以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係るタイヤについて説明する。なお、本発明の範囲は、以下の実施の形態に限定されず、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。また、以下の図面においては、各構成をわかりやすくするために、各構造における縮尺および数等を、実際の構造における縮尺および数等と異ならせる場合がある。
各図において示すZ軸方向は、タイヤ径方向と平行な方向である。例えば、図1および図2においてタイヤ径方向は、上下方向である。各図に示すタイヤの一部においては、Z軸方向の正の側、すなわち例えば図1および図2の上側がタイヤ径方向の外側であり、Z軸方向の負の側、すなわち例えば図1および図2の下側がタイヤ径方向の内側である。
各図において示すY軸方向は、タイヤ幅方向と平行な方向である。図1および図2においてタイヤ幅方向は、左右方向である。以下の説明においては、ある対象に対して、タイヤ幅方向におけるタイヤ赤道部CLに近い側を「タイヤ幅方向の内側」と呼び、タイヤ幅方向におけるタイヤ赤道部CLから遠い側を「タイヤ幅方向の外側」と呼ぶ。タイヤ赤道部CLは、タイヤにおけるタイヤ幅方向の中心である。各図に示すタイヤの一部においては、Y軸方向の負の側、すなわち例えば図1および図2の右側がタイヤ幅方向の内側であり、Y軸方向の正の側、すなわち例えば図1および図2の左側がタイヤ幅方向の外側である。
また、各実施形態のタイヤにおける図示しない中心軸回りの周方向をタイヤ周方向と呼ぶ。各図において示すX軸方向は、Z軸方向およびY軸方向の両方と直交する方向であり、各図に示すタイヤの断面においての周方向を示している。
<第1実施形態>
図1においては、本実施形態のタイヤ10のタイヤ周方向の一部における断面のうち、タイヤ赤道部CLからタイヤ幅方向の一方側に位置する部分のみを示している。タイヤ10のタイヤ周方向の一部における断面のうち、タイヤ赤道部CLからタイヤ幅方向の他方側に位置する部分は、図1に示す部分とタイヤ赤道部CLを挟んでタイヤ幅方向に対称に配置されている。以下の説明においては、タイヤ10のうち図1に示す部分について説明し、タイヤ10のうちタイヤ赤道部CLからタイヤ幅方向の他方側に位置する部分については、説明を省略する場合がある。
本実施形態のタイヤ10は、図1に示すように、トレッド部11と、サイドウォール部12と、ビード部13と、を備えている。
トレッド部11は、ビード部13よりもタイヤ径方向の外側に配置されており、タイヤ10におけるタイヤ径方向の外端部に位置している。トレッド部11は、タイヤ周方向に沿って延びる環状である。トレッド部11は、タイヤ10の接地面であるトレッド踏面部11aを有している。トレッド踏面部11aは、トレッド部11におけるタイヤ径方向の外側面の一部である。
トレッド踏面部11aは、例えば、タイヤ10を「JATMA Year Book」に規定されている標準リムに装着し、かつタイヤ10に、「JATMA Year Book」での適用サイズ・プライレーティングにおける最大負荷能力(内圧-負荷能力対応表の太字荷重)に対応する空気圧(最大空気圧)の100%の内圧(以下、規定内圧という)を充填して最大負荷能力に対応する最大負荷を負荷した状態でのトレッド部11の接地面である。
なお、トレッド踏面部11aは、例えば、タイヤ10が生産または使用される地域が日本国以外の場合には、その地域に適用されている産業規格(例えば、アメリカ合衆国の「TRA Year Book」、欧州の「ETRTO Standard Manual」等)に準拠した状態でのトレッド部11の接地面である。
サイドウォール部12は、トレッド部11におけるタイヤ幅方向の外端部からタイヤ径方向の内側に向けて延びている。サイドウォール部12は、トレッド部11のタイヤ幅方向の外端部とビード部13とを連結している。
ビード部13は、サイドウォール部12におけるタイヤ径方向の内端部に接続されている。ビード部13には、ビードコア60が設けられている。より詳細には、ビード部13には、ビードコア60が埋設されている。
タイヤ10には、骨格となるカーカス層50が設けられている。タイヤ10は、例えば、カーカス層50に第1チェーファー部71とタイヤ本体20とベルト層30とベルト補強層40とが組み付けられて構成されている。カーカス層50は、トレッド部11とサイドウォール部12とビード部13とに跨って設けられている。カーカス層50は、タイヤ周方向に沿って延びる環状である。図1から図3に示すように、カーカス層50は、複数のカーカスプライとして第1カーカスプライ51および第2カーカスプライ52と、第1導電部53と、第2導電部54と、を有している。
複数のカーカスプライ、すなわち第1カーカスプライ51および第2カーカスプライ52は、図1に示すように、ビードコア60の周りの少なくとも一部を覆い、互いに積層されている。本実施形態において第1カーカスプライ51および第2カーカスプライ52は、トレッド部11からサイドウォール部12を介してビード部13に延びてビードコア60回りにタイヤ幅方向の外側に折り返されている。第1カーカスプライ51および第2カーカスプライ52は、タイヤ周方向に沿って延びる環状である。第2カーカスプライ52は、トレッド部11において第1カーカスプライ51のタイヤ径方向の外側に積層されている。第2カーカスプライ52は、ビードコア60のタイヤ径方向の内側において第1カーカスプライ51のタイヤ径方向の外側に積層されている。第1カーカスプライ51と第2カーカスプライ52とは、隣り合って積層されるカーカスプライ同士である。本実施形態において第1カーカスプライ51は、複数のカーカスプライのうち、トレッド部11において最もタイヤ径方向の内側に位置するカーカスプライである。本実施形態において第2カーカスプライ52は、複数のカーカスプライのうち、トレッド部11において最もタイヤ径方向の外側に位置するカーカスプライである。
