JP7241643B2 - セメント用添加剤、セメント組成物、セメント強度向上方法 - Google Patents

セメント用添加剤、セメント組成物、セメント強度向上方法 Download PDF

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本発明は、セメント用添加剤、セメント組成物、および、セメント強度向上方法に関する。
モルタルやコンクリートなどのセメント組成物は、一般に、セメントと骨材と水を含んでおり、流動性を高めて減水させるために、好ましくはセメント混和剤がさらに含まれる。
最近、セメント組成物に対し、減水性能の向上に加えて、硬化物の強度性能の向上の要求が多くなってきている。例えば、セメント組成物の用途によっては、早期の強度発現が望まれており、各種検討がなされている(例えば、特許文献1)。
他方、セメント組成物の用途によっては、セメント組成物の硬化物の長期にわたっての強度向上(例えば4週間レベルでの強度向上など)が求められるようになっている。
特開2011-84459号公報
本発明の課題は、セメント組成物の硬化物の強度を長期にわたって顕著に向上させ得るセメント用添加剤を提供することにある。また、そのようなセメント用添加剤を含むセメント組成物を提供することにある。さらに、セメント組成物の硬化物の強度を長期にわたって顕著に向上させ得るセメント強度向上方法を提供することにある。
本発明の実施形態によるセメント用添加剤は、
ガラス転移温度が35℃~100℃であるポリマー粒子を含有するエマルション(A)と、アルカノールアミン化合物(B)および遅延剤(C)からなる群から選ばれる少なくとも1種とを含む。
一つの実施形態においては、上記アルカノールアミン化合物(B)が、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、メチルエタノールアミン、メチルイソプロパノールアミン、メチルジエタノールアミン、メチルジイソプロパノールアミン、ジエタノールイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールエタノールアミン、テトラヒドロキシエチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラキス(2-ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン、トリス(2-ヒドロキシブチル)アミンからなる群から選ばれる少なくとも1種である。
一つの実施形態においては、上記遅延剤(C)が、オキシカルボン酸もしくはその塩、ケト酸もしくはその塩、糖、糖アルコールからなる群から選ばれる少なくとも1種である。
本発明の実施形態によるセメント組成物は、本発明の実施形態によるセメント用添加剤を含む。
本発明の実施形態によるセメント強度向上方法は、
ガラス転移温度が35℃~100℃であるポリマー粒子を含有するエマルション(A)と、アルカノールアミン化合物(B)および遅延剤(C)からなる群から選ばれる少なくとも1種とを用いる。
本発明によれば、セメント組成物の硬化物の強度を長期にわたって顕著に向上させ得るセメント用添加剤を提供することができる。また、そのようなセメント用添加剤を含むセメント組成物を提供することができる。さらに、セメント組成物の硬化物の強度を長期にわたって顕著に向上させ得るセメント強度向上方法を提供することができる。
本明細書中で「(メタ)アクリル」との表現がある場合は、「アクリルおよび/またはメタクリル」を意味し、「(メタ)アクリレート」との表現がある場合は、「アクリレートおよび/またはメタクリレート」を意味し、「(メタ)アリル」との表現がある場合は、「アリルおよび/またはメタリル」を意味し、「(メタ)アクロレイン」との表現がある場合は、「アクロレインおよび/またはメタクロレイン」を意味する。また、本明細書中で「酸(塩)」との表現がある場合は、「酸および/またはその塩」を意味する。塩としては、例えば、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩が挙げられ、具体的には、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩などが挙げられる。
≪セメント用添加剤≫
本発明の実施形態によるセメント用添加剤は、ガラス転移温度が35℃~100℃であるポリマー粒子を含有するエマルション(A)と、アルカノールアミン化合物(B)および遅延剤(C)からなる群から選ばれる少なくとも1種とを含む。以下、ガラス転移温度が35℃~100℃であるポリマー粒子を含有するエマルション(A)を、単に「エマルション(A)」と称することがある。
エマルション(A)は、1種であってもよいし、2種以上であってもよい。
本発明の実施形態によるセメント用添加剤は、アルカノールアミン化合物(B)および遅延剤(C)からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む。すなわち、本発明の実施形態によるセメント用添加剤は、アルカノールアミン化合物(B)を含んで遅延剤(C)を含まない形態でもよいし、アルカノールアミン化合物(B)を含まずに遅延剤(C)を含む形態でもよいし、アルカノールアミン化合物(B)と遅延剤(C)の両方を含む形態でもよい。
アルカノールアミン化合物(B)は、1種であってもよいし、2種以上であってもよい。
遅延剤(C)は、1種であってもよいし、2種以上であってもよい。
本発明の実施形態によるセメント用添加剤は、エマルション(A)と、アルカノールアミン化合物(B)および遅延剤(C)からなる群から選ばれる少なくとも1種とを含むことにより、セメント組成物の硬化物の強度を長期にわたって顕著に向上させ得るという効果を発現する。具体的には、本発明が発現し得るセメント組成物の硬化物の長期強度向上効果は、エマルション(A)のみに起因するセメント組成物の硬化物の長期強度向上効果と、アルカノールアミン化合物(B)および遅延剤(C)からなる群から選ばれる少なくとも1種のみに起因するセメント組成物の硬化物の長期強度向上効果との単純和から予想される効果に比べて、顕著に高い相乗効果を示す。
上記の相乗効果をより具体的に説明すると、セメント組成物の硬化物の長期強度を測定する場合、本発明の実施形態によるセメント用添加剤は、
(i)エマルション(A)を含み、アルカノールアミン化合物(B)と遅延剤(C)のいずれも含まないセメント用添加剤を用いて測定される長期強度をaとし、
(ii)エマルション(A)を含まず、アルカノールアミン化合物(B)および遅延剤(C)からなる群から選ばれる少なくとも1種を含むセメント用添加剤を用いて測定される長期強度をbとし、
(iii)エマルション(A)と、アルカノールアミン化合物(B)および遅延剤(C)からなる群から選ばれる少なくとも1種とを含むセメント用添加剤を用いて測定される長期強度をcとし、
(iv)エマルション(A)を含まず、アルカノールアミン化合物(B)も遅延剤(C)も含まないセメント用添加剤を用いて測定される長期強度をdとすると、
c-d>(a-d)+(b-d)
の関係となる効果を発現し得る。
本発明の実施形態によるセメント用添加剤中の、エマルション(A)と、アルカノールアミン化合物(B)および遅延剤(C)からなる群から選ばれる少なくとも1種との合計量の含有割合は、好ましくは50質量%~100質量%であり、より好ましくは70質量%~100質量%であり、さらに好ましくは90質量%~100質量%であり、特に好ましくは95質量%~100質量%であり、最も好ましくは実質的に100質量%である。すなわち、最も好ましくは、本発明のセメント用添加剤は、実質的に、エマルション(A)と、アルカノールアミン化合物(B)および遅延剤(C)からなる群から選ばれる少なくとも1種からなる。なお、ここでいう「実質的に、エマルション(A)と、アルカノールアミン化合物(B)および遅延剤(C)からなる群から選ばれる少なくとも1種からなる」とは、本発明の実施形態によるセメント用添加剤に、本発明の効果を損なわない範囲で任意のその他の成分が微量含まれていてもよい意味である。
本発明の実施形態によるセメント用添加剤中の、エマルション(A)の固形分の含有割合は、セメントに対して、好ましくは0.00001質量%~5質量%であり、より好ましくは0.00005質量%~3質量%であり、さらに好ましくは0.0001質量%~1質量%であり、特に好ましくは0.0005質量%~0.5質量%であり、最も好ましくは0.001質量%~0.1質量%である。本発明の実施形態によるセメント用添加剤中の、エマルション(A)の固形分の含有割合を、上記範囲内に調整することによって、本発明の実施形態によるセメント用添加剤は、セメント組成物の硬化物の強度を長期にわたってより顕著に向上させ得る。エマルション(A)の固形分の含有割合が、セメントに対して、上記範囲から外れて少な過ぎたり多過ぎたりすると、セメント用添加剤は、セメント組成物の硬化物の強度を長期にわたって向上させ難いおそれがある。
本発明の実施形態によるセメント用添加剤中の、アルカノールアミン化合物(B)および遅延剤(C)からなる群から選ばれる少なくとも1種の含有割合は、セメントに対して、好ましくは0.00001質量%~5質量%であり、より好ましくは0.00005質量%~3質量%であり、さらに好ましくは0.0001質量%~1質量%であり、特に好ましくは0.0005質量%~0.5質量%であり、最も好ましくは0.001質量%~0.1質量%である。本発明の実施形態によるセメント用添加剤中の、アルカノールアミン化合物(B)および遅延剤(C)からなる群から選ばれる少なくとも1種の含有割合を、上記範囲内に調整することによって、本発明の実施形態によるセメント用添加剤は、セメント組成物の硬化物の強度を長期にわたってより顕著に向上させ得る。アルカノールアミン化合物(B)および遅延剤(C)からなる群から選ばれる少なくとも1種の含有割合が、セメントに対して、上記範囲から外れて少な過ぎたり多過ぎたりすると、セメント組成物の硬化物の強度を長期にわたって向上させ難いおそれがある。
