JP7228238B2 - 化粧料容器 - Google Patents

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Description

本発明は化粧料容器に関する。とくに低粘度の流動体からなる化粧料を収納するための化粧料容器に関する。
化粧料にはパフあるいは手指に取って使用するものがある。この種の化粧料を収納するための化粧料容器としては、以下の特許文献1に記載されたものがある。特許文献1に記載された化粧料容器は、外蓋によって密閉可能な有底の容器本体と、メッシュ素材からなるネットが張設されてなる中蓋とを備えている。そして、化粧料は、ネットを容器本体の底に向けて押し込むことで、ネットの表面に滲み出すようになっている。ユーザーは、その滲み出した化粧料をパフや手指にとって使用する。例えば、ネットをパフで押さえつければ、パフに化粧料が移し取られる。なお、パフに取って使用する化粧料を収納する化粧料容器では、容器本体において、ネットと蓋との間の空間にパフが収納される場合が多い。なお、以下の特許文献2には、上記ネットと同様にして使用される含浸材について記載されている。
特開2016―220871号公報 特開2017―2026号公報
パフあるいは手指に取って使用する化粧料を収納するための化粧料容器には、容器の天地を逆さまにして倒立させたときに化粧料が漏れ出さず、かつ、確実に化粧料を取り出せることが要求される。
しかし、化粧料には、化粧水などの極めて粘度が低く(例えば、1000cs以下)、液体に近いものもある。そのため、上記特許文献1に記載されたようなネットが張設された中蓋付きの化粧料容器では、低粘度の化粧料を収納した場合、倒立させるとネットの編み目を通して化粧料が漏れ出してしまう。
また、粘度の低い化粧料をパフに取る場合では、化粧料がネットを容易に通過し、適量の化粧料を取ることも難しい。そのため、粘度が低い化粧料は、従来、ボトルなどに収納されることが多かった。すなわち、粘度の低い化粧料をパフに取って使う場合には、ボトルとは別にパフを保管する容器などが必要となる。
なお、上記特許文献2には、1000~7000cs程度の粘度の化粧料を含浸させるための含浸材について記載されている。そこで、粘度の低い化粧料をスポンジなどの含浸材に含浸させた状態で提供することも考えられる。しかし、この場合は、化粧料のみを交換することができず、化粧料をより安価に提供することが難しくなる。詰め替え用の化粧料を含浸材に含浸させた状態で提供する場合であっても、含浸材に化粧料を含浸させるために長い時間が必要となり、詰め替え用の化粧料をより安価に提供することが難しくなる。
ユーザーが、空になったり化粧料の残量が少なくなったりした化粧料容器に、詰め替え用の化粧料を充填したり補充したりする場合も考えられるが、この場合、含浸材に詰め替え用の化粧料を含浸させる煩雑な作業をユーザーに強いることになる。化粧料を素早く詰め替えたり補充したりすることもできない。なお、当然のことながら、化粧料を含浸材に含浸させた状態で提供する場合、化粧料に加え、その化粧料の全量を含浸することができる含浸材が必要となる。すなわち、含浸材の体積が大きくなり、その含浸材が収納される化粧料容器が大型化する。化粧料容器が大型になれば、化粧料容器の携帯性が悪化する。化粧料容器を小さくすれば、ユーザーは、少量の化粧料しか携行できなくなる。
さらに、特許文献2に記載の含浸材は、1000cs以上の粘度の化粧料を含浸させることを前提としており、より低粘度の化粧料を含浸させた場合、メッシュ素材と同様に、容器を倒立させると、含浸材から化粧料が滴下する可能性がある。
そこで本発明は、小型化に適し、低粘度の化粧料を収納しても、倒立時に化粧料が漏れることがなく、使用時には、化粧料を確実に取り出せる化粧料容器を提供することを目的としている。
上記目的を達成するための本発明は、 上方に開口を備えて液状の化粧料を収納するための容器本体と、前記容器本体の開口を密封する外蓋と、前記容器本体の内部空間を上下に仕切る板状のパッドとを備えた化粧料容器であって
前記パッドがフェルト素材からなり、
前記パッドの上面が下方に向けて押圧されると、前記パッドを復帰可能に下方に移動させるパッド移動機構を備え、
前記パッド移動機構は、前記容器本体の内面に対して摺動可能に構成された移動枠体と、当該移動枠体の上方に配置される固定枠体とで構成され、
前記移動枠体は、前記パッドの下面の周縁部分を下支えする円環状の底部の周囲にパッドの外周面に当接する内周壁面が上方に立設されてなる枠状のパッド装着枠と、前記パッドの周縁領域を保持する枠部の下面に前記容器本体の底面との間で圧縮される板バネを備え、
