JP7233317B2 - スイング分析方法、スイング分析装置、及び、スイング分析プログラム - Google Patents
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Description
スイング分析装置が、ゴルフクラブに固定された慣性センサーの出力から、前記ゴルフクラブを用いたスイング中における3軸周りの回転運動データと姿勢データとを取得する、取得ステップと、
前記スイング分析装置が、前記姿勢データに基づいて、前記ゴルフクラブのオイラー角を算出する、オイラー角算出ステップと、
前記スイング分析装置が、前記回転運動データと前記オイラー角とを用いて、前記オイラー角の少なくとも1つの角度成分の2回微分の式における一部又は全部のトルク項を用いた計算を行うことにより、前記スイングの分析をする、分析ステップと、
を含む。
本発明のスイング分析方法によれば、より詳細なスイング分析が可能になる。
前記分析ステップは、前記スイング分析装置が、前記回転運動データと前記オイラー角とを用いて、前記オイラー角の少なくとも1つの角度成分の2回微分の式における一部又は全部のトルク項を、前記スイングの少なくとも一部における所定サンプリング間隔毎の各時刻について、算出する、微分式算出ステップを、含むと、好適である。
これにより、より有意義なスイング分析が可能になる。
前記回転運動データは、前記ゴルフクラブに固定されたローカルXYZ座標系におけるX軸、Y軸、及びZ軸の各々の周りの回転運動データであり、
前記Z軸は、前記ゴルフクラブのシャフトの延在方向に対し平行であり、
前記微分式算出ステップにおいて、前記スイング分析装置は、前記オイラー角の前記少なくとも1つの角度成分の2回微分の式におけるトルク項を、前記X軸及び前記Y軸の各々の周りのトルクに関わる第1トルク項と、前記Z軸周りのトルクに関わる第2トルク項と、に分けたときにおける、前記第1トルク項及び前記第2トルク項のうち少なくともいずれか一方を、算出すると、好適である。
これにより、さらに詳細なスイング分析が可能になる。
前記スイング分析方法は、前記スイング分析装置が、前記分析ステップで分析した結果を表示する、表示ステップを、さらに含み、
前記表示ステップにおいて、前記スイング分析装置は、前記スイング中の時刻と前記微分式算出ステップで算出した前記一部又は全部のトルク項との関係を示す波形を示すと、好適である。
これにより、スイングの分析結果をユーザに視覚的に示すことができる。
前記微分式算出ステップにおいて、前記スイング分析装置は、前記回転運動データと前記オイラー角とを用いて、前記オイラー角の少なくとも1つの角度成分の2回微分の式における慣性力項を、前記スイングの少なくとも一部における前記所定サンプリング間隔毎の各時刻について、算出すると、好適である。
これにより、さらに詳細なスイング分析が可能になる。
前記微分式算出ステップにおいて、前記スイング分析装置は、前記一部又は全部のトルク項を、前記スイングの少なくともダウンスイング開始からインパクトまでの間における前記所定サンプリング間隔毎の各時刻について、算出すると、好適である。
これにより、さらに有意義なスイング分析が可能になる。
前記オイラー角は、所定のグローバルxGyGzG座標系と、前記ゴルフクラブに固定されたローカルXYZ座標系との間の、Z-X-Zオイラー角であり、
前記ローカルXYZ座標系のZ軸は、前記ゴルフクラブのシャフトの延在方向に対し平行であると、好適である。
これにより、より精度の良いスイング分析が可能になる。
処理部を備えた、スイング分析装置であって、
前記処理部は、ゴルフクラブに固定された慣性センサーの出力から、前記ゴルフクラブを用いたスイング中における3軸周りの回転運動データと姿勢データとを取得する、取得処理を行うように構成され、
前記処理部は、前記姿勢データに基づいて、前記ゴルフクラブのオイラー角を算出する、オイラー角算出処理を行うように構成され、
前記処理部は、前記回転運動データと前記オイラー角とを用いて、前記オイラー角の少なくとも1つの角度成分の2回微分の式における一部又は全部のトルク項を用いた計算を行うことにより、前記スイングの分析をする、分析処理を行うように構成されている。
本発明のスイング分析装置によれば、より詳細なスイング分析が可能になる。
処理部を備えた、スイング分析装置における、前記処理部に実行させる、スイング分析プログラムであって、
前記処理部が、ゴルフクラブに固定された慣性センサーの出力から、前記ゴルフクラブを用いたスイング中における3軸周りの回転運動データと姿勢データとを取得する、取得ステップと、
