JP7237291B1 - 発酵分解卵殻膜製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】低コストで、ムコ多糖類を含む発酵分解卵殻膜を製造することを課題とする。【解決手段】タンパク分解酵素を分泌する麹を用いた発酵により卵殻膜を分解して分解卵殻膜を製造する発酵分解殻膜製造方法であって、前記麹が分泌したタンパク分解酵素により卵殻膜を発酵させて発酵分解卵殻膜液を生成する卵殻膜発酵工程を備えたことを特徴とする発酵分解卵殻膜製造方法とした。これにより、発酵により低コストで美容効果が高い成分を含む分解卵殻膜を製造することができるとともに、肌の真皮線維芽細胞によるコラーゲンやヒアルロン酸の産出能力を活性化してこれら抗老化成分を多く産出させるという大きな効果を奏している。【選択図】図3

Description

本発明は、発酵により卵殻膜を分解して発酵分解卵殻膜を製造する発酵分解卵殻膜製造方法に関するものである。
鶏卵などの卵の卵殻の内側にある卵殻膜を分解して得られる分解卵殻膜は育毛や健康増進などに有効であるとされている。
特許文献1には、卵殻膜粉末をアルカリ水溶液中で加水分解して、加水分解性卵殻膜を製造する方法が記載されている。
特許文献1:特許第6410229号公報
しかしながら、特許文献1に記載のものは、製造工程が複雑で高コストであるという問題がある。また、特許文献1に記載のもののようなアルカリ水による分解では、卵殻膜に高濃度で含まれ美容成分として効果が高いコラーゲンやヒアルロン酸、グルコサミンといったものまで分解してしまうという問題があった。保水性が高いヒアルロン酸やコンドロイチンは、肌の保湿性を高め、乾燥によるしわの改善効果が期待される成分であるが、これらが分解されてしまうと化粧品やサプリの原料として用いたときの効果が低下してしまう。
本発明は、上記問題点を解決して、低コストで美容効果が高い成分を含む分解卵殻膜を製造することを課題とする。
上記課題を解決するために本発明は、酵により麹が生成した分解酵素により卵殻膜を分解して分解卵殻膜を製造する発酵分解卵殻膜製造方法であって、卵殻膜に種麹を加えて前記麹を生成する麹生成工程を備えたことを特徴とする発酵分解卵殻膜製造方法を提供するものである。
この構成により、卵殻膜に種麹を加えて麹を生成することにより、麹菌がプロテアーゼ等のタンパク分解酵素や、アミラーゼ等糖分解酵素を産出することができ、これらの分解酵素により卵殻膜をペプチドの状態まで分解させることが可能となる。
発酵分解卵殻膜製造方法であって、前記麹生成工程で生成した前記麹と卵殻膜とを混ぜることで発酵させて発酵分解卵殻膜液を生成する卵殻膜発酵工程を備えた構成としてもよい。
この構成により、卵殻膜に種麹を加えて生成した麹を用いた発酵により低コストで美容に効果が高い成分を多く含む分解卵殻膜を製造することができる。特に、保水性が高いヒアルロン酸やコンドロイチンは、肌の保湿性を高め、乾燥によるしわの改善効果が期待される成分であるが、これらが分解されずに化粧品やサプリの原料として用いられる。
発酵分解卵殻膜製造方法であって、前記卵殻膜発酵工程では、前記麹及び卵殻膜に酒粕を混ぜて発酵させる構成としてもよい。
この構成により、α-GG、アミノ酸、フェルラ酸といった日本酒の中に含まれる美容成分が溶け出し、美容に対する効果が期待できる。なお、日本酒の酒粕に替えて蜂蜜や穀物類を用いることができる。
発酵分解卵殻膜製造方法であって、前記卵殻膜発酵工程の後に、前記発酵分解卵殻膜液における殺菌及び酵素を不活性にする不活性化工程を備えた構成としてもよい。
この構成により、濾過された分解液に含まれるプロテアーゼやアミラーゼによるタンパク質や糖の分解を止め、麹菌の増殖を停止させることができる。
発酵分解卵殻膜製造方法であって、前記不活性化工程の後に、前記発酵分解卵殻膜液から固形分である未分解の卵殻膜と麹菌の菌体を除去する固形分除去工程を備えた構成としてもよい。
この構成により、化粧品原料として不要な固形分である未分解の卵殻膜と麹菌の菌体を除去することができる。
発酵分解卵殻膜製造方法であって、前記固形分除去工程により固形分が除去された後の前記発酵分解卵殻膜液を乾燥させる乾燥工程を備えた構成としてもよい。
この構成により、使い勝手のよい粉状の発酵分解卵殻膜を得ることができる。
