JP7249759B2 - 接合体 - Google Patents

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Description

本明細書に開示される技術は、セラミックスにより形成された第1の部材と第2の部材とが接合部を介して接合された接合体に関する。
例えば半導体製造装置の真空チャンバー内でウェハを保持する保持装置として、静電チャックが用いられる。静電チャックは、例えばセラミックス製の板状部材と、例えば金属製のベース部材と、板状部材とベース部材とを接合する接合部と、板状部材の内部に設けられたチャック電極とを備えており、チャック電極に電圧が印加されることにより発生する静電引力を利用して、板状部材の表面(吸着面)にウェハを吸着して保持する。接合部は、シリコーン樹脂を含有する緻密体により形成されている(例えば、特許文献1参照)。
特開2014-207374号公報
ところで、接合部が緻密体ではなく、多孔質体により形成された構成では、セラミックス製の板状部材と多孔質体とが十分に接合されず、その結果、板状部材とベース部材との間の接合部による接合強度を十分に得ることができない、という問題がある。
なお、このような課題は、静電引力を利用してウェハを保持する静電チャックに限らず、セラミックスにより形成された第1の部材と、第2の部材と、多孔質体により形成された接合部とを備える接合体一般に共通の課題である。
本明細書では、上述した課題を解決することが可能な技術を開示する。
本明細書に開示される技術は、例えば、以下の形態として実現することが可能である。
(1)本明細書に開示される接合体は、第1の方向に略垂直な第1の表面を有し、セラミックスにより形成された第1の部材と、前記第1の部材の前記第1の表面に形成されたメタライズ層と、第2の表面を有し、前記第2の表面が前記第1の部材に形成された前記メタライズ層側に位置するように配置された第2の部材と、前記第1の部材の前記メタライズ層と前記第2の部材の前記第2の表面との間に配置されて前記第1の部材と前記第2の部材とを接合する接合部と、を備える接合体において、前記接合部は、金属を含み、かつ、前記第1の部材および前記第2の部材より気孔率が高い多孔質体によって形成されており、前記第1の方向に略平行な少なくとも1つの断面において、前記メタライズ層の長さに対する、前記メタライズ層と前記接合部を形成する前記多孔質体との接触部分の長さの割合である界面接触率は、40%以上である。
本接合体では、セラミックスにより形成された第1の部材の第1の表面にメタライズ層が形成され、このメタライズ層と第2の部材とが接合部を形成し、金属を含む多孔質体によって接合されている。このため、第1の部材と多孔質体とが、メタライズ層を介さずに直接接触する構成に比べて、第1の部材と多孔質体との接合性が向上する。さらに、本接合体では、第1の方向に略平行な少なくとも1つの断面において、メタライズ層と接合部を形成する多孔質体との界面接触率は、40%以上である。界面接触率は、接合体の断面において、メタライズ層の長さに対する、メタライズ層と多孔質体との接触部分の長さの割合である。このため、本接合体によれば、界面接触率が40%未満である構成に比べて、メタライズ層と多孔質体との接合性が向上する。これにより、第1の部材と第2の部材との間の接合部による接合強度を向上させることができる。
(2)上記接合体において、前記第1の方向に略平行な少なくとも1つの断面において、前記界面接触率は、70%以上である構成としてもよい。本接合体によれば、第1の部材と第2の部材との間の接合部による接合強度の向上に加えて、界面接触率が70%未満である構成に比べて、メタライズ層と接合部との間のガスシール性を向上させることができる。
(3)上記接合体において、前記接合部は、主成分として、粒径が100nm以下の金属超微粒子を含んでいる構成としてもよい。本接合体によれば、接合部は、主成分として、粒径が100nm以下の金属超微粒子を含んでいるため、接合部が主成分として樹脂や半田を含む構成に比べて、接合部の耐熱性を向上させることができる。
(4)上記接合体において、前記第1の部材は、セラミックスにより形成されているセラミックス部材であり、前記第2の部材は、金属により形成されているベース部材であり、前記接合体は、静電チャックである構成としてもよい。
