(実施形態)
以下、本発明の実施形態を、図面に基づいて説明する。なお、一つの実施形態に対して適用可能な各種の変形例については、当該実施形態に関する一連の説明の途中に挿入されると当該実施形態の理解が妨げられるおそれがある。このため、変形例は、実施形態の説明の後にまとめて記載する。
(第一実施形態:構成)
図1を参照すると、物体検知装置1は、移動体としての車両Vに搭載されることで、当該車両Vの周囲の物体Bを検知するように構成されている。物体検知装置1が車両Vに搭載された状態を、以下「車載状態」と称する。また、本実施形態に係る物体検知装置1を搭載する車両Vを、以下「自車両」と称する。
物体検知装置1は、いわゆる超音波センサとしての構成を有している。具体的には、物体検知装置1は、超音波である送信波を外部に向けて送信するように構成されている。また、物体検知装置1は、外部に送信した送信波の物体Bによる反射波を受信することで、周囲の物体Bを検知するとともに当該物体Bに対応する測距情報を取得するように構成されている。
物体検知装置1は、送受信部2と、駆動信号生成部3と、受信信号処理部4と、制御部5とを備えている。物体検知装置1は、送受信部2、駆動信号生成部3、受信信号処理部4、および制御部5を、一個のセンサ筐体により支持した構成を有している。
本実施形態においては、物体検知装置1は、送受信一体型の構成を有している。すなわち、物体検知装置1は、一個の送受信部2を備えることで、当該送受信部2にて送受信機能を奏するように構成されている。具体的には、送受信部2は、送信部20Aと受信部20Bとを有している。また、送受信部2は、一個のトランスデューサ21を有している。送信部20Aおよび受信部20Bは、共通のトランスデューサ21を用いて、送信機能および受信機能をそれぞれ実現するように構成されている。
トランスデューサ21は、送信波を外部に向けて送信する送信器としての機能と、物体Bによる送信波の反射波を含む受信波を受信する受信器としての機能とを有している。具体的には、トランスデューサ21は、略円筒形状のマイクロフォン筐体に圧電素子等の電気-機械エネルギー変換素子を内蔵した、超音波マイクロフォンとして構成されている。
車載状態にて、トランスデューサ21は、自車両の外表面に面する位置に配置されることで、送信波を自車両の外部に送信可能および反射波を自車両の外部から受信可能に設けられている。具体的には、トランスデューサ21は、車載状態にて、自車両における外板部材V1に形成された貫通孔である装着孔V2から送受信面21aが自車両の外部空間に露出するように、外板部材V1に装着されている。外板部材V1は、例えば、バンパーまたはボディパネルであって、合成樹脂または金属製の板材によって形成されている。送受信面21aは、トランスデューサ21におけるマイクロフォン筐体の外表面であって、送信波の送信面および受信波の受信面として機能するように設けられている。
送受信部2は、トランスデューサ21と、送信回路22と、受信回路23とを備えている。トランスデューサ21は、送信回路22および受信回路23と電気接続されている。送信部20Aは、トランスデューサ21と送信回路22とによって構成されている。また、受信部20Bは、トランスデューサ21と受信回路23とによって構成されている。
送信回路22は、入力された駆動信号に基づいてトランスデューサ21を駆動することで、トランスデューサ21にて駆動信号の周波数に対応する周波数の送信波を発信させるように設けられている。駆動信号の周波数を、以下「駆動周波数」と称する。具体的には、送信回路22は、デジタル/アナログ変換回路等を有している。すなわち、送信回路22は、駆動信号生成部3から出力された駆動信号に対してデジタル/アナログ変換等の信号処理を施すことで、素子入力信号を生成するように構成されている。素子入力信号は、トランスデューサ21、すなわち、トランスデューサ21に設けられた電気-機械エネルギー変換素子を駆動するための交流電圧信号である。そして、送信回路22は、生成した素子入力信号をトランスデューサ21に印加してトランスデューサ21における電気-機械エネルギー変換素子を駆動することで、送受信面21aを励振して送信波を外部に送信するように構成されている。
受信回路23は、トランスデューサ21による受信波の受信結果に対応する受信信号を生成して受信信号処理部4に出力するように設けられている。具体的には、受信回路23は、増幅回路およびアナログ/デジタル変換回路等を有している。すなわち、受信回路23は、トランスデューサ21が出力した素子出力信号に対して、増幅およびアナログ/デジタル変換等の信号処理を施すことで、受信信号を生成するように構成されている。素子出力信号は、受信波の受信により送受信面21aが励振された際に、トランスデューサ21に設けられた電気-機械エネルギー変換素子にて発生する、交流電圧信号である。また、受信回路23は、受信波の振幅および周波数に関する情報が含まれる、生成した受信信号を、受信信号処理部4に出力するように構成されている。
このように、送受信部2は、トランスデューサ21により、送信波を送信するとともに物体Bからの反射波を受信波として受信することで、受信波の周波数およびトランスデューサ21と物体Bとの距離に応じた受信信号を生成するように構成されている。送受信器としてのトランスデューサ21が、自身の送信した送信波の反射波を受信した場合の受信波を、以下「正規波」と称する。これに対し、他装置からの送信波に起因する受信波を、以下「非正規波」と称する。「他装置」には、自車両に搭載された他のトランスデューサ21も含まれる。
駆動信号生成部3は、制御部5から受信した制御信号に基づいて、駆動信号を生成して送信部20Aに向けて出力するように設けられている。駆動信号は、送信部20Aを駆動してトランスデューサ21から送信波を送信させるための信号であって、例えば超音波帯域内の周波数を有するパルス状信号である。駆動信号の具体例については、後述の動作概要説明の欄にて説明する。制御信号は、駆動信号生成部3から送信部20Aへの駆動信号の出力を制御するための信号である。
駆動信号生成部3は、波形パターンに応じて符号化される送信波における当該波形パターンに対応する駆動信号を生成および出力するように構成されている。また、駆動信号生成部3は、互いに異なる波形パターンを有する複数種の駆動信号を、選択的に生成および出力可能に構成されている。さらに、駆動信号生成部3は、送信波の送信処理開始から送信処理終了までの間に、複数の駆動信号を連続的に生成および出力可能に構成されている。送信波の送信処理開始から送信処理終了までの間に出力される、複数の駆動信号の各々を、以下「区分駆動信号」と称する。区分駆動信号の詳細については、後述の動作概要説明の欄にて説明する。
本実施形態においては、駆動信号生成部3は、少なくとも先頭送信波が、周波数変調により符号化されるような、駆動信号を生成するようになっている。「先頭送信波」は、送信処理開始から送信処理終了までの間に連続的に送信される複数の送信波のうち、最初に送信される送信波である。送信処理開始から送信処理終了までの間に連続的に送信される複数の送信波のうち、先頭送信波の後に送信される送信波を「後続送信波」と称する。先頭送信波は「第一送信波」に対応する。後続送信波は「第二送信波」に対応する。1つの送信波の送信処理開始から送信処理終了までの間に連続的に送信される先頭送信波および後続送信波を総称して、以下「区分送信波」と称することがある。区分送信波の詳細については、後述の動作概要説明の欄にて説明する。
具体的には、駆動信号生成部3は、先頭送信波にてチャープ波となり後続送信波にてチャープ波またはCW波となるような駆動信号を生成するようになっている。チャープ波は、時間経過とともに周波数が上昇または低下する波である。CW波は、周波数が一定の波である。CWはcontinuous waveformの略である。CW波はCF波とも称される。CFはcontinuous frequencyの略である。
このように、駆動信号生成部3は、送信処理開始から送信処理終了までの間に連続的に送信される複数の区分送信波の各々を周波数変調態様に応じて符号化するような駆動信号を、生成および出力するようになっている。すなわち、駆動信号生成部3は、送信波を、区分送信波の数に相当するビット数の複数ビットで符号化するようになっている。また、本実施形態においては、駆動信号生成部3は、先頭送信波にてV字チャープ波となるような駆動信号を生成および出力するようになっている。V字チャープ波とは、時間経過とともに周波数がV字状または逆V字状に変化する波である。
受信信号処理部4は、受信信号に対してFFT等の処理を施すことで、振幅信号と周波数信号とを生成するように構成されている。FFTはFast Fourier Transformの略である。振幅信号は、受信波の振幅に対応する信号である。周波数信号は、受信波の周波数に対応する信号である。すなわち、周波数信号は、受信信号における、符号化に関連する波形パターンに対応する信号である。
制御部5は、物体検知装置1の全体の動作を制御するように設けられている。具体的には、本実施形態においては、制御部5は、周知のマイクロコンピュータであって、CPU、ROM、不揮発性リライタブルメモリ、RAM、入出力インタフェース、等を備えている。すなわち、制御部5は、ROMまたは不揮発性リライタブルメモリに記憶されたプログラムを読み出して実行することで、各種処理を実行するように構成されている。CPUはCentral Processing Unitの略である。ROMはRead Only Memoryの略である。不揮発性リライタブルメモリは、例えば、EPROM、EEPROM、フラッシュメモリ、等である。EPROMはErasable Programmable Read Only Memoryの略である。EEPROMはElectrically Erasable Programmable Read Only Memoryの略である。RAMはRandom access memoryの略である。ROM、不揮発性リライタブルメモリ、およびRAMは、非遷移的実体的記憶媒体である。
制御部5は、送信波の送信を制御するとともに、受信波に基づいて物体Bを検知するように構成されている。具体的には、制御部5は、マイクロコンピュータ上にて実現される機能構成として、送信制御部51と検知部52とを有している。
送信制御部51は、駆動信号生成部3に制御信号を出力することで、送信部20Aからの送信波の発信状態を制御するように構成されている。具体的には、送信制御部51は、駆動信号生成部3にて生成および出力される駆動信号における、波形パターンおよび出力タイミングを、制御信号により設定するようになっている。
検知部52は、受信回路23から出力された受信信号に基づいて、物体Bを検知するように設けられている。具体的には、検知部52は、受信信号処理部4から出力された周波数信号と、所定の参照信号とに基づいて、受信波が正規波であるか否かを判定するようになっている。また、検知部52は、受信波が正規波である場合に、受信信号処理部4から出力された振幅信号に基づいて、物体Bの存在およびトランスデューサ21と物体Bとの距離を検知するようになっている。具体的には、本実施形態においては、検知部52は、参照信号格納部521と、周波数シフト検出部522と、受信判定部523と、検知判定部524とを有している。
参照信号格納部521には、駆動信号における波形パターンに対応する参照信号が格納されている。参照信号の詳細については、後述の動作概要説明の欄にて説明する。周波数シフト検出部522は、自車両と物体Bとの相対移動に伴う相対速度による、送信波と反射波との間の周波数シフト量を検出するようになっている。周波数シフト量の検出の詳細については、後述の動作概要説明の欄にて説明する。
受信判定部523は、参照信号と、受信信号における波形パターンに対応する周波数信号と、周波数シフト検出部522にて検出した周波数シフト量とに基づいて、反射波の受信判定を行うようになっている。具体的には、受信判定部523は、検出された周波数シフト量を考慮しつつ、周波数信号の波形と参照信号の波形とのパターンマッチングを実行することで、受信波が正規波であるか否かを判定するようになっている。受信判定部523による判定動作の詳細については、後述の動作概要説明の欄にて説明する。
検知判定部524は、受信波が正規波であることが受信判定部523にて判定され、且つ振幅信号が所定の判定閾値以上である場合に、物体Bの存在を検知するようになっている。また、検知判定部524は、物体Bの存在を検知した場合に、振幅信号に基づいて、トランスデューサ21と物体Bとの距離に対応する測距情報を生成するようになっている。
(第一実施形態:動作概要)
以下、本実施形態の構成による動作の概要について、典型的な動作例、および、同構成により奏される効果とともに、各図面を参照しつつ説明する。
所定の物体検知条件が成立すると、物体検知装置1は、物体検知動作を開始する。物体検知条件は、例えば、自車両の走行速度が所定範囲内であること、自車両のシフトポジションが後退を含む走行ポジションであること、等を含む。物体検知条件が不成立となると、物体検知装置1は、物体検知動作を終了する。
