JP7226442B2 - 二次電池電極用バインダー及びその利用 - Google Patents

二次電池電極用バインダー及びその利用 Download PDF

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Description

本明細書は二次電池電極用バインダー及びその利用に関する。
(関連出願の相互参照)
本出願は、2018年5月30日に出願された日本国特許出願である特願2018-102905の関連出願であり、この日本出願に基づく優先権を主張するものであり、その全内容は、引用により本明細書に組み込まれるものとする。
二次電池として、ニッケル水素二次電池、リチウムイオン二次電池、電気二重層キャパシタ等の様々な蓄電デバイスが実用化されている。これらの二次電池に使用される電極は、活物質及びバインダー等を含む電極合剤層を形成するための組成物を集電体上に塗布・乾燥等することにより作製される。例えばリチウムイオン二次電池では、負極合剤層組成物に用いられるバインダーとして、スチレンブタジエンゴム(SBR)ラテックス及びカルボキシメチルセルロース(CMC)を含む水系のバインダーが使用されている。また、分散性及び結着性に優れるバインダーとして、アクリル酸系重合体水溶液又は水分散液を含むバインダーが知られている。一方、正極合剤層に用いられるバインダーとしては、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)のN-メチル-2-ピロリドン(NMP)溶液が広く使用されている。
一方、各種二次電池の用途が拡大するにつれて、エネルギー密度、信頼性及び耐久性向上への要求が強まる傾向にある。例えば、リチウムイオン二次電池の電気容量を高める目的で、負極用活物質としてシリコン系の活物質を用いる仕様が増えてきている。しかしながら、シリコン系活物質は充放電時の体積変化が大きいことが知られており、繰り返し使用するにつれて電極合剤層の剥離又は脱落等が生じ、その結果、電池の容量が低下し、サイクル特性(耐久性)が悪化するという問題があった。このような不具合を抑制するためには、一般的にはバインダーの結着性を高めることが有効であり、耐久性を改善する目的で、バインダーの結着性向上に関する検討が行われている。
良好な結着性を有し、耐久性向上への効果を奏するバインダーとして、上記アクリル酸系重合体を利用したバインダーが提案されている。
特許文献1では、特定の架橋剤によりポリアクリル酸を架橋したポリマーを結着剤として用いることにより、シリコンを含む活物質を用いた場合であっても電極構造が破壊されることのない電極の提供が可能であることが記載されている。特許文献2には、アクリル酸由来のモノマー単位を構成成分に含み、特定の架橋剤により架橋したポリマーからなるリチウム電池用結着剤が記載され、充放電を繰り返した場合であっても高い容量維持率を示すことが記載されている。特許文献3には、エチレン性不飽和カルボン酸化合物と、水に対して特定の溶解度を有する共重合可能な化合物を含む単量体組成物を重合して得られるリチウムイオン二次電池正極用バインダー組成物が開示され、電池の寿命特性を優れたものとすることができることが記載されている。
国際公開第2014/065407号 国際公開第2015/163302号 国際公開第2016/067635号
特許文献1~3に開示されるバインダーは、いずれも良好な結着性を付与し得るものであるが、二次電池の性能向上に伴い、より結着性の高い電極合剤層が求められるようになっている。
本開示は、このような事情に鑑みてなされたものであり、アクリル酸系重合体等のカルボキシル基を有する重合体をバインダーとして用いた際に、従来よりも結着性の高い二次電池電極合剤層を得ることができる二次電池電極合剤層用組成物を提供する。また、本開示は、上記組成物を用いて得られる二次電池電極を提供する。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、エチレン性不飽和カルボン酸単量体と特定の架橋性単量体を含む単量体組成物を重合して得られた架橋重合体であって、分散安定性に優れる重合体を含有するバインダーを用いた場合に、得られる電極合剤層の結着性をより高いものとすることができるという知見を得た。本開示によれば、こうした知見に基づき以下の手段が提供される。
〔1〕架橋重合体を含有する二次電池電極用バインダーであって、
前記架橋重合体は、非架橋性単量体及び架橋性単量体を含む単量体組成物を重合して得られ、
前記非架橋性単量体は、該非架橋性単量体の総量に対し、エチレン性不飽和カルボン酸単量体を50質量%以上100質量%以下含み、
前記架橋性単量体は、アリル基以外の重合性不飽和基を少なくとも1個有する単量体を含み、
前記架橋重合体は、中和度80~100モル%に中和された後、水媒体中で測定した粒子径が、体積基準メジアン径で0.1μm以上、10μm以下である、二次電池電極用バインダー。
〔2〕前記架橋性単量体の使用量は、前記非架橋性単量体の総量100質量部に対し、0.1質量部以上、10質量部以下である前記〔1〕に記載の非水電解質二次電池電極用バインダー。
〔3〕前記架橋性単量体は、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリルアミド基及びスチリル基からなる群より選ばれる1種以上の重合性不飽和基を有する前記〔1〕又は〔2〕に記載の二次電池電極用バインダー。
〔4〕前記架橋重合体は、該架橋重合体が有するカルボキシル基の50モル%以上が中和された塩である前記〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の二次電池電極用バインダー。
〔5〕二次電池電極用バインダーに用いられる架橋重合体又はその塩の製造方法であって、
沈殿重合法により、非架橋性単量体及び架橋性単量体を含む単量体組成物を重合する重合工程を備え、
前記非架橋性単量体は、該非架橋性単量体の総量に対し、エチレン性不飽和カルボン酸単量体を50質量%以上100質量%以下含み、
前記架橋性単量体は、アリル基以外の重合性不飽和基を少なくとも1個有する単量体を含み、
前記架橋重合体は、中和度80~100モル%に中和された後、水媒体中で測定した粒子径が、体積基準メジアン径で0.1μm以上、10μm以下である、方法。
〔6〕前記〔1〕~〔4〕のいずれかに記載のバインダー、活物質及び水を含む二次電池電極合剤層用組成物。
〔7〕負極活物質として炭素系材料またはケイ素系材料を含む前記〔6〕に記載の二次電池電極合剤層用組成物。
〔8〕集電体表面に、前記〔6〕又は〔7〕に記載の二次電池電極合剤層用組成物から形成される合剤層を備えた二次電池電極。
本開示の二次電池電極用バインダーは、電極活物質等に対して優れた結着性を示す。また、上記バインダーは、集電体とも良好な接着性を発揮することができる。このため、上記バインダーを含む電極合剤層及びこれを備えた電極は、結着性に優れるとともにその一体性を維持することができる。
以下、本開示の代表的かつ非限定的な具体例について、適宜図面を参照して詳細に説明する。この詳細な説明は、本開示の好ましい例を実施するための詳細を当業者に示すことを単純に意図しており、本開示の範囲を限定することを意図したものではない。また、以下に開示される追加的な特徴ならびに開示は、さらに改善された二次電池電極用バインダー及びその利用を提供するために、他の特徴や開示とは別に、又は共に用いることができる。
また、以下の詳細な説明で開示される特徴や工程の組み合わせは、最も広い意味において本開示を実施する際に必須のものではなく、特に本開示の代表的な具体例を説明するためにのみ記載されるものである。さらに、上記及び下記の代表的な具体例の様々な特徴、ならびに、独立及び従属クレームに記載されるものの様々な特徴は、本開示の追加的かつ有用な実施形態を提供するにあたって、ここに記載される具体例のとおりに、あるいは列挙された順番のとおりに組合せなければならないものではない。
本明細書及び/又はクレームに記載された全ての特徴は、実施例及び/又はクレームに記載された特徴の構成とは別に、出願当初の開示ならびにクレームされた特定事項に対する限定として、個別に、かつ互いに独立して開示されることを意図するものである。さらに、全ての数値範囲及びグループ又は集団に関する記載は、出願当初の開示ならびにクレームされた特定事項に対する限定として、それらの中間の構成を開示する意図を持ってなされている。
本開示の二次電池電極用バインダーは、架橋重合体を含有するものであり、活物質及び水と混合することにより電極合剤層用組成物とすることができる。上記の組成物は、集電体への塗工が可能なスラリー状態であってもよいし、湿粉状態として調製し、集電体表面へのプレス加工に対応できるようにしてもよい。銅箔又はアルミニウム箔等の集電体表面に上記組成物から形成される合剤層を形成することにより、本開示の二次電池電極が得られる。
以下に、本開示の二次電池電極用バインダー、当該バインダーを用いて得られる二次電池電極合剤層用組成物及び二次電池電極の各々について詳細に説明する。
