1.実施の形態の概要
先ず、本願において開示される発明の代表的な実施の形態について概要を説明する。なお、以下の説明では、一例として、発明の構成要素に対応する図面上の参照符号を、括弧を付して記載している。
〔1〕本発明の代表的な実施の形態に係る蓄電システム(100,100A,100B)は、複数の鉛蓄電池セル(200)を含む蓄電池列(20)と、前記蓄電池列の電力の授受を制御する交直変換装置(3)と、前記蓄電池列の状態を監視し、前記交直変換装置を介して前記蓄電池列の充放電を制御する制御装置(1,1A,1B)と、を備え、前記制御装置は、前記蓄電池列の充電中に、前記蓄電池列の電圧に基づいて当該蓄電池列のクープデフォート現象の発生の度合いを表す評価値(137,137B)を算出し、前記評価値に基づいて前記蓄電池列の充電を停止するための充電停止条件(132,132A,138)を決定することを特徴とする。
〔2〕上記蓄電システムにおいて、前記制御装置は、前記蓄電池列の充電中に、前記蓄電池列の電圧に基づいて前記評価値を算出する評価値算出部(14,14B)と、前記評価値算出部によって算出された前記評価値に基づいて、前記充電停止条件を決定する充電停止条件決定部(15,15A)と、前記蓄電池列の状態が、前記充電停止条件を満たしているか否かを判定する判定部(16,16A)と、前記判定部によって前記蓄電池列の状態が前記充電停止条件を満たしていると判定された場合に、前記蓄電池列の充電を停止する充電制御部(17)と、を有していてもよい。
〔3〕上記蓄電システム(100,100A)において、前記充電停止条件(132,132A)は、電圧閾値(Vth,Vtha)であって、前記充電停止条件決定部(15,15A)は、前記電圧閾値を前記評価値が大きくなるほど大きくなるように設定し、前記判定部は、前記蓄電池列の電圧が前記電圧閾値を超えているか否かを判定し、前記充電制御部は、前記判定部によって前記蓄電池列の電圧が前記電圧閾値を超えていると判定された場合に、前記蓄電池列の充電を停止してもよい。
〔4〕上記蓄電システム(100A)において、前記電圧閾値は、前記蓄電池列の均等充電における定電流充電の停止を判定するための基準値(Vtha)であってもよい。
〔5〕上記蓄電システム(100A)において、前記充電停止条件(138)は、前記蓄電池列の均等充電における定電圧充電の実施時間の上限を規定する充電上限時間(Tcv)を含み、前記充電停止条件決定部は、前記充電上限時間を前記評価値が大きくなるほど小さくなるように設定し、前記判定部は、前記蓄電池列の定電圧充電の経過時間(ty)が前記充電上限時間に到達しているか否かを判定し、前記充電制御部は、前記判定部によって前記経過時間が前記充電上限時間に到達したと判定された場合に、前記蓄電池列の定電圧充電を停止してもよい。
〔6〕上記蓄電システム(100,100A)において、前記評価値算出部(14)は、前記蓄電池列の充電を開始した開始時刻(t0)から第1時刻(t1)までの前記蓄電池列の電圧(Vs)の時間変化を表す第1関数(500)を算出する第1関数算出部と、前記第1関数に基づいて、前記蓄電池列の電圧の極大値(Vp1)と、前記蓄電池列の電圧が極大値となる第2時刻(tp)とを算出する極大値算出部(142)と、前記開始時刻から前記第1時刻までの範囲のうち前記蓄電池列の電圧が直線的に変化する範囲(t2~t1)に基づいて直線近似した第2関数(500x)を算出する第2関数算出部(143)と、前記第2関数に基づいて、前記第2時刻における前記蓄電池列の電圧の推定値(Vp2)を算出するとともに、前記極大値と前記推定値との差分(Dcf1)を算出し、当該差分に基づいて前記評価値(137)を決定する評価値決定部(144)とを有していてもよい。
〔7〕上記蓄電システム(100B)において、前記評価値算出部(14B)は、前記蓄電池列の充電を開始した開始時刻(t0)から第1時刻(t1)までの前記蓄電池列の電圧(Vs)の時間変化を表す第1関数(500)を算出する第1関数算出部(141)と、前記開始時刻から前記第1時刻までの範囲のうち前記蓄電池列の電圧が直線的に変化する範囲(t1~t2)に基づいて直線近似した第2関数(500x)を算出する第2関数算出部(143)と、前記第1関数と前記第2関数とによって囲まれる範囲の面積(Dcf2)を算出し、当該面積に基づいて前記評価値(137B)を決定する評価値決定部(144B)と、を有していてもよい。
〔8〕本発明の代表的な実施の形態に係る充電制御方法は、複数の鉛蓄電池セル(200)を含む蓄電池列(20)と、前記蓄電池列の電力の授受を制御する交直変換装置(3)と、前記蓄電池列の状態を監視し、前記交直変換装置を介して前記蓄電池列の充放電を制御する制御装置(1)とを備えた蓄電システム(100)における前記蓄電池列の充電制御方法である。本充電制御方法は、前記制御装置が、前記蓄電池列の充電を開始するステップ(S1)と、前記制御装置が、前記蓄電池列の充電中に、前記蓄電池列の電圧(Vs)に基づいて当該蓄電池列のクープデフォート現象の発生の度合いを表す評価値(137,137B)を算出するステップ(S24)と、前記制御装置が、算出した前記評価値に基づいて前記蓄電池列の充電を停止するための充電停止条件(132,138)を決定するステップ(S26,S27,S26A~S29A)と、前記制御装置が、前記蓄電池列の状態が前記充電停止条件を満たしているか否かを判定するステップ(S3)と、前記制御装置が、前記蓄電池列の状態が前記充電停止条件を満たしていると判定した場合に、前記蓄電池列の充電を停止するステップ(S4)と、を含むことを特徴とする。
2.実施の形態の具体例
以下、本発明の実施の形態の具体例について図を参照して説明する。なお、以下の説明において、各実施の形態において共通する構成要素には同一の参照符号を付し、繰り返しの説明を省略する。また、図面は模式的なものであり、各要素の寸法の関係、各要素の比率などは、現実と異なる場合があることに留意する必要がある。図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。
≪本発明に係る蓄電池システムの概要≫
先ず、本発明に係る蓄電池システムの概要について説明する。
一般に、鉛蓄電池では、充電開始直後にセル電圧がオーバーシュートするクープデフォート現象が発生する場合があることが知られている。
