JP7249357B2 - 累進屈折力レンズの設計システム、累進屈折力レンズの設計方法、累進屈折力レンズの製造方法および累進屈折力レンズ群 - Google Patents
累進屈折力レンズの設計システム、累進屈折力レンズの設計方法、累進屈折力レンズの製造方法および累進屈折力レンズ群 Download PDFInfo
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Description
図1Aの左側の図に示すように、累進屈折力レンズは、レンズの図中上側部分に設けられた遠方の物体を見るための屈折力を有する部分、すなわち遠方視に用いる屈折力を有する遠用部と、レンズの図中下側部分に設けられた近方の物体を見るための屈折力を有する部分、すなわち近方視に用いる屈折力を有する近用部、および遠用部から近用部の間に設けられる中間部を、領域として有し、遠用部から近用部の間で屈折力が徐々に変化するレンズである。
本発明の第1の態様は、
近方距離を見るための近用部と、近方距離よりも遠くの距離を見るための遠用部と、近用部と遠用部との間に設けられ且つ累進屈折機能を有する中間部と、を備えた累進屈折力レンズの設計システムであって、
収差量Δα[D]の透過非点収差が付加された累進屈折力レンズαの装用者に対し、異なるパラメータを備える累進屈折力レンズβを提供する際に、累進屈折力レンズβの装用時の見え方を累進屈折力レンズαの装用時の見え方に近づけるよう、累進屈折力レンズβに対して付加する透過非点収差量Δβ[D]を設定する収差量設定部を備える、累進屈折力レンズの設計システムである。
異なるパラメータのうち少なくともひとつは加入度数であり、
収差量設定部は、累進屈折力レンズαと累進屈折力レンズβとの間での屈折力に係る分布の一致率を100%に近づけるよう、累進屈折力レンズβに対して付加する透過非点収差量Δβ[D]を設定し、
屈折力に係る分布は、縦軸yをレンズ鉛直方向、横軸xをレンズ水平方向、原点をレンズのプリズム参照点とする透過非点収差分布および透過平均屈折力分布の少なくともいずれかであり、
透過非点収差分布の場合、収差量設定部は、
透過非点収差がADD/4以下の領域であってy=-14.0mmである領域a´1の水平幅の一致率を97~103%とし、且つ、
透過非点収差がADD/4以下の領域であってy=-20.0mmである領域a´2の水平幅の一致率を97~103%とするよう、収差量Δβ[D]を設定し、
透過平均屈折力分布の場合、収差量設定部は、
透過平均屈折力が近用度数の半値以上の領域であってy=-14.0mmである領域Aの水平幅の一致率を97~103%とし、且つ、
透過平均屈折力が近用度数の半値以上の領域であってy=-20.0mmである領域Bの水平幅の一致率を97~103%とするよう、収差量Δβ[D]を設定する。
異なるパラメータのうち少なくともひとつは加入度数であり、
x軸をレンズ水平方向、y軸をレンズ鉛直方向、原点をレンズのプリズム参照点としたうえで、原点を通過するx軸の正の方向からの回転角度を横軸(単位:度)、累進屈折力レンズの該原点を中心とした半径14.0mmの円上における該回転角度に応じた各点での経線方向の屈折力を加入度数で正規化したものを縦軸(単位:無次元)としたとき、累進屈折力レンズαのプロットと累進屈折力レンズβのプロットとでの縦軸方向の最大幅が0.1以下となるよう、収差量設定部が収差量Δβ[D]を設定する。
収差量Δαは、加入度数ADDα[D]の0.07~0.24倍の量であり、
収差量Δβは、加入度数ADDβ[D]の0.07~0.24倍の量とする。
累進屈折力レンズαおよび累進屈折力レンズβにおいて、遠用部、近用部および中間部のうち近用部および中間部に対して透過非点収差が付加され、
透過非点収差が付加された近用部および中間部においては、乱視矯正のための屈折力を差し引いた後において、
水平方向の屈折力の量が垂直方向の屈折力の量よりも大きい部分を含む、または、
垂直方向の屈折力の量が水平方向の屈折力の量よりも大きい部分を含む。
近方距離を見るための近用部と、近方距離よりも遠くの距離を見るための遠用部と、近用部と遠用部との間に設けられ且つ累進屈折機能を有する中間部と、を備えた累進屈折力レンズの設計システムであって、
収差量Δα[D]の透過非点収差が付加された累進屈折力レンズαの装用者に対し、異なるパラメータを備える累進屈折力レンズβを提供する際に、累進屈折力レンズβの装用時の見え方を累進屈折力レンズαの装用時の見え方に近づけるよう、累進屈折力レンズβに対して付加する透過非点収差量Δβ[D]を設定する、累進屈折力レンズの設計方法である。
近方距離を見るための近用部と、近方距離よりも遠くの距離を見るための遠用部と、近用部と遠用部との間に設けられ且つ累進屈折機能を有する中間部と、を備えた、累進屈折力レンズ群であって、
いずれの累進屈折力レンズにも透過非点収差が付加され、装用時の見え方が互いに類似する、累進屈折力レンズ群である。
累進屈折力レンズ群のうちの任意の二つである累進屈折力レンズαおよび累進屈折力レンズβは互いに異なる加入度数が設定され、
累進屈折力レンズαと累進屈折力レンズβとの間での屈折力に係る分布の一致率を100%に近づけるよう、累進屈折力レンズβに対して付加する透過非点収差量Δβ[D]を設定し、
屈折力に係る分布は、縦軸yをレンズ鉛直方向、横軸xをレンズ水平方向、原点をレンズのプリズム参照点とする透過非点収差分布および透過平均屈折力分布の少なくともいずれかであり、
透過非点収差分布の場合、
透過非点収差がADD/4以下の領域であってy=-14.0mmである領域a´1の水平幅の一致率が97~103%であり、且つ、
透過非点収差がADD/4以下の領域であってy=-20.0mmである領域a´2の水平幅の一致率が97~103%であり、
透過平均屈折力分布の場合、
透過平均屈折力が近用度数の半値以上の領域であってy=-14.0mmである領域Aの水平幅の一致率が97~103%であり、且つ、
透過平均屈折力が近用度数の半値以上の領域であってy=-20.0mmである領域Bの水平幅の一致率が97~103%である。
累進屈折力レンズ群のうちの任意の二つである累進屈折力レンズαおよび累進屈折力レンズβは互いに異なる加入度数が設定され、
x軸をレンズ水平方向、y軸をレンズ鉛直方向、原点をレンズのプリズム参照点としたうえで、原点を通過するx軸の正の方向からの回転角度を横軸(単位:度)、累進屈折力レンズの該原点を中心とした半径14.0mmの円上における該回転角度に応じた各点での経線方向の屈折力を加入度数で正規化したものを縦軸(単位:無次元)としたとき、累進屈折力レンズαのプロットと累進屈折力レンズβのプロットとでの縦軸方向の最大幅が0.1以下である。
各累進屈折力レンズに付加された透過非点収差は、各累進屈折力レンズにおける加入度数ADDα[D]の0.07~0.24倍の量である。
遠用部、近用部および中間部のうち近用部および中間部に対して透過非点収差が付加され、
透過非点収差が付加された近用部および中間部においては、乱視矯正のための屈折力を差し引いた後において、
水平方向の屈折力の量が垂直方向の屈折力の量よりも大きい部分を含む、または、
垂直方向の屈折力の量が水平方向の屈折力の量よりも大きい部分を含む。
累進屈折力レンズαおよび累進屈折力レンズβの少なくともいずれかの加入度数ADDは1.5~3.0Dの範囲内であってもよい。累進屈折力レンズαおよび累進屈折力レンズβには加入度数が設定されていてもよい。
透過非点収差分布の場合、
透過非点収差がADD/4以下の領域であってy=-14.0mmである領域a´1の水平幅の一致率を好適には98~102%、更に好適には99~101%とし、且つ、
透過非点収差がADD/4以下の領域であってy=-20.0mmである領域a´2の水平幅の一致率を好適には98~102%、更に好適には99~101%とするよう、
および/または、
透過平均屈折力が近用度数の半値以上の領域であってy=-14.0mmである領域Aの水平幅の一致率を好適には98~102%、更に好適には99~101%とし、且つ、
透過平均屈折力が近用度数の半値以上の領域であってy=-20.0mmである領域Bの水平幅の一致率を好適には98~102%、更に好適には99~101%とするよう、収差量Δβ[D]を設定するのがよい。
遠用部の測定基準点Fにおける透過非点収差の値から近用部の測定基準点Nにおける透過非点収差の値までの変化量Δ[D]の絶対値は、加入度数ADD[D]の0.07~0.24倍であるのが好ましい。なお、変化量Δ[D]の範囲は、加入度数ADD[D]の0.10倍~0.20倍の量であることがより好ましく、0.12~0.15倍の量であることが特に好ましい。
近用部および中間部に対して付加されるのは、絶対値がゼロを超え且つ0.25D以下の透過非点収差であるのが好ましい。