前記固定枠体は、前記板バネが復元状態にあるときに、下面が前記移動枠体の上面に当接して、前記移動枠体の前記パッド装着枠を所定の上下位置で制止させる、
前記パッド装着枠は、前記板バネを一体的に備えた樹脂からなる成形品であり、
前記板バネは、前記パッド装着枠の下方に突出して形成されてなる、
ことを特徴とする化粧料容器としている。
前記容器本体における前記化粧料の最大収納量は、当該容器本体の開口が鉛直上方を向くように正立させたときに、前記化粧料の液面が、前記パッドの下面よりも下方となる量である化粧料容器としてもよい。さらに、前記容器本体には、前記化粧料の最大収納量に対応する液面位置を示す印が記されている化粧料容器とすることもできる。
前記パッドは、樹脂繊維で構成されて、外周面が熱溶着されていてもよい。前記容器本体に装着され、上下方向で対面する二層構造の環状の枠部が形成された枠体を備え、前記パッドは、二層構造の前記枠部の層間に配置され、二層構造の前記枠部の少なくとも一方の枠部には、前記パッドを層間に挿入するための切欠部が形成されている化粧料容器とすることもできる。あるいは、前記容器本体に装着され、環状の枠部が形成された枠体を備え、前記パッドの周縁領域が前記枠部に溶着されている化粧料容器としてもよい。
前記パッドは、厚さが1mm以上3mm以下であるとともに、WET(v/v)法によって求められる気孔率が70%以上90%以下であり、
前記容器本体に収納される前記化粧料の粘度が、1cs以上1000cs以下である、
化粧料容器とすればより好ましい。
本発明によれば、小型化に適し、低粘度の化粧料を収納しても、倒立時に化粧料が漏れることがなく、使用時には、化粧料を確実に取り出せる化粧料容器が提供される。なお、その他の効果については以下の記載で明らかにする。
本発明の実施例に係る化粧料容器の分解図である。 上記実施例に係る化粧料容器の組み付け状態や構造を示す図である。 上記実施例に係る化粧料容器が備える中蓋を構成する枠体を示す図である。 上記中蓋の変形例を示す図である。 変形例に係る上記中蓋を射出成形する手順を示す図である。 本発明のその他の実施例に係る化粧料容器を示す図である。 本発明のその他の実施例に係る化粧料容器を示す図である。
本発明の実施例について、以下に添付図面を参照しつつ説明する。なお以下の説明に用いた図面において、同一または類似の部分に同一の符号を付して重複する説明を省略することがある。ある図面において符号を付した部分について、不要であれば他の図面ではその部分に符号を付さない場合もある。
===化粧料容器===
本発明の実施例として、粘度が極めて低い(例えば、1~1000cs)流体からなる化粧料が収納されるとともに、その化粧料をパフに移し取って使用できるようにした化粧料容器を挙げる。図1に実施例に係る化粧料容器1を構成要素ごとに分解したときの斜視図を示した。図1に示したように、化粧料容器1は、有底二段円筒状の容器本体2と、容器本体2の開口を密封する外蓋3と、容器本体2に着脱可能に装着される中蓋4とを備えている。ここで、二段円筒状の容器本体2の円筒軸100の方向を上下方向とするとともに、容器本体2の底部が下方であることとして上下の各方向を相対的に規定する。なお、外蓋3や中蓋4の上下方向や円筒軸100が貫通する位置は、容器本体2に装着された状態を基準にして規定することとする。すなわち、外蓋3や中蓋4は、容器本体2から取り外されていても、上下方向や円筒軸100の貫通位置は不変である。以下に、化粧料容器を構成する容器本体2、外蓋3、および中蓋4の構造について説明する。
容器本体2は、二段円筒状の外観形状を有しているとともに、上端25から底部の内側(以下、底面26)まで一定の内径を維持し、容器本体2の内面24には段差がない。すなわち、容器本体2は、肉厚に形成された下方の領域と上方の薄肉化された領域とからなる。そして、下方の肉厚の領域を化粧料の収納部21とし、その収納部21の上方に、収納部に対して薄肉化された円筒状の首部22が同軸となるように一体的に形成されてなる。また、首部22の外周には雄ねじ23が形成されている。
外蓋3は、上方を底部(以下、天面部31)とした扁平な有底円筒状で、外蓋3の内面には、首部22の雄ねじ23と係合する雌ねじ32が形成されている。中蓋4は、上端にフランジ42を有する上下に扁平な有底円筒状の枠体41と、枠体41の下端側に配置されているフェルト素材からなる円板状のパッド10とで構成されている。枠体41は、下方に、開口43によって円環状に形成された枠部(以下、底部44)を有している。パッド10は、枠体41の底部44に装着されて、上面11および下面が、枠体41の底部44における開口43を介して上方および下方に露出している。