前記処理部が、前記姿勢データに基づいて、前記ゴルフクラブのオイラー角を算出する、オイラー角算出ステップと、
前記処理部が、前記回転運動データと前記オイラー角とを用いて、前記オイラー角の少なくとも1つの角度成分の2回微分の式における一部又は全部のトルク項を用いた計算を行うことにより、前記スイングの分析をする、分析ステップと、
を前記処理部に実行させる。
本発明のスイング分析プログラムによれば、より詳細なスイング分析が可能になる。
各図において共通する構成要素には同一の符号を付している。
まず、図1を参照して、本発明のスイング分析方法及び本発明のスイング分析プログラムを使用し得る、本発明の一実施形態に係るスイング分析装置を備えた、スイング分析システムの一例を説明する。図1の例において、スイング分析システム1は、ゴルフクラブ50と、慣性センサー20と、本発明の一実施形態に係るスイング分析装置30とを、備えている。
ゴルフクラブ50は、グリップ51と、ヘッド53と、グリップ51及びヘッド53どうしを連結するシャフト52と、を有する。
ゴルフクラブ50は、図1の例のように、通常の構成を有する、市販のゴルフクラブであると、スイング分析システム1の構成を簡単化できるので好適である。ただし、ゴルフクラブ50は、例えば慣性センサー20を内蔵できるような、特殊な構成を有する、スイング分析システム1に専用のゴルフクラブであってもよい。
慣性センサー20は、ゴルファーPがゴルフクラブ50を用いてスイングする間、スイングを測定し、その測定により得られた測定データを出力できるように構成されている。慣性センサー20は、本例において、3軸の各軸周りに生じる角速度と、3軸の各軸方向に生じる加速度と、を測定できるように構成されている。これらの測定データは、所定サンプリング間隔(例えば0.001秒)毎の時系列データとして取得される。
Z軸は、上述のとおり、ゴルフクラブ50のシャフト52の延在方向に対し平行である。本例において、Z軸は、ヘッド53側を正(+)としている。X軸とY軸は、それぞれZ軸に対し垂直であり、かつ、互いに対して垂直である限り、それぞれ任意の方向に延在してよい。
本例において、X軸は、ヒール方向に延在し、Y軸はフェース方向に延在している。ここで、「ヒール方向」とは、ゴルフクラブ50のシャフト52の中心軸線とヘッド53のヒール及びトウどうしを結ぶ直線とを含む平面に対し平行であるとともに、シャフト52の中心軸線に対して垂直な、方向である。本例において、X軸は、ヘッド53のヒールのある側を正(+)としている。また、「フェース方向」とは、ゴルフクラブ50のシャフト52の中心軸線に対して垂直であり、かつ、ヒール方向に対して垂直な、方向である。本例において、Y軸は、所定のライ角となるようにアドレスしたときに、ゴルフボールを打ち出す側を、正(+)としている。
ただし、無線通信に代えて、測定中、慣性センサー20内の記憶部(図示せず)に測定データを格納しておき、測定後に、慣性センサー20内の記憶部から測定データを外部記憶装置(USB等)に取り出して、当該外部記憶装置をスイング分析装置30に接続することにより、測定データを、スイング分析装置30に入力するようにしてもよい。
また、慣性センサー20は、3軸の各軸周りに生じる角速度ω1、ω2、ω3の代わりに、3軸の各軸周りに生じる角加速度dω1/dt、dω2/dt、dω3/dtを測定してもよい。すなわち、慣性センサー20から出力される測定データには、角速度の測定データの代わりに、角加速度の測定データが含まれていてもよい。
さらに、慣性センサー20の3軸の各軸周りに生じる角速度および角加速度は、原点を慣性センサー20の外の所定の一点に設定する形で数値換算されていてもよい。
スイング分析装置30は、ゴルファーPがゴルフクラブ50を用いて行うスイングを分析するように構成されている。図1の例において、スイング分析装置30は、処理部31と、通信部32と、記憶部33と、入力部34と、表示部35と、を有する。スイング分析装置30は、例えば、タブレット端末、携帯端末、パーソナルコンピュータ、又は、専用装置等から構成される。スイング分析装置30は、1つの端末(装置)で構成されてもよいし、複数の端末(装置)で構成されてもよい。スイング分析装置30のユーザは、例えば、ゴルファーPに対しスイングのアドバイスをするアドバイザー、又は、ゴルファーP自身等である。
表示部35は、例えば液晶パネル等から構成され、後述するステップで得られる結果等、様々な情報を表示する。
なお、入力部34及び表示部35は、タッチパネルを構成してもよい。
