JP7223910B1 - ポリカルボシラン、ポリカルボシランの製造方法および炭化ケイ素繊維の製造方法 - Google Patents

ポリカルボシラン、ポリカルボシランの製造方法および炭化ケイ素繊維の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】高分岐のポリカルボシランを提供する。【解決手段】本発明の一態様に係るポリカルボシランは、分岐の程度の指標である下記式(1)で表される結合指数が2.58以上であり、酸素含有量が、1.15重量%以下である。【数1】TIFF0007223910000029.tif17170【選択図】なし

Description

本発明は、ポリカルボシランとその製造方法、および炭化ケイ素繊維の製造方法に関する。
炭化ケイ素繊維は千数百度の高温大気中においても耐熱性および耐酸化性にすぐれた繊維である。そのため、この特性を生かし、原子力分野および航空宇宙分野での適用が期待されている。
炭化ケイ素繊維は、前駆体であるポリカルボシランなどの有機ケイ素高分子化合物を、分子量調整、紡糸、および焼成することによって得られることが知られている。
例えば、特許文献1には、液相-気相熱分解縮合法によりポリシランからポリカルボシランを合成し、合成したポリカルボシランから炭化ケイ素繊維を製造する方法が開示されている。
特許文献2には、ケイ素と炭素とを主な骨格成分とする有機ケイ素高分子化合物の製造方法が開示されており、環状シラン化合物を原料として使用した例が記載されている。
特開2019-137935号公報 特開昭51-126300号公報
炭化ケイ素繊維は、原子力分野および航空宇宙分野での適用も期待されることからも、従来のものよりも、より高い強度を有する炭化ケイ素繊維が求められている。
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、高強度の炭化ケイ素繊維を製造することが可能なポリカルボシランを提供することにある。
本発明者らは鋭意検討した結果、環状シラン化合物を原料として用い、所定の方法で製造することにより高分岐のポリカルボシランが得られ、これにより高強度の炭化ケイ素繊維を製造できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
本発明の一態様に係るポリカルボシランは、分岐の程度の指標である下記式(1)で表される結合指数が2.58以上であり、酸素含有量が、1.15重量%以下である。
Figure 0007223910000001
[式(1)中、
CH3、XCH2、XCH、およびXは、それぞれ第一級、第二級、第三級、および第四級炭素原子の重量%を12で除した数値であり、
SiH3、YSiH2、YSiH、およびYSiは、それぞれ第一級、第二級、第三級、および第四級ケイ素原子の重量%を28.086で除した数値である。]
本発明の一態様に係るポリカルボシランの製造方法は、本発明の一態様に係るポリカルボシランを製造する方法であって、環状シラン化合物を含む原料を第1の温度で加熱することにより気相を生成する処理と、前記気相を前記第1の温度よりも高い第2の温度で加熱してポリカルボシランを生成する処理と、前記ポリカルボシランを冷却して前記原料に戻し前記第1の温度で加熱することにより前記ポリカルボシランの高分子量化を行う処理とを繰り返し行うこと、を含む、ポリカルボシラン合成工程を含む。
本発明の一態様に係る炭化ケイ素繊維の製造方法は、本発明の一態様に係るポリカルボシランを繊維状にする紡糸工程と、前記紡糸工程によって生成されたポリカルボシラン繊維を焼成する焼成工程と、を含む。
本発明の一態様によれば、高分岐のポリカルボシランを提供することができる。
ポリカルボシラン合成に使用可能な液相-気相熱分解装置10を示した図である。 ポリカルボシランの結合指数と炭化ケイ素繊維の引張強度の関係を示した図である。
〔1.ポリカルボシラン〕
本発明の一態様に係るポリカルボシランは、分岐の程度の指標である下記式(1)で表される結合指数が2.58以上であり、酸素含有量が、1.15重量%以下である。このような構成によれば、高分岐のポリカルボシランを得ることができる。
Figure 0007223910000002
[式(1)中、
CH3、XCH2、XCH、およびXは、それぞれ第一級、第二級、第三級、および第四級炭素原子の重量%を12で除した数値であり、
SiH3、YSiH2、YSiH、およびYSiは、それぞれ第一級、第二級、第三級、および第四級ケイ素原子の重量%を28.086で除した数値である。]
(結合指数)
本明細書における「結合指数」は、ポリカルボシランの分岐の程度の指標となるもので、上記式(1)により求められる値である。本明細書において「分岐」とは、炭素原子またはケイ素原子が、水素原子以外と結合している部分を指す。例えば、CH-CHの分岐は、左に記載した炭素原子が水素原子以外と結合している部分と、右に記載した炭素原子が水素原子以外と結合している部分とを指す。同様に、ケイ素原子の分岐は、すべてのケイ素原子が水素原子以外と結合している部分を指す。したがって、結合指数が大きいほど、高分岐のポリカルボシランとなる。
