JP7229140B2 - 学習装置およびプログラム、異常要因推定システム、ならびに鍛造プレス装置 - Google Patents

学習装置およびプログラム、異常要因推定システム、ならびに鍛造プレス装置 Download PDF

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Description

本発明は、学習装置およびプログラム、異常要因推定システム、ならびに鍛造プレス装置に関する。
鍛造プレス装置は、クランク軸を回転駆動してスライドを昇降動作させることにより、ワークをプレス加工する。このような鍛造プレス装置では、特開2019-13947号公報(特許文献1)に記載されているように、加工中にワークに加わる荷重を監視し、荷重のピーク値に基づいて異常を検出することが従来から行われている。荷重のピーク値が製品の良否と高い相関があることが分かっているためである。
また、特開2019-13976号公報(特許文献2)に記載されているように、プレス機の運転状況を検出する複数のセンサを利用することで、プレス機の故障を予測する技術が従来から提案されている。
特開2019-13947号公報 特開2019-13976号公報
特許文献1では、荷重のピーク値に基づいて不良品を検出することができるが、その要因(異常要因)まで特定することができない。
特許文献2では、複数のセンサから得られた計測結果の初期正常状態からの変化をモニタリングPCで確認し、過去の経験則も照らし合わせて故障を予測するため、経験の浅い作業者が故障の予測を的確に行うことは困難である。
また、多くの鍛造プレス装置では、大きさや形状の異なる金型で様々なパターンのワークを加工できることから、金型パターンを考慮した上で異常要因を推定することは極めて困難である。
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであって、その目的は、製品の異常要因を精度良く推定可能とするための学習装置およびプログラム、異常要因推定システム、ならびに鍛造プレス装置を提供することである。
この発明のある局面に従う学習装置は、鍛造プレス装置に搭載されたセンサ類によって検出されるダイハイト値、金型接触時間、および型温度を含む、複数種類の加工条件それぞれの条件特徴量と、荷重ピーク値または荷重増加傾きである荷重特徴量との相関を、金型パターンごとに機械学習して学習モデルを生成する生成手段と、生成手段により生成された学習モデルに基づいて、金型パターンごとに、荷重特徴量に対する各加工条件の重要度を解析して、金型パターンごとに、複数種類の加工条件のうち、製品の良否に関わる加工条件を推定する解析手段とを備える。
好ましくは、学習装置は、解析手段により解析された各加工条件の重要度に基づいて、金型パターンごとに、各加工条件の異常判定に用いる閾値を設定する設定手段とをさらに備える。
好ましくは、荷重特徴量は、荷重ピーク値および荷重増加傾きの両方を含み、生成手段は、荷重ピーク値および荷重増加傾きのそれぞれに対応する2つの学習モデルを生成する。
この発明のある局面に従う異常要因推定システムは、上記記載の学習装置と、鍛造プレス装置により加工される製品の異常要因を推定する推定装置とを備える。推定装置は、設定手段により設定された、金型パターンごとの各加工条件の閾値を記憶する閾値記憶手段と、製品の加工時に、各加工条件の条件特徴量と荷重特徴量とを測定する測定手段と、測定手段により測定された荷重特徴量が異常値である場合に、閾値記憶手段から製品の金型パターンに対応する各加工条件の閾値を読み出して、読み出した各加工条件の閾値と測定手段により測定された各条件特徴量とを比較する比較手段と、比較手段による比較結果に基づいて、異常要因となった加工条件を推定する推定手段とを含む。
推定装置は、推定手段による推定結果に応じて、異常要因となった加工条件に対応する制御値を修正する修正処理手段をさらに含んでいてもよい。
