JP7238613B2 - プラズマ処理装置 - Google Patents

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Description

本発明は、プラズマを用いて被処理物を処理するプラズマ処理装置に関するものである。
アンテナに高周波電流を流し、それによって生じる誘導電界によって誘導結合型のプラズマ(略称ICP)を発生させ、この誘導結合型のプラズマを用いて基板等の被処理物に処理を施すプラズマ処理装置が従来から提案されている。このようなプラズマ処理装置として、特許文献1には、アンテナを真空容器の外部に配置し、真空容器の側壁の開口を塞ぐように設けた誘電体窓を通じてアンテナから生じた高周波磁場を真空容器内に透過させることで、処理室内にプラズマを発生させるものが開示されている。
特開2017-004665号公報
しかしながら上記したプラズマ処理装置では、誘電体窓を真空容器の側壁の一部として用いるため、誘電体窓は真空容器内を真空排気した際に容器の内外の差圧に耐えられるよう十分な強度を有する必要がある。特に誘電体窓を構成する誘電体材料は靭性が低いセラミックスやガラスであるので、前記した差圧に耐えられる十分な強度を備えるためには誘電体窓の厚みを十分に大きくする必要がある。それ故アンテナから真空容器内の処理室までの距離が遠くなってしまうことで処理室における誘導電界の強度が弱くなり、プラズマ生成の効率が低下するという問題がある。
本発明はこのような問題に鑑みてなされたものであり、処理室の外部にアンテナを配置するものにおいて、アンテナから生じた高周波磁場を処理室に効率よく供給することができるプラズマ処理装置を提供することを主たる課題とするものである。
すなわち本発明に係るプラズマ処理装置は、処理室に配置された被処理物をプラズマを用いて真空処理するものであって、前記処理室を形成する壁に開口を有する容器本体と、前記開口を塞ぐように設けられ、厚さ方向に貫通するスリットが形成されている金属板と、前記金属板に接触して支持され、前記スリットを前記処理室の外部側から塞ぐ誘電体板と、前記金属板に対向するように前記処理室の外部に設けられ、高周波電源に接続されて高周波磁場を生じさせるアンテナとを備え、下記(1)式を満足することを特徴とする。
h-D/2>0.7 (1)
ここで、hは前記アンテナの中心軸と前記金属板における前記アンテナ側の表面との間の距離(mm)であり、Dは前記アンテナの直径(mm)である。
すなわち本発明に係るプラズマ処理装置は、金属板に形成されたスリットと、その上に配置された誘電体板とによって、アンテナから発生する高周波磁場を処理室側に透過させる磁場透過窓を形成している。このような構成であれば、磁場透過窓を形成する部材の一部をセラミックス等の誘電体材料よりも靭性が大きい金属材料で構成しているので、誘電体材料だけで磁場透過窓を構成する場合に比べて磁場透過窓の厚みを小さくすることができる。また、誘電体板が金属板に接触して支持されているので、真空処理時における誘電体板の変形を軽減し、誘電体板内に発生する曲げ応力を低減できる。そのため誘電板自体の厚みを小さくすることができる。これにより、アンテナから処理室までの距離を短くすることができ、アンテナから生じた高周波磁場を処理室内に効率よく供給することができる。
また、誘電体板の厚みが小さすぎると真空処理時の差圧に耐えられず割れてしまう恐れがあるが、上記のように金属板の表面とアンテナの表面との間の距離を0.7mmより大きくしているので、アンテナと金属板との間に設けられる誘電体板の厚みを、真空処理時の差圧に耐えられる程度の厚みに設計することができる。
さらに、容器本体の開口を塞ぐように金属板を設けるので、プラズマ生成空間たる処理室を取り囲む部材を全て電気的に接地することができる。これにより、アンテナの電圧によるプラズマへの影響を低減することができ、電子温度の低減及びイオンエネルギーの低減を可能にすることができる。
アンテナの表面と金属板の表面と間の距離が長すぎるとアンテナから生じた高周波磁場を処理室に効率よく供給するのが難しくなる。そのため、前記プラズマ処理装置は、更に下記式(2)を満足することが好ましい。
15≧h-D/2 (2)
前記厚さ方向から視て、前記スリットが前記アンテナと前記処理室との間に位置するように形成されていることが好ましい。このようなものであれば、アンテナから生じた高周波磁場を処理室内により効率よく供給することができる。
前記アンテナが直線状をなすものであり、複数の前記スリットが互いに平行に形成されていることが好ましい。このようなものであれば、高周波磁場を処理室内により均一に供給することができるので、処理室に生成されるプラズマ密度をより均一にすることができる。
前記金属板の内部には冷却用流体が流通可能な流路が形成されていることが好ましい。
このようなものであれば、金属板に流れる誘導電流により生じる抵抗熱を冷却用流体に熱伝達させて逃がすことができる。これにより使用中における金属板の温度上昇を抑制でき、被処理物に対する金属板からの輻射熱による温度上昇を抑えて、被処理物に対してプラズマ処理をより安定して行うことができる。
前記金属板の態様として、前記流路が少なくとも互いに隣り合うスリットの間を通るように形成されているものを挙げることができる。
厚さ方向から視てアンテナと処理室との間にスリットが形成されている場合、金属板のうち隣り合うスリット間(特にアンテナの直下)において比較的大きな誘導電流が流れ、当該部分において発生する熱量が最も大きくなる。そのため、互いに隣り合うスリットの間を通るように流路を形成することにより、金属板を効率よく冷却し、温度上昇を効率よく抑制することができる。