つぎに、図3~図8を参照して、本発明の一実施形態に係るスイング分析方法、及び、本発明の一実施形態に係るスイング分析プログラムを説明する。図3は、本発明の一実施形態に係るスイング分析方法、及び、本発明の一実施形態に係るスイング分析プログラムを示すフローチャートである。以下では、上述した図1~図2の例のスイング分析システム1(ひいてはスイング分析装置30)を用いる場合について説明するが、図1~図2の例とは異なるスイング分析システム1(ひいてはスイング分析装置30)を用いて、本発明のスイング分析方法、及び、本発明のスイング分析プログラムを実施することもできる。
本発明の一実施形態に係るスイング分析方法、及び、本発明の一実施形態に係るスイング分析プログラムは、取得ステップ(S1)、オイラー角算出ステップ(S2)、分析ステップ(S3)、及び、表示ステップ(S4)を含む。これらのステップは、スイング分析装置30の処理部31が行う。以下、これらについて説明する。
取得ステップS1において、処理部31は、ゴルフクラブ50に固定された慣性センサー20の出力から、ゴルフクラブ50を用いたスイング中における3軸周りの回転運動データと姿勢データとを取得する、取得処理を行う。
まず、取得ステップS1において、処理部31が3軸周りの回転運動データを取得する過程について説明する。
本例においては、事前に、ゴルファーPがゴルフクラブ50を用いてスイングする間、慣性センサー20が、3軸の各軸周りに生じる角速度ω1、ω2、ω3のと、3軸の各軸方向に生じる加速度a1、a2、a3とを、測定する。そして、慣性センサー20の測定により得られた上記所定サンプリング間隔(例えば0.001秒)毎の時系列の測定データ(本例では、角速度及び加速度の測定データ)は、測定中又は測定後に、無線通信により、又は、外部記憶装置を介して、スイング分析装置30へ出力される。
一方、スイング分析装置30側では、通信部32が無線通信により測定データを慣性センサー20から受信すると、又は、測定データが格納された外部記憶装置がスイング分析装置30に接続されると、処理部31が、その測定データを取得する。ここで、処理部31は、測定データのうち、3軸の各軸周りに生じる角速度ω1、ω2、ω3の測定データを、3軸周りの回転運動データとして取得する。処理部31は、取得した測定データを、記憶部33に格納する。
なお、上述のように、慣性センサー20は、3軸の各軸方向に生じる加速度a1、a2、a3を測定しなくてもよい。すなわち、慣性センサー20から出力される測定データには、加速度の測定データが含まれていなくてもよい。
また、慣性センサー20は、3軸の各軸周りに生じる角速度ω1、ω2、ω3の代わりに、3軸の各軸周りに生じる角加速度dω1/dt、dω2/dt、dω3/dtを測定してもよい。すなわち、慣性センサー20から出力される測定データには、角速度の測定データの代わりに、角加速度の測定データが含まれていてもよい。この場合、処理部31は、測定データのうち、3軸の各軸周りに生じる角加速度dω1/dt、dω2/dt、dω3/dtの測定データを、3軸周りの回転運動データとして取得する。
つぎに、取得ステップS1において、処理部31が姿勢データを取得する過程について説明する。
姿勢データは、スイング中のゴルフクラブの姿勢を表すデータである。本例において、姿勢データは、クォータニオンqである。処理部31は、クォータニオンqを、慣性センサー20から出力される測定データから、取得する。より具体的に、処理部31は、クォータニオンqを、少なくとも、慣性センサー20から出力される3軸周りの回転運動データ(本例では、角速度の測定データ)から、取得する。処理部31は、クォータニオンqを、慣性センサー20から出力される3軸周りの回転運動データ(本例では、角速度の測定データ)と、慣性センサー20の出力から取得される加速度の測定データとから、取得してもよい。
オイラー角算出ステップS2において、処理部31は、取得ステップS1で取得した姿勢データ(本例では、クォータニオンq)に基づいて、ゴルフクラブ50のオイラー角を算出する、オイラー角算出処理を行う。
まず、オイラー角算出ステップS2で算出されるゴルフクラブ50のオイラー角について説明する。
オイラー角は、空間に固定された3軸直交座標系である所定のグローバルxGyGzG座標系と、ゴルフクラブ50に固定されたローカルXYZ座標系との間の、オイラー角である。本例において、オイラー角は、Z-X-Zオイラー角(θZ,θX,θZ’)である。ただし、オイラー角算出ステップS2で算出されるオイラー角は、他の表現法のオイラー角(例えば、X-Y-Zオイラー角)であってもよい。
