JP7235288B2 - ベンダムスチンの液体製剤 - Google Patents

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本発明は、ベンダムスチン又はその医薬上許容される塩を含有する安定な液体製剤に関する。また、本発明は、ベンダムスチン又はその医薬上許容される塩の液体製剤を安定化する方法に関する。
ベンダムスチン(化学名:4-{5-[ビス(2-クロロエチル)アミノ]-1-メチル-1H-ベンゾイミダゾール-2-イル}酪酸)は、白血病、ホジキン病及び多発性骨髄腫を含む種々の癌の処置に使用されている。
Figure 0007235288000001
ベンダムスチンの現在市販されている製剤(トレアキシン(登録商標))は、凍結乾燥製剤である。凍結乾燥製剤は、使用時に再溶解を必要とし、再溶解には時間がかかるため臨床上不便であり、また、再溶解の作業は、その薬剤に医療作業者が被爆する可能性がある。したがって、使用時に再溶解を必要としない、ベンダムスチンの予め溶液化された液体製剤が必要とされている。
しかしながら、ベンダムスチンは、水などのヒドロキシル基含有化合物やエチレングリコール及びプロピレングリコールなどのアルキレングリコールによる求核攻撃を受けやすいことが広く知られており、こうしたベンダムスチン固有の化学的不安定性が、ベンダムスチンの液体製剤の開発を阻んでいる。
特許文献1には、ベンダムスチンは、凍結乾燥品を再構成すると急速な分解を示し、分解物としてモノヒドロキシ化合物やジヒドロキシ化合物を生じることが記載されている。また、ベンダムスチンが液体形態での長期間の貯蔵には適さないことから、凍結乾燥製剤が優れているものの、凍結乾燥製剤の再構成は、化学的に不安定になる可能性を伴い、時間がかかることから、臨床上不便であり、安定性を有するそのまま使えるベンダムスチン製剤の必要性が存在することが記載されている。特許文献1では、ベンダムスチンの安定な液体製剤を得るために、i)ポリエチレングリコール、プロピレングリコール又はそれらの混合物と、ii)抗酸化剤とを含む液体とを組み合わせている。しかしながら、この文献の実施例によれば、ベンダムスチンHClをポリエチレングリコール400に溶解した場合、安定なベンダムスチン含有組成物を得るためにはリポ酸を加えることが必要であり、リポ酸を加えなかった場合には、安定なベンダムスチン含有組成物は得られていない。
特許文献2では、ベンダムスチンの安定な液体製剤を得るために、ポリエチレングリコールとプロピレングリコールとを組み合わせている。しかしながら、この文献の実施例によれば、ポリエチレングリコール400とプロピレングリコールとを組み合わせた場合、安定なベンダムスチン含有組成物を得るためには酢酸ナトリウム又はNaOHを添加することが必要であり、NaOHや酢酸ナトリウムを加えなかった場合及びNaOHを高濃度に含めた場合には、安定なベンダムスチン含有組成物は得られていない。
特表2013-518130号公報 特表2015-506989号公報
本発明の課題は、ベンダムスチン又はその医薬上許容される塩の新規な液体製剤を提供することである。また、本発明の別の課題は、ベンダムスチン又はその医薬上許容される塩の液体製剤を安定化する方法を提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねたところ、ポリエチレングリコール300を、ベンダムスチン又はその医薬上許容される塩の液体製剤に含有せしめることによって、ベンダムスチンの分解物(類縁物質)及び総類縁物質の生成が抑制されること、並びにそのようにして得られる液体製剤は低温保存条件下でも液体状態を保つことができることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、要旨、以下を提供する。
〔1〕 ベンダムスチン又はその医薬上許容される塩とポリエチレングリコール300とを含有する液体製剤。
〔2〕 ポリエチレングリコール200及びポリエチレングリコール400からなる群より選択される他のポリエチレングリコールを更に含有する、〔1〕に記載の液体製剤。
〔3〕 前記他のポリエチレングリコールが、ポリエチレングリコール400である、〔2〕に記載の液体製剤。
〔4〕 ポリエチレングリコール300と前記他のポリエチレングリコールとの重量比が、7:3~3:7である、〔2〕又は〔3〕に記載の液体製剤。
〔5〕 抗酸化剤を含有する、〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の液体製剤。