第1カーカスプライ51は、図4に示すように、カーカスゴム51aと、複数のプライコード51bと、を有している。第1カーカスプライ51は、カーカスゴム51aに複数のプライコード51bが埋設されて構成されている。
第2カーカスプライ52は、カーカスゴム52aと、複数のプライコード52bと、を有している。第2カーカスプライ52は、カーカスゴム52aに複数のプライコード52bが埋設されて構成されている。
カーカスゴム51aとカーカスゴム52aとは、互いに積層されている。なお、図4では、各部を分かりやすく模式的に示すために、カーカスゴム51aとカーカスゴム52aとの間を離して示している。
本実施形態においてカーカスゴム51a,52aの損失正接tanδは、比較的小さい。損失正接tanδは、カーカスゴム51a,52aに含まれるカーボンの含有量が少ないほど、小さくなる。カーカスゴム51a,52aの損失正接tanδが小さいほど、タイヤ10の転がり抵抗は小さくなる。本実施形態においてカーカスゴム51a,52aは、比較的電気を通しにくい。これにより、本実施形態において第1カーカスプライ51の導電性および第2カーカスプライ52の導電性は、比較的低い。
複数のプライコード51b,52bは、カーカスゴム51a,52aに埋め込まれた状態で、トレッド部11からサイドウォール部12を介してビード部13に延びてビードコア60回りにタイヤ幅方向の外側に折り返されている。複数のプライコード51b,52bは、タイヤ周方向に沿って間隔を空けて配置されている。プライコード51b,52bは、例えば、有機繊維コード等である。
なお、図4では、一例として、複数のプライコード51bと複数のプライコード52bとがそれぞれタイヤ周方向の同じ位置に配置されている例を示しているが、これに限られない。複数のプライコード51bと複数のプライコード52bとのタイヤ周方向の位置関係は、特に限定されない。すなわち、図4において、プライコード51bの左右方向の位置が、プライコード52bの左右方向の位置とずれていてもよい。また、プライコード51bの数とプライコード52bの数とは、互いに同じであってもよいし、互いに異なっていてもよい。
第1導電部53は、第2カーカスプライ52の外側の表面に設けられている。第1導電部53は、図1に示すように、第2カーカスプライ52に沿って延びている。第1導電部53は、トレッド部11において複数のカーカスプライのタイヤ径方向の外側、すなわち第2カーカスプライ52のタイヤ径方向の外側に位置する。本実施形態において第1導電部53は、トレッド部11から、第2カーカスプライ52に沿ってビード部13まで延びている。本実施形態において第1導電部53は、トレッド部11からサイドウォール部12を介してビード部13に延びてビードコア60回りにタイヤ幅方向の外側に折り返され、かつ、ビードコア60のタイヤ幅方向の外側まで延びている。
第1導電部53のうちビードコア60回りに折り返された部分のタイヤ径方向の外端部は、第2カーカスプライ52のうちビードコア60回りに折り返された部分のタイヤ径方向の外端部とタイヤ径方向において同じ位置に配置されている。ビード部13において第1導電部53は、ビードコア60回りに折り返された第2カーカスプライ52の内側に設けられている。図4に示すように、第1導電部53は、ビードコア60のタイヤ径方向の内側において、第2カーカスプライ52におけるカーカスゴム52aのタイヤ径方向の外側面に貼り付けられている。
第2導電部54は、第1カーカスプライ51の外側の表面に設けられている。第2導電部54は、図1に示すように、第1カーカスプライ51と第2カーカスプライ52との間に位置する。すなわち、第2導電部54は、隣り合って積層されるカーカスプライ同士の間に位置する。第2導電部54は、トレッド部11からサイドウォール部12を介してビード部13に延びている。本実施形態において第2導電部54は、トレッド部11からサイドウォール部12を介してビード部13に延びてビードコア60回りにタイヤ幅方向の外側に折り返され、かつ、ビードコア60のタイヤ幅方向の外側まで延びている。
第2導電部54のうちビードコア60回りに折り返された部分のタイヤ径方向の外端部は、第1カーカスプライ51のうちビードコア60回りに折り返された部分のタイヤ径方向の外端部とタイヤ径方向において同じ位置に配置されている。ビード部13において第2導電部54は、ビードコア60回りに折り返された第1カーカスプライ51の内側に設けられている。図4に示すように、第2導電部54は、ビードコア60のタイヤ径方向の内側において、第1カーカスプライ51におけるカーカスゴム51aのタイヤ径方向の外側面に貼り付けられている。
本実施形態において第1導電部53および第2導電部54は、金属を含む糸状部材である。第1導電部53および第2導電部54は、例えば、有機繊維にステンレス等の金属繊維が巻き付けられた導電糸である。第1導電部53および第2導電部54は、図3に示すように、それぞれタイヤ周方向に沿って間隔を空けて複数設けられている。
なお、図3および図4では、一例として、複数の第1導電部53と複数の第2導電部54とがそれぞれタイヤ周方向の同じ位置に配置されている例を示しているが、これに限られない。複数の第1導電部53と複数の第2導電部54とのタイヤ周方向の位置関係は、特に限定されない。すなわち、図4において、第1導電部53の左右方向の位置が、第2導電部54の左右方向の位置とずれていてもよい。また、第1導電部53の数と第2導電部54の数とは、互いに同じであってもよいし、互いに異なっていてもよい。
また、図4では、一例として、第1導電部53が第2カーカスプライ52におけるプライコード52bのタイヤ径方向の外側に位置している状態を示しているが、これに限られない。複数の第1導電部53と複数のプライコード52bとのタイヤ周方向の位置関係は、特に限定されない。すなわち、図4において、第1導電部53の左右方向の位置が、プライコード52bの左右方向の位置とずれていてもよい。また、第1導電部53の数とプライコード52bの数とは、互いに同じであってもよいし、互いに異なっていてもよい。