図4(a)に示すように、θZは、初期姿勢から、ゴルフクラブ50が、ローカルXYZ座標系のZ軸の周りで回転する角度である。このZ軸周りの回転は、ゴルファーPの体が鉛直軸周りに回転(自転)する動作とみなすことができる。
図4(b)に示すように、θXは、上記Z軸周りの回転をした後の姿勢から、ゴルフクラブ50が、ローカルXYZ座標系のX軸の周りで回転する角度である。このX軸周りの回転は、ゴルファーPがゴルフクラブ50を水平軸周りに縦回転する(ヘッド53を上下に振る)動作とみなすことができる。
図4(c)に示すように、θZ’は、上記X軸周りの回転をした後の姿勢から、ゴルフクラブ50が、ローカルXYZ座標系のZ軸(初期姿勢でのZ軸と区別するため、便宜上、「Z’軸」ともいう。)の周りで回転する角度である。このZ’軸周りの回転は、ゴルファーPがゴルフクラブ50をシャフト52の中心軸線周りに回転する(ヘッド53のフェースFを回転する)動作とみなすことができる。
一般的に、ゴルフスイングは、ゴルファーの体の回転(自転)と、ゴルフクラブの水平軸周りの縦回転と、ゴルフクラブのシャフトの中心軸線周りの回転とが、同時に生じてなるものである。よって、本例のように、オイラー角算出ステップS2で算出するオイラー角を、Z-X-Zオイラー角(θZ,θX,θZ’)とすることにより、スイング中に生じる、ゴルファーの体の鉛直軸周りの回転(自転)量と、ゴルフクラブの水平軸周りの縦回転量と、ゴルフクラブのシャフトの中心軸線周りの回転量とを、算出できるので、スイング中でのゴルフクラブ50の姿勢を精度良く求めることができる。
以下、取得ステップS1で取得した姿勢データ(本例では、式(1)で定義されるクォータニオンq)に基づいて、ゴルフクラブ50のZ-X-Zオイラー角(θZ,θX,θZ’)を算出する過程について、説明する。
このように、c2=1のとき及びc2=-1のときは、R13、R23、R31、R32(式(7))がそれぞれ0となり、一意には決まらないため、本例ではつぎの式(13)のように概算する。ただし、つぎの式(13)の手法以外の手法で概算することもできる。
分析ステップS3において、処理部31は、取得ステップS1で取得した回転運動データ(本例では、角速度ω=(ω1、ω2、ω3))と、オイラー角算出ステップS2で取得したオイラー角(本例では、Z-X-Zオイラー角(θZ,θX,θZ’))とを用いて、スイングの分析をする、分析処理を行う。分析ステップS3において、処理部31は、オイラー角算出ステップS2で算出したオイラー角(本例では、Z-X-Zオイラー角(θZ,θX,θZ’))を時間tで2回微分した式の一部又は全部の項(好適には、少なくとも、一部又は全部のトルク項)を用いた計算を行うことにより、スイングの分析をする。分析ステップS3において、処理部31は、例えば、後述の微分式算出ステップ、瞬間貢献量算出ステップ、積分ステップ、及び/又は、関連付けステップ等を行う。
表示ステップ(S4)において、処理部31は、分析ステップS3で分析した結果を、表示部35に表示させる。表示ステップS4により、スイングの分析結果をユーザ(ゴルファーPのアドバイザー、ゴルファーP自身等)に視覚的に示すことができる。よって、例えば、ユーザは、表示部35に表示される分析結果を、ゴルファーPのスイング向上に役立てることができる。
以下では、説明の便宜のため、分析ステップ(S3)と表示ステップ(S4)とを併せて説明する。
ここで、分析ステップS3や表示ステップS4で処理部31が行う処理について説明する前に、分析ステップS3で処理部31が用いるオイラー角の2回微分の式を導出する過程について、説明する。
ここで、式(18)で表わされるオイラー角の2回微分の式について、詳しく説明する。式(18)は、つぎのように、トルク項Tと慣性力項Qとの和として書くことができる。
分析ステップS3において、処理部31は、オイラー角算出ステップS2の後に自動的に、あるいは、ユーザから入力部34を介して入力される所定の指示に応じて、微分式算出ステップを行うようにされていると、好適である。微分式算出ステップにおいて、処理部31は、取得ステップS1で取得した回転運動データ(本例では、角速度(ω1、ω2、ω3))と、オイラー角算出ステップS2で取得したオイラー角(本例では、Z-X-Zオイラー角(θZ,θX,θZ’))とを用いて、オイラー角の少なくとも1つの角度成分の2回微分の式における一部又は全部の項(好適には、少なくとも、一部又は全部のトルク項)を、スイングの少なくとも一部における上記所定サンプリング間隔毎の各時刻について、算出する、微分式算出処理を行う。
