JP7228653B2 - 嫌気性消化槽の立ち上げ方法及び嫌気性消化システム - Google Patents

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Description

本発明は、嫌気性消化槽の立ち上げ方法及び嫌気性消化システムに関する。
嫌気性消化処理は下水処理場の水処理設備などで発生する下水汚泥や有機性排水を嫌気性微生物の代謝作用により分解し汚泥や排水を減容化するとともに分解過程で発生するメタンガスを回収し再利用資源として活用できる処理であり従来から広く利用されている。
嫌気性消化処理の分解過程は嫌気性微生物である酸生成菌とメタン生成細菌の働きにより汚泥中の有機分をガス化することで行われ、酸性発酵期、酸性減退期およびアルカリ性発酵期の分解過程を経て行われる。そのため、消化槽内に投入される下水汚泥や有機性排水の量に見合った嫌気性微生物を消化槽内に保持することが重要であるとともに、酸生成菌に比べ、pH、有機酸濃度および温度変動に敏感で増殖速度も遅いメタン生成細菌の生育に適した最適条件を保持し有機分の分解過程のバランスを保つことが重要である。
嫌気性消化を行う消化槽の立ち上げには、まずタンク内に水を満たし、配管系統の気密試験を行う。その後、可能であれば消化槽内に嫌気性微生物を含む汚泥(種汚泥)を投入し、消化処理対象となる原汚泥を投入する。原汚泥の投入量を徐々に増加させ、嫌気性微生物を消化槽内で十分に増殖させて馴致させる。通常は、種汚泥を投入してから50~60日で定常運転が可能であることが知られている(例えば、非特許文献1参照)。
原汚泥投入開始前に種汚泥を当該消化槽内へ投入することは、消化処理に必要な活性化された嫌気性微生物を立ち上げ当初より消化槽内へ入れることになるため、種汚泥投入量が多いほど馴致にかかる時間が短縮できる。しかしながら、消化槽内を事前に種汚泥のみで満たすことは必要量確保の観点から難しい場合が多く、消化槽容量の1/2以下にとどまる場合が一般的には多い。
消化能力は消化槽中の嫌気性微生物の保持量すなわち消化槽中の汚泥濃度に比例する。原汚泥の投入開始当初は消化槽中の汚泥濃度が定常運転時より低く消化能力が低いため投入原汚泥量を抑える必要があり、一般的には消化汚泥中の固形物量の5%以下である。原汚泥投入を継続することで消化槽中の汚泥濃度も徐々に上昇し、原汚泥の投入量増加が可能となる。
嫌気性消化は消化汚泥中の嫌気性微生物の保持量とともにアルカリ分の保持量も重要な因子となる。消化汚泥中のアルカリ分は一般的に総アルカリ度を指標としており、嫌気性消化における有機物分解過程で生成される有機酸等による過度なpH低下を抑制する緩衝作用によりメタン生成細菌の生育に適した最適pHの保持が可能となる。
投入開始当初は消化汚泥中の総アルカリ度が定常運転より低く、pHの緩衝能力が低いため、原汚泥投入量増加による有機酸蓄積によりpH低下が発生し易い状況であり、消化槽中の汚泥濃度とともにアルカリ分の濃度を上昇させることで原汚泥の投入量増加が可能となる。
近年、消化槽の立ち上げ期間を短縮する試みがなされている。特許第4819757号公報では、嫌気性消化槽に種汚泥を投入した後、消化槽中の汚泥の一部を抜き出し、抜き出した汚泥を脱水処理して脱水汚泥を得て、この脱水汚泥を消化槽に返送することが記載されている。これによれば、少量の種汚泥でも嫌気性消化システムを短時間で立ち上げることができると記載されている。
特許第4819757号公報
公益社団法人日本下水道協会、「下水道維持管理指針 実務編-2014年版」、平成26年9月12日発行、p.832-834
しかしながら、非特許文献1の方法では、消化槽の立ち上げ処理開始後、50~60日程度の馴致期間が必要で、消化槽の立ち上げ期間全体としては半年~1年となるため、非常に長期間を要する。一般に、消化槽の運用に必要な加温は、消化槽より発生するメタンガスをエネルギーとして行われているが、メタンガスの回収・利用が困難な立ち上げ期間中は、別途燃料が必要であるため費用もかかる。また、立ち上げ初期の馴致期間においては、消化槽内に満たされた水に少量の原汚泥が混合された脱水困難な汚泥濃度を有する排水が、槽外へ流出又は引き抜かれる。その間、引き抜かれた排水を水処理設備にて処理し、水処理設備で処理されて得られた汚泥を返送することになるが、水処理設備への負荷が消化槽の立ち上げ期間中に著しく上昇するという問題もある。よって立ち上げ期間は出来るだけ短期に行うことが望ましい。
特許文献1に記載された発明は、消化槽から引き抜かれた汚泥を、遠心脱水機、スクリュープレス脱水機、ロータリープレス脱水機などの汚泥処理手法の一つである汚泥脱水より水分含量85質量%以下の脱水汚泥にし、この脱水汚泥を消化槽に再投入することで、早期立ち上げを実現している。
脱水汚泥とは一般的に、固形物として扱うことができる程度まで脱水された汚泥のことで、脱水ケーキともいう。通常含水率85%以下のものをいう。