尚、本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、アクリル及び/又はメタクリルを意味し、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及び/又はメタクリレートを意味する。また、「(メタ)アクリロイル基」とは、アクリロイル基及び/又はメタクリロイル基を意味する。
<バインダー>
本開示のバインダーは、架橋重合体を含む。当該架橋重合体は、構成単量体単位にエチレン性不飽和カルボン酸単量体を含むものであり、カルボキシル基を有する架橋重合体である。
<架橋重合体の構成単量体>
本開示の架橋重合体(以下、「本重合体」ともいう)は、非架橋性単量体及び架橋性単量体を含む単量体組成物を重合することにより得ることができる。非架橋性単量体は、分子内にエチレン性不飽和官能基を1個のみ有する化合物であり、エチレン性不飽和カルボン酸単量体及びその他のエチレン性不飽和単量体が挙げられる。
<エチレン性不飽和カルボン酸単量体>
エチレン性不飽和カルボン酸単量体(以下、「(a)成分」ともいう)を含む単量体組成物を重合することにより、本重合体へカルボキシル基が導入される。これにより、集電体への接着性が向上するとともに、リチウムイオンの脱溶媒和効果及びイオン伝導性に優れるため、抵抗が小さく、ハイレート特性に優れた電極が得られる。また、水膨潤性が付与されるため、合剤層組成物中における活物質等の分散安定性を高めることができる。
エチレン性不飽和カルボン酸単量体としては、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸;(メタ)アクリルアミドヘキサン酸及び(メタ)アクリルアミドドデカン酸等の(メタ)アクリルアミドアルキルカルボン酸;コハク酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ω-カルボキシ-カプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、β-カルボキシエチル(メタ)アクリレート等のカルボキシル基を有するエチレン性不飽和単量体またはそれらの(部分)アルカリ中和物が挙げられ、これらの内の1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。上記の中でも、重合速度が大きいために一次鎖長の長い重合体が得られ、バインダーの結着力が良好となる点で重合性官能基としてアクリロイル基を有する化合物が好ましく、特に好ましくはアクリル酸である。エチレン性不飽和カルボン酸単量体としてアクリル酸を用いた場合、カルボキシル基含有量の高い重合体を得ることができる。
本重合体における(a)成分の含有量は、特に限定するものではないが、例えば、非架橋性単量体の総量に対して10質量%以上、100質量%以下含むことができる。かかる範囲で(a)成分を含有することで、集電体に対する優れた接着性を容易に確保することができる。下限は、例えば20質量%以上であり、また例えば30質量%以上であり、また例えば40質量%以上である。下限が50質量%以上の場合、電極合剤層用組成物の分散安定性が良好となり、より高い結着力が得られるため好ましく、60質量%以上であってもよく、70質量%以上であってもよく、80質量%以上であってもよい。また、上限は、例えば、99.9質量%以下であり、また例えば99.5質量%以下であり、また例えば99質量%以下であり、また例えば98質量%以下であり、また例えば95質量%以下であり、また例えば90質量%以下であり、また例えば80質量%以下である。範囲としては、こうした下限及び上限を適宜組み合わせた範囲とすることができるが、例えば、10質量%以上、100質量%以下であり、また例えば50質量%以上、100質量%以下であり、また例えば50質量%以上、99.9質量%以下であり、また例えば50質量%以上、98質量%以下であり、また例えば70質量%以上、95質量%以下などとすることができる。
<その他のエチレン性不飽和単量体>
本重合体を構成する非架橋性単量体は、(a)成分以外に、これらと共重合可能なその他のエチレン性不飽和単量体(以下、「(b)成分」ともいう。)を含むことができる。(b)成分としては、例えば、スルホン酸基及びリン酸基等のカルボキシル基以外のアニオン性基を有するエチレン性不飽和単量体化合物、または非イオン性のエチレン性不飽和単量体等が挙げられる。(b)成分を含む単量体組成物を重合することにより、本重合体へスルホン酸基及びリン酸基等のカルボキシル基以外のアニオン性基、または非イオン性の構造単位を導入することができる。これらの内でも、(b)成分としては、耐屈曲性良好な電極が得られる観点から非イオン性のエチレン性不飽和単量体が好ましく、バインダーの結着性が優れる点で(メタ)アクリルアミド及びその誘導体等、並びに、ニトリル基含有エチレン性不飽和単量体が好ましい。また、(b)成分として水中への溶解性が1g/100ml以下の疎水性のエチレン性不飽和単量体に由来する構造単位を導入した場合、電極材料と強い相互作用を奏することができ、活物質に対して良好な結着性を発揮することができる。これにより、堅固で一体性の良好な電極合剤層を得ることができるため好ましい。特に脂環構造含有エチレン性不飽和単量体が好ましい。
(b)成分の割合は、非架橋性単量体の総量に対して0質量%以上、90質量%以下とすることができる。(b)成分の割合は、1質量%以上、60質量%以下であってもよく、2質量%以上、50質量%以下であってもよく、5質量%以上、40質量%以下であってもよく、10質量%以上、30質量%以下であってもよい。また、非架橋性単量体の総量に対して(b)成分を1質量%以上含む場合、電解液への親和性が向上するため、リチウムイオン電導性が向上する効果も期待できる。
(メタ)アクリルアミド誘導体としては、例えば、イソプロピル(メタ)アクリルアミド、t-ブチル(メタ)アクリルアミド等のN-アルキル(メタ)アクリルアミド化合物;N-n-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-イソブトキシメチル(メタ)アクリルアミド等のN-アルコキシアルキル(メタ)アクリルアミド化合物;ジメチル(メタ)アクリルアミド、ジエチル(メタ)アクリルアミド等のN,N-ジアルキル(メタ)アクリルアミド化合物が挙げられ、これらの内の1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
ニトリル基含有エチレン性不飽和単量体としては、例えば、(メタ)アクロリニトリル;(メタ)アクリル酸シアノメチル、(メタ)アクリル酸シアノエチル等の(メタ)アクリル酸シアノアルキルエステル化合物;4-シアノスチレン、4-シアノ-α-メチルスチレン等のシアノ基含有不飽和芳香族化合物;シアン化ビニリデン等が挙げられ、これらの内の1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。上記の中でも、ニトリル基含有量が多い点でアクリロニトリルが好ましい。
脂環構造含有エチレン性不飽和単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸シクロペンチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸メチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸t-ブチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロデシル及び(メタ)アクリル酸シクロドデシル等の脂肪族置換基を有していてもよい(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル;(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸アダマンチル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、並びに、シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート及びシクロデカンジメタノールモノ(メタ)アクリレート等のシクロアルキルポリアルコールモノ(メタ)アクリレート等が挙げられ、これらの内の1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。上記の中でも、重合速度が大きいために一次鎖長の長い重合体が得られ、バインダーの結着力が良好となる点で重合性官能基としてアクリロイル基を有する化合物が好ましい。
その他の非イオン性のエチレン性不飽和単量体としては、例えば(メタ)アクリル酸エステルを用いてもよい。(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル及び(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル化合物;
(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸フェニルメチル、(メタ)アクリル酸フェニルエチル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチル等の芳香族(メタ)アクリル酸エステル化合物;
