JP7249357B2 - 累進屈折力レンズの設計システム、累進屈折力レンズの設計方法、累進屈折力レンズの製造方法および累進屈折力レンズ群 - Google Patents

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Description

本発明は、累進屈折力レンズの設計システム、累進屈折力レンズの設計方法および累進屈折力レンズ群に関する。なお、優先権の基礎となる日本国出願の特願2018-186038、特願2019-48646、特願2019-48647の記載内容は全て本明細書にて参照可能である。
図1Aは、累進屈折力レンズの概略構成を示す図である。
図1Aの左側の図に示すように、累進屈折力レンズは、レンズの図中上側部分に設けられた遠方の物体を見るための屈折力を有する部分、すなわち遠方視に用いる屈折力を有する遠用部と、レンズの図中下側部分に設けられた近方の物体を見るための屈折力を有する部分、すなわち近方視に用いる屈折力を有する近用部、および遠用部から近用部の間に設けられる中間部を、領域として有し、遠用部から近用部の間で屈折力が徐々に変化するレンズである。
屈折力が徐々に変化する領域を累進帯という。累進帯長は、屈折力の変化が始まる累進開始点と終了する累進終了点との間の距離として定義される。
遠用部は、累進屈折力レンズの、上記累進開始点および累進開始点の上方の領域である。近用部は、一般的には累進終了点およびその下方を含む、累進屈折力レンズの領域である。中間部は、遠用部と近用部との間の領域であり、屈折力が累進的に変化する領域である。
図1Aの右側の図は子午線に沿った屈折力の変化を示す図である。遠用部では、屈折力が略一定である。近用部では、近距離物体を見るために屈折力が略一定である。中間部では、徐々に屈折力が変化している。遠方の物体を見る屈折力と近方にある物体を見る屈折力との差を加入度数ADD(D)という。
図1Bは、透過平均屈折力MPの分布および透過非点収差ASの分布の一例を示す図である。なお、図1Bの左側の分布すなわち透過平均屈折力MPの分布は、図3Aに示す分布と同じである。また、図1Bの右側の分布すなわち透過非点収差ASの分布は、図4Aに示す分布と同じである。
ここで、現在の累進屈折力レンズの技術では、遠用部、近用部だけでなく、屈折力が変化する中間部において、主注視線上において実質的に非点収差をゼロにする。換言すれば、現在の累進屈折力レンズでは、主注視線に沿って非点収差が実質的にゼロである。主注視線の詳細な定義は後述する。
このような累進屈折力レンズでは、異なる屈折力を有する遠用部と近用部が同じレンズ内に存在するので、非点収差が生じ易い。従来の設計では、子午線に沿ってできるだけ非点収差を取り除くように設計されている。そのため、子午線以外の領域では平均屈折力が目標の屈折力からずれ、固有非点収差や歪みが生じ易い。
固有非点収差とは、中間部および近用部の子午線を挟んだ両側の側部で増加する、累進屈折力レンズにおいて不可避の非点収差のことであり、詳細な定義は後述する。
一方、累進屈折力レンズに起因する固有非点収差や歪みを低減するために、累進屈折力レンズの設計では、近年、透過設計の概念が用いられている。この設計方法は、レンズを透過する実際の光線(光線追跡)を考慮に入れて設計するというものである。透過設計は、レンズを通過して眼に入る光がつくる、非点収差および屈折力分布に注目する。この透過設計は、例えば特許文献1に開示されている。
特許第5784418号公報
累進屈折力レンズαを装用していた者の眼の状況が変化することにより、異なるパラメータを備える累進屈折力レンズβに買い替えることは頻繁に行われる。装用者が、累進屈折力レンズαから累進屈折力レンズβへと変更すると、以前の累進屈折力レンズαを通したときの見え方から大きく変化する場合がある。
そこで、本発明の一実施例は、買い替えた累進屈折力レンズに装用者が馴染み易くする技術を提供することを目的とする。
以前の見え方から大きく変化する要因について、本発明者らは検討した。その結果、この要因としては、透過平均屈折力分布および透過非点収差の少なくともいずれかが、累進屈折力レンズαから大きく異なっていることに着目した。
本発明者らは更に検討を続けた結果、透過非点収差が付加された累進屈折力レンズ群の中で累進屈折力レンズを変更するのであれば、透過非点収差量を調整することにより、累進屈折力レンズαと累進屈折力レンズβとの間での屈折力に係る分布の一致率を100%に近づけられることが明らかとなった。
上記知見に基づきなされたのが以下の態様である。
本発明の第1の態様は、
近方距離を見るための近用部と、近方距離よりも遠くの距離を見るための遠用部と、近用部と遠用部との間に設けられ且つ累進屈折機能を有する中間部と、を備えた累進屈折力レンズの設計システムであって、
収差量Δα[D]の透過非点収差が付加された累進屈折力レンズαの装用者に対し、異なるパラメータを備える累進屈折力レンズβを提供する際に、累進屈折力レンズβの装用時の見え方を累進屈折力レンズαの装用時の見え方に近づけるよう、累進屈折力レンズβに対して付加する透過非点収差量Δβ[D]を設定する収差量設定部を備える、累進屈折力レンズの設計システムである。
本発明の第2の態様は、第1の態様に記載の態様であって、
異なるパラメータのうち少なくともひとつは加入度数であり、
収差量設定部は、累進屈折力レンズαと累進屈折力レンズβとの間での屈折力に係る分布の一致率を100%に近づけるよう、累進屈折力レンズβに対して付加する透過非点収差量Δβ[D]を設定し、
屈折力に係る分布は、縦軸yをレンズ鉛直方向、横軸xをレンズ水平方向、原点をレンズのプリズム参照点とする透過非点収差分布および透過平均屈折力分布の少なくともいずれかであり、
透過非点収差分布の場合、収差量設定部は、
透過非点収差がADD/4以下の領域であってy=-14.0mmである領域a´1の水平幅の一致率を97~103%とし、且つ、
透過非点収差がADD/4以下の領域であってy=-20.0mmである領域a´2の水平幅の一致率を97~103%とするよう、収差量Δβ[D]を設定し、
透過平均屈折力分布の場合、収差量設定部は、
透過平均屈折力が近用度数の半値以上の領域であってy=-14.0mmである領域Aの水平幅の一致率を97~103%とし、且つ、
透過平均屈折力が近用度数の半値以上の領域であってy=-20.0mmである領域Bの水平幅の一致率を97~103%とするよう、収差量Δβ[D]を設定する。
本発明の第3の態様は、第1または第2の態様に記載の態様であって、
異なるパラメータのうち少なくともひとつは加入度数であり、
x軸をレンズ水平方向、y軸をレンズ鉛直方向、原点をレンズのプリズム参照点としたうえで、原点を通過するx軸の正の方向からの回転角度を横軸(単位:度)、累進屈折力レンズの該原点を中心とした半径14.0mmの円上における該回転角度に応じた各点での経線方向の屈折力を加入度数で正規化したものを縦軸(単位:無次元)としたとき、累進屈折力レンズαのプロットと累進屈折力レンズβのプロットとでの縦軸方向の最大幅が0.1以下となるよう、収差量設定部が収差量Δβ[D]を設定する。
本発明の第4の態様は、第1~第3のいずれかの態様に記載の態様であって、
収差量Δαは、加入度数ADDα[D]の0.07~0.24倍の量であり、
収差量Δβは、加入度数ADDβ[D]の0.07~0.24倍の量とする。
本発明の第5の態様は、第1~第4のいずれかの態様に記載の態様であって、
累進屈折力レンズαおよび累進屈折力レンズβにおいて、遠用部、近用部および中間部のうち近用部および中間部に対して透過非点収差が付加され、
透過非点収差が付加された近用部および中間部においては、乱視矯正のための屈折力を差し引いた後において、
水平方向の屈折力の量が垂直方向の屈折力の量よりも大きい部分を含む、または、
垂直方向の屈折力の量が水平方向の屈折力の量よりも大きい部分を含む。
本発明の第6の態様は、
近方距離を見るための近用部と、近方距離よりも遠くの距離を見るための遠用部と、近用部と遠用部との間に設けられ且つ累進屈折機能を有する中間部と、を備えた累進屈折力レンズの設計システムであって、
収差量Δα[D]の透過非点収差が付加された累進屈折力レンズαの装用者に対し、異なるパラメータを備える累進屈折力レンズβを提供する際に、累進屈折力レンズβの装用時の見え方を累進屈折力レンズαの装用時の見え方に近づけるよう、累進屈折力レンズβに対して付加する透過非点収差量Δβ[D]を設定する、累進屈折力レンズの設計方法である。
本発明の第7の態様は、
近方距離を見るための近用部と、近方距離よりも遠くの距離を見るための遠用部と、近用部と遠用部との間に設けられ且つ累進屈折機能を有する中間部と、を備えた、累進屈折力レンズ群であって、
いずれの累進屈折力レンズにも透過非点収差が付加され、装用時の見え方が互いに類似する、累進屈折力レンズ群である。
本発明の第8の態様は、第7の態様に記載の態様であって、
累進屈折力レンズ群のうちの任意の二つである累進屈折力レンズαおよび累進屈折力レンズβは互いに異なる加入度数が設定され、
累進屈折力レンズαと累進屈折力レンズβとの間での屈折力に係る分布の一致率を100%に近づけるよう、累進屈折力レンズβに対して付加する透過非点収差量Δβ[D]を設定し、
屈折力に係る分布は、縦軸yをレンズ鉛直方向、横軸xをレンズ水平方向、原点をレンズのプリズム参照点とする透過非点収差分布および透過平均屈折力分布の少なくともいずれかであり、
透過非点収差分布の場合、
透過非点収差がADD/4以下の領域であってy=-14.0mmである領域a´1の水平幅の一致率が97~103%であり、且つ、
透過非点収差がADD/4以下の領域であってy=-20.0mmである領域a´2の水平幅の一致率が97~103%であり、
透過平均屈折力分布の場合、
透過平均屈折力が近用度数の半値以上の領域であってy=-14.0mmである領域Aの水平幅の一致率が97~103%であり、且つ、
透過平均屈折力が近用度数の半値以上の領域であってy=-20.0mmである領域Bの水平幅の一致率が97~103%である。
本発明の第9の態様は、第7または第8の態様に記載の態様であって、
累進屈折力レンズ群のうちの任意の二つである累進屈折力レンズαおよび累進屈折力レンズβは互いに異なる加入度数が設定され、
x軸をレンズ水平方向、y軸をレンズ鉛直方向、原点をレンズのプリズム参照点としたうえで、原点を通過するx軸の正の方向からの回転角度を横軸(単位:度)、累進屈折力レンズの該原点を中心とした半径14.0mmの円上における該回転角度に応じた各点での経線方向の屈折力を加入度数で正規化したものを縦軸(単位:無次元)としたとき、累進屈折力レンズαのプロットと累進屈折力レンズβのプロットとでの縦軸方向の最大幅が0.1以下である。
本発明の第10の態様は、第7~第9のいずれかの態様に記載の態様であって、
各累進屈折力レンズに付加された透過非点収差は、各累進屈折力レンズにおける加入度数ADDα[D]の0.07~0.24倍の量である。
本発明の第11の態様は、第7~第10のいずれかの態様に記載の態様であって、
遠用部、近用部および中間部のうち近用部および中間部に対して透過非点収差が付加され、
透過非点収差が付加された近用部および中間部においては、乱視矯正のための屈折力を差し引いた後において、
水平方向の屈折力の量が垂直方向の屈折力の量よりも大きい部分を含む、または、
垂直方向の屈折力の量が水平方向の屈折力の量よりも大きい部分を含む。
本発明の他の一態様は、
累進屈折力レンズαおよび累進屈折力レンズβの少なくともいずれかの加入度数ADDは1.5~3.0Dの範囲内であってもよい。累進屈折力レンズαおよび累進屈折力レンズβには加入度数が設定されていてもよい。
本発明の他の一態様は、
透過非点収差分布の場合、
透過非点収差がADD/4以下の領域であってy=-14.0mmである領域a´1の水平幅の一致率を好適には98~102%、更に好適には99~101%とし、且つ、
透過非点収差がADD/4以下の領域であってy=-20.0mmである領域a´2の水平幅の一致率を好適には98~102%、更に好適には99~101%とするよう、
および/または、
透過平均屈折力が近用度数の半値以上の領域であってy=-14.0mmである領域Aの水平幅の一致率を好適には98~102%、更に好適には99~101%とし、且つ、
透過平均屈折力が近用度数の半値以上の領域であってy=-20.0mmである領域Bの水平幅の一致率を好適には98~102%、更に好適には99~101%とするよう、収差量Δβ[D]を設定するのがよい。
本発明の他の一態様は、
遠用部の測定基準点Fにおける透過非点収差の値から近用部の測定基準点Nにおける透過非点収差の値までの変化量Δ[D]の絶対値は、加入度数ADD[D]の0.07~0.24倍であるのが好ましい。なお、変化量Δ[D]の範囲は、加入度数ADD[D]の0.10倍~0.20倍の量であることがより好ましく、0.12~0.15倍の量であることが特に好ましい。
本発明の他の一態様は、
近用部および中間部に対して付加されるのは、絶対値がゼロを超え且つ0.25D以下の透過非点収差であるのが好ましい。
本発明の他の一態様は、
乱視矯正のための屈折力を差し引いた後の遠用部の測定基準点Fにおける透過非点収差の値の絶対値が0.12D以下であるのが好ましい。
本発明の他の一態様は、
透過非点収差と共に透過屈折力が付加されるのが好ましい。
本発明の他の一態様は、
レンズ上方から下方に向かって見たときに、透過非点収差の付加が開始した後は、透過非点収差の付加量は減少させないのが好ましい。
また、レンズ上方から下方に向かって見たときに、少なくとも累進開始点から測定基準点Nまでの主注視線上(子午線の場合は交わる水平線までの子午線上)では、透過非点収差の付加が開始した後に付加量が単調増加し且つ単調増加した付加量は減少しないようにするまたは減少するとしても付加量の10%以下もしくは0.12D以下であるのも好ましい。
本発明の他の一態様は、
累進屈折力レンズβにおける透過非点収差の分布の、累進屈折力レンズαにおける透過非点収差の分布に対する一致率が所定の閾値内にあるか否かの判定を、コンピュータ装置内の判定部にて行ってもよい。また、コンピュータ装置内の判定部により、上記の収差量Δβ[D]の絶対値が、加入度数ADD[D]の0.07~0.24倍に収まるか否かの判定を行ってもよい。
本発明の他の一態様は、
近方距離を見るための近用部と、近方距離よりも遠くの距離を見るための遠用部と、近用部と遠用部との間に設けられ且つ累進屈折機能を有する中間部と、を備えた累進屈折力レンズの設計システムであって、
遠用部、近用部および中間部のうち近用部および中間部に対して透過非点収差を付加し、
透過非点収差が付加された近用部および中間部においては、乱視矯正のための屈折力を差し引いた後において、
水平方向の屈折力の量が垂直方向の屈折力の量よりも大きい部分を含むようにする、
または、
垂直方向の屈折力の量が水平方向の屈折力の量よりも大きい部分を含むようにする、累進屈折力レンズの設計システムである。
本発明の他の一態様は、
透過非点収差の付加前の累進屈折力レンズと累進屈折力レンズβとの間において、
累進屈折力レンズβの加入度数は3.00[D]未満(好適には2.00[D]以下)であり、
累進屈折力レンズαおよび累進屈折力レンズβにおいて、遠用部、近用部および中間部のうち近用部および中間部に対して透過非点収差が付加され、
透過非点収差が付加された近用部および中間部においては、乱視矯正のための屈折力を差し引いた後において、
水平方向の屈折力の量が垂直方向の屈折力の量よりも大きい部分を含む場合は、
透過平均屈折力が近用度数の半値以上の領域であってy=-14.0mmである領域Aの水平幅の一致率が90~100%であり、且つ、
透過平均屈折力が近用度数の半値以上の領域であってy=-20.0mmである領域Bの水平幅の一致率が90~100%であり、
垂直方向の屈折力の量が水平方向の屈折力の量よりも大きい部分を含む場合は、
透過非点収差がADD/4以下の領域であってy=-14.0mmである領域a´1の水平幅の一致率が60~100%であり、且つ、
透過非点収差がADD/4以下の領域であってy=-20.0mmである領域a´2の水平幅の一致率が60~100%である。
その規定に代えてまたはその規定と共に以下の規定を採用してもよい。
透過非点収差の付加前の累進屈折力レンズのプロットと累進屈折力レンズβのプロットとでの縦軸方向の最大幅が0.1以下である。
本発明の一実施例によれば、買い替えた累進屈折力レンズに装用者が馴染み易くする技術を提供できる。