本発明の実施形態によるセメント用添加剤中の、エマルション(A)の固形分に対する、アルカノールアミン化合物(B)および遅延剤(C)からなる群から選ばれる少なくとも1種の含有比は、[{(B)+(C)}/(A)]として、好ましくは0.01~10000であり、より好ましくは0.05~5000であり、さらに好ましくは0.1~1000であり、特に好ましくは0.5~800であり、最も好ましくは1~500である。本発明の実施形態によるセメント用添加剤中の、エマルション(A)の固形分に対する、アルカノールアミン化合物(B)および遅延剤(C)からなる群から選ばれる少なくとも1種の含有比を、上記範囲内に調整することによって、本発明の実施形態によるセメント用添加剤は、セメント組成物の硬化物の強度を長期にわたってより顕著に向上させ得る。エマルション(A)の固形分に対する、アルカノールアミン化合物(B)および遅延剤(C)からなる群から選ばれる少なくとも1種の含有比が、上記範囲から外れて少な過ぎたり多過ぎたりすると、セメント組成物の硬化物の強度を長期にわたって向上させ難いおそれがある。
<エマルション(A)>
エマルション(A)は、ガラス転移温度が35℃~100℃であるポリマー粒子を含有する。
ガラス転移温度(Tg)が35℃~100℃であるポリマー粒子を用いると、セメント組成物の硬化物の強度を長期にわたってより顕著に向上させ得る。ポリマー粒子のガラス転移温度(Tg)は、好ましくは40℃~100℃であり、より好ましくは45℃~100℃であり、さらに好ましくは45℃~90℃であり、特に好ましくは50℃~90℃である。
ポリマー粒子のガラス転移温度(Tg)は、ポリマー粒子の原料となるモノマー成分の種類や使用割合によって制御することができ、次のFOXの式により求められる他、DSC(示差走査熱量測定装置)やDTA(示差熱分析装置)によって求めることができる。
FOXの式: 「1/Tg=Σ(Wn/Tgn)/100」
FOXの式中、Tgは、絶対温度単位(K)でのポリマーのガラス転移温度である。W1、W2、・・・Wnは、ポリマーを構成するための全モノマー成分に対する各単量体の質量分率である。Tg1、Tg2、・・・Tgnは、各モノマー成分からなるホモポリマー(単独重合体)の絶対温度単位(K)でのガラス転移温度である。上記計算に用いるホモポリマーのガラス転移温度は、文献に記載されている値を用いることができ、例えば、「POLYMER HANDBOOK 第3版」(John Wiley & Sons, Inc.発行)などに記載されている。
ポリマー粒子は、酸価が5~100であることが好ましい。酸価が100以下であると、ポリマー粒子が適度な粘度を有するものとなり、製造がし易くなる。ポリマーの酸価は、より好ましくは5~50であり、さらに好ましくは5~25であり、特に好ましくは10~20である。
ポリマー粒子は、エマルション形態である。エマルション(A)は、ポリマー粒子を1種含むものであってもよく、2種以上含むものであってもよい。また、エマルション(A)は、ポリマー粒子として、カルボン酸(塩)基をもつモノマー単位を有するポリマーを含むことが好ましい。カルボン酸(塩)基とは、カルボン酸基および/またはカルボン酸塩基を意味する。
カルボン酸塩基の塩としては、例えば、金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩などが挙げられる。金属塩を形成する金属原子としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属原子等の1価の金属原子;カルシウム、マグネシウム等の2価の金属原子;アルミニウム、鉄等の3価の金属原子;などが挙げられる。有機アミン塩としては、エタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩等のアルカノールアミン塩;トリエチルアミン塩等のアルキルアミン塩;などが挙げられる。
カルボン酸(塩)基をもつモノマーとしては、(メタ)アクリル酸(塩)系モノマー(「酸基含有モノマー」と称することがある)が好ましい。(メタ)アクリル酸(塩)系モノマーとは、アクリロイル基、メタクリロイル基、これらの基における水素原子が他の原子や原子団に置き換わった基からなる群から選ばれる少なくとも1種の基を有し、かつ、該基中のカルボニル基を含んで構成されるカルボン酸基(-COOH基)、その塩、またはその酸無水物基(-C(=O)-O-C(=O)-基)を有するモノマーである。
(メタ)アクリル酸系モノマーの塩としては、前述したカルボン酸塩基の塩と同様のものを挙げることができる。
(メタ)アクリル酸(塩)系モノマーとしては、(メタ)アクリル酸またはその塩であることが好ましい。
(メタ)アクリル酸(塩)系モノマーは、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
エマルション(A)は、ポリマー粒子として、好ましくは、(メタ)アクリル系ポリマー粒子を含むことが好ましい。(メタ)アクリル系ポリマー粒子は、(メタ)アクリル酸(塩)系モノマー由来の構造単位と(メタ)アクリル酸(塩)系モノマー以外の(メタ)アクリル系モノマー由来の構造単位とを含むことが好ましい。(メタ)アクリル酸(塩)系モノマー以外の(メタ)アクリル系モノマーとは、(メタ)アクリル酸のカルボン酸基がカルボン酸エステル基となった構造を有するモノマーまたは該モノマーの誘導体を意味する。このようなカルボン酸エステル基は、アルキル基を有してもよく(アルキルエステル部)、このようなアルキルエステル部に官能基(水酸基、アミノ基、グリシジル基等)を有していてもよい。(メタ)アクリル酸(塩)系モノマー以外の(メタ)アクリル系モノマーには、アクリロイル基およびメタクリロイル基からなる群から選ばれるが一種以上が含まれてもよい。
(メタ)アクリル系ポリマー粒子を得るためのモノマー成分は、好ましくは、(メタ)アクリル酸(塩)系モノマーと(メタ)アクリル酸(塩)系モノマー以外の(メタ)アクリル系モノマーとを含み、それ以外に、その他の共重合可能な不飽和結合含有モノマーを含んでいてもよい。したがって、(メタ)アクリル系ポリマー粒子は、(メタ)アクリル酸(塩)系モノマー由来の構造単位と、(メタ)アクリル酸(塩)系モノマー以外の(メタ)アクリル系モノマー由来の構造単位とを含み、それ以外に、その他の共重合可能な不飽和結合含有モノマー由来の構造単位を含んでいてもよい。
(メタ)アクリル系ポリマー粒子を得るためのモノマー成分が(メタ)アクリル酸(塩)系モノマーを含むことにより、得られるエマルション(A)のセメント分散性が向上し得る。また、(メタ)アクリル酸(塩)系モノマー以外の(メタ)アクリル系モノマーや、その他の共重合可能な不飽和結合含有モノマーを含むことにより、重合体の酸価、ガラス転移温度等を調整しやすくなる。不飽和結合含有モノマーの不飽和結合は、炭素-炭素二重結合であることが好ましい。
(メタ)アクリル系ポリマー粒子は、好ましくは、(メタ)アクリル酸(塩)系モノマーが0.6質量%~12質量%、(メタ)アクリル酸(塩)系モノマー以外の(メタ)アクリル系モノマーおよびその他の共重合可能な不飽和結合含有モノマーが88質量%~99.4質量%、から構成されるモノマー成分を共重合して得られるものである。
(メタ)アクリル系ポリマー粒子を構成するモノマー成分の割合は、(メタ)アクリル酸(塩)系モノマーが0.8質量%以上、(メタ)アクリル酸(塩)系モノマー以外の(メタ)アクリル系モノマーおよびその他の共重合可能な不飽和結合含有モノマーが99.2質量%以下であることがより好ましく、(メタ)アクリル酸(塩)系モノマーが1.0質量%以上、(メタ)アクリル酸(塩)系モノマー以外の(メタ)アクリル系モノマーおよびその他の共重合可能な不飽和結合含有モノマーが99.0質量%以下であることがさらに好ましく、(メタ)アクリル酸(塩)系モノマーが1.2質量%以上、(メタ)アクリル酸(塩)系モノマー以外の(メタ)アクリル系モノマー及びその他の共重合可能な不飽和結合含有モノマーが98.8質量%以下であることが特に好ましい。また、(メタ)アクリル系ポリマー粒子を構成するモノマー成分の割合は、(メタ)アクリル酸(塩)系モノマーが6質量%以下、(メタ)アクリル酸(塩)系モノマー以外の(メタ)アクリル系モノマーおよびその他の共重合可能な不飽和結合含有モノマーが94質量%以上であることがより好ましく、(メタ)アクリル酸(塩)系モノマーが3質量%以下、(メタ)アクリル酸(塩)系モノマー以外の(メタ)アクリル系モノマーおよびその他の共重合可能な不飽和結合含有モノマーが97質量%以上であることがさらに好ましい。このような範囲内とすることにより、モノマー成分が安定に共重合し得る。
(メタ)アクリル酸(塩)系モノマー以外の(メタ)アクリル系モノマーとしては、例えば、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、プロピルアクリレート、プロピルメタクリレート、イソプロピルアクリレート、イソプロピルメタクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、イソブチルアクリレート、イソブチルメタクリレート、tert-ブチルアクリレート、tert-ブチルメタクリレート、ペンチルアクリレート、ペンチルメタクリレート、イソアミルアクリレート、イソアミルメタクリレート、ヘキシルアクリレート、ヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、オクチルアクリレート、オクチルメタクリレート、イソオクチルアクリレート、イソオクチルメタクリレート、ノニルアクリレート、ノニルメタクリレート、イソノニルアクリレート、イソノニルメタクリレート、デシルアクリレート、デシルメタクリレート、ドデシルアクリレート、ドデシルメタクリレート、トリデシルアクリレート、トリデシルメタクリレート、ヘキサデシルアクリレート、ヘキサデシルメタクリレート、オクタデシルアクリレート、オクタデシルメタクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート等の炭素数4~30の(メタ)アクリル酸アルキルエステル;2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルメタクリレート等の炭素数4~30の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル;エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,4-ブタンジオールジアクリレート、1,4-ブタンジオールジメタクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート;などが挙げられる。
