JP7222899B2 - 銅-ニッケル-スズ合金の作製方法 - Google Patents

銅-ニッケル-スズ合金の作製方法 Download PDF

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Description

関連出願の引用
本願は、2017年2月4日に出願された米国仮特許出願第62/454,791号に対する優先権を主張する。この米国仮特許出願の全体が、参照により完全に本明細書に組み込まれる
背景
本開示は、改善された銅-ニッケル-スズ合金と、それらの合金から作製された物品と、そのような物品の作製および使用方法とに関する。
多くの銅-ニッケル-スズ合金は、高い強度、弾性、および疲労強度を有する。いくつかは、スピノーダル硬化を行うことができ、高い強度および硬さ、耐かじり性、応力緩和、腐食、浸食などの追加の特性をもたらすように設計製作することができる。しかし、さらに改善された特徴を有する銅-ニッケル-スズ合金を生成することが望ましい。
簡単な説明
本開示は、強化された特性を備える合金が生成されるように、銅-ニッケル-スズ合金のプロセッシングを改善するためのプロセスに関する。
本開示のこれらおよびその他の非限定的な特徴を、以下に、より詳細に開示する。
下記は、図面の簡単な説明であり、本明細書に開示される例示的な実施形態の例示を目的として提示されるものであって、その限定を目的とするものではない。
図1は、本開示の例示的なプロセスを示すフローチャートである。
図2は、本開示のさらなる例示的なプロセスを示すフローチャートである。
図3は、本開示のさらなる例示的なプロセスを示すフローチャートである。
図4は、1300°Fの焼きなましでの結晶粒組織を、500倍の倍率で示す写真である。
図5は、1350°Fの焼きなましでの結晶粒組織を、500倍の倍率で示す写真である。
図6は、1400°Fの焼きなましでの結晶粒組織を、500倍の倍率で示す写真である。
図7は、1425°Fの焼きなましでの結晶粒組織を、500倍の倍率で示す写真である。
図8は、1450°Fの焼きなましでの結晶粒組織を、500倍の倍率で示す写真である。
図9は、1550°Fの焼きなましでの結晶粒組織を、500倍の倍率で示す写真である。
図10は、表面高さのパラメーター(マイクロインチ)対ストリップ厚(インチ)を示す、棒グラフである。左側のy軸は、0から250まで、25の間隔で目盛りが振られている。x軸は、0.075インチ、0.038インチ、0.015インチ、0.0072インチ、および0.00118インチの厚さに関する。0.00118インチは、従来のプロセスに関するものである。Svパラメーターはダイヤモンド形であり、Spパラメーターは円形であり、Szパラメーターは三角形であり、Sdrパラメーターは正方形である。右側のy軸は、0から0.06まで、0.01の間隔で目盛りが振られており、単位がなく、Sdrのみに関する。
図11は、応力(ksi、線形)対破断サイクル(対数)の線形対数グラフである。y軸は、0から250まで、25の間隔で目盛りが振られている。x軸は、1,000から10,000,000まで目盛りが振られている。
図12は、ヴィッカース硬さ(HV)対焼きなまし温度(°F)のグラフである。y軸は、150から400まで、50の間隔で目盛りが振られている。x軸は、1200°Fから1600°Fまで、50°Fの間隔で目盛りが振られている。
図13は、焼きなましし且つその後に700°Fで3時間エージングした後の、4つの異なる厚さに関する、ヴィッカース硬さ(HV)対焼きなまし温度(°F)のグラフである。y軸は、150から400まで、50の間隔で目盛りが振られている。x軸は、1400°Fから1600°Fまで、25°Fの間隔で目盛りが振られている。
詳細な説明
本明細書に開示される構成要素、プロセス、および装置の、より完全な理解は、添付図面を参照することによって得ることができる。これらの図は、本開示を実証することの都合の良さおよび容易さに基づいた単なる概略図であり、したがって、デバイスもしくはその構成要素の相対的なサイズおよび寸法を示すものではなく、かつ/または例示的な実施形態の範囲を画定するものでも制限するものでもない。
明瞭にするために、特定の用語が以下の記述において使用されるが、これらの用語は、図面で例示するために選択された実施形態の特定の構造のみを指すことが意図され、開示の範囲を画定するものでも制限するものでもない。図面および以下に続く記述において、同様の番号表示は同様の機能の構成要素を指すことを理解されたい。