この発明のある局面に従う鍛造プレス装置は、金型パターンごとに、センサ類によって検出されるダイハイト値、金型接触時間、および型温度を含む、複数種類の加工条件それぞれの閾値を記憶する閾値記憶手段と、製品の加工時に、各加工条件の条件特徴量と、荷重ピーク値または荷重増加傾きである荷重特徴量とを測定する測定手段と、測定手段により測定された荷重特徴量が異常値である場合に、閾値記憶手段から製品の金型パターンに対応する各加工条件の閾値を読み出して、読み出した各加工条件の閾値と測定手段により測定された各条件特徴量とを比較する比較手段と、比較手段による比較結果に基づいて、異常要因となった加工条件を推定する推定手段とを含む。閾値記憶手段に記憶された閾値は、複数種類の加工条件それぞれの条件特徴量と荷重特徴量との相関を金型パターンごとに機械学習して生成された学習モデルに基づき、金型パターンごとに、荷重特徴量に対する各加工条件の重要度を解析することによって設定された値である。
この発明のある局面に従う学習プログラムは、鍛造プレス装置に搭載されたセンサ類によって検出されるダイハイト値、金型接触時間、および型温度を含む、複数種類の加工条件それぞれの条件特徴量と、荷重ピーク値または荷重増加傾きである荷重特徴量との相関を、金型パターンごとに機械学習して学習モデルを生成するステップと、生成された学習モデルに基づいて、金型パターンごとに、荷重特徴量に対する各加工条件の重要度を解析して、金型パターンごとに、複数種類の加工条件のうち、製品の良否に関わる加工条件を推定するステップとをコンピュータに実行させる。
本発明によれば、鍛造プレス装置により加工される製品の異常要因を、精度良く推定することが可能となる。
本発明の実施の形態に係る鍛造プレス装置の概略構成を示す図である。 本発明の実施の形態に係る鍛造プレス装置が備えるプレス機およびセンサ類を模式的に示す図である。 本発明の実施の形態に係る鍛造プレス装置によるワークの加工工程を模式的に示す図である。 (A)は、本発明の実施の形態に係る学習装置の機能構成を示すブロック図であり、(B)は、本発明の実施の形態に係る学習装置によって設定される閾値情報のデータ構造例を示す図である。 (A)は、本発明の実施の形態に係る学習装置による学習方法を示すフローチャートであり、(B)は、学習アルゴリズムの一例を模式的に示す図である。 本発明の実施の形態に係る学習装置により生成される学習モデルの評価方法を模式的に示す図である。 (A)は、学習モデルによる荷重増加傾きの推定精度を示すグラフであり、(B)は、学習モデルによる荷重ピーク値の推定精度を示すグラフである。 (A)は、荷重増加傾き推定用の学習モデルにおける重要因子の解析結果例を、2つの金型パターンを対比して示したグラフであり、(B)は、荷重ピーク値推定用の学習モデルにおける重要因子の解析結果例を、2つの金型パターンを対比して示したグラフである。 本発明の実施の形態に係る推定装置が実行する異常要因推定処理を示すフローチャートである。
本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
本実施の形態では、鍛造プレス装置が、学習装置での学習結果に基づいて、製品の異常要因を推定する機能を有しているものとして説明する。
<鍛造プレス装置の概略構成>
はじめに、図1~図3を参照して、鍛造プレス装置10の概略構成について説明する。図1に示されるように、鍛造プレス装置10は、ワークをプレス加工するプレス機11と、プレス機11の運転を制御するPCL(プログラマブル・ロジック・コントローラ)40とを備える。
図2に示されるように、プレス機11は、フレーム3内の上下に対向するように設けられたスライド1およびボルスタ2を備えている。プレス機11は、クランク軸4を回転駆動させることにより、コンロッド5に連結されたスライド1が昇降動作するように構成されている。
クランク軸4の一端側には、メインモータ6でベルト7によって回転駆動されるフライホイール8が、クラッチ9を介して接続されている。クランク軸4の他端側には、クランク軸4の回転を止めてスライド1を停止させるブレーキ装置12が取り付けられている。プレス機11は、メインモータ6でフライホイール8を一定速度で回転駆動し、クラッチ9を入りとして、フライホイール8の回転をクランク軸4に伝達することによってスライド1を昇降させて、ボルスタ2上に載置されたワークを鍛造する。ワークは、ボルスタ2上に設置された下型(図示せず)とスライド1の下端に設置された上型(図示せず)とを含む金型のパターンに応じた大きさおよび形状に加工され、最終製品となる。なお、「金型」とは、鍛造に使用される型を意味する。金型は、典型的には特殊鋼により形成される。
本実施の形態における鍛造プレス装置10は、熱間鍛造によりワークを加工する装置である。鍛造プレス装置10は、プレス機11の運転状況を検出するために、以下に示すような複数のセンサ類を備えている。
