1.実施形態
1-1.生産ライン1の構成
生産管理装置は、種々の基板製品を生産する生産ラインに適用される。以下では、「回路基板」を単に「基板」と、電子部品を単に「部品」と称する。生産ライン1は、図1に示すように、生産装置を基板90の搬送方向(図1および図2の左右方向)に複数設置して構成される。上記の生産装置には、生産ライン1の上流側から順に、印刷機2、印刷検査装置3、第一のバッファ装置4、複数の部品装着機5、第二のバッファ装置4、外観検査装置6、リフロー炉7、および機能検査装置8が含まれる。
生産ライン1よる生産処理において、基板90は、生産ライン1の先頭に位置する印刷機2に搬入される。そして、基板90は、各生産装置の基板搬送装置(例えば、図2に示す部品装着機5の基板搬送装置10)によって下流側へと搬送され、生産ライン1の末尾に位置する機能検査装置8から搬出される。また、各生産装置は、互いに通信可能に、且つホストコンピュータ70(以下、「ホストPC」と称する)と通信可能にそれぞれ接続されている。各生産装置の基板搬送装置は、互いに連携して動作するように制御され、隣り合う生産装置の間で基板90の衝突が防止されている。
印刷機2は、搬入された基板90における部品の装着位置にペースト状のはんだを印刷する。本実施形態において、印刷機2により基板90に印刷されるはんだは、所定の粘性を有し、基板90と装着される部品を接合する接合材として機能する。印刷検査装置3は、印刷機2によりはんだを印刷された基板90の印刷状態を検査する。
第一および第二のバッファ装置4は、生産ライン1において規定数の基板90を保持可能に構成される。バッファ装置4は、上流側の生産装置から搬出された基板90を、下流側の生産装置が基板90を搬入可能となるまで保持する。具体的には、第一のバッファ装置4は、印刷検査装置3の検査処理が終了した基板90を、下流側の部品装着機5の基板搬送装置10が基板90の搬入を許可するまで保持する。このとき、第一のバッファ装置4は、規定数に達するまでは、印刷検査装置3から搬出される基板90を受け入れることができる。このように、バッファ装置4は、上流側と下流側とのサイクルタイムの差を吸収して、全体として円滑な生産処理の実行がなされるように機能する。
複数の部品装着機5のそれぞれは、生産ライン1の上流側から搬送された基板90のはんだの上に部品を装着する。部品装着機5の構成については後述する。外観検査装置6は、上流側の部品装着機5により基板90に装着された部品を対象とする外観検査を行う。上記の外観検査によって、基板90に装着された部品の適否、部品の装着位置や姿勢など、基板90における部品の装着状態が認識される。なお、外観検査装置6は、部品の装着状態の良否とともに、装着状態の程度を外観検査の結果としてホストPC70に送出する。
リフロー炉7は、生産ライン1の上流側から搬送された基板90を加熱して、基板90上のはんだを溶融させてはんだ付けを行う。機能検査装置8は、はんだ付けされた基板90の機能検査を行う。詳細には、機能検査装置8は、基板90に所定の入力信号を与えて、これに対する出力信号を取得する。そして、機能検査装置8は、取得した出力信号に基づいて、電子回路としての基板90機能が正常であるか否かを検査する。
このように、生産ライン1は、各生産装置に対して基板90を順に搬送し、検査処理を含む生産処理を実行して基板製品を生産する。なお、生産ライン1は、例えば生産する基板製品の種別などに応じて、その構成を適宜追加、変更され得る。例えば、生産ライン1は、印刷機2の上流側や中間位置、機能検査装置8の下流側に他の生産装置を設置して構成されてもよい。他の生産装置には、例えば基板供給装置や基板反転装置、シールド装着装置、接着剤塗布装置、紫外線照射装置などが含まれる。
ホストPC70は、生産ライン1の動作状況を監視し、各生産装置の制御を行う。このホストPC70は、ハードディスクやフラッシュメモリなどにより構成される記憶装置71を有する。記憶装置71には、生産ライン1を構成する複数の生産装置を制御するための各種データが記憶されている。具体的には、記憶装置71は、各生産装置を動作させるための制御プログラムなどを記憶している。
1-2.部品装着機5の構成
部品装着機5は、基板搬送装置10と、部品供給装置20と、部品移載装置30と、部品カメラ41と、基板カメラ42と、制御装置50とを備える。以下の説明において、部品装着機5の水平幅方向(図2の左右方向)をX軸方向とし、部品装着機5の水平奥行き方向(図2の上下方向)をY軸方向とし、X軸およびY軸に垂直な鉛直方向(図2の前後方向)をZ軸方向とする。
基板搬送装置10は、ベルトコンベアなどにより構成され、基板90を搬送方向(本実施形態においてはX軸方向)へと順次搬送する。基板搬送装置10は、部品装着機5の機内に基板を搬入するとともに、機内の所定位置に基板90を位置決めしてクランプ状態とする。そして、基板搬送装置10は、部品装着機5による部品の装着が終了した後に、クランプ状態を解除して基板90を部品装着機5の機外に搬出する。
部品供給装置20は、基板90に装着される部品を供給する。部品供給装置20は、X軸方向に並んで配置された複数のスロット21を有する。複数のスロット21には、フィーダ22が交換可能にそれぞれセットされる。フィーダ22は、多数の部品を収納するキャリアテープを送り移動させて、フィーダ22の先端側に位置する供給位置において部品を採取可能に供給する。
部品移載装置30は、ヘッド駆動装置31、移動台32、および装着ヘッド33を備える。ヘッド駆動装置31は、直動機構により移動台32をX軸方向およびY軸方向に移動可能に構成されている。装着ヘッド33は、部品供給装置20により供給される部品を採取して基板90の所定の装着位置に装着する。装着ヘッド33は、図示しないクランプ部材により移動台32に固定される。
また、装着ヘッド33は、着脱可能に設けられる1または複数の吸着ノズルを有する。装着ヘッド33は、Z軸と平行なR軸回りに回転可能に、且つ昇降可能に吸着ノズルを支持する。吸着ノズルは、装着ヘッド33に対する昇降位置や角度、負圧の供給状態を制御される。吸着ノズルは、負圧を供給されることにより、部品供給装置20のフィーダ22により供給される部品を吸着する。
部品カメラ41、および基板カメラ42は、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の撮像素子を有するデジタル式の撮像装置である。部品カメラ41、および基板カメラ42は、通信可能に接続された制御装置50による制御信号に基づいてカメラ視野に収まる範囲の撮像を行い、当該撮像により取得した画像データを制御装置50に送出する。
部品カメラ41は、光軸が鉛直方向(Z軸方向)の上向きとなるように部品装着機5の基台に固定されている。部品カメラ41は、部品移載装置30の下方から装着ヘッド33の吸着ノズルに保持された部品を撮像可能に構成されている。基板カメラ42は、光軸が鉛直方向(Z軸方向)の下向きとなるように部品移載装置30の移動台32に設けられる。基板カメラ42は、基板90を撮像可能に構成されている。