単数形の「a]、「an」、および「the」は、文脈が他に明示しない限り、複数の指示対象を含む。
本明細書および特許請求の範囲で使用される、「含む(comprise(s))」、「含む(include(s))」、「有する(having)」、「有する(has)」、「できる(can)」、「含有する(contain(s))」という用語、およびこれらの変形例は、本明細書で使用される場合、指名された成分/ステップの存在を必要としかつその他の成分/ステップの存在を可能にする、オープンエンドの移行句、用語、または単語であるものとする。しかし、そのような記述は、列挙された成分/ステップ「からなる」および「から本質的になる」組成物またはプロセスについても記述すると解釈されるべきであり、指名された成分/ステップのみを、それらから得られる可能性のある任意の不可避な不純物と共に存在させることが可能であり、その他の成分/ステップは除外される。
本出願の明細書および特許請求の範囲における数値は、同じ有効桁数にされたとき同じになる数値、ならびに値を決定するために本出願で記述される従来の測定技法の実験誤差未満だけ、記述される値とは異なる数値を含むことが、理解されるべきである。
本明細書に開示された全ての範囲は、列挙された端点を含み、独立して組合せ可能である(例えば、「2グラムから10グラム」という範囲は、端点である2グラムおよび10グラム、ならびに全ての中間値を含む)。
「約(about)」および「およそ(approximately)」という用語は、値の基本機能を変化させることなく変えることができる任意の数値を含むのに使用することができる。ある範囲で使用されるとき、「約」および「およそ」は、2つの端点の絶対値により画定された範囲も開示し、例えば「約2から約4」は、「2から4」の範囲も開示する。一般に、「約」および「およそ」という用語は、指示される数のプラスまたはマイナス10%を指してもよい。しかし温度に関しては、「約」という用語はプラスまたはマイナス50°Fを指す。
元素のパーセンテージは、他に明示されない限り、記述される合金に対する重量パーセントであると仮定すべきである。
本開示は、ある特定のプロセスステップに関する温度を指してもよい。これらは一般に、熱源(例えば、炉)が設定される温度を指し、必ずしも、熱に曝される材料によって実現されなければならない温度を指さないことに留意されたい。
本明細書で使用される「スピノーダル合金」という用語は、その化学組成がスピノーダル分解を受けることが可能であるような、合金を指す。「スピノーダル合金」という用語は、合金の、物理的な状態ではなく化学的な状態を指す。したがって「スピノーダル合金」は、スピノーダル分解を受けていても受けていなくてもよく、スピノーダル分解を受けるプロセスにあってもそうでなくてもよい。
スピノーダルエージング/分解は、多数の構成要素が、異なる化学組成および物理的性質で全く個別の領域または微細構造に分離することができるメカニズムである。特に、状態図の中心領域にバルク組成を持つ結晶は、離溶を受ける。本開示の合金の表面でのスピノーダル分解は、表面硬化をもたらす。
スピノーダル合金構造は、高温で到達する混和性ギャップと呼ばれる、ある特定の温度および組成の下で当初の相が分離されたときに生成される、均質な2相混合物で作製される。合金相は、結晶構造が同じままであるがその構造内の原子が改質され、サイズが同様のままである、他の相へと自発的に分解する。スピノーダル硬化は、ベース金属の降伏強度を増大させ、組成および微細構造の高度な均一性を含む。
本開示で使用することができる、いくつかの銅-ニッケル-スズ合金は、参照によりそれぞれが完全に本明細書に組み込まれる米国特許第9,518,315号および第9,487,850号に記載されているものなど、改善された性質を持つものにすることができる。
特定の実施形態における銅-ニッケル-スズ含有合金は、ニッケル、スズ、およびその残りとして銅を含有し、その他の元素は不可避の不純物と見なされる。ニッケルは、約8重量%から約16重量%の量で存在してよい。より特定の実施形態では、ニッケルは、約14重量%から約16重量%、または約8重量%から約10重量%の量で存在する。スズは、約5重量%から約9重量%の量で存在してよい。より特定の実施形態では、スズは、約7重量%から約9重量%、または約5重量%から約7重量%の量で存在する。合金の残分は銅である。このように銅は、約75重量%から約87重量%、または約75重量%から約79重量%、または約83重量%から約87重量%の量で存在することができる。銅、ニッケル、およびスズの、これらの列挙された量は、任意の組合せで互いに組み合わせてもよい。
