム0.3部、及びアニオン性界面活性剤(第一工業製薬(株)製、ネオゲンRK)0.2部を投入し、60.0℃に加熱して、完全に溶解するまで撹拌を続け、樹脂溶解液1を調製した。
該樹脂溶解液1をさらに撹拌しながら、徐々にイオン交換水120.0部を加え、転相乳化させ、脱溶剤することにより樹脂粒子分散液1(固形分濃度:20.0質量%)を得た。
樹脂粒子分散液1中の樹脂粒子の体積平均粒径は0.18μmであった。
<ワックス分散液1の製造例>
・パラフィンワックス 50.0部
(日本精蝋(株)製、HNP-9)
・アニオン性界面活性剤 0.3部
(第一工業製薬(株)製、ネオゲンRK)
・イオン交換水 150.0部
以上を混合して95℃に加熱し、ホモジナイザー(IKA社製、ウルトラタラックスT50)を用いて分散した。その後、マントンゴーリン高圧ホモジナイザ(ゴーリン社製)で分散処理し、ワックス粒子を分散させてなるワックス分散液1(固形分濃度:25.0質量%)を調製した。得られたワックス粒子の体積平均粒径は0.20μmであった。
<磁性体1の製造例>
Fe2+を2.0mol/L含有する硫酸鉄第一水溶液50リットルに、4.0mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液55リットルを混合撹拌し、水酸化第一鉄コロイドを含む第一鉄塩水溶液を得た。この水溶液を85℃に保ち、20L/minで空気を吹き込みながら酸化反応を行い、コア粒子を含むスラリーを得た。
得られたスラリーをフィルタープレスにてろ過及び洗浄した後、コア粒子を水中に再度分散させた。得られたリスラリー液に、コア粒子100部当たり、珪素換算で0.20部となる珪酸ソーダを添加し、スラリー液のpHを6.0に調整し、撹拌することで珪素リッチな表面を有する磁性酸化鉄粒子を得た。
得られたスラリー液をフィルタープレスにてろ過、洗浄、さらにイオン交換水にてリスラリーを行った。このリスラリー液(固形分50部/L)に500部(磁性酸化鉄に対して10部)のイオン交換樹脂SK110(三菱化学製)を投入し、2時間撹拌してイオン交換を行った。その後、イオン交換樹脂をメッシュでろ過して除去し、フィルタープレスにてろ過及び洗浄し、乾燥及び解砕して、一次粒子の個数平均粒径が0.21μmの磁性体1を得た。
<磁性体2及び3の製造例>
磁性体1の製造例において、空気の吹き込み量と酸化反応時間を調整したこと以外は同様にして、磁性体2及び3を得た。表1に各磁性体の一次粒子の個数平均粒径を示す。
<磁性体分散液1の製造例>
・磁性体1 25.0部
・イオン交換水 75.0部
上記材料を混合して、ホモジナイザー(IKA社製、ウルトラタラックスT50)を用いて8000rpmで10分間分散し、磁性体分散液1を得た。該磁性体分散液1中の磁性体の体積平均粒径は0.23μmであった。
<磁性体分散液2及び3の製造例>
磁性体分散液1の製造例において、磁性体1を磁性体2又は3に変更した以外は同様にして磁性体分散液2又は3を製造した。得られた磁性体分散液2中の磁性体の体積平均粒径は0.18μmであり、磁性体分散液3中の磁性体の体積平均粒径は0.35μmであった。
<磁性トナー粒子1の製造例>
・樹脂粒子分散液1(固形分20.0質量%) 150.0部
・ワックス分散液1(固形分25.0質量%) 15.0部
・磁性体分散液1(固形分25.0質量%) 105.0部
ビーカーに、上記材料を投入し、水の総部数が250部になるように調整した後、30.0℃に温調した。その後、ホモジナイザー(IKA社製、ウルトラタラックスT50)を用いて、5000rpmで1分間撹拌することにより混合した。
さらに凝集剤として10.0部の硫酸マグネシウム2.0質量%水溶液を徐々に添加した。
撹拌装置、温度計を備えた重合釜に原料分散液を移し、マントルヒーターで50.0℃に加熱し撹拌することで凝集粒子の成長を促進させた。
60分間経過した段階でエチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)5.0質量%水溶液を200.0部添加し凝集粒子分散液1を調製した。
続いて、凝集粒子分散液1を0.1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH8.0に調整した後、凝集粒子分散液1を80.0℃に加熱し、180分間放置して、凝集粒子の合一を行った。
