JP7227703B2 - 長期熱伝導率の低い、ガスバリアーフィルムラミネートスチレン系樹脂発泡板 - Google Patents

長期熱伝導率の低い、ガスバリアーフィルムラミネートスチレン系樹脂発泡板 Download PDF

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Description

本発明は、ガスバリアーフィルムを表面にラミネートしたスチレン系樹脂発泡板に関する。詳細には、スチレン系樹脂発泡板の表面に特定の条件でガスバリアーフィルムをラミネートすることにより得られた、長期にわたって低い熱伝導率を維持することのできる、ガスバリアーフィルムラミネートスチレン系樹脂発泡板に関する。
スチレン系樹脂発泡板は熱伝導率が低いため、断熱材として建築用途などに広く用いられている。しかし、スチレン系樹脂発泡板は、製造直後の熱伝導率は低いものの、時間の経過と共に次第に熱伝導率が高くなる傾向がある。このため、熱伝導率の上昇を防ぐために発泡板の表面をガスバリアーフィルムまたは水性エマルジョン型塗布液により被覆する方法が知られている(特許文献1)。
しかし、本発明者らの研究によると、ガスバリアー性の高いフィルムまたは水性エマルジョン型塗布液で被覆した場合でも、カッティングやスライスされた発泡板は時間の経過と共に発泡板の熱伝導率が高くなることがあり、これを改善するために切断面を被覆する等の工夫をするなどされているが、長期にわたり熱伝導率の上昇が抑えられた発泡板は得られていないのが現状である。
特開平9-31236号公報
よって、本発明の目的は、長期にわたり低い熱伝導率を維持することのできる、ガスバリアーフィルムラミネートスチレン系樹脂発泡板を提供することにある。
本発明の第一の発明は、スチレン系樹脂発泡板と、該スチレン系樹脂発泡板の表面に熱接着されているガスバリアーフィルムとを含むガスバリアーフィルムラミネート樹脂発泡板であって、スチレン系樹脂発泡板の独立気泡のうち、スチレン系樹脂発泡板とガスバリアーフィルムとの接触面から垂直方向へ少なくとも3層より内部の独立気泡が損傷を受けていないことを特徴とするガスバリアーフィルムラミネート樹脂発泡板に関する。ガスバリアーフィルムとスチレン系樹脂発泡板を接着させる際には、ポリスチレンを熱接着性樹脂として用いることが好ましい。
また、本発明の第二の発明は、スチレン系樹脂発泡板と、該スチレン系樹脂発泡板の表面に熱接着されているガスバリアーフィルムとを含むガスバリアーフィルムラミネート樹脂発泡板であって、下記方法によって計測された染色試験で染色液の到達高さが20mm以下であることを特徴とする、ガスバリアーフィルムラミネート樹脂発泡板に関する。染色試験は、(i)ガスバリアーフィルムラミネート樹脂発泡板からなる試験体の垂直方向側面4面からの染色液浸透を防ぐ処理を施し、(ii)上記染色液浸透防止処理を施していない、試験体の水平方向の面を、染色液としての赤色アゾ染料エタノール溶液に浸漬し、(iii)72時間経過後に、染色液液面から試験体の染色液にて染色された箇所までの高さを計測することによって行われる。また、ガスバリアーフィルムを積層後一年経過後の熱伝導率の変化が10%以内であることが好ましい。また、ガスバリアーフィルムの酸素透過係数は2cc/日・m2・atm以下であることが好ましい。さらに、ガスバリアーフィルムを積層後一年経過後の熱伝導率が0.024(W/mK)以下であることが好ましい。
さらに、本発明の第三の発明は、スチレン系樹脂発泡板の表面にガスバリアーフィルムを積層し、熱によってガスバリアーフィルムとスチレン系樹脂発泡板とを接着させることを含む、ガスバリアーフィルムラミネート樹脂発泡板の製造方法であって、スチレン系樹脂発泡板の独立気泡のうち、スチレン系樹脂発泡板とガスバリアーフィルムとの接触面から垂直方向へ少なくとも3層より内部の独立気泡が損傷を受けていないことを特徴とする、方法に関する。ガスバリアーフィルムとスチレン系樹脂発泡板を接着させる際には、熱ロール方式によって接着させることが好ましい。また、ガスバリアーフィルムを熱接着する際には、130℃から150℃の温度で熱圧着することが好ましい。