一部の特定の実施形態では、銅-ニッケル-スズ含有合金は、約8重量%から約16重量%のニッケル、約5重量%から約9重量%のスズ、およびその残分の銅を含有する。より特定の実施形態では、銅-ニッケル-スズ含有合金は、約14重量%から約16重量%のニッケル、約7重量%から約9重量%のスズ、およびその残分の銅を含有する。他の特定の実施形態では、銅-ニッケル-スズ含有合金は、約8重量%から約10重量%のニッケル、約5重量%から約7重量%のスズ、およびその残分の銅を含有する。本明細書で利用される銅-ニッケル-スズ合金のいくつかは、一般に、約9.0重量%から約15.5重量%のニッケル、および約6.0重量%から約9.0重量%のスズを含み、その残りの分は銅である。より詳細には、本開示の銅-ニッケル-スズ合金は、約9重量%から約15重量%のニッケル、および約6重量%から約9重量%のスズを含み、その残りの分は銅である。より特定の実施形態では、銅-ニッケル-スズ合金は、約14.5重量%から約15.5%のニッケル、および約7.5重量%から約8.5重量%のスズを含み、その残りの分は銅である。
これらの合金は、合金を異なる種類に分ける、様々な性質の組合せを有することができる。より特定すると、「TM04」は、105ksiから125ksiの0.2%オフセット降伏強度、115ksiから135ksiの極限引張強度、および245から345のヴィッカース・ピラミッド数(HV)を一般に有する、銅-ニッケル-スズ合金を指す。TM04合金とみなされるには、合金の降伏強度は、最低でも115ksiでなければならない。「TM06」は、120ksiから145ksiの0.2%オフセット降伏強度、130ksiから150ksiの極限引張強度、および270から370のヴィッカース・ピラミッド数(HV)を一般に有する、銅-ニッケル-スズ合金を指す。TM06合金とみなされるには、合金の降伏強度は、最低でも130ksiでなければならない。「TM12」は、少なくとも175ksiの0.2%オフセット降伏強度、少なくとも180ksiの極限引張強度、および1%の最小破断点伸び%を一般に有する、銅-ニッケル-スズ合金を指す。TM12合金とみなされるには、合金の降伏強度は、最低でも175ksiでなければならない。
一般に、これらの合金は、固体の銅、ニッケル、およびスズの、所望の割合での組合せによって形成することができる。適正に割合が定められた銅、ニッケル、およびスズのバッチを調製した後、融解して合金を形成する。あるいは、ニッケルおよびスズの粒子を、融解した銅の浴に添加することができる。融解は、所望の凝固した生成物の構成に一致したサイズの、ガス燃焼、電気誘導、抵抗、またはアーク炉内で実施されてもよい。典型的には、融解温度は少なくとも約2057°F(1125℃)であり、過熱は鋳造プロセスに依存し、150°Fから500°F(65℃から260℃)の範囲にある。不活性雰囲気(例えば、アルゴンおよび/または二酸化/一酸化炭素を含む)、ならびに/あるいは絶縁保護カバー(例えば、バーミキュライト、アルミナ、および/または黒鉛)の使用は、酸化可能な元素が保護されるよう中性または還元条件を維持するのに利用してもよい。
本開示の合金は、電子コネクター、スイッチ、センサー、電磁遮蔽ガスケット、および音声コイルモーター接点など、伝導性バネの適用例で使用することができる。それらは、予熱処理された(ミルハードン)形態または熱処理可能な(時効硬化可能な)形態で提供することができる。さらに、開示される合金はベリリウムを含有せず、したがって、ベリリウムが望ましくない適用例で利用することができる。
図1および図2は、米国特許第9,518,315号に記載されたプロセスを示す。図1は、所望の性質が得られるように、TM04級の銅-ニッケル-スズ合金を加工するためのフローチャートを示す。これらのプロセスは、そのようなTM04級合金に適用されることが、特に企図される。プロセスは、合金100を第1に冷間加工することによって開始される。
冷間加工は、塑性変形によって金属の形状またはサイズを機械的に変化させるプロセスである。これは、金属または合金の圧延、延伸、プレス、スピニング、押出し、または圧造によって行うことができる。金属が塑性変形した場合、原子の転位が材料中に生じる。特に、転位は金属の結晶粒の端から端までまたは内部で生ずる。転位は、互いに重なり合い、材料中の転位密度は増大する。重なり合う転位の増大は、さらなる転位の移動をより難しくする。これは、合金の延性および衝撃特性を一般に低減させながら、得られる合金の硬さおよび引張強度を増大させる。冷間加工は、合金の表面仕上げも改善する。機械的な冷間加工は、一般に、合金の再結晶点よりも低い温度で行われ、通常は室温で行われる。冷間加工のパーセンテージ(%CW)、または変形度は、下式:
