以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。各図面において、同一の構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
[光走査システム]
まず、実施形態の可動装置を適用した光走査システムについて、図1~図4に基づいて詳細に説明する。
図1には、光走査システムの一例の概略図が示されている。図1に示すように、光走査システム10は、制御装置11の制御に従って光源装置12から照射された光を可動装置13の有する反射面14により偏向して被走査面15を光走査するシステムである。
光走査システム10は、制御装置11,光源装置12、反射面14を有する可動装置13により構成される。
制御装置11は、例えばCPU(Central Processing Unit)およびFPGA(Field-Programmable Gate Array)等を備えた電子回路ユニットである。可動装置13は、例えば反射面14を有し、反射面14を可動可能なMEMS(Micro Electromechanical Systems)デバイスである。光源装置12は、例えばレーザを照射するレーザ装置である。なお、被走査面15は、例えばスクリーンである。
制御装置11は、取得した光走査情報に基づいて光源装置12および可動装置13の制御命令を生成し、制御命令に基づいて光源装置12および可動装置13に駆動信号を出力する。
光源装置12は、入力された駆動信号に基づいて光源の照射を行う。可動装置13は、入力された駆動信号に基づいて反射面14を1軸方向または2軸方向の少なくともいずれかに可動させる。
これにより、例えば、光走査情報の一例である画像情報に基づいた制御装置11の制御によって、可動装置13の反射面14を所定の範囲で2軸方向に往復可動させ、反射面14に入射する光源装置12からの照射光をある1軸周りに偏向して光走査することにより、被走査面15に任意の画像を投影することができる。なお、実施形態の可動装置の詳細および制御装置による制御の詳細については後述する。
次に、光走査システム10一例のハードウェア構成について図2を用いて説明する。図2は、光走査システム10の一例のハードウェア構成図である。図2に示すように、光走査システム10は、制御装置11、光源装置12および可動装置13を備え、それぞれが電気的に接続されている。このうち、制御装置11は、CPU20、RAM21(Random Access Memory)、ROM22(Read Only Memory)、FPGA23、外部I/F24、光源装置ドライバ25、可動装置ドライバ26を備えている。
CPU20は、ROM22等の記憶装置からプログラムやデータをRAM21上に読み出し、処理を実行して、制御装置11の全体の制御や機能を実現する演算装置である。
RAM21は、プログラムやデータを一時保持する揮発性の記憶装置である。
ROM22は、電源を切ってもプログラムやデータを保持することができる不揮発性の記憶装置であり、CPU20が光走査システム10の各機能を制御するために実行する処理用プログラムやデータを記憶している。
FPGA23は、CPU20の処理に従って、光源装置ドライバ25および可動装置ドライバ26に適した制御信号を出力する回路である。
外部I/F24は、例えば外部装置やネットワーク等とのインタフェースである。外部装置には、例えば、PC(Personal Computer)等の上位装置、USBメモリ、SDカード、CD、DVD、HDD、SSD等の記憶装置が含まれる。また、ネットワークは、例えば自動車のCAN(Controller Area Network)やLAN(Local Area Network)、インターネット等である。外部I/F24は、外部装置との接続または通信を可能にする構成であればよく、外部装置ごとに外部I/F24が用意されてもよい。
光源装置トライバは、入力された制御信号に従って光源装置12に駆動電圧等の駆動信号を出力する電気回路である。
可動装置ドライバ26は、入力された制御信号に従って可動装置13に駆動電圧等の駆動信号を出力する電気回路である。
制御装置11において、CPU20は、外部I/F24を介して外部装置やネットワークから光走査情報を取得する。なお、CPU20が光走査情報を取得することができる構成であればよく、制御装置11内のROM22やFPGA23に光走査情報を格納する構成としてもよいし、制御装置11内に新たにSSD等の記憶装置を設けて、その記憶装置に光走査情報を格納する構成としてもよい。
ここで、光走査情報とは、被走査面15にどのように光走査させるかを示した情報であり、例えば、光走査により画像を表示する場合は、光走査情報は画像データである。また、例えば、光走査により光書込みを行う場合は、光走査情報は書込み順や書込み箇所を示した書込みデータである。他にも、例えば、光走査により距離測定を行う場合は、光走査情報は距離測定用の光を照射するタイミングと照射範囲を示す照射データである。
制御装置11は、CPU20の命令および図2に示したハードウェア構成によって、次に説明する機能構成を実現することができる。
次に、光走査システム10の制御装置11の機能構成について図3を用いて説明する。図3は、光走査システムの制御装置の一例の機能ブロック図である。
図3に示すように、制御装置11は、機能として制御部30と駆動信号出力部31とを有する。
制御部30は、例えばCPU20、FPGA23等により実現され、外部装置から光走査情報を取得し、光走査情報を制御信号に変換して駆動信号出力部31に出力する。例えば、制御部30は、外部装置等から画像データを光走査情報として取得し、所定の処理により画像データから制御信号を生成して駆動信号出力部31に出力する。
駆動信号出力部31は、光源装置ドライバ25、可動装置ドライバ26等により実現され、入力された制御信号に基づいて光源装置12または可動装置13に駆動信号を出力する。
駆動信号は、光源装置12または可動装置13の駆動を制御するための信号である。例えば、光源装置12においては、光源の照射タイミングおよび照射強度を制御する駆動電圧である。また、例えば、可動装置13においては、可動装置13の有する反射面14を可動させるタイミングおよび可動範囲を制御する駆動電圧である。
次に、光走査システム10が被走査面15を光走査する処理について図4を用いて説明する。図4は、光走査システムに係る処理の一例のフローチャートである。
ステップS11において、制御部30は、外部装置等から光走査情報を取得する。
ステップS12において、制御部30は、取得した光走査情報から制御信号を生成し、制御信号を駆動信号出力部31に出力する。
ステップS13において、駆動信号出力部31は、入力された制御信号に基づいて駆動信号を光源装置12および可動装置13に出力する。
ステップ14において、光源装置12は、入力された駆動信号に基づいて光照射を行う。また、可動装置13は、入力された駆動信号に基づいて反射面14の可動を行う。光源装置12および可動装置13の駆動により、任意の方向に光が偏向され、光走査される。
なお、上記光走査システム10では、1つの制御装置11が光源装置12および可動装置13を制御する装置および機能を有しているが、光源装置用の制御装置および可動装置用の制御装置と、別体に設けてもよい。
また、上記光走査システム10では、一つの制御装置11に光源装置12および可動装置13の制御部30の機能および駆動信号出力部31の機能を設けているが、これらの機能は別体として存在していてもよく、例えば制御部30を有した制御装置11とは別に駆動信号出力部31を有した駆動信号出力装置を設ける構成としてもよい。なお、上記光走査システム10のうち、反射面14を有した可動装置13と制御装置11により、光偏向を行う光偏向システムを構成してもよい。
[画像投影装置]
次に、実施形態の可動装置を適用した画像投影装置について、図5および図6を用いて詳細に説明する。
図5は、画像投影装置の一例であるヘッドアップディスプレイ装置500を搭載した自動車400の実施形態に係る概略図である。また、図6はヘッドアップディスプレイ装置500の一例の概略図である。
画像投影装置は、光走査により画像を投影する装置であり、例えばヘッドアップディスプレイ装置である。