制御装置50は、主として、CPUや各種メモリ、制御回路により構成され、部品装着機5を動作させるための制御プログラム、部品カメラ41および基板カメラ42の撮像により取得した画像データに基づいて、基板90に部品を装着する。詳細には、制御装置50は、基板搬送装置10による基板90の搬送および位置決め、部品供給装置20による部品の供給動作、部品移載装置30による装着動作を制御する。これにより、装着ヘッド33の位置や吸着機構の動作が制御され、装着ヘッド33に支持された吸着ノズルの位置および回転角度が制御される。
また、制御装置50は、本実施形態において、表示装置51および入力デバイス52を有する。表示装置51は、各種情報をオペレータに対して視認可能に表示する。表示装置51には、例えば生産処理の実行中においては制御プログラムが表示され、メンテナンスの実行中においてはメンテナンスの要因や対処手順などの情報が表示される。入力デバイス52は、表示装置51に表示された各種情報について、オペレータによる編集を受け付ける。また、入力デバイス52は、部品装着機5に対するメンテナンスが行われた際に、メンテナンスの終了を含む所要時間の変更を受け付ける。
1-3.生産管理装置80の概要
上記のように構成される生産ライン1により生産処理が実行されると、印刷機2や部品装着機5などの生産装置において各処理が実行されるとともに、下流側へと順に基板90が搬送される。このような生産処理の実行中に、例えば部品装着機5においてオペレータによるメンテナンスを要するエラーが検出されて部品装着機5が停止した場合には、この部品装着機5よりも上流側の生産装置は、基板90の搬送が停滞することによって順次停止する。
上記のメンテナンスの要因としては、部品供給装置20における部品切れ、供給された部品の不良、装着ヘッド33の動作不良、基板90上のはんだ不良などが想定される。また、これらのメンテナンスの要因は、部品装着機5における各種センサの検出結果、部品カメラ41や基板カメラ42を用いた画像処理の結果により特定され得る。さらに、メンテナンスの要因は、例えば外観検査装置6や機能検査装置8による検査結果により、対象の部品を装着した部品装着機5とともに特定され得る。その他に、生産管理装置80は、エラーの発生を未然に防止するなどの目的で予め計画されたメンテナンスの実行時期に応じて、メンテナンスを要するものと判断してもよい。
生産ライン1においてメンテナンスを要して生産処理が中断すると、生産効率が低下するのに加えて、生産中の基板90が廃棄の対象となることがあり無駄が発生し得る。そこで、生産管理装置80は、メンテナンスを要するエラー等が発生しても生産中の基板90の廃棄数を低減するとともに、生産効率の低下を最小限にすべく生産ライン1における生産処理を管理する。本実施形態では、図1に示すように、ホストPC70に生産管理装置80が組み込まれた態様を例示する。
生産管理装置80は、生産ライン1を構成する各生産装置から処理状態や検査結果などを取得して監視を行う。具体的には、生産管理装置80は、例えば部品装着機5において部品が正常に装着されない装着エラーの有無、装着エラーに対するリカバリ処理の実行回数などを監視する。装着エラーは、部品カメラ41や基板カメラ42の撮像により取得された画像データに対する画像処理や、装着ヘッド33の吸着機構の動作状態を監視するセンサの出力値などに基づいて検出される。
装着エラーの原因には、上記のような部品切れのようなメンテナンスを要する原因の他に、生産環境の変動など複合的な原因が含まれる。また、装着エラーに対するリカバリ処理は、装着エラーが偶発的に発生したものとして自動的な復旧を試行するものであり、装着処理の中断(部品装着機5の停止)を伴わない処理である。しかしながら、装着処理における部品を採取した後に部品を基板90に装着するピックアンドプレースサイクルが増加することにより、サイクルタイムが予定よりも長くなることがある。
ここで、生産ライン1では、各生産装置におけるサイクルタイムの差が小さくなるようにラインバランスを考慮して、生産ライン1の構成および各生産装置における各処理が最適化される。しかしながら、例えば一つの部品装着機5におけるリカバリ処理の実行頻度が高くなると、ボトルネックとなって生産効率が低下するおそれがある。そのため、このような場合には、装着エラーの原因を除去するようにメンテナンスを行うことが長期的には生産効率の低下を防止できる。
なお、装着エラーがメンテナンスを要する原因によるものである場合には、リカバリ処理は、実行されない。また、リカバリ処理が実行されても同様の装着エラーが所定回数に亘って連続する場合には、その装着エラーは、メンテナンスを要する原因によるものと判定されることもある。このとき、メンテナンスを要する部品装着機5は、装着処理を中断して、オペレータによるメンテナンスを待機した状態となる。
生産管理装置80は、例えば外観検査装置6から送出される外観検査の結果に基づいて、基板90への部品の装着状態が良好であっても、理想の装着位置や姿勢に対するずれ量を装着状態の程度として監視する。これにより、生産管理装置80は、部品装着機5による部品の装着の精度が維持されているのか、または悪化傾向にあるのかなどを認識するようにしている。
1-4.生産管理装置80の詳細構成
生産管理装置80は、図1に示すように、判定部81、搬送管理部82、時間算出部83、および水準設定部84を備える。判定部81は、生産ライン1による生産処理の実行中に複数の生産装置の何れかに対するメンテナンスの要否を判定する。詳細には、判定部81は、部品装着機5などの生産装置から送出される各種情報に基づいて、オペレータによるメンテナンスを行うべきか否かを判定する。
例えば、判定部81は、複数の部品装着機5の一つがリカバリ処理を実行しても同様の装着エラーが所定回数に亘って連続したとの通知を受けて、この部品装着機5に対するメンテナンスを要するものと判定する。また、判定部81は、部品装着機5による装着処理においてリカバリ処理の頻度が高くなっていたり、装着処理のサイクルタイムが予定よりも延びていたりする傾向に基づいて、この部品装着機5に対するメンテナンスを要するものと判定する。
上記の装着処理のサイクルタイムが予定よりも延びる要因には、リカバリ処理の実行に伴って装着処理におけるピックアンドプレースサイクルが増加したことの他に、部品移載装置30などの各装置の動作不良が含まれる。例えば、装着ヘッド33を動作させる可動部に汚れなどが溜まると、同一の動作指令に対して現実の移動速度が変動し、動作に要する時間が延びることになる。このような場合には、装着ヘッド33の可動部の汚れを取り除くようなメンテナンスをすることが望ましい。
しかしながら、サイクルタイムが予定よりも延びていても、装着ヘッド33の可動部の汚れが原因であるか否かは、通常の装着処理の実行中の反応が微小であったり、当該反応にノイズが含まれ得たりすることから容易に判断できない。そこで、本実施形態において、判定部81は、所定期間における装着ヘッド33の規定動作の良否に基づいて、メンテナンスの要否を判定する。
