〔使い捨ておむつ1の基本構造の一例〕
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。本書において、「長手方向」とは使い捨ておむつ1の前側と後側を結ぶ方向を意味し、「幅方向」とは長手方向と直交する方向(使い捨ておむつ1の展開時の左右方向)を意味する。
図1~図5に示されるように、本使い捨ておむつ1(以下、単におむつともいう。)は、不織布などからなる透液性トップシート11と、ポリエチレン等からなる防水シート12との間に、綿状パルプなどの吸収体13を介在させるとともに、肌面側の両側部にそれぞれおむつ長手方向に沿って肌側に起立する左右一対の立体ギャザーBS、BSが形成された吸収性本体10と、この吸収性本体10の外面側(非肌側)に一体的に設けられ、おむつのバックシートを構成する外装体20とを含み、製品状態で、長手方向中央部を幅方向に延びる中心線CL(おむつ1を長手方向に二分する中心線)で折り畳み、前記外装体20の前身頃と後身頃とが両側部において接合されることによりウエスト開口部WO及び左右一対のレッグ開口部LO、LOが形成された構造のパンツ型のおむつである。
以下、更に各構成部材について具体的に詳述する。
(吸収性本体10)
先ず最初に、前記吸収性本体10の構造の一例について図2~図5に基づいて説明すると、
前記吸収性本体10は、不織布などからなる透液性トップシート11と、ポリエチレン等からなる防水シート12との間に、綿状パルプなどの吸収体13を介在させた構造とされ、体液を吸収保持するものである。
前記吸収体13は、たとえばパルプ中に高吸水性樹脂を混入したもの、或いはパルプ中に化学繊維を混入させるとともに、高吸水性樹脂を混入したものが使用される。前記吸収体13は、形状保持と透液性トップシート11を透過した体液の拡散性向上のためにクレープ紙や不織布などからなる被包シート14によって囲繞されるのが望ましい。前記パルプとしては、木材から得られる化学パルプ、溶融パルプ等のセルロース繊維や、レーヨン、アセテート等の人工セルロース繊維からなるものが挙げられ、広葉樹パルプよりは繊維長の長い針葉樹パルプの方が機能および価格の面で好適に使用される。また、前記吸収体13として、嵩を小さくできるエアレイド吸収体や、2層の不織布層間に高吸水性樹脂を配置してなるポリマーシートを用いてもよい。
また、前記吸収体13には合成繊維を混合しても良い。前記合成繊維は、例えばポリエチレン又はポリプロピレン等のポリオレフィン系、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系、ナイロンなどのポリアミド系、及びこれらの共重合体などを使用することができるし、これら2種を混合したものであってもよい。また、融点の高い繊維を芯とし融点の低い繊維を鞘とした芯鞘型繊維やサイド-バイ-サイド型繊維、分割型繊維などの複合繊維も用いることができる。前記合成繊維は、体液に対する親和性を有するように、疎水性繊維の場合には親水化剤によって表面処理したものを用いるのが望ましい。
前記吸収体13は、図示例では脚周りに対応する長手方向中間部の両側に切欠き部13aが形成されることにより、平面形状を略砂時計形状として成形されたものが使用され、その幅寸法は股間部への当たりによって着用者にゴワ付き感を与えない寸法幅となっている。
前記高吸水性樹脂としては、たとえばポリアクリル酸塩架橋物、自己架橋したポリアクリル酸塩、アクリル酸エステル-酢酸ビニル共重合体架橋物のケン化物、イソブチレン・無水マレイン酸共重合体架橋物、ポリスルホン酸塩架橋物や、ポリエチレンオキシド、ポリアクリルアミドなどの水膨潤性ポリマーを部分架橋したもの等が挙げられる。これらの内、吸水量、吸水速度に優れるアクリル酸またはアクリル酸塩系のものが好適である。前記吸水性能を有する高吸水性樹脂は製造プロセスにおいて、架橋密度および架橋密度勾配を調整することにより吸水力と吸水速度の調整が可能である。
前記吸収体13を覆う被包シート14を設ける場合には、結果的に透液性トップシート11と吸収体13との間に被包シート14が介在することになる。前記被包シート14がクレープ紙からなる場合には、吸収性に優れる前記被包シート14によって尿を速やかに拡散させるとともに、これら尿の逆戻りを防止するようになる。