180分間経過後、トナー粒子が分散したトナー粒子分散液1を得た。1.0℃/分の降温速度で冷却した後、トナー粒子分散液1をろ過し、イオン交換水で通水洗浄し、ろ液の伝導度が50mS以下となったところで、ケーキ状になったトナー粒子を取り出した。
次に、トナー粒子の質量の20倍量のイオン交換水中に、ケーキ状になったトナー粒子を投入し、スリーワンモータで撹拌し、充分にトナー粒子がほぐれたところで再度ろ過、通水洗浄し固液分離した。得られたケーキ状になったトナー粒子をサンプルミルで解砕して、40℃のオーブン中で24時間乾燥した。さらに得られた粉体をサンプルミルで解砕した後、40℃のオーブン中で5時間、追加の真空乾燥をして、磁性トナー粒子1を得た。
<磁性トナー粒子10の製造例>
(プレ凝集工程)
・磁性体分散液1(固形分25.0質量%) 105.0部
ビーカーに、上記材料を投入し、30.0℃に温調した後、ホモジナイザー(IKA社製、ウルトラタラックスT50)を用いて、5000rpmで1分間撹拌し、さらに凝集剤として1.0部の硫酸マグネシウム2.0質量%水溶液を徐々に添加し、1分間撹拌した。
(凝集工程)
・樹脂粒子分散液1(固形分25.0質量%) 150.0部
・ワックス分散液1(固形分25.0質量%) 15.0部
該材料を上記ビーカーに投入し、水の総部数が250部になるように調整した後、5000rpmで1分間撹拌することにより混合した。
さらに凝集剤として9.0部の硫酸マグネシウム2.0質量%水溶液を徐々に添加した。
撹拌装置、温度計を備えた重合釜に原料分散液を移し、マントルヒーターで50.0℃に加熱し撹拌することで凝集粒子の成長を促進させた。
59分間経過した段階でエチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)5.0質量%水溶液を200.0部添加し凝集粒子分散液2を調製した。
続いて、凝集粒子分散液2を0.1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH8.0に調整した後、凝集粒子分散液2を80.0℃に加熱し、180分間放置して、凝集粒子の合一を行った。
180分間経過後、トナー粒子が分散したトナー粒子分散液10を得た。1.0℃/分の降温速度で冷却した後、トナー粒子分散液10をろ過し、イオン交換水で通水洗浄し、ろ液の伝導度が50mS以下となったところで、ケーキ状になったトナー粒子を取り出した。次に、トナー粒子の質量の20倍量のイオン交換水中に、ケーキ状になったトナー粒子を投入し、スリーワンモータで撹拌し、充分にトナー粒子がほぐれたところで再度ろ過、通水洗浄し固液分離した。得られたケーキ状になったトナー粒子をサンプルミルで解砕して、40℃のオーブン中で24時間乾燥した。さらに得られた粉体をサンプルミルで解砕した後、40℃のオーブン中で5時間、追加の真空乾燥をして、磁性トナー粒子10を得た。
<磁性トナー粒子2~9、11、13~15の製造例>
磁性トナー粒子1の製造例において、表2に記載した条件に変更した以外は同様にして、磁性トナー粒子2~7、9、11、13及び14を得た。
一方、磁性トナー粒子10の製造例において、表2に記載した条件に変更した以外は同様にして、磁性トナー粒子8、15を得た。
なお、磁性トナー粒子7,9,11の製造例では、第一凝集工程において、0.2部の界面活性剤(ノイゲンTDS-200、第一工業製薬株式会社)を添加後に、凝集剤を添加した。
磁性トナー粒子8及び9の製造例では、50.0℃で凝集粒子の成長を促進させる第一凝集工程の後に、表2に記載した分散液を添加し、再び、50.0℃で凝集粒子の成長を促進させる第二凝集工程を実施した。
<磁性トナー粒子12の製造例>
磁性トナー粒子10と磁性トナー粒11を同量ずつよく混合し、磁性トナー粒子12とした。
<磁性トナー粒子16の製造例>
・ポリエステル1 100.0部
・パラフィンワックス 4.0部
(日本精蝋(株)製、HNP-9)
・磁性体1 65.0部
・荷電制御剤 1.0部
(アゾ鉄化合物;T-77(保土谷化学工業(株)))