(メタ)アクリル酸2-メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル等の(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル化合物;
(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル及び(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル化合物等が挙げられ、これらの内の1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。活物質との密着性及びサイクル特性の観点からは、芳香族(メタ)アクリル酸エステル化合物を好ましく用いることができる。
リチウムイオン伝導性及びハイレート特性がより向上する観点から、(メタ)アクリル酸2-メトキシエチル及び(メタ)アクリル酸エトキシエチルなどの(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル等、エーテル結合を有する化合物が好ましく、(メタ)アクリル酸2-メトキシエチルがより好ましい。
非イオン性のエチレン性不飽和単量体の中でも、重合速度が速いために一次鎖長の長い重合体が得られ、バインダーの結着力が良好となる点でアクリロイル基を有する化合物が好ましい。また、非イオン性のエチレン性不飽和単量体としては、得られる電極の耐屈曲性が良好となる点でホモポリマーのガラス転移温度(Tg)が0℃以下の化合物が好ましい。
本重合体は、当該重合体中に含まれるカルボキシル基の一部又は全部が中和された塩の形態であってもよい。塩の種類としては特に限定しないが、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩;カルシウム塩及びバリウム塩等のアルカリ土類金属塩;マグネシウム塩、アルミニウム塩等のその他の金属塩;アンモニウム塩及び有機アミン塩等が挙げられる。これらの中でも電池特性への悪影響が生じにくい点からアルカリ金属塩及びマグネシウム塩が好ましく、アルカリ金属塩がより好ましい。
<架橋性単量体>
本開示における架橋性単量体は、2個以上の重合性不飽和基を有する多官能重合性単量体、及び加水分解性シリル基等の自己架橋可能な架橋性官能基を有する単量体等であって、アリル基以外の重合性不飽和基を少なくとも1個有する単量体である。
上記多官能重合性単量体は、ラジカル重合性不飽和基を分子内に2個以上有し、かつアリル基以外の重合性不飽和基を少なくとも1個有する化合物である。アリル基以外の重合性不飽和基としては、例えば下記一般式(1)及び一般式(2)で表される基等が挙げられる。
CH=C(R)-C(=O)-A- (1)
〔式(1)中、Rは、水素原子、メチル基、ニトリル基又はハロゲン原子を表す。Aは、酸素原子、2価の有機基又は単結合を表す。〕
CH=C(R)-B- (2)
〔式(2)中、Rは水素原子、メチル基、ニトリル基又はハロゲン原子を表す。Bは置換基を有していてもよいアリーレン基を表す。〕
上記一般式(1)中のRが水素原子又はメチル基である場合、Aが単結合であれば一般式(1)は(メタ)アクリロイル基を表し、Aが酸素原子であれば(メタ)アクリロイルオキシ基を表す。また、2価の有機基としてのAは、例えば、NH、NR(Rはアルキル基を表す)、及びアルキレン基等が挙げられる。尚、本明細書では、一般式(1)中のRが水素原子又はメチル基であり、AがNHである場合を「(メタ)アクリルアミド基」という。その他、一般式(1)の具体的な基としては、α-シアノアクロイル基、α-ハロゲンアクリロイル基等が挙げられる。
上記一般式(1)で表される基を有する多官能重合性単量体の具体的な化合物としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-アクリロイロキシプロピルメタクリレート等の多価アルコールのジ(メタ)アクリレート類;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキサイド変性体のトリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ及びヘキサ(メタ)アクリレート等の3価以上の多価アルコールのトリ(メタ)アクリレート、テトラ(メタ)アクリレート等のポリ(メタ)アクリレート;メチレンビスアクリルアミド、ヒドロキシエチレンビスアクリルアミド等のビスアミド類;ジビニルベンゼン等の芳香族ジビニル化合物;(メタ)アクリル酸アリル、(メタ)アクリル酸イソプロペニル、(メタ)アクリル酸ブテニル、(メタ)アクリル酸ペンテニル、(メタ)アクリル酸2-(2-ビニロキシエトキシ)エチル等の(メタ)アクリロイル基及びアルケニル基の両方を有する化合物等を挙げることができる。これらの化合物は、1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記一般式(2)の具体的な基としては、スチリル基等が挙げられる。これらの基を有する多官能重合性単量体の具体的な化合物としては、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン等が挙げられる。
上記自己架橋可能な架橋性官能基を有する単量体の具体的な例としては、加水分解性シリル基含有ビニル単量体、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-メトキシアルキル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの化合物は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
加水分解性シリル基含有ビニル単量体としては、アリル基以外の重合性不飽和基及び加水分解性シリル基を有する単量体であれば、特に限定されない。例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルジメチルメトキシシランン等のビニルシラン類;アクリル酸トリメトキシシリルプロピル、アクリル酸トリエトキシシリルプロピル、アクリル酸メチルジメトキシシリルプロピル等のシリル基含有アクリル酸エステル類;メタクリル酸トリメトキシシリルプロピル、メタクリル酸トリエトキシシリルプロピル、メタクリル酸メチルジメトキシシリルプロピル、メタクリル酸ジメチルメトキシシリルプロピル等のシリル基含有メタクリル酸エステル類;トリメトキシシリルプロピルビニルエーテル等のシリル基含有ビニルエーテル類;トリメトキシシリルウンデカン酸ビニル等のシリル基含有ビニルエステル類等を挙げることができる。
本重合体において、上記架橋性単量体の使用量は、特に限定されるものではないが、非架橋性単量体の総量100質量部に対して好ましくは0.1質量部以上であり、より好ましくは0.5質量部以上である。架橋性単量体の使用量は、例えば1.0質量部以上であってもよく、また例えば2.0質量部以上であってもよく、また例えば3.0質量部以上であってもよい。使用量の上限値は、特に限定されるものではないが、例えば20質量部以下であってもよく、また例えば15質量部以下であってもよく、また例えば10質量部以下であってもよい。さらに例えば、5質量部以下であってもよい。また例えば3質量部以下であってもよい。使用量の範囲については、これらの上限値及び下限値を組み合せることができ、例えば0.1質量部以上20質量部以下であり、また例えば0.1質量部以上10質量部以下であり、また例えば0.5質量部以上10質量部以下である。架橋性単量体の使用量が0.1質量部以上であれば結着性及び合剤層スラリーの安定性がより良好となる点で好ましい。20質量部以下であれば、重合体の安定性が高くなる傾向がある。
同様に、上記架橋性単量体の使用量は、非架橋性単量体の総量に対して0.02~2.5モル%であることが好ましく、0.03~1.5モル%であることがより好ましい。
本重合体は、アリル基以外の重合性不飽和基を有さない架橋性単量体のみにより架橋した架橋重合体に比較して、粒子表面の架橋密度を低くすることができる。この結果、水中での本重合体の表面部分の膨潤度が比較的高く、活物質や集電体との接着面積が確保されるため、本重合体を含むバインダーは良好な結着性を示すと考えられる。ただし、上記の機構は推定であり、本開示の範囲を限定するものではない。
<架橋重合体の粒子径>
本重合体は、合剤層組成物において、当該重合体が大粒径の塊(二次凝集体)として存在することなく、適度な粒径を有する水膨潤粒子として良好に分散していることが、当該架橋重合体を含むバインダーが良好な結着性能を発揮し得るため好ましい。