また、図4では、一例として、第2導電部54が第1カーカスプライ51におけるプライコード51bのタイヤ径方向の外側に位置している状態を示しているが、これに限られない。複数の第2導電部54と複数のプライコード51bとのタイヤ周方向の位置関係は、特に限定されない。すなわち、図4において、第2導電部54の左右方向の位置が、プライコード51bの左右方向の位置とずれていてもよい。また、第2導電部54の数とプライコード51bの数とは、互いに同じであってもよいし、互いに異なっていてもよい。
第1導電部53および第2導電部54は、導電性を有している。第1導電部53の体積固有抵抗および第2導電部54の体積固有抵抗は、後述するチェーファー部70の体積固有抵抗よりも小さい。第1導電部53の体積固有抵抗と第2導電部54の体積固有抵抗とは、互いに同じであってもよいし、互いに異なっていてもよい。
第1チェーファー部71は、導電性を有する。第1チェーファー部71は、ゴム製の部材、または繊維とゴムとの複合部材である。第1チェーファー部71は、図1に示すように、第1カーカスプライ51のうちビード部13に設けられた部分をタイヤ径方向の内側およびタイヤ幅方向の両側から覆っている。第1カーカスプライ51のうちビード部13に設けられた部分は、第1カーカスプライ51のうちビードコア60をタイヤ径方向の内側およびタイヤ幅方向の両側から覆う部分を含む。以下の説明においては、第1カーカスプライ51のうちビード部13に設けられた部分を、コア被覆部55と呼ぶ。コア被覆部55は、ビードコア60のタイヤ幅方向の内側からビードコア60のタイヤ径方向の内側を通ってビードコア60のタイヤ幅方向の外側まで延びている。第1チェーファー部71は、タイヤ周方向に沿って延びる環状である。
第1チェーファー部71は、径方向被覆部72と、幅方向被覆部73,74と、を有している。径方向被覆部72は、第1カーカスプライ51におけるコア被覆部55をタイヤ径方向の内側から覆う部分である。径方向被覆部72は、タイヤ幅方向に延びている。幅方向被覆部73,74は、第1カーカスプライ51におけるコア被覆部55をタイヤ幅方向の両側から覆う部分である。幅方向被覆部73は、径方向被覆部72のタイヤ幅方向の外端部からタイヤ径方向の外側に延びており、コア被覆部55をタイヤ幅方向の外側から覆っている。幅方向被覆部74は、径方向被覆部72のタイヤ幅方向の内端部からタイヤ径方向の外側に延びており、コア被覆部55をタイヤ幅方向の内側から覆っている。幅方向被覆部73,74のタイヤ径方向の外端部は、第1カーカスプライ51のうちビードコア60回りに折り返された部分におけるタイヤ径方向の外端部よりもタイヤ径方向の内側に位置する。
タイヤ本体20は、図1に示すように、トレッドゴム21と、サイドウォールゴム22と、を有している。
トレッドゴム21は、トレッド部11の一部を構成する部分であり、タイヤ周方向に沿って延びる環状である。トレッドゴム21は、カーカス層50のタイヤ径方向の外側に設けられている。トレッドゴム21は、ベルト層30とベルト補強層40とを介して、カーカス層50に接続されている。なお、図1では、各部を分かりやすく模式的に示すために、カーカス層50と、トレッドゴム21、ベルト層30およびベルト補強層40との間を離して示している。
トレッドゴム21は、トレッドアンダークッション23と、ベース層24と、キャップ層25と、ミニサイド26と、アンテナゴム27と、を有している。
トレッドアンダークッション23とベース層24とキャップ層25とは、タイヤ径方向内側からタイヤ径方向の外側に向かって、この順に積層されている。キャップ層25のタイヤ径方向の外側面は、トレッド踏面部11aを構成している。ミニサイド26は、積層されたトレッドアンダークッション23、ベース層24およびキャップ層25のタイヤ幅方向の外端部に接続されている。
アンテナゴム27は、ベース層24およびキャップ層25に跨って埋設されている。アンテナゴム27は、ベース層24およびキャップ層25をタイヤ径方向に貫通している。アンテナゴム27のタイヤ径方向の内端部は、トレッドアンダークッション23のタイヤ径方向の外側面に接続されている。アンテナゴム27のタイヤ径方向の外端部は、キャップ層25のタイヤ径方向の外側面に露呈しており、トレッド踏面部11aの一部を構成している。アンテナゴム27は、タイヤ周方向に断続的に延びてもよいし、連続して延びてもよいし、点在してもよい。
ベース層24、キャップ層25およびミニサイド26は、比較的電気を通しにくく、導電性が低い。トレッドアンダークッション23およびアンテナゴム27は、比較的電気を通しやすく、導電性を有する。
サイドウォールゴム22は、サイドウォール部12の一部およびビード部13の一部を構成する部分であり、タイヤ周方向に沿って延びる環状である。サイドウォールゴム22は、カーカス層50のタイヤ幅方向の外側に設けられている。サイドウォールゴム22は、カーカス層50に接続されている。サイドウォールゴム22のタイヤ径方向の外端部は、トレッドゴム21のタイヤ幅方向の外端部に接続されている。なお、図1では、各部を分かりやすく模式的に示すために、サイドウォールゴム22とカーカス層50との間、およびサイドウォールゴム22とトレッドゴム21との間を離して示している。
サイドウォールゴム22は、サイドウォールゴム本体部28と、第2チェーファー部29と、を有している。
サイドウォールゴム本体部28は、サイドウォール部12の一部を構成する部分である。サイドウォールゴム本体部28のタイヤ径方向の外端部は、タイヤ幅方向の内側に延びており、カーカス層50と、トレッドゴム21、ベルト層30およびベルト補強層40との間に位置している。
第2チェーファー部29は、ビード部13の一部を構成する部分である。第2チェーファー部29は、サイドウォールゴム本体部28のタイヤ径方向の内端部に接続されている。第2チェーファー部29は、カーカス層50におけるコア被覆部55をタイヤ幅方向の外側から覆っている。第2チェーファー部29は、コア被覆部55および第1チェーファー部71の幅方向被覆部73に、タイヤ幅方向の外側から接続されている。なお、図1では、各部を分かりやすく模式的に示すために、第2チェーファー部29とコア被覆部55との間、および第2チェーファー部29と幅方向被覆部73との間を離して示している。