本発明によれば、長期にわたり熱伝導率が低いガスバリアーフィルムラミネートスチレン系樹脂発泡板を得ることができる。
樹脂発泡板とガスバリアーフィルムとの接触面から垂直方向へ独立気泡3層目を表す模式図である。 染色試験方法を示す参考図である。 染色試験方法を示す参考図である。 実施例1で得られたガスバリアーフィルムラミネート樹脂発泡板の、染色試験後の断面画像写真である。 実施例3で得られたガスバリアーフィルムラミネート樹脂発泡板の、染色試験後の断面画像写真である。 参考例2で得られたガスバリアーフィルムラミネート樹脂発泡板の、染色試験後の断面画像写真である。 参考例3で得られたガスバリアーフィルムラミネート樹脂発泡板の、染色試験後の断面画像写真である。
本発明のガスバリアーフィルムラミネートスチレン系樹脂発泡板は、スチレン系樹脂発泡板の表面にガスバリアーフィルムを積層したものである。スチレン系樹脂の例としては、ポリスチレン、スチレン-アクリル酸共重合体、スチレン-メタアクリル酸共重合体、スチレン-アクリル酸エステル共重合体、スチレン-メタアクリル酸エステル共重合体、スチレン-無水マレイン酸共重合体、スチレン-アクリロニトリル共重合体、ABS樹脂などが挙げられる。
スチレン系樹脂発泡板は通常、スチレン系樹脂と造核剤などの添加剤を混合した中に、発泡剤を圧入して溶融混練させ、押出機によって押出し発泡させることにより得ることができる。発泡剤の例としては、水;二酸化炭素;プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサンなどの炭化水素類;塩化エチル、塩化メチルなどの塩化アルキル類;炭酸アンモニウム;メチルエーテル、エチルエーテルなどのエーテル類;アセトンなどのケトン類;アルカリ金属の炭酸塩または炭化水素塩;ハイドロフルオロオレフィン及びハイドロクロロフルオロオレフィンなどが挙げられる。これらの中でも、塩化アルキル、ブタン、二酸化炭素、ハイドロフルオロオレフィン及びハイドロクロロフルオロオレフィンが好ましい。
造核剤の例としては、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化チタン、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、シリカ、アルミナ、タルクなどが挙げられる。また、その他必要に応じて難燃剤、紫外線吸収剤、安定剤、酸化防止剤、着色剤などを添加してもよい。更に、熱伝導率を低くするため、グラファイト、カーボンブラック、酸化チタンなどの放射低減剤を添加してもよい。
押出し発泡させて得られたスチレン系樹脂発泡板は、多数の独立気泡(セルともいう)を有する。通常独立気泡の大きさは、気泡径の寸法を発泡板の横方向、縦方向及び厚み方向で測定した気泡径の平均値(平均独立気泡径)で表し、気泡径にばらつきがある場合には厚み方向の各気泡の平均気泡径の平均値で表す(「ASTM D3576」による)。本発明の発泡板の平均独立気泡径は、0.1~0.8mmが好ましく、特に好ましくは0.15~0.3mmである。
また、本件発明で用いるスチレン系樹脂発泡板の密度は、好ましくは20kg/m3以上、さらに好ましくは25kg/m3~40Kg/m3である。
前記ガスバリアーフィルムは、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のプラスチックフィルムの片面にシリカ、アルミナ等の無機物が蒸着されたものやさらにその蒸着面にガスバリアー性を向上させるためのオーバーコートが1層以上なされたもの;PETフィルムにポリ塩化ビニリデン(PVDC)がコートされたもの;ポリエチレン(PE)/エチレン・ビニルアルコール共重合樹脂(EVOH)/ポリエチレン(PE)からなる積層フィルムまたはポリプロピレン(PP)/EVOH/ポリプロピレン(PP)からなる積層フィルムなどの共押フィルムと、二軸延伸ポリスチレン(OPS)または無延伸ポリスチレン(CPS)などのスチレン樹脂フィルムが積層されたフィルムを用いるのが好ましい。上記共押しバリアーフィルムなどの場合には、製膜時にスチレン樹脂も同時に押出しスチレン層を形成してもよい。また、所定温度、時間等の条件下でスチレン系樹脂発泡板の界面セルの損傷を抑制しかつ十分な接着強度を得るためには界面への熱伝導が迅速に行われる必要があり、前記積層フィルムの総厚は100μm以下、好ましくは80μm以下とすることが望ましい。