・荷重センサ20:ワークに加わる荷重を検知する。たとえば、フレーム3の歪みを検出する歪みゲージで構成される。
・角度センサ21:クランク軸4の回転角度(プレス角度)を検出することによって、スライド1の位置、および、スライド1の速度(ストローク)を検知する。
・ブレーキ弛み圧センサ22:ブレーキ装置12の弛み圧を検出する。
・クラッチ圧センサ23:クラッチ9の圧力を検出する。
・クラッチタンク圧センサ24:クラッチ9を駆動する作動油の圧力を検出する。
・ブレーキタンク圧センサ25:ブレーキ装置12の冷却水の圧力を検出する。
・冷却水流量センサ26:ブレーキ装置12の冷却水の流量を検出する。
・BKO位置変位センサ27:プレス機11の下ノックアウト装置の位置(BKO位置)を検出する。
・SKO位置変位センサ28:上ノックアウト装置の位置(SKO位置)を検出する。
・測温抵抗体29:プレス機11の各部温度を検出する。
・潤滑油流量センサ30:金型を潤滑する潤滑油の流量を検出する。
・エアブロー圧力センサ31:プレス機11に供給される高圧エアの圧力を検出する。
・材料温度センサ32:プレス機11に供給される材料の温度を検出する。
・ダイハイト変位センサ33:プレス機11のダイハイト(ボルスタ2とスライド1の下死点位置との間隔)を検出する。
・型温度センサ34:ワークを載置している金型(下型)の温度を検出する。
図3に示されるように、鍛造プレス装置10は、搬送装置13およびヒータ14をさらに備えている。搬送装置13は、たとえばベルトコンベアにより構成され、ワークWを、前工程からプレス機11(ボルスタ2の位置)まで搬送する。ヒータ14は、プレス機11よりも上流側に配置され、搬送装置13で搬送途中のワークWの硬化を防止するために設けられている。ヒータ14は、たとえばトンネル炉により構成されている。
上記した材料温度センサ32は、ヒータ14を通過直後のワークW(ヒータ14の出口付近のワークW)の温度を検知する。同様に、型温度センサ34は、ヒータ14を通過直後のワークWを載置している金型(下型)の温度を検知する。なお、鍛造プレス装置10は、上記したセンサ類の他、ワークWがヒータ14の出口からプレス位置に到達するまでに要した時間(ヒータ出口-プレス時間)を検出するタイマ(図示せず)、および、プレス位置に位置するワークWが金型に接触する時間(金型接触時間)を検出するタイマ(図示せず)がさらに設けられていることが望ましい。また、ヒータ14の出口付近においてワークWの有無を検知するワーク有無センサ(図示せず)がさらに設けられていてもよい。
ここで、図1に示されるように、鍛造プレス装置10は、プレス機11により加工される製品の異常要因を推定する推定装置41をさらに備えている。推定装置41は、PLC40を介して、またはPLC40を介することなく、複数のセンサ類からの検出信号を取得する。PLC40と推定装置41とは有線または無線にて接続されている。推定装置41は、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサとメモリを含むコンピュータにより実現される。なお、本実施の形態では、PLC40と推定装置41とが別個に設けられた例を示しているが、限定的ではなく、PLC40が、後述するような推定装置41の機能を有していてもよい。
<推定装置の機能構成>
図1を参照して、推定装置41の機能構成について説明する。推定装置41は、ワークWの加工時に検出された荷重の特徴量(以下「荷重特徴量」という)が、異常値であるか否かを判定する異常判定部401と、荷重特徴量が異常値である場合に異常要因を推定する推定部402と、推定部402による推定結果を出力する出力部403とを含む。
なお、異常判定部401および推定部402の機能は、CPUなどのプロセッサがソフトウェアを実行することにより実現される。後述する記憶部404は、不揮発性のメモリ、または、コンピュータに対して着脱可能な記録媒体により実現される。
荷重特徴量は、荷重センサ20からの検知信号(荷重データ)に基づいて算出可能な指標であり、荷重ピーク値または荷重増加傾きを含む。上述のように、荷重ピーク値が製品の良否と高い相関があることは周知である。荷重増加傾きが製品の良否と高い相関があることは、出願人が行った実験結果から判明している。そのため、荷重ピーク値と荷重増加傾きとの両方を監視することで、製品の良否の推定精度を高めることが可能であると考えられる。なお、本実施の形態においては、理解の容易の観点から、荷重特徴量がたとえば荷重増加傾きであると仮定する。つまり、異常判定部401は、荷重増加傾きが異常値であるか否かを判定する。
