JP7224012B2 - 免疫賦活性乳化剤 - Google Patents

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Description

特許法第30条第2項適用 ウェブサイトのアドレス http://www.bioa.eng.osaka-cu.ac.jp/bie/masa/theme.html 掲載日:平成29年4月7日 で発表。
特許法第30条第2項適用 集会名:発酵研究所 第11回助成研究報告会 開催場所:千里ライフサイエンスセンター 5階サイエンスホール(大阪府豊中市新千里東町1-4-2) 開催日:平成29年6月9日 で発表。
特許法第30条第2項適用 ウェブサイトのアドレス https://www.sbj.or.jp/2017/pdf/2017_abst_all.pdf 掲載日:平成29年8月8日 で発表。
特許法第30条第2項適用 ウェブサイトのアドレス https://shingi.jst.go.jp/kobetsu/3chubu/2017_3chubu/tech_property.html#pbBlock63739 掲載日:平成29年8月28日 で発表。
本発明は、免疫賦活性乳化剤に関する。より具体的には、本発明は、免疫賦活性と乳化活性とを併せ持つタンパク質を含む免疫賦活性乳化剤に関する。
界面活性剤は、医薬、化粧品、食品等、多くの産業分野において利用されている。界面活性剤のほとんどは石油資源に由来するが、レシチンやサポニンといった生物資源に由来する界面活性剤も利用されている。近年、石油の大量消費による環境破壊や石油資源の枯渇といった問題が深刻化しており、石油原料に依存しない生物資源を原料とした機能性物質への変換が迫られている。
生物資源に由来する界面活性剤の中でも、微生物によって生産されるものはバイオサーファクタントと呼ばれており、その研究が進められている。例えば、特許文献1には、赤色酵母を培養液中で培養して得られる糖タンパク質複合体を有効成分として含有してなる乳化剤が記載されている。また、特許文献1には、この乳化剤の糖量とタンパク質量とを求めたところ、糖とタンパク質とが約9対1の割合であることが記載されている。
一方で、生物資源より抽出精製されるβ-グルカンが、免疫賦活作用があることが知られている。β-グルカンは、大麦・小麦等の穀物類、キノコ類、酵母類などに含まれることが知られている。非特許文献1では、酵母由来のβ-グルカンが、大麦・小麦由来のβ-グルカンより免疫増進効果があることが記載されている。
特開2006-255692号公報
British Journal of Nutrition, Vol 109; 478-486, 2013
酵母由来成分に乳化活性を有する成分があることは報告されているが、その成分が何であるかは具体的には明らかにされていない。また、別の酵母由来成分であるβ-グルカンは、その免疫賦活性を利用して栄養機能食品等に用いられているが、免疫賦活性以外の点で当該製品に有用な活性として利用されているものではない。
本発明者は、乳化活性を有している生物由来成分に、さらに免疫活性を高める機能が付加されれば、乳化剤を使用する幅広い分野において機能性材料として有用となる点に着目した。本発明の目的は、生物由来物質を利用した、免疫賦活性を有する乳化剤を提供することにある。
本発明者は鋭意検討の結果、酵母由来成分中に、免疫賦活性と乳化活性とを併せ持つタンパク質を見出した。本発明は、この知見に基づいてさらに検討を重ねることにより完成したものである。
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. 真菌由来のGASファミリータンパク質を含む、免疫賦活性乳化剤。
項2. 前記GASファミリータンパク質が、GAS1タンパク質、GAS3タンパク質、GAS4タンパク質、及びGAS5タンパク質の少なくともいずれかである、項1に記載の免疫賦活性乳化剤。
項3. 前記GAS1タンパク質が、
(i)配列番号1に示されるアミノ酸配列の23番目から527番目のアミノ酸配列を有するタンパク質、
(ii)配列番号1に示されるアミノ酸配列の1番目から527番目のアミノ酸配列を有するタンパク質、
(iii)配列番号1に示されるアミノ酸配列の23番目から559番目のアミノ酸配列を有するタンパク質、
(iv)配列番号1に示されるアミノ酸配列の1番目から369番目及び469番目から527番目のアミノ酸配列を有するタンパク質、
(v)配列番号1に示されるアミノ酸配列の23番目から369番目及び469番目から527番目のアミノ酸配列を有するタンパク質、
(vi)配列番号1に示されるアミノ酸配列の1番目から369番目及び469番目から559番目のアミノ酸配列を有するタンパク質、
(vii)配列番号1に示されるアミノ酸配列の23番目から369番目及び469番目から559番目のアミノ酸配列を有するタンパク質、
(viii)配列番号1に示されるアミノ酸配列を有するタンパク質、
(ix)上記アミノ酸配列(i)~(viii)それぞれにおいて、1個又は複数個のアミノ酸残基が欠失、付加、挿入若しくは置換されたアミノ酸配列を有し、且つ乳化活性と免疫賦活性とを有するタンパク質、及び
(x)上記アミノ酸配列(i)~(viii)それぞれと70%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有し、且つ乳化活性と免疫賦活性とを有するタンパク質
の少なくともいずれかである、項2に記載の免疫賦活性乳化剤。
項4. 前記GAS3タンパク質が、
(i)配列番号3に示されるアミノ酸配列の22番目から503番目のアミノ酸配列を有するタンパク質、
(ii)配列番号3に示されるアミノ酸配列の1番目から503番目のアミノ酸配列を有するタンパク質、
(iii)配列番号3に示されるアミノ酸配列の22番目から524番目のアミノ酸配列を有するタンパク質、
(iv)配列番号3に示されるアミノ酸配列を有するタンパク質、
(v)上記アミノ酸配列(i)~(iv)それぞれにおいて、1個又は複数個のアミノ酸残基が欠失、付加、挿入若しくは置換されたアミノ酸配列を有し、且つ乳化活性と免疫賦活性とを有するタンパク質、及び
(vi)上記アミノ酸配列(i)~(iv)それぞれと70%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有し、且つ乳化活性と免疫賦活性とを有するタンパク質
の少なくともいずれかである、項2に記載の免疫賦活性乳化剤。
項5. 前記GAS5タンパク質が、
(i)配列番号5に示されるアミノ酸配列の20番目から461番目のアミノ酸配列を有するタンパク質、
(ii)配列番号5に示されるアミノ酸配列の1番目から461番目のアミノ酸配列を有するタンパク質、
(iii)配列番号5に示されるアミノ酸配列の20番目から484番目のアミノ酸配列を有するタンパク質、
(iv)配列番号5に示されるアミノ酸配列を有するタンパク質、
(v)上記アミノ酸配列(i)~(iv)それぞれにおいて、1個又は複数個のアミノ酸残基が欠失、付加、挿入若しくは置換されたアミノ酸配列を有し、且つ乳化活性と免疫賦活性とを有するタンパク質、及び
(vi)上記アミノ酸配列(i)~(iv)それぞれと70%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有し、且つ乳化活性と免疫賦活性とを有するタンパク質
の少なくともいずれかである、項2に記載の免疫賦活性乳化剤。
項6. 前記真菌が酵母である、項1~5のいずれか記載の免疫賦活性乳化剤。
項7. 前記酵母がサッカロマイセス・セレビシエである、項6に記載の免疫賦活性乳化剤。
項8. 項1から7のいずれかに記載の免疫賦活性乳化剤と油分と水とを含む、免疫賦活性乳化組成物。
項9. 水中油型である、項8に記載の免疫賦活性乳化組成物。
項10. (ii')配列番号1に示されるアミノ酸配列の1番目から527番目のアミノ酸配列と、アフィニティタグとを有するタンパク質、
(iv')配列番号1に示されるアミノ酸配列の1番目から369番目及び469番目から527番目のアミノ酸配列と、アフィニティタグとを有するタンパク質、
(ix')上記(ii')及び(iv')における前記アミノ酸配列において、1個又は複数個のアミノ酸残基が欠失、付加、挿入若しくは置換されたアミノ酸配列と、アフィニティタグとを有し、且つ乳化活性と免疫賦活性とを有するタンパク質、及び
(x')上記(ii')及び(iv')における前記アミノ酸配列と70%以上の相同性を有するアミノ酸配列と、アフィニティタグとを有し、且つ乳化活性と免疫賦活性とを有するタンパク質
の少なくともいずれかのタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターによって形質転換された細胞を作成する工程、
前記形質転換された細胞の培養を行う工程、
前記培養による培養液を、前記アフィニティタグに特異的な担体に接触させ、発現タンパク質を捕捉する工程、及び
前記捕捉された発現タンパク質を回収する工程、
を含む、免疫賦活性乳化剤の製造方法。
項11. (ii')配列番号3に示されるアミノ酸配列の1番目から503番目のアミノ酸配列と、アフィニティタグとを有するタンパク質、
(v')上記(ii')における前記アミノ酸配列において、1個又は複数個のアミノ酸残基が欠失、付加、挿入若しくは置換されたアミノ酸配列と、アフィニティタグとを有し、且つ乳化活性と免疫賦活性とを有するタンパク質、及び
(vi')上記(ii')における前記アミノ酸配列と70%以上の相同性を有するアミノ酸配列と、アフィニティタグとを有し、且つ乳化活性と免疫賦活性とを有するタンパク質
の少なくともいずれかのタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターによって形質転換された細胞を作成する工程、
前記形質転換された細胞の培養を行う工程、
前記培養による培養液を、前記アフィニティタグに特異的な担体に接触させ、発現タンパク質を捕捉する工程、及び
前記捕捉された発現タンパク質を回収する工程、
を含む、免疫賦活性乳化剤の製造方法。
項12. (ii')配列番号5に示されるアミノ酸配列の1番目から461番目のアミノ酸配列と、アフィニティタグとを有するタンパク質、
(v')上記(ii')における前記アミノ酸配列において、1個又は複数個のアミノ酸残基が欠失、付加、挿入若しくは置換されたアミノ酸配列と、アフィニティタグとを有し、且つ乳化活性と免疫賦活性とを有するタンパク質、及び
(vi')上記(ii')における前記アミノ酸配列と70%以上の相同性を有するアミノ酸配列と、アフィニティタグとを有し、且つ乳化活性と免疫賦活性とを有するタンパク質
の少なくともいずれかのタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターによって形質転換された細胞を作成する工程、
前記形質転換された細胞の培養を行う工程、
前記培養による培養液を、前記アフィニティタグに特異的な担体に接触させ、発現タンパク質を捕捉する工程、及び
前記捕捉された発現タンパク質を回収する工程、
を含む、免疫賦活性乳化剤の製造方法。
本発明によれば、免疫賦活性と乳化活性とを併せ持つ真菌由来のタンパク質を用いることで、生物由来物質を利用した、免疫賦活性を有する乳化剤が提供されるため、乳化剤を用いる幅広い分野において機能性材料として適用することが可能となる。