具体的には、生産管理装置80は、先ず部品装着機5の基板搬送装置10による基板90の搬送に並行して装着ヘッド33に規定動作を実行させる。そして、判定部81は、規定動作の良否に基づいて装着ヘッド33に対するメンテナンスの要否を判定する。規定動作には、例えば吸着ノズルを所定回数に亘り昇降させたり、吸着ノズルを所定角度だけ回転させたりする動作が含まれる。判定部81は、装着ヘッド33の規定動作に要した動作時間、動作中のフィードバック制御の信号、動作中の消費電力などが正常な範囲にあるか否かに基づいて、装着ヘッド33に対するメンテナンスの要否を判定する。
ところで、装着ヘッド33に規定動作は、上記のように基板90の搬送に並行して実行される。この基板90の搬送には、装着処理の実行前の搬入、および装着処理の実行後の搬出が含まれる。生産管理装置80は、基板90の搬送中においては装着ヘッド33が待機状態にあることから、この期間を利用して規定動作を実行させる。なお、装着ヘッド33の規定動作は、複数回に亘る基板90の搬送のうち所定回数ごとに実行されてもよいし、サイクルタイムが予定よりも延びたことを認識したことをもって実行されてもよいし、これらを複合的に設定して実行されるようにしてもよい。
さらに、本実施形態において、判定部81は、外観検査装置6による外観検査の結果に基づいてメンテナンスの要否を判定する。具体的には、判定部81は、例えば複数回に亘る外観検査の結果において同一の原因により不良と判定された場合に、不良箇所の部品の装着を行った部品装着機5を特定し、この部品装着機5がメンテナンスを要するものと判定する。
また、判定部81は、外観検査の結果が不良ではないが装着状態の程度が悪化している場合に、装着の精度が低下しているものとして、装着を行った部品装着機5がメンテナンスを要するものと判定する。また、生産管理装置80は、メンテナンスを要する部品装着機5における装着ヘッド33や吸着ノズルなどメンテナンスを行うべき部材を、外観検査の結果に基づいて特定してもよい。以下では、生産ライン1を構成する複数の生産装置のうちメンテナンスの要因を有するものをメンテナンス対象装置Rdと称する。
搬送管理部82は、生産ライン1における複数の生産装置の基板搬送装置の動作を制御することにより、生産ライン1全体における基板90の搬送を管理する。また、搬送管理部82は、判定部81によりメンテナンスを要すると判定された場合に、生産ライン1を構成する複数の生産装置のうちメンテナンス対象装置Rdよりも生産ライン1の上流側に位置する基準装置Sdへの基板90の搬入を所定のタイミングで停止させる。
つまり、搬送管理部82は、メンテナンスを要すると判定された場合に、メンテナンス対象装置Rdを停止させる他に、基準装置Sdへの基板90の搬入を停止させる。これにより、基準装置Sdは、基板90の搬送が停滞することによって停止するのではなく、搬送管理部82による指令に基づいて、所定のタイミングで停止する。なお、基準装置Sdは、生産ライン1における基板90の搬送制御の基準であり、生産ライン1の構成等に応じて任意に設定される。
具体的には、基準装置Sdは、図1に示すように、例えばメンテナンス対象装置Rdを複数の部品装着機5のうち上流側から5台目とした場合に、この部品装着機5よりも生産ライン1の上流側に位置する。基準装置Sdは、生産ライン1における所定の生産装置に固定してもよいし、メンテナンス対象装置Rdに応じて変動してもよい。
本実施形態において、基準装置Sdは、生産ライン1の先頭に位置する生産装置、即ち基板90に接合材としてのはんだを印刷する印刷機2である。ここで、印刷機2により基板90に塗布されるはんだの粘性は、印刷処理が終了するとはんだ乾燥するため、時間の経過とともに徐々に低下する。はんだの粘性が規定値未満まで低下すると、接合材としての機能が低下することから、装着された部品が装着位置からずれたり傾いたりしやすくなり、装着エラーの原因となり得る。
そのため、印刷処理が終了して印刷機2から搬出された基板90は、生産ライン1の下流側に位置する全ての部品装着機5を通過するまでの制限時間Tmが設定される。この制限時間Tmは、印刷機2による印刷処理の終了からはんだの粘性が規定値以上に維持される時間として設定される。詳細には、制限時間Tmは、生産ライン1で生産される基板製品の種類、生産ライン1における生産環境、および基板90と部品を接合する接合材の種類の少なくとも一つに基づいて設定される。
基板製品の種類が相違すると、基板90に塗布されるはんだの形状や量が変わり、はんだの粘度の変化しやすさが相違する。また、生産ライン1の生産環境(温度や湿度)が変動すると、同様にはんだの粘度の変化しやすさが相違する。また、接合材としてのはんだの種類が相違すると、初期の粘度や粘度の変化しやすさが相違する。そこで、制限時間Tmを上記要因の少なくとも一つに基づいて設定することによって、より正確な制限時間Tmを設定するようにしている。
また、搬送管理部82は、基準装置Sdへの基板90の搬入を停止させる他に、基準装置Sdとメンテナンス対象装置Rdとの間に位置する生産装置における基板90の搬送の許否、基準装置Sdへの基板90の搬入の停止の解除などを行う。搬送管理部82による生産ライン1における基板90の搬送の管理の詳細については後述する。
時間算出部83は、メンテナンスの種別に基づいて、メンテナンスの所要時間Trを算出する。上記の「メンテナンスの種別」は、生産装置の状態や動作に関する機械系、ホストPC70との通信に関する通信系などを含み、メンテナンスの実行に必要な技術的な難度を示す。時間算出部83による所要時間Trの算出方法としては、例えばメンテナンスにおける複数の工程毎の所要時間を合算したり、メンテナンスの種別と所要時間Trとの関係を示すメンテナンス情報M1から取得したりするようにしてもよい。
ここで、メンテナンスの所要時間Trは、例えば平均的な値を算出されたとしても、実際にメンテナンスを行うオペレータの技術水準または作業実績に応じて増減し得る。そこで、時間算出部83は、メンテナンスを要すると判定された場合に、オペレータの技術水準および作業実績がオペレータごとに記録されたオペレータ情報M2に基づいて、メンテナンスを要すると判定された時点でメンテナンスを行うオペレータの技術水準または作業実績を取得する。そして、時間算出部83は、取得した技術水準または作業実績に応じてメンテナンスの所要時間Trを調整する。
具体的には、時間算出部83は、担当のオペレータの技術水準がメンテナンスの種別に対して低かったり、作業実績が少なかったりする場合には、これに応じて当初算出された所要時間Trに所定時間を加算するように調整する。一方で、担当のオペレータが同様のメンテナンスを過去に複数回に亘って実行した実績が記録されている場合には、過去のメンテナンスの実行に要した時間に基づいて、当初算出された所要時間Trから所定時間を減算するように調整する。