推定部402は、異常判定部401により荷重特徴量が異常値であると判定された場合に、複数種類の加工条件のうち、どの加工条件が異常要因であるかを推定する。言い換えると、異常要因となった加工条件を推定する。
複数種類の加工条件とは、上述のセンサ類によって検出(測定)可能な条件であり、ダイハイト値、スライド速度、金型接触時間、材料温度、型温度、ヒータ出口-プレス時間(以下「搬送時間」という)、などを含む。鍛造プレス装置10の作動中、PLC40は、プレスサイクルごとに、これらの加工条件の特徴量が目標値となるように制御している。これにより、理想的には、良品が製造される。
出力部403は、PLC40を介して、またはPLC40を介することなく、たとえばモニタリングPC42に推定結果を出力する。あるいは、ネットワークを介して外部の保守端末等に推定結果を送信してもよい。
異常判定部401および推定部402は、記憶部404に予め記憶された閾値情報412を参照する。閾値情報412は、実測した荷重特徴量と比較するための第1の閾値データと、実測した各加工条件の特徴量(条件特徴量)と比較するための第2の閾値データとを含む。
第1の閾値データは、金型パターンごとに定められている。金型パターンによって、荷重特徴量は変化するためである。同様に、第2の閾値データも、金型パターンごとに定められている。各加工条件の閾値を金型パターンごとに閾値を定めている理由は、金型パターンによって、各加工条件の特徴量とその制御目標値(正常値)との差の大きさが荷重特徴量に与える影響度が、異なるからである。つまり、ある加工条件の特徴量が大きく正常値と異なっていても、ある金型パターンには影響が小さい可能性があるからである。
本実施の形態では、閾値情報412は、学習装置100による事前の機械学習に従って定められている。具体的には、学習装置100が、機械学習によって金型パターンごとに荷重特徴量に対する各加工条件の重要度を解析し、その解析結果に基づいて各加工条件の異常判定に用いる閾値を設定している。本実施の形態では、推定装置41および学習装置100によって、異常要因推定システムSYSが構成されている。以下に、学習装置100について、詳細に説明する。
<学習装置の機能構成>
図4(A)は、本実施の形態に係る学習装置100の機能構成を示すブロック図である。学習装置100は、モデル生成部101と、解析部104と、設定部105と、出力部106と、プレスデータ記憶部102と、モデル記憶部103とを含む。学習装置100は、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサおよびメモリを含むコンピュータにより実現される。
(モデル生成部)
モデル生成部101は、プレス機11によるプレスサイクルごとにプレス履歴データを生成し、生成したプレス履歴データ1,2,・・・,nをプレスデータ記憶部102に記憶する。各プレス履歴データ(k)は、ワーク識別情報と、荷重特徴量と、複数種類の加工条件の特徴量とを含む。ワーク識別情報は、ワークWに固有の情報であり、ワークWの金型パターンを含む。金型パターンは、たとえば、品番、ワークパターン、および投影面積のうちの少なくとも一つにより特定される。複数種類の加工条件は、上述のように、鍛造プレス装置10が備えるセンサ類(タイマを含む)により検出可能な条件であり、ダイハイト値、スライド速度、金型接触時間、材料温度、型温度、搬送時間、などを含む。
モデル生成部101が実行する処理については、図5(A)を参照して説明する。モデル生成部101は、まず、鍛造プレス装置10が備えるセンサ類からの信号を入力し、複数の加工条件および荷重値それぞれの測定データを、一次データとして採取する(ステップS1)。一次データはプレスサイクルごとに採取されるため、複数の一次データファイルが一次データ記憶部に記憶される。各一次データファイルには、金型パターンを含むワーク識別情報も記録される。
次に、採取した一次データのデータ形式を、機械学習に適した形式に変換する(ステップS2)。すなわち、一次データからノイズ除去やパルス抽出等の前処理を行い、前処理後の中間データから特徴量を抽出し、二次データに変換する。プレスデータ記憶部102に記憶されるプレス履歴データは、二次データに相当する。