サイドウォールゴム本体部28を構成するゴム材料と、第2チェーファー部29を構成するゴム材料とは、互いに体積固有抵抗が異なっている。サイドウォールゴム本体部28は、比較的電気を通しにくい。第2チェーファー部29は、比較的電気を通しやすく、導電性を有する。
本実施形態において、上述した第1チェーファー部71と第2チェーファー部29とは、チェーファー部70を構成している。すなわち、本実施形態においてタイヤ10は、複数のカーカスプライの周りの少なくとも一部を覆うチェーファー部70を有している。チェーファー部70は、第1カーカスプライ51の周りの少なくとも一部を覆っている。本実施形態においてチェーファー部70は、コア被覆部55の少なくとも一部を覆っている。チェーファー部70は、導電性を有する。チェーファー部70において、第1チェーファー部71の体積固有抵抗と第2チェーファー部29の体積固有抵抗とは、互いに同じであってもよいし、互いに異なっていてもよい。本実施形態においてチェーファー部70は、コア被覆部55のタイヤ径方向の内側およびタイヤ幅方向の両側を覆っており、コア被覆部55に接続されている。チェーファー部70は、タイヤ10が取り付けられるリムとの摩擦からカーカス層50を保護する部分である。
ベルト層30は、トレッド部11に埋設されている。ベルト層30は、カーカス層50のタイヤ径方向の外側に積層されている。ベルト層30は、第2カーカスプライ52および第1導電部53と接続されている。ベルト層30は、トレッドゴム21とカーカス層50とのタイヤ径方向の間に位置する。図示は省略するが、ベルト層30は、ベルトゴムに複数のスチールコードが埋設されて構成されている。ベルト層30のベルトゴムは、比較的電気を通しやすく、導電性を有する。これにより、ベルト層30は、導電性を有する。
ベルト補強層40は、ベルト層30のタイヤ径方向の外側に積層されている。ベルト補強層40は、トレッドゴム21とベルト層30とのタイヤ径方向の間に位置する。ベルト補強層40のタイヤ径方向の外側面は、トレッドゴム21のうちトレッドアンダークッション23のタイヤ径方向の内側面と接続されている。
ベルト補強層40は、例えば、ゴムとナイロンとからなる複合コードをベルト層30の外周部に複数回、巻回して構成されている。ベルト補強層40を構成する複合コードの一巻き同士は、タイヤ幅方向に沿って互いに隙間41を空けて配置されている。図示は省略するが、ベルト補強層40の一巻き同士の隙間41においては、ベルト補強層40をタイヤ径方向に挟むトレッドアンダークッション23とベルト層30とが互いに接続されている。ベルト補強層40は、比較的電気を通しにくい。
複数のカーカスプライには、図2に示すように、導電糸が縫い込まれた縫込部がそれぞれ設けられている。第1カーカスプライ51には、導電糸が縫い込まれた縫込部として第1縫込部81が設けられている。第2カーカスプライ52には、導電糸が縫い込まれた縫込部として第2縫込部82が設けられている。第1縫込部81と第2縫込部82とは、隣り合って積層されるカーカスプライに設けられる縫込部同士である。本実施形態において第1縫込部81は、第1カーカスプライ51のうちビードコア60のタイヤ径方向の内側に位置する部分に設けられている。本実施形態において第2縫込部82は、第2カーカスプライ52のうちビードコア60のタイヤ径方向の内側に位置する部分に設けられている。第2縫込部82は、第1縫込部81のタイヤ径方向の外側に位置する。
本実施形態において第1縫込部81および第2縫込部82は、図3および図4に示すように、タイヤ周方向に沿って延びている。第1縫込部81は、例えば、タイヤ周方向に沿って第1カーカスプライ51の全周に亘って設けられている。第2縫込部82は、例えば、タイヤ周方向に沿って第2カーカスプライ52の全周に亘って設けられている。すなわち、本実施形態において第1縫込部81および第2縫込部82は、タイヤ周方向に沿って延びる環状である。第1縫込部81と第2縫込部82とは、例えば、タイヤ幅方向において同じ位置に配置されている。なお、第1縫込部81と第2縫込部82とは、タイヤ幅方向に互いにずれて配置されていてもよい。
本実施形態において第1縫込部81は、図4に示すように、第1カーカスプライ51を貫通して縫い込まれている。第1縫込部81は、例えば、第1カーカスプライ51をタイヤ径方向に貫通している。より詳細には、第1縫込部81は、カーカスゴム51aをタイヤ径方向に貫通している。第1縫込部81は、少なくとも1つの第1縫目部83aと、少なくとも1つの第3縫目部83bと、を有している。本実施形態において第1縫目部83aおよび第3縫目部83bは、それぞれ周方向に沿って複数並んで設けられている。
第1縫目部83aは、第1カーカスプライ51のうちビードコア60のタイヤ径方向の内側に位置する部分のタイヤ径方向の内側に位置する。第1縫目部83aの少なくとも1つは、チェーファー部70と接触している。これにより、第1カーカスプライ51に設けられた縫込部である第1縫込部81は、チェーファー部70に接触している。本実施形態においては、例えば、すべての第1縫目部83aが第1チェーファー部71の径方向被覆部72と接触している。
第3縫目部83bは、第1カーカスプライ51のうちビードコア60のタイヤ径方向の内側に位置する部分のタイヤ径方向の外側に位置する。第3縫目部83bの少なくとも1つは、第2導電部54と接触している。これにより、第1縫込部81は、チェーファー部70と第2導電部54との両方に接触し、チェーファー部70と第2導電部54とを電気的に接続している。
本実施形態において第3縫目部83bは、第2導電部54のタイヤ径方向の外側をタイヤ周方向に跨いで設けられており、第2導電部54にタイヤ径方向の外側から接触している。これにより、本実施形態において第1縫込部81は、第2導電部54の少なくとも1つを第1カーカスプライ51に縫い込んでいる。図3に示すように、本実施形態において第1縫込部81は、複数の第2導電部54を第1カーカスプライ51に縫い込んでいる。すなわち、本実施形態においては、複数の第3縫目部83bが、それぞれ第2導電部54と接触している。これにより、第1縫込部81は、複数の第2導電部54と接触している。本実施形態において第1縫込部81は、すべての第2導電部54と接触している。複数の第3縫目部83bは、第2導電部54と接触しない第3縫目部83bを含む。
