JP7222409B2 - 焼結磁石および焼結磁石の製造方法 - Google Patents

焼結磁石および焼結磁石の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、ハードフェライトを含む焼結磁石、および、当該焼結磁石を製造する方法に関する。
ハードフェライトを含む焼結磁石は、永久磁石として様々な分野で利用されている。この焼結磁石は、たとえば、特許文献1で開示している方法で製造することができる。具体的に、特許文献1では、フェライト粉末と樹脂とを含む複合材(フィードストック)を用いて成形体を製造し、この成形体を脱脂工程後に焼成することで、焼結磁石を得ている。
上記のような製造方法において、樹脂は、原材料に流動性を付与し成形性を確保するために用いられており、成形後の脱脂工程で熱分解により除去される。ただし、樹脂が除去される際に、成形体の内部にワレやクラックなどの構造欠陥が生じることがあり、この構造欠陥により焼結体の密度や強度が低下することがある。特に、焼結体の厚みが厚い場合や、成形性を向上させるために樹脂の含有量を増やした場合には、焼結体の密度や強度がより低下しやすくなる。
特開2012-216674号公報
本発明は、上記の実情を鑑みてなされ、その目的は、十分な密度と高い抗折強度を有する焼結磁石、および、当該焼結磁石を製造する方法を提供することである。
上記の目的を達成するために、本発明に係る焼結磁石は、
ハードフェライトを含む焼結磁石であって、
Cu、V、Ti、Agから選択される1種以上の特定元素を含み、
前記焼結磁石に含まれる前記特定元素の含有率が、200質量ppm以上、2500質量ppm以下である。
本発明の焼結磁石では、上記の特徴を有することで、クラックなどの構造欠陥の発生を抑制でき、十分な密度と高い抗折強度とが得られる。
好ましくは、本発明の焼結磁石には、前記ハードフェライトからなる主相粒子と、前記主相粒子の間に存在する粒界相とが含まれ、前記添加元素が前記粒界相に存在する。
また、好ましくは、前記添加元素が、前記主相粒子には固溶していない。
本発明に係る焼結磁石の製造方法は、
仮焼きしたハードフェライトの原料粉末を準備する工程と、
前記原料粉末と、樹脂と、所定の添加物とを混練して複合材を得る工程と、
前記複合材を用いて成形体を得る工程と、
前記成形体を脱脂処理後に焼成する工程と、を有し、
所定の前記添加物が、Co,Mn,Cu,V,Ti,Agから選択される1種以上の特定元素を含み、
前記樹脂100質量部に対する前記特定元素の添加量が、0.19質量部以上、2.90質量部以下である。
本発明の製造方法では、上記の特徴を有することで、製造過程でクラックなどの構造欠陥が生じることを抑制でき、十分な密度と高い抗折強度を有する焼結磁石が得られる。
好ましくは、前記添加物の様態が、金属粉末、酸化物、窒化物、有機金属塩、または、錯体のいずれかである。
図1は、本発明の一実施形態に係る焼結磁石を示す概略断面図である。 図2は、図1に示す焼結磁石の製造に用いるグリーン成形体を示す概略断面図である。 図3は、焼結磁石の形状の一例を模式的に示す斜視図である。 図4Aは、抗折試験の様子を模式的に示す側面図である。 図4Bは、抗折試験の様子を模式的に示す平面図である。 図5は、本発明に係る実施例の評価結果(欠陥発生数)を示すグラフグラフである。 図6は、本発明に係る実施例の評価結果(寸法密度)を示すグラフである。 図7は、本発明に係る実施例の評価結果(抗折強度)を示すグラフである。 図8は、本発明に係る実施例の評価結果(残留磁束密度Br)を示すグラフである。 図9は、本発明に係る実施例の評価結果(保磁力HcJ)を示すグラフである。
以下、本発明を、図面に示す実施形態に基づき詳細に説明する。
(焼結磁石)
