JP7243228B2 - 無機繊維シート及び無機繊維シートの製造方法 - Google Patents
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よって従来の無機繊維シートを耐熱用途・難燃用途に使用する場合には、難燃剤を含侵したり、あらかじめ焼成して有機分を焼き飛ばしたりする必要があった。
しかしながら難燃剤を含浸した場合、本来必要な機能材や填料の含浸量が減少することとなる。また、焼成を行う場合には作業工程の増加やエネルギーコストの増加を招くこととなる。
[1]無機繊維51~99質量%と含水ケイ酸塩鉱物1~49質量%とを含有する無機繊維シートであり、前記無機繊維シートを200°C雰囲気で1時間処理した後の引張強度が処理前の前記無機繊維シートの引張強度の0.75以上であり、前記無機繊維シートを500°C雰囲気で2時間焼成した後の引張強度が処理前の前記無機繊維シートの引張強度の0.70以上である耐熱無機繊維シート。
[2]坪量が5~350g/m2である、[1]に記載の耐熱無機繊維シート。
[3]灰分が95%以上である、[1]または[2]に記載の耐熱無機繊維シート。
[4]無機繊維を含むスラリーAを調整する工程、含水ケイ酸塩鉱物を含有するスラリーBを調整する工程、スラリーAを用いて湿式抄紙法によりシートを得る工程と、前記シートの表面にスラリーBを塗布する工程を有する、耐熱無機繊維シートの製造方法。
〔無機繊維シート〕
無機繊維51~99質量%と含水ケイ酸塩鉱物1~49質量%とを含有し、より好ましくは無機繊維60~95質量%と含水ケイ酸塩鉱物5~40質量%とを含有する。
無機繊維シート中の無機繊維の含有量を51質量%以上とすることでシートに良好なクッション性、断熱性、機能材担持性を付与することができ、99質量%以下とすることで含水ケイ酸塩鉱物による無機繊維の結着を確保し無機繊維シートの強度を保つことができる。
無機繊維シート中の含水ケイ酸塩鉱物の含有量を1質量%以上とすることで無機繊維の結着を確保し無機繊維シートの強度を保つことができ、49質量%以下とすることでシートに良好なクッション性、断熱性、機能材担持性を付与することができる。
ガラス繊維は、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
アスペクト比を上記範囲内とすることによって、無機繊維同士が十分な交絡し、後述する含水ケイ酸塩鉱物の働きと合わせて十分な無機繊維シートの強度が得られる。
また、無機繊維シートの目開きが大きくなりすぎず、機能材を充分に担持でき、性能の優れる耐熱材を製造できる。無機繊維は、異なる繊維径のものを併用してもよい。繊維径の平均値は、100本の繊維の繊維径を顕微鏡観察により測定し、算出する。
β型セピオライトは、長繊維で明瞭な繊維状形態を示すα型セピオライトに比べ、短繊維であるため、塗工により無機繊維同士が交絡した紙匹の内部まで侵入して無機繊維シート内の無機繊維同士を均一に結着することができる。
本明細書において、含水ケイ酸塩鉱物(C)の吸油量は、JIS K 5101に準拠して求めた値である。
熱硬化型樹脂としては、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、熱硬化性ポリイミド樹脂などが挙げられる。熱硬化型樹脂は1種以上を使用できる。
本発明の無機繊維シートの製造方法は、ガラス繊維および生体溶解性無機繊維からなる群より選ばれる1種類以上の無機繊維を含むスラリーAを調整する工程(i)、含水ケイ酸塩鉱物を含有するスラリーBを調整する工程(ii)、スラリーAを用いて湿式抄紙法によりシートを得る工程(iii)と、前記シートの表面にスラリーBを塗布する工程(iv)を有する。
無機繊維シートの製造に用いられるスラリーAは、ガラス繊維および生体溶解性無機繊維からなる群より選ばれる1種以上の無機繊維を含有する。スラリーAに用いる無機繊維の種類、アスペクト比、繊維径、繊維長は、上記本発明の無機繊維シートが含有する無機繊維として説明した通りである。
スラリーAに含水ケイ酸塩鉱物又は他の無機バインダー成分を添加する場合、製造後の無機繊維シートに含まれる含水ケイ酸塩鉱物の全質量中、10質量%以下となるように調整することが好ましく、0質量%となるように調整することがより好ましい。