%CW=100×[A-A]/A
(式中、Aは、冷間加工前の初期または当初の断面積であり、Aは、冷間加工後の最終断面積である)
に従い、冷間前後での合金の断面積の変化を測定することによって、決定することができる。断面積の変化は通常、合金の厚さの変化のみに起因し、したがって%CWは、初期および最終厚さを使用して計算できることにも留意されたい。
実施形態では、初期冷間加工100は、得られる合金が約5%から約15%の範囲の%CWを有するように行われる。より詳細には、この第1のステップの%CWは、約10%とすることができる。
次に、合金は熱処理200を受ける。金属または合金の熱処理は、生成物の形状を変化させることなく金属の物理的および機械的性質を変化させるために金属を加熱し冷却する、制御されたプロセスである。熱処理は、材料の強度の増大に関連付けられるが、冷間加工操作後に機械加工を改善し、形成可能性を改善し、または延性を回復するなど、ある特定の製造可能性目的を変化させるのに使用することもできる。初期熱処理ステップ200は、初期冷間加工ステップ100の後に、合金に対して行われる。合金は、伝統的な炉またはその他類似のアセンブリ内に配置され、次いで約450°Fから約550°Fの範囲の高温に約3時間から約5時間にわたり曝される。より特定の実施形態では、合金は、約525°Fの高温に、約4時間にわたり曝される。これらの温度は、合金が曝されまたは炉が設定される雰囲気の温度を指すのであり、合金自体は必ずしもこれらの温度に到達する必要がないことに留意されたい。
熱処理ステップ200後、得られた合金材料は、第2の冷間加工または艶出しステップ300を受ける。より詳細には、合金は、再び機械的に冷間加工されて、約4%から約12%の範囲の%CWを得る。より詳細には、この第1のステップの%CWは、約8%とすることができる。%CWを決定するのに使用される「初期」断面積または厚さは、熱処理後でありこの第2の冷間加工が開始される前に測定されることに留意されたい。言い換えれば、この第2の%CWを決定するのに使用される初期断面積/厚さは、第1の冷間加工ステップ100の前の当初の面積/厚さではない。
次いで合金は、第2の冷間加工ステップ300の後、所望の形成可能性性質が実現されるよう、熱応力緩和処理を受ける400。実施形態では、合金は、約700°Fから約850°Fの範囲の高温に、約3分から約12分間にわたり曝される。より詳細には、高温が約750°Fであり、期間が約11分である。やはりこれらの温度は、合金が曝されまたは炉が設定される、雰囲気の温度を指すのであり、合金自体は必ずしもこれらの温度に達する必要はない。
上述のプロセスを受けた後、TM04銅-ニッケル-スズ合金は、横断方向で1よりも低い形成可能性比を、長手軸方向で1よりも低い形成可能性比を示すことになる。形成可能性比は、通常、R/t比により測定される。これは、破損することなく厚さ(t)のストリップの90°の曲がりを形成するのに必要な最小内側曲率半径(R)を指定し、即ち、形成可能性比はR/tに等しい。良好な形成可能性を持つ材料は、低い形成可能性比(即ち、低R/t)を有する。形成可能性比は、90°Vブロック試験を使用して測定することができ、所与の曲率半径を持つパンチを使用して試験片を90°ダイ内に押し遣り、次いで曲がりの外側半径を、亀裂に関して検査する。さらに、合金は、少なくとも115ksiの0.2%オフセット降伏強度を有することになる。
長手軸方向および横断方向は、金属材料のロールに関して定めることができる。ストリップが巻き解かれた場合、長手軸方向は、ストリップが巻き解かれた方向に該当し、または言い換えれば、ストリップの長さに沿う。横断方向はストリップの幅に該当し、またはストリップがその周りから巻き解かれた軸に該当する。
図2は、所望の性質が得られるように、TM06級の銅-ニッケル-スズ合金を加工するためのフローチャートを示す。これらのプロセスは、そのようなTM06級の合金に適用されることが、特に企図される。プロセスは、合金を第1に冷間加工すること100’によって開始される。この実施形態では、初期冷間加工ステップ100’は、得られる合金が約5%から約15%の範囲の%CWを有するように行われる。より詳細には、%CWが約10%である。
次いで次に、合金は熱処理を受ける400’。これは、400’でTM04合金に適用された熱応力緩和ステップに類似している。実施形態では、合金は、約775°Fから約950°Fの範囲の高温に、約3分から約12分にわたり曝される。より詳細には、高温が約850°Fである。
