JP7247564B2 - 軟磁性シートの製造方法 - Google Patents
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Description
平坦化工程の際、加圧ロールの表面温度を50~90℃とすることが好ましい。
また、平坦化工程での圧は、5MPa以上とすることができる。
また、ラミネート体の加圧ロールへの搬送速度を200mm/min以上とすることができる。
また、ナノ結晶合金は、一般式:(Fe1-aMa)100-x-y-z-α-β-γCuxSiyBzM’αM”βXγ(原子%)(ただし、MはCo,Niから選ばれた少なくとも1種の元素であり、M’はNb,Mo,Ta,Ti,Zr,Hf,V,Cr,Mn及びWから選ばれた少なくとも1種の元素、M”はAl,白金族元素,Sc,希土類元素,Zn,Sn,Reから選ばれた少なくとも1種の元素、XはC、Ge、P、Ga、Sb、In、Be、Asから選ばれた少なくとも1種の元素、a,x,y,z,α,β及びγはそれぞれ0≦a<0.5,0.1≦x≦3,10≦y≦20,5≦z≦10,0.1≦α≦5,0≦β≦10及び0≦γ≦10を満たす。)により表される組成を有するものを用いることができる。
また、ラミネート体は、複数のナノ結晶合金からなる軟磁性薄帯が接着層を介して積層された積層体を有し、前記積層体の下部および上部に樹脂フィルムが貼り付けられたラミネート体とすることができる。
しかし、軟磁性シートを加圧ロールに3回以上通すことで軟磁性シート表面の凹凸低減を行うことが可能であることを、本願発明者は想到した。
本実施形態における軟磁性シートは、ナノ結晶合金からなる軟磁性薄帯(以下、ナノ結晶軟磁性薄帯ということがある)が用いられる。このナノ結晶合金からなる軟磁性薄帯は、基本的には、合金溶湯を急冷することによって、所定の組成を有する非晶質合金薄帯を得る工程と、この非晶質合金薄帯を加熱してナノ結晶化させる熱処理工程とを含む方法によって製造される。
ナノ結晶合金の少なくとも50体積%は、最大寸法で測定した粒径の平均が100nm以下の微細な結晶粒で占められる。また、ナノ結晶合金のうちで微細な結晶粒以外の部分は主に非晶質である。微細な結晶粒の割合は80体積%以上であってもよいし、実質的に100体積%であってもよい。
一般式:(Fe1-aMa)100-x-y-z-α-β-γCuxSiyBzM’αM”βXγ(原子%)
ここで、MはCo,Niから選ばれた少なくとも1種の元素であり、M’はNb,Mo,Ta,Ti,Zr,Hf,V,Cr,Mn及びWから選ばれた少なくとも1種の元素、M”はAl,白金族元素,Sc,希土類元素,Zn,Sn,Reから選ばれた少なくとも1種の元素、XはC、Ge、P、Ga、Sb、In、Be、Asから選ばれた少なくとも1種の元素である。組成比率を規定するa、x、y、z、α、β、およびγは、それぞれ、以下の関係を満足する。0≦a<0.5、0.1≦x≦3、10≦y≦20、5≦z≦10、0.1≦α≦5、0≦β≦10、0≦γ≦10
このFe基ナノ結晶合金では、0.1~3原子%のCuを含有する。Cuが0.1原子%より少ないと、Cuの添加によるコア損失の低減および所定のμ’を得る効果がほとんど得られない。一方、Cuが3原子%より多いと、Cu未添加の合金よりもコア損失がかえって大きくなることがある。また、μ’が低下し、所定のμ’が得られない。本開示において、特に好ましいCuの含有量xの下限は0.5原子%である。また、好ましいCuの含有量xの上限は2原子%である。この範囲において、コア損失が特に小さい。
なお、Bは5~10原子%の範囲で含有される。Bは非晶質形成に必須の元素であり、B含有量が5原子%未満では非晶質形成能が低く、非晶質を安定して得にくくなる。B含有量が10原子%超では飽和磁束密度の低下が大きい。好ましいBの下限値は6原子%である。一方、好ましいBの上限値は8.5原子%である。
図3は、ラミネート工程の一例であり、ナノ結晶合金の軟磁性薄帯3、粘着層を有する両面テープ4、樹脂フィルム(PETフィルム)5、保護層9を、各々が巻かれたロールから引き出し、所定の間隔を設けて配置された一対の加圧ロール6で挟んで積層し、ラミネート体7を作製する様子を示している。
まず、長尺で厚み25μmのPETフィルム5の一方側の面に、厚み5μmの両面テープ4を介して長尺のナノ結晶軟磁性薄帯3を貼り付ける。両面テープ4は、例えば、PET製基材の両面にアクリル系粘着材が形成されたものを用いることができる。図3では、引き出した両面テープ4の一方の面に付着している剥離フィルム4’を剥がしながら、両面テープ4をPETフィルム5に貼り付け、その後、他方の面に付着している剥離フィルム4’’を剥がし、両面テープ4の上にナノ結晶軟磁性薄帯3を貼り付ける状態が示されている。更にナノ結晶軟磁性薄帯3のもう一方の面に、PET製の保護フィルム9aとアクリル系の粘着層9bからなる保護層9を貼り付けることでラミネート体7が得られる。図3では、引き出した保護層9に付着している剥離フィルム9’を剥がしてアクリル系粘着材を露出させ、その後、保護層9をナノ結晶軟磁性薄帯3に貼り付ける状態が示されている。この樹脂フィルム(PETフィルム)5、および保護層9は、ナノ結晶軟磁性薄帯の上下面を覆っている。