(メタ)アクリル酸(塩)系モノマー以外の(メタ)アクリル系モノマーは、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
(メタ)アクリル系ポリマー粒子を得るためのモノマー成分は、(メタ)アクリル酸(塩)系モノマー以外の(メタ)アクリル系モノマーを、全モノマー成分100質量%に対して、20質量%以上含有することが好ましく、40質量%以上含有することがより好ましく、60質量%以上含有することがさらに好ましい。また、(メタ)アクリル酸(塩)系モノマー以外の(メタ)アクリル系モノマーを、全モノマー成分100質量%に対して、99.9質量%以下含有することが好ましく、99.5質量%以下含有することがより好ましい。
(メタ)アクリル酸(塩)系モノマー以外の(メタ)アクリル系モノマーは、炭素数4~30の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とすることが好ましい。より好ましくは、(メタ)アクリル系ポリマー粒子を得るための全モノマー成分100質量%に対して、炭素数4~30の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを50質量%以上含み、さらに好ましくは、70質量%以上含む。
(メタ)アクリル酸(塩)系モノマーおよび(メタ)アクリル酸(塩)系モノマー以外の(メタ)アクリル系モノマー以外の、その他の共重合可能な不飽和結合含有モノマーとしては、例えば、芳香環および共重合可能な不飽和結合を含有するモノマーなどが挙げられる。
芳香環および共重合可能な不飽和結合を含有するモノマーとしては、例えば、ジビニルベンゼン、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、エチルビニルベンゼンなどが挙げられ、好ましくはスチレンである。このように、(メタ)アクリル酸(塩)系モノマーおよび(メタ)アクリル酸(塩)系モノマー以外の(メタ)アクリル系モノマー以外の、その他の共重合可能な不飽和結合含有モノマーの種類や配合量を適宜選択して用いることで、比較的容易に、ポリマー性状を制御することが可能となる。
(メタ)アクリル系ポリマー粒子を得るためのモノマー成分が、芳香環および共重合可能な不飽和結合を含有するモノマーを含む場合は、(メタ)アクリル系ポリマー粒子を得るための全モノマー成分100質量%に対して、芳香環および共重合可能な不飽和結合を含有するモノマーを1質量%以上含むことが好ましく、5質量%以上含むことがより好ましく、10質量%以上含むことがさらに好ましく、20質量%以上含むことが特に好ましく、40質量%以上含むことが最も好ましい。また、(メタ)アクリル系ポリマー粒子を得るためのモノマー成分が、芳香環および共重合可能な不飽和結合を含有するモノマーを含む場合は、(メタ)アクリル系ポリマー粒子を得るための全モノマー成分100質量%に対して、芳香環および共重合可能な不飽和結合を含有するモノマーを、80質量%以下含むことが好ましく、70質量%以下含むことがより好ましく、60質量%以下含むことがさらに好ましい。なお、(メタ)アクリル系ポリマー粒子を得るためのモノマー成分として、芳香環および共重合可能な不飽和結合を含有するモノマーを用いなくてもよい。
その他の共重合可能な不飽和結合含有モノマーとしては、例えば、クロトン酸、チグリン酸、3-メチルクロトン酸、2-メチル-2-ペンテン酸、マレイン酸、イタコン酸、メサコン酸、シトラコン酸、フマル酸やその塩等の(メタ)アクリル酸(塩)系モノマー以外の酸(塩)系モノマー;ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等の炭素数3~10の脂肪酸ビニルエステル;ジアリルフタレート、トリアリルシアヌレート、アクリロニトリル、トリメチロールプロパンジアリルエーテル等の多官能化合物;メタクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド等の窒素原子含有モノマー;などが挙げられる。
その他の共重合可能な不飽和結合含有モノマーは、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
(メタ)アクリル系ポリマー粒子を得るためのモノマー成分が、上述した(メタ)アクリル酸(塩)系モノマー以外の酸(塩)系モノマーを含む場合は、(メタ)アクリル系ポリマー粒子を得るための全モノマー成分100質量%中、上述した(メタ)アクリル酸(塩)系モノマー以外の酸(塩)系モノマーの含有割合が、好ましくは0.1質量%~5質量%であり、より好ましくは0.3質量%~4質量%であり、さらに好ましくは0.5質量%~3質量%である。
(メタ)アクリル系ポリマー粒子を得るためのモノマー成分が、上述した(メタ)アクリル酸(塩)系モノマー以外の酸(塩)系モノマーを除く、それ以外の上述したその他の共重合可能な不飽和結合含有モノマーを含む場合、(メタ)アクリル系ポリマー粒子を得るための全モノマー成分100質量%中、上述したその他の共重合可能な不飽和結合含有モノマーの含有割合は、好ましくは1.1質量%~12質量%であり、より好ましくは1.3質量%~10質量%であり、さらに好ましくは1.5質量%~8.0質量%である。
エマルション(A)は、エマルションを形成する溶媒として水系溶媒を含むことが好ましい。水系溶媒は、水を含む限りその他の有機溶媒を含んでいてもよいが、溶媒として水のみを含むことが好ましい。
エマルション(A)が含む水系溶媒の量は、エマルション(A)全体100質量%に対して、好ましくは40質量%~80質量%であり、より好ましくは45質量%~72質量%であり、さらに好ましくは50質量%~71質量%である。
エマルション(A)のpHとしては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切なpHを採用し得る。このようなpHとしては、好ましくは2~10であり、より好ましくは3~10であり、さらに好ましくは7~10である。エマルション(A)のpHがこのような範囲にあると、エマルション(A)中のポリマー粒子が安定に存在することができる。エマルション(A)のpHは、アンモニア水、水溶性アミン類、水酸化アルカリ水溶液等を添加することによって調整することができる。
エマルション(A)の粘度としては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な粘度を採用し得る。このような粘度としては、好ましくは1mPa・s~10000mPa・sであり、より好ましくは5mPa・s~4000mPa・sであり、さらに好ましくは10mPa・s~2000mPa・sである。エマルション(A)の粘度がこのような範囲にあると、実際にセメント組成物を調整する際に容易に混合することが可能となる。エマルション(A)の粘度は、B型粘度計により測定することができる。
エマルション(A)に含まれるポリマー粒子の平均粒子径は、好ましくは10nm~5000nmであり、より好ましくは50nm~500nmであり、さらに好ましくは80nm~200nmである。エマルション(A)に含まれるポリマー粒子の平均粒子径は、動的光散乱測定法により測定することができる。
エマルション(A)は、ポリマー粒子を得るためのモノマー成分を乳化重合することにより製造することができる。乳化重合を行う形態としては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な形態を採用し得る。このような形態としては、例えば、水系溶媒中にモノマー成分、重合開始剤、乳化剤を適宜加えて重合することにより行う形態である。また、分子量調節のために連鎖移動剤等を用いてもよい。
水系溶媒としては特に限定されず、例えば、水、水と混じり合うことができる溶媒の1種または2種以上の混合溶媒、このような溶媒に水が主成分となるように混合した混合溶媒などが挙げられる。これらの中でも、水が好ましい。
乳化剤、重合開始剤、連鎖移動剤としては、例えば、WO2007/023819に記載のものなどを適宜選択して使用することができる。
乳化剤としては、例えば、乳化重合に通常使用されるものを用いればよく、例えば、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤、高分子界面活性剤、これらの反応性界面活性剤などが挙げられる。乳化剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
アニオン系界面活性剤としては、例えば、ナトリウムドデシルサルフェート、カリウムドデシルサルフェート、アンモニウムアルキルサルフェート等のアルキルサルフェート塩;ナトリウムドデシルポリグリコールエーテルサルフェート;ナトリウムスルホリシノエート;スルホン化パラフィン塩等のアルキルスルホネート;ナトリウムドデシルベンゼンスルホネート、アルカリフェノールヒドロキシエチレンのアルカリ金属サルフェート等のアルキルスルホネート;高アルキルナフタレンスルホン酸塩;ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物;ナトリウムラウレート、トリエタノールアミンオレエート、トリエタノールアミンアビエテート等の脂肪酸塩;ポリオキシアルキルエーテル硫酸エステル塩;ポリオキシエチレンカルボン酸エステル硫酸エステル塩;ポリオキシエチレンフェニルエーテル硫酸エステル塩;コハク酸ジアルキルエステルスルホン酸塩;ポリオキシエチレンアルキルアリールサルフェート塩等が挙げられる。アニオン系界面活性剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル;ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル;ソルビタン脂肪族エステル;ポリオキシエチレンソルビタン脂肪族エステル;グリセロールのモノラウレート等の脂肪族モノダリセライド;ポリオキシエチレンオキシプロピレン共重合体;エチレンオキサイドと脂肪族アミン、アミド、または酸との縮合生成物;などが挙げられる。ノニオン系界面活性剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