しかしながら、特許文献1に記載されるような脱水汚泥を、ポンプや配管等を用いて消化槽へ圧送しようとすると、高い動力が必要となると共に配管又はポンプの詰まりが頻繁に生じる。即ち、特許文献1に記載される脱水汚泥の消化槽へのポンプによる配管圧送は現実には困難である。脱水汚泥を消化槽へ返送するためには、ベルトコンベヤ等の搬送機が別途必要となり、装置が大型化する。また、脱水汚泥を当該消化槽へ移送する為に別途設置した搬送機は、当該消化槽の立ち上げ時のみ使用可能であり、汎用性は乏しい。
現在稼働中の一般的な水処理設備は、消化設備と汚泥脱水設備が遠く離れた位置に配備されている場合が多い。脱水設備は汚泥脱水を行うための脱水機、脱水機から排出される脱水汚泥を搬送する搬送機、及び搬送された汚泥を貯留する為のホッパ等により構成されている。また、脱水設備は屋内に構成されることが多く、搬送機による汚泥移送の観点から1階高所又は中階以上に脱水機が設置されることが多い。更に作業環境への配慮の観点から、防臭対策として脱水機からホッパまでの搬送路をカバー等で閉塞空間とする場合もある。
そのため、特許文献1に記載の技術を、既存の水処理設備に応用すると、脱水設備から遠く離れた消化設備への汚泥の搬送のために、搬送車を配備するか、大型の搬送設備を仮設しなければならず、搬送費用もかかる。また、建屋内高所より屋外の当該消化槽へ移送する必要があり、閉塞された搬送路から脱水汚泥を取り出す必要があるため、現実には困難である。
更に、特許文献1に記載された発明では、消化槽から抜き出した汚泥を脱水処理して汚泥中の多量の水分を排出させることで、水分とともに汚泥中のアルカリ分も失われる。脱水処理によりアルカリ分が失われた汚泥を消化槽へ返送することで固形分濃度(TS濃度)は上昇するが、アルカリ分は増加しない状況となる。嫌気性消化処理は消化汚泥のTS濃度に見合ったアルカリ分を保持することで、有機酸濃度が上昇してもアルカリ分の緩衝作用により消化反応に最適な中性付近のpHを保持することが可能であるが、TS濃度に対応したアルカリ分が不足する場合は消化反応に最適な中性付近のpH保持が難しくなる。
更に、消化反応が不安定になり易い立ち上げ期間は有機酸が蓄積し易い傾向があり、TS濃度に見合ったアルカリ分を保持されていない場合はより消化反応に最適な中性付近のpH保持が難しくなる。脱水汚泥を混合させた上で安定した消化反応を進行させるには、消化槽へアルカリ剤を添加する必要が生じる場合がある。
アルカリ分の量はこれに対応する炭酸カルシウム(CaCo3)の濃度で表し、一般的にはpH4.8までの酸素消費量である総アルカリ度で測定される。汚泥中の総アルカリ度は汚泥濃度により異なり、TS濃度が2%程度で2500~2700mg‐CaCO3/L程度、3%程度で3900~4100mg‐CaCO3/L程度となる。
更に、特許文献1に記載された発明のように、嫌気性消化汚泥を含水率85%以下の脱水汚泥にするためには、有機性高分子凝集剤が用いられることが一般的であり、脱水の対象となる汚泥の性状により異なる。例えば、地方共同法人 日本下水道事業団、機械設備標準仕様書 平成28年度、平成28年6月1日発行、P.12-15、12-16、12-23、12-44(参考文献1)によれば、添加量は対象となる汚泥中に含まれる固形物量に対して概ね1.1~2.1%が目標値とするのが一般的であるが、実施設においては脱水汚泥の目標含水率を達成させるために、2.0%以上の注入率とする場合も多く見られる。また、環境技術学会、月刊誌「環境技術」2004年8月号、研究論文「下水処理余剰汚泥の嫌気性消化に及ぼす高分子凝集剤の影響」、P.631~638(参考文献2)の報告では、有機系高分子凝集剤の添加量が汚泥中に含まれる固形物量に対して1%以下では影響はないが、1%以上で消化阻害の懸念があり、2~3%以上で消化阻害が発生すると記載されており、特許文献1に記載の技術でも同様の消化阻害を惹き起こす可能性がある。
更に、脱水汚泥を消化槽に返送する場合、消化汚泥中へ脱水汚泥を分散させる必要がある。脱水汚泥は前述の通り固形物に近い性状となるため、そのまま当該消化槽に投入しても槽内で十分に再溶解されない懸念がある。
更に、参考文献2によれば有機系高分子凝集剤による阻害は嫌気系消化細菌の活性阻害であると記載されており、再溶解されなければ局所的に有機系高分子凝集剤量が高くなり、機能しなくなる懸念がある。
近年では汚泥処理容量の削減等を目的として嫌気性消化処理の原汚泥にあらかじめ有機系高分子凝集剤を添加し、濃縮させて消化させる方式が一般化してきており、更に立ち上げ時の有機系高分子凝集剤による消化阻害のリスクが大きくなる。
更に近年の消化処理における消化槽においては、ガスの噴流により槽内汚泥を流動させるガス撹拌、及び大型の撹拌羽根を用いた低速撹拌等のケーキ上のものを破砕・分散することが難しい撹拌方式が主流となっており、脱水汚泥を当該消化槽に返送しても槽内で十分に再溶解されない懸念が高まるため、脱水汚泥を溶解又は破砕する設備が別途必要となる場合がある。
上記課題を鑑み、本発明は、消化槽の早期かつ安定的に立ち上げる方法を提供すると共に、立ち上げに関わる作業の簡便性及び円滑な立ち上げ性も併せ持つ嫌気性消化システムを提供する。
上記目的を達成するために、本発明者らが鋭意検討したところ、消化槽の前段に濃縮機構を配置し、濃縮機構において通常消化槽へ投入される汚泥より高い濃度へ濃縮処理された濃縮汚泥を消化槽へ投入することが有効な手段の1つであることを見いだした。
