JP7224012B2 - 免疫賦活性乳化剤 - Google Patents
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Description
項1. 真菌由来のGASファミリータンパク質を含む、免疫賦活性乳化剤。
項2. 前記GASファミリータンパク質が、GAS1タンパク質、GAS3タンパク質、GAS4タンパク質、及びGAS5タンパク質の少なくともいずれかである、項1に記載の免疫賦活性乳化剤。
項3. 前記GAS1タンパク質が、
(i)配列番号1に示されるアミノ酸配列の23番目から527番目のアミノ酸配列を有するタンパク質、
(ii)配列番号1に示されるアミノ酸配列の1番目から527番目のアミノ酸配列を有するタンパク質、
(iii)配列番号1に示されるアミノ酸配列の23番目から559番目のアミノ酸配列を有するタンパク質、
(iv)配列番号1に示されるアミノ酸配列の1番目から369番目及び469番目から527番目のアミノ酸配列を有するタンパク質、
(v)配列番号1に示されるアミノ酸配列の23番目から369番目及び469番目から527番目のアミノ酸配列を有するタンパク質、
(vi)配列番号1に示されるアミノ酸配列の1番目から369番目及び469番目から559番目のアミノ酸配列を有するタンパク質、
(vii)配列番号1に示されるアミノ酸配列の23番目から369番目及び469番目から559番目のアミノ酸配列を有するタンパク質、
(viii)配列番号1に示されるアミノ酸配列を有するタンパク質、
(ix)上記アミノ酸配列(i)~(viii)それぞれにおいて、1個又は複数個のアミノ酸残基が欠失、付加、挿入若しくは置換されたアミノ酸配列を有し、且つ乳化活性と免疫賦活性とを有するタンパク質、及び
(x)上記アミノ酸配列(i)~(viii)それぞれと70%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有し、且つ乳化活性と免疫賦活性とを有するタンパク質
の少なくともいずれかである、項2に記載の免疫賦活性乳化剤。
項4. 前記GAS3タンパク質が、
(i)配列番号3に示されるアミノ酸配列の22番目から503番目のアミノ酸配列を有するタンパク質、
(ii)配列番号3に示されるアミノ酸配列の1番目から503番目のアミノ酸配列を有するタンパク質、
(iii)配列番号3に示されるアミノ酸配列の22番目から524番目のアミノ酸配列を有するタンパク質、
(iv)配列番号3に示されるアミノ酸配列を有するタンパク質、
(v)上記アミノ酸配列(i)~(iv)それぞれにおいて、1個又は複数個のアミノ酸残基が欠失、付加、挿入若しくは置換されたアミノ酸配列を有し、且つ乳化活性と免疫賦活性とを有するタンパク質、及び
(vi)上記アミノ酸配列(i)~(iv)それぞれと70%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有し、且つ乳化活性と免疫賦活性とを有するタンパク質
の少なくともいずれかである、項2に記載の免疫賦活性乳化剤。
項5. 前記GAS5タンパク質が、
(i)配列番号5に示されるアミノ酸配列の20番目から461番目のアミノ酸配列を有するタンパク質、
(ii)配列番号5に示されるアミノ酸配列の1番目から461番目のアミノ酸配列を有するタンパク質、
(iii)配列番号5に示されるアミノ酸配列の20番目から484番目のアミノ酸配列を有するタンパク質、
(iv)配列番号5に示されるアミノ酸配列を有するタンパク質、
(v)上記アミノ酸配列(i)~(iv)それぞれにおいて、1個又は複数個のアミノ酸残基が欠失、付加、挿入若しくは置換されたアミノ酸配列を有し、且つ乳化活性と免疫賦活性とを有するタンパク質、及び
(vi)上記アミノ酸配列(i)~(iv)それぞれと70%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有し、且つ乳化活性と免疫賦活性とを有するタンパク質
の少なくともいずれかである、項2に記載の免疫賦活性乳化剤。
項6. 前記真菌が酵母である、項1~5のいずれか記載の免疫賦活性乳化剤。
項7. 前記酵母がサッカロマイセス・セレビシエである、項6に記載の免疫賦活性乳化剤。
項8. 項1から7のいずれかに記載の免疫賦活性乳化剤と油分と水とを含む、免疫賦活性乳化組成物。
項9. 水中油型である、項8に記載の免疫賦活性乳化組成物。
項10. (ii')配列番号1に示されるアミノ酸配列の1番目から527番目のアミノ酸配列と、アフィニティタグとを有するタンパク質、
(iv')配列番号1に示されるアミノ酸配列の1番目から369番目及び469番目から527番目のアミノ酸配列と、アフィニティタグとを有するタンパク質、
(ix')上記(ii')及び(iv')における前記アミノ酸配列において、1個又は複数個のアミノ酸残基が欠失、付加、挿入若しくは置換されたアミノ酸配列と、アフィニティタグとを有し、且つ乳化活性と免疫賦活性とを有するタンパク質、及び
(x')上記(ii')及び(iv')における前記アミノ酸配列と70%以上の相同性を有するアミノ酸配列と、アフィニティタグとを有し、且つ乳化活性と免疫賦活性とを有するタンパク質
の少なくともいずれかのタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターによって形質転換された細胞を作成する工程、
前記形質転換された細胞の培養を行う工程、
前記培養による培養液を、前記アフィニティタグに特異的な担体に接触させ、発現タンパク質を捕捉する工程、及び
前記捕捉された発現タンパク質を回収する工程、
を含む、免疫賦活性乳化剤の製造方法。
項11. (ii')配列番号3に示されるアミノ酸配列の1番目から503番目のアミノ酸配列と、アフィニティタグとを有するタンパク質、
(v')上記(ii')における前記アミノ酸配列において、1個又は複数個のアミノ酸残基が欠失、付加、挿入若しくは置換されたアミノ酸配列と、アフィニティタグとを有し、且つ乳化活性と免疫賦活性とを有するタンパク質、及び
(vi')上記(ii')における前記アミノ酸配列と70%以上の相同性を有するアミノ酸配列と、アフィニティタグとを有し、且つ乳化活性と免疫賦活性とを有するタンパク質
