JP7244824B2 - 眼鏡用レンズの設計方法、設計装置、及びプログラム - Google Patents
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本発明の第1の態様によれば、前面側の屈折面と後面側の屈折面との少なくとも何れか一面が非球面で構成された眼鏡用レンズの設計方法は、複数の光学要素それぞれのパラメータの値を決定して眼球モデルを構築する眼球モデル構築ステップと、前記眼球モデルの視軸に対し所定角度傾けて光線を入射させ、当該眼球モデルの網膜周辺部での周辺収差を光学シミュレーションにより求める収差取得ステップと、前記眼球モデルの前方に眼鏡用レンズを配置して前記光学シミュレーションを行い、前記周辺収差を低減させる方向に作用する非球面係数値を求める非球面係数値算出ステップと、前記非球面係数値に基づいて、前記眼鏡用レンズの非球面形状を決定する非球面形状決定ステップと、を有する。
このようにすることで、網膜周辺部での収差を低減して、網膜上での結像状態を改善させることが可能な眼鏡用レンズを設計することができる。
このようにすることで、装用者が眼内レンズを使用しているか否かに応じて、適切な眼球モデルを構築することができる。これにより、網膜周辺部での収差を更に精度よく低減することが可能な眼鏡用レンズを設計することができる。
このようにすることで、装用者がコンタクトレンズを使用しているか否かに応じて、適切な眼球モデルを構築することができる。これにより、網膜周辺部での収差を更に精度よく低減することが可能な眼鏡用レンズを設計することができる。
このようにすることで、眼球モデルの構築を容易且つ迅速に行うことができる。
このようにすることで、装用者の眼球により近似した眼球モデルを構築することができる。これにより、網膜周辺部での収差を更に精度よく低減することが可能な眼鏡用レンズを設計することができる。
次に、本実施形態に係る眼鏡用レンズ1(以下、単に「レンズ1」とも記載する。)について、図1を参照しながら説明する。なお、以下の説明において、レンズ1を用いた眼鏡を装用した装用者にとっての前後、左右、及び上下を、それぞれ当該レンズ1における前後、左右、及び上下とする。
図1において、レンズ1は、装用者の網膜周辺部での収差を低減可能な単焦点レンズである。図1(b)に示すように、レンズ1は、後面2と前面3とを有している。レンズ1は、後面2が以下の式(1)で定義される凹面とされ、前面3が以下の式(2)で定義される凸面とされる。なお、レンズ1の光学中心(後面2では基点O1、前面3では基点O2)を通る前後方向の軸をz軸とし、レンズ1の後方に向かう方向をz軸の正方向とする。また、z軸はレンズ1の光軸Pに一致する。
z=r2/(R2+(R2 2-Kr2)1/2) …(2)
ただし、
A=K′/R1
B=1+ΣUns2n
C=s2/R1+ΣVns2n+2
s2=r2+z2である。
C=s2/R1+V1s4+V2s6+V3s8 …(6)
次に、眼鏡用レンズ1の設計方法について、図2を参照しながら詳細に説明する。
図2は、本発明の一実施形態に係る設計方法における処理の一例を示すフローチャートである。
図3は、本発明の一実施形態に係る眼球モデル構築ステップにおける処理の一例を示すフローチャートである。
ここで、図3を参照しながら眼球モデル構築ステップにおける具体的な処理の流れについて説明する。
眼球モデルの構築にあたっては、複数の光学要素それぞれの形状、屈折率、及び各要素間の距離等のパラメータの値を決定する必要がある。例えば、これらパラメータの値として、生体計測データからモデル化された模型眼の値を用いることができる。この模型眼は、例えば、公知の模型眼である、Gullstrand模型眼、Liou-Brennan模型眼、LeGrand模型眼、Walker模型眼、Kooijman模型眼、Navarro模型眼等である。これら模型眼で用いられる光学要素及び各種パラメータの値は、Handbook of Optical Systems, Vol. 4: Survey of Optical Instruments等で参照することができる。
図4では、図中の上側が装用者の耳側であり、下側が鼻側である。
図5(a)は、網膜18の中心部における収差を求める場合の説明図である。光学シミュレーションでは、図示を省略した物体面からの光線24を、視軸20と平行に、眼球モデル10に入射させ、この光線24を光線追跡し、網膜18の略中心部での光線到達位置をプロットしスポットダイヤグラムを求める。ここでは光線24として、例えば、波長0.588μmの分割光線24aを用いる。部分拡大図Aで示すように、各分割光線24aは、径方向に等間隔とされた同心仮想円上において、周方向に等間隔に位置するように照射される。したがって、光線中心から径方向外方側に向かうほど、同心仮想円上に配置される分割光線24aの数が多くなる(図5の部分拡大図Aの例では、光線中心から6、12、18、24…と6の倍数の数の分割光線24aが各同心円上に位置する。)。