無機繊維シートの製造に用いられるスラリーBは、含水ケイ酸塩鉱物を分散媒に分散させたものである。分散媒は水であることが好ましい。スラリーBの濃度は含水ケイ酸塩鉱物が均一に分散できる濃度であって、工程(iii)においてシートに付着する含水ケイ酸塩鉱物の量が、製造完了後の無機繊維シートの1~49質量%の範囲の所望の値となるように調整される。スラリーBには必要に応じて分散剤、消泡剤、粘度調整剤、濡れ剤、架橋剤、シランカップリング剤、pH調整剤、着色剤などを添加することができる。
スラリーAを用いて湿式抄紙法によりシートを得る工程で用いる湿式抄紙法は、公知の抄紙機で抄紙する方法を用いることができる。抄紙機としては、円網抄紙機、傾斜型抄紙機、長網抄紙機、短網抄紙機が挙げられ、これら抄紙機の同種または異種を組み合わせて多層抄紙を行ってもよい。
工程(iii)で得られたシートに対し、表面にスラリーBを塗布する。
スラリーBを塗布する方法は、スプレーコーター、カーテンコーター、バーコーター、ロールコーター、ブレードコーター等が挙げられる。
スラリーBの塗布は、抄紙工程内で行っても、抄紙後別途コーターで行ってもよい。
有機バインダー成分、無機バインダー成分としては、工程(i)において例示した有機バインダー成分、含水ケイ酸塩鉱物以外の無機バインダー成分を使用できる。充填剤としても、工程(i)において例示した充填剤を使用できる。
また、これらの各成分をスラリーBに添加するのではなく、これらの成分のうちの少なくとも1種を含むスラリーを別途調製して、工程(iv)の前または後に塗布してもよい。
最終的に得られる無機繊維シート中の各含有量が、すでに上述した範囲内となるように、
その使用量を調整することが好ましい。
工程(iv)の後、湿潤状態の無機繊維シートは、公知の抄紙機で使用される方法によって脱水および乾燥を行うことが好ましい。脱水および乾燥の方法に特に制限はなく、たとえばヤンキードライヤー、シリンダードライヤー、エアドライヤー、赤外線ドライヤー等の公知のドライヤーを用いることができる。乾燥温度は特に制限されないが、通常100°C~180°C程度である。
チョップドストランドガラス繊維(1)(径6μm、長さ10mm)を水に分散することにより、スラリーA1(固形分濃度:0.2質量%)を得た。ついで、傾斜型抄紙機を用いて湿式抄紙法にて、スラリーAを抄紙し、湿潤ウェブ(紙匹)を形成した。
該湿潤ウェブに、β型セピオライトを水に分散させたスラリーB1を、得られる無機繊維シート100質量%中のβ型セピオライトの含有量が20質量%となるようにスプレー塗布し、乾燥し、表1に示す坪量、厚み、灰分の無機繊維シートを得た。
得られた無機繊維シートは前記傾斜型抄紙機の流れ方向に無機繊維が配向していた。
なお、β型セピオライトの含有量は、β型セピオライトを水に分散させたスラリーを付着させる前後の不織布の質量差から求められる。
実施例1と坪量を変更した他は同様にして、表1に示す坪量、厚み、灰分の無機繊維シートを得た。
チョップドストランドガラス繊維(2)(径9μm、長さ:12mm)およびPVAバインダー繊維を水に分散して、スラリーA2(固形分濃度:0.2質量%)を得た。ついで、長網式抄紙機を用いて湿式抄紙法にて、スラリーAを抄紙し、湿潤ウェブ(紙匹)を形成した。
該湿潤ウェブに、アクリル樹脂を、を水に分散させたスラリーB2を、得られる無機繊維シート100質量%中のアクリル樹脂の含有量が2質量%となるようにスプレー塗布し、表1に示す坪量、厚み、灰分の無機繊維シートを得た。
比較例1と坪量を変更した他は同様にして、表1に示す坪量、厚み、灰分の無機繊維シートを得た。
チョップドストランドガラス繊維(3)(径3μm、長さ:3mm)、及び広葉樹パルプ、PVAバインダー繊維を水に加え、これらの合計濃度が0.2質量%になるように調整し、原料スラリーを得た。ついで、湿式抄紙法にて、原料スラリーを抄紙し、湿潤ウェブを形成した。
該湿潤ウェブに、アクリル樹脂を、得られるシート100質量%中の付着量が5質量%となるようにスプレー塗布し、さらに、β型セピオライトを水に分散させたスラリーを、得られる無機繊維シート100質量%中のβ型セピオライトの含有量が25質量%となるようにスプレー塗布し、表1に示す坪量、厚み、灰分のシートを得た。
上記実施例および比較例で得られた無機繊維シートの坪量、厚みを表1に示した。
上記実施例および比較例で得られた無機繊維シートについて以下の方法で灰分の測定を行った。測定値を表1に示した。
無機繊維シートから1g以上の試験片を切り出し、100°Cの高温乾燥器内に24時間放置したのち、シリカゲル入りデシケーターに2時間放置した。