本実施形態の焼結磁石2は、ハードフェライトを主成分として含む永久磁石である。ここで、焼結磁石2の主成分とは、焼結磁石2の単位質量当たり90質量%以上含まれる成分を指し、本実施形態では、焼結磁石2におけるハードフェライトの含有率が95質量%以上であることが好ましい。
焼結磁石2に含まれるハードフェライトは、一度磁界を加えて磁化すると、磁界を取り去っても最初に磁化された向きに磁化ベクトルを保持しようとする性質を有する。ハードフェライトとしては、六方晶型の結晶構造を有するM型(マグネトプランバイト型)フェライト、W型フェライト、X型フェライト、Y型フェライト、Z型フェライトなどが挙げられる。これらの中でも、M型フェライトを焼結磁石2の主成分とすることが好ましく、M型フェライトとしては、M型Srフェライト、M型Caフェライト、La-Co置換M型Srフェライト、La-Co置換M型Caフェライトなどが好適である。
本実施形態の焼結磁石2には、Cu、V、Ti、Agから選択される1種以上の特定元素αが含まれる。上記元素の中でも、特に、Cuが特定元素αとして含まれることが好ましい。焼結磁石2における特定元素αの含有率は、200質量ppm以上、2500ppm以下である。上記含有率の下限値は、300質量ppm以上であることが好ましく、500質量ppm以上であることがより好ましい。また、上記含有率の上限値は、2000質量ppm以下であることが好ましく、1500ppm以下であることがより好ましい。上記の範囲で特定元素αが含まれることで、クラックなどの構造欠陥が抑制され、焼結磁石2の寸法密度および抗折強度が向上する。
上記の特定元素αの含有率は、焼結磁石2の単位質量に対する特定元素αの(合計)含有量を意味する。たとえば、特定元素αとしてCuのみを選択した場合、特定元素αの含有率は、焼結磁石2の単位質量当たりに含まれるCuの含有量で表される。一方、特定元素αとして2種以上の元素を選択した場合には、上述した特定元素αの含有率は、選択した各元素の含有率の和で表され、各元素の含有率の和が、上記の数値範囲を満たせばよい。
なお、上記の特定元素αの含有率は、誘導結合プラズマ発光分析(ICP-OES)、波長分散型蛍光X線定量分析(XRF)、原子吸光光度法(AAS)などにより分析でき、ICP-OESで分析することが好ましい。
図1は、焼結磁石2の断面組織を模式的に示した断面図である。図1に示すように、焼結磁石2には、主相粒子4と、当該主相粒子4の間に存在する粒界相6とを有する。焼結磁石2には、上記の他に、副相粒子や空隙などが含まれ得る。
主相粒子4は、焼結磁石2の主成分であるハードフェライトで構成してある。主相粒子4の平均粒径は、特に限定されず、たとえば、円相当径換算で、1.5μm以下であることが好ましく、0.5μm~1.0μmであることがより好ましい。また、焼結磁石2に副相粒子が含まれる場合は、主相粒子4と副相粒子との合計に対して、主相粒子4が占める割合が、95体積%以上であることが好ましい。なお、主相粒子4を構成するハードフェライトの組成は、ICPやXRFで分析することができ、主相粒子4の存在やその割合は、X線回折や電子線回折などにより確認することができる。
一方、前述した特定元素αは、粒界相6に存在することが好ましく、主相粒子4には固溶していないことがより好ましい。上記の構成を満たすことで、焼結磁石2の磁気特性(残留磁束密度Brや保磁力HcJ)がより良好となる。
なお、焼結磁石2の断面における特定元素αの存在箇所や分布状態は、たとえば、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いた断面観察により分析できる可能性がある。ただし、特定元素αの含有率は、上述したように極微量であるため、存在箇所や分布状態の分析が容易ではない場合がある。その場合は、焼結磁石2の磁気特性に基づいて、代替的に、特定元素αの存在状態を確認することができる。すなわち、焼結磁石2のBrやHcJが高い水準を維持している場合は、特定元素αの偏析や主相粒子4への固溶が発生しておらず、特定元素αが粒界相6に分布しているとみなすことができる。
