JP7245655B2 - サスペンション制御装置 - Google Patents

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Description

本発明は、例えば自動車等の車両に搭載されるサスペンション制御装置に関する。
車両前方の路面状況に応じてサスペンションを制御(プレビュー制御)するサスペンション制御装置が知られている(特許文献1参照)。特許文献1に記載されたサスペンション制御装置では、超音波距離センサによって車体および路面間の距離を検出すると共に、車輪速センサで車輪速を検出し、これらに基づいて路面高さおよび距離を求め、これらに基づいて前輪が段差に乗り上げる時期および段差による路面入力方向に応じたサスペンションリンクの目標ストロークを算出している。
特開平11-42918号公報
ところで、特許文献1に記載されたサスペンション制御装置は、路面高さを一定のサンプリングタイムで取得し、サスペンション制御の入力信号として用いている。この場合、計測した値はデジタル値であり、路面変位の分解能により不連続な信号となる。このため、サスペンション制御の入力に用いる路面変位は、実際の連続した値に対して誤差が生じる。この誤差により、実際の路面変位から期待されるサスペンションの制御量と、計測した路面情報から算出されるサスペンション制御量との間に差が生じ、期待と違うサスペンション制御を行うことで乗り心地性能が低下してしまう課題がある。
本発明の目的は、計測した路面情報を補正して乗り心地性能を向上することができるサスペンション制御装置を提供することにある。
上述した課題を解決するために、本発明によるサスペンション制御装置は、車両の車体側と車輪側との間に設けられ発生する力を調整可能な力発生機構と、車両の前方の路面状態を計測可能な路面状態計測手段と、前記路面状態計測手段により得られた路面変位からプレビュー路面変位を取得するプレビュー路面変位取得手段と、前記プレビュー路面変位取得手段により得られたプレビュー路面変位に基づいて前記力発生機構の発生力を求め、命令信号を出力する力発生機構制御手段と、を備え、前記プレビュー路面変位取得手段は、前記路面状態計測手段により得られた路面変位を量子化する路面入力量子化処理部と、前記路面入力量子化処理部により得られた量子化された路面変位データを補間して補正データを取得する路面変位補正演算部とを備え、前記路面変位補正演算部は、サスペンション特性の共振周波数帯域または前記力発生機構の制御可能な周波数帯域の周波数と路面高さの変化分とを乗算した路面微分値制限から前記路面変位データを補間する補間関数の傾きを制限して前記補正データを取得する。
本発明によれば、計測した路面情報を補正して乗り心地性能を向上することができる。
本発明の実施形態によるサスペンション制御装置を示す全体構成図である。 図1中のコントローラを示す制御ブロック図である。 路面入力量子化処理部による量子化処理を示す流れ図である。 第1の比較例による路面変位データを示す説明図である。 第1の実施形態による路面変位データを示す説明図である。 第1の実施形態による路面変位補正演算部が路面変位データを補間した結果を示す説明図である。 量子化処理、補間処理、遅れ時間補償処理の結果を示す説明図である。 第2の比較例において、補正しない路面変位と減衰力の時間変化を示す特性線図である。 第1の実施形態において、補正したプレビュー路面変位と減衰力の時間変化を示す特性線図である。 第2の比較例および第1の実施形態について、運転席フロア上下PSDの周波数特性を示す特性線図である。 第2の実施形態による路面変位補正演算部が路面変位データを補間した結果を示す説明図である。 ばね上加速度PSDの周波数特性を示す特性線図である。 第3の実施形態による路面変位補正演算部が路面変位データを補間した結果を示す説明図である。 量子化された路面変位データから補間関数を求めた状態を示す説明図である。 補間関数に基づいて補間値を求めた状態を示す説明図である。 第3の実施形態による路面変位補正演算部が路面変位データを補間した結果を示す説明図である。
本発明は、以下に説明する複数の発明を包含する発明群に属する発明であり、以下に、その発明群の実施形態として、第1ないし第4の実施形態について説明するが、そのうち、第2、第3の実施形態が、本出願人が特許請求の範囲に記載した発明に対応するものである。
以下、本発明の実施形態によるサスペンション制御装置を、4輪自動車に適用した場合を例に挙げ、添付図面に従って詳細に説明する。