本実施形態において第2縫込部82は、図4に示すように、第2カーカスプライ52を貫通して縫い込まれている。第2縫込部82は、例えば、第2カーカスプライ52をタイヤ径方向に貫通している。より詳細には、第2縫込部82は、カーカスゴム52aをタイヤ径方向に貫通している。第2縫込部82は、少なくとも1つの第2縫目部84aと、少なくとも1つの第4縫目部84bと、を有している。本実施形態において第2縫目部84aおよび第4縫目部84bは、それぞれ周方向に沿って複数並んで設けられている。
第2縫目部84aは、第2カーカスプライ52のうちビードコア60のタイヤ径方向の内側に位置する部分のタイヤ径方向の外側に位置する。第2縫目部84aの少なくとも1つは、第1導電部53と接触している。これにより、第2カーカスプライ52に設けられた縫込部である第2縫込部82は、第1導電部53と接触している。本実施形態において第2縫目部84aは、第1導電部53のタイヤ径方向の外側をタイヤ周方向に跨いで設けられており、第1導電部53にタイヤ径方向の外側から接触している。これにより、本実施形態において第2縫込部82は、第1導電部53の少なくとも1つを第2カーカスプライ52に縫い込んでいる。
図3に示すように、本実施形態において第2縫込部82は、複数の第1導電部53を第2カーカスプライ52に縫い込んでいる。すなわち、本実施形態においては、複数の第2縫目部84aが、それぞれ第1導電部53と接触している。これにより、第2縫込部82は、複数の第1導電部53と接触している。本実施形態において第2縫込部82は、すべての第1導電部53と接触している。複数の第2縫目部84aは、第1導電部53と接触しない第2縫目部84aを含む。
第4縫目部84bは、図4に示すように、第2カーカスプライ52のうちビードコア60のタイヤ径方向の内側に位置する部分のタイヤ径方向の内側に位置する。第4縫目部84bの少なくとも1つは、第1縫込部81における第3縫目部83bと接触している。これにより、第1縫込部81と第2縫込部82とは、互いに電気的に接続されている。また、第1縫込部81と第2縫込部82とが、第2導電部54と電気的に接続されている。
本明細書において「ある対象同士が電気的に接続される」とは、ある対象同士の間に電気が流れることが可能となっていればよく、ある対象同士が、直接的に接続されていてもよいし、他の部材等を介して間接的に接続されていてもよい。例えば、図4では、第2縫込部82は、第1縫込部81と接触することで間接的に第2導電部54と電気的に接続されている。
なお、第4縫目部84bは、第2導電部54と接触してもよい。この場合、第3縫目部83bと第4縫目部84bとは、第2導電部54を介して電気的に接続されてもよい。これにより、第1縫込部81と第2縫込部82とが、第2導電部54を介して電気的に接続される。
本実施形態において第1縫込部81は、例えば、ミシンによって下糸81aと上糸81bとが第1カーカスプライ51に縫い込まれて構成されている。下糸81aと上糸81bとは、互いに絡み合って接触している。これにより、下糸81aと上糸81bとは、電気的に接続されている。下糸81aは、複数の第1縫目部83aを構成する導電糸である。上糸81bは、複数の第3縫目部83bを構成する導電糸である。下糸81aと上糸81bとが絡み合う部分は、例えば、第1カーカスプライ51におけるカーカスゴム51aに埋設されている。
本実施形態において第2縫込部82は、例えば、ミシンによって下糸82aと上糸82bとが第2カーカスプライ52に縫い込まれて構成されている。下糸82aと上糸82bとは、互いに絡み合って接触している。これにより、下糸82aと上糸82bとは、電気的に接続されている。下糸82aは、複数の第4縫目部84bを構成する導電糸である。上糸82bは、複数の第2縫目部84aを構成する導電糸である。下糸82aと上糸82bとが絡み合う部分は、例えば、第2カーカスプライ52におけるカーカスゴム52aに埋設されている。
下糸81a,82aおよび上糸81b,82bは、例えば、金属を含む糸状部材である。下糸81a,82aおよび上糸81b,82bは、例えば、有機繊維にステンレス等の金属繊維が巻き付けられて構成されている。下糸81a,82aおよび上糸81b,82bは、導電性を有している。下糸81a,82aの体積固有抵抗と上糸81b,82bの体積固有抵抗とは、互いに同じであってもよいし、互いに異なっていてもよい。下糸81aの体積固有抵抗と下糸82aの体積固有抵抗とは、互いに同じであってもよいし、互いに異なっていてもよい。上糸81bの体積固有抵抗と上糸82bの体積固有抵抗とは、互いに同じであってもよいし、互いに異なっていてもよい。
タイヤ10には、図1に示すように、タイヤ10が装着されるリムから地面へと、車両からの静電気を逃がす導電パスCPが設けられている。導電パスCPは、タイヤ10においてリムから伝わる静電気が通る経路であり、第2チェーファー部29から、第1チェーファー部71、第1縫込部81、第2縫込部82、第1導電部53、ベルト層30、ベルト補強層40の隙間41、トレッドアンダークッション23、およびアンテナゴム27をこの順に通ってトレッド踏面部11aまで延びている。これにより、リムから伝わる車両の静電気をトレッド踏面部11aから地面に逃がすことができる。
なお、本実施形態の第1縫込部81においては、下糸81aから上糸81bに静電気が伝わる。第2縫込部82においては、下糸82aから上糸82bに静電気が伝わる。
また、上述したように、第1縫込部81と第2縫込部82とが、第2導電部54を介して電気的に接続される場合には、第1縫込部81から第2導電部54を介して、第2縫込部82へと静電気が伝わる。