図1Aは、累進屈折力レンズの概略構成を示す図である。 図1Bは、透過平均屈折力MPの分布および透過非点収差ASの分布の一例を示す図である。 図2は、累進屈折力レンズにおける水平方向と垂直方向の透過の屈折力分布の一例を説明する図である。 図3Aは、従来の累進屈折力レンズ(ADD=3.00D)に対応する透過平均屈折力の分布を示す図である。 図3Bは、従来の累進屈折力レンズ(ADD=3.00D)に対応する垂直方向の屈折力(VP)、水平方向の屈折力(HP)、平均屈折力(MP)における子午線方向の透過の屈折力変化を示す図である。 図3Cは、y=-4.0mmにおける従来の累進屈折力レンズ(ADD=3.00D)に対応する水平方向の透過屈折力、垂直方向の透過屈折力、およびそれらの平均値である透過平均屈折力の変化の概略図を示す図である。 図3Dは、y=-14.0mmにおける従来の累進屈折力レンズ(ADD=3.00D)に対応する水平方向の透過屈折力、垂直方向の透過屈折力、およびそれらの平均値である透過平均屈折力の変化の概略図を示す図である。 図4Aは、従来の累進屈折力レンズ(ADD=3.00D)に対応する透過非点収差の分布を示す図である。 図4Bは、従来の累進屈折力レンズに対応する子午線に沿った透過非点収差の変化を示す図である。 図4Cは、y=-4.0mmにおける従来の累進屈折力レンズ(ADD=3.00D)に対応する水平方向の透過非点収差の変化の概略図を示す図である。 図4Dは、y=-14.0mmにおける従来の累進屈折力レンズ(ADD=3.00D)に対応する水平方向の透過非点収差の変化の概略図を示す図である。 図5Aは、従来の累進屈折力レンズ(ADD=2.00D)に対応する透過平均屈折力の分布を示す図である。 図5Bは、従来の累進屈折力レンズ(ADD=2.00D)に対応する透過非点収差の分布を示す図である。 図6Aは、従来の累進屈折力レンズ(ADD=1.00D)に対応する透過平均屈折力の分布を示す図である。 図6Bは、従来の累進屈折力レンズ(ADD=1.00D)に対応する透過非点収差の分布を示す図である。 図7Aは、実施形態1(ADD=3.00D)に対応する透過平均屈折力の分布を示す図である。 図7Bは、実施形態1(ADD=3.00D)に対応する垂直方向の屈折力(VP)、水平方向の屈折力(HP)、平均屈折力(MP)における子午線方向の透過の屈折力変化を示す図である。 図7Cは、y=-4.0mmにおける実施形態1(ADD=3.00D)に対応する水平方向の透過屈折力、垂直方向の透過屈折力、およびそれらの平均値である透過平均屈折力の変化の概略を示す図である。 図7Dは、y=-14.0mmにおける実施形態1(ADD=3.00D)に対応する水平方向の透過屈折力、垂直方向の透過屈折力、およびそれらの平均値である透過平均屈折力の変化の概略を示す図である。 図8Aは、実施形態1(ADD=3.00D)に対応する透過非点収差の分布を示す図である。 図8Bは、実施形態1(ADD=3.00D)に対応する子午線に沿った透過非点収差の変化を示す図である。 図8Cは、y=-4.0mmにおける実施形態1(ADD=3.00D)に対応する透過非点収差の変化の概略図を示す図である。 図8Dは、y=-14.0mmにおける実施形態1(ADD=3.00D)に対応する透過非点収差の変化の概略図を示す図である。 図9Aは、実施形態1(ADD=2.00D)に対応する透過平均屈折力の分布を示す図である。 図9Bは、実施形態1(ADD=2.00D)に対応する透過非点収差の分布を示す図である。 図10Aは、実施形態1(ADD=1.00D)に対応する透過平均屈折力の分布を示す図である。 図10Bは、実施形態1(ADD=1.00D)に対応する透過非点収差の分布を示す図である。 図11Aは、実施形態1a(ADD=3.00D)に対応する透過平均屈折力の分布を示す図である。 図11Bは、実施形態1a(ADD=3.00D)に対応する透過非点収差の分布を示す図である。 図12Aは、実施形態1a(ADD=2.00D)に対応する透過平均屈折力の分布を示す図である。 図12Bは、実施形態1a(ADD=2.00D)に対応する透過非点収差の分布を示す図である。 図13Aは、実施形態1a(ADD=1.00D)に対応する透過平均屈折力の分布を示す図である。 図13Bは、実施形態1a(ADD=1.00D)に対応する透過非点収差の分布を示す図である。 図14Aは、参照形態1(ADD=3.00D)に対応する透過平均屈折力の分布を示す図である。 図14Bは、参照形態1(ADD=3.00D)に対応する透過非点収差の分布を示す図である。 図15Aは、参照形態1(ADD=2.00D)に対応する透過平均屈折力の分布を示す図である。 図15Bは、参照形態1(ADD=2.00D)に対応する透過非点収差の分布を示す図である。 図16Aは、参照形態1(ADD=1.00D)に対応する透過平均屈折力の分布を示す図である。 図16Bは、参照形態1(ADD=1.00D)に対応する透過非点収差の分布を示す図である。 図17Aは、実施形態2(ADD=3.00D)に対応する透過平均屈折力の分布を示す図である。 図17Bは、実施形態2(ADD=3.00D)に対応する垂直方向の屈折力(VP)、水平方向の屈折力(HP)、平均屈折力(MP)における子午線方向の透過の屈折力変化を示す図である。 図17Cは、y=-4.0mmにおける実施形態2(ADD=3.00D)に対応する水平方向の透過屈折力、垂直方向の透過屈折力、およびそれらの平均値である透過平均屈折力の変化の概略を示す図である。 図17Dは、y=-14.0mmにおける実施形態2(ADD=3.00D)に対応する水平方向の透過屈折力、垂直方向の透過屈折力、およびそれらの平均値である透過平均屈折力の変化の概略を示す図である。 図18Aは、実施形態2(ADD=3.00D)に対応する透過非点収差の分布を示す図である。 図18Bは、実施形態2(ADD=3.00D)に対応する子午線に沿った透過非点収差の変化を示す図である。 図18Cは、y=-4.0mmにおける実施形態2(ADD=3.00D)に対応する透過非点収差の変化の概略図を示す図である。 図18Dは、y=-14.0mmにおける実施形態2(ADD=3.00D)に対応する透過非点収差の変化の概略図を示す図である。 図19Aは、実施形態2(ADD=2.00D)に対応する透過平均屈折力の分布を示す図である。 図19Bは、実施形態2(ADD=2.00D)に対応する透過非点収差の分布を示す図である。 図20Aは、実施形態2(ADD=1.00D)に対応する透過平均屈折力の分布を示す図である。 図20Bは、実施形態2(ADD=1.00D)に対応する透過非点収差の分布を示す図である。 図21Aは、実施形態2a(ADD=3.00D)に対応する透過平均屈折力の分布を示す図である。 図21Bは、実施形態2a(ADD=3.00D)に対応する透過非点収差の分布を示す図である。 図22Aは、実施形態2a(ADD=2.00D)に対応する透過平均屈折力の分布を示す図である。 図22Bは、実施形態2a(ADD=2.00D)に対応する透過非点収差の分布を示す図である。 図23Aは、実施形態2a(ADD=1.00D)に対応する透過平均屈折力の分布を示す図である。 図23Bは、実施形態2a(ADD=1.00D)に対応する透過非点収差の分布を示す図である。 図24Aは、参照形態2(ADD=3.00D)に対応する透過平均屈折力の分布を示す図である。 図24Bは、参照形態2(ADD=3.00D)に対応する透過非点収差の分布を示す図である。 図25Aは、参照形態2(ADD=2.00D)に対応する透過平均屈折力の分布を示す図である。 図25Bは、参照形態2(ADD=2.00D)に対応する透過非点収差の分布を示す図である。 図26Aは、参照形態2(ADD=1.00D)に対応する透過平均屈折力の分布を示す図である。 図26Bは、参照形態2(ADD=1.00D)に対応する透過非点収差の分布を示す図である。 図27は、原点を通過するx軸の正の方向からの回転角度を横軸(単位:度)、累進屈折力レンズの該原点を中心とした半径14.0mmの円上における該回転角度に応じた各点での経線方向の屈折力を加入度数で正規化したものを縦軸(単位:無次元)としたときのプロットであり、透過非点収差が付加される前のプロットであり、ADDが1.00Dの場合、2.00Dの場合、3.00Dの場合についてのプロットを示す図である。 図28は、図27と同様の内容のプロットであり、参照形態1のプロットであり、ADDが1.00Dの場合、2.00Dの場合、3.00Dの場合(いずれも付加収差量0.50D)についてのプロットを示す図である。 図29は、図27と同様の内容のプロットであり、実施形態1のプロットであり、ADDが1.00Dの場合(付加収差量0.10D)、2.00Dの場合(付加収差量0.20D)、3.00Dの場合(付加収差量0.30D)についてのプロットを示す図である。 図30は、図27と同様の内容のプロットであり、参照形態2のプロットであり、ADDが1.00Dの場合、2.00Dの場合、3.00Dの場合(いずれも付加収差量0.50D)についてのプロットを示す図である。 図31は、図27と同様の内容のプロットであり、実施形態2のプロットであり、ADDが1.00Dの場合(付加収差量0.125D)、2.00Dの場合(付加収差量0.25D)、3.00Dの場合(付加収差量0.375D)についてのプロットを示す図である。 実施形態1、2の眼鏡レンズの製造方法を実施するための眼鏡レンズの製造システムの構成の一例を説明するブロック図である。 各実施形態に係る眼鏡レンズの設計方法を示すフローチャートである。 各実施形態の、目標透過分布を透過分布として持つレンズ表面形状を有する眼鏡レンズを作製する方法のフローを示すフローチャートである。
本発明の一態様について、以下の流れに従い説明する。
1.本発明の技術的思想の要旨
2.定義
3.透過基本設計
4.従来の累進屈折力レンズ
5.実施形態1に係る累進屈折力レンズの設計方法
5-1.実施形態1にて取り扱う累進屈折力レンズ(水平方向の屈折量>垂直方向の屈折力)
5-2.レンズ変更前後において、付加された透過非点収差量が所定範囲内にある場合(実施形態1および収差量を軽微に変更した実施形態1a)と所定範囲内にない場合(参照形態1)との比較
6.実施形態2の累進屈折力レンズの設計方法
6-1.実施形態2にて取り扱う累進屈折力レンズ(垂直方向の屈折量>水平方向の屈折力)
6-2.レンズ変更前後において、付加された透過非点収差量が所定範囲内にある場合(実施形態2および収差量を軽微に変更した実施形態2a)と所定範囲内にない場合(参照形態2)との比較
7.円周上の経線方向度数の観点からの各実施形態と各参照形態との比較
8.本発明の一態様に係るシステム構成
9.変形例
本願各図の符号および線等の意味は共通である。そのため、初出の符号および線等のみ説明し、以降は省略することもある。
[1.本発明の技術的思想の要旨]
本発明の一態様の累進屈折力レンズおよびその関連技術についての説明の前に、本発明の技術的思想の要旨について説明する。
本発明の技術的思想が創出されたきっかけの一つは、常識を覆し、眼鏡装用者が頻繁に視線を通過させる箇所に意図的に透過非点収差を付加したことにある。そしてその箇所とは、中間部および近用部である。なお、遠用部には該透過非点収差は付加しない。より正確に言えば、少なくとも遠用部に存在するフィッティングポイントまたはアイポイントFPには透過非点収差は付加しない。そして、この態様は、買い替え前の累進屈折力レンズαおよび買い替え後の累進屈折力レンズβに適用する。詳しくは後述の[2.定義]にて定義付けする。
このように透過非点収差の付加を行うことにより、もちろん子午線および測定基準点Nでは透過非点収差が増加する。但し、中間部および近用部全体において透過非点収差の急峻な変化は収まる。そして、結果的に透過非点収差が0.50D以下(乱視矯正のための屈折力を差し引いた後)となる明瞭な視野範囲を獲得できる。
このように透過非点収差が付加された累進屈折力レンズを本発明者らが多数作製および/またはシミュレーションした結果、累進屈折力レンズに設定されたパラメータが変化したとしても、コンピュータを使用して付加される透過非点収差量を調整することにより、買い替え前後において累進屈折力レンズの装用時の見え方を互いに近づけられることが明らかとなった。
以上の知見を基に想到された構成は以下のとおりである。
「近方距離を見るための近用部と、近方距離よりも遠くの距離を見るための遠用部と、近用部と遠用部との間に設けられ且つ累進屈折機能を有する中間部と、を備えた累進屈折力レンズの設計システムであって、
収差量Δα[D]の透過非点収差が付加された累進屈折力レンズαの装用者に対し、異なるパラメータを備える累進屈折力レンズβを提供する際に、累進屈折力レンズβの装用時の見え方を累進屈折力レンズαの装用時の見え方に近づけるよう、累進屈折力レンズβに対して付加する透過非点収差量Δβ[D]を設定する収差量設定部を備える、累進屈折力レンズの設計システム。または、そのように透過非点収差量Δβ[D]を設定する、累進屈折力レンズの設計方法。」
本発明の一態様によれば、買い替えた累進屈折力レンズに装用者が馴染み易くする技術を提供できる。
なお、後述にて示すデータを鑑みると、以下の態様を採用するのが好ましい。
上記異なるパラメータのうち少なくともひとつは加入度数とするのが好ましい。収差量Δα[D]の透過非点収差が付加された加入度数ADDα[D]の累進屈折力レンズαの装用者に対し、異なる加入度数ADDβ[D]の累進屈折力レンズβを提供するのが好ましい。なお、加入度数以外のパラメータを採用しても構わない。例えば、球面度数Sである遠用度数S、近用度数(S+ADD)を採用しても構わない。
そして、買い替えた累進屈折力レンズに装用者が馴染み易くすべく、累進屈折力レンズαと累進屈折力レンズβとの間での屈折力に係る分布の一致率を100%に近づける。その具体的な態様を以下に列挙する。なお、以下の具体的な態様のうち少なくともいずれかを適用すればよい。
(透過非点収差分布および透過平均屈折力分布の少なくともいずれかでの規定)
上記「屈折力に係る分布」は、y軸をレンズ鉛直方向、x軸をレンズ水平方向、原点をレンズのプリズム参照点とする透過非点収差分布および透過平均屈折力分布の少なくともいずれかとするのも好ましい。
透過非点収差分布および透過平均屈折力分布の少なくともいずれか(好ましくは両方)において、累進屈折力レンズの買い替え前後での一致率が100%に近ければ、買い替えた累進屈折力レンズに装用者が馴染み易いことの証明になる。なお、収差量の設定の目安は以下のとおりである。
透過非点収差分布の場合、収差量設定部は、
透過非点収差がADD/4以下の領域であってy=-14.0mmである領域a´1の水平幅の一致率を97~103%(より好適には98~102%、更に好適には99~101%)とし、且つ、
透過非点収差がADD/4以下の領域であってy=-20.0mmである領域a´2の水平幅の一致率を97~103%(より好適には98~102%、更に好適には99~101%)とするよう、収差量Δβ[D]を設定するのが好ましい。
なお、本発明の一態様の課題は、あくまで、買い替えた累進屈折力レンズに装用者が馴染み易くする技術を提供することである。この課題を解決すべく、買い替え前後において、透過非点収差の分布図または透過平均屈折力の分布図を類似させるというのが本発明の技術的思想である。だからこそ、本発明の一態様においては、透過非点収差が0.50D以下である領域と条件を固定するのではなく、一つの目安として透過非点収差がADD/4以下の領域に着目している。本明細書の透過非点収差分布図において、ADD/4に該当する等高線は太字で記載する。
透過平均屈折力分布の場合、収差量設定部は、
透過平均屈折力が近用度数の半値以上の領域であってy=-14.0mmである領域Aの水平幅の一致率を97~103%(より好適には98~102%、更に好適には99~101%)とし、且つ、
透過平均屈折力が近用度数の半値以上の領域であってy=-20.0mmである領域Bの水平幅の一致率を97~103%(より好適には98~102%、更に好適には99~101%)とするよう、収差量Δβ[D]を設定するのが好ましい。
なお、「屈折力に係る分布の一致率」は、例えば該分布が透過非点収差分布の場合、分布の所定の部分(例えば透過非点収差がADD/4以下の領域の水平幅)に着目したうえでの、レンズ変更前後における変化度合いを指す。具体的には、該一致率は、100*(レンズ変更後の水平幅)/(レンズ変更前の該水平幅)である。つまり、該水平幅がレンズ変更後に大きくなる場合、該一致率は100%を超え、該水平幅がレンズ変更後に小さくなる場合、該一致率は100%未満となる。
また、基礎出願では「変化率」という表現を使用していたが、レンズ変更前後で該分布に変化が無い方が好ましいこと、変化率100%という表現よりも一致率100%という表現の方が適切であるため、本明細書では一致率を採用する。
(円周上の経線方向度数での規定)
人間の眼は、リスティング則に基づいて回旋することにより物体を視認する。つまり、正面視から側方視または下方視等に移行する際に、回旋方向は主として経線方向(meridional)である。そのため、経線方向度数は、見え方の評価に直結し、ひいては累進屈折力レンズの評価に直結する。その結果、円周上の経線方向度数で累進屈折力レンズを規定するのが好ましい。一具体例は以下のとおりである。
まず、x軸をレンズ水平方向、y軸をレンズ鉛直方向、原点をレンズのプリズム参照点とする。以降、「屈折力に係る分布」についてはこの設定を前提とする。
そのうえで、原点を通過するx軸の正の方向からの回転角度を横軸(単位:度)、累進屈折力レンズの該原点を中心とした半径14.0mmの円上における該回転角度に応じた各点での経線方向の屈折力を加入度数で正規化したものを縦軸(単位:無次元)としたプロットを用意する(例えば後述の図27~図31)。
そして、このプロットにおいて、好適には、累進屈折力レンズαのプロットと累進屈折力レンズβのプロットとでの縦軸方向の最大幅が0.1以下(より好適には0.01以下、更に好適には0.001以下)となるよう、収差量設定部が収差量Δβ[D]を設定する。
なお、本明細書において「加入度数で正規化」とは、累進屈折力レンズの該原点を中心とした半径14.0mmの円上における該回転角度に応じた各点での経線方向の屈折力を、該レンズに設定された加入度数で除することを表す。
以上の規定により、累進屈折力レンズの評価に直結する眼球回旋方向に応じた度数が規定され、装用時の見え方が規定される。その結果、買い替えた累進屈折力レンズに装用者が馴染み易くなる。
他の好適な態様は以下のとおりである。
本発明の一態様において、上記パラメータとして加入度数ADDを採用する場合、
収差量Δαは、加入度数ADDα[D]の0.07~0.24倍の量であり、
収差量Δβは、加入度数ADDβ[D]の0.07~0.24倍の量とするのが好ましい。
後述の一態様にて示すデータが示すように、レンズ変更前後において上記範囲内に収差量を収めることにより、屈折力に係る分布の一致率が上記範囲に容易に収まる。
また、累進屈折力レンズα,βの各々に係る他の好適な態様は以下のとおりである。
本意図的に透過非点収差を付加した箇所であって眼鏡装用者が頻繁に視線を通過させる箇所とは、本発明の一態様においては中間部および近用部である。より正確に言えば、少なくとも遠用部に存在するフィッティングポイントまたはアイポイントFPには透過非点収差は付加しない。詳しくは後述の[2.定義]にて定義付けする。但し、後述の[9.変形例]でも言及するが、遠用部には該透過非点収差を付加することは排除しない。
このように透過非点収差の付加を行うことにより、もちろん子午線および測定基準点Nでは透過非点収差が増加する。但し、中間部および近用部全体において透過非点収差の急峻な変化は収まる。そして、結果的に明瞭な視野範囲を比較的広く獲得できる。
近用部および中間部に対して付加されるのは、絶対値がゼロを超え且つ0.25D以下の透過非点収差であるのが好ましい。なお、基礎出願に記載された主観評価の試験結果が示すように、少なくとも0.75D以下の透過非点収差の付加は許容される。