前記吸収体13及び被包シート14のいずれか一方又は両方は、白色以外の色、好ましくは黒色や灰色など、比較的暗い、明度が小さな色を有しているのが好ましい。本発明は男性用の吸収性物品に関するものなので、比較的暗い色を用いることにより男性用として落ち着いた印象を与えるとともに、暗い色の服を着用したときに目立ちにくくなり、かつ排尿の跡も目立ちにくくなる。着色方法は特に限定されず、適宜の染色方法、或いは着色原料を用いることができる。また、吸収体13及び被包シート14のいずれか一方又は両方に活性炭を含有することにより、着色を施してもよい。これにより、活性炭による消臭効果も付加できるようになる。
前記吸収体13の表面側(肌当接面側)を覆う透液性トップシート11としては、有孔または無孔の不織布や多孔性プラスチックシートなどが好適に用いられる。不織布を構成する素材繊維は、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維とすることができ、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等の適宜の加工法によって得られた不織布を用いることができる。これらの加工法の内、スパンレース法は柔軟性、ドレープ性に富む点で優れ、サーマルボンド法は嵩高でソフトである点で優れている。透液性トップシート11に多数の透孔を形成した場合には、尿などが速やかに吸収されるようになり、ドライタッチ性に優れたものとなる。前記透液性トップシート11は、吸収体13の側縁部を巻き込んで吸収体13の裏面側まで延在させるのが好ましい。
前記吸収体13の裏面側(非肌当接面側)を覆う防水シート12は、ポリエチレンまたはポリプロピレンなどの不透液性プラスチックシートが用いられるが、近年はムレ防止の点から透湿性を有するものが好適に用いられる。この遮水・透湿性シートは、たとえばポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン樹脂中に無機充填材を溶融混練してシートを形成した後、一軸または二軸方向に延伸することにより得られる微多孔性シートであり、仮にシート厚が同じであれば無孔シートよりも剛性が低下するため、柔軟性の点で勝るものとなる。
前記吸収性本体10の肌面側の両側部にそれぞれ、おむつ長手方向に沿って肌側に起立する左右一対の立体ギャザーBS、BSが形成されている。前記立体ギャザーBSを形成するギャザー不織布15は、図4及び図5に示されるように、折返しによって二重シートとした不織布が用いられ、前記透液性トップシート11によって巻き込まれた吸収体13の側縁部をさらにその上側から巻き込んで吸収体13の裏面側まで延在して接着されるのが好ましい。より具体的には、前記ギャザー不織布15は、おむつの長手方向中間部では、図4に示されるように、立体ギャザーBS形成部分を残し、幅方向中間部から吸収体13の裏面側に亘る範囲がホットメルト接着剤等によって接着され、また長手方向前後端部では、図5に示されるように、前記幅方向中間部から一方側端縁までの区間が吸収体13の裏面側に亘る範囲で接着されるとともに、前記立体ギャザーBSを形成する部分を吸収体13の上面部にて折り畳むようにしながらホットメルト接着剤等により接着している。
前記二重シート不織布によって形成されたギャザー不織布15の内部には、起立先端側部分におむつ長手方向に沿って1本又は複数本の、図示例ではギャザー起立方向に間隔をあけて複数本の糸状弾性伸縮部材16、16…が配設されている。前記糸状弾性伸縮部材16、16…は、製品状態において図4に示されるように、弾性伸縮力によりギャザー不織布15を肌側に起立させて立体ギャザーBSを形成するためのものである。
前記防水シート12は、両側部が前記二重シート状のギャザー不織布15の内部まで進入し、図4に示されるように、立体ギャザーBSの下側(起立基端側)において防漏壁を構成するように配置するのが好ましい。前記防水シート12は、立体ギャザーBSの肌当たりを良くするため、ギャザー不織布15の折返し端側に若干の幅で二重シート状のギャザー不織布15、15のみからなる部分を残して、立体ギャザーBSの先端付近まで延在するのが好ましい。かかる防水シート12としては、尿の色が透き通らないように不透明のものを用いるのが望ましい。不透明化としては、プラスチック中に、炭酸カルシウム、酸化チタン、酸化亜鉛、ホワイトカーボン、クレイ、タルク、硫酸バリウムなどの顔料や充填材を内添してフィルム化したものが好適に使用される。