なお、本明細書に開示される技術は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、接合体、半導体製造装置用部品、保持装置、静電チャック、真空チャック、加熱装置、それらの製造方法等の形態で実現することが可能である。
実施形態における静電チャック100の外観構成を概略的に示す斜視図である。 実施形態における静電チャック100のXZ断面構成を概略的に示す説明図である。 静電チャック100における板状部材10とベース部材20との接合部分のXZ断面構成を概略的に示す説明図である。 メタライズ層60と接合部30との界面部分のXZ断面構成を概略的に示す説明図である。 各サンプルにおける接合部による接合強度とガスシール性とに関する評価結果を示す説明図である。
A.実施形態:
A-1.静電チャック100の構成:
図1は、本実施形態における静電チャック100の外観構成を概略的に示す斜視図であり、図2は、本実施形態における静電チャック100のXZ断面構成を概略的に示す説明図である。各図には、方向を特定するための互いに直交するXYZ軸が示されている。本明細書では、便宜的に、Z軸正方向を上方向といい、Z軸負方向を下方向というものとするが、静電チャック100は実際にはそのような向きとは異なる向きで設置されてもよい。
静電チャック100は、対象物(例えば半導体ウェハW)を静電引力により吸着して保持する装置であり、例えば半導体製造装置の真空チャンバー内でウェハWを固定するために使用される。静電チャック100は、所定の配列方向(本実施形態では上下方向(Z軸方向))に並べて配置された板状部材10およびベース部材20を備える。板状部材10とベース部材20とは、板状部材10の下面S2(正確には、後述するメタライズ層60の下面S5 図2参照)とベース部材20の上面S3とが、後述する接合部30を挟んで上記配列方向に対向するように配置される。すなわち、ベース部材20は、ベース部材20の上面S3が板状部材10の下面S2(メタライズ層60の下面S5)側に位置するように配置される。
板状部材10は、上述した配列方向(Z軸方向)に略直交する略円形平面状の上面(以下、「吸着面」という)S1を有する部材であり、例えばセラミックス(例えば、アルミナや窒化アルミニウム等)により形成されている。板状部材10の直径は例えば50mm~500mm程度(通常は200mm~350mm程度)であり、板状部材10の厚さは例えば1mm~10mm程度である。板状部材10は、特許請求の範囲における第1の部材に相当し、板状部材10の下面S2は、特許請求の範囲における第1の表面に相当し、Z軸方向は、特許請求の範囲における第1の方向に相当する。また、本明細書では、Z軸方向に直交する方向を「面方向」という。
図2に示すように、板状部材10の内部には、導電性材料(例えば、タングステン、モリブデン、白金等)により形成されたチャック電極40が配置されている。Z軸方向視でのチャック電極40の形状は、例えば略円形である。チャック電極40に電源(図示せず)から電圧が印加されると、静電引力が発生し、この静電引力によってウェハWが板状部材10の吸着面S1に吸着固定される。
板状部材10の内部には、また、導電性材料(例えば、タングステン、モリブデン、白金等)を含む抵抗発熱体により構成されたヒータ電極50が配置されている。ヒータ電極50に電源(図示せず)から電圧が印加されると、ヒータ電極50が発熱することによって板状部材10が温められ、板状部材10の吸着面S1に保持されたウェハWが温められる。これにより、ウェハWの温度分布の制御が実現される。
ベース部材20は、例えば板状部材10と同径の、または、板状部材10より径が大きい円形平面の板状部材であり、例えば金属(アルミニウム、アルミニウム合金、チタン合金、鉄や銅等)により形成されている。ベース部材20の熱膨張係数(熱膨張率)は、板状部材10の熱膨張係数とは異なる。例えば、ベース部材20は、金属により形成され、板状部材10は、セラミックスにより形成されている。この場合には、ベース部材20の熱膨張係数は、板状部材10の熱膨張係数より大きい。ベース部材20の直径は例えば220mm~550mm程度(通常は220mm~350mm)であり、ベース部材20の厚さは例えば20mm~40mm程度である。ベース部材20は、特許請求の範囲における第2の部材に相当し、ベース部材20の上面S3は、特許請求の範囲における第2の表面に相当する。
ベース部材20は、板状部材10の下面S2とベース部材20の上面S3との間に配置された接合部30によって、板状部材10に接合されている。接合部30の厚さは、例えば10μm以上、70μm以下である。板状部材10とベース部材20とを接合するための構成については、後に詳述する。