物体検知動作中、送信制御部51は、所定周期で送信処理開始タイミングの到来を判定する。所定周期は、例えば、数百ミリ秒周期である。送信処理開始タイミングの到来判定は、タイマ等の計時手段を用いて実行される。送信処理開始タイミングが到来すると、送信制御部51は、制御信号を駆動信号生成部3に向けて出力する。これにより、送信処理が実行される。
具体的には、駆動信号生成部3は、制御信号が入力されると、駆動信号を生成して送信部20Aすなわち送信回路22に向けて出力する。送信回路22は、入力された駆動信号に基づいて、トランスデューサ21を駆動する。すると、送信器として機能するトランスデューサ21は、駆動信号の周波数に対応する周波数の超音波である送信波を、自車両の外部に向けて送信する。このようにして、物体検知装置1は、物体検知動作中、送信波を所定周期で繰り返し送信する。このため、上記の所定周期は「送信周期」とも称される。なお、理想的には、送信波の周波数は、駆動信号の周波数と略一致する。但し、トランスデューサ21を含む送信部20Aの、駆動周波数に対する追従性の関係から、送信波の周波数と駆動周波数との間に、若干の差あるいは遅延が生じる。
図2は、1回の送信処理における送信処理開始から送信処理終了までに駆動信号生成部3から出力される、駆動信号SDの一例を示す。図2等において、縦軸fは周波数を示し、横軸Tは時間を示す。図2に示されているように、本動作例においては、駆動信号SDは、送信処理開始タイミングTT0から送信処理終了タイミングTTEまでの間に、3つの区分駆動信号SD1~SD3を含む。すなわち、本動作例においては、駆動信号生成部3は、3つの区分駆動信号SD1~SD3を含む駆動信号SDを、所定周期で出力する。区分駆動信号SD1等は、送信処理開始タイミングTT0から送信処理終了タイミングTTEまでの間継続する駆動信号SDを、送信波の符号化ビット数に相当する個数に細分化したものに相当する。上記の通り、送信処理開始タイミングTT0は、物体検知条件の成立中、所定周期で繰り返し到来する。時刻TT0~TT1間の時間間隔と、時刻TT1~TT2間の時間間隔と、時刻TT2~TTE間の時間間隔とは、略等しい。
複数の区分駆動信号SD1等は、時間的に連続して出力される。すなわち、複数の区分駆動信号SD1等のうちの、互いに隣接するもの同士の間には、インターバル期間は設けられない。これについての詳細については後述する。また、複数の区分駆動信号SD1等の各々は、周波数変調態様に応じて符号化されている。例えば、図2に示された具体例においては、時刻TT0~TT1間の先頭駆動信号SD1は、時間経過とともに周波数がV字状に変化する駆動周波数特性を有している。
具体的には、先頭駆動信号SD1における駆動周波数変化態様は、以下の通りである。時刻TT0にて、駆動周波数は、中間周波数fcである。中間周波数fcは送受信部2すなわちトランスデューサ21の共振周波数f0と略等しい。駆動周波数は、中間周波数fcから最低周波数fminにまで一旦低下した後に上昇に転じる。時刻TT1にて、駆動周波数は、最高周波数fmaxである。fmax>f0である。中間周波数fcから最低周波数fminまでの周波数低下速度と、最低周波数fminから最高周波数fmaxまでの周波数上昇速度とは、略等しい。中間周波数fcから最低周波数fminまでの周波数低下時間よりも、最低周波数fminから最高周波数fmaxまでの周波数上昇時間の方が長い。したがって、先頭駆動信号SD1は、中間周波数fcから最低周波数fminにまで一旦低下するものの、実質的には「アップチャープ」状の周波数変化態様を有している。先頭ビットすなわち1ビット目である先頭駆動信号SD1には、アップチャープ状の周波数変化態様に対応する符号「1」が付与される。
時刻TT1にて、駆動信号SDは、先頭駆動信号SD1から中間駆動信号SD2に切り替わる。すなわち、先頭駆動信号SD1と中間駆動信号SD2とは、時間的に連続する。換言すれば、先頭駆動信号SD1の終了時刻と、中間駆動信号SD2の開始時刻とは、一致する。時刻TT1~TT2間の中間駆動信号SD2は、時間経過とともに周波数がV字状に変化する駆動周波数特性を有している。
中間駆動信号SD2における駆動周波数変化態様は、先頭駆動信号SD1における駆動周波数変化態様と同様である。すなわち、中間駆動信号SD2における駆動周波数変化は、以下の通りである。時刻TT1にて、駆動周波数は、中間周波数fcである。駆動周波数は、中間周波数fcから最低周波数fminにまで一旦低下した後に上昇に転じる。時刻TT2にて、駆動周波数は、最高周波数fmaxである。中間周波数fcから最低周波数fminまでの周波数低下速度と、最低周波数fminから最高周波数fmaxまでの周波数上昇速度とは、略等しい。中間周波数fcから最低周波数fminまでの周波数低下時間よりも、最低周波数fminから最高周波数fmaxまでの周波数上昇時間の方が長い。したがって、中間駆動信号SD2は、中間周波数fcから最低周波数fminにまで一旦低下するものの、実質的には「アップチャープ」状の周波数変化態様を有している。2ビット目である中間駆動信号SD2には、アップチャープ状の周波数変化態様に対応する符号「1」が付与される。
時刻TT2にて、駆動信号SDは、中間駆動信号SD2から末端駆動信号SD3に切り替わる。すなわち、中間駆動信号SD2と末端駆動信号SD3とは、時間的に連続する。時刻TT2~TTE間の末端駆動信号SD3は、時間経過とともに周波数が逆V字状に変化する駆動周波数特性を有している。
末端駆動信号SD3における駆動周波数変化態様は、先頭駆動信号SD1における駆動周波数変化態様とは逆である。すなわち、末端駆動信号SD3における駆動周波数変化は、以下の通りである。時刻TT2にて、駆動周波数は、中間周波数fcである。駆動周波数は、中間周波数fcから最高周波数fmaxにまで一旦上昇した後に低下に転じる。時刻TTEにて、駆動周波数は、最低周波数fminである。fmin<f0である。中間周波数fcから最高周波数fmaxまでの周波数上昇速度と、最高周波数fmaxから最低周波数fminまでの周波数低下速度とは、略等しい。中間周波数fcから最高周波数fmaxまでの周波数上昇時間よりも、最高周波数fmaxから最低周波数fminまでの周波数低下時間の方が長い。したがって、末端駆動信号SD3は、中間周波数fcから最高周波数fmaxにまで一旦上昇するものの、実質的には「ダウンチャープ」状の周波数変化態様を有している。3ビット目である末端駆動信号SD3には、ダウンチャープ状の周波数変化態様に対応する符号「0」が付与される。
図2に示されているように、符号「0」に対応するダウンチャープ状の周波数変化態様における周波数帯域を、ダウンチャープ周波数帯域fbdと称する。このダウンチャープ周波数帯域fbdは、最高周波数fmaxから最低周波数fminまでの周波数範囲である。また、符号「1」に対応するアップチャープ状の周波数変化態様における周波数帯域を、アップチャープ周波数帯域fbuと称する。このアップチャープ周波数帯域fbuも、最低周波数fminから最高周波数fmaxまでの周波数範囲である。すなわち、ダウンチャープ周波数帯域fbdとアップチャープ周波数帯域fbuとは、略同一となるように設定されている。また、アップチャープ周波数帯域fbuおよびダウンチャープ周波数帯域fbdは、それぞれ、共振周波数f0を含むように設定されている。
送信回路22は、入力された駆動信号SDに基づいてトランスデューサ21を駆動することで、トランスデューサ21にて超音波帯域内の送信波を発信させる。上記の通り、駆動信号SDは、複数の区分駆動信号SD1等を有している。複数の区分駆動信号SD1等の各々は、周波数変調態様に応じて符号化されている。このため、複数の区分駆動信号SD1等の各々に対応する区分送信波は、区分駆動信号SD1等における駆動周波数の変調態様に対応する周波数変調態様を有することとなる。すなわち、区分送信波は、区分駆動信号SD1等における周波数変調態様に応じて符号化される。区分送信波は、区分駆動信号に対応する送信波である。すなわち、区分送信波は、送信処理開始タイミングTT0から送信処理終了タイミングTTEまでの間の1回の送信処理中に送信される一連の送信波を、区分駆動信号に対応して細分化したものに相当する。
このように、本実施形態においては、駆動信号生成部3は、複数の区分送信波に含まれる先頭送信波に対応する駆動信号である先頭駆動信号SD1を生成して送信部20Aに向けて出力する。また、駆動信号生成部3は、複数の区分送信波に含まれる後続送信波に対応する駆動信号である中間駆動信号SD2および末端駆動信号SD3を生成して送信部20Aに向けて出力する。すると、送信部20Aは、送信処理開始から送信処理終了までの間に、複数の区分送信波を含む送信波を送信する。複数の区分送信波は、送信処理開始から送信処理終了までの間に連続的に送信され、且つ各々が波形パターンに応じて符号化される。これにより、送信波は、複数ビットの符号配列を有するように符号化される。
本動作例においては、送信処理開始タイミングTT0から送信処理終了タイミングTTEまでの間に送信される一連の送信波は、3つの区分駆動信号SD1~SD3のそれぞれに対応する3つの区分送信波を含む。3つの区分送信波の各々は、3つの区分駆動信号SD1~SD3の各々における周波数変化態様に対応してチャープ符号化される。
例えば、図2に示された具体例においては、1ビット目である先頭駆動信号SD1に対応する先頭送信波は、先頭駆動信号SD1の波形パターンすなわちアップチャープに対応する符号「1」で符号化される。また、2ビット目である中間駆動信号SD2に対応する区分送信波は、中間駆動信号SD2の波形パターンすなわちアップチャープに対応する符号「1」で符号化される。さらに、3ビット目である末端駆動信号SD3に対応する区分送信波は、末端駆動信号SD3の波形パターンすなわちダウンチャープに対応する符号「0」で符号化される。
図2に示された駆動信号SDに対応する送信波は、「110」という3ビット符号を有している。すなわち、1ビット目、2ビット目、および3ビット目の符号は、それぞれ、「1」「1」「0」である。同様に、本実施形態においては、送信波には、「100」「111」「010」「011」「001」等の3ビット符号を付与することが可能である。このように、本実施形態に係る物体検知装置1、および、これにより実行される物体検知方法によれば、送信波を複数ビットで符号化することで、識別精度を従来よりも向上することが可能となる。
物体検知動作中における所定の受信可能期間にて、受信部20Bは、受信動作を実行する。受信可能期間は、送受信一体型である本実施形態の構成においては、送信処理終了タイミングTTEとその直後に到来する次の送信処理開始タイミングTT0との間の期間のうち、残響等の影響による不感帯を除いた期間である。受信器としてのトランスデューサ21は、受信可能期間にて、受信波の振幅および周波数に応じた交流電圧信号である素子出力信号を出力する。
受信回路23は、素子出力信号に対して増幅およびアナログ/デジタル変換等の信号処理を施すことで、受信信号を生成する。受信信号処理部4は、受信信号に対してFFT等の処理を施すことで、振幅信号および周波数信号を生成する。受信信号処理部4は、生成した振幅信号および周波数信号を、制御部5に出力する。
上記の通り、駆動信号SDに含まれる複数の区分駆動信号SD1等は、それぞれ、符号に対応して周波数変調されている。また、送信波の周波数は、駆動信号SDの周波数である駆動周波数に応じたものとなる。このため、送信波は、駆動周波数の時間的変化に対応する周波数変化を、識別性に対応する特徴として有することとなる。したがって、受信波が正規波である場合、受信信号は、周波数変調状態について、送信波と同様の特徴を有しているはずである。
そこで、制御部5における検知部52は、受信信号処理部4から出力された周波数信号に基づいて、受信波が正規波であるか否かを判定する。具体的には、受信判定部523は、受信信号における波形パターンに対応する周波数信号と、参照信号格納部521に格納された参照信号とを照合することで、反射波の受信判定を行う。
図3は、参照信号格納部521に格納された参照信号SSの具体例を示す。符号「0」に対応するダウンチャープ参照信号SSDは、時間経過とともに周波数が逆V字状に変化する駆動周波数特性を有している。ダウンチャープ参照信号SSDの波形は、図2に示された具体例における末端駆動信号SD3のような、符号「0」に対応する区分駆動信号の波形に対応して形成されている。具体的には、ダウンチャープ参照信号SSDは、周波数が共振周波数f0から一旦上昇した後に共振周波数f0よりも低周波数側に低下する周波数特性を有している。
これに対し、符号「1」に対応するアップチャープ参照信号SSUは、時間経過とともに周波数がV字状に変化する駆動周波数特性を有している。アップチャープ参照信号SSUの波形は、図2に示された具体例における先頭駆動信号SD1のような、符号「1」に対応する区分駆動信号の波形に対応して形成されている。具体的には、アップチャープ参照信号SSUは、周波数が共振周波数f0から一旦低下した後に共振周波数f0よりも高周波数側に上昇する周波数特性を有している。