式(1)中、XCH3、XCH2、XCH、およびXは、それぞれ第一級、第二級、第三級、および第四級炭素原子の重量%を12で除した数値である。本明細書において、「第一級炭素」とは、三つの水素が結合している炭素を指す。「第二級炭素」とは、二つの水素が結合している炭素を指す。「第三級炭素」とは、一つの水素が結合している炭素を指す。「第四級炭素」とは、水素が結合していない炭素を指す。また、式(1)中、12は、炭素の原子量である。したがって、XCH3、XCH2、XCH、およびXは、詳細には、下記式(2)~(5)の通りである。
Figure 0007223910000003
Figure 0007223910000004
Figure 0007223910000005
Figure 0007223910000006
ここで、第一級、第二級および第三級炭素原子の重量%は、各炭素の水素原子の重量%を各炭素に結合する水素原子の数と水素の原子量との積で除し、炭素の原子量を掛けた値である。なお、本明細書において、水素の原子量は、1として計算に使用している。また、第四級炭素原子の重量%は、炭素原子の元素分析値から第一級、第二級および第三級炭素原子の重量%を減じた値である。したがって、第一級、第二級、第三級および第四級炭素原子の重量%は、詳細には、下記式(6)~(9)の通りである。炭素原子の元素分析値は、公知の方法によって求めることができる。
Figure 0007223910000007
Figure 0007223910000008
Figure 0007223910000009
Figure 0007223910000010
ここで、第一級、第二級および第三級炭素の水素原子の重量%は、第一級、第二級および第三級炭素のH-NMRの面積割合に水素原子の元素分析値をかけた値である。第一級、第二級および第三級炭素のH-NMRの面積割合は、H-NMRで測定したSi-H、並びに、第一級、第二級および第三級炭素の水素原子の面積値をSi-Hで規格化した面積割合の合計値に対する、第一級、第二級および第三級炭素の水素原子の各面積割合の比率である。したがって、第一級、第二級および第三級炭素の水素原子の重量%は、詳細には、下記式(10)~(12)の通りである。
Figure 0007223910000011
Figure 0007223910000012
Figure 0007223910000013
H-NMRにおけるポリカルボシラン中の第一級、第二級および第三級炭素の水素原子の面積値は、5.5~3.5ppmのシグナルを第三級ケイ素上水素(-SiH<)由来シグナル、1.0~0ppmのシグナルを第一級炭素上水素(CH-)由来シグナル、0~-0.4ppmのシグナルを第二級炭素上水素(-CH-)由来シグナル、-0.4~-1.0ppmのシグナルを第三級炭素上水素(-CH<)由来シグナルとして積分値を算出することにより、求めることができる。また、水素原子の元素分析値は、公知の方法によって求めることができる。
また、式(1)中、YSiH3、YSiH2、YSiH、およびYSiは、それぞれ第一級、第二級、第三級、および第四級ケイ素原子の重量%を28.086で除した数値である。本明細書において、「第一級ケイ素」とは、三つの水素が結合しているケイ素を指す。「第二級ケイ素」とは、二つの水素が結合しているケイ素を指す。「第三級ケイ素」とは、一つの水素が結合しているケイ素を指す。「第四級ケイ素」とは、水素が結合していないケイ素を指す。また、式(1)中、28.086は、ケイ素の原子量である。したがって、YSiH3、YSiH2、YSiH、およびYSiは、詳細には、下記式(13)~(16)の通りである。
Figure 0007223910000014
Figure 0007223910000015
Figure 0007223910000016
Figure 0007223910000017
ここで、第一級、第二級、第三級および第四級ケイ素原子の重量%は、第一級、第二級、第三級および第四級ケイ素原子の29Si-NMRの面積割合にケイ素原子の元素分析値をかけた値である。第一級、第二級、第三級および第四級ケイ素原子の29Si-NMRの面積割合は、第一級、第二級、第三級および第四級ケイ素原子の面積割合を第四級ケイ素原子で規格化した面積割合の合計値に対する、第一級、第二級、第三級および第四級ケイ素原子の各面積割合の比率である。したがって、第一級、第二級、第三級および第四級ケイ素原子の重量%は、詳細には、下記式(17)~(20)の通りである。
Figure 0007223910000018
Figure 0007223910000019
Figure 0007223910000020
Figure 0007223910000021
29Si-NMRにおけるポリカルボシラン中の第一級、第二級、第三級および第四級ケイ素原子の面積割合は、10~-8ppmのシグナルを第四級ケイ素(>Si<)由来シグナル、-8~-24ppmのシグナルを第三級ケイ素(-SiH<)由来シグナル、-30~-50ppmのシグナルを第二級ケイ素(-SiH-)由来シグナル、-40~-70ppmのシグナルを第一級ケイ素(-SiH)として積分値を算出することにより、求めることができる。また、ケイ素原子の元素分析値は、公知の方法によって求めることができる。
以上の算出方法により、結合指数を算出することができる。
本実施形態に係るポリカルボシランは、結合指数が2.58以上であり、好ましくは2.61以上であり、より好ましくは2.63以上である。結合指数がこのような範囲であることにより、高分岐のポリカルボシランとなる。また、このような結合指数を有するポリカルボシランから炭化ケイ素繊維(以下、「SiC繊維」とも称する。)を製造した場合、引張強度が高いSiC繊維を得ることができる。引張強度については、後述する。
