以下、添付図面を参照して本願の開示する作業車両の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
まず、図1を参照して実施形態に係る作業車両であるトラクタ1の全体構成について説明する。図1は、トラクタ1の説明図であり、トラクタ1の概略側面図である。
トラクタ1は、自動運転により自走しながら圃場などで作業を行う農業用トラクタであり、後述するように、圃場の畔近傍で旋回する場合、変速装置52(図2および図3を参照)を制御して、適切な旋回走行を可能にしている。なお、トラクタ1は、操縦者(作業者ともいう)が搭乗して圃場内を走行しながら所定の作業を実行することもできるが、その際には、後述する制御装置400(図3参照)を中心とする制御系による各部の制御により、圃場内を走行および作業をアシストする機能を有する。
なお、以下において、トラクタ1の前後方向とは、トラクタ1の直進方向を指す。そして、トラクタ1の前進方向とは、トラクタ1の直進方向において、操縦席8からステアリングホイール9へ向かう方向へ進むことであり、その反対を後進(後退)方向とする。また、トラクタ1の前後は、前進方向を基準とする。
また、左右方向とは、前後方向に対して水平に直交する方向である。ここでは、前後方向の「前」側へ向けて左右を規定する。すなわち、オペレータが操縦席8に着いて前方を向いた状態で、左手側が「左」、右手側が「右」である。さらに、上下方向とは、前後方向および左右方向に対して直交する方向である。したがって、前後方向、左右方向および上下方向は、互いに3次元で直交する。
図1に示すように、トラクタ1は、キャビン11と、走行装置となる前輪2および後輪3と、駆動源となるエンジン4と、エンジン4を覆うボンネット6と、作業機60(図3参照)を連結する連結装置7と、変速装置52(図2および図3参照)を収納するミッションケース12とを備える。
前輪2は、左右一対であり、前車軸2aに回転自在に連結されて主に操舵用の車輪(操舵輪)となる。後輪3は、左右一対であり、後車軸3aに回転自在に連結されて主に駆動用の車輪(駆動輪)となる。なお、トラクタ1は、変速装置52を介して後輪3を駆動させる二輪駆動(2WD)モードと、前輪2および後輪3を共に駆動させる四輪駆動(4WD)モードと、さらに前輪2を増速する前輪増速モードとに、走行モードを切り替えることができる。4WDモードや前輪駆動モードの場合であれば、駆動輪は前輪2および後輪3の両方となる。
ボンネット6は、後部を回動中心として上下方向に回動(開閉)可能である。ボンネット6は、閉じた状態で、車体フレーム上に搭載されたエンジン4を覆う。エンジン4は、トラクタ1の駆動源であり、ディーゼル機関やガソリン機関などの熱機関である。
キャビン11の内部には、操縦席8やステアリングホイール9をはじめ、いずれも図示しないが、前後進レバーや変速レバーや副変速レバーなどの各種レバーや、アクセルペダルやブレーキペダル、あるいはクラッチペダルなどの各種ペダル類を備える操縦部が設けられる。なお、操縦部としては必ずしもキャビン11に覆われてない解放された状態であってもよい。
操縦席8は、操縦者の座席である。ステアリングホイール9は、操縦者により操作されることで、操舵輪である前輪2を操舵することができ、操縦席8の前方に設けられたダッシュボード10に設けられている。なお、ダッシュボード10の上面には、各種情報を表示する表示部(メータパネル)が設けられる。
ミッションケース12は、変速装置52(トランスミッション)を収容している。変速装置52は、エンジン4から伝達される動力(回転動力)を適宜減速して駆動輪となる前輪2や後輪3、およびPTO(Power Take-off)軸34(図2参照)へ伝達する。
トラクタ1の後部には、圃場内で作業を行う作業機60が連結装置7を介して連結可能であり、作業機60は、ミッションケース12から後方へ突出するPTO軸34により駆動する。PTO軸34は、変速装置52によって適宜減速された回転動力を作業機60へ伝達する。なお、作業機60は、図示しない昇降装置により昇降され、上昇時に非作業位置となり、下降時に対地作業位置となる。