また、乱視矯正のための屈折力を差し引いた後の遠用部の測定基準点Fにおける透過非点収差の値の絶対値が0.12D以下であるのも好ましい。つまり、遠用部には透過非点収差が付加されていないため透過非点収差の絶対値が低く、しかも中間部および近用部には透過非点収差が付加されていながらも明瞭な視野範囲を獲得できる。
本発明の一態様に係る累進屈折力レンズの加入度数ADDには特に限定はない。累進屈折力レンズαおよび累進屈折力レンズβには加入度数が設定されていればよい。ただ、加入度数ADDが比較的高い(例えば1.5~3.0Dの範囲内である)と、透過非点収差も増加する傾向にあるところ、加入度数ADDを高く設定したとしても本発明の一態様に係る累進屈折力レンズを適用することにより、従来よりも明瞭な視野範囲を獲得できる、という大きな利点がある。そのことを鑑みると、累進屈折力レンズαおよび累進屈折力レンズβの少なくともいずれかの加入度数ADDが1.5~3.0Dの範囲内であってもよい。
累進屈折力レンズにおいて、面形状にしても透過にしても、平均屈折力誤差と非点収差とはトレードオフの関係にある。その関係は、累進屈折力レンズの中心から外れるほど顕著になる。
後述の実施形態1の累進屈折力レンズの設計方法にて取り扱う累進屈折力レンズは、平均屈折力誤差と非点収差のうち非点収差を重視、すなわち非点収差の増加を抑えるべく、上記のように、乱視矯正のための屈折力を差し引いた後の水平方向の屈折力の量が垂直方向の屈折力の量よりも大きい部分を含むよう設定している。
後述の実施形態2の累進屈折力レンズの設計方法にて取り扱う累進屈折力レンズは、平均屈折力誤差と非点収差のうち平均屈折力誤差を重視、すなわち平均屈折力誤差の増加を抑えるべく、上記のように、乱視矯正のための屈折力を差し引いた後の垂直方向の屈折力の量が水平方向の屈折力の量よりも大きい部分を含むよう設定している。
ちなみに、レンズ上方から下方に向かって見たときに、透過非点収差の付加が開始した後は、透過非点収差の付加量は実質的に減少させないのが好ましい。つまり、レンズ周縁まで付加量を増加させたり、所定の付加量まで増加させた後は一定の付加量にしたりする。言い方を変えると、レンズ上方から下方に向かって見たときに、透過非点収差の付加が開始した後に付加量は単調増加し且つ単調増加した付加量は減少しないまたは減少するとしても付加量の10%以下もしくは0.12D以下である。なお、レンズ加工によりレンズ周縁での付加量が変動し、その変動の際に該付加量が減少する可能性を鑑み、以下のように規定するのも好ましい。
「少なくとも累進開始点から測定基準点Nまで(子午線の場合は交わる水平線まで)では、透過非点収差の付加が開始した後に付加量が単調増加し且つ単調増加した付加量は減少しないまたは減少するとしても付加量の10%以下もしくは0.12D以下であるようにする。」
透過非点収差の付加が行われることにより透過屈折力に変化が生じる。平均屈折力は、球面屈折力+乱視屈折力/2で表される。例えば、垂直方向の屈折力を低下させることにより透過非点収差を付加する後掲の実施形態1の場合、垂直方向において、上記平均屈折力の式における乱視屈折力の値が低下することにより平均屈折力が低下する。これは、処方値の加入度数よりも低い値が加入度数として得られることを意味する。透過非点収差の付加による透過屈折力の変化は、垂直方向の屈折率を増加させることにより透過非点収差を付加する後掲の実施形態2の場合でも起こり得る。そこで、本実施形態においては、透過非点収差の付加に伴う屈折力の変化を補い、予定通りの加入度数を実現するよう、透過非点収差と共に透過屈折力(プラスまたはマイナス)も付加する。透過屈折力の付加量は、屈折力の差分と予定された加入度数に応じて決定すればよい。
以降、明記は省略するが、本明細書に記載の透過平均屈折力分布図は全て、上記透過屈折力の付加が行われた後のものである。
透過非点収差と共に透過屈折力も付加することの一具体例としては、以下のとおりである。予め透過非点収差の付加量を決めておく。この透過非点収差の付加に伴う屈折力の変化を予め加味したレンズ設計を用意する。このレンズ設計に対し、予め決めておいた透過非点収差の付加を行うことにより、目標とする加入度数が得られるように設定してもよい。
その結果、本明細書に記載の全ての透過平均屈折力分布図において、透過非点収差の付加後であっても当初設定した加入度数を実現できている。
なお、透過非点収差の付加が行われた累進屈折力レンズであって、近用部の測定基準点Nにおいて、該付加による屈折力の変化分に起因する、レンズ袋等に記載された遠用度数S+加入度数ADDの値すなわち近用度数からのずれが一部でも補填されていれば、透過屈折力の付加が行われているとみなす。一例としては、該ずれが累進屈折力レンズに最終的に存在しない状態または存在したとしてもそのずれ量が±0.12Dの範囲内の状態は、透過屈折力の付加が行われているとみなす。
以下、本発明の一態様に係る累進屈折力レンズの設計方法およびその関連技術について詳細に説明する。まず、実施形態1、2を理解するために、各項目の定義付けについて説明する。以降、実施形態1、2をまとめて単に実施形態または各実施形態と呼ぶこともある。
[2.定義]
本明細書では、一般的にレンズの屈折の程度を示す文言として、いわゆる度数、パワーの代わりに屈折力を用いる。
本明細書では、意味の違いを明確にして3種類の「非点収差」の用語を用いる。
まず、1つ目は「処方非点収差」である。処方非点収差は、眼の欠陥(眼の乱視)を補正するための処方データに関するものであり、処方データの円柱屈折力に相当する。
2つ目は「固有非点収差」である。固有非点収差は、光学レンズの表面形状に起因して生じる収差(非点収差)に関するものであり、光学レンズ設計で一般的に用いる「非点収差」という用語と同じ意味を有する。本明細書において、固有非点収差とは、本来、累進屈折力レンズの表面形状すなわち累進面を構成する非球面成分に起因して内在的に不可欠に生じる非点収差をいう。
3つ目は、「付加非点収差」である。付加非点収差は、実施形態の主たる構成要素であり、累進屈折力レンズの設計段階において、透過の目標の屈折力分布を設定する際に、処方非点収差(乱視矯正のための屈折力であって乱視度数)とは別に透過非点収差の分布に意図的に付加される非点収差をいう。説明の便宜上、本明細書においては付加非点収差のことを透過非点収差の付加ともいう。
本明細書において、付加される透過非点収差は、上記付加非点収差のことである。この付加非点収差は、累進屈折力レンズにおける物体側の面および眼球側の面の少なくともいずれかに面非点収差を付加することにより実現可能である。それにより、累進屈折力レンズ全体としての透過非点収差の付加が行われる。
なお、透過屈折力という表現も、累進屈折力レンズにおける物体側の面および眼球側の面の少なくともいずれかに面屈折力を付加したものを指す。
透過非点収差は、装用状態において累進屈折力レンズ上の所定の箇所での最大屈折力から最小屈折力を差し引いた値とする。
本明細書における「透過非点収差の付加量」の値は、付加される透過非点収差のうちの最大値を示す。つまり、透過非点収差の付加量が0.50Dということは、あくまで最大値が0.50Dであって、透過非点収差の付加の開始部分から最大値到達部分までの間に0.50D未満の付加量となることを許容する表現である。
なお、この最大値の上限および下限は、上記異なるパラメータ(例:加入度数)に応じて決定すればよく、特に限定は無い。例えば、下限は0.08Dとするのが好ましく、0.10Dとするのが更に好ましい。上限は0.75Dが好ましく、0.50Dであるのが更に好ましい。
「主注視線」とは、累進屈折力レンズにおける、遠方視に用いる遠用部、近方視に用いる近用部、および遠用部と近用部の間に位置する中間部において、物体を正面視したとき、視線が移動するレンズ表面上の軌跡線である。
「子午線」とは、累進屈折力レンズに設けられる2つの隠しマークの位置を結ぶ水平線に対して直交し、2つの隠しマークの位置の中点を通る垂直方向の線をいう。子午線は、本願各図に示す分布図のy軸に相当する。
眼は、近方視において視線は、鼻側(内側)に寄る。したがって、中間部および近用部における主注視線は、子午線に対して、鼻側(内側)に寄る。このような子午線に対して主注視線が鼻側による量を、内寄せ量という。したがって、内寄せ量が0の場合、主注視線は子午線に一致する。遠用部でも、主注視線は子午線に一致する。
本明細書では説明をわかりやすくするため、レンズの設計段階では内寄せ量を0に設定する例を挙げる。本明細書中では、レンズの設計段階のことを目標分布状態ともいう。その一方、レンズの設計および製造を経て得られたレンズに対しては内寄せ量を0より大きく設定する例を挙げる。本明細書中では、この状態のことを、最終的に得られたレンズ状態ともいう。但し、本発明はこれらの例に限定されない。
「遠用部測定基準点」は、装用者情報の処方データに記載される球面屈折力および円柱屈折力を累進屈折力レンズに与える点をいう。球面屈折力はいわゆる球面度数Sを指し、円柱屈折力はいわゆる乱視度数Cを指す。遠用部測定基準点(以降、単に測定基準点F、点Fともいう。)は、例えば、子午線上に位置し、2つの隠しマークの位置を結ぶ水平線から遠用部の側に、8.0mm離間した位置にある点である。
「フィッティングポイントまたはアイポイント(FP)」は、累進屈折力レンズを装用した際に、真正面に向いたときに視線が通る位置である。一般的には、測定基準点Fよりも数mm下方の位置に配置される。屈折力の変化は、このFPから下方にて発生させる。累進力の変化が開始する点を累進開始点とも呼ぶ。実施形態においてはFPの更に下方の幾何中心GCと累進開始点とを一致させており、プリズム参照点とも一致させている。
[1.本発明の技術的思想の要旨]で述べた「遠用部には透過非点収差は付加しない」とは、少なくとも遠用部に存在するFPには透過非点収差は付加しないことを意味する。遠用部のレンズ周縁領域には軸外収差が生じるため、レンズ周縁領域に非球面補正を施す場合がある。そのため、遠用部全体に透過非点収差が付加されない状態をもたらす必要はない。好適には、「遠用部には透過非点収差は付加しない」とは、少なくとも測定基準点FとFP(好適には更に下方のGC)との間には透過非点収差は付加しないことを意味する。
「中間部および近用部に透過非点収差を付加する」とは、中間部の少なくとも一部に透過非点収差を付加し、且つ、近用部の少なくとも一部に透過非点収差を付加することを意味する。
図2は、累進屈折力レンズにおける水平方向と垂直方向の透過の屈折力分布の一例を説明する図である。
透過非点収差の付加状態を数値で定義すると、遠用部の測定基準点F(図2中では符号16)における透過非点収差の絶対値Δ2から、中間部または近用部の任意の点における透過非点収差の絶対値Δ1に至るまでに値が増加している状態を指す。
後述の[9.変形例]に記載した透過非点収差の付加のパターン1、3に示すように、必ずしも、累進開始点且つ幾何中心GCを通過する水平線よりも下方の領域全体に対して透過非点収差を付加せずともよい。
また、レンズ上方から下方に見たときに、必ずしも、FP直下、累進開始点直下、GC直下、またはプリズム開始点直下から透過非点収差の付加を開始しなくともよい。累進開始点と測定基準点Nとの間にて透過非点収差の付加を開始すればよい。中間部における遠用部寄りの部分には透過非点収差を付加せず、近用部寄りの部分のみに透過非点収差を付加してもよい。
但し、透過非点収差の付加を開始した部分から下方において、中間部および近用部を通過する主注視線(および/または子午線)上には透過非点収差を付加するのが好ましい。少なくとも、累進開始点から測定基準点Nまでの間の部分から測定基準点Nに至るまで全体に主注視線上に透過非点収差を付加するのが好ましい。子午線でいうと、少なくとも、累進開始点から測定基準点Nまでの間の部分(例えばGCから半径5mm内、好適には3mm内)から測定基準点Nと交わる水平線に至るまでの子午線全体上に透過非点収差を付加するのが好ましい。なお、FPおよび累進開始点は通常だと子午線上(y軸上)に存在するため、水平線を使用していないが、仮に子午線上に存在しない場合でも水平線を使用することにより、上記「子午線全体」を定義することは可能である。
「近用部測定基準点」は、装用者情報の処方データに記載される球面屈折力に対して加入度数ADDが付加された状態の点をいい、レンズ上方から下方に向かって見たときに最初に球面屈折力+ADDが実現される点をいう。近用部測定基準点(以降、単に測定基準点N、点Nともいう。)も、子午線上に位置する。
ちなみに、装用者情報の処方データは、累進屈折力レンズのレンズ袋に記載されている。つまり、レンズ袋があれば、装用者情報の処方データに基づいた累進屈折力レンズの物としての特定が可能である。そして、累進屈折力レンズはレンズ袋とセットになっていることが通常である。そのため、レンズ袋が付属した累進屈折力レンズ群も本発明の技術的思想が反映されているし、レンズ袋と累進屈折力レンズとのセットの群についても同様である。
また、測定基準点F、フィッティングポイントまたはアイポイントFP、測定基準点Nは、レンズ製造業者が発行するリマークチャート(Remark chart)またはセントレーションチャート(Centration chart)を参照することにより、位置の特定は可能となる。
なお、以降の図で示す透過平均屈折力の分布あるいは透過非点収差の分布の透過分布では、累進屈折レンズの累進面の各位置を光線が通過して形成される透過平均屈折力および透過非点収差を、光線が通過する該累進面の位置で示している。
また、透過平均屈折力または透過非点収差の透過分布において、レンズ表面で定義される遠用部に対応する透過分布上の場所のことを「遠用部に対応した部分」と表現する。説明の便宜上、「遠用部に対応した部分」を単に「遠用部」とも表現する。特記無い限り、「遠用部」は上記「遠用部に対応した部分」のことを指す。
なお、遠用部は、近方距離よりも遠くの距離を見るための領域であれば特に限定は無い。例えば、無限遠ではなく所定距離(1m程度)を見るための領域であってもよい。このような領域を備えた眼鏡レンズとしては、中間距離(1m~40cm)ないし近方距離(40cm~10cm)の物体距離に対応する中近(intermediate-near)レンズ、該近方距離内にて対応する近近(near-near)レンズが挙げられる。
上記のいずれの眼鏡レンズにせよ、中間部および近用部は、近用部および中間部の表面形状を調整した非点収差調整領域(図2に示す領域R)を含む。この眼鏡レンズを通して透過した光線がつくる透過非点収差の分布のうち中間部および近用部における最大屈折力位置は、水平方向の略同じ位置である。つまり、中間部および近用部における最大屈折力位置は、座標でいうとx軸の値が略同じである。
「最大屈折力位置」とは、水平方向の屈折力と水平方向に直交する垂直方向の屈折力とがそれぞれ最大屈折力となる位置である。水平方向の屈折力と垂直方向の屈折力がそれぞれ最大屈折力となる最大屈折力位置が略同じであるとは、2mm以内で離間する場合を許容範囲として含むことを意味する。
後述の各実施形態によれば、中間部および近用部における水平方向の上記最大屈折力と垂直方向の上記最大屈折力との差は、遠用部測定基準点に対応した点における水平方向の屈折力と垂直方向の屈折力の差と異なる。該差の絶対値は、好ましくは0.25D以下である。
なお、非点収差調整領域内の子午線に沿った場所に対応した場所でも、上記最大屈折力の差が遠用部測定基準点に対応した点における水平方向の屈折力と垂直方向の屈折力の差と異なることが好ましい。
後述の実施形態1での「透過非点収差が付加された近用部および中間部においては、乱視矯正のための屈折力を差し引いた後において、水平方向の屈折力の量が垂直方向の屈折力の量よりも大きい部分を含む」とは、近用部および中間部での透過非点収差が付加された部分の少なくとも一部において、乱視矯正のための屈折力を差し引いた後において、水平方向の屈折力の量が垂直方向の屈折力の量よりも大きい状態であることを意味する。もちろん、透過非点収差が付加された部分においては、水平方向の屈折力の量が垂直方向の屈折力の量よりも常に大きい状態でもよい。また、近用部および中間部における、少なくとも主注視線(および/または子午線)上(好適には少なくとも累進開始点から測定基準点Nまで)において、乱視矯正のための屈折力を差し引いた後において、水平方向の屈折力の量が垂直方向の屈折力の量よりも大きい状態であるのも好ましい。
なお、後述の実施形態2での「透過非点収差が付加された近用部および中間部においては、乱視矯正のための屈折力を差し引いた後において、垂直方向の屈折力の量が水平方向の屈折力の量よりも大きい部分を含む」とは、本段落に記載の内容において水平と垂直とを逆に置き換えた内容である。
また、本明細書でいうy方向は、子午線に沿った方向であり、垂直方向である。装用状態でのレンズ上方を+y方向とし、レンズ下方を-y方向とする。x方向は、子午線に直交する方向であり、水平方向である。装用者と対向してみたときにレンズ右方を+x方向とし、レンズ左方を-x方向とする。
[3.透過基本設計]
本発明の一態様は、累進屈折力レンズの買い替え前後の見え方を同じようにするシステム、設計方法、およびレンズ群を主旨とする。この主旨を説明するために、まず、本発明の一態様にて取り扱う累進屈折力レンズ自体について説明する。
以下、実施形態で用いる透過基本設計における透過非点収差の分布について説明する。透過基本設計自体については公知の技術(例えば特許文献1に記載の内容)を採用して構わない。
垂直方向(y方向)のタンジェンシャル透過屈折力(T)と、水平方向(x方向)のサジタル透過屈折力(S)との差から、透過非点収差を算出できる。その際、遠方視の場合における透過非点収差を、遠方視の場合のTとSとから算出するとともに、近方視の場合における透過非点収差も、近方視の場合のTとSとから算出する。
累進屈折力レンズの各位置を通過する光線がつくる非点収差の成分(遠方視および近方視各々におけるTとS)を用いて、平均屈折力MPの分布と非点収差ASの分布を作ることができる。この分布が、透過非点収差の分布および透過平均屈折力の分布である。
このような透過非点収差の分布および透過平均屈折力の分布が、目標として予め定めた透過非点収差の分布および透過平均屈折力の分布に近似するように、レンズ表面形状が調整される。
その際、透過非点収差の分布および透過平均屈折力の分布は、少なくとも、角膜-レンズ頂点間距離、前傾角、およびフロント角の情報を用いて、累進屈折力レンズの表面形状から算出される分布であることが好ましい。