クープデフォート現象が発生するか否かは、充電を開始する前の鉛蓄電池の状態に依存する。例えば、放電深度が深い鉛蓄電池ほど、充電開始直後にクープデフォート現象が発生する可能性が高い。
本願発明者らは、本願に先立って、蓄電池列を構成する鉛蓄電池間のセル電圧のばらつきと鉛蓄電池のクープデフォート現象との関係について検討を行った。検討の結果、以下に示すことが明らかとなった。
図1A,図1Bは、充電中の鉛蓄電池セルのセル電圧の時間変化を示す図である。
図1Aには、セル電圧が12Vである鉛蓄電池セルをn個直列に接続した蓄電池列(組電池)に対して、当該蓄電池列の電圧が充電停止判定電圧閾値(以下、単に「電圧閾値」と称する。)Vthに到達するまで定電流充電を行ったときに、クープデフォート現象が発生していない鉛蓄電池セルのセル電圧の時間変化が示されている。
図1Bには、セル電圧が12Vである鉛蓄電池セルをn個直列に接続した蓄電池列(組電池)に対して、当該蓄電池列の電圧が電圧閾値Vthに到達するまで定電流充電を行ったときに、クープデフォート現象が発生した鉛蓄電池セルのセル電圧の時間変化が示されている。
また、図1Aにおいて、参照符号311は、セル電圧が最も小さい鉛蓄電池セルのセル電圧の時間変化を表し、参照符号312は、セル電圧が最も大きい鉛蓄電池セルのセル電圧の時間変化を表している。また、図1Bにおいて、参照符号311Aは、セル電圧が最も小さい鉛蓄電池セルのセル電圧の時間変化を表し、参照符号312Aは、セル電圧が最も大きい鉛蓄電池セルのセル電圧の時間変化を表している。
更に、図1A,図1Bにおいて、Vth/nは、蓄電池列の電圧閾値Vthを鉛蓄電池セルの個数“n”で除した値である。すなわち、Vth/nは、鉛蓄電池セル一つ当たりの電圧閾値を表している。また、Vmaxは、鉛蓄電池セルの運用上限電圧を表している。
図1Aの参照符号300に示すように、蓄電池列の充電開始直後にクープデフォート現象が発生しなかった場合、充電停止時刻teにおいて、最大のセル電圧と最小のセル電圧との差が大きくなる。すなわち、クープデフォート現象が発生しなかった場合、各鉛蓄電池セル間のセル電圧のばらつきが大きいので、当該蓄電池列を電圧閾値Vthまで充電したとき、セル電圧が運用上限電圧Vmaxを超過する鉛蓄電池セルが発生し易くなる。
一方、図1Bの参照符号300Aに示すように、蓄電池列の充電開始直後にセル電圧がオーバーシュートするクープデフォート現象が発生した場合、充電停止時刻teにおいて、最大のセル電圧と最小のセル電圧との差が小さくなる。すなわち、クープデフォート現象が発生した場合、各鉛蓄電池セル間のセル電圧のばらつきが小さいので、当該蓄電池列を電圧閾値Vthまで充電したとしても、セル電圧が運用上限電圧Vmaxを超過する鉛蓄電池セルは発生し難い。
このように、蓄電池列の充電開始直後のクープデフォート現象の有無と、鉛蓄電池セルのセル電圧のばらつき度合いとの間に相関があり、蓄電池列の充電開始直後のクープデフォート現象の有無により、充電末期に運用上限電圧Vmaxを超過する鉛蓄電池セルの発生の有無を予測することができることを、本願発明者らは新たに見出した。
また、本願発明者らは以下に示すことを新たに見出した。
一般に、鉛蓄電池を用いた蓄電システムでは、鉛蓄電池の劣化の一因であるサルフェーションを除去するために、鉛蓄電池を満充電状態にする均等充電(回復充電)を定期的に行っている。鉛蓄電池の均等充電の方式としては、定電流―定電圧充電(CCCV)方式が知られている。
定電流―定電圧充電方式は、初めに一定の電流値による充電(定電流充電)を行い、蓄電池電圧が所定の閾値に達した後に、一定の電圧による充電(定電圧充電)を行って鉛蓄電池を満充電状態まで回復させる充電方式である。なお、定電流の代わりに、定電力で充電を行う定電力-定電圧充電方式も知られている。
図2は、従来のCCCV方式による均等充電を説明するための図である。
同図において、縦軸は電圧および電流を表し、横軸は時間を表している。参照符号901は、複数の鉛蓄電池セルが直列に接続された蓄電池列(全体)の電圧を表し、参照符号902は、当該蓄電池列の充電電流を表している。
図3Aは、均等充電における定電流充電が行われている蓄電池列の電圧の時間変化を示す図である。具体的に、同図には、セル電圧が2Vである鉛蓄電池セルを128個直列に接続した蓄電池列(組電池)に対して、CCCV方式による均等充電を行ったときの、定電流充電開始直後から所定時間経過するまでの蓄電池列の電圧の時間変化が示されている。
図3Aにおいて、参照符号400は、クープデフォート現象が発生していない蓄電池列の電圧の波形を表し、参照符号401は、クープデフォート現象が発生した蓄電池列の電圧の波形を表している。
図3Bは、均等充電における定電圧充電が行われている蓄電池列の充電電流の時間変化を示す図である。具体的に、同図には、セル電圧が2Vである鉛蓄電池セルを128個直列に接続した蓄電池列(組電池)に対して、CCCV方式による均等充電を行ったときの、当該蓄電池列の充電電流の時間変化が示されている。
図3Bにおいて、参照符号402、クープデフォート現象が発生していない蓄電池列の充電電流の波形を表し、参照符号403は、クープデフォート現象が発生した蓄電池列の充電電流の波形を表している。
また、時刻tbは、均等充電における定電流充電から定電圧充電に切り替わったタイミングを表し、時刻tcは、クープデフォート現象が発生した蓄電池列の均等充電が終了したタイミングを表し、時刻tcxは、クープデフォート現象が発生していない蓄電池列の均等充電が終了したタイミングを表している。なお、図3Bでは、定電圧充電時の蓄電池列の充電電流が判定閾値以下となったタイミングを均等充電が終了したタイミングとしている。
図3Aに示すように、クープデフォート現象が発生していない蓄電池列の方が、クープデフォート現象が発生した蓄電池列よりも、蓄電池列全体の電圧が高くなる。
また、図3Bに示すように、クープデフォート現象が発生した蓄電池列の方が、クープデフォート現象が発生していない蓄電池列よりもΔTだけ早く定電圧充電が終了する。
このように、蓄電池列の均等充電における定電流充電の開始直後のクープデフォート現象の有無と、蓄電池列の均等充電における定電圧充電に要する時間との間に相関があり、蓄電池列の充電開始直後のクープデフォート現象の有無により、均等充電における定電圧充電に要する時間を推定することができることを、本願発明者らは新たに見出した。