上記架橋重合体又はその塩は、該架橋重合体が有するカルボキシル基に基づく中和度が80~100モル%であるものを水中に分散させた際の粒子径(水膨潤粒子径)が、体積基準メジアン径で0.1μm以上、10.0μm以下の範囲にあることが好ましい。上記粒子径のより好ましい範囲は0.1μm以上、8.0μm以下であり、さらに好ましい範囲は0.1μm以上、7.0μm以下であり、一層好ましい範囲は0.2μm以上、5.0μm以下であり、より一層好ましい範囲は0.5μm以上、3.0μm以下である。また、好ましい範囲は、0.1μm以上2.0μm以下である。粒子径が0.1μm以上、10.0μm以下の範囲であれば、合剤層組成物中において好適な大きさで均一に存在するため、合剤層組成物の安定性が高く、優れた結着性を発揮することが可能となる。粒子径が10.0μm以下を超えると、上記の通り結着性が不十分となる虞がある。また、平滑性な塗面が得られにくい点で、塗工性が不十分となる虞がある。一方、粒子径が0.1μm未満の場合には、安定製造性の観点において懸念される。
なお、上記水膨潤粒子径は、本明細書実施例に記載の方法により測定することができる。
架橋重合体が未中和若しくは中和度80モル%未満の場合は、アルカリ金属水酸化物等により中和度80~100モル%に中和し、水中に分散させた際の粒子径を測定すればよい。一般に、架橋重合体又はその塩は、粉末または溶液(分散液)の状態では一次粒子が会合、凝集した塊状粒子として存在する場合が多い。上記の水分散させた際の粒子径が上記範囲である場合、当該架橋重合体又はその塩は極めて優れた分散性を有するものであり、中和度80~100モル%に中和して水分散することにより塊状粒子が解れ、ほぼ一次粒子の分散体、若しくは2次凝集体であっても、その粒子径が0.1~10.0μmの範囲内にある、安定な分散状態を形成するものである。
水膨潤粒子径の体積基準メジアン径を個数基準メジアン径で除した値である粒子径分布は、結着性及び塗工性の観点から好ましくは10以下であり、より好ましくは5.0以下であり、さらに好ましくは3.0以下であり、なお好ましくは2.0以下であり、一層好ましくは1.5以下である。上記粒子径分布の下限値は、通常は1.0である。
また、架橋重合体又はその塩の乾燥時における粒子径(乾燥粒子径)は、体積基準メジアン径で0.03μm以上、3μm以下の範囲にあることが好ましい。上記粒子径のより好ましい範囲は0.1μm以上、1μm以下であり、さらに好ましい範囲は0.3μm以上、0.8μm以下である。
本重合体又はその塩は、合剤層組成物中において、中和度が20モル%以上となるように、エチレン性不飽和カルボン酸単量体由来のカルボキシル基等の酸基が中和され、塩の態様として用いられることが好ましい。上記中和度は、より好ましくは50モル%であり、さらに好ましくは60モル%以上であり、一層好ましくは70モル%以上であり、より一層好ましくは80モル%以上であり、特に好ましくは85モル%以上である。中和度の上限値は100モル%であり、98モル%であってもよく95モル%であってもよい。中和度の範囲は、上記下限値及び上限値を適宜組合せることができ、例えば、50モル%以上100モル%以下であってもよく、70モル%以上100モル%以下であってもよく、80モル%以上100モル%以下であってもよい。中和度が20モル%以上の場合、水膨潤性が良好となり分散安定化効果が得やすいという点で好ましい。本明細書では、上記中和度は、カルボキシル基等の酸基を有する単量体及び中和に用いる中和剤の仕込み値から計算により算出することができる。なお、中和度は架橋重合体又はその塩を、減圧条件下、80℃で3時間乾燥処理後の粉末をIR測定し、カルボン酸のC=O基由来のピークとカルボン酸塩のC=O基由来のピークの強度比より確認することができる。
<本重合体又はその塩の製造方法>
本重合体は、溶液重合、沈殿重合、懸濁重合、乳化重合等の公知の重合方法を使用することが可能であるが、生産性の点で沈殿重合及び懸濁重合(逆相懸濁重合)が好ましい。結着性等に関してより良好な性能が得られる点で、沈殿重合、懸濁重合、乳化重合等の不均一系の重合法が好ましく、中でも沈殿重合法がより好ましい。
沈殿重合は、原料である不飽和単量体を溶解するが、生成する重合体を実質溶解しない溶媒中で重合反応を行うことにより重合体を製造する方法である。重合の進行とともにポリマー粒子は凝集及び成長により大きくなり、数十nm~数百nmの一次粒子が数μm~数十μmに二次凝集したポリマー粒子の分散液が得られる。ポリマーの粒子サイズを制御するために分散安定剤を使用することもできる。
尚、分散安定剤や重合溶剤等を選定することにより上記二次凝集を抑制することもできる。一般に、二次凝集を抑制した沈殿重合は、分散重合とも呼ばれる。
沈殿重合の場合、重合溶媒は、使用する単量体の種類等を考慮して水及び各種有機溶剤等から選択される溶媒を使用することができる。より一次鎖長の長い重合体を得るためには、連鎖移動定数の小さい溶媒を使用することが好ましい。
具体的な重合溶媒としては、メタノール、t-ブチルアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、アセトニトリル及びテトラヒドロフラン等の水溶性溶剤の他、ベンゼン、酢酸エチル、ジクロロエタン、n-ヘキサン、シクロヘキサン及びn-ヘプタン等が挙げられ、これらの1種を単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。又は、これらと水との混合溶媒として用いてもよい。本明細書において水溶性溶剤とは、20℃における水への溶解度が10g/100mlより大きいものを指す。
上記の内、粗大粒子の生成や反応器への付着が小さく重合安定性が良好であること、析出した重合体微粒子が二次凝集しにくい(若しくは二次凝集が生じても水媒体中で解れやすい)こと、連鎖移動定数が小さく重合度(一次鎖長)の大きい重合体が得られること、及び後述する工程中和の際に操作が容易であること等の点で、メチルエチルケトン及びアセトニトリルが好ましい。
また、同じく工程中和において中和反応を安定かつ速やかに進行させるため、重合溶媒中に高極性溶媒を少量加えておくことが好ましい。係る高極性溶媒としては、好ましくは水及びメタノールが挙げられる。高極性溶媒の使用量は、媒体の全質量に基づいて好ましくは0.05~20.0質量%であり、より好ましくは0.1~10.0質量%、さらに好ましくは0.1~5.0質量%であり、一層好ましくは0.1~1.0質量%である。高極性溶媒の割合が0.05質量%以上であれば、上記中和反応への効果が認められ、20.0質量%以下であれば重合反応への悪影響も見られない。また、アクリル酸等の親水性の高いエチレン性不飽和カルボン酸単量体の重合では、高極性溶媒を加えた場合には重合速度が向上し、一次鎖長の長い重合体を得やすくなる。高極性溶媒の中でも特に水は上記重合速度を向上させる効果が大きく好ましい。
本重合体又はその塩の製造においては、非架橋性単量体及び架橋性単量体を含む単量体成分を重合する重合工程を備えることが好ましい。非架橋性単量体としては、該非架橋性単量体の総量に対し、エチレン性不飽和カルボン酸単量体を50質量%以上100質量%以下含むことが好ましい。エチレン性不飽和カルボン酸単量体としては、本明細書中、架橋重合体の構成単量体の説明において(a)成分として挙げた化合物を使用することができる。非架橋性単量体は、エチレン性不飽和カルボン酸単量体以外にもその他のエチレン性不飽和単量体を0質量%以上50質量%以下含んでいてもよい。その他のエチレン性不飽和単量体としては、本明細書中、架橋重合体の構成単量体の説明において(b)成分として挙げた化合物を使用することができる。重合工程により得られた重合体には、上記(a)成分及び上記(b)成分に由来する構造単位がそれらの使用量に応じた割合で導入される。
一方、架橋性単量体としては、本重合体における架橋性単量体として挙げた、アリル基以外の重合性不飽和基を少なくとも1個有する単量体を使用することができる。
重合時の単量体濃度については、より一次鎖長の長い重合体を得る観点から高い方が好ましい。ただし、単量体濃度が高すぎると、重合体粒子の凝集が進行し易い他、重合熱の制御が困難となり重合反応が暴走する虞がある。このため、例えば沈殿重合法の場合、重合開始時の単量体濃度は、2~40質量%程度の範囲が一般的であり、好ましくは5~40質量%の範囲である。
なお、本明細書において「単量体濃度」とは、重合を開始する時点における反応液中の単量体濃度を示す。
本重合体は、塩基化合物の存在下に重合反応を行うことにより製造してもよい。塩基化合物存在下において重合反応を行うことにより、高い単量体濃度条件下であっても、重合反応を安定に実施することができる。単量体濃度は、13.0質量%以上であってもよく、好ましくは15.0質量%以上であり、より好ましくは17.0質量%以上であり、更に好ましくは19.0質量%以上であり、一層好ましくは20.0質量%以上である。単量体濃度はなお好ましくは22.0質量%以上であり、より一層好ましくは25.0質量%以上である。一般に、重合時の単量体濃度を高くするほど高分子量化が可能であり、本重合体が架橋重合体である場合には、一次鎖長の長い重合体を製造することができる。
単量体濃度の上限値は、使用する単量体及び溶媒の種類、並びに、重合方法及び各種重合条件等により異なるが、重合反応熱の除熱が可能であれば、沈殿重合では上記の通り概ね40%程度、懸濁重合では概ね50%程度、乳化重合では概ね70%程度である。