図5に示すように、ヘッドアップディスプレイ装置500は、例えば、「車両」の一例である自動車400のウインドシールド(フロントガラス401等)の付近に設置される。ヘッドアップディスプレイ装置500から発せられる投射光Lがフロントガラス401で反射され、ユーザーである観察者(運転者402)に向かう。これにより、運転者402は、ヘッドアップディスプレイ装置500によって投影された画像等を虚像として視認することができる。なお、ウインドシールドの内壁面にコンバイナを設置し、コンバイナによって反射する投射光によってユーザーに虚像を視認させる構成にしてもよい。
図6に示すように、ヘッドアップディスプレイ装置500は、赤色、緑色、青色のレーザ光源501R,501G,501Bからレーザ光が出射される。出射されたレーザ光は、各レーザ光源に対して設けられるコリメートレンズ502,503,504と、2つのダイクロイックミラー505,506と、光量調整部507と、から構成される入射光学系を経た後、反射面14を有する可動装置13にて偏向される。そして、偏向されたレーザ光は、自由曲面ミラー509と、中間スクリーン510と、投射ミラー511とから構成される投射光学系を経て、スクリーンに投影される。なお、上記ヘッドアップディスプレイ装置500では、レーザ光源501R,501G,501B、コリメートレンズ502,503,504、ダイクロイックミラー505,506は、光源ユニット530として光学ハウジングによってユニット化されている。
上記ヘッドアップディスプレイ装置500は、中間スクリーン510に表示される中間像を自動車400のフロントガラス401に投射することで、その中間像を運転者402に虚像として視認させる。
レーザ光源501R,501G,501Bから発せられる各色レーザ光は、それぞれ、コリメートレンズ502,503,504で略平行光とされ、2つのダイクロイックミラー505,506により合成される。合成されたレーザ光は、光量調整部507で光量が調整された後、反射面14を有する可動装置13によって二次元走査される。可動装置13で二次元走査された投射光Lは、自由曲面ミラー509で反射されて歪みを補正された後、中間スクリーン510に集光され、中間像を表示する。中間スクリーン510は、マイクロレンズが二次元配置されたマイクロレンズアレイで構成されており、中間スクリーン510に入射してくる投射光Lをマイクロレンズ単位で拡大する。
可動装置13は、反射面14を2軸方向に往復可動させ、反射面14に入射する投射光Lを二次元走査する。この可動装置13の駆動制御は、レーザ光源501R,501G,501Bの発光タイミングに同期して行われる。
以上、画像投影装置の一例としてのヘッドアップディスプレイ装置500の説明をしたが、画像投影装置は、反射面14を有した可動装置13により光走査を行うことで画像を投影する装置であればよい。例えば、机等に置かれ、表示スクリーン上に画像を投影するプロジェクタや、観測者の頭部等に装着される装着部材に搭載され、装着部材が有する反射透過スクリーンに投影、または眼球をスクリーンとして画像を投影するヘッドマウントディスプレイ装置等にも、同様に適用することができる。
また、画像投影装置は、車両や装着部材だけでなく、例えば、航空機、船舶、移動式ロボット等の移動体、あるいは、その場から移動せずにマニピュレータ等の駆動対象を操作する作業ロボットなどの非移動体に搭載されてもよい。
[光書込装置]
次に、実施形態の可動装置13を適用した光書込装置について図7および図8を用いて詳細に説明する。
図7は、光書込装置600を組み込んだ画像形成装置の一例である。また、図8は、光書込装置の一例の概略図である。
図7に示すように、上記光書込装置600は、レーザ光によるプリンタ機能を有するレーザプリンタ650等に代表される画像形成装置の構成部材として使用される。画像形成装置において光書込装置600は、1本または複数本のレーザビームで被走査面15である感光体ドラムを光走査することにより、感光体ドラムに光書込を行う。
図8に示すように、光書込装置600において、レーザ素子などの光源装置12からのレーザ光は、コリメートレンズなどの結像光学系601を経た後、反射面14を有する可動装置13により1軸方向または2軸方向に偏向される。そして、可動装置13で偏向されたレーザ光は、その後、第一レンズ602aと第二レンズ602b、反射ミラー部602cからなる走査光学系602を経て、被走査面15(例えば感光体ドラムや感光紙)に照射し、光書込みを行う。走査光学系602は、被走査面15にスポット状に光ビームを結像する。また、光源装置12および反射面14を有する可動装置13は、制御装置11の制御に基づき駆動する。
このように上記光書込装置600は、レーザ光によるプリンタ機能を有する画像形成装置の構成部材として使用することができる。また、走査光学系を異ならせて1軸方向だけでなく2軸方向に光走査可能にすることで、レーザ光をサーマルメディアに偏向して光走査し、加熱することで印字するレーザラベル装置等の画像形成装置の構成部材として使用することができる。
上記光書込装置に適用される反射面14を有した可動装置13は、ポリゴンミラー等を用いた回転多面鏡に比べ駆動のための消費電力が小さいため、光書込装置の省電力化に有利である。また、可動装置13の振動時における風切り音は回転多面鏡に比べ小さいため、光書込装置の静粛性の改善に有利である。光書込装置は回転多面鏡に比べ設置スペースが圧倒的に少なくて済み、また可動装置13の発熱量もわずかであるため、小型化が容易であり、よって画像形成装置の小型化に有利である。
[距離測定装置]
次に、上記実施形態の可動装置を適用した距離測定装置について、図9および図10を用いて詳細に説明する。
図9は、距離測定装置の一例であるライダ(LiDAR;Laser Imaging Detection and Ranging)装置を搭載した自動車の概略図である。また、図10はライダ装置の一例の概略図である。
距離測定装置は、対象方向の距離を測定する装置であり、例えばライダ装置である。
図9に示すように、ライダ装置700は、例えば「車両」の一例である自動車701に搭載され、対象方向を光走査して、対象方向に存在する被対象物702からの反射光を受光することで、被対象物702の距離を測定する。
図10に示すように、光源装置12から出射されたレーザ光は、発散光を略平行光とする光学系であるコリメートレンズ703と、平面ミラー704とから構成される入射光学系を経て、反射面14を有する可動装置13で1軸もしくは2軸方向に走査される。そして、投光光学系である投光レンズ705等を経て装置前方の被対象物702に照射される。光源装置12および可動装置13は、制御装置11により駆動を制御される。被対象物702で反射された反射光は、光検出器709により光検出される。すなわち、反射光は入射光検出受光光学系である集光レンズ706等を経て撮像素子707により受光され、撮像素子707は検出信号を信号処理回路708に出力する。信号処理回路708は、入力された検出信号に2値化やノイズ処理等の所定の処理を行い、結果を測距回路710に出力する。
測距回路710は、光源装置12がレーザ光を発光したタイミングと、光検出器709でレーザ光を受光したタイミングとの時間差、または受光した撮像素子707の画素ごとの位相差によって、被対象物702の有無を認識し、さらに被対象物702との距離情報を算出する。
反射面14を有する可動装置13は多面鏡に比べて破損しづらく、小型であるため、耐久性の高い小型のレーダ装置を提供することができる。このようなライダ装置は、例えば車両、航空機、船舶、ロボット等に取り付けられ、所定範囲を光走査して障害物の有無や障害物までの距離を測定することができる。ライダ装置700の搭載位置は、自動車701の上部前方に限定されず、側面や後方に搭載されてもよい。
上記距離測定装置では、一例としてのライダ装置700の説明をしたが、距離測定装置は、反射面14を有した可動装置13を制御装置11で制御することにより光走査を行い、光検出器により反射光を受光することで被対象物702の距離を測定する装置であればよく、上述した実施形態に限定されるものではない。