実施例1において、培養液中へGas1pを分泌発現するプラスミドpBG1805(GAS1-ω-His)の構築に用いたプラスミドpBG1805(GAS1)の構造を示す。 実施例1において、培養液中へGas1pを分泌発現するプラスミドpBG1805(GAS1-ω-His)の構築の途中過程におけるポリヌクレオチドの構造を示す。 実施例1において構築された、培養液中へGas1pを分泌発現するプラスミドpBG1805(GAS1-ω-His)の構造を示す。 実施例1及び実施例4において発現させたGAS1タンパク質(Gas1(1-527-his)p)の構造を模式的に示す。 実施例1において得られたGAS1タンパク質(Gas1p)を含む画分の乳化活性試験結果である。 実施例1において得られたGAS1タンパク質(Gas1p)の電気泳動結果である。 実施例2において得られた、レシチンの乳化活性と比較したGAS1タンパク質(Gas1p)の乳化活性を調べた結果である。 実施例3において得られた、GAS1タンパク質(Gas1p)による乳化相中のミセルの観察結果である。 実施例4において得られた、GAS1タンパク質(Gas1(1-527-his)p)の濃度と乳化活性との関係を調べた結果である。 実施例5で発現させたGAS1タンパク質(Gas1(1-484-his)p)の構造、及び実施例6で発現させたGAS1タンパク質(Gas1(1-369,469-527-his)p)の構造を模式的に示す。 実施例5で得られた、GAS1タンパク質(Gas1(1-484-his)p)の濃度と乳化活性との関係を調べた結果である。 実施例6で得られたGAS1タンパク質(Gas1(1-369,469-527-his)p)の濃度と乳化活性との関係を調べた結果である。 実施例7で発現させたGAS1タンパク質(Gas1p)の構造を模式的に示す。 実施例7において得られた、pHとGAS1タンパク質(Gas1p)の乳化活性との関係を調べた結果である。 実施例8において得られた、塩濃度とGAS1タンパク質(Gas1p)の乳化活性との関係を調べた結果である。 実施例9において得られた、GAS1タンパク質(Gas1p)の免疫賦活性試験の結果である。 実施例9において得られた、GAS1タンパク質(Gas1(1-484-his)p)及びGAS1タンパク質(Gas1(1-369,469-527-his)p)の免疫賦活性試験の結果である。 実施例10及び実施例11でそれぞれ発現させたGAS3タンパク質(Gas3(1-503-his)p)及びGAS5タンパク質(Gas5(1-461-his)p)の構造を模式的に示す。 実施例10及び実施例11でそれぞれ得られた、GAS3タンパク質(Gas3(1-503-his)p)及びGAS5タンパク質(Gas5(1-461-his)p)の濃度と乳化活性との関係を調べた結果である。 実施例10及び実施例11でそれぞれ得られた、GAS3タンパク質(Gas3(1-503-his)p)及びGAS5タンパク質(Gas5(1-461-his)p)の免疫賦活性試験の結果である。
[1.免疫賦活性乳化剤]
本発明の免疫賦活性乳化剤は、真菌由来のGASファミリータンパク質を含む。GASファミリータンパク質は、一種類のタンパク質が乳化活性と免疫賦活性とを併せ持つ。
[1-1.乳化活性及び免疫賦活性]
本発明のGASファミリータンパク質が兼備する乳化活性及び免疫賦活性は、当該タンパク質が有する生理活性のうちの一部であるが、本発明のGASファミリータンパク質の範囲を定める際に指標となる生理活性である。
本発明の免疫賦活性乳化剤によって発揮される乳化活性は、GASファミリータンパク質を水中に含む水性液体に油を加えて混合することで、乳化物を得ることで確認することができる。乳化物は、ミセルの形成により確認することができる。本発明の免疫賦活性乳化剤は、例えば水中油滴型(O/W)のミセルを形成しやすい。なお、乳化活性の大小は、乳化相の体積によって判断することができる。GASファミリータンパク質を水中に含む水性液体の量と油の量との割合によっては、混合直後に生じる乳化相が単相となる場合と、水性液体相及び/又は油相との複相となる場合とがある。混合直後に単相となる場合は、混合後の所定時間放置後に水性液体相及び/又は油相と分離される場合は、分離した乳化相の体積が大きいほど、乳化活性が高いと判断することができる。混合直後に複相となる場合は、混合直後の乳化相の体積が大きいほど、また、混合後の所定時間放置後における乳化相の体積が大きいほど、乳化活性が高いと判断することができる。なお、混合直後に単相となる場合に、混合後の所定時間放置しても水性液体相及び/又は油相と分離されず安定的に乳化層が単層のままで存在する場合、及びその他の乳化層体積の大小を判断できない場合は、ミセルのサイズが小さいほど、乳化活性が高いと判断することができる。
本発明の免疫賦活性乳化剤による乳化活性が発揮されるpH及び塩濃度は特に限定されない。当該乳化活性を発揮させるpHとしては、例えばpH3.0以上、好ましくはpH3.0~10.0、より好ましくはpH3.0~6.0、より一層好ましくはpH3.0~5.0が挙げられる。つまり、本発明の免疫賦活性乳化剤は耐酸性である。当該乳化活性を発揮させる塩濃度としては、塩化ナトリウム濃度として例えば0M超4M以下、1~4M、2~4M、又は3~4Mが挙げられる。つまり、本発明の免疫賦活性乳化剤は耐塩性である。
本発明の免疫賦活性乳化剤によって発揮される免疫賦活性は、免疫細胞を刺激することにより分泌されるサイトカイン量によって判断することができる。例えば、マクロファージ細胞を加えた培地に、本発明の免疫賦活性乳化剤を加えてインキュベートした後に、分泌されたTNF-αの量を測定することによって判断することができる。具体的には、GASファミリータンパク質を50μg/mL濃度で加えた場合に、タンパク質を含まないバッファを同条件でインキュベートした場合におけるTNF-αの量を基準(1倍、重量基準)として、例えば2倍以上、好ましくは5倍以上、より好ましくは10倍以上であることを指標とすることができる。
乳化活性及び免疫賦活性のより具体的な測定方法については、本明細書の実施例の記載に従って行うことができる。
[1-2.由来生物(真菌)]
GASファミリータンパク質の由来生物である真菌としては、酵母及び糸状真菌が挙げられ、好ましくは酵母が挙げられる。
酵母としては、出芽酵母つまりサッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、サッカロマイセス・パストリアヌス(Saccharomyces pastrianus)、サッカロマイセス・バヤヌス(Saccharomyces bayanus)、サッカロマイセス・カールスベルゲンシス(Saccharomyces carlsbergensis)などのサッカロマイセス属(Saccharomyces属);ピキア・パストリス(Pichia pastoris)、ピキア・アングスタ(Pichia angusta)、ピキア・フィンランディカ(Pichia finlandica)、ピキア・トレハロフィラ(Pichia trehalophila)、ピキア・コクラマエ(Pichia koclamae)、ピキア・メンブラナエファシエンス(Pichia membranaefaciens)、ピキア・マイニュータ(Pichia minuta)などのピキア属(Pichia属);シゾサッカロマイセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)などのシゾサッカロマイセス属(Schizosaccharomyces属);デッケラ・ブルキセレンシス(Dekkera bruxellensis)、デッケラ・アノマラ(Dekkera anomala)などのデッケラ属(Dekkera属);クルイベロマイセス・ラクティス(Kluyveromyces lactis)、クルイベロマイセス・マルキシアヌス(Kluyveromyces marxianus)などのクルイベロマイセス属(Kluyveromyces属)に属するものが挙げられる。上述の酵母の中でも、サッカロマイセス属に属する酵母が好ましく、出芽酵母つまりサッカロマイセス・セレビシエがより好ましい。サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)細胞の菌株としては、パン酵母、CBS 7959、CBS 7960、CBS 7961、CBS 7962、CBS 7963、CBS 7964、IZ-1904、TA、BG-1、CR-1、SA-1、M-26、Y-904、PE-2、PE-5、VR-1、BR-1、BR-2、ME-2、VR-2、MA-3、MA-4、CAT-1、CB-1、NR-1、BT-1、及びAL-1が挙げられる。
糸状真菌としては、トリコデルマ・リーセイ、トリコデルマ・ロンジブラキアタム(Trichoderma longibrachiatum)トリコデルマ・ハリジアウム(Trichoderma harzianum)、トリコデルマ・コニンギ(Trichoderma koningii)及びトリコデルマ・ヴィリデ(Trichoderma viride)などのトリコデルマ属;アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、アスペルギルス・オリザエ(Aspergillus oryzae)などのアルペルギルス(Aspergillus)属;ニューロスポラ・クラッサ(Neurospora crassa)などのニューロスポラ(Neurospora)属;フサリウム・グラニューム(Fusarium gramineum)、フサリウム・ベネナツム(Fusarium venenatum)などのフサリウム(Fusarium)属;クリソスポリウム・ラクノウェンス(Chrysosporium lucknowense)などのクリソスポリウム(Chrysosporium)属に属するものが挙げられる。
[1-3.GASファミリータンパク質]
GASファミリータンパク質は、一種類のタンパク質が乳化活性と免疫賦活性とを併せ持つ。GASファミリータンパク質には、GAS1タンパク質、GAS2タンパク質、GAS3タンパク質、GAS4タンパク質、GAS5タンパク質が含まれる。GAS1タンパク質、GAS2タンパク質、GAS3タンパク質、GAS4タンパク質、及びGAS5タンパク質は、細胞壁の維持に関与する真菌酵素のグリコシダーゼ/トランスグリコシダーゼGH72ファミリーのメンバーである。GAS1タンパク質、GAS2タンパク質、GAS3タンパク質、GAS4タンパク質、及びGAS5タンパク質は、細胞壁の集合および維持に関与する細胞壁結合1,3-β-グルカノシルトランスフェラーゼである。
GASファミリータンパク質の中でも、乳化活性及び免疫賦活性をより好ましく得る観点から、GAS1タンパク質、GAS3タンパク質、GAS4タンパク質、GAS5タンパク質が好ましく、セリンボックス(Ser-Box)を有するGAS1タンパク質、GAS3タンパク質、GAS4タンパク質、GAS5タンパク質がより好ましく、GAS1タンパク質、GAS3タンパク質、GAS5タンパク質がさらに好ましく、GAS1タンパク質及びGAS5タンパク質が一層好ましく、GAS1タンパク質が最も好ましい。
GAS1タンパク質は配列番号1に示されるアミノ酸配列を有するタンパク質であってよい。配列番号1において、1番目から332番目が分泌シグナルを有するN末端ドメイン(NtD)、333番目から366番目がリンカー部位(L)、367番目から559番目がGPIアンカーシグナルを有するC末端ドメイン(CtD)であると報告されている。より具体的には、1番目から22番目のアミノ酸配列はN末端分泌シグナルであり、23番目から527番目のアミノ酸配列は触媒部位等(このうち、485番目から526番目はセリンボックス(Ser-Box)、370番目から468番目はシステインボックス(Cys-Box)と報告されている。)であり、528番目がGPIアンカーに付着する箇所で、それ以降にGPIアンカー固定シグナルが含まれる。GPIアンカー固定シグナルは、糖脂質グリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)を共有結合し、GPIを介してGAS1タンパク質を細胞壁へ固定する。本発明においては、GAS1タンパク質としては配列番号1に示されるアミノ酸配列を有するタンパク質のみならず、乳化活性及び免疫賦活性を備えていれば、配列番号1に示されるアミノ酸配列において、N末端分泌シグナル及び/又はGPIアンカーシグナルは除外されていてもよく、システインボックス(Cys-Box)を構成する配列のうち少なくともいずれか又は全てが除外されていてもよく、1個又は複数個のアミノ酸残基が欠失、付加、挿入若しくは置換されていてもよい。
より具体的には、GAS1タンパク質としては、以下の(i)~(x)の少なくともいずれかが挙げられる。
(i)配列番号1に示されるアミノ酸配列の23番目から527番目のアミノ酸配列を有するタンパク質、
(ii)配列番号1に示されるアミノ酸配列の1番目から527番目のアミノ酸配列を有するタンパク質、
(iii)配列番号1に示されるアミノ酸配列の23番目から559番目のアミノ酸配列を有するタンパク質、
(iv)配列番号1に示されるアミノ酸配列の1番目から369番目及び469番目から527番目のアミノ酸配列を有するタンパク質、
(v)配列番号1に示されるアミノ酸配列の23番目から369番目及び469番目から527番目のアミノ酸配列を有するタンパク質、
(vi)配列番号1に示されるアミノ酸配列の1番目から369番目及び469番目から559番目のアミノ酸配列を有するタンパク質、
(vii)配列番号1に示されるアミノ酸配列の23番目から369番目及び469番目から559番目のアミノ酸配列を有するタンパク質、
(viii)配列番号1に示されるアミノ酸配列を有するタンパク質、
(ix)上記アミノ酸配列(i)~(viii)それぞれにおいて、1個又は複数個のアミノ酸残基が欠失、付加、挿入若しくは置換されたアミノ酸配列を有し、且つ乳化活性と免疫賦活性とを有するタンパク質、及び
(x)上記アミノ酸配列(i)~(viii)それぞれと70%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有し、且つ乳化活性と免疫賦活性とを有するタンパク質。
