JP7239088B1 - 積層鉄心 - Google Patents

積層鉄心 Download PDF

Info

Publication number
JP7239088B1
JP7239088B1 JP2023501046A JP2023501046A JP7239088B1 JP 7239088 B1 JP7239088 B1 JP 7239088B1 JP 2023501046 A JP2023501046 A JP 2023501046A JP 2023501046 A JP2023501046 A JP 2023501046A JP 7239088 B1 JP7239088 B1 JP 7239088B1
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
steel sheet
processed
core
cracks
electromagnetic steel
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2023501046A
Other languages
English (en)
Other versions
JPWO2023112418A1 (ja
Inventor
健 大村
義悠 市原
聡一郎 吉▲崎▼
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
JFE Steel Corp
Original Assignee
JFE Steel Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by JFE Steel Corp filed Critical JFE Steel Corp
Priority claimed from PCT/JP2022/035415 external-priority patent/WO2023112418A1/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP7239088B1 publication Critical patent/JP7239088B1/ja
Publication of JPWO2023112418A1 publication Critical patent/JPWO2023112418A1/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Soft Magnetic Materials (AREA)

Abstract

鉄損特性が良好な積層鉄心を提供する。本発明の積層鉄心は、所定の形状に加工された電磁鋼板が積層されてなり、前記電磁鋼板は、表面に絶縁被膜を有し、加工端部から板中央方向に100μm以内の領域において前記絶縁被膜を貫通するクラックの発生頻度(個/mm)が、加工端部から板中央方向に100μm超500μm以内の領域において前記絶縁被膜を貫通するクラックの発生頻度(個/mm)の3.0倍以下である。