乱視矯正のための屈折力を差し引いた後の遠用部の測定基準点Fにおける透過非点収差の値の絶対値が0.12D以下であるのが好ましい。
透過非点収差と共に透過屈折力が付加されるのが好ましい。
レンズ上方から下方に向かって見たときに、透過非点収差の付加が開始した後は、透過非点収差の付加量は減少させないのが好ましい。
また、レンズ上方から下方に向かって見たときに、少なくとも累進開始点から測定基準点Nまでの主注視線上(子午線の場合は交わる水平線までの子午線上)では、透過非点収差の付加が開始した後に付加量が単調増加し且つ単調増加した付加量は減少しないようにするまたは減少するとしても付加量の10%以下もしくは0.12D以下であるのも好ましい。
累進屈折力レンズβにおける透過非点収差の分布の、累進屈折力レンズαにおける透過非点収差の分布に対する一致率が所定の閾値内にあるか否かの判定を、コンピュータ装置内の判定部にて行ってもよい。また、コンピュータ装置内の判定部により、上記の収差量Δβ[D]の絶対値が、加入度数ADD[D]の0.07~0.24倍に収まるか否かの判定を行ってもよい。
近方距離を見るための近用部と、近方距離よりも遠くの距離を見るための遠用部と、近用部と遠用部との間に設けられ且つ累進屈折機能を有する中間部と、を備えた累進屈折力レンズの設計システムであって、
遠用部、近用部および中間部のうち近用部および中間部に対して透過非点収差を付加し、
透過非点収差が付加された近用部および中間部においては、乱視矯正のための屈折力を差し引いた後において、
水平方向の屈折力の量が垂直方向の屈折力の量よりも大きい部分を含むようにする、
または、
垂直方向の屈折力の量が水平方向の屈折力の量よりも大きい部分を含むようにする、累進屈折力レンズの設計システムである。
透過非点収差の付加前の累進屈折力レンズと累進屈折力レンズβとの間において、
累進屈折力レンズβの加入度数は3.00[D]未満(好適には2.00[D]以下)であり、
累進屈折力レンズαおよび累進屈折力レンズβにおいて、遠用部、近用部および中間部のうち近用部および中間部に対して透過非点収差が付加され、
透過非点収差が付加された近用部および中間部においては、乱視矯正のための屈折力を差し引いた後において、
水平方向の屈折力の量が垂直方向の屈折力の量よりも大きい部分を含む場合は、
透過平均屈折力が近用度数の半値以上の領域であってy=-14.0mmである領域Aの水平幅の一致率が90~100%であり、且つ、
透過平均屈折力が近用度数の半値以上の領域であってy=-20.0mmである領域Bの水平幅の一致率が90~100%であり、
垂直方向の屈折力の量が水平方向の屈折力の量よりも大きい部分を含む場合は、
透過非点収差がADD/4以下の領域であってy=-14.0mmである領域a´1の水平幅の一致率が60~100%であり、且つ、
透過非点収差がADD/4以下の領域であってy=-20.0mmである領域a´2の水平幅の一致率が60~100%である。
その規定に代えてまたはその規定と共に以下の規定を採用してもよい。
透過非点収差の付加前の累進屈折力レンズのプロットと累進屈折力レンズβのプロットとでの縦軸方向の最大幅が0.1以下である。
1.本発明の技術的思想の要旨
2.定義
3.透過基本設計
4.従来の累進屈折力レンズ
5.実施形態1に係る累進屈折力レンズの設計方法
5-1.実施形態1にて取り扱う累進屈折力レンズ(水平方向の屈折量>垂直方向の屈折力)
5-2.レンズ変更前後において、付加された透過非点収差量が所定範囲内にある場合(実施形態1および収差量を軽微に変更した実施形態1a)と所定範囲内にない場合(参照形態1)との比較
6.実施形態2の累進屈折力レンズの設計方法
6-1.実施形態2にて取り扱う累進屈折力レンズ(垂直方向の屈折量>水平方向の屈折力)
6-2.レンズ変更前後において、付加された透過非点収差量が所定範囲内にある場合(実施形態2および収差量を軽微に変更した実施形態2a)と所定範囲内にない場合(参照形態2)との比較
7.円周上の経線方向度数の観点からの各実施形態と各参照形態との比較
8.本発明の一態様に係るシステム構成
9.変形例
本発明の一態様の累進屈折力レンズおよびその関連技術についての説明の前に、本発明の技術的思想の要旨について説明する。
「近方距離を見るための近用部と、近方距離よりも遠くの距離を見るための遠用部と、近用部と遠用部との間に設けられ且つ累進屈折機能を有する中間部と、を備えた累進屈折力レンズの設計システムであって、
収差量Δα[D]の透過非点収差が付加された累進屈折力レンズαの装用者に対し、異なるパラメータを備える累進屈折力レンズβを提供する際に、累進屈折力レンズβの装用時の見え方を累進屈折力レンズαの装用時の見え方に近づけるよう、累進屈折力レンズβに対して付加する透過非点収差量Δβ[D]を設定する収差量設定部を備える、累進屈折力レンズの設計システム。または、そのように透過非点収差量Δβ[D]を設定する、累進屈折力レンズの設計方法。」
上記「屈折力に係る分布」は、y軸をレンズ鉛直方向、x軸をレンズ水平方向、原点をレンズのプリズム参照点とする透過非点収差分布および透過平均屈折力分布の少なくともいずれかとするのも好ましい。
透過非点収差がADD/4以下の領域であってy=-14.0mmである領域a´1の水平幅の一致率を97~103%(より好適には98~102%、更に好適には99~101%)とし、且つ、
透過非点収差がADD/4以下の領域であってy=-20.0mmである領域a´2の水平幅の一致率を97~103%(より好適には98~102%、更に好適には99~101%)とするよう、収差量Δβ[D]を設定するのが好ましい。
透過平均屈折力が近用度数の半値以上の領域であってy=-14.0mmである領域Aの水平幅の一致率を97~103%(より好適には98~102%、更に好適には99~101%)とし、且つ、
透過平均屈折力が近用度数の半値以上の領域であってy=-20.0mmである領域Bの水平幅の一致率を97~103%(より好適には98~102%、更に好適には99~101%)とするよう、収差量Δβ[D]を設定するのが好ましい。
人間の眼は、リスティング則に基づいて回旋することにより物体を視認する。つまり、正面視から側方視または下方視等に移行する際に、回旋方向は主として経線方向(meridional)である。そのため、経線方向度数は、見え方の評価に直結し、ひいては累進屈折力レンズの評価に直結する。その結果、円周上の経線方向度数で累進屈折力レンズを規定するのが好ましい。一具体例は以下のとおりである。
本発明の一態様において、上記パラメータとして加入度数ADDを採用する場合、
収差量Δαは、加入度数ADDα[D]の0.07~0.24倍の量であり、
収差量Δβは、加入度数ADDβ[D]の0.07~0.24倍の量とするのが好ましい。
後述の一態様にて示すデータが示すように、レンズ変更前後において上記範囲内に収差量を収めることにより、屈折力に係る分布の一致率が上記範囲に容易に収まる。
本意図的に透過非点収差を付加した箇所であって眼鏡装用者が頻繁に視線を通過させる箇所とは、本発明の一態様においては中間部および近用部である。より正確に言えば、少なくとも遠用部に存在するフィッティングポイントまたはアイポイントFPには透過非点収差は付加しない。詳しくは後述の[2.定義]にて定義付けする。但し、後述の[9.変形例]でも言及するが、遠用部には該透過非点収差を付加することは排除しない。
後述の実施形態2の累進屈折力レンズの設計方法にて取り扱う累進屈折力レンズは、平均屈折力誤差と非点収差のうち平均屈折力誤差を重視、すなわち平均屈折力誤差の増加を抑えるべく、上記のように、乱視矯正のための屈折力を差し引いた後の垂直方向の屈折力の量が水平方向の屈折力の量よりも大きい部分を含むよう設定している。
「少なくとも累進開始点から測定基準点Nまで(子午線の場合は交わる水平線まで)では、透過非点収差の付加が開始した後に付加量が単調増加し且つ単調増加した付加量は減少しないまたは減少するとしても付加量の10%以下もしくは0.12D以下であるようにする。」
透過非点収差と共に透過屈折力も付加することの一具体例としては、以下のとおりである。予め透過非点収差の付加量を決めておく。この透過非点収差の付加に伴う屈折力の変化を予め加味したレンズ設計を用意する。このレンズ設計に対し、予め決めておいた透過非点収差の付加を行うことにより、目標とする加入度数が得られるように設定してもよい。
その結果、本明細書に記載の全ての透過平均屈折力分布図において、透過非点収差の付加後であっても当初設定した加入度数を実現できている。