また、生産管理装置80は、メンテナンスを行うオペレータに算出されたメンテナンスの所要時間Trを表示するとともに、オペレータによるメンテナンスの所要時間Trの編集を受け付ける。具体的には、生産管理装置80は、先ずメンテナンスの所要時間Trをメンテナンス対象装置Rdに送出する。これにより、メンテナンス対象装置Rdにおける制御装置50の表示装置51に所要時間Trが表示される。次に、生産管理装置80は、制御装置50の入力デバイス52を介してオペレータによる所要時間Trの編集を受け付ける。
これにより、実際にメンテナンスを行うオペレータによる編集が所要時間Trに反映され、所要時間Trは、より正確に設定される。また、オペレータによる編集方法としては、所要時間Trを直接入力したり、所定値の増減を受け付けたりする方法を採用し得る。また、生産管理装置80は、メンテナンスの終了報告を受け付けることによって、メンテナンスの開示時刻と終了時刻との差分を所要時間Trとして編集してもよい。
水準設定部84は、装着ヘッド33に対するメンテナンスを要すると判定された場合に、必要に応じてメンテナンスの水準Lmを設定する。上記の「メンテナンスの水準Lm」は、生産処理に対するメンテナンスの重要度を示す。よって、生産効率や生産コストの観点からは、メンテナンスの水準Lmが高いほど緊急性が高く、メンテナンスの早期実行が生産効率の低下を防止し、また基板90の廃棄数を低減して生産コストの増大を防止できる。
一方で、メンテナンスの水準Lmが低い場合には、メンテナンスのためにメンテナンス対象装置Rdを停止させると却って生産効率が低下することもあるが、長期的には生産効率の低下を防止できる。そのため、生産管理装置80の判定部81は、生産計画の進行度合いやメンテナンスの水準Lmを勘案して、メンテナンスの実行の要否を判定する。つまり、判定部81は、例えば生産計画の進行度合いが終了に近く且つメンテナンスの水準Lmが低い場合には、メンテナンスを不要と判定して生産処理を継続させる。
本実施形態において、水準設定部84は、判定部81が装着ヘッド33の規定動作の良否に基づいて装着ヘッド33に対するメンテナンスを要すると判定した場合に、この規定動作の良否の程度に応じてメンテナンスの水準Lmを設定する。ここで、装着ヘッド33の動作不良については、例えば可動部の汚れ具合によって徐々に変化するものであり、規定動作が一定以上に不良であってもメンテナンスの水準Lmは必ずしも一定でない。そこで、水準設定部84は、上記のように規定動作の良否の程度、即ち不良の度合いに応じてメンテナンスの水準Lmを設定する。
また、本実施形態において、水準設定部84は、判定部81が外観検査の結果に基づいてメンテナンスを要すると判定した場合に、その外観検査の結果の程度に応じてメンテナンスの水準Lmを設定する。ここで、装着の精度の低下については、例えば部品装着機5における装着ヘッド33などの可動部の汚れが原因であったり、装着処理のパラメータや生産環境の変動が原因であったりすることから、装着精度が一定以下に低下してもメンテナンスの水準Lmは必ずしも一定でない。そこで、水準設定部84は、上記のように外観検査の結果の程度、即ち不良の度合いに応じてメンテナンスの水準Lmを設定する。
1-5.生産管理装置80による生産処理の管理
上記の生産管理装置80による生産処理の管理について、図3を参照して説明する。生産管理装置80は、生産ライン1における生産処理が実行されると、生産処理の管理を開始する。生産処理の管理が開始されると、並行してメンテナンスの要因の検出処理(図4を参照)が実行される。上記の検出処理によるメンテナンスの要因が検出されると、メンテナンスの要因を有するメンテナンス対象装置Rdが特定され、またメンテナンスの水準Lmが設定される。メンテナンスの要因の検出処理の詳細については後述する。
判定部81は、メンテナンスの要因の検出処理の結果に基づいて、何れかの生産装置におけるメンテナンスの要否を判定する(ステップ11(以下、「ステップ」を「S」と表記する)。判定部81は、何れの生産装置においてもメンテナンスが不要の場合には(S11:No)、生産処理が終了するまで一定の周期でメンテナンスの要否判定(S11)を繰り返す。
ここで、メンテナンスの要因の検出処理によって、複数の部品装着機5のうち上流側から5台目の部品装着機5にメンテナンスの要因が検出されたものとする。以下では、この部品装着機5をメンテナンス対象装置Rdと称し、生産ライン1の先頭に位置する印刷機2を基準装置Sdと称する(図1を参照)。判定部81によりメンテナンスを要すると判定された場合には(S11:Yes)、搬送管理部82は、メンテナンスの水準Lmが予め設定された閾値Ltよりも高いか否かを判定する(S12)。
上記の閾値Ltは、本実施形態において、水準Lmが閾値Ltを超えるメンテナンスを行わなければ生産処理が継続不能になったり、生産処理を継続可能でも外観検査等によって不良と判定される可能性が一定以上であったりすることから、早期実行が望ましいメンテナンスを示すための値である。この閾値Ltは、生産ライン1の管理者等によって予め設定されている。
メンテナンスの水準Lmが閾値Ltよりも高い場合に(S12:Yes)、搬送管理部82は、基準装置Sdへの基板90の搬入を停止させる(S13)。つまり、搬送管理部82は、メンテナンスの水準Lmが閾値よりも高いと判定されたタイミングで基準装置Sdである印刷機2への基板90の搬入を停止させる。これにより、生産ライン1は、新規の基板90が搬入されない状態となる。
また、搬送管理部82は、基準装置Sdとメンテナンス対象装置Rdとの間に位置する全ての生産装置において基板90の搬送を停止させる(S14)。つまり、基準装置Sdである印刷機2、印刷検査装置3、第一のバッファ装置4、複数の部品装着機5のうち生産ライン1の5台目までの部品装着機5は、自機の処理(例えば、部品装着機5による装着処理)が終了しても、下流側への基板90の搬出を行わない。
このとき、生産管理装置80は、基準装置Sdとメンテナンス対象装置Rdとの間に保持されている基板90が将来的に廃棄対象となる蓋然性が高いと判断される場合には、それぞれの生産装置による各処理の実行についても停止させてもよい。これは、例えば部品装着機5による装着処理を継続すると、当該装着処理によって基板90に装着される部品も廃棄の対象となることを防止するためである。
搬送管理部82は、この状態でメンテナンスが終了したか否かを判定する(S15)。搬送管理部82は、メンテナンスが終了していない場合には(S15:No)、メンテナンスが終了するまで一定の周期でメンテナンスの終了判定(S15)を繰り返す。搬送管理部82は、例えばオペレータによるメンテナンスの終了通知を入力して、当該メンテナンスが終了したと判定した場合に(S15:Yes)、基準装置Sdへの基板90の搬入の停止を解除して、中断していた生産処理の実行を再開させる(S16)。
メンテナンスの水準Lmが閾値Ltよりも低い場合に(S12:No)、生産管理装置80は、メンテナンスの予定を設定する(S21)。ここで、メンテナンスの水準Lmが閾値Ltより低い場合には、メンテナンスを即時に実行する必要性が低い。そのため、生産処理を中断するタイミングは、ある程度の期間において適宜設定することができる。そこで、生産管理装置80は、生産計画の進行度合いに基づいて、メンテナンスの予定を設定する。