カチオン系界面活性剤としては、例えば、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、エステル型ジアルキルアンモニウム塩、アミド型ジアルキルアンモニウム塩、ジアルキルイミダゾリウム塩などが挙げられる。カチオン系界面活性剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
両性界面活性剤としては、例えば、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、アルキルジメチルアミンオキサイド、アルキルカルボキシメチルヒドロキシエチルイミダゾリウムベタイン、アルキルアミドプロピルべタイン、アルキルヒドロキシスルホベタインなどが挙げられる。両性界面活性剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
高分子界面活性剤としては、例えば、ポリビニルアルコールおよびその変性物;(メタ)アクリル酸系水溶性高分子;ヒドロキシエチル(メタ)アクリル酸系水溶性高分子;ヒドロキシプロピル(メタ)アクリル酸系水溶性高分子;ポリビニルビロリドン等が挙げられる。高分子界面活性剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
乳化剤の使用量としては、用いる乳化剤の種類やモノマー成分の種類等に応じて適宜設定すればよい。このような乳化剤の使用量としては、ポリマー粒子を得るためのモノマー成分の全量100質量%に対して、好ましくは0.3質量%~10質量%であり、より好ましくは0.5質量%~5質量%である。
重合開始剤としては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な重合開始剤を採用し得る。このような重合開始剤としては、代表的には、熱によって分解し、ラジカル分子を発生させる物質であり、好ましくは、水溶性重合開始剤である。このような重合開始剤としては、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩類;2,2-アゾビス(2-アミジノプロパン)二塩酸塩、4,4-アゾビス(4-シアノペンタン酸)等のアゾ化合物;過酸化水素等の熱分解系開始剤;過酸化水素とアスコルビン酸、t-ブチルヒドロパーオキサイドとロンガリット、過硫酸カリウムと金属塩、過硫酸アンモニウムと亜硫酸水素ナトリウム等のレドックス系重合開始剤;などが挙げられる。重合開始剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
重合開始剤の使用量としては、用いる重合開始剤の種類やモノマー成分の種類等に応じて適宜設定すればよい。このような重合開始剤の使用量としては、ポリマー粒子を得るためのモノマー成分の全量100質量%に対して、好ましくは0.1質量%~2質量%であり、より好ましくは0.2質量%~1質量%である。
重合開始剤には、乳化重合を促進させるため、必要に応じて、還元剤を併用することができる。還元剤としては、例えば、アスコルビン酸、酒石酸、クエン酸、ブドウ糖等の還元性有機化合物;チオ硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム等の還元性無機化合物;などが挙げられる。還元剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
還元剤の使用量としては、用いる還元剤の種類やモノマー成分の種類等に応じて適宜設定すればよい。このような還元剤の使用量としては、ポリマー粒子を得るためのモノマー成分の全量100質量%に対して、好ましくは0.05質量%~1質量%である。
連鎖移動剤としては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な連鎖移動剤を採用し得る。このような連鎖移動剤としては、例えば、へキシルメルカプタン、オクチルメルカプタン、n-ドデシルメルカプタン、t-ドデシルメルカプタン、n-ヘキサデシルメルカプタン、n-テトラデシルメルカプタン等のアルキルメルカブタン類;四塩化炭素、四臭化炭素、臭化工チレン等のハロゲン化炭化水素;メルカプト酢酸、2-エチルへキシルエステル、メルカプトプロピオン酸、2-エチルへキシルエステル、メルカプトピロピオン酸トリデシルエステル等のメルカプトカルボン酸アルキルエステル;メルカプト酢酸メトキシブチルエステル、メルカプトプロピオン酸メトキシブチルエステル等のメルカプトカルボン酸アルコキシアルキルエステル;オクタン酸2-メルカプトエチルエステル等のカルボン酸メルカプトアルキルエステル; α-メチルスチレンダイマー;ターピノーレン;α-テルビネン;γ-テルビネン;ジペンテン;アニソール;アリルアルコール;などが挙げられる。これらの連鎖移動剤の中でも、へキシルメルカプタン、オクチルメルカプタン、n-ドデシルメルカプタン、t-ドデシルメルカプタン、n-ヘキサデシルメルカプタン、n-テトラデシルメルカプタン等のアルキルメルカプタン類が好ましい。連鎖移動剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
連鎖移動剤の使用量としては、用いる連鎖移動剤の種類やモノマー成分の種類等に応じて適宜設定すればよい。このような連鎖移動剤の使用量としては、ポリマー粒子を得るためのモノマー成分の全量100質量%に対して、好ましくは2質量%以下であり、より好ましくは1質量%以下である。
重合は、必要に応じて、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム等のキレート剤、ポリアクリル酸ナトリウム等の分散剤や、無機塩等の存在下で行ってもよい。また、モノマー成分や重合開始剤等の添加方法としては、例えば、一括添加法、連続添加法、多段添加法等の方法を適用することができる。また、これらの添加方法を適宜組み合わせてもよい。
重合の条件に関し、重合温度としては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な重合温度を採用し得る。このような重合温度としては、好ましくは0℃~100℃であり、より好ましくは40℃~95℃である。
重合の条件に関し、重合時間としては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な重合時間を採用し得る。このような重合時間としては、好ましくは1時間~15時間であり、より好ましくは2時間~10時間である。
エマルション(A)の製造方法においては、乳化重合によりエマルションを製造した後、中和剤によりエマルションを中和することが好ましい。これにより、エマルションが安定化されることになる。
中和剤としては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な中和剤を採用し得る。このような中和剤としては、例えば、トリエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、モルホリン等の三級アミン;ジグリコールアミン、アンモニア水;水酸化ナトリウム;などが挙げられる。中和剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
<アルカノールアミン化合物(B)>
アルカノールアミン化合物(B)としては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切なアルカノールアミン化合物を採用し得る。このようなアルカノールアミン化合物としては、例えば、低分子型のアルカノールアミン化合物、高分子型のアルカノールアミン化合物などが挙げられる。
低分子型のアルカノールアミン化合物としては、例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、メチルエタノールアミン、メチルイソプロパノールアミン、メチルジエタノールアミン、メチルジイソプロパノールアミン、ジエタノールイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールエタノールアミン、テトラヒドロキシエチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラキス(2-ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン、トリス(2-ヒドロキシブチル)アミンなどが挙げられる。これらの中でも、低分子型のアルカノールアミン化合物としては、好ましくは、トリイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールエタノールアミン、N,N,N’,N’-テトラキス(2-ヒドロキシプロピル)エチレンジアミンが挙げられる。他の低分子型のアルカノールアミン化合物としては、例えば、トリイソプロパノールアミンの骨格を有するモノマーなども挙げられる。
高分子型のアルカノールアミン化合物としては、例えば、アルカノールアミンの一部がポリマーと結合している構造のアルカノールアミンが挙げられる。このような高分子型のアルカノールアミン化合物としては、例えば、トリイソプロパノールアミンの骨格を有するポリマーが挙げられる。
<遅延剤(C)>
遅延剤(C)は、好ましくは、オキシカルボン酸もしくはその塩、ケト酸もしくはその塩、糖、糖アルコールから選ばれる少なくとも1種である。
遅延剤(C)が、オキシカルボン酸もしくはその塩、ケト酸もしくはその塩、糖、糖アルコールから選ばれる2種以上である場合、その好ましい組み合わせは、オキシカルボン酸もしくはその塩を必須に含む組み合わせである。例えば、オキシカルボン酸もしくはその塩、ケト酸もしくはその塩、糖、糖アルコールから選ばれる2種である場合には、好ましい組み合わせは、オキシカルボン酸もしくはその塩の2種、オキシカルボン酸もしくはその塩の1種とケト酸もしくはその塩の1種、オキシカルボン酸もしくはその塩の1種と糖の1種、オキシカルボン酸もしくはその塩の1種と糖アルコールの1種である。
オキシカルボン酸としては、任意の適切なオキシカルボン酸を採用し得る。このようなオキシカルボン酸としては、例えば、グリコール酸、グルコン酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、グルコヘプトン酸、アラボン酸などが挙げられる。本発明の効果がより発現し得る点で、好ましくは、グリコール酸、グルコン酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸から選ばれる少なくとも1種である。