(酸素含有量)
ポリカルボシランは、酸素含有量が1.15重量%以下であり、好ましくは1.0重量%以下であり、より好ましくは0.9重量%以下であり、さらに好ましくは0.8重量%以下である。酸素含有量がこのような範囲であるポリカルボシランからSiC繊維を製造した場合、耐熱性が高いSiC繊維を得ることができる。
酸素含有量は、ポリカルボシランの酸素含有量を測定する公知の方法によって測定することができる。例えば、元素分析によって算出することができる。
(数平均分子量)
本実施形態におけるポリカルボシランは、数平均分子量が6000未満であり、好ましくは5500未満であり、より好ましくは5000未満であり得る。数平均分子量が6000未満でも許容されるため、分子量調整で除去すべき低分子量のポリカルボシランを少なくでき、結果としてポリカルボシランの収率が上がることになる。また、ポリカルボシランから生糸を製造する場合、数平均分子量が6000未満のポリカルボシランは乾式紡糸に好適に使用することができる。具体的には、数平均分子量が6000未満であるポリカルボシランは、紡糸溶液の濃度を高くすることができるため、溶媒蒸発量を抑えられ、紡糸がし易くなる。また、数平均分子量が6000未満であるポリカルボシランは低分子量のポリカルボシランを多く含むため、ゲル状になりにくく、紡糸液の調整が容易にできる。
また、ポリカルボシランが融解し始める温度を表す軟化点は、分子量と分岐との両者に比例する。本実施形態におけるポリカルボシランは、分岐の程度の指標である結合指数が2.58以上であるため、数平均分子量が6000未満のポリカルボシランであっても軟化点が低くなりすぎない。したがって、ポリカルボシランから作製した繊維を焼成したときに、繊維が融着しにくくなる。数平均分子量は、焼成時に繊維が融着しない程度の軟化点にする観点から、1500以上であることが好ましく、2500以上がより好ましく、4000以上がさらに好ましい。
数平均分子量は、数平均分子量を測定する公知の方法によって求めることができる。例えば、GPC(gel permeation chromatography:ゲル浸透クロマトグラフィー)測定によって測定することができる。
〔2.ポリカルボシランの製造方法〕
本発明の一態様に係るポリカルボシランの製造方法は、本発明の一態様に係るポリカルボシランを製造する方法であって、環状シラン化合物を含む原料を第1の温度で加熱することにより気相を生成する処理(以下、「第1加熱処理」と称する。)と、前記気相を前記第1の温度よりも高い第2の温度で加熱してポリカルボシランを生成する処理(以下、「第2加熱処理」と称する。)と、前記ポリカルボシランを冷却して前記原料に戻し前記第1の温度で加熱することにより前記ポリカルボシランの高分子量化を行う処理(以下、「高分子量化処理」と称する。)と、を含む、ポリカルボシラン合成工程を含む。このような構成によれば、高分岐のポリカルボシランを製造することができる。
(ポリカルボシラン合成工程)
ポリカルボシラン合成工程は、第1加熱処理と、第2加熱処理と、高分子量化処理と、を含み、その一連の工程の反応を繰り返し行い、環状シラン化合物からポリカルボシランを合成する工程である。
第1加熱処理は、環状シラン化合物を含む原料を第1の温度で加熱することにより気相を生成する処理である。環状シラン化合物を含む原料は、固体であってもよく、液体であってもよく、液体と固体との混合物であってもよい。本明細書において、第1の温度は該原料を入れた反応容器の内部温度の測定結果を示している。つまり、第1の温度は、反応容器の内容物そのものの温度である。第1の温度は、環状シラン化合物の少なくとも一部を気化させて気相を生成できる温度であれば、特に限定されない。典型的には、100℃~500℃の範囲であり得、400℃~500℃の範囲であり得る。当該温度で加熱することにより、環状シラン化合物が熱分解されて気相を生じさせるとともに、環状シラン化合物の昇華もしくは液化からの気化によっても気相が生じる。
本発明の一態様に係るポリカルボシランの製造方法において、環状シラン化合物は、骨格がSi-Si結合のみからなる骨格を主鎖とし、主鎖が環状を形成している化合物である。ポリカルボシランの製造方法において使用する環状シラン化合物の員数は、好ましくは15以下であり、より好ましくは10以下であり、さらに好ましくは7以下である。また、環状シラン化合物は、単環でもよく、複数の環を有していてもよい。また、環状シラン化合物の側鎖は、任意の構造を有していてもよい。環状シラン化合物としては、オクタメチルシクロテトラシラン、デカメチルシクロペンタシラン、ドデカメチルシクロヘキサシラン、および、テトラデカメチルシクロヘプタシラン等が挙げられる。原料供給の観点からは、環状シラン化合物は、ドデカメチルシクロヘキサシランであることが好ましい。
ポリカルボシラン合成工程に使用する環状シラン化合物の量は、ポリカルボシランを合成する装置および所望のポリカルボシランの合成量に合わせて、適宜調整することができる。