Description

本発明は、積層鉄心に関し、特に、電磁鋼板を積層して作製される変圧器や回転機用鉄心に関するものである。
変圧器や回転機用の鉄心は、素材となる電磁鋼板(電磁鋼板コイル)を鉄心形状に合わせて所定の形状に加工し、前記所定の形状に加工した電磁鋼板(鉄心素材)を積層して作製される。前記所定の形状に加工する方法としては、一般的には、回転機用では打ち抜き加工、変圧器用では斜角加工が用いられる。打ち抜き加工や斜角加工によって加工された鉄心素材を積層した積層鉄心を用いて変圧器や回転機を作製すると、鉄損のばらつきが大きいという問題がある。
この鉄損のばらつきを低減する技術としては、例えば特許文献1~3がある。特許文献1では、鉄損のばらつきの原因として加工時に導入される歪に着目し、打ち抜き加工後の被加工材を焼鈍して塑性歪を除去する方法が提案されている。特許文献2では、特許文献1と同様に歪に着目し、この歪をシェービング加工で除去する方法が提案されている。特許文献3では、積み精度に着目し、斜角加工後の鋼板形状を所定の範囲内に制御することで積み精度のばらつきが低下するという技術を開示している。
特開平7-298570号公報 特開2011-217565号公報 特開2014-86597号公報
上記従来の技術を適用することで、ある程度の積層鉄心の鉄損の特性向上が実現可能であるが、更なる特性向上が求められているのが現状である。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、鉄損特性が良好な積層鉄心を提供することを目的とする。
本発明者らは、鉄損劣化が発生した積層鉄心を詳細に分析した結果、積層鉄心を構成している鉄心素材である電磁鋼板の加工部周辺で絶縁破壊による短絡が発生し、これが積層鉄心の鉄損増大の主要因であることを突き止めた。本発明者らは、さらに調査を進めることで、前記短絡の発生は前記加工部周辺の絶縁被膜を貫通するクラックが原因であり、このクラックの発生を制御することにより積層鉄心の鉄損特性を大幅に改善可能であることを明らかにした。また、短絡による鉄損劣化には、加工部周辺の空隙量が影響を及ぼしており、この空隙量は加工により生じる電磁鋼板両面のだれ量を管理することで制御できることが分かった。
本発明は、上記した知見に基づきなされたものである。すなわち、本発明の要旨構成は以下のとおりである。
[1]所定の形状に加工された電磁鋼板が積層されてなる積層鉄心であって、
前記電磁鋼板は、表面に絶縁被膜を有し、加工端部から板中央方向に100μm以内の領域において前記絶縁被膜を貫通するクラックの発生頻度(個/mm)が、加工端部から板中央方向に100μm超500μm以内の領域において前記絶縁被膜を貫通するクラックの発生頻度(個/mm)の3.0倍以下である、積層鉄心。
[2]前記加工による前記電磁鋼板両面のだれ量の合計が、前記電磁鋼板の板厚の30%以下である、[1]に記載の積層鉄心。
図1に示すように、本発明において、加工端部とは、加工が施された電磁鋼板端部の領域において、絶縁被膜が存在しなくなる点である。また、だれ量とは、前記加工端部と、当該加工端部から板中央方向に十分に離れた電磁鋼板表面の水平部との板厚方向の距離である。
本発明によれば、鉄損特性が良好な積層鉄心を提供することができる。本発明によれば、回転機や変圧器用鉄心の鉄損特性を大幅に改善させることが可能になる。
図1は、電磁鋼板の加工端部、だれ量について説明する説明図(模式図)である。 図2は、絶縁被膜に発生するクラックについて説明する説明図(模式図)である。 図3は、[鉄心の鉄損/素材鉄損]と[加工端部領域のクラック発生頻度(個/mm)/加工端部以外の領域のクラック発生頻度(個/mm)]との関係を示す図である。 図4は、[鉄心の鉄損/素材鉄損]と[電磁鋼板両面のだれ量合計/板厚]との関係を示す図である。
以下、本発明について具体的に説明する。
本発明における第一のポイントは、鉄損特性劣化の主要因である鉄心素材となる電磁鋼板の加工端部周辺領域において、絶縁被膜を貫通するクラック(以下、単に、クラックともいう)の発生を抑制することである。一般的な加工方法である打ち抜き加工時に発生するクラックは、加工時のせん断応力によって加工部周辺が引っ張られ、その引張応力によって絶縁被膜が引っ張られ、その応力に耐え切れず発生する(図2)。