作業機60は、たとえば、水田で苗移植を行う苗移植機や、畑を耕すロータリ耕耘機などが適宜連結される。苗移植機は、PTO軸34から伝達された動力によって移植爪(不図示)が回転して苗を圃場面に移植することができる。また、ロータリ耕耘機は、PTO軸34から伝達された動力によって耕耘爪(不図示)が回転して圃場面(土壌)を耕耘することができる。
また、トラクタ1は、自車位置情報を取得する位置情報取得装置として機能する測位装置310(図3参照)を備えており、自車両の位置を測位することができる。測位装置310は、たとえば、GNSS(Global Navigation Satellite System)であり、図1に示すように、キャビン11の前部に、測位装置310の一部を構成する受信アンテナ320が設けられている。
図2は、トラクタ1の動力伝達装置における伝動線図である。図2に示すように、変速装置(トランスミッション)52は、ミッションケース12(図1参照)内に配置され、エンジン4から走行装置(前輪2および後輪3)などへ回転動力を伝達する動力伝達機構13を含んで構成される。動力伝達機構13は、エンジン4の回転動力を、前輪2および後輪3の他、機体に連結された作業機60へ伝達する動力伝達装置であり、前輪2、後輪3および作業機60を駆動する。
動力伝達機構13は、入力軸14と、前後進切換装置15と、主変速装置16と、高低変速装置17と、副変速装置18と、前輪変速装置19と、PTO(Power take-off)駆動装置20とを含んで構成される。このうち、主変速装置16と高低変速装置17とは、トラクタ1の「主変速部」を構成し、副変速装置18は、トラクタ1の「副変速部」を構成する。
動力伝達機構13は、エンジン4からの回転動力を、たとえば、入力軸14、前後進切換装置15、主変速装置16、高低変速装置17、副変速装置18を順に介して後輪3へ伝達する。さらに、動力伝達機構13は、エンジン4からの回転動力を、たとえば、入力軸14、前後進切換装置15、主変速装置16、高低変速装置17、副変速装置18、前輪変速装置19を順に介して前輪2へ伝達することができる。また、動力伝達機構13は、エンジン4からの回転動力を、たとえば、入力軸14、PTO駆動装置20を順に介して作業機へ伝達する。
入力軸14は、エンジン4の出力軸に設けられ、エンジン4からの回転動力が伝達(入力)される。なお、以下では、動力伝達の方向を、エンジン4側を動力伝達上流側と規定し、最終的な出力先である前輪2、後輪3および作業機側をそれぞれ動力伝達下流側と規定する。
前後進切換装置15は、エンジン4から伝達される回転動力を、前進方向回転または後進方向回転に切り替える。前後進切換装置15は、前進側油圧多板クラッチ(以下、前進クラッチという)A1と、後進側油圧多板クラッチ(以下、後進クラッチという)A2と、前進側ギヤ15aと、後進側ギヤ15bとを備えている。前進クラッチA1と後進クラッチA2とは、「前後進クラッチA」を形成する。
前後進クラッチAは、前進クラッチA1および後進クラッチA2の断続(接続/接続解除)状態に応じて、入力軸14に伝達された回転動力を、メイン軸23へ伝達する。前後進クラッチAは、前進クラッチA1が接続状態の場合に、前進側ギヤ15aが正転ギヤ50aと噛合してメイン軸23を正転させる。また、前後進クラッチAは、後進クラッチA2が接続状態の場合に、後進側ギヤ15bが逆転ギヤ50bと間接的に噛合してメイン軸23を逆転させる。
前後進クラッチAは、メイン軸23の正転および逆転によってトラクタ1の前進と後進とを切り替える。なお、前後進クラッチAは、たとえば、操縦席8(図1参照)において前後進レバー(不図示)が操作されることで、油圧制御によって、前進および後進を切り替える。また、クラッチペダル(不図示)を踏み込み操作することで、前進クラッチA1と後進クラッチA2とを共に接続解除状態(ニュートラル状態)にする。