自車両と物体Bとが、ともに停止している場合、送信波の周波数と、当該送信波の物体Bによる反射波である受信波の周波数とは、ほぼ一致する。この場合、受信波における周波数信号の波形と、参照信号の波形とは、縦軸を周波数fとし横軸を時間Tとするタイムチャート上において、ほぼ一致する。
しかしながら、実際は、自車両と物体Bとのうちの少なくともいずれか一方が移動している場合が多い。典型的には、少なくとも自車両が移動している。あるいは、自車両と物体Bとの双方が、互いに異なる移動態様で移動している。移動態様には、移動の際の、速度、加速度、および方向が含まれる。移動態様には停止も含まれる。自車両と物体Bとで移動態様が異なる場合、送信波と受信波との間での周波数シフトが発生する。図4は、このような周波数シフトを概念的に図示する。図4において、実線は、受信信号SRの周波数特性、すなわち上記の周波数信号を概略的に示す。また、破線は、参照信号SSの周波数特性を概略的に示す。
例えば、物体Bが自車両に接近している場合、図4に示されているように、受信信号SRの周波数が参照信号SSの周波数よりも高くなる。このような場合、周波数シフトは、受信信号SRと参照信号SSとのうちの一方を他方に向かってΔfオフセット移動したような態様で発生する。Δfは周波数シフト量である。周波数シフト量Δfは、ドップラーシフト量とほぼ等しいとみなすことができる。
周波数シフト量Δfは、下記の式(1)で示される。式(1)において、Nはサンプル数であり、frは受信信号の周波数であり、Rは参照信号SSの周波数である。周波数シフト検出部522は、自車両と物体Bとの相対移動に伴う相対速度による、送信波と反射波との間の周波数シフト量Δfを、式(1)を用いて算出する。
物体Bと自車両との相対速度Δvは、下記の式(2)で示される。式(2)において、cは音速である。なお、自車両と物体Bとの相対速度を、以下単に「相対速度」と略称することがある。
受信判定部523は、受信信号SRにおける波形パターンに対応する周波数信号と、周波数シフト検出部522にて検出した周波数シフト量Δfと、参照信号SSとに基づいて、反射波の受信判定を行う。具体的には、受信判定部523は、検出された周波数シフトを考慮しつつ、周波数信号の波形と参照信号SSの波形とのパターンマッチングを実行することで、受信波が正規波であるか否かを判定する。
本実施形態においては、受信判定部523は、平均二乗誤差MSEを用いてパターンマッチングを実行する。すなわち、受信判定部523は、平均二乗誤差MSEを、下記式(3)により算出する。
また、受信判定部523は、平均二乗誤差MSEが所定の符号判定閾値よりも小さくなった場合に、参照信号SSにおける周波数変化態様に対応する符号を有するチャープ信号が受信波に含まれていると判定する。そして、受信判定部523は、上記の「110」等の、送信波に含まれる所定の符号配列が受信波にも含まれている場合に、受信波が正規波であると判定する。そして、検知判定部524は、受信波が正規波である場合に、受信信号処理部4から出力された振幅信号に基づいて、物体Bを検知する。
図5は、図2に示された駆動信号SDに対応する送信波の物体Bによる反射波が、正規波として受信された場合の、受信判定処理の概要を示す。図5において、一番上のタイムチャートは、受信信号SRに対応する周波数信号を示す。
図5における中段のタイムチャートは、上記式(2)により算出された相対速度Δvを示す。すなわち、上から二番目のタイムチャートにおけるΔv_UPは、符号「1」に対応するアップチャープ参照信号SSUを参照信号SSとして用いた場合の、相対速度Δvの算出結果である。上から三番目のタイムチャートにおけるΔv_DNは、符号「0」に対応するダウンチャープ参照信号SSDを参照信号SSとして用いた場合の、相対速度Δvの算出結果である。
図5における一番下に示されたタイムチャートは、上記式(3)により算出された平均二乗誤差MSEを示す。実線で示されたMSE_UPは、符号「1」に対応するアップチャープ参照信号SSUを参照信号SSとして用いた場合の、平均二乗誤差MSEの算出結果である。破線で示されたMSE_DNは、符号「0」に対応するダウンチャープ参照信号SSDを参照信号SSとして用いた場合の、平均二乗誤差MSEの算出結果である。水平な一点鎖線で示されたMSE_THは、符号判定閾値である。また、横軸にて矢印で示されたTR1等は、平均二乗誤差MSEが符号判定閾値MSE_THよりも小さくなり且つ極小値となったときの時刻を示す。特に、先頭駆動信号SD1および先頭送信波に対応する、最先の時刻TR1は、「受信時刻」とも称される。
図2に示されているように、本動作例において、駆動信号SDは、符号「1」に対応するアップチャープ状の波形パターンを有する先頭駆動信号SD1を有している。また、駆動信号SDは、符号「1」に対応するアップチャープ状の波形パターンを有する中間駆動信号SD2を有している。さらに、駆動信号SDは、符号「0」に対応するダウンチャープ状の波形パターンを有する末端駆動信号SD3を有している。これにより、送信波には、「110」の符号が付与される。
図5に示されているように、時刻TR1にて、アップチャープ状の波形パターンに対応する平均二乗誤差MSE_UPは、符号判定閾値MSE_THよりも小さくなり且つ極小値となる。よって、受信波における、時刻TR1に対応する1ビット目の波形パターンに、符号「1」に対応する波形パターンが含まれていることが判定される。なお、時刻TR1における平均二乗誤差MSE_UPの値に対応する、相対速度の算出値Δv_UPは、実際の相対速度Δv=0km/hと略一致する。
同様に、時刻TR1よりも後の時刻TR2にて、アップチャープ状の波形パターンに対応する平均二乗誤差MSE_UPは、符号判定閾値MSE_THよりも小さくなり且つ極小値となる。ここで、送信波および反射波の伝播速度である音速は、自車両およびその周囲の物体Bの移動速度に比して充分速い。このため、時刻TR1と時刻TR2とで、周波数シフト量Δfすなわち相対速度Δvは、ほぼ不変であるとみなすことが可能である。このため、時刻TR2における平均二乗誤差MSE_UPの値に対応する、相対速度の算出値Δv_UPは、1ビット目で算出された相対速度Δvとほぼ一致するはずである。
この点、時刻TR2における平均二乗誤差MSE_UPの値に対応する、相対速度の算出値Δv_UPは、判定窓Δvwの範囲内に入る。判定窓Δvwは、1ビット目で算出された相対速度Δv=0km/hを中心とした、所定幅の相対速度範囲である。よって、受信波における、時刻TR2に対応する2ビット目の波形パターンに、符号「1」に対応する波形パターンが含まれていることが判定される。
また、時刻TR2よりも後の時刻TR3にて、ダウンチャープ状の波形パターンに対応する平均二乗誤差MSE_DNは、符号判定閾値MSE_THよりも小さくなり且つ極小値となる。ここで、上記と同様に、時刻TR1と時刻TR3とで、周波数シフト量Δfすなわち相対速度Δvは、ほぼ不変であるとみなすことが可能である。このため、時刻TR3における平均二乗誤差MSE_DNの値に対応する、相対速度の算出値Δv_DNは、1ビット目で算出された相対速度Δvとほぼ一致するはずである。
この点、時刻TR3における平均二乗誤差MSE_DNの値に対応する、相対速度の算出値Δv_DNは、判定窓Δvwの範囲内に入る。よって、受信波における、時刻TR3に対応する3ビット目の波形パターンに、符号「0」に対応する波形パターンが含まれていることが判定される。
ところで、図5における一番上のタイムチャートにて点線で囲んだ部分にて、ダウンチャープ参照信号SSDにおける波形パターンに類似した波形の周波数変化パターンが発生している。この部分は、先頭送信波に対応する反射波と、先頭送信波の直後に送信された後続送信波に対応する反射波との間の部分である。また、時刻TRFにて、平均二乗誤差MSE_DNは、符号判定閾値MSE_THよりも小さくなり且つ極小値となる。よって、時刻TRFに対応して、受信波における、先頭の符号「1」に対応する波形パターンの直後に、符号「0」に対応する波形パターンが含まれているように見える。
しかしながら、かかる周波数変化パターンは、図2に示されているような、先頭駆動信号SD1と中間駆動信号SD2との間の切り替えに起因するものである。すなわち、かかる周波数変化パターンは、ダウンチャープ様の区分駆動信号によって意図的に符号「0」が付与された区分送信波に起因するものではない。
ところで、トランスデューサ21を含む送信部20Aは、所定の共振周波数f0を有している。かかる共振型の送信部20Aにおいて、共振周波数f0から離れた駆動周波数では、周波数の追従性が悪い。このため、駆動周波数が、時刻TT1までは最高周波数fmaxに向かって上昇し、時刻TT1にて中間周波数fcに不連続的に低下し、さらにその後最低周波数fminに向かって低下したことに起因して、上記の周波数変化パターンが発生する。
このように、符号化の意図とは無関係に発生する周波数変化パターンを、「偽符号」と称する。図2~図5に示された本動作例にて、このような偽符号が、時刻TR1に対応する符号「1」と時刻TR2に対応する符号「1」との間の、ダウンチャープ様の符号「0」として誤って判定されると、識別精度が低下する。偽符号は、例えば、連続する2つの区分駆動信号の間の切り替え部分にて発生する。あるいは、偽符号は、例えば、2つの反射波を連続的に受信した場合に発生する。
この点、本動作例においては、受信波における、時刻TR1に対応する1ビット目の波形パターンに、符号「1」に対応する波形パターンが含まれていることが判定されている。また、かかる1ビット目の判定結果に基づいて、相対速度Δv=0km/hが算出されている。一方、時刻TRFに対応する、相対速度の算出値Δv_DNは、判定窓Δvwの範囲内には入らない。これにより、時刻TRFに対応する受信波の波形パターンが偽符号であることが判定される。
以上詳述したように、本実施形態においては、受信信号SRにおける波形パターンに対応する周波数信号と、先頭駆動信号SD1における波形パターンに対応する参照信号SSとに基づいて、1ビット目の受信判定が行われる。また、かかる1ビット目の受信判定結果に基づいて、2ビット目以降の受信判定が行われる。すなわち、パターンマッチングに、1ビット目で算出された相対速度Δvを基準とした相対速度判定が組み合わせられる。これにより、偽符号が良好に鑑別される。
具体的には、1ビット目の受信判定にて、周波数シフト量Δfが算出される。また、算出された周波数シフト量Δfに基づいて、相対速度Δvが算出される。そして、1ビット目における相対速度Δvの算出値に基づいて設定した相対速度範囲である判定窓Δvwに、2ビット目以降についての相対速度Δvの算出値が入るか否かによって、2ビット目以降についての符号判定が行われる。また、上記のように、偽符号は、複数の反射波信号をオーバラップして受信した場合も発生し得る。この場合、信頼性の高い、オーバラップしていない先頭ビットを基準に、後続ビットを判定することで、精度良い判定が可能となる。したがって、本実施形態に係る物体検知装置1、および、これにより実行される物体検知方法によれば、偽符号による誤判定が良好に抑制され、以て、識別精度を従来よりも向上することが可能となる。
本実施形態においては、検知部52は、先頭駆動信号SD1における波形パターンに対応する参照信号SSに基づいて、先頭送信波に対応する反射波の受信判定を行う。また、検知部52は、後続の区分駆動信号SD2等における波形パターンに対応する参照信号SSに基づいて、後続送信波に対応する反射波の受信判定を行う。
かかる構成および方法においては、先頭駆動信号SD1における波形パターンに応じて符号化された先頭送信波に対応する反射波の受信判定が、先頭駆動信号SD1における波形パターンに対応する参照信号SSに基づいて行われる。また、中間駆動信号SD2における波形パターンに応じて符号化された後続送信波に対応する反射波の受信判定が、中間駆動信号SD2における波形パターンに対応する参照信号SSに基づいて行われる。同様に、末端駆動信号SD3における波形パターンに応じて符号化された後続送信波に対応する反射波の受信判定が、末端駆動信号SD3における波形パターンに対応する参照信号SSに基づいて行われる。したがって、本実施形態に係る物体検知装置1、および、これにより実行される物体検知方法によれば、受信判定精度をよりいっそう向上することが可能となる。
本実施形態においては、検知部52は、周波数シフト検出部522を有する。周波数シフト検出部522は、自車両と物体Bとの相対速度による送信波と反射波との間の周波数シフト量Δfを検出する。また、検知部52は、先頭送信波に対応する反射波から検出した周波数シフト量Δfに基づいて、後続送信波に対応する反射波の受信判定を行う。
具体的には、周波数シフト検出部522は、1ビット目である先頭送信波に対応する反射波の受信判定結果に基づいて、周波数シフト量Δfを算出する。また、検知部52は、かかる周波数シフト量Δfに基づいて、相対速度Δvを算出する。そして、検知部52は、かかる相対速度Δvの算出値に基づいて設定した判定窓Δvwに、2ビット目以降についての相対速度Δvの算出値が入るか否かによって、2ビット目以降についての符号判定を行う。