打ち抜き加工や斜角加工のように刃を用いた加工の場合、加工条件の調整によってクラックの発生原因である引張応力の調整は可能であるが、刃の摩耗などの影響でその適正条件は連続的に変化する。よって、刃を用いた加工ではなく、できる限り加工部周辺に応力を発生させない加工方法を選択する方がより好ましい。
加工部周辺に応力を発生させない加工方法として、具体的には、衝撃波を利用した加工方法が挙げられる。衝撃波を発生させるためには、加工が施される被加工材である鋼板表面にプラズマを生成させる必要がある。そのため、パルス幅がナノ秒以上の短パルスレーザあるいは連続レーザを用いて加工する場合では、水中で、または鋼板(被加工材)表面に水膜がある状態で、前記レーザを被加工材(鋼板)に照射する。これにより、水分によってプラズマの膨張が抑制され、衝撃波を発生させることが可能になる。前述したような方法で加工することが好ましいが、この方法に限定されるわけではなく、従来の刃を用いた加工などを高精度・高頻度に制御する方法を採用しても問題はない。
今回、連続波レーザ(連続レーザ)を使用して水中で被加工材(素材となる電磁鋼板)に照射することで衝撃波を発生させて所定の形状の電磁鋼板(鉄心素材)とする加工を実施した。ここで、所定の形状に加工するとは、素材となる電磁鋼板を、作製する鉄心形状に合わせた形状に加工することを意味する。このときのレーザ照射条件は同じとし、絶縁被膜の被膜密着性の異なる被加工材(素材となる電磁鋼板)を所定の形状に加工して、クラック発生量を変化させた電磁鋼板(鉄心素材)を作製した。比較として、従来法である刃を用いた打ち抜き加工でも被加工材(素材となる電磁鋼板)を所定の形状に加工して、電磁鋼板(鉄心素材)を作製した。さらに前記各鉄心素材をそれぞれ積層して鉄心を作製した。ここで、上記に記載した条件以外の条件は同じとした。
鉄心の鉄損と、鉄心素材である電磁鋼板の鉄損(素材鉄損)を測定し、その割合(鉄心の鉄損/素材鉄損)を求めた。また、鉄心素材である電磁鋼板の加工端部から板中央方向に100μm以内の領域において絶縁被膜を貫通するクラックの発生頻度(個/mm)と、100μm超500μm以内の領域において絶縁被膜を貫通するクラックの発生頻度(個/mm)を測定し、その割合を求めた。なお、板中央方向とは、加工端部での加工方向(切断線)に対して直交する方向(法線方向)かつ加工端部から鋼板側の方向をいう。また、以下、鉄心素材である電磁鋼板の加工端部から板中央方向に100μm以内の領域を、加工端部領域ともいう。また、前記電磁鋼板の加工端部から板中央方向に100μm超500μm以内の領域を、加工端部以外の領域ともいう。
図3に、上記で求めた、[鉄心の鉄損/素材鉄損]と[加工端部領域のクラック発生頻度(個/mm)/加工端部以外の領域のクラック発生頻度(個/mm)]との関係を示す。
ここで、クラック発生頻度は、以下のように求めた。加工面と垂直方向の断面(板厚断面)において、加工端部から板中央方向に500μmまでの領域を光学顕微鏡で50カ所観察した。そして、電磁鋼板の両面(表裏面)における加工端部領域(加工端部から板中央方向に100μm以内の領域)のクラック数および加工端部以外の領域(加工端部から板中央方向に100μm超500μm以内の領域)におけるクラック数を計測した。計測したクラック数を単位長さあたりの個数に換算したものを、それぞれの領域について平均(相加平均)したものを、それぞれの領域のクラック発生頻度とした。なお、前記50カ所の観察は、同一の条件で加工が施された鉄心素材について、図1に示されるような断面観察が可能な観察用サンプルを切り出し、任意の50カ所についてその断面を光学顕微鏡で観察することで行った。その際、絶縁被膜の状態が変化しないよう前記サンプル断面が観察可能な方向で樹脂モールドに固め、前記樹脂モールドに固めたサンプル断面を研磨して5mm以上減厚し、切り出し面から離れた(切り出しの影響を受けていない)箇所を観察した。また、加工端部から板中央方向への距離は、加工端部からの水平方向(観察断面において板厚方向と直交する方向)の距離である。鉄心の鉄損と、鉄心素材である電磁鋼板の鉄損(素材鉄損)の割合(鉄心の素材/素材鉄損)が小さいということは、鉄心作製時に発生する鉄損増大が抑制されていることを意味する。この結果(図3)より、鉄心素材の加工端部から100μm以内の領域におけるクラック発生頻度(個/mm)を、加工端部以外の領域におけるクラック発生頻度(個/mm)の3.0倍以下とすることで、鉄心の鉄損特性劣化が大幅に抑制されていることが分かる。一方、今回は打ち抜き加工により加工した電磁鋼板(鉄心素材)では全条件で加工端部領域にクラックが多発し、良好な積層鉄心の鉄損特性を得ることができなかった。