主変速装置16は、エンジン4からの回転動力を、複数の変速段のいずれかで変速する。主変速装置16は、第1主変速クラッチB1と、第2主変速クラッチB2と、複数の変速段として、1速ギヤ16aと、2速ギヤ16bと、3速ギヤ16cと、4速ギヤ16dとを備えている。第1主変速クラッチB1は、油圧多板クラッチ(以下、1速クラッチという)B11と、油圧多板クラッチ(以下、3速クラッチという)B13とを備え、1速クラッチB11側に1速ギヤ16aが設けられ、3速クラッチB13側に3速ギヤ16cが設けられている。
また、第2主変速クラッチB2は、油圧多板クラッチ(以下、2速クラッチという)B22と、油圧多板クラッチ(以下、4速クラッチという)B24を備え、2速クラッチB22側に2速ギヤ16bが設けられ、4速クラッチB24側に4速ギヤ16dが設けられている。第1主変速クラッチB1と第2主変速クラッチB2とは、「主変速クラッチB」を形成する。
主変速クラッチBは、第1主変速クラッチB1および第2主変速クラッチB2の断続状態に応じて、エンジン4からの回転動力を1速ギヤ16a~4速ギヤ16dのいずれかの変速比で変速して後段、すなわち、動力伝達下流側へ伝達する。なお、主変速クラッチBは、たとえば、操縦席8において主変速レバーが操作されることで、1速ギヤ16a~4速ギヤ16dのうちの1つを選択して変速する。なお、このような変速操作は、トラクタ1の走行中に行うことができる。
高低変速装置17は、エンジン4からの回転動力を、高速段または低速段で変速する。高低変速装置17は、Hi(高速)側油圧多板クラッチ(以下、Hiクラッチという)C1と、Lo(低速)側油圧多板クラッチ(以下、Loクラッチという)C2と、Hi(高速)側ギヤ17aと、Lo(低速)側ギヤ17bとを備えている。HiクラッチC1とLoクラッチC2とは、「Hi-LoクラッチC」を形成する。Hi-LoクラッチCは、HiクラッチC1およびLoクラッチC2の断続状態に応じて、メイン軸23に伝達された回転動力を、伝達経路を変更して変速軸24へ伝達する。
Hi-LoクラッチCは、主変速クラッチBによって変速された回転動力を、Hi側ギヤ17aの変速比またはLo側ギヤ17bの変速比で変速して後段、すなわち、動力伝達下流側へ伝達する。なお、Hi-LoクラッチCは、たとえば、操縦席8(図1参照)において主変速レバーが4速と5速との間で操作されると、油圧制御によって、自動的にHi側とLo側とに切り替えられ、Hi側4段、Lo側4段の8段変速を構成する。なお、このような変速操作は、トラクタ1の走行中に行うことができる。
副変速装置18は、エンジン4から、たとえば、前後進切換装置15、主変速装置16、高低変速装置17を順に介して伝達される回転動力を複数の変速段のいずれかに変速可能である。副変速装置18は、第1副変速機(第1変速シフタ)D1と、第2副変速機(第2変速シフタ)D2とを備えている。第1副変速機D1と第2副変速機D2とは、「副変速機D」を形成する。副変速機Dは、変速軸24に伝達された回転動力を、第1副変速機D1、ギヤ18a,18b、ギヤ18c,18d、第2副変速機D2、ギヤ18e,18f、ギヤ18g,18hを介して変速して変速軸25へ伝達する。副変速機Dは、エンジン4から伝達されて主変速装置16などで変速された回転動力を、たとえば、4段変速して後輪3側へ伝達する。
すなわち、メイン軸23の回転は、4段変速する主変速クラッチBと、高低2段に変速するHi-LoクラッチCと、機械式に4段変速する副変速機Dとによって変速され、最終的に変速軸25へ伝達される。図2に示す例では、変速装置52は、変速段が、4段変速、2段変速、4段変速となるため、4×2×4=32の合計32段に変速可能である。なお、主変速装置16の1速~8速は、4段変速する主変速クラッチBと、高低2段に変速するHi-LoクラッチCとを組み合わせた変速段である。
また、変速装置52は、変速軸25に伝達された回転動力を、後輪デフ26、車軸(ドライブシャフト)27、遊星歯車機構28などを介して後輪3へ伝達する。この結果、トラクタ1は、エンジン4からの回転動力によって、後輪3が駆動輪として回転駆動する。