具体的には、生産管理装置80は、例えば生産する基板製品の種別が変更されるタイミングをメンテナンスの予定とすることができる。その他に、メンテナンスの予定は、現在時刻としてもよいし、現在時刻から固定数の基板製品を生産するのに要する時間だけ後のタイミングとしてもよいし、メンテナンスを行う担当のオペレータが入れ替わるタイミングとしてもよい。
続いて、搬送管理部82は、設定されたメンテナンスの予定に応じたタイミングで基準装置Sdへの基板90の搬入を停止させる(S22)。メンテナンスの予定に応じたタイミングとは、メンテナンスが予定される時刻にメンテナンス対象装置Rdに対してオペレータがメンテナンスを行えるように、基準装置Sdへの基板90の搬入を停止させるタイミングである。
ここで、メンテナンス対象装置Rdに対してメンテナンスを行う場合に、後述するように、基準装置Sdとメンテナンス対象装置Rdとの間に基板90が保持されない状態とすることがある。この場合には、メンテナンスの予定に応じたタイミングとは、メンテナンスが予定される時刻から、基準装置Sdからメンテナンス対象装置Rdまで基板90が通過するまでに要する生産時間を遡った時刻となる。
続いて、時間算出部83は、メンテナンスの種別に基づいて、メンテナンスの所要時間Trを算出するとともに、メンテナンスを行うオペレータの技術水準または作業実績に応じて所要時間Trを調整する(S23)。この所要時間Trは、制御装置50の表示装置51によりオペレータに表示される。以降、時間算出部83は、オペレータによるメンテナンスの所要時間Trの編集が受け付けられた場合には、当該編集を反映させるように所要時間Trを設定する。
さらに、時間算出部83は、停止許容時間Tsを算出する(S24)。ここで、基板90が基準装置Sdから搬出されてからメンテナンス対象装置Rdに搬入されるまでの経過時間Teと、メンテナンス対象装置Rdから生産ライン1の下流側に位置する全ての部品装着機5を通過するまでの予定の生産時間Tpとを制限時間Tmから差し引いた時間(Tm-Te-Tp)を、メンテナンス対象装置Rdにおいて搬入された基板90を保持したまま生産処理を停止可能な時間を示す停止許容時間Tsと定義する(Ts=Tm-Te-Tp)。
上記のように、メンテナンスの水準Lmが閾値Ltよりも低い場合には(S12:No)、メンテナンスを即時に実行する必要性が低く、生産処理を中断するタイミングをある程度の期間において適宜設定することができる。ところで、メンテナンスには、水準Lmが閾値Ltよりも低いが、所要時間Trが長いものが含まれる。このようなメンテナンスを必要と判断されたタイミングで実行すると、基準装置Sdとメンテナンス対象装置Rdとの間に保持された基板90が制限時間Tmを経過して、廃棄等の対象となり得る。
そこで、搬送管理部82は、上記のように算出された停止許容時間Tsとメンテナンスの所要時間Trとを比較する(S25)。搬送管理部82は、停止許容時間Tsがメンテナンスの所要時間Trよりも短い場合には(S25:Yes)、基準装置Sdへの基板90の搬入が停止された時点で基準装置Sdに搬入されていた基板90の搬送を許容する。つまり、搬送管理部82は、メンテナンスの予定に応じたタイミングで基準装置Sdへの基板90の搬入を停止させた際に(S22)、既に基準装置Sdから生産ライン1の下流側の生産装置に保持されている基板90について、生産処理の継続を許容する。
結果として、メンテナンス対象装置Rdは、基準装置Sdへの基板90の搬入が停止されてから所定数の基板90に対する生産処理を実行した後に、基板90が搬入されなくなって停止する。概算では、基準装置Sdへの基板の搬入が停止された時刻から、基準装置Sdからメンテナンス対象装置Rdまで基板90が通過するまでに要する生産時間が経過した時刻に、メンテナンス対象装置Rdが停止すると考えられる。
生産管理装置80は、メンテナンス対象装置Rdが停止してメンテナンスを行ってもよい状態になったことをオペレータに通知する(S26)。通知を受けたオペレータは、メンテナンス対象装置Rdのメンテナンスを適宜開始する。生産管理装置80は、メンテナンスが開始されるとタイマーをスタートさせて、メンテナンス対象装置Rdに対するメンテナンスが開始されてから経過した時間Tnを計測する。
その後にメンテナンスか終了すると、生産ライン1における生産処理を再開可能な状態となる。但し、メンテナンスの実行中は、S25により基準装置Sdとメンテナンス対象装置Rdとの間で基板90が保持されていない。そのため、メンテナンスが終了してもメンテナンス対象装置Rdは、生産ライン1の上流側から順次生産処理を実行された基板90が搬入されるまでは待機することになると、無駄な時間が発生し得る。そこで、生産管理装置80は、メンテナンスの終了を見込んで、メンテナンスが終了する前に生産処理の再開を行う。
ここで、メンテナンスの所要時間Trと、メンテナンス対象装置Rdに対するメンテナンスが開始されてから経過した時間Tnとの差分(Tr-Tn)を、メンテナンスが終了するまでの必要時間を示すメンテナンス残余時間Ttと定義する(Tt=Tr-Tn)。そして、搬送管理部82は、メンテナンス残余時間Ttが基準装置Sdからメンテナンス対象装置Rdの直前の生産装置を通過するまでの予定の生産時間Tpよりも短いか否かを判定する(S27)。
メンテナンス残余時間Ttが予定の生産時間Tpよりも長い場合には(S27:No)、搬送管理部82は、基準装置Sdからメンテナンス対象装置Rdまでの生産装置の待機状態を維持し、一定の周期でメンテナンス残余時間Ttと予定の生産時間Tpの比較判定(S27)を繰り返す。搬送管理部82は、メンテナンス残余時間Ttが予定の生産時間Tpよりも短い場合には(S27:Yes)、基準装置Sdへの基板90の搬入の停止を解除する。これにより、メンテナンスの終了の見込みをもって、中断していた生産処理の実行を再開させる(S16)。
結果として、基準装置Sdとメンテナンス対象装置Rdとの間の生産装置におけるメンテナンスに伴う待機時間を短縮することができる。なお、生産処理が再開された後にメンテナンスの所要時間Trが長くなった場合には、メンテナンス対象装置Rdの直前の部品装着機5から基板90の搬出が試行されてもメンテナンス対象装置Rdへの搬入が許容されない。そのため、メンテナンス対象装置Rdの上流側の生産装置が順次停止する。そして、メンテナンス対象装置Rdへのメンテナンスが終了すると、メンテナンス対象装置Rdへの基板90の搬入が許容され、生産処理が適正に再開される。このときのメンテナンス対象装置Rdの待機時間は0となる。
なお、上記のメンテナンス残余時間Ttは、時間の経過とともに漸減し、またオペレータによるメンテナンスの所要時間Trの編集に伴って増減し得る。例えばオペレータがメンテナンスの終了通知を入力すると、メンテナンス残余時間Ttが0となり、基準装置Sdへの基板90の搬入の停止が解除されて、生産処理の実行が再開される(S16)。