本発明における第二のポイントは、だれ量の制御である。加工後の電磁鋼板は積層されて鉄心とされる。鉄心素材である電磁鋼板のだれ量が大きくなるということは、加工による前記鋼板の変形量が大きいことを意味している。前記変形量が大きいと、加工による前記鋼板内部への導入歪が増大するため、鉄心とした場合の鉄損が劣化する。一方、前記鋼板のだれ量の増大は、前記鋼板を積層した場合の積層部分の空隙部の増大を招くため、加工端部領域におけるクラック発生による短絡起因の鉄損増大は抑制される。このため、加工端部領域のクラック発生抑制による鉄心の鉄損劣化抑制効果は小さくなる。本発明による効果を最大限享受できるのは、だれ量が少なく、導入歪による鉄損劣化が抑制された条件においてである。この場合、本発明を適用しない条件、すなわち、加工端部領域のクラック発生頻度が、加工端部以外の領域のクラック発生頻度の3.0倍超である電磁鋼板を用いた場合は、短絡が発生してしまう。そのため、前記鋼板のだれ量が小さくなるほど導入歪量は小さくなるが、短絡の影響で鉄心の鉄損劣化は大きくなる。一方、本発明を適用した条件、すなわち、加工端部領域のクラック発生頻度が、加工端部以外の領域のクラック発生頻度の3.0倍以下である電磁鋼板を用いた場合は、導入歪量の低減に加えて、短絡防止も実現される。そのため、前記鋼板のだれ量が小さくなるにつれて徐々に鉄心の鉄損劣化は小さくなり、低鉄損で、鉄損のばらつきが小さい鉄心が得られる。今回、マイクロ秒パルスレーザを使用して、被加工材の表面に水分を付着させた状態で衝撃波を利用した加工を実施した。このとき、レーザ出力を変化させて加工による電磁鋼板両面のだれ量を変化させた。加工端部領域のクラックの発生頻度が本発明の範囲内の電磁鋼板を用いた場合であれば、だれ量によらず鉄心の鉄損劣化抑制効果は確認できるが、だれ量が板厚の30%以下の範囲で最も高い鉄損劣化抑制効果が得られることが判明した(図4)。なお、比較となる加工端部領域のクラックの発生頻度が本発明の範囲外の電磁鋼板は、刃を用いた打ち抜き加工によって作製した。
次に、本発明に係る積層鉄心に関して具体的に説明する。
本発明の積層鉄心は、所定の形状に加工された電磁鋼板(鉄心素材)を複数枚積層することで構成され、変圧器用は継鉄部と脚部、回転機用はロータ部とステータ部を備えている。積層鉄心において、鉄心素材である電磁鋼板の加工端部から100μm以内の領域(加工端部領域)におけるクラック発生頻度(個/mm)が、加工端部から100μm超500μm以内の領域(加工端部以外の領域)におけるクラック発生頻度(個/mm)の3.0倍より大きくなると、積層鉄心端部で短絡が発生し、積層鉄心の鉄損特性が劣化してしまう。そのため、鉄心素材である電磁鋼板において、加工端部領域のクラック発生頻度を加工端部以外の領域のクラック発生頻度の3.0倍以下にすることが重要である。より好ましくは2.0倍以下である。なお、下限は特に限定されず、加工端部領域のクラック発生頻度は、加工端部以外の領域のクラック発生頻度の0倍であってもよい。
また、加工による電磁鋼板両面(表裏面)のだれ量の合計が板厚の30%より大きくなると、積層間の空隙が大きくなるため、短絡により積層鉄心の積層方向に渡る磁束の量が減少する。その結果、本発明において電磁鋼板の加工端部領域に発生するクラック数を制御することによる鉄損改善効果が減少する。よって、本発明の効果を最大限享受するためには、電磁鋼板両面におけるだれ量の合計が、板厚の30%以下であることが好ましく、20%以下であることがより好ましい。前記だれ量の合計は0(板厚の0%)であってもよい。ただし、前記だれ量の合計が板厚の30%超であっても、電磁鋼板の加工端部領域におけるクラック数を抑制することによる鉄損劣化抑制効果は得られるので、前記だれ量の合計が板厚の30%超の電磁鋼板を用いた積層鉄心も本発明範囲内である。
なお、加工端部領域のクラック発生頻度は、60(個/mm)以下が好ましく、30(個/mm)以下がより好ましい。前記加工端部領域のクラック発生頻度は、0(個/mm)であってもよい。
