JP7239104B2 - タンパク質吸着剤及びその製造方法 - Google Patents
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Description
前記微細繊維状セルロースは、セルロースI型結晶構造を有し、セルロースの水酸基の一部が下記構造式(1)で表される置換基によって置換された化学修飾微細繊維状セルロースであり、該置換基の導入量が微細繊維状セルロース1gあたり0.1~3.0mmolであり、平均重合度が350以上である。
前記微細繊維状セルロースの平均繊維幅が3nm~100nmであり、平均繊維長が0.1μm~500μmであってもよい。
前記微細繊維状セルロースのpH3~11におけるゼータ電位が、-40mV~-1mVであってもよい。
上記いずれかのタンパク質吸着剤を製造する方法であって、
セルロース繊維をスルファミン酸で処理することによって、セルロースの水酸基の一部を硫酸基に置換し、化学修飾セルロースを得る化学修飾工程を備えている。
前記化学修飾工程で得られた化学修飾セルロースを機械的に解繊し、平均繊維幅が3nm~100nmであり且つ平均繊維長が0.1μm~500μmである微細繊維状セルロースを得る微細化工程をさらに備えていてもよい。
結晶化度の上限は特に限定されないが、98%以下であってもよく、95%以下であってもよく、90%以下であってもよく、85%以下であってもよい。
尚、セルロースI型結晶構造とは、天然セルロースの結晶形を意味し、セルロースI型結晶化度とは、微細繊維状セルロース全体のうちセルロースI型結晶構造により形成される領域の占める割合を意味する。
より具体的には、セルロースI型結晶化度は、X線回折法による回折強度値からSegal法によって算出される値であり、下記式によって定義される。式中、I22.6は、X線回折における、格子面(002面)(回折角2θ=22.6°)における回折強度を表し、I18.5は、アモルファス部(回折角2θ=18.5°)における回折強度を表す。
セルロースI型結晶化度(%)=[(I22.6-I18.5)/I22.6]×100
アルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、又はセシウム等が挙げられる。
アルカリ土類金属としては、カルシウム、ストロンチウムが挙げられる。
遷移金属としては、鉄、ニッケル、パラジウム、銅、銀が挙げられる。
その他の金属としては、ベリリウム、マグネシウム、亜鉛、アルミニウム等が挙げられる。
尚、Mで表される陽イオンは、上記のうちのいずれか1種であってもよく、2種以上が組み合わされてもよい。
硫酸基の導入量の上限が上記値以下であることによって、セルロースの結晶構造が十分に保持され得る。また、硫酸基の導入量の下限が上記値以上であることによって、微細繊維状セルロースの表面が硫酸基によって十分に覆われ得る。
尚、硫酸基の導入量は、電位差測定によって求められる。具体的には、硫酸基を導入するために用いた硫酸化試薬や副生成物を洗浄により除去した後、乾燥させた微細繊維状セルロースの質量を精秤し、0.5質量%の微細繊維状セルロース水分散体を60mL調製し、1.0M塩酸水溶液によってpHを約1.0に調整した後、ろ過、水洗浄し、再び60mLの水に再分散させ、0.1M水酸化カリウム水溶液を滴下して終点までに滴下された0.1M水酸化カリウム水溶液の滴下量から硫酸基の導入量が算出される。
平均重合度の上限は特に限定されないが、例えば、5000以下であってもよく、4000以下であってもよく、3000以下であってもよく、2000以下であってもよい。
尚、平均重合度(DP)は、粘度法によって測定される。具体的には、JIS-P8215に準拠して極限粘度数[η]を測定した後、下記式によって算出される。
DP=(1/Km)×[η]
(Kmは係数でありセルロース固有の値である。1/Km=156)
平均繊維幅は、1nm以上であってもよく、2nm以上であってもよく、5nm以上であってもよい。平均繊維幅の下限が上記値以上に設定されることによって、セルロースI型結晶構造が十分に保持され得る。また、平均繊維幅の上限は、1μm以下であってもよく、0.5μm以下であってもよく、0.2μm以下であってもよい。平均繊維幅の上限が上記値以下に設定されることによって、微細繊維状セルロースを製造する段階において、パルプの他の構成要素(有縁壁孔、導管要素など)が除去され得るため、微細繊維状セルロースの純度が高くなり得る。