TM04級の焼き戻し合金に関する金属プロセスと比較すると、得られるTM06合金材料は、熱処理ステップ(即ち、図1中の200)も第2の冷間加工プロセス/艶出しステップ(即ち、図1中の300)も受けない。
上述のプロセスを受けた後、TM06銅-ニッケル-スズ合金は、横断方向で2よりも低い形成可能性比を、長手軸方向で2.5よりも低い形成可能性比を示すことになる。より特定の実施形態では、TM06銅-ニッケル-スズ合金は、横断方向で1.5よりも低い形成可能性比を、長手軸方向で2よりも低い形成可能性比を示すことになる。さらに、銅-ニッケル-スズ合金は、少なくとも130ksiの降伏強度を、より望ましくは少なくとも135ksiの降伏強度を有することになる。
横断方向で2よりも低い形成可能性比、および長手軸方向で2.5よりも低い形成可能性比は、20%から35%の%CWで得ることができる。横断方向で1.5よりも低い形成可能性比、および長手軸方向で2よりも低い形成可能性比は、25%から30%の%CWで得ることができる。
本明細書に開示されるプロセスで、冷間加工と熱処理との間で均衡に到達する。冷間加工および熱処理から得られる、強度の量と形成可能性比との間には、理想的な均衡がある。
図3は、米国特許第9,487,850号に記載されたプロセスを示す。図3は、TM12合金を得るためのステップを概説するフローチャートである。金属加工プロセスは、合金を第1に冷間加工すること500によって開始する。次いで合金は、熱処理を受ける600。
初期冷間加工ステップ500は、得られる合金が50%~75%の範囲の冷間加工での塑性変形を有するように、合金に対して行われる。より詳細には、最初のステップにより実現される冷間加工%は、約65%とすることができる。
次いで合金は、熱処理ステップ600を受ける。金属または合金の熱処理は、生成物の形状を変化させることなく、金属の物理的および機械的性質を変化させるように金属を加熱し冷却する、制御されたプロセスである。熱処理は、材料の強度の増大に関連付けられるが、冷間加工操作後に機械加工を改善し、形成可能性を改善し、または延性を回復させるなど、ある特定の製造可能性目的を変化させるのに使用することもできる。熱処理ステップ600は、冷間加工ステップ500後に合金に対して行われる。合金を、伝統的な炉またはその他類似のアセンブリ内に置き、次いで約740°Fから約850°Fの範囲の高温に、約3分から約14分にわたって曝す。これらの温度は、合金が曝されまたは炉が設定される雰囲気の温度を指し;合金自体は必ずしもこれらの温度に達する必要がないことに留意されたい。この熱処理は、例えば、ストリップ形態の合金をコンベア炉装置上に置き、合金ストリップを、約5ft/分の速度でコンベア炉内を走らせることによって、行うことができる。より特定の実施形態では、温度が約740°Fから約800°Fである。
このプロセスは、少なくとも175ksiである、超高強度の銅-ニッケル-スズ合金の降伏強度のレベルを実現することができる。このプロセスは約175ksiから190ksiの範囲の降伏強度を有する合金を生成することが、一貫して明らかにされてきた。より詳細には、このプロセスは、得られる降伏強度(0.2%オフセット)が約178ksiから185ksiである合金をプロセッシングすることができる。
冷間加工と熱処理との間で均衡が達せられる。冷間加工から得られた強度の量の間には、理想的な均衡があり、過度な冷間加工は、この合金の形成可能特性に悪影響を及ぼす可能性がある。同様に、過度な強度増加が熱処理から誘導された場合、形成可能特性は悪影響を受ける可能性がある。TM12合金で得られる特性は、少なくとも175ksiの降伏強度を含む。この強度特性は、他の公知の類似の銅-ニッケル-スズ合金の強度の特徴を凌ぐ。
銅-ニッケル-スズ合金は、ストリップが形成されるようにプロセッシングすることができる。ストリップは、当技術分野では、2辺が真っ直ぐでありかつ最大4.8ミリメートル(mm)の均一な厚さを有する、ほぼ長方形の断面の、平面状の生成物と認識される。これは一般に、投入物を圧延してその厚さをストリップの厚さに低減させることにより、行われる。合金は、プレート形態にプロセッシングすることもできると考えられる。プレートは、当技術分野では、2辺が真っ直ぐでありかつ4.8ミリメートル(mm)よりも大きい均一な厚さを有しかつ最大厚さが約210mmである、ほぼ長方形の断面の、平面状の生成物と認識される。
非常に一般的には、(1)合金を、鋳造してビレットを形成し;(2)ビレットを均質化し;(3)ビレットをクロッピングして投入物を得;そして(4)次いで投入物を圧延して、所望の厚さのストリップを得る。
