以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
図1は、本発明の実施形態で用いられるガス供給システム1を示す。ガス供給システム1は、ガス供給源3からのガスを、複数の供給ライン5が設けられた集積化ユニット10を介して、半導体製造装置のプロセススチャンバ7に供給できるように構成されている。プロスチャンバ7には、真空ポンプ9が接続されており、プロスチャンバ7および流路を真空引きした状態でガスの供給を行うことができる。
集積化ユニット10は、ベースプレート上に形成された複数の供給ライン5を有している。集積化ユニット10は、各供給ライン5に設けられた流量制御装置12を用いて、個別にガスの流量を制御することができる。
ガス供給システム1において、集積化ユニット10に設けられた各供給ラインは、集積化ユニット10の出口側に配置された合流ブロック14に接続されている。合流ブロック14は、各供給ライン5が接続される複数のサブ流路L2と、複数のサブ流路L2が共通に接続される1つのメイン流路L1とを有するマニホールドブロックであり、ベースプレート上に固定された流路ブロックである。合流ブロック14の出口は、遮断弁を介してプロセスチャンバへ7と接続されており、各供給ラインから任意のガスを合流ブロック14を介して供給することができる。
本実施形態では、ガス供給システム1において、ラインを流れるガスの濃度を測定することができる濃度測定装置(インライン式の濃度測定装置)が設けられている。そして、本願発明者は、ある特定のガスを流した時にラインに水分が存在していると、化学反応によって当該測定光に対する吸光性を有するガスが他の種類のガスへと変化することがあり、これに伴って、濃度測定装置によって検出される吸光度(または、ガス中を通過した透過光の強度)が変化することがあることを見出した。そこで、本実施形態では、この態様に限定されるものではないが、濃度測定装置が備える光学系を利用してライン中の水分の有無ひいてはライン異常の発生を判断するようにしている。
上記の濃度測定装置として、本願出願人による特許文献3には、流路の一部をなす測定セルに、光入射窓を介して光源から所定波長の光を入射させ、測定セル内を通過した透過光から吸光度を測定する濃度測定装置が開示されている。測定された吸光度からは、ランベルト・ベールの法則などに従って流体の濃度を求めることができる。
また、本願出願人は、集積化ガス供給システムに組み込まれるタイプのインライン式の濃度測定装置を開発している。この濃度測定装置において、濃度測定のための光学系は、集積化ガス供給システムの各供給ラインが共通に接続されるマニホールドブロック(合流ブロック)に配置されている(特願2019-065571号)。
流体供給システムに組み込まれる濃度測定装置としては種々の構成が採用され得、また、濃度測定装置を利用しなくとも流体供給ライン中の流体を通過した光の吸光度を測定する光学系は任意の形態で設けられ得るが、以下、一例として、集積化ガス供給システムに組み込まれるタイプのインライン式の濃度測定装置を利用する実施形態について説明する。
図1に示すように、本実施形態で用いられるインライン式の濃度測定装置20は、合流ブロック14を利用して形成されたガスユニット22と、ガスユニット22と光学的および電気的に接続された電気ユニット24とを含んでいる。濃度測定装置20は、合流ブロック14を流れるガスの濃度を測定するとともに、ライン中の水分を検出するために用いられる。
図2は、合流ブロック14に設けられた、濃度測定装置20のガスユニット22の一例を示す縦断面図である。メイン流路L1およびサブ流路L2を形成する貫通孔および穴は、ドリルによる穿孔によって合流ブロック14に容易に形成することができる。合流ブロック14は、例えばステンレス鋼(特にはSUS316L)製であってよい。なお、図2に示す態様では、合流ブロック14として、3つの供給ラインまたはサブ流路L2が接続される3連ブロックを用いているが、これに限られず、任意の数のガス供給ラインが接続されるブロックを用いることができる。
合流ブロック14には、メイン流路L1と連通するL字型の流出路L3が形成された出口ブロック14Aが固定されている。出口ブロック14Aは、ガスケットを介して合流ブロック14にネジ止めにより堅密に固定されており、メイン流路L1から流出路L3を介してガスを流出させることができる。流出路L3は、例えば、遮断弁の流入口に接続される。