本明細書において、「1個又は複数個のアミノ酸残基が欠失、付加、挿入若しくは置換された」とは、部位特異的突然変異誘発法等の周知の方法により、または天然に生じ得る程度の複数個の数のアミノ酸の置換等により改変がなされたことを意味する。アミノ酸の改変の個数は、好ましくは1~50個、より好ましくは1~30個、さらに好ましくは1~10個、さらにより好ましくは1~4個、最も好ましくは1~2個である。改変アミノ酸配列の例は、好ましくは、そのアミノ酸が、1または複数個(好ましくは、1~数個若しくは1、2、3、または4個)の保存的置換を有するアミノ酸配列であることができる。ここで、「保存的置換」とは、1若しくは複数個のアミノ酸残基を、別の化学的に類似したアミノ酸残基で置き換えることを意味する。例えば、ある疎水性残基を別の疎水性残基によって置換する場合、ある極性残基を同じ電荷を有する別の極性残基によって置換する場合などが挙げられる。このような置換を行うことができる機能的に類似のアミノ酸は、アミノ酸毎に当該技術分野において公知である。具体例を挙げると、非極性(疎水性)アミノ酸としては、アラニン、バリン、イソロイシン、ロイシン、プロリン、トリプトファン、フェニルアラニン、メチオニンなどが挙げられる。極性(中性)アミノ酸としては、グリシン、セリン、スレオニン、チロシン、グルタミン、アスパラギン、システインなどが挙げられる。陽電荷をもつ(塩基性)アミノ酸としては、アルギニン、ヒスチジン、リジンなどが挙げられる。また、負電荷をもつ(酸性)アミノ酸としては、アスパラギン酸、グルタミン酸などが挙げられる。
また、本明細書において「70%以上の相同性を有するアミノ酸配列」は、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上、さらにより好ましくは95%以上、特に好ましくは98%以上、そして最も好ましくは99%以上の同一性を有するアミノ酸配列であることができる。さらに、本明細書においてアミノ酸配列についての「相同性」は、比較される配列間において、各々の配列を構成するアミノ酸残基の一致の程度の意味で用いられる。本明細書において示した「相同性」の数値はいずれも、当業者に公知の相同性検索プログラムを用いて算出される数値であればよく、例えばFASTA、BLAST等においてデフォルト(初期設定)のパラメータを用いることにより、容易に算出することができる。
GAS2タンパク質、GAS3タンパク質、GAS4タンパク質、及びGAS5タンパク質のアミノ酸配列は、GAS1タンパク質のアミノ酸配列と約30%以上の相同性を有し、N末端ドメイン(NtD)及びリンカー部位(L)については、40%以上の相同性を有している。具体的には、GAS2タンパク質は、N末端ドメイン(NtD)及びリンカー部位(L)についてはGAS1タンパク質の対応する部位と53%の相同性を有し、C末端ドメイン(CtD)はGAS1タンパク質の対応する部位と41%の相同性を有する。GAS3タンパク質は、N末端ドメイン(NtD)及びリンカー部位(L)についてはGAS1タンパク質の対応する部位と41%の相同性を有し、C末端ドメイン(CtD)はGAS1タンパク質の対応する部位と相同性を有しない。GAS4タンパク質は、N末端ドメイン(NtD)及びリンカー部位(L)についてはGAS1タンパク質の対応する部位と40%の相同性を有し、C末端ドメイン(CtD)はGAS1タンパク質の対応する部位と相同性を有しない。GAS5タンパク質は、N末端ドメイン(NtD)及びリンカー部位(L)についてはGAS1タンパク質の対応する部位と45%の相同性を有し、C末端ドメイン(CtD)はGAS1タンパク質の対応する部位と相同性を有しない。
GAS2タンパク質は配列番号2に示されるアミノ酸配列を有するタンパク質であってよい。配列番号2において、1番目から346番目が分泌シグナルを有するN末端ドメイン(NtD)、347番目から385番目がリンカー部位(L)、386番目から555番目がGPIアンカーシグナルを有するC末端ドメイン(CtD)であると報告されている。より具体的には、1番目から24番目のアミノ酸配列はN末端分泌シグナルであり、25番目から555番目のアミノ酸配列は触媒部位など(このうち、390番目から494番目はシステインボックス(Cys-Box)と報告されている。)及びGPIアンカー固定シグナルである。本発明においては、GAS2タンパク質としては配列番号2に示されるアミノ酸配列を有するタンパク質のみならず、乳化活性及び免疫賦活性を備えていれば、配列番号2に示されるアミノ酸配列において、N末端分泌シグナル及び/又はGPIアンカーシグナルは除外されていてもよく、1個又は複数個のアミノ酸残基が欠失、付加、挿入若しくは置換されていてもよい。
より具体的には、GAS2タンパク質としては、以下の(i)~(vi)の少なくともいずれかが挙げられる。
(i)配列番号2に示されるアミノ酸配列の25番目から529番目のアミノ酸配列を有するタンパク質、
(ii)配列番号2に示されるアミノ酸配列の1番目から529番目のアミノ酸配列を有するタンパク質、
(iii)配列番号2に示されるアミノ酸配列の25番目から555番目のアミノ酸配列を有するタンパク質、
(iv)配列番号2に示されるアミノ酸配列を有するタンパク質、
(v)上記アミノ酸配列(i)~(iv)それぞれにおいて、1個又は複数個のアミノ酸残基が欠失、付加、挿入若しくは置換されたアミノ酸配列を有し、且つ乳化活性と免疫賦活性とを有するタンパク質、及び
(vi)上記アミノ酸配列(i)~(iv)それぞれと70%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有し、且つ乳化活性と免疫賦活性とを有するタンパク質。
GAS3タンパク質は配列番号3に示されるアミノ酸配列を有するタンパク質であってよい。配列番号3において、1番目から354番目が分泌シグナルを有するN末端ドメイン(NtD)、355番目から392番目がリンカー部位(L)、393番目から524番目がGPIアンカーシグナルを有するC末端ドメイン(CtD)であると報告されている。より具体的には、1番目から21番目のアミノ酸配列はN末端分泌シグナルであり、22番目から524番目のアミノ酸配列は触媒部位など(このうち、460番目から495番目はセリンボックス(Ser-Box)と報告されている。)及びGPIアンカー固定シグナルである。本発明においては、GAS3タンパク質としては配列番号33に示されるアミノ酸配列を有するタンパク質のみならず、乳化活性及び免疫賦活性を備えていれば、配列番号3に示されるアミノ酸配列において、N末端分泌シグナル及び/又はGPIアンカーシグナルは除外されていてもよく、1個又は複数個のアミノ酸残基が欠失、付加、挿入若しくは置換されていてもよい。
より具体的には、GAS3タンパク質としては、以下の(i)~(vi)の少なくともいずれかが挙げられる。
(i)配列番号3に示されるアミノ酸配列の22番目から503番目のアミノ酸配列を有するタンパク質、
(ii)配列番号3に示されるアミノ酸配列の1番目から503番目のアミノ酸配列を有するタンパク質、
(iii)配列番号3に示されるアミノ酸配列の22番目から524番目のアミノ酸配列を有するタンパク質、
(iv)配列番号3に示されるアミノ酸配列を有するタンパク質、
(v)上記アミノ酸配列(i)~(iv)それぞれにおいて、1個又は複数個のアミノ酸残基が欠失、付加、挿入若しくは置換されたアミノ酸配列を有し、且つ乳化活性と免疫賦活性とを有するタンパク質、及び
(vi)上記アミノ酸配列(i)~(iv)それぞれと70%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有し、且つ乳化活性と免疫賦活性とを有するタンパク質。
GAS4タンパク質は配列番号4に示されるアミノ酸配列を有するタンパク質であってよい。配列番号4において、1番目から338番目が分泌シグナルを有するN末端ドメイン(NtD)、339番目から371番目がリンカー部位(L)、372番目から471番目がGPIアンカーシグナルを有するC末端ドメイン(CtD)であると報告されている。より具体的には、1番目から21番目のアミノ酸配列はN末端分泌シグナルであり、22番目から471番目のアミノ酸配列は触媒部位など(このうち、420番目から450番目はセリンボックス(Ser-Box)と報告されている。)及びGPIアンカー固定シグナルである。本発明においては、GAS4タンパク質としては配列番号4に示されるアミノ酸配列を有するタンパク質のみならず、乳化活性及び免疫賦活性を備えていれば、配列番号4に示されるアミノ酸配列において、N末端分泌シグナル及び/又はGPIアンカーシグナルは除外されていてもよく、1個又は複数個のアミノ酸残基が欠失、付加、挿入若しくは置換されていてもよい。
より具体的には、GAS4タンパク質としては、以下の(i)~(vi)の少なくともいずれかが挙げられる。
(i)配列番号4に示されるアミノ酸配列の22番目から446番目のアミノ酸配列を有するタンパク質、
(ii)配列番号4に示されるアミノ酸配列の1番目から446番目のアミノ酸配列を有するタンパク質、
(iii)配列番号4に示されるアミノ酸配列の22番目から471番目のアミノ酸配列を有するタンパク質、
(iv)配列番号4に示されるアミノ酸配列を有するタンパク質、
(v)上記アミノ酸配列(i)~(iv)それぞれにおいて、1個又は複数個のアミノ酸残基が欠失、付加、挿入若しくは置換されたアミノ酸配列を有し、且つ乳化活性と免疫賦活性とを有するタンパク質、及び
(vi)上記アミノ酸配列(i)~(iv)それぞれと70%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有し、且つ乳化活性と免疫賦活性とを有するタンパク質。
GAS5タンパク質は配列番号5に示されるアミノ酸配列を有するタンパク質であってよい。配列番号5において、1番目から334番目が分泌シグナルを有するN末端ドメイン(NtD)、355番目から366番目がリンカー部位(L)、367番目から484番目がGPIアンカーシグナルを有するC末端ドメイン(CtD)であると報告されている。より具体的には、1番目から22番目のアミノ酸配列はN末端分泌シグナルであり、23番目から484番目のアミノ酸配列は触媒部位など(このうち、405番目から435番目がセリンボックス(Ser-Box)であると推測される。)及びGPIアンカー固定シグナルである。本発明においては、GAS5タンパク質としては配列番号5に示されるアミノ酸配列を有するタンパク質のみならず、乳化活性及び免疫賦活性を備えていれば、配列番号5に示されるアミノ酸配列において、N末端分泌シグナル及び/又はGPIアンカーシグナルは除外されていてもよく、1個又は複数個のアミノ酸残基が欠失、付加、挿入若しくは置換されていてもよい。
より具体的には、GAS5タンパク質としては、以下の(i)~(vi)の少なくともいずれかが挙げられる。
(i)配列番号5に示されるアミノ酸配列の20番目から461番目のアミノ酸配列を有するタンパク質、
(ii)配列番号5に示されるアミノ酸配列の1番目から461番目のアミノ酸配列を有するタンパク質、
(iii)配列番号5に示されるアミノ酸配列の20番目から484番目のアミノ酸配列を有するタンパク質、
(iv)配列番号5に示されるアミノ酸配列を有するタンパク質、
(v)上記アミノ酸配列(i)~(iv)それぞれにおいて、1個又は複数個のアミノ酸残基が欠失、付加、挿入若しくは置換されたアミノ酸配列を有し、且つ乳化活性と免疫賦活性とを有するタンパク質、及び
(vi)上記アミノ酸配列(i)~(iv)それぞれと70%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有し、且つ乳化活性と免疫賦活性とを有するタンパク質。
なお、GASファミリータンパク質は、グリコシル化、アミド化、カルボキシル化、リン酸化等により修飾されたものであってもよい。また、GASファミリータンパク質は、製造工程上で付与されたアフィニティタグを有するものであってもよい。
[1-4.用途]
本発明の免疫賦活性乳化剤は、免疫賦活性を有するバイオサーファクタントであるため、乳化剤を用いる幅広い分野において安全性の高い機能性材料として適用できる。例えば、食品、化粧品、医薬品等に用いることができる。
[2.免疫賦活性乳化組成物]
本発明の免疫賦活性乳化組成物は、上述の本発明の免疫賦活性乳化剤と油分と水とを含む。免疫賦活性乳化組成物の具体例としては、食品組成物、化粧料組成物、医薬組成物等が挙げられる。なお、免疫賦活性乳化組成物において、免疫賦活性乳化剤によって形成されるミセルのタイプは特に限定されないが、当該免疫賦活性乳化剤は、水中油型(O/W)のミセルを形成しやすい。
