JP7240016B2 - 水槽用壁面パネル及びそれを備えた水槽 - Google Patents

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特許法第30条第2項適用 令和3年4月22日に、日本サカス株式会社が株式会社横浜八景島に販売し仙台うみの杜水族館に納品したことにより公開。
本発明は、水槽用壁面パネル及びそれを備えた水槽に関し、特に結露の発生を抑制する水槽用壁面パネル及びそれを備えた水槽に関する。
鑑賞用の水生生物は、壁面が透明な水槽で飼育され展示される。水槽内の水温は水生生物の生育環境に応じて設定されるが、外気温に比べて水温が低い場合、結露が発生することがある。結露が発生すると透明な壁面が曇ったり水滴が付着したりして、水生生物の鑑賞に支障をきたすことになる。
結露発生の防止を図った水槽として、二重壁構造を採用した水槽が知られている(特許文献1参照)。特許文献1に開示された水槽は、二重壁の内部に外気と遮断された空気層を設けることで断熱効果を高め、結露防止を図っている。しかしこの水槽は、二重壁の内部に空気を封入しているため、この空気内の水蒸気が結露するおそれが残る。また、断熱層を構成するのが空気であるため断熱性能が高くなく、外側の壁の温度が低下して結露を招くおそれがあった。
特開2001-57827号公報
上記問題点を鑑みて、本発明は、結露の発生を抑制する水槽用壁面パネル及びそれを備えた水槽を提供することを目的とする。
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、透明なアクリル樹脂からなる内壁と、前記内壁と空間を挟んで対向して配置された透明なアクリル樹脂からなる外壁と、前記内壁と前記外壁とを繋ぐとともに、前記空間を密閉し、前記内壁及び前記外壁それぞれに対し垂直に接合された板状の透明なアクリル樹脂からなる周壁とを備え、前記空間に不活性ガスが充填されており、前記不活性ガスの熱伝導率が空気の熱伝導率より低く、前記不活性ガスの比重が空気の比重より大きく、前記周壁が前記空間の上方に位置する水平な平面部を有し、前記空間に前記不活性ガスが注入される注入口及び前記空間から空気が排出される排出口のいずれも前記平面部に設けられており、前記注入口及び前記排出口が前記周壁を厚さ方向に貫通する孔で構成されているとともに、当該孔の周囲には雌ねじが設けられており、前記注入口及び前記排出口がビスで閉じられることを特徴とする水槽用壁面パネルである。
請求項1に記載の発明によれば、断熱性能が高く、結露の発生を抑制し、内壁と外壁との間の空間に不活性ガスを充填することが容易であり、注入口から不活性ガスが注入されていくのに応じて空間内の空気が排出口から排出されることで、空間内の気体が置換される水槽用壁面パネルを提供することができる。
請求項に記載の発明は、前記不活性ガスがアルゴンガスであることを特徴とする請求項1に記載の水槽用壁面パネルである。
請求項に記載の発明によれば、比重の大きい不活性ガスを用いることができ、注入口及び排出口を上に向けた状態で注入口からアルゴンガスを注入することで、空間内の気体が容易にアルゴンガスに置換される水槽用壁面パネルを提供することができる。
請求項に記載の発明は、前記内壁と前記周壁との境界にシール材が配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の水槽用壁面パネルである。
請求項に記載の発明によれば、空間に充填された不活性ガスの漏洩を抑制するような水槽用壁面パネルを提供することができる。
請求項に記載の発明は、請求項1~のいずれかに記載の水槽用壁面パネルを備えることを特徴とする水槽である。
請求項に記載の発明によれば、断熱性能が高く、結露の発生を抑制する水槽用壁面パネルを備えた水槽を提供することができる。
本発明によれば、断熱性能が高く、結露の発生を抑制する水槽用壁面パネル及びそれを備えた水槽を提供することができる。
本発明の第一実施形態に係る水槽用壁面パネル及びそれを用いた水槽を示す斜視図である。 本発明の第一実施形態に係る水槽用壁面パネル及びそれを用いた水槽を示す図であって、(a)は壁面パネルの一部を破断して示す正面図であり、(b)は(a)におけるA-A断面を示す断面図であり、(c)は(b)におけるB部分を拡大して示す拡大断面図である。 本発明の第二実施形態に係る水槽用壁面パネル及びそれを用いた水槽を示す斜視図である。 本発明の第二実施形態に係る水槽用壁面パネル及びそれを用いた水槽を示す図であって、(a)は壁面パネルの一部を破断して示す平面図であり、(b)は壁面パネルの一部を破断して示す正面図である。 本発明の第三実施形態に係る水槽用壁面パネル及びそれを用いた水槽を示す図であって、(a)は斜視図であり、(b)は縦断面図である。