〔6〕 抗酸化剤が、チオグリセロール及びモノチオグリセロールからなる群より選択される、〔5〕に記載の液体製剤。
〔7〕 pH調節剤を含有する、〔1〕~〔6〕のいずれかに記載の液体製剤。
〔8〕 pH調節剤が水酸化ナトリウムである、〔7〕に記載の液体製剤。
〔9〕 ポリエチレングリコール300を含有せしめることを含む、ベンダムスチン又はその医薬上許容される塩の液体製剤を安定化する方法。
〔10〕 ポリエチレングリコール200及びポリエチレングリコール400からなる群より選択される他のポリエチレングリコールを含有せしめることを含む、〔9〕に記載の方法。
〔11〕 前記他のポリエチレングリコールが、ポリエチレングリコール400である、〔10〕に記載の方法。
〔12〕 ポリエチレングリコール300と前記他のポリエチレングリコールとの重量比が、7:3~3:7である、〔10〕又は〔11〕に記載の方法。
〔13〕 液体製剤が、抗酸化剤を含有する、〔9〕~〔12〕のいずれかに記載の方法。
〔14〕 抗酸化剤が、チオグリセロール及びモノチオグリセロールからなる群より選択される、〔13〕に記載の方法。
〔15〕 液体製剤が、pH調節剤を含有する、〔9〕~〔14〕のいずれかに記載の方法。
〔16〕 pH調節剤が水酸化ナトリウムである、〔15〕に記載の方法。
本発明によれば、ベンダムスチン又はその医薬上許容される塩を含有する安定な液体製剤を得ることができる。
本発明は、ベンダムスチン又はその医薬上許容される塩とポリエチレングリコール300とを含有する液体製剤(以下、「本発明の液体製剤」ともいう。)を提供する。
本発明の液体製剤の用途は何ら限定されるべきものではないが、ベンダムスチン又はその医薬上許容される塩は、抗腫瘍作用を有することが公知であるから、本発明の液体製剤は、様々な固形若しくは非固形の腫瘍の予防又は治療の医薬用途に使用することができる。本発明の液体製剤により予防又は治療されうる腫瘍としては、これらに限定されるものではないが、例えば、白血病(例えば、慢性リンパ球性白血病)、ホジキン病、無痛性非ホジキンリンパ腫(例えば、T細胞リンパ腫、B細胞リンパ腫)、侵攻型非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、急性リンパ性白血病、乳癌、肺癌(例えば、小細胞肺癌(SCLC)、非小細胞肺癌(NSCLC))が挙げられる。特に、本発明の液体製剤は、低悪性度B細胞性非ホジキンリンパ腫、マントル細胞リンパ腫、慢性リンパ性白血病の予防又は治療に用いることが好ましい。
本発明の液体製剤は、他の製剤(例えば、他の抗腫瘍剤)と組み合わせて、投薬してもよい。また、本発明の効果が奏される限り、液体製剤中に、ベンダムスチン又はその医薬上許容される塩以外の活性成分を含めてもよい。
ベンダムスチン又はその医薬上許容される塩は、市販のものを用いてもよいし、自己で一部ないし全部を合成したものを用いてもよい。
ベンダムスチンの医薬上許容される塩としては、これらに限定されるものではないが、例えば、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、有機塩基との塩、アミノ酸塩が挙げられる。アルカリ金属塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩が挙げられ、アルカリ土類金属塩としては、例えば、マグネシウム塩、カルシウム塩が挙げられ、有機塩基との塩としては、例えば、N-メチルモルホリン塩、エタノールアミン塩、ピペラジン塩、ジエチルアミン塩、トリエチルアミン塩、トリブチルアミン塩、tert-ブチルアミン塩、ジイソプロピルエチルアミン塩、ジシクロヘキシルアミン塩、N-メチルピペリジン塩、メグルミン塩、トロメタミン塩、コリン塩、ベンザチン塩、4-フェニルシクロヘキシルアミン塩、ピリジン塩、4-ピロリジノピリジン塩、ピコリン塩が挙げられ、アミノ酸塩としては、例えば、グリシン塩、リジン塩、アルギニン塩、オルニチン塩、グルタミン酸塩、アスパラギン酸塩が挙げられる。
また、ベンダムスチン又はその医薬上許容される塩は、酸付加塩であってもよく、これらに限定されるものではないが、例えば、フッ化水素酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩等のハロゲン化水素酸塩、硝酸塩、過塩素酸塩、硫酸塩、リン酸塩等の無機酸塩、メタンスルホン酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩等の低級(例えばC-C)アルカンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩等のアリールスルホン酸塩、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、リンゴ酸塩、フマール酸塩、コハク酸塩、クエン酸塩、アスコルビン酸塩、酒石酸塩、シュウ酸塩、マレイン酸塩等の有機酸塩が挙げられる。ハロゲン化水素酸塩が好ましく、塩酸塩が特に好ましい。