オキシカルボン酸の塩として採用し得る塩としては、例えば、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アンモニウム、トリエタノールアミン等の、無機塩または有機塩が挙げられる。
オキシカルボン酸塩としては、好ましくは、グルコン酸ナトリウムが挙げられる。
ケト酸としては、任意の適切なケト酸を採用し得る。このようなケト酸としては、例えば、ピルビン酸、オキソグルタル酸などが挙げられる。本発明の効果がより発現し得る点で、好ましくは、ピルビン酸である。
ケト酸の塩として採用し得る塩としては、例えば、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アンモニウム、トリエタノールアミン等の、無機塩または有機塩が挙げられる。
糖としては、任意の適切な糖を採用し得る。このような糖としては、例えば、グルコース、フラクトース、ガラクトース、マンノース、キシロース、アラビノース、リボース、異性化糖などの単糖類;マルトース、スクロース(シュークロースともいう)、ラクトースなどの二糖類;ラフィノースなどの三糖類;デキストリンなどのオリゴ糖;などが挙げられる。本発明の効果がより発現し得る点で、好ましくは、グルコース、スクロースである。
糖アルコールとしては、任意の適切な糖アルコールを採用し得る。このような糖アルコールとしては、例えば、ソルビトール、グリセリン、キシリトール、D-アラビニトール、L-アラビニトール、リビトール、ボレミトール、ペルセイトール、エリスリトール、マンニトール、ガラクチトール、D-トレイトール、L-トレイトール、D-イジトール、D-グリシドール、D-エリトローD-ガラクト-オクチトールなどが挙げられる。本発明の効果がより発現し得る点で、好ましくは、ソルビトールである。
本発明の実施形態によるセメント用添加剤は、エマルション(A)とアルカノールアミン化合物(B)および遅延剤(C)からなる群から選ばれる少なくとも1種以外に、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切なその他の成分を含んでいてもよい。
≪セメント組成物≫
本発明の実施形態によるセメント組成物は、本発明の実施形態によるセメント用添加剤を含む。
本発明の実施形態によるセメント組成物は、本発明の実施形態によるセメント用添加剤の他に、好ましくは、セメントと水と骨材を含み、より好ましくは、セメントと水と骨材とセメント混和剤を含む。
骨材としては、細骨材(砂等)や粗骨材(砕石等)などの任意の適切な骨材を採用し得る。このような骨材としては、例えば、砂利、砕石、水砕スラグ、再生骨材が挙げられる。また、このような骨材として、珪石質、粘土質、ジルコン質、ハイアルミナ質、炭化珪素質、黒鉛質、クロム質、クロマグ質、マグネシア質等の耐火骨材も挙げられる。
セメント混和剤は、本発明の効果をより効果的に発現し得る点で、好ましくは、セメント混和剤用ポリマーを含む。
セメント混和剤用ポリマーとしては、例えば、セメント分散剤が挙げられる。セメント分散剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
セメント分散剤としては、例えば、分子中にスルホン酸基を有するスルホン酸系分散剤、ポリカルボン酸系分散剤などが挙げられる。
スルホン酸系分散剤としては、例えば、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、メチルナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、アントラセンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物等の、ポリアルキルアリールスルホン酸塩系スルホン酸系分散剤;メラミンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物等の、メラミンホルマリン樹脂スルホン酸塩系スルホン酸系分散剤;アミノアリールスルホン酸-フェノール-ホルムアルデヒド縮合物等の、芳香族アミノスルホン酸塩系スルホン酸系分散剤;リグニンスルホン酸塩、変性リグニンスルホン酸塩等のリグニンスルホン酸塩系スルホン酸系分散剤;ポリスチレンスルホン酸塩系スルホン酸系分散剤;などが挙げられる。
セメント混和剤は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な他のセメント添加剤(材)を含有することができる。このような他のセメント添加剤(材)としては、例えば、以下の(1)~(13)に例示するような他のセメント添加剤(材)が挙げられる。セメント混和剤に含まれ得るセメント混和剤用ポリマーとこのような他のセメント添加剤(材)との配合比は、用いる他のセメント添加剤(材)の種類や目的に応じて、任意の適切な配合比を採用し得る。
(1)水溶性高分子物質:メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等の非イオン性セルロースエーテル類;酵母グルカンやキサンタンガム、β-1.3グルカン類等の微生物醗酵によって製造される多糖類;ポリアクリルアミド等。
(2)高分子エマルジョン:(メタ)アクリル酸アルキル等の各種ビニル単量体の共重合物等。
(3)硬化遅延剤:グルコン酸、グルコヘプトン酸、アラボン酸、リンゴ酸、クエン酸等のオキシカルボン酸もしくはその塩;糖及び糖アルコール;グリセリン等の多価アルコール;アミノトリ(メチレンホスホン酸)等のホスホン酸及びその誘導体等。
なお、エマルション(A)の固形分に対する硬化遅延剤の割合としては、好ましくは1質量%~10000質量%であり、より好ましくは10質量%~8000質量%であり、さらに好ましくは100質量%~6000質量%であり、特に好ましくは500質量%~5000質量%である。
(4)早強剤・促進剤:塩化カルシウム、亜硝酸カルシウム、硝酸カルシウム、臭化カルシウム、ヨウ化カルシウム等の可溶性カルシウム塩;塩化鉄、塩化マグネシウム等の塩化物;硫酸塩;水酸化カリウム;水酸化ナトリウム;炭酸塩;チオ硫酸塩;ギ酸及びギ酸カルシウム等のギ酸塩;アルカノールアミン;アルミナセメント;カルシウムアルミネートシリケート等。
(5)オキシアルキレン系消泡剤:ジエチレングリコールヘプチルエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルエーテル類;ポリオキシアルキレンアセチレンエーテル類;(ポリ)オキシアルキレン脂肪酸エステル類;ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル類;ポリオキシアルキレンアルキル(アリール)エーテル硫酸エステル塩類;ポリオキシアルキレンアルキルリン酸エステル類;ポリオキシプロピレンポリオキシエチレンラウリルアミン(プロピレンオキシド1~20モル付加、エチレンオキシド1~20モル付加物等)、アルキレンオキシドを付加させた硬化牛脂から得られる脂肪酸由来のアミン(プロピレンオキシド1~20モル付加、エチレンオキシド1~20モル付加物等)等のポリオキシアルキレンアルキルアミン類;ポリオキシアルキレンアミド等。
(6)オキシアルキレン系以外の消泡剤:鉱油系、油脂系、脂肪酸系、脂肪酸エステル系、アルコール系、アミド系、リン酸エステル系、金属石鹸系、シリコーン系等の消泡剤。
(7)AE剤:樹脂石鹸、飽和又は不飽和脂肪酸、ヒドロキシステアリン酸ナトリウム、ラウリルサルフェート、ABS(アルキルベンゼンスルホン酸)、アルカンスルホネート、ポリオキシエチレンアルキル(フェニル)エーテル、ポリオキシエチレンアルキル(フェニル)エーテル硫酸エステル又はその塩、ポリオキシエチレンアルキル(フェニル)エーテルリン酸エステル又はその塩、タンパク質材料、アルケニルスルホコハク酸、α-オレフィンスルホネート等。
(8)その他界面活性剤:各種アニオン性界面活性剤;アルキルトリメチルアンモニウムクロライド等の各種カチオン性界面活性剤;各種ノニオン性界面活性剤;各種両性界面活性剤等。
(9)防水剤:脂肪酸(塩)、脂肪酸エステル、油脂、シリコン、パラフィン、アスファルト、ワックス等。
(10)防錆剤:亜硝酸塩、リン酸塩、酸化亜鉛等。
(11)ひび割れ低減剤:ポリオキシアルキルエーテル等。
(12)膨張材;エトリンガイト系、石炭系等。
(13)キレート剤;エチレンジアミン四酢酸ナトリウム、3-ヒドロキシ-2,2’-イミノジコハク酸4ナトリウム等。
その他の公知のセメント添加剤(材)としては、セメント湿潤剤、増粘剤、分離低減剤、凝集剤、乾燥収縮低減剤、強度増進剤、セルフレベリング剤、防錆剤、着色剤、防カビ剤等を挙げることができる。これら公知のセメント添加剤(材)は1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
本発明の実施形態によるセメント組成物に含まれるセメントとしては、任意の適切なセメントを採用し得る。このようなセメントとしては、例えば、ポルトランドセメント(普通、早強、超早強、中庸熱、耐硫酸塩及びそれぞれの低アルカリ形)、各種混合セメント(高炉セメント、シリカセメント、フライアッシュセメント)、白色ポルトランドセメント、アルミナセメント、超速硬セメント(1クリンカー速硬性セメント、2クリンカー速硬性セメント、リン酸マグネシウムセメント)、グラウト用セメント、油井セメント、低発熱セメント(低発熱型高炉セメント、フライアッシュ混合低発熱型高炉セメント、ビーライト高含有セメント)、超高強度セメント、セメント系固化材、エコセメント(都市ごみ焼却灰、下水汚泥焼却灰の一種以上を原料として製造されたセメント)などが挙げられる。さらに、本発明のセメント組成物には、高炉スラグ、フライアッシュ、シンダーアッシュ、クリンカーアッシュ、ハスクアッシュ、シリカ粉末、石灰石粉末等の微粉体や石膏が添加されていても良い。本発明の実施形態によるセメント組成物に含まれるセメントは、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