透過の目標分布(非点収差の分布および平均屈折力の分布)に近似するレンズ表面形状が計算されると、加工機械によってレンズを製造することができる。
実施形態1に係る累進屈折力レンズの設計方法を説明する前に、実施形態1の累進屈折力レンズの設計方法にて取り扱う累進屈折力レンズの比較対象となる従来の累進屈折力レンズを説明する。
なお、本発明の一態様に係る収差量設定部が使用する規定としては、上記(透過非点収差分布および透過平均屈折力分布の少なくともいずれかでの規定)を主に例示する。その後、(円周上の経線方向度数での規定)を、各実施形態まとめて例示する。
[4.従来の累進屈折力レンズ]
図3および図4は、従来の透過の基本設計を行った累進屈折力レンズを説明する図である。図3A~図3Dは、透過平均屈折力の分布と、垂直方向に沿った(子午線に沿った)および水平方向に沿った透過平均屈折力(MP)および非点収差(VP、HP)の変化を示す図である。なお、縦軸yはレンズ鉛直方向を示し、横軸xはレンズ水平方向を示し、原点はレンズのプリズム参照点を示す。
図4A~図4Dは、透過非点収差の分布と、垂直方向に沿ったおよび水平方向に沿った透過平均屈折力および透過非点収差の変化を示す図である。
なお、本項目にて挙げる従来の累進屈折力レンズは、後述の実施形態1および実施形態2で挙げる例における、透過非点収差が付加される前のレンズであり、いわば各実施形態の累進屈折力レンズのオリジナルレンズである。
透過平均屈折力および透過非点収差を示す面は、レンズを通過する光線が投影される眼の側の仮想の遠点球面である。「仮想」という言葉は、面がレンズの実際の表面ではないことを意味する。ここでの透過平均屈折力および透過非点収差は、(レンズ表面の曲率半径の逆の意味での)表面平均屈折力および表面非点屈折力とは異なり、眼の側で発現する平均屈折力および固有非点収差である。
以下、図3および図4を用いて従来の累進屈折力レンズについて説明する。
図3Aは、従来の累進屈折力レンズ(ADD=3.00D)に対応する透過平均屈折力の分布を示す図である。図3Aにて採用した条件を以下に列挙する。
・レンズ直径:60mm
・内寄せ量:0.0mm
・S(遠用部測定基準点における球面屈折力):+0.00D
・C(円柱屈折力):+0.00D
・ADD:3.00D
・累進帯長:18mm
矢印「A」および「B」は、所定の屈折力(例えば1.00D)以上の領域の水平幅を示す。矢印「A」「B」のことを領域A、領域Bともいう。
矢印「A」はy=-14.0mmの部分、すなわち近用部の代表部分に対応する。
矢印「B」はy=-20.0mmの部分、すなわち近用部の下方部分を表す代表部分に対応する。なお、y=-20.0mmは、フレームへのレンズの供給条件を考慮した場合、近用部を確保するのに下限値として十分である。
本発明の一態様に係る累進屈折力レンズと従来の累進屈折力レンズとの対比の際には、矢印「A」「B」は、従来の累進屈折力レンズよりも、本発明の一態様に係る累進屈折力レンズだと近用度数の半値である(遠用度数+加入度数/2)以上の領域が水平方向に広く確保可能であることを示すために使用する。
その一方、本発明の一態様に係る累進屈折力レンズと後述の参照形態1との対比の際には、矢印「A」「B」は、透過平均屈折力の分布の形状の変化の指標として使用する。一例としては、所定のyの位置における、近用度数の半値以上の領域の水平方向の広さを、透過平均屈折力の分布の形状の変化の指標として使用する。この参照形態1とは、すなわち本発明の一態様に係る累進屈折力レンズの特徴は有している一方で、該レンズを買い替えたとき(例:ADDを変えたレンズを購入したとき)に本発明の一態様に係る条件を満たしていない例である。
図3Bは、従来の累進屈折力レンズ(ADD=3.00D)に対応する子午線に沿った透過の屈折力の変化を示す図である。縦軸はy方向の位置[mm]を示し、横軸は加入度数ADD[D]にしたがって値が変化する平均屈折力[D]を示す。
また、図3Bでは、垂直方向の屈折力(VP)のラインが点線、水平方向の屈折力(HP)のラインが破線、平均屈折力(MP)のラインが実線である。MPはVPとHPの平均である。
図3Bに示すMPの線によれば、y=4.0mmでの累進開始点から、平均屈折力が加入度数(ADD)2.00Dに達するy=-14.0mmの累進終了点までの累進帯長は18mmを示す。
累進開始点と累進終了点との間の領域は中間部に対応する。累進開始点の上方の領域は、遠用部に対応する。累進終了点の下方の領域は、近用部に対応する。
図3Cおよび図3Dは、y=-4.0mm、y=-14.0mmにおける従来の累進屈折力レンズ(ADD=3.00D)に対応する水平方向の透過屈折力、垂直方向の透過屈折力、およびそれらの平均値である透過平均屈折力の変化の概略を示す図である。縦軸は屈折力[D]を示し、横軸はx方向(水平方向)の位置[mm]を示す。中間部の代表値としてy=-4.0mm、近用部の代表値としてy=-14.0mmをそれぞれ設定している。
図3B~図3Dは、子午線に沿って、透過非点収差がほとんどないことを示している。少なくとも透過非点収差は付加されていない。これは、後述の実施形態すなわち中間部および近用部に透過非点収差を付加する手法とは大きく異なる点である。
図4Aは、図3Aにて採用した条件下での従来の累進屈折力レンズ(ADD=3.00D)に対応する透過非点収差の分布を示す図である。以降、明記無い限り、透過屈折力分布に対応する透過非点収差分布は、透過屈折力分布にて採用した条件下での分布とする。
領域「a」は、明瞭な視野範囲の指標として用いられる。明瞭な視野範囲は、装用者が累進屈折力レンズを通して明瞭に見ることができる視野の範囲である。明瞭な視野範囲は、透過非点収差の特定の等高線によって挟まれた非閉塞領域として定義される。この例では、明瞭な視野範囲を示す透過非点収差の値は0.50Dである。この値は0.50Dに限定されず、例えば0.25Dであってもよい。指標に用いる透過非点収差の値は、0.50Dを超えないことが好ましい。
その一方、本発明の一態様に係る累進屈折力レンズに対しては領域「a´」を使用する。領域「a´」は、透過非点収差の分布の形状の変化の指標として使用する。一例としては、所定のyの位置における、透過非点収差がADD/4以下の領域の水平方向の広さを、透過非点収差の分布の形状の変化の指標として使用する。なお、本発明の一態様に係る累進屈折力レンズと従来の累進屈折力レンズとで加入度数が同じ場合、本発明の一態様に係る累進屈折力レンズの方が、明瞭な視野範囲が広く確保できることを示す指標としても使用する。
領域a´の2つの矢印は、透過屈折力分布に係る図3Aにて述べたのと同様に、y=-14.0mm(近用部の代表部分:領域a´1)であり、y=-20.0mm(近用部の下方部分を表す代表部分:領域a´2)である。領域a´1および領域a´2をまとめて領域「a´」とも称する。
図4Aの符号bの〇丸で囲まれた領域は、最大の透過非点収差が存在する領域に対応し、領域bの透過非点収差の値は最大である。なお、領域「b」は、領域「a´」の側方の領域である。領域「b」は、領域「a´」のx座標よりも絶対値が大きいx座標の領域である。また、領域「b」は、最大の透過非点収差の部分を含む領域でもある。
図4Bは、従来の累進屈折力レンズ(ADD=3.00D)に対応する子午線に沿った透過非点収差の変化を示す図である。縦軸はy方向の位置[mm]を示し、横軸は透過非点収差(D)を示す。図4Bでは、子午線に沿った透過非点収差が、図3Bに対応して実質的にゼロであることを示している。
図4Cおよび図4Dは、y=-4.0mm、y=-14.0mmにおける従来の累進屈折力レンズ(ADD=3.00D)に対応する、水平方向の透過非点収差の変化の概略を示す図である。縦軸は透過非点収差[D]を示し、横軸はx方向の位置[mm]を示す。
図4Cおよび図4Dによれば、子午線に沿った透過非点収差(x=0.0mm)の値はほぼゼロである。これは、後述の実施形態、すなわち中間部および近用部に透過非点収差を付加した後の透過非点収差分布とは大きく異なる点である。
参考までに、従来の累進屈折力レンズにおいて他の加入度数に設定したものを例示する。
図5Aは、従来の累進屈折力レンズ(ADD=2.00D)に対応する透過平均屈折力の分布を示す図である。
図5Bは、従来の累進屈折力レンズ(ADD=2.00D)に対応する透過非点収差の分布を示す図である。
図6Aは、従来の累進屈折力レンズ(ADD=1.00D)に対応する透過平均屈折力の分布を示す図である。
図6Bは、従来の累進屈折力レンズ(ADD=1.00D)に対応する透過非点収差の分布を示す図である。
以下、図2に示す累進屈折レンズ10の実施形態を説明する。以下の実施形態では、子午線上に透過非点収差を付加している。なお、説明の便宜上、上記(従来の累進屈折力レンズ)の欄にて説明した内容と重複する内容は記載を省略する。
ちなみに、実施形態1では最初に、先に挙げた従来の累進屈折力レンズと同様、ADDが3.00Dの例を挙げる。この例を、実施形態1(ADD=3.00D)とも記載する。また、ADDが2.00D、ADDが1.00Dの例についても挙げるが、それらの例は、実施形態1(ADD=2.00D)、実施形態1(ADD=1.00D)とも記載する。
[5.実施形態1に係る累進屈折力レンズの設計方法]
(5-1.実施形態1にて取り扱う累進屈折力レンズ(水平方向の屈折量>垂直方向の屈折力))
以下、本発明の実施形態1について説明する。(本発明の技術的思想の要旨)の欄にて述べたように、実施形態1では、非点収差を重視、すなわち非点収差の増加を抑えるべく、乱視矯正のための屈折力を差し引いた後において、水平方向の屈折力の量が垂直方向の屈折力の量よりも大きくなる部分を含むよう設定している。
図7および図8は、図2に示す累進屈折レンズ10の一実施形態であって、透過非点収差の分布において、近用部および中間部に対応した部分に透過非点収差が付加され、垂直方向の屈折力が水平方向の屈折力よりも小さい実施形態1(ADD=3.00D)を示す図である。
図7A~図7Dは、実施形態1(ADD=3.00D)における透過平均屈折力の分布の一例と、垂直方向および水平方向に沿った透過平均屈折力および透過非点収差の変化の一例を示す図である。
図8A~図8Dは、実施形態1(ADD=3.00D)における透過非点収差の分布の一例と、垂直方向および水平方向に沿った透過平均屈折力および透過非点収差の変化の一例を示す図である。
以下、図7および図8をより詳細に説明する。
図7Aは、実施形態1(ADD=3.00D)に対応する透過平均屈折力の分布を示す図である。図7Aにて採用した条件は、上記(従来の累進屈折力レンズ)の欄にて採用した条件と同一であるため記載を省略する。なお、実施形態1(ADD=3.00D)の付加される透過非点収差の収差量は0.30Dとする。
図7Bは、実施形態1(ADD=3.00D)に対応する子午線に沿った透過の屈折力の変化を示す図である。縦軸はy方向の位置[mm]を示し、横軸は加入度数ADD[D]にしたがって値が変化する平均屈折力[D]を示す。
図7Bにおいて、平均屈折力(MP)はレンズ下方に向かって上昇している。その理由は以下のとおりである。
累進終了点であるy=-14.0mmにおいて、垂直方向の屈折力(HP)と水平方向の屈折力(VP)との差を0.30D設ける。実施形態1(ADD=3.00D)では、少なくとも子午線上において、水平方向の屈折力(VP)が垂直方向の屈折力(HP)よりも高くなるように設定する。具体的には、累進開始点から下方の子午線に対して水平方向の屈折力を0.15D増加させ且つ垂直方向の屈折力を0.15D減少させ、透過非点収差を0.30D付加している。その際に、下方に向けて平均屈折力(MP)を増加させ、測定基準点Nにて平均屈折力がS+ADDの値(ここでは3.00D)となるように設定する。この設定により、中間部および近用部において0.30Dの透過非点収差が付加される。実施形態1における透過非点収差の付加の原理は、付加量を変えたとしても上記のとおりである。
この非点収差は、もともと累進部分に存在している固有非点収差を打ち消す方向に働くため、近用部の明瞭な視野領域が広がる。その理由としては以下のとおりである。
累進屈折力レンズだと、レンズ下方に向けて屈折力が増加する関係上、累進部分に存在している固有非点収差は、垂直方向の屈折力>水平方向の屈折力という関係を有する。
その一方、実施形態1(ADD=3.00D)にて付加される透過非点収差は、水平方向の屈折力>垂直方向の屈折力という関係を有する。
結局、実施形態1(ADD=3.00D)にて付加される透過非点収差が、累進部分に存在している固有非点収差を打ち消すことになる。
図7Cおよび図7Dは、それぞれy=-4.0mmおよびy=-14.0mmにおける実施形態1(ADD=3.00D)の水平方向の透過屈折力、垂直方向の透過屈折力、およびそれらの平均値であるの変化の概略を示す図である。縦軸は屈折力[D]を示し、横軸はx方向の位置[mm]を示す。
図7Cおよび図7Dにおいて、子午線近傍である約x=-5.0mmからx=5.0mmまでの範囲内で、垂直方向の屈折力は、水平方向の屈折力よりも小さい。その一方、上記範囲外の領域では、垂直方向の屈折力は、水平方向の屈折力よりも大きい。
図7Dでは、周辺の領域に向かうほど垂直方向の屈折力が小さくなるため、近用部周辺の透過非点収差は小さくなる。このような透過非点収差の低減については、図4Aと図8Aとを比較して後述する。
換言すれば、付加される透過非点収差は0.30Dであり、中間部および近方部における子午線に沿って見ると、垂直方向の屈折力は水平方向の屈折力よりも小さい。これは、累進面に特有の歪みが解消される方向である。
図8Aは、実施形態1(ADD=3.00D)に対応する透過非点収差の分布を示す図である。
図8Bは、実施形態1(ADD=3.00D)に対応する子午線に沿った透過非点収差の変化を示す図である。縦軸は、y方向の位置[mm]を示し、横軸は、伝達された透過非点収差(D)を示す。
図8Bは、中間部および近用部において、所定量の0.30Dの透過非点収差が意図的に子午線に沿って付加されていることを示している。処方データに含まれる処方非点収差と所定量の付加非点収差との和に対応する透過の性能パラメータは、0.30Dである。
図8Cおよび図8Dは、それぞれy=-4.0mmおよびy=-14.0mmでの実施形態1(ADD=3.00D)の透過非点収差の変化の概略を示す図である。縦軸は透過非点収差[D]、横軸はx方向の位置[mm]である。
図8Cおよび図8Dでは、約0.30Dの透過非点収差が子午線に沿って付加される。近用部の近用部基準点(N)が設定されるy=-14.0mmでは、透過非点収差の付加量0.30Dに達する。
実施形態1(ADD=3.00D)では、透過非点収差が、眼の側で形成され、しかも近用部および中間部に対応した部分に付加されることを示す。さらに、一例では、近用部の1点に対応した部分において、垂直方向の屈折力は水平方向の屈折力よりも小さい。別の一例では、中間部および近用部の子午線(または主注視線)において、垂直方向の屈折力は水平方向の屈折力よりも小さい。換言すれば、透過非点収差が眼に対して与えられるように、垂直方向の屈折力が水平方向の屈折力よりも小さくなるように透過非点収差が付加される。
このように透過非点収差の付加を行うことにより、もちろん子午線および測定基準点Nでは透過非点収差が増加する。但し、中間部および近用部全体において透過非点収差の急峻な変化は収まる。そして、結果的に透過非点収差が0.50D以下(乱視矯正のための屈折力を差し引いた後)となる明瞭な視野範囲を獲得できる。
実施形態1(ADD=3.00D)以外の透過平均屈折力の分布および透過非点収差の分布は以下のとおりである。なお、付加される透過非点収差は、実施形態1(ADD=2.00D)だと0.20D、実施形態1(ADD=1.00D)だと0.10Dである。
つまり、実施形態1においては、いずれも、透過非点収差の付加量はADDの0.10倍である。
図9Aは、実施形態1(ADD=2.00D)に対応する透過平均屈折力の分布を示す図である。
図9Bは、実施形態1(ADD=2.00D)に対応する透過非点収差の分布を示す図である。
図10Aは、実施形態1(ADD=1.00D)に対応する透過平均屈折力の分布を示す図である。
図10Bは、実施形態1(ADD=1.00D)に対応する透過非点収差の分布を示す図である。
実施形態1と従来の眼鏡レンズとの、透過固有非点収差の分布における領域「a´」の長さの実測結果、及び、領域「b」の非点収差の最大値[D]を、下記表1に示す。なお、図8A等には領域「b」が図示されていないが、この領域「b」は、図4Aに示す領域「b」と略同じ部分に位置する。
Figure 0007249357000001
表1からわかるように、実施形態1の領域「a´」の長さは、加入度数ADDの大小に係らず、従来例の長さよりも長くなり、実施形態1は、従来例に比べて明瞭な視野範囲が広がっていることがわかる。
さらに、実施形態1の〇で囲まれた領域「b」の固有非点収差の値は、加入度数ADDの大小に係らず、従来例の〇で囲まれた領域「b」の固有非点収差の値よりも低く、側部における固有非点収差を抑えることがわかる。
したがって、透過非点収差を、従来例の透過固有非点収差の分布に加えることにより、累進屈折力レンズは、従来装着者が感じていたぼけ、揺れ感等を抑制することができる。
以上が、本発明の一態様に係る設計方法で取り扱う累進屈折力レンズ(実施形態1)の特徴である。
そのうえで、以下、本発明の一態様に係る設計方法を適用した場合の結果について述べる。
(5-2.レンズ変更前後において、付加された透過非点収差量が所定範囲内にある場合(実施形態1および収差量を軽微に変更した実施形態1a)と所定範囲内にない場合(参照形態1)との比較)
ここで、実施形態1から収差量(0.30D)を軽微に変更した実施形態1aについて述べる。実施形態1aでは、ADDに応じて透過非点収差の付加量を変更する。
ADDが3.00Dの場合には透過非点収差の付加量を0.50Dとする。
ADDが2.00Dの場合には透過非点収差の付加量を0.33Dとする。
ADDが1.00Dの場合には透過非点収差の付加量を0.17Dとする。
つまり、実施形態1aにおいては、いずれも、透過非点収差の付加量はADDの約1/6倍(約0.17倍)である。
図11Aは、実施形態1a(ADD=3.00D)に対応する透過平均屈折力の分布を示す図である。
図11Bは、実施形態1a(ADD=3.00D)に対応する透過非点収差の分布を示す図である。