前輪変速装置19は、入力軸14に伝達された回転動力を前輪2側へ伝達する。前輪変速装置19は、前輪増速クラッチE1と、前輪等速クラッチE2とを備えている。前輪増速クラッチE1と前輪等速クラッチE2とは、「前輪変速クラッチ(4WDクラッチ)E」を形成する。前輪変速クラッチEは、第1前輪駆動軸29aに設けられ、前輪等速クラッチE2が接続状態の場合に、第1前輪駆動軸29aの回転を等速で第2前輪駆動軸29bへ伝達する。また、前輪変速クラッチEは、前輪増速クラッチE1が接続状態の場合に、ギヤ19a,19b、ギヤ19c,19dを介して、第1前輪駆動軸29aの回転を増速して第2前輪駆動軸29bへ伝達する。
前輪変速クラッチEは、第2前輪駆動軸29bに伝達された回転動力を、前輪デフ30、車軸(ドライブシャフト)31、垂直軸32、遊星歯車機構33などを介して前輪2へ伝達する。これにより、トラクタ1は、左右の前輪2および左右の後輪3の四輪駆動で走行可能となる。
すなわち、変速軸25から伝達される前輪2の回転は、前輪増速クラッチE1が接続されることで後輪3よりも高速で回転可能となる。また、副変速機Dは、たとえば、1速(超低速)、2速(低速)、3速(中速)、4速(高速)に変速可能となるが、2速~4速の間の変速については、シンクロ機構が設けられているため、トラクタ1の走行中に変速可能である。なお、副変速機Dを3段変速仕様とすることもできる。3段変速仕様については、機種に応じて1速(低速)、2速(中速)、3速(高速)仕様や2速(低速)、3速(中速)、4速(高速)仕様などがあり、仕様変更することもできる。
PTO駆動装置20は、エンジン4からの回転動力を変速して機体後部のPTO軸34から作業機に出力することで、エンジン4からの動力によって作業機を駆動する。PTO駆動装置20は、PTOクラッチ装置21と、PTO変速装置22と、PTO軸34とを備えている。PTO駆動装置20は、機体後部の作業機60を駆動する駆動状態と、作業機60の駆動を停止した非駆動状態とを切り替える。
PTOクラッチ装置21は、PTO軸34側への動力の伝達と遮断とを切り替える。PTOクラッチ装置21は、PTO油圧多板クラッチ(以下、「PTOクラッチ」という)Fと、ギヤ21aとを備えている。ギヤ21aは、入力軸14と一体的に回転可能に設けられたギヤ35と噛合している。PTOクラッチFは、接続状態となることで、PTO軸34側へと動力を伝達するPTO駆動状態となり、入力軸14からギヤ35を介してギヤ21aに伝達された回転動力を伝達軸36へ伝達する。
また、PTOクラッチFは、接続解除状態となることで、PTO軸34側への動力の伝達が遮断されたPTO非駆動状態(ニュートラル状態)となり、ギヤ21aに伝達された回転動力の伝達軸36側への伝達を遮断する。なお、PTOクラッチFは、たとえば、作業者によって車内PTOオン/オフスイッチ、または車外PTOオン/オフスイッチがオン/オフされることで、油圧制御によって、PTO駆動状態またはPTO非駆動状態に切り替える。
PTO変速装置22は、PTO軸34側に動力を伝達する場合に変速するものである。PTO変速装置22は、第1PTO変速クラッチ(第1変速シフタ)G1と、第2PTO変速クラッチ(第2変速シフタ)G2とを備えている。第1PTO変速クラッチG1は、ギヤ22a側に接続されると、伝達軸37の回転を、ギヤ37aとギヤ22aとを介してPTOクラッチ軸38側へと低速で伝達する。また、第1PTO変速クラッチG1は、ギヤ22b側に接続されると、伝達軸37の回転を、ギヤ37bとギヤ22bとを介してPTOクラッチ軸38側へと中速で伝達する。
第2PTO変速クラッチG2は、ギヤ22c側に接続されると、伝達軸37の回転を、ギヤ37cとギヤ22cとを介してPTOクラッチ軸38側へと高速で伝達する。また、第2PTO変速クラッチG2は、ギヤ22d側に接続されると、伝達軸37の回転を、カウンタ軸39に設けられたギヤ39aとギヤ22dとを介してPTOクラッチ軸38側へと逆回転で伝達する。PTOクラッチ軸38に伝達された動力は、接続軸40を介してPTO軸34を回転駆動する。
次に、図3を参照して制御装置400を中心とするトラクタ1の制御系について説明する。図3は、トラクタ1の制御装置400を中心とするブロック図である。