図1において、車両のボディを構成する車体1の下側には、例えば左,右の前輪と左,右の後輪(以下、総称して車輪2という)が設けられている。これらの車輪2は、タイヤ(図示せず)を含んで構成されている。このタイヤは、路面の細かい凹凸を吸収するばねとして作用する。
車速センサ3は、例えば車輪2(即ち、タイヤ)の回転数を検出し、これを車速(車両の走行速度)情報として後述のコントローラ10に出力する。コントローラ10は、車速センサ3からの車速情報に基づいて、車両速度を取得する。このとき、車速センサ3は、車両速度を検出または推定する車両速度検出手段を構成している。なお、コントローラ10は、車速センサ3からの車速情報から車両速度を取得するものに限らず、例えばCAN(Controller Area Network)等から車両速度を取得してもよい。
サスペンション装置4は、車体1と車輪2との間に介装して設けられている。サスペンション装置4は、懸架ばね5(以下、スプリング5という)と、スプリング5と並列関係をなして車体1と車輪2との間に設けられた減衰力調整式緩衝器(以下、可変ダンパ6という)とにより構成される。なお、図1は、1組のサスペンション装置4を、車体1と車輪2との間に設けた場合を模式的に図示している。4輪自動車の場合、サスペンション装置4は、4つの車輪2と車体1との間に個別に独立して合計4組設けられる。
ここで、サスペンション装置4の可変ダンパ6は、車体1側と車輪2側との間で調整可能な力を発生する力発生機構である。可変ダンパ6は、減衰力調整式の油圧緩衝器を用いて構成されている。可変ダンパ6には、発生減衰力の特性(即ち、減衰力特性)をハードな特性(硬特性)からソフトな特性(軟特性)に連続的に調整するため、減衰力調整バルブ等からなる減衰力可変アクチュエータ7が付設されている。なお、減衰力可変アクチュエータ7は、減衰力特性を必ずしも連続的に調整する構成でなくてもよく、例えば2段階以上の複数段階で減衰力を調整可能なものであってもよい。また、可変ダンパ6は、圧力制御タイプでもよく、流量制御タイプであってもよい。
カメラ装置8は、車体1の前部に設けられた路面状態計測手段を構成している。カメラ装置8は、車両前方の路面状態(具体的には、検出対象の路面までの距離と角度、画面位置と距離を含む)を計測して検出する。カメラ装置8は、例えば特開2011-138244号公報等に記載のように、左,右一対の撮像素子(デジタルカメラ等)を含むステレオカメラによって構成される。カメラ装置8は、左,右一対の画像を撮り込むことにより、撮像対象の物体(車両前方に位置する路面)までの距離と角度を含んだ路面状態を検出することができる。このため、カメラ装置8で撮り込んだ車両前方のプレビュー画像(即ち、路面プレビュー情報)は、路面状態計測手段の検出結果として後述のコントローラ10に出力される。
なお、路面状態計測手段は、ステレオカメラからなるカメラ装置8に限らず、例えばミリ波レーダとモノラルカメラを組み合わせたものでもよく、複数のミリ波レーダ等によって構成されたものでもよく、超音波距離センサでもよい。
コントローラ10は、カメラ装置8により得られた路面変位(検出路面変位)に基づき、サスペンション装置4の可変ダンパ6(力発生機構)で発生すべき力を求め、その命令信号をサスペンション装置4の減衰力可変アクチュエータ7に出力する。コントローラ10は、車両の姿勢制御等を含む挙動制御を行う制御装置として車両の車体1側に搭載されている。コントローラ10は、カメラ装置8からの検出信号(路面情報を含む画像信号)に基づいて、可変ダンパ6で発生すべき減衰力を後述の指令値(プレビュー制御指令値)により可変に制御する。
このため、コントローラ10は、その入力側が車速センサ3およびカメラ装置8に接続され、出力側が可変ダンパ6の減衰力可変アクチュエータ7に接続されている。コントローラ10には、カメラ装置8からカメラ計測路面変位(路面プレビュー情報)が入力される。コントローラ10には、車速センサ3から車両速度が入力される。
また、コントローラ10は、例えばマイクロコンピュータを用いて構成されている。コントローラ10は、ROM,RAM及び/又は不揮発性メモリ等からなるメモリ10Aを有している。メモリ10Aには、可変ダンパ6で発生すべき減衰力を可変に制御するためのプログラムが格納され、さらに、カメラ装置8で撮り込んだ車両前方の路面プレビュー情報等が更新可能に格納される。