ただし、上記態様に限られず、合流ブロック14からのガス流出路は種々の態様で設けられていてよい。例えば、上記の出口ブロック14Aの流出路を、メイン流路L1とは連通させずに側面に設けた継手と連通させるとともに、出口ブロック14Aの上面穴と、合流ブロック14の上面穴(サブ流路L2の一つ)とに跨る遮断弁を配置してもよい。この場合、合流ブロック14の上面穴から遮断弁を介して出口ブロック14Aの上面穴に繋がる流路が形成され、遮断弁の開放時には、出口ブロック14Aの側面の継手からガスを排出させることができる。
また、本実施形態において、メイン流路L1は、合流ブロック14の長手方向に沿って延びるように形成された貫通孔の両端を第1および第2封止部材(ここでは、ブラインド継手)27、29で封止することによって形成されている。
また、ガスユニット22は、合流ブロック14のメイン流路L1の端部に配置された透光性の入射窓26および透光性の出射窓28を有している。入射窓26および出射窓28は、封止部材27、29を用いて合流ブロック14の両端部に封止固定されている。入射窓26と出射窓28とは、メイン流路L1を挟んで対向するように配置されており、入射窓26の手前でコリメータにより平行にされた光が入射窓26から入射し、その後、メイン流路L1を直進した光が出射窓28から出射する。第1および第2封止部材27、29としては、例えば、シール材が塗布された雄螺子を周面に有する、ブラインド継手としての金属プラグが用いられる。
入射窓26を固定する第1封止部材27には、コリメータに接続される光ファイバケーブル30が設けられている。光ファイバケーブル30は、電気ユニット24からガスユニット22に測定光(ここでは紫外光)を伝送するために用いられる。伝送された光は、コリメータにより平行光に変換されてから、入射窓26を介してメイン流路L1に入射される。また、出射窓28を固定する第2封止部材29には、集光レンズによって集光された光を受け取る光ファイバケーブル31が設けられている。光ファイバケーブル31は、ガスユニット22のメイン流路L1を通過した光を電気ユニット24に伝送するために用いられる。
本明細書において、光とは、可視光線のみならず、少なくとも赤外線、紫外線を含み、任意の波長の電磁波を含み得る。また、透光性とは、測定ガスが流れるメイン流路L1への入射光に対する内部透過率が十分に高いことを意味する。
図3は、本実施形態で用いられる濃度測定装置20の電気ユニット24の構成を示す。電気ユニット24は、図2に示したガスユニット22に入射させるための光を発する光源40と、ガスユニット22から出射した光を受け取る光検出器44と、光検出器44が出力する検出信号(受光した光の強度に応じた検出信号)に基づいてガスの濃度を演算により求める演算制御回路46(測定器46と呼ぶことがある)とを備えている。また、電気ユニット24には、光源40からの参照光を受光する参照光検出器48も設けられている。本実施形態では、電気ユニット24は、光ファイバケーブル30、31によって、ガスユニット22と光学的に接続されている。
光源40は、互いに異なる波長の紫外光を発する2つの発光素子(ここではLED)41、42を用いて備えている。発光素子41、42には、発振回路を用いて異なる周波数の駆動電流が流され、周波数解析(例えば、高速フーリエ変換やウェーブレット変換)を行うことによって、光検出器44が検出した検出信号から、各波長成分に対応した光の強度を測定することができる。
発光素子41、42としては、LED以外の発光素子、例えばLD(レーザダイオード)を用いることもできる。また、異なる波長の合波光を用いる代わりに、単一波長の光源を利用することもでき、この場合、合波器や周波数解析回路は省略することができる。発光素子は、3つ以上設けられていてもよいし、設けたうちの選択された任意の発光素子のみを用いて入射光を生成するように構成されていてもよい。光源40には測温抵抗体が取り付けられていてもよい。光の波長は、測定対象のガスの吸光特性に基づいて、適宜選択されてよいが、本実施形態では、紫外光を吸収する有機金属ガス(例えば、トリメチルガリウム(TMGa))などの濃度測定および水分検知を行うために、近紫外光(例えば、波長200nm~400nm)を用いている。
光源40および参照光検出器48はビームスプリッタ49に取り付けられている。ビームスプリッタ49は、光源40からの光の一部を参照光検出器48に入射させるとともに、残りの光を光ファイバケーブル30を介してガスユニット22へと導くように機能する。光検出器44および参照光検出器48を構成する受光素子としては、フォトダイオードやフォトトランジスタが好適に用いられる。
