JP7249121B2 - 複合体、発光装置、および複合体の製造方法 - Google Patents
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Description
そこで、本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、複合体の波長変換効率を向上させる技術を提供する。
実施形態に係る複合体は、Eu元素を含有するα型サイアロン蛍光体と、当該α型サイアロン蛍光体を封止する封止材とを含む。当該複合体中の鉄の含有率の下限は0.1ppm以上であり、0.5ppm以上がより好ましく、1ppm以上がさらに好ましい。また、当該複合体中の鉄の含有率の上限は、40ppm未満であり、30ppm以下がより好ましく、20ppm以下がさらに好ましい。ここで、複合体中の鉄の含有率は、元素としての鉄の含有率を意味し、鉄の存在形態は問わないものとする。
複合体中の鉄の含有率の下限を0.1ppm以上とすることにより、複合体中にクラックが発生することや、複合体をダイサー等で複合体を切断加工する際に、チッピングが生じることを抑制しつつ、波長変換効率の向上を図ることができる。また、複合体中の鉄の含有率の上限を40ppm未満とすることにより、波長変換効率の向上を図ることができる。これは、複合体を通過する光が鉄によって吸収されることが抑制されるため、α型サイアロン蛍光体によって長波長化される光量が増加するためと推測される。
複合体は、不純物として、鉄以外の第一遷移金属を含んでもよい。鉄以外の第一遷移金属としては、コバルトおよびニッケルが挙げられる。複合体中のコバルトおよびニッケルの合計含有率の下限は、0.1ppm以上が好ましく、0.3ppm以上がより好ましく、0.5ppm以上がさらに好ましい。また、複合体中のコバルトおよびニッケルの合計含有率の上限は40ppm未満が好ましく、20ppm以下がより好ましく、10ppm以下がさらに好ましく、2ppm以下が特に好ましく、1ppm以下が最も好ましい。複合体中のコバルトおよびニッケルの合計含有率を上記範囲とすることにより、コバルトおよびニッケルにより吸収される光量を抑制し、複合体の波長変換効率をより一層向上させることができる。ここで、複合体中のコバルト、ニッケルの含有率は、元素としてのコバルト、ニッケルの含有率を意味し、コバルト、ニッケルの存在形態は問わないものとする。
本実施形態のα型サイアロン蛍光体は、一般式:(M)x(Eu)y(Si)12-(m+n)(Al)m+n(O)n(N)16-n(ただし、MはLi、Mg、Ca、Y及びランタニド元素(LaとCeを除く)からなる群から選ばれる少なくともCaを含む1種以上の元素)で示されるEu元素を含有するα型サイアロン蛍光体である。
本実施形態の封止材は、二酸化ケイ素を主成分として構成される。ここで、二酸化ケイ素を主成分とすることは、封止材全体中に、二酸化ケイ素を90質量%以上含有することをいう。本実施形態の封止材を構成する二酸化ケイ素は、少なくとも一部が結晶化していることが好ましい。二酸化ケイ素の結晶化度は、後述するX線回折により評価することができる。
二酸化ケイ素の結晶化度は、X線回折により評価することができる。二酸化ケイ素が結晶領域を有する場合には、CuKα線(1.54184Å)を用いて測定された複合体の粉末X線回折パターンにおいて、2θが30°以上40°以下の範囲に最強ピークを有するとともに、2θが21.7°以上22.7°以下の範囲、および2θが26.5°以上27.5°以下の範囲にそれぞれ回折ピークが現れる。当該回折ピークを確認することで、二酸化ケイ素に結晶領域が存在することを確かめることができる。
複合体の気孔率は8%以下であることが好ましく、5%以下であることがより好ましい。複合体の気孔率を8%以下とすることで、複合体の透光性が損なわれることを抑制することができる。また、光の散乱性を向上させることにより、α型サイアロン蛍光体が吸収する光量を増加させ、ひいては複合体の波長変換効率を向上させることができる。
複合体に波長455nmの青色光を照射した場合に、複合体から発せられる波長変換光のピーク波長は585nm以上605nm以下であることが好ましい。これによれば、青色光を発光する発光素子に複合体を組み合わせたときに、輝度が高いアンバー色を発光する発光装置を得ることができる。