周知のごとく、フェルトは、織物ではなく、繊維が薄板状に圧縮されたものである。そして、フェルトは、繊維が不規則に結合されて、強度や伸びなどに方向性がなく、厚さや気孔率(体積に対する空隙の容積の割合)を容易に調整することができるという特徴を有する。なお、実施例に係る化粧料容器1では、容器本体2、外蓋3、および枠体41が樹脂の射出成形品で構成されている。
図2に、化粧料容器1を構成する、容器本体2、外蓋3、および中蓋4の相互の装着状態や、化粧料容器1の具体的な構造、および容器本体2における化粧料5の収納状態を示した。図2(A)は、容器本体2に中蓋4が装着されている状態を示す図であり、図2(B)は、容器本体2に外蓋3が装着された状態を示す図である。そして図2(C)は、化粧料容器1を、上下方向を含む面で切断したときの縦断面図である。
図2(A)に示したように、中蓋4を容器本体2に装着すると、中蓋4のフランジ42の下面(図2(C)、符号46)が容器本体2の上端(図2(C)、符号25)に当接する。それによって、中蓋4が容器本体2内に落ち込まないようになっている。なお、中蓋4が容器本体2内に落ち込まないようにするための構造としては、中蓋4にフランジ42を設けることの他に、例えば、容器本体2の内面24に中蓋4の下端を下支えする突起を設けるなど、適宜な構造が考えられる。そして、中蓋4を容器本体2に装着した上で、容器本体2の首部22に外蓋3を装着すれば、図2(B)に示したように、扁平な円筒状の外観を有する化粧料容器1となる。
上述したように、中蓋4の枠体41は、上下に扁平な円筒状で、下端は、開口43を有してパッド10の上面11と下面12とを上方と下方とに露出させる底部44となっている。そして、図2(C)に示したように、化粧料5は、容器本体2の収納部21におけるパッド10の下面12と容器本体2の底面26との間の空間に収納される。また、容器本体2の収納部21に収納される化粧料5の最大収納量は、容器本体2の底面26を下方にして化粧料容器1を正立させた際に、化粧料5の液面51が、パッド10の下面12に接しないように設定されている。なお、容器本体2内において、パッド10の上面11側はパフの収納場所となる。
外蓋3の天面部31の内側には、パッキン33が取り付けられており、外蓋3の内側面に形成されている雌ねじ32と、容器本体2の首部22に形成されている雄ねじ23とによって外蓋3を容器本体2に装着すると、パッキン33の下面34が中蓋4のフランジ42の上面45に密着し、フランジ42の下面46が容器本体2の上端25に密着する。それによって、容器本体2が密閉され、化粧料5の蒸発が抑止される。
また、容器本体2の内面24と中蓋4の枠体41の外周面47とは互いに密着しており、外蓋3が密閉されていない状態で化粧料容器1を倒立させた際に、化粧料5が、中蓋4と容器本体2との接触界面(24-47、25-46)を経由して漏れ出すことがないようになっている。
さらに、中蓋4の枠体41は、パッド10を確実に保持するための構造を備え、パッド10の外周面13を経由した枠体41の内面側からの化粧料5の漏出も抑止されている。図3に枠体41の構造を示した。図3(A)は、枠体41を上方から見たときの斜視図であり、図3(B)は、枠体41を下方から見たときの斜視図である。以下、図2(C)と図3とを参照しつつ、枠体41におけるパッド10の保持構造を、より具体的に説明する。
上述したように、枠体41は、下方に底部44を有して上下に扁平な有底中空円筒状であり、底部44の中央には開口43が形成されている。底部44は、図2(C)、図3に示したように、間隙48を介して上下に対面する二層構造になっている。パッド10は、その二層構造の底部44の層間に配置されている。そして、図3(A)に示したように、上方の底部441は、円環状に形成されており、下方の底部442は、図(B)に示したように、円環の一部が切り欠かれてなる切欠部49を有している。したがって、図2(C)に示したように、底部44は、切欠部49が形成されていない領域では、コの字型の縦断面形状を有する。そして、底部44において、縦断面形状がコの字型となる領域では、パッド10の上面11と下面12とにおける周縁部分が、上下の底部(441、442)間に圧縮された状態で狭持されている。
なお、実施例に係る化粧料容器1の枠体41は、切欠部49が、円筒軸100に対して互いに対称の位置となる2箇所に形成されており、パッド10を枠体41に装着する際には、パッド10を若干撓ませつつ、図3(B)に白抜き矢印で示したように、枠体41の下方の底部442の切欠部49から、上方の底部441との間隙48に滑り込ませるようにして挿入すればよい。
<化粧料の収納量、化粧料の取り出し方法>