上記塩基化合物は、いわゆるアルカリ性化合物であり、無機塩基化合物及び有機塩基化合物の何れを用いてもよい。塩基化合物存在下において重合反応を行うことにより、例えば13.0質量%を超えるような高い単量体濃度条件下であっても、重合反応を安定に実施することができる。また、このような高い単量体濃度で重合して得られた重合体は、分子量が高いため(一次鎖長が長いため)結着性にも優れる。
無機塩基化合物としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等のアルカリ土類金属水酸化物等が挙げられ、これらの内の1種又は2種以上を用いることができる。
有機塩基化合物としては、アンモニア、並びに、モノエチルアミン、ジエチルアミン及びトリエチルアミン、トリ-n-オクチルアミン等有機アミン化合物が挙げられ、これらの内の1種又は2種以上を用いることができる。中でも、重合安定性及び得られる重合体又はその塩を含むバインダーの結着性の観点から、有機アミン化合物が好ましい。
塩基化合物の使用量は、上記エチレン性不飽和カルボン酸単量体に対し、0.001モル%以上4.0モル%以下の範囲とすることが好ましい。塩基化合物の使用量がこの範囲であれば、重合反応を円滑に行うことができる。使用量は、0.05モル%以上4.0モル%以下であってもよく、0.1モル%以上4.0モル%以下であってもよく、0.1モル%以上3.0モル%以下であってもよく、0.1モル%以上2.0モル%以下であってもよい。
尚、本明細書では、塩基化合物の使用量は、エチレン性不飽和カルボン酸単量体に対して用いた塩基化合物のモル濃度を表したものであり、中和度を意味するものではない。すなわち、用いる塩基化合物の価数は考慮しない。
重合開始剤は、アゾ系化合物、有機過酸化物、無機過酸化物等の公知の重合開始剤を用いることができるが、特に限定されるものではない。熱開始、還元剤を併用したレドックス開始、UV開始等、公知の方法で適切なラジカル発生量となるように使用条件を調整することができる。一次鎖長の長い架橋重合体を得るためには、製造時間が許容される範囲内で、ラジカル発生量がより少なくなるように条件を設定することが好ましい。
上記アゾ系化合物としては、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(N-ブチル-2-メチルプロピオンアミド)、2-(tert-ブチルアゾ)-2-シアノプロパン、2,2’-アゾビス(2,4,4-トリメチルペンタン)、2,2’-アゾビス(2-メチルプロパン)等が挙げられ、これらの内の1種又は2種以上を用いることができる。
上記有機過酸化物としては、2,2-ビス(4,4-ジ-t-ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン(日油社製、商品名「パーテトラA」)、1,1-ジ(t-ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン(同「パーヘキサHC」)、1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン(同「パーヘキサC」)、n-ブチル-4,4-ジ(t-ブチルパーオキシ)バレレート(同「パーヘキサV」)、2,2-ジ(t-ブチルパーオキシ)ブタン(同「パーヘキサ22」)、t-ブチルハイドロパーオキサイド(同「パーブチルH」)、クメンハイドロパーオキサイド(日油社製、商品名「パークミルH」)、1,1,3,3-テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド(同「パーオクタH」)、t-ブチルクミルパーオキサイド(同「パーブチルC」)、ジ-t-ブチルパーオキサイド(同「パーブチルD」)、ジ-t-ヘキシルパーオキサイド(同「パーヘキシルD」)、ジ(3,5,5-トリメチルヘキサノイル)パーオキサイド(同「パーロイル355」)、ジラウロイルパーオキサイド(同「パーロイルL」)、ビス(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート(同「パーロイルTCP」)、ジ-2-エチルヘキシルパーオキシジカーボネート(同「パーロイルOPP」)、ジ-sec-ブチルパーオキシジカーボネート(同「パーロイルSBP」)、クミルパーオキシネオデカノエート(同「パークミルND」)、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート(同「パーオクタND」)、t-ヘキシルパーオキシネオデカノエート(同「パーヘキシルND」)、t-ブチルパーオキシネオデカノエート(同「パーブチルND」)、t-ブチルパーオキシネオヘプタノエート(同「パーブチルNHP」)、t-ヘキシルパーオキシピバレート(同「パーヘキシルPV」)、t-ブチルパーオキシピバレート(同「パーブチルPV」)、2,5-ジメチル-2,5-ジ(2-エチルヘキサノイル)ヘキサン(同「パーヘキサ250」)、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート(同「パーオクタO」)、t-ヘキシルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート(同「パーヘキシルO」)、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート(同「パーブチルO」)、t-ブチルパーオキシラウレート(同「パーブチルL」)、t-ブチルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート(同「パーブチル355」)、t-ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート(同「パーヘキシルI」)、t-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート(同「パーブチルI」)、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルモノカーボネート(同「パーブチルE」)、t-ブチルパーオキシアセテート(同「パーブチルA」)、t-ヘキシルパーオキシベンゾエート(同「パーヘキシルZ」)及びt-ブチルパーオキシベンゾエート(同「パーブチルZ」)等が挙げられ、これらの内の1種又は2種以上を用いることができる。
上記無機過酸化物としては、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等が挙げられる。
また、レドックス開始の場合、亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート、アスコルビン酸、亜硫酸ガス(SO)、硫酸第一鉄等を還元剤として用いることができる。
重合開始剤の好ましい使用量は、用いる単量体成分の総量を100質量部としたときに、例えば、0.001~2質量部であり、また例えば、0.005~1質量部であり、また例えば、0.01~0.1質量部である。重合開始剤の使用量が0.001質量部以上であれば重合反応を安定的に行うことができ、2質量部以下であれば一次鎖長の長い重合体を得やすい。
重合温度は、使用する単量体の種類及び濃度等の条件にもよるが、0~100℃が好ましく、20~80℃がより好ましい。重合温度は一定であってもよいし、重合反応の期間において変化するものであってもよい。また、重合時間は1分間~20時間が好ましく、1時間~10時間がより好ましい。
重合工程を経て得られた本重合体分散液は、乾燥工程において減圧及び/又は加熱処理等を行い溶媒留去することにより、目的とする本重合体を粉末状態で得ることができる。この際、上記乾燥工程の前に、未反応単量体(及びその塩)、開始剤由来の不純物等を除去する目的で、重合工程に引き続き、遠心分離及び濾過等の固液分離工程、水、メタノール又は重合溶媒と同一の溶媒等を用いた洗浄工程を備えることが好ましい。上記洗浄工程を備えた場合、本重合体が二次凝集した場合であっても使用時に解れやすく、さらに残存する未反応単量体が除去されることにより結着性や電池特性の点でも良好な性能を示す。
本製造方法では、重合工程により得られた重合体分散液にアルカリ化合物を添加して重合体を中和(以下、「工程中和」ともいう)した後、乾燥工程で溶媒を除去してもよい。また、上記工程中和の処理を行わずに本重合体の粉末を得た後、電極合剤層スラリーを調製する際にアルカリ化合物を添加して、重合体を中和(以下、「後中和」ともいう)してもよい。上記の内、工程中和の方が、二次凝集体が解れやすい傾向にあり好ましい。
<二次電池電極合剤層用組成物>
本発明の二次電池電極合剤層用組成物は、本重合体又はその塩を含有するバインダー、活物質及び水を含む。
本発明の電極合剤層組成物における本重合体又はその塩の使用量は、活物質の全量に対して、例えば、0.1質量%以上20質量%以下である。上記使用量は、また例えば、0.2質量%以上10質量%以下であり、また例えば0.3質量%以上8質量%以下であり、また例えば0.4質量%以上5質量%以下である。本重合体及びその塩の使用量が0.1質量%未満の場合、十分な結着性が得られないことがある。また、活物質等の分散安定性が不十分となり、形成される合剤層の均一性が低下する場合がある。一方、架本重合体及びその塩の使用量が20質量%を超える場合、電極合剤層組成物が高粘度となり集電体への塗工性が低下することがある。その結果、得られた合剤層にブツや凹凸が生じて電極特性に悪影響を及ぼす虞がある。