一方で、停止許容時間Tsがメンテナンスの所要時間Trよりも長い場合には(S25:No)、メンテナンスが終了して生産処理が再開されるならば何れの基板90も制限時間Tmを超えることなく、全ての部品装着機5を通過することができる。そこで、搬送管理部82は、停止許容時間Tsがメンテナンスの所要時間Trよりも長い場合には(S25:No)、基準装置Sdとメンテナンス対象装置Rdとの間に位置する全ての生産装置において基板90の搬送を停止させる(S14)。
このように生産処理を中断すると、基準装置Sdとメンテナンス対象装置Rdとの間に位置する生産装置は、基板90を保持した状態で停止する。その後にメンテナンスが終了して(S15:Yes)、中断していた生産処理が再開されると、メンテナンス対象装置Rdに直前の部品装着機5から基板90が搬入される。これにより、メンテナンス対象装置Rdの待機時間が短縮される。
1-6.メンテナンスの要因の検出処理
生産管理装置80によるメンテナンスの要因の検出処理について、図4を参照して説明する。生産管理装置80は、上記の生産処理の管理に並行して、メンテナンスの要因の検出処理を一定終期で実行する。生産管理装置80は、先ず各生産装置から送出される各種データを解析する処理を行う(S31)。各種データの解析には、生産処理における印刷エラーや装着エラーの発生頻度、予定のサイクルタイムに対する遅延時間、外観検査の結果の解析が含まれる。
判定部81は、各種データの解析の結果に基づいて、メンテナンスの要因が発生しているか否かを判定する(S32)。具体的には、判定部81は、装着エラーの発生頻度や装着エラーに対するリカバリ処理の実行頻度が規定値以上である場合に、また予定のサイクルタイムに対する遅延時間が規定時間以上である場合に、メンテナンスの要因があると判定する(S32:Yes)。
また、判定部81は、例えば複数回に亘る外観検査の結果において同一の原因により不良と判定された場合に、不良箇所の部品の装着を行った部品装着機5にメンテナンスの要因があると判定する(S32:Yes)。さらに、判定部81は、外観検査の結果が不良ではないが装着状態の程度が悪化している場合に、装着の精度が低下しているものとして、装着を行った部品装着機5にメンテナンスの要因があると判定する(S32:Yes)。
生産管理装置80は、何れかの生産装置にメンテナンスの要因があると判定された場合に(S32:Yes)、メンテナンスの要因を有する生産装置を特定する(S33)。具体的には、印刷エラーや装着エラーの発生に起因するメンテナンスであれば当該エラーが発生した生産装置にメンテナンスの要因があり、また外観検査の結果に起因するメンテナンスであれば不良箇所の部品を装着した部品装着機5にメンテナンスの要因がある生産装置(メンテナンス対象装置Rd)とされる。
続いて、水準設定部84は、メンテナンスの水準Lmを設定する(S34)。具体的には、水準設定部84は、検出されたメンテナンスの要因に基づいて、水準Lmを設定する。例えば、水準設定部84は、外観検査の結果に基づいてメンテナンスを要すると判定された場合には(S32:Yes)、その外観検査の結果の程度、即ち不良の度合いに応じてメンテナンスの水準Lmを設定する。例えば、水準設定部84は、理想の装着位置や姿勢に対するずれ量が大きいほどメンテナンスの水準Lmを高く設定する。
水準設定部84は、生産処理における印刷エラーや装着エラーの発生頻度、予定のサイクルタイムに対する遅延時間に基づいてメンテナンスを要すると判定された場合には(S32:Yes)、装着エラー等の発生頻度が高いほど、また遅延時間が長いほどメンテナンスの水準Lmを高く設定してもよい。また、水準設定部84は、装着エラー等の発生頻度や装着処理の遅延に関するメンテナンスの要因については、予め設定された固定値をメンテナンスの水準Lmに設定してもよい。
ここで、各種データの解析(S31)においてはメンテナンスの要因がないと判定された場合には(S32:No)、生産管理装置80は、所定のスケジュールに従って、複数の部品装着機5のうち基板90の搬送を行っている部品装着機5に対して、装着ヘッド33の規定動作を実行するように指令する。これにより、指令を受けた部品装着機5は、装着ヘッド33に規定動作を実行させる(S35)。なお、上記の「所定のスケジュール」には、基板90の搬送回数に相当する基板製品の生産数が規定値に達したとき、部品装着機5における平均のサイクルタイムが延びていることを認識したときが含まれ得る。
続いて、判定部81は、規定動作の良否に基づいて装着ヘッド33に対するメンテナンスの要否を判定する(S36)。判定部81は、例えば装着ヘッド33の規定動作に要した動作時間が規定値以上の場合に、装着ヘッド33の可動部の汚れがメンテナンスの要因があるものと判定する(S36:Yes)。これにより、生産管理装置80は、装着ヘッド33の可動部のクリーニングするメンテナンスが必要であると認識する。
そして、水準設定部84は、判定部81が装着ヘッド33の規定動作の良否に基づいて装着ヘッド33に対するメンテナンスを要すると判定した場合に(S36:Yes)、この規定動作の良否の程度、即ち不良の度合いに応じてメンテナンスの水準Lmを設定する(S34)。例えば、水準設定部84は、規定動作に要した動作時間が長いほどメンテナンスの水準Lmを高く設定する。
2.実施形態の構成による効果
以上説明したように、本明細書に開示する生産管理装置80は、基板90に部品を装着する部品装着機5を含む生産装置を基板90の搬送方向に複数設置して構成される生産ライン1に適用される。生産管理装置80は、生産ライン1による生産処理の実行中に複数の生産装置の何れかに対するメンテナンスの要否を判定する判定部81と、メンテナンスを要すると判定された場合に、複数の生産装置のうちメンテナンスの要因を有するメンテナンス対象装置Rdよりも生産ライン1の上流側に位置する基準装置Sdへの基板90の搬入を所定のタイミングで停止させる搬送管理部82と、を備える。
このような構成によると、生産ライン1においてメンテナンスを要すると判定されると、メンテナンス対象装置Rdよりも上流側に位置する基準装置Sdへの基板90の搬入が所定のタイミングで停止される(S13,S22)。これにより、例えばメンテナンス対象装置Rdの停止に伴う基板90の搬送の停滞によって基準装置Sdへの基板90の搬入が停止される構成と比較すると、基準装置Sdからメンテナンス対象装置Rdまでの間に保持される基板90の数を低減できる。これにより、生産中の基板90の廃棄数を低減できる。
上記の搬送管理部82は、メンテナンスの水準Lmが予め設定された閾値Ltよりも高い場合に(S12:Yes)、基準装置Sdへの基板90の搬入を停止させるとともに(S13)、基準装置Sdとメンテナンス対象装置Rdとの間に位置する全ての生産装置において基板90の搬送を停止させる(S14)。
これにより、仮に基準装置Sdからメンテナンス対象装置Rdまでの間に保持された基板90が廃棄対象となっても、基板90の廃棄数を低減しつつ、生産処理の再開の早期化を図ることができる。よって、生産ライン1全体として生産効率を向上させることができる。