図7は、本発明の一実施形態に係る非球面係数値算出ステップの詳細を説明するための第2の図であり、(a)は網膜中心部における収差を求める場合の説明図、(b)は網膜周辺部における収差を求める場合の説明図である。
まず、図6に示すように、眼球モデル10の前方側(角膜12の前面12a)から所定距離だけ離間した位置にレンズ1を配置する。このとき、レンズ1の光軸Pが眼球モデル10の視軸20と一致するように、レンズ1を配置する。同図において、L7はレンズ1の前面3と後面2との距離(すなわちレンズ中心厚)、L8はレンズ1の後面2と眼球モデル10の角膜12の前面12aとの距離である。
実施例1は、単焦点の眼内レンズ16を含む眼球モデル10を構築し、この眼球モデル10の有する周辺収差を低減することが可能な単焦点レンズ(眼鏡用レンズ1)を設計した例である。本実施例における眼球モデル10は、Liou-Brennan模型眼のデータに、装用者の瞳孔および眼内レンズ16に関するデータを測定して追加したものである。本実施例の眼球モデル10の構成は、図4に示す眼球モデル10と同じである。
図8(a)及び図8(b)は、上述の収差取得ステップ(図2のステップS3)により、光学シミュレーションにより求めた眼球モデル10における網膜18の中心部及び周辺部におけるスポットダイヤグラムである。図8(b)の例では、光線24を眼球モデル10の視軸20に対し、31度傾けて入射させた場合に得られた網膜18の周辺部(中心部よりも耳側の周辺部)のスポットダイヤグラムの図である。図8(a)、及び図8(b)に示すように、RMS半径の値は、中心部が5.775μmであるのに対し、周辺部が42.814μmと大きく、眼球モデル10は周辺部での収差が特に大きいことが分かる。
A8:5.338E-11
A10:-8.440E-13
A12:1.574E-15
ここで、上述のように設計したレンズ1の有無によるスポットダイヤグラムのRMS半径を比較する。レンズ1が無い場合、図8(a)及び図8(b)に示すように、RMS半径は中心部が5.775μm、周辺部が42.814μmであった。これに対し、レンズ1を前方に配置した場合には、図9(a)及び図9(b)に示すように、RMS半径は中心部が5.821μm、周辺部が32.410μmであった。即ち、本実施例のレンズ1を配置することで、網膜18の周辺部の収差を、RMS半径で10.404μm低減することができた。人は0.2μm程度の収差の違いを見分けることができるとの報告もあることを考慮すれば、眼内レンズ16を含んで構成された眼球モデル10に対して、大きな改善効果があることが分かる。
実施例2は、水晶体を含む眼球モデルを構築し、この眼球モデルの有する周辺収差を低減することが可能な単焦点レンズ(眼鏡用レンズ)を設計した例である。
図10に示すように、本実施例に係る眼球モデル10Bは、角膜12、瞳孔14、水晶体31、及び網膜18で構成されている。また、水晶体31は、水晶体前面31a、及び水晶体後面31bを有している。
ただし、r2=x2+y2である。
図11(a)及び図11(b)は、上述の収差取得ステップ(図2のステップS3)により、光学シミュレーションにより求めた眼球モデル10Bにおける網膜18の中心部及び周辺部におけるスポットダイヤグラムである。図11(b)の例では、光線24を眼球モデル10Bの視軸20に対し、31度傾けて入射させた場合に得られた網膜18の周辺部(中心部よりも耳側の周辺部)のスポットダイヤグラムの図である。図11(a)、及び図11(b)に示すように、RMS半径の値は、中心部が5.618μmであるのに対し、周辺部が26.155μmと大きく、水晶体31を備えた眼球モデル10Bであっても周辺部での収差が大きいことが分かる。
ことが可能なレンズ1B(図示省略)を本実施形態の設計方法に従って設計した。なお、本実施例で設計するレンズ1Bは、レンズ度数がS0.00Dで後面2が非球面の屈折面で構成された単焦点レンズであり、上述の式(4)を用いて後面2の形状を定義している。眼球モデル10Bおよびレンズ1Bのパラメータの値は下記表5の通りである。
U3:-3.883E-07
V2:-1.279E-07
V3:-3.962E-09