なお、透過非点収差の付加が行われた累進屈折力レンズであって、近用部の測定基準点Nにおいて、該付加による屈折力の変化分に起因する、レンズ袋等に記載された遠用度数S+加入度数ADDの値すなわち近用度数からのずれが一部でも補填されていれば、透過屈折力の付加が行われているとみなす。一例としては、該ずれが累進屈折力レンズに最終的に存在しない状態または存在したとしてもそのずれ量が±0.12Dの範囲内の状態は、透過屈折力の付加が行われているとみなす。
本明細書では、一般的にレンズの屈折の程度を示す文言として、いわゆる度数、パワーの代わりに屈折力を用いる。
図2は、累進屈折力レンズにおける水平方向と垂直方向の透過の屈折力分布の一例を説明する図である。
透過非点収差の付加状態を数値で定義すると、遠用部の測定基準点F(図2中では符号16)における透過非点収差の絶対値Δ2から、中間部または近用部の任意の点における透過非点収差の絶対値Δ1に至るまでに値が増加している状態を指す。
後述の[9.変形例]に記載した透過非点収差の付加のパターン1、3に示すように、必ずしも、累進開始点且つ幾何中心GCを通過する水平線よりも下方の領域全体に対して透過非点収差を付加せずともよい。
また、レンズ上方から下方に見たときに、必ずしも、FP直下、累進開始点直下、GC直下、またはプリズム開始点直下から透過非点収差の付加を開始しなくともよい。累進開始点と測定基準点Nとの間にて透過非点収差の付加を開始すればよい。中間部における遠用部寄りの部分には透過非点収差を付加せず、近用部寄りの部分のみに透過非点収差を付加してもよい。
但し、透過非点収差の付加を開始した部分から下方において、中間部および近用部を通過する主注視線(および/または子午線)上には透過非点収差を付加するのが好ましい。少なくとも、累進開始点から測定基準点Nまでの間の部分から測定基準点Nに至るまで全体に主注視線上に透過非点収差を付加するのが好ましい。子午線でいうと、少なくとも、累進開始点から測定基準点Nまでの間の部分(例えばGCから半径5mm内、好適には3mm内)から測定基準点Nと交わる水平線に至るまでの子午線全体上に透過非点収差を付加するのが好ましい。なお、FPおよび累進開始点は通常だと子午線上(y軸上)に存在するため、水平線を使用していないが、仮に子午線上に存在しない場合でも水平線を使用することにより、上記「子午線全体」を定義することは可能である。
なお、後述の実施形態2での「透過非点収差が付加された近用部および中間部においては、乱視矯正のための屈折力を差し引いた後において、垂直方向の屈折力の量が水平方向の屈折力の量よりも大きい部分を含む」とは、本段落に記載の内容において水平と垂直とを逆に置き換えた内容である。
本発明の一態様は、累進屈折力レンズの買い替え前後の見え方を同じようにするシステム、設計方法、およびレンズ群を主旨とする。この主旨を説明するために、まず、本発明の一態様にて取り扱う累進屈折力レンズ自体について説明する。
その際、透過非点収差の分布および透過平均屈折力の分布は、少なくとも、角膜-レンズ頂点間距離、前傾角、およびフロント角の情報を用いて、累進屈折力レンズの表面形状から算出される分布であることが好ましい。
図3および図4は、従来の透過の基本設計を行った累進屈折力レンズを説明する図である。図3A~図3Dは、透過平均屈折力の分布と、垂直方向に沿った(子午線に沿った)および水平方向に沿った透過平均屈折力(MP)および非点収差(VP、HP)の変化を示す図である。なお、縦軸yはレンズ鉛直方向を示し、横軸xはレンズ水平方向を示し、原点はレンズのプリズム参照点を示す。
図4A~図4Dは、透過非点収差の分布と、垂直方向に沿ったおよび水平方向に沿った透過平均屈折力および透過非点収差の変化を示す図である。
図3Aは、従来の累進屈折力レンズ(ADD=3.00D)に対応する透過平均屈折力の分布を示す図である。図3Aにて採用した条件を以下に列挙する。
・レンズ直径:60mm
・内寄せ量:0.0mm
・S(遠用部測定基準点における球面屈折力):+0.00D
・C(円柱屈折力):+0.00D
・ADD:3.00D
・累進帯長:18mm
矢印「A」はy=-14.0mmの部分、すなわち近用部の代表部分に対応する。
矢印「B」はy=-20.0mmの部分、すなわち近用部の下方部分を表す代表部分に対応する。なお、y=-20.0mmは、フレームへのレンズの供給条件を考慮した場合、近用部を確保するのに下限値として十分である。
図5Bは、従来の累進屈折力レンズ(ADD=2.00D)に対応する透過非点収差の分布を示す図である。
図6Bは、従来の累進屈折力レンズ(ADD=1.00D)に対応する透過非点収差の分布を示す図である。
(5-1.実施形態1にて取り扱う累進屈折力レンズ(水平方向の屈折量>垂直方向の屈折力))
以下、本発明の実施形態1について説明する。(本発明の技術的思想の要旨)の欄にて述べたように、実施形態1では、非点収差を重視、すなわち非点収差の増加を抑えるべく、乱視矯正のための屈折力を差し引いた後において、水平方向の屈折力の量が垂直方向の屈折力の量よりも大きくなる部分を含むよう設定している。
図7A~図7Dは、実施形態1(ADD=3.00D)における透過平均屈折力の分布の一例と、垂直方向および水平方向に沿った透過平均屈折力および透過非点収差の変化の一例を示す図である。
図8A~図8Dは、実施形態1(ADD=3.00D)における透過非点収差の分布の一例と、垂直方向および水平方向に沿った透過平均屈折力および透過非点収差の変化の一例を示す図である。
累進屈折力レンズだと、レンズ下方に向けて屈折力が増加する関係上、累進部分に存在している固有非点収差は、垂直方向の屈折力>水平方向の屈折力という関係を有する。
その一方、実施形態1(ADD=3.00D)にて付加される透過非点収差は、水平方向の屈折力>垂直方向の屈折力という関係を有する。
結局、実施形態1(ADD=3.00D)にて付加される透過非点収差が、累進部分に存在している固有非点収差を打ち消すことになる。
図8Bは、実施形態1(ADD=3.00D)に対応する子午線に沿った透過非点収差の変化を示す図である。縦軸は、y方向の位置[mm]を示し、横軸は、伝達された透過非点収差(D)を示す。
つまり、実施形態1においては、いずれも、透過非点収差の付加量はADDの0.10倍である。
図9Bは、実施形態1(ADD=2.00D)に対応する透過非点収差の分布を示す図である。
図10Bは、実施形態1(ADD=1.00D)に対応する透過非点収差の分布を示す図である。
そのうえで、以下、本発明の一態様に係る設計方法を適用した場合の結果について述べる。
ここで、実施形態1から収差量(0.30D)を軽微に変更した実施形態1aについて述べる。実施形態1aでは、ADDに応じて透過非点収差の付加量を変更する。
ADDが3.00Dの場合には透過非点収差の付加量を0.50Dとする。
ADDが2.00Dの場合には透過非点収差の付加量を0.33Dとする。
ADDが1.00Dの場合には透過非点収差の付加量を0.17Dとする。
つまり、実施形態1aにおいては、いずれも、透過非点収差の付加量はADDの約1/6倍(約0.17倍)である。
図11Bは、実施形態1a(ADD=3.00D)に対応する透過非点収差の分布を示す図である。
図12Bは、実施形態1a(ADD=2.00D)に対応する透過非点収差の分布を示す図である。
図13Bは、実施形態1a(ADD=1.00D)に対応する透過非点収差の分布を示す図である。
図14Bは、参照形態1(ADD=3.00D)に対応する透過非点収差の分布を示す図である。
図15Bは、参照形態1(ADD=2.00D)に対応する透過非点収差の分布を示す図である。
図16Bは、参照形態1(ADD=1.00D)に対応する透過非点収差の分布を示す図である。
透過平均屈折力が近用度数の半値以上の領域であってy=-14.0mmである領域Aの水平幅の一致率を97~103%(具体的には99~101%)とし、且つ、
透過平均屈折力が近用度数の半値以上の領域であってy=-20.0mmである領域Bの水平幅の一致率を97~103%(具体的には99~101%)とするよう、収差量Δβ[D]が設定されていることがわかる。
透過非点収差がADD/4以下の領域であってy=-14.0mmである領域a´1の水平幅の一致率を97~103%(具体的には99~101%)とし、且つ、
透過非点収差がADD/4以下の領域であってy=-20.0mmである領域a´2の水平幅の一致率を97~103%(具体的には99~101%)とするよう、収差量Δβ[D]が設定されていることがわかる。
(6-1.実施形態2にて取り扱う累進屈折力レンズ(垂直方向の屈折量>水平方向の屈折力))
以下、本発明の実施形態2にて取り扱う累進屈折力レンズについて説明する。(本発明の技術的思想の要旨)の欄にて述べたように、実施形態2では、平均屈折力誤差を重視、すなわち平均屈折力誤差の増加を抑えるべく、乱視矯正のための屈折力を差し引いた後において、垂直方向の屈折力の量が水平方向の屈折力の量よりも大きくなる部分を含むよう設定している。