上記の搬送管理部82は、メンテナンスの水準Lmが予め設定された閾値Ltよりも低い場合に(S12:No)、メンテナンスの予定に応じたタイミングで基準装置Sdへの基板90の搬入を停止させる(S22)。
これにより、搬送管理部82は、例えば生産計画等に基づいて設定されるメンテナンスの予定に応じたタイミング、即ち現時点または生産処理をある程度継続した後に、基準装置Sdへの基板90の搬入を停止させることができる(S22)。これにより、メンテナンスに対する生産処理の優先度に合わせた管理が可能となる。
上記の基準装置Sdは、生産ライン1の先頭に位置する生産装置である。
このような構成によると、生産管理装置80は、メンテナンスを要すると判定された場合には、生産ライン1の先頭に位置する基準装置Sdへの基板90の搬入を停止させる(S13,S22)。これにより、生産ライン1において搬送される基板90の数を低減できる。よって、生産ライン1の先頭の基準装置Sdからメンテナンス対象装置Rdまでの間に保持される基板90の数が低減され、メンテナンスの要因の発生に伴う基板90の廃棄数を低減できる。
上記の基準装置Sdは、基板90を搬出してから生産ライン1の下流側に位置する全ての部品装着機5を通過するまでの制限時間Tmが設定される生産装置である。
このような構成によると、生産管理装置80は、メンテナンスを要すると判定された場合には、自機の処理に伴って基板90に制限時間Tmが設定される生産装置(本実施形態では、印刷機2)への基板90の搬入を停止させる。これにより、メンテナンスの所要時間Trが長くなっても、制限時間Tmの経過による基板90の廃棄数を低減できる。
上記の搬送管理部82は、メンテナンスの水準Lmが予め設定された閾値Ltよりも低く(S12:No)、且つ停止許容時間Tsがメンテナンスの所要時間Trよりも短い場合には(S25:Yes)、基準装置Sdへの基板90の搬入が停止された時点で基準装置Sdに搬入されていた基板90の搬送を許容する。
これにより、生産管理装置80は、既に生産ライン1に搬入された基板90については、基準装置Sdから下流側への搬送を許容し、生産処理の実行を継続する。これにより、メンテナンスの所要時間Trが長くなっても、基準装置Sdからメンテナンス対象装置Rdまでの間に基板90が保持されていないのでメンテナンスに伴う基板90の廃棄数を0にできる。
上記の搬送管理部82は、メンテナンスのメンテナンス残余時間Ttが基準装置Sdからメンテナンス対象装置Rdの直前の生産装置を通過するまでの予定の生産時間Tpよりも短い場合には(S27:Yes)、基準装置Sdへの基板90の搬入の停止を解除して、生産処理の実行を再開させる(S16)。
これにより、メンテナンスの終了見込みをもって生産処理が再開され、メンテナンスの終了後にメンテナンス対象装置Rdへと基板90を早期に搬入できる。よって、メンテナンスの終了後におけるメンテナンス対象装置Rdの待機時間を短縮することができる。
上記の搬送管理部82は、メンテナンスの水準Lmが閾値Ltよりも低く(S12:No)、且つ停止許容時間Tsがメンテナンスの所要時間Trよりも長い場合には(S25:No)、基準装置Sdとメンテナンス対象装置Rdとの間に位置する全ての生産装置において基板90の搬送を停止させる(S14)。このように生産処理を中断すると、基準装置Sdとメンテナンス対象装置Rdとの間に位置する生産装置は、基板90を保持した状態で停止する。そのため、その後にメンテナンスが終了して(S15:Yes)、中断していた生産処理が再開されると(S16)、メンテナンス対象装置Rdへと基板90を早期に搬入できる。よって、メンテナンスの終了後におけるメンテナンス対象装置Rdの待機時間が短縮される。
上記の生産管理装置80は、メンテナンスの種別に基づいて、メンテナンスの所要時間Trを算出する時間算出部83を備える。
このような構成によると、メンテナンスの種別に基づいて所要時間Trが算出される(S23)。これにより、メンテナンスの所要時間Trをより正確に取得できる。よって、メンテナンスの所要時間Trを用いた判定処理(S25,S27)等をより正確に実行することができる。
上記の生産管理装置80は、メンテナンスを行うオペレータに算出されたメンテナンスの所要時間Trを表示するとともに、オペレータによるメンテナンスの所要時間Trの編集を受け付ける(S23)。
このような構成によると、実際にメンテナンスを行うオペレータによる編集が所要時間Trに反映され、所要時間Trをより正確に設定できる。
上記の時間算出部83は、メンテナンスを要すると判定された時点でメンテナンスを行うオペレータの技術水準または作業実績に応じてメンテナンスの所要時間Trを調整する(S23)。
これにより、担当のオペレータの技術水準等を反映させた所要時間Trを取得できる。
上記の基板90に設定される制限時間Tmは、生産ライン1で生産される基板製品の種類、生産ライン1における生産環境、および基板90と部品を接合する接合材の種類の少なくとも一つに基づいて設定される。
このような構成によると、制限時間Tmが基板製品の種類等の少なくとも一つに基づいて設定され、より正確な制限時間Tmを取得できる。よって、停止許容時間Tsを用いた判定処理(S25)をより正確に実行することができる。
上記の基準装置Sdは、基板90に接合材としてのはんだを印刷する印刷機2である。制限時間Tmは、印刷機2による印刷処理の終了からはんだの粘性が規定値以上に維持される時間として設定される。
このような構成によると、このように設定された制限時間Tmを生産処理の管理に用いることにより、停止許容時間Tsをより正確に算出できる。これにより、各判定処理(S25)等を正確にして、メンテナンスに伴う基板90の廃棄数を低減できるとともに、生産効率の向上を図ることができる。
上記の部品装着機5は、基板90を搬送する基板搬送装置10と、部品を供給する部品供給装置20と、部品供給装置20により供給された部品を採取した後に、基板90の上面に部品を装着する装着ヘッド33と、を備える。生産管理装置80は、基板搬送装置10による基板90の搬送に並行して装着ヘッド33に規定動作を実行させる(S35)。判定部81は、規定動作の良否に基づいて装着ヘッド33に対するメンテナンスの要否を判定する(S36)。
このような構成によると、規定動作は、生産処理に影響しない期間(基板90の搬送期間)に実行される(S35)。よって、規定動作の実行(S35)に伴う生産効率の低下を防止できる。また、規定動作を適宜設定することによって、通常の生産処理では検出されないメンテナンスの要因を早期に検出できる。
上記の生産管理装置80は、装着ヘッド33に対するメンテナンスを要すると判定された場合に(S36:Yes)、規定動作の良否の程度に応じてメンテナンスの水準Lmを設定する水準設定部84を備える。
水準設定部84が規定動作の良否の程度に応じてメンテナンスの水準Lmを設定するので(S34)、メンテナンスの必要性や所要時間Trをより正確に算出できる。