例えば、手や顔を光走査して得た距離情報から形状等の物体情報を算出し、記録と参照することで対象物を認識する生体認証や、対象範囲への光走査により侵入物を認識するセキュリティセンサ、光走査により得た距離情報から形状等の物体情報を算出して認識し、3次元データとして出力する3次元スキャナの構成部材などにも同様に適用することができる。
[レーザヘッドランプ]
次に、上記実施形態の可動装置を自動車のヘッドライトに適用したレーザヘッドランプ50について、図11 を用いて説明する。図11は、レーザヘッドランプ50の構成の一例を説明する概略図である。
レーザヘッドランプ50は、制御装置11と、光源装置12bと、反射面14を有する可動装置13と、ミラー51と、透明板52とを有する。
光源装置12bは、青色のレーザ光を発する光源である。光源装置12bから発せられた光は、可動装置13に入射し、反射面14にて反射される。可動装置13は、制御装置11からの信号に基づき、反射面をXY方向に可動し、光源装置12bからの青色のレーザ光をXY方向に二次元走査する。
可動装置13による走査光は、ミラー51で反射され、透明板52に入射する。透明板52は、表面又は裏面を黄色の蛍光体により被覆されている。ミラー51からの青色のレーザ光は、透明板52における黄色の蛍光体の被覆を通過する際に、ヘッドライトの色として法定される範囲の白色に変化する。これにより自動車の前方は、透明板52からの白色光で照明される。
可動装置13による走査光は、透明板52の蛍光体を通過する際に所定の散乱をする。これにより自動車前方の照明対象における眩しさは緩和される。
可動装置13を自動車のヘッドライトに適用する場合、光源装置12b及び蛍光体の色は、それぞれ青及び黄色に限定されない。例えば、光源装置12bを近紫外線とし、透明板52を、光の三原色の青色、緑色及び赤色の各蛍光体を均一に混ぜたもので被覆してもよい。この場合でも、透明板52を通過する光を白色に変換でき、自動車の前方を白色光で照明することができる。
[ヘッドマウントディスプレイ]
次に、上記実施形態の可動装置を適用したヘッドマウントディスプレイ60について、図12~13を用いて説明する。ここでヘッドマウントディスプレイ60は、人間の頭部に装着可能な頭部装着型ディスプレイで、例えば、眼鏡に類する形状とすることができる。ヘッドマウントディスプレイを、以降ではHMDと省略して示す。
図12は、HMD60の外観を例示する斜視図である。図12において、HMD60は、左右に1組ずつ略対称に設けられたフロント60a、及びテンプル60bにより構成されている。フロント60aは、例えば、導光板61により構成することができ、光学系や制御装置等は、テンプル60bに内蔵することができる。
図13は、HMD60の構成を部分的に例示する図である。なお、図13では、左眼用の構成を例示しているが、HMD60は右眼用としても同様の構成を有している。
HMD60は、制御装置11と、光源ユニット530と、光量調整部507と、反射面14を有する可動装置13と、導光板61と、ハーフミラー62とを有している。
光源ユニット530は、上述したように、レーザ光源501R、501G、及び501Bと、コリメートレンズ502、503、及び504と、ダイクロイックミラー505、及び506とを、光学ハウジングによってユニット化したものである。光源ユニット530において、レーザ光源501R、501G、及び501Bからの三色のレーザ光は、ダイクロイックミラー505及び506で合成される。光源ユニット530からは、合成された平行光が発せられる。
光源ユニット530からの光は、光量調整部507により光量調整された後、可動装置13に入射する。可動装置13は、制御装置11からの信号に基づき、反射面14をXY方向に可動し、光源ユニット530からの光を二次元走査する。この可動装置13の駆動制御は、レーザ光源501R、501G、501Bの発光タイミングに同期して行われ、走査光によりカラー画像が形成される。
可動装置13による走査光は、導光板61に入射する。導光板61は、走査光を内壁面で反射させながらハーフミラー62に導光する。導光板61は、走査光の波長に対して透過性を有する樹脂等により形成されている。
ハーフミラー62は、導光板61からの光をHMD60の背面側に反射し、HMD60の装着者63の眼の方向に出射する。ハーフミラー62は、例えば、自由曲面形状を有している。走査光による画像は、ハーフミラー62での反射により、装着者63の網膜に結像する。或いは、ハーフミラー62での反射と眼球における水晶体のレンズ効果とにより、装着者63の網膜に結像する。またハーフミラー62での反射により、画像は空間歪が補正される。装着者63は、XY方向に走査される光で形成される画像を、観察することができる。
62はハーフミラーであるため、装着者63には、外界からの光による像と走査光による画像が重畳して観察される。ハーフミラー62に代えてミラーを設けることで、外界からの光をなくし、走査光による画像のみを観察できる構成としてもよい。
[パッケージング]
次に、実施形態の可動装置のパッケージングについて図14を用いて説明する。
図14は、パッケージングされた可動装置の一例の概略図である。
図14に示すように、可動装置13は、パッケージ部材801の内側に配置される取付部材802に取り付けられ、パッケージ部材801の一部を透過部材803で覆われて、密閉されることでパッケージングされる。さらに、パッケージ内は窒素等の不活性ガスが密封されている。これにより、可動装置13の酸化による劣化が抑制され、さらに温度等の環境の変化に対する耐久性が向上する。
[第1の実施形態]
以上に説明した光偏向システム、光走査システム、画像投射装置、光書込装置、距離測定装置に使用される第1の実施形態の可動装置について説明する。
<第1の実施形態の可動装置の構成>
第1の実施形態の可動装置の構成を、図15及び図16を参照して説明する。
図15は、1軸方向に光偏向可能な両持ちタイプの可動装置の平面図である。また図16は可動装置の断面図であり、(a)は図15のL-L'断面図、(b)は図15のM-M'断面図、(c)は図15のN-N'断面図である。
図15に示すように、可動装置13は、入射した光を反射する矩形形状の反射面14と、反射面14が形成された可動部120と、可動部120に接続され、反射面14及び可動部120をX軸に平行なE軸周りに駆動させる駆動梁130a、130bと、駆動梁を支持する支持部140と、駆動梁および制御装置に電気的に接続される電極接続部150とを有する。
また、可動部120面上の反射面14以外の領域、及び駆動梁130a、130b面上には、電極接続部150を介して印加される電流又は電圧信号を伝達する配線部123が設けられている。
ここで、E軸は「回動軸」の一例であり、駆動梁130a、130bは「1対の駆動梁」の一例である。また、図15では、反射面14を矩形形状の反射面とした例を示したが、これに限定されるものではなく、反射面の形状は、円形、楕円等の他の形状であってもよい。
可動装置13は、例えば、1枚のSOI(Silicon On Insulator)基板をエッチング処理等により成形し、成形した基板上に反射面14や圧電駆動部131a~131d、132a~132d、電極接続部150等を形成することで、各構成部が一体的に形成されている。なお、上記の各構成部の形成は、SOI基板の成形後に行ってもよいし、SOI基板の成形中に行ってもよい。また、圧電駆動部131a~131d、132a~132dは、それぞれ「梁部」の一例である。
SOI基板は、単結晶シリコン(Si)からなる第1のシリコン層の上に酸化シリコン層が設けられ、その酸化シリコン層の上にさらに単結晶シリコンからなる第2のシリコン層が設けられている基板である。以降、第1のシリコン層をシリコン支持層、第2のシリコン層をシリコン活性層とする。
シリコン活性層は、X軸方向またはY軸方向に対してZ軸方向への厚みが小さいため、シリコン活性層のみで構成された部材は、弾性を有する弾性部としての機能を備える。
なお、SOI基板は、必ず平面状である必要はなく、曲率等を有していてもよい。また、エッチング処理等により一体的に成形でき、部分的に弾性を持たせることができる基板であれば可動装置13の形成に用いられる部材はSOI基板に限られない。