の少なくともいずれかのタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターによって形質転換された細胞を作成する工程、
前記形質転換された細胞の培養を行う工程、
前記培養による培養液を、前記アフィニティタグに特異的な担体に接触させ、発現タンパク質を捕捉する工程、及び
前記捕捉された発現タンパク質を回収する工程、
を含む、免疫賦活性乳化剤の製造方法。
項12. (ii')配列番号5に示されるアミノ酸配列の1番目から461番目のアミノ酸配列と、アフィニティタグとを有するタンパク質、
(v')上記(ii')における前記アミノ酸配列において、1個又は複数個のアミノ酸残基が欠失、付加、挿入若しくは置換されたアミノ酸配列と、アフィニティタグとを有し、且つ乳化活性と免疫賦活性とを有するタンパク質、及び
(vi')上記(ii')における前記アミノ酸配列と70%以上の相同性を有するアミノ酸配列と、アフィニティタグとを有し、且つ乳化活性と免疫賦活性とを有するタンパク質
の少なくともいずれかのタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターによって形質転換された細胞を作成する工程、
前記形質転換された細胞の培養を行う工程、
前記培養による培養液を、前記アフィニティタグに特異的な担体に接触させ、発現タンパク質を捕捉する工程、及び
前記捕捉された発現タンパク質を回収する工程、
を含む、免疫賦活性乳化剤の製造方法。
本発明の免疫賦活性乳化剤は、真菌由来のGASファミリータンパク質を含む。GASファミリータンパク質は、一種類のタンパク質が乳化活性と免疫賦活性とを併せ持つ。
本発明のGASファミリータンパク質が兼備する乳化活性及び免疫賦活性は、当該タンパク質が有する生理活性のうちの一部であるが、本発明のGASファミリータンパク質の範囲を定める際に指標となる生理活性である。
GASファミリータンパク質の由来生物である真菌としては、酵母及び糸状真菌が挙げられ、好ましくは酵母が挙げられる。
GASファミリータンパク質は、一種類のタンパク質が乳化活性と免疫賦活性とを併せ持つ。GASファミリータンパク質には、GAS1タンパク質、GAS2タンパク質、GAS3タンパク質、GAS4タンパク質、GAS5タンパク質が含まれる。GAS1タンパク質、GAS2タンパク質、GAS3タンパク質、GAS4タンパク質、及びGAS5タンパク質は、細胞壁の維持に関与する真菌酵素のグリコシダーゼ/トランスグリコシダーゼGH72ファミリーのメンバーである。GAS1タンパク質、GAS2タンパク質、GAS3タンパク質、GAS4タンパク質、及びGAS5タンパク質は、細胞壁の集合および維持に関与する細胞壁結合1,3-β-グルカノシルトランスフェラーゼである。
(i)配列番号1に示されるアミノ酸配列の23番目から527番目のアミノ酸配列を有するタンパク質、
(ii)配列番号1に示されるアミノ酸配列の1番目から527番目のアミノ酸配列を有するタンパク質、
(iii)配列番号1に示されるアミノ酸配列の23番目から559番目のアミノ酸配列を有するタンパク質、
(iv)配列番号1に示されるアミノ酸配列の1番目から369番目及び469番目から527番目のアミノ酸配列を有するタンパク質、
(v)配列番号1に示されるアミノ酸配列の23番目から369番目及び469番目から527番目のアミノ酸配列を有するタンパク質、
(vi)配列番号1に示されるアミノ酸配列の1番目から369番目及び469番目から559番目のアミノ酸配列を有するタンパク質、
(vii)配列番号1に示されるアミノ酸配列の23番目から369番目及び469番目から559番目のアミノ酸配列を有するタンパク質、
(viii)配列番号1に示されるアミノ酸配列を有するタンパク質、
(ix)上記アミノ酸配列(i)~(viii)それぞれにおいて、1個又は複数個のアミノ酸残基が欠失、付加、挿入若しくは置換されたアミノ酸配列を有し、且つ乳化活性と免疫賦活性とを有するタンパク質、及び
(x)上記アミノ酸配列(i)~(viii)それぞれと70%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有し、且つ乳化活性と免疫賦活性とを有するタンパク質。
(i)配列番号2に示されるアミノ酸配列の25番目から529番目のアミノ酸配列を有するタンパク質、
(ii)配列番号2に示されるアミノ酸配列の1番目から529番目のアミノ酸配列を有するタンパク質、
(iii)配列番号2に示されるアミノ酸配列の25番目から555番目のアミノ酸配列を有するタンパク質、
(iv)配列番号2に示されるアミノ酸配列を有するタンパク質、
(v)上記アミノ酸配列(i)~(iv)それぞれにおいて、1個又は複数個のアミノ酸残基が欠失、付加、挿入若しくは置換されたアミノ酸配列を有し、且つ乳化活性と免疫賦活性とを有するタンパク質、及び
(vi)上記アミノ酸配列(i)~(iv)それぞれと70%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有し、且つ乳化活性と免疫賦活性とを有するタンパク質。
(i)配列番号3に示されるアミノ酸配列の22番目から503番目のアミノ酸配列を有するタンパク質、
(ii)配列番号3に示されるアミノ酸配列の1番目から503番目のアミノ酸配列を有するタンパク質、
(iii)配列番号3に示されるアミノ酸配列の22番目から524番目のアミノ酸配列を有するタンパク質、
(iv)配列番号3に示されるアミノ酸配列を有するタンパク質、
(v)上記アミノ酸配列(i)~(iv)それぞれにおいて、1個又は複数個のアミノ酸残基が欠失、付加、挿入若しくは置換されたアミノ酸配列を有し、且つ乳化活性と免疫賦活性とを有するタンパク質、及び
(vi)上記アミノ酸配列(i)~(iv)それぞれと70%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有し、且つ乳化活性と免疫賦活性とを有するタンパク質。
(i)配列番号4に示されるアミノ酸配列の22番目から446番目のアミノ酸配列を有するタンパク質、
(ii)配列番号4に示されるアミノ酸配列の1番目から446番目のアミノ酸配列を有するタンパク質、
(iii)配列番号4に示されるアミノ酸配列の22番目から471番目のアミノ酸配列を有するタンパク質、