免疫賦活性乳化組成物において、免疫賦活性乳化剤の含有量としては、乳化相を生じさせ(つまりミセルを形成させ)る程度の乳化活性と免疫賦活性とを発揮させる限り特に限定されず、例えば5μg/mL以上であってよい。より具体的には、例えば8μg/mL以上、好ましくは10μg/mL以上、より好ましくは15μg/mL以上、より一層好ましくは20μg/mL以上、さらに好ましくは30μg/mL以上、さらに一層好ましくは40μg/mL以上が挙げられる。本発明の免疫賦活性乳化剤は、乳化活性及び免疫賦活性のいずれにも優れているため免疫賦活性乳化組成物中における含有量の上限としては特に限定されないが、例えば1g/mL以下、900μg/mL以下、500μg/mL以下、300μg/mL以下、又は100μg/mL以下が挙げられる。
[2-1.食品組成物]
本発明の免疫賦活性乳化剤を含む食品組成物は、当該免疫賦活性乳化剤の作用に基づいて、食品組成物を乳化形態とするとともに、例えば腸管免疫を高める機能を備えさせる等の免疫賦活性を発揮することができる。従って、当該食品組成物は、腸管免疫増強用といった機能性食品、特定保健用食品、栄養補助食品(サプリメント)、病者用食品等において有用である。
当該食品組成物の形態については、乳化組成物の形態である限り特に限定されない。例えば、液状体、ゲル状体、それらの冷凍物等が挙げられる。具体的には、飲料(炭酸飲料、清涼飲料、乳飲料、果汁飲料、茶類、栄養飲料等)、菓子類(チョコレート、グミ、ゼリー、ガム、キャンディー等)、乳製品(ヨーグルト、プリン、アイスクリーム等)、調味料(マヨネーズ、ソース、ケチャップ、ドレッシング等)等の一般食品の形態が挙げられる。また、ソフトカプセル剤、液剤、シロップ剤等の形態も挙げられる。
本発明の免疫賦活性乳化剤は、耐酸性且つ耐塩性であるため、特に、酸性(例えばpH3.0以上、好ましくはpH3.0~10.0、より好ましくは3.0~6.0、より一層好ましくは3.0~5.0)及び/又は高塩濃度(塩化ナトリウム濃度として例えば0M超4M以下、1~4M、2~4M、又は3~4M)の食品組成物において有用である。このような食品組成物としては、例えば、乳化型酸性食品(果汁飲料、ヨーグルト、マヨネーズ、ソース、ケチャップ、ドレッシング等)、乳化型高塩濃度食品(清涼飲料水、栄養飲料、マヨネーズ、ソース、ケチャップ、ドレッシング等)が挙げられ、好ましくは、乳化型酸性高塩濃度食品(マヨネーズ、ソース、ケチャップ、ドレッシング等)が挙げられる。
当該食品組成物には、食品衛生学的に許容される基材や担体を含んでよく、更に必要に応じて、甘味料、酸味料、ゲル化剤、緩衝剤、保存剤、pH調節剤、溶解補助剤、懸濁化剤、等張化剤、粘稠剤、矯臭剤、香料、色素等の食品衛生学的に許容される添加剤を含有していてもよい。
[2-2.化粧料組成物]
本発明の免疫賦活性乳化剤を含む化粧料組成物は、当該免疫賦活性乳化剤の作用に基づいて、化粧料組成物を乳化形態とするとともに、例えば外皮下にある免疫細胞を活性化する機能等の免疫賦活性を発揮することができる。従って、当該化粧料組成物は、皮膚外用医薬部外品、化粧料、皮膚洗浄料等において有用である。
当該化粧料組成物の形態については、乳化組成物の形態である限り特に限定されない。例えば、液状体及びゲル状体等が挙げられる。具体的には、皮膚外用医薬部外品の場合、例えば、クリーム剤、ローション剤、ジェル剤、乳液剤、液剤、貼付剤、エアゾール剤、軟膏剤、パック剤等が挙げられ;化粧料の場合、例えば、クリーム剤、ローション剤、ジェル剤、乳液剤、液剤、軟膏剤、パック剤、入浴剤等が挙げられ;皮膚洗浄料の場合、例えば、クレンジング、洗顔料、ボディーシャンプー、ヘアシャンプー、リンス等が挙げられる。
本発明の免疫賦活性乳化剤は、耐酸性であるため、特に、酸性(例えばpH3.0以上、好ましくはpH3.0~10.0、より好ましくは3.0~6.0、より一層好ましくは3.0~5.0)の化粧料組成物において有用である。このような化粧料組成物としては、例えば、酸性化粧料(収斂化粧水、ピーリング用化粧水、ピーリング用皮膚洗浄料)等が挙げられる。
当該化粧料組成物には、香粧学的に許容される基材や担体を含んでよく、更に必要に応じて、緩衝剤、保存剤、pH調節剤、湿潤化剤、溶解補助剤、懸濁化剤、等張化剤、粘稠剤、矯臭剤、香料、色素等の香粧学的に許容される添加剤を含有していてもよい。
[2-3.医薬組成物]
本発明の免疫賦活性乳化剤を含む医薬組成物は、当該免疫賦活性乳化剤の作用に基づいて、医薬組成物を乳化形態とすると共に、例えば薬理活性成分による抗原性を増強させる機能、腸管免疫を高める機能、外皮下にある免疫細胞を活性化する機能等の免疫賦活性を発揮することができる。従って、当該医薬組成物は、ワクチン製剤、経口医薬品、皮膚外用医薬品等において有用である。当該医薬組成物においては、本発明の免疫賦活性乳化剤以外に他の薬理活性成分を含んでよい。
当該医薬品組成物の形態については、乳化組成物の形態である限り特に限定されない。例えば、液状体及びゲル状体等が挙げられる。具体的には、ワクチン製剤の場合、抗原(水)相と油性アジュバント相とを本発明の免疫賦活性乳化剤で乳化した乳化組成物であり、例えば、注射剤、経鼻投与剤、経口剤等が挙げられ;経口医薬品の場合、液剤、シロップ剤等が挙げられ;皮膚外用医薬品の場合、例えば、クリーム剤、ローション剤、ジェル剤、乳液剤、液剤、貼付剤、エアゾール剤、軟膏剤、パック剤等が挙げられる。
当該医薬品組成物には、薬学的に許容される基材や担体を含んでよく、更に必要に応じて、緩衝剤、保存剤、pH調節剤、湿潤化剤、溶解補助剤、懸濁化剤、等張化剤、無痛化剤、粘稠剤、矯臭剤、香料等の薬学的に許容される添加剤を含有していてもよい。
[3.免疫賦活性乳化剤の製造方法]
上述の本発明の免疫賦活性乳化剤の製造方法としては特に限定されず、GASファミリータンパク質を生じさせることができるあらゆる方法が用いられる。
[3-1.特定遺伝子の欠損株の培養による例]
例えば、真菌(酵母)の特定の遺伝子欠損株を培養することにより得ることができる。具体的には、GAS1タンパク質は、GUP1遺伝子欠損株の、乳化活性を有する培養上清から取得することができる。また、GAS1タンパク質は、PER1欠損株、PER1遺伝子を高発現したPER1欠損株、PERLD1遺伝子を高発現したPER1欠損株等の培養によって得ることもできる。GAS3タンパク質及びGAS5タンパク質は、GUP1遺伝子及びGAS1遺伝子の二重欠損株の、乳化活性を有する培養上清から取得することができる。
[3-2.アフィニティタグを有する融合タンパク質の発現による例]
また、GASファミリータンパク質はそれらのアミノ酸配列が公知であるため、例えば精製用のアフィニティタグが結合したGASファミリータンパク質を融合タンパク質として発現可能な発現ベクターを構築し、宿主細胞に導入し、当該融合タンパク質を発現させることによって製造することができる。
具体的には、免疫賦活性乳化剤の製造方法は、GASファミリータンパク質のアミノ酸配列とアフィニティタグ配列とを有するタンパク質(融合タンパク質)をコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターによって形質転換された細胞を作成する工程1と;前記形質転換された細胞の培養を行う工程2と;前記アフィニティタグに特異的な担体を用いて発現タンパク質を捕捉する工程3と;前記捕捉された発現タンパク質を回収する工程4と、を含む。
[3-2-1.工程1]
工程1では、GASファミリータンパク質のアミノ酸配列とアフィニティタグ配列とを有するタンパク質(融合タンパク質)をコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターによって形質転換された細胞を作成する。
[アフィニティタグ]
GASファミリータンパク質に結合させるアフィニティタグは、そのアフィニティタグに対応する(特異的な)担体と選択的に結合できる限り、どのようなアフィニティタグも用いることができる。例えば、アフィニティタグとしては、ニッケルキレートカラムに選択的に結合可能な2つ以上の連続するヒスチジン残基からなるヒスチジンタグ、不溶性セルロースに選択的に結合するセルロース結合部位、マルトース結合樹脂に選択的に結合するマルトース結合部位などが挙げられ、好ましくは、分子量の小さいヒスチジンタグが挙げられる。
アフィニティタグは、GASファミリータンパク質に直接的又は間接的に結合させてよい。GASファミリータンパク質に間接的に結合させる場合においては、GASファミリータンパク質の乳化活性及び免疫賦活性を大きく阻害するものでなければ、どのようなリンカー配列が介在していても構わない。
[融合タンパク質]
GASファミリータンパク質にアフィニティタグが結合した融合タンパク質において、アフィニティタグはGASファミリータンパク質のカルボキシル末端に結合していることが好ましい。さらに、融合タンパク質は、GASファミリータンパク質がカルボキシル末端にGPIアンカー固定シグナルを有しない状態でアフィニティタグを有する態様であってもよいし、カルボキシル末端にGPIアンカー固定シグナルを有する状態でアフィニティタグを有する態様であってもよい。
融合タンパク質が、GASファミリータンパク質がカルボキシル末端にGPIアンカー固定シグナルを有しない状態でアフィニティタグを有する態様である場合は、宿主細胞の培養中に、発現タンパク質を、培地に遊離させた状態で得ることができる。このため、培地をアフィニティタグに応じたアフィニティカラムに通すことで容易に発現タンパク質を回収することができ、生産効率の点で好ましい。
融合タンパク質が、GASファミリータンパク質がカルボキシル末端にGPIアンカー固定シグナルを有する状態でアフィニティタグを有する態様である場合は、宿主細胞の培養後、細胞を回収し、発現タンパク質を抽出することで回収することができる。
たとえばGAS1タンパク質を製造する場合は、下記の(ii’),(iv'),(ix'),(x')の少なくともいずれかのタンパク質を融合タンパク質として発現させることができる。下記の例は、発現させる融合タンパク質が分泌シグナルを有し、且つGPIアンカー固定シグナルを有しておらず、製造効率に優れている点で好ましい。
(ii')配列番号1に示されるアミノ酸配列の1番目から527番目のアミノ酸配列と、前記アミノ酸配列のカルボキシル末端側にアフィニティタグとを有するタンパク質、
(iv')配列番号1に示されるアミノ酸配列の1番目から369番目及び469番目から527番目のアミノ酸配列と、前記アミノ酸配列のカルボキシル末端側にアフィニティタグとを有するタンパク質、
(ix')上記(ii')及び(iv')における前記アミノ酸配列において、1個又は複数個のアミノ酸残基が欠失、付加、挿入若しくは置換されたアミノ酸配列と、前記アミノ酸配列のカルボキシル末端側にアフィニティタグとを有し、且つ乳化活性と免疫賦活性とを有するタンパク質、及び
(x')上記(ii')及び(iv')における前記アミノ酸配列と70%以上の相同性を有するアミノ酸配列と、前記アミノ酸配列のカルボキシル末端側にアフィニティタグとを有し、且つ乳化活性と免疫賦活性とを有するタンパク質。
例えば、GAS3タンパク質を製造する場合は、下記の(ii’),(v'),(vi')の少なくともいずれかのタンパク質を融合タンパク質として発現させることができる。下記の例は、発現させる融合タンパク質中にGPIアンカー固定シグナルを有しておらず、製造効率に優れている点で好ましい。
(ii')配列番号3に示されるアミノ酸配列の1番目から503番目のアミノ酸配列と、前記アミノ酸配列のカルボキシル末端側にアフィニティタグとを有するタンパク質、
(v')上記(ii')における前記アミノ酸配列において、1個又は複数個のアミノ酸残基が欠失、付加、挿入若しくは置換されたアミノ酸配列と、前記アミノ酸配列のカルボキシル末端側にアフィニティタグとを有し、且つ乳化活性と免疫賦活性とを有するタンパク質、及び
(vi')上記(ii')における前記アミノ酸配列と70%以上の相同性を有するアミノ酸配列と、前記アミノ酸配列のカルボキシル末端側にアフィニティタグとを有し、且つ乳化活性と免疫賦活性とを有するタンパク質。
例えば、GAS5タンパク質を製造する場合は、下記の(ii’),(v'),(vi')の少なくともいずれかのタンパク質を融合タンパク質として発現させることができる。下記の例は、発現させる融合タンパク質中にGPIアンカー固定シグナルを有しておらず、製造効率に優れている点で好ましい。
(ii')配列番号5に示されるアミノ酸配列の1番目から461番目のアミノ酸配列と、前記アミノ酸配列のカルボキシル末端側にアフィニティタグとを有するタンパク質、
(v')上記(ii')における前記アミノ酸配列において、1個又は複数個のアミノ酸残基が欠失、付加、挿入若しくは置換されたアミノ酸配列と、前記アミノ酸配列のカルボキシル末端側にアフィニティタグとを有し、且つ乳化活性と免疫賦活性とを有するタンパク質、及び