ここで、上述のように設計したレンズ1Bの有無によるスポットダイヤグラムのRMS半径を比較する。レンズ1Bが無い場合、図11(a)及び図11(b)に示すように、RMS半径は中心部が5.618μm、周辺部が26.115μmであった。これに対し、レンズ1Bを前方に配置した場合、図12(a)及び図12(b)に示すように、RMS半径は中心部が5.582μm、周辺部が21.526μmであった。即ち、本実施例の非球面のレンズ1Bを配置することで、網膜18の周辺部の収差を、RMS半径で4.589μm低減することができた。
実施例3は、コンタクトレンズを含む眼球モデルを構築し、この眼球モデルの有する周辺収差を低減する単焦点レンズ(眼鏡用レンズ)を設計した例である。
図13に示すように、本実施例に係る眼球モデル10Cは、角膜12、瞳孔14、眼内レンズ16、網膜18に加え、更に角膜12の前面12a側にコンタクトレンズ33が配置されている。また、コンタクトレンズ33は、コンタクトレンズ前面33a、及びコンタクトレンズ後面33bを有している。
図14(a)及び図14(b)は、上述の収差取得ステップ(図2のステップS3)により、光学シミュレーションにより求めた眼球モデル10Cにおける網膜18の中心部及び周辺部におけるスポットダイヤグラムである。図14(b)の例では、光線24を眼球モデル10Bの視軸20に対し、31度傾けて入射させた場合に得られた網膜18の周辺部(中心部よりも耳側の周辺部)のスポットダイヤグラムの図である。図14(a)、及び図14(b)に示すように、RMS半径の値は、中心部が5.421μmであるのに対し、周辺部が41.282μmと大きく、周辺部での収差が特に大きいことが分かる。
ことが可能なレンズ1C(図示省略)を本実施形態の設計方法に従って設計した。なお設
計するレンズ1Cは、レンズ度数がS0.00Dで、後面2が上述の式(1)で表された非球面の屈折面で構成された単焦点レンズである。眼球モデル10Cおよびレンズ1Cのパラメータの値は下記表7の通りである。
A8:3.356E-09
A10:-3.356E-11
A12:1.105E-13
ここで、上述のように設計したレンズ1Cの有無によるスポットダイヤグラムのRMS半径を比較する。レンズ1Cが無い場合、図14(a)及び図14(b)に示すように、RMS半径は中心部が5.421μm、周辺部が41.282μmであった。これに対し、レンズ1Cを前方に配置した場合には、図13(a)及び図13(b)に示すように、RMS半径は中心部が5.428μm、周辺部が27.458μmであった。即ち、本例の非球面のレンズ1Cを配置することで、網膜18の周辺部の収差を、RMS半径で13.824μm低減することができた。
また、上述の設計方法を利用した設計システム1000について説明する。
図16は、本発明の一実施形態に係る眼鏡用レンズの設計システムの全体構成を示す図である。
図16に示すように、設計システム1000は、設計装置100と、測定装置200とを備えている。
設計装置100のCPU110の各部は、上述の眼鏡用レンズ1の設計方法の各ステップを実行する。
以上のように、本実施形態に係る眼鏡用レンズ1の設計方法によれば、複数の光学要素それぞれのパラメータの値を決定して眼球モデル10を構築する眼球モデル構築ステップと、眼球モデル10の視軸20に対し所定角度θ傾けて光線24を入射させ、当該眼球モデル10の網膜周辺部での周辺収差を光学シミュレーションにより求める収差取得ステップと、眼球モデル10の前方に眼鏡用レンズ1を配置して光学シミュレーションを行い、周辺収差を低減させる方向に作用する非球面係数値を求める非球面係数値算出ステップと、非球面係数値に基づいて、眼鏡用レンズ1の非球面形状を決定する非球面形状決定ステップと、を有する。
このようにすることで、網膜周辺部での収差を低減して、網膜上での結像状態を改善させることが可能な眼鏡用レンズを設計することができる。
このようにすることで、装用者が眼内レンズを使用しているか否かに応じて、適切な眼球モデル10を構築することができる。これにより、網膜周辺部での収差を更に精度よく低減することが可能な眼鏡用レンズを設計することができる。
このようにすることで、装用者がコンタクトレンズを使用しているか否かに応じて、適切な眼球モデル10を構築することができる。これにより、網膜周辺部での収差を更に精度よく低減することが可能な眼鏡用レンズを設計することができる。
このようにすることで、眼球モデル10の構築を容易且つ迅速に行うことができる。
このようにすることで、装用者の眼球により近似した眼球モデル10を構築することができる。これにより、網膜周辺部での収差を更に精度よく低減することが可能な眼鏡用レンズを設計することができる。