(iv)配列番号4に示されるアミノ酸配列を有するタンパク質、
(v)上記アミノ酸配列(i)~(iv)それぞれにおいて、1個又は複数個のアミノ酸残基が欠失、付加、挿入若しくは置換されたアミノ酸配列を有し、且つ乳化活性と免疫賦活性とを有するタンパク質、及び
(vi)上記アミノ酸配列(i)~(iv)それぞれと70%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有し、且つ乳化活性と免疫賦活性とを有するタンパク質。
(i)配列番号5に示されるアミノ酸配列の20番目から461番目のアミノ酸配列を有するタンパク質、
(ii)配列番号5に示されるアミノ酸配列の1番目から461番目のアミノ酸配列を有するタンパク質、
(iii)配列番号5に示されるアミノ酸配列の20番目から484番目のアミノ酸配列を有するタンパク質、
(iv)配列番号5に示されるアミノ酸配列を有するタンパク質、
(v)上記アミノ酸配列(i)~(iv)それぞれにおいて、1個又は複数個のアミノ酸残基が欠失、付加、挿入若しくは置換されたアミノ酸配列を有し、且つ乳化活性と免疫賦活性とを有するタンパク質、及び
(vi)上記アミノ酸配列(i)~(iv)それぞれと70%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有し、且つ乳化活性と免疫賦活性とを有するタンパク質。
本発明の免疫賦活性乳化剤は、免疫賦活性を有するバイオサーファクタントであるため、乳化剤を用いる幅広い分野において安全性の高い機能性材料として適用できる。例えば、食品、化粧品、医薬品等に用いることができる。
本発明の免疫賦活性乳化組成物は、上述の本発明の免疫賦活性乳化剤と油分と水とを含む。免疫賦活性乳化組成物の具体例としては、食品組成物、化粧料組成物、医薬組成物等が挙げられる。なお、免疫賦活性乳化組成物において、免疫賦活性乳化剤によって形成されるミセルのタイプは特に限定されないが、当該免疫賦活性乳化剤は、水中油型(O/W)のミセルを形成しやすい。
本発明の免疫賦活性乳化剤を含む食品組成物は、当該免疫賦活性乳化剤の作用に基づいて、食品組成物を乳化形態とするとともに、例えば腸管免疫を高める機能を備えさせる等の免疫賦活性を発揮することができる。従って、当該食品組成物は、腸管免疫増強用といった機能性食品、特定保健用食品、栄養補助食品(サプリメント)、病者用食品等において有用である。
本発明の免疫賦活性乳化剤を含む化粧料組成物は、当該免疫賦活性乳化剤の作用に基づいて、化粧料組成物を乳化形態とするとともに、例えば外皮下にある免疫細胞を活性化する機能等の免疫賦活性を発揮することができる。従って、当該化粧料組成物は、皮膚外用医薬部外品、化粧料、皮膚洗浄料等において有用である。
本発明の免疫賦活性乳化剤を含む医薬組成物は、当該免疫賦活性乳化剤の作用に基づいて、医薬組成物を乳化形態とすると共に、例えば薬理活性成分による抗原性を増強させる機能、腸管免疫を高める機能、外皮下にある免疫細胞を活性化する機能等の免疫賦活性を発揮することができる。従って、当該医薬組成物は、ワクチン製剤、経口医薬品、皮膚外用医薬品等において有用である。当該医薬組成物においては、本発明の免疫賦活性乳化剤以外に他の薬理活性成分を含んでよい。
上述の本発明の免疫賦活性乳化剤の製造方法としては特に限定されず、GASファミリータンパク質を生じさせることができるあらゆる方法が用いられる。
例えば、真菌(酵母)の特定の遺伝子欠損株を培養することにより得ることができる。具体的には、GAS1タンパク質は、GUP1遺伝子欠損株の、乳化活性を有する培養上清から取得することができる。また、GAS1タンパク質は、PER1欠損株、PER1遺伝子を高発現したPER1欠損株、PERLD1遺伝子を高発現したPER1欠損株等の培養によって得ることもできる。GAS3タンパク質及びGAS5タンパク質は、GUP1遺伝子及びGAS1遺伝子の二重欠損株の、乳化活性を有する培養上清から取得することができる。
また、GASファミリータンパク質はそれらのアミノ酸配列が公知であるため、例えば精製用のアフィニティタグが結合したGASファミリータンパク質を融合タンパク質として発現可能な発現ベクターを構築し、宿主細胞に導入し、当該融合タンパク質を発現させることによって製造することができる。
工程1では、GASファミリータンパク質のアミノ酸配列とアフィニティタグ配列とを有するタンパク質(融合タンパク質)をコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターによって形質転換された細胞を作成する。
GASファミリータンパク質に結合させるアフィニティタグは、そのアフィニティタグに対応する(特異的な)担体と選択的に結合できる限り、どのようなアフィニティタグも用いることができる。例えば、アフィニティタグとしては、ニッケルキレートカラムに選択的に結合可能な2つ以上の連続するヒスチジン残基からなるヒスチジンタグ、不溶性セルロースに選択的に結合するセルロース結合部位、マルトース結合樹脂に選択的に結合するマルトース結合部位などが挙げられ、好ましくは、分子量の小さいヒスチジンタグが挙げられる。
GASファミリータンパク質にアフィニティタグが結合した融合タンパク質において、アフィニティタグはGASファミリータンパク質のカルボキシル末端に結合していることが好ましい。さらに、融合タンパク質は、GASファミリータンパク質がカルボキシル末端にGPIアンカー固定シグナルを有しない状態でアフィニティタグを有する態様であってもよいし、カルボキシル末端にGPIアンカー固定シグナルを有する状態でアフィニティタグを有する態様であってもよい。
(iv')配列番号1に示されるアミノ酸配列の1番目から369番目及び469番目から527番目のアミノ酸配列と、前記アミノ酸配列のカルボキシル末端側にアフィニティタグとを有するタンパク質、
(ix')上記(ii')及び(iv')における前記アミノ酸配列において、1個又は複数個のアミノ酸残基が欠失、付加、挿入若しくは置換されたアミノ酸配列と、前記アミノ酸配列のカルボキシル末端側にアフィニティタグとを有し、且つ乳化活性と免疫賦活性とを有するタンパク質、及び