本発明の実施形態によるセメント組成物においては、その1mあたりの単位水量、セメント使用量、および水/セメント比としては任意の適切な値を設定し得る。このような値としては、好ましくは、単位水量が100kg/m~185kg/mであり、使用セメント量が250kg/m~800kg/mであり、水/セメント比(質量比)=0.1~0.7であり、より好ましくは、単位水量が120kg/m~175kg/mであり、使用セメント量が270kg/m~800kg/mであり、水/セメント比(質量比)=0.12~0.65である。このように、本発明の実施形態によるセメント組成物は、貧配合~富配合まで幅広く使用可能であり、単位セメント量の多い高強度コンクリート、単位セメント量が300kg/m以下の貧配合コンクリートのいずれにも有効である。
本発明の実施形態によるセメント組成物がセメント混和剤用ポリマーを含む場合、本発明の実施形態によるセメント組成物中の、セメント混和剤用ポリマーの含有割合としては、目的に応じて、任意の適切な含有割合を採用し得る。このような含有割合としては、水硬セメントを用いるモルタルやコンクリート等に使用する場合には、セメント100質量部に対するセメント混和剤用ポリマーの含有割合として、好ましくは0.01質量部~10質量部であり、より好ましくは0.02質量部~5質量部であり、さらに好ましくは0.05質量部~3質量部である。このような含有割合とすることにより、単位水量の低減、強度の増大、耐久性の向上等の各種の好ましい諸効果がもたらされる。上記含有割合が0.01質量部未満の場合、十分な性能を発現できないおそれがあり、上記含有割合が10質量部を超える場合、発現できる効果が実質上頭打ちとなって経済性の面からも不利となるおそれがある。
本発明の実施形態によるセメント組成物中のセメント混和剤の含有割合としては、目的に応じて、任意の適切な含有割合を採用し得る。このような含有割合としては、セメント100質量部に対するセメント混和剤の含有割合として、好ましくは0.01質量部~10質量部であり、より好ましくは0.05質量部~8質量部であり、さらに好ましくは0.1質量部~5質量部である。上記含有割合が0.01質量部未満の場合、十分な性能を発現できないおそれがあり、上記含有割合が10質量部を超える場合、発現できる効果が実質上頭打ちとなって経済性の面からも不利となるおそれがある。
本発明の実施形態によるセメント組成物は、レディーミクストコンクリート、コンクリート2次製品用のコンクリート、遠心成形用コンクリート、振動締め固め用コンクリート、蒸気養生コンクリート、吹付けコンクリート等に有効であり得る。本発明のセメント組成物は、中流動コンクリート(スランプ値が22~25cmのコンクリート)、高流動コンクリート(スランプ値が25cm以上で、スランプフロー値が50~70cmのコンクリート)、自己充填性コンクリート、セルフレベリング材等の高い流動性を要求されるモルタルやコンクリートにも有効であり得る。
本発明の実施形態によるセメント組成物は、構成成分を任意の適切な方法で配合して調整すれば良い。例えば、構成成分をミキサー中で混練する方法などが挙げられる。
≪セメント強度向上方法≫
本発明の実施形態によるセメント強度向上方法は、ガラス転移温度が35℃~100℃であるポリマー粒子を含有するエマルション(A)と、アルカノールアミン化合物(B)および遅延剤(C)からなる群から選ばれる少なくとも1種とを用いる。
エマルション(A)、アルカノールアミン化合物(B)、遅延剤(C)については、上述の≪セメント用添加剤≫の項における説明を援用し得る。
本発明の実施形態によるセメント強度向上方法は、好ましくは、セメントを含むセメント配合物に、エマルション(A)、アルカノールアミン化合物(B)、遅延剤(C)を添加する。
セメント配合物は、好ましくは、セメントと水と骨材を含み、より好ましくは、セメントと水と骨材とセメント混和剤を含む。
セメント配合物に含まれ得るセメント、水、骨材、セメント混和剤については、上述の≪セメント組成物≫の項における説明を援用し得る。
本発明の実施形態によるセメント強度向上方法における、エマルション(A)の固形分の、セメントに対する添加量は、好ましくは0.00001質量%~5質量%であり、より好ましくは0.00005質量%~3質量%であり、さらに好ましくは0.0001質量%~1質量%であり、特に好ましくは0.0005質量%~0.5質量%であり、最も好ましくは0.001質量%~0.1質量%である。本発明の実施形態によるセメント強度向上方法における、エマルション(A)の固形分の、セメントに対する添加量を、上記範囲内に調整することによって、本発明の実施形態によるセメント強度向上方法は、セメント組成物の硬化物の強度を長期にわたって顕著に向上させ得るという効果を発現する。本発明の実施形態によるセメント強度向上方法における、エマルション(A)の固形分の、セメントに対する添加量が、上記範囲から外れて少な過ぎたり多過ぎたりすると、セメント組成物の硬化物の強度を長期にわたって向上させ難いおそれがある。
本発明の実施形態によるセメント強度向上方法においては、アルカノールアミン化合物(B)および遅延剤(C)からなる群から選ばれる少なくとも1種を、セメントを含むセメント配合物に添加してもよい。アルカノールアミン化合物(B)および遅延剤(C)からなる群から選ばれる少なくとも1種は、アルカノールアミン化合物(B)を含んで遅延剤(C)を含まない形態でもよいし、アルカノールアミン化合物(B)を含まずに遅延剤(C)を含む形態でもよいし、アルカノールアミン化合物(B)と遅延剤(C)の両方を含む形態でもよい。
アルカノールアミン化合物(B)および遅延剤(C)からなる群から選ばれる少なくとも1種は、化合物(A)と一緒に添加してもよいし、別々に添加してもよい。また、アルカノールアミン化合物(B)および遅延剤(C)からなる群から選ばれる少なくとも1種は、化合物(A)と、同時に添加してもよいし、時間を少なくとも一部ずらして添加してもよい。
アルカノールアミン化合物(B)は、1種であってもよいし、2種以上であってもよい。
遅延剤(C)は、1種であってもよいし、2種以上であってもよい。
本発明の実施形態によるセメント強度向上方法においては、好ましくは、エマルション(A)と、アルカノールアミン化合物(B)および遅延剤(C)からなる群から選ばれる少なくとも1種とを、セメントを含むセメント配合物に添加する。このように、エマルション(A)と、アルカノールアミン化合物(B)および遅延剤(C)からなる群から選ばれる少なくとも1種とを併用することにより、セメント組成物の硬化物の強度を長期にわたって顕著に向上させ得るという効果を発現し得る。具体的には、本発明が発現し得るセメント組成物の硬化物の長期強度向上効果は、エマルション(A)のみに起因するセメント組成物の硬化物の長期強度向上効果と、アルカノールアミン化合物(B)および遅延剤(C)からなる群から選ばれる少なくとも1種に起因するセメント組成物の硬化物の長期強度向上効果との単純和から予想される効果に比べて、顕著に高い相乗効果を示す。
上記の相乗効果をより具体的に説明すると、セメント組成物の硬化物の長期強度を測定する場合、本発明の実施形態によるセメント強度向上方法においては、
(i)エマルション(A)を添加し、アルカノールアミン化合物(B)と遅延剤(C)のいずれも添加しない場合に測定される長期強度をaとし、
(ii)エマルション(A)を添加せず、アルカノールアミン化合物(B)および遅延剤(C)からなる群から選ばれる少なくとも1種を添加した場合に測定される長期強度をbとし、
(iii)エマルション(A)と、アルカノールアミン化合物(B)および遅延剤(C)からなる群から選ばれる少なくとも1種とを添加した場合に測定される長期強度をcとすると、
(iv)エマルション(A)を添加せず、アルカノールアミン化合物(B)も遅延剤(C)も添加しない場合に測定される長期強度をdとすると、
c-d>(a-d)+(b-d)
の関係となる効果を発現し得る。
本発明の実施形態によるセメント強度向上方法における、アルカノールアミン化合物(B)および遅延剤(C)からなる群から選ばれる少なくとも1種の、セメントに対する添加量は、好ましくは0.00001質量%~5質量%であり、より好ましくは0.00005質量%~3質量%であり、さらに好ましくは0.0001質量%~1質量%であり、特に好ましくは0.0005質量%~0.5質量%であり、最も好ましくは0.001質量%~0.1質量%である。本発明の実施形態によるセメント強度向上方法における、アルカノールアミン化合物(B)および遅延剤(C)からなる群から選ばれる少なくとも1種の、セメントに対する添加量を、上記範囲内に調整することによって、本発明の実施形態によるセメント強度向上方法は、セメント組成物の硬化物の強度を長期にわたって顕著に向上させ得るという効果を発現し得る。本発明の実施形態によるセメント強度向上方法における、アルカノールアミン化合物(B)および遅延剤(C)からなる群から選ばれる少なくとも1種の、セメントに対する添加量が、上記範囲から外れて少な過ぎたり多過ぎたりすると、セメント組成物の硬化物の強度を長期にわたって向上させ難いおそれがある。
本発明の実施形態によるセメント強度向上方法において、エマルション(A)の固形分に対する、アルカノールアミン化合物(B)および遅延剤(C)からなる群から選ばれる少なくとも1種の含有比は、[{(B)+(C)}/(A)]として、好ましくは0.01~10000であり、より好ましくは0.05~5000であり、さらに好ましくは0.1~1000であり、特に好ましくは0.5~800であり、最も好ましくは1~500である。本発明の実施形態によるセメント強度向上方法において、エマルション(A)の固形分に対する、アルカノールアミン化合物(B)および遅延剤(C)からなる群から選ばれる少なくとも1種の含有比を、上記範囲内に調整することによって、本発明の実施形態によるセメント強度向上方法において、セメント組成物の硬化物の強度を長期にわたってより顕著に向上させ得る。エマルション(A)の固形分に対する、アルカノールアミン化合物(B)および遅延剤(C)からなる群から選ばれる少なくとも1種の含有比が、上記範囲から外れて少な過ぎたり多過ぎたりすると、セメント組成物の硬化物の強度を長期にわたって向上させ難いおそれがある。
アルカノールアミン化合物(B)および遅延剤(C)については、上述の≪セメント用添加剤≫の項における説明を援用し得る。
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例には限定されない。なお、特に明記しない限り、部とある場合は質量部を意味し、%とある場合は質量%を意味する。
本実施例を含め、Foxの計算式より重合体を構成する単量体成分のガラス転移温度(Tg)を算出するのに使用したホモポリマーのTgを下記に記した。