合金の結晶粒組織は、疲労寿命に影響を及ぼすことになる。当技術分野では、より低い焼きなまし温度は、小さく一貫性のある結晶粒組織を創り出すことが公知である。一方、より高い焼きなまし温度は、エージング熱処理後に、強化相を溶解しかつ強度を最大限にするのに必要とされる。本開示のプロセスは、結晶粒組織と特性仕様との最適化された組合せを得るために、機械的変形と熱処理とを交互に配したものを使用する。
一般に、本発明のプロセスは、投入物の形態(長方形、円形などにすることができる)の銅-ニッケル-スズ合金で開始する。投入物を、少なくとも第1の冷間圧延、第1のアニーリング、第2の冷間圧延、第2のアニーリング、第3の冷間圧延、第3のアニーリング、および最終冷間圧延に供する。
一部の実施形態では、第4の冷間圧延および第4のアニーリングが、第3のアニーリングと最終冷間圧延との間で行われることが企図される。第1の冷間圧延の前に、投入物を熱間圧延および初期アニーリングに供してもよいことも企図される。
冷間圧延ステップの全ては、低温圧延、延伸レベリング、または延伸曲げレベリングによって行うことができる。この場合も、冷間圧延は、投入物の厚さを低減させ、一般に、合金の再結晶点よりも低い温度(通常は、室温)で行われる。
第1の冷間圧延ステップは、約10%から約80%の厚さの低減を実現するために行われる。第2、第3、および第4の冷間圧延ステップは、約40%から約60%の厚さの低減を実現するために行われる。
低温圧延では、投入物をロール間に通して、投入物の厚さの低減を得る。延伸レベリングでは、加工物を、その降伏点を超えて延伸して、応力を均等化する。これは例えば、1対の進入および出口フレームを使用して行うことができる。各フレームは、加工物をその幅の端から端までを把持し、2つのフレームは互いに押し拡げられる。これは加工物の降伏強度を超え、投入物は引き続き移動方向に延伸される。延伸曲げレベリングでは、加工物は、降伏点を過ぎて加工物の外面および内面を延伸するのに十分な直径のロール上で、徐々に上下に曲げられて、応力を均等化させる。
様々な焼きなましステップを異なる温度で行う。初期焼きなましは、約1525°Fから約1575°Fの温度で行ってよい。第1の焼きなましは、約1400°Fから約1450°Fの温度で行ってよい。第2の焼きなましは、約1400°Fから約1450°Fの温度で行ってよい。第3の焼きなましは、約1375°Fから約1425°Fの温度で行ってよい。第4の焼きなましは、約1375°Fから約1425°Fの温度で行ってよい。冷間圧延後に行われる焼きなましステップは、1500°Fまたはそれよりも低い温度で行われる。
上述のように、熱間加工を、冷間圧延および焼きなましステップの前に、投入物に対して行ってもよい。熱間加工は、一般に合金の再結晶温度よりも高い温度で、合金をロール、ダイに通し、または鍛造して合金の断面を縮小させ、かつ所望の形状および寸法にする、金属形成プロセスである。これは一般に、機械的性質の方向性を低減させ、新しい等軸微細構造を生成する。行われる熱間加工の程度は、厚さの低減%を単位として示される。熱間加工は、約40%から約60%の厚さの低減が実現されるように行ってもよい。
一般に、本開示のプロセスは、圧延プロセスにおける中間点でのより頻繁な焼きなましを含む。さらに、焼きなまし温度は標準の焼きなましよりも低い。従来のプロセスでは、投入物を圧延してその厚さを約85%低減させ、次いで焼きなましする。より頻繁な焼きなましおよびより小さい厚さの低減が、結晶粒組織を再結晶させるのに、したがって後でおこなわれる圧延での表面の引裂きを低減させるのに、期待される。
得られる合金は、特定の実施形態において、250から約470を含めた、250またはそれよりも大きいヴィッカース硬さ(HV)を有する。合金/ストリップは、65ksiの最大応力で、400,000サイクルよりも長い疲労寿命を有することができる(長手軸方向で試験をした)。ストリップは、ISO 25178に従って測定したときに、0.0072オングストロームの厚さで、75マイクロインチまたはそれよりも少ないSzを有してよい。ストリップは、ISO 25178に従って測定したときに、0.0072オングストロームの厚さで、45マイクロインチまたはそれよりも少ないSvを有してよい。ストリップは、ISO 25178に従って測定したときに、0.0072オングストロームの厚さで、0.01またはそれよりも少ないSdrを有してよい。これらの性質の組合せも企図される。
以下の実施例は、本開示の合金、プロセス、物品、および性質を示すために提供する。実施例は単なる例示であり、本開示を、そこに記述される材料、状態、およびプロセスパラメーターのいずれにも限定するものではない。