平均繊維長は、1μm以上であることが好ましく、10μm以上であることがより好ましい。平均繊維長の上限は上記範囲内であれば特に限定されないが、300μm以下であることがより好ましく、200μm以下であることがより一層好ましい。
尚、平均繊維幅及び平均繊維長は、顕微鏡観察により任意の50本の繊維について測定される繊維幅及び繊維長の算術平均値として求められる。具体的には、湿潤させた微細繊維状セルロースをろ過、脱溶媒することによって繊維シートを取得し、液体窒素にて凍結乾燥させたものについて、走査型電子顕微鏡(SEM)観察を行い、構成する繊維幅に応じて、倍率100~100000倍にて任意の繊維50本の繊維幅及び繊維長を測定し、それぞれの算術平均値を平均繊維幅及び平均繊維長とする。
尚、ゼータ電位は、微細繊維状セルロースの水分散体を、pH3~11に調整したBritton-Robinson緩衝液などを用いて、微細繊維状セルロースが0.9mg/mLとなるように希釈した調製液を調製し、ゼータ電位測定装置(株式会社堀場製作所製、ナノ粒子解析装置、SZ-100)の電極付きセル内に該調製液を入れ、レーザードップラー法により測定される。また、ゼータ電位は次の式から計算される。ここで、分散媒の粘度を水の粘度とするが、前記調製液は微細繊維状セルロースの含有量により粘度が変化し、それによってゼータ電位が変動する可能性がある。よって、前記調製液の微細繊維状セルロースの濃度は、上記のように0.9mg/mLとする。
ζ=U・η/ε/f(kr)
ζ:ゼータ電位、U:電気移動度、η:分散媒の粘度、ε:分散媒の誘電率、
f(kr):ヘンリー係数
尚、嵩密度は、例えば、ホソカワミクロン社製の「パウダーテスター」を用いて測定される。嵩密度は、サンプルをシュートに通しつつ振動させたふるいに落下させ、規定の容器(容量100mL)に受け、該容器中のサンプルの重量を測定することにより算出される。ただし、ふるいを通過しにくい(より具体的には、ふるいを通して規定の容器にサンプルを充填する場合に、充填時間が3分を超えるような)例えば綿状化したようなサンプルの嵩密度については、ふるいを通さずにシュートを通しつつ落下させ、規定の容器(容量100mL)に受け、規定の容器に十分充填させた後、該容器中のサンプルの重量を測定することにより算出される。
スルファミン酸は、強酸性であり且つ高腐食性である無水硫酸や硫酸水溶液と比較して、取り扱いに制限がなく、大気汚染防止法の特定物質にも指定されていないため、環境に対する負荷が小さいという利点を有する。
また、スルファミン酸は、無水硫酸と比較して、水に対する安定性が高いため、乾燥等によってセルロース繊維から水分を除去する操作を行わなくても、セルロース繊維を硫酸化することができる。
尚、セルロース繊維の一部が微細繊維化されたとしても、セルロース微細繊維を束ねた状態が実質的に維持されていれば、解繊されておらず、セルロース繊維の繊維形状が保たれているといえる。
触媒の使用量は、特に限定されないが、例えば、セルロース分子中のアンヒドログルコース単位1molあたり0.001~5molであることが好ましく、0.005~2.5molであることがより好ましく、0.01~2.0molであることがさらに好ましい。
触媒は、高濃度のものをそのまま薬液に混合してもよく、又は、事前に溶媒で希釈して薬液に混合してもよい。触媒の添加方法は、以下に限定されないが、一括添加、分割添加、連続的添加、又はこれらの組合せによる方法であってもよい。
脱液するための方法は、以下に限定されないが、遠心沈降法、濾過、プレス処理等が挙げられる。
尚、水及び/又は有機溶媒を完全に除去せず、化学修飾セルロースを湿潤状態にしておいてもよい。この場合、化学修飾セルロースの水及び/又は有機溶媒含有量(化学修飾セルロースの乾燥質量に対する水及び/又は有機溶媒の質量の比率、すなわち、固形分濃度)は、該セルロースの乾燥質量に対して、1~500質量%であることが好ましく、10~100質量%であることがより好ましく、10~50質量%であることがさらに好ましい。
この場合、化学修飾セルロースの濃度は、撹拌可能な状態であれば特に限定されないが、0.01~5質量%であることが好ましい。