図2に示すように、コントローラ10は、プレビュー路面変位取得部11と、指令値演算部15とを有している。プレビュー路面変位取得部11は、カメラ装置8により得られた路面変位からプレビュー路面変位を取得する。プレビュー路面変位取得部11は、路面入力量子化処理部12と、路面変位補正演算部13と、遅れ時間補償部14とを有している。
路面入力量子化処理部12には、カメラ装置8により得られた路面変位(検出路面変位)が入力される。路面入力量子化処理部12は、実際の路面変位(実路面)をカメラ装置8が認識し、デジタル値として処理する。
ここで、図4に示す第1の比較例のように、一般的な量子化を行うと、波形のピーク値において実際の路面変位以上の値を出力してしまう。これは、離散化において入力値が例えば分解能の1/2に設定された閾値以上になるときに、出力値を変化させるためである。この影響として、実際の路面変位と異なる路面変位情報が制御量算出の入力として入力される。そのため、実際の路面変位から期待されるサスペンション制御量と異なる値が制御量として出力され、結果として乗り心地性能が悪化する。
そこで、路面入力量子化処理部12は、図3に示す量子化処理に基づいて検知高さの今回値を求める。量子化処理の内容は、以下に示す通りである。まず、ステップS1では、カメラ装置8から検知高さF(n)が入力される。ステップS2では、数1式により、今回値F(n)と前回値F(n-1)の差分ΔF(n)を求める。
Figure 0007245655000001
ステップS3では、差分ΔF(n)が正の値(ΔF(n)>0)か否かを判定する。差分ΔF(n)が正の値であるときには、ステップS3で「YES」と判定し、ステップS4で、方向ベクトルVを1とする(V=1)。差分ΔF(n)が正の値でないときには、ステップS3で「NO」と判定し、ステップS5に移行する。ステップS5では、差分ΔF(n)が負の値(ΔF(n)<0)か否かを判定する。差分ΔF(n)が負の値であるときには、ステップS5で「YES」と判定し、ステップS6で、方向ベクトルVを-1とする(V=-1)。一方、差分ΔF(n)が負の値でないときには、ステップS5で「NO」と判定し、ステップS7で、方向ベクトルVを0とする(V=0)。ステップS8では、数2式により、この区間の増減のスカラー値ΔPZ(n)を算出する。
Figure 0007245655000002
ステップS9では、スカラー値ΔPZ(n)が分解能以上(ΔPZ(n)≧分解能)か否かを判定する。スカラー値ΔPZ(n)が分解能以上のときは、ステップS9で「YES」と判定し、ステップS10で数3式に基づいて今回値F(n)を前回値F(n-1)と異なる値に更新する。一方、スカラー値ΔPZ(n)が分解能よりも小さいときは、ステップS9で「NO」と判定し、ステップS11で今回値F(n)を前回値F(n-1)と同じ値に保持する。路面入力量子化処理部12は、これらの処理によって、今回値F(n)を繰り返し取得し、今回値F(n)および前回値F(n-1)を含む量子化された路面変位データを取得する。
Figure 0007245655000003
路面入力量子化処理部12が上述した量子化処理を実行した結果、図5に示す路面変位データを得ることができる。このため、例えば路面高さが増加するときに、路面変位データの値が実際の路面高さを超えることがない。これに加え、路面変位の差分が路面高さの分解能以上になった後に、路面高さの値を更新するから、実際の路面変位の差分を超えて路面高さの値が変化することがない。
路面変位補正演算部13は、補間処理を実行し、路面入力量子化処理部12により得られた量子化された路面変位データを補間して補正データを取得する。路面変位補正演算部13は、不連続となる時間t2の今回値F(t2)と時間t1の前回値F(t1)との間を補間する。具体的には、路面変位補正演算部13は、今回値F(t2)と前回値F(t1)との間を、数4式に示す一次の線形補間公式に基づいて線形補間する。これにより、路面変位補正演算部13は、今回値F(t2)と前回値F(t1)との間が連続した補正データを取得する(図6参照)。
Figure 0007245655000004
遅れ時間補償部14は、遅れ時間補償処理を実行し、量子化処理や補間処理で発生した遅れ時間や、車両速度によって変化する計測点から車両のタイヤまでの遅れ時間を補償する。このため、遅れ時間補償部14には、路面変位補正演算部13から補間された補正データが入力されるのに加え、車速センサ3から車両速度が入力される。遅れ時間補償部14は、量子化処理や補間処理によって生じる遅れ時間を予め保持している。これに加え、遅れ時間補償部14は、車両速度に基づいて、車両速度によって変化する計測点から車両のタイヤまでの遅れ時間を算出する。遅れ時間補償部14は、車両のタイヤが計測した路面に到達したときに路面に適合したサスペンション制御が実行されるように、これらの遅れ時間を補償したプレビュー路面変位を出力する。