前記プラズマ処理装置は、前記開口を塞ぐように前記容器本体に取り付けられ、前記アンテナから生じた高周波磁場を前記処理室内に透過させる磁場透過窓を形成する窓部材を備え、前記窓部材が、前記金属板と、前記誘電体板と、前記金属板及び前記誘電体板を保持する保持枠とを有することが好ましい。
このようなものであれば、磁場透過窓を形成する窓部材と容器本体とが別部材であるので、ガスによる腐食や熱による劣化等によって金属板が消耗したり汚れた場合であっても、窓部材ごと取り外して、金属板の交換及び清掃を容易に行うことができる。
前記金属板の厚さ方向から視てスリットとアンテナとの成す角度が小さくなると(すなわち平行に近づくと)、アンテナから生じた高周波磁場を打ち消すように金属板に流れる誘導電流が大きくなり、処理室に供給される高周波磁場の強度が低下する恐れがある。
そのため、前記金属板の厚さ方向から視て、前記スリットと前記アンテナとの成す角度が30°以上、90°以下であることが好ましい。このようにすれば、厚さ方向から視てアンテナと交差するようにスリットが形成されるので、アンテナの軸方向に沿って金属板に流れる誘導電流はスリットにより寸断されようになる。これにより金属板に流れる誘導電流を小さくすることができ、処理室に供給される高周波磁場の強度を向上することができる。前記スリットと前記アンテナとの成す角度は大きいほど(すなわち垂直に近づくほど)好ましい。当該角度は45°以上、90°以下であることがより好ましく、約90°であることがより一層好ましい。
スリットの幅寸法が金属板の板厚に対して大きすぎると、アンテナと金属板との間に発生する電界がスリットを通って処理室内に入り込みやすくなり、生成されるプラズマに影響を及ぼす恐れがある。
そのため前記スリットの幅寸法は、前記金属板の板厚以下であることが好ましく、1/2以下であることがより好ましい。これにより処理室内への電界の入り込みを抑制し、生成されるプラズマへの影響を低減することができる。なお本明細書でいう「スリットの幅寸法」とは、厚さ方向から視て、アンテナと重複する箇所における、アンテナに沿った方向のスリットの長さを意味する。
互いに隣り合うスリット間における前記金属板の幅寸法が15mm以下であることが好ましく、5mm以下であることがより好ましい。
このようにすれば、金属板に流れる誘導電流をより小さくすることができ、処理室に供給される高周波磁場の強度をより向上することができる。
このようにした本発明によれば、処理室の外部にアンテナを配置するものにおいて、アンテナから生じた高周波磁場を処理室に効率よく供給することができるプラズマ処理装置を提供することができる。
本実施形態のプラズマ処理装置の全体構成を模式的に示すアンテナの長手方向に直交する断面図。 同実施形態のプラズマ処理装置の全体構成を模式的に示すアンテナの長手方向に沿った断面図。 同実施形態のプラズマ処理装置の窓部材の構成を模式的に示すアンテナの長手方向に沿った断面図。 同実施形態のプラズマ処理装置の窓部材の構成を模式的に示すアンテナ側から視た平面図。 同実施形態のプラズマ処理装置のアンテナとスリットとの関係を模式的に示す平面図。 同実施形態の金属板を冷却する冷却機構の構成を模式的に示す平面図。 他の実施形態のプラズマ処理装置の全体構成を模式的に示すアンテナの長手方向に沿った断面図。 他の実施形態のプラズマ処理装置のアンテナとスリットとの関係を模式的に示す平面図。 他の実施形態の金属板の構成を模式的に示す平面図(a)及び正面図(b)。 スリット間長さによる高周波磁場の強度への影響を説明するグラフ。 スリット角度による高周波磁場の強度への影響を説明するグラフ。 スリット幅による高周波磁場の強度への影響を説明するグラフ。 金属板の厚みによる高周波磁場の強度への影響を説明するグラフ。 アンテナに印加する高周波電力とプラズマ発光強度との関係を説明するグラフ。 アンテナの中心軸-金属板の表面間の距離とプラズマ発光強度との関係を説明するグラフ。
以下に、本発明の一実施形態に係るプラズマ処理装置を図面に基づいて説明する。なお、以下に説明するプラズマ処理装置は本発明の技術的思想を具体化するためのものであって、特定的な記載がない限り本発明を以下のものに限定しない。また、一の実施形態において説明する内容は、他の実施形態にも適用可能である。また、各図面が示す部材の大きさや位置関係などは、説明を明確にするため誇張していることがある。
<装置構成>
本実施形態に係るプラズマ処理装置100は、誘導結合型のプラズマPを用いて基板等の被処理物Wに真空処理を施すものである。ここで基板は、例えば液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等のフラットパネルディスプレイ(FPD)用の基板、フレキシブルディスプレイ用のフレキシブル基板等である。また基板に施す処理は、例えば、プラズマCVD法による膜形成、エッチング、アッシング、スパッタリング等である。
なお本実施形態のプラズマ処理装置100は、プラズマCVD法によって膜形成を行う場合はプラズマCVD装置、エッチングを行う場合はプラズマエッチング装置、アッシングを行う場合はプラズマアッシング装置、スパッタリングを行う場合はプラズマスパッタリング装置とも呼ばれる。