かかる構成においては、先頭送信波に対応する反射波から、自車両とその周囲の物体Bとの相対速度による周波数シフト量Δfが検出される。そして、先頭送信波に対応する反射波から検出した周波数シフト量Δfすなわち相対速度Δvに基づいて、後続送信波に対応する反射波の受信判定が行われる。これにより、先頭送信波におけるチャープ符号化を利用して、後続送信波に対応する反射波の受信判定に際してのドップラーシフト補正を良好に行うことが可能となる。したがって、本実施形態に係る物体検知装置1、および、これにより実行される物体検知方法によれば、自車両とその周囲の物体Bとが相対移動している場合における受信判定精度を、よりいっそう向上することが可能となる。
本実施形態においては、少なくとも先頭送信波が、周波数変調により符号化されている。すなわち、少なくとも先頭送信波は、時間経過とともに周波数が変化するようにチャープ符号化されている。具体的には、図2に示された具体例によれば、少なくとも先頭送信波は、V字チャープ波により符号化されている。これにより、受信判定精度をよりいっそう向上することが可能となる。特に、周波数シフト量Δfすなわち相対速度Δvの検出精度が向上する。また、受信時刻TR1の、検出あるいは特定の精度が向上する。
(第二実施形態)
以下、第二実施形態について、図6~図9を参照しつつ説明する。なお、以下の第二実施形態の説明においては、主として、第一実施形態と異なる部分について説明する。また、第一実施形態と第二実施形態とにおいて、互いに同一または均等である部分には、同一符号が付されている。したがって、以下の第二実施形態の説明において、第一実施形態と同一の符号を有する構成要素に関しては、技術的矛盾または特段の追加説明なき限り、上記の第一実施形態における説明が適宜援用され得る。後述する第三実施形態においても同様である。
図6は、本実施形態における駆動信号SDの一例を示す。本実施形態においては、先頭駆動信号SD1は、第一最低周波数fmin1と第一最高周波数fmax1とによって形成されるアップチャープ周波数帯域fbuにて時間経過とともに周波数が変化するように形成されている。アップチャープ周波数帯域fbuは「第一周波数帯域」に相当する。
具体的には、先頭駆動信号SD1における駆動周波数変化態様は、以下の通りである。時刻TT0にて、駆動周波数は、第一中間周波数fc1である。fc1<f0である。駆動周波数は、第一中間周波数fc1から第一最低周波数fmin1にまで一旦低下した後に上昇に転じる。時刻TT1にて、駆動周波数は、第一最高周波数fmaxである。fmax1>f0である。第一中間周波数fc1から第一最低周波数fmin1までの周波数低下速度と、第一最低周波数fmin1から第一最高周波数fmax1までの周波数上昇速度とは、略等しい。第一中間周波数fc1から第一最低周波数fmin1までの周波数低下時間よりも、第一最低周波数fmin1から第一最高周波数fmax1までの周波数上昇時間の方が長い。したがって、先頭駆動信号SD1は、第一中間周波数fc1から第一最低周波数fmin1にまで一旦低下するものの、実質的には「アップチャープ」状の周波数変化態様を有している。1ビット目である先頭駆動信号SD1には、アップチャープ状の周波数変化態様に対応する符号「1」が付与される。
中間駆動信号SD2における駆動周波数変化態様は、先頭駆動信号SD1における駆動周波数変化態様と同様である。すなわち、中間駆動信号SD2も、アップチャープ周波数帯域fbuにて時間経過とともに周波数が変化するように形成されている。2ビット目である中間駆動信号SD2には、アップチャープ状の周波数変化態様に対応する符号「1」が付与される。
一方、末端駆動信号SD3は、第二最低周波数fmin2と第二最高周波数fmax2とによって形成されるダウンチャープ周波数帯域fbdにて時間経過とともに周波数が変化するように形成されている。ダウンチャープ周波数帯域fbdは「第二周波数帯域」に相当する。
末端駆動信号SD3における駆動周波数変化は、以下の通りである。時刻TT2にて、駆動周波数は、第二中間周波数fc2である。fc2>f0である。駆動周波数は、第二中間周波数fc2から第二最高周波数fmax2にまで一旦上昇した後に低下に転じる。時刻TTEにて、駆動周波数は、第二最低周波数fmin2である。fmin2<f0である。第二中間周波数fc2から第二最高周波数fmax2までの周波数上昇速度と、第二最高周波数fmax2から第二最低周波数fmin2までの周波数低下速度とは、略等しい。第二中間周波数fc2から第二最高周波数fmax2までの周波数上昇時間よりも、第二最高周波数fmax2から第二最低周波数fmin2までの周波数低下時間の方が長い。したがって、末端駆動信号SD3は、第二中間周波数fc2から第二最高周波数fmax2にまで一旦上昇するものの、実質的には「ダウンチャープ」状の周波数変化態様を有している。3ビット目である末端駆動信号SD3には、ダウンチャープ状の周波数変化態様に対応する符号「0」が付与される。
上記第一実施形態においては、ダウンチャープ周波数帯域fbdとアップチャープ周波数帯域fbuとは、一致すなわち互いに全体的に重複するように設定されていた。これに対し、本実施形態においては、ダウンチャープ周波数帯域fbdとアップチャープ周波数帯域fbuとは、互いに部分的に重複するように設定されている。
具体的には、ダウンチャープ周波数帯域fbdおよびアップチャープ周波数帯域fbuは、第一最低周波数fmin1よりも第二最低周波数fmin2の方が高周波数となるように形成されている。また、ダウンチャープ周波数帯域fbdおよびアップチャープ周波数帯域fbuは、第一最高周波数fmax1よりも第二最高周波数fmax2の方が高周波数となるように形成されている。
このように、本実施形態におけるアップチャープ周波数帯域fbuは、上記第一実施形態におけるアップチャープ周波数帯域fbuを低周波数側にシフトあるいはオフセットしたものに相当する。シフト量あるいはオフセット量は、第一中間周波数fc1と共振周波数f0との差分に相当する。同様に、本実施形態におけるダウンチャープ周波数帯域fbdは、上記第一実施形態におけるダウンチャープ周波数帯域fbdを高周波数側にシフトあるいはオフセットしたものに相当する。シフト量あるいはオフセット量は、第二中間周波数fc2と共振周波数f0との差分に相当する。また、ダウンチャープ周波数帯域fbdとアップチャープ周波数帯域fbuとは、略同一の帯域幅となるように設定されている。すなわち、fmax1-fmin1≒fmax2-fmin2である。さらに、アップチャープ周波数帯域fbuおよびダウンチャープ周波数帯域fbdは、共振周波数f0を含むように設定されている。
ところで、共振型の超音波マイクロフォンであるトランスデューサ21は、帯域通過フィルタと同様の特性を有する。すなわち、送信部20Aにより良好に送受信可能な周波数帯域は、実質的に、共振周波数f0を中心とした±数%の幅に限定される。共振周波数f0から離れた駆動周波数では、送信部20Aの追従性が悪い。
このため、送信部20Aに対しては、所定の送受信周波数帯域が設定される。かかる送受信周波数帯域は、出力あるいは感度をSとし、共振周波数f0にてS=0[dB]とした場合の、S=0~Sb[dB]となる範囲である。すなわち、送受信部2により良好に送受信可能な周波数範囲である送受信周波数帯域は、上限周波数fuと下限周波数fdとの間のS=0~Sb[dB]となる帯域である。Sbは、典型的には、例えば、-3[dB]である。感度は、トランスデューサ21を受信器として用いた場合の感度である。なお、このような送受信周波数帯域は、「共振帯」、「-3dB帯域」、あるいは「3dB帯域」とも称され得る。
そこで、本実施形態においては、ダウンチャープ周波数帯域fbdおよびアップチャープ周波数帯域fbuは、上限周波数fuと下限周波数fdとの間の送受信周波数帯域内となるように設定されている。具体的には、第一最低周波数fmin1は、下限周波数Fdと一致するように設定されている。また、第二最高周波数fmax2は、上限周波数Fuと一致するように設定されている。
図7は、参照信号格納部521に格納された参照信号SSの具体例を示す。符号「1」に対応するアップチャープ参照信号SSUは、時間経過とともに周波数がV字状に変化する駆動周波数特性を有している。アップチャープ参照信号SSUの波形は、図6に示された具体例における先頭駆動信号SD1のような、符号「1」に対応する区分駆動信号の波形に対応して形成されている。具体的には、アップチャープ参照信号SSUは、共振周波数f0よりも若干低周波数側の周波数から周波数が一旦低下した後に共振周波数f0よりも高周波数側に上昇する周波数特性を有している。すなわち、本実施形態におけるアップチャープ参照信号SSUは、上記第一実施形態におけるアップチャープ参照信号SSUを低周波数側にシフトあるいはオフセットしたものに相当する。シフト量あるいはオフセット量は、共振周波数f0と第一中間周波数fc1との差分に相当する。
これに対し、符号「0」に対応するダウンチャープ参照信号SSDは、時間経過とともに周波数が逆V字状に変化する駆動周波数特性を有している。ダウンチャープ参照信号SSDの波形は、図6に示された具体例における末端駆動信号SD3のような、符号「0」に対応する区分駆動信号の波形に対応して形成されている。具体的には、ダウンチャープ参照信号SSDは、共振周波数f0よりも若干高周波数側の周波数から周波数が一旦上昇した後に共振周波数f0よりも低周波数側に低下する周波数特性を有している。すなわち、本実施形態におけるダウンチャープ参照信号SSDは、上記第一実施形態におけるダウンチャープ参照信号SSDを高周波数側にシフトあるいはオフセットしたものに相当する。シフト量あるいはオフセット量は、第二中間周波数fc2と共振周波数f0との差分に相当する。
図8および図9は、図6に示された駆動信号SDに対応する送信波の物体Bによる反射波が、正規波として受信された場合の、受信判定処理の概要を示す。すなわち、図8および図9に示された各タイムチャートは、図5に示された各タイムチャートと同様である。また、図8に示された具体例において、実際の相対速度は0km/hである。一方、図9に示された具体例において、実際の相対速度は-10km/hである。すなわち、図9に示された具体例においては、物体Bが相対的に10km/hの速度で自車両から遠ざかっているものとする。図9における一番上のタイムチャートにおいて、二点鎖線は、図8に示された具体例すなわち相対速度が0km/hである場合の受信信号SRの周波数特性を示す。すなわち、図9における、実線と二点鎖線との差分が、周波数シフト量Δfに相当する。
図8および図9における一番上のタイムチャートにて点線で囲んだ部分で示されているように、ダウンチャープ参照信号SSDにおける波形パターンに類似した偽符号状の波形パターンが、受信信号SRに発生することがあり得る。かかる偽符号状の波形は、本具体例においては、先頭送信波に対応する反射波と、先頭送信波の直後に送信された後続送信波に対応する反射波との間の部分に生じる。
この点、本実施形態においては、アップチャープ周波数帯域fbuとダウンチャープ周波数帯域fbdとの間に、オフセットが設けられている。すなわち、アップチャープ周波数帯域fbuにおける中心周波数の共振周波数f0からのシフト方向と、ダウンチャープ周波数帯域fbdにおける中心周波数の共振周波数f0からのシフト方向とは、逆方向である。同様に、アップチャープ参照信号SSUにおける共振周波数f0からのシフト方向と、ダウンチャープ参照信号SSDにおける共振周波数f0からのシフト方向とは、逆方向である。
このため、上記の偽符号状の波形に対応する周波数シフト量Δfあるいは相対速度Δvの算出値と、反射波における他の部分に対応する周波数シフト量Δfあるいは相対速度Δvの算出値との、整合性が低下する。すなわち、図8および図9に示されているように、時刻TRFに対応する相対速度の算出値Δv_DNは、1ビット目で算出された相対速度Δvを中心とする判定窓Δvwの範囲内には入らない。特に、本実施形態においては、時刻TRFに対応する相対速度の算出値Δv_DNは、上記第一実施形態よりも、判定窓Δvwの範囲から、よりいっそう遠ざかる。
このように、本実施形態によれば、偽符号に対応する相対速度Δvの算出値を、1ビット目で算出された相対速度Δvの算出値から、より遠ざけることが可能となる。よって、1ビット目を基準とした相対速度判定による、偽符号の鑑別が、よりいっそう良好に行われる。したがって、受信判定精度をよりいっそう向上することが可能となる。
本実施形態においては、アップチャープ周波数帯域fbuおよびダウンチャープ周波数帯域fbdは、共振周波数f0を含むように設定されている。これにより、送信波の音圧および反射波の受信感度が向上する。