たとえば、荷重特徴量としての荷重増加傾きは、一次データとして記録された荷重値に基づく成形荷重曲線の立ち上がり位置とピーク位置の2点を通る一次式の傾きとして算出される。また、加工条件の特徴量の一つであるスライド速度は、一次データとして記録されたプレス角度から算出されるスライド速度を、所定時間ごとの平均値からなる特徴ベクトルに加工することによって得られる。
二次データとしてのプレス履歴データが蓄積されると、モデル生成部101は、モデルの学習を実行する(ステップS3)。モデルの機械学習アルゴリズムとしては、公知のアルゴリズム、たとえばランダムフォレストが用いられる。ランダムフォレストは、汎用的な機械学習アルゴリズムである。このアルゴリズムを利用することで、後述するように、学習したデータ項目(加工条件)の重要度を把握することができる。
ランダムフォレストによるモデルの学習においては、図5(B)に概念的に示されるように、二次データである各プレスサイクルの条件特徴量データと、荷重特徴量データ(目的量データ)とをモデルに学習させる。これにより、複数種類の加工条件それぞれの条件特徴量と荷重特徴量との相関を示す学習モデル111が生成される。
本実施の形態におけるモデル生成部101は、上述のように、金型パターンごとに、複数種類の加工条件それぞれの条件特徴量と荷重特徴量との相関を機械学習して、学習モデル111を生成している。そのため、学習モデル111によって、金型パターンごとの条件特徴量と荷重特徴量との相関を知ることができる。たとえば、学習モデル111に、金型パターン(パターン識別情報)および複数種類の条件特徴量を入力することで、その金型パターンに対応する荷重特徴量を出力とすることができる。
上記学習方法で生成された学習モデル111が、モデル記憶部103に記憶される。モデル記憶部103は、不揮発性の記憶装置である。学習モデル111による荷重特徴量の推定精度の評価結果が図7に示されている。図7(A)のグラフは、荷重増加傾きの推定精度を示している。荷重増加傾きの範囲が200~300トン程度の場合の平均誤差は約7.3トン[0.01MN]であり、比較的高い推定精度を示している。学習モデル111の対象データを増やすことで、推定精度をより高めることができる。
図7(B)のグラフは、荷重ピーク値の推定精度を示している。荷重ピーク値の範囲が1700~2200トン程度の場合の平均誤差は約37.1トン[0.01MN]であり、この場合も比較的高い推定精度を示している。
学習モデル111の評価は、図6に示されるように、10分割交差検定により行われる。10分割交差検定では、条件特徴量(x,・・・,x)と荷重特徴量とを含む複数のプレス履歴データ(二次データ)のうちの9割を用いてモデルを学習し、残りの1割で性能テストを行う。学習用データとテスト用データの組み合わせを変えて、テストを10回繰り返す。このように評価を行うことで、テスト用データの選び方によらず、正確に評価を行うことができる。
(解析部)
図5(A)を参照して、解析部104は、モデル生成部101により生成された学習モデル111に基づいて、金型パターンごとに、荷重特徴量に対する各加工条件の重要度を解析して、複数種類の加工条件のうち、製品の良否に関わる加工条件を推定する(ステップS4)。荷重特徴量に対する各加工条件の重要度の解析結果例を、図8に示す。図8の各グラフでは、重要度を降順で並べ、重要度が上位の加工条件のみを示している。各加工条件の重要度は、全ての加工条件の重要度を足し合わせると1となるように計算された値(1未満の値)である。
図8(A)は、荷重増加傾き推定用の学習モデルにおける重要な因子(加工条件)の解析結果例を、2つの金型パターンを対比して示している。この解析結果から、解析部104は、パターン1において製品の良否に関わる加工条件は、上から、金型接触時間、型温度、スライド速度、の順であると推定できる。また、パターン2において製品の良否に関わる加工条件は、上から、金型接触時間、ダイハイト値、スライド速度、の順であると推定できる。図8(A)に示す解析結果の場合、パターン1,2ともに、金型接触時間が荷重増加傾きに最も影響を与える加工条件(つまり、製品の良否に関わる加工条件)であるものの、その次に影響を与える加工条件が、パターン1,2で異なっていることが分かる。