そこで、本発明の実施の形態に係る蓄電システムは、蓄電池列の充電中に、蓄電池列の電圧に基づいて当該蓄電池列のクープデフォート現象の発生の度合いを表す評価値を算出し、この評価値に基づいて蓄電池列の充電を停止するための充電停止条件を決定する。
ここで、蓄電池列の充電を停止するための充電停止条件としては、上述した蓄電池列の充電の停止を判断するための基準となる充電停止判定電圧閾値(電圧閾値)Vthや、蓄電池列の均等充電における定電圧充電の実施時間の上限を規定する充電上限時間Tcv等を例示することができる。
本明細書では、実施の形態1として、クープデフォート現象が発生したときの蓄電池列の電圧の極大値に基づいてクープデフォート現象の発生の度合いを表す評価値を算出し、その評価値に基づいて充電停止判定電圧閾値(電圧閾値)Vthを決定する蓄電システムを例示する。また、実施の形態2として、クープデフォート現象の発生の度合いを表す評価値に基づいて均等充電における定電圧充電の充電上限時間Tcvを決定する蓄電システムを例示する。更に、実施の形態3として、実施の形態1とは異なる手法によって、クープデフォート現象の発生の度合いを表す評価値を算出する蓄電システムを例示する。
≪実施の形態1≫
図4は、実施の形態1に係る蓄電システムの構成を示す図である。
同図に示す蓄電システム100は、例えばサイクルユースの鉛蓄電池を備えた蓄電システムである。蓄電システム100は、例えば、通常時に電力供給部8(商用電源)から負荷9に給電し、停電の発生時には、電源バックアップ用の蓄電池モジュール2から負荷9に給電する。
電力供給部8は、蓄電システム100および負荷9に電力を供給する機能部である。電力供給部8は、例えば、商用電源である。なお、電力供給部8は、商用電源に加えて、太陽光発電(PV:Photovoltaics)等の再生可能エネルギーに基づいて電力を発生させる発電設備を有していてもよい。
蓄電システム100は、蓄電池モジュール2、PCS(Power Conditioning System)3、および制御装置1を備えている。
蓄電池モジュール2は、電力を充放電可能に構成された蓄電池を含む。具体的に、蓄電池モジュール2は、蓄電池列20と、電圧センサ201、202_1~202_nと、電流センサ203とを含む。
蓄電池列20は、n(nは2以上の整数)個の蓄電池セル200_1~200_nが直列に接続された構造を有している。蓄電池セル200_1~200_nは、例えば鉛蓄電池セルである。
以下、蓄電池セル200_1~200_nを「鉛蓄電池セル200_1~200_n」と称する。また、以下の説明において、各鉛蓄電池セル200_1~200_nを区別しない場合には、単に「鉛蓄電池セル200」と表記する場合がある。
電圧センサ201は、蓄電池列20の電圧、すなわち鉛蓄電池セル200_nの負極側と鉛蓄電池セル200_1の正極側との間の電圧Vsを計測するセンサである。蓄電池列の電圧センサ201は、蓄電池列20に並列と接続されている。
電圧センサ202_1~202_nは、鉛蓄電池セル200_1~200_n毎に設けられ、対応する鉛蓄電池セル200_1~200_nのセル電圧(出力電圧)Vc_1~Vc_nを計測するセンサである。各電圧センサ202_1~202_nは、対応する鉛蓄電池セル200_1~200_nと並列に接続されている。
なお、鉛蓄電池セル200_1~200_nの各セル電圧Vc_1~Vc_nを区別しない場合には、単に、「セル電圧Vc」と表記する場合がある。
電流センサ203は、蓄電池列20の電流(充電電流および放電電流)Iを計測するセンサである。電流センサ203は蓄電池列20と直列に接続されている。
PCS3は、後述する制御装置1によって制御され、電力供給部8、蓄電池モジュール2、および負荷9の間で相互に電力を変換し、電力供給部8、蓄電池モジュール2、および負荷9の間での電力の授受を制御する電力変換部である。
例えば、PCS3は、電力供給部8からの交流電力(AC)を直流電力(DC)に変換して蓄電池モジュール2に供給する。PCS3は、例えば、DC/DCコンバータ、AC/DCコンバータ(AC/DC)、およびスイッチ回路等を含んで構成されている。
制御装置1は、蓄電システム100の各構成要素の統括的な制御を司る装置である。具体的に、制御装置1は、蓄電池列20の状態を監視するとともに、PCS3を駆動することにより、蓄電池列20の充放電制御を行う。
制御装置1は、例えば、BMU(Battery Management Unit)である。BMUは、電圧センサ201,202_1~202_nおよび電流センサ203によって計測された物理量を逐次取得し、当該物理量に基づいて蓄電池列20の状態を監視する監視機能と、蓄電池列20の充放電を制御する充放電制御機能とを備えたデータ処理装置である。
制御装置1としてのBMUは、例えば、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサと、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)等の記憶装置と、インターフェース回路等の種々の周辺回路とをそれぞれ含んで構成されている。
制御装置1は、蓄電池列20の充放電制御機能の一つとして、蓄電池列20のクープデフォート(coup de fouet)現象の発生の度合いに基づいて、蓄電池列20の充電停止条件を決定する機能を有している。以下、この機能について詳細に説明する。
図5は、実施の形態1に係る蓄電システムの制御装置1の機能ブロック構成を示す図である。
同図に示すように、制御装置1は、蓄電池列20の充電停止条件を決定するための機能に関連する機能ブロックとして、通信部11、計測制御部12、記憶部13、評価値算出部14、充電停止条件決定部15、判定部16、および充電制御部17を有している。
これらの機能ブロックは、上述したBMUを構成する各ハードウェア資源がソフトウェアと協働することによって実現される。例えば、BMUの構成要素であるCPU等のプロセッサが、BMUの構成要素である記憶装置に記憶されたプログラムに従って各種演算を実行して、BMUの構成要素である各種周辺回路を制御することにより、実現される。
通信部11は、PCS3との間でデータの送受信を行う機能部である。