本発明の液体製剤に含めるベンダムスチン又はその医薬上許容される塩の量は、本発明の効果が奏される限り特段限定されず、所望の薬理活性の強さなどに応じて当業者が適宜設定することができる。
例えば、本発明の液体製剤中に、ベンダムスチンを塩酸塩として含める場合、濃度は、ベンダムスチン塩酸塩として、通常約10~約100mg/mL、好ましくは約20~約60mg/mL、より好ましくは約20~約50mg/mL、更に好ましくは約20~約30mg/mLであり、特に好ましくは約25mg/mLである。
本発明の液体製剤の投薬量は、処置対象となる具体的な疾患、所望の薬理活性の強さ、投与対象の全体の健康状態、副作用発現の可能性などに応じて当業者が適宜設定することができる。
好ましくは、本発明の液体製剤は、注射剤として使用される液体製剤である。注射剤として使用する場合、本発明の液体製剤は、ボーラス注射してもよいし、点滴注射してもよい。
本発明によれば、ベンダムスチン又はその医薬上許容される塩の安定な液体製剤を得ることができる。本発明において、「安定な」液体製剤とは、不純物(ベンダムスチン又はその医薬上許容される塩の分解物)の生成が抑制された液体製剤を意味する。当該不純物は、ベンダムスチンの類縁物質と呼ばれることもある。ベンダムスチンの類縁物質としては、末端の1つ又は2つの塩素原子がOH基に置き換わったベンダムスチンの加水分解物(モノヒドロキシベンダムスチン又はジヒドロキシベンダムスチン)や、末端のCOOH基がエステル化されたベンダムスチンのエステル体が知られている。本発明により生成が抑制される類縁物質は、好ましくはベンダムスチンの加水分解物であり、より好ましくはモノヒドロキシベンダムスチンである。好ましくは、本発明によれば、モノヒドロキシベンダムスチンの生成が抑制され得るだけではなく、これを含めたトータルの類縁物質(本明細書中、「総類縁物質」ともいう。)の生成も抑制され得る。また、本発明により得られる液体製剤は、冷所ないし冷暗所などの低温保存条件下でも凍結することなく液体状態を保つことができ、医薬品として良好に保存できる。
したがって、本発明により得られるベンダムスチン又はその医薬上許容される塩の安定な液体製剤は、好ましくは、40℃1週間及び40℃1ヶ月の保存後並びに5℃1週間の保存後に外観を観察した場合に、液体製剤の液体状態が保たれるものである。
また、本発明により得られるベンダムスチン又はその医薬上許容される塩の安定な液体製剤は、更に好ましくは、上記液体状態が保たれることに加えて、40℃1ヶ月の保存後に、下記の条件の高速液体クロマトグラフィー(HPLC)行った場合に、相対保持時間約0.6(すなわち0.6付近)に見られる類縁物質(不純物)のピーク面積が、好ましくは、1%以下、0.5%以下、0.4%以下、0.3%以下、又は0.2%以下であり、かつ、総類縁物質のピーク面積が、好ましくは、2.4%以下、2.3%以下、2.2%以下、2.1%以下、2%以下、1.9%以下、1.8%以下、1.7%以下、1.6%以下、1.5%以下、1.4%以下、1.3%以下、又は1.2%以下であるものである。
[HPLC]
検出波長:230nm
移動相A:0.1%TFA/アセトニトリル混液(9:1)
移動相B:0.1%TFA/アセトニトリル混液(1:1)
グラジエント条件
注入後の時間(分) 移動相A(vol%) 移動相B(vol%)
0~3 100 0
3~16 100→50 0→50
16~33 50→30 50→70
33~35 30→10 70→90
35~40 10 90
40~41 10→100 90→0
41~45 100 0
カラム:ZORBAX 300SB-C18 80Å 4.6mm×250mm
カラム温度:30℃
本発明で使用される「ポリエチレングリコール300」(以下、「PEG300」ともいう。)は、平均分子量が約300のポリエチレングリコールである。