本実施形態においては、アップチャープ周波数帯域fbuおよびダウンチャープ周波数帯域fbdは、第一最低周波数fmin1よりも第二最低周波数min2の方が高周波数となるように設定されている。また、アップチャープ周波数帯域fbuおよびダウンチャープ周波数帯域fbdは、第一最高周波数fmax1よりも第二最高周波数fmax2の方が高周波数となるように設定されている。これにより、周波数帯域間のオフセットが、良好に設定され得る。
本実施形態においても、少なくとも先頭送信波が、周波数変調により符号化されている。すなわち、少なくとも先頭送信波は、時間経過とともに周波数が変化するようにチャープ符号化されている。具体的には、図6に示された具体例によれば、少なくとも先頭送信波は、V字チャープ波により符号化されている。これにより、受信判定精度をよりいっそう向上することが可能となる。
(第三実施形態)
以下、第三実施形態について、図10および図11を参照しつつ説明する。本実施形態においては、1ビット目についての周波数シフト量Δfあるいは相対速度Δvの算出までは、参照信号SSとして、初期アップチャープ参照信号SSU0および初期ダウンチャープ参照信号SSD0が用いられる。なお、図10に示された具体例においては、駆動信号SDは、図6に示された上記第二実施形態のものと同様である。また、初期アップチャープ参照信号SSU0および初期ダウンチャープ参照信号SSD0は、図7に示された上記第二実施形態におけるアップチャープ参照信号SSUおよびダウンチャープ参照信号SSDと同様である。
1ビット目についての周波数シフト量Δfあるいは相対速度Δvが算出された後は、参照信号SSとして、補正アップチャープ参照信号SSU1および補正ダウンチャープ参照信号SSD1が用いられる。補正アップチャープ参照信号SSU1は、1ビット目についての周波数シフト量Δfあるいは相対速度Δvの算出結果に基づいて、初期アップチャープ参照信号SSU0を補正したものである。補正ダウンチャープ参照信号SSD1は、1ビット目についての周波数シフト量Δfあるいは相対速度Δvの算出結果に基づいて、初期ダウンチャープ参照信号SSD0を補正したものである。
図10および図11に示された具体例において、実際の相対速度は-10km/hである。すなわち、図10および図11に示された具体例においては、物体Bが相対的に10km/hの速度で自車両から遠ざかっているものとする。
図11に示されているように、時刻TR1にて、アップチャープ状の波形パターンに対応する平均二乗誤差MSE_UPは、符号判定閾値MSE_THよりも小さくなり且つ極小値となる。よって、受信波における、時刻TR1に対応する1ビット目の波形パターンに、符号「1」に対応する波形パターンが含まれていることが判定される。また、1ビット目についての周波数シフト量Δfおよび相対速度Δvが算出される。
次に、本実施形態においては、1ビット目についての周波数シフト量Δfあるいは相対速度Δvの算出値に基づいて、参照信号SSが補正される。補正後の参照信号SSである補正アップチャープ参照信号SSU1および補正ダウンチャープ参照信号SSD1を用いて算出した平均二乗誤差MSE_DNにおいては、時刻TRFにおける極小値は、符号判定閾値MSE_THよりも小さくはならない。すなわち、偽符号と参照信号SSとが一致しない。このため、時刻TRFに対応した符号は認識されない。
このように、本実施形態によれば、偽符号による誤判定が、よりいっそう良好に抑制される。したがって、受信判定精度をよりいっそう向上することが可能となる。また、相対速度Δvの算出値に基づいて設定した判定窓Δvwを用いた相対速度判定が不要となる。すなわち、本実施形態においては、上記第一実施形態等における1ビット目を基準とした相対速度判定に代えて、1ビット目の受信判定結果に基づく参照信号SSの補正が行われる。これにより、処理負荷が良好に軽減され得る。
(第四実施形態)
以下、第四実施形態について、図12および図13を参照しつつ説明する。図12において、上段は駆動信号SDの一例を示し、下段はかかる駆動信号SDに対応する参照信号である合成参照信号SSMの一例を示す。図12に示された駆動信号SDは、図6に示された駆動信号SDと同様である。図13は、図12に示された駆動信号SDに対応する送信波の物体Bによる反射波が、正規波として受信された場合の、受信判定処理の概要を示す。また、図13に示された具体例において、実際の相対速度は-10km/hである。すなわち、図13に示された具体例においては、物体Bが相対的に10km/hの速度で自車両から遠ざかっているものとする。
本実施形態においては、検知部52は、合成参照信号SSMに基づいて、反射波の受信判定を行う。合成参照信号SSMは、区分駆動信号SD1等の各々に対応する参照信号を一体化したものである。合成参照信号SSMは、参照信号格納部521に格納され得る。あるいは、区分駆動信号SD1等の各々に対応する参照信号を参照信号格納部521から読み出して一体化する処理が、周波数シフト検出部522にて実行され得る。
図12に示された具体例においては、合成参照信号SSMは、1ビット目のアップチャープ参照信号SSUと、2ビット目のアップチャープ参照信号SSUと、3ビット目のダウンチャープ参照信号SSDとを一体化したものである。1ビット目のアップチャープ参照信号SSUは、図7に示されたものと同一であって、先頭駆動信号SD1に対応する。2ビット目のアップチャープ参照信号SSUは、図7に示されたものと同一であって、中間駆動信号SD2に対応する。3ビット目のダウンチャープ参照信号SSDは、図7に示されたものと同一であって、末端駆動信号SD3に対応する。
送信処理開始タイミングTT0から送信処理終了タイミングTTEまでの間に、各々が区分駆動信号SD1等における波形パターンに応じて符号化された複数の区分送信波を含む送信波が送信される。これら複数の区分送信波には、先頭駆動信号SD1における波形パターンに応じて符号化された先頭送信波が含まれる。また、これら複数の区分送信波には、後続の区分駆動信号SD2等における波形パターンに応じて符号化され先頭送信波の後に送信される後続送信波が含まれる。このため、これら複数の区分送信波を含む送信波が物体Bに反射されて生じた反射波が受信波として受信部20Bにて受信された場合、受信波には、先頭送信波に対応する反射波と、後続送信波に対応する反射波とが含まれる。
ここで、本実施形態においては、反射波の受信判定に際しては、送信波全体の波形パターンを反映した合成参照信号SSMが用いられる。すなわち、合成参照信号SSMを用いて算出した平均二乗誤差MSEが、符号判定閾値MSE_THよりも小さくなり且つ極小値となったか否かにより、受信判定が行われる。
図13における一番下に示されたタイムチャートの時刻TRは、平均二乗誤差MSEが符号判定閾値MSE_THよりも小さくなり且つ極小値となった最先の時刻である。かかる時刻TRは、「受信時刻」とも称される。
本実施形態によれば、送信波全体の波形パターンを反映した合成参照信号SSMを用いることで、受信判定精度をよりいっそう向上することが可能となる。あるいは、合成参照信号SSM内の先頭ビット対応部分でのみ相対速度算出し、この相対速度を合成参照信号SSM全体に適用してパターンマッチング処理することで、計算負荷が可及的に軽減され得る。
(第五実施形態)
以下、第五実施形態について、図14~図16を参照しつつ説明する。図14に示されているように、検知部52は、参照信号格納部521と、周波数シフト検出部522と、受信判定部523と、検知判定部524と、基準時刻設定部525と、タイミング設定部526とを有している。
図15は、本実施形態における駆動信号SDの一例を示す。図15に示された駆動信号SDは、図6に示された駆動信号SDと同様である。図16は、図15に示された駆動信号SDに対応する送信波の物体Bによる反射波が、正規波として受信された場合の、受信判定処理の概要を示す。
基準時刻設定部525は、先頭送信波に対応する反射波の受信判定結果に基づいて、基準時刻TS1を設定するようになっている。基準時刻TS1は、先頭送信波に対応する受信信号から抽出された周波数信号と参照信号との一致の度合いが所定以上且つ極大値となる時刻であり、「受信時刻」とも称される。図16に示された具体例においては、基準時刻設定部525は、平均二乗誤差MSEが符号判定閾値MSE_THよりも小さくなり且つ極小値となった時刻のうちの最先の時刻TR1を、基準時刻TS1として設定する。後述するように、平均二乗誤差MSEの極小値は、一致度Mすなわち周波数信号と参照信号との一致の度合いの極大値に対応する。
タイミング設定部526は、基準時刻設定部525にて設定した基準時刻TS1を基準として、後続送信波の判定タイミングTS2等を設定するようになっている。具体的には、タイミング設定部526は、基準時刻TS1と、区分駆動信号SD1等における出力間隔とに基づいて、判定タイミングTS2,TS3…を設定する。
図15および図16に示された具体例においては、タイミング設定部526は、基準時刻TS1から所定時間Tint1後を判定タイミングTS2に設定する。Tint1は、送信間隔、すなわち、時刻TT0~TT1間の時間間隔である。また、タイミング設定部526は、判定タイミングTS2から所定時間Tint2後を判定タイミングTS3に設定する。Tint2は、送信間隔、すなわち、時刻TT1~TT2間の時間間隔である。
受信判定部523は、タイミング設定部526にて設定した判定タイミングにて、後続送信波に対応する反射波の受信判定を行うようになっている。本実施形態においては、受信判定部523は、判定タイミングTS2を中心とした判定時間窓Tw内にて、平均二乗誤差MSEが符号判定閾値MSE_THよりも小さくなるか否かの判定を行う。また、受信判定部523は、判定タイミングTS3を中心とした判定時間窓Tw内にて、平均二乗誤差MSEが符号判定閾値MSE_THよりも小さくなるか否かの判定を行う。
本実施形態においては、判定タイミングTS2を中心とした判定時間窓Tw内の時刻TR2にて、アップチャープ状の波形パターンに対応する平均二乗誤差MSE_UPは、符号判定閾値MSE_THよりも小さくなり且つ極小値となる。これにより、時刻TR2に対応する2ビット目の波形パターンに、符号「1」に対応する波形パターンが含まれていることが判定される。
同様に、判定タイミングTS3を中心とした判定時間窓Tw内の時刻TR3にて、ダウンチャープ状の波形パターンに対応する平均二乗誤差MSE_DNは、符号判定閾値MSE_THよりも小さくなり且つ極小値となる。これにより、時刻TR3に対応する3ビット目の波形パターンに、符号「0」に対応する波形パターンが含まれていることが判定される。
一方、基準時刻TS1と判定タイミングTS2との間の時刻TRFにて、ダウンチャープ状の波形パターンに対応する平均二乗誤差MSE_DNは、符号判定閾値MSE_THよりも小さくなり且つ極小値となる。しかしながら、時刻TRFに対応する、判定タイミングおよび判定時間窓は、設定されない。このため、図16における一番上のタイムチャートにて点線で囲んだ部分で示されているような、偽符号状の波形に対しては、符号判定が実行されない。
このように、本実施形態においては、先頭送信波に対応する反射波の受信判定結果に基づいて設定した基準時刻TS1を基準とした判定タイミングにて、後続送信波に対応する反射波の受信判定が行われる。すなわち、先頭送信波は、符号としての機能とともに、後続送信波に対応する反射波の受信判定に際しての同期機能をも具備する。これにより、反射波とノイズとの識別機能が向上する。また、区分送信波に対応する反射波とその直後に送信された区分送信波に対応する反射波との間に発生する偽符号状の波形による誤判定の発生が、良好に抑制され得る。したがって、受信判定精度をよりいっそう向上することが可能となる。さらに、判定タイミングTS2等を中心とした判定時間窓Tw内にて平均二乗誤差MSEが符号判定閾値MSE_THよりも小さくなるか否かの判定を行うため、計算負荷が可及的に軽減され得る。
(変形例)
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。故に、上記実施形態に対しては、適宜変更が可能である。以下、代表的な変形例について説明する。以下の変形例の説明においては、上記実施形態との相違点を主として説明する。また、上記実施形態と変形例とにおいて、互いに同一または均等である部分には、同一符号が付されている。したがって、以下の変形例の説明において、上記実施形態と同一の符号を有する構成要素に関しては、技術的矛盾または特段の追加説明なき限り、上記実施形態における説明が適宜援用され得る。
物体検知装置1は、車載構成、すなわち、車両Vに搭載される構成に限定されない。よって、具体的には、例えば、物体検知装置1は、船舶あるいは飛行体にも搭載され得る。また、物体検知装置1は、送受信部2、駆動信号生成部3、受信信号処理部4、および制御部5を、一個のセンサ筐体により支持した構成に限定されない。すなわち、例えば、駆動信号生成部3、受信信号処理部4、および制御部5に設けられた各機能構成における、全部または少なくとも一部は、不図示のソナーECUに備えられ得る。ECUはElectronic Control Unitの略である。ソナーECUは、送受信部2をセンサ筐体に支持した構成を有する超音波センサと、車載通信回線を介して情報通信可能に接続されるように、自車両に搭載されている。