以下、説明の便宜上、[5.実施形態1に係る累進屈折力レンズの設計方法]と同内容については記載を省略する。
図17A~図17Dは、実施形態2(ADD=3.00D)における透過平均屈折力の分布の一例と、垂直方向および水平方向に沿った透過平均屈折力および透過非点収差の変化の一例を示す図である。
図18A~図18Dは、実施形態2(ADD=3.00D)における透過非点収差の分布の一例と、垂直方向および水平方向に沿った透過平均屈折力および透過非点収差の変化の一例を示す図である。
図18Bは、実施形態2(ADD=3.00D)に対応する子午線に沿った透過非点収差の変化を示す図である。縦軸は、y方向の位置[mm]を示し、横軸は、伝達された透過非点収差(D)を示す。
つまり、実施形態2においては、いずれも、透過非点収差の付加量はADDの1/8(=0.125)倍である。
図19Bは、実施形態2(ADD=2.00D)に対応する透過非点収差の分布を示す図である。
図20Bは、実施形態2(ADD=1.00D)に対応する透過非点収差の分布を示す図である。
上記のように、垂直方向の屈折力>水平方向の屈折力という関係を有する透過非点収差を付加することにより、固有非点収差に更に非点収差が上乗せされることになる。そのため、近用部において透過非点収差0.50D以下の水平幅であるところの明瞭な視野は、通常、従来に比べて得られにくくなる。その一方、遠用部と累進帯とを滑らかに接続するために、非点収差の上乗せ後であっても、累進屈折力レンズの周辺領域の水平方向の屈折力の値は維持される。それに伴い、近用部における屈折力の変化は全体的に穏やかになる。それに応じ、近用度数の半値以上の領域の水平幅は広がる。
その結果、近用部において透過非点収差が付加されることにより、近用度数の半値以上の領域の水平幅を広げることができ、所定の近方距離にある物体を視認しやすくなる。
そのうえで、以下、本発明の一態様に係る設計方法を適用した場合の結果について述べる。
ここで、実施形態2から収差量(0.30D)を軽微に変更した実施形態2aについて述べる。実施形態2aでは、ADDに応じて透過非点収差の付加量を変更する。
ADDが3.00Dの場合には透過非点収差の付加量を0.50Dとする。
ADDが2.00Dの場合には透過非点収差の付加量を0.33Dとする。
ADDが1.00Dの場合には透過非点収差の付加量を0.17Dとする。
つまり、実施形態2aにおいては、いずれも、透過非点収差の付加量はADDの約1/6倍(約0.17倍)である。
図21Bは、実施形態2a(ADD=3.00D)に対応する透過非点収差の分布を示す図である。
図22Bは、実施形態2a(ADD=2.00D)に対応する透過非点収差の分布を示す図である。
図23Bは、実施形態2a(ADD=1.00D)に対応する透過非点収差の分布を示す図である。
図24Bは、参照形態2(ADD=3.00D)に対応する透過非点収差の分布を示す図である。
図25Bは、参照形態2(ADD=2.00D)に対応する透過非点収差の分布を示す図である。
図26Bは、参照形態2(ADD=1.00D)に対応する透過非点収差の分布を示す図である。
透過平均屈折力が近用度数の半値以上の領域であってy=-14.0mmである領域Aの水平幅の一致率を99~101%とし、且つ、
透過平均屈折力が近用度数の半値以上の領域であってy=-20.0mmである領域Bの水平幅の一致率を99~101%とするよう、収差量Δβ[D]が設定されていることがわかる。
透過非点収差がADD/4以下の領域であってy=-14.0mmである領域a´1の水平幅の一致率を97~103%(具体的には99~101%)とし、且つ、
透過非点収差がADD/4以下の領域であってy=-20.0mmである領域a´2の水平幅の一致率を97~103%(具体的には99~101%)とするよう、収差量Δβ[D]が設定されていることがわかる。
図27は、原点を通過するx軸の正の方向からの回転角度を横軸(単位:度)、累進屈折力レンズの該原点を中心とした半径14.0mmの円上における該回転角度に応じた各点での経線方向の屈折力を加入度数で正規化したものを縦軸(単位:無次元)としたときのプロットであり、透過非点収差が付加される前のプロットであり、ADDが1.00Dの場合、2.00Dの場合、3.00Dの場合についてのプロットを示す図である。
図29は、図27と同様の内容のプロットであり、実施形態1のプロットであり、ADDが1.00Dの場合(付加収差量0.10D)、2.00Dの場合(付加収差量0.20D)、3.00Dの場合(付加収差量0.30D)についてのプロットを示す図である。
図30は、図27と同様の内容のプロットであり、参照形態2のプロットであり、ADDが1.00Dの場合、2.00Dの場合、3.00Dの場合(いずれも付加収差量0.50D)についてのプロットを示す図である。
図31は、図27と同様の内容のプロットであり、実施形態2のプロットであり、ADDが1.00Dの場合(付加収差量0.125D)、2.00Dの場合(付加収差量0.25D)、3.00Dの場合(付加収差量0.375D)についてのプロットを示す図である。
その一方、図29に示すように、実施形態1だと、該プロット同士の縦軸方向の最大幅が0.1以下(具体的には0.001以下)となった。なお、図29は、該最大幅が極めて小さいため、プロット同士が重複している。
その一方、図31に示すように、実施形態2だと、該プロット同士の縦軸方向の最大幅が0.1以下(具体的には0.001以下)となった。なお、図31は、該最大幅が極めて小さいため、プロット同士が重複している。
図32は、実施形態の累進屈折力レンズの設計方法を実施するための累進屈折力レンズの製造システムの構成の一例を説明するブロック図である。なお、本システムを実行するため、以降に示すコンピュータを使用し(computer-assisted)、特にコンピュータ中の制御部により本システムを制御する。
・内寄せ量:2.5mm
・屈折率:1.60
・角膜-レンズ頂点間距離(CVD):12.0mm
・角膜頂点から眼球の回転中心までの距離:13.0mm
・瞳孔間距離(PD):64.0mm
・前傾角:10.0度
・フロント角(JIS B7281:2003):0.0°
以降、特記無い限り、最終的に得られるレンズについての各種条件は同様とする。但し、本発明は上記各条件に限定されない。
レンズ製造者300への注文は、インターネットやFAXなどの特定のネットワークによるデータ送信により行われる。眼科医および一般消費者は、眼鏡店200と同様の発注者に含まれる。
眼鏡店200には、コンピュータ201が設置されている。コンピュータ201は、例えば、一般的なパーソナルコンピュータであり、レンズ製造者300に眼鏡レンズの発注を行うためのソフトウェアがインストールされている。注文データは、眼鏡店200等でマウスやキーボード等の操作によりコンピュータ201に入力される。
注文データは、装用者情報を少なくとも含む。装用者情報は、装用者用のレンズデータおよびフレームデータを少なくとも含む。また、装用者情報には、場合によって、眼鏡装着スタイル等の補足データも含まれる。
レンズデータには、例えば、処方データ(球面屈折力、円柱屈折力、円柱軸、プリズム度数、プリズム基底方向、加入度数、瞳孔間距離(PD)、ベースカーブなどを含む)、レンズの種類の情報(例えば、球面単焦点レンズ、非球面単焦点レンズ、二焦点レンズ、累進屈折力レンズなどの情報を含む)、付加するコーティングの情報(色、ハードコート、反射防止フィルム、UVカット等の有無の情報)、クライアントである装用者の要求に応じたレイアウトデータ等が含まれる。
フレームデータは、クライアントによって選択されたフレームの形状データを含む。フレームデータは、例えばバーコードタグで管理され、フレームに付されたバーコードタグをバーコードリーダで読み取ることにより利用可能となっている。コンピュータ201は、例えばインターネットを介して、レンズ製造者300に注文データ(レンズデータおよびフレームデータ)を送信する。
レンズ製造者300では、ホストコンピュータ301を中心としたLAN(Local Area Network)が構築されている。ホストコンピュータ301には、レンズ設計用コンピュータ302、レンズ加工用コンピュータ303等の複数の端末装置が接続されている。レンズ設計用コンピュータ302、レンズ加工用コンピュータ303は一般的なパーソナルコンピュータであり、眼鏡レンズを設計するためのプログラムや眼鏡レンズを加工するためのプログラムがそれぞれインストールされている。
レンズ製造者300では、注文データを受信した後、装用者の処方を満足するように、未処理ブロックに凸面(物体側)と凹面(眼球側)の両面の設計・加工を施す。