PEG300は、市販のものを用いてもよいし、自己で一部ないし全部を合成したものを用いてもよい。市販のPEG300は、例えば、東京化成工業(株)から製品コード:H0543で入手可能である。PEG300の平均分子量は、当業者がPEG300であると認識できかつPEG300として医薬品の添加物として使用可能である限り限定されるものではないが、例えば、東京化成工業(株)のPEG300(製品コード:H0543)の平均分子量の規格値は、290~305である。また、東京化成工業(株)のPEG300(製品コード:H0543)は、比重(20/20)の規格値が1.1250~1.1290であり、屈折率n20/Dの規格値が1.4630~1.4660である。しかしながら、本発明で使用されるPEG300がこれら具体的な規格値のもののみに限定されるわけではない。
本発明の一実施態様では、本発明の液体製剤は、ポリエチレングリコール200及びポリエチレングリコール400からなる群より選択される他のポリエチレングリコールを更に含有する。好ましくは、上記他のポリエチレングリコールは、ポリエチレングリコール400である。
本発明で使用される「ポリエチレングリコール200」(以下、「PEG200」ともいう。)及び「ポリエチレングリコール400」(以下、「PEG400」ともいう。)は、それぞれ、平均分子量が約200及び約400のポリエチレングリコールである。
PEG200は、市販のものを用いても、自己で一部ないし全部を合成したものを用いてもよい。市販のPEG200は、例えば、東京化成工業(株)から製品コード:P0840で入手可能である。PEG200の平均分子量は、当業者がPEG200であると認識できかつPEG200として医薬品の添加物として使用可能である限り限定されるものではないが、例えば、東京化成工業(株)のPEG200(製品コード:P0840)の平均分子量の規格値は、190~210である。また、東京化成工業(株)のPEG200(製品コード:P0840)は、比重(20/20)の規格値が1.1240~1.1290であり、屈折率n20/Dの規格値が1.4580~1.4630である。しかしながら、本発明で使用されるPEG200がこれらの具体的な規格値のもののみに限定されるわけではない。
PEG400は、市販のものを用いても、自己で一部ないし全部を合成したものを用いてもよい。市販のPEG400は、例えば、東京化成工業(株)から製品コード:N0443で入手可能である。PEG400の平均分子量は、当業者がPEG400であると認識できかつPEG400として医薬品の添加物として使用可能である限り限定されるものではないが、例えば、東京化成工業(株)のPEG400(製品コード:N0443)の平均分子量の規格値は、380~420である。また、東京化成工業(株)のPEG300(製品コード:H0543)は、比重(20/20)の規格値が1.1260~1.1300であり、屈折率n20/Dの規格値が1.4640~1.4680である。しかしながら、本発明で使用されるPEG400がこれらの具体的な規格値のもののみに限定されるわけではない。
ポリエチレングリコール300と上記他のポリエチレングリコールとの重量比は、特に限定されないが、好ましくは7:3~3:7、より好ましくは7:3~1:1、更により好ましくは7:3である。
本発明の好ましい実施態様では、本発明の液体製剤は、ポリエチレングリコール300とポリエチレングリコール400とを含有し、ポリエチレングリコール300とポリエチレングリコール400との重量比が、7:3~3:7、より好ましくは7:3~1:1、特に好ましくは7:3である。
本発明の液体製剤には、本発明の効果が奏される限り、必要に応じて任意の他の物質を一種又は二種以上含めてもよい。そのような任意の他の物質としては、例えば、医薬品として使用される液体製剤の分野で公知ないし周知の添加剤が挙げられる。そのような添加剤としては、例えば、溶剤、安定化剤、抗酸化剤、pH調節剤、緩衝剤、等張化剤、乳化剤、増粘剤、溶解補助剤、糖類、界面活性剤、防腐剤、殺菌剤、抗菌剤、香料、清涼化剤が挙げられる。なかでも、注射剤の分野で公知ないし周知の添加剤を好ましく使用することができる。
本発明の一実施態様では、本発明の液体製剤は、抗酸化剤又はpH調節剤のいずれか、或いは抗酸化剤及びpH調節剤の両方を更に含有する。これらの成分は、本発明の効果を奏するのには必須ではないが、注射剤の分野では、これらの添加剤が使用されることが多い。
本発明で使用できる抗酸化剤としては、本発明の効果が奏される限り特に限定されず、液体製剤(特に、注射剤)の分野で公知又は周知の抗酸化剤を使用することができる。そのような抗酸化剤としては、例えば、亜硝酸ナトリウム、アスコルビン酸、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、チオグリセロール、モノチオグリセロール、エデト酸ナトリウム水和物、乾燥亜硫酸ナトリウム、クエン酸水和物、L-システイン塩酸塩水和物、チオグリコール酸ナトリウム、トコフェロール、ピロ亜硫酸ナトリウム、ブチルヒドロキシアニソール、無水クエン酸、L-メチオニンが挙げられ、好ましくはチオグリセロール、モノチオグリセロールであり、更に好ましくはモノチオグリセロールである。抗酸化剤は、二種以上を使用してもよい。