ベース部材20の内部には冷媒流路21が形成されている。冷媒流路21に冷媒(例えば、フッ素系不活性液体や水等)が流されると、ベース部材20が冷却され、接合部30を介したベース部材20と板状部材10との間の伝熱(熱引き)により板状部材10が冷却され、板状部材10の吸着面S1に保持されたウェハWが冷却される。これにより、ウェハWの温度分布の制御が実現される。
また、図2に示すように、静電チャック100には、ベース部材20の下面S4から板状部材10の吸着面S1にわたって上下方向に延びるピン挿通孔140が形成されている。すなわち、ピン挿通孔140は、ベース部材20をZ軸方向に貫通する孔26と、接合部30をZ軸方向に貫通する孔36と、板状部材10と後述するメタライズ層60とをZ軸方向に貫通する孔16とが互いに連通した一体の孔である。ピン挿通孔140は、板状部材10の吸着面S1上に保持されたウェハWを押し上げて吸着面S1から離間させるためのリフトピン(図示せず)を挿通するための孔である。
また、図2に示すように、静電チャック100は、板状部材10とウェハWとの間の伝熱性を高めてウェハWの温度分布の制御性をさらに高めるため、板状部材10の吸着面S1とウェハWの表面との間に存在する空間に不活性ガス(例えば、ヘリウムガス)を供給する構成を備えている。すなわち、静電チャック100には、ベース部材20の下面S4から接合部30の上面にわたって上下方向に延びる第1のガス流路孔131と、第1のガス流路孔131に連通すると共に板状部材10の吸着面S1に開口する第2のガス流路孔132とが形成されている。第1のガス流路孔131は、ベース部材20をZ軸方向に貫通する孔25と、接合部30をZ軸方向に貫通する孔35とが互いに連通した一体の孔である。また、第2のガス流路孔132の下端部は、径が拡大された拡径部134となっており、拡径部134内には、通気性を有する充填部材(通気性プラグ)160が充填されている。また、板状部材10の内部には、第2のガス流路孔132と連通すると共に面方向に環状に延びる横流路133が形成されている。ヘリウムガス源(図示しない)から供給されたヘリウムガスが、第1のガス流路孔131内に流入すると、流入したヘリウムガスは、第1のガス流路孔131から拡径部134内に充填された通気性を有する充填部材160の内部を通過して板状部材10の内部の第2のガス流路孔132内に流入し、横流路133を介して面方向に流れつつ、吸着面S1に形成されたガス噴出孔から噴出する。このようにして、吸着面S1とウェハWの表面との間に存在する空間に、ヘリウムガスが供給される。
A-2.板状部材10とベース部材20とを接合するための詳細構成:
次に、板状部材10とベース部材20とを接合するための詳細構成について説明する。図3は、静電チャック100における板状部材10とベース部材20との接合部分のXZ断面構成を概略的に示す説明図であり、図3には、板状部材10とメタライズ層60と接合部30とベース部材20とが示されている。図4は、メタライズ層60と接合部30との界面部分のXZ断面構成を概略的に示す説明図であり、図4には、板状部材10とメタライズ層60と接合部30とは示されている。なお、図3および図4において、接合部30のうち、斑点ハッチング部分は接合部30の形成材料であり、黒色部分は気孔Pである。
図2および図3に示すように、本実施形態の静電チャック100では、板状部材10の下面S2には、メタライズ層60が形成されている。メタライズ層60は、板状部材10の下面S2のうち、孔16や拡径部134の形成部分を除く、表面部分全体を覆っている。メタライズ層60は、主成分として、導電性材料(例えば、Ag、Cu、Au、Pt、Pb、Ni-Auフラッシュなど)を含む材料により形成された金属膜である。メタライズ層60のZ軸方向の厚さは、板状部材10のZ軸方向の厚さより薄く、例えば0.1μm程度である。
接合部30は、金属を含む多孔質体により形成されている。接合部30を形成する多孔質体の気孔率は、板状部材10の気孔率より高く、かつ、ベース部材20の気孔率より高い。接合部30を形成する多孔質体の気孔率は、例えば、20%以上、70%以下である。また、接合部30は、主成分として、粒径が100nm以下の金属超微粒子を含んでいる。具体的には、接合部30は、金属ナノ粒子(例えばAgナノ粒子やCuナノ粒子)の焼結体である。ここでいう主成分とは、含有割合(重量割合)の最も多い成分を意味する。図3および図4に示すように、接合部30は、複数の金属ナノ粒子が焼結して互いに接合したナノ金属粒子接合体である。このナノ金属粒子接合は、金属ナノ粒子同士の固相拡散接合(固相焼結)である。このため、接合部30では、金属ナノ粒子同士が固相(粒状)のまま接合することによって固相間に気孔Pが形成されており、その結果、接合部30は多孔質体になっている。