指令値演算部15は、力発生機構制御手段を構成している。指令値演算部15は、遅れ時間補償部14から出力されるプレビュー路面変位に基づき、可変ダンパ6の発生力(減衰力)を求め、命令信号(プレビュー制御指令値)を出力する。このとき、指令値演算部15は、例えばスカイフック理論に基づいた制御則を用いて、プレビュー路面変位から可変ダンパ6の発生力(減衰力)を求める。具体的には、指令値演算部15は、プレビュー路面変位にプレビュー制御ゲインを乗じたプレビュー制御指令値を出力する。このとき、補正後のプレビュー路面変位が制御ゲインの入力になる。
本実施形態では、指令値演算部15は、スカイフック理論に基づいた制御則を用いているものとした。本発明はこれに限らず、指令値演算部15は、最適化手法を用いて算出したゲイン(BLQ制御)を用いてもよく、ゲインスケジュールされたゲインのMAPを用いてもよく、評価関数を用いて逐次最適な出力を算出する機能ブロックであってもよい。
本実施形態によるサスペンション制御装置は、上述の如き構成を有するもので、次に、その作動について図7ないし図10を参照して説明する。
車体1の前部に設けられたカメラ装置8は、車両前方の路面状態を路面プレビュー情報として撮り込み、コントローラ10に出力する。コントローラ10は、路面入力量子化処理部12、路面変位補正演算部13および遅れ時間補償部14からなるプレビュー路面変位取得部11を備えている。プレビュー路面変位取得部11は、カメラ装置8により得られた路面変位からプレビュー路面変位を取得する。このとき、路面入力量子化処理部12は、カメラ装置8により得られた路面変位を量子化する(図7上段参照)。路面変位補正演算部13は、量子化された路面変位データを補間して補正データを取得する(図7中段参照)。遅れ時間補償部14は、補正データの遅れ時間を補償する(図7下段参照)。指令値演算部15は、遅れ時間補償部14から出力されるプレビュー路面変位に基づき、プレビュー制御指令値を出力する。
ここで、例えば路面変位補正演算部13による路面変位データの補正を行わない場合(第2の比較例)には、不連続な路面変位の情報に基づいて、減衰力が制御される。このため、図8に示すように、路面変位が不連続となる時点で、減衰力が大きく変動し、乗り心地が悪化する傾向がある。
これに対し、本実施形態では、図9に示すように、路面変位補正演算部13によって路面変位データが補正される。このため、コントローラ10は、連続した値に整形されたプレビュー路面変位の情報に基づいて、減衰力を制御する。これにより、本実施形態では、連続した路面変位に合わせて、減衰力が滑らかに変化する。この結果、不必要なサスペンション制御を行わないようにすることができ、乗り心地を向上することができる。
上述した第2の比較例と第1の実施形態について、運転席フロアの上下方向のPSDを計測した。その結果を図10に示す。図10に示すように、第1の実施形態では、第2の比較例に比べて、上下方向の振動が抑制されている。
かくして、本実施形態によれば、サスペンション制御装置は、車両の車体1側と車輪2側との間に設けられ発生する力を調整可能な可変ダンパ6(力発生機構)と、車両の前方の路面状態を計測可能なカメラ装置8(路面状態計測手段)と、カメラ装置8により得られた路面変位からプレビュー路面変位を取得するプレビュー路面変位取得部11と、プレビュー路面変位取得部11により得られたプレビュー路面変位に基づいて可変ダンパ6の発生力を求め、命令信号を出力する指令値演算部15(力発生機構制御手段)と、を備えている。
これに加え、プレビュー路面変位取得部11は、カメラ装置8により得られた路面変位を量子化する路面入力量子化処理部12と、路面入力量子化処理部12により得られた量子化された路面変位データを補間して補正データを取得する路面変位補正演算部13とを備えている。
このとき、路面変位補正演算部13は、路面入力量子化処理部12により得られた量子化された不連続な路面変位データを補間して、連続した補正データを取得する。このため、指令値演算部15は、連続した値に整形されたプレビュー路面変位の情報に基づいて、減衰力を制御する。これにより、不必要なサスペンション制御を行わないようにすることができ、乗り心地を向上することができる。