前記糸状弾性伸縮部材16としては、通常使用されるスチレン系ゴム、オレフィン系ゴム、ウレタン系ゴム、エステル系ゴム、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリスチレン、スチレンブタジエン、シリコン、ポリエステル等の素材を用いることができる。また、外側から見え難くするため、太さは310~940dtex、テンションは自然長を100%としたときの伸長率が250~290%(2.5倍~2.9倍)として配設するのがよい。なお、糸状弾性伸縮部材に代えて、ある程度の幅を有するテープ状弾性伸縮部材を用いるようにしてもよい。
前述のギャザー不織布15を構成する素材繊維も前記透液性トップシート11と同様に、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、アミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維とすることができ、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等の適宜の加工方法により得られた不織布を用いることができるが、特にはムレを防止するために坪量を抑えて通気性に優れた不織布を用いるのがよい。さらに前記ギャザー不織布15については、尿などの透過を防止するとともに、カブレを防止しかつ肌への感触性(ドライ感)を高めるために、シリコン系、パラフィン金属系、アルキルクロミッククロイド系撥水剤などをコーティングした撥水処理不織布を用いるのが望ましい。
(外装体20)
次に、前記外装体20の構造の一例について図2~図5に基づいて詳述すると、
前記外装体20は、上層シート26及び下層シート27からなる2層構造の不織布シートとされ、前記上層シート26と下層シート27との間に、幅方向に沿うとともに、長手方向に間隔を空けて各種弾性部材が配設されることにより、幅方向への伸縮性が付与されている。平面形状は、中間両側部に夫々レッグ開口部LOを形成するための凹状の脚回りカットライン29により、全体として擬似砂時計形状を成している。
本発明に係る外装体20においては、前記弾性部材として、図3に示される展開形状において、前記ウエスト開口部回り23に配置されたウエスト部弾性部材24,24…と、前身頃及び後身頃に、上下方向に間隔をおいて水平方向に沿って配置された複数の腰回り弾性部材群25,25…とを備えるものである。なお、前記脚回りカットライン29に沿って実質的に連続する、所謂脚回り弾性部材を設けてもよい。
前記ウエスト部弾性部材24,24…は、前身頃と後身頃とが接合された脇部接合縁21、22の範囲の内、ウエスト開口部WOの端縁近傍に上下方向に間隔をおいて配設された複数条の糸ゴム状弾性部材であり、身体のウエスト部回りを締め付けるように伸縮力を与えることによりおむつを身体に装着するためのものである。このウエスト部弾性部材24は、図示例では糸ゴムを用いたが、例えばテープ状の伸縮部材を用いてもよい。
前記腰回り弾性部材群25,25…は、脇部接合縁21、22の内、概ね上部から下部までの範囲に亘り、上下方向に間隔をおいて水平方向に沿って配設された糸ゴム状の弾性部材であり、前身頃及び後身頃の腰回り部分に夫々水平方向の伸縮力を与え、おむつを身体に密着させるためのものである。なお、前記ウエスト部弾性部材24、24…と腰回り弾性部材群25、25…との境界は必ずしも明確でなくてよい。例えば、前身頃及び後身頃に上下方向に間隔をおいて水平方向に配置された弾性部材の内、数は特定できなくても、上部側の何本かがウエスト部弾性部材として機能し、残りの弾性部材が腰回り弾性部材として機能していればよい。
〔前開き部30〕
本使い捨ておむつ1は、図1に示されるように、前身頃の所定位置に、男性器を通す前開き部30が形成された男性用のおむつである。前記前開き部30は、前身頃の所定位置において、おむつ1の内側と外側とを貫通する開口部又は貫通可能に形成された開口可能部であり、前身頃においてウエスト開口部WOと股下部との間に上下方向に延びるスリットなどの開口部又はミシン目などの開口可能部によって形成されている。