ガスバリアーフィルムの酸素透過度(23℃、65%RH)は、2cc/m2・日・atm以下であることが好ましく、1cc/m2・日・atm以下であることがより好ましく、0.5cc/m2・日・atm以下であるとさらに好ましい。
また、加工、施行時の衝撃によるバリアー性低下を抑制するためには、ガスバリアーフィルムに耐衝撃性を有するのが好ましい。
スチレン系樹脂発泡板の表面にガスバリアーフィルムを積層し、熱によってスチレン系樹脂発泡体とガスバリアーフィルムを接着させる。本発明において、スチレン系樹脂発泡体とガスバリアーフィルムの接着とは、十分な接着強度で両者が密着していることを表す。具体的には、スチレン系樹脂発泡体とガスバリアーフィルムの90度剥離強度が0.7N/15mm以上、好ましくは0.8N/15mm以上である。このような強度でガスバリアーフィルムとスチレン系樹脂発泡体が接着していることにより、両者の界面からの内部ガスの漏えいを抑制することができる。また、スチレン系樹脂発泡板の独立気泡のうち、スチレン系樹脂発泡板とガスバリアーフィルムとの接触面から垂直方向へ少なくとも3層、好ましくは2層より内部の独立気泡が、損傷を受けない条件で接着する必要がある。ここで損傷とは、独立気泡の壁面の一部が破れて隣接する独立気泡とガスが連通し得る状態を意味する。また、表層に位置する第1層の独立気泡は、開孔しているものと、気泡が残ったものが存在する(図1)。具体的な機構は明らかではないが、スチレン系樹脂発泡板とガスバリアーフィルムを接着する際の条件によっては、スチレン系樹脂発泡板の表層近傍の独立気泡は、熱又は熱に他の要因(例えば圧縮等)が加わることによってその一部が損傷され、独立気泡率が下がると考えられる。独立気泡が損傷されたかどうかは、後述の染色試験で判別することができる。
スチレン系樹脂発泡板の表面にガスバリアーフィルムを積層し、熱によってスチレン系樹脂発泡体とガスバリアーフィルムを接着させる際には、EVA(エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂)、ホットメルト、スチレン樹脂フィルムなどを用いることができるが、スチレン樹脂フィルムによるのが好ましい。スチレン樹脂フィルムとガスバリアーフィルムとの接着に用いる接着性樹脂の例としては、ウレタン系接着剤、などが挙げられる。
ガスバリアーフィルムとスチレン樹脂フィルムを積層したフィルムを熱ロール方式のラミネーション機械により接着する際には、熱ロール表面温度は130℃から150℃で熱ラミネーションすることが好ましい。さらに好ましくは、熱ロール表面温度は140℃から150℃である。
この温度範囲よりも低いと接着強度が弱く剥離し、この温度範囲よりも高いとスチレン系樹脂発泡体の表面層の独立気泡が損傷するからである。
また、熱ラミネーション時の線速は3~7m/分が好ましく、遅すぎると、温度が高い場合と同様にスチレン系樹脂発泡体の表面層の独立気泡が損傷し、速すぎると接着強度が弱く剥離しやすくなることから、好ましくない。
また、熱ラミネーション時の圧力が高すぎると界面セルの損傷が大きくなる。好適圧力の指標としては、熱圧着時のプレス圧によるスチレン系樹脂発泡体およびガスバリアーフィルムの積層品の総厚みの収縮が、0~6mm、好ましくは1~4mmの範囲となるよう制御することが望ましい。熱ロール圧着の場合には、ロール間隔を上記範囲に設定するのが好ましい。
<染色試験>