次に、本発明を適用した水槽用壁面パネル及びそれを用いた水槽の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下に述べる実施形態は、本発明の好適な実施形態であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。
〔第一実施形態〕
本発明の第一実施形態に係る水槽用壁面パネル及びそれを用いた水槽について、図1,2に基づき説明する。図1は、本発明の第一実施形態に係る水槽用壁面パネル及びそれを用いた水槽を示す斜視図である。図2は、本発明の第一実施形態に係る水槽用壁面パネル及びそれを用いた水槽を示す図であって、(a)は壁面パネルの一部を破断して示す正面図であり、(b)は(a)におけるA-A断面を示す断面図であり、(c)は(b)におけるB部分を拡大して示す拡大断面図である。
本実施形態に係る水槽40は、上方に開口した直方体状であり、主要な構成要素として壁面パネル10、側壁42,43,44及び底壁45を有し、これらが互いに水密に接合されて水槽内部Wが区画される。本実施形態において、側壁42,43,44及び底壁45は全て透明な樹脂で構成されており、壁面パネル10は透明な樹脂の二重壁構造を有している。水槽内部Wには水及び水生生物が収容され壁面パネル10を通して鑑賞される。
壁面パネル10は、図2に示すように、内壁11、外壁12及び周壁13a,13b,13c,13d(以下これらをまとめて「周壁13」と呼ぶ場合がある)を有している。内壁11は透明な樹脂からなり、側壁42,44及び底壁45と水密に接合されている。水槽内部Wに水が収容された際には内壁11は水に接する。外壁12は透明な樹脂からなり、内壁11の外側に位置し、図2(b)に示すように、空間Vを挟んで対向して配置されている。
周壁13は、内壁11と外壁12とを繋いで接合されており、図2(a)に示すように、空間Vの上下左右を囲って密閉している。なお本実施形態において、周壁13も透明な樹脂で構成されている。周壁13と内壁11との接合の境界には、シール材31が配置されている。シール材31は、図2(c)に示すように、断面が三角形となるよう境界線に沿って塗布されており、これによって空間Vの気密性が高まっている。
図2(a)に示すように、空間Vの上方に位置する周壁13aは、全体として水平な平面部を有しており、周壁13aには注入口21及び排出口22が設けられている。注入口21及び排出口22は、周壁13aを厚さ方向に貫通する孔で構成されており、これらは空間Vと外部とを連通する。注入口21及び排出口22の孔の周囲には雌ねじが設けられており、注入口21及び排出口22はビス23,23により閉じられる。
空間Vには、熱伝導率が空気よりも低い不活性ガスが充填されており、本実施形態ではアルゴンガスが充填されている。ここで空間Vにアルゴンガスを充填する工程について説明する。まずビス23を取り外し、注入口21及び排出口22を開放する。そして注入口21からアルゴンガスを注入する。アルゴンガスは空気より比重が大きいため空間Vの下部に溜まり、空気は空間Vの上部に溜まる。空間Vへのアルゴンガスの注入が進むと、空間Vの上部に溜まった空気が排出口22から排出されていくため、最終的には空間V内の気体は全てアルゴンガスに置換される。このように空間Vにアルゴンガスが充填された後、注入口21及び排出口22をビス23で閉じる。
なお、本実施形態では注入口21及び排出口22を周壁13aに設けていたが、周壁13b,13c,13dのいずれかにも設けることができる。空間Vにアルゴンガスを充填する工程において、注入口21及び排出口22が上に位置するよう壁面パネル10を適宜回転しておけば、空間V内の気体をアルゴンガスに置換することができる。また、注入口21及び排出口22のいずれか一方又は両方を外壁12に設けることも可能である。
次に、壁面パネル10を用いた水槽40の効果について説明する。水槽40の水槽内部Wに低温の水を収容した場合、内壁11の外側は熱伝導率が空気よりも低い不活性ガスが充填された空間Vであるため、ここに結露は発生しない。また外壁12と内壁11との間に空間Vが介在するため、外壁12は低温とならず、外気との温度差が大きくならないため結露の発生は抑制される。したがって、結露の発生が抑制される壁面パネル10を通して、水槽内部Wの水生生物をクリアに鑑賞することができる。
〔第二実施形態〕
本発明の第二実施形態に係る水槽用壁面パネル及びそれを用いた水槽について、図3,4に基づき説明する。図3は、本発明の第二実施形態に係る水槽用壁面パネル及びそれを用いた水槽を示す斜視図である。図4は、本発明の第二実施形態に係る水槽用壁面パネル及びそれを用いた水槽を示す図であって、(a)は壁面パネルの一部を破断して示す平面図であり、(b)は壁面パネルの一部を破断して示す正面図である。