図16(a)に示すように、可動部120は、シリコン活性層121と、シリコン活性層121の+Z側の面に形成された層間絶縁膜122と、層間絶縁膜122の+Z側の面に形成された配線部123及び保護膜124と、保護膜124の+Z側の面に形成された反射面14とを有している。また、可動部120は、シリコン活性層121の-Z側の面には、BOX(Buried Oxide)層125と、BOX層125の-Z側の面に形成されたシリコン支持層126とを有している。
層間絶縁膜122は酸化シリコン等から構成され、配線部123はアルミニウム(Al)等から構成され、保護膜124は酸化シリコンや感光性ポリイミド等から構成され、反射面14は、アルミニウム、金、銀等を含む金属薄膜で構成されている。なお、保護膜124は透明である。
BOX層125は酸化シリコン等から構成されている。BOX層125とシリコン支持層126は、可動によって生じる反射面14の歪みを抑制する補強用のリブとして作用することができる。
また、図16(b)に示すように、支持部140は、シリコン支持層161、酸化シリコン層162、シリコン活性層163等から構成され、可動部120および駆動梁130a、130bを囲む枠状の支持体である。
但し、図15に示すように、支持部140には、図中Y方向(可動部120が回動していない状態での反射面14に沿った平面内で、E軸に交差する方向)における可動部120の両側に、支持部140の一部を開放し(取り除き)、可動部120が回動した場合に反射面14による反射光を通過させる光通過部16及び17が設けられている。
光通過部16及び17が設けられることで、支持部140の駆動梁130aに接続される部分と、支持部140の駆動梁130bに接続される部分とは、光通過部16及び17を挟んで分離した構成となっている。
また、光通過部16及び17は、E軸に沿った方向の幅が、E軸から離れるにつれて、テーパ状に広くなる形状に形成されている。
なお、本実施形態では、支持部140が光通過部16及び17を含む枠状の支持体の例を示すが、これに限定されるものではない。光通過部16及び17が設けられていれば、支持部140は、可動部120及び駆動梁130a、130bを2つの梁で挟む梁状の支持体等であってもよい。
また、上述した例では、光通過部16及び17は、E軸に沿った方向の幅が、E軸から離れるにつれて、テーパ状に広くなる形状に形成されたものを示したが、これに限定されるものではない。可動部120が回動した場合に反射面14による反射光を通過させることができれば、光通過部16及び17の形状は、任意の形状であってもよい。
さらに、上述した例では、支持部140の一部を開放する(取り除く)ことで、光通過部16及び17を形成したものを示したが、これに限定されるものではない。例えば、反射面14による反射光に対して透過性を有する部材(透明部材)で、支持部140の可動部120の両側を構成し、反射面14による反射光にこの透明部材を透過させるようにしてもよい。換言すると、光通過部16及び17には、単に光を通過させるものだけでなく、透明部材を介して反射面14による反射光を通過させる光透過部も含まれる。
次に、駆動梁130a、130bは、折り返すように連結された複数の圧電駆動部131a~131d、132a~132dから構成されており、駆動梁130a、130bの一端は可動部120の外周部に接続され、他端は支持部140の内周部に接続されている。このとき、駆動梁130aと可動部120の接続箇所、及び駆動梁130bと可動部120の接続箇所、さらに駆動梁130aと支持部140aの接続箇所、及び駆動梁130bと支持部140bの接続箇所は、反射面14の中心に対して点対称となっている。
図16(c)に示すように、駆動梁130a、130bは、弾性部であるシリコン活性層121の+Z側の面上に層間絶縁膜122、下部電極201、圧電部202、上部電極203、層間絶縁膜204、配線部123、保護膜124の順に形成されて構成される。
上部電極203および下部電極201は、例えば金(Au)または白金(Pt)等から構成される。圧電部202は、例えば、圧電材料であるPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)からなる。
電極接続部150は、正の電圧が印加される正電極接続部150aと、GNDに接続されるGND接続部150bと、負の電圧が印加される負電極接続部150cとを有し、それぞれが支持部140の+Z側の面上に形成されている。
電極接続部150は、配線部123を介して圧電駆動部131a~131d及び132a~132dの備える各上部電極203および各下部電極201に電気的に接続され、また、アルミニウム等の電極配線を介して制御装置11に電気的に接続されている。なお、上部電極または下部電極は、それぞれが電極接続部と直接接続されていてもよいし、電極同士を接続する等により間接的に接続されていてもよい。
配線部123は、正の電圧信号を伝達する正電圧配線部123aと、GNDに接続されるGND配線部123bと、負の電圧信号を伝達する負電圧配線部123cとを有している。正電圧配線部123aは正電極接続部150aに接続され、GND配線部123bはGND接続部150bに接続され、負電圧配線部123cは負電極接続部150cにそれぞれ接続されている。
より詳しくは、GND配線部123bは、圧電駆動部131a~131d及び132a~132dの各上部電極203に接続されている。また、正電圧配線部123aは、圧電駆動部132d、132b、131a、及び131cの下部電極201に接続され、これらに正の電圧信号を伝達して正の駆動電圧を印加させることができる。この場合、正電圧配線部123aは、圧電駆動部132c、132a、131b、及び131dでは、下部電極201には接続せずに通過する。
一方、負電圧配線部123cは、圧電駆動部132c、132a、131b、及び131dの下部電極201に接続され、これらに負の電圧信号を伝達して負の駆動電圧を印加させることができる。この場合、負電圧配線部123cは、圧電駆動部132d、132b、131a、及び131cでは、下部電極201には接続せずに通過する。
このようにして、配線部123は、電極接続部150を介して印加される電圧信号を圧電駆動部131a~131d及び132a~132dに伝達し、駆動電圧を印加することができる。なお、配線部123は、電圧信号に代えて、電流信号を伝達してもよい。
駆動電圧の印加による圧電駆動部の動作は、図17を用いて別途説明する。
ここで、配線部123が設けられた層間絶縁膜204は、上部電極203または下部電極201と電極配線とが接続される接続スポットのみ、開口部として部分的に絶縁膜を除去または絶縁膜を形成しない構成にしてもよい。これにより、駆動梁130a、130bおよび電極配線の設計自由度をあげ、さらに電極同士の接触による短絡を抑制することができる。また、層間絶縁膜204等を構成する酸化シリコン膜は、反射防止材としていの機能も備える。
なお、本実施形態では、圧電部202が弾性部であるシリコン活性層121の一面(+Z側の面)のみに形成された場合を一例として説明したが、弾性部の他の面(例えば-Z側の面)に設けても良いし、弾性部の一面および他面の双方に設けても良い。
また、可動部120をE軸周りに駆動可能であれば、各構成部の形状は実施形態の形状に限定されない。
<第1の実施形態の可動装置の制御方法>
次に、可動装置の駆動梁を駆動させる制御装置の制御の詳細について説明する。
駆動梁130a、130bが有する圧電部202は、分極方向に正または負の電圧が印加されると印加電圧の電位に比例した変形(例えば、伸縮)が生じ、いわゆる逆圧電効果を発揮する。駆動梁130a、130bは、上記の逆圧電効果を利用して可動部120を可動させる。
このとき、可動部120の反射面14がXY平面に対して+Z方向または-Z方向へ傾いたときのXY平面と反射面14により成す角度を、振れ角とよぶ。このとき、+Z方向を正の振れ角、-Z方向を負の振れ角とする。
駆動梁を駆動させる制御装置の制御について、図17を用いて説明する。
図17は、可動装置13の駆動梁130bの駆動を模式的に表した模式図である。点線で表されているのは可動部120等である。なお、紙面向かって右方向が+X方向、紙面向かって上方向が+Y方向、紙面手前が+Z方向である。
図17(a)に示すように、駆動梁130bに駆動電圧が印加されていない状態では、駆動梁による振れ角はゼロである。