演算制御回路46は、例えば、回路基板上に設けられたプロセッサやメモリなどによって構成され、入力信号に基づいて所定の演算を実行するコンピュータプログラムを含み、ハードウェアとソフトウェアとの組み合わせによって実現され得る。なお、図示する態様では演算制御回路46は、電気ユニット24に内蔵されているが、その構成要素の一部または全部が電気ユニット24の外部に設けられてもよい。
なお、上記には、メイン流路L1の両端に入射窓26および出射窓28を配置させる態様を説明したが、メイン流路L1の一方の端部に入射窓と反射窓とを兼ねる共通窓部材を配置させるとともに、他方の端部に反射部材を設けた反射型の濃度測定装置であってもよい。反射型の濃度測定装置では、メイン流路L1を一往復した光の吸光度から濃度を測定することができる。さらに、ガスユニットの入射側にLEDなどの光源を設けるとともに、出射側にフォトダイオードなどの受光素子を設けてもよい。この場合、ガスユニットと、電気ユニットに設けた演算制御回路とは、配線ケーブルによって電気的に接続される。
また、メイン流路L1の方向に光を入射させて透過光強度を測定するのではなく、サブ流路L2の方向に光を入射させる構成であってもよい。この場合、サブ流路L2の一つを利用して濃度測定装置のガスユニットが設けられる。より具体的には、サブ流路L2の上面入口にガスユニットの光学系を配置するとともに、当該サブ流路L2の延長上に反射部材を設けたり、サブ流路L2の延長から出射光を取り出すことによって、透過光強度を測定し得る。
以上に説明した濃度測定装置20において、合流ブロック14のメイン流路L1を通過した波長λの光は、メイン流路L1に存在するガスによって、ガスの濃度に応じて吸収される。そして、演算制御回路(測定器)46は、光検出器44からの検出信号を周波数解析することによって、当該波長λでの吸光度Aλを測定することができ、さらに、以下の式(1)に示すランベルト・ベールの法則に基づいて、吸光度Aλからモル濃度CMを算出することができる。
Aλ=-log10(I/I0)=α’LCM ・・・(1)
式(1)において、I0はメイン流路L1に入射させる入射光の強度、Iはメイン流路L1内のガス中を通過した光の強度、α’はモル吸光係数(m2/mol)、L(図2参照)はメイン流路L1の光路長(m)、CMはモル濃度(mol/m3)である。モル吸光係数α’は物質によって決まる係数である。I/I0は、一般に透過率と呼ばれており、透過率I/I0が100%のときに吸光度Aλは0となり、透過率I/I0が0%のときに吸光度Aλは無限大となる。
なお、上記式における入射光強度I0については、メイン流路L1内に吸光性のガスが存在しないとき(例えば、紫外光を吸収しないガスが充満しているときや、真空に引かれているとき)に光検出器44によって検出された光の強度を入射光強度I0とみなしてよい。また、メイン流路L1の光路長Lは、図2に示すように、入射窓26の接ガス側の表面から出射窓28の接ガス側の表面までの距離であり、この距離は予めわかっている。
濃度測定装置20は、合流ブロック14のメイン流路L1を流れるガスの圧力および温度も考慮して、ガスの濃度を求めるように構成されていてもよい。以下、流路内のガスの圧力および温度を考慮して混合ガス中に含まれる測定ガスの濃度を求める態様について説明する。
上述したように、ランベルト・ベールの式(1)が成り立つが、上記のモル濃度CMは、単位体積当たりのガスの物質量を指すので、CM=n/Vと表すことができる。ここで、nはガスの物質量(mol)すなわちモル数であり、Vは体積(m3)である。
そして、測定対象がガスであるので、理想気体の状態方程式PV=nRTから、モル濃度CM=n/V=P/RTが導かれる。これをランベルト・ベールの式に代入し、また、-ln(I/I0)=ln(I0/I)を適用すると、下記の式(2)が得られる。
ln(I0/I)=αL(P/RT) ・・・(2)
式(2)において、Rは気体定数:0.0623(Torr・m3/K/mol)であり、Pは圧力(Torr)であり、Tは温度(K)である。また、式(2)のモル吸光係数は、透過率の自然対数に対するαであり、式(1)のα’に対して、α’=0.434αの関係を満たすものである。
ここで、圧力センサが検出できる圧力は、測定ガスとキャリアガスとを含む混合ガスの全圧Pt(Torr)である。一方、吸収に関係するガスは、測定ガスのみであり、上記の式(2)における圧力Pは、測定ガスの分圧Paに対応する。そこで、測定ガスの分圧Paを、ガス全体中における測定ガス濃度Cv(体積%)と全圧Ptとによって表したPa=Pt・Cvを用いて式(2)を表すと、圧力および温度を考慮した測定ガスの濃度(体積%)と吸光度との関係は、測定ガスの吸光係数αaを用いて、下記の式(3)によって表すことができる。