本実施形態に係る水槽80は、上方に開口した直方体状であり、側壁面82,83,84、底壁面85及び壁面パネル50を有する。側壁面側壁面82,83,84及び底壁面85はコンクリートの壁面である。壁面パネル50は透明な樹脂の二重壁構造を有している。壁面パネル50が側壁面82,84及び底壁面85と密着するよう嵌め込まれていることで、水槽内部Wが区画されている。水槽内部Wには水及び水生生物が収容され壁面パネル50を通して鑑賞される。
壁面パネル50は、図4に示すように、内壁51、外壁52及び周壁53a,53b,53c,53d(以下これらをまとめて「周壁53」と呼ぶ場合がある)を有している。内壁51は透明な樹脂からなり、水槽内部Wに水が収容された際には内壁51は水に接する。外壁52は透明な樹脂からなり、内壁51の外側に位置し、図4(a)に示すように、空間Vを挟んで対向して配置されている。
周壁53は、内壁51と外壁52とを繋いで接合されており、図4(b)に示すように、空間Vの上下左右を囲って密閉している。なお本実施形態において、周壁53も透明な樹脂で構成されている。
図4(b)に示すように、空間Vの上方に位置する周壁53aは、全体として水平な平面部を有しており、周壁53aには注入口61及び排出口62が設けられている。注入口61及び排出口62は、周壁53aを厚さ方向に貫通する孔で構成されており、これらは空間Vと外部とを連通する。注入口61及び排出口62の孔の周囲には雌ねじが設けられており、注入口61及び排出口62はビス63,63により閉じられる。
空間Vには熱伝導率が空気よりも低い不活性ガスが充填されており、本実施形態ではアルゴンガスが充填されている。空間Vにアルゴンガスを充填する工程は第一実施形態と同様であるため、説明を省略する。
周壁53b,53c,53dと側壁面84、底壁面85、側壁面82それぞれとの間には、連続するシール材71が充填されている。シール材71は、図4(a)に示すように、内壁51、周壁53、外壁52と側壁面82(側壁面84及び底壁面85も同様)との間に形成された断面四角形の隙間を埋めるように配置されている。これにより、空間Vの気密性を高めるとともに、水槽内部Wの水密性を高めている。
なお、本実施形態では注入口61及び排出口62を周壁53aに設けていたが、周壁53b,53c,53dのいずれかにも設けることができる。空間Vにアルゴンガスを充填する工程において、注入口61及び排出口62が上に位置するよう壁面パネル50を適宜回転しておけば、空間V内の気体をアルゴンガスに置換することができる。また、注入口61及び排出口62のいずれか一方又は両方を外壁52に設けることも可能である。
本実施形態に係る壁面パネル50によっても、第一実施形態と同様の効果が得られ、結露の発生が抑制される。したがって、結露の発生が抑制される壁面パネル50を通して、水槽内部Wの水生生物をクリアに鑑賞することができる。本実施形態に係る壁面パネル50は、工場で内壁51、外壁52、周壁53を接合した後、シール材71を介してコンクリートの側壁面82、底壁面85、側壁面84の間に嵌め込まれる。こうして水槽80が構成される。このとき、図4(a)に示すように、外壁52の外面とコンクリートの前壁面81とが同一面となるよう壁面パネル50を配置するのが好適である。
〔第三実施形態〕
本発明の第三実施形態に係る水槽用壁面パネル及びそれを用いた水槽について、図5に基づき説明する。図5は、本発明の第三実施形態に係る水槽用壁面パネル及びそれを用いた水槽を示す図であって、(a)は斜視図であり、(b)は縦断面図である。
本実施形態に係る水槽100は、上方に開口した円筒状であり、側面全てが二重壁構造の壁面パネル100aで構成されている。水槽100は主要な構成要素として、透明な樹脂からなる円筒状の内壁111、透明な樹脂からなる円筒状の外壁112、環状の周壁113及び円板状の底壁114を有している。図5(b)に示すように、内壁111と外壁112とは同心に配置され、内壁111及び外壁112の上端は周壁113に気密に接合されており、内壁111及び外壁112の下端は底壁114に気密かつ水密に接合されている。
内壁111の内側かつ底壁114の上側の凹部が、水槽内部Wを形成している。内壁111の外側かつ外壁112の内側で、周壁113の下側かつ底壁114の上側には、円環状の一つの空間Vが形成されている。すなわち外壁112は、空間Vを挟んで内壁111に対向して配置されている。周壁113及び底壁114は、内壁111と外壁112とを繋いで接合されているとともに、空間Vの上下を密閉している。すなわち底壁114は、周壁113と同様に空間Vを密閉する要素である。