本発明で使用できるpH調節剤としては、本発明の効果が奏される限り特に限定されず、液体製剤(特に、注射剤)の分野で公知又は周知のpH調節剤を使用することができる。そのようなpH調節剤としては、例えば、アンモニア水、塩酸、乾燥炭酸ナトリウム、希塩酸、クエン酸水和物、クエン酸ナトリウム水和物、クエン酸二水素ナトリウム、グリシン、グリセリン、コハク酸、コハク酸二ナトリウム六水和物、酢酸、酢酸ナトリウム水和物、酒石酸、L-酒石酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素ナトリウム水和物、二酸化炭素、乳酸、氷酢酸、無水クエン酸、無水クエン酸ナトリウム、無水リン酸一水素ナトリウム、無水リン酸三ナトリウム、無水リン酸二水素ナトリウム、メグルミン、モノエタノールアミン、硫酸、リン酸、リン酸三ナトリウム、リン酸水素ナトリウム水和物、リン酸水素二ナトリウム二水和物、リン酸二カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸二水素ナトリウムが挙げられ、好ましくは水酸化ナトリウムである。pH調節剤は、二種以上を使用してもよい。
本発明で必須となる成分を液体製剤に含有せしめる具体的な方法、すなわち本発明の液体製剤の調製手順は、ベンダムスチン又はその医薬上許容される塩の安定な液体製剤が得られる限り特に限定されない。例えば、本発明の液体製剤は、注射剤として使用される液体製剤の製造方法として常法の方法により製造することができる。例えば、PEG300に、又はPEG300とPEG200やPEG400など他のポリエチレングリコールとの混合物に、所望により抗酸化剤やpH調節剤等の添加剤を混合したものに、ベンダムスチン又はその医薬上許容される塩を加えることによって、製造することができる。ベンダムスチン又はその医薬上許容される塩の安定な液体製剤が得られる限り、各成分の具体的な混合順序は適宜変更することができる。
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明は実施例で示された具体的態様のみに限定されるべきものではない。
実施例及び比較例で使用した各種ポリエチレングリコールは、東京化成工業(株)から入手した。
[実施例1~7]
PEG200とPEG300とを、7:3、1:1、3:7の重量比で混合することで、PEG200:PEG300(7:3 v/v)、PEG200:PEG300(1:1 v/v)、PEG200:PEG300(3:7 v/v)の混合溶剤を調製した。
PEG300とPEG400とを、7:3、1:1、3:7の重量比で混合することで、PEG300:PEG400(7:3 v/v)、PEG300:PEG400(1:1 v/v)、PEG300:PEG400(3:7 v/v)の混合溶剤を調製した。
モノチオグリセロールを最終濃度5mg/mL及び水酸化ナトリウムを最終濃度0.4mg/mLとなるようにとり、溶剤としてPEG300又は上で調製した混合溶剤のいずれかを加えて10mLとした。
この液5mLにベンダムスチン塩酸塩を最終濃度25mg/mLとなるように加え、常法に従って液体製剤を製造した。
得られた液体製剤の安定性試験は、40℃1週間及び40℃1ヶ月保存後の分解物(類縁物質)の生成並びに外観の観察で行った。また、冷所ないし冷暗所での保存も考慮し、5℃1週間保存後の外観の観察も行った。結果を表1~3に示す。
表1~3には、後述のHPLCで検出された相対保持時間約0.6の分解物のピーク面積(%)、この分解物を含めた種々の相対保持時間を有する類縁物質のピーク面積の合計(%;総類縁物質)、測定時期に各保存条件下で観察された外観が記載されている。
[比較例1~3]
溶剤をPEG200若しくはPEG400に、又はPEG300とPEG600との重量比1:1の混合物に変更した以外は実施例1~7と同様にして、比較例1~3の液体製剤を製造した。得られた液体製剤の安定性試験を実施例1~7と同様に行った。比較例1、2の結果を表1に、比較例3の結果を表3に示す。
[HPLC]
ベンダムスチンの分解物(類縁物質)量の測定は、下記の条件の高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により行った。