前記前開き部30は、排尿時に男性器、特に陰茎を取り出しやすい位置に形成されている。前記前開き部30は、吸収体13と重なる幅方向中央部に形成してもよいが、吸収体13自体にスリットを設けると、その部分において吸収体13が不連続的となり、体液の拡散が抑制され、吸収性能が低下するおそれがある。また、吸収体13にスリットを設けずに吸収体13が重なる部分の外装体20に前開き部を形成し、吸収体13を捲り上げて外装体20の前開き部30から男性器を取り出す構造もとり得るが、この方法では男性器が取り出しにくいという欠点がある。したがって、本おむつ1では、前記前開き部30は、排尿部となる吸収体13の幅方向中央部に形成するのは好ましくなく、排尿部となる吸収体13の幅方向中央部より外側位置であって、幅方向のいずれか一方に偏倚した位置に形成するのが好ましく、前記吸収体13と重ならない吸収体13より幅方向外側に形成するのがより好ましい。ただし、後段で詳述するように、体液が直接排出される幅方向中央部でなければ、吸収体13に開口部を設け、この開口部内に前開き部30を形成するようにしてもよい(図6(B)参照)。
前記前開き部30は、図4に示されるように、外装体20を構成する上層シート26及び下層シート27並びに吸収体13を除く吸収性本体10を構成する各部材を一体的に貫通するように形成されている。また、本例のように、吸収性本体10の両側部に立体ギャザーBS、BSが設けられるおむつ1においては、立体ギャザーBSの外側に前開き部30を形成すると、陰茎を取り出す際に、起立上端部が肌面に接触した立体ギャザーBSを跨いで陰茎を外側に移動させる必要があり、取り出しに手間がかかるため、図3及び図4に示されるように、立体ギャザーBSの起立基端と吸収体13の側縁との間の隙間部分に前開き部30を形成するのが望ましい。具体的には、前記吸収性本体10のうち、透液性トップシート11、ギャザー不織布15及び防水シート12の積層部分にスリットが設けられるとともに、前記外装体20の上層シート26及び下層シート27にスリットが設けられることにより、表裏を貫通する前開き部30が形成されている。前記吸収性本体10に形成されたスリットと外装体20に形成されたスリットとは、外装体20に吸収性本体10を積層した状態でほぼ一致する位置に重なり合い、これらのスリットによっておむつ1の内側と外側とを貫通する前開き部30が形成されるようになっている。
前記前開き部30を形成するには、各シートの原反に予めスリットを設けておき、位置合わせをしながら組み立ててもよいが、シート同士の位置合わせが難しくなるので、吸収性本体10及び外装体20をそれぞれ組み立てた状態で、吸収性本体10及び外装体20の所定位置にそれぞれ、ロールカッター等で前開き部30を形成した後、吸収性本体10の前開き部30と外装体20の前開き部30とが重なり合うように、これら吸収性本体10及び外装体20を積層するのが好ましい。また、吸収性本体10と外装体20とを積層した状態で、ロールカッター等でこれらを一体的に貫通する前開き部30を形成してもよい。
前記前開き部30は、全体を連続して切開したスリットによって形成してもよいし、使用時に破断して開口し得るようにした易破断部によって形成してもよい。前記易破断部としては、前開き部30が延びる方向に沿って破断部と非破断部とを交互に複数配置したミシン目とするのが好ましい。前記易破断部は、前開き部30に介在する全てのシート部材に形成してもよいし、一部のシート部材のみに形成し、他のシート部材にはスリットを形成するようにしてもよい。前記易破断部を一部のシート部材のみに形成する場合の易破断部を形成するシート部材としては、最外面の外装体20のみとしてもよいし、最外面の外装体20及び最内面の透液性トップシート11のみとしてもよい。
図3及び図7に示されるように、前記前開き部30の長さL0は、男性器を取り出しやすくする観点から、60~150mm、好ましくは60~100mmとするのがよい。前記長さL0が60mm未満では、男性器を取り出しにくく、150mmを超えると前開き部30が不用意に開口して、意図せずに陰茎が露出したり、前開き部30からの尿漏れが生じやすくなる。