制御装置400は、電子制御によって各部を制御することが可能であり、CPU(Central Processing Unit)などを有する処理部を備えるとともに、走行モード毎の運転アシストプログラムを含む各種プログラムや圃場ごとに予め設定された走行車体の予定走行経路などの必要なデータ類が記憶される記憶部44を備える。
記憶部44は、ハードディスク、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などで構成されている。図示するように、記憶部44には、後述する予定走行経路情報の他、圃場情報、位置情報および走行モードが記憶されている。
圃場情報は、少なくとも圃場が水田であるか畑であるかを識別可能な圃場コードC(図5参照)を有し、予定走行経路情報に紐付けされている。
位置情報は、測位装置310により取得した自車の位置情報が、取得する度に更新されて最新の自車位置を示す位置情報が記憶される。
走行モードは、図4に示すように、二輪駆動(2WD)モードと、四輪駆動(4WD)モードと、前輪増速モードとにコードによって区分されて記憶されている。図4は、トラクタ1の記憶部44が記憶する走行モードのテーブルを示す。また、記憶部44には、各走行モードに対応して変速装置52などを制御する変速プログラムなども記憶されている。
二輪駆動(2WD)モードは、後輪3のみを駆動して二輪駆動させるモードであり、四輪駆動(4WD)モードは、前輪2および後輪3を共に駆動して四輪駆動させるモードである。そして、前輪増速モードは、四輪駆動時に前輪2を増速回転させるモードである。
また、図3に示すように、制御装置400は、エンジンECU(Electronic Control Unit)41、走行系ECU42および作業機系ECU43を備える。
エンジンECU41は、エンジン4の出力などを制御し、走行系ECU42は、操舵装置51、変速装置52、制動装置53を制御することで、機体の自動走行をはじめとする走行全般を制御する。作業機系ECU43は、作業機60の駆動全般を制御するもので、PTOクラッチFを入り切りするソレノイドバルブ54を制御する他、昇降装置(不図示)を制御して作業機60の昇降制御を行う。なお、操舵装置51は、前輪2に連動連結するステアリングホイール9(図1参照)と、このステアリングホイール9に連結される図示しないステアリングシリンダを備えている。また、制動装置53は、キャビン11内に設けらえた図示しないブレーキペダル、これと連動連結するブレーキ機構により構成される。
また、制御装置400(走行系ECU42)は、測位装置310の一部を構成し、キャビン11の前部に設けられた受信アンテナ320が、上空を周回している航法衛星300から電波を受信して自車位置情報を取得し、制御装置400と協働して測位および計時を行う。そして、制御装置400は、取得した自車位置情報に基づいて、予め設定された予定走行経路情報にしたがって、自動運転走行することが可能である。このとき、制御装置400は、圃場を旋回する際には、予め設定された複数の走行モードの中から、圃場に適した走行モード選択することができる。
すなわち、制御装置400は、予定走行経路情報および圃場情報と、測位装置310により得られた自車両の位置情報とに基づいて、走行モードを切替えるとともに、切り替えて選択した走行モードに対応するように、変速装置52を制御する。
図3に示すように、制御装置400には、前輪2の回転数を検出する前輪センサ210、後輪3の回転数を検出する後輪センサ220、エンジン4の回転数を検知するエンジン回転センサ230を備える。
また、制御装置400は、車速センサ240、切れ角センサ250、PTOセンサ260、リフトアームセンサ270、前方センサ280および後方センサ281などの各種センサ類が接続される。
車速センサ240は、機体の走行速度(車速)を算出するためのもので、ここでは、前輪センサ210および後輪センサ220の検出結果から車速の実測値を算出するようにしている。切れ角センサ250は、操舵輪である前輪2の切れ角を検知する。すなわち、切れ角センサ250は走行車体の旋回状態を検知することができる。また、PTOセンサ260は、PTO軸34(図2参照)の回転を検出することができる。