駆動梁130aが有する複数の圧電駆動部131a~131dのうち、最も可動部120に距離が近い圧電駆動部(131a)から数えて偶数番目の圧電駆動部、すなわち圧電駆動部131b、131dを圧電駆動部群Aとする。また、さらに駆動梁130bが有する複数の圧電駆動部132a~132dのうち、最も可動部120に距離が近い圧電駆動部(132a)から数えて奇数番目の圧電駆動部、すなわち圧電駆動部132a、132cを同様に圧電駆動部群Aとする。圧電駆動部群Aは、駆動電圧が並行(同時)に印加されると、図17(b)に示すように、圧電駆動部群Aが同一方向に屈曲変形し、可動部120が-Z方向にE軸周りに可動する。
また、駆動梁130aが有する複数の圧電駆動部131a~131dのうち、最も可動部120に距離が近い圧電駆動部(131a)から数えて奇数番目の圧電駆動部、すなわち圧電駆動部131a、131cを圧電駆動部群Bとする。また、さらに駆動梁130bが有する複数の圧電駆動部132a~132dのうち、最も可動部120に距離が近い圧電駆動部(132a)から数えて偶数番目の圧電駆動部、すなわち、132b、132dを同様に圧電駆動部群Bとする。圧電駆動部群Bは、駆動電圧が並行に印加されると、図17(d)に示すように、圧電駆動部群Bが同一方向に屈曲変形し、可動部120が+Z方向にE軸周りに可動する。
図17(b)、(d)に示すように、駆動梁130aまたは130bでは、圧電駆動部群Aが有する複数の圧電部202または圧電駆動部群Bが有する複数の圧電部202を同時に屈曲変形させることにより、屈曲変形による可動量を累積させ、可動部120のE軸周りの振れ角度を大きくすることができる。
例えば、図15に示すように、駆動梁130a、130bが、可動部120の中心点に対して可動部120に点対称で接続されている。そのため、圧電駆動部群Aに駆動電圧を印加すると、駆動梁130aでは可動部120と駆動梁130aの接続部に+Z方向に動かす駆動力が生じ、駆動梁130bでは可動部120と駆動梁130bの接続部に-Z方向に動かす駆動力が生じ、可動量が累積されて可動部120のE軸周りの振れ角度を大きくすることができる。
また、図17(c)に示すように、電圧印加による圧電駆動部群Aによる可動部120の可動量と電圧印加による圧電駆動群Bによる可動部120の可動量が釣り合っている時は、振れ角はゼロとなる。
図17(b)~図17(d)を連続的に繰り返すように圧電駆動部に駆動電圧を印加することにより、可動部120をE軸周りに駆動させることができる。
駆動梁に印加される駆動電圧は、制御装置によって制御される。
圧電駆動部群Aに印加される駆動電圧(以下、駆動電圧A)、圧電駆動部群Bに印加される駆動電圧(以下、駆動電圧B)について、図18を用いて説明する。
図18(a)は、可動装置13の圧電駆動部群Aに印加される駆動電圧Aの波形の一例である。図18(b)は、可動装置の圧電駆動部群Bに印加される駆動電圧の波形Bの一例である。図18(c)は、駆動電圧Aの波形と駆動電圧Bの波形を重ね合わせた図である。
図18(a)に示すように、圧電駆動部群Aに印加される駆動電圧Aは、例えば、ノコギリ波状の波形の駆動電圧であり、周波数は、例えば60HZである。また、駆動電圧Aの波形は、電圧値が極小値から次の極大値まで増加していく立ち上がり期間の時間幅をTrA、電圧値が極大値から次の極小値まで減少していく立ち下がり期間の時間幅をTfAとしたとき、例えば、TrA:TfA=9:1となる比率があらかじめ設定されている。このとき、一周期に対するTrAの比率を駆動電圧Aのシンメトリという。
図18(b)に示すように、圧電駆動部群Bに印加される駆動電圧Bは、例えば、ノコギリ波状の波形の駆動電圧であり、周波数は、例えば60HZである。また、駆動電圧Bの波形は、電圧値が極小値から次の極大値まで増加していく立ち上がり期間の時間幅をTrB、電圧値が極大値から次の極小値まで減少していく立ち下がり期間の時間幅をTfBとしたとき、例えば、TfB:TrB=9:1となる比率があらかじめ設定されている。このとき、一周期に対するTfBの比率を駆動電圧Bのシンメトリという。また、図18(c)に示すように、例えば、駆動電圧Aの波形の周期TAと駆動電圧Bの波形の周期TBは、同一となるように設定されている。
なお、上記の駆動電圧Aおよび駆動電圧Bのノコギリ波状の波形は、正弦波の重ね合わせによって生成される。また、実施形態では、駆動電圧A、Bとしてノコギリ波状の波形の駆動電圧を用いているが、これに限らず、ノコギリ波状の波形の頂点を丸くした波形の駆動電圧や、ノコギリ波状の波形の直線領域を曲線とした波形の駆動電圧など、可動装置のデバイス特性に応じて波形を変えることも可能である。
<第1の実施形態の可動装置の効果>
次に、本実施形態の可動装置の効果について説明するが、先ず、比較例の可動装置について説明する。
図19は、比較例の可動装置の構成を説明する図であり、(a)は平面図であり、(b)は可動部の振れ角が小さい場合を説明する(a)のP-P'断面図であり、(c)は可動部の振れ角が大きい場合を説明する(a)のP-P'断面図である。
図19(a)に示すように、比較例の可動装置300は、反射面314を備える可動部320と、可動部320をE軸周りに回動可能に支持する支持部340と、電極接続部350とを有している。
図19(b)は、可動部320の反射面314に-Z方向に入射光301が入射し、回動した可動部320の反射面314で反射されている様子を示している。この場合、可動部320の振れ角(回動角)は小さいため、可動部320の+Y側に存在する支持部340で、反射面314の反射光が遮られることはない。
図19(c)も同様に、可動部320の反射面314に-Z方向に入射光301が入射し、回動した可動部320の反射面314で反射されている様子を示している。この場合は、可動部320の振れ角が大きいため、可動部320の+Y側に存在する支持部340で、反射面314の反射光が遮られている。
このように、比較例の可動装置300では、可動部320の振れ角が大きくなると、可動部320の±Y側に存在する支持部340で、反射面314の反射光が遮られるため、可動部320による光の走査角度が制限させ、大きな走査角度を得ることはできない。
これに対し、本実施形態では、上述したように、支持部140には、可動部120が回動していない状態での反射面14に沿った平面内で、E軸に交差する方向(図19の±Y方向)における可動部120の両側に光通過部16及び17が設けられている。可動部120の±Y側に支持部等の部材が存在しなくなるため、可動部120の振れ角が大きくなっても、反射面14の反射光が遮られることはない。これにより、可動部120の光の走査角度が制限されず、大きな走査角度を得ることができる。
また、図9~10で説明したLiDAR装置等の距離測定装置で可動装置13を用いる場合、水平方向には可動装置13でレーザ光を走査し、鉛直方向にはレーザ光を広げる(発散させる)ことで、車両の進行方向と交差する2次元平面内における車両前方の被対象物を検出する場合がある。この場合、可動部120の振れ角が大きくなると、E軸に平行なX方向に広がるレーザ光が支持部140に遮られ、広がり角度が制限される場合がある。
これに対して、本実施形態では、図15で説明したように、光通過部16及び17は、E軸に沿った方向の幅がE軸から離れるにつれて、テーパ状に広くなる形状に形成されている。光通過部16及び17は、±X方向に広がる光に沿って、テーパ状に幅が広くなる形状であるため、±X方向における光の広がり角度の制限を緩和させることができる。
一方で、図19(a)に示す可動装置300のように、可動部320を挟んで±X方向の位置に設けられた駆動梁に駆動電圧を印加するために、支持部340のE軸に沿った方向を長手とする一方の辺部に電極接続部350が設けられる場合がある。この場合、電極接続部350が設けられた支持部340の辺部により、上述のように反射面314の反射光が遮られ、可動部320による光の走査角度が制限される場合がある。