本重合体及びその塩の使用量が上記範囲内であれば、分散安定性に優れた組成物が得られるとともに、集電体への密着性が極めて高い合剤層を得ることができ、結果として電池の耐久性が向上する。さらに、本橋重合体及びその塩は、活物質に対して少量(例えば5質量%以下)でも十分高い結着性を示し、かつ、カルボキシアニオンを有することから、界面抵抗が小さく、ハイレート特性に優れた電極が得られる。
上記活物質の内、正極活物質としては遷移金属酸化物のリチウム塩を用いることができ、例えば、層状岩塩型及びスピネル型のリチウム含有金属酸化物を使用することができる。層状岩塩型の正極活物質の具体的な化合物としては、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、並びに、三元系と呼ばれるNCM{Li(Ni,Co,Mn)、x+y+z=1}及びNCA{Li(Ni1-a-bCoAlb)}等が挙げられる。また、スピネル型の正極活物質としてはマンガン酸リチウム等が挙げられる。酸化物以外にもリン酸塩、ケイ酸塩及び硫黄等が使用され、リン酸塩としては、オリビン型のリン酸鉄リチウム等が挙げられる。正極活物質としては、上記のうちの1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて混合物又は複合物として使用してもよい。
尚、層状岩塩型のリチウム含有金属酸化物を含む正極活物質を水に分散させた場合、活物質表面のリチウムイオンと水中の水素イオンとが交換されることにより、分散液がアルカリ性を示す。このため、一般的な正極用集電体材料であるアルミ箔(Al)等が腐食される虞がある。このような場合には、バインダーとして未中和又は部分中和された本重合体を用いることにより、活物質から溶出するアルカリ分を中和することが好ましい。また、未中和又は部分中和された本重合体の使用量は、本重合体の中和されていないカルボキシル基量が活物質から溶出するアルカリ量に対して当量以上となるように用いることが好ましい。
正極活物質はいずれも電気伝導性が低いため、導電助剤を添加して使用されるのが一般的である。導電助剤としては、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、カーボンファイバー、黒鉛微粉、炭素繊維等の炭素系材料が挙げられ、これらの内、優れた導電性を得やすい点からカーボンブラック、カーボンナノチューブ及びカーボンファイバー、が好ましい。また、カーボンブラックとしては、ケッチェンブラック及びアセチレンブラックが好ましい。導電助剤は、上記の1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。導電助剤の使用量は、導電性とエネルギー密度を両立するという観点から活物質の全量に対して、例えば、0.2~20質量%とすることができ、また例えば、0.2~10質量%とすることができる。また正極活物質は導電性を有する炭素系材料で表面コーティングしたものを使用してもよい。
一方、負極活物質としては、例えば炭素系材料、リチウム金属、リチウム合金及び金属酸化物等が挙げられ、これらの内の1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの内でも、天然黒鉛、人造黒鉛、ハードカーボン及びソフトカーボン等の炭素系材料からなる活物質(以下、「炭素系活物質」ともいう)が好ましく、天然黒鉛及び人造黒鉛等の黒鉛、並びにハードカーボンがより好ましい。また、黒鉛の場合、電池性能の面から球形化黒鉛が好適に用いられ、その粒子サイズの好ましい範囲は、例えば、1~20μmであり、また例えば、5~15μmである。また、エネルギー密度を高くするために、ケイ素やスズなどのリチウムを吸蔵できる金属又は金属酸化物等を負極活物質として使用することもできる。その中でも、ケイ素は黒鉛に比べて高容量であり、ケイ素、ケイ素合金及び一酸化ケイ素(SiO)等のケイ素酸化物のようなケイ素系材料からなる活物質(以下、「ケイ素系活物質」ともいう)を用いることができる。しかし、上記ケイ素系活物質は高容量である反面充放電に伴う体積変化が大きい。このため、上記炭素系活物質と併用するのが好ましい。この場合、ケイ素系活物質の配合量が多いと電極材料の崩壊を招き、サイクル特性(耐久性)が大きく低下する場合がある。このような観点から、ケイ素系活物質を併用する場合、その使用量は炭素系活物質に対して、例えば、60質量%以下であり、また例えば、30質量%以下である。
本重合体を含むバインダーは、当該重合体がエチレン性不飽和カルボン酸単量体に由来する構造単位((a)成分)を有する。ここで、(a)成分はケイ素系活物質に対する親和性が高く、良好な結着性を示す。このため、本開示のバインダーはケイ素系活物質を含む高容量タイプの活物質を用いた場合にも優れた結着性を示すことから、得られる電極の耐久性向上に対しても有効であるものと考えられる。
炭素系活物質は、それ自身が良好な電気伝導性を有するため、必ずしも導電助剤を添加する必要はない。抵抗をより低減する等の目的で導電助剤を添加する場合、エネルギー密度の観点からその使用量は活物質の総量に対して、例えば、10質量%以下であり、また例えば、5重量%以下である。
二次電池電極合剤層用組成物がスラリー状態の場合、活物質の使用量は、組成物全量に対して、例えば、10~75質量%の範囲であり、また例えば、30~65質量%の範囲である。活物質の使用量が10質量%以上であればバインダー等のマイグレーションが抑えられるとともに、媒体の乾燥コストの面でも有利となる。一方、75質量%以下であれば組成物の流動性及び塗工性を確保することができ、均一な合剤層を形成することができる。
また、湿粉状態で電極合剤層用組成物を調製する場合、活物質の使用量は、組成物全量に対して、例えば、60~97質量%の範囲であり、また例えば、70~90質量%の範囲である。また、エネルギー密度の観点から、バインダーや導電助剤等の活物質以外の不揮発成分は、必要な結着性や導電性が担保される範囲内で出来る限り少ない方がよい。
二次電池電極合剤層用組成物は、媒体として水を使用する。また、組成物の性状及び乾燥性等を調整する目的で、メタノール及びエタノール等の低級アルコール類、エチレンカーボネート等のカーボネート類、アセトン等のケトン類、テトラヒドロフラン、N-メチルピロリドン等の水溶性有機溶剤との混合溶媒としてもよい。混合媒体中の水の割合は、例えば、50質量%以上であり、また例えば、70質量%以上である。
電極合剤層用組成物を塗工可能なスラリー状態とする場合、組成物全体に占める水を含む媒体の含有量は、スラリーの塗工性、および乾燥に必要なエネルギーコスト、生産性の観点から、例えば、25~90質量%の範囲とすることができ、また例えば、35~70質量%とすることができる。また、プレス可能な湿粉状態とする場合、上記媒体の含有量はプレス後の合剤層の均一性の観点から、例えば、3~40質量%の範囲とすることができ、また例えば、10~30質量%の範囲とすることができる。
本開示のバインダーは、本重合体又はその塩のみからなるものであってもよいが、これ以外にもスチレン/ブタジエン系ラテックス(SBR)、アクリル系ラテックス及びポリフッ化ビニリデン系ラテックス等の他のバインダー成分を併用してもよい。他のバインダー成分を併用する場合、その使用量は、活物質に対して、例えば、0.1~5質量%以下とすることができ、また例えば、0.1~2質量%以下とすることができ、また例えば、0.1~1質量%以下とすることができる。他のバインダー成分の使用量が5質量%を超えると抵抗が増大し、ハイレート特性が不十分なものとなる場合がある。上記の中でも、結着性及び耐屈曲性のバランスに優れる点で、スチレン/ブタジエン系ラテックスが好ましい。
上記スチレン/ブタジエン系ラテックスとは、スチレン等の芳香族ビニル単量体に由来する構造単位及び1,3-ブタジエン等の脂肪族共役ジエン系単量体に由来する構造単位を有する共重合体の水系分散体を示す。上記芳香族ビニル単量体としては、スチレンの他にα-メチルスチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼン等が挙げられ、これらの内の1種又は2種以上を用いることができる。上記共重合体中における上記芳香族ビニル単量体に由来する構造単位は、主に結着性の観点から、例えば、20~60質量%の範囲とすることができ、また例えば、30~50質量%の範囲とすることができる。
上記脂肪族共役ジエン系単量体としては、1,3-ブタジエンの他に2-メチル-1,3-ブタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2-クロロ-1,3-ブタジエン等が挙げられ、これらの内の1種又は2種以上を用いることができる。上記共重合体中における上記脂肪族共役ジエン系単量体に由来する構造単位は、バインダーの結着性及び得られる電極の柔軟性が良好なものとなる点で、例えば、30~70質量%の範囲とすることができ、また例えば、40~60質量%の範囲とすることができる。