前方センサ280および後方センサ281は、障害物センサとして機能し、図1に示すように、前方センサ280は、たとえば、キャビン11の前端部に配置され、後方センサ281は、たとえば、キャビン11の後端部に取り付けられる。
こうして、制御装置400には、測位装置310から圃場などにおける走行車体の位置情報、エンジン回転センサ230からエンジン4の回転数、車速センサ240から走行車体の走行速度、切れ角センサ250から前輪2の切れ角がそれぞれ入力される。
また、前述したように、制御装置400の記憶部44には、予定走行経路情報と圃場情報とが記憶されている。圃場情報としては、少なくとも水田と畑とが識別可能な圃場コードC(図5参照)が記憶されており、かかる圃場コードCは、予定走行経路情報に紐付けられている。
本実施形態に係る圃場コードCは、単に、水田か畑かの圃場の種類の違いのみを識別可能な圃場情報としているが、圃場コードCとしては、たとえば、圃場の位置及び地形がそれぞれ特定されている固有の水田および畑に1対1で対応するように区分されていてもよい。また、圃場の違いを水田と畑に限定するのではなく、たとえば水田とその他とに区分してもよい。
また、制御装置400には、図示しない情報処理端末を接続することができ、かかる情報処理端末を介して各種の設定作業などを行うことができる。たとえば、上述した予定走行経路情報などの設定を外部入力によって行うことができる。なお、情報処理端末としてはスマートフォンなどを用いることができる。
図5は、トラクタ1における走行制御処理に用いられる予定走行経路情報の説明図である。図示するように、予定走行経路情報には、圃場マップ情報Hの中に設定された複数の直進路情報R1と、隣接する直進路の端部同士を繋ぐ旋回路情報R2とを有する走行経路情報Rが含まれる。走行経路情報Rは、圃場情報である圃場コードCと1対1で対応しており、各圃場に応じた予定走行経路情報が設定されている。また、予定走行経路情報には、隣接する直進路間の間隔を示す間隔Lが距離情報として含まれている。なお、図5中、符号H0はトラクタ1の圃場入口を示し、符号H1はトラクタ1の圃場出口を示す。
間隔Lは、圃場マップ情報Hの中に、走行経路情報Rを線情報として入力すると、隣接する直進路情報R1同士の間の距離を自動演算して導出することもできるし、予め、直進路情報R1同士の間の距離や旋回路情報R2の半径などを設定したのち、走行経路情報Rを入力することもできる。
上述してきた構成において、トラクタ1の制御装置400は、自車両が走行中の直進路と自車両が次に進行予定の隣接直進路との間隔を示す距離情報に応じて、前記旋回路情報に従って旋回路を走行する際の走行モードを変更する。
トラクタ1を自動走行させる際の各種設定を行う場合、経験の浅い作業者にとっては難しいとされていたが、本実施形態によれば、圃場における旋回時の設定をすることなく、圃場におうじた適切な旋回が可能となる。
より具体的には、制御装置400は、予定走行経路情報に設定されている、隣接する直進路間の間隔を示す間隔Lが、圃場に応じて予め設定されている所定値よりも短い場合、予定走行経路情報に含まれる旋回路情報R2に従って実際の旋回路を走行する際に、走行モードを前輪増速モードに切り替える。
かかる構成により、旋回半径を小さくすることができ、旋回時における設定を、作業者が詳細に行わなくても、圃場に応じた適切な旋回を容易に行わせることができる。
また、制御装置400は、距離情報は、所定値以上であって、なおかつ圃場が水田であると認識された場合、旋回路情報R2に従って旋回路を走行する際に、走行モードを四輪駆動モードに切り替える一方、圃場が畑であると認識された場合には、走行モードを二輪駆動モードに切り替える。
したがって、圃場が水田である場合、四輪駆動で旋回するため安定した旋回が可能となるとともに、圃場が畑の場合、二輪駆動で旋回するため圃場を荒らすおそれもない。このように、本実施形態に係るトラクタ1は、水田か畑作かを選択するだけで、4WDクラッチEの設定が自動的に行われるため、適切な旋回を容易に行うことができる。