上記の生産ライン1には、上流側の部品装着機5により基板90に装着された部品を対象とする外観検査を行う外観検査装置6が含まれる。判定部81は、外観検査の結果に基づいてメンテナンスの要否を判定する(S11,S32)。
このような構成によると、外観検査の結果を反映してメンテナンスの要因を検出できる。これにより、メンテナンスの要因を早期に検出できる。さらに、外観検査の結果に基づいて、特定された部品装着機5のうち装着ヘッド33や吸着ノズルなどメンテナンスを行うべき部材を特定してもよい。これにより、メンテナンスをより適確に案内できるとともに、メンテナンスに伴う生産効率の低下を防止できる。
上記の生産管理装置80は、メンテナンスを要すると判定された場合に(S32:Yes)、外観検査の結果の程度に応じてメンテナンスの水準Lmを設定する水準設定部84を備える。
これにより、メンテナンスの必要性や所要時間Trをより正確に算出できる。
3.実施形態の変形態様
3-1.メンテナンスの要因の検出について
実施形態において、生産管理装置80は、各種データの解析処理(S31)等の結果に基づいてメンテナンスの要因を検出する構成とした。これに対して、生産管理装置80は、例えば所定の生産装置に対して計画されたメンテナンスの実行時期に達したこと、または実行時期が迫っていることをメンテナンスの要因として検出してもよい。このような態様において、複数の生産装置の一部には、メンテナンスの実行時期を示すメンテナンス計画M3が予め設定されている。
上記の「メンテナンスの実行時期」は、例えば装着処理を実行してから一定時間が経過したとき、実行した装着処理の回数が規定値に達したとき、吸着ノズルが部品の装着に使用された回数が規定値に達したとき、あるフィーダ22が部品を供給した回数が規定値に達したときが含まれ、メンテナンスの種別によって相違し得る。そして、メンテナンス計画には、実行時期とともに、例えば部品装着機5を構成する装着ヘッド33などの各装置をメンテナンスの対象とするように計画されている。
このような態様において、判定部81は、メンテナンス計画M3に基づいて、複数の生産装置の何れかに対するメンテナンスの要否を判定する。つまり、判定部81は、メンテナンス計画M3が設定されている場合には、メンテナンスの要因の有無にかかわらず、定期的に、または一定の条件が満たされたときに、対応する生産装置に対するメンテナンスを要すると判定する。具体的には、判定部81は、現在からメンテナンスの実行時期(例えば現在使用中の装着ヘッド33を用いて実行した装着処理の回数が規定値に達する時期)までの期間が一定以下となったことをもって、当該生産装置に対するメンテナンスの要因があるものと判定する。
なお、上記のようにメンテナンス計画M3に基づいてメンテナンスを要すると判定された場合には、メンテナンスの予定の設定処理(S21)において、メンテナンスの予定は、メンテナンス計画M3により示されるメンテナンスの実行時期に応じたタイミングとして設定される。また、水準設定部84は、上記の場合には、メンテナンスの実行時期までに十分な期間が設けられていることから、メンテナンスの水準Lmを閾値Ltよりも低く設定する。そして、搬送管理部82は、上記のようにメンテナンス計画M3に基づいてメンテナンスを要すると判定された場合に、メンテナンス計画M3に応じたタイミングで基準装置Sdへの基板90の搬入を停止させる(S22)。
これにより、搬送管理部82は、例えば生産計画や消耗品の耐用回数等に基づいて予め設定されるメンテナンス計画に応じたタイミングで、即ち生産処理をある程度継続したタイミングで、基準装置Sdへの基板90の搬入を停止させることができる(S22)。これにより、必要なメンテナンスを計画的に実行することができる。
3-2.生産処理の管理について
実施形態において、搬送管理部82は、メンテナンスの水準Lmが閾値Ltよりも高い場合に(S12:Yes)、基準装置Sdとメンテナンス対象装置Rdとの間に位置する全ての生産装置において基板90の搬送を停止させる(S14)。これに対して、搬送管理部82は、生産ライン1の構成およびメンテナンスの所要時間Trに基づいて、上流側の生産装置の一部または全部における基板90の搬送を継続してもよい。
例えば、メンテナンスの水準Lmは高いが所要時間Trが短く、メンテナンスの実行により生産処理の早期再開が見込まれることがある。このような場合には、例えばバッファ装置4に複数の基板90を保持することにより生産処理の中断を不要にできる。このように、搬送管理部82は、生産ライン1の構成等に基づいて、上流側の生産装置における基板90の搬送を管理することができる。
実施形態において、基準装置Sdは、生産ライン1の先頭に位置する生産装置であって、且つ自機の処理に伴って基板90に制限時間Tmが設定される生産装置である印刷機2とした。これに対して、基準装置Sdは、生産ライン1を構成する複数の生産装置のうち末尾を除く何れの生産装置に設定されてもよい。例えば、基準装置Sdは、生産ライン1の中間に位置する部品装着機5に設定されてもよい。
実施形態において、メンテナンスの水準Lmが閾値Ltよりも低い場合には(S12:No)、メンテナンスの所要時間Trが停止許容時間Tsよりも長いか否かを判定した(S25:Yes)。これに対して、搬送管理部82は、メンテナンスの所要時間Trと停止許容時間Tsとの関係によらず、基準装置Sdとメンテナンス対象装置Rdとの間の基板の搬送を許容してもよい。メンテナンスが所要時間Trを超える場合や、メンテナンスの開始が遅れる場合があることから、メンテナンスの水準Lmが閾値Ltより低くても一律に、基板90の搬送を許容する。これにより、基板90の廃棄を確実に抑制できる。
実施形態において、基準装置Sdとメンテナンス対象装置Rdとの間の基板90の搬送を許容した場合に(S25:Yes)、搬送管理部82は、メンテナンス残余時間Ttが予定の生産時間Tpよりも短くなったときに(S27:Yes)、基準装置Sdへの基板90の搬入の停止を解除して、生産処理の実行を再開する(S16)。これに対して、基準装置Sdへの基板90の搬入の停止の解除は、例えばメンテナンスが予定の所要時間Trを超えて実行されることを見越して、メンテナンスの終了等を条件としてもよい。
3-3.その他
実施形態において、時間算出部83は、経過時間Teと予定の生産時間Tpとを制限時間Tmから差し引いて、停止許容時間Tsを算出した。これに対して、制限時間Tmは、例えば生産ライン1における生産装置の位置に対応した固定値としてもよい。
実施形態において、生産管理装置80は、ホストPC70に組み込まれた態様を例示した。これに対して、生産管理装置80は、ホストPC70の外部装置であってもよい。例えば、生産管理装置80は、生産装置のそれぞれに組み込まれて構成され、例えば搬送の許否について隣り合う生産装置に対して順次通知して連携してもよい。また、生産管理装置80は、部品装着機5およびホストPC70に対して通信可能に接続された専用装置として構成されてもよい。