メチルメタクリレート:105℃
エチルアクリレート:-22℃
アクリル酸:95℃
ヒドロキシエチルメタクリレート:55℃
<平均粒子径>
ポリマー粒子の平均粒子径は、動的光散乱法による粒度分布測定器(大塚電子株式会社FPAR-1000)を用いて測定した。
<固形分(N.V.)>
固形分含量は、以下のようにして測定した。
1.アルミ皿を精秤する。
2.1で精秤したアルミ皿に固形分測定物を精秤する。
3.窒素雰囲気下130℃に調温した乾燥機に2で精秤した固形分測定物を1.5時間入れる。
4.1時間後、乾燥機から取り出し、室温のデシケーター内で15分間放冷する。
5.15分後、デシケーターから取り出し、アルミ皿+測定物を精秤する。
6.5で得られた質量から1で得られたアルミ皿の質量を差し引き、2で得られた固形分測定物の質量で除することで固形分を測定する。
<質量平均分子量分析条件>
・使用カラム:東ソー株式会社製、TSKguardcolumnα+TSKgelα-5000+TSKgelα-4000+TSKgelα-3000を各1本ずつ連結して使用した。
・溶離液:リン酸二水素ナトリウム・2HO:62.4g、リン酸水素二ナトリウム・12HO:143.3gを、イオン交換水:7794.3gに溶解させた溶液に、アセトニトリル:2000gを混合した溶液を用いた。
・検出器:Viscotek社製のトリプル検出器「Model302光散乱検出器」、直角光散乱として90°散乱角度、低角度光散乱として7°散乱角度、セル容量として18μL、波長として670nm。
・標準試料:東ソー株式会社製、ポリエチレングリコールSE-8(Mw=l07000)を用い、そのdn/dCを0.135ml/g、溶離液の屈折率を1.333として装置定数を決定した。
・打ち込み量
標準試料:ポリマー濃度が0.2vol%になるように上記溶離液で溶解させた溶液を100μL注入した。
サンプル:ポリマー濃度が1.0vol%になるように上記溶離液で溶解させた溶液を100μL注入した。
・流速:0.8ml/min
・カラム温度:40℃
<コンクリート試験>
セメントとして普通ポルトランドセメント(太平洋セメント社製)、細骨材として大井川水系産陸砂、粗骨材として青海産砕石、混練水として水道水を用い、セメント:382kg/m、水:172kg/m、細骨材:796kg/m、粗骨材:930kg/m、細骨材率(細骨材/細粗骨材+粗骨材)(容積比):47%、水/セメント比(質量比)=0.45の配合にてコンクリート組成物を調製した。なお、コンクリート組成物の温度が20℃の試験温度になるように、試験に使用する材料、強制練りミキサー、測定器具類を上記の試験温度雰囲気下で調温し、混練および各測定は上記の試験温度雰囲気下で行った。また、コンクリート組成物中の気泡がコンクリート組成物の流動性に及ぼす影響を避けるために、必要に応じてオキシアルキレン系消泡剤を用い、空気量が1.0±0.5%となるように調整した。
上記条件下に強制練りミキサーを用いて混練時間90秒間でコンクリートを製造し、スランプ値、フロー値及び空気量を測定した。なお、スランプ値、フロー値、および空気量の測定は、日本工業規格(JIS-A-1101、1128)に準拠して行った。また、セメント分散剤の添加量は、フロー値が37.5~42.5cmになる添加量とした。
<28日後の圧縮強度の測定>
混練後、フロー値と空気量を測定し、圧縮強度試験用試料を作成し、以下の条件にて、28日後の圧縮強度を測定した。
供試体作成:100mm×200mm
供試体養生(28日):温度約20℃、湿度60%、恒温恒湿空気養生を24時間行った後、27日間水中で養生
供試体研磨:供試体面研磨(供試体研磨仕上げ機使用)
圧縮強度測定:自動圧縮強度測定器(前川製作所)
〔製造例1〕:セメント混和剤としての重合体(1)の製造
ジムロート冷却管、テフロン(登録商標)製の撹拌翼と撹拌シール付の撹拌器、窒素導入管、温度センサーを備えたガラス製反応容器にイオン交換水80.0部を仕込み、250rpmで撹拌下、窒素を200mL/分で導入しながら70℃まで加温した。次に、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリル酸エステル(エチレンオキシドの平均付加モル数9個)133.4部、メタクリル酸26.6部、メルカプトプロピオン酸1.53部およびイオン交換水106.7部の混合溶液を4時間かけて滴下し、それと同時に過硫酸アンモニウム1.19部とイオン交換水50.6部の混合溶液を5時間かけて滴下した。滴下完了後1時間、70℃に保って重合反応を完結させた。そして、水酸化ナトリウム水溶液で中和して、重量平均分子量100000の重合体(1)の水溶液を得た。
〔製造例2〕:セメント混和剤としての重合体(2)の製造
ジムロート冷却管、テフロン(登録商標)製の撹拌翼と撹拌シール付の撹拌器、窒素導入管、温度センサーを備えたガラス製反応容器に、3-メチル-3-ブテン-1-オール(イソプレノール)の水酸基にエチレンオキシドを付加(エチレンオキシドの平均付加モル数50)させたもの(以下、IPN-50と称す)(80%水溶液)198.2部、アクリル酸0.32部、過酸化水素水(2%水溶液)12.47部、イオン交換水44.75部を仕込み、250rpmで撹拌下、窒素を200mL/分で導入しながら58℃まで加温した。次に、アクリル酸27.12部、イオン交換水108.5部からなる混合溶液を3時間かけ滴下し、それと同時にL-アスコルビン酸0.74部、3-メルカプトプロピオン酸1.61部、イオン交換水86.31部からなる混合溶液を3時間30分かけて滴下した。滴下完了後1時間、58℃に保って重合反応を完結させた。そして、水酸化ナトリウム水溶液で中和して、重量平均分子量140000の重合体(2)の水溶液を得た。
〔製造例3〕:セメント混和剤としての重合体(3)の製造
特表2008-517080号公報記載の方法に準じて縮合反応を行い、ポリエチレングリコール(エチレンオキシドの平均付加モル数:20モル)モノフェニルエーテルとフェノキシエタノールホスフェートのホルムアルデヒドによる縮合によって、ポリエチレングリコール(エチレンオキシドの平均付加モル数:20モル)モノフェニルエーテルとフェノキシエタノールホスフェートの比率が30/70(モル%)、質量平均分子量(Mw)が25000の縮合体を含有するリン酸系分散剤である重合体(3)の水溶液を得た。
〔製造例4〕:セメント混和剤としての重合体(4)の製造
特表2004-519406号公報記載の方法に準じて共重合反応を行い、メタリルアルコールにエチレンオキシドを平均50モル付加した不飽和ポリアルキレングリコールエーテルとアクリル酸ナトリウムの共重合組成比が85/15(質量%)、19/81(モル%)、重量平均分子量(Mw)が32000の重合体(4)の水溶液を得た。
〔製造例5〕:セメント混和剤としての分散剤(5)の準備
マイティ150(花王社製)を分散剤(5)とした。
〔製造例6〕:セメント混和剤としての分散剤(6)の準備
マスターポゾリスNo.8(BASFジャパン社製)を分散剤(6)とした。
〔製造例7〕:エマルション(A)としてのポリマーエマルション(1)の製造
水:1066部、ポリオキシエチレンノニルフェニル硫酸エステルナトリウム塩:14部、重合開始剤:1.5部と、表1の製造例7に示す原料を各質量部で混合し、窒素雰囲気下75℃で5時間、エマルション重合を行った。エマルション重合終了後、25%アンモニア水を添加してpHを9.8に調整し、100メッシュの金網で濾過することにより、ポリマーエマルション(1)を得た。得られたポリマーエマルション(1)のガラス転移温度、ポリマー粒子径、酸価、および固形分を表2に示す。
〔製造例8〕:エマルション(A)としてのポリマーエマルション(2)の製造
表1の製造例7に示すモノマー比率を表1の製造例8に示すように変更した以外は、製造例7と同様にして、ポリマーエマルション(2)を得た。得られたポリマーエマルション(2)のガラス転移温度、ポリマー粒子径、酸価、および固形分を表2に示す。
〔製造例9〕:ポリマーエマルション(3)の製造
表1の製造例7に示すモノマー比率を表1の製造例9に示すように変更した以外は、製造例7と同様にして、ポリマーエマルション(3)を得た。得られたポリマーエマルション(3)のガラス転移温度、ポリマー粒子径、酸価、および固形分を表2に示す。
Figure 0007241643000001
Figure 0007241643000002
〔実施例1〕
ポリマーエマルション(1)とTIPA(トリイソプロパノールアミン、富士フイルム和光純薬工業社製)を表3の条件で配合して、セメント用添加剤(1)を調製した。
〔実施例2〕
ポリマーエマルション(1)とTIPA(トリイソプロパノールアミン、富士フイルム和光純薬工業社製)を表3の条件で配合して、セメント用添加剤(2)を調製した。
〔実施例3〕
ポリマーエマルション(1)とTIPA(トリイソプロパノールアミン、富士フイルム和光純薬工業社製)を表3の条件で配合して、セメント用添加剤(3)を調製した。
〔実施例4〕
ポリマーエマルション(1)とEDIPA(ヒドロキシエチルジイソプロパノールアミン、アルドリッチ社製)を表3の条件で配合して、セメント用添加剤(4)を調製した。
〔実施例5〕
ポリマーエマルション(1)とEDIPA(ヒドロキシエチルジイソプロパノールアミン、アルドリッチ社製)を表3の条件で配合して、セメント用添加剤(5)を調製した。
〔実施例6〕
ポリマーエマルション(1)とEDIPA(ヒドロキシエチルジイソプロパノールアミン、アルドリッチ社製)を表3の条件で配合して、セメント用添加剤(6)を調製した。
〔実施例7〕
ポリマーエマルション(2)とTIPA(トリイソプロパノールアミン、富士フイルム和光純薬工業社製)を表3の条件で配合して、セメント用添加剤(7)を調製した。
〔実施例8〕
ポリマーエマルション(2)とTIPA(トリイソプロパノールアミン、富士フイルム和光純薬工業社製)を表3の条件で配合して、セメント用添加剤(8)を調製した。
〔実施例9〕
ポリマーエマルション(2)とTIPA(トリイソプロパノールアミン、富士フイルム和光純薬工業社製)を表3の条件で配合して、セメント用添加剤(9)を調製した。
〔実施例10〕
ポリマーエマルション(2)とEDIPA(ヒドロキシエチルジイソプロパノールアミン、アルドリッチ社製)を表3の条件で配合して、セメント用添加剤(10)を調製した。
〔実施例11〕
ポリマーエマルション(2)とEDIPA(ヒドロキシエチルジイソプロパノールアミン、アルドリッチ社製)を表3の条件で配合して、セメント用添加剤(11)を調製した。