上記原材料を、FMミキサ(FM10C、日本コークス工業株式会社製)を用い、2500rpmで2分間、予備混合した。その後、回転数200rpmに設定した二軸混練押し出し機(PCM-30:池貝鉄工所社製)により、混練物の出口付近における混練物温度が150℃となるように設定温度を調節し、混練した。
得られた溶融混練物を冷却し、冷却された溶融混練物をカッターミルで粗粉砕した後、得られた粗粉砕物を、ターボミルT-250(ターボ工業社製)を用いて、フィード量を20kg/hrとし、排気温度が38℃になるようエアー温度を調整して微粉砕した。さらに、コアンダ効果を利用した多分割分級機を用いて分級して、体積平均粒径(Dv)が7.5μmの磁性トナー粒子16を得た。
<磁性トナー粒子17の製造例>
・樹脂粒子分散液1(固形分20.0質量%) 150.0部
・ワックス分散液1(固形分25.0質量%) 15.0部
・磁性体分散液1(固形分25.0質量%) 105.0部
ビーカーに、上記材料を投入し、水の総部数が250部になるように調整した後、30.0℃に温調した。その後、ホモジナイザー(IKA社製、ウルトラタラックスT50)を用いて、8000rpmで10分間撹拌することにより混合した。
さらに0.1mol/Lの塩酸を徐々に添加しpHを5.0に調整し、さらに8000rpmで20分間撹拌した。
撹拌装置、温度計を備えた重合釜に原料分散液を移し、マントルヒーターで50.0℃に加熱し、0.1mol/Lの塩酸を徐々に添加しpHを3.0に調整し、撹拌することで凝集粒子の成長を促進させた。
60分間経過した段階で、凝集粒子分散液17を0.1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を用いてpHを6.8に調整した後、凝集粒子分散液17を90.0℃に加熱し、180分間放置し、凝集粒子の合一を行った。
180分間経過後、トナー粒子が分散したトナー粒子分散液17を得た。1.0℃/分の降温速度で冷却した後、トナー粒子分散液17をろ過し、イオン交換水で通水洗浄し、ろ液の伝導度が50mS以下となったところで、ケーキ状になったトナー粒子を取り出した。
次に、トナー粒子の質量の20倍量のイオン交換水中に、ケーキ状になったトナー粒子を投入し、スリーワンモータで撹拌し、充分にトナー粒子がほぐれたところで再度ろ過、通水洗浄し固液分離した。得られたケーキ状になったトナー粒子をサンプルミルで解砕して、40℃のオーブン中で24時間乾燥した。さらに得られた粉体をサンプルミルで解砕した後、40℃のオーブン中で5時間、追加の真空乾燥をして、磁性トナー粒子17を得た。
<有機ケイ素重合体粒子A1の製造例>
(第一工程)
温度計、撹拌機を備えた反応容器に、水:360.0部を入れ、濃度5.0質量%の塩酸:15.0部を添加して均一溶液とした。これを温度25℃で撹拌しながらメチルトリメトキシシラン136.0部を添加し、5時間撹拌した後、濾過してシラノール化合物またはその部分縮合物を含む透明な反応液を得た。
(第二工程)
温度計、撹拌機、滴下装置を備えた反応容器に、水:440.0部を入れ、濃度10.0質量%のアンモニア水:17.0部を添加して均一溶液とした。これを温度35℃で撹拌しながら第一工程で得られた反応液100部を0.5時間かけて滴下し、6時間撹拌し懸濁液を得た。得られた懸濁液を遠心分離器にかけて微粒子を沈降させ取り出し、温度100℃の乾燥機で12時間乾燥させて微粒子A1を得た。
得られた微粒子A1は、透過型走査電子顕微鏡より一次粒子の個数平均粒径が100nmであった。
<有機ケイ素重合体粒子A2~A12の製造例>
シラン化合物、反応開始温度、触媒添加量、滴下時間、乾燥温度、乾燥時間を表3に記載の様に変更した以外は、有機ケイ素重合体粒子A1の製造例と同様にして、有機ケイ素重合体粒子A2~A12を得た。得られた有機ケイ素重合体粒子A2~A12の物性を表3に示す。
<磁性トナー1の製造例>
(外添工程)
上記で得られた100部の磁性トナー粒子1(トナー母体1)に対して有機ケイ素重合体粒子A1を2.0部添加し、ジャケット内に7℃の水を通水したFMミキサ(日本コークス工業株式会社製FM10C型)に投入した。
ジャケット内の水温が7℃±1℃で安定してから回転羽根の周速38m/secで5分間混合し、トナー混合物1を得た。この際、FMミキサの槽内温度が25℃を超えないようジャケット内の通水量を適宜調整した。