前記外装体20に対する前開き部30の位置としては、図3に示されるように、前側端縁から前開き部30の下側端縁までの長さをa、前側端縁から前記中心線CLまでの長さをbとすると、L0<a<bとするのが好ましい。
図3及び図4に示されるように、前記前開き部30の近傍には、前記前開き部30が意図せずに口開きするのを防止する口開き防止用弾性伸縮部材32を配設するのが好ましい。前記口開き防止用弾性伸縮部材32は、吸収性本体10と外装体20との間において、前開き部30の両側にそれぞれ前開き部30が延びる方向に沿って伸張状態で、両端又は長手方向に適宜の間隔で接着剤によって接合されている。前記口開き防止用弾性伸縮部材32の収縮力により、前開き部30の両側のシート部材が互いに離隔する方向に移動するのが抑えられ、前開き部30が意図せずに口開きするのが防止できる。
前記前開き部30を配置しやすくするため、吸収体13の平面形状を前開き部30に合わせて特殊な形状としてもよい。例えば、前述のように、脚周りに対応する長手方向中間部のみに形成された切欠き部13a(図3)を、図6(A)に示されるように、長手方向中間部から前端に亘る範囲に形成することができる。つまり、脚周りに対応する長手方向中間部より前側では、吸収体13が相対的に幅狭に形成され、その後側では相対的に幅広に形成されている。これによって、装着時に脚周りにフィットしやすくなるとともに、前開き部30が形成しやすくなる。
また、図6(B)に示されるように、吸収体13の幅方向の一方側に開口部13bを形成し、この開口部13b内に前開き部30を形成することができる。この形態例では、前開き部30を囲うように吸収体13が配置されるため、前開き部30の周囲においても吸収量を確保することができ、吸収性能が向上する。なお、前記開口部13bに代えて、吸収体13の側縁から切り欠いた切欠き部としてもよい。
更に、図6(C)に示されるように、前開き部30が形成された一方側の側部のみに、前開き部30より前側を切り欠いた切欠き部13cを形成してもよい。このように前開き部30が形成された一方側の側部のみに切欠き部13cを形成することにより、図6(A)の形態より前側領域の吸収量を確保できるようになる。
なお、前記吸収体13は、前記切欠き部13aや開口部13bなどを形成せずに、図6(D)に示されるように、側縁が直線からなる長方形の平面形状からなるものを用いてもよい。
〔吸収性被覆体31〕
前記前開き部30の外面側は、体液を素早く吸収する機能を有する吸収性被覆体31によって覆われている。おむつ1を装着した通常の状態では、図1に示されるように、前開き部30の全部が前記吸収性被覆体31によって覆われており、おむつの外部から前開き部30が視認できないようになっている。
一方、排尿時には、前記吸収性被覆体31を捲って前開き部30から男性器を取り出すことができるようになっている。このように、排尿時以外は常時、前開き部30の外面側が前記吸収性被覆体31によって覆われているため、着用中の尿失禁によって、前開き部30から尿が漏れ出た場合でも、この漏れ出た尿が前開き部30を覆う吸収性被覆体31に吸収されるので、外部に漏れるのが防止できる。更に、吸収性被覆体31を捲って前開き部30から男性器を取り出し得るようにしているため、前開き部30から男性器を外部に露出して排尿行為を行った後、男性器を戻す際、残尿による排尿があった場合でも、この排尿を吸収性被覆体31が受け止めて、この吸収性被覆体31に素早く吸収されるので、外部に漏れるのが防止できる。
前記吸収性被覆体31は、図7に示されるように、肌側(外装体20の下層シート27対向面側)の透液性シート43と、非肌側(外面側)の不透液性シート44との間に、吸収部材45が介在してなる積層シート部材である。前記透液性シート43としては、前記吸収性本体10の透液性トップシート11と同様に、有孔または無孔の不織布や多孔性プラスチックシートなどが好適に用いられる。前記不透液性シート44としては、前記吸収性本体10の防水シート12と同様に、ポリエチレンまたはポリプロピレンなどの不透液性プラスチックシートが好適に用いられる。また、前記吸収部材45としては、複数のクレープ紙を積層した積層クレープ紙、パルプを主体としたエアレイドパルプ不織布や積繊パルプなどを用いることができる。前記吸収性被覆体31は、前記透液性シート43、吸収部材45及び不透液性シート44を積層した状態で、吸収部材45の外縁より外側に延在させた透液性シート43及び不透液性シート44の外縁部を、ホットメルト接着剤などによる接着やヒートシールなどによって接合した構造を有している。