また、プレビュー路面変位取得部11は、路面変位補正演算部13により得られた補正データの遅れ時間を補償する遅れ時間補償部14を備えている。このとき、遅れ時間補償部14は、量子化処理や補間処理によって生じる遅れ時間と、車両速度によって変化する計測点から車両のタイヤまでの遅れ時間と、を補償する。これにより、車両のタイヤが計測した路面に到達したときに、路面に適合したサスペンション制御を実行することができる。
また、路面入力量子化処理部12は、カメラ装置8により得られた路面変位の差分が路面高さの分解能以上となったときに、路面高さの値を更新して路面変位データを得る。このため、例えば路面高さが増加するときに、路面変位データの値が実際の路面高さを超えることがない。これに加え、路面変位の差分が路面高さの分解能以上になった後に、路面高さの値を更新するから、実際の路面変位の差分を超えて路面高さの値が変化することがない。この結果、不必要なサスペンション制御を抑制することができる。
次に、図1、図2、図11、図12は第2の実施形態を示している。第2の実施形態の特徴は、路面変位補正演算部が、路面入力量子化処理部により得られた量子化された路面変位データを多項式補間によって補間し、補正データを取得することにある。なお、第2の実施形態では、上述した第1の実施形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
第2の実施形態によるコントローラ20は、第1の実施形態によるコントローラ10とほぼ同様に構成されている。図1に示すように、コントローラ20は、例えばマイクロコンピュータを用いて構成されている。コントローラ20は、メモリ20Aを有している。コントローラ20には、カメラ計測路面変位および車両速度が入力される。
図2に示すように、コントローラ20は、プレビュー路面変位取得部11と、指令値演算部15とを有している。プレビュー路面変位取得部11は、路面入力量子化処理部12と、路面変位補正演算部21と、遅れ時間補償部14とを有している。
路面変位補正演算部21は、補間処理を実行し、多項式補間によって路面変位データを補間して補正データを取得する(図11参照)。このとき、例えば、m次(mは2以上の自然数)の方程式でm+1のパラメータを単一の不連続な区間(t1とt2の間)でm+1個の連立方程式で解を導出する。なお、多項式補間に限らず、例えばラグランジュ補間、ニュートンの差分商補間、中心差分法、スプライン補間等のような一般的な補間手法を用いてもよい。
また、補間に用いる関数は、次数が大きければ大きいほど精度は下がり、発散する傾向がある。本手法においては、プレビュー装置やAD変換で生じる時間遅れに起因するサンプリング時間によって、t1とt2の間隔がデータの点数の増加で狭まる程、次数の多いm次式の曲線は振動し易くなり補間の精度が下がる。従って、プレビュー装置(路面入力量子化処理部12)のサンプリング周期の性能によって、補間に用いる次数を変化させてもよい。また、次数が大きいと演算の負荷が大きくなるため、プレビュー装置やサスペンションの制御ECUの処理性能、車両速度によって変更してもよい。
ここで、補間公式の微分値は、サスペンション特性に基づく周波数により制限する。一般的に車両のばね上共振は0.5~3Hzとされ、ばね下共振は10~15Hzとされている(図12参照)。また、サスペンション制御において制御可能な領域は、制御装置に依存するが、0.5~15Hzの周波数帯域のばね上のみ、またはばね上とばね下の制御が可能とされている。このため、数5式により、周波数制限f(例えばf=15Hz)と路面高さの変化分(ΔRoadHeight)から算出される路面微分値制限から補間関数の傾き(d/dt RoadHeight)を制限する。
Figure 0007245655000005
かくして、第2の実施形態でも、第1の実施形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。また、第2の実施形態では、路面変位補正演算部21は、路面入力量子化処理部12により得られた量子化された路面変位データを多項式補間によって補間し、補正データを取得する。このため、補間された補正データを実際の路面変位に近付けることができる。
次に、図1、図2、図13ないし図15は第3の実施形態を示している。第3の実施形態の特徴は、路面変位補正演算部が、フーリエ級数展開と最適化手法を用いたフーリエ級数近似によって、量子化された路面変位データを補間し、補正データを取得することにある。なお、第3の実施形態では、上述した第1の実施形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