これに対し、本実施形態では、電極接続部150を介して印加される電流又は電圧信号を伝達する配線部123を、可動部120上の反射面14以外の領域と、駆動梁130a、130bの各駆動梁上に備えている。これにより、支持部140のE軸と交差する方向を長手とする辺部に電極接続部150を設けた場合でも(図15参照)、可動部120を挟んで±X方向の位置に設けられた駆動梁130a、130bの両方に駆動電圧を印加することができる。可動部120の±Y側に支持部等の部材を配置する必要がないため、可動部120の光の走査角度が制限されることなく、大きな走査角度を得ることができる。
また、配線部123を設けることで、可動部120の面上に凹凸ができる場合がある。そのため、反射面14が設けられる領域に配線部123を形成すると、反射面14に入射した光が配線部123による凹凸で拡散される等して、反射面14での光の反射が阻害される場合がある。そこで、本実施形態では、図16(a)に示したように、可動部120の面上で反射面14が設けられていない外周近傍の領域(反射面以外の領域)に配線部123を形成している。これにより、反射面14での光の反射が阻害されることを防いでいる。また、本実施形態では、配線部123が保護膜124で覆われていることで、導体のゴミや水分の付着によるショートや、部材との接触による断線等を防止することができる。
<変形例>
次に、第1の実施形態の変形例について説明する。なお、既に説明した実施の形態と同一の構成部についての説明は省略する場合がある。
ここで、以下に説明する変形例及び実施形態の可動装置でも第1の実施形態の可動装置13と同様に、可動部120、及び駆動梁130a、130b上の配線部123が設けられているが、図を見やすくするためにこれらの図示を以下では省略する。
(変形例1)
変形例1では、光通過部は、E軸に沿った方向の幅が、E軸から離れるにつれて非線形に広くなる形状に形成されている例を説明する。
図20は、変形例1の可動装置の構成の一例を説明する平面図である。図20に示すように、可動装置13aは、図中Y方向(可動部120が回動していない状態での反射面14に沿った平面内で、E軸に交差する方向)における可動部120の両側に、それぞれ光通過部16a及び17aが設けられた支持部140aを有している。
光通過部16a及び17aは、E軸に沿った方向の幅が、E軸から離れるにつれて非線形に広くなる形状に形成されている。換言すると、図20に曲面部141で示したように、E軸に沿った方向の幅が、E軸から離れるにつれて、曲面のテーパ状に広くなる形状に形成されている。
ここで、可動装置をLiDAR装置等の装置に配置する場合、可動装置は、支持部の面を被固定部位として、LiDAR装置の基台に接着等により固定される。従って、支持部の面積が小さくなると被固定部位と基台との接触面積が小さくなるため、接着強度が低下して、固定の安定性に欠ける場合がある。
第1の実施形態の可動装置13のように、支持部140が光通過部16及び17を含む場合、光通過部16及び17の面積だけ、支持部140の接着面積が小さくなる。
そこで、本変形例では、光通過部16a及び17aのE軸に沿った方向の幅が、E軸から離れるにつれて非線形に広くなる形状に形成することで、非線形(曲面)にした分だけ支持部140の接着面積を大きくする構成としている。
これにより、可動部120の振れ角が大きくなった場合に、支持部140aにより反射光が遮られることを、光通過部16a及び17aにより回避するとともに、支持部140aの基台への接着面積を確保し、可動装置13aの固定の安定性を向上させることができる。
また、E軸から離れるにつれて非線形に広くなる形状とすることで、例えば、反射面14でのレーザ光のビームスポット形状が曲面、或いは楕円形状のときでも、支持部140aにより反射光が遮られることを回避しつつ、支持部140aの基台への接着面積を確保し、可動装置13aの安定性を向上させることができる。
(変形例2)
図21は、変形例2の可動装置の構成の一例を説明する平面図である。図21に示すように、可動装置13bは、駆動梁133aと、駆動梁133bとを有している。
駆動梁133a及び133bは、それぞれE軸と交差する方向を長手とする複数の圧電駆動部が折り返し部で接続された蛇行梁(ミアンダ構造)を含み、可動部120に隣接する圧電駆動部134a及び134bは、E軸と交差する方向の一端側で可動部120に接続され、またE軸と交差する方向の他端側に直線部を含む切欠き形状20a及び20bが形成されている。
ここで、図22は、図17でも説明したように、可動装置13の可動部120が駆動梁130bの屈曲変形に応じて回動する様子を説明する図である。可動部120が回動する際に、可動部120に隣接する圧電駆動部132aで可動部120に接続している部分は、可動部120とともに動くが、可動部120に接続していない部分は可動部120から離れて動く場合がある。この場合、圧電駆動部132aで可動部120に接続する一端側とは反対側にある他端部21が、可動部120に対して離れる距離が最も長くなる。そして、可動部120から離れることで、可動部120の反射面14の反射光の光路内に他端部21の一部が入り、反射光を遮る場合がある。
本変形例では、この他端部21の部分に切欠き形状20a及び20bを形成することで、他端部21が反射面14の反射光を遮ることを抑制している。これにより、可動部120の光の走査角度の制限を抑制し、大きな走査角度を得ることができる。なお、図21では切欠き形状20a及び20bは直線部を含む例を示したが、曲面部を含む切欠き形状であってもよい。
(変形例3)
図23は、変形例3の可動装置の構成の一例を説明する平面図である。図23に示すように、可動装置13cは、駆動梁135aと、駆動梁135bとを有している。
変形例2で説明したように、可動部120に隣接する圧電駆動部の他端部21の一部が可動部120の反射面14の反射光の光路内に入り、反射光を遮る場合がある。
そこで、本変形例では、駆動梁135a及び135bは、それぞれE軸と交差する方向を長手とする複数の圧電駆動部が折り返し部で接続された蛇行梁を含み、可動部120に隣接する圧電駆動部136aと可動部120との間隔21aは、隣接する圧電駆動部間の間隔22aより大きく、また可動部120に隣接する圧電駆動部136bと可動部120との間隔21bは、隣接する圧電駆動部間の間隔22bより大きくしている。これにより、可動部120に隣接する圧電駆動部の他端部21の一部が可動部120の反射面14の反射光を遮ることを抑制している。そして、可動部120の光の走査角度の制限を抑制し、大きな走査角度を得ることができる。なお、隣接する圧電駆動部間の間隔22a及び22bは、「梁部間の間隔」の一例である。
[第2の実施形態]
次に、第2の実施形態の可動装置を、図24を参照して説明する。なお、既に説明した実施形態と同一の構成部分についての説明は省略する場合がある。
図24は、本実施形態の可動装置の構成の一例を説明する平面図である。図24に示すように、可動装置13dは、支持部140dと、可動部120dとを有している。
支持部140dは、可動部120が回動していない状態での反射面14に沿った平面内で、E軸に交差する方向における可動部120dの両側に、光通過部16d及び17dを含んでいる。光通過部16d及び17dは、光通過部16d及び17dのE軸に沿った方向の幅が、可動部120dのE軸に沿った方向の幅より広くなるように形成されている。
また、可動部120dのE軸に沿った外周面120paと、支持部140dのE軸に沿った外周面140paは、段差がなく平行(フラット)な状態に形成されている。換言すると、外周面120paと外周面140paは、同一平面内に配置される状態で形成されている。
同様に、可動部120dのE軸に沿った外周面120pbと、支持部140dのE軸に沿った外周面140pbは、段差がなく平行な状態に形成されている。換言すると、外周面120paと外周面140paは、同一平面内に配置される状態で形成されている。但し、この「段差がなく平行な状態」は、段差が完全にない状態を意味するのではなく、一般に加工誤差と認められる程度の段差は許容されるものである。
なお、外周面120paは、「第1の可動部外周面」の一例であり、外周面140paは、「第1の支持部外周面」の一例である。また、外周面120pbは、「第2の可動部外周面」の一例であり、外周面140pbは、「第2の支持部外周面」の一例である。
このように構成することで、可動部120dの±Y側に支持部等の部材が存在しなくなるため、可動部120dの振れ角が大きくなっても、反射面14の反射光が遮られることはない。これにより、可動部120dの光の走査角度が制限されず、大きな走査角度を得ることができる。