本発明で使用される電磁鋼板は、方向性電磁鋼板、無方向性電磁鋼板どちらでもよい。一般的には回転機用の鉄心には無方向性電磁鋼板、変圧器用の鉄心には方向性電磁鋼板が使用されるが、例外も存在するので特にどちらの電磁鋼板を使用するかは限定されない。
電磁鋼板の組成も特に限定されず、例えば公知のものを採用することができる。以下に、方向性電磁鋼板の好適な組成範囲を述べる。
Si:2.0~8.0質量%
Siは、鋼の電気抵抗を高め、鉄損を改善するのに有効な元素である。Si含有量が2.0質量%以上であると鉄損低減効果が十分に高められ、一方、Si含有量が8.0質量%を超えると加工性が著しく低下し、また磁束密度も低下する傾向となる。そのため、Si含有量は2.0~8.0質量%の範囲とすることが好ましい。
Mn:0.005~1.0質量%
Mnは、熱間加工性を良好にする上で必要な元素である。Mn含有量が0.005質量%未満ではその添加効果に乏しく、一方、Mn含有量が1.0質量%を超えると電磁鋼板の磁束密度が低下する傾向となる。そのため、Mn含有量は0.005~1.0質量%の範囲とすることが好ましい。
Ni:0.03~1.50質量%、Sn:0.01~1.50質量%、Sb:0.005~1.50質量%、Cu:0.03~3.0質量%、P:0.03~0.50質量%、Mo:0.005~0.10質量%およびCr:0.03~1.50質量%のうちから選んだ少なくとも1種
Niは、熱延板組織を改善して磁気特性を向上させるために有用な元素である。しかしながら、Ni含有量が0.03質量%未満では磁気特性の向上効果が小さく、一方、Ni含有量が1.50質量%を超えると二次再結晶が不安定になり磁気特性が劣化する傾向となる。そのため、Niを含有する場合、Ni含有量は0.03~1.50質量%の範囲とするのが好ましい。
また、Sn、Sb、Cu、P、MoおよびCrはそれぞれ磁気特性の向上に有用な元素であるが、いずれも上記した各成分の下限に満たないと、磁気特性の向上効果が小さく、一方、上記した各成分の上限を超えると、二次再結晶粒の発達が阻害される。そのため、上記元素を含有する場合、それぞれ上記含有量の範囲で含有させることが好ましい。
残部は、Feおよび不可避的不純物であることが好ましい。また、上記成分以外の成分に関しては、できる限り低減することが好ましい。
次に、無方向性電磁鋼板の好適な組成範囲を述べる。
Si、Al、Mn、Pを含有することで、電気抵抗を高めることが可能で、本発明の趣旨を損なうことなく、更なる鉄損の改善が達成できる。鉄損低減効果をより享受するためには、Siは0.5質量%以上、Alは0.1質量%以上、Mnは0.05質量%以上、Pは0.01質量%以上含有させることが好ましい。一方、これらの元素を大量に添加すると加工性が劣化するので、これらの元素の含有量の上限は、それぞれSi:6.5質量%、Al:3.0質量%、Mn:3.0質量%、P:0.5質量%とすることが好ましい。ただし、これらの元素を添加しなくても、本発明の効果は十分に得られるので、Si:0.5質量%未満、Al:0.1質量%未満、Mn:0.05質量%未満、P:0.01質量%未満であっても問題はない。
また、上記成分に加えて、磁気特性の改善元素として知られるSb、Sn、Crを単独でまたは2種以上を組み合わせて添加することが出来る。これらの元素の含有量は、それぞれSn:0.5質量%以下、Sb:0.5質量%以下およびCr:5.0質量%以下とすることが好ましい。なぜなら、前記含有量の範囲を超えて添加しても磁気特性改善効果は飽和して、効果的な磁気特性改善効果は期待できず、合金コストアップに見合った磁性改善効果が得られないからである。
残部は、Feおよび不可避的不純物であることが好ましい。また、上記成分以外の成分に関しては、できる限り低減することが好ましい。
本発明で使用する電磁鋼板は、表面(表裏面)に絶縁被膜を有する。前記絶縁被膜は方向性電磁鋼板、無方向性電磁鋼板ともに特に限定されることはなく、例えば公知の絶縁被膜を適用することができる。
方向性電磁鋼板の絶縁被膜としては、例えばMgOを主体としたフォルステライト被膜とリン酸マグネシウムあるいはリン酸アルミニウムを主成分とする張力被膜とからなる絶縁被膜が挙げられる。また、例えば、物理蒸着法、化学蒸着法により形成される、窒化物、炭化物、炭窒化物からなるセラミック被膜からなる絶縁被膜が挙げられる。
無方向性電磁鋼板の絶縁被膜としては、例えば、無機物を主体として、さらに有機物を含んだ複合絶縁被膜が挙げられる。複合絶縁被膜としては、例えばクロム酸金属塩、リン酸金属塩などの金属塩、または、コロイダルシリカ、Zr化合物、Ti化合物等の無機物の少なくとも1種を主体とし、微細な有機樹脂が分散している絶縁被膜が挙げられる。