(vi')上記(ii')における前記アミノ酸配列と70%以上の相同性を有するアミノ酸配列と、前記アミノ酸配列のカルボキシル末端側にアフィニティタグとを有し、且つ乳化活性と免疫賦活性とを有するタンパク質。
他のGASファミリータンパク質を製造する場合も同様であり、当業者が適宜融合タンパク質を設計することができる。
[融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド]
このような融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドは、当該融合タンパク質のアミノ酸配列をコードするものであれば、どのような塩基配列からなるポリヌクレオチドであってもよい。上述のように、融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドには、GPIアンカー固定シグナルをコードする配列を含んでも含んでいなくてもよいが、宿主細胞においてタンパク質の分泌に寄与する分泌シグナル(融合タンパク質のアミノ末端に存在)を含んでいることが好ましい。ポリヌクレオチドは、好ましくはDNAである。
融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを得る方法としては特に限定されないが、例えば人工的に化学合成することにより得ることができる。
また、融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドは、GASファミリータンパク質をコードする遺伝子の配列に基づいて設計されたプライマーと、GASファミリータンパク質をコードする遺伝子の配列に基づき且つアフィニティタグをコードする配列を有するプライマーと、を用い、ゲノムDNA、cDNA、プラスミドなど当該遺伝子が含まれるDNAを鋳型としたPCRにより増幅することもできる。
さらに、融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドは、GASファミリータンパク質をコードするポリヌクレオチドとアフィニティタグをコードするポリヌクレオチドとをそれぞれ別々に構築し、それらを連結することにより得ることもできる。この場合、GASファミリータンパク質をコードするポリヌクレオチドは、GASファミリータンパク質をコードする遺伝子の配列に基づいて設計されたプライマーを用いて、ゲノムDNA、cDNA、プラスミドなど当該遺伝子が含まれるポリヌクレオチドを鋳型としたPCRにより増幅することができ、一方、アフィニティタグをコードするポリヌクレオチドは、アフィニティタグをコードする遺伝子が含まれるゲノムDNA、cDNA、プラスミドなどを鋳型としたPCRにより増幅することができる。
[発現ベクター及び発現ベクターにより形質転換された宿主細胞]
融合タンパク質のアミノ酸配列をコードするDNAを、宿主細胞内で複製可能で、かつ、そのDNA配列がコードするタンパク質を発現可能な状態で含む発現ベクターを構築する。発現ベクターは、自己複製ベクター、すなわち、染色体外の独立体として存在し、その複製が染色体の複製に依存しない、例えば、プラスミドを基本に構築することができる。また、発現ベクターは、宿主細胞に導入されたとき、その宿主細胞のゲノム中に組み込まれ、それが組み込まれた染色体と一緒に複製されるものであってもよい。ベクター構築の手順及び方法は、遺伝子工学の分野で慣用されているものを用いることができる。
発現ベクターは、これを実際に宿主細胞に導入して融合タンパク質を発現させるために、前記の融合タンパク質をコードするDNAの他に、その発現を制御するDNA配列や形質転換された宿主細胞を選択するための遺伝子マーカー等を含んでいるのが望ましい。発現を制御するDNA配列としては、プロモータ、及びターミネーターをコードするDNA配列等がこれに含まれる。プロモータは宿主細胞において転写活性を示すものであれば特に限定されず、宿主細胞と同種若しくは異種のいずれかのタンパク質をコードする遺伝子の発現を制御するDNA配列として得ることができる。例えば、プロモータとしてGAL1プロモータ及びPGK1プロモータ等が挙げられ、好ましくはPGK1プロモータが挙げられる。
宿主細胞は特に限定されず、真菌(酵母、糸状菌)、大腸菌、放線菌等が挙げられるが、好ましくは真菌が挙げられ、より好ましくは酵母が挙げられる。また、発現ベクターによる宿主細胞の形質転換も、この分野で慣用されている方法に従い当業者が適宜実施することができる。
[3-2-2.工程2~工程4]
工程2では、形質転換された細胞の培養を行う。融合タンパク質を発現する宿主細胞は、適当な培地で培養し、その培養物から融合タンパク質を得ることができる。融合タンパク質を発現させる宿主細胞の培養及びその条件は、使用する宿主細胞についての培養条件と本質的に同等であってよい。融合タンパク質は、発現させる宿主細胞中(融合タンパク質がGPIアンカー固定シグナルを有する場合)に発現するか、培養液中(融合タンパク質がGPIアンカー固定シグナルを有しない場合)に分泌される。
工程3では、アフィニティタグに特異的な担体を用いて発現タンパク質を捕捉する。融合タンパク質を、発現する宿主細胞中に発現させた場合(融合タンパク質がGPIアンカー固定シグナルを有する場合)は、培養された細胞の抽出液を、アフィニティタグに特異的な担体に接触させ、発現タンパク質を捕捉することができる。培養された細胞の抽出液は、水系液中に、培養された細胞から遊離した融合タンパク質を含むものであればよく、当業者によって適宜調製される。例えば、培養された細胞を緩衝液等の洗浄液に懸濁させて、洗浄液中に融合タンパク質を遊離させ、必要に応じてさらに遠心分離を行うことによって、上清として調製することができる。また、融合タンパク質を、培養液中に分泌させた場合(融合タンパク質がGPIアンカー固定シグナルを有しない場合)は、細胞を除去して培養液を回収し、回収した培養液を、アフィニティタグに特異的な担体に接触させ、発現タンパク質を捕捉することができる。例えばアフィニティタグとしてヒスチジンタグを採用した場合は、担体としてニッケルキレートカラムを用いることとなる。
工程4では、捕捉された発現タンパク質を回収する。具体的には、アフィニティタグに特異的な担体で捕捉した融合タンパク質を溶出させることで選択的に回収(精製)する。融合タンパク質を溶出させるための溶出液は、融合タンパク質のアフィニティタグ及び担体に応じて、融合タンパク質を変性させない条件を当業者が適宜選択することができる。なお、最終的に取得されるタンパク質のアミノ酸配列は、融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドとして設計した塩基配列に対応している必要はない。例えば、分泌シグナルをコードする塩基配列を有するように設計されたポリヌクレオチドを用いて発現させた場合、最終的に取得されたタンパク質のアミノ酸配列に分泌シグナル配列が含まれていてもよいし、当該分泌シグナル配列が失われていてもよい。
以下に実施例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1
[GAS1タンパク質(Gas1p)の製造-1]
(培養液中へGas1pを分泌発現するプラスミドpBG1805(GAS1-ω-His)の構築)
GAS1タンパク質(Gas1p)を発現させるために、強力なプロモータ(GAL1プロモータ)の下流にGAS1遺伝子を繋いだプラスミドを用意した。このプラスミドは、染色体DNAを用いて当業者が容易に構築することができるが、本実施例では簡便のため、GE DharmaconのYeast ORF Collectionより、プラスミドpBG1805(GAS1)を購入して使用した。プラスミドpBG1805(GAS1)の構造を図1に示す。プラスミドpBG1805(GAS1)は、URA3を栄養要求性マーカーに持ち、Gas1pのORFをGAL1プロモータにより発現する。Gas1pのORFは、配列番号1の1~22番目のアミノ酸配列に相当するN末端分泌シグナルをコードする部位(N末シグナル)、配列番号1の23~527番目のアミノ酸配列に相当する触媒部位等をコードする部位(触媒部位等)、及び配列番号1の528~559番目のアミノ酸配列に相当するGPIアンカーシグナルをコードする部位(GPIシグナル)からなる。また、ORFのC末端にはタグ(C-Term Tag)が付加している。
次に、プラスミドpBG1805(GAS1)において、GPIシグナル部位を除去した。これにより、発現されるGas1pから細胞壁への結合に寄与するGPIシグナルが無くなり、発現時にGas1pを細胞壁へ捕捉させず培養液中に遊離状態で分泌発現させる。従って、Gas1pの回収が容易となる。なお、本実施例では、GPIシグナル部位の除去とともに、プラスミドpBG1805(GAS1)のPRFのC末端についていたタグ(C-Term Tag)も同時に除去する。
GPIシグナル部位(及びC-Term Tag部位)の除去方法としては当業者が適宜選択することができるが、本実施例では、GPIシグナル部位及びC-Term Tag部位を除いた領域をPCRで増幅させた。PCRで用いたプライマー(図1において、プラスミドに沿う2個の矢印によって示される)の配列等の情報を以下に示す。フォワードプライマー及びリバースプライマーは、いずれも5’末端側に制限酵素(Hind III)認識配列を付加し、リバースプライマーには、制限酵素認識配列に終始コドンを挟んでさらにアフィニティタグ(ヒスチジンタグ;6×His)配列を付加するようにデザインした。
Figure 0007224012000001
PCR産物の構造を図2に示す。GPIシグナル部位及びC-Term Tag部位の除去とともに、ヒスチジンタグ(6×His)が付加され、且つ両端に制限酵素認識部位を有する線状ポリヌクレオチドが得られた。
線状ポリヌクレオチドであるPCR産物を制限酵素Hind IIIで処理することで粘着末端を生じさせ、セルフライゲーションにより環状化を行った。これによって、培養液中へGas1pを分泌発現するプラスミドpBG1805(GAS1-ω-His)を構築した。プラスミドpBG1805(GAS1-ω-His)の構造を図3に示す。
DNAシーケンスによって、プラスミドpBG1805 (GAS1-ω-his)の配列を確認した。別途準備したフォワードプライマーによるシーケンス結果を配列番号8に示し、別途準備したリバースプライマーによるシーケンス結果(逆相補鎖に変換)を配列番号9に示す。配列番号8においては、GAL1プロモータ配列(配列番号8における103番目まで)、及び配列番号1におけるGas1pをコードする、開始コドンatg(配列番号8における104~106番目)を含む塩基配列が確認された。配列番号9においては、配列番号1に示すGas1pをコードする塩基配列(配列番号9における907番目まで)、配列番号1における527番目のリシンをコードする塩基配列aag(配列番号9における908~910番目)、6×ヒスチジンをコードする塩基配列caccaccaccaccaccac(配列番号9における911~928番目)及び終止コドンtaa(配列番号9における929~931番目)が確認された。
(発現誘導及び発現Gas1pの精製)
構築したプラスミドpBG1805(GAS1-ω-His)を、酵母Saccharomyces cerevisiae BY4741を宿主として組み込んだ。このようにして得られた形質転換体を、ガラクトースを炭素源とする培地で培養し、Gas1pの発現を誘導した。培養後、遠心分離によって菌体を除去し、培養上清を回収した。なお、図4に、発現誘導させたGas1pの構造をGas1(1-527-his)pとして模式的に示す。以下において、この構造を有するGas1pは、Gas1(1-527-his)pとも記載する。Gas1(1-527-his)pは、図4に示すように、分泌シグナル、N末端ドメイン、リンカー部位、Cys-Box及びSer-Boxを有し、さらにヒスチジンタグが付加されている。
培養上清からのGas1p(Gas1(1-527-his)p)の精製には、HisTrap HP, 1 mL (Amersham Biosciences, 現GEヘルスケア バイオサイエンス)を用いた。カラムを平衡化させるため、Binding buffer(20 mMリン酸緩衝液(pH 7.4) + 30 mM Imidazole + 500mM NaCl)を5 mL通した。カラムに培養上清4.5 mLを通し、Gas1pをヒスチジンタグを介して捕捉した。さらに洗浄のため、カラムにBinding bufferを12 mL通した。(なお、カラムの非吸着画分は後述の実施例9で使用した。)捕捉したGas1pを溶出させるため、カラムに溶出用液Elution buffer(20 mMリン酸緩衝液(pH 7.4) + 500 mM Imidazole + 500mM NaCl)を4 mL通した。溶出したGas1p含有液画分は、500 μLずつ1.5 mLチューブに回収した。