第2加熱処理は、第1加熱処理において生成した気相を第1の温度よりも高い第2の温度で加熱してポリカルボシランを生成する処理である。第2加熱処理により、環状シラン化合物のSi-Si結合をラジカル開裂して転位させ、ポリカルボシランを生成することができる。本明細書において、第2の温度は、環状シラン化合物を含む原料から生成した気相を加熱した時の気相を入れた反応管の内部温度の測定結果を示している。つまり、第2の温度は、第2加熱処理で加熱した気相そのものの温度である。生成されたポリカルボシランは、冷却されて、第1加熱処理が行われている原料に戻される。
合成したポリカルボシランの酸素含有量の観点からは、ポリカルボシランの酸素含有量が増加しにくいため、第2の温度は660℃未満であることが好ましく、650℃以下であることがより好ましく、600℃以下であることがさらに好ましい。検討の結果、環状シラン化合物を原料に用いた本実施形態の方法では、第2の温度が高くなると、生成されたポリカルボシランの粘性が著しく増加することが確認され、装置によっては配管の詰まりが引き起こされる。したがって、ポリカルボシランを合成する装置の運転性の観点からは、合成したポリカルボシランによって装置の配管が詰まることを防ぐため、第2の温度は650℃以下であることが好ましい。また、第2の温度は、環状シラン化合物を転位させる観点からは、500℃以上であることが好ましく、ポリカルボシランの分岐を増加させる観点からは、600℃以上であることが好ましい。
高分子量化処理は、第2加熱処置にて生成したポリカルボシランを冷却して原料に戻し第1の温度で加熱することによりポリカルボシランの高分子量化を行う処理である。高分子量化処理により、第2加熱処理によって生成したポリカルボシランを縮合させて高分子量化することができる。冷却温度は、気体の状態であるポリカルボシランを液体にする程度に冷却できればよく、特に限定されない。第1の温度は、第1加熱処理における第1の温度の説明と同じである。
これら一連の反応を繰り返し行うことで、ポリカルボシランの高分子量化が徐々に進んでより分子量の大きなポリカルボシランを得ることができる。
ポリカルボシラン合成工程の合成時間は、ポリカルボシランの所望の分子量および分岐に合わせて、適宜調整することができる。例えば、合成時間を4時間以上10時間以下に、好ましくは4時間以上8時間以下、より好ましくは6時間以上7時間以下に設定することができる。
図1を参照して、ポリカルボシラン合成工程の一実施形態について説明する。図1は、ポリカルボシラン合成に使用する液相-気相熱分解装置10を示す図である。
液相-気相熱分解装置10は、液相反応容器1と、液相ヒーター2と、液相熱電対3と、気相反応管4と、気相ヒーター5と、気相熱電対6と、第1冷却管7と、流量計8と、バルブ9と、を備える。
まず、環状ポリシランを液相反応容器1に入れ、不活性ガス下において、液相ヒーター2を用いて第1の温度で加熱することにより気相を生成させる。不活性ガスとしては、例えば、窒素、およびアルゴン等が用いられ得る。第1の温度は、液相熱電対3を用いて測定する。また、不活性ガスの量は、流量計8を用いて調整する。
次に、生成した気相は、気相反応管4に移動し、気相ヒーター5を用いて第2の温度で加熱してポリカルボシランを生成する。第2の温度は、気相熱電対6を用いて測定する。
次に、生成したポリカルボシランを第1冷却管7で冷却して液相を液相反応容器1に戻し、液相ヒーター2を用いて第1の温度で加熱することによりポリカルボシランの高分子量化を行う。
これら一連の反応を繰り返し行い、所定の合成時間経過後、液相および気相を冷却したのち液相反応容器1から合成したポリカルボシランを収集する。これによって、分子量調整前のポリカルボシランが得られる。
(分子量調整工程)
本発明の一態様に係るポリカルボシランの製造方法は、ポリカルボシラン合成工程によって合成されたポリカルボシランから、低分子量のポリカルボシランを除去する分子量調整工程をさらに含んでいることが好ましい。分子量調整工程により、ポリカルボシランの平均分子量を大きくすることができる。低分子量のポリカルボシランとしては、例えば、分子量5500以下のポリカルボシランが挙げられる。また、分子量調整工程により、ポリカルボシランの結合指数を増加することができ、最終的に、結合指数が2.58以上であるポリカルボシランを得ることができる。したがって、本発明の一態様に係るポリカルボシランの製造方法によれば、高分岐のポリカルボシランを製造することができる。また、当該ポリカルボシランを使用してSiC繊維を製造する場合、焼成時に繊維が融着しにくく、分解ガスの発生が抑制される。さらに、分子量調整工程を含むことにより、SiC繊維は、引張強度が高いSiC繊維となる。
分子量調整工程は、低分子量のポリカルボシランを除去でき、本願の効果を損なわない限り、その方法は特に制限されない。例えば、ポリカルボシラン合成工程によって合成されたポリカルボシランに溶媒を加え、溶解成分を除去することにより、低分子量のポリカルボシランを除去することができる。
ポリカルボシランに加える溶媒は、低分子量のポリカルボシランを抽出し得る溶媒であれば特に制限されず、除去したい分子量範囲に合わせて、適宜選択することができる。また、溶媒は、単一溶媒であってもよく、混合溶媒であってもよい。単一溶媒としては、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸sec-ブチル、アセトン、メチルエチルケトン、塩化メチレン、ヘキサン、および、テトラヒドロフラン等が挙げられる。また、添加する溶媒の量は、除去したい分子量範囲も考慮して当業者が適宜設定することができ、例えば、ポリカルボシランに対して1~8倍重量であり得、好適には5倍重量であり得る。