(i)ガスバリアーフィルム積層スチレン系樹脂発泡板からなる試験体の垂直方向側面4面からの染色液の浸透を防ぐ処理を施し、
(ii)上記染色液浸透防止処理を施していない、試験体の水平方向の面を染色液に浸漬し、
(iii)72時間経過後に、染色液液面から試験体の染色液にて染色された箇所までの高さを計測する。
工程(i)
工程(i)は、ガスバリアーフィルム積層ポリスチレン系樹脂発泡板からなる試験体の垂直方向側面4面からの染色液の浸透を防ぐ工程である。一例として、積層板のフィルム面を含むよう1cm×6cm×0.5cmの直方体に切断した(フィルム面は1cm×6cmとなる)試験片を準備し、例えば建材用の強力粘着アルミ箔テープなどの耐溶剤(アルコール)性フィルムでフィルム面を含む1cm×6cmの面、および0.5cm×6cmの面の計4面を接着することで染色液浸透防止処理を施すことで行うことができる。染色液浸透防止処理は、耐溶剤性フィルムで接着してもよいし、耐溶剤塗料・ワックス等を塗布してもよい。染色液浸透防止処理を行うことによって、底面(1cm×0.5cmの面)のみから浸透液を吸液させ、フィルム接着界面(近傍も含む)における浸透液の浸透高さを観察することができる。
工程(ii)
工程(ii)は、前述の染色液浸透防止処理を施していない、試験体の底面を染色液に浸漬する工程である。染色液としては、インクなどの着色剤を水やアルコールで薄めたものが好ましい。試験体を染色液に浸漬する際には、例えば、ビーカーなどの容器に染色液を入れ、試験体の底面が染色液に接触するように試験体を容器に立て、そのまま所定時間放置することにより行うことができる。染色液は毛細管現象によって試験体に染み込み、垂直方向に登っていく。具体的には、赤色アゾ染料(「アシッドレッド265」)のエタノール溶液を染色液とし、ガスバリアーフィルムラミネート樹脂発泡板を1cm×6cm×0.5cmのサイズに切断し(ガスバリアーフィルムが積層された面が1cm×6cmとなるようにする)、その1cm×6cmの面、および0.5cm×6cmの面の計4面を耐アルコール性アルミテープ(マイクロダクト専用アルミテープ・マグ・イゾベール社)で覆い、底面(0.5cm×1cmの面)以外から染色液が進入しないようにしたものを試験片とする。ガラス製容器に染色液、続いて上記試験体を置き、液が蒸発しないよう蓋をして設置する。その際には、設置後の初期浸透液深さを3.5±1mmの高さとなるように調整する。
工程(iii)
工程(iii)は、所定時間(72時間)経過後に、試験体底面から染色液にて染色された箇所までの高さを計測する工程である。具体的には、前記工程(ii)で染色液に浸漬した試験体を取り出し、染色液浸透防止フィルムを除去する。その後、発泡体底部から染色液が到達した距離を測定するとともに、試験体への染色液の染み込みの程度を観察する。この距離が長いほど、試験体の独立気泡が損傷され、独立気泡率が低いことがわかる。また、試験体を長片方向に切断し、断面をマイクロスコープで観察する。染色液にて染色された距離が長い試験体(独立気泡が熱損傷を受けている試験体)の断面写真から、染色液の浸透は発泡体とガスバリアーフィルムの接触面から垂直方向へ3層まで達していることがわかる。
本件発明のガスバリアーフィルムラミネート樹脂発泡板は、上記染色試験によって計測された染色液の到達高さが20mm以下、好ましくは10mm以下である。前述のように、ガスバリアーフィルムと樹脂発泡板を熱によって接着する際に、両者の接触面近傍の樹脂発泡板は熱等の影響を受けることから、樹脂発泡板の独立気泡の壁面の一部に亀裂が入り、独立気泡率が低下すると考えられる。本発明者らは、ガスバリアーフィルムと樹脂発泡板の接触面近傍の樹脂発泡板の独立気泡の損傷が、ガスバリアーフィルムラミネート樹脂発泡板の長期熱伝導率の低下に大きく関係することを突き止めた。そして、上記染色試験によって染色液の到達高さが大きいものは長期熱伝導率が低下し、染色液の到達高さが小さいものは一年後の長期熱伝導率がほとんど低下せず、良好な断熱性を保つことを見出したものである。