以上の知見を基礎として完成した本発明の一側面において、処理フローの前段に濃縮機構が配置された消化槽に水及び/又は種汚泥を投入することと、種汚泥と原汚泥とを濃縮し、濃縮汚泥を得ることと、濃縮汚泥を消化槽に投入することと、消化槽への濃縮汚泥の投入量を増加させることとを含む嫌気性消化槽の立ち上げ方法が提供される。
本発明において「処理フローの前段に濃縮機構が配置された消化槽に水及び/又は種汚泥を投入する」工程は、一般的に行われる立ち上げ初期の手順であり、その詳細は特に限定されるものではない。即ち、「処理フローの前段に濃縮機構が配置された消化槽に水及び/又は種汚泥を投入する」工程には、消化槽に水又は種汚泥を単独又は両方投入した後に、消化槽内を嫌気状態とし、必要に応じて加温するような立ち上げ初期に当業者が適宜行い得る工程を包含するものである。
本発明における「濃縮機構」とは、汚泥処理手法の一つである低濃度の汚泥を固液分離によりTS濃度を数~十数wt%程度まで高め、消化や脱水プロセスを効果的に機能させるための汚泥濃縮を行い、濃縮汚泥を排出する装置又は設備を指す。
本方法によれば、消化汚泥のアルカリ分は有機物の分解過程で生成されるため、有機分が分解される前の原汚泥を濃縮することで消化槽中の汚泥が保持するアルカリ分を失わずに安定的かつ期間短縮を両立した立ち上げ方法を提供することができる。
本発明は別の一側面において、処理フローの前段に濃縮機構が配置された消化槽に水及び/又は種汚泥を投入することと、原汚泥を濃縮し、濃縮汚泥を得ることと、前記濃縮汚泥を前記消化槽に投入することと、前記消化槽内の汚泥の一部を引き抜いて引抜汚泥を得ることと、前記引抜汚泥の少なくとも一部を前記原汚泥とともに濃縮し、前記消化槽へ返送することとを含む嫌気性消化槽の立ち上げ方法が提供される。
本方法によれば、消化槽からの引抜汚泥を消化槽へ返送することで、脱水汚泥のような低い含水率の汚泥を生成させるために多量に添加される凝集剤に由来する消化阻害の問題や、脱水汚泥を生成する過程で多量に失われるアルカリ分の問題や、配管閉塞等の問題を低減することができる。また、特別な脱水汚泥を消化槽内で溶解させるための溶解装置等も不要で、作業の簡便性及び円滑な立ち上げ性を両立した立ち上げ方法を提供することができる。
本発明は更に別の一側面において、処理フローの前段に濃縮機構が配置された消化槽に水及び/又は種汚泥を投入することと、種汚泥と原汚泥とを濃縮し、濃縮汚泥を得ることと、前記濃縮汚泥を前記消化槽に投入することと、前記消化槽から汚泥の一部を引き抜いて引抜汚泥を得ることと、前記引抜汚泥の少なくとも一部を前記種汚泥及び前記原汚泥とともに濃縮し、前記消化槽へ返送することと、前記消化槽へ投入する濃縮汚泥の投入量を増加させることとを含む嫌気性消化槽の立ち上げ方法が提供される。
本発明に係る嫌気性消化槽の立ち上げ方法は更に別の一実施態様において、消化槽に水及び/又は種汚泥を投入する際、前記種汚泥を投入する場合には、前記種汚泥を前記濃縮機構において濃縮処理した後に前記消化槽へ投入することを含む。
本発明に係る嫌気性消化槽の立ち上げ方法は更に別の一実施態様において、種汚泥として、既設の消化槽から発生する汚泥を用いることを含む。
本発明に係る嫌気性消化槽の立ち上げ方法は更に別の一実施態様において、濃縮機構に供給される汚泥の固形物量に対し、凝集剤を0.2~1.5質量%添加して濃縮処理することを含む。
本発明に係る嫌気性消化槽の立ち上げ方法は更に別の一実施態様において、消化槽に、汚泥濃度4~12質量%の濃縮汚泥を供給することを含む。
本発明は更に別の一側面において、原汚泥を濃縮して濃縮汚泥を得る濃縮機構と、濃縮汚泥を嫌気性消化処理する消化槽と、消化槽と濃縮機構との間に配置され、消化槽から引き抜かれた引抜汚泥の一部を濃縮機構へ循環させる配管とを備える嫌気性消化システムが提供される。
本発明に係る嫌気性消化システムは一実施態様において、種汚泥を濃縮機構へ供給する汚泥供給手段を更に備えることができる。当該消化槽と同一処理場に配置された稼働中又は廃止及び長期停止する予定又は行っている消化槽から種汚泥を供給できる場合は、既に連続して供給できる機能を備えているため汚泥供給手段は不要となる。
本発明に係る嫌気性消化システムは別の一実施態様において、濃縮機構が、消化槽へ投入する汚泥の高濃度化を目的とした消化槽付帯の濃縮機構を含む嫌気性消化システムが提供される。
本発明に係る嫌気性消化システムは更に別の一実施態様において、消化槽が、汚泥濃度1~12質量%の汚泥を嫌気性消化処理して、0.5~9質量%の消化汚泥を排出する消化槽である。消化槽の中でも濃縮機構が消化槽に付帯した消化槽である場合、汚泥濃度4~12質量%、望ましくは6~10質量%の高濃度な濃縮汚泥を投入し消化処理することが望ましい。本実施形態においてはこのような形態をなすものを高濃度消化槽と定義し、以降に表記する。
本発明によれば、消化槽の早期立ち上げ方法を提供すると共に、立ち上げに関わる作業の簡便性及び円滑な立ち上げ性も併せ持つ嫌気性消化システムが提供できる。