具体的にプラズマ処理装置100は、図1に示すように、真空排気され且つガスGが導入される処理室1が内側に形成された真空容器2と、処理室1の外部に設けられたアンテナ3と、アンテナ3に高周波を印加する高周波電源4とを備えている。真空容器2にはアンテナ3から生じた高周波磁場を処理室1内に透過させる磁場透過窓5が形成されている。高周波電源4からアンテナ3に高周波を印加すると、アンテナ3から発生した高周波磁場が磁場透過窓5を透過して処理室1内に形成されることで処理室1内の空間に誘導電界が発生し、これにより誘導結合型のプラズマPが生成される。
真空容器2は、容器本体21と、磁場透過窓5を形成する窓部材22とを備えている。
容器本体21は例えば金属製の容器であり、その壁(内壁)によって処理室1が内側に形成されている。容器本体21の壁(ここでは上壁21a)には、厚さ方向に貫通する開口部211が形成されている。窓部材22はこの開口部211を塞ぐように容器本体21に着脱可能に取り付けられている。なお容器本体21は電気的に接地されており、窓部材22と容器本体21との間はOリング等のガスケットや接着剤により真空シールされている。
真空容器2は、真空排気装置6によって処理室1が真空排気されるように構成されている。また真空容器2は、例えば流量調整器(図示省略)及び容器本体21に設けられた複数のガス導入口212を経由して、処理室1にガスGが導入されるように構成されている。ガスGは、基板Wに施す処理内容に応じたものにすればよい。例えば、プラズマCVD法によって基板に膜形成を行う場合には、ガスGは、原料ガス又はそれを希釈ガス(例えばH)で希釈したガスである。より具体例を挙げると、原料ガスがSiHの場合はSi膜を、SiH+NHの場合はSiN膜を、SiH+Oの場合はSiO膜を、SiF+Nの場合はSiN:F膜(フッ素化シリコン窒化膜)を、それぞれ基板上に形成することができる。
また、真空容器2内には、基板Wを保持する基板ホルダ7が設けられている。この例のように、基板ホルダ7にバイアス電源8からバイアス電圧を印加するようにしてもよい。バイアス電圧は、例えば負の直流電圧、負のバイアス電圧等であるが、これに限られるものではない。このようなバイアス電圧によって、例えば、プラズマP中の正イオンが基板Wに入射する時のエネルギーを制御して、基板Wの表面に形成される膜の結晶化度の制御等を行うことができる。基板ホルダ7内に、基板Wを加熱するヒータ71を設けておいてもよい。
図1及び図2に示すように、アンテナ3は複数本設けられており、各アンテナ3は磁場透過窓5に対向するように処理室1の外部に配置されている。ここで、各アンテナ3と磁場透過窓5との間の距離が2mm程度とされている。各アンテナ3は、処理室1に設けられる基板Wの表面と実質的に平行になるように配置されている。
各アンテナ3は同一構成のものであり、外観視して長さが数十cm以上の直線状(具体的には円柱状)をなすものである。アンテナ3の一端部である給電端部3aは、整合回路41を介して高周波電源4が接続されており、他端部である終端部3bは直接接地されている。なお、終端部3bは、コンデンサ又はコイル等を介して接地されてもよい。
ここで各アンテナ3は、内部に冷却液CLが流通可能な流路が形成されている中空構造のものである。具体的に各アンテナ3は、図2に示すように、少なくとも2つの導体要素31と、互いに隣り合う導体要素31と電気的に直列接続された定量素子であるコンデンサ32とを備えている。ここでは各アンテナ3は、3つの導体要素31と2つのコンデンサ32とを備えている。各導体要素31は、内部に冷却液が流れる直線状の流路が形成された直管状(具体的には円管状)をなす同一形状のものである。各導体要素31の材質は、例えば、銅、アルミニウム、これらの合金又はステンレス等の金属であるが、これに限られるものではなく適宜変更してもよい。
各アンテナ3をこのように構成することによって、アンテナ3の合成リアクタンスは、簡単に言えば、誘導性リアクタンスから容量性リアクタンスを引いた形になるので、アンテナ3のインピーダンスを低減させることができる。その結果、アンテナ3を長くする場合でもそのインピーダンスの増大を抑えることができ、アンテナ3に高周波電流IRが流れやすくなり、処理室1内に誘導結合型のプラズマPを効率良く発生させることができる。
高周波電源4は、整合回路41を介してアンテナ3に高周波電流IRを流すことができる。高周波の周波数は例えば一般的な13.56MHzであるが、これに限られるものではなく適宜変更してもよい。
しかして本実施形態のプラズマ処理装置100では、図3に示すように、窓部材22が、処理室1側からアンテナ3側に向かって順に設けられた金属板221と誘電体板222とを備える。金属板221は、その厚さ方向に貫通するスリット221sが形成されており、容器本体21の開口部211を塞ぐように設けられている。誘電体板222は、金属板221に接触して支持され、スリット221sを処理室1の外部側(すなわちアンテナ3側)から塞ぐように、金属板221のアンテナ3側の表面に設けられている。本実施形態のプラズマ処理装置100では、金属板221のスリット221sとこれを塞ぐ誘電体板222によって磁場透過窓5が形成されている。すなわち、アンテナ3から生じる高周波磁場は、誘電体板222とスリット221sを透過して処理室1に供給される。なお、開口211を塞ぐ金属板221と、金属板221のスリット221sを塞ぐ誘電体板222によって、処理室1内における真空が保持される。以下の説明において、金属板221の厚さ方向を単に「厚さ方向」という。