上述した構成を備えた本実施例の化粧料容器1では、フェルト素材からなるパッド10を備えている。フェルト素材からなるパッド10は、メッシュ素材からなるネットのように大きく撓むことがなく、降伏応力よりも小さな荷重であれば、押圧されても表面が圧縮されて凹むだけであり、荷重が開放されれば、当初の形状に復元する。そして、実施例に係る化粧料容器1では、パッド10の気孔率と厚さが、収納部21に収納される化粧料5の粘度に応じて適切に設定されていることで、パッド10の下面12から含浸させた化粧料5をパッド10の上面11から取り出すことができ、かつ、化粧料容器1を倒立させても、パッド10が化粧料5の含浸状態を維持し、化粧料5が、パッド10の上面11から漏出しないようになっている。
そして、実施例に係る化粧料容器1における化粧料5の取り出し手順としては、まず、化粧料容器1を倒立させるなどして、パッド10の下面12を化粧料5に接触させる。それによって、化粧料5が、毛細管現象によってフェルト素材からなるパッド10に含浸される。次に、パッド10の上面11をパフなどによって下方に押圧してパッド10を圧縮する。それによって、パッド10に含浸されていた化粧料5がパッド10の上面11側に滲みだし、その化粧料5がパフに移し取られる。
<化粧料の最大収納量について>
ところで、フェルト素材を用いた他の器具(フェルトペン、アルコールランプなど)は、フェルト素材からなる棒状の芯の一端がインクやアルコール燃料に常に接している。それによって、芯が毛細管現象によって吸い上げたインクが芯の他端側にて紙面に転写されたり、芯が吸い上げたアルコール燃料が芯の他端側で揮発して燃焼したりする。一方、実施例に係る化粧料容器1では、化粧料5を使用するとき以外は、フェルト素材からなるパッド10が、化粧料5に接していないことを前提とし、化粧料5を使用する際に、一時的にパッド10に化粧料5を含浸させることとしている。これは、フェルトペンやアルコールランプなどでは、インクやアルコール燃料を芯に常時供給しておかないと、インクがかすれたり、火が消えたりするのに対し、化粧料容器1では、一回分の使用量の化粧料のみをあらかじめパッドに含浸すればよいからである。また、平板状のパッド10は、棒状の芯に対し、液体を取り出すための面積が極めて大きく、パッド10に含浸させた化粧料5が蒸発し易くなる。そのため、パッド10に化粧料5が常時接していると、収納部21に収納されている化粧料5が、パッド10に含浸されながら蒸発することになり、使用前に化粧料5の量が少なくなってしまう可能性がある。
したがって、実施例に係る化粧料容器1では、容器本体2の開口が鉛直上方を向くように正立させたときに、化粧料5の液面51が、パッド10の下面12よりも下方であることとしている。すなわち、実施例に係る化粧料容器1では、収納部21における化粧料5の最大収納量が規定されている。なお、収納部21における化粧料5の最大収納量を規定するためには、収納部21の、内面24に最大充填量を収納した際の液面51の高さ位置に目盛りなどの印を設けておくことが考えられる。あるいは、説明書や化粧料容器1の適所に記した注意書きなどによって、化粧料5を詰め替えたり補充したりする際には、化粧料5の液面51がパッド10の下面12より下方になるようにするとの旨をユーザーに周知させておいてもよい。詰め替え用の化粧料5を、必ず、最大収納量以下で提供することとしてもよい。いずれにしても、収納部21には所定量以上の化粧料5が収納されないようにしておけばよい。
====パッドの気孔率と厚さ===
上述したように、実施例に係る化粧料容器1では、化粧料5の粘度に応じてパッド10の気孔率や厚さが適切に設定されている。それによって、収納部21に収納された化粧料5をパッド10の上面11から取り出せるとともに、化粧料容器1を倒立させても収納部21内の化粧料5がパッド10の上面11から漏れ出すことない。そこで、以下では、化粧料5の粘度に応じたパッド10の気孔率および厚さの設定方法について説明する。
<化粧料取出性能>
化粧料容器1に求められる必須の機能は、収納部21に収納された化粧料5をパッド10の上面11から取り出せることにある。そこで、実施例に係る化粧料容器1における化粧料5の取り出し易さ(化粧料取出性能)を評価するために、粘度が異なる各種液体と、気孔率や厚さが異なるパッド10を備えた化粧料容器1とを用意した。
パッド10の気孔率については、周知のWET(v/v)法による計算式から求めた。WET(v/v)法は、パッド10を構成する繊維の材質の差異に起因する比重の違いを考慮してより正確に気孔率を求めることができ、気孔率WET(v/v)は、パッド10の乾燥質量をA、パッド10の飽和含水量をB、パッド10に用いた繊維の比重をρとして、
WET(v/v)=[(B-A)/{(A/ρ)+(B-A)}]×100(%)