絶縁被膜の膜厚は、厚い方が断面積が大きくなって単位面積当たりにかかる応力が小さくなるので、耐クラック性を高める観点からは、1μm以上が好ましい。しかしながら、絶縁被膜の膜厚が厚すぎると占積率の低下を招くので、絶縁被膜の膜厚は、10μm以下が好ましい。なお、鉄心素材における絶縁被膜の膜厚は、加工端部から板中央方向に十分に離れた電磁鋼板表面が水平となった箇所における絶縁被膜の膜厚である。
積層鉄心を構成する鉄心素材である電磁鋼板の製造方法は、特に限定されず、各製造方法の制御パラメータを調整して本発明の範囲に制御すればよい。好ましい方法としては、パルス幅がナノ秒以上(連続波レーザ含む)のレーザを、水中で、または鋼板(被加工材)表面に水膜がある状態で、鋼板の加工部に照射することで発生する衝撃波を用いた加工方法が挙げられる。衝撃波を使用することで、加工部に導入される応力が最小化されるため、加工端部領域のクラックの発生やだれの発生がそもそも発生しにくいためである。さらに、レーザ照射条件の探索も容易で安定的な加工が可能になる。ただし、その他の従来より用いられてきた打ち抜き加工や斜角加工でも高精度・高頻度に制御パラメータを制御すれば、本発明の範囲内に加工端部領域のクラック発生頻度、だれ量を制御することは可能である。よって、上記レーザによる加工方法に限定されることはない。なお、ナノ秒パルスレーザとは、パルス幅が1ナノ秒以上1000ナノ秒未満のレーザ、マイクロ秒パルスレーザとは、パルス幅が1マイクロ秒以上1000マイクロ秒未満のレーザを意味する。
本発明の積層鉄心の製造方法の一例としては、表面に絶縁被膜を有する電磁鋼板(素材となる電磁鋼板)を所定の形状に加工する工程(加工工程)と、前記工程で所定の形状に加工した電磁鋼板(鉄心素材)を積層して積層鉄心とする積層工程を含む、積層鉄心の製造方法が挙げられる。そして、前記加工工程では、加工端部から板中央方向に100μm以内の領域において前記絶縁被膜を貫通するクラックの発生頻度(個/mm)が、加工端部から板中央方向に100μm超500μm以内の領域において前記絶縁被膜を貫通するクラックの発生頻度(個/mm)の3.0倍以下となるように、素材となる電磁鋼板に加工を施す。また、前記加工工程では、加工された電磁鋼板両面のだれ量の合計が、当該電磁鋼板の板厚の30%以下となるように、素材となる電磁鋼板に加工を施すことが好ましい。
(実施例1)
C:0.05質量%、Si:4.2質量%、Mn:0.05質量%、Ni:0.03質量%、Al:200質量ppm、N:85質量ppm、Se:100質量ppmおよびS:5質量ppmを含有し、残部Feおよび不可避的不純物の成分組成からなる鋼スラブを連続鋳造にて製造した。前記鋼スラブを1480℃に加熱後、熱間圧延により板厚:2.6mmの熱延板としたのち、1200℃で120秒の熱延板焼鈍を施した。ついで、冷間圧延により中間板厚:1.0mmとし、酸化度PHO/PH=0.36、温度:1000℃、時間:60秒の条件で中間焼鈍を実施した。その後、塩酸酸洗により表面のサブスケールを除去したのち、再度、冷間圧延を実施して、板厚:0.27mmの冷延板とした。
ついで、酸化度PHO/PH=0.50、均熱温度:830℃で60秒保持する脱炭焼鈍を施した。その後、MgOを主成分とする焼鈍分離剤を塗布し、二次再結晶・フォルステライト被膜形成および純化を目的とした最終仕上げ焼鈍を1250℃、100Hrの条件で実施した。そして、コロイダルシリカとリン酸アルミニウムからなる濃度60質量%の張力被膜形成用のコーティング液を塗布した後、900℃にて焼付けて、フォルステライト被膜と張力被膜からなる絶縁被膜を形成した。この焼付け処理は、平坦化焼鈍も兼ねている。以上のようにして、素材となる電磁鋼板(電磁鋼板コイル)を作製した。
その後、上記のようにして作製した電磁鋼板コイルより、素材の鉄損特性評価用サンプルを採取し、800℃で3時間の歪取り焼鈍を行った後に、JIS C2550に従って前記素材の鉄損特性を評価した。前記素材の鉄損特性の評価と並行して、作製した上記コイルに変圧器の鉄心形状に合わせた加工を施し、所定の形状に加工した後の電磁鋼板(鉄心素材)を積層させて1000kVA、鉄心重量800kgの3相3脚変圧器鉄心を作製した。3つの脚に一次および二次巻き線を行い、120°ずつ位相をずらして1.7T/50Hzで励磁し、変圧器(積層鉄心)の鉄損を測定した。