金属板221は、アンテナ3から生じた高周波磁場を処理室1内に透過させるとともに、処理室1外から処理室1内への電界の入り込みを防ぐものである。具体的には、金属材料を圧延加工(例えば冷間圧延や熱間圧延)して平板状に形成したものである。ここでは金属板221の厚みを約5mmとしているが、これに限らず仕様に応じて適宜変更してよい。金属板221の板厚は、真空処理時において処理室1の内外圧の差圧に耐えられる厚さであればよく、1mm以上が好ましい。
図3及び図4に示すように、金属板221は、平面視して容器本体21の開口211の全体を覆うことができる形状(ここでは矩形状)をなしている。金属板221の外周縁により囲まれた面積は、容器本体21の開口211の面積よりも大きい。そして金属板221は、容器本体21の開口211のアンテナ3側の周縁部を取り囲むようにして、容器本体21に接触して支持されるように設けられている。金属板221は処理室1に配置される基板Wの表面と実質的に平行になるように配置されている。金属板221と容器本体21とは、その間にシール構造(図示しない)を介在させていることにより真空シールされている。ここではシール構造は、金属板221と容器本体21との間に設けられた、例えばOリングやガスケット等のシール部材や接着剤により実現される。これらのシール部材は開口211の外周縁を取り囲むように設けられる。
本実施形態では金属板221は容器本体21と電気的に接触しており、容器本体21を介して接地されている。これに限らず金属板221は直接接地されていてもよい。
金属板221を構成する材料は、例えばCu、Al、Zn、Ni、Sn、Si、Ti、Fe、Cr、Nb、C、Mo、W又はCoを含む群から選択される1種の金属又はそれらの合金(例えばステンレス合金、アルミニウム合金等)等であってよい。また原料、資材、製造設備等の状況によって混入する微量の元素(不可避的不純物)を含んでいてもよい。耐食性や耐熱性を向上させる観点から、金属板221の処理室1側の表面に対してコーティング処理が行われていてもよい。
図4に示すように、スリット221sは、厚さ方向から視てアンテナ3と直交する方向に長手方向をとる矩形状を成すものであり、アンテナ3と処理室1との間に位置するようにアンテナ3の直下に形成されている。スリット221sは各アンテナ3に対応する位置に形成されている。具体的には1つのアンテナ3に対応する位置に、複数個のスリット221sが形成されている。より具体的にいうと、アンテナ3が有する各導体要素31に対応する位置に1つ又は複数個のスリット221sが形成されている。本実施形態では、各導体要素31に対応する位置に6つのスリット221sが形成されている。スリット221sの数はこれに限らず仕様に応じて適宜変更されてもよい。各スリット221sはここでは同一形状を成しているが、異なる形状であってもよい。
スリット221sは、各アンテナ3(具体的には各導体要素31)に対応する位置において互いに平行に形成されている。具体的には図5に示すように、各スリット221sは、厚さ方向から視て、その長手方向とアンテナ3との成す角度θが略同一になるように形成されている。ここでは、スリット221sとアンテナ3とが成す当該角度θを約90°としている。
各スリット221sはその幅寸法dが略同一になるように形成されている。スリット221sの幅寸法dは、金属板221の板厚以下であることが好ましく、約1/2以下であることがより好ましく、約1/3以下であることがさらに好ましい。
またスリット221sは、アンテナ3に沿って所定のピッチ長さdで等間隔に形成されている。ここでいう「ピッチ長さ」とは、図5に示すように、アンテナ3に沿った方向における、互いに隣り合うスリット221sのそれぞれの中心位置間の距離である。
またスリット221sは、互いに隣り合うスリット221s間における金属板221の幅寸法が同じになるように形成されている。ここでいう「互いに隣り合うスリット間における金属板の幅寸法」(以下において単に「スリット間長さ」ともいう)とは、スリット221sのピッチ長さdから、スリット221sの幅寸法dを引いた長さである。スリット間長さdは、15mm以下であることが好ましく、5mm以下であることがより好ましい。
本実施形態のプラズマ処理装置100は、金属板221を冷却する冷却機構9を備えている。具体的にこの冷却機構9は、図6に示すように、金属板221の内部に形成された冷却用流体が流通可能な流路91と、冷却用流体を流路91に供給する冷却流体供給機構(図示しない)とを備えている。流路91の両端は金属板221の表面に開口しており、冷却用流体は一方の開口91aから流路91に供給され、他方の開口91bから排出される。
流路91は、一方の開口91aから他方の開口91bまで一方向に流体が流れるように形成されている。ここでは流路91はアンテナ3(具体的には導体要素31)毎に対応して設けられている。流路91は、スリット221sの短手方向に平行に形成された第1流路部分91xと、スリット221sの長手方向に平行に形成された第2流路部分91yとを備えており、これらが組み合わせられて、複数のスリット221sの間を蛇行するように形成されている。流路91は、少なくとも互いに隣り合うスリット221sの間を通るように形成されている。より具体的には、第2流路部分91yが、互いに隣り合うスリット221sの間の中央部を通るように形成されている。なお、流路91に供給される冷却用流体は液体又は気体のいずれでもよい。