計測制御部12は、電圧センサ201,202_1~202_nおよび電流センサ203を制御して、電圧センサ201,202_1~202_nおよび電流センサ203によって計測された物理量(Vc_1~Vc_n,Vs,I)の計測結果を取得する機能部である。
例えば、計測制御部12は、定期的に、電圧センサ201,202_1~202_nおよび電流センサ203から電圧Vc_1~Vc_n,Vsおよび電流Iの計測値を取得する。また、計測制御部12は、評価値算出部14および判定部16からの指示に応じて、電圧センサ201,202_1~202_nおよび電流センサ203から電圧Vc_1~Vc_n,Vsおよび電流Iの計測値を取得する。更に、計測制御部12は、例えばプロセッサ内部のタイマ等を用いて、充電時の経過時間を計測する。
計測制御部12によって取得した各種計測結果は、記憶部13に記憶される。例えば、計測制御部12は、電流センサ203から取得した蓄電池列20の電流Iの計測値と、電圧センサ201から取得した蓄電池列20の電圧Vsの計測値と、電圧センサ202_1~202_nから取得した各鉛蓄電池セル200_1~200_nの電圧Vc_1~Vc_nの計測値とを、計測結果131として記憶部13に記憶する。
例えば、計測制御部12は、単位時間毎に蓄電池列20の電圧Vs、電圧Vc、電流Iを計測し、記憶部13に記憶する。
記憶部13は、蓄電池列20の充放電制御を実現するために必要な各種データを記憶する機能部である。例えば、記憶部13は、上述したように、計測制御部12によって取得した計測結果131を記憶する。また、記憶部13は、充電停止条件132およびクープデフォート情報133を記憶する。
ここで、充電停止条件132は、蓄電池列20の充電を停止するための基準となるパラメータである。例えば、充電停止条件132は、充電停止判定電圧閾値(電圧閾値)Vthを含む。充電停止条件132は、後述する充電停止条件決定部15によって生成されて、記憶部13に記憶される。
また、クープデフォート情報133は、充電対象の蓄電池列20のクープデフォート現象に関する情報である。クープデフォート情報133は、後述する評価値算出部14によって生成され、記憶部13に記憶される。クープデフォート情報133の詳細については後述する。
判定部16は、蓄電池列20の状態を判定するための機能部である。判定部16は、蓄電池列20の充電時に、蓄電池列20の状態が充電停止条件を満たしているか否かを判定する。具体的に、判定部16は、蓄電池列20の電圧(電圧センサ201によって計測された電圧)Vsが電圧閾値Vthを超えているか否かを判定する。
例えば、判定部16は、記憶部13に記憶されている計測結果131および充電停止条件132に基づいて、電圧センサ201によって計測された蓄電池列20の電圧Vsが電圧閾値Vth以上であるか否かを判定する。
充電制御部17は、蓄電池列20の充電を制御するための機能部である。充電制御部17は、通信部11を介してPCS3を制御することにより、蓄電池列20の充電を行うとともに、判定部16の判定結果に基づいて、蓄電池列20の充電を停止する。具体的には、充電制御部17は、蓄電池列20の充電中に、判定部16によって蓄電池列20の状態が充電停止条件132を満たしていると判定された場合に、蓄電池列20の充電を停止する。より具体的には、充電制御部17は、判定部16によって蓄電池列20の電圧Vsが電圧閾値Vthを超えていると判定された場合に、蓄電池列20の充電を停止する。
評価値算出部14は、蓄電池列20のクープデフォート現象の発生の度合いを表す評価値137を算出する機能部である。評価値算出部14は、充電中の蓄電池列20の電圧Vsに基づいて、当該蓄電池列20の評価値137を算出する。
図6は、実施の形態1に係る蓄電システムの評価値算出部14の構成を示す図である。同図において、記憶部13には、クープデフォート情報133のみが図示されている。
図6に示すように、評価値算出部14は、第1関数算出部141、極大値算出部142、第2関数算出部143、および評価値決定部144を有している。
図7は、実施の形態1に係る蓄電システムによる評価値の算出方法を説明するための図である。
第1関数算出部141は、充電中の蓄電池列20の電圧Vsの時間変化を表す第1関数500を算出する機能部である。具体的には、図5に示すように、第1関数算出部141は、記憶部13に記憶された計測結果131に基づいて、蓄電池列20の充電を開始した開始時刻t0から時刻t1までの蓄電池列20の電圧Vsの時間変化を表す第1関数500を算出する。
ここで、第1関数500は、例えば、三次以上の高次関数である。第1関数算出部141は、蓄電池列20の充電を開始した開始時刻t0から時刻t1までの蓄電池列20の電圧Vsの計測結果を用いて、例えば公知の多項式回帰分析を行うことにより、第1関数500を算出する。
極大値算出部142は、第1関数算出部141によって算出された第1関数500に基づいて、開始時刻t0から時刻t1までの範囲における蓄電池列20の電圧Vsの極大値Vp1を算出する機能部である。例えば、図7において、極大値算出部142は、第1関数500に基づいて、開始時刻t0から時刻t1までの範囲における電圧Vsの極大値Vp1と、極大値Vp1となる時刻tpとを算出する。
第2関数算出部143は、蓄電池列20の電圧Vsが直線的に変化する範囲に基づいて直線近似した第2関数500xを算出する機能部である。例えば、図7において、蓄電池列20の電圧Vsが直線的に変化する範囲における任意の時刻t2(≠t1)から時刻t1までの蓄電池列20の電圧Vsの計測結果に基づいて、例えば公知の線形回帰分析を行うことにより、第2関数500xを算出する。
評価値決定部144は、第2関数算出部143によって算出された第2関数500xと極大値算出部142によって算出された極大値Vp1とに基づいて、評価値137を決定する機能部である。
図7に示すように、先ず、評価値決定部144は、蓄電池列20の電圧Vsが極大値Vp1となる時刻tpでの、第2関数500xに基づく蓄電池列20の電圧の推定値Vp2を算出する。次に、評価値決定部144は、極大値Vp1と推定値Vp2との差分(「電圧差Dcf1」とも称する)を算出する。次に、評価値決定部144は、電圧差Dcf1に基づいて評価値137を決定する。例えば、評価値決定部144は、電圧差Dcf1を評価値137として記憶部13に記憶する。