物体検知装置1は、図1に示されているような、送受信部2および駆動信号生成部3をそれぞれ一個ずつ備えた構成に限定されない。すなわち、物体検知装置1は、送受信部2を複数個備えていてもよい。この場合、駆動信号生成部3は、送受信部2と同数設けられ得る。
物体検知装置1は、送受信一体型の構成に限定されない。すなわち、物体検知装置1は、単一のトランスデューサ21によって超音波を送受信可能な構成に限定されない。よって、例えば、送信回路22に電気接続された送信用のトランスデューサ21と、受信回路23に電気接続された受信用のトランスデューサ21とが、並列に設けられていてもよい。換言すれば、送信部20Aと受信部20Bとは、それぞれ、トランスデューサ21を1個ずつ備えていてもよい。この場合、送信部20Aと受信部20Bとは、それぞれ、別々のセンサ筐体により支持されていてもよい。
複数個のトランスデューサ21を用いた三角測量により、物体Bの自車両に対する二次元位置を検知する場合があり得る。この場合、例えば、自車両に搭載された複数個のトランスデューサ21の各々から、同一の周波数特性すなわち符号配列を有する送信波が発信され得る。このとき、「正規波」は、自車両から送信した送信波の反射波を自車両にて受信した場合の受信波となる。これに対し、「非正規波」は、他車両から送信した送信波の反射波を自車両にて受信した場合の受信波となる。これにより、複数車両間の混信による影響が、良好に抑制され得る。あるいは、例えば、自車両に搭載された複数個のトランスデューサ21の各々から、異なる周波数特性すなわち符号配列を有する送信波が発信され得る。これにより、送信側のトランスデューサ21と受信側のトランスデューサ21とが同一の直接波と異なる間接波との峻別が容易化され、以て多重反射等の影響による誤認識が良好に抑制され得る。
送信回路22、受信回路23、等の各部の構成も、上記実施形態にて示された具体例に限定されない。すなわち、例えば、デジタル/アナログ変換回路は、送信回路22に代えて、駆動信号生成部3に設けられていてもよい。すなわち、駆動信号は、トランスデューサ21に対する素子入力信号そのものであってもよい。
駆動信号SDにおける符号配列は、変更可能であってもよいし、変更不能であってもよい。すなわち、例えば、送信制御部51は、検知部52が混信を検知した場合に、駆動信号SDすなわち送信波における符号配列を変更するように構成されていてもよい。あるいは、駆動信号生成部3は、一個の送受信部2に対して一種類の駆動信号SDのみを出力するように構成されていてもよい。この場合、例えば、自車両に搭載された物体検知装置1における駆動信号生成部3は、「110」という3ビット符号に対応する駆動信号SDのみを出力する。また、ある一台の他車両に搭載された物体検知装置1における駆動信号生成部3は、「100」という3ビット符号に対応する駆動信号SDのみを出力する。さらに、他の一台の他車両に搭載された物体検知装置1における駆動信号生成部3は、「111」という3ビット符号に対応する駆動信号SDのみを出力する。
送受信部2が複数個設けられる場合、複数個の送受信部2の各々に対して、異なる符号配列の駆動信号SDを入力するように、駆動信号生成部3が構成され得る。具体的には、例えば、送受信部2が二個設けられている場合、一方には「110」という3ビット符号に対応する駆動信号SDが入力され、他方には「100」という3ビット符号に対応する駆動信号SDが入力され得る。
検知部52における処理内容も、上記の各具体例に限定されない。例えば、受信判定部523は、平均二乗誤差MSEが所定の符号判定閾値MSE_THよりも小さくなったか否かの判定に代えて、一致度Mが所定の基準値以上となったか否かの判定を行ってもよい。
すなわち、受信判定部523は、一致度Mが所定の基準値以上となった場合に、参照信号に対応する符号のチャープ信号が受信波に含まれていると判定するようになっていてもよい。一致度Mは、受信信号における周波数信号と、参照信号との、一致度合いを示す指標であって、下記式(4)で示される。要するに、一致度Mは、誤差の反対概念に相当する。
周波数シフト量および相対速度の算出方法も、上記具体例に限定されない。例えば、上記式(1)の周波数シフト量Δfに代えて、下記式(5)の周波数シフト量k
fが用いられ得る。
ドップラーシフトの影響が受信信号の周波数に現れる度合いは、相対速度と音速との比に対応する。よって、周波数シフトは、上記式(1)のように差で表すよりも、上記式(5)のように比で表す方が、より正確である。
上記式(5)を用いた場合、相対速度Δvは、下記式(6)で示される。
なお、周波数シフト量k
fは、近似的に、下記式(7)によっても算出可能である。これにより、計算負荷がよりいっそう軽減される。
上記式(5)~(7)を用いた場合、受信判定部523によるパターンマッチングは、上記式(3)に代えて、下記式(8)を用いて実行される。
式(8)により算出される誤差平方和SEは、平均二乗誤差MSEのN倍である。よって、式(8)を用いた場合であっても、図5等と同様の符号判定が実行可能である。
また、式(8)において、誤差平方和S
Eが極小値となる場合、下記式(9)が成立する。
上記式(8)および式(9)から、下記式(10)が導かれる。かかる式(10)で示された周波数シフト量k
fを、周波数シフト検出部522による検出結果としてもよい。
符号判定方法も、誤差平方和、平均二乗誤差、あるいは一致度を用いたものに限定されない。すなわち、例えば、相関演算が用いられ得る。この場合、受信信号と参照信号との相関演算による相関値が閾値以上であるか否かによって、符号判定が行われる。
図6に示された具体例においては、ダウンチャープ周波数帯域fbdおよびアップチャープ周波数帯域fbuは、第一最低周波数fmin1よりも第二最低周波数fmin2の方が高周波数となるように形成されている。また、ダウンチャープ周波数帯域fbdおよびアップチャープ周波数帯域fbuは、第一最高周波数fmax1よりも第二最高周波数fmax2の方が高周波数となるように形成されている。しかしながら、本発明は、かかる態様に限定されない。すなわち、例えば、第一最低周波数fmin1よりも第二最低周波数fmin2の方が低周波数であり、且つ、第一最高周波数fmax1よりも第二最高周波数fmax2の方が低周波数であってもよい。
区分駆動信号の波形も、上記の各具体例に限定されない。すなわち、例えば、V字チャープ波における、周波数の上昇速度と低下速度とは、異なっていてもよい。また、周波数の上昇時間と低下時間とは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。V字チャープ波に代えて、周波数が単調に上昇あるいは低下するチャープ波が用いられ得る。周波数の上昇あるいは低下の態様も、直線的であってもよいし、シグモイド曲線状等の非直線的であってもよい。さらに、複数の区分駆動信号SD1等のうちの、互いに隣接するもの同士の間に、インターバル期間が設けられていてもよい。
上記具体例においては、アップチャープ状の周波数変化態様を有する区分駆動信号および区分送信波と、ダウンチャープ状の周波数変化態様を有する区分駆動信号および区分送信波とが用いられていた。しかしながら、本発明は、かかる態様に限定されない。
具体的には、区分駆動信号および区分送信波として、CW波も用いられ得る。この場合、例えば、アップチャープ状の周波数変化態様に符号「1」、CW波に符号「0」、ダウンチャープ状の周波数変化態様に符号「-1」が付与され得る。あるいは、実装上の配慮から、二進数を用いて、アップチャープ状の周波数変化態様に符号「01」、CW波に符号「11」、ダウンチャープ状の周波数変化態様に符号「10」が付与され得る。
CW波を用いる場合であっても、少なくとも、先頭送信波およびこれに対応する先頭駆動信号SD1は、周波数変調により符号化されていることが好適である。先頭ビットは、干渉の影響を受け難いために、基準ビットとして適しているからである。また、周波数変調により符号化されることで、パターンマッチングの際に平均二乗誤差MSEの波形が鋭くなり、一致点すなわち極小点の時間軸上におけるバラつきが小さくなるからである。特に、時間経過とともに周波数がV字状または逆V字状に変化するようなチャープ符号化が好適である。これにより、受信判定精度をよりいっそう向上することが可能となる。特に、周波数シフト量の検出精度が向上する。あるいは、判定タイミング、すなわち、受信時刻TR,TR1、および判定時間窓Twの設定精度が向上する。
上記具体例においては、駆動信号SDに含まれる区分駆動信号の数は、3つであった。しかしながら、本発明は、かかる態様に限定されない。すなわち、駆動信号SDに含まれる区分駆動信号の数は、2つであってもよいし、4つ以上であってもよい。要するに、駆動信号SDの符号配列における、ビット数あるいはバイト数には、特段の限定はない。
図17~図22は、駆動信号SDに含まれる区分駆動信号が2つである場合の、駆動信号SDの例を示す。図23は、駆動信号SDに含まれる区分駆動信号の数が4つ以上である場合の、駆動信号SDの例を示す。
図17~図23に示されているように、好適な例においては、複数の区分駆動信号のうちの先頭のものは、CW波ではない何らかの周波数変調を有している。これに対応して、複数の区分送信波のうちの先頭のものである先頭送信波も、CW波ではない何らかの周波数変調を有している。一方、複数の区分駆動信号のうちの、先頭ではないものは、CW波であってもよい。あるいは、複数の区分駆動信号のうちの、先頭ではないものは、チャープ符号化以外の符号化、例えば、位相変調、周波数偏移変調、あるいはON-OFF変調による符号化がなされてもよい。
「閾値以上」と「閾値を超える」とは互いに置換可能である。同様に、「閾値よりも小さい」と「閾値以下」と互いに置換可能である。
上記実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。また、構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に本発明が限定されることはない。同様に、構成要素等の形状、方向、位置関係等が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に特定の形状、方向、位置関係等に限定される場合等を除き、その形状、方向、位置関係等に本発明が限定されることはない。
変形例も、上記の例示に限定されない。また、複数の変形例が、互いに組み合わされ得る。更に、上記実施形態の全部または一部と、変形例の全部または一部とが、互いに組み合わされ得る。
上記の各機能構成および方法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つあるいは複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサおよびメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、上記の各機能構成および方法は、一つ以上の専用ハードウエア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、上記の各機能構成および方法は、一つあるいは複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサおよびメモリと一つ以上のハードウエア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。具体的には、制御部5は、CPU等を備えた周知のマイクロコンピュータに限定されない。すなわち、制御部5の全部または一部は、上記のような機能を実現可能に構成されたデジタル回路、例えばゲートアレイ等のASICあるいはFPGAであってもよい。ASICはApplication Specific Integrated Circuitの略である。FPGAはField Programmable Gate Arrayの略である。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移的実体的記憶媒体に記憶されていてもよい。すなわち、本発明に係る装置あるいは方法は、上記の各機能あるいは方法を実現するための手順を含むコンピュータプログラム、あるいは、当該プログラムを記憶した非遷移的実体的記憶媒体としても表現可能である。
(まとめ)
上記の各実施形態および変形例によって示された本開示は、以下の各観点を含む。なお、下記の各観点は、技術的に矛盾しない限り、互いに組み合わせて適用可能である。