図4は、4つのナノ結晶軟磁性薄帯3が接着層(両面テープ4)を介して積層された積層体を有し、積層体の下部に樹脂フィルム5、積層体の上部に保護層(樹脂フィルム)が貼り付けられたラミネート体7の模式図である。2層以上のナノ結晶軟磁性薄帯をラミネートする場合は、上述の保護層9の代わりに、ナノ結晶軟磁性薄帯3の上に再度両面テープを貼り付け、その後、2層目のナノ結晶軟磁性薄帯を貼り付ける。このように、ナノ結晶軟磁性薄帯が必要な層数となるまで両面テープとナノ結晶軟磁性薄帯との積層を繰り返した後、最上面に保護層9を貼り付ける。図4中のその他の図番の部材は、図3中の同じ図番の部材に相当し、説明を省略する。
図5はクラック工程の一例を示す図である。表面に突起状部材が形成されたクラッキングロール10と、表面が例えばゴムのような弾性体11で覆われたアンビルロール12との間に、ラミネート体7が通過される。これにより、ラミネート体を構成するナノ結晶軟磁性薄帯の上記突起状部材により押されて変形された部分にクラックが形成され、かつ、そのクラック同士の間のナノ結晶軟磁性薄帯が割れて小片に分割される。このクラック処理によりラミネート体のμ’は低下するが、この時のμ’はクラッキングロール上の表面の突起状部材の密度、突起状部材の先端形状、突起状部材がラミネート体を圧迫する応力、アンビルロールのゴムの厚み、アンビルロールのゴムの硬度に依存する。なお、このクラッキングロールを用いたクラック形成の後、ラミネート体7に別の外力を加えて、ナノ結晶軟磁性薄帯のクラッキングを行っても良い。例えば、ラミネート体7をロールに沿って曲げることにより、ラミネート体7に外力を加えることができる。
透磁率の実部μ’(以下、単にμ’ということがある)の測定は、ラミネート体を外径20mm、内径9mmのリング状に打ち抜いたものを測定サンプルとして用いた。測定機器は、キーサイト製インピーダンスアナライザE4990Aおよびターミナルアダプタ42942Aを用いた。その測定条件は、測定電圧0.5V、測定周波数145kHzとし、そのインダクタンス値を測定し、透磁率の実部μ’を以下の数1より求めた。
μ’:透磁率(実部)、 L:インダクタンス、 t:ナノ結晶軟磁性薄帯の総厚、 a:サンプルの外径、 b:サンプルの内径
クラック工程にてラミネート体表面には凹凸が形成され、軟磁性シートの厚み(シート厚)が増大することがある。クラック工程前後のシート厚を図6に示す。ここでシート厚はマイクロメータを用いて測定した。クラック工程前のシート厚は約0.11mmであったのに対し、クラック工程後のシート厚は0.13~0.145mmに増加している。そのため本実施形態では、軟磁性シート(ラミネート体)の平坦化およびシート厚の低減を目的として平坦化工程を行った。図7に平坦化工程を示す。予備加熱ゾーン19で加熱した軟磁性シート1を加熱可能な加圧ロール(以下、加熱加圧ロール)20に通すことで平坦化工程を行った。
軟磁性シートを加熱加圧ロールに通す回数(ロール回数)と軟磁性シートのシート厚との関係を図11に、μ’との関係を図12に示す。ここでロールが軟磁性シートに付与する圧力(ロール圧)は8MPa、送り速度は1000mm/minとした。ロール回数が増えるほど軟磁性シートのシート厚は薄くなり、3回以上通すことでシート厚は安定する傾向である。また図12に示すように、μ’は加熱温度50℃、70℃においてはロール回数に依存せず安定している。また加熱加圧ロールに通す回数が多すぎると生産設備にて多段のロールを設置する必要があるため生産性の面で望ましくない。以上より、本実施形態において、平坦化工程のロール回数は3回以上10回以下が望ましい。ロール回数の上限は、好ましくは5回である。
平坦化工程後のシート厚を図13に、μ’を図14に示す。ここでロール圧は8MPa、加熱温度は80℃である。
図13を見ると、シート厚は、200mm/minと500mm/minでほぼ同じである。シートの送り速度を遅くするほど突起がより平坦化され、それによってシート厚が薄くなるものと考えられる。送り速度が1000mm/minでも、シート厚は0.05mm程度の誤差しかない。つまり、送り速度が200mm/min以上であれば、シート厚を安定化させることができる。
また、図14を見ると、送り速度が200mm/minにて、μ’が変化することが確認される。この現象は、送り速度が低速化すると、クラック時に形成された突起がより平坦化されることでシート厚が薄くなり、アクリル系粘着剤がクラックの間隙に浸透するため、と考えられる。このように、送り速度で透磁率の調整が可能である。