本発明の実施形態に係る嫌気性消化システムの適用に好適な水処理システムの例を示す概略図である。 本発明の実施形態に係る嫌気性消化システムの適用に好適な別の水処理システムの例を示す概略図である。 本発明の第1の実施の形態に係る嫌気性消化システムの一例を示す概略図である。 本発明の第2の実施の形態に係る嫌気性消化システムの一例を示す概略図である。 本発明の第2の実施の形態の変形例に係る嫌気性消化システムの一例を示す概略図である。 立ち上げ期間に対する消化槽中の消化汚泥固形物濃度の変化のシミュレーション結果を表すグラフである。 立ち上げ期間に対する消化槽中の消化汚泥アルカリ量の変化を総アルカリ度で評価したシミュレーション結果を表すグラフである。 立ち上げ期間に対する消化槽中の有機性高分子凝集剤濃度の変化のシミュレーション結果を表すグラフである。
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。以下の図面の記載においては、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。なお、以下に示す実施の形態はこの発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、この発明の技術的思想は、構成部品の構造、配置等を下記のものに特定するものではない。
<水処理システム>
本発明の実施の形態に係る嫌気性消化システムについて説明する前に、本嫌気性消化システムの適用に好適な水処理システムの例を図1及び図2に示すが、以下の例に限定されないことは勿論である。
図1に示すように、本発明の実施の形態に係る水処理システムは、水処理場の汚水処理施設へ供給された汚水を原水として、この原水を固液分離する最初沈殿池20と、最初沈殿池20で除去されなかった有機性浮遊物と溶解性有機物を微生物の働きにより分解・安定化させる反応タンク30と、反応タンクで処理された活性汚泥を固液分離する最終沈殿池40と、反応タンク30及び最終沈殿池40で生じた余剰汚泥を機械濃縮する機械濃縮機構50と、最初沈殿池20の固液分離により生じた汚泥を重力濃縮する重力濃縮機構60と、機械濃縮機構50及び重力濃縮機構60により濃縮された汚泥又は未濃縮の汚泥を混合する混合槽70と、混合槽70から供給される汚泥をメタン発酵菌等の働きにより嫌気性条件下で消化させ減容化する消化槽90とを備える。
或いは、図2に示すように、消化槽90と混合槽70との間に機械濃縮機構80を更に備えていてもよい。
本発明の実施の形態に係る嫌気性処理システムは、処理フローの前段に濃縮機構が配置された消化槽90の立ち上げに際し、好適に実施することができるものである。例えば、図1に示すような、機械濃縮機構50及び重力濃縮機構60を消化槽90の前段に有するような水処理システムや、図2に示すような、機械濃縮機構50、重力濃縮機構60、機械濃縮機構80を消化槽90の前段に有するような水処理システム等に好適である。図1に示す水処理システムを以下に示す本発明の実施の形態に係る嫌気性消化システムに応用する場合は、機械濃縮機構50及び/又は重力濃縮機構60を、本実施形態に係る濃縮機構1として利用することができる。図2に示すような水処理システムを本発明の実施の形態に係る嫌気性消化システムに応用する場合には、機械濃縮機構50及び/又は重力濃縮機構60及び/又は機械濃縮機構80を、本実施形態に係る濃縮機構1として利用することができる。以下に本発明の第1、及び第2の実施の形態に係る嫌気性消化システムの詳細について説明する。
(第1の実施の形態)
本発明の第1の実施の形態に係る嫌気性処理システムは、図3に示すように、種汚泥と原汚泥とを濃縮して濃縮汚泥を得る濃縮機構1と、濃縮汚泥を嫌気性消化処理する消化槽2と、種汚泥を濃縮機構1へ供給する種汚泥供給手段5を備える。種汚泥の供給元は特に限定は無いが、望ましくは同一敷地内に設置された稼働中又は稼働中であったが将来停止予定の消化槽4等を用いることが好ましい。種汚泥供給手段5としては、配管、運搬機など、既設消化汚泥を運搬可能な手段であれば特に限定されない。
本発明に用いられる原汚泥としては、例えば、メタン発酵菌、水素発酵菌の嫌気性微生物が消化可能な有機分を含む汚泥であればよく、特に限定されない。例えば、下水処理場の水処理設備などで発生する下水汚泥、或いは食品工場、製紙工場、畜産場などで発生する排水又は屎尿などを含む有機性排水等が利用可能である。
原汚泥にバイオマスなどの生物由来の有機資源を混合させてもよい。具体的には、生ごみ、おから、焼酎粕などを原汚泥に混合することができる。
濃縮機構1は、低濃度の汚泥を固液分離によりTS濃度数~十数wt%程度まで高め、消化や脱水プロセスを効果的に機能させる濃縮を行う装置であればよく、特に限定されない。例えば、濃縮機構1は、重力濃縮、遠心濃縮、浮上濃縮、ベルトろ過濃縮、スクリーン濃縮等を行って、汚泥を濃縮処理する。濃縮機構1は、濃縮装置、造粒槽、薬品供給器を備えることができる。
汚泥を濃縮するに当たり、脱水性の良い汚泥に対しては、特段凝集剤等の薬品添加は不要であるが、濃縮性の悪い汚泥に対し、ポリ硫酸第二鉄、PAC、硫酸バンドなどの無機系凝集剤または有機性高分子凝集剤等を、単独又は組み合わせて添加してもよい。