図8(B)は、荷重ピーク値推定用の学習モデルにおける重要な因子(加工条件)の解析結果例を、2つの金型パターンを対比して示している。学習モデルの目的量である荷重特徴量が荷重ピーク値である場合、解析部104は、この解析結果から、パターン1において製品の良否に関わる加工条件は、上から、型温度、金型接触時間、ダイハイト値、の順であると推定できる。また、パターン2において製品の良否に関わる加工条件は、上から、ダイハイト値、材料温度、スライド加速度、の順であると推定できる。図8(B)に示す解析結果の場合、荷重増加傾きに最も影響を与える加工条件(つまり、製品の良否に関わる加工条件)が、パターン1,2で異なっていることが分かる。
解析部104は、このように、機械学習により生成された学習モデル111に基づいて、荷重特徴量に対する各加工条件の重要度をAI解析するため、機械学習のデータが増えれば増えるほど、製品の良否に関わる加工条件の推定精度を向上させることができる。
なお、図8(A),(B)の解析結果から、金型パターンが同じであっても、目的値である荷重特徴量が、荷重増加傾きか荷重ピーク値かによって、重要な因子が異なる場合があることも読み取れる。そのため、荷重増加傾きおよび荷重ピーク値それぞれに対して学習モデル111を生成することが望ましい。
また、図8(A),(B)では、多数の金型パターンのうちのほんの一部の解析結果例を示したものであるが、少なくとも、これらの解析結果において上位に入ったダイハイト値、金型接触時間、および型温度は、学習対象の加工条件に含まれるべきと考えられる。
(設定部)
設定部105は、解析部104により解析された各加工条件の重要度に基づいて、金型パターンごとに、各加工条件の異常判定に用いる閾値を設定する。なお、設定部105は、学習モデル111に基づいて、荷重特徴量の異常判定に用いる閾値の設定も行う。設定部105により設定された閾値情報112が、モデル記憶部103に記憶される。
閾値情報112のデータ構造例が図4(B)に示される。図4(B)を参照して、閾値情報112は、たとえばテーブル形式となっており、荷重特徴量および複数種類の加工条件それぞれの閾値が、金型パターンごとに記録されている。この閾値情報112が、推定装置41の記憶部404に記憶された閾値情報412に相当する。具体的には、データテーブルの荷重特徴量のカラムに記録された金型パターンごとの閾値(VT01,VT02,・・・)が、閾値情報412において説明した第1の閾値データに相当し、データテーブルの加工条件のカラムに記録された金型パターンごとに閾値(VT11,VT12,・・・,VT21,VT22,・・・・)が、閾値情報412において説明した第2の閾値データに相当する。
設定部105のよる閾値の設定(算出)方法は、たとえば次の通りである。設定部105は、各加工条件につき、正常値(制御値)と所定の差を有する暫定閾値に、金型パターンごとに解析された重要度を重み付けして、閾値を算出する。これにより、同じ加工条件であっても、金型パターンに応じて異なる閾値が設定される。
設定部105は、解析部104による解析処理の度に、閾値を更新する。そのため、機械学習のデータが増えれば増えるほど、閾値を用いた異常要因の推定精度が向上する。以下に、このようにして設定された閾値情報412(112)を用いた異常要因推定方法について、具体的に説明する。
<異常要因推定方法>
図9は、推定装置41が実行する異常要因推定処理を示すフローチャートである。図9に示される異常要因推定処理は、プレスサイクルごとに実行される。
はじめに、異常判定部401は、加工対象のワークのワーク識別情報を取得し、ワークの金型パターンを特定する(ステップS11)。続いて、鍛造プレス装置10のセンサ類からの検出信号に基づいて、各加工条件の条件特徴量と荷重特徴量とを測定(算出)する(ステップS13)。
次に、異常判定部401は、ステップS13で測定された荷重特徴量が、正常範囲内か否かを判定する(ステップS15)。これにより、ワークの加工が正常に行われたか否かが判定(推定)される。具体的には、異常判定部401は、記憶部404に記憶された閾値情報412(112)の荷重特徴量のカラムから、ステップS11で特定された金型パターンに対応する閾値を読み出し、実測した荷重特徴量と読み出した閾値とを比較する。
荷重増加傾きが正常範囲外であれば(ステップS15にてNO)、すなわち実測した荷重特徴量が読み出した閾値を超えていれば、異常(プレス不良)と推定し、ステップS17に進む。荷重増加傾きが正常範囲内であれば(ステップS15にてYES)、すなわち実測した荷重特徴量が読み出した閾値以下であれば、異常判定処理を終了する。