図12Aは、実施形態1a(ADD=2.00D)に対応する透過平均屈折力の分布を示す図である。
図12Bは、実施形態1a(ADD=2.00D)に対応する透過非点収差の分布を示す図である。
図13Aは、実施形態1a(ADD=1.00D)に対応する透過平均屈折力の分布を示す図である。
図13Bは、実施形態1a(ADD=1.00D)に対応する透過非点収差の分布を示す図である。
付加された透過非点収差量が所定範囲内にある場合(実施形態1および収差量を軽微に変更した実施形態1a)と対比すべく、所定範囲外にある場合を参照形態1として述べる。
なお、(5-1.実施形態1にて取り扱う累進屈折力レンズ(水平方向の屈折量>垂直方向の屈折力))にて述べたように、実施形態1が取り扱う累進屈折力レンズ自体が非常に特徴的であり、公知ではない。そのため、従来の技術とは一線を画しつつも付加された透過非点収差量が所定範囲外であることから、この対比例を参照形態と称している。
図14Aは、参照形態1(ADD=3.00D)に対応する透過平均屈折力の分布を示す図である。
図14Bは、参照形態1(ADD=3.00D)に対応する透過非点収差の分布を示す図である。
図15Aは、参照形態1(ADD=2.00D)に対応する透過平均屈折力の分布を示す図である。
図15Bは、参照形態1(ADD=2.00D)に対応する透過非点収差の分布を示す図である。
図16Aは、参照形態1(ADD=1.00D)に対応する透過平均屈折力の分布を示す図である。
図16Bは、参照形態1(ADD=1.00D)に対応する透過非点収差の分布を示す図である。
実施形態1、1aおよび参照形態1での各ADDにおける矢印「A」および「B」の距離をまとめたのが以下の表2である。
Figure 0007249357000002
そして、ADDを3.00Dとした場合の矢印「A」の距離から、ADDを2.00Dとした場合の矢印「A」の距離へと、どの程度の距離が変化しているかを調べた。言い方を変えると、ADDを3.00Dとした場合の矢印「A」に対し、ADDを2.00Dとした場合の矢印「A」の距離が、どの程度一致しているかを調べた。また、矢印「B」に対しても同様の内容を調べた。それらの結果をまとめたのが以下の表3である。
Figure 0007249357000003
表3が示すように、実施形態1、1aでは、
透過平均屈折力が近用度数の半値以上の領域であってy=-14.0mmである領域Aの水平幅の一致率を97~103%(具体的には99~101%)とし、且つ、
透過平均屈折力が近用度数の半値以上の領域であってy=-20.0mmである領域Bの水平幅の一致率を97~103%(具体的には99~101%)とするよう、収差量Δβ[D]が設定されていることがわかる。
そして、実施形態1、1aおよび参照形態1での各ADDにおける領域「a´1」および「a´2」の距離をまとめたのが以下の表4である。
Figure 0007249357000004
そして、ADDを3.00Dとした場合の領域「a´1」の距離から、ADDを2.00Dとした場合の領域「a´1」の距離へと、どの程度の距離が変化しているかを調べた。言い方を変えると、ADDを3.00Dとした場合の領域「a´1」に対し、ADDを2.00Dとした場合の領域「a´1」の距離が、どの程度一致しているかを調べた。また、領域「a´2」に対しても同様の内容を調べた。それらの結果をまとめたのが以下の表5である。
Figure 0007249357000005
表5が示すように、実施形態1、1aでは、
透過非点収差がADD/4以下の領域であってy=-14.0mmである領域a´1の水平幅の一致率を97~103%(具体的には99~101%)とし、且つ、
透過非点収差がADD/4以下の領域であってy=-20.0mmである領域a´2の水平幅の一致率を97~103%(具体的には99~101%)とするよう、収差量Δβ[D]が設定されていることがわかる。
以上、本発明の一態様に係る累進屈折力レンズの設計方法においては、参照形態1に比べて、ADDの変化に対する透過分布の変化は小さい。このため、ADDに代表されるパラメータの変更に伴った眼鏡レンズの変更によるぼけ、揺れ感、歪等の変化を感じさせ難くすることができる。
[6.実施形態2の累進屈折力レンズの設計方法]
(6-1.実施形態2にて取り扱う累進屈折力レンズ(垂直方向の屈折量>水平方向の屈折力))
以下、本発明の実施形態2にて取り扱う累進屈折力レンズについて説明する。(本発明の技術的思想の要旨)の欄にて述べたように、実施形態2では、平均屈折力誤差を重視、すなわち平均屈折力誤差の増加を抑えるべく、乱視矯正のための屈折力を差し引いた後において、垂直方向の屈折力の量が水平方向の屈折力の量よりも大きくなる部分を含むよう設定している。
以下、説明の便宜上、[5.実施形態1に係る累進屈折力レンズの設計方法]と同内容については記載を省略する。
なお、実施形態2(ADD=3.00D)において付加される透過非点収差の収差量は-0.375Dとする。
実施形態2に係る図中では透過非点収差の付加量をマイナスで記載しているが、これは、実施形態1にて付加された透過非点収差の基となる最大非点収差と最小非点収差との縦横関係が逆転しているためである。但し、透過非点収差はあくまで最大非点収差-最小非点収差で表されるため、ここでは絶対値として値を記載する。
実施形態2(ADD=3.00D)では、実施形態1とは逆に、少なくとも子午線上において、垂直方向の屈折力(HP)が水平方向の屈折力(VP)よりも高くなるように設定する。具体的には、累進開始点から下方の子午線に対して垂直方向の屈折力を0.188D増加させ且つ水平方向の屈折力を0.188D減少させ、透過非点収差を0.375D付加している。その際に、下方に向けて平均屈折力(MP)を増加させ、測定基準点Nにて平均屈折力がS+ADDの値(ここでは3.00D)となるように設定する。この設定により、中間部および近用部において0.375Dの透過非点収差が付加される。実施形態2における透過非点収差の付加の原理は、付加量を変えたとしても上記のとおりである。
図17および図18は、図2に示す累進屈折レンズ10の一実施形態であって、透過非点収差の分布において、近用部および中間部に対応した部分に透過非点収差が付加され、水平方向の屈折力が垂直方向の屈折力よりも小さい実施形態2(ADD=3.00D)を示す図である。
図17A~図17Dは、実施形態2(ADD=3.00D)における透過平均屈折力の分布の一例と、垂直方向および水平方向に沿った透過平均屈折力および透過非点収差の変化の一例を示す図である。
図18A~図18Dは、実施形態2(ADD=3.00D)における透過非点収差の分布の一例と、垂直方向および水平方向に沿った透過平均屈折力および透過非点収差の変化の一例を示す図である。
以下、図17および図18をより詳細に説明する。
図17Aは、実施形態2(ADD=3.00D)に対応する透過平均屈折力の分布を示す図である。図17Aにて採用した条件は、上記(従来の累進屈折力レンズ)の欄にて採用した条件と同一であるため記載を省略する。
図17Bは、実施形態2(ADD=3.00D)に対応する子午線に沿った透過の屈折力の変化を示す図である。縦軸はy方向の位置[mm]を示し、横軸は加入度数ADD[D]にしたがって値が変化する平均屈折力[D]を示す図である。
図17Cおよび図17Dは、それぞれy=-4.0mmおよびy=-14.0mmにおける水平方向の透過屈折力、垂直方向の透過屈折力、およびそれらの平均値である透過平均屈折力の変化の概略を示す図である。縦軸は屈折力[D]を示し、横軸はx方向の位置[mm]を示す。
図18Aは、実施形態2(ADD=3.00D)に対応する透過非点収差の分布を示す図である。
図18Bは、実施形態2(ADD=3.00D)に対応する子午線に沿った透過非点収差の変化を示す図である。縦軸は、y方向の位置[mm]を示し、横軸は、伝達された透過非点収差(D)を示す。
図18Cおよび図18Dは、それぞれy=-4.0mmおよびy=-14.0mmでの透過非点収差の変化の概略を示す図である。縦軸は透過非点収差[D]、横軸はx方向の位置[mm]である。
実施形態2(ADD=3.00D)以外の透過平均屈折力の分布および透過非点収差の分布は以下のとおりである。なお、付加される透過非点収差は、実施形態2(ADD=2.00D)だと-0.25D、実施形態2(ADD=1.00D)だと-0.125Dである。
つまり、実施形態2においては、いずれも、透過非点収差の付加量はADDの1/8(=0.125)倍である。
図19Aは、実施形態2(ADD=2.00D)に対応する透過平均屈折力の分布を示す図である。
図19Bは、実施形態2(ADD=2.00D)に対応する透過非点収差の分布を示す図である。
図20Aは、実施形態2(ADD=1.00D)に対応する透過平均屈折力の分布を示す図である。
図20Bは、実施形態2(ADD=1.00D)に対応する透過非点収差の分布を示す図である。
実施形態2と従来の眼鏡レンズとの、透過平均屈折力の分布における領域「A」および「B」の長さの実測結果を、下記表6に示す。
Figure 0007249357000006
表6を見れば、実施形態2の近用部が従来よりも広がっていることがわかる。
実施形態2にて取り扱う累進屈折力レンズでは、透過非点収差が、眼の側で形成され、しかも近用部および中間部に対応した部分に付加されることを示す。さらに、一例では、近用部の1点に対応した部分において、水平方向の屈折力は垂直方向の屈折力よりも小さい。別の一例では、中間部および近用部の子午線(または主注視線)において、水平方向の屈折力は垂直方向の屈折力よりも小さい。換言すれば、透過非点収差が眼に対して与えられるように、水平方向の屈折力が垂直方向の屈折力よりも小さくなるように透過非点収差が付加される。
[5.実施形態1に係る累進屈折力レンズの設計方法]でも述べたが、累進屈折力レンズだと、レンズ下方に向けて屈折力が増加する関係上、累進部分に存在している固有非点収差は、垂直方向の屈折力>水平方向の屈折力という関係を有する。
上記のように、垂直方向の屈折力>水平方向の屈折力という関係を有する透過非点収差を付加することにより、固有非点収差に更に非点収差が上乗せされることになる。そのため、近用部において透過非点収差0.50D以下の水平幅であるところの明瞭な視野は、通常、従来に比べて得られにくくなる。その一方、遠用部と累進帯とを滑らかに接続するために、非点収差の上乗せ後であっても、累進屈折力レンズの周辺領域の水平方向の屈折力の値は維持される。それに伴い、近用部における屈折力の変化は全体的に穏やかになる。それに応じ、近用度数の半値以上の領域の水平幅は広がる。
その結果、近用部において透過非点収差が付加されることにより、近用度数の半値以上の領域の水平幅を広げることができ、所定の近方距離にある物体を視認しやすくなる。
以上が、本発明の一態様に係る設計方法で取り扱う累進屈折力レンズ(実施形態2)の特徴である。
そのうえで、以下、本発明の一態様に係る設計方法を適用した場合の結果について述べる。
(6-2.レンズ変更前後において、付加された透過非点収差量が所定範囲内にある場合(実施形態2および収差量を軽微に変更した実施形態2a)と所定範囲内にない場合(参照形態2)との比較)
ここで、実施形態2から収差量(0.30D)を軽微に変更した実施形態2aについて述べる。実施形態2aでは、ADDに応じて透過非点収差の付加量を変更する。
ADDが3.00Dの場合には透過非点収差の付加量を0.50Dとする。
ADDが2.00Dの場合には透過非点収差の付加量を0.33Dとする。
ADDが1.00Dの場合には透過非点収差の付加量を0.17Dとする。
つまり、実施形態2aにおいては、いずれも、透過非点収差の付加量はADDの約1/6倍(約0.17倍)である。
図21Aは、実施形態2a(ADD=3.00D)に対応する透過平均屈折力の分布を示す図である。
図21Bは、実施形態2a(ADD=3.00D)に対応する透過非点収差の分布を示す図である。
図22Aは、実施形態2a(ADD=2.00D)に対応する透過平均屈折力の分布を示す図である。
図22Bは、実施形態2a(ADD=2.00D)に対応する透過非点収差の分布を示す図である。
図23Aは、実施形態2a(ADD=1.00D)に対応する透過平均屈折力の分布を示す図である。
図23Bは、実施形態2a(ADD=1.00D)に対応する透過非点収差の分布を示す図である。
付加された透過非点収差量が所定範囲内にある場合(実施形態2および収差量を軽微に変更した実施形態2a)と対比すべく、所定範囲外にある場合を参照形態2として述べる。
図24Aは、参照形態2(ADD=3.00D)に対応する透過平均屈折力の分布を示す図である。
図24Bは、参照形態2(ADD=3.00D)に対応する透過非点収差の分布を示す図である。
図25Aは、参照形態2(ADD=2.00D)に対応する透過平均屈折力の分布を示す図である。
図25Bは、参照形態2(ADD=2.00D)に対応する透過非点収差の分布を示す図である。
図26Aは、参照形態2(ADD=1.00D)に対応する透過平均屈折力の分布を示す図である。
図26Bは、参照形態2(ADD=1.00D)に対応する透過非点収差の分布を示す図である。
実施形態2、2aおよび参照形態2での各ADDにおける矢印「A」および「B」の距離をまとめたのが以下の表7である。
Figure 0007249357000007
そして、ADDを3.00Dとした場合の矢印「A」の距離から、ADDを2.00Dとした場合の矢印「A」の距離へと、どの程度の距離が変化しているかを調べた。言い方を変えると、ADDを3.00Dとした場合の矢印「A」に対し、ADDを2.00Dとした場合の矢印「A」の距離が、どの程度一致しているかを調べた。また、矢印「B」に対しても同様の内容を調べた。それらの結果をまとめたのが以下の表8である。
Figure 0007249357000008
表8が示すように、実施形態2、2aでは、
透過平均屈折力が近用度数の半値以上の領域であってy=-14.0mmである領域Aの水平幅の一致率を99~101%とし、且つ、
透過平均屈折力が近用度数の半値以上の領域であってy=-20.0mmである領域Bの水平幅の一致率を99~101%とするよう、収差量Δβ[D]が設定されていることがわかる。
そして、実施形態2、2aおよび参照形態2での各ADDにおける領域「a´1」および「a´2」の距離をまとめたのが以下の表9である。
Figure 0007249357000009
そして、ADDを3.00Dとした場合の領域「a´1」の距離から、ADDを2.00Dとした場合の領域「a´1」の距離へと、どの程度の距離が変化しているかを調べた。言い方を変えると、ADDを3.00Dとした場合の領域「a´1」に対し、ADDを2.00Dとした場合の領域「a´1」の距離が、どの程度一致しているかを調べた。また、領域「a´2」に対しても同様の内容を調べた。それらの結果をまとめたのが以下の表10である。
Figure 0007249357000010
表10が示すように、実施形態2、2aでは、
透過非点収差がADD/4以下の領域であってy=-14.0mmである領域a´1の水平幅の一致率を97~103%(具体的には99~101%)とし、且つ、
透過非点収差がADD/4以下の領域であってy=-20.0mmである領域a´2の水平幅の一致率を97~103%(具体的には99~101%)とするよう、収差量Δβ[D]が設定されていることがわかる。
以上、本発明の一態様に係る累進屈折力レンズの設計方法においては、参照形態2に比べて、ADDの変化に対する透過分布の変化は小さい。このため、ADDに代表されるパラメータの変更に伴った眼鏡レンズの変更によるぼけ、揺れ感、歪等の変化を感じさせ難くすることができる。
[7.円周上の経線方向度数の観点からの各実施形態と各参照形態との比較]
図27は、原点を通過するx軸の正の方向からの回転角度を横軸(単位:度)、累進屈折力レンズの該原点を中心とした半径14.0mmの円上における該回転角度に応じた各点での経線方向の屈折力を加入度数で正規化したものを縦軸(単位:無次元)としたときのプロットであり、透過非点収差が付加される前のプロットであり、ADDが1.00Dの場合、2.00Dの場合、3.00Dの場合についてのプロットを示す図である。
図27は、上記(円周上の経線方向度数での規定)が有意であるために用意したプロットを示す図である。図27が示すように、透過非点収差が付加される前の累進屈折力レンズのオリジナル設計として、加入度数が異なる場合でも加入度数による正規化を経ることにより、加入度数が異なる場合でも該プロットが一致する設計を用いる。なお、実施形態1および実施形態2で挙げた例は、このオリジナル設計を基に透過非点収差分布図および透過平均屈折力分布図を作製している。
図28は、図27と同様の内容のプロットであり、参照形態1のプロットであり、ADDが1.00Dの場合、2.00Dの場合、3.00Dの場合(いずれも付加収差量0.50D)についてのプロットを示す図である。
図29は、図27と同様の内容のプロットであり、実施形態1のプロットであり、ADDが1.00Dの場合(付加収差量0.10D)、2.00Dの場合(付加収差量0.20D)、3.00Dの場合(付加収差量0.30D)についてのプロットを示す図である。
図30は、図27と同様の内容のプロットであり、参照形態2のプロットであり、ADDが1.00Dの場合、2.00Dの場合、3.00Dの場合(いずれも付加収差量0.50D)についてのプロットを示す図である。
図31は、図27と同様の内容のプロットであり、実施形態2のプロットであり、ADDが1.00Dの場合(付加収差量0.125D)、2.00Dの場合(付加収差量0.25D)、3.00Dの場合(付加収差量0.375D)についてのプロットを示す図である。
図28が示すように、参照形態1だと、近用部測定基準点近傍(回転角度270度)において、各累進屈折力レンズでの縦軸方向の差が大きくなる。
その一方、図29に示すように、実施形態1だと、該プロット同士の縦軸方向の最大幅が0.1以下(具体的には0.001以下)となった。なお、図29は、該最大幅が極めて小さいため、プロット同士が重複している。
同様に、図30が示すように、参照形態2だと、近用部測定基準点近傍(回転角度270度)において、各累進屈折力レンズでの縦軸方向の差が大きくなる。
その一方、図31に示すように、実施形態2だと、該プロット同士の縦軸方向の最大幅が0.1以下(具体的には0.001以下)となった。なお、図31は、該最大幅が極めて小さいため、プロット同士が重複している。