最初に、厚さ0.075インチのCu-Ni15-Sn8合金のストリップを、様々な温度(1300°F、1350°F、1400°F、1425°F、1450°F、および1550°F)で焼きなましした。図4~9は、これらの温度で焼きなましした後のストリップの結晶粒組織を示す写真である。
次に、下記の2つのプロセスの比較を行う:
Figure 0007222899000001
図10は、ISO 25178による、表面高さのパラメーターの変化を示すグラフである。実施例のプロセスを、0.00118インチの厚さの比較例のプロセスに関する履歴データ(最も右の欄)と比較した。4つのパラメーター(Sv、Sp、Sz、およびSdr)を、異なる厚さでグラフにする。各パラメーターについて、より低い値は、尖端または穴がより少ない、より滑らかな表面を示す。Sp(最大ピーク高さ)パラメーターは、ストリップがプロセッシングされるときに本質的に一定であり、表面の改善がその表面の窪みの低減によることを意味する。これらの不整合性の全ては、より短い疲労寿命を引き起こす可能性がある。0.0072インチでのSz値は、履歴データの0.00118インチの厚さよりも良好であり、本開示のプロセスによるストリップの滑らかさを示す(即ち、ほぼ6倍の厚さで、より良好な滑らかさを得ることができる)。
疲労試験を図11に示す。TM16は、比較例のプロセスであり、それに対してTM19は、実施例のプロセスを示す。TM19合金は、0.2%オフセット降伏強度を有する。
最後に、実施例のプロセスのストリップの試料を、各焼きなましステップ後に得、次いでエージングさせて、その「熱処理応答」をチェックした。これは強化相が、焼きなましプロセス中にどのようにうまく溶解したかを示す。溶解した強化相が多いほど(焼きなまし温度が高いほど)、エージング後の材料の強度および延性は高くなる。図12は、所望の結果同士の矛盾を示す。焼きなまし温度が低いほど、結晶粒組織はより微細にかつ一貫性のあるものになる;しかし、より良好な硬さは、より高い焼きなまし温度でのエージング後に達せられる。
図13は、実験室での焼きなましと生産時の焼きなましとの、別の比較を示す。硬さを、700°Fで3時間エージングした後に測定する。このグラフにおいて、エージング後の硬さは、実験室での焼きなまし(円形)と生産時の焼きなまし(0.015インチの厚さがダイヤモンド形、0.038インチの厚さが三角形、0.078インチの厚さが正方形)とで異なる。これらの差は、生産時において、ストリップが焼きなましサイクルのための設定点温度におそらく到達せず、または焼きなまし温度からの焼入れが遅延したことを示す。
本開示について、例示的な実施形態を参照しながら記述してきた。修正例および変更例は、先の詳細な記述を読みかつ理解することによって他者に想到するであろう。本開示は、添付される特許請求の範囲またはそれらの均等物の範囲内にある限り、そのような修正例および変形例の全てを含むと解釈されるものとする。
本発明の具体的態様は以下のとおりである。
[態様1]
銅-ニッケル-スズ合金のストリップまたはプレートを調製するための方法であって、
前記銅-ニッケル-スズ合金で作製された投入物の第1の冷間圧延と、
前記投入物の第1の焼きなましと、
前記投入物の第2の冷間圧延と、
前記投入物の第2の焼きなましと、
前記投入物の第3の冷間圧延と、
前記投入物の第3の焼きなましと、
前記ストリップまたはプレートを得るための前記投入物の最終の冷間圧延と
を含む方法。
[態様2]
前記得られたストリップまたはプレートが、ISO 25178に従って測定したときに、65ksiの最大応力で400,000サイクルよりも長い疲労寿命を有し、0.0072オングストロームの厚さで75マイクロインチまたはそれよりも小さいSzを有する、態様1に記載の方法。
[態様3]
前記得られたストリップもしくはプレートが、ISO 25178に従って測定したときに、0.0072オングストロームの厚さで45マイクロインチもしくはそれよりも小さいSvを有し、または前記得られたストリップもしくはプレートが、ISO 25178に従って測定したときに、0.0072オングストロームの厚さで0.01もしくはそれよりも小さいSdrを有する、態様1に記載の方法。
[態様4]
前記第1の冷間圧延が、約10%から約80%の厚さ低減を実現するために行われる、態様1に記載の方法。
[態様5]
前記第1の焼きなましが、約1400°Fから約1450°Fの温度で行われる、態様1に記載の方法。
[態様6]