なお、レンズ製造者300において、生産性を向上させるために、全ての製造範囲でのレンズの屈折力を複数のグループに分けてもよい。そのうえで、凸曲線形状(球面形状または非球面形状)を有する半完成ブランク眼鏡レンズと、予め各群の度数範囲に応じたレンズ径とを、眼鏡レンズの注文に合わせて予め用意しておいてもよい。
この場合、レンズ製造者300は、凹面加工(および玉型加工)を行うか、または凹凸加工(および玉型加工)を行うことで、装用者の処方データに基づく眼鏡レンズを製造することができる。
レンズ設計用コンピュータ302による眼鏡レンズの設計については後述する。レンズ設計用コンピュータ302は、作成したレンズ設計データと玉型加工データをレンズ加工用コンピュータ303に送信する。
オペレータは、眼鏡レンズの素となるブロックをカーブジェネレータ等の加工機械304にセットし、レンズ加工用コンピュータ303に処理開始の指示を入力する。レンズ加工用コンピュータ303は、レンズ設計用コンピュータ302から送信されたレンズ設計データおよび玉型加工データを読み取り、加工機械304を駆動制御する。
玉型加工後の眼鏡レンズには、染色、ハードコート、反射防止フィルム、UVカット等の各種コーティングが施される。これにより、眼鏡レンズが完成し、眼鏡店200に配送される。
上記システムは、ハードウェアおよび/またはソフトウェアの任意の組み合わせで実現することができる。例えば、クライアント・ サーバ・アーキテクチャ、クラウドコンピューティングシステムなどが用いられる。また、ハードウェアおよび/またはソフトウェアを分散させることもでき、また、1つのデバイスに集中させることもできる。
一実施形態によれば、累進屈折力レンズである眼鏡レンズは、片面累進型(内面または外面)および両面を統合したタイプを含む両面累進型等、の累進屈折力レンズに適用することができる。
以降、本設計システムによる設計方法は、レンズ設計用コンピュータ302を使用して(computer-assisted)実行される。更に言うと、レンズ設計用コンピュータ302内の制御部(不図示)が、以降に記載の設計方法に必要な情報を処理する機能を、レンズ設計用コンピュータ302に発揮させるべく、本実施形態の眼鏡レンズの設計を実行するように作製されたコードを含むコンピュータプログラムを実行する。
まず、作製する眼鏡の仕様および装用者に適したパラメータを取得する。例えば、処方データを含む装用者処方情報を取得する(図33のステップS101A参照)。処方データは、従来および実施形態の両方において同様に用いられ、例えば、S+0.00D ADD2.00Dといったデータである。
以上、本発明の一態様に係る累進屈折力レンズ、およびその設計方法について詳細に説明したが、本発明の累進屈折力レンズ、およびその設計方法は上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよいのはもちろんである。
設計ステップに基づいて累進屈折力レンズを製造する製造ステップと、
を有する、累進屈折力レンズの製造方法も、本発明の技術的思想が反映されている。
いずれの累進屈折力レンズにも透過非点収差が付加され、装用時の見え方が互いに類似する、累進屈折力レンズ群にも、本発明の技術的思想が反映されている。
・累進屈折力レンズαのプロットと累進屈折力レンズβのプロットとでの縦軸方向の最大幅が0.1以下。
・透過非点収差がADD/4以下の領域であってy=-14.0mmである領域a´1の水平幅の一致率が97~103%であり、且つ、
透過非点収差がADD/4以下の領域であってy=-20.0mmである領域a´2の水平幅の一致率が97~103%である。
・透過平均屈折力が近用度数の半値以上の領域であってy=-14.0mmである領域Aの水平幅の一致率が97~103%であり、且つ、
透過平均屈折力が近用度数の半値以上の領域であってy=-20.0mmである領域Bの水平幅の一致率が97~103%である。
・累進屈折力レンズ群のうちの任意の二つである累進屈折力レンズαおよび累進屈折力レンズβは互いに異なる加入度数が設定され、原点を通過するx軸の正の方向からの回転角度を横軸(単位:度)、累進屈折力レンズの該原点を中心とした半径14.0mmの円上における該回転角度に応じた各点での経線方向の屈折力を加入度数で正規化したものを縦軸(単位:無次元)としたとき、累進屈折力レンズαのプロットと累進屈折力レンズβのプロットとでの縦軸方向の最大幅が0.1以下である。
・各累進屈折力レンズに付加された透過非点収差は、各累進屈折力レンズにおける加入度数ADDα[D]の0.07~0.24倍の量である。
の数値範囲の規定を適用するのが好ましい。
なお、この場合の「縦軸方向の最大幅が0.1以下」とは、累進屈折力レンズ群のうち、該縦軸方向の幅が最大となる任意の累進屈折力レンズαおよび累進屈折力レンズβの組み合わせでも、0.1以下の幅となることを意味する。
また、累進屈折力レンズの非点収差調整領域Rが、水平線HLに対して、下方の側にあるパターンであってもよい(基礎出願におけるパターン2)。
また、累進屈折力レンズの非点収差調整領域Rは、水平線HLの下方の側で、水平方向に一定の幅を有する領域を含むケースであってもよい(基礎出願におけるパターン3)。
そして、累進屈折力レンズを買い替える際に、買い替える前の透過非点収差付加パターンと買い替えた後の透過非点収差付加パターンとが同じであってもよいし、別であってもよい。ただ、買い替え前後での見え方を近似させることを考慮すると、該パターンが買い替え前後で同じであるのが好ましい。
例えば、買い替え前後において遠用部に透過非点収差が付加されたものも技術的範囲に含まれる。その一方、[1.本発明の技術的思想の要旨]にて述べたように、眼鏡装用者が頻繁に視線を通過させる箇所に意図的に透過非点収差を付加したことにより格別の効果が得られる。そのため、本発明の各実施形態が好ましいことに変わりはない。
「近方距離を見るための近用部と、近方距離よりも遠くの距離を見るための遠用部と、近用部と遠用部との間に設けられ且つ累進屈折機能を有する中間部と、を備えた累進屈折力レンズの設計システムであって、
遠用部、近用部および中間部のうち近用部および中間部に対して透過非点収差を付加し、
透過非点収差が付加された近用部および中間部においては、乱視矯正のための屈折力を差し引いた後において、
水平方向の屈折力の量が垂直方向の屈折力の量よりも大きい部分を含むようにする、
または、
垂直方向の屈折力の量が水平方向の屈折力の量よりも大きい部分を含むようにする、累進屈折力レンズの設計システム。」
「透過非点収差の付加前の累進屈折力レンズと累進屈折力レンズβとの間において、
累進屈折力レンズβの加入度数は3.00[D]未満(好適には2.00[D]以下)であり、
累進屈折力レンズαおよび累進屈折力レンズβにおいて、遠用部、近用部および中間部のうち近用部および中間部に対して透過非点収差が付加され、
透過非点収差が付加された近用部および中間部においては、乱視矯正のための屈折力を差し引いた後において、
水平方向の屈折力の量が垂直方向の屈折力の量よりも大きい部分を含む場合は、
透過平均屈折力が近用度数の半値以上の領域であってy=-14.0mmである領域Aの水平幅の一致率が90~100%であり、且つ、
透過平均屈折力が近用度数の半値以上の領域であってy=-20.0mmである領域Bの水平幅の一致率が90~100%であり、
垂直方向の屈折力の量が水平方向の屈折力の量よりも大きい部分を含む場合は、
透過非点収差がADD/4以下の領域であってy=-14.0mmである領域a´1の水平幅の一致率が60~100%であり、且つ、
透過非点収差がADD/4以下の領域であってy=-20.0mmである領域a´2の水平幅の一致率が60~100%である。」
なお、上記各数値範囲は、従来例(収差付加前レンズ)のデータと実施形態1、2のデータとの対比、そして、従来例(収差付加前レンズ)のデータと参照形態1、2のデータとの対比から得た。数値規定の意味は、例えば付加される透過非点収差が水平>垂直だと、透過非点収差の低収差領域が拡大する代わりに透過平均屈折力分布が狭くなるが、実施形態1では参照形態1に比べてそこまで狭くならない、という規定である。垂直>水平の場合は、その逆の規定である。
また、上記と同様、オリジナルレンズ(従来の累進屈折力レンズ)の装用時の見え方に近づける際の規定として、上記規定の代わりまたはそれと共に以下の規定を採用してもよい。
「x軸をレンズ水平方向、y軸をレンズ鉛直方向、原点をレンズのプリズム参照点としたうえで、原点を通過するx軸の正の方向からの回転角度を横軸(単位:度)、累進屈折力レンズの該原点を中心とした半径14.0mmの円上における該回転角度に応じた各点での経線方向の屈折力を加入度数で正規化したものを縦軸(単位:無次元)としたとき、オリジナルレンズのプロットと累進屈折力レンズβのプロットとでの縦軸方向の最大幅が0.1以下となる。」