スチレン/ブタジエン系ラテックスは、上記の単量体以外にも、結着性等の性能をさらに向上させるために、その他の単量体として(メタ)アクリロニトリル等のニトリル基含有単量体、(メタ)アクリル酸、イタンコン酸、マレイン酸等のカルボキシル基含有単量体を共重合単量体として用いてもよい。
上記共重合体中における上記その他の単量体に由来する構造単位は、例えば、0~30質量%の範囲とすることができ、また例えば、0~20質量%の範囲とすることができる。
本開示の二次電池電極合剤層用組成物は、上記の活物質、水及びバインダーを必須の構成成分とするものであり、公知の手段を用いて各成分を混合することにより得られる。各成分の混合方法は特段制限されるものではなく、公知の方法を採用することができるが、活物質、導電助剤及びバインダーであるカルボキシル基含有重合体粒子等の粉末成分をドライブレンドした後、水等の分散媒と混合し、分散混練する方法が好ましい。電極合剤層用組成物をスラリー状態で得る場合、分散不良や凝集のないスラリーに仕上げることが好ましい。混合手段としては、プラネタリーミキサー、薄膜旋回式ミキサー及び自公転式ミキサー等の公知のミキサーを使用することができるが、短時間で良好な分散状態が得られる点で薄膜旋回式ミキサーを使用して行うことが好ましい。また、薄膜旋回式ミキサーを用いる場合は、予めディスパー等の攪拌機で予備分散を行うことが好ましい。また、上記スラリーの粘度は、60rpmにおけるB型粘度として、例えば、500~100,000mPa・sの範囲とすることができ、また例えば、1,000~50,000mPa・sの範囲とすることができる。
一方、電極合剤層用組成物を湿粉状態で得る場合、ヘンシェルミキサー、ブレンダ―、プラネタリーミキサー及び2軸混練機等を用いて、濃度ムラのない均一な状態まで混練することが好ましい。
<二次電池用電極>
本開示の二次電池用電極は、銅又はアルミニウム等の集電体表面に上記電極合剤層用組成物から形成される合剤層を備えてなるものである。合剤層は、集電体の表面に本開示の電極合剤層用組成物を塗工した後、水等の媒体を乾燥除去することにより形成される。合剤層組成物を塗工する方法は特に限定されず、ドクターブレード法、ディップ法、ロールコート法、コンマコート法、カーテンコート法、グラビアコート法及びエクストルージョン法などの公知の方法を採用することができる。また、上記乾燥は、温風吹付け、減圧、(遠)赤外線、マイクロ波照射等の公知の方法により行うことができる。
通常、乾燥後に得られた合剤層には、金型プレス及びロールプレス等による圧縮処理が施される。圧縮することにより活物質及びバインダーを密着させ、合剤層の強度及び集電体への密着性を向上させることができる。圧縮により合剤層の厚みを、例えば、圧縮前の30~80%程度に調整することができ、圧縮後の合剤層の厚みは4~200μm程度が一般的である。
本開示の二次電池用電極にセパレータ及び電解液を備えることにより、二次電池を作製することができる。電解液は液状であってもよく、ゲル状であってもよい。
セパレータは電池の正極及び負極間に配され、両極の接触による短絡の防止や電解液を保持してイオン導電性を確保する役割を担う。セパレータにはフィルム状の絶縁性微多孔膜であって、良好なイオン透過性及び機械的強度を有するものが好ましい。具体的な素材としては、ポリエチレン及びポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリテトラフルオロエチレン等を使用することができる。
電解液は、活物質の種類に応じて一般的に使用される公知のものを用いることができる。リチウムイオン二次電池では、具体的な溶媒として、プロピレンカーボネート及びエチレンカーボネート等の高誘電率で電解質の溶解能力の高い環状カーボネート、並びに、エチルメチルカーボネート、ジメチルカーボネート及びジエチルカーボネート等の粘性の低い鎖状カーボネート等が挙げられ、これらを単独で又は混合溶媒として使用することができる。電解液は、これらの溶媒にLiPF、LiSbF、LiBF、LiClO、LiAlO等のリチウム塩を溶解して使用される。ニッケル水素二次電池では、電解液として水酸化カリウム水溶液を使用することができる。二次電池は、セパレータで仕切られた正極板及び負極板を渦巻き状又は積層構造にしてケース等に収納することにより得られる。
以上説明したように、本明細書に開示される二次電池電極用バインダーは、合剤層において電極材料との優れた結着性と集電体との優れた接着性とを示すこのため、上記バインダーを使用して得られた電極を備えた二次電池は、良好な一体性を確保でき、充放電を繰り返しても良好な耐久性(サイクル特性)を示すと予想され、車載用二次電池等に好適である。
また、本明細書の開示によれば、二次電池電極用バインダーの製造方法並びに二次電池用電極の製造方法及び二次電池用電極も提供される。
以下、実施例に基づいて本開示を具体的に説明する。尚、本開示は、これらの実施例により限定されるものではない。尚、以下において「部」及び「%」は、特に断らない限り質量部及び質量%を意味する。
≪本重合体塩の製造≫
(製造例1:架橋重合体塩R-1の製造)
重合には、攪拌翼、温度計、還流冷却器及び窒素導入管を備えた反応器を用いた。
反応器内にアセトニトリル567部、イオン交換水2.20部、アクリル酸(以下、「AA」という)100部、トリメチロールプロパントリメタクリレート(共栄社化学社製、商品名「ライトエステルTMP」)0.20部、及び上記AAに対して1.0モル%に相当するトリエチルアミンを仕込んだ。反応器内を十分に窒素置換した後、加温して内温を55℃まで昇温した。内温が55℃で安定したことを確認した後、重合開始剤として2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業社製、商品名「V-65」)0.040部を添加したところ、反応液に白濁が認められたため、この点を重合開始点とした。単量体濃度は15.0%と算出された。外温(水バス温度)を調整して内温を55℃に維持しながら重合反応を継続し、重合開始点から6時間経過した時点で内温を65℃まで昇温した。内温を65℃で維持し、重合開始点から12時間経過した時点で反応液の冷却を開始し、内温が25℃まで低下した後、水酸化リチウム・一水和物(以下、「LiOH・HO」という)の粉末52.5部を添加した。添加後室温下12時間撹拌を継続して、架橋重合体塩R-1(Li塩、中和度90モル%)の粒子が媒体に分散したスラリー状の重合反応液を得た。また、液クロ分析により、得られた重合体は、仕込み通りの組成であることを確認した。
(架橋重合体塩R-1(Li中和物)の膨潤前平均粒子径測定)
上記で得られた架橋重合体塩R-1を含む重合反応液を、アセトニトリルを分散媒とするレーザー回折/散乱式粒度分布計(マイクロトラックベル社製、マイクロトラックMT-3300EXII)にて粒子径測定を行った。体積基準メジアン径は0.52μmであった。
得られた重合反応液を遠心分離して重合体粒子を沈降させた後、上澄みを除去した。その後、重合反応液と同重量のアセトニトリルに沈降物を再分散させた後、遠心分離により重合体粒子を沈降させて上澄みを除去する洗浄操作を2回繰り返した。沈降物を回収し、減圧条件下、80℃で3時間乾燥処理を行い、揮発分を除去することにより、カルボキシル基含有重合体塩R-1の粉末を得た。架橋重合体塩R-1は吸湿性を有するため、水蒸気バリア性を有する容器に密封保管した。なお、カルボキシル基含有重合体塩R-1の粉末をIR測定し、カルボン酸のC=O基由来のピークとカルボン酸LiのC=O由来のピークの強度比より中和度を求めたところ、仕込みからの計算値に等しく90モル%であった。
(架橋重合体塩R-1(Li中和物)の水媒体中での平均粒子径測定)
上記で得られた架橋重合体塩R-1の粉末0.25g、及びイオン交換水49.75gを100ccの容器に量りとり、自転/公転式攪拌機(シンキー社製、あわとり錬太郎AR-250)にセットした。次いで、撹拌(自転速度2000rpm/公転速度800rpm、7分)、さらに脱泡(自転速度2200rpm/公転速度60rpm、1分)処理を行い架橋重合体塩R-1(中和度90モル%)が水に膨潤した状態のハイドロゲルを作成した。
次に、イオン交換水を分散媒とするレーザー回折/散乱式粒度分布計(マイクロトラックベル社製、マイクロトラックMT-3300EXII)にて上記ハイドロゲルの粒度分布測定を行った。ハイドロゲルに対し、過剰量の分散媒を循環しているところに、適切な散乱光強度が得られる量のハイドロゲルを投入したところ、数分後に測定される粒度分布形状が安定した。安定を確認次第、体積基準の粒度分布測定を行い、平均粒子径としてメジアン径(D50)を求めたところ、1.7μmであった。また、以下の基準に従い単分散性を評価した結果、(体積基準メジアン径/個数基準メジアン径)で表される粒子径分布は1.3であり、単分散性は「◎」と判断された。
評価基準;
◎:体積基準メジアン径/個数基準メジアン径が1.5未満
○:体積基準メジアン径/個数基準メジアン径が1.5以上、3.0未満
△:体積基準メジアン径/個数基準メジアン径が3.0以上、10未満