また、制御装置400は、旋回路情報R2に従って旋回路を二輪駆動モードで走行しているときに前輪2と後輪3との回転数の差が所定の値以上になると四輪駆動モードに切り替える。
すなわち、前輪センサ210および後輪センサ220によって、前輪2と後輪3の回転数の差を監視することにより、機体のスリップ状態を検出できる。そのため、たとえば二輪駆動モードにより二輪駆動している状態でスリップして適切に旋回できないときも、制御装置400によって四輪駆動モードに自動的に切り替えられることで、トラクタ1は適切に旋回することができる。なお、前輪2と後輪3の回転数の差が適切な値なのか、適切な値を上回る不適切な値なのかを判断する基準となる所定の値は、予め経験値などに基づいて適宜設定される。
図6に示した例では、たとえば耕耘作業中の自車両が走行中の直進路に対する隣接直進路とは、耕耘領域までも隣接する隣接直進路を指すが、耕耘作業を一つ飛ばしで行う場合もある。その場合、予定走行経路情報における隣接直進路は、自車両が走行中の直進路の隣の隣に位置する直進路を指すことになる。かかる一つ飛ばしの作業を行うか否かの設定は、予定走行経路情報の作成時に行うこともできるし、予定走行経路情報を設定後、実際の作業を開始する前にキャビン11内から行うこともできるし、制御装置400と外部接続可能な情報処理端末などから行うこともできる。
図6は、本実施形態に係るトラクタ1における走行制御処理の一例を示すフローチャートである。なお、走行制御処理は、トラクタ1が走行している間は、所定間隔で常に繰り返し実行される。
図6に示すように、制御装置400は、予定走行経路情報と測位装置310により得られた自車両の位置情報とに基づいて、先ず、自車両が直進路の終端部近傍に位置しているか否かを判定する(ステップS11)。そして、自車両が直進路の終端部近傍に位置していないと判定した場合(ステップS11:No)、制御装置400は、走行制御処理を終了する。
一方、自車両が直進路の終端部近傍に位置していると判定した場合(ステップS11:Yes)、制御装置400は、隣接する直進路との間隔Lが、所定値以上であるか否かを判定する(ステップS12)。
隣接する直進路との間隔Lが、所定値未満であると判定した場合(ステップS12:No)、制御装置400は、走行モードを前輪増速モードに切り替える(ステップS13)。一方、隣接する直進路との間隔Lが、所定値以上である場合(ステップS12:Yes)、制御装置400は、圃場情報に基づき、圃場が水田であるか否かを判定する(ステップS14)。
水田ではないと判断した場合(ステップS14:No)、制御装置400は、圃場が畑であるか否かを判定し(ステップS15)し、畑ではない場合(ステップS15:No)、つまり、水田でも畑でもない場合は、本走行制御処理を終了する一方、畑である場合(ステップS15:Yes)、制御装置400は、走行モードを二輪駆動モードに切り替える(ステップS16)。
他方、ステップS14において、圃場が畑である場合(ステップS14:Yes)、制御装置400は、走行モードを四輪駆動モードに切り替える(ステップS17)。
また、トラクタ1は、機体のスリップ状態を検出することができ、たとえば二輪駆動モードにより二輪駆動している状態でスリップしている場合は、四輪駆動モードに切り替えることができる。制御装置400は、前輪2と後輪3との回転数の差を、前輪センサ210および後輪センサ220を用いて常時監視しておいる。
図7は、トラクタ1における走行制御処理の一例を示すフローチャートであり、制御装置400は、現在の走行モードが二輪駆動モードであるか否かを判定する(ステップS21)。そして、二輪駆動モードではないと判定した場合(ステップS21:No)、制御装置400は、走行制御処理を終了する。
一方、二輪駆動モードであると判定した場合(ステップS21:Yes)、制御装置400は、前輪2と後輪3との回転数の差が所定の値以上であるか否かを判定する(ステップS22)。
前輪2と後輪3との回転数の差が所定の値以上ではないと判定した場合(ステップS22:No)、制御装置400は、走行制御処理を終了し、所定の値以上であると判定した場合(ステップS22:Yes)、制御装置400は、走行モードを四輪駆動モードに切り替える。