周壁113には注入口121及び排出口122が設けられている。注入口121及び排出口122は、周壁113を厚さ方向に貫通する孔で構成されており、これらは空間Vと外部とを連通する。注入口121及び排出口122の孔の周囲には雌ねじが設けられており、注入口121及び排出口122はビス123,123により閉じられる。
空間Vには熱伝導率が空気よりも低い不活性ガスが充填されており、本実施形態ではアルゴンガスが充填されている。空間Vにアルゴンガスを充填する工程は第一実施形態と同様であるため、説明を省略する。
本実施形態に係る円筒状の水槽100は、側面全てが二重壁構造の壁面パネル100aで構成されている。壁面パネル100aによっても、第一実施形態と同様の効果が得られ、結露の発生が抑制される。すなわち、側面全てから水槽内部Wの水生生物をクリアに鑑賞することができる。
なお、図5に示した水槽100は、同心に配置された円筒状の内壁111及び外壁112を備えることで円筒状の二重壁構造の壁面パネル100aを構成していたが、これに代えて角筒状の内壁及び外壁を採用することで、角筒状の二重壁構造の壁面パネルを構成することもできる。その場合直方体状の水槽となる。
〔他の変形例〕
先述の全ての実施形態に係る壁面パネルの内壁及び外壁を構成する透明な樹脂について、アクリル樹脂で構成するのが好適である。また周壁及び底壁についても同じくアクリル樹脂で構成するのが好適であり、これにより気密かつ水密に接合することが容易となる。またこれらはガラスで構成することも可能である。
また、内壁と外壁との間の空間に充填する不活性ガスもアルゴンに限られず、キセノンやクリプトン等を使用することも可能である。また不活性ガス以外にも、断熱性の高い任意のガスを使用することも可能である。
また、先述の全ての実施形態に係る水槽は上方に開口しており、開口には壁が設けられていなかったが、開口に壁を設置することも可能である。開口に設置する壁に孔を設けておけば、水槽内部へのアクセスを確保することができる。またこの壁により強度の高い水槽を得ることができる。
また、先述の全ての実施形態に係る壁面パネルの周壁は平板で構成されていたが、湾曲した周壁を採用することもできる。また注入口及び排出口を平面部以外に設けることも可能である。また、注入口と排出口とをそれぞれ異なる部材に設けることも可能である。
10 壁面パネル(水槽用壁面パネル)
11 内壁
12 外壁
13 周壁
13a,13b,13c,13d 周壁
21 注入口
22 排出口
23 ビス
31 シール材
40 水槽
42,43,44 側壁
45 底壁
50 壁面パネル(水槽用壁面パネル)
51 内壁
52 外壁
53 周壁
53a,53b,53c,53d 周壁
61 注入口
62 排出口
63 ビス
71 シール材
80 水槽
81 前壁面
82,83,84 側壁面
85 底壁面
100 水槽
100a 壁面パネル(水槽用壁面パネル)
111 内壁
112 外壁
113 周壁
114 底壁
121 注入口
122 排出口
123 ビス
V 空間
W 水槽内部

Claims (4)

  1. 透明なアクリル樹脂からなる内壁と、
    前記内壁と空間を挟んで対向して配置された透明なアクリル樹脂からなる外壁と、
    前記内壁と前記外壁とを繋ぐとともに、前記空間を密閉し、前記内壁及び前記外壁それぞれに対し垂直に接合された板状の透明なアクリル樹脂からなる周壁とを備え、
    前記空間に不活性ガスが充填されており、
    前記不活性ガスの熱伝導率が空気の熱伝導率より低く、
    前記不活性ガスの比重が空気の比重より大きく、
    前記周壁が前記空間の上方に位置する水平な平面部を有し、
    前記空間に前記不活性ガスが注入される注入口及び前記空間から空気が排出される排出口のいずれも前記平面部に設けられており、
    前記注入口及び前記排出口が前記周壁を厚さ方向に貫通する孔で構成されているとともに、当該孔の周囲には雌ねじが設けられており、
    前記注入口及び前記排出口がビスで閉じられる
    ことを特徴とする水槽用壁面パネル。
  2. 前記不活性ガスがアルゴンガスである
    ことを特徴とする請求項1に記載の水槽用壁面パネル。
  3. 前記内壁と前記周壁との境界にシール材が配置されている
    ことを特徴とする請求項1又は2に記載の水槽用壁面パネル。
  4. 請求項1~のいずれかに記載の水槽用壁面パネルを備える
    ことを特徴とする水槽。
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