得られたトナー混合物1を目開き75μmのメッシュで篩い、磁性トナー1を得た。磁性トナー1の製造条件を表4に示す。また得られた磁性トナー1の物性を表5に示す。
<磁性トナー2~32の製造例>
磁性トナー1の製造例において、表4に示すトナー母体、微粒子、製造条件にすること以外は、磁性トナー1の製造例と同様にして、磁性トナー2~32を得た。磁性トナー2~32の物性を表5に示す。
表5における物性は、体積平均粒径(Dv)、個数平均粒径(Dn)、Dn-0.500以上Dn+0.500以下の粒径範囲における平均輝度[表中では、単に平均輝度と標記する]、CV2/CV1、CV1、平均円形度、CV3、磁性体の占有面積率の平均値[表中では、Aと標記する][表中では、単に被覆率と標記する]、微粒子A粒径/磁性体粒径、3官能性のユニット構造比率(X)、T2/T3である。
〔実施例1〕
(画像形成装置)
本実施例において評価に用いるマシンは、市販の磁性一成分方式のプリンターHP LaserJet Enterprise M609dn(ヒューレットパッカード社製)のプロセススピードを400mm/sになるように改造を施した本体を用いて、磁性トナー1を用いて下記の評価を実施した。また、本実施例において評価に用いるプロセスカートリッジは、37X Extra High Yield Black Original LaserJet Toner Cartridge(ヒューレットパッカード社製)である。所定のプロセスカートリッジ内部からは製品トナーを抜き取り、エアブローによって清掃した後、実施例で得た磁性トナーを950g充填した。これを用いて、磁性トナー1を用いて下記の評価を実施した。それぞれの評価結果は表6に示す。
<静電オフセットの評価>
低温低湿環境における耐静電オフセット性の評価:
(i)初期評価
トナーが充填されたプロセスカートリッジを低温低湿環境(15℃、10%RH)に48時間放置する。画像の前半半分がベタ黒画像、後半半分が白地の静電オフセット試験用チャートを用いて連続100枚の画出しを行い、目視にて耐静電オフセット性の評価をした。なお、静電オフセットの評価基準は以下のように定める。
A:全く見られない。
B:白地部にかすかに見られる。
C:白地部に見られる。
D:白地部に明らかに見られる。
(ii)長期印字後の評価
上記(i)で使用したプロセスカートリッジを低温2枚間欠通紙にて30000枚印字後、画像の前半半分がベタ黒画像、後半半分が白地の静電オフセット試験用チャートを用いて連続100枚の画出しを行い、目視にて耐静電オフセット性の評価をした。なお、静電オフセット性の評価基準は以下のように定める。
A:全く見られない。
B:白地部にかすかに見られる。
C:白地部に見られる。
D:白地部に明らかに見られる。
〈規制不良の評価〉
規制不良は白後のトナー担持体上のトナー量と、黒後のトナー担持体上のトナー量の差で評価した。
なお、規制不良の判断基準は以下のように定める。
A:白後と黒後のトナー量の差が1.0g/m2未満
B:白後と黒後のトナー量の差が1.0g/m2以上1.5g/m2未満
C:白後と黒後のトナー量の差が1.5g/m2以上2.0g/m2未満
D:白後と黒後のトナー量の差が2.0g/m2以上
<ドット再現性の評価>
ドット再現性の評価は、高温高湿環境下(35℃,80%RH)で実施した。印字率2%となる横線パターンを2枚/1ジョブとして、ジョブとジョブの間にマシンがいったん停止してから次のジョブが始まるように設定したモードで、計10000枚の画出しを行った。続いてXerox4200(ゼロックス社製、75g/m2紙)上に孤立ドットを印字したハーフトーン画像(画像濃度を0.5乃至0.6に設定)を出力し、光学顕微鏡により孤立1ドット100個中の欠損数を測定した。なお、ドット再現性の評価基準は以下のように定める。
A:孤立ドット100個中の欠損が3個以下
B:孤立1ドット100個中の欠損が4個以上10個以下
C:孤立1ドット100個中の欠損が11個以上20個以下
D:孤立1ドット100個中の欠損が21個以上
〔実施例2~23、及び、比較例1~9〕
磁性トナー2~32を用い、実施例1と同様の評価を実施した。評価結果を表6に示す。