ところで、上述してきた例では、距離情報として、予定走行経路情報に含まれるところの、隣接する直進路間の間隔を示す間隔Lとし、これを圃場に応じて予め設定されている所定値と比較して、走行モードを切り替えるようにしていた。
他の実施形態として、たとえば、距離情報を、測位装置310によって得られた位置情報に基づいて導出した、自車両の位置と自車両が次に進行予定の隣接直進路との間隔とするとともに、所定値を、予定走行経路情報に含まれるところの、隣接する直進路間の間隔Lとすることもできる。
この場合、予定走行経路情報に設定された複数の直進路情報の間隔は一定であることを前提とするとともに、機体には、イメージセンサなどから構成される側方センサを設けておくこととする。
そして、走行中の直進路と、自車両が直前に進行してきた隣接直進路との間隔を側方センサにより検出し、この検出した値を、自車両が次に進行予定の隣接直進路との間隔と仮定する。そそて、この過程した間隔と、所定値となる予定走行経路情報に含まれる間隔Lとを比較して走行モードを切り替えても良い。
上述してきた実施形態により、以下のトラクタ1が実現する。
(1)走行装置である前輪2および後輪3と、自車両の位置を測位する測位装置310と、前輪2および後輪3に動力を伝達する動力伝達機構13と、前輪2を操舵する操舵装置51と、予め設定された予定走行経路情報と、少なくとも水田と畑とを識別可能な圃場コードCとを有し、予定走行経路情報および圃場コードCと、測位装置310により得られた自車両の位置情報とに基づいて走行モードを切替可能な制御装置400とを備え、予定走行経路情報は、複数の直進路情報R1と、隣接する直進路の端部同士を繋ぐ旋回路情報R2とを有し、制御装置400は、自車両が走行中の直進路と自車両が次に進行予定の隣接直進路との間隔を示す距離情報Lに応じて、旋回路情報R2に従って旋回路を走行する際の走行モードを変更するトラクタ1。
かかるトラクタ1によれば、旋回時の設定を作業者が行わなくても、圃場に応じた適切な旋回を容易に行うことができる。
(2)上記(1)において、制御装置400は、後輪3を駆動する二輪駆動モードと、前輪2および後輪3を駆動する四輪駆動モードと、前輪2を増速回転させる前輪増速モードとに走行モードを切替え可能であり、距離情報Lが、所定値よりも短い場合、旋回路情報R2に従って旋回路を走行する際に、走行モードを前輪増速モードに切り替えるトラクタ1。
かかるトラクタ1によれば、上記(1)の効果に加え、圃場での旋回半径を小さくすることができ、旋回時における細かい設定を作業者がいちいち行わなくても、圃場に応じた適切な旋回を容易に行わせることができる。
(3)上記(2)において、制御装置400は、距離情報Lが所定値以上であって、なおかつ圃場が水田であると認識された場合、旋回路情報R2に従って旋回路を走行する際に、走行モードを四輪駆動モードに切り替える一方、圃場が畑であると認識された場合には、走行モードを前記二輪駆動モードに切り替えるトラクタ1。
かかるトラクタ1によれば、上記(2)の効果に加え、圃場が水田である場合は、四輪駆動で旋回するため安定した旋回が可能となるとともに、圃場が畑の場合は、二輪駆動で旋回するため圃場を荒らすおそれもなくなる。
(4)上記(2)または(3)において、前輪2の回転数、および後輪3の回転数をそれぞれ検出する前輪センサ210および後輪センサ220を備え、制御装置400は、旋回路情報R2に従って旋回路を二輪駆動モードで走行しているときに前輪2と後輪3との回転数の差が所定の値以上になると四輪駆動モードに切り替えるトラクタ1。
かかるトラクタ1によれば、上記(2)または(3)の効果に加え、二輪駆動モードにより二輪駆動している状態でスリップして適切に旋回できないときも、制御装置400によって四輪駆動モードに自動的に切り替えられる。そのため、トラクタ1は、たとえば畑を二輪駆動によって走行しているときの旋回時において、旋回が困難になることがなくなる。
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。