つまり、各実施形態に従えば、買い替え前の累進屈折力レンズαのプロットと買い替え後の累進屈折力レンズβのプロットとでの縦軸方向の最大幅が0.1以下となる。その結果、買い替えた累進屈折力レンズに装用者が馴染み易くなる。
[8.本発明の一態様に係るシステム構成]
図32は、実施形態の累進屈折力レンズの設計方法を実施するための累進屈折力レンズの製造システムの構成の一例を説明するブロック図である。なお、本システムを実行するため、以降に示すコンピュータを使用し(computer-assisted)、特にコンピュータ中の制御部により本システムを制御する。
なお、最終的に得られるレンズの表面構造としては両面複合累進レンズを採用する。その他の各種条件は以下のとおりである。
・内寄せ量:2.5mm
・屈折率:1.60
・角膜-レンズ頂点間距離(CVD):12.0mm
・角膜頂点から眼球の回転中心までの距離:13.0mm
・瞳孔間距離(PD):64.0mm
・前傾角:10.0度
・フロント角(JIS B7281:2003):0.0°
以降、特記無い限り、最終的に得られるレンズについての各種条件は同様とする。但し、本発明は上記各条件に限定されない。
図32に示すように、累進屈折力レンズの設計システムは、クライアント(処方予定者)の処方データに基づいて眼鏡レンズを注文するための眼鏡店200と、眼鏡店200からの注文を受けて眼鏡レンズを製造するためのレンズ製造者300とを有する。
レンズ製造者300への注文は、インターネットやFAXなどの特定のネットワークによるデータ送信により行われる。眼科医および一般消費者は、眼鏡店200と同様の発注者に含まれる。
(眼鏡店200)
眼鏡店200には、コンピュータ201が設置されている。コンピュータ201は、例えば、一般的なパーソナルコンピュータであり、レンズ製造者300に眼鏡レンズの発注を行うためのソフトウェアがインストールされている。注文データは、眼鏡店200等でマウスやキーボード等の操作によりコンピュータ201に入力される。
注文データは、装用者情報を少なくとも含む。装用者情報は、装用者用のレンズデータおよびフレームデータを少なくとも含む。また、装用者情報には、場合によって、眼鏡装着スタイル等の補足データも含まれる。
レンズデータには、例えば、処方データ(球面屈折力、円柱屈折力、円柱軸、プリズム度数、プリズム基底方向、加入度数、瞳孔間距離(PD)、ベースカーブなどを含む)、レンズの種類の情報(例えば、球面単焦点レンズ、非球面単焦点レンズ、二焦点レンズ、累進屈折力レンズなどの情報を含む)、付加するコーティングの情報(色、ハードコート、反射防止フィルム、UVカット等の有無の情報)、クライアントである装用者の要求に応じたレイアウトデータ等が含まれる。
フレームデータは、クライアントによって選択されたフレームの形状データを含む。フレームデータは、例えばバーコードタグで管理され、フレームに付されたバーコードタグをバーコードリーダで読み取ることにより利用可能となっている。コンピュータ201は、例えばインターネットを介して、レンズ製造者300に注文データ(レンズデータおよびフレームデータ)を送信する。
(レンズ製造者300)
レンズ製造者300では、ホストコンピュータ301を中心としたLAN(Local Area Network)が構築されている。ホストコンピュータ301には、レンズ設計用コンピュータ302、レンズ加工用コンピュータ303等の複数の端末装置が接続されている。レンズ設計用コンピュータ302、レンズ加工用コンピュータ303は一般的なパーソナルコンピュータであり、眼鏡レンズを設計するためのプログラムや眼鏡レンズを加工するためのプログラムがそれぞれインストールされている。
コンピュータ201からインターネットを介して送信された注文データは、ホストコンピュータ301に入力される。ホストコンピュータ301は、入力された注文データをレンズ設計用コンピュータ302に送信する。
レンズ製造者300では、注文データを受信した後、装用者の処方を満足するように、未処理ブロックに凸面(物体側)と凹面(眼球側)の両面の設計・加工を施す。
なお、レンズ製造者300において、生産性を向上させるために、全ての製造範囲でのレンズの屈折力を複数のグループに分けてもよい。そのうえで、凸曲線形状(球面形状または非球面形状)を有する半完成ブランク眼鏡レンズと、予め各群の度数範囲に応じたレンズ径とを、眼鏡レンズの注文に合わせて予め用意しておいてもよい。
この場合、レンズ製造者300は、凹面加工(および玉型加工)を行うか、または凹凸加工(および玉型加工)を行うことで、装用者の処方データに基づく眼鏡レンズを製造することができる。
レンズ設計用コンピュータ302は、受注または受注に応じて眼鏡レンズを設計するためのプログラムがインストールされており、注文データに基づいてレンズ設計データを作成し、その注文データに基づいて玉型加工データを作成する(フレームデータ)。
レンズ設計用コンピュータ302による眼鏡レンズの設計については後述する。レンズ設計用コンピュータ302は、作成したレンズ設計データと玉型加工データをレンズ加工用コンピュータ303に送信する。
オペレータは、眼鏡レンズの素となるブロックをカーブジェネレータ等の加工機械304にセットし、レンズ加工用コンピュータ303に処理開始の指示を入力する。レンズ加工用コンピュータ303は、レンズ設計用コンピュータ302から送信されたレンズ設計データおよび玉型加工データを読み取り、加工機械304を駆動制御する。
加工機304は、レンズ設計データに基づいてブロックの両面を研削/研磨することにより、眼鏡レンズの凸形状および凹形形状を作製する。また、加工機304は、凸形状および凹形状を作製した後、未切断レンズの外周面をレンズ形状に対応する円周形状に加工する(玉型加工をする)。
玉型加工後の眼鏡レンズには、染色、ハードコート、反射防止フィルム、UVカット等の各種コーティングが施される。これにより、眼鏡レンズが完成し、眼鏡店200に配送される。
本発明の別の一実施形態によれば、本実施形態の眼鏡レンズの設計を実行するように作製されたコードを含むコンピュータプログラムを提供する。このプログラムが実行されると、コードは、本実施形態の眼鏡レンズの設計を実行するように処理リソースに指示する。任意のコンピュータがこの方法を実行するのに適している。例えば、コンピュータは、プロセッサ、メモリ(コードを動作させるために必要なコードおよび/またはデータを記憶するためのメモリ)、オペレータとデータをやりとりするためのインタフェース、他の装置とデータをやりとりするためのインタフェース等を含む。これらを総称して制御部と呼ぶ。
本発明のさらに他の一実施形態によれば、眼鏡レンズの設計を行うシステムは、処方データに含まれる処方非点収差と予め定められた量の付加非点収差の総和に対応する透過非点収差の性能パラメータを決定する第1決定手段(またはプロセッサ)と、決定された透過の性能パラメータに対応するレンズ表面データを決定するように構成された第2の決定手段(または同じプロセッサ)を含む。
上記システムは、ハードウェアおよび/またはソフトウェアの任意の組み合わせで実現することができる。例えば、クライアント・ サーバ・アーキテクチャ、クラウドコンピューティングシステムなどが用いられる。また、ハードウェアおよび/またはソフトウェアを分散させることもでき、また、1つのデバイスに集中させることもできる。
図33は、一実施形態に係る累進屈折力レンズの設計方法を示すフローチャートである。
一実施形態によれば、累進屈折力レンズである眼鏡レンズは、片面累進型(内面または外面)および両面を統合したタイプを含む両面累進型等、の累進屈折力レンズに適用することができる。
以降、本設計システムによる設計方法は、レンズ設計用コンピュータ302を使用して(computer-assisted)実行される。更に言うと、レンズ設計用コンピュータ302内の制御部(不図示)が、以降に記載の設計方法に必要な情報を処理する機能を、レンズ設計用コンピュータ302に発揮させるべく、本実施形態の眼鏡レンズの設計を実行するように作製されたコードを含むコンピュータプログラムを実行する。
まず、レンズ設計用コンピュータ302は、眼鏡店200に設置されたコンピュータ201またはレンズ設計用コンピュータ302内に設けられた記録部から装用者情報を取得する(ステップS101A)。装用者情報は、処方データおよび/または補足データを含む。
補足データは、装着スタイルおよびフレーム形状などの好みのデータを含む。また、補足データは、変更前のレンズ情報を含んでもよい。変更前のレンズ情報としては、例えば透過非点収差分布、透過平均屈折力分布、変化量Δα[D]の絶対値等が挙げられる。本発明の一態様においては、レンズの変更前においても、この変化量Δαは、加入度数ADDα[D]の0.07~0.24倍の量となっている。また、補足データは、フレームデータを含む。
フレームデータは、透過の計算に用いるパラメータ、例えば、角膜-レンズ頂点間距離(CVD)、角膜頂点から眼球の回転中心の距離、前傾角、瞳孔間距離(PD)、フロント角等を含む。フレームデータがない場合、また、フレームデータの内容が不明の場合は、透過の計算にデフォルト値が使用される。
補足データは、装着スタイル、「近方視に近い」または「水平方向に安定した屈折力分布」のような装用者の好みの情報を含んでもよい。眼鏡店200が、装着スタイルおよび透過非点収差の量を設定した場合、これらの情報を含んだ補足データがS101Aで取得される。装着スタイルの情報および/または透過非点収差の量が眼鏡店から提供されない場合、レンズ設計用コンピュータ302はこれらの情報を自ら設定してもよい。補足データの情報は、上記内容に限定されるものではない。補足データは、生理学的パラメータを含んでもよい。
目標分布が決定された後、実際に透過の目標分布が得られるようにレンズの外面および内面が設計される。
ここで、図33を参照して設計工程を説明する。
まず、作製する眼鏡の仕様および装用者に適したパラメータを取得する。例えば、処方データを含む装用者処方情報を取得する(図33のステップS101A参照)。処方データは、従来および実施形態の両方において同様に用いられ、例えば、S+0.00D ADD2.00Dといったデータである。
次に、レンズの基本設計を行い、基本設計の平均屈折力の分布および非点収差の分布を設定する(図33のステップS101B参照)。基本設計では、新規設計ラインで行うか、累進屈折力レンズの任意の既存設計ラインで行なうか、を選択することができる。ここでは、既存の設計ラインであるサンプルデザインAをベースデザインとして使用する。サンプルデザインAの累進帯長はレンズ設計として18mm、表面構造として内面累進追加レンズ、内寄せ量は2.5mm、屈折率は1.60に等しい、とする。ベースデザインAは、従来のものと本発明の実施形態の両方に共通して用いることができる。
次に、透過非点収差が設定され(図33のステップS101C参照)、目標分布が設定される(図33のステップS101D参照)。実施形態では、子午線に沿って透過非点収差の量が0.50[D]に設定される。子午線では、垂直方向の屈折力が水平方向の屈折力よりも小さいオプションが選択される。透過非点収差の量および垂直方向の屈折力と水平方向の屈折力との関係は、好ましくはレンズ製造者によって設定することができるが、ステップS101Aで眼科医によって予め設定されてもよい。従来の設計の目標分布は、透過非点収差がないため、ベースデザインAと変わらない。
そして、レンズの外面および内面が、これら2つの面を透過した後の光線に基づく透過(平均屈折力および非点収差)分布が透過の目標分布(平均屈折力および非点収差)と一致するように、レンズ表面形状が設計される(図33のステップS101E参照)。実施形態では、レンズの内面が累進面であり、この内面が最適に設計される(いわゆる非球面補正が行われるが、他の手法でも同様の結果を得ることができる)。
レンズの外面および内面は、実際に透過の目標分布が得られるように設計される。換言すれば、目標分布は、決定された透過の性能パラメータに対応すると言える。
透過非点収差の屈折力分布、透過非点収差の屈折力分布は、少なくとも、角膜-レンズ頂点間距離、前傾角、およびフロント角の情報を用いて、累進屈折力レンズの表面形状から算出される。
これらのパラメータの数値の例は、上述した透過基本設計に用いられる。また、透過非点収差を意図的に付加して透過非点収差を持たせる限りにおいて、累進屈折力レンズの作製方法は、上記設計方法に制限されないがこれ以外の他の方法でも同様の結果を得ることができる。
次に、レンズ設計用コンピュータ302は、装用者情報に基づいて、平均屈折力および非点収差の分布を基本設計として設定する(ステップS101B)。基本設計は、累進屈折力レンズの基本的な光学性能および設計上の特徴を提供する。これらの光学性能および設計上の特徴は、平均屈折力の分布および固有非点収差の分布を含む。分布は、曲率のない平坦な表面で表される。最終的に得られる累進屈折力レンズの実際の面に対する曲率はS101Eで提供される。基本設計は、新規に設計されてもよいし、累進屈折力レンズの任意の既存設計ラインの中から選択されてもよい。
次に、レンズ設計用コンピュータ302内の収差量設定部(不図示)(例えば[0228]の第1決定手段)は、透過非点収差を設定する(ステップS101C)。透過非点収差の量は、装用者情報に含まれる場合もあれば、含まれない場合もある。装用者情報に含まれない場合、装着スタイル等の情報を利用して、あるいはデフォルト値を用いて、レンズ設計用コンピュータ302が設定することができる。
なお、透過非点収差の与え方は、後述の[8.変形例]にて述べるパターン1~3の選択枝を有する。これらの選択枝に関する選択情報は、装用者情報に含まれてもよいし、装着スタイル等の情報を利用して、あるいはデフォルト値を用いて、レンズ設計用コンピュータ302が自ら選択することができる。
こうして透過非点収差が設定されると、レンズ設計用コンピュータ302は、ステップS101Bで設定した平均屈折力の分布と、非点収差の分布にステップS101Cで設定した透過非点収差を加算した分布を、目標透過分布(目標平均屈折力の分布、目標非点収差の分布)として設定する(ステップS101D)。すなわち、装用者情報に対応した非点収差の分布に、設定された透過非点収差の分布を加算した目標非点収差の分布と、装用者情報に対応した目標平均屈折力の分布を設定する。
レンズ設計用コンピュータ302は、こうして設定された目標透過分布を実現するレンズ表面形状を、例えば[0228]の第2決定手段により決定する(ステップS101E)。
図34は、一実施形態の、目標透過分布を透過分布として持つレンズ表面形状を有する眼鏡レンズを作製する方法のフローを示すフローチャートである。
レンズ設計用コンピュータ302は、初期面非点収差の分布と、初期面平均屈折力の分布を設定し、これらの分布を実現する試行レンズを作成する(ステップS201A)。この試行レンズは、曲面形状をしたレンズである。
レンズ設計用コンピュータ302は、この試行レンズを用いて、試行レンズにおける透過平均屈折力の分布と透過非点収差の分布を、初期面非点収差の分布と初期面平均屈折力の分布から計算し、透過設計分布として算出する(ステップS201B)。透過の計算では、装用者情報に含まれる透過計算用のパラメータを用いて透過平均屈折力の分布と透過非点収差の分布を求める。
レンズ設計用コンピュータ302内の判定部(不図示)は、求めた試行レンズの透過設計分布(透過平均屈折力の分布および透過非点収差の分布)が、ステップS101Dで設定した目標透過分布(目標平均屈折力の分布および目標非点収差の分布)に近似するか否かを判定する(ステップS201C)。
すなわち、レンズ設計用コンピュータ302内の判定部は、透過設計分布のうち少なくとも透過非点収差の分布が、目標非点収差の分布に近づくように、第2の決定手段が試行レンズの表面形状を調整し、透過非点収差の分布が目標非点収差の分布の許容範囲内にあるか否かの判定をする。この判定が否定の場合、レンズ設計用コンピュータ302は、第2の決定手段による試行レンズの表面形状を調整、および/または収差量設定部(第1の決定手段)による収差量Δβ[D]の変更を行う(ステップS201D)。
こうして、試行レンズの透過分布が、目標透過分布に近似するまで、透過非点収差の分布と目標非点収差の分布との誤差が小さくなるように、試行レンズの表面形状を調整する、または収差量Δβ[D]の変更を収差量設定部が行う。
なお、累進屈折力レンズβにおける透過非点収差の分布の、累進屈折力レンズαにおける透過非点収差の分布に対する一致率が所定の閾値内にあるか否かの判定を上記の判定部にて行ってもよい。また、判定部により、上記の収差量Δβ[D]の絶対値が、加入度数ADD[D]の0.07~0.24倍に収まるか否かの判定を行ってもよい。この判定部は、後述のレンズ製造者側のレンズ設計用コンピュータに備えてもよい。レンズ設計用コンピュータ内の制御部(不図示)により、この判定部に対し、上記内容の判定を行うよう指令を出す。そして、判定部がOKと判定した場合、判定部にて判定対象となった付加すべき透過非点収差の値を採用し、制御部は、収差量設定部に対して収差量Δβを設定させる。
なお、上記判定に際し、眼鏡店200に設置されたコンピュータ201またはレンズ設計用コンピュータ302内に設けられた記録部から、補足データとして変更前のレンズ情報のうち透過非点収差分布、透過平均屈折力分布、変化量Δα[D]の絶対値等を呼び出してもよい。
ステップS201Dの判定が肯定された場合、レンズ設計用コンピュータ302は、最後に調整した試行レンズの表面形状を、作製する眼鏡レンズの表面形状として決定する(ステップS201E)。すなわち、レンズ設計用コンピュータ302は、透過非点収差の分布が目標非点収差の分布の許容範囲内にある時の試行レンズの表面形状を、作製する眼鏡レンズの表面形状として定める。
決定されたレンズの表面形状に基づいて、加工機械304は、眼鏡レンズの素となるレンズ素材、例えば半完成ブランク眼鏡レンズあるいは未加工ブロックを加工する(ステップS201F)。こうして、決定されたレンズの表面形状を有し、透過分布が目標透過分布に近似する眼鏡レンズが作製される。