また、上述したように、ベルト補強層40の隙間41においては、トレッドアンダークッション23とベルト層30とが互いに接続されている。そのため、第1導電部53からベルト層30に流れた静電気は、隙間41からトレッドアンダークッション23へと流れる。
本実施形態によれば、複数の第1カーカスプライ51および第2カーカスプライ52には、導電糸が縫い込まれた第1縫込部81および第2縫込部82がそれぞれ設けられている。そのため、第1カーカスプライ51のうち第1縫込部81が設けられた部分および第2カーカスプライ52のうち第2縫込部82が設けられた部分において、各縫込部を介して電気を通しやすくできる。また、隣り合って積層されるカーカスプライに設けられる縫込部同士である第1縫込部81と第2縫込部82とは、互いに電気的に接続されている。そのため、第1縫込部81と第2縫込部82とのうち一方の縫込部に電流が流れる場合には、他方の縫込部にも電流を流すことができる。これにより、第1カーカスプライ51の導電性および第2カーカスプライ52の導電性が低い場合であっても、各縫込部によって、車両からの静電気を第1カーカスプライ51および第2カーカスプライ52に通すことができる。したがって、第1カーカスプライ51の導電性および第2カーカスプライ52の導電性によらず、車両からの静電気を地面に逃がしやすい構造を有するタイヤ10が得られる。そのため、各カーカスプライのカーカスゴムに含まれるカーボンの量を減少させてタイヤ10の転がり抵抗を低減させつつ、車両の静電気を地面に好適に逃がすことができる。
また、本実施形態によれば、複数のカーカスプライは、チェーファー部70と接触する第1縫込部81が設けられた第1カーカスプライ51と、第1導電部53と接触する第2縫込部82が設けられた第2カーカスプライ52と、を含む。そして、隣り合って積層される第1カーカスプライ51と第2カーカスプライ52に設けられる第1縫込部81と第2縫込部82とは、互いに電気的に接続されている。そのため、第1カーカスプライ51におけるカーカスゴム51aの体積固有抵抗および第2カーカスプライ52におけるカーカスゴム52aの体積固有抵抗が比較的大きく、第1カーカスプライ51の導電性および第2カーカスプライ52の導電性が低い場合であっても、リムからチェーファー部70に伝わる車両からの静電気を、第1縫込部81および第2縫込部82を介して第1導電部53に伝達することができる。これにより、車両からの静電気を、第1導電部53を介してトレッド部11まで送ることができ、トレッド部11においてトレッド踏面部11aから静電気を地面に逃がすことができる。したがって、車両からの静電気をより好適に地面に逃がしやすい。
また、本実施形態によれば、第1導電部53の体積固有抵抗は、チェーファー部70の体積固有抵抗よりも小さい。そのため、第1導電部53の体積固有抵抗を好適に小さくしやすい。これにより、ビード部13からトレッド部11への比較的長い導電パスCPを作る第1導電部53に、好適に静電気を流すことができる。したがって、車両からの静電気をより地面に逃がしやすい。
また、本実施形態によれば、第1導電部53は、金属を含む糸状部材である。そのため、第1導電部53の体積固有抵抗をより好適に小さくしやすく、第1導電部53によって、ビード部13からトレッド部11へと静電気をより流しやすい。これにより、車両からの静電気をより地面に逃がしやすい。また、本実施形態によれば、第1導電部53は、タイヤ周方向に沿って間隔を空けて複数設けられている。そのため、ビード部13からトレッド部11まで静電気を流す導電パスCPを増やすことができ、第1導電部53によって、ビード部13からトレッド部11へと静電気をより流しやすい。これにより、車両からの静電気をより地面に逃がしやすい。
また、本実施形態によれば、第2縫込部82は、タイヤ周方向に沿って延びている。そのため、第2縫込部82を第1導電部53と交差させやすく、第2縫込部82における第2縫目部84aを第1導電部53と接触させやすい。また、本実施形態のように1つの第2縫込部82を、複数の第1導電部53と接触させやすい。
また、本実施形態によれば、第2縫込部82は、第2縫目部84aを介して複数の第1導電部53と接触している。そのため、1つの第2縫込部82を設けることで、複数の第1導電部53をチェーファー部70と接続することができ、ビード部13からトレッド部11まで静電気を流す導電パスCPを増やすことができる。したがって、第2縫込部82を設ける手間を低減しつつ、車両からの静電気を好適に地面に逃がすことができる。
また、本実施形態によれば、第2縫込部82は、第1導電部53の少なくとも1つを第2カーカスプライ52に縫い込んでいる。そのため、第2縫目部84aをより確実に第1導電部53と接触させやすい。
また、本実施形態によれば、隣り合って積層される第1カーカスプライ51と第2カーカスプライ52との間には、第1縫込部81と第2縫込部82とが電気的に接続される第2導電部54が設けられている。そのため、第1縫込部81の位置と第2縫込部82の位置とがずれて、第1縫込部81と第2縫込部82とが直接的に接触しない場合であっても、第1縫込部81と第2縫込部82とを第2導電部54を介して電気的に接続することができる。これにより、第1縫込部81から第2縫込部82へと好適に静電気を伝えることができ、車両からの静電気をより地面に逃がしやすい。
また、本実施形態によれば、第1縫込部81は、第1カーカスプライ51のうちビードコア60のタイヤ径方向の内側に位置する部分に設けられ、第2縫込部82は、第2カーカスプライ52のうちビードコア60のタイヤ径方向の内側に位置する部分に設けられている。そのため、カーカスプライのうち縫込部が設けられた部分をチェーファー部70と接触させやすい。本実施形態では、第1カーカスプライ51のうち第1縫込部81が設けられた部分をチェーファー部70に接触させやすい。これにより、リムからチェーファー部70に伝わる車両からの静電気を、各縫込部によって各カーカスプライに通しやすい。したがって、車両からの静電気をより好適に地面に逃がしやすい。