本件発明のガスバリアーフィルムラミネート樹脂発泡板は、ガスバリアーフィルムを積層後一年経過後の熱伝導率が0.024(W/mK)以下である。また、本件発明のガスバリアーフィルムラミネート樹脂発泡板は、ガスバリアーフィルムを積層後、一年経過後の熱伝導率の変化が10%以内、好ましくは5%以内である。このようなガスバリアーフィルムラミネート樹脂発泡板は、製造後長期にわたって良好な断熱性を保つため、建築用途などの断熱材として有用である。なお上記「一年経過後」とは、温度23℃、相対湿度50%及び常圧にて一年間静置した後を意味する。
実施例1-3
ガスバリアーフィルムラミネート樹脂発泡板の作成
シリカ・アルミナ蒸着PET(東洋紡VE100、12μm)の蒸着面に、ポリエチレンイミン誘導体を含む層とテトラエトキシシランの(部分)加水分解物、その(部分)縮合物、またはそれらの混合物により架橋されたポリビニルアルコールを含む層をこの順で形成させる(2層オーバーコートする)ことで厚み約13μmとしたバリアーフィルム(酸素透過率(条件:23℃65%RH):0.1cc/m2・d・atm)を作成した。続いて、バリアーフィルムのオーバーコート面とOPSフィルム(25μm)をウレタン系接着剤でドライラミ―ネートして積層フィルム(40μm)を得た。その積層フィルムのOPS面と製造後10時間のスチレン押出発泡板(ダウ化工(株)製スタイロフォームFG、平均セルサイズ:0.2mm、密度36Kg/m3、発泡板のサイズ:厚さ50mm、幅910mm、長さ1820mm)の910mm×1820mmの2面に熱ロール方式の熱ラミネーション機械により積層した。熱ロールの表面温度を表1に示す条件で、ロール間の間隔は47mm(厚み方向に3mm圧縮)、ラインスピード5.5m/分とした。
評価
染色試験
エタノール(試薬特級・キシダ化学)25mlに、染色液として赤色インク(アゾ染料「アシッドレッド265」(試薬・東京化成))0.125gを加え、染色液を作成した。上記で作成したガスバリアーフィルムラミネート樹脂発泡板を1cm×6cm×0.5cmのサイズに切断し(ガスバリアーフィルムが積層された面が1cm×6cmとなるようにする)、試験体とした。試験体の1cm×6cmの面、および0.5cm×6cmの面の計4面をアルミテープ(マイクロダクト専用アルミテープ・マグ・イゾベール社)で覆い、染色液が進入しないようにした。ガラス製秤量瓶(60mmΦ×80mmH)に染色液を10ml入れ、上記試験体の底面(0.5cm×1cmの面)が染色液に接触するように試験体を設置した(図2)。そのまま72時間室温にて放置し、その後試験体を取り出し、アルミテープを剥離した後、試験体の染色液の染み込みを観察した。
染色液の浸透距離は、試験体の1.0cm×6cmの面のガスバリアーフィルム面から観察し、底面から染色液の染み込みが到達した地点との距離を定規で測定した。このガスバリアーフィルムと樹脂発泡体の境界面の染色液到達高さを表1に示した。また、試験体の縦方向中心部を底部から上部にかけてミクロトーム用ナイフで切断し、切断面の染色液の染み込みをマイクロスコープで観察した。底部近傍は試験片作成時に接着界面が損傷を受けている可能性があるため、底部から3mm部分から液が浸透している部分を観察した(図3)。評価は:接着界面から独立気泡3層目より内部に染色液が浸透しないものを○、独立気泡3層目より内部に染色液が浸透したものを×とした)。染色液の浸透が観られない実施例1の断面画像(写真)を図4に、独立気泡3層目まで染色液が浸透した様子が窺える実施例3の断面画像を図5に示す。
剥離強度測定
15mm幅の試験片のフィルム端部を剥し、精密万能試験機オートグラフ(島津製万能試験機AG-I)により、引張速度300mm/minで90度剥離強度を測定した。天地両面について各3点を測定し、その平均値の低い値の方を採用した。
熱伝導率測定
JIS A 1412に準じて、平均温度23℃での熱伝導率を、初期(すなわちガスバリアーフィルムとスチレン系樹脂発泡板との接着直後)、及び一年経過後(温度23℃、相対湿度50%、常圧の恒温恒湿器内にて、上記接着時から一年間静置した後)について測定した。なお、コントロールは、バリアーフィルムを積層しないスチレン押出発泡板をそのまま使用した。