誘電体板222は、アンテナ3から生じた高周波磁場を処理室1内に透過させるとともに、スリット221sを塞いで処理室1内の真空を保持するものである。具体的にこの誘電体板222は、それ全体が誘電体物質で構成された平板状をなすものである。ここでは誘電体板222の板厚を金属板221の板厚よりも小さくしているが、これに限定されない。アンテナ3と処理室1との間の距離を短くする観点から薄い方が好ましい。誘電体板222の板厚は、処理室1を真空排気した状態において、スリット221sから受ける処理室1の内外の差圧に耐え得る強度を備えればよく、スリット221sの数や長さや誘電体板222の材質等の仕様に応じて適宜設定されてよい。例えば、スリット221sの幅寸法dが20mm、スリット221sの長さ寸法dが30mm、スリット間長さdが5mmであって、誘電体板222が無アルカリガラスからなる場合、誘電体板222の板厚は0.7mm以上であることが好ましい。
誘電体板222を構成する材料は、アルミナ、炭化ケイ素、窒化ケイ素等のセラミックス、石英ガラス、無アルカリガラス等の無機材料、フッ素樹脂(例えばテフロン)等の樹脂材料等の既知の材料であってよい。また誘電損を低減する観点から、誘電体を構成する材料は誘電正接が0.01以下のものが好ましく、0.005以下のものがより好ましい。
誘電体板222は、金属板221に形成された複数のスリット221sを覆って塞ぐように、金属板221のアンテナ3側の表面に設けられている。具体的には、誘電体板222は、複数のスリット221sの周囲を取り囲んで密着するように、金属板221のアンテナ3側の表面に接触している。誘電体板222と金属板221は、その間にシール構造(図示しない)を介在させていることにより真空シールされている。ここではシール構造は、誘電体板222と金属板221の間に設けられた、例えばOリングやガスケット等のシール部材や接着剤により実現される。これらのシール部材は、複数のスリット221sの全てを一挙に取り囲みように設けられてもよいし、複数のスリット221sを個別に取り囲むように設けられてもよい。また、誘電体板222が樹脂材料等の高弾性を有する材料から成る場合には、シール構造は誘電体板222の弾性力により実現されてもよい。
窓部材22は、金属板221と誘電体板222とを保持する保持枠223を更に備えている。保持枠223は、金属板221と誘電体板222を、容器本体21の上面21bに対して押さえ付けて保持するものである。図3及び図4に示すように、保持枠223は平板状をなすものであり、処理室1に設けられる基板Wの表面と実質的に平行になるように誘電体板222上に配置されている。具体的には保持枠223はその下面が、誘電体板222及び金属板221の上面に接触するように配置されている。保持枠223は、ネジ機構等の固定部材(図示しない)により容器本体21の上面21bに脱着可能に取り付けられている。
保持枠223を構成する材料は、例えば、Cu、Al、Zn、Ni、Sn、Si、Ti、Fe、Cr、Nb、C、Mo、W又はCoを含む群から選択される1種の金属又はそれらの合金等であってよい。また、内部を流れる誘導電流を小さくする観点から、保持枠223は誘電体により構成されていることが好ましい。このような誘電体材料として、例えばアルミナ、炭化ケイ素、窒化ケイ素等のセラミックス、石英ガラス、無アルカリガラス等の無機材料、フッ素樹脂(例えばテフロン)等の樹脂材料等を挙げることができる。また、保持枠223を固定するためのボルト等の固定部材も、保持枠223と同様にセラミック等の誘電体材料から構成されていることが好ましい。
保持枠223には厚さ方向に貫通する長孔状の開口223оが複数形成されており、当該開口223оから誘電体板222が露出している。図4に示すように、開口223оは各アンテナ3(具体的には各導体要素31)に対応する位置に形成されている。より具体的には、開口223оは、厚さ方向から視て各アンテナ3とこれに対応する位置にある磁場透過窓5とを取り囲むように形成されている。ここでは、3本のアンテナ3(すなわち9本の導体要素31)に対応するように、9個の開口223оが形成されている。
本実施形態のプラズマ処理装置100は、保持枠223を冷却する保持枠冷却機構(図示しない)を備えていてもよい。保持枠冷却機構は、例えば水冷や空冷の手段により保持枠223を冷却するものであってもよい。水冷の場合には、保持枠223を、その内部に冷却液が流通可能な流路を有する中空構造のものにすることで冷却するように構成してもよい。また空冷の場合には、ファン等による送風により保持枠223を冷却するように構成してもよい。
また本実施形態のプラズマ処理装置100は、図3に示すように、アンテナ3の直径(具体的には各導体要素31の直径)D(mm)と、アンテナ3の中心軸(具体的には、各導体要素31の中心軸)と金属板221におけるアンテナ3側の表面との間の距離h(mm)とが、以下の(1)式及び(2)式を満足するように、アンテナ3の位置が設定されている。
h-D/2>0.7 (1)
15≧h-D/2 (2)
なお、上記(1)式及び(2)式における“h-D/2”の値は、アンテナ3の表面と、金属板221のアンテナ3側の表面との間の距離が最も短くなる位置における、h(mm)及びD(mm)の値を用いて算出される。
<本実施形態の効果>
このように構成された本実施形態のプラズマ処理装置100によれば、磁場透過窓5を形成する窓部材22の一部をセラミックス等の誘電体材料よりも靭性が大きい金属材料で構成しているので、誘電体材料だけで磁場透過窓5を構成する場合に比べて磁場透過窓5の厚みを小さくすることができる。これにより、アンテナ3から処理室1までの距離を短くすることができ、アンテナ3から生じた高周波磁場を処理室1内に効率よく供給することができる。