ここで、「オイラー角の少なくとも1つの角度成分の2回微分の式」とは、本例においては、式(24)、(26)、(28)のうち少なくとも1つを意味している。処理部31は、オイラー角の複数の角度成分の2回微分の式について算出する場合、角度成分毎に算出するものとする。また、オイラー角の少なくとも1つの角度成分の2回微分の式における「一部又は全部の項」とは、例えば、オイラー角のθZ成分の2回微分d2θZ/dt2の式(24)の場合、4つの項HZdω1/dt、IZdω2/dt、JZdω3/dt、QZのうちの一部又は全部の項を意味する。処理部31は、複数の項を算出する場合、項毎に個別に算出してもよいし、あるいは、任意の複数の項を合算した値を算出してもよい。オイラー角のある角度成分の2回微分の式における全部の項を合算した値は、オイラー角の当該角度成分の2回微分の値に相当する(式(24)、(26)、(28))。
図5は、表示ステップS4において、微分式算出ステップで算出した結果を表示部35に表示させる場合の、表示部35での表示例を示している。図5(a)及び図5(b)は、それぞれ、被験者A及び被験者Bのスイングの分析結果を示している。被験者Aは、被験者Bに比べ、閉じ易いスイングを行う者である。具体的に、図5(a)及び図5(b)は、それぞれ、スイング中の時刻(横軸[s])と、微分式算出ステップで算出した、オイラー角のθZ’成分の2回微分d2θZ’/dt2の式(28)における、d2θZ’/dt2、Z’第1トルク項TОZ’、Z’第2トルク項TCZ’、及び、Z’慣性力項QZ’のそれぞれ(縦軸[deg/s2])と、の関係を示す波形を、示している。縦軸は、値が小さくなるほど(負の値の絶対値が大きくなるほど)、フェースが閉じる方向に向かい、値が大きくなるほど(正の値の絶対値が大きくなるほど)、フェースが開く方向に向かうことを、意味する。横軸において、時刻=0sは、インパクト時である。図5(a)及び図5(b)は、スイングのインパクトの0.30s前からインパクトまでの間の期間についての分析結果を示している。
この場合、処理部31は、1つのトルク項毎に個別に算出してもよいし、あるいは、任意の2つ又は3つのトルク項を合算した値を算出してもよい。
同様の観点から、微分式算出ステップにおいて、スイングのうち、処理部31が、オイラー角の2回微分の式における一部又は全部の項を算出する対象の部分としては、少なくともインパクトを含む部分であると好適であり、少なくともインパクトの0.30s(秒)前からインパクトまでの間を含む部分であるとより好適である。
分析ステップS3において、処理部31は、オイラー角算出ステップS2の後に自動的に、あるいは、ユーザから入力部34を介して入力される所定の指示に応じて、瞬間貢献量算出ステップを行うようにされていると、好適である。瞬間貢献量算出ステップにおいて、処理部31は、取得ステップS1で取得した回転運動データ(本例では、角速度(ω1、ω2、ω3))と、オイラー角算出ステップS2で取得したオイラー角(本例では、Z-X-Zオイラー角(θZ,θX,θZ’))とを用いて、オイラー角の少なくとも1つの角度成分の2回微分の式における一部又は全部の項の瞬間貢献量Aを、スイングの少なくとも一部における上記所定サンプリング間隔毎の各時刻について、算出する、瞬間貢献量算出処理を行う。スイング中のある時刻における、オイラー角のある角度成分の2回微分の式におけるある項の瞬間貢献量Aは、当該時刻における当該項が当該角度成分に与える貢献量(影響)を表すものである。
スイング中の任意の時刻tにおける、オイラー角の任意の角度成分の2回微分の式における任意の項B(deg/s2)の瞬間貢献量A(deg)は、例えば、上記所定サンプリング間隔をdt(s)とし、当該時刻tからインパクトまでの時間をτ(s)とすると、つぎのように求めることができる。
図6~図8は、表示ステップS4において、瞬間貢献量算出ステップで算出した結果を表示部35に表示させる場合の、表示部35での表示例を示している。図6(a)、図7(a)、図8(a)は、それぞれ、図5(a)と同じ被験者Aの、スイングの分析結果を示しており、図6(b)、図7(b)、図8(b)は、それぞれ、図5(b)と同じ被験者Bの、スイングの分析結果を示している。上述のとおり、被験者Aは、被験者Bに比べ、閉じ易いスイングを行う者である。具体的に、図6(a)及び図6(b)は、それぞれ、スイング中の時刻(横軸[s])と、瞬間貢献量算出ステップで算出した、オイラー角のθZ’成分の2回微分d2θZ’/dt2の式(28)における、d2θZ’/dt2の瞬間貢献量Ad2θZ’/dt2、Z’第1トルク項TОZ’の瞬間貢献量ATОZ’、Z’第2トルク項TCZ’の瞬間貢献量ATCZ’、及び、Z’慣性力項QZ’の瞬間貢献量AQZ’(縦軸[deg/s2]。