このように、透過設計分布のうち少なくとも透過非点収差の分布が、目標非点収差の分布に近づくように、試行レンズの表面形状を調整し、透過非点収差の分布が目標非点収差の分布の許容範囲内にあるか否かの判定をし、透過非点収差の分布が目標非点収差の分布の許容範囲内にある時の試行レンズの表面形状を眼鏡レンズの表面形状として定めるので、眼鏡レンズは、透過非点収差の分布が目標非点収差の分布に略一致させることができる。
また、透過非点収差の分布が目標非点収差の分布の許容範囲内にないとき、試行レンズを調整した表面形状をもつレンズを、再度試行レンズとして用いて透過設計分布を算出し、上記判定を行うので、透過非点収差の分布を目標非点収差の分布に精度よく一致させることができる。
[9.変形例]
以上、本発明の一態様に係る累進屈折力レンズ、およびその設計方法について詳細に説明したが、本発明の累進屈折力レンズ、およびその設計方法は上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよいのはもちろんである。
例えば、これまでに述べてきた設計方法である設計ステップと、
設計ステップに基づいて累進屈折力レンズを製造する製造ステップと、
を有する、累進屈折力レンズの製造方法も、本発明の技術的思想が反映されている。
近方距離を見るための近用部と、近方距離よりも遠くの距離を見るための遠用部と、近用部と遠用部との間に設けられ且つ累進屈折機能を有する中間部と、を備えた、累進屈折力レンズ群であって、
いずれの累進屈折力レンズにも透過非点収差が付加され、装用時の見え方が互いに類似する、累進屈折力レンズ群にも、本発明の技術的思想が反映されている。
これらの各態様に対しても、本明細書で述べてきた好適例を適用してももちろん構わない。例えば、累進屈折力レンズ群の上記規定における「装用時の見え方が互いに類似する」を具体化した以下の規定、
・累進屈折力レンズαのプロットと累進屈折力レンズβのプロットとでの縦軸方向の最大幅が0.1以下。
・透過非点収差がADD/4以下の領域であってy=-14.0mmである領域a´1の水平幅の一致率が97~103%であり、且つ、
透過非点収差がADD/4以下の領域であってy=-20.0mmである領域a´2の水平幅の一致率が97~103%である。
・透過平均屈折力が近用度数の半値以上の領域であってy=-14.0mmである領域Aの水平幅の一致率が97~103%であり、且つ、
透過平均屈折力が近用度数の半値以上の領域であってy=-20.0mmである領域Bの水平幅の一致率が97~103%である。
・累進屈折力レンズ群のうちの任意の二つである累進屈折力レンズαおよび累進屈折力レンズβは互いに異なる加入度数が設定され、原点を通過するx軸の正の方向からの回転角度を横軸(単位:度)、累進屈折力レンズの該原点を中心とした半径14.0mmの円上における該回転角度に応じた各点での経線方向の屈折力を加入度数で正規化したものを縦軸(単位:無次元)としたとき、累進屈折力レンズαのプロットと累進屈折力レンズβのプロットとでの縦軸方向の最大幅が0.1以下である。
・各累進屈折力レンズに付加された透過非点収差は、各累進屈折力レンズにおける加入度数ADDα[D]の0.07~0.24倍の量である。
の数値範囲の規定を適用するのが好ましい。
なお、この場合の「縦軸方向の最大幅が0.1以下」とは、累進屈折力レンズ群のうち、該縦軸方向の幅が最大となる任意の累進屈折力レンズαおよび累進屈折力レンズβの組み合わせでも、0.1以下の幅となることを意味する。
また、透過非点収差の付加態様には限定は無い。透過非点収差を、子午線および/または主注視線に沿って付加してもよい。また、子午線および/または主注視線を中心に、設計面の少なくとも一部に拡大してもよい。例えば、累進屈折力レンズの非点収差調整領域R(図2参照)が、水平線HL(図2参照)に対して下方の側にあり、さらに、下方の側に向かって広がった扇型形状の領域であるパターンであってもよい(基礎出願におけるパターン1)。
また、累進屈折力レンズの非点収差調整領域Rが、水平線HLに対して、下方の側にあるパターンであってもよい(基礎出願におけるパターン2)。
また、累進屈折力レンズの非点収差調整領域Rは、水平線HLの下方の側で、水平方向に一定の幅を有する領域を含むケースであってもよい(基礎出願におけるパターン3)。
そして、累進屈折力レンズを買い替える際に、買い替える前の透過非点収差付加パターンと買い替えた後の透過非点収差付加パターンとが同じであってもよいし、別であってもよい。ただ、買い替え前後での見え方を近似させることを考慮すると、該パターンが買い替え前後で同じであるのが好ましい。
本発明の各実施形態においては、中間部及び近用部に透過非点収差を付加する例を挙げた。その一方、本発明は、透過非点収差が付加された累進屈折力レンズの買い替え前後において見え方を近づけることを主旨とする。そのため、本発明はこの例に限定されない。
例えば、買い替え前後において遠用部に透過非点収差が付加されたものも技術的範囲に含まれる。その一方、[1.本発明の技術的思想の要旨]にて述べたように、眼鏡装用者が頻繁に視線を通過させる箇所に意図的に透過非点収差を付加したことにより格別の効果が得られる。そのため、本発明の各実施形態が好ましいことに変わりはない。
本発明の各実施形態にて取り扱う累進屈折力レンズ自体は新規であり、大きな技術的特徴を有する。そのため、各実施形態で述べたレンズの買い替えに伴うシステムではなく、この累進屈折力レンズ単体を設計するシステムにも大きな技術的特徴がある。この技術的特徴をまとめると以下の構成となる。
「近方距離を見るための近用部と、近方距離よりも遠くの距離を見るための遠用部と、近用部と遠用部との間に設けられ且つ累進屈折機能を有する中間部と、を備えた累進屈折力レンズの設計システムであって、
遠用部、近用部および中間部のうち近用部および中間部に対して透過非点収差を付加し、
透過非点収差が付加された近用部および中間部においては、乱視矯正のための屈折力を差し引いた後において、
水平方向の屈折力の量が垂直方向の屈折力の量よりも大きい部分を含むようにする、
または、
垂直方向の屈折力の量が水平方向の屈折力の量よりも大きい部分を含むようにする、累進屈折力レンズの設計システム。」
また、透過非点収差の付加前の累進屈折力レンズであるオリジナルレンズ(従来の累進屈折力レンズ)の装用時の見え方に近づけるよう、累進屈折力レンズβに対して付加する透過非点収差量Δβ[D]を収差量設定部により設定してもよいし、累進屈折力レンズβを設計してもよいし、そのような累進屈折力レンズ群を用意してもよい。その際の条件は以下のように設定してもよい。
「透過非点収差の付加前の累進屈折力レンズと累進屈折力レンズβとの間において、
累進屈折力レンズβの加入度数は3.00[D]未満(好適には2.00[D]以下)であり、
累進屈折力レンズαおよび累進屈折力レンズβにおいて、遠用部、近用部および中間部のうち近用部および中間部に対して透過非点収差が付加され、
透過非点収差が付加された近用部および中間部においては、乱視矯正のための屈折力を差し引いた後において、
水平方向の屈折力の量が垂直方向の屈折力の量よりも大きい部分を含む場合は、
透過平均屈折力が近用度数の半値以上の領域であってy=-14.0mmである領域Aの水平幅の一致率が90~100%であり、且つ、
透過平均屈折力が近用度数の半値以上の領域であってy=-20.0mmである領域Bの水平幅の一致率が90~100%であり、
垂直方向の屈折力の量が水平方向の屈折力の量よりも大きい部分を含む場合は、
透過非点収差がADD/4以下の領域であってy=-14.0mmである領域a´1の水平幅の一致率が60~100%であり、且つ、
透過非点収差がADD/4以下の領域であってy=-20.0mmである領域a´2の水平幅の一致率が60~100%である。」
なお、上記各数値範囲は、従来例(収差付加前レンズ)のデータと実施形態1、2のデータとの対比、そして、従来例(収差付加前レンズ)のデータと参照形態1、2のデータとの対比から得た。数値規定の意味は、例えば付加される透過非点収差が水平>垂直だと、透過非点収差の低収差領域が拡大する代わりに透過平均屈折力分布が狭くなるが、実施形態1では参照形態1に比べてそこまで狭くならない、という規定である。垂直>水平の場合は、その逆の規定である。
また、上記と同様、オリジナルレンズ(従来の累進屈折力レンズ)の装用時の見え方に近づける際の規定として、上記規定の代わりまたはそれと共に以下の規定を採用してもよい。
「x軸をレンズ水平方向、y軸をレンズ鉛直方向、原点をレンズのプリズム参照点としたうえで、原点を通過するx軸の正の方向からの回転角度を横軸(単位:度)、累進屈折力レンズの該原点を中心とした半径14.0mmの円上における該回転角度に応じた各点での経線方向の屈折力を加入度数で正規化したものを縦軸(単位:無次元)としたとき、オリジナルレンズのプロットと累進屈折力レンズβのプロットとでの縦軸方向の最大幅が0.1以下となる。」
<総括>
以下、本開示の「累進屈折力レンズの設計システム、累進屈折力レンズの設計方法および累進屈折力レンズ群」について総括する。
本開示の一実施例は以下の通りである。
「近方距離を見るための近用部と、近方距離よりも遠くの距離を見るための遠用部と、近用部と遠用部との間に設けられ且つ累進屈折機能を有する中間部と、を備えた累進屈折力レンズの設計システムであって、
収差量Δα[D]の透過非点収差が付加された累進屈折力レンズαの装用者に対し、異なるパラメータを備える累進屈折力レンズβを提供する際に、累進屈折力レンズβの装用時の見え方を累進屈折力レンズαの装用時の見え方に近づけるよう、累進屈折力レンズβに対して付加する透過非点収差量Δβ[D]を設定する収差量設定部を備える、累進屈折力レンズの設計システム。」
MP:平均屈折力、AS:透過非点収差、VP:垂直方向の屈折力、HP:水平方向の屈折力、ADD:加入度数、F:遠用部測定基準点、FP:フィッティングポイント、N:近用部測定基準点、200:眼鏡店、201:コンピュータ、300:レンズ製造業者、301:レンズ製造用ホストコンピュータ、302:レンズ設計用コンピュータ、303:レンズ加工用コンピュータ、304:加工機械。

Claims (13)

  1. 近方距離を見るための近用部と、前記近方距離よりも遠くの距離を見るための遠用部と、前記近用部と前記遠用部との間に設けられ且つ累進屈折機能を有する中間部と、を備えた累進屈折力レンズの設計システムであって、
    収差量Δα[D]の透過非点収差が付加された累進屈折力レンズαの装用者に対し、異なるパラメータを備える累進屈折力レンズβを提供する際に、前記累進屈折力レンズβの装用時の見え方を前記累進屈折力レンズαの装用時の見え方に近づけるよう、前記累進屈折力レンズβに対して付加する透過非点収差量Δβ[D]を設定する収差量設定部を備え、
    前記収差量Δαは、加入度数ADDα[D]の0.07~0.24倍の量であり、
    前記収差量Δβは、加入度数ADDβ[D]の0.07~0.24倍の量であり、
    前記累進屈折力レンズαおよび前記累進屈折力レンズβにおいて、
    乱視矯正のための屈折力を差し引いた後の前記遠用部の測定基準点Fにおける透過非点収差の値の絶対値が0.12D以下であり、
    前記遠用部、前記近用部および前記中間部のうち前記近用部および前記中間部に対して透過非点収差が付加されている一方で前記遠用部には透過非点収差は付加されておらず、
    少なくとも主注視線上における、累進開始点から前記近用部の測定基準点Nまでの間の部分から該測定基準点Nに至るまで全体に透過非点収差が付加されており、
    透過非点収差が付加された前記近用部および前記中間部においては、乱視矯正のための屈折力を差し引いた後において、
    水平方向の透過屈折力の量が垂直方向の透過屈折力の量よりも大きい部分を含む、または、
    垂直方向の透過屈折力の量が水平方向の透過屈折力の量よりも大きい部分を含み、
    前記異なるパラメータのうち少なくともひとつは加入度数であり、
    前記収差量設定部は、累進屈折力レンズαと累進屈折力レンズβとの間での屈折力に係る分布の一致率を100%に近づけるよう、累進屈折力レンズβに対して付加する透過非点収差量Δβ[D]を設定し、
    前記屈折力に係る分布は、縦軸yをレンズ鉛直方向、横軸xをレンズ水平方向、原点をレンズのプリズム参照点とする透過非点収差分布および透過平均屈折力分布の少なくともいずれかであり、
    前記透過非点収差分布の場合、
    前記収差量設定部は、
    透過非点収差がADD/4以下の領域であってy=-14.0mmである領域a´1の水平幅の一致率を97~103%とし、且つ、
    透過非点収差がADD/4以下の領域であってy=-20.0mmである領域a´2の水平幅の一致率を97~103%とし、
    透過非点収差分布(縦軸y:レンズ鉛直方向、横軸x:レンズ水平方向、原点はレンズのプリズム参照点)において、乱視矯正のための屈折力を差し引いた後、
    透過非点収差が0.50D以下の領域であってy=-14.0mmである領域a1の水平幅は8mm以上、および、
    透過非点収差が0.50D以下の領域であってy=-20.0mmである領域a2の水平幅は10mm以上
    の少なくともいずれかの条件を満たすよう、前記収差量Δβ[D]を設定し、
    前記透過平均屈折力分布の場合、
    前記収差量設定部は、
    透過平均屈折力が(遠用度数+加入度数/2)以上の領域であってy=-14.0mmである領域Aの水平幅の一致率を97~103%とし、且つ、
    透過平均屈折力が(遠用度数+加入度数/2)以上の領域であってy=-20.0mmである領域Bの水平幅の一致率を97~103%とし、
    透過平均屈折力分布(縦軸y:レンズ鉛直方向、横軸x:レンズ水平方向、原点はレンズのプリズム参照点)において、乱視矯正のための屈折力を差し引いた後、
    透過平均屈折力が(遠用度数+加入度数/2)以上の領域であってy=-14.0mmである領域Aの水平幅は22mm以上、および、
    透過平均屈折力が(遠用度数+加入度数/2)以上の領域であってy=-20.0mmである領域Bの水平幅は28mm以上
    の少なくともいずれかの条件を満たすよう、前記収差量Δβ[D]を設定する、累進屈折力レンズの設計システム。
  2. 近方距離を見るための近用部と、前記近方距離よりも遠くの距離を見るための遠用部と、前記近用部と前記遠用部との間に設けられ且つ累進屈折機能を有する中間部と、を備えた累進屈折力レンズの設計システムであって、
    収差量Δα[D]の透過非点収差が付加された累進屈折力レンズαの装用者に対し、異なるパラメータを備える累進屈折力レンズβを提供する際に、前記累進屈折力レンズβの装用時の見え方を前記累進屈折力レンズαの装用時の見え方に近づけるよう、前記累進屈折力レンズβに対して付加する透過非点収差量Δβ[D]を設定する収差量設定部を備え、
    前記収差量Δαは、加入度数ADDα[D]の0.07~0.24倍の量であり、
    前記収差量Δβは、加入度数ADDβ[D]の0.07~0.24倍の量であり、
    前記累進屈折力レンズαおよび前記累進屈折力レンズβにおいて、
    乱視矯正のための屈折力を差し引いた後の前記遠用部の測定基準点Fにおける透過非点収差の値の絶対値が0.12D以下であり、
    前記遠用部、前記近用部および前記中間部のうち前記近用部および前記中間部に対して透過非点収差が付加されている一方で前記遠用部には透過非点収差は付加されておらず、
    少なくとも子午線上における、累進屈折力レンズの幾何中心GCの半径5mm内から前記近用部の測定基準点Nと交わる水平線に至るまで全体に透過非点収差が付加されており、
    透過非点収差が付加された前記近用部および前記中間部においては、乱視矯正のための屈折力を差し引いた後において、
    水平方向の透過屈折力の量が垂直方向の透過屈折力の量よりも大きい部分を含む、または、
    垂直方向の透過屈折力の量が水平方向の透過屈折力の量よりも大きい部分を含み、
    前記異なるパラメータのうち少なくともひとつは加入度数であり、
    前記収差量設定部は、累進屈折力レンズαと累進屈折力レンズβとの間での屈折力に係る分布の一致率を100%に近づけるよう、累進屈折力レンズβに対して付加する透過非点収差量Δβ[D]を設定し、
    前記屈折力に係る分布は、縦軸yをレンズ鉛直方向、横軸xをレンズ水平方向、原点をレンズのプリズム参照点とする透過非点収差分布および透過平均屈折力分布の少なくともいずれかであり、
    前記透過非点収差分布の場合、
    前記収差量設定部は、
    透過非点収差がADD/4以下の領域であってy=-14.0mmである領域a´1の水平幅の一致率を97~103%とし、且つ、
    透過非点収差がADD/4以下の領域であってy=-20.0mmである領域a´2の水平幅の一致率を97~103%とし、
    透過非点収差分布(縦軸y:レンズ鉛直方向、横軸x:レンズ水平方向、原点はレンズのプリズム参照点)において、乱視矯正のための屈折力を差し引いた後、
    透過非点収差が0.50D以下の領域であってy=-14.0mmである領域a1の水平幅は8mm以上、および、
    透過非点収差が0.50D以下の領域であってy=-20.0mmである領域a2の水平幅は10mm以上
    の少なくともいずれかの条件を満たすよう、前記収差量Δβ[D]を設定し、
    前記透過平均屈折力分布の場合、
    前記収差量設定部は、
    透過平均屈折力が(遠用度数+加入度数/2)以上の領域であってy=-14.0mmである領域Aの水平幅の一致率を97~103%とし、且つ、
    透過平均屈折力が(遠用度数+加入度数/2)以上の領域であってy=-20.0mmである領域Bの水平幅の一致率を97~103%とし、
    透過平均屈折力分布(縦軸y:レンズ鉛直方向、横軸x:レンズ水平方向、原点はレンズのプリズム参照点)において、乱視矯正のための屈折力を差し引いた後、
    透過平均屈折力が(遠用度数+加入度数/2)以上の領域であってy=-14.0mmである領域Aの水平幅は22mm以上、および、
    透過平均屈折力が(遠用度数+加入度数/2)以上の領域であってy=-20.0mmである領域Bの水平幅は28mm以上
    の少なくともいずれかの条件を満たすよう、前記収差量Δβ[D]を設定する、累進屈折力レンズの設計システム。
  3. 前記収差量Δαは、加入度数ADDα[D]の0.10~0.20倍の量であり、