本発明の発酵分解卵殻膜製造方法により、低コストで美容効果が高い成分を含む分解卵殻膜を製造することができる。
比較例における対照に対する比較対象のアルカリ処理による加水分解卵殻膜による細胞あたりのコラーゲン産出率を示すグラフである。 比較例における対照に対する比較対象のアルカリ処理による加水分解卵殻膜による細胞あたりのヒアルロン酸産出率を示すグラフである。 本発明の実施例1における対照に対する本発明の発酵分解卵殻膜による細胞あたりのコラーゲン産出率を示すグラフである。 本発明の実施例1における対照に対する本発明の発酵分解卵殻膜による細胞あたりのヒアルロン酸産出率を示すグラフである。
本発明の実施例1における発酵分解卵殻膜製造方法について説明する。実施例1における発酵分解卵殻膜製造方法は、麹から産出されるプロテアーゼなどのタンパク分解酵素により卵殻膜をペプチドの状態まで分解させる卵殻膜発酵工程を備えている。
実施例1においては、卵殻膜発酵工程を実施して発酵分解卵殻膜液を生成する。卵殻膜発酵工程は、粗粉砕された卵殻膜と酒粕(アルコール分を除去している)をタンクに投入し麹を混ぜる。実施例1における麹は醤油麹、米麹や豆麹等の任意の麹を用いることができる。そして、卵殻膜10~100gに対して酒粕10g~100g(乾燥重量)を混ぜて麹を投入すると、およそ45℃で酵素分解がおきる。この状態で0.5~7日間熟成させると、麹が分泌するプロテアーゼ酵素、ペプチダーゼ酵素、及びアミラーゼによりタンパク質や糖を分解する。そして、発酵が終わると発酵分解卵殻膜を含む混濁液(以下「発酵分解卵殻膜液」ともいう。)となる。
発酵によるタンパク質の分解は、アミノ酸まで分解されることなく、タンパク質の一部がペプチドに分解された状態で終了する。ペプチドは肌のターンオーバーを促進すると言われている。また、液状となった発酵分解卵殻膜液は、コンドロイチン、ヒアルロン酸といったアミノ酸を含むムコ多糖類やコラーゲン等が含まれている。
上述のペプチド、ムコ多糖類、及びコラーゲンが含まれていることで、サプリメントや化粧品に加工することで美容や健康を保つ上で重要な成分を保持した分解卵殻膜とすることができる。
なお、実施例1においては、卵殻膜と酒粕を1:1で加えて発酵させるように構成したが、必ずしもこれに限定されず適宜変更が可能である。例えば、酒粕を加えずに、卵殻膜のみで発酵させてもよく、卵殻膜と酒粕を1:1ではなく任意の割合で混ぜてもよい。また、酒粕に替えて、豆乳や蜂蜜を用いてもよい。
このように、実施例1においては、タンパク分解酵素を分泌する麹を用いた発酵により卵殻膜を分解して分解卵殻膜を製造する発酵分解卵殻膜製造方法であって、
前記麹が分泌したタンパク分解酵素により卵殻膜を発酵させる卵殻膜発酵工程を備えたことを特徴とする発酵分解卵殻膜製造方法により、低コストで美容効果が高い成分を含む分解卵殻膜を製造することができる。
本発明の実施例2においては、卵殻膜発酵工程の前に、種麹から麹を生成する麹生成工程を備えた点で実施例1と異なっている。
実施例2における麹生成工程では、種麹から麹を生成する。滅菌水5lに同じく滅菌処理した卵殻膜10~100g(乾燥重量)、ブドウ糖10~100gを入れ、麹菌液10mlを加えて25℃~45℃で1日~1週間曝気しながら攪拌する。この間、麹菌はプロテアーゼやペプチダーゼといったタンパク分解酵素や糖分解酵素のアミラーゼを産出する。そして、それら酵素を液中に溶出させる。
次に、麹生成工程で生成した麹を使って、卵殻膜発酵工程を実施して発酵卵殻膜液を生成する。卵殻膜発酵工程は、粗粉砕された卵殻膜と酒粕をタンクに投入し、麹生成工程で生成された麹を混ぜる。実施例2における麹は醤油麹、米麹や豆麹等の任意の麹を用いることができる。そして、卵殻膜10~100gに対して酒粕10g~100g(乾燥重量)を混ぜて麹を投入すると、およそ45℃で酵素分解がおきる。この状態で0.5~7日間熟成させると、麹が分泌するプロテアーゼ酵素、ペプチダーゼ酵素、及びアミラーゼによりタンパク質や糖を分解する。そして、発酵が終わると発酵分解卵殻膜を含む混濁液(以下「発酵分解卵殻膜液」ともいう。)となる。
発酵によるタンパク質の分解は、アミノ酸まで分解されることなく、タンパク質の一部がペプチドに分解された状態で終了する。液状となった発酵分解卵殻膜液は、コンドロイチン、ヒアルロン酸といったアミノ酸を含むムコ多糖類やコラーゲン等が含まれている。