の計算式により求めることができる。なお、化粧料取出性能の評価に用いたパッド10は、ポリエステル(PET)と低融点ポリエステル(LPET)とからなる。
そして、パッド10の種類が異なる化粧料容器1を用い、収納部21に収納した液体の粘度と液体取出性能との関係を調べた。具体的には、まず、収納部21に液体が収納された状態で、化粧料容器1を1分間倒立させてパッド10に液体を含浸させた。次に、化粧料容器1を正立させた状態で、パッド10にパフを3回押しつけ、パフに液体を移し取る化粧料取出試験を行った。そして、液体を移し取る前後でのパフの質量差を、パフに移し取られた液体の質量とした。なお、化粧料取出試験は、パッド10の種類と液体の種類との組み合わせを条件にした場合、各条件について3回ずつ行い、各回における液体の質量の平均値を試験結果とした。
以下の表1に、化粧料の取出試験の結果を示した。
Figure 0007228238000001
表1に示したように、粘度が異なる液体として、水、アルコール、および3種類のシリコーンオイルを用意した。なお、水、およびアルコールの粘度は、それぞれ、25℃における動粘度で、0.893cs、および1.373csである。3種類のシリコーンオイルは、それぞれ、粘度が1cs、500cs、1000csである。
そして、表1に示した試験結果から、化粧料容器1を1分間倒立させて粘度1000csの液体をパッド10に含浸させた場合、厚さが3mmで、気孔率が80%以下のパッド10では十分に液体が滲み込まず、パッド10の上面11から液体を取り出すことができないことがわかった。また、気孔率が70%で厚さが3mmのパッド10では、粘度が500csの液体も取り出せないことが確認された、一方、厚さが2mm以下のパッド10であれば、空孔率が70~90%のパッド10で全ての液体を取り出せることが確認できた。そして、パッド10の気孔率が大きいほど、またはパッド10の厚さが薄いほど、液体が含浸され易く、より容易に取り出せることが確認できた。
<倒立漏れ試験>
化粧料5には、ユーザーが外出先で使用するものもある。したがって、ユーザーが携行して使用する化粧料容器1には、倒立させても化粧料5が漏れない性能(漏出防止性能)も必要となる。そこで、実施例に係る化粧料容器1の漏出防止性能を評価するために、粘度が異なる各種液体と、気孔率や厚さが異なるパッド10を備えた各種化粧料容器1とを用意し、各種液体を収納した各種化粧料容器1を倒立させて液体の漏れ具合を確認する倒立漏れ試験を行った。
倒立漏れ試験の具体的な手順としては、まず、パッド10の種類が異なる各種化粧料容器1に、粘度が異なる液体を収納部21に15g収納した。次いで、化粧料容器1を倒立させ、液体が毛細管現象によってパッド10に含浸されていくのを確認した後、倒立状態を1週間維持した。そして、試験後に容器本体2内の首部22側に液体が漏れ出しているか否かを目視により確認した。
以下の表2に倒立漏れ試験の結果を示した。
Figure 0007228238000002
表2に示したように、用意したパッド10、および液体は、表1に示したものと同じである。そして、倒立漏れ試験の結果から、1cs以下の粘度の液体では、パッド10の厚さが2mm以下で気孔率が70%以上である場合に一週間を経ずにパッド10の上面11から液体が漏出することがわかった。パッド10の厚さが3mmで気孔率が80%以下であれば、どの液体も漏出しないことがわかった。
なお、上述した化粧料取出試験では、パッド10に含浸させるために化粧料容器1を1分間倒立させていたが、その1分間では、全てのパッド10で液体が漏れ出すことはなかった。したがって、化粧料5を取り出す際に一時的に化粧料容器1を倒立させるような一般的な化粧料容器1の使用形態であれば、化粧料5の粘度に応じ、厚さが1mm以上3mm以下で気孔率が70%以上90%以下のパッド10から適宜なものを用いればよい。すなわち、実施例に係る化粧料容器1を、粘度が1cs以上1000cs以下の化粧料5を収納するのに適したものにするためには、パッド10の厚さ、および気孔率を、それぞれ、1mm以上3mm以下、および70%以上90%以下の範囲で適切に設定しておけばよい。それによって、実施例に係る化粧料容器1は、化粧料5を確実に取り出せるとともに、倒立させても化粧料5がパッド10を通して漏れ出さないものとなる。