第3の実施形態によるコントローラ30は、第1の実施形態によるコントローラ10とほぼ同様に構成されている。図1に示すように、コントローラ30は、例えばマイクロコンピュータを用いて構成されている。コントローラ30は、メモリ30Aを有している。コントローラ30には、カメラ計測路面変位および車両速度が入力される。
図2に示すように、コントローラ30は、プレビュー路面変位取得部11と、指令値演算部15とを有している。プレビュー路面変位取得部11は、路面入力量子化処理部12と、路面変位補正演算部31と、遅れ時間補償部14とを有している。
路面変位補正演算部31は、補間処理を実行し、フーリエ級数展開と最適化手法を用いたフーリエ級数近似によって、補間を実行する(図13参照)。ここで、フーリエ級数展開を行うときには、サスペンションの制御特性を考慮する。フーリエ級数展開は数6式で導出され、級数展開のnは任意の自然数を表し、ωは[2π×f1,2π×f2]で定義された区間の分解能を意味する。f1は下限周波数(例えば0.5Hz)であり、f2は上限周波数(例えば15Hz)である。補間する区間tは時間t1から時間t2の間の区間とする。a,a,bは最適化手法によって値が確定される。
Figure 0007245655000006
t1からt2までの区間におけるフーリエ級数近似に関して、解を一意に定める拘束条件を以下に示す。数7式は、t1とt2における微分値の一致性を拘束するものである。
Figure 0007245655000007
数6式に関して、次数を増やしていくとa,a,bが多くなりそのままでは解を導出することができない。そこで、数8式に示す評価関数を最小にする最適値導出手法を用いることで、最適値を導出することが可能となる。なお、数8式のx,Zは、数9式に示す通りである。
Figure 0007245655000008
Figure 0007245655000009
次に、ここまでに述べた手法を用いて、補値を算出する方法に関して説明する。認識路面から補関数を任意の時間間隔で導出する。このとき、サンプリング時間を増やすことで、サスペンション制御に用いるプレビュー路面入力を滑らかにすることができる。この手法は、図14および図15に示すように、以下の3工程で実現される。第1工程では、量子化された路面変位(認識路面)が入力される(図14中の白点)。第2工程では、サンプリング周期よりも短い任意の時間間隔について、数6式から数9式に基づいて、補間関数(例えば、f1,f2,f3)を算出する(図14中の補間曲線)。第3工程では、任意の時間間隔が切り替わる時点について、補間値を算出する(図15中の黒点)。図15は、量子化された路面変位の値が変化する間に2つの補間値を算出した場合を示している。

かくして、第3の実施形態でも、第1および第2の実施形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。
次に、図1、図2、図16は第4の実施形態を示している。第4の実施形態の特徴は、補間する時間区間毎にサンプリング周波数が異なることにある。なお、第4の実施形態では、上述した第1の実施形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
第4の実施形態によるコントローラ40は、第1の実施形態によるコントローラ10とほぼ同様に構成されている。図1に示すように、コントローラ40は、例えばマイクロコンピュータを用いて構成されている。コントローラ40は、メモリ40Aを有している。コントローラ40には、カメラ計測路面変位および車両速度が入力される。
図2に示すように、コントローラ40は、プレビュー路面変位取得部11と、指令値演算部15とを有している。プレビュー路面変位取得部11は、路面入力量子化処理部12と、路面変位補正演算部41と、遅れ時間補償部14とを有している。
路面変位補正演算部41は、補間処理を実行し、例えば第3の実施形態による路面変位補正演算部31と同様に、フーリエ級数展開と最適化手法を用いたフーリエ級数近似によって、補間を実行する。但し、路面変位補正演算部41は、補間関数f(t)を用いて各区間の路面変位のサンプリング数を、必要に応じて変化させる(図16参照)。具体的には、路面変位の差分が大きい区間では、路面変位の差分が小さい区間に比べて、サンプリング数を増加させる。図16は、t1からt2までの区間で、2つの補正値を取得し、t2からt3までの区間で、4つの補正値を取得した場合を示している。