タンパク質を溶解させる溶媒は、以下に限定されないが、各種緩衝液(リン酸緩衝液、クエン酸緩衝液、Tris、HEPES等)が好適に用いられる。
ここで、本実施形態に係る生理的pHとは、ヒト体液内で通常生ずる比較的狭い範囲、一般的には、7.0~7.5の範囲にあるpHを言う。
また、酸性タンパク質としては、例えば、ウシ血清アルブミン(pI4.7)、ペプシノーゲン(pI3.9)、インスリン(pI5.5)、膵臓デオキシリボヌクレアーゼ(pI4.7)が挙げられる。
また、本実施形態では、吸着させるタンパク質は、タンパク質に類する吸着剤への挙動を示すペプチドを含み、例えば、天然ペプチド、改質ペプチドなどを含み得る。
また、セルロースのスルファミン酸に対する溶解性が比較的低いため、スルファミン酸は、セルロースI型結晶構造乃至はセルロースの繊維形状を保ったままセルロースを硫酸化するのに適している。よって、微細繊維状セルロースは、セルロースI型結晶構造及び繊維長が十分に保持されている。このため、タンパク質吸着剤としての使用に十分適したものとなり得る。
さらに、セルロースが微細繊維状であることによって、比表面積が大きくなっているため、タンパク質を効率的に吸着させることができる。
・カルボキシル基を有する微細繊維状セルロースの水分散体:
セルロースI型結晶構造を有する、TEMPO酸化セルロースナノファイバー(TOCN)の2.0質量%水分散体(第一工業製薬株式会社製「レオクリスタI-2SX」)
平均繊維径=4nm、数平均アスペクト比=280、カルボキシル基含有量=1.9mmol/g
・シリカ微粒子:(Nyacol Nano Technologies,Inc.製のNexSil 5)、15質量%のコロイダルシリカ、表面電荷=負
・フルオレセインイソチオイソシアネート(FITC):株式会社同仁化学研究所製Fluorescein-4-isothiocyanate(FITC-I)
・リゾチーム(Lyz、卵白由来):分子量=14,300Da、和光純薬工業株式会社製リゾチーム、卵白由来(Lysozyme,from Egg White)、等電点=11
・ウシ血清アルブミン(BSA):SIGMA-ALDRICH製アルブミン、ウシ血清由来(Albumin from bovine serum)、等電点=4.7
・リン酸:ナカライテスク株式会社製
・ホウ酸:和光純薬工業株式会社製
・酢酸:和光純薬工業株式会社製
・水酸化ナトリウム:和光純薬工業株式会社製
・リン酸水素二ナトリウム:和光純薬工業株式会社製
・リン酸二水素カリウム:和光純薬工業株式会社製
尚、上記試薬は、特に精製せずに使用した。
・微量高速冷却遠心機MX-307(株式会社トミー精工)
[化学修飾工程]
セパラブルフラスコにスルファミン酸3.0g、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)50gを投入し、10分間攪拌した。その後、室温下、セルロース原料として綿状の針葉樹クラフトパルプ(NBKP、セルロースI型結晶化度:85%、平均重合度:1000)1.0gを投入した。ここで、スルファミン酸の使用量は、セルロース分子中のアンヒドログルコース単位1molあたり5.2molとした。50℃で3時間反応させた後、室温まで冷却した。次に硫酸化処理されたセルロース繊維を取り出し、中和剤として2N水酸化ナトリウム水溶液に投入してpHを7.6に調整し、反応を停止させた。硫酸化処理されたセルロース繊維を水で2~3回洗浄した後、遠心分離することによって化学修飾セルロースを得た(固形量:1.24g、固形分濃度:6.4質量%)。
上記で得られた化学修飾セルロースを固形分濃度5.0質量%になるように水で希釈し、化学修飾セルロース水分散体を調製した。得られた化学修飾セルロース水分散体を、ジルコニア製ビーズ(直径20mm:30個、直径10mm:100個)を充填したジルコニア製容器(容量:1L、直径:10cm)に入れ、室温下60rpmにて回転(自転)させて、2時間ボールミル処理を行った。その後、固形分濃度0.5質量%になるように水で希釈し、マイクロフルイダイザーによる処理(150MPa、1パス)を行うことによって、微細繊維状セルロースを得た(乾燥質量:1.12g、固形分濃度:0.5質量%)。
[各物性の測定]
上記で得られた微細繊維状セルロースについて、下記項目の分析及び測定を行った。