ln(I0/I)=αaL(Pt・Cv/RT) ・・・(3)
また、式(3)を変形すると、下記の式(4)が得られる。
Cv=(RT/αaLPt)・ln(I0/I) ・・・(4)
したがって、式(4)によれば、各測定値(ガス温度T、全圧Pt、および透過光強度I)に基づいて、測定光波長における測定ガス濃度Cv(体積%)を、演算により求めることが可能である。このようにすれば、ガス温度やガス圧力も考慮して混合ガス中における測定ガスの濃度を求めることができる。
上記の式(3)および(4)における測定ガスの吸光係数αaは、既知濃度(例えば100%濃度)の測定ガスを流したときの測定値(ガス温度T、全圧Pt、および透過光強度I)から、上記の式(3)および(4)に従って予め求めておくことができる。求められた吸光係数αaはメモリに格納され、式(4)に基づいて未知濃度の測定ガスの濃度演算を行うときに、メモリから読み出して用いられる。吸光係数αaは、特定の種類のガス(ここではアセトンガス)を基準ガスとして用いてアセトンの吸光係数αaceを求めておくとともに、他の種類のガスには、アセトン吸光係数αaceに対して補正係数を乗じることによって決定されてもよい。アセトン吸光係数αaceおよび測定ガスの吸光係数αaは、ガス温度や測定光の波長に応じて決定されてもよい。
以上のような構成を有する濃度測定装置20を用いて、本実施形態では、ライン中の水分検出を行うことができる。そして、ライン中の水分が過剰なときには、ライン異常として検知することができる。以下、ライン異常の検知方法について、具体的に説明する。
図4は、紫外線吸収物質(主としてガス)、その物質の濃度を検出するために用いられる検出光の波長、そのガスが水(H2O)との反応で発生するガス、および、水との反応で発生したガスの吸光波長域(一番右の欄)を示すグラフである。上から順に、塩素ガス(Cl2)、フッ素ガス(F2)、臭素ガス(Br2)、4塩化チタン(TiCl4)、トリメチルガリウム(TMGa)、トリメチルインジウム(TMIn)、トリメチルアルミニウム(TMAl)、ジエチル亜鉛(DEZn)、ジメチル亜鉛(DMZn)、ビス(シクロペンタジエニル)マグネシウム(Mg(C5H5)2)、テトラキスエチルメチルアミノジルコニウム(TEMAZ:Zr[N(C2H5)CH3]4)、テトラキスエチルメチルアミノハフニウム(TEMAH:Hf[(CH3)(C2H5)N]4を示している。これらの物質は、近紫外線を吸収する性質を有する。Br2は検出波長のみを示す。また、トリメチルアルミニウムは水に対して不安定である。また、参考として、紫外領域における水(H2O)の吸収波長およびアンモニア(NH3)の吸収波長も下2列に示している。
図5は、塩素ガス(Cl2)の透過率特性を示すグラフである。グラフからわかるように、塩素ガスは、約330nmに吸光のピークを有しており、特に、約280nm~約380nmの光を良く吸収することが分かる。このため、これらの波長の測定光を用いて、濃度検出を行うことも可能である。
また、塩素ガスは、ライン中に水分が存在すると、水分との化学反応によって一部がHClに変化する。このため、ライン中に水分が含まれている場合には、ライン中を流れるガスに、Cl2とHClとが含まれることになる。HClの生成は、水分が多いほど促進される。
水分との化学反応によって発生したHClは、図6に示すように、約280nm~約380nmの光を吸収しない。HClの吸光のピーク波長は、約150nmである。したがって、HClが生成されると、約280nm~約380nmの紫外光を測定光として用いたときに、Cl2による吸光が低下するために透過光強度が増加し吸光度は減少する。したがって、透過光強度の増加および吸光度の減少から、HClの存在、さらには、ライン中の水分の存在を検知することができる。なお、図6には、臭素ガス(Br2)の吸光特性も示されている。
ただし、吸光特性は、ガスの濃度によっても変化する。このため、水分との化学反応に基づく吸光度の低下を検出するためには、同じ濃度(例えば100%濃度)でCl2ガスを流したときの吸光度の変化を検出することが必要である。したがって、本実施形態では、水分が存在しない環境で予め測定された特定濃度での吸光度を基準吸光度としてメモリに格納しておくとともに、同じ特定濃度のガスを流すとともに、同じ波長の測定光を用いて吸光度を測定する工程が行われる。そして、メモリから読み出した基準吸光度と測定吸光度とを比較し、基準吸光度に対して測定吸光度が小さいほど、ライン中に存在する水分が多いと推測することができる。