このように、評価値算出部14は、蓄電池列20の充電を開始してから所定の時刻までの蓄電池列20の電圧Vsの極大値Vp1に基づいて、クープデフォート現象の発生の度合を表す評価値(電圧差Dcf1)を算出する。
充電停止条件決定部15は、評価値算出部14によって算出された評価値137(電圧差Dcf1)に基づいて、充電停止条件132を決定する機能部である。具体的に、充電停止条件決定部15は、電圧差Dcf1に基づいて電圧閾値Vthを決定する。
充電停止条件決定部15は、電圧差Dcf1が所定の閾値Thを超えていない場合に、充電中の蓄電池列20においてクープデフォート現象が発生しなかったと判定し、電圧閾値Vthを所定の値Va(一定値)に設定する。
ここで、所定の値Vaは、電圧閾値Vthの初期値として予め記憶部13に記憶されていてもよい。
一方、電圧差Dcf1が所定の閾値Thを超えている場合(例えばDcf1≧Thの場合)には、充電停止条件決定部15は、充電中の蓄電池列20においてクープデフォート現象が発生したと判定し、クープデフォート現象の発生の度合いに応じた電圧閾値Vthを設定する。例えば、充電停止条件決定部15は、下記式(1)に基づいて、電圧閾値Vthを設定する。
上記式(1)において、a(>0)は定数である。また、Vaも定数であり、上述したように、クープデフォート現象が発生しなかったときの電圧閾値Vthの設定値である。
図8A、図8Bは、実施の形態1に係る蓄電システム100による電圧閾値Vthの設定方法を説明するための図である。
実施の形態1に係る蓄電システム100では、上述した充電停止条件決定部15の処理により、定電流充電の停止の判定基準となる電圧閾値は、図8A、図8Bに示すように設定される。
すなわち、図8Aに示すように、クープデフォート現象が発生していない場合には、定電流充電の停止の判定基準となる電圧閾値Vthは“Va(一定値)”に設定され、鉛蓄電池セル200一つ当たりの電圧閾値は“Va/n”となる。
一方、図8Bに示すように、クープデフォート現象が発生した場合には、定電流充電の停止の判定基準となる電圧閾値Vthは“a×Dcf1+Va”に設定され、鉛蓄電池セル200一つ当たりの電圧閾値は“(a×Dcf1+Va)/n”となる。例えば、この場合における鉛蓄電池セル200一つ当たりの電圧閾値は、電圧差Dcf1(評価値137)に応じて、“Va/n”から“Vmax”の間の値に設定される。
次に、実施の形態1に係る蓄電システム100による、蓄電池列20の充電停止条件の決定処理の流れについて説明する。
図9Aは、実施の形態1に係る蓄電システム100による充電制御処理の流れを示すフロー図である。ここでは、蓄電池列20を定電流充電する場合を例にとり、説明する。
蓄電システム100において、制御装置1は、蓄電池列20の充電を開始する(ステップS1)。具体的には、充電制御部17が、通信部11を介してPCS3を制御することにより、蓄電池列20の定電流充電を開始させる。
次に、制御装置1は、充電が開始された蓄電池列20の充電停止条件の決定処理を実行する(ステップS2)。
図9Bは、実施の形態1に係る蓄電システム100による充電停止条件の決定処理(ステップS2)の流れを示すフロー図である。
図9Bに示すように、ステップS2では、先ず、制御装置1は、蓄電池列20の定電流充電を開始してからの経過時間txを計測する(ステップS21)。例えば、計測制御部12が、判定部16からの指示に応じて、定電流充電の開始時刻からの経過時間txを計測し、計測結果131として記憶部13に記憶する。
また、制御装置1は、蓄電池列20の電圧Vsを計測する(ステップS22)。例えば、計測制御部12が、判定部16からの指示に応じて、電圧センサ201,202_1~202_nおよび電流センサ203による計測値を、計測結果131として記憶部13に記憶する。
次に、制御装置1は、蓄電池列20の定電流充電の経過時間txが所定時間t1(図7における時刻t1に相当)に到達したか否か判定する(ステップS23)。経過時間txが所定時間t1に到達していない場合には、電圧Vsの計測を継続する(ステップS22)。
一方、経過時間txが所定時間t1に到達した場合には、制御装置1は、評価値137を算出する(ステップS24)。具体的には、評価値算出部14が、上述した手法により、蓄電池列20の充電を開始してから所定の時刻t1までの蓄電池列20の電圧Vsの極大値Vp1に基づいて、電圧差Dcf1を算出し、クープデフォート現象の発生の度合を表す評価値137として記憶部13に記憶する(図7参照)。
次に、制御装置1は、電圧差Dcf1が所定の閾値Thを超えているか否かを判定する(ステップS25)。電圧差Dcf1が所定の閾値Thを超えていない場合には、充電停止条件決定部15は、充電中の蓄電池列20においてクープデフォート現象が発生しなかったと判定し、電圧閾値Vthを所定の値Va(一定値)に設定し、充電停止条件132として記憶部13に記憶する(ステップS27)。
一方、ステップS25において、電圧差Dcf1が所定の閾値Thを超えている場合(例えばDcf1≧Thの場合)には、充電停止条件決定部15は、充電中の蓄電池列20においてクープデフォート現象が発生したと判定し、クープデフォート現象の発生の度合いに応じた電圧閾値Vthを設定する(ステップS26)。例えば、充電停止条件決定部15は、上述した式(1)に基づいて、電圧閾値Vth(=a×Dcf+Va)を算出し、充電停止条件132として記憶部13に記憶する。
以上の処理手順により、定電流充電の充電停止条件132が決定される。
ステップS2によって充電停止条件132が決定された後、制御装置1は、充電中の蓄電池列20が充電停止条件132を満足しているか否かを判定する(ステップS3)。具体的には、判定部16が、充電中の蓄電池列20の電圧Vsが充電停止条件132としての電圧閾値Vthに到達したか否かを判定する。
ステップS3において、判定部16が充電中の蓄電池列20の電圧Vsが電圧閾値Vthに到達していないと判定した場合には、充電制御部17は、当該蓄電池列20の充電を継続する。一方、ステップS3において、充電中の蓄電池列20の電圧Vsが電圧閾値Vthに到達していないと判定した場合には、充電制御部17は、通信部11を介してPCS3を制御することにより、蓄電池列20の充電を停止する(ステップS4)。