[乳化活性試験1-乳化相の生成の確認]
溶出液(Gas1p含有液)のそれぞれの画分から200μLを試験管に加え、純水で2 mLにメスアップした。さらにケロシン油1 mLを加え、30秒ボルテックスした。静置(30℃, 1 h)後、乳化相の出現により乳化現象を確認した。
溶出液の乳化測定の結果を図5に示す。図5においては、上述のようにして得られたプラスミドpBG1805(GAS1-ω-His)で形質転換した酵母の培養上清の各画分による結果(図中「WT with pBG1805(GAS1-ω-His) Gal誘導」、n=2)とともに、比較用に、酵母Saccharomyces cerevisiae BY4741(野生型)を同様に培養し、回収した培養上清の各画分を用いて同様に純粋でメスアップ、ケロシン油添加、及びボルテックスした結果(図中「WT Gal誘導」、n=2)と、溶出溶液のみにケロシン油添加、及びボルテックスした結果(図中「Elution buffer 200μL」)とを併せて示す。図5に示すように、プラスミドpBG1805(GAS1-ω-His)で形質転換した酵母の培養上清の各画分のうち、第2画分(0.5~1.0mL画分)及び第3画分(1.0~1.5mL画分)において、ミセル形成による乳化相(懸濁相)を確認したことに対し、野生型酵母の培養上清画分及び溶出用液Elution bufferにおいては、そのような乳化相は生じなかった。
[GAS1タンパク質の発現確認試験(電気泳動及びウェスタンブロッティング)]
GAS1タンパク質(Gas1p)の発現を確認するため、培養上清(精製前)とHis-Tag精製後の溶出液を、SDS-PAGE及びウェスタンブロッティングに供した。
<使用試薬-SDS-PAGE (銀染色)>
Acetic acid (WAKO, 特級)
Methanol (WAKO, 特級)
2D-銀染色試薬・II (コスモバイオ)
(a)固定化剤 : チオ尿素
(b)前処理剤 : ジチオスレイトール、グルタルアルデヒド、チオ尿素
(c)染色液A : 硝酸銀
(d)染色液B : 水酸化アンモニウム、水酸化ナトリウム
(e)現像原液 : クエン酸、ホルムアルデヒド、チオ硫酸ナトリウム
(f)停止液 : クエン酸
2×Sample buffer(0.125 M Tris-HCl, 10% 2-Mercaptoethanol, 4% SDS, 10% Sucrose, 0.04 mg/mL Bromophenol blue)
10×Running buffer
30% Acrylamide mixture (10%ポリアクリルアミドゲルの作成に使用)
WIDE-VIEW TM Prestained Protein Size Marker III (SDS-PAGE用マーカー, WAKO)
<使用試薬-ウェスタンブロッティング>
10×TBS-T (希釈して使用)
100 mM Tris-HCl (pH 7.5)
1 M NaCl (WAKO, 特級)
0.5% Tween20 (WAKO)
1×Anode I
300 mM Tris-HCl (pH 10.4)
10% MeOH (WAKO, 特級)
1×Anode II
25 mM Tris-HCl (pH 10.4)
10% MeOH (WAKO, 特級)
1×Cathode
25 mM Tris-HCl (pH 9.6)
40 mM Glysine (WAKO, 特級)
10% MeOH (WAKO, 特級)
5%スキムミルク(WAKO, 生化学用)
一次抗体(Anti-His-tag mAb, IgG/Mouse, amg/mL, MBL)
Solution I (Signal(R) Immunoreaction Enhancer Solution, TOYOBO)
二次抗体(Anti-Mouse IgG-Alkaline Phosphatase antibody produces in goat)
Solution II (Signal(R) Immunoreaction Enhancer Solution, TOYOBO)
BCIP-NBT溶液キット(nacalai tesque)
カラーマーカー(Precision Plus Protein Standards, BIO RAD)
<使用器具>
PVDFメンブレン(Immonilon-P, 0.45 μm, 20 cm × 20 cm, Millipore)
濾紙(No. 1, 240 mm, ADVANTEC)
<実験手順-SDS-PAGE及び銀染色>
2.5 μLの培養上清(精製前)と1 μLのHis-Tag精製後のElution buffer溶出液(第1画分として0~0.5 mL画分、第2画分として0.5~1.0 mL画分、第3画分として1.0~1.5 mL画分、及び第4画分として1.5~2.0 mL画分)とをそれぞれ1.5 mLチューブに加え、純水で10 μLにメスアップした。
当該1.5 mLチューブに、さらに前述した2×Sample buffer10 μLを加え、ウォーターバスで変性処理(95℃, 5分)を行った。10%ポリアクリルアミドゲルにサンプルを20μLずつアプライした。WIDE-VIEW TM Prestained Protein Size Marker IIIを3 μLアプライし、電気泳動(50 mA, 約75分)を行った。
メタノール25 mL、酢酸5 mL、純水20 mLを混合した(固定液I)。ゲルを固定液Iに浸し、振盪(10分)した。メタノール15 mL、酢酸5 mL、(a)固定化剤2.5 mL、純水27.5 mLを混合した(固定液II)。固定液Iを捨て、ゲルを固定液IIに浸して振盪(15 分)した。メタノール25 mL、(b)前処理剤2.5 mL、純水22.5 mLを混合した(前処理液)。固定液IIを捨て、ゲルを前処理液に浸して振盪(10分)した。前処理液を捨て、ゲルを純水50 mLに浸して振盪(5分)した。(c)染色液A 2.5 mL、(d)染色液B 2.5 mL、純水45 mLを混合した(銀染色液)。純水を捨て、ゲルを銀染色液に浸して振盪(15分)した。銀染色液を回収し、純水50 mLで2分間、計3回洗浄した(銀染色液は塩酸を加えて塩化銀にしてから、廃液として回収した)。(e)現像原液2.5 mL、純水47.5 mLを混合した(現像液)。純水を捨て、ゲルを現像液に浸して振盪した。適度なバンドが確認できたら、(f)停止液を2.5 mL加えて振盪した。反応が停止したら、ゲルを水で5分程度2、3回洗浄した。その後、ゲルを観察した。
<実験手順-ウェスタンブロッティング>
上述と同様にSDS-PAGEによる電気泳動を行い、以下のようにして、His抗体を用いて、Gas1pをHisタグを介して検出することによりその存在を確認した。ゲルのサイズより一回り大きいPVDFメンブレン(80 mm × 90 mm)を用意し、100% MeOHに20秒浸して親水化し、その後すぐに純水に浸した。3つのプラスチック容器に、1×Anode I、1×Anode II、1×Cathodeを加え、それぞれ4・2・6枚の濾紙(80 mm × 90 mm)を浸した。SDS-PAGE後、新しいプラスチック容器に1×Cathodeを加え、ゲルを浸した。セミドライ式転写装置の陽極にAnode Iの濾紙、Anode IIの濾紙、メンブレン、ゲル、Cathodeの濾紙を順に重ねた。泡が入らないように濾紙の上に次の溶液をマイクロピペットで少量撒いた。陰極を重ね、泡を抜くように陰極を手の平で押した。陰極の上に1 kg程度の重りを置き、転写を行った(60 mA, 110分)。メンブレンのマーカーと余分な部分を切り取り、表裏が分かるよう左上に切れ込みを入れた。メンブレンのサイズに合わせた容器をパラフィルムで作り、5%のスキムミルク溶液20 mLを用いてブロッキングを行った(一晩振盪, 4℃)。20 mLの1×TBSTでメンブレンを洗浄した(5分振盪, 3回, 液はアスピレーターでよく取り除く)。一次抗体をSolution Iで1000倍希釈したもの5 mLをメンブレンに撒き、振盪(1 h)した。その後20 mLの1×TBSTでメンブレンを洗浄した(5分振盪, 3回)。二次抗体をSolution IIで5000倍希釈したもの5 mLをメンブレンに撒き、振盪(30 分)した。その後、20 mLの1×TBSTでメンブレンを洗浄した(5分振盪, 3回)。BCIP-NBT溶液キットの緩衝液5 mLと発色原液50 μLとを直前に混合し、メンブレンに添加し、目的の位置に青紫色のバンドが現れるまで振盪した。適度に染色されたら、すぐに純水でメンブレンを洗浄し、反応を停止させた。その後、メンブレンを観察した。
銀染色の結果とウェスタンブロッティングの結果とを図6に示す。図6において、上のゲル写真は銀染色の結果であり、下のゲル写真はウェスタンブロッティングの結果である。図6においては、プラスミドpBG1805(GAS1-ω-His)で形質転換した酵母Saccharomyces cerevisiae (BY4741)の培養上清の各画分(Expression vector(+))に加え、比較用に、プラスミドを持たない酵母の培養上清の各画分(-)も併せて示している。Mはタンパク質サイズマーカーである。図6に示すように、プラスミドpBG1805(GAS1-ω-His)で形質転換した酵母の培養上清の各画分(Expression vector(+))のうち、第2画分と第3画分に、Gas1pの存在が確認され、乳化活性が認められた上述の画分と一致した。
実施例2
[乳化活性試験2-レシチンの乳化活性との比較]
Gas1pを900 μg/mLを含むGas1p水溶液を用意し、Gas1p水溶液と同体積のケロシン油を加え、1分を2回(計2分)撹拌した(TAITEC社BEAD CRUSHER μT-01)。比較用に、レシチンを900 μg/mLを含むレシチン水溶液を用意し、レシチン水溶液と同体積のケロシン油を加え、同様に撹拌した。その結果、いずれも乳化相が生じた。撹拌後10分静置後、1時間静置後、及び18時間静置後の各時点において、乳化相を観察した。
結果を図7に示す。10分静置後においては、レシチンの場合よりもGas1pの場合の方が、乳化相以外の相の厚みが薄く、つまり、Gas1pによる乳化相が占める体積の方が大きいことが確認された。また、Gas1pによる乳化相は容器内壁に多く付着しており、乳化相の粘性がより高いことも確認された。つまり、Gas1pの乳化活性の高さが示された。なお、この両者の乳化活性の差は、時間が経過する程大きくなっていった。Gas1pによる乳化相は、18時間静置後においても、10分静置後における状態とほとんど変わっていなことから、長時間安定的に乳化状態が維持されている点でも、Gas1pの乳化活性の高さが示された。
実施例3
[乳化相におけるミセルの確認]
実施例2で得られた乳化相を、顕微鏡(オリンパス社製BH-50)で観察した。その結果、図8に示すようなミセルが観察された。なお、Gas1pによるミセルサイズは、概ね直径数十から数百μmであった。
さらに、実施例2で得られたGas1pによる乳化相(1時間静置後)を、1 mL程度の水に滴下すると、乳化相は広がりうすめられた。一方、Gas1pによる乳化相(1時間静置後)を1 mL程度のケロシン油に滴下すると、乳化相はケロシン油中で液滴を形成した。また、Gas1pによる乳化相(1時間静置後)に、水溶性色素であるメチレンブルーの粉をふりかけると容易に色素が溶けたのに対し、油溶性で水に溶けない色素であるスダンIIIをふりかけても色素が溶ける様子は観察されなかった。これらの結果から、Gas1pによる乳化相のエマルジョンの型は水中油滴(O/W)型であると判明した。
実施例4
[GAS1タンパク質(Gas1p)の製造-2]
GAS1タンパク質(Gas1p)を発現させるために、強力なプロモータ(PGK1プロモータ)の下流にGAS1遺伝子を繋いだプラスミドを用意した。このプラスミドは、染色体DNAを用いて当業者が容易に構築することができるが、本実施例では簡便のため、酵母遺伝資源センターより分譲されたプラスミドpSP-G1を使用した。このプラスミドは、プロモータがPGK1であり、URA3を栄養要求マーカーに有する多コピー型プラスミドである。このプラスミドpSP-G1を用いて、実施例1と同様に、GP1シグナル部位の除去、PCR、ライゲーションによる環状化を行い、プラスミドpSP-G1[GAS(1-527-his)]を得た。