前記吸収性被覆体31は、前記前開き部30より長手方向及び幅方向に大きな寸法で形成され、前開き部30を覆った状態では、おむつ外面側からの外観視で前開き部30が視認できないようになっている。図3及び図7に示されるように、前記吸収性被覆体31の長手方向の寸法L1は、前記前開き部30の長さL0より長く、120~210mmとするのが好ましい。この長手寸法L1は、前記前開き部30の長さL0より、10~100mm、好ましくは30~70mm程度長くするのがよい。一方、吸収性被覆体31の幅寸法は、60~100mmとするのが好ましい。
前記吸収性被覆体31の平面形状は、前記前開き部30を覆う形状であれば任意であり、図7に示されるように、上下方向に長い長方形でもよいし、正方形や多角形、楕円形、長円形などでもよい。また、図8に示されるように、前開き部30の下側にいくに従って、幅寸法が大きくなる略台形状に形成することもできる。このような台形状に形成することにより、吸収部材45に吸収された尿が下側に拡散するに従って拡散面積が大きくなるのに対応して、吸収部材45の吸収面積が大きくなるため、吸収部材45からの漏れが防止できるとともに、男性器を取り出す際に吸収性被覆体31を捲りやすく、且つおむつ1の前身頃の形状に沿って変形しやすくなるため前開き部30をより確実に覆うことができるようになる。
前記吸収性被覆体31は、前記外装体20の外面の所定位置に直接接合されている。すなわち、前記吸収性被覆体31は、前記外装体20とは別体で形成され、前記前開き部30を覆う外装体20の外面(下層シート27の非肌側面)に、これら外装体20の下層シート27と吸収性被覆体31の透液性シート43との間に所定のパターンで塗布された接着剤層によって接合されている。
前記吸収性被覆体31を外装体20の外面に接合するパターンについて説明する。第1のパターンとしては、図9に示されるように、前開き部30より幅方向の一方側(おむつ1の幅方向中央側)の側部領域が固着部46によって外装体20の外面に接合され、前開き部30の近傍及びその幅方向の他方側(おむつ1の幅方向外側)が接合されない非固着部となっている。排尿時に前開き部30から男性器を取り出すには、同図9(B)に示されるように、非固着部である幅方向外側の側縁の中央部に指を引っ掛けて幅方向中央側に引っ張ることにより、吸収性被覆体31が簡単に捲れ、前開き部30が露出するようになる。特に、第1のパターンでは、前記固着部46は、前開き部30の上下端より上方側及び下方側に延在する部分において、前開き部30より幅方向の他方側(おむつ1の幅方向外側)に延出する延出部46a、46aを有している。前記延出部46aを設けることにより、通常時において前開き部30が吸収性被覆体31によって覆われた状態が保持されやすいとともに、排尿後に男性器を戻して吸収性被覆体31から手を離した後、再び前開き部30が吸収性被覆体31によって覆われやすくなる。
また、吸収性被覆体31を接合する第2のパターンとしては、図10に示されるように、上記第1のパターンと同様に、前開き部30より幅方向の一方側(おむつ1の幅方向中央側)が固着部46によって外装体20の外面に接合され、前開き部30の近傍及びその幅方向の他方側(おむつ1の幅方向外側)が接合されない非固着部となっている。特に、第2のパターンでは、前開き部30が吸収性被覆体31の幅方向中央部を長手方向に延びる長手方向中心線より幅方向の他方側(おむつ1の幅方向外側)に偏倚した位置に配置されるとともに、前記固着部46の前開き部30に隣接する側縁46bが、上端部において吸収性被覆体31の長手方向中心線より幅方向の他方側に位置し、下端部において前記長手方向中心線より幅方向の一方側に位置する傾斜線で形成されている。前記固着部46の側縁46bは、上端部が前開き部30より幅方向の他方側(おむつ1の幅方向外側)に延在するように形成されている。これにより、図10(B)に示されるように、吸収性被覆体31を捲る際、非固着部部分の側縁の下端部を手で摘まんで斜め上方に捲り上げることにより、前開き部30が露出するようになる。固着部46の側縁46bの上端部が吸収性被覆体31の長手方向中心線より幅方向外側に延在し、前開き部30の上部まで延在しているため、吸収性被覆体31を捲らない通常状態において、吸収性被覆体31が前開き部30を覆った状態が保持しやすくなり、排尿後に男性器を戻した後、吸収性被覆体31が前開き部30を覆った状態に戻りやすくなる。