(x')上記(ii')及び(iv')における前記アミノ酸配列と70%以上の相同性を有するアミノ酸配列と、前記アミノ酸配列のカルボキシル末端側にアフィニティタグとを有し、且つ乳化活性と免疫賦活性とを有するタンパク質。
(v')上記(ii')における前記アミノ酸配列において、1個又は複数個のアミノ酸残基が欠失、付加、挿入若しくは置換されたアミノ酸配列と、前記アミノ酸配列のカルボキシル末端側にアフィニティタグとを有し、且つ乳化活性と免疫賦活性とを有するタンパク質、及び
(vi')上記(ii')における前記アミノ酸配列と70%以上の相同性を有するアミノ酸配列と、前記アミノ酸配列のカルボキシル末端側にアフィニティタグとを有し、且つ乳化活性と免疫賦活性とを有するタンパク質。
(v')上記(ii')における前記アミノ酸配列において、1個又は複数個のアミノ酸残基が欠失、付加、挿入若しくは置換されたアミノ酸配列と、前記アミノ酸配列のカルボキシル末端側にアフィニティタグとを有し、且つ乳化活性と免疫賦活性とを有するタンパク質、及び
(vi')上記(ii')における前記アミノ酸配列と70%以上の相同性を有するアミノ酸配列と、前記アミノ酸配列のカルボキシル末端側にアフィニティタグとを有し、且つ乳化活性と免疫賦活性とを有するタンパク質。
このような融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドは、当該融合タンパク質のアミノ酸配列をコードするものであれば、どのような塩基配列からなるポリヌクレオチドであってもよい。上述のように、融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドには、GPIアンカー固定シグナルをコードする配列を含んでも含んでいなくてもよいが、宿主細胞においてタンパク質の分泌に寄与する分泌シグナル(融合タンパク質のアミノ末端に存在)を含んでいることが好ましい。ポリヌクレオチドは、好ましくはDNAである。
融合タンパク質のアミノ酸配列をコードするDNAを、宿主細胞内で複製可能で、かつ、そのDNA配列がコードするタンパク質を発現可能な状態で含む発現ベクターを構築する。発現ベクターは、自己複製ベクター、すなわち、染色体外の独立体として存在し、その複製が染色体の複製に依存しない、例えば、プラスミドを基本に構築することができる。また、発現ベクターは、宿主細胞に導入されたとき、その宿主細胞のゲノム中に組み込まれ、それが組み込まれた染色体と一緒に複製されるものであってもよい。ベクター構築の手順及び方法は、遺伝子工学の分野で慣用されているものを用いることができる。
工程2では、形質転換された細胞の培養を行う。融合タンパク質を発現する宿主細胞は、適当な培地で培養し、その培養物から融合タンパク質を得ることができる。融合タンパク質を発現させる宿主細胞の培養及びその条件は、使用する宿主細胞についての培養条件と本質的に同等であってよい。融合タンパク質は、発現させる宿主細胞中(融合タンパク質がGPIアンカー固定シグナルを有する場合)に発現するか、培養液中(融合タンパク質がGPIアンカー固定シグナルを有しない場合)に分泌される。
[GAS1タンパク質(Gas1p)の製造-1]
(培養液中へGas1pを分泌発現するプラスミドpBG1805(GAS1-ω-His)の構築)
GAS1タンパク質(Gas1p)を発現させるために、強力なプロモータ(GAL1プロモータ)の下流にGAS1遺伝子を繋いだプラスミドを用意した。このプラスミドは、染色体DNAを用いて当業者が容易に構築することができるが、本実施例では簡便のため、GE DharmaconのYeast ORF Collectionより、プラスミドpBG1805(GAS1)を購入して使用した。プラスミドpBG1805(GAS1)の構造を図1に示す。プラスミドpBG1805(GAS1)は、URA3を栄養要求性マーカーに持ち、Gas1pのORFをGAL1プロモータにより発現する。Gas1pのORFは、配列番号1の1~22番目のアミノ酸配列に相当するN末端分泌シグナルをコードする部位(N末シグナル)、配列番号1の23~527番目のアミノ酸配列に相当する触媒部位等をコードする部位(触媒部位等)、及び配列番号1の528~559番目のアミノ酸配列に相当するGPIアンカーシグナルをコードする部位(GPIシグナル)からなる。また、ORFのC末端にはタグ(C-Term Tag)が付加している。
構築したプラスミドpBG1805(GAS1-ω-His)を、酵母Saccharomyces cerevisiae BY4741を宿主として組み込んだ。このようにして得られた形質転換体を、ガラクトースを炭素源とする培地で培養し、Gas1pの発現を誘導した。培養後、遠心分離によって菌体を除去し、培養上清を回収した。なお、図4に、発現誘導させたGas1pの構造をGas1(1-527-his)pとして模式的に示す。以下において、この構造を有するGas1pは、Gas1(1-527-his)pとも記載する。Gas1(1-527-his)pは、図4に示すように、分泌シグナル、N末端ドメイン、リンカー部位、Cys-Box及びSer-Boxを有し、さらにヒスチジンタグが付加されている。
溶出液(Gas1p含有液)のそれぞれの画分から200μLを試験管に加え、純水で2 mLにメスアップした。さらにケロシン油1 mLを加え、30秒ボルテックスした。静置(30℃, 1 h)後、乳化相の出現により乳化現象を確認した。
GAS1タンパク質(Gas1p)の発現を確認するため、培養上清(精製前)とHis-Tag精製後の溶出液を、SDS-PAGE及びウェスタンブロッティングに供した。
Acetic acid (WAKO, 特級)
Methanol (WAKO, 特級)
2D-銀染色試薬・II (コスモバイオ)
(a)固定化剤 : チオ尿素
(b)前処理剤 : ジチオスレイトール、グルタルアルデヒド、チオ尿素
(c)染色液A : 硝酸銀
(d)染色液B : 水酸化アンモニウム、水酸化ナトリウム
(e)現像原液 : クエン酸、ホルムアルデヒド、チオ硫酸ナトリウム
(f)停止液 : クエン酸
2×Sample buffer(0.125 M Tris-HCl, 10% 2-Mercaptoethanol, 4% SDS, 10% Sucrose, 0.04 mg/mL Bromophenol blue)