上記鉄心素材の加工は、水中レーザ方式で行い、レーザは連続波であるシングルモードファイバーレーザでビーム径80μmのものを使用した。レーザ出力を0.5~5kW、加工速度を5mpm~50mpmの範囲内で変化させた。具体的なレーザ出力、加工速度に関しては表1に示す。加工後の鉄心素材(電磁鋼板)において、加工端部領域および加工端部以外の領域のクラック発生頻度および鉄心素材(電磁鋼板)の表裏面のだれ量合計を上述のように評価した。
表1に結果を示す。No.1、4、5、6、9、11は、クラック発生比率が本発明の範囲内に入っており、さらに電磁鋼板両面のだれ量比率が本発明の好適範囲内に入っており、鉄心素材から積層鉄心としたときの鉄損劣化が抑制されていることが分かる。No.3、8、10は、クラック発生比率が本発明の範囲外であることから、非常に鉄損劣化が大きくなっている。No.2、7は、だれ量比率は好適範囲を外れているが、クラック発生比率は本発明範囲内である。No.2、7は、クラック発生比率が本発明の範囲内でかつだれ量比率が本発明の好適範囲内のものに比べると鉄損増加比率が大きい。しかしながら、No.2、7は、クラック発生比率が本発明の範囲外のものより鉄損増加比率は抑制されていることが分かる。
Figure 0007239088000001
(実施例2)
Si:3.5質量%、Mn:0.09質量%、Al:0.6質量%を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる鋼スラブを製造し、熱間圧延により1.6mmの熱延板とした。その後、950℃×60secの熱延板焼鈍の後、冷間圧延により板厚0.25mmの冷延板とし、続いて980℃×10sec、N:H=90:10(体積比)、露点-35℃の条件で仕上げ焼鈍を行った。その後、鋼板表面に重クロム酸アルミニウム、エマルジョン樹脂およびエチレングリコールを混合した絶縁被膜形成用のコーティング液を塗布した後、300℃で焼き付けて絶縁被膜を形成し、素材となる電磁鋼板(電磁鋼板コイル)を製造した。
かくして得られた電磁鋼板コイルから、圧延方向と圧延直角方向に半量ずつのエプスタイン試験片を切り出しJISで定める方法により素材の鉄損W10/400を評価した。前記素材の評価と並行して、このコイルより所定の形状に加工した電磁鋼板(鉄心素材)を積層させてステータおよびロータとした。前記ステータおよびロータを用いて、3相4極24スロットの分布巻き希土類磁石IPMモータ(定格出力720W)を組みあげた。
上記鉄心素材の加工は、鋼板表面に5μmの水幕が存在する状態でレーザ加工することで、衝撃波を利用して所定の形状とする加工とした。その後、前記鉄心素材を回し積みして積層鉄心(ステータおよびロータ)とした。作製したモータについて、ブレーキモータと回転計、トルク計、電力計などからなるモータ特性評価装置を用いて回転数2500rpmの無負荷損を測定した。
鉄心素材形状への加工に使用したレーザは、ナノ秒パルスレーザで、ビーム径50μmのものを使用した。レーザ出力を3.0~8.0kW、加工速度を50mpm~120mpmの範囲内で変化させた。具体的なレーザ出力、加工速度に関しては表2に示す。加工後の鉄心素材(電磁鋼板)において、加工端部領域および加工端部以外の領域のクラック発生頻度および鉄心素材(電磁鋼板)の表裏面のだれ量合計を上述のように評価した。
表2に結果を示す。No.1、4、5、6、9、11は、クラック発生比率が本発明の範囲内に入っており、さらに電磁鋼板両面のだれ量比率が本発明の好適範囲内に入っており、鉄心素材から積層鉄心としたときの鉄損劣化が抑制されていることが分かる。No.3、8、10は、クラック発生比率が本発明の範囲外であることから、素材鉄損に対する積層鉄心の無負荷損の鉄損増加比率が大きくなっている。No.2、7は、だれ量比率は好適範囲を外れているが、クラック発生比率は本発明範囲内である。No.2、7は、クラック発生比率が本発明の範囲内でかつだれ量比率が本発明の好適範囲内のものに比べると素材鉄損に対する積層鉄心の無負荷損の鉄損増加比率が大きい。しかしながら、No.2、7は、クラック発生比率が本発明の範囲外のものより鉄損増加比率は抑制されていることが分かる。
Figure 0007239088000002