    前記収差量Δβは、加入度数ADDβ[D]の0.10~0.20倍の量である、請求項1または2に記載の累進屈折力レンズの設計システム。
  4. 前記異なるパラメータのうち少なくともひとつは加入度数であり、
    x軸をレンズ水平方向、y軸をレンズ鉛直方向、原点をレンズのプリズム参照点としたうえで、原点を通過するx軸の正の方向からの回転角度を横軸(単位:度)、累進屈折力レンズの該原点を中心とした半径14.0mmの円上における該回転角度に応じた各点での経線方向の屈折力を加入度数で正規化したものを縦軸(単位:無次元)としたとき、前記累進屈折力レンズαのプロットと前記累進屈折力レンズβのプロットとでの縦軸方向の最大幅が0.1以下となるよう、前記収差量設定部が収差量Δβ[D]を設定する、請求項1~のいずれかに記載の累進屈折力レンズの設計システム。
  5. 近方距離を見るための近用部と、前記近方距離よりも遠くの距離を見るための遠用部と、前記近用部と前記遠用部との間に設けられ且つ累進屈折機能を有する中間部と、を備えた累進屈折力レンズの設計方法であって、
    収差量Δα[D]の透過非点収差が付加された累進屈折力レンズαの装用者に対し、異なるパラメータを備える累進屈折力レンズβを提供する際に、前記累進屈折力レンズβの装用時の見え方を前記累進屈折力レンズαの装用時の見え方に近づけるよう、前記累進屈折力レンズβに対して付加する透過非点収差量Δβ[D]を設定し、
    前記収差量Δαは、加入度数ADDα[D]の0.07~0.24倍の量であり、
    前記収差量Δβは、加入度数ADDβ[D]の0.07~0.24倍の量であり、
    前記累進屈折力レンズαおよび前記累進屈折力レンズβにおいて、
    乱視矯正のための屈折力を差し引いた後の前記遠用部の測定基準点Fにおける透過非点収差の値の絶対値が0.12D以下であり、
    前記遠用部、前記近用部および前記中間部のうち前記近用部および前記中間部に対して透過非点収差が付加されている一方で前記遠用部には透過非点収差は付加されておらず、
    少なくとも主注視線上における、累進開始点から前記近用部の測定基準点Nまでの間の部分から該測定基準点Nに至るまで全体に透過非点収差が付加されており、
    透過非点収差が付加された前記近用部および前記中間部においては、乱視矯正のための屈折力を差し引いた後において、
    水平方向の透過屈折力の量が垂直方向の透過屈折力の量よりも大きい部分を含む、または、
    垂直方向の透過屈折力の量が水平方向の透過屈折力の量よりも大きい部分を含み、
    前記異なるパラメータのうち少なくともひとつは加入度数であり、
    累進屈折力レンズαと累進屈折力レンズβとの間での屈折力に係る分布の一致率を100%に近づけるよう、累進屈折力レンズβに対して付加する透過非点収差量Δβ[D]を設定し、
    前記屈折力に係る分布は、縦軸yをレンズ鉛直方向、横軸xをレンズ水平方向、原点をレンズのプリズム参照点とする透過非点収差分布および透過平均屈折力分布の少なくともいずれかであり、
    前記透過非点収差分布の場合、
    透過非点収差がADD/4以下の領域であってy=-14.0mmである領域a´1の水平幅の一致率を97~103%とし、且つ、
    透過非点収差がADD/4以下の領域であってy=-20.0mmである領域a´2の水平幅の一致率を97~103%とし、
    透過非点収差分布(縦軸y:レンズ鉛直方向、横軸x:レンズ水平方向、原点はレンズのプリズム参照点)において、乱視矯正のための屈折力を差し引いた後、
    透過非点収差が0.50D以下の領域であってy=-14.0mmである領域a1の水平幅は8mm以上、および、
    透過非点収差が0.50D以下の領域であってy=-20.0mmである領域a2の水平幅は10mm以上
    の少なくともいずれかの条件を満たすよう、前記収差量Δβ[D]を設定し、
    前記透過平均屈折力分布の場合、
    透過平均屈折力が(遠用度数+加入度数/2)以上の領域であってy=-14.0mmである領域Aの水平幅の一致率を97~103%とし、且つ、
    透過平均屈折力が(遠用度数+加入度数/2)以上の領域であってy=-20.0mmである領域Bの水平幅の一致率を97~103%とし、
    透過平均屈折力分布(縦軸y:レンズ鉛直方向、横軸x:レンズ水平方向、原点はレンズのプリズム参照点)において、乱視矯正のための屈折力を差し引いた後、
    透過平均屈折力が(遠用度数+加入度数/2)以上の領域であってy=-14.0mmである領域Aの水平幅は22mm以上、および、
    透過平均屈折力が(遠用度数+加入度数/2)以上の領域であってy=-20.0mmである領域Bの水平幅は28mm以上
    の少なくともいずれかの条件を満たすよう、前記収差量Δβ[D]を設定する、累進屈折力レンズの設計方法。
  6. 近方距離を見るための近用部と、前記近方距離よりも遠くの距離を見るための遠用部と、前記近用部と前記遠用部との間に設けられ且つ累進屈折機能を有する中間部と、を備えた累進屈折力レンズの設計方法であって、
    収差量Δα[D]の透過非点収差が付加された累進屈折力レンズαの装用者に対し、異なるパラメータを備える累進屈折力レンズβを提供する際に、前記累進屈折力レンズβの装用時の見え方を前記累進屈折力レンズαの装用時の見え方に近づけるよう、前記累進屈折力レンズβに対して付加する透過非点収差量Δβ[D]を設定し、
    前記収差量Δαは、加入度数ADDα[D]の0.07~0.24倍の量であり、
    前記収差量Δβは、加入度数ADDβ[D]の0.07~0.24倍の量であり、
    前記累進屈折力レンズαおよび前記累進屈折力レンズβにおいて、
    乱視矯正のための屈折力を差し引いた後の前記遠用部の測定基準点Fにおける透過非点収差の値の絶対値が0.12D以下であり、
    前記遠用部、前記近用部および前記中間部のうち前記近用部および前記中間部に対して透過非点収差が付加されている一方で前記遠用部には透過非点収差は付加されておらず、
    少なくとも子午線上における、累進屈折力レンズの幾何中心GCの半径5mm内から前記近用部の測定基準点Nと交わる水平線に至るまで全体に透過非点収差が付加されており、
    透過非点収差が付加された前記近用部および前記中間部においては、乱視矯正のための屈折力を差し引いた後において、
    水平方向の透過屈折力の量が垂直方向の透過屈折力の量よりも大きい部分を含む、または、
    垂直方向の透過屈折力の量が水平方向の透過屈折力の量よりも大きい部分を含み、
    前記異なるパラメータのうち少なくともひとつは加入度数であり、
    累進屈折力レンズαと累進屈折力レンズβとの間での屈折力に係る分布の一致率を100%に近づけるよう、累進屈折力レンズβに対して付加する透過非点収差量Δβ[D]を設定し、
    前記屈折力に係る分布は、縦軸yをレンズ鉛直方向、横軸xをレンズ水平方向、原点をレンズのプリズム参照点とする透過非点収差分布および透過平均屈折力分布の少なくともいずれかであり、
    前記透過非点収差分布の場合、
    透過非点収差がADD/4以下の領域であってy=-14.0mmである領域a´1の水平幅の一致率を97~103%とし、且つ、
    透過非点収差がADD/4以下の領域であってy=-20.0mmである領域a´2の水平幅の一致率を97~103%とし、
    透過非点収差分布(縦軸y:レンズ鉛直方向、横軸x:レンズ水平方向、原点はレンズのプリズム参照点)において、乱視矯正のための屈折力を差し引いた後、
    透過非点収差が0.50D以下の領域であってy=-14.0mmである領域a1の水平幅は8mm以上、および、
    透過非点収差が0.50D以下の領域であってy=-20.0mmである領域a2の水平幅は10mm以上
    の少なくともいずれかの条件を満たすよう、前記収差量Δβ[D]を設定し、
    前記透過平均屈折力分布の場合、
    透過平均屈折力が(遠用度数+加入度数/2)以上の領域であってy=-14.0mmである領域Aの水平幅の一致率を97~103%とし、且つ、
    透過平均屈折力が(遠用度数+加入度数/2)以上の領域であってy=-20.0mmである領域Bの水平幅の一致率を97~103%とし、
    透過平均屈折力分布(縦軸y:レンズ鉛直方向、横軸x:レンズ水平方向、原点はレンズのプリズム参照点)において、乱視矯正のための屈折力を差し引いた後、
    透過平均屈折力が(遠用度数+加入度数/2)以上の領域であってy=-14.0mmである領域Aの水平幅は22mm以上、および、
    透過平均屈折力が(遠用度数+加入度数/2)以上の領域であってy=-20.0mmである領域Bの水平幅は28mm以上
    の少なくともいずれかの条件を満たすよう、前記収差量Δβ[D]を設定する、累進屈折力レンズの設計方法。
  7. 前記収差量Δαは、加入度数ADDα[D]の0.10~0.20倍の量であり、
    前記収差量Δβは、加入度数ADDβ[D]の0.10~0.20倍の量である、請求項5または6に記載の累進屈折力レンズの設計方法。
  8. 前記異なるパラメータのうち少なくともひとつは加入度数であり、
    x軸をレンズ水平方向、y軸をレンズ鉛直方向、原点をレンズのプリズム参照点としたうえで、原点を通過するx軸の正の方向からの回転角度を横軸(単位:度)、累進屈折力レンズの該原点を中心とした半径14.0mmの円上における該回転角度に応じた各点での経線方向の屈折力を加入度数で正規化したものを縦軸(単位:無次元)としたとき、前記累進屈折力レンズαのプロットと前記累進屈折力レンズβのプロットとでの縦軸方向の最大幅が0.1以下となるよう、収差量Δβ[D]を設定する、請求項のいずれかに記載の累進屈折力レンズの設計方法。
  9. 請求項のいずれかに記載の累進屈折力レンズの設計方法にて累進屈折力レンズを設計する設計ステップと、
    前記設計ステップに基づいて累進屈折力レンズを製造する製造ステップと、
    を有する、累進屈折力レンズの製造方法。
  10. 近方距離を見るための近用部と、前記近方距離よりも遠くの距離を見るための遠用部と、前記近用部と前記遠用部との間に設けられ且つ累進屈折機能を有する中間部と、を備えた、累進屈折力レンズ群であって、
    いずれの累進屈折力レンズにも透過非点収差が付加され、装用時の見え方が互いに類似し、
    各累進屈折力レンズに付加された透過非点収差は、各累進屈折力レンズにおける加入度数ADDα[D]の0.07~0.24倍の量であり、
    乱視矯正のための屈折力を差し引いた後の前記遠用部の測定基準点Fにおける透過非点収差の値の絶対値が0.12D以下であり、
    前記遠用部、前記近用部および前記中間部のうち前記近用部および前記中間部に対して透過非点収差が付加されている一方で前記遠用部には透過非点収差は付加されておらず、
    少なくとも主注視線上における、累進開始点から前記近用部の測定基準点Nまでの間の部分から該測定基準点Nに至るまで全体に透過非点収差が付加されており、
    透過非点収差が付加された前記近用部および前記中間部においては、乱視矯正のための屈折力を差し引いた後において、
    水平方向の透過屈折力の量が垂直方向の透過屈折力の量よりも大きい部分を含む、または、
    垂直方向の透過屈折力の量が水平方向の透過屈折力の量よりも大きい部分を含み、
    前記累進屈折力レンズ群のうちの任意の二つである累進屈折力レンズαおよび累進屈折力レンズβは互いに異なる加入度数が設定され、
    前記累進屈折力レンズαと前記累進屈折力レンズβとの間での屈折力に係る分布の一致率を100%に近づけるよう、前記累進屈折力レンズβに対して付加する透過非点収差量Δβ[D]を設定し、
    前記屈折力に係る分布は、縦軸yをレンズ鉛直方向、横軸xをレンズ水平方向、原点をレンズのプリズム参照点とする透過非点収差分布および透過平均屈折力分布の少なくともいずれかであり、
    前記透過非点収差分布の場合、
    透過非点収差がADD/4以下の領域であってy=-14.0mmである領域a´1の水平幅の一致率が97~103%であり、且つ、
    透過非点収差がADD/4以下の領域であってy=-20.0mmである領域a´2の水平幅の一致率が97~103%であり、
    透過非点収差分布(縦軸y:レンズ鉛直方向、横軸x:レンズ水平方向、原点はレンズのプリズム参照点)において、乱視矯正のための屈折力を差し引いた後、
    透過非点収差が0.50D以下の領域であってy=-14.0mmである領域a1の水平幅は8mm以上、および、
    透過非点収差が0.50D以下の領域であってy=-20.0mmである領域a2の水平幅は10mm以上
    の少なくともいずれかの条件を満たし、
    前記透過平均屈折力分布の場合、
    透過平均屈折力が(遠用度数+加入度数/2)以上の領域であってy=-14.0mmである領域Aの水平幅の一致率が97~103%であり、且つ、
    透過平均屈折力が(遠用度数+加入度数/2)以上の領域であってy=-20.0mmである領域Bの水平幅の一致率が97~103%であり、
    透過平均屈折力分布(縦軸y:レンズ鉛直方向、横軸x:レンズ水平方向、原点はレンズのプリズム参照点)において、乱視矯正のための屈折力を差し引いた後、
    透過平均屈折力が(遠用度数+加入度数/2)以上の領域であってy=-14.0mmである領域Aの水平幅は22mm以上、および、
    透過平均屈折力が(遠用度数+加入度数/2)以上の領域であってy=-20.0mmである領域Bの水平幅は28mm以上
    の少なくともいずれかの条件を満たす、累進屈折力レンズ群。
  11. 近方距離を見るための近用部と、前記近方距離よりも遠くの距離を見るための遠用部と、前記近用部と前記遠用部との間に設けられ且つ累進屈折機能を有する中間部と、を備えた、累進屈折力レンズ群であって、
    いずれの累進屈折力レンズにも透過非点収差が付加され、装用時の見え方が互いに類似し、
    各累進屈折力レンズに付加された透過非点収差は、各累進屈折力レンズにおける加入度数ADDα[D]の0.07~0.24倍の量であり、
    乱視矯正のための屈折力を差し引いた後の前記遠用部の測定基準点Fにおける透過非点収差の値の絶対値が0.12D以下であり、
    前記遠用部、前記近用部および前記中間部のうち前記近用部および前記中間部に対して透過非点収差が付加されている一方で前記遠用部には透過非点収差は付加されておらず、
    少なくとも子午線上における、累進屈折力レンズの幾何中心GCの半径5mm内から前記近用部の測定基準点Nと交わる水平線に至るまで全体に透過非点収差が付加されており、
    透過非点収差が付加された前記近用部および前記中間部においては、乱視矯正のための屈折力を差し引いた後において、
    水平方向の透過屈折力の量が垂直方向の透過屈折力の量よりも大きい部分を含む、または、
    垂直方向の透過屈折力の量が水平方向の透過屈折力の量よりも大きい部分を含み、
    前記累進屈折力レンズ群のうちの任意の二つである累進屈折力レンズαおよび累進屈折力レンズβは互いに異なる加入度数が設定され、
    前記累進屈折力レンズαと前記累進屈折力レンズβとの間での屈折力に係る分布の一致率を100%に近づけるよう、前記累進屈折力レンズβに対して付加する透過非点収差量Δβ[D]を設定し、
    前記屈折力に係る分布は、縦軸yをレンズ鉛直方向、横軸xをレンズ水平方向、原点をレンズのプリズム参照点とする透過非点収差分布および透過平均屈折力分布の少なくともいずれかであり、
    前記透過非点収差分布の場合、
    透過非点収差がADD/4以下の領域であってy=-14.0mmである領域a´1の水平幅の一致率が97~103%であり、且つ、
    透過非点収差がADD/4以下の領域であってy=-20.0mmである領域a´2の水平幅の一致率が97~103%であり、
    透過非点収差分布(縦軸y:レンズ鉛直方向、横軸x:レンズ水平方向、原点はレンズのプリズム参照点)において、乱視矯正のための屈折力を差し引いた後、
    透過非点収差が0.50D以下の領域であってy=-14.0mmである領域a1の水平幅は8mm以上、および、
    透過非点収差が0.50D以下の領域であってy=-20.0mmである領域a2の水平幅は10mm以上
    の少なくともいずれかの条件を満たし、
    前記透過平均屈折力分布の場合、
    透過平均屈折力が(遠用度数+加入度数/2)以上の領域であってy=-14.0mmである領域Aの水平幅の一致率が97~103%であり、且つ、
    透過平均屈折力が(遠用度数+加入度数/2)以上の領域であってy=-20.0mmである領域Bの水平幅の一致率が97~103%であり、
    透過平均屈折力分布(縦軸y:レンズ鉛直方向、横軸x:レンズ水平方向、原点はレンズのプリズム参照点)において、乱視矯正のための屈折力を差し引いた後、
    透過平均屈折力が(遠用度数+加入度数/2)以上の領域であってy=-14.0mmである領域Aの水平幅は22mm以上、および、
    透過平均屈折力が(遠用度数+加入度数/2)以上の領域であってy=-20.0mmである領域Bの水平幅は28mm以上
    の少なくともいずれかの条件を満たす、累進屈折力レンズ群。
  12. 前記収差量Δβは、加入度数ADDβ[D]の0.10~0.20倍の量である、請求項10または11に記載の累進屈折力レンズ群。
  13. 前記累進屈折力レンズ群のうちの任意の二つである累進屈折力レンズαおよび累進屈折力レンズβは互いに異なる加入度数が設定され、
    x軸をレンズ水平方向、y軸をレンズ鉛直方向、原点をレンズのプリズム参照点としたうえで、原点を通過するx軸の正の方向からの回転角度を横軸(単位:度)、累進屈折力レンズの該原点を中心とした半径14.0mmの円上における該回転角度に応じた各点での経線方向の屈折力を加入度数で正規化したものを縦軸(単位:無次元)としたとき、前記累進屈折力レンズαのプロットと前記累進屈折力レンズβのプロットとでの縦軸方向の最大幅が0.1以下である、請求項1012のいずれかに記載の累進屈折力レンズ群。
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