10×Running buffer
30% Acrylamide mixture (10%ポリアクリルアミドゲルの作成に使用)
WIDE-VIEW TM Prestained Protein Size Marker III (SDS-PAGE用マーカー, WAKO)
10×TBS-T (希釈して使用)
100 mM Tris-HCl (pH 7.5)
1 M NaCl (WAKO, 特級)
0.5% Tween20 (WAKO)
1×Anode I
300 mM Tris-HCl (pH 10.4)
10% MeOH (WAKO, 特級)
1×Anode II
25 mM Tris-HCl (pH 10.4)
10% MeOH (WAKO, 特級)
1×Cathode
25 mM Tris-HCl (pH 9.6)
40 mM Glysine (WAKO, 特級)
10% MeOH (WAKO, 特級)
5%スキムミルク(WAKO, 生化学用)
一次抗体(Anti-His-tag mAb, IgG/Mouse, amg/mL, MBL)
Solution I (Signal(R) Immunoreaction Enhancer Solution, TOYOBO)
二次抗体(Anti-Mouse IgG-Alkaline Phosphatase antibody produces in goat)
Solution II (Signal(R) Immunoreaction Enhancer Solution, TOYOBO)
BCIP-NBT溶液キット(nacalai tesque)
カラーマーカー(Precision Plus Protein Standards, BIO RAD)
PVDFメンブレン(Immonilon-P, 0.45 μm, 20 cm × 20 cm, Millipore)
濾紙(No. 1, 240 mm, ADVANTEC)
2.5 μLの培養上清(精製前)と1 μLのHis-Tag精製後のElution buffer溶出液(第1画分として0~0.5 mL画分、第2画分として0.5~1.0 mL画分、第3画分として1.0~1.5 mL画分、及び第4画分として1.5~2.0 mL画分)とをそれぞれ1.5 mLチューブに加え、純水で10 μLにメスアップした。
上述と同様にSDS-PAGEによる電気泳動を行い、以下のようにして、His抗体を用いて、Gas1pをHisタグを介して検出することによりその存在を確認した。ゲルのサイズより一回り大きいPVDFメンブレン(80 mm × 90 mm)を用意し、100% MeOHに20秒浸して親水化し、その後すぐに純水に浸した。3つのプラスチック容器に、1×Anode I、1×Anode II、1×Cathodeを加え、それぞれ4・2・6枚の濾紙(80 mm × 90 mm)を浸した。SDS-PAGE後、新しいプラスチック容器に1×Cathodeを加え、ゲルを浸した。セミドライ式転写装置の陽極にAnode Iの濾紙、Anode IIの濾紙、メンブレン、ゲル、Cathodeの濾紙を順に重ねた。泡が入らないように濾紙の上に次の溶液をマイクロピペットで少量撒いた。陰極を重ね、泡を抜くように陰極を手の平で押した。陰極の上に1 kg程度の重りを置き、転写を行った(60 mA, 110分)。メンブレンのマーカーと余分な部分を切り取り、表裏が分かるよう左上に切れ込みを入れた。メンブレンのサイズに合わせた容器をパラフィルムで作り、5%のスキムミルク溶液20 mLを用いてブロッキングを行った(一晩振盪, 4℃)。20 mLの1×TBSTでメンブレンを洗浄した(5分振盪, 3回, 液はアスピレーターでよく取り除く)。一次抗体をSolution Iで1000倍希釈したもの5 mLをメンブレンに撒き、振盪(1 h)した。その後20 mLの1×TBSTでメンブレンを洗浄した(5分振盪, 3回)。二次抗体をSolution IIで5000倍希釈したもの5 mLをメンブレンに撒き、振盪(30 分)した。その後、20 mLの1×TBSTでメンブレンを洗浄した(5分振盪, 3回)。BCIP-NBT溶液キットの緩衝液5 mLと発色原液50 μLとを直前に混合し、メンブレンに添加し、目的の位置に青紫色のバンドが現れるまで振盪した。適度に染色されたら、すぐに純水でメンブレンを洗浄し、反応を停止させた。その後、メンブレンを観察した。
[乳化活性試験2-レシチンの乳化活性との比較]
Gas1pを900 μg/mLを含むGas1p水溶液を用意し、Gas1p水溶液と同体積のケロシン油を加え、1分を2回(計2分)撹拌した(TAITEC社BEAD CRUSHER μT-01)。比較用に、レシチンを900 μg/mLを含むレシチン水溶液を用意し、レシチン水溶液と同体積のケロシン油を加え、同様に撹拌した。その結果、いずれも乳化相が生じた。撹拌後10分静置後、1時間静置後、及び18時間静置後の各時点において、乳化相を観察した。
[乳化相におけるミセルの確認]
実施例2で得られた乳化相を、顕微鏡(オリンパス社製BH-50)で観察した。その結果、図8に示すようなミセルが観察された。なお、Gas1pによるミセルサイズは、概ね直径数十から数百μmであった。
[GAS1タンパク質(Gas1p)の製造-2]
GAS1タンパク質(Gas1p)を発現させるために、強力なプロモータ(PGK1プロモータ)の下流にGAS1遺伝子を繋いだプラスミドを用意した。このプラスミドは、染色体DNAを用いて当業者が容易に構築することができるが、本実施例では簡便のため、酵母遺伝資源センターより分譲されたプラスミドpSP-G1を使用した。このプラスミドは、プロモータがPGK1であり、URA3を栄養要求マーカーに有する多コピー型プラスミドである。このプラスミドpSP-G1を用いて、実施例1と同様に、GP1シグナル部位の除去、PCR、ライゲーションによる環状化を行い、プラスミドpSP-G1[GAS(1-527-his)]を得た。