以下、本開示の「累進屈折力レンズの設計システム、累進屈折力レンズの設計方法および累進屈折力レンズ群」について総括する。
本開示の一実施例は以下の通りである。
「近方距離を見るための近用部と、近方距離よりも遠くの距離を見るための遠用部と、近用部と遠用部との間に設けられ且つ累進屈折機能を有する中間部と、を備えた累進屈折力レンズの設計システムであって、
収差量Δα[D]の透過非点収差が付加された累進屈折力レンズαの装用者に対し、異なるパラメータを備える累進屈折力レンズβを提供する際に、累進屈折力レンズβの装用時の見え方を累進屈折力レンズαの装用時の見え方に近づけるよう、累進屈折力レンズβに対して付加する透過非点収差量Δβ[D]を設定する収差量設定部を備える、累進屈折力レンズの設計システム。」
Claims (13)
- 近方距離を見るための近用部と、前記近方距離よりも遠くの距離を見るための遠用部と、前記近用部と前記遠用部との間に設けられ且つ累進屈折機能を有する中間部と、を備えた累進屈折力レンズの設計システムであって、
収差量Δα[D]の透過非点収差が付加された累進屈折力レンズαの装用者に対し、異なるパラメータを備える累進屈折力レンズβを提供する際に、前記累進屈折力レンズβの装用時の見え方を前記累進屈折力レンズαの装用時の見え方に近づけるよう、前記累進屈折力レンズβに対して付加する透過非点収差量Δβ[D]を設定する収差量設定部を備え、
前記収差量Δαは、加入度数ADDα[D]の0.07~0.24倍の量であり、
前記収差量Δβは、加入度数ADDβ[D]の0.07~0.24倍の量であり、
前記累進屈折力レンズαおよび前記累進屈折力レンズβにおいて、
乱視矯正のための屈折力を差し引いた後の前記遠用部の測定基準点Fにおける透過非点収差の値の絶対値が0.12D以下であり、
前記遠用部、前記近用部および前記中間部のうち前記近用部および前記中間部に対して透過非点収差が付加されている一方で前記遠用部には透過非点収差は付加されておらず、
少なくとも主注視線上における、累進開始点から前記近用部の測定基準点Nまでの間の部分から該測定基準点Nに至るまで全体に透過非点収差が付加されており、
透過非点収差が付加された前記近用部および前記中間部においては、乱視矯正のための屈折力を差し引いた後において、
水平方向の透過屈折力の量が垂直方向の透過屈折力の量よりも大きい部分を含む、または、
垂直方向の透過屈折力の量が水平方向の透過屈折力の量よりも大きい部分を含み、
前記異なるパラメータのうち少なくともひとつは加入度数であり、
前記収差量設定部は、累進屈折力レンズαと累進屈折力レンズβとの間での屈折力に係る分布の一致率を100%に近づけるよう、累進屈折力レンズβに対して付加する透過非点収差量Δβ[D]を設定し、
前記屈折力に係る分布は、縦軸yをレンズ鉛直方向、横軸xをレンズ水平方向、原点をレンズのプリズム参照点とする透過非点収差分布および透過平均屈折力分布の少なくともいずれかであり、
前記透過非点収差分布の場合、
前記収差量設定部は、
透過非点収差がADD/4以下の領域であってy=-14.0mmである領域a´1の水平幅の一致率を97~103%とし、且つ、
透過非点収差がADD/4以下の領域であってy=-20.0mmである領域a´2の水平幅の一致率を97~103%とし、
透過非点収差分布(縦軸y:レンズ鉛直方向、横軸x:レンズ水平方向、原点はレンズのプリズム参照点)において、乱視矯正のための屈折力を差し引いた後、
透過非点収差が0.50D以下の領域であってy=-14.0mmである領域a1の水平幅は8mm以上、および、
透過非点収差が0.50D以下の領域であってy=-20.0mmである領域a2の水平幅は10mm以上
の少なくともいずれかの条件を満たすよう、前記収差量Δβ[D]を設定し、
前記透過平均屈折力分布の場合、
前記収差量設定部は、
透過平均屈折力が(遠用度数+加入度数/2)以上の領域であってy=-14.0mmである領域Aの水平幅の一致率を97~103%とし、且つ、
透過平均屈折力が(遠用度数+加入度数/2)以上の領域であってy=-20.0mmである領域Bの水平幅の一致率を97~103%とし、
透過平均屈折力分布(縦軸y:レンズ鉛直方向、横軸x:レンズ水平方向、原点はレンズのプリズム参照点)において、乱視矯正のための屈折力を差し引いた後、
透過平均屈折力が(遠用度数+加入度数/2)以上の領域であってy=-14.0mmである領域Aの水平幅は22mm以上、および、
透過平均屈折力が(遠用度数+加入度数/2)以上の領域であってy=-20.0mmである領域Bの水平幅は28mm以上
の少なくともいずれかの条件を満たすよう、前記収差量Δβ[D]を設定する、累進屈折力レンズの設計システム。 - 近方距離を見るための近用部と、前記近方距離よりも遠くの距離を見るための遠用部と、前記近用部と前記遠用部との間に設けられ且つ累進屈折機能を有する中間部と、を備えた累進屈折力レンズの設計システムであって、
収差量Δα[D]の透過非点収差が付加された累進屈折力レンズαの装用者に対し、異なるパラメータを備える累進屈折力レンズβを提供する際に、前記累進屈折力レンズβの装用時の見え方を前記累進屈折力レンズαの装用時の見え方に近づけるよう、前記累進屈折力レンズβに対して付加する透過非点収差量Δβ[D]を設定する収差量設定部を備え、
前記収差量Δαは、加入度数ADDα[D]の0.07~0.24倍の量であり、
前記収差量Δβは、加入度数ADDβ[D]の0.07~0.24倍の量であり、
前記累進屈折力レンズαおよび前記累進屈折力レンズβにおいて、
乱視矯正のための屈折力を差し引いた後の前記遠用部の測定基準点Fにおける透過非点収差の値の絶対値が0.12D以下であり、
前記遠用部、前記近用部および前記中間部のうち前記近用部および前記中間部に対して透過非点収差が付加されている一方で前記遠用部には透過非点収差は付加されておらず、
少なくとも子午線上における、累進屈折力レンズの幾何中心GCの半径5mm内から前記近用部の測定基準点Nと交わる水平線に至るまで全体に透過非点収差が付加されており、
透過非点収差が付加された前記近用部および前記中間部においては、乱視矯正のための屈折力を差し引いた後において、
水平方向の透過屈折力の量が垂直方向の透過屈折力の量よりも大きい部分を含む、または、
垂直方向の透過屈折力の量が水平方向の透過屈折力の量よりも大きい部分を含み、
前記異なるパラメータのうち少なくともひとつは加入度数であり、
前記収差量設定部は、累進屈折力レンズαと累進屈折力レンズβとの間での屈折力に係る分布の一致率を100%に近づけるよう、累進屈折力レンズβに対して付加する透過非点収差量Δβ[D]を設定し、
前記屈折力に係る分布は、縦軸yをレンズ鉛直方向、横軸xをレンズ水平方向、原点をレンズのプリズム参照点とする透過非点収差分布および透過平均屈折力分布の少なくともいずれかであり、
前記透過非点収差分布の場合、
前記収差量設定部は、
透過非点収差がADD/4以下の領域であってy=-14.0mmである領域a´1の水平幅の一致率を97~103%とし、且つ、
透過非点収差がADD/4以下の領域であってy=-20.0mmである領域a´2の水平幅の一致率を97~103%とし、
透過非点収差分布(縦軸y:レンズ鉛直方向、横軸x:レンズ水平方向、原点はレンズのプリズム参照点)において、乱視矯正のための屈折力を差し引いた後、
透過非点収差が0.50D以下の領域であってy=-14.0mmである領域a1の水平幅は8mm以上、および、
透過非点収差が0.50D以下の領域であってy=-20.0mmである領域a2の水平幅は10mm以上
の少なくともいずれかの条件を満たすよう、前記収差量Δβ[D]を設定し、
前記透過平均屈折力分布の場合、
前記収差量設定部は、
透過平均屈折力が(遠用度数+加入度数/2)以上の領域であってy=-14.0mmである領域Aの水平幅の一致率を97~103%とし、且つ、
透過平均屈折力が(遠用度数+加入度数/2)以上の領域であってy=-20.0mmである領域Bの水平幅の一致率を97~103%とし、
透過平均屈折力分布(縦軸y:レンズ鉛直方向、横軸x:レンズ水平方向、原点はレンズのプリズム参照点)において、乱視矯正のための屈折力を差し引いた後、
透過平均屈折力が(遠用度数+加入度数/2)以上の領域であってy=-14.0mmである領域Aの水平幅は22mm以上、および、
透過平均屈折力が(遠用度数+加入度数/2)以上の領域であってy=-20.0mmである領域Bの水平幅は28mm以上