また、実施例に係る化粧料容器1では、パッド10の気孔率や厚さを代えるだけで、粘度が異なる様々な化粧料5を同じ形状の化粧料容器1に収納することができる。すなわち、様々な化粧料5を、実質的に一種類の化粧料容器1で提供することができる。しかも、実施例に係る化粧料容器1では、中蓋4を構成する枠体41の底部44が二層構造になっており、下方の底部442には切欠部49が形成されて、枠体41にパッド10を自在に着脱することができるようになっている。そのため、実施例に係る化粧料容器1は、厚さや気孔率が異なるパッド10のみを交換するだけで1cs~1000csの粘度の化粧料5に対応することができ、極めて高い汎用性を有するものとなっている。そして、化粧料容器1は、高い汎用性により、より安価なものとなる。結果として、化粧料5をより安価に提供することができる。また、様々な化粧料5を同じ化粧料容器1で保管あるいは陳列することができ、統一性のある見栄えに優れた状態で化粧料5を保管あるいは陳列することもできる。
===その他の実施例===
<フェルト素材について>
上記実施例に係る化粧料容器1では、パッド10がPET、LPETからなる樹脂繊維で構成されていたが、ナイロンやアクリルなどからなる樹脂繊維であってもよい。もちろん、パッド10は、天然繊維を用いたフェルト素材で形成されていてもよい。なお、樹脂繊維のフェルト素材からなるパッド10であれば、パッド10の外周面13の繊維を互いに熱溶着させておいてもよい。それによって、パッド10に含浸された化粧量5がパッド10の放射方向に広がりつつ、パッド10の外周面13から漏れ出す経路が遮断され、より確実に化粧料5の漏出を防止することができる。また、一般的に、パッド10は、一枚の大面積のフェルト素材を裁断することで得られるため、フェルト素材を、レーザー光線を用いて裁断(レーザー切断)すれば、パッド10の裁断と外周面13における繊維の溶着処理とを同時に行うことができる。
<中蓋の成形について>
樹脂繊維からなるパッド10であれば、パッド10をインサート部材として中蓋4の枠体41を射出成形することができる。それによって、枠体41の成形と同時に、二層構造の枠体41の底部44の層間にパッド10を配置させることができる。また、パッド10がレーザー切断以外の方法で裁断されていても、パッド10の外周面13における繊維を熱溶着させることができる。
図4に、パッド10をインサート部材として枠体41を射出成形することで得られる中蓋104を示した。図4(A)は、当該中蓋104を上方から見たときの斜視図であり、図4(B)は、中蓋104を下方から見たときの斜視図である。図4(A)に示したように、当該中蓋104は、図1に示した実施例に係る化粧料容器1の中蓋4と同様に、上下に扁平な中空筒状の枠体41の下端側に二層構造の円環状の底部(441、443)が形成され、その二層構造の底部(441、443)の層間に平板状のパッド10が配置されている。しかし、中蓋104は、図4(B)に示したように、二層構造の下方の底部443には、切欠部(図3(B)、符号49)が形成されていない。
図5に、図4に示した中蓋104の成形手順を示した。まず、図5(A)に示したように、金型(61、62)内に平板状のパッド10を配置する。次いで、図5(B)に示したように、金型(61、62)を閉め、キャビティ63内に溶融樹脂を射出する。そして、金型(61、62)から成形品を取り出せば、図5(C)に縦断面図によって示した中蓋104が得られる。そして、この中蓋104では、二層構造の底部(441、443)の層間に形成される間隙48内で、パッド10の周縁領域、すなわち外周面13や上下両面(11、12)の周縁部分が、枠体41を構成する樹脂に溶着された状態となる。それによって、中蓋104を備えた化粧料容器1は、パッド10の周縁領域と枠体41との接触界面60を経由した化粧料5の漏出経路が確実に閉鎖されたものとなる。なお、底部44を二層構造にせず、下方の底部443のみを設けてパッド10の外周面13および下面12の周縁部分と、下方の底部443とを溶着させてもよい。
<パッドに対する化粧料の含浸方法について>
実施例に係る化粧料容器1は、正立状態のままで、パッド10に化粧料5を含浸させる機構を備えていてもよい。この機構は、概略的には、図2(C)を参照すると、パッド10を復帰可能に下方に移動させて、パッド10の下面12を化粧料5の液面51に接触させるものである。図6と図7とにパッド10を下方に移動させるための機構(以下、パッド移動機構)を備えた化粧料容器(101、201)の縦断面を示した。図6、図7に示した化粧料容器(101、201)は、底部(111、211)に開口(112、212)を有して容器本体2の上方側に固定されている枠体(以下、固定枠体(110、210))と、パッド10が装着されて、当該パッド10を上下方向に移動させるための枠体(移動枠体(120、220))とによってパッド移動機構が構成されている。