また、例えば、生タイヤを金型に入れて加硫してタイヤ10を作る際、生タイヤのゴムは金型の形状に合わせて変形する。このとき、ビードコア60のタイヤ径方向の内側においては、ゴムが変形しにくい。そのため、各カーカスプライのうちビードコア60のタイヤ径方向の内側に位置する部分に各縫込部を設けることで、各縫込部を構成する下糸81a,82aおよび上糸81b,82bが生タイヤを金型内で加硫する際のゴムの変形による影響を受けにくい。これにより、下糸81a,82aおよび上糸81b,82bが切れることを抑制できる。
また、本実施形態によれば、カーカスゴム51a,52aは、比較的電気を通しにくい。そのため、第1カーカスプライ51および第2カーカスプライ52には、車両からの静電気が通りにくい。しかし、上述したように、本実施形態によれば、第1カーカスプライ51の導電性および第2カーカスプライ52の導電性によらず、車両からの静電気を地面に逃がしやすい。すなわち、上述した第1カーカスプライ51の導電性および第2カーカスプライ52の導電性によらず静電気を地面に逃がしやすい効果は、カーカスゴム51a,52aが比較的電気を通しにくい構成において、より有用に得られる。
また、本実施形態によれば、第1縫込部81は、タイヤ周方向に沿って延びている。そのため、第1縫込部81を第2導電部54と交差させやすく、第1縫込部81における第3縫目部83bを第2導電部54と接触させやすい。また、本実施形態のように1つの第1縫込部81を、複数の第2導電部54と接触させやすい。
また、本実施形態によれば、第1縫込部81は、第2導電部54の少なくとも1つを第1カーカスプライ51に縫い込んでいる。そのため、第3縫目部83bをより確実に第2導電部54と接触させやすい。
<第2実施形態>
本実施形態は、第1実施形態に対して、第1縫込部および第2縫込部の構成が異なる。なお、上述した実施形態と同様の構成については、適宜同一の符号を付す等により、説明を省略する場合がある。
本実施形態のタイヤ110のカーカス層150は、図5に示すように、第1カーカスプライ151と、第2カーカスプライ152と、複数の第1導電部153と、複数の第2導電部154と、を有している。本実施形態において第1導電部153と第2導電部154とは、タイヤ周方向に互いにずれて配置されている。タイヤ周方向に隣り合う第1導電部153同士の間の距離と、タイヤ周方向に隣り合う第2導電部154同士の間の距離Pとは、互いに同じであってもよいし、互いに異なっていてもよい。
第1カーカスプライ151には、第1縫込部181が設けられている。第2カーカスプライ152には、第2縫込部182が設けられている。第1縫込部181および第2縫込部182は、それぞれタイヤ周方向に沿って間隔を空けて複数設けられている。本実施形態において第1縫込部181と第2縫込部182とは、タイヤ幅方向に互いにずれて配置されている。図5の例では、第2縫込部182は、第1縫込部181よりもタイヤ幅方向の外側に位置する。
第1縫込部181は、タイヤ周方向に延びている。第1縫込部181のタイヤ周方向の寸法は、例えば、タイヤ周方向に隣り合う第1導電部153同士の間の距離、およびタイヤ周方向に隣り合う第2導電部154同士の間の距離Pよりも小さい。本実施形態において第1縫込部181は、第2導電部154ごとに設けられている。各第1縫込部181は、各第2導電部154を第1カーカスプライ151に縫い込んでいる。図示は省略するが、第1縫込部181は、第1実施形態と同様に、チェーファー部70と接触する第1縫目部を有している。
第2縫込部182は、タイヤ周方向に沿って延びている。第2縫込部182のタイヤ周方向の寸法Lは、例えば、タイヤ周方向に隣り合う第1導電部153同士の間の距離、およびタイヤ周方向に隣り合う第2導電部154同士の間の距離Pよりも大きい。各第2縫込部182は、それぞれ1つの第1導電部153を第2カーカスプライ152に縫い込んでいる。本実施形態において第2縫込部182は、タイヤ周方向に沿って複数設けられた第1導電部153に対して、1つおきに設けられている。言い換えれば、第1導電部153は、第2縫込部182によって第2カーカスプライ152に縫い込まれた第1導電部153と、第2縫込部182に縫い込まれていない第1導電部153と、をタイヤ周方向に沿って交互に含む。
図示は省略するが、第2縫込部182は、第1縫込部181と電気的に接続される第4縫込部を有している。本実施形態では、第1縫込部181と第2縫込部182とがタイヤ幅方向にずれているため、第2縫込部182の第4縫込部は、第1縫込部181とは直接的には接触せず、第2導電部154と接触し、第2導電部154を介して第1縫込部181と電気的に接続されている。図5に二点鎖線で示しているように、本実施形態の導電パスCPにおいては、第1チェーファー部71から第1縫込部181に流れた静電気が第2導電部154を通って第2縫込部182に伝わり、第2縫込部182から第1導電部153へと伝わる。
カーカス層150のその他の構成は、第1実施形態のカーカス層50のその他の構成と同様である。
タイヤ110のその他の構成は、第1実施形態のタイヤ10のその他の構成と同様である。
本実施形態によれば、隣り合って積層されるカーカスプライの一方に設けられる第2縫込部182のタイヤ周方向の寸法Lは、タイヤ周方向に隣り合う第2導電部154同士の間の距離Pよりも大きい。そのため、第1カーカスプライ151に設けられた第2導電部154と第2カーカスプライ152に設けられた第1導電部153とがタイヤ周方向にどのようにずれたとしても、第2縫込部182のうち第2カーカスプライ152のタイヤ径方向の内側に位置する第4縫目部を、1つ以上の第2導電部154と接触させることができる。これにより、第2導電部154を介して、より確実に第1縫込部181と第2縫込部182とを電気的に接続することができる。
また、第2縫込部182をタイヤ周方向の全周に設けることなく、第2縫込部182を第2導電部154に接触させることができるため、第2カーカスプライ152における導電糸を縫い込む領域を小さくしやすい。具体的には、例えば、第2縫込部182同士のタイヤ周方向の間には導電糸を縫い込む必要がないため、導電糸を縫い込む領域を小さくできる。これにより、第2縫込部182を作るために必要な導電糸の総量を少なくできる。したがって、タイヤ110の製造コストを低減できる。また、導電糸を縫い込む作業量を低減できる。