(1)セルロースI型結晶化度
微細繊維状セルロースのX線回折強度を、RINT2200(株式会社リガク製)を用いて、以下の条件にて測定した。
X線源:Cu/Kα-radiation
管電圧:40Kv
管電流:30mA
測定範囲:回折角2θ=5~35°
X線のスキャンスピード:10°/min
上記式を用いて、セルロースI型結晶化度を算出した。微細繊維状セルロースのセルロースI型結晶化度は86%であった。
(2)硫酸基の同定
フーリエ赤外分光光度計(FT-IR、ATR法)を用い、微細繊維状セルロースの分析を行った。800、1222cm-1に硫酸基特有のピークを確認した。
(3)硫酸基の導入量の測定
硫酸基の導入量を上記方法により算出した。微細繊維状セルロースの硫酸基の導入量は、1.3mmol/gであった。
(4)平均重合度の測定
セルロース原料及び得られた微細繊維状セルロースの平均重合度を上記方法により求めた。セルロース原料の平均重合度は1000であり、微細繊維状セルロースの平均重合度は950であった。このように、スルファミン酸によってセルロースに硫酸基を導入する方法によれば、それぞれの平均重合度の変化量が50のみであり、硫酸化処理による平均重合度の低下がわずかであることが示された。
(5)平均繊維幅及び平均繊維長の測定
平均繊維幅及び平均繊維長を上記方法により測定した。微細繊維状セルロースの平均繊維幅は5nmであり、平均繊維長は1μmであった。
上記の微細繊維状セルロース(実施例)及びTOCN(比較例)についてタンパク質の吸着評価を行った。
(1)各種濃度の微細繊維状セルロース水分散体の調製
容器に、0.5質量%微細繊維状セルロース水分散体5gと水23mLとを加えて密栓し、卓上型超音波洗浄機(W-113、本多電子株式会社製)を用いて28Hzの超音波処理を2時間行うことによって混合し、0.09質量%の微細繊維状セルロース水分散体を調製した。以下、同様の方法にて、0.045、0.018、0.0072、0.0036、0.0018質量%の微細繊維状セルロース水分散体を調製した。
(2)各種濃度のTOCN水分散体の調製
容器に、2質量%TOCN水分散体5gと水106mLとを加えて密栓し、卓上型超音波洗浄機(W-113、本多電子株式会社製)を用いて28Hzの超音波処理を2時間行うことによって混合し、0.09質量%のTOCN水分散体を調製した。以下、同様の方法にて、0.045、0.018、0.0072、0.0036、0.0018質量%のTOCN水分散体を調製した。
(3)FITCで標識されたタンパク質(FITC標識タンパク質)の調製
・リゾチーム(Lyz、卵白由来)の標識
[100mMホウ酸緩衝液(pH9.2)の調製]
100mMH3BO3水溶液を100mL、100mMNa2B4O7・10H2O水溶液を300mL調製し、pH計を用いて、pHが9.2になるまで、H3BO3水溶液にNa2B4O7・10H2O水溶液を添加することによって、100mMホウ酸緩衝液(pH9.2)を調製した。得られたホウ酸緩衝液を4℃で保存した。
[FITC-リゾチーム(Lyz、卵白由来)溶液の調製]
得られたホウ酸緩衝液50mLに、リゾチーム(Lyz、卵白由来)を100mg、FITCを1mg加え、50mLのスクリュー管瓶内で、0℃で12時間撹拌することによって、FITC-リゾチーム溶液を調製した。
[透析]
FITC-リゾチーム溶液をディスポーザブル透析カセットに入れ、1Lのイオン交換水中にて0℃で冷却しながら撹拌した。イオン交換水は2時間おきに3回交換し、一晩透析した。
[凍結乾燥]
得られたFITC-リゾチーム溶液をディスポーザブル透析カセットから回収し、2つに分けてそれぞれ50mLのナスフラスコに入れ、-78℃で5時間冷凍した後、遮光して凍結乾燥を行った。その後、得られた粉末状のFITC-リゾチームを回収することによって、FITC標識タンパク質を得た。
・ウシ血清アルブミン(BSA)の標識
[ウシ血清アルブミン(BSA)溶液の調製]
500mM炭酸緩衝液40mLに、ウシ血清アルブミン800mgを加え、溶解させることによって、20mg/mLのウシ血清アルブミン溶液を調製した。得られた溶液を4℃で保存した。
[FITC-ウシ血清アルブミン溶液の調製]
500mM炭酸緩衝液12mLに、FITCを24mg加え、溶解させることによって、2mg/mLのFITC-ウシ血清アルブミン溶液を調製した。得られた溶液を4℃で保存した。