の少なくともいずれかの条件を満たすよう、前記収差量Δβ[D]を設定する、累進屈折力レンズの設計システム。 - 前記収差量Δαは、加入度数ADDα[D]の0.10~0.20倍の量であり、
前記収差量Δβは、加入度数ADDβ[D]の0.10~0.20倍の量である、請求項1または2に記載の累進屈折力レンズの設計システム。 - 前記異なるパラメータのうち少なくともひとつは加入度数であり、
x軸をレンズ水平方向、y軸をレンズ鉛直方向、原点をレンズのプリズム参照点としたうえで、原点を通過するx軸の正の方向からの回転角度を横軸(単位:度)、累進屈折力レンズの該原点を中心とした半径14.0mmの円上における該回転角度に応じた各点での経線方向の屈折力を加入度数で正規化したものを縦軸(単位:無次元)としたとき、前記累進屈折力レンズαのプロットと前記累進屈折力レンズβのプロットとでの縦軸方向の最大幅が0.1以下となるよう、前記収差量設定部が収差量Δβ[D]を設定する、請求項1~3のいずれかに記載の累進屈折力レンズの設計システム。 - 近方距離を見るための近用部と、前記近方距離よりも遠くの距離を見るための遠用部と、前記近用部と前記遠用部との間に設けられ且つ累進屈折機能を有する中間部と、を備えた累進屈折力レンズの設計方法であって、
収差量Δα[D]の透過非点収差が付加された累進屈折力レンズαの装用者に対し、異なるパラメータを備える累進屈折力レンズβを提供する際に、前記累進屈折力レンズβの装用時の見え方を前記累進屈折力レンズαの装用時の見え方に近づけるよう、前記累進屈折力レンズβに対して付加する透過非点収差量Δβ[D]を設定し、
前記収差量Δαは、加入度数ADDα[D]の0.07~0.24倍の量であり、
前記収差量Δβは、加入度数ADDβ[D]の0.07~0.24倍の量であり、
前記累進屈折力レンズαおよび前記累進屈折力レンズβにおいて、
乱視矯正のための屈折力を差し引いた後の前記遠用部の測定基準点Fにおける透過非点収差の値の絶対値が0.12D以下であり、
前記遠用部、前記近用部および前記中間部のうち前記近用部および前記中間部に対して透過非点収差が付加されている一方で前記遠用部には透過非点収差は付加されておらず、
少なくとも主注視線上における、累進開始点から前記近用部の測定基準点Nまでの間の部分から該測定基準点Nに至るまで全体に透過非点収差が付加されており、
透過非点収差が付加された前記近用部および前記中間部においては、乱視矯正のための屈折力を差し引いた後において、
水平方向の透過屈折力の量が垂直方向の透過屈折力の量よりも大きい部分を含む、または、
垂直方向の透過屈折力の量が水平方向の透過屈折力の量よりも大きい部分を含み、
前記異なるパラメータのうち少なくともひとつは加入度数であり、
累進屈折力レンズαと累進屈折力レンズβとの間での屈折力に係る分布の一致率を100%に近づけるよう、累進屈折力レンズβに対して付加する透過非点収差量Δβ[D]を設定し、
前記屈折力に係る分布は、縦軸yをレンズ鉛直方向、横軸xをレンズ水平方向、原点をレンズのプリズム参照点とする透過非点収差分布および透過平均屈折力分布の少なくともいずれかであり、
前記透過非点収差分布の場合、
透過非点収差がADD/4以下の領域であってy=-14.0mmである領域a´1の水平幅の一致率を97~103%とし、且つ、
透過非点収差がADD/4以下の領域であってy=-20.0mmである領域a´2の水平幅の一致率を97~103%とし、
透過非点収差分布(縦軸y:レンズ鉛直方向、横軸x:レンズ水平方向、原点はレンズのプリズム参照点)において、乱視矯正のための屈折力を差し引いた後、
透過非点収差が0.50D以下の領域であってy=-14.0mmである領域a1の水平幅は8mm以上、および、
透過非点収差が0.50D以下の領域であってy=-20.0mmである領域a2の水平幅は10mm以上
の少なくともいずれかの条件を満たすよう、前記収差量Δβ[D]を設定し、
前記透過平均屈折力分布の場合、
透過平均屈折力が(遠用度数+加入度数/2)以上の領域であってy=-14.0mmである領域Aの水平幅の一致率を97~103%とし、且つ、
透過平均屈折力が(遠用度数+加入度数/2)以上の領域であってy=-20.0mmである領域Bの水平幅の一致率を97~103%とし、
透過平均屈折力分布(縦軸y:レンズ鉛直方向、横軸x:レンズ水平方向、原点はレンズのプリズム参照点)において、乱視矯正のための屈折力を差し引いた後、
透過平均屈折力が(遠用度数+加入度数/2)以上の領域であってy=-14.0mmである領域Aの水平幅は22mm以上、および、
透過平均屈折力が(遠用度数+加入度数/2)以上の領域であってy=-20.0mmである領域Bの水平幅は28mm以上
の少なくともいずれかの条件を満たすよう、前記収差量Δβ[D]を設定する、累進屈折力レンズの設計方法。 - 近方距離を見るための近用部と、前記近方距離よりも遠くの距離を見るための遠用部と、前記近用部と前記遠用部との間に設けられ且つ累進屈折機能を有する中間部と、を備えた累進屈折力レンズの設計方法であって、
収差量Δα[D]の透過非点収差が付加された累進屈折力レンズαの装用者に対し、異なるパラメータを備える累進屈折力レンズβを提供する際に、前記累進屈折力レンズβの装用時の見え方を前記累進屈折力レンズαの装用時の見え方に近づけるよう、前記累進屈折力レンズβに対して付加する透過非点収差量Δβ[D]を設定し、
前記収差量Δαは、加入度数ADDα[D]の0.07~0.24倍の量であり、
前記収差量Δβは、加入度数ADDβ[D]の0.07~0.24倍の量であり、
前記累進屈折力レンズαおよび前記累進屈折力レンズβにおいて、
乱視矯正のための屈折力を差し引いた後の前記遠用部の測定基準点Fにおける透過非点収差の値の絶対値が0.12D以下であり、
前記遠用部、前記近用部および前記中間部のうち前記近用部および前記中間部に対して透過非点収差が付加されている一方で前記遠用部には透過非点収差は付加されておらず、
少なくとも子午線上における、累進屈折力レンズの幾何中心GCの半径5mm内から前記近用部の測定基準点Nと交わる水平線に至るまで全体に透過非点収差が付加されており、
透過非点収差が付加された前記近用部および前記中間部においては、乱視矯正のための屈折力を差し引いた後において、
水平方向の透過屈折力の量が垂直方向の透過屈折力の量よりも大きい部分を含む、または、
垂直方向の透過屈折力の量が水平方向の透過屈折力の量よりも大きい部分を含み、
前記異なるパラメータのうち少なくともひとつは加入度数であり、
累進屈折力レンズαと累進屈折力レンズβとの間での屈折力に係る分布の一致率を100%に近づけるよう、累進屈折力レンズβに対して付加する透過非点収差量Δβ[D]を設定し、
前記屈折力に係る分布は、縦軸yをレンズ鉛直方向、横軸xをレンズ水平方向、原点をレンズのプリズム参照点とする透過非点収差分布および透過平均屈折力分布の少なくともいずれかであり、
前記透過非点収差分布の場合、
透過非点収差がADD/4以下の領域であってy=-14.0mmである領域a´1の水平幅の一致率を97~103%とし、且つ、
透過非点収差がADD/4以下の領域であってy=-20.0mmである領域a´2の水平幅の一致率を97~103%とし、
透過非点収差分布(縦軸y:レンズ鉛直方向、横軸x:レンズ水平方向、原点はレンズのプリズム参照点)において、乱視矯正のための屈折力を差し引いた後、
透過非点収差が0.50D以下の領域であってy=-14.0mmである領域a1の水平幅は8mm以上、および、
透過非点収差が0.50D以下の領域であってy=-20.0mmである領域a2の水平幅は10mm以上
の少なくともいずれかの条件を満たすよう、前記収差量Δβ[D]を設定し、
前記透過平均屈折力分布の場合、
透過平均屈折力が(遠用度数+加入度数/2)以上の領域であってy=-14.0mmである領域Aの水平幅の一致率を97~103%とし、且つ、
透過平均屈折力が(遠用度数+加入度数/2)以上の領域であってy=-20.0mmである領域Bの水平幅の一致率を97~103%とし、
透過平均屈折力分布(縦軸y:レンズ鉛直方向、横軸x:レンズ水平方向、原点はレンズのプリズム参照点)において、乱視矯正のための屈折力を差し引いた後、
透過平均屈折力が(遠用度数+加入度数/2)以上の領域であってy=-14.0mmである領域Aの水平幅は22mm以上、および、
透過平均屈折力が(遠用度数+加入度数/2)以上の領域であってy=-20.0mmである領域Bの水平幅は28mm以上
の少なくともいずれかの条件を満たすよう、前記収差量Δβ[D]を設定する、累進屈折力レンズの設計方法。 - 前記収差量Δαは、加入度数ADDα[D]の0.10~0.20倍の量であり、
前記収差量Δβは、加入度数ADDβ[D]の0.10~0.20倍の量である、請求項5または6に記載の累進屈折力レンズの設計方法。 - 前記異なるパラメータのうち少なくともひとつは加入度数であり、