また、図4に示した表に記載の塩素ガス以外の他の物質についても同様のことがいえる。図7は、フッ素ガス(F2)の吸光特性を示すグラフである。グラフからわかるように、フッ素ガスは、約280nmの近紫外光に対して吸光のピークを有している。一方で、図8に示すように、水分との化学反応により生成されたHFは、約150nm以下の光(真空紫外線)を吸収する特徴を有するが、約280nm付近の波長の近紫外光は吸収しない。このため、例えば、約280nmの近紫外光を用いて吸光度を測定するとき、同じ濃度のフッ素ガスを流したにもかかわらず、吸光度が低下したときには、ライン中の水分によってフッ素ガスの一部がHFに変化したものと考えることができる。このようにして、吸光度の低下の観察に基づいて、ライン中の水分の過剰を判別することができる。
上記の、塩素ガス、フッ素ガス、臭素ガスなどのハロゲンガスは、水との反応によって、その一部が、近紫外線を吸収しないハロゲン化水素に変化する。このため、ハロゲンガスは、近紫外線を用いて水の存在を確認するために流すガスとして適切である。
また、図8には、H2OおよびCH4の吸光特性も示されている。図4に示したように、TMGaは、300nm近辺の波長の光を吸収することができるが、一方で、TMGaが水と反応することによって生成されたCH4は、図8からわかるように、90nm近辺に吸光のピークを有する。このため、TMGaを流したときに、ライン中に過剰な水分が存在し、CH4が発生するような状況では、300nm近辺の測定光の吸光度は低下する。
図9は、C2H6(エタン)、NH3(アンモニア)、CO(一酸化炭素)、CO2(二酸化炭素)、N2(窒素)、NO(一酸化窒素)のそれぞれの吸光特性を示す。なお、TEMAZ,TEMAHが水との反応で発生するガスであるメチルエチルアミンの吸光特性はアンモニアと類似する。
図9に示したいずれのガスも、吸光のピーク波長は、約200nm以下、典型的には100nm以下であり、250nm以上の波長の光を吸収しない。したがって、図4に示した近紫外線吸収物質のように水との反応によって上記のガス(あるいは同様の吸光特性を有するガス)が発生する物質については、水分の存在によって検出波長域での吸光度が低下することが分かる。例えば、TMInがライン中の水と反応してエタンガスが生成されると、水が存在しない場合と比べて検出波長での吸光度は低下する。
図10は、ライン異常検知を行う工程の一例を示すフローチャートである。このライン異常検知の工程は、例えば、半導体製造プロセスで用いられるガスを流す工程の前に行われる。
まず、ライン異常検知を行う前に、ライン中に水分が存在しないときに特定濃度(例えば100%)の特定ガス(例えば塩素ガス)を流すとともに、吸収される特定波長(例えば300nm)を有する近紫外光の透過光強度I、透過率I/I0、あるいは吸光度-ln(I/I0)など(以下、透過光強度I等と呼ぶことがある)が測定され、測定された透過光強度I等がメモリに基準値として格納される。この工程は、流路内を十分に真空引きした後に、上記の濃度測定装置20を用いて、予め行っておくことができる。
そして、ライン異常検知を行う時には、ステップS1に示すように、基準値測定のときと同濃度かつ同種のガスを流すとともに、濃度測定装置20を用いて、透過光強度I等を測定する。このとき、測定光としては、基準値測定のときと同じ波長の光が用いられる。
次に、ステップS2に示すように、メモリから読み出した基準値と、ステップS1で測定した測定値とを比較する。比較の結果、基準値と測定値との差が閾値未満の場合(ステップS2のNoの場合)には、ステップS3に示すように、ライン中に水分が過剰に存在しないものと判断して、ステップS5において異常検知フローを終了する。なお、ユーザに異常の発生がなかったことを示してから異常検知フローを終了してもよい。
また、ステップS2において、基準値と測定値との差が閾値以上の場合(ステップS2のYesの場合)には、ライン中の過剰な水分によって吸収性を持たないガスが発生し、ガス全体としての吸光度が減じたものと判断する。そして、ステップS4に示すように、ライン中に水分が過剰に存在すると判定し、ステップS5においてライン異常が生じていることをユーザに警告してから、異常検知フローを終了する。