そして、図6に示した化粧料容器101では、固定枠体110と、板バネ121を備えた移動枠体120とでパッド移動機構が構成されている。図6(A)は、化粧料5を使用しないときの移動枠体120の配置を示しており、図6(B)は、パッド10に化粧料5を含浸させるときの移動枠体120の配置を示している。図6(A)に示したように、固定枠体110は、樹脂からなる一体成形品で、容器本体2に着脱自在に装着される。固定枠体110は、上下に扁平な中空円筒状で、上端にはフランジ113が形成され、底部111の中央にはパッド10の上面11を露出させるための開口112が形成されている。すなわち、固定枠体110は、図1に示した化粧料容器1の中蓋4を構成する枠体41と同様の形状を有する。そして、固定枠体110は、容器本体2に装着されると、フランジ113の下面114が容器本体2の上端25に当接し、容器本体2内に落ち込まないようになっている。なお、固定枠体110の底部111は単層構造であり、その底部111にはパッド10が取り付けられていない。
一方、移動枠体120は、樹脂からなる一体的な成形品で、パッド10の下面12の周縁部分を下支えする円環状の底部122の周囲にパッド10の外周面13に当接する内周壁面123が上方に立設されてなる枠状の部位(以下、パッド装着枠124)と、パッド装着枠124から下方に突出する板バネ121とを有する。パッド10は、パッド装着枠124内に適宜な方法(接着、溶着など)で固定され、板バネ121は、パッド装着枠124の底部122の円周に沿って等角度間隔で形成されている。ここに示した移動枠体120は、90゜間隔で、4箇所に板バネ121が形成されている。また、板バネ121の下端側は容器本体2の底面26に当接している。
化粧料5を使用する際には、パッド10の上面11にパフなどを接触させつつ、当該パッド10を下方に向けて押圧する。それによって、移動枠体120は、図6(B)に示したように、板バネ121が圧縮されながらパッド装着枠124が下方に移動する。そして、パッド10の下面12が化粧料5の液面51に接触すると、パッド10に化粧料5が含浸され、化粧料5がパッド10の上面11からパフなどに移し取られる。化粧料5を移し取ったならば、パッド10への押圧力を解除すればよい。それによって、パッド装着枠124が板バネ121の復元力によって上方に移動し、パッド装着枠124の上端125が固定枠体110の下端115に当接し、図6(A)に示した、当初の状態に復帰する。なお、移動枠体120の板バネ121は、下方に圧縮、あるいは上方に伸張されていない復元状態にあるときにパッド装着枠124の上端が固定枠体110の下端に接するように調整されている。また、固定枠体110は、外周面116が容器本体2の内面24に密着しており、下方から付勢されても容器本体2から脱落し難くなっている。すなわち、板バネ121が圧縮された状態でパッド装着枠124の上端125が固定枠体110の下端115に当接したとしても、固定枠体110が容器本体2の上方に逸脱することがない。
図7に示した化粧料容器201では、固定枠体210と、コイルバネ221が取り付けられた移動枠体220とでパッド移動機構が構成されており、図6に示した化粧料容器101に対し、板バネ121がコイルバネ221に変更されている点のみが異なっている。
図7(A)は、化粧料5を使用しないときの移動枠体220の状態を示しており、図7(B)は、パッド10に化粧料5を含浸させるときの移動枠体220の状態を示している。図7(A)に示したように、固定枠体210は、図6に示したものと同様であり、移動枠体220は、図6に示したものと同様のパッド装着枠222の下端に上下方向を螺旋軸としたコイルバネ221が取り付けられてなる。そして、図7(B)に示したように、移動枠体220は、パッド10の上面11が下方に向けて押圧されると、コイルバネ221がパッド装着枠222と容器本体2の底面26との間で圧縮され、パッド10が化粧料5の液面51に接触する。そして、パッド10への押圧力が解除されれば、パッド装着枠222がコイルバネ221の復元力によって上方に移動し、図7(A)に示した、当初の状態に復帰する。
なお、図6と図7とに示した化粧料容器(101、201)において、移動枠体(120、220)におけるパッド装着枠(124、222)は、図3に示した枠体41や、図5に示した中蓋104における二層構造の底部44と同様の構造によってパッド10を保持するように構成されていてもよい。
また、図6と図7とに示した化粧料容器(101、201)では、パッド移動機構が、固定枠体(110、210)と移動枠体(120、220)とで構成されていたが、例えば、図1に示した化粧料容器1の中蓋4や図4に示した中蓋104にフランジ42を設けず、中蓋(4、104)における下方の底部(442、443)に、板バネ121やコイルバネ221などのバネ機構を設けてもよい。それによって、中蓋(4、104)自体が復帰可能に下方に移動できるようになる。