また、溶解成分の抽出温度は、当業者が適宜設定することができ、例えば、20℃以上、溶媒の沸点以下であり得る。
分子量調整工程は、1回だけ行ってもよく、複数回行ってもよい。収率および操作性の観点から、5回以下であることが好ましく、4回以下であることがより好ましい。分子量調整工程を複数回行う場合は、溶媒にポリカルボシラン合成工程によって合成されたポリカルボシランを加え、溶解成分を除去した後、不溶成分に溶媒を加え、溶解成分を除去する処理を繰り返し行えばよい。また、分子量調整工程を複数回行う場合は、ポリカルボシランに加える溶媒は各回で同一の溶媒であってもよく、異なる溶媒であってもよい。分子量調整工程でポリカルボシランに加える溶媒は、廃液の処理のし易さや溶媒の取り扱いのし易さから、酢酸エチル、ヘキサンが好ましく、溶媒の量もしくは抽出温度もしくは操作回数の変更により、所望の分子量範囲のポリカルボシランを取得しやすいことから酢酸エチルがより好ましい。上述の通り、処理は酢酸エチルで1回だけ行ってもよく、複数回行ってもよい。また、酢酸エチルで1回あるいは複数回処理をしたのちに、ヘキサンで処理をしてもよい。
(他の工程)
本発明の一態様に係る製造方法は、ポリカルボシラン合成工程および分子量調整工程以外の他の工程を含んでいてもよい。他の工程は、本発明の効果が損なわれない限り、特に限定されない。
本発明の一態様に係る製造方法は、分子量調整工程後に、分子量調整したポリカルボシランに溶媒を加え、不溶成分を除去する除去工程を含んでいてもよい。除去工程により、分子量調整後のポリカルボシランに含まれる不純物を除去することができる。不溶成分は、例えば、ろ過により除去すればよい。溶媒は、ポリカルボシランを抽出し得る溶媒であれば、特に制限されない。溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、および、メシチレン等の芳香族炭化水素、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、および、ノナン等の脂肪族炭化水素、並びに、クロロホルム、および、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素等が挙げられる。添加する溶媒の量は、ポリカルボシランが溶解する量であればよく、当業者が適宜設定することができる。抽出温度は、当業者が適宜設定することができ、例えば、室温(22℃)であり得る。
〔3.炭化ケイ素繊維の製造方法〕
本発明の一態様に係る炭化ケイ素繊維の製造方法は、本発明の一態様に係るポリカルボシランを繊維状にする紡糸工程と、前記紡糸工程によって生成されたポリカルボシラン繊維を焼成する焼成工程と、を含む。このような構成により、引張強度が高いSiC繊維を製造することができる。
(紡糸工程)
紡糸工程は、本発明の一態様に係るポリカルボシランを繊維状にする工程である。本発明の一態様に係るポリカルボシランは、〔1.ポリカルボシラン〕における説明と同じである。
紡糸の方法としては、溶融紡糸法、乾式紡糸法、および、湿式紡糸法等が挙げられる。高温条件下でなくとも紡糸が可能であり、紡糸後に急激な温度低下が生じないため繊維径のばらつきを低減できる観点から、乾式紡糸法が好ましい。また、本発明の一態様に係るポリカルボシランは、所与の数平均分子量であるため、好適に乾式紡糸法を行うことができる。乾式紡糸法を行う場合、例えば、以下の方法によって紡糸することができる。つまり、本発明の一態様に係るポリカルボシランを溶媒に溶解し、乾式紡糸溶液を調整する。次に、乾式紡糸溶液を紡糸装置に供し、ポリカルボシラン繊維を生成する。
ポリカルボシランを溶解する溶媒は、ポリカルボシランを溶解できればよく、例えば、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、および、メシチレン等の芳香族炭化水素、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、および、ノナン等の脂肪族炭化水素、並びに、クロロホルム、および、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素等を挙げることができる。ポリカルボシランの溶解性および揮発性に優れるため、トルエンまたはキシレンを使用することが好ましい。
乾式紡糸溶液の濃度は、当業者が適宜調整することができ、例えば、50~70%であり得る。
乾式紡糸溶液の粘度は、紡糸装置のノズル径に合わせて、当業者が適宜調整することができ、例えば、65μmのノズル径の場合、25℃において10~30Pa・sであり得る。粘度は、溶液の粘度を測定する公知の方法によって求めることができ、例えば、E型粘度計を用いて測定することができる。
紡糸に使用する紡糸装置は、本技術分野で通常使用されている装置を使用すればよい。例えば、乾式紡糸溶液を紡糸装置に供し、紡糸ノズル径65μm、吐出圧力2~3.5MPa、紡糸速度10~30mg/minの条件下で紡糸することで、生糸を得ることができる。このような条件下で生成した生糸は、例えば、生糸径が17.0~19.0のポリカルボシラン繊維であり得る。
(焼成工程)