構築したプラスミドpSP-G1[GAS(1-527-his)]を、酵母Saccharomyces cerevisiae BY4741を宿主として組み込んだ。このようにして得られた形質転換体を、グルコースを炭素源とする培地で培養し、Gas1pを発現させた。培養後、遠心分離によって菌体を除去し、培養上清を回収した。培養上清からのGas1pの精製は、実施例1と同様にして行った。発現させたGas1pの構造は、図4にGas1(1-527-his)pとして示した通りである。
[乳化活性試験3-免疫賦活性乳化剤の濃度と乳化活性との関係]
得られたGas1pを含む培養上清をヒスタグカラム精製に供し、精製画分を透析した後、Gas1p濃度が10μg/mL、15μg/mL、20μg/mL、30μg/mL、及び50μg/mLを含む溶液を調製した。画分それぞれのGas1p濃度は、BCA法によって測定した。これらのGas1p含有画分(Gas1p水溶液)に、その半分の体積のケロシン油を加え、30秒ボルテックスした。その結果を図9に示す。図9に示すように、いずれのGas1p水溶液に対しても乳化相が生じた。乳化相が占める体積又はミセルのサイズに着目すると、Gas1p濃度に応じて乳化活性が好ましく得られる傾向が確認された。なお、本実施例は培養上清の精製画分を透析した後に試験したが、透析前の精製画分でも同様にすべてのGas1p濃度において乳化活性が認められ、Gas1p濃度に応じて乳化活性が好ましく得られる傾向が確認された。また、より濃度が低い5μg/mLの場合でもミセルの形成を確認した。
実施例5
[GAS1タンパク質(Gas1(1-484-his)p)の製造]
Gas1pを発現させるプラスミドにおいて、触媒等部位を、配列番号1の23~484番目のアミノ酸配列に相当する部位に変更したことを除き、上述と同様にして形質転換、培養、及び培養上清回収を行い、Gas1(1-484-his)pを得た。発現させたGas1(1-484-his)pの構造を、図10に模式的に示す。Gas1(1-484-his)pは、図10に示すように、分泌シグナル、N末端ドメイン、リンカー部位、及びCys-Boxを有し、さらにヒスチジンタグが付加されており、図4に示したGas1(1-527-his)pと異なりSer-Boxを有していない。
[乳化活性試験4-Gas1配列と乳化活性との関係]
上述の乳化活性試験3と同様に、Gas1(1-484-his)pを含む培養上清をヒスタグカラム精製に供し、精製画分を透析した後、Gas1(1-484-his)p濃度が10μg/mL、15μg/mL、20μg/mL、30μg/mL、及び50μg/mLを含む溶液を調製し、乳化活性試験を行った。その結果を図11に示す。図11に示すように、20μg/mL以上のGas1p水溶液に対して乳化相が生じた。さらに、乳化相が占める体積又はミセルのサイズを併せて考慮しても、Ser-Boxを有していないGas1(1-484-his)p(図11)よりも、Ser-Boxを有しているGas1(1-527-his)p(図9)のほうがより高い乳化活性が得られることが分かった。なお、本実施例は培養上清の精製画分を透析した後に試験したが、透析前の精製画分でも同様の乳化活性の傾向が確認された。
実施例6
[GAS1タンパク質(Gas1(1-369,469-527-his)p)の製造]
Gas1pを発現させるプラスミドにおいて、触媒等部位を、配列番号1の23~369、469~527番目のアミノ酸配列に相当する部位に変更したことを除き、上述と同様にして形質転換、培養、及び培養上清回収を行い、Gas1(1-369,469-527-his)pを得た。発現させたGas1(1-369,469-527-his)pの構造を、図10に模式的に示す。Gas1(1-369,469-527-his)pは、図10に示すように、分泌シグナル、N末端ドメイン、リンカー部位、及びSer-Boxを有し、さらにヒスチジンタグが付加されており、図4に示したGas1(1-527-his)pと異なりCys-Boxを有していない。
[乳化活性試験5-Gas1配列と乳化活性との関係]
上述の乳化活性試験3と同様に、Gas1(1-369,469-527-his)pを含む培養上清をヒスタグカラム精製に供し、精製画分を透析した後、Gas1(1-369,469-527-his)p濃度が10μg/mL、15μg/mL、20μg/mL、30μg/mL、及び50μg/mLを含む溶液を調製し、乳化活性試験を行った。その結果を図12に示す。図12に示すように、いずれのGas1(1-369,469-527-his)p水溶液に対しても乳化相が生じた。乳化相が占める体積又はミセルのサイズに着目すると、Gas1(1-369,469-527-his)p濃度に応じて乳化活性が好ましく得られる傾向が確認された。図9、図11及び図12の結果を総合すると、Gas1pがSer-Boxを有している方が好ましい乳化活性が得られることが分かった。
実施例7
[GAS1タンパク質(Gas1p)の製造-3]
Dharmacon社(旧Open Biosystems社)より購入したGUP1遺伝子欠損株(gup1Δ)をYPDS液体培地で30℃,48時間培養した。培養後、遠心分離(2900xG,5分)により菌体を除去し、培養上清を得た。発現させたGas1pの構造を、図13に模式的に示す。
[乳化活性試験6-pHと乳化活性との関係]
Gas1pを含む培養上清画分100 mLにケロシン油40 mLを加えて乳化し乳化相を回収した。回収した乳化相にさらに水を加え撹拌した後に再び乳化相を回収する操作を2回繰り返した。最終的に得られた乳化相を濃縮及び乾燥させた。この操作により、Gas1pを濃縮した。乾燥させたGas1pを1.0 mL程度の純水で懸濁し、そこから0.1 mL程度をとりpHのそれぞれ異なる緩衝液(50 mM)で2mLにメスアップした。そこにケロシン油2mLを加え、乳化相を観察した。なお、緩衝液としては、pH3.0、4.0、5.0、6.0及び7.0に調整されたクエン酸緩衝液;pH6.0、7.0、及び8.0に調整されたリン酸緩衝液;pH7.0、8.0、及び9.0に調整されたTris-HCl緩衝液;並びに、pH9.0及び10.0に調整された炭酸-重炭酸緩衝液を用いた。
結果を図14に示す。図14においては、乾燥させたGas1pを加えた系(+)とともに、比較用に、乾燥させたGas1pを加えない系(-)も併せて示している。図14に示すように、いずれのpHでも(pH3.0~10.0)乳化相が確認され、つまり乳化活性が確認された。中でも、pH3.0~6.0である場合に乳化相が占める体積が大きく(つまり乳化活性がより高く)、pH3.0~5.0である場合に乳化相が占める体積が特に大きい(つまり乳化活性が特に高い、耐酸性である)ことが確認された。
実施例8
[乳化活性試験7-塩濃度と乳化活性との関係]
実施例7と同様の操作で得られた乾燥させたGas1pを、同様に1.0 mL程度の純水で懸濁し、そこから0.1 mL程度をとり塩濃度のそれぞれ異なる水性液で2mLにメスアップした。そこにケロシン油2mLを加え、乳化相を観察した。なお、水性液としては、塩化ナトリウムが0M(つまり水)、1M、2M、3M、及び4Mの濃度となるように調整された水または塩化ナトリウム水溶液を用いた。メスアップ後の塩化ナトリウムの最終濃度も、約1M、2M、3M、及び4Mの濃度で大きな変動はない。
結果を図15に示す。図15においては、乾燥させたGas1pを加えた系(+)とともに、比較用に、乾燥させたGas1pを加えない系(-)も併せて示している。図15に示すように、いずれの塩濃度でも乳化相が確認され、つまり乳化活性が確認された。中でも、特に塩濃度の高い4Mの塩化ナトリウム水溶液に対しても高い乳化活性(耐塩性であること)が確認された。
実施例9
[GAS1タンパク質(Gas1p)の免疫賦活性試験]
Gas1pを所定濃度(5μg/mL、20μg/mL及び50μg/mL)でリン酸緩衝液(10 mM. pH7.4)中に含むGas1p含有液と、比較用に、実施例1で得られたカラムの非吸着画分(Gas1pを含まない、但しタンパク質濃度は20μg/mL及び50μg/mLである)、β-グルカンを所定濃度(50μg/mL及び250μg/mL)でリン酸緩衝液中に均一分散されたβ-グルカン含有液、リン酸緩衝液、及び実施例1で用いた培地とを試験サンプルとして用い、これら試験サンプルに対し、以下のようにしてマクロファージ活性化能(TNF-α分泌量)の測定を行った。なお、試験サンプル中のGas1p等のタンパク質濃度は、BCA法によって測定した。
継代培養したマクロファージ細胞を、遠心分離により回収し、新しいRPMI-1640培地に懸濁し、細胞濃度を0.5 x 106 cells/mLに調整した。細胞懸濁溶液を250μLずつ24穴の細胞培養プレートにまき、24時間、37℃、5% CO2下で培養した。その後、培地を除き細胞に新しいRPMI-1640培地437.5μLと試験サンプル62.5μLとを加えて混合した。6時間インキュベートした後、遠心分離(4℃, 3000 × g, 5分)により上清を回収した。ELISAキット(Quantikine Mouse TNF-α ELISA kit, R&D Systems)を用いて、マクロファージによって分泌され上清に含まれるTNF-α量を測定した。TNF-αのstandardを用いて検量線を作成し、サンプル中のTNF-α量を算出した。なお、ELISAの操作はキットに記載されている方法に従った。結果を図16に示す。図16において、縦軸は、TNF-αの量(pg/mL)を示す。
図16に示すように、比較用のリン酸緩衝液の場合、及びGas1pでないタンパク質が20μg/mL又は50μg/mL含まれる非吸着画分でマクロファージ細胞を刺激した場合に比べ、Gas1p含有液で刺激した場合において、TNF-αの分泌量の明らかな増加が認められた。つまり、Gas1pによる免疫賦活性が確認された。例えば、Gas1pでないタンパク質の濃度が20μg/mL又は50μg/mLである場合(非吸着画分)と、Gas1p濃度が20μg/mL又は50μg/mLである場合とで比較すると、同じタンパク質濃度であるにも関わらず、Gas1pによるTNF-αの分泌量の差は歴然としている。さらに、免疫賦活性を有することが知られているβ-グルカン濃度が50μg/mLである場合と、Gas1p濃度が50μg/mLである場合とで比較すると、いずれも免疫賦活性を有していても、Gas1pによるTNF-αの分泌量がはるかに高い(免疫賦活性がはるかに高い)ことが確認された。
[GAS1タンパク質(Gas1(1-484-his)p)の免疫賦活性試験]
溶出用液を用いて、実施例5で得られたSer-Boxを有していないGAS1タンパク質(Gas1(1-484-his)p)が30μg/mLとなるように調製したGas1(1-484-his)p含有液と、比較用に実施例5で用いた培地と、を試験サンプルとして用い、これら試験サンプルに対し、以下のようにしてマクロファージ活性化能(TNF-α分泌量)の測定を行った。なお、試験サンプル中のGas1(1-484-his)pの濃度は、BCA法によって測定した。
継代培養したマクロファージ細胞を、遠心分離により回収し、新しいRPMI-1640培地に懸濁し、細胞濃度を1.0 x 106 cells/mLに調整した。細胞懸濁溶液を500μLずつ24穴の細胞培養プレートにまき、24時間、37℃、5% CO2下で培養した。その後、培地を除き細胞に新しいRPMI-1640培地437.5μLと試験サンプル62.5μLとを加えて混合した。6時間インキュベートした後、遠心分離(4℃, 3000 × g, 5分)により上清を回収した。ELISAキット(Quantikine Mouse TNF-α ELISA kit, R&D Systems)を用いて、マクロファージによって分泌され上清に含まれるTNF-α量を測定した。TNF-αのstandardを用いて検量線を作成し、サンプル中のTNF-α量を算出した。なお、ELISAの操作はキットに記載されている方法に従った。結果を図17に示す。図示されるように、30μg/mLのGas1(1-484-his)p含有液でマクロファージ細胞を刺激することにより、TNF-αの分泌量の明らかな増加が認められた。つまり、Gas1(1-484-his)p含有液に免疫賦活性が認められた。
[GAS1タンパク質(Gas1(1-369,469-527-his)p)の免疫賦活性試験]
溶出用液を用いて、実施例6で得られたCys-Boxを有していないGAS1タンパク質(Gas1(1-369,469-527-his)p)が30μg/mLとなるように調製したGas1(1-369,469-527-his)p含有液と、比較用に実施例6で用いた培地(実施例5と同じ)と、を試験サンプルとして用い、これら試験サンプルに対し、上述のGas1(1-484-his)pの免疫賦活性試験と同様にしてマクロファージ活性化能(TNF-α分泌量)の測定を行った。なお、試験サンプル中のGas1(1-369,469-527-his)pの濃度は、BCA法によって測定した。結果を図17に示す。図示されるように、30μg/mLのGas1(1-369,469-527-his)p含有液でマクロファージ細胞を刺激することにより、TNF-αの分泌量の明らかな増加が認められた。つまり、Gas1(1-369,469-527-his)p含有液に免疫賦活性が認められた。