x軸をレンズ水平方向、y軸をレンズ鉛直方向、原点をレンズのプリズム参照点としたうえで、原点を通過するx軸の正の方向からの回転角度を横軸(単位:度)、累進屈折力レンズの該原点を中心とした半径14.0mmの円上における該回転角度に応じた各点での経線方向の屈折力を加入度数で正規化したものを縦軸(単位:無次元)としたとき、前記累進屈折力レンズαのプロットと前記累進屈折力レンズβのプロットとでの縦軸方向の最大幅が0.1以下となるよう、収差量Δβ[D]を設定する、請求項5~7のいずれかに記載の累進屈折力レンズの設計方法。 - 請求項5~8のいずれかに記載の累進屈折力レンズの設計方法にて累進屈折力レンズを設計する設計ステップと、
前記設計ステップに基づいて累進屈折力レンズを製造する製造ステップと、
を有する、累進屈折力レンズの製造方法。 - 近方距離を見るための近用部と、前記近方距離よりも遠くの距離を見るための遠用部と、前記近用部と前記遠用部との間に設けられ且つ累進屈折機能を有する中間部と、を備えた、累進屈折力レンズ群であって、
いずれの累進屈折力レンズにも透過非点収差が付加され、装用時の見え方が互いに類似し、
各累進屈折力レンズに付加された透過非点収差は、各累進屈折力レンズにおける加入度数ADDα[D]の0.07~0.24倍の量であり、
乱視矯正のための屈折力を差し引いた後の前記遠用部の測定基準点Fにおける透過非点収差の値の絶対値が0.12D以下であり、
前記遠用部、前記近用部および前記中間部のうち前記近用部および前記中間部に対して透過非点収差が付加されている一方で前記遠用部には透過非点収差は付加されておらず、
少なくとも主注視線上における、累進開始点から前記近用部の測定基準点Nまでの間の部分から該測定基準点Nに至るまで全体に透過非点収差が付加されており、
透過非点収差が付加された前記近用部および前記中間部においては、乱視矯正のための屈折力を差し引いた後において、
水平方向の透過屈折力の量が垂直方向の透過屈折力の量よりも大きい部分を含む、または、
垂直方向の透過屈折力の量が水平方向の透過屈折力の量よりも大きい部分を含み、
前記累進屈折力レンズ群のうちの任意の二つである累進屈折力レンズαおよび累進屈折力レンズβは互いに異なる加入度数が設定され、
前記累進屈折力レンズαと前記累進屈折力レンズβとの間での屈折力に係る分布の一致率を100%に近づけるよう、前記累進屈折力レンズβに対して付加する透過非点収差量Δβ[D]を設定し、
前記屈折力に係る分布は、縦軸yをレンズ鉛直方向、横軸xをレンズ水平方向、原点をレンズのプリズム参照点とする透過非点収差分布および透過平均屈折力分布の少なくともいずれかであり、
前記透過非点収差分布の場合、
透過非点収差がADD/4以下の領域であってy=-14.0mmである領域a´1の水平幅の一致率が97~103%であり、且つ、
透過非点収差がADD/4以下の領域であってy=-20.0mmである領域a´2の水平幅の一致率が97~103%であり、
透過非点収差分布(縦軸y:レンズ鉛直方向、横軸x:レンズ水平方向、原点はレンズのプリズム参照点)において、乱視矯正のための屈折力を差し引いた後、
透過非点収差が0.50D以下の領域であってy=-14.0mmである領域a1の水平幅は8mm以上、および、
透過非点収差が0.50D以下の領域であってy=-20.0mmである領域a2の水平幅は10mm以上
の少なくともいずれかの条件を満たし、
前記透過平均屈折力分布の場合、
透過平均屈折力が(遠用度数+加入度数/2)以上の領域であってy=-14.0mmである領域Aの水平幅の一致率が97~103%であり、且つ、
透過平均屈折力が(遠用度数+加入度数/2)以上の領域であってy=-20.0mmである領域Bの水平幅の一致率が97~103%であり、
透過平均屈折力分布(縦軸y:レンズ鉛直方向、横軸x:レンズ水平方向、原点はレンズのプリズム参照点)において、乱視矯正のための屈折力を差し引いた後、
透過平均屈折力が(遠用度数+加入度数/2)以上の領域であってy=-14.0mmである領域Aの水平幅は22mm以上、および、
透過平均屈折力が(遠用度数+加入度数/2)以上の領域であってy=-20.0mmである領域Bの水平幅は28mm以上
の少なくともいずれかの条件を満たす、累進屈折力レンズ群。 - 近方距離を見るための近用部と、前記近方距離よりも遠くの距離を見るための遠用部と、前記近用部と前記遠用部との間に設けられ且つ累進屈折機能を有する中間部と、を備えた、累進屈折力レンズ群であって、
いずれの累進屈折力レンズにも透過非点収差が付加され、装用時の見え方が互いに類似し、
各累進屈折力レンズに付加された透過非点収差は、各累進屈折力レンズにおける加入度数ADDα[D]の0.07~0.24倍の量であり、
乱視矯正のための屈折力を差し引いた後の前記遠用部の測定基準点Fにおける透過非点収差の値の絶対値が0.12D以下であり、
前記遠用部、前記近用部および前記中間部のうち前記近用部および前記中間部に対して透過非点収差が付加されている一方で前記遠用部には透過非点収差は付加されておらず、
少なくとも子午線上における、累進屈折力レンズの幾何中心GCの半径5mm内から前記近用部の測定基準点Nと交わる水平線に至るまで全体に透過非点収差が付加されており、
透過非点収差が付加された前記近用部および前記中間部においては、乱視矯正のための屈折力を差し引いた後において、
水平方向の透過屈折力の量が垂直方向の透過屈折力の量よりも大きい部分を含む、または、
垂直方向の透過屈折力の量が水平方向の透過屈折力の量よりも大きい部分を含み、
前記累進屈折力レンズ群のうちの任意の二つである累進屈折力レンズαおよび累進屈折力レンズβは互いに異なる加入度数が設定され、
前記累進屈折力レンズαと前記累進屈折力レンズβとの間での屈折力に係る分布の一致率を100%に近づけるよう、前記累進屈折力レンズβに対して付加する透過非点収差量Δβ[D]を設定し、
前記屈折力に係る分布は、縦軸yをレンズ鉛直方向、横軸xをレンズ水平方向、原点をレンズのプリズム参照点とする透過非点収差分布および透過平均屈折力分布の少なくともいずれかであり、
前記透過非点収差分布の場合、
透過非点収差がADD/4以下の領域であってy=-14.0mmである領域a´1の水平幅の一致率が97~103%であり、且つ、
透過非点収差がADD/4以下の領域であってy=-20.0mmである領域a´2の水平幅の一致率が97~103%であり、
透過非点収差分布(縦軸y:レンズ鉛直方向、横軸x:レンズ水平方向、原点はレンズのプリズム参照点)において、乱視矯正のための屈折力を差し引いた後、
透過非点収差が0.50D以下の領域であってy=-14.0mmである領域a1の水平幅は8mm以上、および、
透過非点収差が0.50D以下の領域であってy=-20.0mmである領域a2の水平幅は10mm以上
の少なくともいずれかの条件を満たし、
前記透過平均屈折力分布の場合、
透過平均屈折力が(遠用度数+加入度数/2)以上の領域であってy=-14.0mmである領域Aの水平幅の一致率が97~103%であり、且つ、
透過平均屈折力が(遠用度数+加入度数/2)以上の領域であってy=-20.0mmである領域Bの水平幅の一致率が97~103%であり、
透過平均屈折力分布(縦軸y:レンズ鉛直方向、横軸x:レンズ水平方向、原点はレンズのプリズム参照点)において、乱視矯正のための屈折力を差し引いた後、
透過平均屈折力が(遠用度数+加入度数/2)以上の領域であってy=-14.0mmである領域Aの水平幅は22mm以上、および、
透過平均屈折力が(遠用度数+加入度数/2)以上の領域であってy=-20.0mmである領域Bの水平幅は28mm以上
の少なくともいずれかの条件を満たす、累進屈折力レンズ群。 - 前記収差量Δβは、加入度数ADDβ[D]の0.10~0.20倍の量である、請求項10または11に記載の累進屈折力レンズ群。
- 前記累進屈折力レンズ群のうちの任意の二つである累進屈折力レンズαおよび累進屈折力レンズβは互いに異なる加入度数が設定され、
x軸をレンズ水平方向、y軸をレンズ鉛直方向、原点をレンズのプリズム参照点としたうえで、原点を通過するx軸の正の方向からの回転角度を横軸(単位:度)、累進屈折力レンズの該原点を中心とした半径14.0mmの円上における該回転角度に応じた各点での経線方向の屈折力を加入度数で正規化したものを縦軸(単位:無次元)としたとき、前記累進屈折力レンズαのプロットと前記累進屈折力レンズβのプロットとでの縦軸方向の最大幅が0.1以下である、請求項10~12のいずれかに記載の累進屈折力レンズ群。
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