ステップS17において、推定部402は、記憶部404に記憶された閾値情報412(112)の複数種類の加工条件のカラムから、ステップS11で特定された金型パターンに対応する閾値を読み出す。つまり、製品の金型パターンに対応する各加工条件の閾値を読み出す。そして、推定部402は、各加工条件について、ステップS13で測定された条件特徴量と、ステップS17で読み出した閾値とを比較する(ステップS19)。
推定部402は、ステップS19での比較結果に基づいて、異常要因となった加工条件を推定する(ステップS21)。具体的には、条件特徴量が閾値を超えている加工条件が、異常要因として推定する。
異常要因が推定されると、出力部403によって推定結果が出力される(ステップS23)。これにより、ユーザは、異常要因と推定された加工条件を把握することができる。これにより、その加工条件の改善など、適切な対処を行うことができる。
以上説明したように、本実施の形態によれば、学習装置100によって、金型パターンごとに、荷重特徴量に対する各加工条件の重要度をAI解析し、その解析結果を利用して異常要因(加工条件)を推定するため、異常要因の推定精度を高めることができる。
なお、本実施の形態のように、鍛造プレス装置10が推定装置41を備える場合、鍛造プレス装置10が、推定装置41の各部を備えているとみなしてもよい。つまり、鍛造プレス装置10が、異常判定部401、推定部402、および、閾値情報412を記憶した記憶部404などを含んでいるとみなすことができる。
<変形例>
本実施の形態に係る推定装置41は、鍛造プレス装置10の稼働中に、荷重特徴量が異常と判定された場合に、出力部403によって異常要因の推定結果が出力されることとしたが、限定的ではない。たとえば、異常要因の推定結果をPLC40にフィードバックし、異常要因と推定された加工条件の制御値を修正することとしてもよい。その場合、図1において想像線で示すように、推定装置41は、異常要因と推定された加工条件に対応する制御値を修正する修正処理部405を備えていてもよい。
本実施の形態では、推定装置41の記憶部404には、予め閾値情報412が記憶されることとしたが、学習装置100による機械学習に応じて、閾値情報412が更新されてもよい。あるいは、推定装置41が学習装置100の機能を有していてもよい。
あるいは、本実施の形態では、鍛造プレス装置10が推定装置41を備えることとしたが、限定的ではなく、推定装置41はオフラインで異常要因を推定してもよい。
なお、学習装置100により実行される学習方法を、プログラムとして提供することもできる。同様に、推定装置41により実行される異常要因推定方法を、プログラムとして提供することもできる。このようなプログラムは、CD-ROM(Compact Disc-ROM)などの光学媒体や、メモリカードなどのコンピュータ読取り可能な一時的でない(non-transitory)記録媒体にて記録させて提供することができる。また、ネットワークを介したダウンロードによって、プログラムを提供することもできる。
本発明にかかるプログラムは、コンピュータのオペレーティングシステム(OS)の一部として提供されるプログラムモジュールのうち、必要なモジュールを所定の配列で所定のタイミングで呼出して処理を実行させるものであってもよい。その場合、プログラム自体には上記モジュールが含まれずOSと協働して処理が実行される。このようなモジュールを含まないプログラムも、本発明にかかるプログラムに含まれ得る。
また、本発明にかかるプログラムは他のプログラムの一部に組込まれて提供されるものであってもよい。その場合にも、プログラム自体には上記他のプログラムに含まれるモジュールが含まれず、他のプログラムと協働して処理が実行される。このような他のプログラムに組込まれたプログラムも、本発明にかかるプログラムに含まれ得る。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
10 鍛造プレス装置、11 プレス機、20~34 センサ類、41 推定装置、100 学習装置、101 モデル生成部、102 プレスデータ記憶部、103 モデル記憶部、104 解析部、105 設定部、106,403 出力部、111 学習モデル、112,412 閾値情報、401 異常判定部、402 推定部、404 記憶部、405 修正処理部、SYS 異常要因推定システム、W ワーク。