式(33)参照。)と、の関係を示す波形を、示している。図7(a)及び図7(b)は、それぞれ、スイング中の時刻(横軸[s])と、瞬間貢献量算出ステップで算出した、オイラー角のθZ成分の2回微分d2θZ/dt2の式(26)における、d2θZ/dt2の瞬間貢献量Ad2θZ/dt2、Z第1トルク項TОZの瞬間貢献量ATОZ、Z第2トルク項TCZの瞬間貢献量ATCZ、及び、Z慣性力項QZの瞬間貢献量AQZ(縦軸[deg/s2]。式(32)参照。)と、の関係を示す波形を、示している。図8(a)及び図8(b)は、それぞれ、スイング中の時刻(横軸[s])と、瞬間貢献量算出ステップで算出した、オイラー角のθX成分の2回微分d2θX/dt2の式(24)における、d2θX/dt2の瞬間貢献量Ad2θX/dt2、X第1トルク項TОXの瞬間貢献量ATОX、X第2トルク項TCXの瞬間貢献量ATCX、及び、X慣性力項QXの瞬間貢献量AQX(縦軸[deg/s2]。式(31)参照。)と、の関係を示す波形を、示している。
図6~図8の各々において、縦軸は、値が小さくなるほど(負の値の絶対値が大きくなるほど)、フェースが閉じる方向に向かい、値が大きくなるほど(正の値の絶対値が大きくなるほど)、フェースが開く方向に向かうことを、意味する。横軸において、時刻=0sは、インパクト時である。図6~図8の各々は、スイングのインパクトの0.30s前からインパクトまでの間の期間についての分析結果を示している。
この場合、処理部31は、1つのトルク項毎に瞬間貢献量Aを個別に算出してもよいし、あるいは、任意の2つ又は3つのトルク項を合算した値の瞬間貢献量Aを算出してもよい。
同様の観点から、瞬間貢献量算出ステップにおいて、スイングのうち、処理部31が、オイラー角の2回微分の式における一部又は全部の項の瞬間貢献量Aを算出する対象の部分としては、少なくともインパクトを含む部分であると好適であり、少なくともインパクトの0.30s前からインパクトまでの間を含む部分であるとより好適である。
分析ステップS3において、処理部31は、オイラー角算出ステップS2の後に自動的に、あるいは、ユーザから入力部34を介して入力される所定の指示に応じて、積分ステップを行うようにされていると、好適である。積分ステップにおいて、処理部31は、取得ステップS1で取得した回転運動データ(本例では、角速度(ω1、ω2、ω3))と、オイラー角算出ステップS2で取得したオイラー角(本例では、Z-X-Zオイラー角(θZ,θX,θZ’))とを用いて、オイラー角の少なくとも1つの角度成分の2回微分の式における一部又は全部の項(好適には、少なくとも、一部又は全部のトルク項)を、時間で2回積分する、積分処理を行う。
ここで、「オイラー角の少なくとも1つの角度成分の2回微分の式」とは、本例においては、式(24)、(26)、(28)のうち少なくとも1つを意味している。処理部31は、オイラー角の複数の角度成分の2回微分の式について算出する場合、角度成分毎に算出するものとする。また、オイラー角の少なくとも1つの角度成分の2回微分の式における「一部又は全部の項」とは、例えば、オイラー角のθZ成分の2回微分d2θZ/dt2の式(24)の場合、4つの項HZdω1/dt、IZdω2/dt、JZdω3/dt、QZのうちの一部又は全部の項を意味する。処理部31は、複数の項を2回積分する場合、項毎に個別に2回積分してもよいし、あるいは、任意の複数の項を合算した値を2回積分してもよい。オイラー角のある角度成分の2回微分の式における全部の項を合算した値の2回積分は、オイラー角の当該角度成分の2回微分の値の2回積分に相当する(式(24)、(26)、(28))。
オイラー角のある角度成分の2回微分の式におけるある項の2回積分の値は、スイング中に当該項が当該角度成分に与える総貢献量(影響)を表すものである。
この場合、処理部31は、1つのトルク項毎を個別に2回積分してもよいし、あるいは、任意の2つ又は3つのトルク項を合算した値を2回積分してもよい。
フェース閉じ難さ指標MZ’を算出することにより、ユーザは、ゴルファーPのスイングがどれだけ閉じ難いかを簡単に把握することが可能になる。
Z第2トルク項貢献量NZとX第2トルク項TCXとの算出は、その後に後述の関係付けステップを行う場合に、特に好適である。
同様の観点から、積分ステップにおいて、スイングのうち、処理部31が、オイラー角の2回微分の式における一部又は全部の項を2回積分する対象の部分としては、少なくともインパクトの0.30s前からインパクトまでの間を含む部分であると好適である。