以下に限定されるものではないが、濃縮機構1は、濃縮機構1に投入される汚泥の固形物濃度を、原汚泥のTS濃度以上12wt%以下、望ましくは4~12wt%、更に望ましくは6~10wt%に濃縮することが好ましい。
図3に示すように濃縮機構1は、消化槽2に付帯して隣接するか、又は消化槽2と一体化して配置される図2に示す機械濃縮機構80の形態であることが好ましい。これにより、立ち上げに適した汚泥の濃縮が可能となるとともに濃縮機構1で濃縮された濃縮汚泥を消化槽2へ容易に移送できる。例えば、濃縮機構1は、消化槽2の上部に設置し、濃縮汚泥を重力により搬送するように構成されれば、濃縮汚泥の搬送のための手段は実質不要になる。
濃縮機構1は、早期立ち上げの観点から、機械濃縮処理を行うための機械濃縮機構であることが好ましい。機械濃縮機構としては、例えば、ウェッジワイヤースクリーン、バースクリーンなどを備えた機器によるスクリーン濃縮を用いることが好ましい。
消化槽2としては、特に限定されないが、例えば完全混合型消化槽を用いることができる。消化槽2は、槽内液の均質化や温度分布の均一化とともに、スカムの発生を防止するために、内部に撹拌設備が配置されている。消化槽2内では、嫌気性細菌の働きにより、汚泥中の有機物が揮発性有機酸及び低級アルコール類に加水分解された後、メタン発酵菌の作用により有機酸などの中間生成物がメタン、二酸化炭素、アンモニア等に分解される。
消化槽2としては、例えばTS濃度が1~6wt%、典型的には2~4wt%の一般的な下水汚泥の嫌気性消化処理の装置が用いられる。
更に消化槽2としては、消化槽へ投入する汚泥濃度を高濃度へ濃縮することで、汚泥を小容量で投入でき、小容量の消化槽2において少量の汚泥から多量の消化ガスを発生させる高濃度消化槽を含む。例えばTS濃度が4~12wt%、望ましくは6~10wt%の汚泥を嫌気性消化処理可能な装置が用いられる。
例えば、本発明者らの実験によれば、TS濃度6~10wt%の汚泥を処理可能な消化槽2を高濃度消化槽とすることで、TS濃度2~4wt%程度の汚泥を処理する従来の汚泥消化の消化槽よりも、消化槽2の容積を1/2~1/8程度に縮小できるため、設置スペースを低減でき、システム全体の小型化が図られる。
次に、第1の実施の形態に係る嫌気性消化槽2の立ち上げ方法について、図3を参照しながら説明する。
まず、消化槽2に水又は種汚泥の単独又は両方を張り、嫌気状態下で加温する。具体的には、例えば、消化槽2に水又は種汚泥の単独又は両方を消化槽に設置された撹拌装置にて撹拌可能な水位まで張った後、消化槽2内の空気を窒素等の不活性ガスで置換することにより、消化槽2内を嫌気性状態とすることができる。
消化槽2に水又は種汚泥の単独又は両方を張る工程においては、消化槽2には図示されていない撹拌装置及び加温装置が一般的に備えられており、撹拌装置及び加温装置が運転可能な水位まで水又は種汚泥の単独又は両方を消化槽2に満たすようにすることが望ましい。
更に消化槽2に水又は種汚泥の単独又は両方を張る工程においては、種汚泥を可能な限り消化槽2内に満たしておくことが望ましい。可能であれば、槽容量に対して体積基準で100%以下とし、必要量が確保できない場合は50%以下、更に確保できない場合は30%以下、より更に確保できない場合は10%以下の種汚泥を撹拌装置及び加温装置が運転可能な水位まで水とあわせて使用することが望ましい。種汚泥が確保できない場合は、水のみで消化槽2を満たしても、立ち上げは可能である。
次に、種汚泥と原汚泥とを濃縮機構1へ供給し、濃縮して濃縮汚泥を得る。原汚泥と種汚泥は濃縮機構1において、定常運転時の原汚泥TS濃度と同等以上にまで濃縮される。
次に、濃縮された濃縮汚泥を消化槽2へ投入する。投入される濃縮汚泥量は、濃縮機構1の処理能力の範囲内または濃縮機構1に供給可能な種汚泥量により投入可能な量とする。濃縮汚泥に含まれる原汚泥量は、以下に制限されるものではないが、定常運転時における原汚泥中の固形物量が1/3以下となる原汚泥量で開始する。汚泥投入前に種汚泥を消化槽容量に対して100%充填した場合を除き、消化槽の消化能力は定常運転時と比べ低いため、消化能力を超える有機分を一度に投入すると、消化槽2内の消化汚泥に有機酸が蓄積し、処理が安定しない場合がある。
次に、濃縮機構1へ供給する原汚泥量を徐々に増加させることにより濃縮汚泥の投入量を増加させる。原汚泥量は、消化槽2内に存在する嫌気性微生物の増殖を考慮して、消化槽中の固形物量の10%以下、望ましくは4~6%を目安として徐々に増やすことが好ましい。消化槽2では、消化槽2で発生する消化ガスの発生量に注意しながら消化ガス中の炭酸ガスの濃度、消化槽2内の汚泥濃度、有機酸及びpHなどを定期的に測定し、消化の進行状態を観察する。
消化槽2内の温度及びpHは、汚泥中に含まれる嫌気性微生物(メタン発酵菌)の種類や投入される汚泥の汚泥負荷及び汚泥濃度等の条件に応じて適宜設定できる。温度は、一般的には25~65℃、好ましくは30~40℃である。高温菌の場合は50~60℃である。pHは一般的には6.5~8、好ましくは6.8~7.6である。