前記吸収性被覆体31を接合する第3のパターンとしては、図11に示されるように、吸収性被覆体31は、前開き部30の上側端縁より上側の領域が上端縁に沿って配置された固着部46によって外装体20の外面に剥離不能に接合されるとともに、前開き部30の下側端縁より下側の領域が繰り返し着脱可能な着脱可能部47によって外装体20の外面に接合されている。このように、上端部のみが固着部46によって接合してあるため、下端部の着脱可能部47を外せば、前記固着部46を基端として吸収性被覆体31を自由に動かせることができるようになる。したがって、通常状態では、図11(A)に示されるように、着脱可能部47を前開き部30の下端より下側位置の外装体20に接合することにより、前開き部30が吸収性被覆体31によって覆われた状態にしておき、排尿時に、図11(B)に示されるように、前記着脱可能部47を取り外して、吸収性被覆体31によって前開き部30が覆われない位置、図示例では前開き部30の上端より上側位置の外装体20に着脱可能部47を仮止めし、前開き部30を露出した状態とすることにより、前開き部30から男性器を取り出すことができるようになる。このため、通常状態では、前開き部30が吸収性被覆体31によって覆われた状態が保持されやすく、排尿時には、吸収性被覆体31が邪魔にならずに男性器を取り出しやすくなる。前記着脱可能部47としては、再接着可能なテープ状のものであれば公知のものを広く採用でき、例えば、表面にフック状突起の雄材を多数有する機械接合式のメカニカルファスナーや、表面に粘着剤層が設けられた粘着式のファスナーを用いることができる。
次に、第2形態例に係る吸収性被覆体31’について説明する。第2形態例に係る吸収性被覆体31’は、図12~図14に示されるように、ウエスト開口部WOの端縁から股下に向けて延在する前記外装体20に一体的に設けられた可動シート33に備えられるようになっている。前記可動シート33は、図12及び図13に示されるように、外装体20を構成する上層シート26の前身頃のウエスト開口部WO側の端縁から延在するシート部分を、下層シート27の前身頃のウエスト開口部WO側の端縁を巻き込むようにして折り返し、下層シート27の外面側に配置したシート部分によって形成されている。この可動シート33がウエスト開口部WOの端縁で下層シート27の外面側に折り返された状態で、前記可動シート33の内面(下層シート27の対向面)の所定位置に、少なくとも前記吸収部材45及び透液性シート43が積層されることにより、吸収性被覆体31’を構成している。
前記可動シート33は、液透過性シートでもよいし、液不透過性シートでもよい。液透過性シートを用いた場合は、吸収部材45に吸収された体液の滲出を防止するため、吸収部材45と可動シート33との間に前記不透液性シート44を介在するのが好ましい。前記可動シート33が液不透過性シートからなる場合、前記吸収部材45及び透液性シート43が積層された部分の可動シート33は、吸収性被覆体31’の一部を構成する。前記可動シート33が液透過性シートからなる場合、この可動シート33に積層された前記不透液性シート44、吸収部材45及び透液性シート43が吸収性被覆体31’を構成し、可動シート33は除かれる。
前記可動シート33は、前記吸収性被覆体31’を完全に覆う大きさで形成されている。具体的には、上層シート26の前身頃の上端縁のほぼ全幅から股下部に向けて両側縁の離隔距離が徐々に小さくなる形状で形成されている。このとき、可動シート33の両側縁は、図12に示される外装体20の展開状態で、外装体20の中間両側部にそれぞれ設けられた凹状曲線からなる脚回りカットライン29に接する直線によって形成するのが好ましい。