検出波長:230nm
移動相A:0.1%TFA/アセトニトリル混液(9:1)
移動相B:0.1%TFA/アセトニトリル混液(1:1)
グラジエント条件
注入後の時間(分) 移動相A(vol%) 移動相B(vol%)
0~3 100 0
3~16 100→50 0→50
16~33 50→30 50→70
33~35 30→10 70→90
35~40 10 90
40~41 10→100 90→0
41~45 100 0
カラム:ZORBAX 300SB-C18 80Å 4.6mm×250mm
カラム温度:30℃
[結果と考察]
Figure 0007235288000002
特許文献1に記載されたモノヒドロキシベンダムスチンの相対保持時間からみて、相対保持時間約0.6に見られるピークは、ベンダムスチンの分解物であるモノヒドロキシベンダムスチンのものと考えられる。
実施例1では、相対保持時間約0.6の分解物及び総類縁物質の生成量が十分に抑制されつつ、低温保存条件下でも凍結せずに液体状態が保たれた。
比較例1では、相対保持時間約0.6の分解物の生成量は抑制できたが、実施例1に比べて総類縁物質の生成量が多かった。
比較例2では、低温保存条件下で凍結して固体状態になってしまった。このような凍結は、活性成分含量の変動を招いたり、使用時に凍結物を融解する必要を生じたりすることから、医薬品としては望ましくない。
Figure 0007235288000003
実施例2~4では、相対保持時間約0.6の分解物及び総類縁物質の生成量が十分に抑制されつつ、低温保存条件下でも凍結せずに液体状態が保たれた。
Figure 0007235288000004
実施例5~7では、相対保持時間約0.6の分解物及び総類縁物質の生成量が十分に抑制されつつ、低温保存条件下でも凍結せずに液体状態が保たれた。
なかでも、PEG300:PEG400を7:3(v/v)で併用した実施例5が、相対保持時間約0.6の分解物及び総類縁物質の生成量の両方で特に優れていた。
比較例3では、低温保存条件下で凍結して固体状態になってしまった。また、PEG200又はPEG400を同割合で併用した実施例3及び実施例6に比べて、40℃1ヶ月保存後における相対保持時間約0.6の分解物及び総類縁物質の両方の生成量が多かった。
上記実施例の結果から、本発明によれば、ベンダムスチン又はその医薬上許容される塩の安定な液体製剤を得ることができることが分かる。
また、本発明により得られる液体製剤は、低温保存条件下でも液体状態を保つことができることから、医薬品として望ましいものである。

Claims (12)

  1. ベンダムスチン又はその医薬上許容される塩と
    ポリエチレングリコール300と
    ポリエチレングリコール200及びポリエチレングリコール400からなる群より選択される他のポリエチレングリコールと
    を含有し、
    ポリエチレングリコール300と該他のポリエチレングリコールとの重量比が、7:3~3:7である、液体製剤(但し、グリセリンを含有する液体製剤を除く)。
  2. 記他のポリエチレングリコールが、ポリエチレングリコール400である、請求項に記載の液体製剤
  3. 酸化剤を含有する、請求項1又は2に記載の液体製剤。
  4. 抗酸化剤が、チオグリセロール及びモノチオグリセロールからなる群より選択される、請求項に記載の液体製剤。
  5. pH調節剤を含有する、請求項1~のいずれか1項に記載の液体製剤。
  6. pH調節剤が水酸化ナトリウムである、請求項に記載の液体製剤。
  7. ポリエチレングリコール300とポリエチレングリコール200及びポリエチレングリコール400からなる群より選択される他のポリエチレングリコールとを含有せしめることを含
    ポリエチレングリコール300と該他のポリエチレングリコールとの重量比が、7:3~3:7である、
    ベンダムスチン又はその医薬上許容される塩の液体製剤(但し、グリセリンを含有する液体製剤を除く)を安定化する方法
  8. 記他のポリエチレングリコールが、ポリエチレングリコール400である、請求項に記載の方法
  9. 体製剤が、抗酸化剤を含有する、請求項7又は8に記載の方法。
  10. 抗酸化剤が、チオグリセロール及びモノチオグリセロールからなる群より選択される、請求項に記載の方法。
  11. 液体製剤が、pH調節剤を含有する、請求項10のいずれか1項に記載の方法。
  12. pH調節剤が水酸化ナトリウムである、請求項11に記載の方法。
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