得られたGas1pを含む培養上清をヒスタグカラム精製に供し、精製画分を透析した後、Gas1p濃度が10μg/mL、15μg/mL、20μg/mL、30μg/mL、及び50μg/mLを含む溶液を調製した。画分それぞれのGas1p濃度は、BCA法によって測定した。これらのGas1p含有画分(Gas1p水溶液)に、その半分の体積のケロシン油を加え、30秒ボルテックスした。その結果を図9に示す。図9に示すように、いずれのGas1p水溶液に対しても乳化相が生じた。乳化相が占める体積又はミセルのサイズに着目すると、Gas1p濃度に応じて乳化活性が好ましく得られる傾向が確認された。なお、本実施例は培養上清の精製画分を透析した後に試験したが、透析前の精製画分でも同様にすべてのGas1p濃度において乳化活性が認められ、Gas1p濃度に応じて乳化活性が好ましく得られる傾向が確認された。また、より濃度が低い5μg/mLの場合でもミセルの形成を確認した。
[GAS1タンパク質(Gas1(1-484-his)p)の製造]
Gas1pを発現させるプラスミドにおいて、触媒等部位を、配列番号1の23~484番目のアミノ酸配列に相当する部位に変更したことを除き、上述と同様にして形質転換、培養、及び培養上清回収を行い、Gas1(1-484-his)pを得た。発現させたGas1(1-484-his)pの構造を、図10に模式的に示す。Gas1(1-484-his)pは、図10に示すように、分泌シグナル、N末端ドメイン、リンカー部位、及びCys-Boxを有し、さらにヒスチジンタグが付加されており、図4に示したGas1(1-527-his)pと異なりSer-Boxを有していない。
上述の乳化活性試験3と同様に、Gas1(1-484-his)pを含む培養上清をヒスタグカラム精製に供し、精製画分を透析した後、Gas1(1-484-his)p濃度が10μg/mL、15μg/mL、20μg/mL、30μg/mL、及び50μg/mLを含む溶液を調製し、乳化活性試験を行った。その結果を図11に示す。図11に示すように、20μg/mL以上のGas1p水溶液に対して乳化相が生じた。さらに、乳化相が占める体積又はミセルのサイズを併せて考慮しても、Ser-Boxを有していないGas1(1-484-his)p(図11)よりも、Ser-Boxを有しているGas1(1-527-his)p(図9)のほうがより高い乳化活性が得られることが分かった。なお、本実施例は培養上清の精製画分を透析した後に試験したが、透析前の精製画分でも同様の乳化活性の傾向が確認された。
[GAS1タンパク質(Gas1(1-369,469-527-his)p)の製造]
Gas1pを発現させるプラスミドにおいて、触媒等部位を、配列番号1の23~369、469~527番目のアミノ酸配列に相当する部位に変更したことを除き、上述と同様にして形質転換、培養、及び培養上清回収を行い、Gas1(1-369,469-527-his)pを得た。発現させたGas1(1-369,469-527-his)pの構造を、図10に模式的に示す。Gas1(1-369,469-527-his)pは、図10に示すように、分泌シグナル、N末端ドメイン、リンカー部位、及びSer-Boxを有し、さらにヒスチジンタグが付加されており、図4に示したGas1(1-527-his)pと異なりCys-Boxを有していない。
上述の乳化活性試験3と同様に、Gas1(1-369,469-527-his)pを含む培養上清をヒスタグカラム精製に供し、精製画分を透析した後、Gas1(1-369,469-527-his)p濃度が10μg/mL、15μg/mL、20μg/mL、30μg/mL、及び50μg/mLを含む溶液を調製し、乳化活性試験を行った。その結果を図12に示す。図12に示すように、いずれのGas1(1-369,469-527-his)p水溶液に対しても乳化相が生じた。乳化相が占める体積又はミセルのサイズに着目すると、Gas1(1-369,469-527-his)p濃度に応じて乳化活性が好ましく得られる傾向が確認された。図9、図11及び図12の結果を総合すると、Gas1pがSer-Boxを有している方が好ましい乳化活性が得られることが分かった。
[GAS1タンパク質(Gas1p)の製造-3]
Dharmacon社(旧Open Biosystems社)より購入したGUP1遺伝子欠損株(gup1Δ)をYPDS液体培地で30℃,48時間培養した。培養後、遠心分離(2900xG,5分)により菌体を除去し、培養上清を得た。発現させたGas1pの構造を、図13に模式的に示す。
Gas1pを含む培養上清画分100 mLにケロシン油40 mLを加えて乳化し乳化相を回収した。回収した乳化相にさらに水を加え撹拌した後に再び乳化相を回収する操作を2回繰り返した。最終的に得られた乳化相を濃縮及び乾燥させた。この操作により、Gas1pを濃縮した。乾燥させたGas1pを1.0 mL程度の純水で懸濁し、そこから0.1 mL程度をとりpHのそれぞれ異なる緩衝液(50 mM)で2mLにメスアップした。そこにケロシン油2mLを加え、乳化相を観察した。なお、緩衝液としては、pH3.0、4.0、5.0、6.0及び7.0に調整されたクエン酸緩衝液;pH6.0、7.0、及び8.0に調整されたリン酸緩衝液;pH7.0、8.0、及び9.0に調整されたTris-HCl緩衝液;並びに、pH9.0及び10.0に調整された炭酸-重炭酸緩衝液を用いた。
[乳化活性試験7-塩濃度と乳化活性との関係]
実施例7と同様の操作で得られた乾燥させたGas1pを、同様に1.0 mL程度の純水で懸濁し、そこから0.1 mL程度をとり塩濃度のそれぞれ異なる水性液で2mLにメスアップした。そこにケロシン油2mLを加え、乳化相を観察した。なお、水性液としては、塩化ナトリウムが0M(つまり水)、1M、2M、3M、及び4Mの濃度となるように調整された水または塩化ナトリウム水溶液を用いた。メスアップ後の塩化ナトリウムの最終濃度も、約1M、2M、3M、及び4Mの濃度で大きな変動はない。
[GAS1タンパク質(Gas1p)の免疫賦活性試験]
Gas1pを所定濃度(5μg/mL、20μg/mL及び50μg/mL)でリン酸緩衝液(10 mM. pH7.4)中に含むGas1p含有液と、比較用に、実施例1で得られたカラムの非吸着画分(Gas1pを含まない、但しタンパク質濃度は20μg/mL及び50μg/mLである)、β-グルカンを所定濃度(50μg/mL及び250μg/mL)でリン酸緩衝液中に均一分散されたβ-グルカン含有液、リン酸緩衝液、及び実施例1で用いた培地とを試験サンプルとして用い、これら試験サンプルに対し、以下のようにしてマクロファージ活性化能(TNF-α分泌量)の測定を行った。なお、試験サンプル中のGas1p等のタンパク質濃度は、BCA法によって測定した。