参考例1
実施例1-3のバリアーフィルムにヒートシール剤(エチレン酢酸ビニル共重合体エマルジョン)を固形分換算で3g/m2塗工したフィルムを使用した以外は、実施例1と同様に熱ラミネーションを行い評価した。結果を表1に示す。
Figure 0007227703000001
実施例4、5
PE12μm/EVOH2μm/PE12μm(PE12μmはEVOHとの接着層も含む)の多層インフレーションバリアーフィルム(26μm、酸素透過率(条件:23℃65%RH):1.8cc/m2・d・atm)を作成した。続いて、バリアーフィルムとOPSフィルム(20μm)をウレタン系接着剤でドライラミ―ネートして積層フィルム(50μm)を得た。そのバリアーフィルム積層フィルムを使用し、熱ロールの表面温度を表1の条件とした以外は、実施例1-3と同様にしてスチレン押出発泡板と貼り合せ、評価を行った。結果を表1に示す。
実施例6
PE18μm/EVOH4μm/PE18μm(PE18μmはEVOHとの接着層も含む)の多層インフレーションバリアーフィルム(40μm、酸素透過率(条件:23℃65%RH):0.9cc/m2・d・atm)を作成した。続いて、バリアーフィルムとCPSフィルム(20μm)をウレタン系接着剤でドライラミ―ネートして積層フィルム(64μm)を得た。そのバリアーフィルム積層フィルムを使用し、熱ロールの表面温度を145℃、ロール間の間隔は48mm(厚み方向に2mm圧縮)、ラインスピード5.0m/分とした以外は、実施例1-3と同様にしてスチレン押出発泡板と貼り合せ、評価を行った。結果を表1に示す。
参考例2
スチレン押出発泡板をダウ化工(株)製スタイロエースII、平均セルサイズ:0.25mm、密度:30Kg/m3に変えた以外は実施例6と同様に熱ラミネーションを行い評価した。コントロールには、スタイロエースIIをそのまま用いた。結果を表1に示す。また、染色液の浸透が界面に僅かに観られる断面画像を図6に示す。
参考例3
熱ロールの表面温度を135℃に変えた以外は参考例2と同様に熱ラミネーションを行い評価した。結果を表1に示す。また染色液がフィルム界面および独立気泡1層目に浸透した様子が窺える断面画像を図7に示す。
本開示は、以下の項目も包含する。
[1]
スチレン系樹脂発泡板と、該スチレン系樹脂発泡板の表面に熱接着されているガスバリアーフィルムとを含むガスバリアーフィルムラミネート樹脂発泡板であって、スチレン系樹脂発泡板の独立気泡のうち、スチレン系樹脂発泡板とガスバリアーフィルムとの接触面から垂直方向へ少なくとも3層より内部の独立気泡が損傷を受けていないことを特徴とするガスバリアーフィルムラミネート樹脂発泡板。
[2]
ガスバリアーフィルムとスチレン系樹脂発泡板とが、ポリスチレンを熱接着性樹脂として用いて熱接着されている、項目1に記載のガスバリアーフィルムラミネート樹脂発泡板。
[3]
スチレン系樹脂発泡板と、該スチレン系樹脂発泡板の表面に熱接着されているガスバリアーフィルムとを含むガスバリアーフィルムラミネート樹脂発泡板であって、下記方法によって計測された染色試験で染色液の到達高さが20mm以下であることを特徴とする、ガスバリアーフィルムラミネート樹脂発泡板。
(i)ガスバリアーフィルムラミネート樹脂発泡板からなる試験体の垂直方向側面4面からの染色液浸透を防ぐ処理を施し、
(ii)上記染色液浸透防止処理を施していない、試験体の水平方向の面を、染色液としての赤色アゾ染料エタノール溶液に浸漬し、
(iii)72時間経過後に、染色液液面から試験体の染色液にて染色された箇所までの高さを計測する。
[4]
ガスバリアーフィルムの酸素透過係数が2cc/日・m 2 ・atm以下である、項目1~3のいずれか一項に記載のガスバリアーフィルムラミネート樹脂発泡板。
[5]