空のるつぼをマッフル炉に入れ、525°C30分間加熱し、室温まで冷却して質量を0.1mgの精度で秤量した(Mm(mg))。次いで、前記の試験片をるつぼに入れた状態で、ただちに秤量(Ms(mg))した。
前記試験片を入れたるつぼをマッフル炉で525°C2時間加熱したのち、マッフル炉から取り出して、シリカゲル入りデシケーターで室温まで冷却して、灰化物を含むるつぼを質量を0.1mgの精度で秤量した(Ma(mg))。
灰分の計算は次による。
灰分X(%)= (Ma - Mm)÷(Ms - Mm)×100
上記実施例および比較例で得られた無機繊維シートについて以下の方法で引張強度の測定を行った。引張強度比率dおよびeを表1に示した。
(引張強度測定a)
得られた無機繊維シートから、前記流れ方向に沿った長さ240mm、幅15mmのサンプルを切り出した。
前記サンプルをJIS P8113に準じた方法で、23°C50%RH環境下で引張試験機(機種名: RTC-1210A、株式会社オリエンテック製)に試験長さ180mmとなるようセットして前記流れ方向に沿った引張強度を測定し、得られた値を引張強度aとした。
(引張強度測定b)
得られた無機繊維シートから、前記流れ方向に沿った長さ240mm、幅15mmのサンプルを切り出した。
前記サンプルを引張試験機(機種名:RTC-1210A、株式会社オリエンテック製)に試験長さ180mmとなるようセットし、引張試験機用恒温槽(機種名:TKC-R3T-C、株式会社オリエンテック製)にて200°Cで1時間加熱し、加熱したままの状態で、サンプル温度および雰囲気以外は前項同様に前記流れ方向に沿った引張強度を測定し、得られた値を引張強度bとした。
(引張強度測定c)
得られた無機繊維シートから、前記流れ方向に沿った長さ240mm、幅15mmのサンプルを切り出し、500°Cで2時間焼成した。
前記焼成サンプルをJIS P8113に準じた方法で、23°C50%RH環境下で引張試験機(機種名:テンシロン万能材料試験機RTC-1210A、株式会社オリエンテック製)に試験長さ180mmとなるようセットして前記流れ方向に沿った引張強度を測定し、得られた値を引張強度cとした。
引張強度比率d=(引張強度測定b)/(引張強度測定a)
引張強度比率e=(引張強度測定c)/(引張強度測定a)
上記実施例および比較例で得られた無機繊維シートから、前記流れ方向に沿った長さ300mm、幅200mmのサンプルを切り出した。このサンプルを50°Cの高温乾燥器内に24時間放置したのち、シリカゲル入りデシケーターに2時間放置した。このサンプルを鉛直に対し45°の角度で支持枠に固定し、アルコールランプの炎の長さを60mmに調整したのち炎の先端が試験体の中央下部に接するように30秒間加熱したときの、無機繊維シートからの煙の発生および形状変化を以下の基準に基づいて評価した。その結果を表1に示した。
(煙の発生評価基準)
○:煙の発生が目視で認められず、耐火性材料として優れている。
×:煙の発生が目視で認められ、無機繊維シートの成分の一部が分解または燃焼しており、耐火性材料として使用するには問題がある。
○:加熱後にサンプルを支持枠から外して水平に保持したとき、形状変化が目視で認められず、耐熱性または耐火性材料として優れている。
×:加熱後にサンプルを支持枠から外して水平に保持したとき、加熱部位を中心に撓むまたは切れるなどの形状変化の発生が見られ、耐火性材料として使用するには問題がある。
Claims (3)
- 無機繊維51~99質量%と含水ケイ酸塩鉱物1~49質量%とを含有する無機繊維シートであり、
前記無機繊維シートを200°C空気雰囲気で1時間処理した後の引張強度が処理前の前記無機繊維シートの引張強度の0.75以上であり、
前記無機繊維シートを500°C空気雰囲気で2時間焼成した後の引張強度が処理前の前記無機繊維シートの引張強度の0.70以上であり、
前記無機繊維の繊維長が6mm以上15mm以下であり、
前記無機繊維がガラス繊維であり、灰分が95%以上である無機繊維シート。 - 坪量が5~350g/m2である、請求項1に記載の無機繊維シート。
- 請求項1または2に記載の無機繊維シートの製造方法であって、
無機繊維を含むスラリーAを調整する工程、含水ケイ酸塩鉱物を含有するスラリーBを調整する工程、スラリーAを用いて湿式抄紙法によりシートを得る工程と、前記シートの表面にスラリーBを塗布する工程を有する、無機繊維シートの製造方法。
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