[透析]
FITC-ウシ血清アルブミン溶液をディスポーザブル透析カセットに入れ、1Lのリン酸緩衝液中にて0℃で冷却しながら撹拌した。リン酸緩衝液は2時間おきに3回交換し、一晩透析した。その後、さらにイオン交換水を用いて透析を行った。具体的には、1Lのイオン交換水中にて0℃で冷却しながら撹拌した。イオン交換水は2時間おきに3回交換し、1日透析した。
[凍結乾燥]
FITC-ウシ血清アルブミン溶液をディスポーザブル透析カセットから回収し、2つに分けてそれぞれ50mLのナスフラスコに入れ、12時間冷凍保存した。翌日、遮光した状態で12時間凍結乾燥を行い、粉末状のFITC-ウシ血清アルブミンを回収することによって、FITC標識タンパク質を得た。
(4)40mMのBritton-Robinson緩衝液の調製
40mMリン酸水溶液、40mMホウ酸水溶液、40mM酢酸水溶液、200mM水酸化ナトリウム水溶液を下記に示すように調製し、これらを混合することによって、40mMのBritton-Robinson緩衝液を調製した。
リン酸0.14mLを計量し、50mLメスフラスコを用いてイオン交換水によりメスアップすることによって、40mMリン酸水溶液を調製した。
ホウ酸0.123gを計量し、50mLメスフラスコを用いてイオン交換水によりメスアップすることによって、40mMホウ酸水溶液を調製した。
酢酸0.12mLを計量し、50mLメスフラスコを用いてイオン交換水によりメスアップすることによって、40mM酢酸水溶液を調製した。
水酸化ナトリウム0.4gを計量し、50mLメスフラスコを用いて超純粋によりメスアップすることによって、200mM水酸化ナトリウム水溶液を調製した。
40mMリン酸水溶液を50mLと、40mMホウ酸水溶液を50mLと、40mM酢酸水溶液を50mLとを混合して混合液を得た後、得られた混合液に、200mM水酸化ナトリウム水溶液を少量ずつ滴下し、pHを3、4、5、7.4、11に調整することによって、各pHに調整されたBritton-Robinson緩衝液を得た。
(5)50mMリン酸緩衝液(pH7.4)の調製
50mMリン酸二水素ナトリウム・二水和物水溶液を200mL、50mMリン酸水素二ナトリウム水溶液を600mL調製し、pH計を用いて、pHが7.4になるまで、リン酸二水素ナトリウム・二水和物水溶液に、リン酸水素二ナトリウム水溶液を添加することによって、50mMリン酸緩衝液(pH7.4)を調製した。得られた緩衝液を4℃で保存した。
(6)タンパク質の吸着評価
[タンパク質の吸着]
各濃度の微細繊維状セルロース分散体300μLと、各FITC標識タンパク質を溶解した0.1mg/mLのBritton-Robinson緩衝液1mLとを、1.5mLのマイクロチューブに入れ、混合した後、室温で12時間静置することによって、溶液中で微細繊維状セルロースにFITC標識タンパク質を吸着させた。
[タンパク質の吸着率の測定]
得られた溶液の蛍光値を蛍光光度計(Bio-Rad製)で測定した。測定後、9000gにて20分間遠心分離を行い、上澄み液を別のマイクロチューブに移した。上澄み液を、さらに、9000gにて60分間遠心分離を行い、上澄み液の蛍光値を上記蛍光光度計で測定した。そして、下記計算式により、遠心前後の蛍光値から、微細繊維状セルロースに吸着したFITC標識タンパク質の吸着率を算出した。
吸着率(%)=(Ca-Cb)/Ca×100
Ca:遠心分離前の上澄み液の蛍光値
Cb:遠心分離後の上澄み液の蛍光値
さらに、等電点が酸性側であるBSAであっても、緩衝液のpHが4以下であり、微細繊維状セルロースの濃度が0.0036質量%以上である場合、80%以上の吸着率を示した。
この結果から、セルロース分子中のグルコースユニットに硫酸基が導入された微細繊維状セルロースは、アニオン性であり負の電荷を有するため、タンパク質のアミノ基との静電的相互作用によって物理的な結合を形成し、タンパク質を吸着することが示された。
微細繊維状セルロース(実施例)、シリカ微粒子(比較例1)及びTOCN(比較例2)に吸着させたタンパク質の構造安定性(α-ヘリックス構造の比率)評価を行った。
(1)CDスペクトル測定用試料の調製