消化槽2は一般的に投入された汚泥量と同量の汚泥をオーバーフロー又はポンプ等による引抜により消化槽外に排出させる。通常は後段設備へ移送されるが、立ち上げ初期の低濃度の汚泥は最初沈殿池20へ返送され原水と共に処理されることもある。
種汚泥は可能な限り濃縮機構1へ供給することが望ましい。しかしながら、原汚泥と種汚泥の総量が濃縮機構1の処理能力を超える場合は、種汚泥の供給量を減らし濃縮機構1の処理能力範囲内で濃縮し消化槽2へ投入する。原汚泥の供給量が定常運転時の量に達し、消化槽2内の槽内汚泥濃度が安定した時点で、立ち上げ作業完了とする。
第1の実施の形態に係る嫌気性消化システム及びこれを用いた立ち上げ方法によれば、消化反応が安定した種汚泥と原汚泥とが消化槽2へ投入されるため、原汚泥量の投入量を少なくする必要のある立ち上げ当初から定常運転時の汚泥投入量に近い高濃度化された汚泥を消化槽2へ投入することができる。これにより、早期に消化槽2内の槽内汚泥濃度の高濃度化が図れる。また、既設消化槽4の消化汚泥を種汚泥として利用できるため、消化反応の阻害が少ない。
更に、第1の実施の形態に係る嫌気性消化槽の立ち上げ方法によれば、種汚泥と原汚泥との混合汚泥を濃縮しながら消化槽2へ投入して立ち上げを行うため、例えば少量の種汚泥が継続的に得られる場合等に特に好適に用いられる。即ち、第1の実施の形態に係る嫌気性消化槽の立ち上げ方法によれば、少量の種汚泥を原汚泥と混合させて濃縮した後に消化槽2へ供給する態様を用いることにより、消化槽2へ種汚泥を投入する場合に、初期に大量に種汚泥を移送して投入する必要がなく、常に安定した濃度の汚泥を消化槽2内へ供給することができる。例えば、新規の消化槽に種汚泥を入れる場合、消化槽2の容量に対して1/35~1/12程度の量の種汚泥は得られないが、継続的に少量の種汚泥が得られる場合などに実施することで、効果を更に発揮できる。
更に、第1の形態に係る方法によれば、濃縮機構1にて凝集剤を使用する場合の添加率は、汚泥中に含まれる固形物量に対して重量基準で0.2~1.5%程度とすることが好ましい。汚泥に凝集剤を多量に添加しすぎると汚泥中の有機分と嫌気性微生物との接触効率の低下及び嫌気性微生物の活性阻害が発生し、汚泥の分解が阻害される、即ち、消化阻害が発生する場合がある。逆に凝集剤の添加量が少なすぎると、凝集剤添加による効果が十分に得られない場合がある。汚泥の成分によって異なるが、濃縮機構1にて使用する凝集剤の添加率としては、ある一実施態様においては重量基準で0.3~1.0%とすることができ、別の一実施態様においては0.4~0.7%とすることができる。
(第2の実施の形態)
本発明の第2の実施の形態に係る嫌気性処理システムは、図4に示すように、原汚泥を濃縮して濃縮汚泥を得る濃縮機構1と、濃縮汚泥を嫌気性消化処理する消化槽2と、消化槽2と濃縮機構1との間に配置され、消化槽2から引き抜かれた引抜汚泥の一部を濃縮機構1へ循環させる配管3とを備える。濃縮機構1及び消化槽2の構成は図3に示す構成と実質的に同様であるので説明を省略する。
消化槽2内の汚泥は引き抜かれた後、引き抜かれた汚泥(「引抜汚泥」と称する)が消化槽2の後段に設置された後段設備へと送られて水処理される一方で、引抜汚泥の一部又は全部が配管3を介して濃縮機構1又は濃縮機構1の前段に接続された配管3に返送されるように構成されている。
引抜汚泥は、消化槽2で処理する汚泥の汚泥濃度にもよるが、消化処理が定常状態での消化汚泥TS濃度として9wt%以下(即ち含水率91wt%以上)である。一般的な嫌気性消化処理の消化汚泥TS濃度は、典型的には0.5~9wt%(含水率91~99.5wt%)であり、更に典型的には2~9wt%(含水率91~98wt%)である。高濃度嫌気性消化処理の消化汚泥TS濃度は、典型的にはより更に典型的には3~7wt%(含水率93~97wt%)である。
配管3には図示しないポンプ機構が配置されている。上述のように、本実施形態に係る引抜汚泥のTS濃度は9wt%以下であるため、特許文献1に記載されるような脱水汚泥に比べて汚泥濃度が低く、搬送が容易であり、配管3及びポンプに詰まりを生じさせることを抑制しながら配管圧送することができる。
更に、濃縮機構1にて処理された濃縮汚泥においてもTS濃度は12%以下であり、搬送が容易である。その結果、含水率の低い脱水汚泥を消化槽へ搬送機等を用いて搬送する場合に比べて、引抜汚泥の返送に係わる設備の簡略化が可能である。
本実施形態に係る立ち上げ方法によれば、消化槽2内の汚泥の一部を引き抜いて濃縮機構1へ返送し、原汚泥とともに濃縮機構1で所定の濃度まで濃縮し、消化槽2へ再投入することで、当該消化槽からの引抜汚泥を高濃度の種汚泥として活用することができる。その結果、消化槽2内の環境を大きく変動させることなく、消化槽2の早期立ち上げが実現できる。
次に、本発明の第2の実施の形態に係る嫌気性消化槽の立ち上げ方法について、図4を参照しながら説明する。
まず、消化槽2に水又は種汚泥の単独又は両方を張り、嫌気状態下で加温する。具体的には、例えば、消化槽2に水又は種汚泥の単独又は両方を消化槽2に設置された撹拌装置にて撹拌可能な水位まで張った後、消化槽2内の空気を窒素等の不活性ガスで置換することにより、消化槽2内を嫌気性状態とすることができる。