以上、実施の形態1に係る蓄電システム100において、制御装置1は、複数の鉛蓄電池セル200を含む蓄電池列20の充電中に、当該蓄電池列20の電圧Vsに基づいて、当該蓄電池列のクープデフォート現象の発生の度合いを表す評価値137を算出するとともに、算出した評価値137に基づいて蓄電池列の充電を停止するための充電停止条件132を決定する。
上述したように、クープデフォート現象が発生した場合には、充電末期における各鉛蓄電池セル間のセル電圧のばらつきが小さいので、セル電圧が運用上限電圧Vmaxを超過する鉛蓄電池セルが発生し難い傾向がある。この場合には、クープデフォート現象の発生の度合いが大きくなるほど電圧閾値Vthが高くなるように設定することにより、充電末期に、セル電圧が運用上限電圧Vmaxを超過する鉛蓄電池セルを発生させることなく、各鉛蓄電池セル200を満充電状態に十分に近づけることができ、蓄電池列20の利用率を向上させることが可能となる。
一方、クープデフォート現象が発生していない場合には、充電末期における各鉛蓄電池セル間のセル電圧のばらつきが大きくなる傾向がある。この場合には、上述したように、当該蓄電池列の電圧閾値Vthを低い値(Va)に設定する。これにより、充電末期に、セル電圧が運用上限電圧Vmaxを超過する鉛蓄電池セルが発生することを防止することができる。
このように、実施の形態1に係る蓄電システム100によれば、充電停止条件132をクープデフォート現象の発生の度合いに応じて変化させることにより、過電圧となる鉛蓄電池セルの発生を防止し、且つ蓄電システム100の効率的な運用が可能となる。
また、蓄電システム100において、評価値算出部14は、蓄電池列20の充電を開始した開始時刻t0から時刻t1までの当該蓄電池列20の電圧Vsの時間変化を表す第1関数500に基づいて蓄電池列20の電圧Vsの極大値Vp1を算出するとともに、開始時刻t0から時刻t1までの範囲における蓄電池列20の電圧Vsが直線的に変化する範囲に基づいて直線近似した第2関数500xに基づいて、極大値Vp1となる時刻tpにおける蓄電池列20の電圧Vsの推定値Vp2を算出し、極大値Vp1と推定値Vp2との電圧差Dcf1に基づいて評価値137を決定する。
これによれば、クープデフォート現象の発生の度合い(評価値137)をより適切に算出することができるので、蓄電池列20の状態に合った適切な充電停止条件を設定することが可能となる。
≪実施の形態2≫
図10は、実施の形態2に係る蓄電システム100Aの制御装置1Aの機能ブロック構成を示す図である。
実施の形態2に係る蓄電システム100Aは、クープデフォート現象の発生の度合いを表す評価値に基づいて均等充電における定電圧充電の実施時間の上限を決定する点において、実施の形態1に係る蓄電システム100と相違し、その他の点においては実施の形態1に係る蓄電システム100と同様である。
なお、本実施の形態では、制御装置1AがCCCV方式の均等充電を行う場合を例にとり、説明する。
実施の形態2に係る蓄電システム100Aの制御装置1Aは、蓄電池列20の均等充電を行う場合に、クープデフォート現象の発生の度合いを表す評価値を算出する。具体的には、評価値算出部14が、CCCV方式の均等充電における定電流充電開始後に、実施の形態1と同様の手法により、クープデフォート現象の発生の度合いを表す評価値137を含むクープデフォート情報133を生成し、記憶部13Aに記憶する。
充電停止条件決定部15Aは、評価値算出部14によって算出された評価値137(電圧差Dcf1)に基づいて、蓄電池列20の均等充電に係る充電停止条件132Aとしての電圧閾値Vthaと、蓄電池列20の均等充電に係るもう一つの充電停止条件138としての充電上限時間Tuとを決定する。
ここで、電圧閾値Vthaは、CCCV充電方式の均等充電における定電流充電の停止を判定するための基準値である。充電上限時間Tuは、CCCV充電方式の均等充電における定電圧充電の実施時間の上限を規定する基準値である。
具体的に、充電停止条件決定部15Aは、電圧差Dcf1が所定の閾値Thを超えているか否かによって、電圧閾値Vthaおよび充電上限時間Tuの算出方法を変更する。すなわち、電圧差Dcf1が所定の閾値Thを超えていない場合には、充電停止条件決定部15Aは、均等充電中の蓄電池列20においてクープデフォート現象が発生しなかったと判定し、実施の形態1に係る充電停止条件決定部15と同様に、電圧閾値Vthaを所定の値Va(一定値)に設定する。
また、この場合に、充電停止条件決定部15Aは、充電上限時間Tuを所定の値Ta(一定値)に設定する。なお、所定の値Taは、所定の値Vaと同様に、充電上限時間Tuの初期値として予め記憶部13Aに記憶されていてもよい。
一方、電圧差Dcf1が所定の閾値Thを超えている場合(例えばDcf1≧Thの場合)には、充電停止条件決定部15Aは、充電中の蓄電池列20においてクープデフォート現象が発生したと判定し、実施の形態1に係る充電停止条件決定部15と同様に、上記式(1)に基づいて、クープデフォート現象の発生の度合いに応じた電圧閾値Vthaを設定する。
また、この場合に、充電停止条件決定部15Aは、クープデフォート現象の発生の度合いに応じた充電上限時間Tuを設定する。例えば、充電停止条件決定部15Aは、下記式(2)に基づいて、充電上限時間Tuを設定する。
上記式(2)において、c(>0)は定数である。また、Taも定数であり、上述したように、クープデフォート現象が発生しなかったときの電圧閾値Vthの設定値(初期値)である。
このように、充電停止条件決定部15Aは、充電中の蓄電池列20においてクープデフォート現象が発生した場合には、電圧差Dcf1が大きくなるほど電圧閾値Vthaが大きくなるように設定するとともに、電圧差Dcf1が大きくなるほど充電上限時間Tuが小さくなるように設定する。
次に、実施の形態2に係る蓄電システム100Aによる、蓄電池列20の充電停止条件の決定処理の流れについて説明する。
図11Aは、実施の形態2に係る蓄電システム100Aによる充電制御処理の流れを示すフロー図である。
蓄電システム100Aにおいて、制御装置1Aは、蓄電池列20の均等充電を開始する(ステップS1A)。具体的には、充電制御部17が、通信部11を介してPCS3を制御することにより、蓄電池列20の定電流充電を開始させる。