1.5mLマイクロチューブに、実験例1にて調製した0.09質量%微細繊維状セルロース水分散体を300μL加え、続いて、0.1mg/mLタンパク質溶液を1mL加え、室温で振とうした後、室温で一晩静置したものを、微細繊維状セルロースに吸着させた後のタンパク質のCDスペクトル測定用試料とした。また、実験例1にて調製した0.045、0.018、0.0072質量%の微細繊維状セルロース水分散体についても、上記と同様にしてタンパク質を吸着させたものを、吸着させた後のタンパク質のCDスペクトル測定用試料とした。
上記タンパク質溶液には、溶質であるタンパク質として、リゾチーム(卵白由来)、ウシ血清アルブミン(BSA)を用い、溶媒として、pH4又はpH5の40mMのBritton-Robinson緩衝液を用いた。
次に、0.09質量%微細繊維状セルロース水分散体に代えて、0.09質量%TOCN水分散体、及び0.18質量%となるようにシリカ微粒子を水に分散させた水分散体(0.18質量%シリカ微粒子水分散体)を用いること以外は、0.09質量%微細繊維状セルロース水分散体を用いた場合と同様にして、TOCNにタンパク質を吸着させ、吸着させた後のタンパク質のCDスペクトル測定用試料を調製した。
また、0.09質量%微細繊維状セルロース水分散体に代えて、0.18質量%となるようにシリカ微粒子を水に分散させたシリカ微粒子水分散体(0.18質量%シリカ微粒子水分散体)を用いること以外は、0.09質量%微細繊維状セルロース水分散体を用いた場合と同様にして、シリカ微粒子にタンパク質を吸着させ、吸着させた後のタンパク質のCDスペクトル測定用試料を調製した。
また、吸着剤に吸着させる前のタンパク質の構造を評価するために、タンパク質溶液そのものをCDスペクトル測定用試料とした。
(2)CDスペクトルの測定
吸着剤に吸着させる前のタンパク質のα-ヘリックス(2次構造)の比率、並びに、微細繊維状セルロース、TOCN及びシリカ微粒子のそれぞれに吸着させたタンパク質のα-ヘリックスの比率を測定した。
具体的には、円二色性分散計J-765(日本分光株式会社製)を用い、各CDスペクトル測定用試料について、α-ヘリックス構造が負の極大ピークを示す波長222nmにおける楕円率を測定し、α-ヘリックス構造の比率(含有率)を、下記計算式(i)及び(ii)によって算出した。結果を表2に示した。
・計算式(i)
[θ]222=(θobs/l/C/n×100]
θobs:楕円率の測定値(deg)、
l:光路長(cm)、
C:タンパク質のモル濃度(mol/dm3)、
n:タンパク質のアミノ酸残基数、
[θ]222:222nmにおける平均残基モル楕円率(deg・cm2/dmol)
・計算式(ii)
fH[%]=-{([θ]222+2340)/30300}×100
fH:α-ヘリックス構造の含有率
これによって、タンパク質を微細繊維状セルロースに吸着させた後においても、タンパク質の構造が安定に保持され得るため、吸着後においてもタンパク質の活性や特性が損なわれることなく保持され得ることが示された。
微細繊維状セルロースのゼータ電位を上記の方法により測定した。
これによって、微細繊維状セルロースからなるタンパク質吸着剤は、等電点の異なる種々のタンパク質を吸着させ得ることが示された。
Claims (4)
- 前記微細繊維状セルロースのpH3~5におけるゼータ電位が、-35mV~-15mVである、請求項1に記載のタンパク質吸着剤。
- 請求項1又は2に記載のタンパク質吸着剤を製造する方法であって、
セルロース繊維をスルファミン酸で処理することによって、セルロースの水酸基の一部を硫酸基に置換し、化学修飾セルロースを得る化学修飾工程を備えている、タンパク質吸着剤の製造方法。 - 前記化学修飾工程で得られた化学修飾セルロースを機械的に解繊し、平均繊維幅が3nm~100nmであり且つ平均繊維長が1μm以上200μm以下である微細繊維状セルロースを得る微細化工程をさらに備えている、請求項3に記載のタンパク質吸着剤の製造方法。
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---|---|---|---|
JP2019018679A JP7239104B2 (ja) | 2019-02-05 | 2019-02-05 | タンパク質吸着剤及びその製造方法 |
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