焼成工程は、紡糸工程によって生成されたポリカルボシラン繊維を焼成する工程である。ポリカルボシラン繊維を焼成してセラミックス化することにより、炭化ケイ素繊維を生成することができる。
焼成の条件は、当業者が適宜設定することができる。例えば、後述する表1に記載の条件で焼成し得る。また、表1の最高温度を1400℃に変更した条件で焼成し得る。
引張強度は、公知の方法によって測定することができる。例えば、モノフィラメントの引張試験を行って破断応力を測定し、破断応力をSiC繊維の断面積で除することで引張強度とすることができる。
引張弾性率は、得られた引張強度を引張試験時のゲージ長に対する伸び率で除することで算出した値である。
本発明の一態様に係る炭化ケイ素繊維の製造方法によって製造される炭化ケイ素繊維は、引張強度が、2.18GPa以上であることが好ましく、2.71GPa以上であることがより好ましい。
〔まとめ〕
本発明の態様1に係るポリカルボシランは、分岐の程度の指標である下記式(1)で表される結合指数が2.58以上であり、酸素含有量が、1.15重量%以下である。
Figure 0007223910000022
[式(1)中、
CH3、XCH2、XCH、およびXは、それぞれ第一級、第二級、第三級、および第四級炭素原子の重量%を12で除した数値であり、
SiH3、YSiH2、YSiH、およびYSiは、それぞれ第一級、第二級、第三級、および第四級ケイ素原子の重量%を28.086で除した数値である。]
本発明の態様2に係るポリカルボシランは、前記態様1において、数平均分子量が、6000未満であることが好ましい。
本発明の態様3に係るポリカルボシランの製造方法は、前記態様1または態様2に記載のポリカルボシランを製造する方法であって、環状シラン化合物を含む原料を第1の温度で加熱することにより気相を生成する処理と、前記気相を前記第1の温度よりも高い第2の温度で加熱してポリカルボシランを生成する処理と、前記ポリカルボシランを冷却して前記原料に戻し前記第1の温度で加熱することにより前記ポリカルボシランの高分子量化を行う処理とを繰り返し行うこと、を含む、ポリカルボシラン合成工程を含む。
本発明の態様4に係るポリカルボシランの製造方法は、前記態様3において、前記ポリカルボシラン合成工程によって合成されたポリカルボシランから、低分子量のポリカルボシランを除去する分子量調整工程をさらに含むことが好ましい。
本発明の態様5に係るポリカルボシランの製造方法は、前記態様3または4において、前記第2の温度が、650℃以下であることが好ましい。
本発明の態様6に係るポリカルボシランの製造方法は、前記態様3~5のいずれか1つにおいて、前記環状シラン化合物がドデカメチルシクロヘキサシランであることが好ましい。
本発明の態様7に係る炭化ケイ素繊維の製造方法は、前記態様1または2に記載のポリカルボシランを繊維状にする紡糸工程と、前記紡糸工程によって生成されたポリカルボシラン繊維を焼成する焼成工程と、を含む。
本発明の態様8に係る炭化ケイ素繊維の製造方法は、前記態様7において、前記紡糸工程において、乾式紡糸により前記ポリカルボシランを繊維状にすることが好ましい。
以下に実施例を示し、本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。もちろん、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、細部については様々な態様が可能であることはいうまでもない。なお、実施例において製造元を記載していない試薬および装置は、当技術分野で通常用いられるものを使用した。
〔1.ポリカルボシラン(PCS)合成〕
[合成例1]
ドデカメチルシクロヘキサシラン(DMCHS)を図1に示すような液相-気相熱分解装置の液相反応容器に入れた。次いで、液相反応容器中の液相を400~500℃に加熱し、気相反応管中の気相を650℃に加熱して、4時間25分反応させ、PCSを合成した。DMCHSは、公知の製造方法に従って製造したものを使用した。
[合成例2]
気相反応管中の気相を600℃に加熱して、反応時間を6時間とする以外は、合成例1と同様にPCSを合成した。
[合成例3]
反応時間を6時間30分とする以外は、合成例2と同様にPCSを合成した。
[合成例4]
DMCHSの代わりにポリジメチルシラン(PDMS)を液相反応容器に入れた。次いで、液相反応容器中の液相を400~500℃に加熱し、気相反応管中の気相を600℃に加熱して、5時間反応させ、PCSを合成した。
[合成例5]
反応時間を8時間とする以外は、合成例4と同様にPCSを合成した。
[合成例6]
気相反応管中の気相を670℃に加熱する以外は、合成例4と同様にPCSを合成することを試みたが、反応途中で気相反応生成物により各部配管が閉塞したため、合成を中断した。
[合成例7]
気相反応管中の気相を670℃に加熱する以外は、合成例1と同様にPCSを合成することを試みたが、反応途中で気相反応生成物により各部配管が閉塞したため、合成を中断した。
[合成例8]
気相反応管中の気相を660℃で加熱して、反応時間を1時間半とする以外は、合成例1と同様にPCSを合成した。
〔2.分子量調整および不純物の除去〕
[実施例1]