このようにすることで、装用者の個人差が大きく表れる光学要素については測定値を用いてパラメータの値を決定することができる。これにより、模型眼の値を利用して眼球モデル10の構築を簡易化しつつ、装用者の眼球により近似した眼球モデル10を構築することができる。
2 後面
3 前面
10、10B、10C 眼球モデル
12 角膜
14 瞳孔
16 眼内レンズ
18 網膜
31 水晶体
33 コンタクトレンズ
1000 設計システム
100 設計装置
110 CPU
111 眼球モデル構築部
112 収差取得部
113 非球面係数値算出部
114 形状決定部
120 メモリ
130 ストレージ
140 インターフェース
200 測定装置
Claims (7)
- 前面側の屈折面と後面側の屈折面との少なくとも何れか一面が非球面で構成された眼鏡用レンズの設計方法であって、
複数の光学要素それぞれのパラメータの値を決定して眼球モデルを構築する眼球モデル構築ステップと、
前記眼球モデルの視軸に対し所定角度傾けて光線を入射させ、当該眼球モデルの網膜周辺部での補正前周辺収差を光学シミュレーションにより求める収差取得ステップと、
前記眼球モデルの前方に眼鏡用レンズを配置して、前記前面側の屈折面又は前記後面側の屈折面に付加する非球面成分を示す非球面係数値を変えながら複数回の前記光学シミュレーションを行って補正後周辺収差を求め、前記補正前周辺収差よりも補正後周辺収差が所定値以上低減する非球面係数値を求める非球面係数値算出ステップと、
前記補正前周辺収差よりも所定値以上低減する前記非球面係数値に基づいて、前記眼鏡用レンズの非球面形状を決定する非球面形状決定ステップと、
を有する眼鏡用レンズの設計方法。 - 前記眼球モデル構築ステップにおいて、前記光学要素の一つとして水晶体又は眼内レンズを選択してパラメータの値を決定する、
請求項1に記載の眼鏡用レンズの設計方法。 - 前記眼球モデル構築ステップにおいて、前記光学要素の一つとしてコンタクトレンズを更に選択してパラメータの値を決定する、
請求項2に記載の眼鏡用レンズの設計方法。 - 前記眼球モデル構築ステップにおいて、生体計測データからモデル化された模型眼の値を用いて複数の前記光学要素のパラメータを決定する、
請求項1から3の何れか一項に記載の眼鏡用レンズの設計方法。 - 前記眼球モデル構築ステップにおいて、装用者の眼球を測定して得られた値を用いて複数の前記光学要素のパラメータを決定する、
請求項1から4の何れか一項に記載の眼鏡用レンズの設計方法。 - 前面側の屈折面と後面側の屈折面との少なくとも何れか一面が非球面で構成された眼鏡用レンズの設計装置であって、
複数の光学要素それぞれのパラメータの値を決定して眼球モデルを構築する眼球モデル構築部と、
前記眼球モデルの視軸に対し所定角度傾けて光線を入射させ、当該眼球モデルの網膜周辺部での補正前周辺収差を光学シミュレーションにより求める収差取得部と、
前記眼球モデルの前方に眼鏡用レンズを配置して、前記前面側の屈折面又は前記後面側の屈折面に付加する非球面成分を示す非球面係数値を変えながら複数回の前記光学シミュレーションを行って補正後周辺収差を求め、前記補正前周辺収差よりも補正後周辺収差が所定値以上低減する非球面係数値を求める非球面係数値算出部と、
前記補正前周辺収差よりも所定値以上低減する前記非球面係数値に基づいて、前記眼鏡用レンズの非球面形状を決定する非球面形状決定部と、
を備える眼鏡用レンズの設計装置。 - 前面側の屈折面と後面側の屈折面との少なくとも何れか一面が非球面で構成された眼鏡用レンズの設計装置のコンピュータに、
複数の光学要素それぞれのパラメータの値を決定して眼球モデルを構築する眼球モデル構築ステップと、
前記眼球モデルの視軸に対し所定角度傾けて光線を入射させ、当該眼球モデルの網膜周辺部での補正前周辺収差を光学シミュレーションにより求める収差取得ステップと、
前記眼球モデルの前方に眼鏡用レンズを配置して、前記前面側の屈折面又は前記後面側の屈折面に付加する非球面成分を示す非球面係数値を変えながら複数回の前記光学シミュレーションを行って補正後周辺収差を求め、前記補正前周辺収差よりも補正後周辺収差が所定値以上低減する非球面係数値を求める非球面係数値算出ステップと、
前記補正前周辺収差よりも所定値以上低減する前記非球面係数値に基づいて、前記眼鏡用レンズの非球面形状を決定する非球面形状決定ステップと、
を実行させるプログラム。
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