本実施形態の静電チャック100は、メタライズ層60と接合部30との界面に関する第1の条件を満たす。
<第1の条件>
メタライズ層60と接合部30とを含むZ軸方向に略平行な少なくとも1つの断面において、メタライズ層60と接合部30との界面接触率は、40%以上である。
なお、ここでいう「界面接触率」とは、メタライズ層60の面方向の長さ(所定の単位長さ)に対する、メタライズ層60と接合部30を形成する多孔質体(多孔質体の形成材料)との接触部分Tの長さの割合である。例えば、図4の断面画像には、メタライズ層60と多孔質体との接触部分T(図4において点線の矩形に囲まれた部分)が5つ存在している。メタライズ層60の面方向の単位長さをL(図4の断面画像の横幅)とし、各接触部分Tの面方向の長さをD1~D5とすると、メタライズ層60と接合部30との界面接触率は、次の式で示すことができる。
界面接触率(%)=[(D1+D2+D3+D4+D5)/L]×100
なお、メタライズ層60と接合部30との界面接触率は、次のように特定する。メタライズ層60と接合部30との界面部分において、互いに異なる複数箇所(例えば10箇所)のそれぞれの界面接触率を算出し、それらの複数箇所の界面接触率の平均値を、メタライズ層60と接合部30との界面接触率とする。
本実施形態の静電チャック100は、さらに、メタライズ層60と接合部30との界面に関する第2の条件を満たすことが好ましい。
<第2の条件>
メタライズ層60と接合部30とを含むZ軸方向に略平行な少なくとも1つの断面において、メタライズ層60と接合部30との界面接触率は、70%以上である。
なお、メタライズ層60と接合部30との界面接触率は、例えば、85%以下である。
A-3.静電チャック100の製造方法:
本実施形態の静電チャック100の製造方法は、例えば以下の通りである。まず、公知の方法により、板状部材10を作製する。例えば、セラミックスグリーンシートを複数枚作製し、所定のセラミックスグリーンシートに所定の加工を行う。所定の加工としては、例えば、チャック電極40やヒータ電極50等の形成のためのメタライズペーストの印刷、各種ビアの形成のための孔空けおよびメタライズペーストの充填等が挙げられる。これらのセラミックスグリーンシートを積層して熱圧着し、切断等の加工を行うことにより、セラミックスグリーンシートの積層体を作製する。作製されたセラミックスグリーンシートの積層体を焼成することにより、セラミックス焼成体である板状部材10を作製する。また、公知の方法により、ベース部材20を作製する。
次に、板状部材10の下面S2にメタライズ層60を形成する。例えば、板状部材10がアルミナにより形成されている場合、板状部材10の下面S2に、モリブデンマンガン法やコファイア法により金属膜(例えばNi等のストライクメッキ)を形成した後にAg、Cu、Au等のめっきを施す。これにより、ベース部材20の上面S3側に配置される最外層がAg、Cu、Au等により形成されたメタライズ層60を形成することができる。なお、メタライズ層60を形成する他の方法としては、金属蒸着、スパッタ、物理蒸着(PVD)が挙げられる。なお、板状部材10とメタライズ層60との密着性向上のため、例えば、板状部材10の下面S2側から、Ti、Mo、最外層(約0.1μm)の順に成膜してもよい。
次に、金属ナノ粒子を主成分とするペーストを、ベース部材20の上面S3上に膜状に塗布した後、その塗布されたペーストの上に板状部材10をマウントすることにより、板状部材10に形成されたメタライズ層60の下面S5とベース部材20の上面S3との間にペーストを挟み込ませる。そして、板状部材10に対して、ベース部材20側に向かう方向に、例えば、約0.1N/mm~1.0N/mm程度の圧力を加え、窒素雰囲気で270℃の熱処理を1時間施すことにより、板状部材10に形成されたメタライズ層60とベース部材20とを接合する接合部30を形成する。以上の工程により、本実施形態の静電チャック100が製造される。
A-4.本実施形態の効果:
以上説明したように、本実施形態の静電チャック100は、板状部材10と、ベース部材20と、接合部30とを備える。接合部30は、板状部材10およびベース部材20より気孔率が高い多孔質体によって形成されている。このため、本実施形態によれば、接合部30が緻密体によって形成された構成に比べて、板状部材10とベース部材20との熱膨張差による応力を緩和する応力緩和性を向上させることができる。また、本実施形態では、セラミックスにより形成された板状部材10の下面S2にメタライズ層60が形成され、このメタライズ層60とベース部材20とが、接合部30を形成する多孔質体によって接合されている。このため、板状部材10と多孔質体とが、メタライズ層60を介さずに直接接触する構成に比べて、板状部材10と多孔質体との接合強度が向上する。さらに、本実施形態では、Z軸方向に略平行な少なくとも1つの断面において、メタライズ層60と接合部30を形成する多孔質体との界面接触率は、40%以上である(上記第1の条件)。このため、本実施形態によれば、界面接触率が40%未満である構成に比べて、メタライズ層60と多孔質体(接合部30)との接合強度が向上する。これにより、本実施形態によれば、接合部30における応力緩和性を向上させつつ、板状部材10とベース部材20との間の接合部30による接合強度を向上させることができる。
また、本実施形態では、メタライズ層60と接合部30とを含むZ軸方向に略平行な少なくとも1つの断面において、メタライズ層60と接合部30との界面接触率は、70%以上であることが好ましい(第2の条件)。本実施形態によれば、板状部材10とベース部材20との間の接合部30による接合強度の向上に加えて、界面接触率が70%未満である構成に比べて、メタライズ層60と接合部30との間のガスシール性を向上させることができる。
また、本実施形態では、接合部30は、主成分として、粒径が100nm以下の金属超微粒子を含んでいるため、接合部が主成分として樹脂や半田を含む構成に比べて、接合部30の耐熱性を向上させることができる。例えば、接合部30が、Agナノ粒子により形成された構成では、接合部30の融点は約960℃である。また、接合部30では、200℃程度で接合が可能であるため、接合時における残留応力を最小限に抑えることができる。また、特に、接合部30が軟質性を有するAgやCuの金属超微粒子により形成された構成では、板状部材10とベース部材20との熱膨張差による応力を緩和する応力緩和性を、より効果的に向上させることができる。
A-5.性能評価:
図5は、各サンプルにおける接合部による接合強度とガスシール性とに関する評価結果を示す説明図である。図5に示すように、接合体の18つのサンプルについて、接合部による接合強度とガスシール性とに関する評価を行った。18つのサンプルは、全体として、上述の静電チャック100と略同一構成であり、具体的には、アルミナにより形成された矩形状の板状部材と、Cuにより形成された矩形状のベース部材と、接合部とを備える接合体である。但し、各サンプルは、例えばサイズや、板状部材がヒータ電極50等を備えない等の点で、上述の静電チャック100とは異なる。板状部材にはメタライズ層が形成されており、メタライズ層とベース部材とが、主成分としてAgナノ粒子を含む接合部によって接合されている。ベース部材には、貫通孔が形成されており、この貫通孔内に板状部材の表面が露出している。なお、各サンプルは、上述した製造方法と同様の方法により製造できる。
18つのサンプルは、メタライズ層と接合部との界面接触率が互いに異なる。具体的には、サンプル1~3では、界面接触率が40%未満であり、サンプル4~11では、界面接触率が40%以上、70%未満であり、サンプル12~18では、界面接触率が70%以上である。各サンプルにおけるメタライズ層と接合部との界面接触率は、板状部材とベース部材とでメタライズ層および接合部を挟み込む圧力と、上述したペーストから接合部を形成するための熱処理における加熱温度と、熱処理における加熱時間と、の少なくとも一方を変えることにより調整することができる。具体的には、板状部材とベース部材とでメタライズ層および接合部を挟み込む圧力が高いほど、熱処理における加熱温度を高くするほど、また加熱時間を長くするほど、メタライズ層と接合部との界面接触率を高くすることができる。
なお、各サンプルにおけるメタライズ層と接合部との界面接触率は、次のようにして特定する。まず、各サンプルの接合体の4つの角部を切り出して、その切り出された角部の切断面を研磨し、電子顕微鏡により例えば20,000倍の倍率で断面観察し、上述した方法により界面接触率を特定する。