次に、原汚泥を濃縮機構1へ供給し、原汚泥を濃縮して濃縮汚泥を得る。濃縮機構1においては、まず、定常運転時の原汚泥TS濃度と同等以上に原汚泥を濃縮処理する。
次に、濃縮汚泥を消化槽2へ投入する。濃縮汚泥の初期の投入汚泥量は、以下に制限されるものではないが、一般的な方法の一例として定常運転時における原汚泥中の固形物量が1/3以下となる原汚泥量で開始する。
次に、消化槽2に投入する濃縮汚泥量を徐々に上昇させる。消化槽2では、消化槽2で発生する消化ガスの発生量に注意しながら消化ガス中の炭酸ガスの濃度、消化槽2内の汚泥濃度、有機酸及びpHなどを定期的に測定し、消化の進行状態を観察する。
濃縮汚泥の消化槽2への投入量を徐々に上昇させ、消化槽2内の槽内汚泥TS濃度が濃縮機構1において濃縮可能な濃度に達した後に、消化槽2から排出された引抜汚泥の一部または全部を前記原汚泥とともに濃縮機構1へ供給し、濃縮処理し、消化槽2へ返送する。その他の引抜汚泥は後段にある水処理設備又は汚泥処理設備(図4の後段設備)へ送られる。
引抜汚泥の全汚泥量に対する濃縮機構1へ供給する引抜汚泥の量は、濃縮機構1の処理能力の範囲内で可能な限り供給することが望ましい。処理によりそれぞれ異なるため以下に制限されるものではないが、消化槽へ投入される汚泥量と消化槽から引き抜かれる汚泥量が概ね同量となることを勘案すると、例えば原汚泥量と引抜汚泥との総量が定常運転時の汚泥投入量より少なくなる立ち上げ初期においては引抜汚泥の100%を濃縮機構1へ供給し、原汚泥量を増加させ原汚泥量と引抜汚泥との総量が定常運転時の汚泥投入量より多くなる立ち上げ後期においては、引抜汚泥の割合を徐々に低下させ定常運転時の汚泥投入量を消化槽へ投入することが望ましい。濃縮汚泥の汚泥負荷が計画投入汚泥負荷にまで到達したら、立ち上げ完了とする。
第2の実施の形態に係る嫌気性消化槽の立ち上げ方法によれば、消化槽2から引き抜かれた引抜汚泥の一部を原汚泥とともに濃縮し、消化槽2へ返送する。そのため、消化槽2へ投入可能な種汚泥が少量又は無い場合においても、消化槽2内の汚泥の濃度を早期に上昇させることができ、立ち上げのための期間を短縮できる。
更に、第2の実施の形態に係る方法によれば、含水率の高い(例えば約91%以上)引抜汚泥を濃縮機構1へ返送するため、ポンプによる配管圧送が容易であり、単純な装置で早期の装置立ち上げができる。また、引抜汚泥の固液分離処理も、消化槽2近傍に配置された濃縮機構1で行うことにより、装置全体を小型化することができる。
更に、第2の実施の形態に係る方法によれば、濃縮機構1で濃縮された汚泥の含水率は特許文献1で開示される脱水汚泥の含水率に比べ非常に高いため、液中に溶解したアルカリ分のロスが小さくて済む。例えば、含水率97%の消化汚泥を含水率92%(TS濃度8%)とする濃縮汚泥と含水率85%(TS濃度15%)とする脱水汚泥とでは、濃縮汚泥の方が脱水汚泥と比べアルカリ分が約2倍多くなる。そのため、消化槽2において添加するアルカリ剤の使用量も少なく又は使用しなくてすみ、槽内pHの保持も容易である。
更に、第2の実施の形態に係る方法によれば、分解されアルカリ成分となる有機物を含む原汚泥も濃縮機構1で濃縮するため消化槽2の総アルカリ度も早期に上昇するため、槽内pHの保持がより容易となる。
(変形例)
図5に示すように、第2の実施の形態の変形例に係る嫌気性消化システムは、種汚泥を濃縮機構1へ供給する種汚泥供給手段5を備える点が、図4に示す嫌気性消化システムと異なる。他は、図4の嫌気性消化システムと実質的に同様であるので、重複記載を省略する。
第2の実施の形態の変形例に係る嫌気性消化システム及び立ち上げ方法によれば、種汚泥を原汚泥とともに濃縮機構1で濃縮することにより、濃縮汚泥の汚泥濃度をより早期に高濃度化させ、消化槽2の更なる早期立ち上げを行うことができる。また、図5に示すシステムでは、消化槽2へ投入される原汚泥、引抜汚泥、種汚泥を一旦、全て濃縮機構1で濃縮させた後、消化槽2へ供給することができるので、性状の異なる汚泥を別々に消化槽2へ投入する場合に比べて、消化槽2内の状態を安定的に維持することができる。
(その他の変形例)
本発明は上記の実施の形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態及び運用技術が明らかとなろう。
上述の実施の形態では、消化槽2の立ち上げに際し、まずは、消化槽2に水又は種汚泥の単独又は両方を張って嫌気性条件下で加温する工程を説明したが、種汚泥を用いる場合には、消化槽2に種汚泥をそのまま投入するのではなく、種汚泥を濃縮機構1により予め濃縮した後に消化槽2へ供給することが好ましい。消化槽2内へ供給する種汚泥を濃縮機構1において予め濃縮させることで、未濃縮の種汚泥を供給した場合に比べて消化槽2内をより高い汚泥濃度とすることが出来るため、より早期に立ち上げを完了することができる。
例えば、使用できる種汚泥量が当該消化槽2の容量以上ある場合には、濃縮機構1で減容化してから消化槽2へ供給することで、消化槽内の汚泥濃度を定格以上とすることが可能となる場合もある。この場合は、立ち上げ自体が不要となると共に、定格汚泥量以上の原汚泥投入を行っても消化処理が可能となる。