また、本実施形態によれば、第1縫込部181は、第2導電部154ごとに設けられている。そのため、第2縫込部182がいずれの第2導電部154と接触した場合であっても、チェーファー部70からの静電気を第1縫込部181から第2導電部154を介して第2縫込部182へと伝えることができる。また、第1縫込部181をタイヤ周方向の全周に亘って設ける場合に比べて、第1カーカスプライ151における導電糸を縫い込む領域を小さくしやすい。そのため、第1縫込部181を作るために必要な導電糸の総量を少なくできる。これにより、タイヤ110の製造コストをより低減できる。また、導電糸を縫い込む作業量をより低減できる。
また、本実施形態によれば、第2導電部154の体積固有抵抗は、第1実施形態と同様に、チェーファー部70の体積固有抵抗よりも小さい。そのため、第2導電部154の体積固有抵抗を好適に小さくしやすい。これにより、第1縫込部181に伝えられた静電気を、第2導電部154を介して好適に第2縫込部182に伝えることができる。
また、本実施形態によれば、第2導電部154は、第1実施形態と同様に、金属を含む糸状部材である。そのため、第2導電部154の体積固有抵抗をより好適に小さくしやすい。これにより、第2導電部154によって、第1縫込部181から第2縫込部182に、より好適に静電気を伝えることができる。
なお、本発明の実施の態様は、上記の実施形態に限られず、以下の構成を採用することもできる。
縫込部は、積層される複数のカーカスプライのそれぞれに設けられ、隣り合うカーカスプライに設けられる縫込部同士が互いに電気的に接続されるならば、特に限定されない。縫込部は、カーカスプライのいずれの位置に設けられてもよい。縫込部は、カーカスプライを貫通しなくてもよい。各縫込部は、各カーカスプライのうちビードコアのタイヤ幅方向の内側または外側に位置する部分に設けられてもよい。各縫込部が各カーカスプライのうちビードコアのタイヤ幅方向の外側に位置する部分に設けられる場合、各縫込部は、第2チェーファー部と第1導電部とを電気的に接続してもよい。
上述した第1実施形態において第1縫込部81および第2縫込部82は、2本の導電糸が絡み合って縫い込まれた構成としたが、これに限られない。第1縫込部および第2縫込部は、例えば、1本の導電糸が縫い込まれて構成されてもよい。第1縫込部および第2縫込部を構成する導電糸は、導電性を有する糸であれば、特に限定されない。
また、第1縫込部および第2縫込部を作る際の導電糸の縫い方は、特に限定されない。第1縫込部は、第3縫目部が第2導電部と接触するならば、第2導電部を縫い込んでいなくてもよい。第3縫目部は、第2導電部にタイヤ径方向の内側から接触していてもよい。第2縫込部は、第2縫目部が第1導電部と接触するならば、第1導電部を縫い込んでいなくてもよい。第2縫目部は、第1導電部にタイヤ径方向の内側から接触していてもよい。第1縫込部および第2縫込部は、各カーカスプライのうち一対のビード部にそれぞれ設けられる部分のいずれか一方のみに設けられてもよいし、両方に設けられてもよい。
上述した第2実施形態において複数の第1縫込部181同士は、例えば、タイヤ幅方向の位置がずれていてもよい。複数の第2縫込部182同士は、例えば、タイヤ幅方向の位置がずれていてもよい。また、タイヤ幅方向に並んで複数の第1縫込部181が設けられてもよいし、タイヤ幅方向に並んで複数の第2縫込部182が設けられてもよい。
第1導電部は、カーカスプライに沿って延び、トレッド部において複数のカーカスプライのタイヤ径方向の外側に位置し、かつ、導電性を有するならば、特に限定されない。第2導電部は、隣り合って積層されるカーカスプライ同士の間において各カーカスプライに設けられる縫込部同士と電気的に接続され、かつ、導電性を有するならば、特に限定されない。第1導電部および第2導電部は、設けられなくてもよい。第1導電部および第2導電部は、金属を含まなくてもよい。第1導電部および第2導電部は、例えば、導電性を有するゴム製であってもよい。第1導電部および第2導電部は、糸状部材なくてもよく、各カーカスプライに積層される層状の部材であってもよい。第1導電部の体積固有抵抗および第2導電部の体積固有抵抗は、チェーファー部の体積固有抵抗と同じであってもよいし、チェーファー部の体積固有抵抗より大きくてもよい。
カーカスプライの数は、2以上であれば、特に限定されない。例えば、上述した第1実施形態において第1カーカスプライ51と第2カーカスプライ52との間には、1つ以上の第3カーカスプライが設けられてもよい。この場合、第3カーカスプライには、導電糸が縫い込まれた第3縫込部が設けられ、第1縫込部81と第2縫込部82とが第3縫込部を介して電気的に接続されてもよい。第3カーカスプライの構成は、第1カーカスプライ51および第2カーカスプライ52と同様の構成とできる。また、第3縫込部の構成は、第1縫込部81および第2縫込部82と同様の構成とできる。
チェーファー部は、導電性を有し、複数のカーカスプライの周りの少なくとも一部を覆うならば、特に限定されない。例えば、上述した第1実施形態においては、第1チェーファー部71が、幅方向被覆部73,74のいずれか一方または両方を有していなくてもよい。第1チェーファー部71が幅方向被覆部73を有しない場合、例えば、第1チェーファー部71は、径方向被覆部72のタイヤ幅方向の外端部において第2チェーファー部29と接続される。第1チェーファー部と第2チェーファー部とは、一体成形されていてもよい。チェーファー部は、設けられなくてもよい。
カーカス層は、カーカスプライの内面に貼り付けられたインナーライナーを有してもよい。
トレッド部の構成は、トレッド部まで延びる導電部からトレッド踏面部に静電気を流すことができるならば、特に限定されない。
上述した実施形態のタイヤは、どのような車両に用いられてもよい。
なお、本明細書において説明した各構成は、相互に矛盾しない範囲内において、適宜組み合わせることができる。