接合部による接合強度は、次のようにして評価した。まず、各サンプルの接合体を、大気中で、150℃の加熱処理を、200時間行った。その後、各サンプルのうち、ベース部材を固定しつつ、棒を、ベース部材に形成された貫通孔から差し込んで板状部材の表面に押し付けて荷重を加えつつ、荷重を増加させていく。そして、接合部が破断したときの破壊荷重を測定した。接合強度は、破壊荷重を、接合部とメタライズ層との接合面積(接合部を形成する多孔質体の気孔は無視)で除算した値(MPa)とした。すなわち、ここでいう接合強度は、耐酸化試験後における接合部による接合強度(引っ張り強度(打ち抜き強度))である。
接合部によるガスシール性は、次のようにして評価した。各サンプルの接合部におけるベース部材の開口側に、パッキンを介して真空グリスを介在させて、真空ポンプを用いて、ベース部材の貫通孔内を真空引きした。真空ポンプは、例えば、ロータリーポンプと拡散ポンプとを有し、Heリークの検出機能を備えたものが好ましい。図5の「真空到達度」は、ベース部材の貫通孔内の真空度が飽和してから約10分後における真空ポンプの吸引圧力(Pa)である。図5の「Heリーク」では、「○」は、Heリークが検出されなかったことを意味し、「△」は、微量のHeリークが検出されたことを意味し、「×」は、所定量以上のHeリークが検出されたことを意味する。
図5に示すように、接合強度に関する評価結果について、サンプル1~3では、接合強度は40MPa未満で比較的に低く、サンプル4~18では、接合強度は40MPa以上で比較的に高い。このことは、メタライズ層と接合部との界面接触率を40%以上にすることにより、メタライズ層と多孔質体(接合部)との接合強度が向上することを意味する。
また、ガスシール性に関する評価結果について、サンプル1~3では、真空達成度が1.400Pa以上であり、かつ、所定量以上のHeリークが検出された。一方、サンプル4~18では、真空達成度が1.400Pa未満であり、かつ、所定量以上のHeリークは検出されなかった。このことは、メタライズ層と接合部との界面接触率を40%以上にすることにより、メタライズ層と接合部との間のガスシール性が向上することを意味する。さらに、サンプル12~18では、真空達成度が0.050Pa以下であり、かつ、Heリークは検出されなかった。このことは、メタライズ層と接合部との界面接触率を70%以上にすることにより、メタライズ層と接合部との間のガスシール性が、より効果的に向上することを意味する。
以上のように、接合部が、ナノ金属粒接合体である構成では、接合時における残留応力の低減や接合部の耐熱性の向上を図ることができる。その反面、ナノ金属粒接合は、固相拡散接合であるため、接合部は、多孔質体になるため、十分なガスシール性を確保できることが懸念される。例えば上記静電チャック100において、接合部30のガスシール性が低いと、例えば、第1のガス流路孔131内に流入したヘリウムガスが接合部30を介して静電チャック100の外部に漏れ出るおそれがある。また、酸化雰囲気と真空とを隔壁する部分に接合部が存在した場合、酸素のリークによりメタライズ層等が酸化し、接合強度が低下するおそれがある。これに対して、上述したサンプル4~18のように、メタライズ層と接合部との界面接触率を40%以上にすることにより、ガスシール性や耐酸化性などの面で信頼性の高い接合部を形成することができる。
B.変形例:
本明細書で開示される技術は、上述の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態に変形することができ、例えば次のような変形も可能である。
上記実施形態における静電チャック100の構成は、あくまで一例であり、種々変形可能である。例えば、上記実施形態では、第1の部材および第2の部材として、板状の板状部材10やベース部材20を例示したが、板状以外の形状(例えば円筒状)の部材であってもよい。また、静電チャック100は、上記第2の条件を満たさなくてもよい。
上記実施形態では、板状部材10の内部にヒータ電極50が配置されているが、必ずしも板状部材10の内部にヒータ電極50が配置されている必要はない。また、上記実施形態では、ベース部材20に冷媒流路21が形成されているが、必ずしもベース部材20に冷媒流路21が形成されている必要はない。