Claims (2)

  1. 所定の形状に加工された電磁鋼板が積層されてなる積層鉄心であって、
    前記電磁鋼板は、表面に絶縁被膜を有し、加工端部から板中央方向に100μm以内の領域において前記絶縁被膜を貫通するクラックの発生頻度(個/mm)が、加工端部から板中央方向に100μm超500μm以内の領域において前記絶縁被膜を貫通するクラックの発生頻度(個/mm)の3.0倍以下である、積層鉄心。
  2. 前記加工による前記電磁鋼板両面のだれ量の合計が、前記電磁鋼板の板厚の30%以下である、請求項1に記載の積層鉄心。
JP2023501046A 2021-12-14 2022-09-22 積層鉄心 Active JP7239088B1 (ja)

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2021202284 2021-12-14
JP2021202284 2021-12-14
PCT/JP2022/035415 WO2023112418A1 (ja) 2021-12-14 2022-09-22 積層鉄心

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP7239088B1 true JP7239088B1 (ja) 2023-03-14
JPWO2023112418A1 JPWO2023112418A1 (ja) 2023-06-22

Family

ID=85556209

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2023501046A Active JP7239088B1 (ja) 2021-12-14 2022-09-22 積層鉄心

Country Status (2)

Country Link
JP (1) JP7239088B1 (ja)
CA (1) CA3235070A1 (ja)

Citations (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2011193622A (ja) * 2010-03-15 2011-09-29 Honda Motor Co Ltd 積層コア
JP2014023224A (ja) * 2012-07-13 2014-02-03 Jtekt Corp モータステータコア及びその製造方法

Patent Citations (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2011193622A (ja) * 2010-03-15 2011-09-29 Honda Motor Co Ltd 積層コア
JP2014023224A (ja) * 2012-07-13 2014-02-03 Jtekt Corp モータステータコア及びその製造方法

Also Published As

Publication number Publication date
CA3235070A1 (en) 2023-06-22
JPWO2023112418A1 (ja) 2023-06-22

Similar Documents

Publication Publication Date Title
KR101945132B1 (ko) 무방향성 전기 강판과 그 제조 방법 그리고 모터 코어와 그 제조 방법
JP6601646B2 (ja) 無方向性電磁鋼板の製造方法とモータコアの製造方法ならびにモータコア
JP5699642B2 (ja) モータコア
JP2011084761A (ja) 回転子用無方向性電磁鋼板およびその製造方法
JP5515451B2 (ja) 分割モータ用コア材料
JP7372521B2 (ja) 無方向性電磁鋼板及びその製造方法
JP7147340B2 (ja) 無方向性電磁鋼板の製造方法
JPH07268474A (ja) 鉄損の低い方向性電磁鋼板
JP4311127B2 (ja) 高張力無方向性電磁鋼板およびその製造方法
JP7239088B1 (ja) 積層鉄心
WO2023112418A1 (ja) 積層鉄心
JP2001303213A (ja) 高効率モータ用の無方向性電磁鋼板
JP4192399B2 (ja) 方向性電磁鋼板およびその製造方法
WO2023112419A1 (ja) 積層鉄心
JP2001152300A (ja) 高周波域における磁気異方性が小さくかつプレス加工性に優れた無方向性電磁鋼板
WO2023112420A1 (ja) 積層鉄心の製造方法
JP6110097B2 (ja) 高出力リラクタンスモータ鉄心用鋼板とその製造方法、これを素材とするリラクタンスモータ用ロータ、ステータおよびリラクタンスモータ
JP2011026682A (ja) 分割モータ用コア
JP2002146493A (ja) 機械強度特性と磁気特性に優れた無方向性電磁鋼板およびその製造方法
CA3169793C (en) Electrical steel sheet machining method, motor, and motor core production method
JP7492105B2 (ja) 積層コアおよび電気機器
US20230127911A1 (en) Electrical steel sheet machining method, motor, and motor core production method
WO2022210895A1 (ja) 回転電機、ステータの鉄心及びロータの鉄心のセット、回転電機の製造方法、ステータ用無方向性電磁鋼板及びロータ用無方向性電磁鋼板の製造方法、ステータ及びロータの製造方法、及び、無方向性電磁鋼板のセット
WO2020241315A1 (ja) モータコアの製造方法
JP7388597B1 (ja) 無方向性電磁鋼板

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20230112

A871 Explanation of circumstances concerning accelerated examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A871

Effective date: 20230112

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20230131

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20230213

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 7239088

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150