さらに、容器本体21の開口211を塞ぐように金属板221を設けるので、プラズマ生成空間たる処理室1を取り囲む部材を全て電気的に接地することができる。これにより、アンテナ3の電圧によるプラズマへの影響を低減することができ、電子温度の低減及びイオンエネルギーの低減を可能にすることができる。
<その他の変形実施形態>
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
前記実施形態では金属板221は平板状であったがこれに限定されない。他の実施形態では、図7に示すように、誘電体板222が載せられる面が容器本体21の上壁21aよりも基板W側に位置するように構成されてもよい。このような構成であれば、アンテナ3を処理室1により近づけることができるので、処理室1に形成されるプラズマ密度をより向上することができる。
前記実施形態においてスリット221sとアンテナ3とが成す角度θは約90°であったがこれに限らない。他の実施形態では、当該角度θは約30°以上、約90°以下の任意の角度θであってよい。当該角度θは、約60°以上、約90°以下であることがより好ましく、約90°であることが最も好ましい。
また他の実施形態では図8に示すように、アンテナ3とのなす角度θが約30°以上、約90°以下であるスリット221sに加えて、アンテナ3とのなす角度が約0°以上、約30°未満であるスリット221tが、金属板221に更に形成されていてもよい。この場合スリット221tは、アンテナ3とのなす角度が0°であることが好ましい。またこのスリット221tはアンテナ3の直下に位置するように形成されていることが好ましい。
前記実施形態ではスリット221sは互いに平行になるように形成されていたが、これに限定されない。アンテナ3となす角度が互いに異なるようにスリット221sが形成されてもよい。
また、スリット221sは一定のピッチ長さdで形成されていなくてもよい。例えば、スリット221sの幅寸法dが一定である場合、アンテナ3(具体的には導体要素31)の長手方向における中央位置近傍では、ピッチ長さd及びスリット間長さdを大きくし、アンテナ3の長手方向における両端部に近づくほどピッチ長さd及びスリット間長さdを小さくしてもよい。このようにすれば、処理室1内においてアンテナ3の長さ方向に沿ったプラズマ密度を均一に近づけることができる。
また、スリット221sのそれぞれの幅寸法dは同一でなくてもよい。例えば、スリット221sは一定のピッチ長さdで形成されている場合、アンテナ3の長手方向における中央位置近傍では、幅寸法dを小さく(すなわち、スリット間長さdを大きく)し、アンテナ3の長手方向における両端部に近づくほど幅寸法dを大きく(すなわち、スリット間長さdを小さく)してもよい。このようにすれば、処理室1内においてアンテナ3の長さ方向に沿ったプラズマ密度を均一に近づけることができる。
前記実施形態では、隣り合うスリット221sの間には第2流路部分91yが1本のみ形成されていたが、これに限らず複数本が形成されていてもよい。また流路91は、一方の開口91aから他方の開口91bまで分岐することなく形成されているものに限らず途中で分岐するように形成されてもよい。また開口91a及び91bは、流路91の両端に設けられる必要はなく、流路91の途中に設けられていてもよい。
前記実施形態のプラズマ処理装置は、1枚の金属板221を備えるものであったがこれに限定されない。他の実施形態では、厚さ方向に重ねられた複数枚の金属板221を備えてもよい。この場合、各金属板221は構成材料が互いに異なってもよく、同じ構成材料であってもよい。
前記実施形態では窓部材22は容器本体21の上面21bに取り付けられていたが、これに限らない。他の実施形態では、容器本体21の上面に設けられたフランジ等に取り付けられもよい。
前記実施形態では、保持枠223の開口223оは各導体要素31に対応する位置に複数形成されていたが、これに限定されない。他の実施形態では、厚さ方向から視て、全ての導体要素31を取り囲むように1つの開口が形成されていてもよい。
前記実施形態のプラズマ処理装置100は、アンテナ3を複数本備えていたが、これに限らずアンテナ3を1本のみ備えていてもよい。
前記実施形態のプラズマ処理装置100は、アンテナ3は、複数の導体要素31と、互いに隣り合う導体要素31と電気的に直列接続された定量素子であるコンデンサ32とを備えるものであったがこれに限らない。他の実施形態では、アンテナ3は1つの導体要素31のみを備え、コンデンサ32を備えていなくてもよい。
他の実施形態のプラズマ処理装置100では、図9に示すように、金属板221の側面2211に開口が形成されており、この開口を塞ぐように側板92が嵌め込まれていてもよい。そして流路91(ここでは第1流路部分91x)の内側壁の一部が、側板の側面921により形成されていてもよい。このような流路91は、例えば金属板221の側面2211からスリットの長手方向に沿って切削することで第2流路部分91yを形成し、スリットの長手方向に直交する方向に沿って切削することで第1流路部分91xを形成し、当該切削加工により側面2211に形成された開口を塞ぐように側板92を設けることで形成することができる。当然ながら他の方法により流路91を形成してもよい。
前記実施形態ではアンテナ3は直線状の導体であったが、これに限らず、スパイラル型の導体やドーム状コイルであってもよい。
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