上記実施形態では、板状部材10の内部に1つのチャック電極40が設けられた単極方式が採用されているが、板状部材10の内部に一対のチャック電極40が設けられた双極方式が採用されてもよい。
上記実施形態の静電チャック100における各部材の形成材料は、あくまで一例であり、任意に変更可能である。例えば、上記実施形態では、ベース部材20が、金属により形成されているが、ベース部材20が、金属以外の材料(例えば、樹脂材料、セラミックス)により形成されるとしてもよい。また、第2の部材の熱膨張係数は、第1の部材の熱膨張係数と同じであってもよい。また、接合部30は、金属を含む多孔質体であればよく、金属超微粒子以外の材料(例えば、粒径が100nmより大きい金属粒子)により形成されたものでもよい。また、接合部30は、主成分とは異なる種類の金属ナノ粒子(Ag、Cu、Au、Pt、Pd)を微量添加してもよい。
また、接合部30が主成分としてAgナノ粒子を含む場合、Agと固相で相互拡散が生じやすい元素(状態図において相互に固溶相領域が多い元素 Ag、Cu、Au、Pt、Pb、Ni-Auフラッシュなど)を、メタライズ層60の最外層にすることが好ましい。また、上記実施形態において、ベース部材20がCuではなく、例えばFe系材料、Ti合金、Al合金により形成されている場合、同金属と接合部30に含まれるAgナノ粒子との相互拡散が起こりにくい。この場合、ベース部材20の上面S3にもメタライズ層を形成し、該メタライズ層と接合部との界面について、上述の第1の条件や第2の条件を満たすことが好ましい。
上記実施形態の静電チャック100の製造方法は、あくまで一例であり、種々変形可能である。
本発明は、静電引力を利用してウェハWを保持する静電チャック100に限らず、セラミックスにより形成された第1の部材と、第2の部材と、多孔質体により形成された接合部とを備える他の接合体(例えば、真空チャック等)にも同様に適用可能である。
10:板状部材 16:孔 20:ベース部材 21:冷媒流路 25,26,35,36:孔 30:接合部 40:チャック電極 50:ヒータ電極 60:メタライズ層 100:静電チャック 131:第1のガス流路孔 132:第2のガス流路孔 133:横流路 134:拡径部 140:ピン挿通孔 160:充填部材 P:気孔 S1:吸着面 S2:下面 S3:上面 S4:下面 S5:下面 T:接触部分 W:ウェハ

Claims (4)

  1. 第1の方向に略垂直な第1の表面を有し、セラミックスにより形成された第1の部材と、
    前記第1の部材の前記第1の表面に形成されたメタライズ層と、
    第2の表面を有し、前記第2の表面が前記第1の部材に形成された前記メタライズ層側に位置するように配置された第2の部材と、
    前記第1の部材の前記メタライズ層と前記第2の部材の前記第2の表面との間に配置されて前記第1の部材と前記第2の部材とを接合する接合部と、
    を備える接合体において、
    前記接合部は、主成分として、粒径が100nm以下のAgナノ粒子を含み、かつ、前記第1の部材および前記第2の部材より気孔率が高い多孔質体によって形成されており、
    前記第1の方向に略平行な少なくとも1つの断面において、前記メタライズ層の界面方向の長さに対する、前記メタライズ層と前記接合部を形成する前記多孔質体との接触部分の界面方向の長さの割合である界面接触率は、40%以上であり、
    前記メタライズ層と前記接合部と前記第1の部材との前記接合体内外の圧力差である真空達成度は、1.400Pa未満である、
    ことを特徴とする接合体。
  2. 請求項1に記載の接合体において、
    前記メタライズ層の最外層は、Ag、Cu、Au、Pt、Ni-Auフラッシュの少なくとも1つの成分により形成されている、
    ことを特徴とする接合体。
  3. 請求項1または請求項2に記載の接合体において、
    前記第1の方向に略平行な少なくとも1つの断面において、前記界面接触率は、70%以上である、
    ことを特徴とする接合体。
  4. 請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の接合体において、
    前記第1の部材は、セラミックスにより形成されているセラミックス部材であり、
    前記第2の部材は、金属により形成されているベース部材であり、
    前記接合体は、静電チャックである、
    ことを特徴とする接合体。
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