さらに、消化槽2が高濃度消化槽の場合、一般的な種汚泥と比べ消化槽内の汚泥濃度を非常に高くする必要がある。高濃度消化槽は一般的な消化槽と比べ小型化となるため、例えば、同一処理場に設置された停止中の消化槽内の消化汚泥を使用できる場合は、大量の種汚泥を減容化して使用することができ、高濃度消化槽であっても早期に立ち上げを完了又は立ち上げ不要とすることができる。
以下、本発明の実施例について説明するが、下記の実施例は本発明及びその利点をより良く理解するための例示であって、本発明が限定されることを意図するものではない。
従来及び本発明に係る嫌気性消化システムを用いた消化槽の立ち上げ方法のシミュレーションを行った。表1にシミュレーション条件を示す。実施例1は、図4に示す嫌気性消化システムを用いて消化槽2の立ち上げを行ったものである。実施例2は、図3に示す嫌気性消化システムを用いて消化槽2の立ち上げを行ったものである。実施例3は、図5に示す嫌気性消化システムを用いて消化槽2の立ち上げを行ったものである。比較例1は、消化槽2に直接原汚泥を投入した場合の例である。比較例2は、消化槽2で得られた引抜汚泥を脱水して脱水汚泥とした後に、脱水汚泥を消化槽2へ返送した場合の例である。
実施例1~3、比較例1、2ともに立ち上げ初期に、別の消化槽からの消化汚泥及び脱離液を含む種汚泥を消化槽容量の50%添加した場合について評価した。立ち上げに要した期間(立ち上げ期間)の試算結果を表2に示し、時間経過に対する消化槽の槽内汚泥TS濃度の変化を図6に、総アルカリ度の変化を図7に、有機性高分子凝集剤残存率を図8に示す。
実施例1~3、比較例1、2ともに総アルカリ度は有機物の分解過程で生成するアルカリ分を換算した値とし、種汚泥中の総アルカリ度は2650mg‐CaCO3/Lとした。
実施例1~3、比較例1、2ともに原汚泥中の有機性高分子凝集剤の残存率は重量基準として0.2%とした。実施例1~3の汚泥濃縮にて添加する有機性高分子凝集剤添加率を重量基準で0.5%、比較例2の汚泥脱水にて添加する添加率を2.0%とした。
Figure 0007228653000001

Figure 0007228653000002

1 :濃縮機構
2 :嫌気性消化槽
3 :配管
4 :既設消化槽
5 :種汚泥供給手段
20 :最初沈殿池
30 :反応タンク
40 :最終沈殿池
50 :機械濃縮機構
60 :重力濃縮機構
70 :混合槽
80 :機械濃縮機構
90 :消化槽

Claims (7)

  1. 処理フローの前段に原汚泥を濃縮する機械濃縮を含む濃縮機構が配置された消化槽に水及び/又は種汚泥を投入することと、
    前記消化槽を立ち上げるまでの間、前記濃縮機構で種汚泥と前記原汚泥とを濃縮し、濃縮汚泥を得ることと、
    前記濃縮汚泥を前記消化槽に投入することと、
    前記消化槽への前記濃縮汚泥の投入量を増加させることと
    を含む嫌気性消化槽の立ち上げ方法。
  2. 処理フローの前段に原汚泥を濃縮する機械濃縮を含む濃縮機構が配置された消化槽に水及び/又は種汚泥を投入することと、
    前記消化槽を立ち上げるまでの間、前記濃縮機構で前記原汚泥を濃縮し、濃縮汚泥を得ることと、
    前記濃縮汚泥を前記消化槽に投入することと、
    前記消化槽内の汚泥の一部を引き抜いて引抜汚泥を得ることと、
    前記消化槽を立ち上げるまでの間、前記引抜汚泥の少なくとも一部を前記原汚泥とともに濃縮し、前記消化槽へ返送することと
    を含む嫌気性消化槽の立ち上げ方法。
  3. 処理フローの前段に原汚泥を濃縮する機械濃縮を含む濃縮機構が配置された消化槽に水及び/又は種汚泥を投入することと、
    前記消化槽を立ち上げるまでの間、前記濃縮機構で種汚泥と前記原汚泥とを濃縮し、濃縮汚泥を得ることと、
    前記濃縮汚泥を前記消化槽に投入することと、
    前記消化槽から汚泥の一部を引き抜いて引抜汚泥を得ることと、
    前記消化槽を立ち上げるまでの間、前記引抜汚泥の少なくとも一部を前記種汚泥及び前記原汚泥とともに濃縮し、前記消化槽へ返送することと、
    前記消化槽へ投入する濃縮汚泥の投入量を増加させることと
    を含む嫌気性消化槽の立ち上げ方法。
  4. 前記消化槽に水及び/又は種汚泥を投入する際、前記種汚泥を投入する場合には、前記種汚泥を前記濃縮機構において濃縮処理した後に前記消化槽へ投入することを含む請求項1~3のいずれか1項に記載の嫌気性消化槽の立ち上げ方法。
  5. 前記種汚泥として、既設の消化槽から発生する汚泥を用いることを含む請求項1~4のいずれか1項に記載の嫌気性消化槽の立ち上げ方法。
  6. 原汚泥を濃縮して濃縮汚泥を得る機械濃縮を含む濃縮機構と、前記濃縮汚泥を嫌気性消化処理する消化槽と、消化槽と前記濃縮機構との間に配置され、前記消化槽を立ち上げるまでの間、前記消化槽から引き抜かれた引抜汚泥の一部を前記濃縮機構へ循環させる配管とを備えることを特徴とする嫌気性消化システム。
  7. 前記消化槽を立ち上げるまでの間、種汚泥を前記濃縮機構へ供給する汚泥供給手段を更に備える請求項6に記載の嫌気性消化システム。
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