なお、実施例2においては、卵殻膜1に対して酒粕1を加えて発酵させるように構成したが、必ずしもこれに限定されず適宜変更が可能である。例えば、酒粕を加えずに、卵殻膜のみで発酵させてもよく、卵殻膜と酒粕を1:1ではなく任意の割合で混ぜてもよい。また、酒粕に替えて、豆乳や蜂蜜を用いてもよい。
このように、実施例2においては、卵殻膜発酵工程の前に、種麹から麹を生成する麹生成工程を備えたことで、種麹から麹菌を培養することにより、麹菌がプロテアーゼ等のタンパク分解酵素や、アミラーゼ等糖分解酵素を産出することができる。
本発明の実施例3は、卵殻膜発酵工程の後に、殺菌及び酵素を不活性にする不活性化工程を備えた点で実施例1、実施例2と異なっている。
実施例3においては、卵殻膜発酵工程の後に、殺菌及び酵素を不活性にする不活性化工程を実施する。これにより、発酵分解卵殻膜液には濾過してもプロテアーゼが含まれているが、不活性化工程を実施することによってペプチドのさらなる分解を阻止し、麹菌の繁殖を止め、雑菌による腐敗を防止できる。
不活性化工程では、卵殻膜発酵工程で分解された発酵分解卵殻膜液を10分~3時間60~90℃で加熱するとよいが、多くの場合は、30分間70℃に加熱することで、殺菌及び酵素を不活性にすることができる。
このように実施例3においては、発酵分解卵殻膜製造方法であって、卵殻膜発酵工程の後に、殺菌及び酵素を不活性にする不活性化工程を備えた構成により、濾過された分解液に含まれるプロテアーゼによって麹菌や雑菌の分解が進むことや雑菌が繁殖し腐敗が起こることを防止できる。
本発明の実施例4は、不活性化工程の後に、不活性化された発酵分解卵殻膜液から固形分を除去した発酵分解卵殻膜液とする固形分除去工程を備えた点で実施例3と異なっている。
実施例4においては、不活性化工程の後に、不活性化された発酵分解卵殻膜液から固形分を除去した発酵分解卵殻膜液とする固形分除去工程を実施する。これにより、化粧品原料として不要な固形分である未分解の卵殻膜と麹菌の菌体を除去することができる。
具体的には、固形分除去工程では、布袋等に発酵分解卵殻膜液を入れて絞ることで実施できる。又は、ろ紙などで濾過してもよく、遠心分離機で固形分を除去してもよい。
このように、実施例4においては、発酵分解卵殻膜製造方法であって、不活性化工程の後に、前記発酵分解卵殻膜液から固形分を除去する固形分除去工程を備えた構成により、化粧品原料として不要な固形分である未分解の卵殻膜と麹菌の菌体を除去することができる。
本発明の実施例5においては、固形分除去工程により固形分が除去された後の前記発酵分解卵殻膜液を乾燥させる乾燥工程を備えた点で実施例4と異なっている。
実施例5においては、固形分除去工程により固形分が除去された後の前記発酵分解卵殻膜液を乾燥させる乾燥工程を実施する。乾燥工程では、スプレードライ製法等の公知の方法で行うことができる。乾燥工程により、使い勝手のよい粉末状の発酵分解卵殻膜とすることができる。
このように、実施例5においては、固形分除去工程により固形分が除去された後の前記発酵分解卵殻膜液を乾燥させる乾燥工程を備えた構成により、使い勝手のよい粉状の発酵分解卵殻膜を得ることができる。
比較例
(加水分解卵殻膜の製造)
実施例1における発酵分解卵殻膜製造方法で製造された発酵分解卵殻膜との比較を行うために以下に示す従来の方法で加水分解卵殻膜を製造した。
まず、乾燥した卵殻膜粉末(平均粒径 7μm)1.02gに水酸化ナトリウムを溶かしたアルカリ液(Ph12.5~14)を12.55g加え、70~75℃の湯煎で時々振り混ぜながら4時間加熱することで加水分解を行った。
その後、酸添加工程では、塩酸を加えてpH7.1とした。そして1晩静置後の上澄み液を取り(6.8g)、脱塩処理をすることで加水分解卵殻膜を回収した。残渣0.07gであった。この淡黄色粉末を卵殻膜加水分解物とした。この粉末は水に溶解した。
(抗老化試験による実施例1における発酵分解卵殻膜製造方法で製造された発酵分解卵殻膜との比較)
ハリや弾力があり、瑞々しく、シワができにくい肌状態を保つには、肌が本来備えている真皮線維芽細胞によるコラーゲンやヒアルロン酸の産出が不可欠であるが老化によりこの産出能力が低下すると考えられている。