前記第2の冷間圧延、前記第3の冷間圧延、または前記最終の冷間圧延が、約40%から約60%の厚さ低減を実現するために行われる、態様1に記載の方法。
[態様7]
前記第2の焼きなましが、約1400°Fから約1450°Fの温度で行われる、態様1に記載の方法。
[態様8]
前記第3の焼きなましが、約1375°Fから約1425°Fの温度で行われる、態様1に記載の方法。
[態様9]
前記第3の焼きなましの後であって前記最終の冷間圧延の前に行われる、前記投入物の第4の冷間圧延および前記投入物の第4の焼きなましをさらに含む、態様1に記載の方法。
[態様10]
前記第4の冷間圧延が、約40%から約60%の厚さ低減を実現するために行われる、態様9に記載の方法。
[態様11]
前記第4の焼きなましが、約1375°Fから約1425°Fの温度で行われる、態様9に記載の方法。
[態様12]
前記投入物の熱間圧延と、
前記熱間圧延の後の、前記投入物の初期焼きなましと
をさらに含み、前記熱間圧延および前記初期焼きなましが、前記第1の冷間圧延の前に行われる、態様1に記載の方法。
[態様13]
熱間加工が、約40%から約60%の厚さ低減を実現するために行われる、態様12に記載の方法。
[態様14]
前記初期焼きなましが、約1525°Fから約1575°Fの温度で行われる、態様12に記載の方法。
[態様15]
態様1に記載の方法によって生成される、ストリップまたはプレート。
[態様16]
約100MPaから約1500MPaの0.2%オフセット降伏強度を有し、または約400MPaから約1550MPaの極限引張強度を有する、態様15に記載のストリップまたはプレート。
[態様17]
約90から約470のヴィッカース硬さ(HV)を有する、態様15に記載のストリップまたはプレート。
[態様18]
ISO 25178に従って測定したときに、0.0072オングストロームの厚さで75マイクロインチもしくはそれよりも小さいSzを有し、または
ISO 25178に従って測定したときに、0.0072オングストロームの厚さで45マイクロインチもしくはそれよりも小さいSvを有し、または
ISO 25178に従って測定したときに、0.0072オングストロームの厚さで0.01もしくはそれよりも小さいSdrを有する、
態様15に記載のストリップまたはプレート。
[態様19]
態様15に記載のストリップまたはプレートから作製されたまたはそれを含む物品。
[態様20]
物品が形成されるように前記ストリップまたはプレートを成形することを含む、態様15に記載のストリップまたはプレートを使用する方法。

Claims (7)

  1. 銅-ニッケル-スズ合金のストリップまたはプレートを調製するための方法であって、
    10%から80%の厚さ低減を実現するために行われる、前記銅-ニッケル-スズ合金で作製された投入物の第1の冷間圧延と、
    760℃から788℃(1400°Fから1450°F)の温度で行われる、前記投入物の第1の焼きなましと、
    40%から60%の厚さ低減を実現するために行われる、前記投入物の第2の冷間圧延と、
    760℃から788℃(1400°Fから1450°F)の温度で行われる、前記投入物の第2の焼きなましと、
    40%から60%の厚さ低減を実現するために行われる、前記投入物の第3の冷間圧延と、
    746℃から774℃(1375°Fから1425°F)の温度で行われる、前記投入物の第3の焼きなましと、
    前記ストリップまたはプレートを得るための前記投入物の最終の冷間圧延と
    を含む方法。
  2. 前記第3の焼きなましの後であって前記最終の冷間圧延の前に行われる、前記投入物の第4の冷間圧延および前記投入物の第4の焼きなましをさらに含む、請求項1に記載の方法。
  3. 前記第4の冷間圧延が、40%から60%の厚さ低減を実現するために行われる、請求項に記載の方法。
  4. 前記第4の焼きなましが、746℃から774℃(1375°Fから1425°F)の温度で行われる、請求項に記載の方法。
  5. 前記投入物の熱間圧延と、
    前記熱間圧延の後の、前記投入物の初期焼きなましと
    をさらに含み、前記熱間圧延および前記初期焼きなましが、前記第1の冷間圧延の前に行われる、請求項1に記載の方法。
  6. 熱間加工が、40%から60%の厚さ低減を実現するために行われる、請求項に記載の方法。
  7. 前記初期焼きなましが、829℃から857℃(1525°Fから1575°F)の温度で行われる、請求項に記載の方法。
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