実施形態に係る複合体の製造方法は、二酸化ケイ素粉末と、発光中心として少なくともEu元素を含有するα型サイアロン蛍光体粉末とを混合する工程(1)と、二酸化ケイ素粉末とα型サイアロン蛍光体粉末との混合物を1300℃以上1450℃以下で加熱して二酸化ケイ素の少なくとも一部に結晶領域を形成する工程(2)とを有する。
図1は、実施形態に係る発光装置の構造を示す概略断面図である。図1に示すように、発光装置10は、発光素子20、基板30、ダム40、封止材50および複合体80を備える。配線(図示せず)を有する基板30上に発光素子20が実装された、チップオンボード(COB)型の発光装置である。
基板30は、アルミニウムの陽極酸化皮膜などの絶縁膜が表面に形成されたアルミニウム基板である。基板30には、基板30上の所定の領域を取り囲むダム40が設けられている。基板30を平面視したときのダム40の形状は、たとえば円環状である。ダム40は透明であることが好ましい。
封止材50は、ダム40の内側に充填されており、封止材50により発光素子20が封止される。封止材50は、たとえばエポキシ樹脂やシリコーン樹脂などの透明樹脂材料で形成される。
以下、参考形態の例を付記する。
1. Eu元素を含有するα型サイアロン蛍光体と、前記α型サイアロン蛍光体を封止する封止材と、
を含む複合体であって、
前記複合体中の鉄の含有率が0.1ppm以上40ppm未満である、複合体。
2. 前記複合体中のコバルトとニッケルの合計含有率が0.1ppm以上40ppm未満である1.に記載の複合体。
3. 前記封止材は、二酸化ケイ素を主成分として構成され、前記二酸化ケイ素の少なくとも一部が結晶化している1.または2.に記載の複合体。
4. 波長455nmの青色光を照射した場合の変換光のピーク波長が585nm以上605nm以下である1.乃至3.のいずれか1つに記載の複合体。
5. 前記α型サイアロン蛍光体の平均粒径が5μm以上30μm以上である1.乃至4.のいずれか1つに記載の複合体。
6. 前記複合体中に14質量%以上60質量%以下の前記α型サイアロン蛍光体を含む1.乃至5.のいずれか1つに記載の複合体。
7. 励起光を発する発光素子と、
前記励起光の波長を変換する1.乃至6.のいずれか1つに記載の複合体と、
を有する発光装置。
8. 前記発光素子と発光面の間に前記複合体が配され、
前記発光面から発せられる、前記複合体により前記励起光の波長が変換された変換光のピークに対する前記励起光のピークの強度比が0.06以下である7.に記載の発光装置。
9. 鉄の含有率が0.1ppm以上40ppm未満の二酸化ケイ素粉末と、発光中心として少なくともEu元素を含有するα型サイアロン蛍光体粉末とを混合し、1300℃以上1450℃以下の温度で加熱する工程を有する、複合体の製造方法。
α型サイアロン蛍光体粉末が二酸化ケイ素の一部が結晶化した封止材(マトリックス)に分散したものを実施例1の複合体とした。実施例1の複合体の具体的な作製方法について以下に記載する。
その後、毎分5℃の速度で室温まで降温し、除圧した後、外径30mmの焼成物を回収し、平面研削盤と円筒研削盤を用いて、外周部を研削し、直径25mm、厚さ0.23mmの円板状の複合体を得た。
実施例2の複合体の原料として、SiO2粉末(エボニックジャパン株式会社製、AEROSIL 50、平均粒径:0.13μm)とCa-α型サイアロン蛍光体粉末(デンカ株式会社製、アロンブライト/YL-600Bグレード)を用いた。
実施例2の複合体の作製方法は、SiO2原料粉末をエボニック・ジャパン株式会社製AEROSIL 50としたことを除いて、実施例1の複合体の作製方法と同様である。
実施例3の複合体の原料として、以下の粒配のSiO2粉末(平均粒径:6.7μm)とCa-α型サイアロン蛍光体粉末(デンカ株式会社製、アロンブライト/YL-600Bグレード)を用いた。
<SiO2粉末の粒配>
デンカ株式会社製、FB-9SDC:41.66質量部
デンカ株式会社製、FB-5SDC:41.66質量部
デンカ株式会社製、UFP-40:11.67質量部
実施例3の複合体の作製方法は、上記粒配のSiO2粉末を用いたことを除いて、実施例1の複合体の作製方法と同様である。
α型サイアロン蛍光体粉末を二酸化ケイ素全体がアモルファス状態の封止材(マトリックス)に分散したものを比較例1の複合体とした。比較例1の複合体の作製方法は、SiO2原料粉末をデンカ株式会社製SFP-30Mグレードとしたことを除いては、実施例1の複合体の作製方法と同様である。