溶出用液を用いて、実施例5で得られたSer-Boxを有していないGAS1タンパク質(Gas1(1-484-his)p)が30μg/mLとなるように調製したGas1(1-484-his)p含有液と、比較用に実施例5で用いた培地と、を試験サンプルとして用い、これら試験サンプルに対し、以下のようにしてマクロファージ活性化能(TNF-α分泌量)の測定を行った。なお、試験サンプル中のGas1(1-484-his)pの濃度は、BCA法によって測定した。
溶出用液を用いて、実施例6で得られたCys-Boxを有していないGAS1タンパク質(Gas1(1-369,469-527-his)p)が30μg/mLとなるように調製したGas1(1-369,469-527-his)p含有液と、比較用に実施例6で用いた培地(実施例5と同じ)と、を試験サンプルとして用い、これら試験サンプルに対し、上述のGas1(1-484-his)pの免疫賦活性試験と同様にしてマクロファージ活性化能(TNF-α分泌量)の測定を行った。なお、試験サンプル中のGas1(1-369,469-527-his)pの濃度は、BCA法によって測定した。結果を図17に示す。図示されるように、30μg/mLのGas1(1-369,469-527-his)p含有液でマクロファージ細胞を刺激することにより、TNF-αの分泌量の明らかな増加が認められた。つまり、Gas1(1-369,469-527-his)p含有液に免疫賦活性が認められた。
[GAS3タンパク質(Gas3p)の製造]
プラスミドに繋ぐ遺伝子をGAS3遺伝子に変更したことを除いて、実施例4のGAS1タンパク質(Gas1p)の製造-2と同様にしてGAS3タンパク質(Gas3p)を発現させた。発現させたGas3pの構造を、図18にGas3(1-503-his)pとして模式的に示す。Gas3(1-503-his)pは、図18に示すように、分泌シグナル、N末端ドメイン、リンカー部位、及びSer-Boxを有し、さらにヒスチジンタグが付加されている。
上述の乳化活性試験3に準じて、Gas3(1-503-his)pを含む培養上清をヒスタグカラム精製に供し、精製画分を透析した後、Gas3(1-503-his)p濃度が10μg/mL、15μg/mL、20μg/mL、30μg/mL、及び50μg/mLを含む溶液を調製し、乳化活性試験を行った。その結果を図19に示す。図19に示すように、いずれのGas3(1-503-his)p水溶液に対しても乳化相が生じた。乳化相が占める体積又はミセルのサイズに着目すると、GAS3タンパク質もGAS1タンパク質と同様に、濃度に応じて乳化活性が好ましく得られる傾向が確認された。なお、本実施例は培養上清の精製画分を透析した後に試験したが、透析前の精製画分でも同様の乳化活性の傾向が確認された。また、より濃度が低い5μg/mLの場合でもミセルの形成を確認した。
溶出用液を用いてGAS3タンパク質(Gas3p)が30μg/mLとなるように調製したGas3p含有液と、比較用に実施例10で用いた培地と、参考用にGAS1タンパク質(gas1p)が30μg/mLとなるように調製したGas1p含有液と、を試験サンプルとして用い、これら試験サンプルに対し、以下のようにしてマクロファージ活性化能(TNF-α分泌量)の測定を行った。なお、試験サンプル中のGas3pの濃度は、BCA法によって測定した。
[GAS5タンパク質の製造]
プラスミドに繋ぐ遺伝子をGAS5遺伝子に変更したことを除いて、実施例4のGAS1タンパク質(Gas1p)の製造-2と同様にしてGAS5タンパク質(Gas5p)を発現させた。発現させたGas5pの構造を、図18にGas5(1-461-his)pとして模式的に示す。Gas3(1-503-his)pは、図18に示すように、分泌シグナル、N末端ドメイン、リンカー部位、及びSer-Boxを有し、さらにヒスチジンタグが付加されている。
上述の乳化活性試験3に準じて、Gas5(1-461-his)pを含む培養上清をヒスタグカラム精製に供し、精製画分を透析した後、Gas5(1-461-his)p濃度が10μg/mL、15μg/mL、20μg/mL、30μg/mL、及び50μg/mLを含む画分を調製し、乳化活性試験を行った。その結果を図19に示す。図19に示すように、いずれのGas5(1-461-his)p水溶液に対しても乳化相が生じた。乳化相が占める体積又はミセルのサイズに着目すると、GAS5タンパク質もGAS1タンパク質と同様に、濃度に応じて乳化活性が好ましく得られる傾向が確認された。なお、本実施例は培養上清の精製画分を透析した後に試験したが、透析前の精製画分でも同様の乳化活性の傾向が確認された。また、より濃度が低い5μg/mLの場合でもミセルの形成を確認した。
溶出用液を用いてGAS5タンパク質(Gas5p)が30μg/mLとなるように調製したGas5p含有液と、比較用に実施例10で用いた培地と、参考用にGAS1タンパク質(gas1p)が30μg/mLとなるように調製したGas1p含有液と、を試験サンプルとして用い、これら試験サンプルに対し、実施例10と同様にして、GAS5タンパク質の免疫賦活性試験を行った。結果を図20に示す。図示されるように、30μg/mLのGas5p含有液でマクロファージ細胞を刺激することにより、TNF-αの分泌量の明らかな増加が認められた。つまり、Gas5p含有液に免疫賦活性が認められた。また、GAS1タンパク質、GAS3タンパク質、及びGAS5タンパク質の中では、免疫賦活性の高いものから順に、GAS1タンパク質、GAS5タンパク質、GAS3タンパク質となる傾向が認められた。
配列番号8及び9は、プラスミドである。
Claims (12)
- 真菌由来のGAS1タンパク質を含み、
前記GAS1タンパク質が、
(i)配列番号1に示されるアミノ酸配列の23番目から527番目のアミノ酸配列を有するタンパク質、
(ii)配列番号1に示されるアミノ酸配列の1番目から527番目のアミノ酸配列を有するタンパク質、
(iii)配列番号1に示されるアミノ酸配列の23番目から559番目のアミノ酸配列を有するタンパク質、
(iv)配列番号1に示されるアミノ酸配列の1番目から369番目及び469番目から527番目のアミノ酸配列を有するタンパク質、