容器本体2が光透過性の材料で成形されていてもよい。それによって、容器本体2の外面に化粧料5の最大収納量を示す印を設けることができる。あるいは、容器本体2の内面24に設けた印を外方から確認することができる。また、容器本体2が光透過性の材料で成形されていれば、容器本体2内の化粧料5を目視できるので、化粧料容器1を倒立させたり、振ったりしなくても、内部の化粧料5の残量を正確に確認することができる。着色された化粧料5を収納する場合では、容器本体2を、無色透明な光透過性の材料で成形しておいてもよい。それによって、化粧料5の色合いを外部から視認することができ、化粧料5を見栄えよく保管、あるいは陳列することができる。
上記実施例に係る化粧料容器(1、101、201)は、上下に扁平な円筒状であったが、容器本体2を密閉する外蓋3と、パッド10が装着された中蓋4や移動枠体(120、220)に相当する構成とを備えていれば、角筒状など、他の形状であってもよい。また、容器本体2の内面24にパッド10を支持する円環状の突起を形成しておけば、中蓋4を省略することもできる。
1,101,201 化粧料容器、2 容器本体、3 外蓋、4,104 中蓋、
5 化粧料、10 パッド、13 中蓋の開口、21 容器本体の収納部、
22 容器本体の首部、24 容器本体の内面、41 中蓋の枠体、
26 容器本体の底面、42 中蓋のフランジ、
44,441,442,443 枠体の底部、51 化粧料の液面、61,62 金型、
110,210 固定枠体、120,220 移動枠体、121 板バネ、
124,222 パッド装着枠、221 コイルバネ、

Claims (7)

  1. 上方に開口を備えて液状の化粧料を収納するための容器本体と、前記容器本体の開口を密封する外蓋と、前記容器本体の内部空間を上下に仕切る板状のパッドとを備えた化粧料容器であって
    前記パッドがフェルト素材からなり、
    前記パッドの上面が下方に向けて押圧されると、前記パッドを復帰可能に下方に移動させるパッド移動機構を備え、
    前記パッド移動機構は、前記容器本体の内面に対して摺動可能に構成された移動枠体と、当該移動枠体の上方に配置される固定枠体とで構成され、
    前記移動枠体は、前記パッドの下面の周縁部分を下支えする円環状の底部の周囲にパッドの外周面に当接する内周壁面が上方に立設されてなる枠状のパッド装着枠と、前記パッドの周縁領域を保持する枠部の下面に前記容器本体の底面との間で圧縮される板バネを備え、
    前記固定枠体は、前記板バネが復元状態にあるときに、下面が前記移動枠体の上面に当接して、前記移動枠体の前記パッド装着枠を所定の上下位置で制止させる、
    前記パッド装着枠は、前記板バネを一体的に備えた樹脂からなる成形品であり、
    前記板バネは、前記パッド装着枠の下方に突出して形成されてなる、
    ことを特徴とする化粧料容器。
  2. 請求項1に記載の化粧料容器であって、前記容器本体における前記化粧料の最大収納量は、当該容器本体の開口が鉛直上方を向くように正立させたときに、前記化粧料の液面が、前記パッドの下面よりも下方となる量であることを特徴とする化粧料容器。
  3. 請求項2に記載の化粧料容器であって、前記容器本体には、前記化粧料の最大収納量に対応する液面位置を示す印が記されていることを特徴とする化粧料容器。
  4. 請求項1~のいずれかに記載の化粧料容器であって、前記パッドは、樹脂繊維で構成されて、当該パッドの外周面では前記樹脂繊維が互いに熱溶着されていることを特徴とする化粧料容器。
  5. 請求項1~のいずれかに記載の化粧料容器であって、前記容器本体に装着され、上下方向で対面する二層構造の環状の枠部が形成された枠体を備え、前記パッドは、二層構造の前記枠部の層間に配置され、二層構造の前記枠部の少なくとも一方の枠部には、前記パッドを層間に挿入するための切欠部が形成されていることを特徴とする化粧料容器。
  6. 請求項1~のいずれかに記載の化粧料容器であって、前記容器本体に装着され、環状の枠部が形成された枠体を備え、前記パッドの周縁領域が前記枠部に溶着されていることを特徴とする化粧料容器。
  7. 請求項1~のいずれかに記載の化粧料容器であって、
    前記パッドは、厚さが1mm以上3mm以下であるとともに、WET(v/v)法によって求められる気孔率が70%以上90%以下であり、
    前記容器本体に収納される前記化粧料の粘度が、1cs以上1000cs以下である、
    ことを特徴とする化粧料容器。
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