比較例2の複合体の原料として、SiO2粉末(富士シリシア化学株式会社製、サイリシア740、平均粒径:4.6μm)とCa-α型サイアロン蛍光体粉末(デンカ株式会社製、アロンブライト/YL-600Bグレード)を用いた。
比較例2の複合体の作製方法は、SiO2原料粉末を富士シリシア化学株式会社製、サイリシア740としたことを除いて、実施例1の複合体の作製方法と同様である。
実施例1乃至3、比較例1、2の各複合体にそれぞれ用いた複合体、SiO2原料中の鉄、コバルト、ニッケルの各含有率をICP発光分析装置(アジレント・テクノロジー社製、5110VDV)を用いて行った。得られた結果を表1に示す。
[複合体中の不純物分析]
実施例1乃至3、比較例1、2の各複合体中の鉄、コバルト、ニッケルの各含有率をICP発光分析装置(アジレント・テクノロジー社製、5110VDV)を用いて行った。得られた結果を表1に示す。
実施例1乃至3、比較例1、2の各複合体の結晶構造解析をX線回折装置(製品名:Ultima-IV、株式会社リガク製)を用いて実施した。
得られた粉末X線回折パターンから、以下の手順にて結晶化度を評価した。
(1)CuKα線(1.54184Å)を用いて測定された粉末X線回折パターンにおいて、2θが30°以上40°以下の範囲にある、粉末X線回折パターンにおける最強ピークのピーク強度をP0とした。
(2)2θが21.7°以上22.7°以下の範囲にあるピークのピーク強度P1および2θが26.5°以上27.5°以下の範囲にあるピークのピーク強度P2を求めた。ピーク強度P0を100%とした場合のピーク強度P1、ピーク強度P2の相対強度(%)をそれぞれ求めた。
円板状に加工した複合体の反射蛍光・透過蛍光を独立に評価するシステムを有する量子効率測定システム(大塚電子株式会社製、QE-2100HMB)により、実施例1乃至3、比較例1、2の各複合体の量子効率を評価した。励起光は、波長455nmの青色光とし、円板状の複合体の吸収率、内部量子効率、外部量子効率を算出した。各複合体の量子効率の測定結果を表2に示す。
図2は、複合体の発光スペクトルを測定するための装置の概略図である。凹部102が形成されたアルミ基板100を用意し、この凹部102に青色発光光源として青色LED110を実装し、チップオンボード型(COB型)のLEDパッケージとした。凹部102の底面の径φを13.5mmとし、凹部102の開口部の径φを16mmとした。凹部102を塞ぐように、青色LED110の上部に円形状の複合体120を設置した。
なお、図2の装置例では、複合体120の外表面が発光面であり、青色LED110の透過光は、当該発光面から発せられる励起光である。また、波長595nm以上605nm以下の光は、発光面から発せられる波長変換光である。すなわち、上述の青色光の透過量は、発光面から発せられる波長変換光のピークに対する励起光のピークの強度比に相当する。
20 発光素子
30 基板
40 反射板
50 第1リードフレーム
60 第2リードフレーム
70 ボンディングワイヤ
80 複合体
82 α型サイアロン蛍光体
84 封止材
Claims (6)
- Eu元素を含有するα型サイアロン蛍光体と、前記α型サイアロン蛍光体を封止する封止材と、
を含む複合体であって、
前記複合体中の鉄の含有率が0.1ppm以上40ppm未満であり、コバルトとニッケルの合計含有率が0.1ppm以上40ppm未満であり、
前記複合体中に14質量%以上60質量%以下の前記α型サイアロン蛍光体を含む、複合体。 - 前記封止材は、二酸化ケイ素を主成分として構成され、前記二酸化ケイ素の少なくとも一部が結晶化している請求項1に記載の複合体。
- 波長455nmの青色光を照射した場合の変換光のピーク波長が585nm以上605nm以下である請求項1または2に記載の複合体。
- 前記α型サイアロン蛍光体の平均粒径が5μm以上30μm以上である請求項1乃至3のいずれか1項に記載の複合体。
- 励起光を発する発光素子と、
前記励起光の波長を変換する請求項1乃至4のいずれか1項に記載の複合体と、
を有する発光装置。 - 前記発光素子と発光面の間に前記複合体が配され、
前記発光面から発せられる、前記複合体により前記励起光の波長が変換された変換光のピークに対する前記励起光のピークの強度比が0.06以下である請求項5に記載の発光装置。
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