かくして、第4の実施形態でも、第1および第3の実施形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。
前記各実施形態では、車体1側と車輪2側との間で調整可能な力を発生する力発生機構を、減衰力調整式の油圧緩衝器からなる可変ダンパ6により構成する場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば力発生機構を液圧緩衝器の他に、エアサスペンション、スタビライザ(キネサス)、電磁サスペンション等により構成してもよい。
前記各実施形態では、4輪自動車に用いるサスペンション制御装置を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば2輪、3輪自動車、または作業車両、運搬車両であるトラック、バス等にも適用できるものである。
前記各実施の形態は例示であり、異なる実施の形態で示した構成の部分的な置換または組み合わせが可能であることは言うまでもない。
次に、上記実施形態に含まれるサスペンション制御装置として、例えば、以下に述べる態様のものが考えられる。
第1の態様のサスペンション制御装置は、車両の車体側と車輪側との間に設けられ発生する力を調整可能な力発生機構と、車両の前方の路面状態を計測可能な路面状態計測手段と、前記路面状態計測手段により得られた路面変位からプレビュー路面変位を取得するプレビュー路面変位取得手段と、前記プレビュー路面変位取得手段により得られたプレビュー路面変位に基づいて前記力発生機構の発生力を求め、命令信号を出力する力発生機構制御手段と、を備え、前記プレビュー路面変位取得手段は、前記路面状態計測手段により得られた路面変位を量子化する路面入力量子化処理部と、前記路面入力量子化処理部により得られた量子化された路面変位データを補間して補正データを取得する路面変位補正演算部とを備えている。
第2の態様としては、第1の態様において、前記プレビュー路面変位取得手段は、前記路面変位補正演算部により得られた補正データの遅れ時間を補償する遅れ時間補償部を備えたことを特徴としている。
第3の態様としては、第1または第2の態様において、前記路面入力量子化処理部は、前記路面状態計測手段により得られた路面変位の差分が路面高さの分解能以上となったときに、路面高さの値を更新して前記路面変位データを得ることを特徴としている。
1 車体
2 車輪
3 車速センサ(車両速度検出手段)
4 サスペンション装置
6 可変ダンパ(力発生機構)
7 減衰力可変アクチュエータ
8 カメラ装置(路面状態計測手段)
10,20,30,40 コントローラ
11 プレビュー路面変位取得部(プレビュー路面変位取得手段)
12 路面入力量子化処理部
13,21,31,41 路面変位補正演算部
14 遅れ時間補償部
15 指令値演算部

Claims (3)

  1. 車両の車体側と車輪側との間に設けられ発生する力を調整可能な力発生機構と、
    車両の前方の路面状態を計測可能な路面状態計測手段と、
    前記路面状態計測手段により得られた路面変位からプレビュー路面変位を取得するプレビュー路面変位取得手段と、
    前記プレビュー路面変位取得手段により得られたプレビュー路面変位に基づいて前記力発生機構の発生力を求め、命令信号を出力する力発生機構制御手段と、を備え、
    前記プレビュー路面変位取得手段は、前記路面状態計測手段により得られた路面変位を量子化する路面入力量子化処理部と、前記路面入力量子化処理部により得られた量子化された路面変位データを補間して補正データを取得する路面変位補正演算部とを備え、
    前記路面変位補正演算部は、サスペンション特性の共振周波数帯域または前記力発生機構の制御可能な周波数帯域の周波数と路面高さの変化分とを乗算した路面微分値制限から前記路面変位データを補間する補間関数の傾きを制限して前記補正データを取得するサスペンション制御装置。
  2. 前記プレビュー路面変位取得手段は、前記路面変位補正演算部により得られた補正データの遅れ時間を補償する遅れ時間補償部を備えたことを特徴とする請求項1に記載のサスペンション制御装置。
  3. 前記路面変位補正演算部は、前記路面変位データのサンプリング周期よりも短い任意の時間間隔について前記補間関数を算出し、前記路面変位データの任意の時間間隔が切り替わる時点について、補間値を算出することを特徴とする請求項1または2に記載のサスペンション制御装置。
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