次に、制御装置1は、均等充電に係る充電停止条件の決定処理を実行する(ステップS2A)。
図11Bは、実施の形態2に係る蓄電システム100Aによる充電停止条件の決定処理(ステップS2A)の流れを示すフロー図である。
図11Bに示すように、ステップS2Aでは、制御装置1Aは、実施の形態1に係る制御装置1と同様に、クープデフォート現象の発生の度合いを表す評価値を算出する。すなわち、制御装置1Aは、均等充電における定電流充電を開始したとき、均等充電(定電流充電)の経過時間tの計測を開始するとともに、蓄電池列20の電圧Vsの計測を行い、経過時間tが所定時間t1に到達した場合に、実施の形態1に係る制御装置1と同様の手法により、評価値137を含むクープデフォート情報133を生成して記憶部13Aに記憶する(ステップS21~S24)。
次に、制御装置1Aは、電圧差Dcf1が所定の閾値Thを超えているか否かを判定する(ステップS25A)。電圧差Dcf1が所定の閾値Thを超えていない場合には、充電停止条件決定部15Aは、定電流充電中の蓄電池列20においてクープデフォート現象が発生しなかったと判定し、電圧閾値Vthaを所定の値Va(一定値)に設定し、実行中の定電流充電の充電停止条件132Aとして記憶部13Aに記憶する(ステップS27A)。
また、この場合には、充電停止条件決定部15Aは、この後に行う定電圧充電に係る充電上限時間Tcvを所定の値Ta(一定値)に設定し、充電停止条件138として記憶部13Aに記憶する(ステップS29A)。
一方、ステップS25Aにおいて、電圧差Dcf1が所定の閾値Thを超えている場合(例えばDcf1≧Thの場合)には、充電停止条件決定部15Aは、定電流充電中の蓄電池列20においてクープデフォート現象が発生したと判定し、クープデフォート現象の発生の度合いに応じた電圧閾値Vthaを設定する(ステップS26A)。例えば、充電停止条件決定部15Aは、上述した式(1)に基づいて、電圧閾値Vtha(=a×Dcf1+Va)を算出し、実行中の定電流充電の充電停止条件132Aとして記憶部13Aに記憶する。
また、この場合には、充電停止条件決定部15Aは、クープデフォート現象の発生の度合いに応じた充電上限時間Tuを設定する(ステップS28A)。例えば、充電停止条件決定部15Aは、上述した式(2)に基づいて、充電上限時間Tcv(=-c×Dcf1+Ta)を算出し、この後に行われる定電圧充電の充電停止条件138として記憶部13Aに記憶する。
以上の処理手順により、均等充電における定電流充電の充電停止条件132Aと均等充電における定電圧充電の充電停止条件138がそれぞれ設定される。これにより、蓄電システム100Aにおいて、CCCV方式の均等充電における定電流充電の電圧閾値Vthと、定電圧充電の充電上限時間Tcvとは、クープデフォート現象の発生の度合いに応じて変化する。
図11Aに示すように、ステップS2Aによって充電停止条件132が決定された後、制御装置1Aは、定電流充電中の蓄電池列20が充電停止条件132を満足しているか否かを判定する(ステップS3A)。具体的には、判定部16Aが、定電流充電中の蓄電池列20の電圧Vsが電圧閾値Vthaに到達したか否かを判定する。
判定部16Aによって、定電流充電中の蓄電池列20の電圧Vsが電圧閾値Vthaに到達していないと判定された場合には、充電制御部17が、当該蓄電池列20の定電流充電を継続する。一方、判定部16によって、充電中の蓄電池列20の電圧Vsが電圧閾値Vthaに到達したと判定された場合には、充電制御部17が、当該蓄電池列20の定電流充電を停止して、当該蓄電池列20の定電圧充電を開始するとともに、定電圧充電の経過時間tyの計測を開始する(ステップS4A)。
その後、判定部16Aは、蓄電池列20の定電圧充電の経過時間tyが充電上限時間Tcvに到達したか否かを判定する(ステップS5A)。充電制御部17が判定部16の判定結果に基づいて蓄電池列20の定電圧充電を制御する。具体的には、判定部16Aによって、蓄電池列20の定電圧充電の経過時間tyが充電上限時間Tcvに到達していないと判定された場合に、充電制御部17は、蓄電池列20の充電電流が所定の閾値に到達するまで、当該蓄電池列20の充電を継続する。
一方、判定部16Aによって、蓄電池列20の定電圧充電の経過時間tyが充電上限時間Tcvに到達したと判定された場合に、充電制御部17は、定電圧充電を停止する(ステップS6A)。これにより、蓄電池列20の均等充電が終了する。
以上、実施の形態2に係る蓄電システム100Aにおいて、制御装置1Aは、複数の鉛蓄電池セル200を含む蓄電池列20の均等充電中に、当該蓄電池列20の電圧Vsに基づいて、当該蓄電池列のクープデフォート現象の発生の度合いを表す評価値137を算出し、評価値137に基づいて蓄電池列の充電を停止するための充電停止条件132を決定する。
すなわち、制御装置1Aは、均等充電の定電流充電中にクープデフォート現象が発生した場合には、クープデフォート現象の発生の度合いが大きくなるほど、均等充電の定電流充電における電圧閾値Vthaが高くなるように設定する。
これによれば、実施の形態1に係る蓄電システム100と同様に、均等充電の定電流充電の末期に、セル電圧が運用上限電圧Vmaxを超過する鉛蓄電池セルを発生させることなく、各鉛蓄電池セル200を満充電状態に十分に近づけることができる。一方、クープデフォート現象が発生していない場合には、制御装置1Aは、均等充電の定電流充電における電圧閾値Vthaを低い値(Va)に設定する。これによれば、実施の形態1に係る蓄電システム100と同様に、均等充電の定電流充電の末期に、セル電圧が運用上限電圧Vmaxを超過する鉛蓄電池セルが発生することを防止することができる。
このように、実施の形態2に係る蓄電システム100Aによれば、実施の形態1に係る蓄電システム100Aと同様に、均等充電における定電流充電の電圧閾値Vthaをクープデフォート現象の発生の度合いに応じて変化させることにより、過電圧となる鉛蓄電池セルの発生を防止し、且つ蓄電システム100の効率的な運用が可能となる。
また、上述したように、クープデフォート現象が発生した蓄電池列20の方が、クープデフォート現象が発生していない蓄電池列20よりも早く、均等充電における定電圧充電が終了する傾向がある。