合成例1で合成したPCSに対して5倍重量の酢酸エチルを用いて、50℃で4回洗浄し、溶解成分と不溶成分に分離することで分子量調整した。その後、不溶成分を室温でヘキサンを用いて洗浄することにより分子量調整し、溶解成分と不溶成分に分離した。次いで、取得した不溶成分を室温でトルエンに溶解させた。ろ過によって不溶成分を除去した後、溶媒を除去して得たPCSを実施例1とした。
[実施例2~5]
合成例2で合成したPCSに対して5倍重量の酢酸エチルを用いて、50℃でそれぞれ1~4回洗浄し、溶解成分と不溶成分に分離することで分子量調整した。その後、不溶成分を室温でトルエンに溶解させた。ろ過によって不溶成分を除去した後、溶媒を除去して得たPCSを実施例2~5とした。
[実施例6および比較例1~3]
合成例3~5および8で合成した各PCSに対して5倍重量の酢酸エチルを用いる以外は、実施例5と同様にPCSを得た。実施例6は合成例3、比較例1~2はそれぞれ合成例4~5、比較例3は合成例8を使用した。
[実施例7]
合成例3で合成したPCSに対して、分子量調整せずに室温でトルエンに溶解させたろ過によって不溶成分を除去した後、溶媒を除去して得たPCSを実施例7とした。
〔3.紡糸〕
不溶成分を除去したPCSを25℃における紡糸液粘度が14~25Pa・sとなるようにキシレンに溶解させ、乾式紡糸溶液を調製した。その後、調製した溶液をノズル径65μmの紡糸口金(ノズル)から押し出し、巻き取って、糸径17~19μmのポリカルボシラン繊維(生糸)を得た。
〔4.焼成〕
実施例1~7および比較例1~2のPCSの生糸を、表1で示す条件にて最高温度1000℃で焼成し、炭化ケイ素繊維を得た。
Figure 0007223910000023
実施例4および6~7、並びに比較例1のPCSの生糸は、最高温度を1400℃に変更した条件で焼成した炭化ケイ素繊維も得た。
〔5.評価〕
(元素分析)
合成例1~5および8で合成されたPCS、実施例1~7および比較例1~3の不溶成分除去工程後のPCSの酸素含有量は、株式会社堀場製作所製EMGA-930、合成例1~5および8で合成されたPCS、並びに、実施例1~7および比較例1~3の不溶成分除去工程後のPCSの炭素原子の元素分析値は、LECO社製 炭素硫黄分析装置 CS844型装置、水素原子の元素分析値は、Perkin Elmer社製 Series II CHNS/O ANLYZER 2400を用いて測定した。ケイ素原子の元素分析値は、炭素、水素の各元素分析値、および酸素含有量を全割合(100%)から除いた残量とした。
(分子量の測定)
合成例1~5および8で合成されたPCS、並びに、実施例1~7および比較例1~3の不溶成分除去工程後のPCSの分子量を、以下の条件でGPC測定により求めた。
装置名:株式会社島津製作所製HPLC
カラム:KF-604、KF-602、KF-601 各1本をポンプ側からこの順番で通液されるように連結し使用(いずれも昭和電工株式会社製)
測定溶媒:トルエン
流速:分析部およびリファレンス:0.40mL/min
オーブン:40℃
検出器:示差屈折計(株式会社島津製作所製RID―20A)
サンプル溶液:0.5重量%
H-NMR分析)
合成例1~5および8で合成されたPCS、並びに、実施例1~7および比較例1~3のPCSを、重クロロホルムに溶解し、以下の条件でH-NMR分析した。5.5~3.5ppmのシグナルを第三級ケイ素上水素(-SiH<)由来シグナル、1.0~0ppmのシグナルを第一級炭素上水素(CH-)由来シグナル、0~-0.4ppmのシグナルを第二級炭素上水素(-CH-)由来シグナル、-0.4~-1.0ppmのシグナルを第三級炭素上水素(-CH<)由来シグナルとして積分値を算出した。なお、第一級、および第二級ケイ素上水素に由来するシグナルは確認できなかった。
測定機器:JNM-ECZ600R/S1(日本電子株式会社製)
積算回数:8回
29Si-NMR分析)
合成例1~5および8で合成されたPCS、並びに、実施例1~7および比較例1~3のPCSを、重クロロホルムに溶解し、以下の条件で29Si-NMR分析した。10~-8ppmのシグナルを第四級ケイ素(>Si<)由来シグナル、-8~-24ppmのシグナルを第三級ケイ素(-SiH<)由来シグナルとして積分値を算出した。なお、第一級および第二級ケイ素に由来するシグナルは確認できなかった。
測定機器:JNM-ECZ600R/S1(日本電子株式会社製)
測定方法詳細:回転なし;45度パルスの照射;取込み時間0.659秒;ディレイ間隔16秒のパルスシーケンスで測定
積算回数:512回
(紡糸溶液粘度測定)
乾式紡糸溶液の粘度を、E型粘度計(ティー・エイ・インスツルメント社製ARES-G2)を用いて、温度25℃、せん断速度200sec-1の条件下で測定した。
(結合指数の算出)
上述の実施形態に記載の式(1)~(20)に従って、算出した。ただし、第一級および第二級ケイ素は確認されなかった。
(操作性)
各試験区について、ポリカルボシラン合成における液相-気相熱分解装置の操作性の評価を行った。評価が△または○であれば、ポリカルボシランの合成に支障をきたさないといえる。なお、装置配管としては呼び径15Aの金属配管を使用した。
○:配管内を流れるポリカルボシランの粘度が低く、運転中に配管閉塞を引き起こす可能性が低い。
△:配管内を流れるポリカルボシランの粘度が比較的高く、運転中の配管閉塞を防ぐためには通過する配管を適宜加熱する必要がある。また気相反応管の出口に固形物が付着し、当該配管の一部が狭窄する。