分析ステップS3において、処理部31は、積分ステップを行う場合、積分ステップの後に、自動的に、あるいは、ユーザから入力部34を介して入力される所定の指示に応じて、関係付けステップを行うようにされていると、好適である。関係付けステップを行う場合、処理部31は、事前に、積分ステップにおいて、フェース閉じ難さ指標MZ’と、Z第2トルク項貢献量NZと、X第2トルク項貢献量NXとを、算出しておく。関係付けステップにおいて、処理部31は、スイング毎に、フェース閉じ難さ指標MZ’を、Z第2トルク項貢献量NZとX第2トルク項貢献量NXとに対して関係付ける、関係付け処理を行う。
図9は、表示ステップS4において、関係付けステップで関係付けた内容を示すグラフ(以下、「フェース閉じ難さグラフ」という。)を表示部35に表示させる場合の、表示部35での表示例を示している。
図9のフェース閉じ難さグラフにおいて、「一般」のプロット点は、プロではない一般のゴルファーによるスイングのプロット点であり、「男子プロ」及び「女子プロ」のプロット点は、それぞれ男子プロゴルファー及び女子プロゴルファーによるスイングのプロット点である。
関係付けステップやフェース閉じ難さグラフによれば、フェースの閉じ難さの程度がその程度である原因を、ゴルファーPの体の回転とゴルフクラブ50の縦回転とによって説明することが可能となる。
Z第2トルク項貢献量NZは、概略的にいえば、スイング中にゴルファーPの体がゴルフクラブ50のシャフト52の中心軸線の周りのトルク成分によってどれだけ回転したかを表しているといえる。Z第2トルク項貢献量NZは、絶対値が大きいほど(図9のグラフの横軸において左側へ向かうほど)、θZ成分への、スイング中のZ第2トルク項TCZの貢献量(総貢献量)が多いことを表している。Z第2トルク項貢献量NZは、ダウンスイングの前半においてゴルフクラブを立てて使うほど、値が小さくなる(負の値の絶対値が大きくなる)傾向がある。
また、X第2トルク項貢献量NXは、概略的にいえば、スイング中にゴルフクラブ50がシャフト52の中心軸線の周りのトルク成分によってどれだけゴルフクラブ50が縦回転をしたかを表しているといえる。X第2トルク項貢献量NXは、絶対値が大きいほど(図9のグラフの縦軸において下側へ向かうほど)、θX成分への、スイング中のX第2トルク項TCXの貢献量(総貢献量)が多いことを表している。X第2トルク項貢献量NXは、ダウンスイングの前半において比較的ヒール方向にゴルフクラブを振るほど、値が小さくなる(負の値の絶対値が大きくなる)傾向がある。
図9の例のグラフにおいて、右上にいくほど、閉じ易いフッカーであるといえ、左下にいくほど、閉じ難いスライサーであるといえる。
例えば、図9の例のように、予めフェース閉じ難さグラフ内の領域を複数の領域(図9の例では、Aエリア、Bエリア、Cエリア、Dエリアの4つの領域)に分けておき、アドバイザーは、領域毎に異なるアドバイスを、ゴルファーPに対して行うことができる。具体的には、例えば、グラフ内で左上に位置するAエリア内のプロット点に対応するゴルファーPに対しては、「上級者も多いタイプです。クラブを寝かせると、少し楽に閉じられます。」といったアドバイスをすることができる。また、グラフ内で右上に位置するBエリア内のプロット点に対応するゴルファーPに対しては、「上級者も多いタイプです。フックが気になるようであれば、少し立ててクラブを使いましょう。」といったアドバイスをすることができる。また、グラフ内で左下に位置するCエリア内のプロット点に対応するゴルファーPに対しては、「非常に閉じ難いタイプです。フェース方向に振る意識を持ちましょう。」といったアドバイスをすることができる。また、グラフ内で右下に位置するDエリア内のプロット点に対応するゴルファーPに対しては、「閉じ難いタイプです。フェース方向に振る意識を持ちましょう。」といったアドバイスをすることができる。
なお、処理部31は、関係付けステップの後に行う表示ステップS4において、フェース閉じ難さ指標MZ’、Z第2トルク項貢献量NZ、X第2トルク項貢献量NXのそれぞれの値に基づいて、上述のようなアドバイスを表示部35に表示するようにしてもよい。また、処理部31は、当該アドバイスを、表示部35での表示以外の出力方法(例えば、印刷部での印刷、音声出力部からの音声の出力等)により、ユーザに対し出力してもよい。
Claims (9)
- スイング分析装置が、ゴルフクラブに固定された慣性センサーの出力から、前記ゴルフクラブを用いたスイング中における3軸周りの回転運動データを取得し、前記回転運動データから、前記スイング中における前記ゴルフクラブの姿勢データを取得する、取得ステップと、