<高周波磁場強度の評価>
上記したプラズマ処理装置100における、金属板221の仕様(スリット間長さd、スリットの角度θ、スリット幅d、板厚等)の違いによる高周波磁場への影響を実験により評価した。なお本発明は以下の実験例によって制限を受けるものではなく、前記及び後記の趣旨に適合し得る範囲で変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
(1)スリット間長さdによる影響
スリット間長さdによる高周波磁場への影響を評価した。具体的には、ステンレス合金(SUS316)からなる厚み10μmの金属板を6つ準備した。各金属板には、0.5mmの幅寸法のスリットを、スリット間長さdがそれぞれ異なるようにして(それぞれ0mm、5mm、15mm、45mm、70mm、140mm)を形成した。なお各金属板に形成したスリットはいずれも、後にセットするアンテナとの成す角度θが90°になるようにした。そして各金属板に対して一方の面側に設けたアンテナから高周波磁場を供給し、反対の面側(処理室側)に透過した高周波磁場の平行磁場強度を1ターンのピックアップコイルを用いて測定した。ここでアンテナには150Wの高周波電力(周波数:13.56MHz)を供給して高周波磁場を発生させた。そして、スリット間長さが0mmである金属板における平行磁場強度に対する、各金属板における平行磁場強度の比(磁場強度比)を算出した。その結果を図10に示す。
図10に示す結果から、スリット間長さが短いほどアンテナから生じた高周波磁場を処理室側に効率よく供給できることが分かった。特にスリット間長さを約15mm以下にすることで平行磁場強度がより強くなり、約5mm以下にすることでさらに強くなることが分かった。
(2)スリットの角度θによる影響
スリットの角度θによる高周波磁場への影響を評価した。具体的には、ステンレス合金(SUS316)からなる厚み10μmの金属板を4つ準備した。各金属板には、一定の幅寸法(0.5mm)のスリットを、一定のピッチ長さ(5mm)で平行に形成した。ここで各金属板に形成したスリットは、後にセットするアンテナとの成す角度θ(スリットの角度θ)がそれぞれ異なるようにした(それぞれ90°、60°、45°、30°)。そして上記(1)と同じ手順で、各金属板の処理室側における平行磁場強度を測定した。そして、スリットの角度θが90°(すなわち、アンテナに対してスリットが直交する)である金属板における平行磁場強度に対する、各金属板における平行磁場強度の比(磁場強度比)を算出した。その結果を図11に示す。
図11に示す結果から、30°~90°のいずれのスリット角度θにおいても、アンテナから生じた高周波磁場を処理室側に効率よく供給できることが分かった。そしてスリットの角度θが大きいほど、すなわちアンテナに対して直角に近づくほど、高周波磁場をより効率よく供給できることが分かった。特にスリットの角度θを約45°以上にすることで平行磁場強度がより強くなり、約60°以上にすることでさらに強くなることが分かった。
(3)スリット幅dによる影響
スリット幅dによる高周波磁場への影響を評価した。具体的には、厚み1mmの金属板(Cu)を3つ準備した。各金属板には、それぞれ異なる幅寸法(1mm、3mm、5mm)のスリットを、所定のスリット間長さ(5mm)で形成した。すなわち、各金属板におけるスリットのピッチ長さをそれぞれ6mm、8mm、10mmとした。なお各金属板に形成したスリットはいずれも、後にセットするアンテナとの成す角度θが90°になるようにした。そして上記(1)と同じ手順で、各金属板の処理室側における平行磁場強度を測定した。また、スリットピッチが0mmの金属板(すなわち、スリットが連続するように形成されて、完全に開口している)を準備し、同様の手順で平行磁場強度を測定した。スリットピッチが0mmである金属板における平行磁場強度に対する、各金属板における平行磁場強度の比(磁場強度比)を算出した。その結果を図12に示す。
図12に示す結果から、1mm~5mmのいずれのスリット幅であっても、アンテナから生じた高周波磁場を処理室側に効率よく供給できることが分かった。そしてスリット幅が大きいほど、高周波磁場をより効率よく供給できることが分かった。
(4)金属板の厚みによる影響
金属板の厚みによる高周波磁場への影響を評価した。具体的には、厚み1mmの金属板(Cu)と厚み3mmの金属板(Cu)を準備した。各金属板に、幅寸法3mmのスリットを、ピッチ長さ8mmで形成した。なお各金属板に形成したスリットはいずれも、後にセットするアンテナとの成す角度θが90°になるようにした。そして上記(1)と同じ手順で、各金属板の処理室側における平行磁場強度を測定した。ここでは、アンテナに供給する高周波電力を100W~300Wまで50Wずつ変化させて平行磁場強度を測定した。そして供給する高周波電力の大きさ毎に、厚み1mmである金属板における平行磁場強度に対する、厚み3mmの金属板における平行磁場強度の比(磁場強度比)を算出した。その結果を図13に示す。
図13に示す結果から、アンテナに供給する高周波電力の大きさによらず、厚み1mmの金属板における平行磁場強度が、厚み3mmの金属板における平行磁場強度よりの大きくなった。これにより金属板の板厚が小さい方が、アンテナから生じた高周波磁場を処理室側に効率よく供給できることが分かった。
<プラズマの発光強度の評価>
(1)高周波電力の大きさによるプラズマ発光強度への影響