Claims (7)

  1. 鍛造プレス装置に搭載されたセンサ類によって検出されるダイハイト値、金型接触時間、および型温度を含む、複数種類の加工条件それぞれの条件特徴量と、荷重ピーク値または荷重増加傾きである荷重特徴量との相関を、金型パターンごとに機械学習して学習モデルを生成する生成手段と、
    前記生成手段で用いた機械学習アルゴリズムを利用して前記学習モデルを解析することにより、金型パターンごとに、荷重特徴量に対する各加工条件の重要度を算出する解析手段とを備える、学習装置。
  2. 前記解析手段により算出された各加工条件の重要度に基づいて、金型パターンごとに、各加工条件の異常判定に用いる閾値を設定する設定手段さらに備える、請求項1に記載の学習装置。
  3. 前記荷重特徴量は、荷重ピーク値および荷重増加傾きの両方を含み、
    前記生成手段は、荷重ピーク値および荷重増加傾きのそれぞれに対応する2つの学習モデルを生成する、請求項1または2に記載の学習装置
  4. 請求項2に記載の学習装置と、鍛造プレス装置により加工される製品の異常要因を推定する推定装置とを備えた異常要因推定システムであって、
    前記推定装置は、
    荷重特徴量の異常判定に用いる第1の閾値を金型パターンごとに記憶するとともに、前記設定手段により設定された、金型パターンごとの各加工条件の異常判定に用いる前記閾値を第2の閾値として記憶する閾値記憶手段と、
    製品の加工時に、プレスサイクルごとに、金型パターンを特定する特定手段と、
    プレスサイクルごとに、各加工条件の条件特徴量と荷重特徴量とを測定する測定手段と、
    前記測定手段により測定された荷重特徴量が前記特定手段により特定された金型パターンに対応する前記第1の閾値を越えた場合に、前記特定手段により特定された金型パターンに対応する各加工条件の前記第2の値と前記測定手段により測定された各条件特徴量とを比較する比較手段と、
    前記比較手段による比較結果に基づいて、異常要因となった加工条件を推定する推定手段とを含む、異常要因推定システム。
  5. 前記推定装置は、前記推定手段による推定結果に応じて、異常要因となった加工条件に対応する制御値を修正する修正処理手段をさらに含む、請求項4に記載の異常要因推定システム。
  6. 金型パターンごとに、荷重ピーク値または荷重増加傾きである荷重特徴量の異常判定に用いる第1の閾値と、センサ類によって検出されるダイハイト値、金型接触時間、および型温度を含む、複数種類の加工条件それぞれの異常判定に用いる第2の閾値を記憶する閾値記憶手段と、
    製品の加工時に、プレスサイクルごとに、金型パターンを特定する特定手段と、
    プレスサイクルごとに、各加工条件の条件特徴量と荷重特徴量とを測定する測定手段と、
    前記測定手段により測定された荷重特徴量が前記特定手段により特定された金型パターンに対応する前記第1の閾値を越えた場合に、前記特定手段により特定された金型パターンに対応する各加工条件の前記第2の閾値前記測定手段により測定された各条件特徴量とを比較する比較手段と、
    前記比較手段による比較結果に基づいて、異常要因となった加工条件を推定する推定手段とを含み、
    前記閾値記憶手段に記憶された前記第2の閾値は、前記複数種類の加工条件それぞれの条件特徴量と荷重特徴量との相関を金型パターンごとに機械学習して生成された学習モデルを解析することにより、金型パターンごとに、荷重特徴量に対する各加工条件の重要度を算出することによって設定された値である、鍛造プレス装置。
  7. 鍛造プレス装置に搭載されたセンサ類によって検出されるダイハイト値、金型接触時間、および型温度を含む、複数種類の加工条件それぞれの条件特徴量と、荷重ピーク値または荷重増加傾きである荷重特徴量との相関を、金型パターンごとに機械学習して学習モデルを生成するステップと、
    前記生成するステップで用いた機械学習アルゴリズムを利用して前記学習モデルを解析することにより、金型パターンごとに、荷重特徴量に対する各加工条件の重要度を算出するステップとをコンピュータに実行させる、学習プログラム。
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