前記スイング分析装置が、前記姿勢データに基づいて、前記ゴルフクラブのオイラー角を算出する、オイラー角算出ステップと、
前記スイング分析装置が、前記回転運動データと前記オイラー角とを用いて、前記オイラー角の少なくとも1つの角度成分の2回微分の式における一部又は全部のトルク項を用いた計算を行うことにより、前記スイングの分析をする、分析ステップと、
を含む、スイング分析方法。 - 前記分析ステップは、前記スイング分析装置が、前記回転運動データと前記オイラー角とを用いて、前記オイラー角の少なくとも1つの角度成分の2回微分の式における一部又は全部のトルク項を、前記スイングの少なくとも一部における所定サンプリング間隔毎の各時刻について、算出する、微分式算出ステップを、含む、請求項1に記載のスイング分析方法。
- 前記回転運動データは、前記ゴルフクラブに固定されたローカルXYZ座標系におけるX軸、Y軸、及びZ軸の各々の周りの回転運動データであり、
前記Z軸は、前記ゴルフクラブのシャフトの延在方向に対し平行であり、
前記微分式算出ステップにおいて、前記スイング分析装置は、前記オイラー角の前記少なくとも1つの角度成分の2回微分の式におけるトルク項を、前記X軸及び前記Y軸の各々の周りのトルクに関わる第1トルク項と、前記Z軸周りのトルクに関わる第2トルク項と、に分けたときにおける、前記第1トルク項及び前記第2トルク項のうち少なくともいずれか一方を、算出する、請求項2に記載のスイング分析方法。 - 前記スイング分析方法は、前記スイング分析装置が、前記分析ステップで分析した結果を表示する、表示ステップを、さらに含み、
前記表示ステップにおいて、前記スイング分析装置は、前記スイング中の時刻と前記微分式算出ステップで算出した前記一部又は全部のトルク項との関係を示す波形を示す、請求項2又は3に記載のスイング分析方法。 - 前記微分式算出ステップにおいて、前記スイング分析装置は、前記回転運動データと前記オイラー角とを用いて、前記オイラー角の少なくとも1つの角度成分の2回微分の式における慣性力項を、前記スイングの少なくとも一部における前記所定サンプリング間隔毎の各時刻について、算出する、請求項2~4のいずれか一項に記載のスイング分析方法。
- 前記微分式算出ステップにおいて、前記スイング分析装置は、前記一部又は全部のトルク項を、前記スイングの少なくともダウンスイング開始からインパクトまでの間における前記所定サンプリング間隔毎の各時刻について、算出する、請求項2~5のいずれか一項に記載のスイング分析方法。
- 前記オイラー角は、所定のグローバルxGyGzG座標系と、前記ゴルフクラブに固定されたローカルXYZ座標系との間の、Z-X-Zオイラー角であり、
前記ローカルXYZ座標系のZ軸は、前記ゴルフクラブのシャフトの延在方向に対し平行である、請求項1~6のいずれか一項に記載のスイング分析方法。 - 処理部を備えた、スイング分析装置であって、
前記処理部は、ゴルフクラブに固定された慣性センサーの出力から、前記ゴルフクラブを用いたスイング中における3軸周りの回転運動データを取得し、前記回転運動データから、前記スイング中における前記ゴルフクラブの姿勢データを取得する、取得処理を行うように構成され、
前記処理部は、前記姿勢データに基づいて、前記ゴルフクラブのオイラー角を算出する、オイラー角算出処理を行うように構成され、
前記処理部は、前記回転運動データと前記オイラー角とを用いて、前記オイラー角の少なくとも1つの角度成分の2回微分の式における一部又は全部のトルク項を用いた計算を行うことにより、前記スイングの分析をする、分析処理を行うように構成されている、スイング分析装置。 - 処理部を備えた、スイング分析装置における、前記処理部に実行させる、スイング分析プログラムであって、
前記処理部が、ゴルフクラブに固定された慣性センサーの出力から、前記ゴルフクラブを用いたスイング中における3軸周りの回転運動データを取得し、前記回転運動データから、前記スイング中における前記ゴルフクラブの姿勢データを取得する、取得ステップと、
前記処理部が、前記姿勢データに基づいて、前記ゴルフクラブのオイラー角を算出する、オイラー角算出ステップと、
前記処理部が、前記回転運動データと前記オイラー角とを用いて、前記オイラー角の少なくとも1つの角度成分の2回微分の式における一部又は全部のトルク項を用いた計算を行うことにより、前記スイングの分析をする、分析ステップと、
を前記処理部に実行させる、スイング分析プログラム。
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