第1の観点によれば、移動体に搭載されることで当該移動体の周囲の物体を検知するように構成された物体検知装置は、駆動信号生成部と検知部とを備えている。駆動信号生成部は、超音波である送信波を外部に向けて送信する送信器を備えた送信部を駆動する駆動信号を生成して、当該駆動信号を送信部に向けて出力するように設けられている。駆動信号生成部は、第一駆動信号および第二駆動信号を生成して送信部に向けて出力する。第一駆動信号は、第一送信波に対応する駆動信号である。第二駆動信号は、第二送信波に対応する駆動信号である。第一送信波および第二送信波は、送信波の送信処理開始から送信処理終了までの間に連続的に送信され且つ各々が波形パターンに応じて符号化される複数の送信波に含まれる。すなわち、第一送信波は、これら複数の送信波のうちの1つである。また、第二送信波は、これら複数の送信波のうちの、第一送信波の後に送信される他の1つである。検知部は、送信波の物体による反射波を含む受信波を受信する受信器による受信結果に対応する受信信号に基づいて、物体を検知するように設けられている。検知部は、受信信号における波形パターンに対応する周波数信号と、第一駆動信号における波形パターンに対応する参照信号とに基づいて、反射波の受信判定を行う。これにより、識別精度を従来よりも向上することが可能となる。
具体的には、かかる構成においては、駆動信号生成部は、波形パターンに応じて符号化された第一送信波に対応する第一駆動信号を生成して送信部に向けて出力する。また、駆動信号生成部は、第一送信波の後に送信される送信波であって波形パターンに応じて符号化された第二送信波に対応する第二駆動信号を生成して送信部に向けて出力する。これにより、第一送信波および第二送信波を含む、複数の送信波は、送信処理開始から送信処理終了までの間に連続的に送信される。また、これら複数の送信波は、各々が駆動信号における波形パターンに応じて符号化される。検知部は、受信器による受信結果に対応する受信信号に基づいて、物体を検知する。このとき、検知部は、受信信号における波形パターンに対応する周波数信号と、駆動信号における波形パターンに対応する参照信号とに基づいて、反射波の受信判定を行う。
すなわち、かかる構成によれば、送信処理開始から送信処理終了までの間に、各々が駆動信号における波形パターンに応じて符号化された複数の送信波が送信される。これら複数の送信波には、第一駆動信号における波形パターンに応じて符号化された第一送信波が含まれる。また、これら複数の送信波には、第二駆動信号における波形パターンに応じて符号化され第一送信波の後に送信される第二送信波が含まれる。このため、これら複数の送信波が物体に反射されて生じた反射波が受信波として受信器に受信された場合、受信波には、第一送信波に対応する反射波と、第一送信波の後に送信された第二送信波に対応する反射波とが含まれる。ここで、反射波の受信判定に際しては、第一駆動信号すなわち第一送信波における波形パターンに対応する参照信号が少なくとも用いられる。
第2の観点によれば、第1の観点における検知部は、第一駆動信号における波形パターンに対応する参照信号である第一参照信号に基づいて、第一送信波に対応する反射波の受信判定を行う。また、この検知部は、第二駆動信号における波形パターンに対応する参照信号である第二参照信号に基づいて、第二送信波に対応する反射波の受信判定を行う。
かかる構成においては、第一駆動信号における波形パターンに応じて符号化された第一送信波に対応する反射波の受信判定が、第一駆動信号における波形パターンに対応する第一参照信号に基づいて行われる。また、第二駆動信号における波形パターンに応じて符号化された第二送信波に対応する反射波の受信判定が、第二駆動信号における波形パターンに対応する第二参照信号に基づいて行われる。これにより、受信判定精度をよりいっそう向上することが可能となる。
第3の観点によれば、第1および第2の観点における検知部は、周波数シフト検出部を有する。周波数シフト検出部は、移動体と物体との相対速度による送信波と反射波との間の周波数シフト量を検出する。また、この検知部は、第一送信波に対応する反射波から検出した周波数シフト量に基づいて、第二送信波に対応する反射波の受信判定を行う。
かかる構成においては、第一送信波に対応する反射波から、移動体とその周囲の物体との相対速度による周波数シフト量が検出される。ここで、送信波および反射波の伝播速度である音速は、移動体およびその周囲の物体の移動速度に比して充分速い。このため、第一送信波の送受信時と、後続する第二送信波の送受信時とで、周波数シフト量すなわち相対速度は不変であるとみなすことが可能である。そこで、検知部は、第一送信波に対応する反射波から検出した周波数シフト量に基づいて、後続の第二送信波に対応する反射波の受信判定を行う。すなわち、第一送信波における符号化により、後続の第二送信波に対応する反射波の受信判定に際してのドップラーシフト補正を良好に行うことが可能となる。これにより、移動体とその周囲の物体とが相対移動している場合における受信判定精度を、よりいっそう向上することが可能となる。
第4の観点によれば、第1~第3の観点における検知部は、基準時刻設定部と、タイミング設定部と、受信判定部とを有している。基準時刻設定部は、第一送信波に対応する反射波の受信判定結果に基づいて、基準時刻を設定する。タイミング設定部は、基準時刻設定部にて設定した基準時刻を基準として、判定タイミングを設定する。受信判定部は、タイミング設定部にて設定した判定タイミングにて、第二送信波に対応する反射波の受信判定を行う。
かかる構成においては、第一送信波に対応する反射波の受信判定結果に基づいて設定した基準時刻を基準とした判定タイミングにて、第二送信波に対応する反射波の受信判定が行われる。すなわち、第一送信波は、符号としての機能とともに、後続の送信波に対応する反射波の受信判定に際しての同期機能をも具備する。これにより、反射波とノイズとの識別機能が向上する。また、第一送信波に対応する反射波と第一送信波の直後に送信された送信波に対応する反射波との間に発生する偽符号による誤判定の発生が、良好に抑制され得る。さらに、偽符号は、複数の反射波をオーバラップして受信した場合にも発生し得る。この場合、信頼性の高い、オーバラップしていない先頭ビットを基準に後続ビットを判定することで、精度良い判定が可能となる。したがって、受信判定精度をよりいっそう向上することが可能となる。
第5の観点によれば、第1~第4の観点において、少なくとも第一送信波は、周波数変調により符号化されている。これにより、受信判定精度をよりいっそう向上することが可能となる。特に、周波数シフト量の検出精度、および、判定タイミングの設定精度が向上する。
第6の観点によれば、第5の観点において、少なくとも第一送信波は、時間経過とともに周波数がV字状または逆V字状に変化するようにチャープ符号化されている。これにより、受信判定精度をよりいっそう向上することが可能となる。特に、周波数シフト量の検出精度、および、判定タイミングの設定精度が向上する。
第7の観点によれば、第5および第6の観点において、第一駆動信号は、第一最低周波数と第一最高周波数とによって形成される第一周波数帯域にて時間経過とともに周波数が変化するように形成される。また、第二駆動信号は、第二最低周波数と第二最高周波数とによって形成される第二周波数帯域にて時間経過とともに周波数が変化するように形成される。さらに、第一周波数帯域と第二周波数帯域とは、互いに部分的に重複するように設定される。
第一送信波に対応する反射波と、第一送信波の直後に送信された第二送信波に対応する反射波との間に、第一駆動信号あるいは第二駆動信号における波形パターンに類似した偽符号状の波形が発生することがあり得る。この点、かかる構成においては、第一駆動信号における周波数帯域である第一周波数帯域と、第二駆動信号における周波数帯域である第二周波数帯域との間に、オフセットが設けられている。このため、例えば、上記の偽符号状の波形の、第一送信波あるいは第二送信波に対応する参照信号との一致の程度が低下する。あるいは、上記の偽符号状の波形に対応する、周波数シフトあるいは相対速度の算出値と、反射波における他の部分に対応する、周波数シフトあるいは相対速度の算出値との、整合性が低下する。よって、偽符号による誤判定の発生が、良好に抑制され得る。したがって、受信判定精度をよりいっそう向上することが可能となる。
第8の観点によれば、第7の観点における第一周波数帯域および第二周波数帯域は、送信部の共振周波数を含むように設定されている。これにより、送信波の音圧および反射波の受信感度が向上する。
第9の観点によれば、第7および第8の観点において、第一最低周波数よりも第二最低周波数の方が高周波数となり、且つ、第一最高周波数よりも第二最高周波数の方が高周波数となる。あるいは、第一最低周波数よりも第二最低周波数の方が低周波数となり、且つ、第一最高周波数よりも第二最高周波数の方が低周波数となる。これにより、第一駆動信号における周波数帯域である第一周波数帯域と、第二駆動信号における周波数帯域である周波数帯域との間のオフセットが、良好に設定され得る。
第10の観点によれば、第1の観点における検知部は、第一駆動信号に対応する参照信号と第二駆動信号に対応する参照信号とを一体化した合成参照信号に基づいて、反射波の受信判定を行う。
かかる構成においては、送信処理開始から送信処理終了までの間に、各々が駆動信号における波形パターンに応じて符号化された複数の送信波が送信される。これら複数の送信波には、第一駆動信号における波形パターンに応じて符号化された第一送信波が含まれる。また、これら複数の送信波には、第二駆動信号における波形パターンに応じて符号化され第一送信波の後に送信される第二送信波が含まれる。このため、これら複数の送信波が物体に反射されて生じた反射波が受信波として受信器に受信された場合、受信波には、第一送信波に対応する反射波と、第一送信波の後に送信された第二送信波に対応する反射波とが含まれる。ここで、反射波の受信判定に際しては、第一駆動信号に対応する参照信号と第二駆動信号に対応する参照信号とを一体化した合成参照信号が用いられる。したがって、受信判定精度をよりいっそう向上することが可能となる。
第11の観点によれば、第10の観点における検知部は、周波数シフト検出部を有している。周波数シフト検出部は、移動体と物体との相対速度による送信波と反射波との間の周波数シフト量を検出する。また、この検知部は、反射波から検出した周波数シフト量に基づいて、反射波の受信判定を行う。
かかる構成においては、送信波に対応する反射波から、移動体とその周囲の物体との相対速度による周波数シフト量が検出される。ここで、送信波および反射波の伝播速度である音速は、移動体およびその周囲の物体の移動速度に比して充分速い。このため、連続的に送信される複数の送信波に対応する送受信中は、周波数シフト量すなわち相対速度は不変であるとみなすことが可能である。そこで、検知部は、送信波に対応する反射波から検出した周波数シフト量に基づいて、反射波の受信判定を行う。これにより、移動体とその周囲の物体とが相対移動している場合における受信判定精度を、よりいっそう向上することが可能となる。また、合成参照信号における先頭ビット部である、第一駆動信号に対応する参照信号を用いて周波数シフト量すなわち相対速度を検出し、これを基準として後続ビットの判定を行うことで、計算負荷が可及的に軽減され得る。
第12の観点によれば、第10および第11の観点において、少なくとも第一送信波は、周波数変調により符号化されている。これにより、受信判定精度をよりいっそう向上することが可能となる。特に、周波数シフト量の検出精度が向上する。
第13の観点によれば、第12の観点において、少なくとも第一送信波は、時間経過とともに周波数がV字状または逆V字状に変化するようにチャープ符号化されている。これにより、受信判定精度をよりいっそう向上することが可能となる。特に、周波数シフト量の検出精度が向上する。
第14の観点によれば、第12および第13の観点において、第一駆動信号は、第一最低周波数と第一最高周波数とによって形成される第一周波数帯域にて時間経過とともに周波数が変化するように形成されている。また、第二駆動信号は、第二最低周波数と第二最高周波数とによって形成される第二周波数帯域にて時間経過とともに周波数が変化するように形成されている。さらに、第一周波数帯域と第二周波数帯域とは、互いに部分的に重複するように設定されている。
第一送信波に対応する反射波と、第一送信波の直後に送信された送信波に対応する反射波との間に、第一駆動信号あるいは第二駆動信号における波形パターンに類似した偽符号状の波形が発生することがあり得る。この点、かかる構成においては、第一駆動信号における周波数帯域である第一周波数帯域と、第二駆動信号における周波数帯域である周波数帯域との間に、オフセットが設けられている。このため、上記の偽符号状の波形の、第一送信波あるいは第二送信波に対応する反射波との一致の程度が低下する。あるいは、上記の偽符号状の波形に対応する、周波数シフトあるいは相対速度の算出値と、反射波における他の部分に対応する、周波数シフトあるいは相対速度の算出値との、整合性が低下する。よって、偽符号による誤判定の発生が、良好に抑制され得る。したがって、受信判定精度をよりいっそう向上することが可能となる。
第15の観点によれば、第14の観点における第一周波数帯域および第二周波数帯域は、送信部の共振周波数を含むように設定されている。これにより、送信波の音圧および反射波の受信感度が向上する。