実施例10
[GAS3タンパク質(Gas3p)の製造]
プラスミドに繋ぐ遺伝子をGAS3遺伝子に変更したことを除いて、実施例4のGAS1タンパク質(Gas1p)の製造-2と同様にしてGAS3タンパク質(Gas3p)を発現させた。発現させたGas3pの構造を、図18にGas3(1-503-his)pとして模式的に示す。Gas3(1-503-his)pは、図18に示すように、分泌シグナル、N末端ドメイン、リンカー部位、及びSer-Boxを有し、さらにヒスチジンタグが付加されている。
[GAS3タンパク質の乳化活性試験]
上述の乳化活性試験3に準じて、Gas3(1-503-his)pを含む培養上清をヒスタグカラム精製に供し、精製画分を透析した後、Gas3(1-503-his)p濃度が10μg/mL、15μg/mL、20μg/mL、30μg/mL、及び50μg/mLを含む溶液を調製し、乳化活性試験を行った。その結果を図19に示す。図19に示すように、いずれのGas3(1-503-his)p水溶液に対しても乳化相が生じた。乳化相が占める体積又はミセルのサイズに着目すると、GAS3タンパク質もGAS1タンパク質と同様に、濃度に応じて乳化活性が好ましく得られる傾向が確認された。なお、本実施例は培養上清の精製画分を透析した後に試験したが、透析前の精製画分でも同様の乳化活性の傾向が確認された。また、より濃度が低い5μg/mLの場合でもミセルの形成を確認した。
[GAS3タンパク質の免疫賦活性試験]
溶出用液を用いてGAS3タンパク質(Gas3p)が30μg/mLとなるように調製したGas3p含有液と、比較用に実施例10で用いた培地と、参考用にGAS1タンパク質(gas1p)が30μg/mLとなるように調製したGas1p含有液と、を試験サンプルとして用い、これら試験サンプルに対し、以下のようにしてマクロファージ活性化能(TNF-α分泌量)の測定を行った。なお、試験サンプル中のGas3pの濃度は、BCA法によって測定した。
継代培養したマクロファージ細胞を、遠心分離により回収し、新しいRPMI-1640培地に懸濁し、細胞濃度を1.0 x 106 cells/mLに調整した。細胞懸濁溶液を500μLずつ24穴の細胞培養プレートにまき、24時間、37℃、5% CO2下で培養した。その後、培地を除き細胞に新しいRPMI-1640培地437.5μLと試験サンプル62.5μLとを加えて混合した。6時間インキュベートした後、遠心分離(4℃, 3000 × g, 5分)により上清を回収した。ELISAキット(Quantikine Mouse TNF-α ELISA kit, R&D Systems)を用いて、マクロファージによって分泌され上清に含まれるTNF-α量を測定した。TNF-αのstandardを用いて検量線を作成し、サンプル中のTNF-α量を算出した。なお、ELISAの操作はキットに記載されている方法に従った。結果を図20に示す。図示されるように、30μg/mLのGas3p含有液でマクロファージ細胞を刺激することにより、TNF-αの分泌量の明らかな増加が認められた。つまり、Gas3p含有液に免疫賦活性が認められた。
実施例11
[GAS5タンパク質の製造]
プラスミドに繋ぐ遺伝子をGAS5遺伝子に変更したことを除いて、実施例4のGAS1タンパク質(Gas1p)の製造-2と同様にしてGAS5タンパク質(Gas5p)を発現させた。発現させたGas5pの構造を、図18にGas5(1-461-his)pとして模式的に示す。Gas3(1-503-his)pは、図18に示すように、分泌シグナル、N末端ドメイン、リンカー部位、及びSer-Boxを有し、さらにヒスチジンタグが付加されている。
[GAS5タンパク質の乳化活性試験]
上述の乳化活性試験3に準じて、Gas5(1-461-his)pを含む培養上清をヒスタグカラム精製に供し、精製画分を透析した後、Gas5(1-461-his)p濃度が10μg/mL、15μg/mL、20μg/mL、30μg/mL、及び50μg/mLを含む画分を調製し、乳化活性試験を行った。その結果を図19に示す。図19に示すように、いずれのGas5(1-461-his)p水溶液に対しても乳化相が生じた。乳化相が占める体積又はミセルのサイズに着目すると、GAS5タンパク質もGAS1タンパク質と同様に、濃度に応じて乳化活性が好ましく得られる傾向が確認された。なお、本実施例は培養上清の精製画分を透析した後に試験したが、透析前の精製画分でも同様の乳化活性の傾向が確認された。また、より濃度が低い5μg/mLの場合でもミセルの形成を確認した。
[GAS5タンパク質の免疫賦活性試験]
溶出用液を用いてGAS5タンパク質(Gas5p)が30μg/mLとなるように調製したGas5p含有液と、比較用に実施例10で用いた培地と、参考用にGAS1タンパク質(gas1p)が30μg/mLとなるように調製したGas1p含有液と、を試験サンプルとして用い、これら試験サンプルに対し、実施例10と同様にして、GAS5タンパク質の免疫賦活性試験を行った。結果を図20に示す。図示されるように、30μg/mLのGas5p含有液でマクロファージ細胞を刺激することにより、TNF-αの分泌量の明らかな増加が認められた。つまり、Gas5p含有液に免疫賦活性が認められた。また、GAS1タンパク質、GAS3タンパク質、及びGAS5タンパク質の中では、免疫賦活性の高いものから順に、GAS1タンパク質、GAS5タンパク質、GAS3タンパク質となる傾向が認められた。
配列番号6及び7は、プライマーである。
配列番号8及び9は、プラスミドである。

Claims (12)

  1. 真菌由来のGAS1タンパク質を含み、
    前記GAS1タンパク質が、
    (i)配列番号1に示されるアミノ酸配列の23番目から527番目のアミノ酸配列を有するタンパク質、
    (ii)配列番号1に示されるアミノ酸配列の1番目から527番目のアミノ酸配列を有するタンパク質、
    (iii)配列番号1に示されるアミノ酸配列の23番目から559番目のアミノ酸配列を有するタンパク質、
    (iv)配列番号1に示されるアミノ酸配列の1番目から369番目及び469番目から527番目のアミノ酸配列を有するタンパク質、
    (v)配列番号1に示されるアミノ酸配列の23番目から369番目及び469番目から527番目のアミノ酸配列を有するタンパク質、
    (vi)配列番号1に示されるアミノ酸配列の1番目から369番目及び469番目から559番目のアミノ酸配列を有するタンパク質、
    (vii)配列番号1に示されるアミノ酸配列の23番目から369番目及び469番目から559番目のアミノ酸配列を有するタンパク質、
    (viii)配列番号1に示されるアミノ酸配列を有するタンパク質、及
    (x)上記アミノ酸配列(i)~(viii)それぞれと0%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有し、且つ乳化活性と免疫賦活性とを有するタンパク質
    の少なくともいずれかである、免疫賦活性乳化剤。
  2. 真菌由来のGAS3タンパク質を含み、
    前記GAS3タンパク質が、
    (i)配列番号3に示されるアミノ酸配列の22番目から503番目のアミノ酸配列を有するタンパク質、
    (ii)配列番号3に示されるアミノ酸配列の1番目から503番目のアミノ酸配列を有するタンパク質、
    (iii)配列番号3に示されるアミノ酸配列の22番目から524番目のアミノ酸配列を有するタンパク質、
    (iv)配列番号3に示されるアミノ酸配列を有するタンパク質、及
    (vi)上記アミノ酸配列(i)~(iv)それぞれと0%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有し、且つ乳化活性と免疫賦活性とを有するタンパク質
    の少なくともいずれかである、免疫賦活性乳化剤。
  3. 真菌由来のGAS5タンパク質を含み、
    前記GAS5タンパク質が、
    (i)配列番号5に示されるアミノ酸配列の2番目から461番目のアミノ酸配列を有するタンパク質、
    (ii)配列番号5に示されるアミノ酸配列の1番目から461番目のアミノ酸配列を有す
    るタンパク質、
    (iii)配列番号5に示されるアミノ酸配列の2番目から484番目のアミノ酸配列を有するタンパク質、
    (iv)配列番号5に示されるアミノ酸配列を有するタンパク質、及
    (vi)上記アミノ酸配列(i)~(iv)それぞれと0%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有し、且つ乳化活性と免疫賦活性とを有するタンパク質
    の少なくともいずれかである、免疫賦活性乳化剤。
  4. 前記真菌が酵母である、請求項1~のいずれか記載の免疫賦活性乳化剤。
  5. 前記酵母がサッカロマイセス・セレビシエである、請求項に記載の免疫賦活性乳化剤。
  6. pH3.0~5.0の条件下における乳化に用いられる、請求項1~5のいずれかに記載の免疫賦活性乳化剤。
  7. 塩化ナトリウム濃度が1~4Mの条件下における乳化に用いられる、請求項1~6のいずれかに記載の免疫賦活性乳化剤。
  8. 請求項1から7のいずれかに記載の免疫賦活性乳化剤と油分と水とを含む、免疫賦活性乳化組成物。
  9. 水中油型である、請求項8に記載の免疫賦活性乳化組成物。
  10. (ii')配列番号1に示されるアミノ酸配列の1番目から527番目のアミノ酸配列と、アフィニティタグとを有するタンパク質、
    (iv')配列番号1に示されるアミノ酸配列の1番目から369番目及び469番目から527番目のアミノ酸配列と、アフィニティタグとを有するタンパク質、及
    (x')上記(ii')及び(iv')における前記アミノ酸配列と0%以上の相同性を有するアミノ酸配列と、アフィニティタグとを有し、且つ乳化活性と免疫賦活性とを有するタンパク質
    の少なくともいずれかのタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターによって形質転換された細胞を作成する工程、
    前記形質転換された細胞の培養を行う工程、
    前記培養による培養液を、前記アフィニティタグに特異的な担体に接触させ、発現タンパク質を捕捉する工程、及び
    前記捕捉された発現タンパク質を回収する工程、
    を含む、免疫賦活性乳化剤の製造方法。
  11. (ii')配列番号3に示されるアミノ酸配列の1番目から503番目のアミノ酸配列と、アフィニティタグとを有するタンパク質、及
    (vi')上記(ii')における前記アミノ酸配列と0%以上の相同性を有するアミノ酸配列と、アフィニティタグとを有し、且つ乳化活性と免疫賦活性とを有するタンパク質
    の少なくともいずれかのタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターによって形質転換された細胞を作成する工程、
    前記形質転換された細胞の培養を行う工程、
    前記培養による培養液を、前記アフィニティタグに特異的な担体に接触させ、発現タン
    パク質を捕捉する工程、及び
    前記捕捉された発現タンパク質を回収する工程、
    を含む、免疫賦活性乳化剤の製造方法。
  12. (ii')配列番号5に示されるアミノ酸配列の1番目から461番目のアミノ酸配列と、アフィニティタグとを有するタンパク質、及
    (vi')上記(ii')における前記アミノ酸配列と0%以上の相同性を有するアミノ酸配列と、アフィニティタグとを有し、且つ乳化活性と免疫賦活性とを有するタンパク質
    の少なくともいずれかのタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターによって形質転換された細胞を作成する工程、
    前記形質転換された細胞の培養を行う工程、
    前記培養による培養液を、前記アフィニティタグに特異的な担体に接触させ、発現タンパク質を捕捉する工程、及び
    前記捕捉された発現タンパク質を回収する工程、
    を含む、免疫賦活性乳化剤の製造方法。

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Yeast,2007年,24(4),289-96,doi: 10.1002/yea.1480
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