以上、本発明の実施形態を説明したが、種々の改変が可能であることは言うまでもない。例えば、図10に示したフローチャートのステップS1において用いられる基準値は、フロー開始前に一度行っておけば十分であり、異常検知フローの度に実行する必要はない。また、濃度測定装置の光学系の設計が同じものであれば、他の装置で測定された基準値を共通に利用することもできる。
また、図10に示したフローチャートのステップS2において求めた基準値と測定値との差の大きさに基づいて、ライン中の水分の量を推測するようにしてもよい。基準値と測定値との差が大きいほど、ライン中の水分量はより多いと考えられる。水分量の多寡をユーザに通知することによって、ユーザは追加の真空引きの時間等を適宜設定することも可能である。
さらに、上記の実施形態として、合流ブロック14に設けられた濃度測定装置20を用いて異常を検知する例を説明したが、これに限られない。合流ブロック14ではなく、集積化ユニット10の下流側の流路や、集積化ユニット10内にある各供給ライン5(例えば、流量制御装置12の上流側の流路や、流量制御装置12と合流ブロック14との間の流路)などの、異常を検知したい流路上において、特許文献3に記載されるような濃度測定装置あるいは同様の光学系を設置して水分を検出するようにしても良い。
図11は、ライン異常検知に用いられる、他の実施形態のガスユニット22A(測定セル4)を示す。ガスユニット22Aは、光ファイバケーブル30、31を介して、図3に示した電気ユニット24に接続されている。また、ガスユニット22Aは、本実施形態では、ガス供給システム1においてインライン式に配置されており、ここでは、集積化ユニット10の下流側に設置されている。ただし、ガスユニット22Aは、集積化ユニット10の内部において、各供給ライン5の流量制御装置12の上流側または下流側のラインに設けられていてもよい。ガスユニット22A内の流路を通過するガスGの吸光度が測定されてライン異常検知がなされるが、上記と同様に吸光度からガスの濃度を求めることも可能である。
ガスユニット22Aが備える測定セル4の一方の端部には、流路に接する透光性の窓部22a(ここでは透光性プレート)が設けられている。また、測定セル4の他方の端部には反射部材22bが設けられている。窓部22aの外側には、光ファイバケーブル30、31が接続されたコリメータ22cが設けられている。コリメータ22cは、電気ユニット24の光源40からの光を平行光として測定セル4に入射させるとともに、測定セル4から出射した反射光を受光して光ファイバケーブル31を介して電気ユニット24に伝送する。窓部22aとしては、例えば、機械的・化学的に安定なサファイアプレートが好適に用いられる。
反射部材22bとしては、例えばサファイアなどからなる透光性プレートの裏面にスパッタリングなどによって反射層としてのアルミニウム層が形成されたものが用いられる。また、反射部材22bは、反射層として誘電体多層膜を含むものであってもよく、誘電体多層膜を用いれば、特定波長域の光(例えば近紫外線)を選択的に反射させることができる。誘電体多層膜は、屈折率の異なる複数の光学被膜の積層体(高屈折率薄膜と低屈折率薄膜との積層体)によって構成されるものであり、各層の厚さや屈折率を適宜選択することによって、特定の波長の光を反射したり透過させたりすることができる。なお、反射層がガスと接するとガスを汚染するおそれがあるため、反射層は透光性プレートの背面側(ガスと接しない側)に設けられていることが好ましい。
測定セル4に設けられたガス流路は、測定光のための光路として利用される。なお、ここでは測定光は反射部材22bによって反射する構造を用いているが、反射させずに直接受光する構造としても良い。また、ガスユニット22Aは、他の態様の電気ユニットと、一本の光ファイバケーブルで接続されていてもよい。この場合、電気ユニット内には、光源と光検出器とに接続されるビームスプリッタが設けられる。光源からの光は、ビームスプリッタを通して光ファイバケーブルに送られ、光ファイバケーブルからの光(測定セル4を往復した反射光)は、ビームスプリッタで反射して光検出器に向けて出射される。
また、図11に示すガスユニット22Aでは、測定セル4の近傍に、流路内のガスの圧力を検出する圧力センサ21と、ガスの温度を測定する温度センサ23とが設けられている。ガスの吸光度は、ガス圧力や温度によって変化する可能性があるので、圧力センサ21および温度センサ23の出力に基づいて吸光度を補正することもできる。そして、補正された吸光度に基づいて、流体供給ライン内の残留水分の有無を確認することができ、ライン異常を検知することができる。