上記した実施形態のプラズマ処理装置100において、アンテナ3から生じた高周波磁場を磁場透過窓5を通して透過させて処理室1内にプラズマPを発生できることを次のようにして確認した。
具体的には、厚み方向に複数のスリット221s(幅寸法dが3mm、長さ寸法dが30mm、スリット間長さdが3mm)が形成されたCu合金からなる板厚3mmの金属板221と、板厚0.6mmの誘電体板222とを準備し、これらを上記実施形態の要領で保持枠223で保持して容器本体21に取り付けた。アンテナ3として直径Dが6mmのものを使用し、当該アンテナ3を、アンテナ3の中心軸と金属板221のアンテナ3側の表面との間の距離hが4.5mmになるように設けた。そして、真空容器2を真空排気した後に、7.0sccmのArガスを導入しつつ処理室1内の圧力を18×10-3Torrとなるように調整した。そしてアンテナ3に対して電力値を変更しながら高周波電力(周波数:13.56MHz)を供給し、処理室1に発生するプラズマPの発光強度を、発光分光分析装置により計測した。その結果を図14に示す。図14から分かるように、スリット221sが形成された金属板221を誘電体板222で覆って磁場透過窓5を形成することによって、アンテナ3から生じた高周波磁場を、磁場透過窓5を通して透過させて処理室1内にプラズマPを発生できることを確認できた。
(2)アンテナ中心軸~金属板表面の距離によるプラズマ発光強度への影響
次に、上記(1)の評価で用いたプラズマ処理装置100において、アンテナ3の中心軸と金属板221の表面との間の距離を変化させて、これによるプラズマ発光強度への影響を評価した。具体的には、アンテナ3の中心軸と金属板221のアンテナ3側の表面との間の距離hを4.5mm~11mmまで変化させ、アンテナ3に対して1000Wの高周波電力を供給して、処理室1に発生するプラズマPの発光強度を、発光分光分析装置により計測した。その結果を図15に示す。図15から分かるように、処理室1に発生するプラズマPの発光強度は、アンテナ3の中心軸と金属板221のアンテナ3側の表面との間の距離hの逆数に概して比例し、距離hが短くなるほど、プラズマPの発光強度が強くなることが分かった。また、h=4.5mmにおける発光強度を基準値(100%)とし、その25%の発光強度を真空処理が可能な下限と設定すると、当該下限における距離hは約18mmであり、「h-D/2」の値は約15mmとなった。
100 ・・・プラズマ処理装置
1 ・・・処理室
21 ・・・容器本体
211 ・・・開口
221 ・・・金属板
221s・・・スリット
222 ・・・誘電体板
3 ・・・アンテナ
4 ・・・高周波電源
5 ・・・磁場透過窓

Claims (13)

  1. 処理室に配置された被処理物をプラズマを用いて真空処理するプラズマ処理装置であって、
    前記処理室を形成する壁に開口を有する容器本体と、
    前記開口を塞ぐように設けられ、厚さ方向に貫通するスリットが形成されている金属板と、
    前記金属板に接触して支持され、前記スリットを前記処理室の外部側から塞ぐ誘電体板と、
    前記金属板に対向するように前記処理室の外部に設けられ、高周波電源に接続されて高周波磁場を生じさせるアンテナとを備え、
    下記(1)式を満足するプラズマ処理装置。
    h-D/2>0.7 (1)
    ここで、hは前記アンテナの中心軸と前記金属板における前記アンテナ側の表面との間の距離(mm)であり、Dは前記アンテナの直径(mm)である。
  2. 更に下記式(2)を満足する請求項1に記載のプラズマ処理装置。
    15≧h-D/2 (2)
  3. 前記厚さ方向から視て、前記スリットが前記アンテナと前記処理室との間に位置するように形成されている請求項1又は2に記載のプラズマ処理装置。
  4. 前記アンテナが直線状をなすものであり、
    複数の前記スリットが互いに平行に形成されている請求項1~3のいずれかに記載のプラズマ処理装置。
  5. 前記金属板の内部には冷却用流体が流通可能な流路が形成されている請求項1~4のいずれかに記載のプラズマ処理装置。
  6. 前記流路が、少なくとも互いに隣り合うスリットの間を通るように形成されている請求項4を引用する請求項5に記載のプラズマ処理装置。
  7. 前記開口を塞ぐように前記容器本体に取り付けられ、前記アンテナから生じた高周波磁場を前記処理室内に透過させる磁場透過窓を形成する窓部材を備え、
    前記窓部材が、前記金属板と、前記誘電体板と、前記金属板及び前記誘電体板を保持する保持枠とを有する請求項1~6のいずれかに記載のプラズマ処理装置。
  8. 前記厚さ方向から視て、前記スリットと前記アンテナとの成す角度が30°以上、90°以下である請求項1~7のいずれかに記載のプラズマ処理装置。
  9. 前記スリットと前記アンテナとの成す角度が45°以上、90°以下である請求項8に記載のプラズマ処理装置。
  10. 前記スリットの幅寸法が、前記金属板の板厚以下である請求項1~9のいずれかに記載のプラズマ処理装置。
  11. 前記スリットの幅寸法が、前記金属板の板厚の1/2倍以下である請求項10に記載のプラズマ処理装置。
  12. 互いに隣り合うスリット間における前記金属板の幅寸法が15mm以下である請求項4又は請求項4を引用する請求項5~11のいずれかに記載のプラズマ処理装置。
  13. 互いに隣り合うスリット間における前記金属板の幅寸法が5mm以下である請求項12に記載のプラズマ処理装置。
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