×:配管内を流れるポリカルボシランの粘度が非常に高く、気相反応管の出口に多量に固形物が付着する。これにより、配管閉塞を引き起こし運転の完遂が困難となる。
(収率)
ポリカルボシラン合成工程における収率は、液相反応容器から取得したPCS重量を反応容器内に仕込んだ原料重量で除し、百分率とした重量収率として算出した。
分子量調整後のPCS収率は、分子量調整に続く不溶成分の除去工程後に得られたPCSの乾燥重量を分子量調整前のPCS重量で除し、百分率とした重量収率として算出した。
(糸径)
株式会社キーエンス製の光学顕微鏡 VHX-5000を用い、倍率2000倍でSiC繊維の直径を測定した。
(引張強度)
株式会社オリエンテック製 STA-1150を用いてモノフィラメントの引張試験をゲージ長25mm、クロスヘッド速度5mm/minで行い、破断応力を測定した。測定した破断応力をSiC繊維の断面積で除することで引張強度とした。本願の引張強度は引張試験を10回実施した平均値とした。
(引張弾性率)
引張弾性率は得られた引張強度を引張試験時のゲージ長に対する伸び率で除することで算出した。
〔6.結果〕
以上の評価結果を表2~5に示した。具体的には、合成後のPCSの評価結果を表2に、分子量調整および不溶成分除去工程後のPCSの評価結果を表3に、紡糸後のPCS繊維の評価結果を表4に、焼成後のSiC繊維の評価結果を表5に示した。なお、表2~5中、データを測定しなかった項目には、棒線を記載し、データが測定できなかった項目には、測定不可と記載した。
Figure 0007223910000024
Figure 0007223910000025
Figure 0007223910000026
Figure 0007223910000027
また、ポリカルボシランの結合指数とSiC繊維の引張強度の関係を示した図を図2に示した。図2において、横軸は実施例1~7、および比較例1~2のポリカルボシランの結合指数を表し、縦軸は実施例1~7、および比較例1~2から製造したSiC繊維の引張強度を表す。また、破線で囲った範囲は、結合指数が2.58以上であり、且つ、引張強度が1.50GPa以上である範囲を示し、薄い灰色で囲った範囲は、結合指数が2.58以上であり、且つ、引張強度が2.18GPa以上である範囲を示し、濃い灰色で囲った範囲は、結合指数が2.63以上であり、且つ、引張強度が2.71GPa以上である範囲を示す。
以上の結果から、環状シラン化合物から製造したポリカルボシランは、環状ではないポリシランから製造したポリカルボシランと比較して、結合指数が高かった。したがって、本発明の一態様に係るポリカルボシランは、高分岐のポリカルボシランであることが示された。また、図2から、高分岐のポリカルボシランは、SiC繊維の引張強度が高くなることが示された。したがって、本発明の一態様に係るポリカルボシランを使用して製造したSiC繊維は、引張強度が高くなることが示された。
本発明の一態様に係るポリカルボシランは、炭化ケイ素繊維の原料として好適に利用することができる。
1 液相反応容器
2 液相ヒーター
3 液相熱電対
4 気相反応管
5 気相ヒーター
6 気相熱電対
7 第1冷却管
8 流量計
9 バルブ
10 液相-気相熱分解装置

Claims (8)

  1. 分岐の程度の指標である下記式(1)で表される結合指数が2.63以上であり、
    Figure 0007223910000028
    酸素含有量が、1.15重量%以下である、ポリカルボシラン。
    [式(1)中、
    CH3、XCH2、XCH、およびXは、それぞれ第一級、第二級、第三級、および第四級炭素原子の重量%を12で除した数値であり、
    SiH3、YSiH2、YSiH、およびYSiは、それぞれ第一級、第二級、第三級、および第四級ケイ素原子の重量%を28.086で除した数値である。]
  2. 数平均分子量が、6000未満である、請求項1に記載のポリカルボシラン。
  3. 請求項1または2に記載のポリカルボシランを製造する方法であって、
    環状シラン化合物を含む原料を第1の温度で加熱することにより気相を生成する処理と、前記気相を前記第1の温度よりも高い第2の温度で加熱してポリカルボシランを生成する処理と、前記ポリカルボシランを冷却して前記原料に戻し前記第1の温度で加熱することにより前記ポリカルボシランの高分子量化を行う処理とを繰り返し行うこと、を含む、ポリカルボシラン合成工程を含む、ポリカルボシランの製造方法。
  4. 前記ポリカルボシラン合成工程によって合成されたポリカルボシランから、低分子量のポリカルボシランを除去する分子量調整工程をさらに含む、請求項3に記載のポリカルボシランの製造方法。
  5. 前記第2の温度が、650℃以下である、請求項3に記載のポリカルボシランの製造方法。
  6. 前記環状シラン化合物がドデカメチルシクロヘキサシランである、請求項3に記載のポリカルボシランの製造方法。
  7. 請求項1または2に記載のポリカルボシランを繊維状にする紡糸工程と、
    前記紡糸工程によって生成されたポリカルボシラン繊維を焼成する焼成工程と、を含む、炭化ケイ素繊維の製造方法。
  8. 前記紡糸工程において、乾式紡糸により前記ポリカルボシランを繊維状にする、請求項7に記載の炭化ケイ素繊維の製造方法。
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