また、段差がなく平行な状態は、エッチング等の加工法において加工しやすい状態であるため、加工効率を上げ、可動装置13dの生産性を向上させることができる。
さらに、E軸と交差する方向(Y方向)において、可動部120dと支持部140を同じサイズにできるため、可動装置13dのサイズを小さくでき、或いは反射面14のサイズを大きくすることができる。
可動装置13dのサイズを小さくすることで、可動装置13dの配置の自由度を高めることができる。また、可動装置13dを構成する材料を減らせるため、可動装置13dのコストを低減することができ、さらに1枚のウエハ基板から製造可能な可動装置13dの数を増やすことができるため、生産性を向上させることができる。
一方、反射面14のサイズを大きくすることで、可動装置13dの振動等によって、入射光が反射面14から外れること等を抑制することができる。
なお、上述した以外の効果は、第1の実施形態で説明したものと同様である。
[第3の実施形態]
次に、第3の実施形態の可動装置の構成を、図25及び図26を参照して説明する。図25は、本実施形態の可動装置の構成の一例を説明する平面図である。また、図26は、図25のQ-Q'断面図である。
可動装置13eは、可動部120eと、可動部120eをX軸に平行なE軸周りに駆動させる駆動梁110a、110bと、を有している。また、可動部120eの面上であって反射面14e以外の領域と、駆動梁110a、110bの面上には、電極接続部150を介して印加される電流又は電圧信号を伝達する配線部127が設けられている。ここで、駆動梁110a、110bは「1対の駆動梁」の一例である。
可動部120eは、基体と、基体の+Z側の面上に形成された反射面14eとを有している。基体は、シリコン活性層163等から構成される。反射面14eは、アルミニウム、金、銀等を含む金属薄膜で構成される。また、可動部120eは、基体の-Z側の面に反射面14eの補強用のリブが形成されていてもよい。リブは、シリコン支持層161および酸化シリコン層162から構成され、可動によって生じる反射面14eの歪みを抑制することができる。なお、反射面14eは円形形状である例を示したが、楕円や矩形等の他の形状であってもよい。
駆動梁110a、110bは、可動部120eに一端が接続され、E軸方向にそれぞれ延びて可動部120eを回動可能に支持する2つのトーションバー111a、111bと、+X側の一端がトーションバー111aに接続され、他端が支持部140の内周部に接続される圧電駆動部112a及び113aと、-X側の一端がトーションバー111bに接続され、他端が支持部140の内周部に接続される圧電駆動部112b及び113bとから構成される。
トーションバー111a、111bはシリコン活性層163等から構成される。また、圧電駆動部112a、113a、112b、及び113bは、弾性部であるシリコン活性層163の+Z側の面上に下部電極201、圧電部202、上部電極203の順に形成されて構成される。
上部電極203および下部電極201は、金または白金等から構成される。圧電部202は、圧電材料であるPZT等から構成される。
なお、本実施形態では、圧電部202が弾性部であるシリコン活性層163の一面(+Z側の面)のみに形成された場合を一例として説明したが、弾性部の他の面(例えば-Z側の面)に設けても良いし、弾性部の一面および他面の双方に設けても良い。
また、可動部120eをE軸周りに駆動可能であれば、各構成部の形状は本実施形態の形状に限定されない。トーションバー111a、111bや圧電駆動部112a、113a、112b、及び113bが曲率を有した形状を有していてもよい。
配線部127は、正の電圧信号を伝達する正電圧配線部127aと、GNDに接続されるGND配線部127bと、負の電圧信号を伝達する負電圧配線部127cとを有している。正電圧配線部127aは正電極接続部150aに接続され、GND配線部127bはGND接続部150bに接続され、負電圧配線部127cは負電極接続部150cにそれぞれ接続されている。
より詳しくは、GND配線部127bは、圧電駆動部112a、113a、112b、及び113bの各上部電極203に接続されている。また、正電圧配線部127aは、圧電駆動部112a及び112bの下部電極201に接続され、これらに正の電圧信号を伝達して正の駆動電圧を印加させることができる。
一方、負電圧配線部127cは、圧電駆動部113a及び113bの下部電極201に接続され、これらに負の電圧信号を伝達して負の駆動電圧を印加させることができる。
このようにして、配線部127は、電極接続部150を介して印加される電圧信号を圧電駆動部112a、113a、112b、及び113bに伝達し、駆動電圧を印加することができる。なお、配線部127は、電圧信号に代えて、電流信号を伝達してもよい。
駆動電圧の印加による圧電駆動部の動作等は、既に説明した駆動梁130a、130bと同様である。
本実施形態では、支持部140には、可動部120eが回動していない状態での反射面14eに沿った平面内で、E軸に交差する方向(図25の±Y方向)における可動部120eの両側に、それぞれ光通過部16及び17が設けられている。可動部120eの±Y側に支持部等の部材が存在しなくなるため、可動部120eの振れ角が大きくなっても、反射面14eの反射光が遮られることはない。これにより、可動部120eの光の走査角度が制限されず、大きな走査角度を得ることができる。
また、光通過部16及び17、電極接続部150、及び配線部127による各効果は、第1の実施形態で説明したものと同様である。
[第4の実施形態]
<第4の実施形態の可動装置の構成>
次に、第4の実施形態の可動装置を、図27~図32を参照して説明する。先ず、図27は、本実施形態の可動装置の構成の一例を説明する斜視図である。
図27に示すように、可動装置13fは、台座部70を有し、台座部70の+Z側の面に第3の実施形態の可動装置13eが固定され、構成されている。但し、台座部70の+Z側の面には、上述の実施形態で説明した可動装置13、13a、13b、13c、及び13dが固定され、可動装置13fが構成されてもよい。以降では、可動装置13fが構成の一部として可動装置13eを備えるものとして説明する。なお、台座部70に固定された可動装置13eは、「光偏向素子」の一例である。
図28は台座部の構成の一例を説明する斜視図である。図28に示すように、台座部70は、側壁部材71a及び71bと、底部部材72とを有している。ここで、台座部70は、「台座」の一例である。
側壁部材71aは、Z軸に直交する断面がコの字型の形状の部材であり、コの字の開放側が+X方向を向くようにして、板状の部材である底部部材72の+Z側の面に接着等で固定されている。側壁部材71bも同様に、Z軸に直交する断面がコの字の形状の部材であり、コの字の開放側が-X方向を向くようにして底部部材72の+Z側の面に接着等で固定されている。
但し、側壁部材71a及び71bと、底部部材72とは一体化された部材であってもよい。金属系の材料を用いる場合は、鋳造、切削加工、金属射出成形等により、このような部材を製作することができる。また、樹脂系の材料を用いる場合は、射出成形や3Dプリンタ等により、このような部材を製作することができる。
側壁部材71a及び71は、+Z側の面で可動装置13eの支持部140を固定することができる。ここで、側壁部材71a及び71bの+Z側の面は、「一方の端面」の一例であり、側壁部材71a及び71の-Z側の面は、「他方の端面」の一例である。
側壁部材71aと側壁部材71bとはX方向に間隔を空けて配置され、これにより、台座部70の-Y側には光通過部73が形成され、台座部70の+Y側には光通過部74が形成されている。光通過部73及び74は、それぞれ側壁部材71a及び71bからなる側壁部材の一部を開放する光通過部の一例である。
ここで、図29は、可動部120eが回動(駆動)した場合の様子の一例を説明する図である。図29において、可動装置13eは、側壁部材71a及び71bの+Z側の面に固定されている。可動装置13eの可動部120eはE軸周りに回動し、反射面14eに太い実線の矢印81で示す方向に入射する光は、反射面14eにより太い破線の矢印82で示す方向に反射されている。