スチレン系樹脂発泡板の表面にガスバリアーフィルムを積層し、熱によってガスバリアーフィルムとスチレン系樹脂発泡板とを接着させることを含む、ガスバリアーフィルムラミネート樹脂発泡板の製造方法であって、スチレン系樹脂発泡板の独立気泡のうち、スチレン系樹脂発泡板とガスバリアーフィルムとの接触面から垂直方向へ少なくとも3層より内部の独立気泡が損傷を受けていないことを特徴とする、方法。
[6]
ガスバリアーフィルムとスチレン系樹脂発泡板との接着を、熱ロール方式によって行う、項目5に記載の方法。
[7]
ガスバリアーフィルムとスチレン系樹脂発泡板との接着を、130℃から150℃の温度での熱圧着によって行う、項目5又は6に記載の方法。
[8]
ガスバリアーフィルムとスチレン系樹脂発泡板との接着後、温度23℃、相対湿度50%及び常圧にて一年間静置したときの熱伝導率の変化が10%以内である、項目5~7のいずれか一項に記載の方法。
[9]
ガスバリアーフィルムとスチレン系樹脂発泡板との接着後、温度23℃、相対湿度50%及び常圧にて一年間静置したときのガスバリアーフィルムラミネート樹脂発泡板の熱伝導率が0.024(W/mK)以下である、項目5~8のいずれか一項に記載のガスバリアーフィルムラミネート樹脂発泡板の製造方法。

Claims (5)

  1. スチレン系樹脂発泡板の両表面にガスバリアーフィルムを積層し、熱によってガスバリアーフィルムとスチレン系樹脂発泡板とを接着させることを含む、ガスバリアーフィルムラミネート樹脂発泡板の製造方法であって、
    前記ガスバリアーフィルムと前記スチレン系樹脂発泡板とが、ポリスチレン樹脂フィルムを熱接着性樹脂として用いて熱ロール方式により熱ロール表面温度130℃~150℃及び線速3m/分~7m/分の条件で熱接着されており、
    スチレン系樹脂発泡板の独立気泡のうち、スチレン系樹脂発泡板とガスバリアーフィルムとの接触面から垂直方向へ少なくとも3層より内部の独立気泡が損傷を受けていないことを特徴とする、方法
  2. スチレン系樹脂発泡板の両表面にガスバリアーフィルムを積層し、熱によってガスバリアーフィルムとスチレン系樹脂発泡板とを接着させることを含む、ガスバリアーフィルムラミネート樹脂発泡板の製造方法であって、
    前記ガスバリアーフィルムと前記スチレン系樹脂発泡板とが、ポリスチレン樹脂フィルムを熱接着性樹脂として用いて熱ロール方式により熱ロール表面温度130℃~150℃及び線速3m/分~7m/分の条件で熱接着されており、
    下記方法によって計測された染色試験で染色液の到達高さが20mm以下であることを特徴とする、方法
    (i)ガスバリアーフィルムラミネート樹脂発泡板からなる試験体の垂直方向側面4面からの染色液浸透を防ぐ処理を施し、但し、前記試験体は、ガスバリアーフィルム面を1cm×6cmの面として含むようにガスバリアーフィルムラミネート樹脂発泡板から切り出した1cm×6cm×0.5cmの直方体であり、前記側面4面は、前記試験体の1cm×6cmの面及び6cm×0.5cmの面であり、
    (ii)上記染色液浸透防止処理を施していない、試験体の水平方向の面を、染色液としての赤色アゾ染料エタノール溶液に浸漬し、
    (iii)72時間経過後に、染色液液面から試験体の染色液にて染色された箇所までの高さを計測する。
  3. ガスバリアーフィルムの酸素透過係数が2cc/日・m2・atm以下である、請求項1又は2に記載の方法
  4. ガスバリアーフィルムとスチレン系樹脂発泡板との接着後、温度23℃、相対湿度50%及び常圧にて一年間静置したときの熱伝導率の変化が10%以内である、請求項のいずれか一項に記載の方法。
  5. ガスバリアーフィルムとスチレン系樹脂発泡板との接着後、温度23℃、相対湿度50%及び常圧にて一年間静置したときのガスバリアーフィルムラミネート樹脂発泡板の熱伝導率が0.024(W/mK)以下である、請求項のいずれか一項に記載のガスバリアーフィルムラミネート樹脂発泡板の製造方法。
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