そこで、実施の形態2に係る蓄電システム100Aのように、均等充電開始後にクープデフォート現象が発生した場合には、クープデフォート現象の発生の度合いが大きくなるほど定電圧充電の充電上限時間Tcvが小さくなるように設定する。これによれば、均等充電における定電圧充電によって各鉛蓄電池セル200を満充電状態に十分に近づけた状態で、均等充電をより早く終了させることができる。
また、蓄電システム100Aによれば、クープデフォート現象の発生の度合いを表す評価値137を算出し、算出した評価値137に基づいて充電上限時間Tcvを決定するので、均等充電の開始後に、均等充電の終了時刻を推定することが可能となる。これにより、蓄電システム100の効率的な運用が可能となる。すなわち、均等充電の終了時刻が推定可能になることにより、蓄電池の充放電が可能となる時刻(蓄電池の運用再開時刻)が明確になるので、例えば、ピークカット運転や太陽光発電の余剰電力吸収運転のために、均等充電後に満充電状態から一定量を放電すること等の事前準備等の運用計画を効率的に決定することが可能となる。
≪実施の形態3≫
図12は、実施の形態3に係る蓄電システム100Aの評価値算出部14Bの機能ブロック構成を示す図である。
実施の形態3に係る蓄電システム100Bは、クープデフォート現象の発生の度合いを表す評価値の算出方法において、実施の形態1に係る蓄電システム100と相違し、その他の点においては実施の形態1に係る蓄電システム100と同様である。
図12において、記憶部13Bには、評価値算出部14Bによって算出されるクープデフォート情報133のみが図示されている。
図12に示すように、制御装置1Bにおける評価値算出部14Bは、第1関数算出部141、第2関数算出部143、および評価値決定部144Bを有している。
図13は、実施の形態3に係る蓄電システム100Bによる評価値の算出方法を説明するための図である。
第1関数算出部141は、実施の形態1に係る蓄電システム100と同様に、記憶部13Bに記憶された蓄電池列20の電圧Vsの計測値(計測結果131)に基づいて、蓄電池列20の充電を開始した開始時刻t0から時刻t1までの蓄電池列20の電圧Vsの時間変化を表す第1関数500を算出する。
第2関数算出部143は、実施の形態1に係る蓄電システム100と同様に、蓄電池列20の電圧Vsが直線的に変化する範囲における時刻t2から時刻t1までの蓄電池列20の電圧Vsの計測結果に基づいて直線近似した第2関数500xを算出する。
評価値決定部144Bは、第1関数500と第2関数500xとに基づいて、評価値137Bを決定する機能部である。
図13に示すように、評価値決定部144Bは、第1関数500と第2関数500xとによって囲まれる範囲の面積Dcf2を算出し、当該面積Dcf2に基づいて評価値137Bを決定する。例えば、評価値決定部144Bは、第1関数500と第2関数500xとが交差する時刻tdから時刻t1(またはt2)までの第1関数500の積分値と第2関数500xの積分値との差分を算出し、面積Dcf2とする。評価値決定部144Bは、算出した面積Dcf2を評価値137Bとして記憶部13Bに記憶する。
以上、実施の形態3に係る蓄電システム100Bによれば、蓄電池列20の充電を開始した開始時刻t0から時刻t1までの蓄電池列20の電圧Vsの時間変化を表す第1関数500と、蓄電池列20の電圧Vsが直線的に変化する範囲を直線近似した第2関数500xとによって囲まれる範囲の面積Dcf2を算出し、当該面積Dcf2に基づいて、クープデフォート現象の発生の度合いを表す評価値137Bを算出する。
これによれば、実施の形態1に係る蓄電システム100と同様に、クープデフォート現象の発生の度合い(評価値137B)をより適切に算出することができるので、その時の蓄電池列20の状態に合った適切な充電停止条件を設定することが可能となる。
≪実施の形態の拡張≫
以上、本発明者らによってなされた発明を実施の形態に基づいて具体的に説明したが、本発明はそれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能であることは言うまでもない。
例えば、上記実施の形態では、定電流充電を行う場合の充電停止条件(電圧閾値Vth,Vtha)をクープデフォート現象の発生の度合い(評価値137,137B)に応じて変化させる場合を例示したが、定電力充電を行う場合の充電停止条件(充電停止判定電圧閾値)についても同様に、クープデフォート現象の発生の度合いに応じて変化させてもよい。これによれば、定電力充電においても、過電圧となる鉛蓄電池セルの発生を防止し、且つ蓄電システムの効率的な運用が可能となる。
また、上記実施の形態では、蓄電池モジュール2が一つの蓄電池列20を有している場合を例示したが、これに限られない。蓄電池モジュール2は、並列に接続された複数の蓄電池列20(多並列蓄電池)を有していてもよい。この場合、制御装置1~1Bは、蓄電池列20毎に、上述した充電制御を行う。
また、上記実施の形態では、制御装置1が、監視機能と充放電制御機能とを備えたBMUによって構成される場合を例示したが、これに限られない。例えば、上記監視機能を有するBMUと、BMUからの指示に応じてPSCを駆動して蓄電池列20の充放電を制御するEMS(Energy Management System)とを含んで構成されていてもよい。この場合、例えば、評価値算出部14,14B、充電停止条件決定部15,15A、および判定部16,16AはBMUによって実現され、充電制御部17はEMSによって実現される。
また、上記実施の形態では、電圧差Dcf1および面積Dcf2そのものをクープデフォート現象の発生の度合いを表す評価値137,137Bとする場合を例示したが、これに限れない。すなわち、電圧差Dcf1および面積Dcf2に基づいて評価値137および137Bが決定されていればよく、例えば、電圧差Dcf1および面積Dcf2に所定の定数等を掛けて評価値137,137Bを算出してもよい。
また、上述のフローチャートは、動作を説明するための一例を示すものであって、これに限定されない。すなわち、フローチャートの各図に示したステップは具体例であって、このフローに限定されるものではない。例えば、一部の処理の順番が変更されてもよいし、各処理間に他の処理が挿入されてもよいし、一部の処理が並列に行われてもよい。