第16の観点によれば、第14および第15の観点において、第一最低周波数よりも第二最低周波数の方が高周波数となり、且つ、第一最高周波数よりも第二最高周波数の方が高周波数となる。あるいは、第一最低周波数よりも第二最低周波数の方が低周波数となり、且つ、第一最高周波数よりも第二最高周波数の方が低周波数となる。これにより、第一駆動信号における周波数帯域である第一周波数帯域と、第二駆動信号における周波数帯域である周波数帯域との間のオフセットが、良好に設定され得る。
第17の観点によれば、移動体の周囲の物体を検知する物体検知方法は、駆動信号生成部と検知部とを用いる。駆動信号生成部は、超音波である送信波を外部に向けて送信する送信器を備えた送信部を駆動する駆動信号を生成して、当該駆動信号を送信部に向けて出力する。駆動信号生成部により、第一駆動信号および第二駆動信号を生成して送信部に向けて出力する。第一駆動信号は、第一送信波に対応する駆動信号である。第二駆動信号は、第二送信波に対応する駆動信号である。第一送信波および第二送信波は、送信波の送信処理開始から送信処理終了までの間に連続的に送信され且つ各々が波形パターンに応じて符号化される複数の送信波に含まれる。第二送信波は、第一送信波の後に送信される。検知部は、送信波の物体による反射波を含む受信波を受信する受信器による受信結果に対応する受信信号に基づいて、物体を検知する。検知部により、受信信号における波形パターンに対応する周波数信号と、第一駆動信号における波形パターンに対応する参照信号とに基づいて、反射波の受信判定を行う。これにより、識別精度を従来よりも向上することが可能となる。
具体的には、かかる方法によれば、送信処理開始から送信処理終了までの間に、各々が駆動信号における波形パターンに応じて符号化された複数の送信波が送信される。これら複数の送信波には、第一駆動信号における波形パターンに応じて符号化された第一送信波が含まれる。また、これら複数の送信波には、第二駆動信号における波形パターンに応じて符号化され第一送信波の後に送信される第二送信波が含まれる。このため、これら複数の送信波が物体に反射されて生じた反射波が受信波として受信器に受信された場合、受信波には、第一送信波に対応する反射波と、第一送信波の後に送信された第二送信波に対応する反射波とが含まれる。ここで、反射波の受信判定に際しては、第一駆動信号すなわち第一送信波における波形パターンに対応する参照信号が少なくとも用いられる。
第18の観点によれば、第17の観点に係る方法は、検知部により、以下の処理を実行する。第一駆動信号における波形パターンに対応する参照信号である第一参照信号に基づいて、第一送信波に対応する反射波の受信判定を行う。また、第二駆動信号における波形パターンに対応する参照信号である第二参照信号に基づいて、第二送信波に対応する反射波の受信判定を行う。
かかる方法においては、第一駆動信号における波形パターンに応じて符号化された第一送信波に対応する反射波の受信判定が、第一駆動信号における波形パターンに対応する第一参照信号に基づいて行われる。また、第二駆動信号における波形パターンに応じて符号化された第二送信波に対応する反射波の受信判定が、第二駆動信号における波形パターンに対応する第二参照信号に基づいて行われる。これにより、受信判定精度をよりいっそう向上することが可能となる。
第19の観点によれば、第17および第18の観点に係る方法は、検知部により、以下の処理を実行する。移動体と物体との相対速度による送信波と反射波との間の周波数シフト量を検出する。また、第一送信波に対応する反射波から検出した周波数シフト量に基づいて、第二送信波に対応する反射波の受信判定を行う。
かかる方法においては、第一送信波に対応する反射波から、移動体とその周囲の物体との相対速度による周波数シフト量が検出される。ここで、送信波および反射波の伝播速度である音速は、移動体およびその周囲の物体の移動速度に比して充分速い。このため、第一送信波の送受信時と、後続する第二送信波の送受信時とで、周波数シフト量すなわち相対速度は不変であるとみなすことが可能である。そこで、かかる方法は、第一送信波に対応する反射波から検出した周波数シフト量に基づいて、後続の第二送信波に対応する反射波の受信判定を行う。すなわち、第一送信波は、符号としての機能とともに、後続の送信波に対応する反射波の受信判定に際してのドップラーシフト補正機能をも具備する。これにより、移動体とその周囲の物体とが相対移動している場合における受信判定精度を、よりいっそう向上することが可能となる。
第20の観点によれば、第17~第19の観点に係る方法は、検知部により、以下の処理を実行する。第一送信波に対応する反射波の受信判定結果に基づいて基準時刻を設定する。また、設定した基準時刻を基準として判定タイミングを設定する。また、設定した判定タイミングにて、第二送信波に対応する反射波の受信判定を行う。
かかる方法においては、第一送信波に対応する反射波の受信判定結果に基づいて設定した基準時刻を基準とした判定タイミングにて、第二送信波に対応する反射波の受信判定が行われる。すなわち、第一送信波は、符号としての機能とともに、後続の送信波に対応する反射波の受信判定に際しての同期機能をも具備する。これにより、反射波とノイズとの識別機能が向上する。また、第一送信波に対応する反射波と第一送信波の直後に送信された送信波に対応する反射波との間に発生する偽符号による誤判定の発生が、良好に抑制され得る。さらに、偽符号は、複数の反射波をオーバラップして受信した場合にも発生し得る。この場合、信頼性の高い、オーバラップしていない先頭ビットを基準に後続ビットを判定することで、精度良い判定が可能となる。したがって、受信判定精度をよりいっそう向上することが可能となる。
第21の観点によれば、第17~第20の観点に係る方法は、少なくとも第一送信波を、周波数変調により符号化する。これにより、受信判定精度をよりいっそう向上することが可能となる。特に、周波数シフト量の検出精度、および、判定タイミングの設定精度が向上する。
第22の観点によれば、第21の観点に係る方法は、少なくとも第一送信波を、時間経過とともに周波数がV字状または逆V字状に変化するようにチャープ符号化する。これにより、受信判定精度をよりいっそう向上することが可能となる。特に、周波数シフト量の検出精度、および、判定タイミングの設定精度が向上する。
第23の観点によれば、第21および第22の観点に係る方法は、以下の処理を実行する。第一駆動信号を、第一最低周波数と第一最高周波数とによって形成される第一周波数帯域にて時間経過とともに周波数が変化するように形成する。第二駆動信号を、第二最低周波数と第二最高周波数とによって形成され前記第一周波数帯域と部分的に重複する第二周波数帯域にて時間経過とともに周波数が変化するように形成する。
第一送信波に対応する反射波と、第一送信波の直後に送信された送信波に対応する反射波との間に、第一駆動信号あるいは第二駆動信号における波形パターンに類似した偽符号状の波形が発生することがあり得る。この点、かかる方法においては、第一駆動信号における周波数帯域である第一周波数帯域と、第二駆動信号における周波数帯域である周波数帯域との間に、オフセットが設けられている。このため、上記の偽符号状の波形の、第一送信波あるいは第二送信波に対応する反射波との一致の程度が低下する。あるいは、上記の偽符号状の波形に対応する、周波数シフトあるいは相対速度の算出値と、反射波における他の部分に対応する、周波数シフトあるいは相対速度の算出値との、整合性が低下する。よって、偽符号による誤判定の発生が、良好に抑制され得る。したがって、受信判定精度をよりいっそう向上することが可能となる。
第24の観点によれば、第23の観点に係る方法は、第一周波数帯域および第二周波数帯域を、送信部の共振周波数を含むように設定する。これにより、送信波の音圧および反射波の受信感度が向上する。
第25の観点によれば、第23および第24の観点に係る方法は、第二最低周波数を第一最低周波数よりも高周波数とし、且つ、第二最高周波数を第一最高周波数よりも高周波数とする。あるいは、かかる方法は、第二最低周波数を第一最低周波数よりも低周波数とし、且つ、第二最高周波数を第一最高周波数よりも低周波数とする。これにより、第一駆動信号における周波数帯域である第一周波数帯域と、第二駆動信号における周波数帯域である周波数帯域との間のオフセットが、良好に設定され得る。
第26の観点によれば、第17の観点に係る方法は、検知部により、第一駆動信号に対応する参照信号と第二駆動信号に対応する参照信号とを一体化した合成参照信号に基づいて、反射波の受信判定を行う。
かかる方法においては、送信処理開始から送信処理終了までの間に、各々が駆動信号における波形パターンに応じて符号化された複数の送信波が送信される。これら複数の送信波には、第一駆動信号における波形パターンに応じて符号化された第一送信波が含まれる。また、これら複数の送信波には、第二駆動信号における波形パターンに応じて符号化され第一送信波の後に送信される第二送信波が含まれる。このため、これら複数の送信波が物体に反射されて生じた反射波が受信波として受信器に受信された場合、受信波には、第一送信波に対応する反射波と、第一送信波の後に送信された第二送信波に対応する反射波とが含まれる。ここで、反射波の受信判定に際しては、第一駆動信号に対応する参照信号と第二駆動信号に対応する参照信号とを一体化した合成参照信号が用いられる。したがって、受信判定精度をよりいっそう向上することが可能となる。
第27の観点によれば、第17の観点に係る方法は、検知部により、以下の処理を実行する。移動体と物体との相対速度による送信波と反射波との間の周波数シフト量を検出する。第一送信波に対応する反射波から検出した周波数シフト量に基づいて、第二送信波に対応する反射波の受信判定を行う。
かかる方法においては、送信波に対応する反射波から、移動体とその周囲の物体との相対速度による周波数シフト量が検出される。ここで、送信波および反射波の伝播速度である音速は、移動体およびその周囲の物体の移動速度に比して充分速い。このため、連続的に送信される複数の送信波に対応する送受信中は、周波数シフト量すなわち相対速度は不変であるとみなすことが可能である。そこで、かかる方法は、送信波に対応する反射波から検出した周波数シフト量に基づいて、反射波の受信判定を行う。これにより、移動体とその周囲の物体とが相対移動している場合における受信判定精度を、よりいっそう向上することが可能となる。また、合成参照信号における先頭ビット部である、第一駆動信号に対応する参照信号を用いて周波数シフト量すなわち相対速度を検出し、これを基準として後続ビットの判定を行うことで、計算負荷が可及的に軽減され得る。
第28の観点によれば、第26および第27の観点に係る方法は、少なくとも第一送信波を、周波数変調により符号化する。これにより、受信判定精度をよりいっそう向上することが可能となる。特に、周波数シフト量の検出精度の設定精度が向上する。
第29の観点によれば、第28の観点に係る方法は、少なくとも第一送信波を、時間経過とともに周波数がV字状または逆V字状に変化するようにチャープ符号化する。これにより、受信判定精度をよりいっそう向上することが可能となる。特に、周波数シフト量の検出精度が向上する。
第30の観点によれば、第28および第29の観点に係る方法は、以下の処理を実行する。第一駆動信号を、第一最低周波数と第一最高周波数とによって形成される第一周波数帯域にて時間経過とともに周波数が変化するように形成する。第二駆動信号を、第二最低周波数と第二最高周波数とによって形成され前記第一周波数帯域と部分的に重複する第二周波数帯域にて時間経過とともに周波数が変化するように形成する。
第一送信波に対応する反射波と、第一送信波の直後に送信された送信波に対応する反射波との間に、第一駆動信号あるいは第二駆動信号における波形パターンに類似した偽符号状の波形が発生することがあり得る。この点、かかる方法においては、第一駆動信号における周波数帯域である第一周波数帯域と、第二駆動信号における周波数帯域である周波数帯域との間に、オフセットが設けられている。このため、上記の偽符号状の波形の、第二送信波に対応する反射波との一致の程度が低下する。あるいは、上記の偽符号状の波形に対応する、周波数シフトあるいは相対速度の算出値と、反射波における他の部分に対応する、周波数シフトあるいは相対速度の算出値との、整合性が低下する。よって、偽符号による誤判定の発生が、良好に抑制され得る。したがって、受信判定精度をよりいっそう向上することが可能となる。
第31の観点によれば、第30の観点における第一周波数帯域および第二周波数帯域を、送信部の共振周波数を含むように設定する。これにより、送信波の音圧および反射波の受信感度が向上する。
第32の観点によれば、第30および第31の観点に係る方法は、第二最低周波数を第一最低周波数よりも高周波数とし、且つ、第二最高周波数を第一最高周波数よりも高周波数とする。あるいは、かかる方法は、第二最低周波数を第一最低周波数よりも低周波数とし、且つ、第二最高周波数を第一最高周波数よりも低周波数とする。これにより、第一駆動信号における周波数帯域である第一周波数帯域と、第二駆動信号における周波数帯域である周波数帯域との間のオフセットが、良好に設定され得る。