台座部70の±Y側に光通過部73及び74が形成されることで、図29に示すように、可動部120eの±Y側に反射面14eの反射光を遮る部材が存在しない状態になる。これにより、反射面14eの反射光を通過させる空間が確保されている。また、側壁部材71a及び71bの+Z側の面に支持部140を固定したことで、可動部120eの-Z側にも、所定の角度範囲で反射面14eの反射光を通過させる空間が確保されている。
このように、光通過部73及び74は、可動部120eが大きく回動した場合でも反射面14eの反射光を通過させることができる。なお、反射面14eの反射光を通過させるために、光通過部73及び74のX方向の幅は、反射面14eのX方向の幅より広くすることが好適である。
また、本実施形態では、側壁部材71a及び71bとして、コの字型の形状の部材を用いる例を示したが、これに限定されるものではない。光通過部73及び74を形成できるのであれば、側壁部材71a及び71bの少なくとも1つに平板状部材等を用いてもよい。
<第4の実施形態の可動装置の製造方法>
次に、可動装置13fの製造方法について、図30及び図31を参照して説明する。
図30は、可動装置13fの製造方法の一例を示すフローチャートである。また、図31は、可動装置13fの製造方法の一例を説明する斜視図であり、(a)は接着剤塗布工程を説明する図、(b)は位置決め部材設置工程を説明する図、(c)は可動装置13eの台座部への固定工程を説明する図、(d)は製造工程終了後の可動装置を説明する図である。なお、図30及び図31の説明では、台座部70は既に組み立てられ、また、台座部70に固定される可動装置13eは、上述したように、SOI基板のエッチング処理等で既に加工されているものとする。
図30において、先ず、ステップS301において、台座部70(側壁部材71a及び71b)の+Z側の面に接着剤75が塗布される(図31(a)参照)。接着剤75として、銀ペーストなどの導電性金属ペーストやエポキシ樹脂系接着剤、シリコーン樹脂系接着剤等の熱硬化性の接着剤を用いることができる。なお、シリコーンとは、二酸化ケイ素を還元してシリコンにした後、有機化合物を結合させた化合物であり、特性として有機と無機を併せ持っている。
続いて、ステップS303において、台座部70の±X側及び±Y側の面のうち、少なくとも3つの面に接触するように位置決め部材76が設置される。この場合、図31(b)に示すように、各位置決め部材76のZ方向の面の一部を台座部70の側壁部材71a及び71bの面に接触させ、Z方向の他の部分は、後の工程で可動装置13eの支持部140の外周面を突き当てられるように、台座部70の側壁部材71a及び71bの面に接触させない状態にしておく必要がある。位置決め部材76のZ方向の高さを調整するために、Z方向の高さを規定したブロック部材等を用意し、ブロック部材等の上に位置決め部材76を設置するようにしてもよい。
図30に戻り、説明を続ける。
ステップS305において、可動装置13eの支持部140の外周面を位置決め部材76の面に突き当てながら、支持部140を台座部70の+Z側の面に載置する(図31(c)参照)。これにより、可動装置13fは仮配置の状態となる。
続いて、ステップS307において、位置決め部材76が取り除かれる。
続いて、ステップS309において、仮配置の状態の可動装置13fを熱処理炉内に設置し、加熱する。これにより、可動装置13eの支持部140が台座部70の+Z側の面に接着され、固定される。
続いて、ステップS311において、可動装置13fが熱処理炉から取り出される。
このようにして、可動装置13fを製造することができる。
<第4の実施形態の可動装置の効果>
以上説明したように、本実施形態では、台座部70の±Y側に光通過部73及び74を設けることで、可動部120eの±Y側、及び-Z側の所定の角度範囲で、反射面14eの反射光を遮る部材が存在しない状態にする。これにより、可動部120eの振れ角が大きくなっても、反射面14の反射光が遮られることはないため、可動部120eの光の走査角度が制限されず、大きな走査角度を得ることができる。例えば図29の-Y方向から+Y方向までを、反射面14eによる光の走査角度が180度の角度範囲とした場合、本実施形態では、180度以上の走査角度を実現することが可能となる。
一方、可動装置13fの製造時や使用時において、可動装置13fの周囲の温度変化により、可動装置13fに含まれる可動装置13eがX方向に膨張、又は収縮する場合がある。また、台座部70の底部部材72も周囲の温度変化により、X方向に膨張、又は収縮する場合がある。この場合に、可動装置13eと、底部部材72との間で膨張率、又は収縮率に違いがあると、両者を接着する箇所で応力が発生し、可動部120eが所望の回動をできなくなる場合がある。
これに対し、本実施形態では、可動装置13eの支持部140、可動部120e、及び駆動梁110a、110bを構成する材料と同じ材料、或いは熱膨張係数が近い材料で、底部部材72を構成している。これにより、可動装置13fの周囲の温度変化による支持部140、可動部120e、及び駆動梁110a、110bと底部部材72との間のX方向への膨張率、又は収縮率の違いを低減し、可動部120eに所望の回動をさせることができる。
具体的には、可動装置13eの支持部140、可動部120e、及び駆動梁110a、110bは、上述したようにSiを材料として構成されているため、底部部材72は同じSiか、或いは熱膨張係数がSiに近いテンパックスガラスを材料として構成されると好適である。
また、台座部70全体を熱膨張係数の小さな材料で構成してもよい。具体的には、293K(ケルビン)~2473Kの温度範囲での線熱膨張係数が0.0~5.0(10-6/K)の材料等が好適である。側壁部材71a及び71bと、底部部材72とを一体的に形成する場合は、シリコンやテンパックスガラス等を切削加工して、側壁部材71a及び71bと、底部部材72とを一体化した部材を製作してもよい。また、熱膨張係数の低い金属(インバー等)を鋳造加工や切削加工して、側壁部材71a及び71bと、底部部材72とを一体化した部材を製作してもよい。
<変形例>
ここで、図32は、第4の実施形態の可動装置の変形例の一例を説明する図である。
可動装置13gでは、光通過部74を形成する側壁部材71aの面に、傾斜面74gが形成されている。また、傾斜面74gは、E軸から離れるにつれ、光通過部74のX軸方向における幅が広くなるように形成されている。
同様に、光通過部74を形成する側壁部材71b、光通過部73を形成する側壁部材71aの面、及び光通過部73を形成する側壁部材71bの面にも、それぞれ傾斜面が設けられている。
この構成により、反射面14eによる反射光が±X方向に広がる光が台座部に遮られることを抑制できるため、広がり角度の制限を抑制し、大きな走査角度を得ることができる。
更に、第1~3の実施形態で説明した光通過部16及び17をガラスや透明樹脂材料などの透光性を持つ光学材料で接続、あるいは充填することにより、反射面14eの反射光を遮ることなく大きな走査角度を得ることができる。第1~3の実施形態において、光通過部16及び17を設けることで生じる可動装置の剛性の低下を抑制し、光通過部16及び17により分離された対向する支持部140間距離などの位置関係の変化を防止することができる。このことにより、パッケージ部材に可動装置を接着するパッケージング工程において、可動装置の取り扱いを簡単にできる。
更に、第4の実施形態で説明した光通過部73及び74をガラスや透明樹脂材料などの透光性を持つ光学材料で接続、あるいは充填することにより、反射面14eの反射光を遮ることなく大きな走査角度を得ることができる。光通過部73及び74を設けることで生じる可動装置の剛性の低下を抑制し、光通過部73及び74により分離された対向する側壁部材71aと側壁部材71b間の距離などの位置関係の変化を防止することができる。このことにより、パッケージ部材に可動装置を接着するパッケージング工程において、可動装置の取り扱いを簡単にできる。
以上、本発明の実施形態の例について記述したが、本発明は斯かる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。