×:体積基準メジアン径/個数基準メジアン径が10以上
(製造例2~24:架橋重合体塩R-2~R-24の製造)
各原料の仕込み量を表1及び表2に記載の通りとした以外は製造例1と同様の操作を行い、架橋重合体塩R-2~R-24を含む重合反応液を得た。
次いで、各重合反応液について製造例1と同様の操作を行い、粉末状の架橋重合体塩R-2~R-24を得た。各架橋重合体塩は、水蒸気バリア性を有する容器に密封保管した。
尚、製造例16では、LiOH・HOの粉末の代わりにNaOHを用いることにより、架橋重合体Na塩(中和度90モル%)を得た。
製造例1と同様の操作により、各重合体塩の膨潤前粒子径、並びに、水膨潤状態における平均粒子径及び粒子径分布を測定し、結果を表1及び表2に示した。
Figure 0007226442000001
Figure 0007226442000002
表1及び表2において用いた化合物の詳細を以下に示す。
AA:アクリル酸
DMAA:ジメチルアクリルアミド
HEA:ヒドロキシエチルアクリレート
TMPTMA:トリメチロールプロパントリメタクリレート(共栄社化学社製、商品名「ライトエステルTMP」)
EDGMA:エチレングリコールジメタクリレート(冨士フィルム和光純薬社製、試薬「二メタクリル酸エチレン」)
HAPMA:2-ヒドロキシ-3-アクリロイロキシプロピルメタクリレート(共栄社化学社製、商品名「ライトエステルG-201P」)
DPEPA:ジペンタエリスリトールペンタ及びヘキサアクリレート(東亞合成社製、商品名「アロニックスM-403」)
PETA:ペンタエリスリトールテトラアクリレート(新中村化学社製、商品名「A-TMMT」)
TMPTA:トリメチロールプロパントリアクリレート(東亞合成社製、商品名「アロニックスM-309」)
HDDA:1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(大阪有機化学工業社製、商品名「ビスコート#230」)
DVB:ジビニルベンゼン
MBAM:メチレンビスアクリルアミド
T-20:トリメチロールプロパンジアリルエーテル(ダイソー社製、商品名「ネオアリルT-20」)
TEA:トリエチルアミン
TOA:トリ-n-オクチルアミン
AcN:アセトニトリル
V-65:2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(冨士フィルム和光純薬社製)
尚、「アロニックス」は東亞合成社の登録商標である。
(電極の評価)
活物質として、負極用活物質である黒鉛、又はケイ素粒子及び黒鉛を用い、架橋重合体塩をバインダーとして用いた合剤層用組成物について、その安定性及び形成された合剤層/集電体間の剥離強度(すなわちバインダーの結着性)を測定した。黒鉛としては天然黒鉛(日本黒鉛社製、商品名「CGB-10」)、ケイ素粒子としては(Sigma-Aldrich、Siナノパウダー、粒子径<100nm)を使用した。
実施例1
天然黒鉛100部に粉末状の架橋重合体Li塩R-1を3.2部秤量し、予めよく混合した後、イオン交換水160部を加えてディスパーで予備分散を行った後、薄膜旋回式ミキサー(プライミクス社製、FM-56-30)を用いて周速度20m/秒の条件で本分散を15秒間行うことにより、スラリー状の負極合剤層用組成物を得た。スラリー濃度(固形分)は、39.2%と算出された。
<90°剥離強度(結着性)>
可変式アプリケーターを用いて、厚さ20μmの銅箔(日本製箔社製)上に上記合剤層用組成物を塗布し、通風乾燥機内で100℃×15分間の乾燥を行うことにより合剤層を形成した。その後、合剤層の厚みが70±5μm、充填密度が1.70±0.20g/cmになるよう圧延し、負極電極を作製した。
上記で得られた負極電極を25mm幅の短冊状に裁断した後、水平面に固定された両面テープに上記試料の合剤層面を貼付け、剥離試験用試料を作成した。試験用試料を60℃、1晩減圧条件下で乾燥させた後、引張速度50mm/分における90°剥離を行い、合剤層と銅箔間の剥離強度を測定した。剥離強度は16.0N/mと高く、良好であった。
実施例2~24、及び比較例1~2
活物質及びバインダーとして使用するカルボキシル基含有重合体塩を表3~表5の通り用いた以外は実施例1と同様の操作を行うことにより合剤層組成物を調製した。なお、実施例3及び実施例4では、天然黒鉛及びケイ素粒子を、遊星ボールミル(FRITSCH社製、P-5)を用いて400rpmで1時間撹拌し、得られた混合物に粉末状の架橋重合体Li塩R-2を3.2部秤量し、予めよく混合した後、実施例1と同様の操作を行うことにより合剤層組成物を調製した。各合剤層組成物について90°剥離強度を評価し、結果を表3~表5に示した。
Figure 0007226442000003
Figure 0007226442000004
Figure 0007226442000005
各実施例は、本開示に属する二次電池電極用バインダーを含む電極合剤層組成物及びこれを用いて電極を作製したものである。各合剤層組成物から得られた電極の合剤層と集電体との剥離強度はいずれも高い値が得られており、優れた結着性を示すものであった。
一方、架橋性単量体を使用していない重合体塩による比較例1、及びアリル基以外の重合性不飽和基を持たない架橋性単量体による架橋重合体塩を用いた比較例2の剥離強度は、実施例に比較すると低い値であった。
本開示の二次電池電極用バインダーは、合剤層において優れた結着性を示すこのため、上記バインダーを使用して得られた電極を備えた二次電池は、良好な耐久性(サイクル特性)を示すと予想され、車載用二次電池への適用が期待される。また、シリコンを含む活物質の使用にも有用であり、電池の高容量化への寄与が期待される。
本開示の二次電池電極用バインダーは、特に非水電解質二次電池電極に好適に用いることができ、中でも、エネルギー密度が高い非水電解質リチウムイオン二次電池に有用である。

Claims (7)

  1. 架橋重合体を含有する二次電池電極用バインダーであって、
    前記架橋重合体は、非架橋性単量体及び架橋性単量体を含む単量体組成物を重合して得られ、
    前記非架橋性単量体は、該非架橋性単量体の総量に対し、エチレン性不飽和カルボン酸単量体を50質量%以上100質量%以下含み、
    前記架橋性単量体は、
    エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート及び2-ヒドロキシ-3-アクリロイロキシプロピルメタクリレートからなる多価アルコールのジ(メタ)アクリレート;3価以上の多価アルコールのポリ(メタ)アクリレート;並びにメチレンビスアクリルアミド及びヒドロキシエチレンビスアクリルアミドからなるビスアミドから選択される1種又は2種以上の単量体を含み、
    前記架橋重合体は、中和度80~100モル%に中和された後、水媒体中で測定した粒子径が、体積基準メジアン径で0.1μm以上、10μm以下である、二次電池電極用バインダー。
  2. 前記架橋性単量体の使用量は、前記非架橋性単量体の総量100質量部に対し、0.1質量部以上、10質量部以下である請求項1に記載の非水電解質二次電池電極用バインダー。
  3. 前記架橋重合体は、該架橋重合体が有するカルボキシル基の50モル%以上が中和された塩である請求項1又は2に記載の二次電池電極用バインダー。
  4. 二次電池電極用バインダーに用いられる架橋重合体又はその塩の製造方法であって、
    沈殿重合法により、非架橋性単量体及び架橋性単量体を含む単量体組成物を重合する重合工程を備え、
    前記非架橋性単量体は、該非架橋性単量体の総量に対し、エチレン性不飽和カルボン酸単量体を50質量%以上100質量%以下含み、
    前記架橋性単量体は、
    エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート及び2-ヒドロキシ-3-アクリロイロキシプロピルメタクリレートからなる多価アルコールのジ(メタ)アクリレート;3価以上の多価アルコールのポリ(メタ)アクリレート;並びにメチレンビスアクリルアミド及びヒドロキシエチレンビスアクリルアミドからなるビスアミドから選択される1種又は2種以上の単量体を含み、
    前記架橋重合体は、中和度80~100モル%に中和された後、水媒体中で測定した粒子径が、体積基準メジアン径で0.1μm以上、10μm以下である、方法。
  5. 請求項1~のいずれか1項に記載のバインダー、活物質及び水を含む二次電池電極合剤層用組成物。
  6. 負極活物質として炭素系材料またはケイ素系材料を含む請求項に記載の二次電池電極合剤層用組成物。
  7. 集電体表面に、請求項5又は6に記載の二次電池電極合剤層用組成物から形成される合剤層を備えた二次電池電極。
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WO2017073589A1 (ja) 2015-10-30 2017-05-04 東亞合成株式会社 非水電解質二次電池電極用バインダー及びその製造方法、並びに、その用途

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