シートの送り速度は、速いほど量産時の生産能力を向上できる。そのため、所望のμ’が得られる調整が可能な範囲で、早くすることが好ましい。
本実施形態では、シートの送り速度は200mm/min以上が望ましく、さらには500mm/min以上が望ましく、さらには1000mm/min以上が望ましい範囲とした。なお、上限は特に限定されないが、送り速度が速すぎるとローラーの同期を取ることが困難になり、平坦化工程においてシートが破損する問題が発生する可能性がある。そのため、例えば、送り速度の上限は100000mm/min以下とすることが好ましい。
図15から、シート厚はロール圧が5MPa以上で安定することが分かる。また、ロール圧が8MPa以上、さらには、12MPa以上でさらに安定することが分かる。また、加熱加圧ロールの温度が70℃以上であれば、シート厚が0.12mm以下に薄くなっている。
また図16から、μ’は0~8MPaで比較的に安定し12MPa以上で低下しやすいことが分かる。また90℃では全圧力域でμ’が低下しやすいことが分かる。
以上より、本実施形態において、ロール圧の望ましい範囲は5MPa以上とするが、より好ましくは5~12MPa未満であり、より好ましくは5~8MPaとした。
また、加熱加圧ロールの温度の望ましい範囲は50℃以上90℃以下、より望ましくは60℃以上80℃以下とした。
また、上記実施形態ではラミネート、クラック、平坦化の順に工程を進めているが本発明はその順序に限定されるものではなく、たとえば軟磁性薄帯が1層からなるラミネート体についてクラック、平坦化を行った後、複数のラミネート体をラミネート処理しても良い。また保護層9は平坦化工程の後で貼り付けることでラミネート体の凹凸がカバーされるので外観上望ましい。また、例えば図4のラミネート体において、保護層9の代わりに、樹脂フィルム基材とその両面の粘着層と、からなる両面テープを用いることもできる。このラミネート体を作製し、その後、クラック、平坦化を行った後、この両面テープに保護層または保護フィルムを貼り付けることで、クラック以降の工程でナノ結晶軟磁性薄帯の微細片の飛散を防ぐことができる。この両面テープは、ナノ結晶軟磁性薄帯とは反対側に剥離フィルムが貼り付けられた状態で使用できる。剥離フィルムがある状態で上記工程を行うことで、両面テープの接着層が露出しないので、ラミネート体の取り扱いが容易になる。
3:ナノ結晶軟磁性薄帯,
4:両面テープ,
5:PETフィルム,
9:保護層(9a:保護フィルム、9b:粘着層),
6:加圧ロール,
7:ラミネート体,
10:クラッキングロール,
11:弾性体,
12:アンビルロール,
14:電力送信用コイル,
15:電力受信用コイル,
19:予備加熱ゾーン,
20:平坦化用加圧ロール,
21:金属部品,
Claims (5)
- ナノ結晶合金からなる軟磁性薄帯に樹脂フィルムを貼り付けてラミネート体とし、前記ラミネート体の少なくとも一面に外力を加えて、前記軟磁性薄帯に複数のクラックを形成し、その後、前記ラミネート体の少なくとも1面に加圧ロールにより圧をかける平坦化工程を施す、軟磁性シートの製造方法であって、
前記ラミネート体の前記加圧ロールへの搬送速度を200mm/min以上とし、前記平坦化工程を3回以上繰り返す、軟磁性シートの製造方法。 - 前記平坦化工程の際、加圧ロールの表面温度を50~90℃とする、請求項1に記載の軟磁性シートの製造方法。
- 前記平坦化工程でかける圧は、5MPa以上とする、請求項1または2に記載の軟磁性シートの製造方法。
- 前記ナノ結晶合金は、一般式:(Fe1-aMa)100-x-y-z-α-β-γCuxSiyBzM’αM”βXγ(原子%)(ただし、MはCo,Niから選ばれた少なくとも1種の元素であり、M‘はNb,Mo,Ta,Ti,Zr,Hf,V,Cr,Mn及びWから選ばれた少なくとも1種の元素、M”はAl,白金族元素,Sc,希土類元素,Zn,Sn,Reから選ばれた少なくとも1種の元素、XはC、Ge、P、Ga、Sb、In、Be、Asから選ばれた少なくとも1種の元素、a,x,y,z,α,β及びγはそれぞれ0≦a<0.5,0.1≦x≦3,10≦y≦20,5≦z≦10,0.1≦α≦5,0≦β≦10及び0≦γ≦10を満たす。)により表される組成を有する請求項1乃至3のいずれかに記載の軟磁性シートの製造方法。
- 前記ラミネート体は、複数のナノ結晶合金からなる軟磁性薄帯が接着層を介して積層された積層体を有し、前記積層体の下部および上部に樹脂フィルムが貼り付けられたラミネート体である、請求項1乃至4のいずれかに記載の軟磁性シートの製造方法。
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