前記可動シート33の先端は、おむつ股下の折り畳み中心線CL又はその近傍まで延び、前身頃のほぼ全域を覆っている。このように、前身頃の外面が可動シート33によって覆われるため、各種弾性伸縮部材24…、25…による外装体20のシワが目立ちにくくなり、おむつというより布様の普通の下着のような外観を呈するため、おむつを装着しているという恥ずかしさが軽減できる。
前記可動シート33は、図14に示されるように、ウエスト開口部WOの端縁に沿って配置された第1固着部34と、股下側の端縁に沿って配置された第2固着部35と、前記前開き部30が形成された側と幅方向の反対側に配置された第3固着部36とによって前身頃側の外面(下層シート27の非肌側面)に接合するのが好ましい。また、図示例では、吸収性被覆体31’と前記第1固着部34との間の可動シート33部分を下層シート27に接合する第4固着部37が設けられている。すなわち、前記吸収性被覆体31’及びその近傍の可動シート33部分は、下層シート27に接合されていない。これらの固着部34~37で可動シート33を下層シート27に固定することにより、吸収性被覆体31’が前開き部30を外面側から覆った状態に保持しやすくなるとともに、排尿時に前開き部30から男性器を取り出す際、吸収性被覆体31’を捲りやすく、且つ排尿後、男性器を戻した後も、前開き部30が吸収性被覆体31’によって覆われた状態に戻りやすくなる。なお、前記固着部34~37は、図示例ではわかりやすいように離隔して配置しているが、これらの固着部34~37の境界は必ずしも明確である必要はなく、連続する1つの領域で構成してもよい。前記固着部34~37は、ホットメルトなどの接着剤層によって構成されている。
前記可動シート33を前身頃の外面に接合する形態の変形例として、前記固着部34~37によって固定する構成に代えて、図15に示されるように、ウエスト開口部WOの端縁に沿って配置された固着部38によって前身頃の外面(下層シート27の非肌側面)に接合されるとともに、股下側の端縁に沿って配置された繰り返し着脱可能な着脱可能部39によって股下の外面(下層シート27の非肌側面)に接合されるようにすることができる。このように、ウエスト開口部WOの端縁に沿って配置された固着部38でのみ、下層シート27の非肌側面に固着してあるため、着脱可能部39を外せば、吸収性被覆体31’を含む可動シート33が前記固着部38を基端として自由に動かせるようになる。これによって、通常状態では、前記着脱可能部39を股下部に接合して吸収性被覆体31’によって前開き部30が覆われた状態にしておき、排尿時に、前開き部30から男性器を取り出す際、前記着脱可能部39を取り外して、吸収性被覆体31’によって前開き部30が覆われない位置に着脱可能部39を仮止めし、前開き部30を露出した状態で、前開き部30から男性器を取り出すことができるようになる。このため、通常状態では、前開き部30が吸収性被覆体31’によって覆われた状態が保持されやすく、排尿時には、吸収性被覆体31’が邪魔にならずに男性器を取り出しやすくなる。
前記着脱可能部39としては、再接着可能なテープ状のものであれば公知のものを広く採用でき、例えば、表面にフック状突起の雄材を多数有する機械接合式のメカニカルファスナーや、表面に粘着剤層が設けられた粘着式のファスナーを用いることができる。
前記可動シート33は、図13及び図14に示される例では、上層シート26から延在するシート部分によって構成されているが、前記上層シート26とは別体のシートを、下層シート27の外面に接合するようにしてもよい。
〔他の形態例〕
上記形態例では、使い捨ておむつ1に吸収性本体10が備えられていたが、図16及び図17に示されるように、吸収性本体10が備えられない使い捨ておむつ1Aとしてもよい。すなわち、本形態例に係る使い捨ておむつ1Aは、外装体20の外面側に吸収性被覆体31が設けられた構造を成している。このように、吸収性本体が備えられないため、股間部の厚みが薄くなり、使い捨て下着として使用することができる。この場合、前開き部30は、外装体20のみに形成され、この前開き部30の外面側が吸収性被覆体31によって覆われている。本形態例においても、上記形態例と同様に、前開き部30からの男性器の露出防止及び漏れ防止のため、前開き部30は、幅方向のいずれか一方に偏倚した位置に形成するのが好ましい。