〔実施例12〕
ポリマーエマルション(2)とEDIPA(ヒドロキシエチルジイソプロパノールアミン、アルドリッチ社製)を表3の条件で配合して、セメント用添加剤(12)を調製した。
〔実施例13〕
ポリマーエマルション(1)とグルコン酸ナトリウム(富士フイルム和光純薬工業社製)を表3の条件で配合して、セメント用添加剤(13)を調製した。
〔実施例14〕
ポリマーエマルション(1)とグルコン酸ナトリウム(富士フイルム和光純薬工業社製)を表3の条件で配合して、セメント用添加剤(14)を調製した。
〔実施例15〕
ポリマーエマルション(1)とグルコン酸ナトリウム(富士フイルム和光純薬工業社製)を表3の条件で配合して、セメント用添加剤(15)を調製した。
〔実施例16〕
ポリマーエマルション(1)とソルビトール(富士フイルム和光純薬工業社製)を表3の条件で配合して、セメント用添加剤(16)を調製した。
〔実施例17〕
ポリマーエマルション(1)とソルビトール(富士フイルム和光純薬工業社製)を表3の条件で配合して、セメント用添加剤(17)を調製した。
〔実施例18〕
ポリマーエマルション(1)とソルビトール(富士フイルム和光純薬工業社製)を表3の条件で配合して、セメント用添加剤(18)を調製した。
〔実施例19〕
ポリマーエマルション(2)とグルコン酸ナトリウム(富士フイルム和光純薬工業社製)を表3の条件で配合して、セメント用添加剤(19)を調製した。
〔実施例20〕
ポリマーエマルション(2)とグルコン酸ナトリウム(富士フイルム和光純薬工業社製)を表3の条件で配合して、セメント用添加剤(20)を調製した。
〔実施例21〕
ポリマーエマルション(2)とグルコン酸ナトリウム(富士フイルム和光純薬工業社製)を表3の条件で配合して、セメント用添加剤(21)を調製した。
〔実施例22〕
ポリマーエマルション(2)とソルビトール(富士フイルム和光純薬工業社製)を表3の条件で配合して、セメント用添加剤(22)を調製した。
〔実施例23〕
ポリマーエマルション(2)とソルビトール(富士フイルム和光純薬工業社製)を表3の条件で配合して、セメント用添加剤(23)を調製した。
〔実施例24〕
ポリマーエマルション(2)とソルビトール(富士フイルム和光純薬工業社製)を表3の条件で配合して、セメント用添加剤(24)を調製した。
〔比較例1〕
表3のように、ポリマーエマルション(1)をセメント用添加剤(C1)とした。
〔比較例2〕
表3のように、ポリマーエマルション(2)をセメント用添加剤(C2)とした。
〔比較例3〕
表3のように、ポリマーエマルション(3)をセメント用添加剤(C3)とした。
〔比較例4〕
表3のように、TIPA(トリイソプロパノールアミン、富士フイルム和光純薬工業社製)をセメント用添加剤(C4)とした。
〔比較例5〕
表3のように、EDIPA(ヒドロキシエチルジイソプロパノールアミン、アルドリッチ社製)をセメント用添加剤(C5)とした。
〔比較例6〕
表3のように、グルコン酸ナトリウム(富士フイルム和光純薬工業社製)をセメント用添加剤(C6)とした。
〔比較例7〕
表3のように、ソルビトール(富士フイルム和光純薬工業社製)をセメント用添加剤(C7)とした。
〔比較例8〕
ポリマーエマルション(3)とTIPA(トリイソプロパノールアミン、富士フイルム和光純薬工業社製)を表3の条件で配合して、セメント用添加剤(C8)を調製した。
〔比較例9〕
ポリマーエマルション(3)とグルコン酸ナトリウム(富士フイルム和光純薬工業社製)を表3の条件で配合して、セメント用添加剤(C9)を調製した。
Figure 0007241643000003
〔実施例25~53〕
表4に示す条件にて、セメント混和剤とセメント用添加剤を用いて、28日後の圧縮強度を測定した。結果を表4に示した。
〔比較例10〕
表4に示す条件にて、セメント混和剤を用いて、28日後の圧縮強度を測定した。結果を表4に示した。
〔比較例11~25〕
表5に示す条件にて、セメント混和剤とセメント用添加剤を用いて、28日後の圧縮強度を測定した。比較例7の結果とともに、結果を表5に示した。
Figure 0007241643000004
Figure 0007241643000005
表4、5に示すように、エマルション(A)と、アルカノールアミン化合物(B)および遅延剤(C)からなる群から選ばれる少なくとも1種とを含む、セメント用添加剤(1)~(24)は、セメント組成物の硬化物の強度を長期にわたって顕著に向上させ得るという効果を発現することが判る。
具体的には、本発明のセメント用添加剤が発現し得るセメント組成物の硬化物の長期強度向上効果は、エマルション(A)のみに起因するセメント組成物の硬化物の長期強度向上効果と、アルカノールアミン化合物(B)および遅延剤(C)からなる群から選ばれる少なくとも1種のみに起因するセメント組成物の硬化物の長期強度向上効果との単純和から予想される効果に比べて、顕著に高い相乗効果を示す。この相乗効果について、下記に、より具体的に説明する。
例えば、実施例25においては、セメント用添加剤として、実施例1で得られたセメント用添加剤(1)を用いており、このセメント用添加剤(1)は、エマルション(A)としてのポリマーエマルション(1)をセメントに対して0.1質量%と、アルカノールアミン化合物(B)としてのTIPAをセメントに対して0.02質量%とを含み、このセメント用添加剤(1)によって発現される28日後圧縮強度は66.5N/mmである。したがって、セメント用添加剤を用いていない比較例10において発現される28日後圧縮強度(58.2N/mm)を100%とすると、セメント用添加剤(1)によって発現される28日後圧縮強度の強度比は、(66.5/58.2)×100=114%である。すなわち、14%の強度向上効果が見られる。
他方、エマルション(A)としてのポリマーエマルション(1)をセメントに対して0.1質量%添加したときの28日後圧縮強度は、比較例11に示すように、61.4N/mmであり、セメント用添加剤を用いていない比較例10において発現される28日後圧縮強度(58.2N/mm)を100%とすると、エマルション(A)としてのポリマーエマルション(1)をセメントに対して0.1質量%添加したときに発現される28日後圧縮強度の強度比は、(61.4/58.2)×100=105%である。すなわち、5%の強度向上効果が見られる。
また、アルカノールアミン化合物(B)としてのTIPAをセメントに対して0.02質量%添加したときの28日後圧縮強度は、比較例17に示すように、61.4N/mmであり、セメント用添加剤を用いていない比較例10において発現される28日後圧縮強度(58.2N/mm)を100%とすると、アルカノールアミン化合物(B)としてのTIPAをセメントに対して0.02質量%添加したときに発現される28日後圧縮強度の強度比は、(61.4/58.2)×100=105%である。すなわち、5%の強度向上効果が見られる。
そうすると、エマルション(A)としてのポリマーエマルション(1)をセメントに対して0.1質量%添加したときに発現される28日後圧縮強度の強度向上効果(5%)と、アルカノールアミン化合物(B)としてのTIPAをセメントに対して0.02質量%添加したときに発現される28日後圧縮強度の強度向上効果(5%)の単純和は、5%+5%=10%となる。
しかし、実施例25で示されるように、エマルション(A)としてのポリマーエマルション(1)をセメントに対して0.1質量%とアルカノールアミン化合物(B)としてのTIPAをセメントに対して0.02質量%とを併用したセメント用添加剤(1)によって発現される28日後圧縮強度の強度向上効果は14%であり、上記の単純和(10%)に比べて、さらに4%の相乗効果が見られる。
実施例26~53においても、同様に、28日後圧縮強度の相乗効果が見られる。
本発明のセメント用添加剤は、モルタルやコンクリートなどのセメント組成物に好適に用いられる。また、本発明のセメント強度向上方法は、モルタルやコンクリートなどのセメント組成物の強度向上のために好適に用いられる。

Claims (6)

  1. ガラス転移温度が35℃~100℃であり、且つ平均粒子径が10~200nmであるポリマー粒子を含有するエマルション(A)と、アルカノールアミン化合物(B)および遅延剤(C)からなる群から選ばれる少なくとも1種とを含む、
    セメント用添加剤。
  2. 前記アルカノールアミン化合物(B)が、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、メチルエタノールアミン、メチルイソプロパノールアミン、メチルジエタノールアミン、メチルジイソプロパノールアミン、ジエタノールイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールエタノールアミン、テトラヒドロキシエチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラキス(2-ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン、およびトリス(2-ヒドロキシブチル)アミンからなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載のセメント用添加剤。
  3. 前記遅延剤(C)が、オキシカルボン酸もしくはその塩、ケト酸もしくはその塩、糖、および糖アルコールからなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1または2に記載のセメント用添加剤。
  4. エマルション(A)の固形分に対する、アルカノールアミン化合物(B)および遅延剤(C)からなる群から選ばれる少なくとも1種の含有比は、[{(B)+(C)}/(A)]として0.5~10000である、請求項1から3までのいずれかに記載のセメント用添加剤。
  5. 請求項1からまでのいずれかに記載のセメント用添加剤を含む、セメント組成物。
  6. ガラス転移温度が35℃~100℃であり、且つ平均粒子径が10~200nmであるポリマー粒子を含有するエマルション(A)と、アルカノールアミン化合物(B)および遅延剤(C)からなる群から選ばれる少なくとも1種とを用いる、
    セメント強度向上方法。
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