出願人は、以下の抗老化試験を行うことによって、本発明の実施例1における発酵分解卵殻膜製造方法で製造された発酵分解卵殻膜が、真皮線維芽細胞によるコラーゲンやヒアルロン酸の産出能力を活性化してこれら抗老化成分を多く産出させる効果があることをつきとめることに成功した。
抗老化成分を多く産出させる効果を実証するために、真皮線維芽細胞によるコラーゲンやヒアルロン酸の産出能力を従来の加水分解卵殻膜と比較、検証する抗老化試験を実施した。
試験に使用した細胞は、COインキュベータ(CO濃度5%、37℃)を用いてヒト新生児由来の真皮線維芽細胞株NB1RGB細胞(RIKEN BRC,Japan)を培養した。
試験に使用した分解卵殻膜(発酵分解卵殻膜は酒粕を添加せずに製造した)は、0.5%FBS含有EMEMによって希釈して計3濃度(0.01%、0.05%、0.1%)を調製した。
対照には、0.5%FBS含有EMEMを用いた。
抗老化試験は被検品3種類について行い、その平均値を図1―図4に示す。図1―図4は、それぞれ横軸に被検品の分解卵殻膜の濃度を示し一番左側には分解卵殻膜を投与していない対照を示す。また、縦軸にコラーゲン又はヒアルロン酸の産出率を表している。図1は、対照を100としたときの比較対象の加水分解卵殻膜(比較例の方法で製造)による細胞あたりのコラーゲン産出率を示す。図2は、対照を100としたときの比較対象の加水分解卵殻膜(比較例の方法で製造)による細胞あたりのヒアルロン酸産出率を示す。図3は、対照を100としたときの本発明の実施例1における発酵分解卵殻膜製造方法で製造された発酵分解卵殻膜による細胞あたりのコラーゲン産出率を示す。図4は、対照を100としたときの本発明の実施例1における発酵分解卵殻膜製造方法で製造された発酵分解卵殻膜による細胞あたりのヒアルロン酸産出率を示す。
図1、図2からわかるように、比較対象の加水分解卵殻膜による細胞あたりのコラーゲン産出率及びヒアルロン酸産出率は、加水分解卵殻膜を投与していない対照に対して95%~106%と加水分解卵殻膜による効果は認められない。
これに対して、図3、図4からわかるように、本発明の実施例1における発酵分解卵殻膜製造方法で製造された発酵分解卵殻膜による細胞あたりのコラーゲン産出率及びヒアルロン酸産出率は、発酵分解卵殻膜を投与していない対照に対して220%~330%と大きな効果を有していることが分かる。
このように、本発明における発酵分解卵殻膜製造方法で製造された発酵分解卵殻膜は、低コストで美容に効果が高い成分を多く含む分解卵殻膜とするができるとともに、肌の真皮線維芽細胞によるコラーゲンやヒアルロン酸の産出能力を活性化してこれら抗老化成分を多く産出させるという大きな効果を奏している。
本発明における発酵分解殻膜製造方法は、卵殻膜に限定されず、乳製品、卵黄等の動物性タンパク、豆類等の植物性タンパクの発酵分解を利用する分野に広く用いることができる。

Claims (6)

  1. 酵により麹が生成した分解酵素により卵殻膜を分解して分解卵殻膜を製造する発酵分解卵殻膜製造方法であって、卵殻膜に種麹を加えて前記麹を生成する麹生成工程を備えたことを特徴とする発酵分解卵殻膜製造方法。
  2. 前記麹生成工程で生成した前記麹と卵殻膜とを混ぜることで発酵させて発酵分解卵殻膜液を生成する卵殻膜発酵工程を備えたことを特徴とする請求項1記載の発酵分解卵殻膜製造方法。
  3. 前記卵殻膜発酵工程では、前記麹及び卵殻膜に酒粕を混ぜて発酵させることを特徴とする請求項に記載の発酵分解卵殻膜製造方法。
  4. 前記卵殻膜発酵工程の後に、前記発酵分解卵殻膜液における殺菌及び酵素を不活性にする不活性化工程を備えたことを特徴とする請求項2又は3に記載の発酵分解卵殻膜製造方法。
  5. 前記不活性化工程の後に、前記発酵分解卵殻膜液から固形分である未分解の卵殻膜と麹菌の菌体を除去する固形分除去工程を備えたことを特徴とする請求項に記載の発酵分解卵殻膜製造方法。
  6. 前記固形分除去工程により固形分が除去された後の前記発酵分解卵殻膜液を乾燥させる乾燥工程を備えたことを特徴とする請求項に記載の発酵分解卵殻膜製造方法。
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