(v)配列番号1に示されるアミノ酸配列の23番目から369番目及び469番目から527番目のアミノ酸配列を有するタンパク質、
(vi)配列番号1に示されるアミノ酸配列の1番目から369番目及び469番目から559番目のアミノ酸配列を有するタンパク質、
(vii)配列番号1に示されるアミノ酸配列の23番目から369番目及び469番目から559番目のアミノ酸配列を有するタンパク質、
(viii)配列番号1に示されるアミノ酸配列を有するタンパク質、及び
(x)上記アミノ酸配列(i)~(viii)それぞれと90%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有し、且つ乳化活性と免疫賦活性とを有するタンパク質
の少なくともいずれかである、免疫賦活性乳化剤。 - 真菌由来のGAS3タンパク質を含み、
前記GAS3タンパク質が、
(i)配列番号3に示されるアミノ酸配列の22番目から503番目のアミノ酸配列を有するタンパク質、
(ii)配列番号3に示されるアミノ酸配列の1番目から503番目のアミノ酸配列を有するタンパク質、
(iii)配列番号3に示されるアミノ酸配列の22番目から524番目のアミノ酸配列を有するタンパク質、
(iv)配列番号3に示されるアミノ酸配列を有するタンパク質、及び
(vi)上記アミノ酸配列(i)~(iv)それぞれと90%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有し、且つ乳化活性と免疫賦活性とを有するタンパク質
の少なくともいずれかである、免疫賦活性乳化剤。 - 真菌由来のGAS5タンパク質を含み、
前記GAS5タンパク質が、
(i)配列番号5に示されるアミノ酸配列の23番目から461番目のアミノ酸配列を有するタンパク質、
(ii)配列番号5に示されるアミノ酸配列の1番目から461番目のアミノ酸配列を有す
るタンパク質、
(iii)配列番号5に示されるアミノ酸配列の23番目から484番目のアミノ酸配列を有するタンパク質、
(iv)配列番号5に示されるアミノ酸配列を有するタンパク質、及び
(vi)上記アミノ酸配列(i)~(iv)それぞれと90%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有し、且つ乳化活性と免疫賦活性とを有するタンパク質
の少なくともいずれかである、免疫賦活性乳化剤。 - 前記真菌が酵母である、請求項1~3のいずれか記載の免疫賦活性乳化剤。
- 前記酵母がサッカロマイセス・セレビシエである、請求項4に記載の免疫賦活性乳化剤。
- pH3.0~5.0の条件下における乳化に用いられる、請求項1~5のいずれかに記載の免疫賦活性乳化剤。
- 塩化ナトリウム濃度が1~4Mの条件下における乳化に用いられる、請求項1~6のいずれかに記載の免疫賦活性乳化剤。
- 請求項1から7のいずれかに記載の免疫賦活性乳化剤と油分と水とを含む、免疫賦活性乳化組成物。
- 水中油型である、請求項8に記載の免疫賦活性乳化組成物。
- (ii')配列番号1に示されるアミノ酸配列の1番目から527番目のアミノ酸配列と、アフィニティタグとを有するタンパク質、
(iv')配列番号1に示されるアミノ酸配列の1番目から369番目及び469番目から527番目のアミノ酸配列と、アフィニティタグとを有するタンパク質、及び
(x')上記(ii')及び(iv')における前記アミノ酸配列と90%以上の相同性を有するアミノ酸配列と、アフィニティタグとを有し、且つ乳化活性と免疫賦活性とを有するタンパク質
の少なくともいずれかのタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターによって形質転換された細胞を作成する工程、
前記形質転換された細胞の培養を行う工程、
前記培養による培養液を、前記アフィニティタグに特異的な担体に接触させ、発現タンパク質を捕捉する工程、及び
前記捕捉された発現タンパク質を回収する工程、
を含む、免疫賦活性乳化剤の製造方法。 - (ii')配列番号3に示されるアミノ酸配列の1番目から503番目のアミノ酸配列と、アフィニティタグとを有するタンパク質、及び
(vi')上記(ii')における前記アミノ酸配列と90%以上の相同性を有するアミノ酸配列と、アフィニティタグとを有し、且つ乳化活性と免疫賦活性とを有するタンパク質
の少なくともいずれかのタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターによって形質転換された細胞を作成する工程、
前記形質転換された細胞の培養を行う工程、
前記培養による培養液を、前記アフィニティタグに特異的な担体に接触させ、発現タン
パク質を捕捉する工程、及び
前記捕捉された発現タンパク質を回収する工程、
を含む、免疫賦活性乳化剤の製造方法。 - (ii')配列番号5に示されるアミノ酸配列の1番目から461番目のアミノ酸配列と、アフィニティタグとを有するタンパク質、及び
(vi')上記(ii')における前記アミノ酸配列と90%以上の相同性を有するアミノ酸配列と、アフィニティタグとを有し、且つ乳化活性と免疫賦活性とを有するタンパク質
の少なくともいずれかのタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターによって形質転換された細胞を作成する工程、
前記形質転換された細胞の培養を行う工程、
前記培養による培養液を、前記アフィニティタグに特異的な担体に接触させ、発現タンパク質を捕捉する工程、及び
前記捕捉された発現タンパク質を回収する工程、
を含む、免疫賦活性乳化剤の製造方法。
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Yeast,2007年,24(4),289-96,doi: 10.1002/yea.1480 |
タンパク質の界面活性と乳化作用,油化学,1986年,第35巻第5号,389-394,https://www.jstage.jst.go.jp/article/jos1956/35/5/35_5_389/_pdf |
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