焼結磁石2には、特定元素αの他に、副成分が含まれていてもよい。副成分としては、Si,Al,Cr,B,Ga,Mg,Ni,Zn,In,Li,Zr,Ge,Sn,Nb,Ta,Sb,As,W,Moなどが挙げられ、焼結磁石2中には、上記の原子そのもの、もしくは、上記の元素を含む化合物(酸化物など)として含まれ得る。上記の副成分は、副相粒子として存在し得る。また、上記の副成分は、主相粒子4に一部固溶していてもよいし、粒界相6に含まれていてもよい。
なお、選択する副成分の種類やその含有量は、主成分であるハードフェライトの種類に応じて適宜決定すればよい。たとえば、焼結磁石2の主成分をLa-Co置換型のM型Caフェライトとする場合は、副成分としてSiが含まれることが好ましく、その他、Al、Cr、Bなどが含まれていてもよい。
この場合、焼結磁石2に含まれるSiの含有率が、SiO換算で、0.35質量%~1.2質量%であることが好ましい。副成分としてSiが含まれることで、La-Co置換M型Caフェライトの焼結性が良好となるとともに、結晶粒径が適度に調整され高いHcJが得られる。また、Alまたは/およびCrを添加する場合は、焼結磁石2に含まれるAlおよびCrの合計含有率が、酸化物(Al、Cr)換算で、0.1質量%~3質量%であることが好ましい。また、Bを添加する場合は、焼結磁石2に含まれるBの含有率が、B換算で0.5質量%以下であることが好ましい。
なお、焼結磁石2には、副成分としてアルカリ金属元素(Na、K、Rbなど)が含まれないことが好ましい。アルカリ金属元素は、焼結磁石2の飽和磁化を低下させやすい傾向があるためである。ただし、アルカリ金属元素は、たとえば、焼結磁石2の原材料中に含まれている場合があり、不可避的に含まれる程度であれば、焼結磁石2に含まれていてもよい。磁気特性に大きく影響しないアルカリ金属元素の含有率は、3質量%以下である。
上述した特徴を有する焼結磁石2は、永久磁石として、様々な分野で利用することができる。なお、焼結磁石2の形状および寸法は、特に限定されず、焼結磁石2の用途に応じて適宜決定すればよい。たとえば、図3に示す焼結磁石2は、主面が円弧状に湾曲したアークセグメント形状を有しており、モータ用の磁石として好適に利用できる。焼結磁石2は、図3に示す形状の他に、たとえば、円板状、板状、円筒状、中空円筒状などの形状を有することができる。
(焼結磁石の製造方法)
次に、焼結磁石2の製造方法の一例について説明する。本実施形態において、焼結磁石2は、フェライト粉末を製造する工程、複合材を製造する工程、成形工程、脱脂工程、および焼成工程を経て製造することができる。以下、各工程について詳述する。
<フェライト粉末の製造>
ハードフェライトの粉末は、原料を所定の割合で混合した後に、その混合物を仮焼きし、粉砕することで得られる。まず、ハードフェライトを構成する元素を含む原料化合物を準備する。原料化合物は、粉末状であることが好ましく、その様態は、酸化物、または、焼成により酸化物となる化合物(窒化物、水酸化物、オキソ酸塩:炭酸塩、硝酸塩、硫酸縁など)とすることができる。また、原料化合物は、ハードフェライトを構成する元素を2種以上含む複合酸化物などの化合物であってもよい。たとえば、La-Co置換型のM型Caフェライトを主成分とする場合は、炭酸ストロンチウム(SrCO)、水酸化ランタン(La(OH))、酸化鉄(Fe)、炭酸カルシウム(CaCO)、および、酸化コバルト(Co)などを準備すればよい。なお、原料化合物粉末の平均粒径は、0.1μm~2.0μmとすることが好ましい。
上記の原料化合物を、所望とするハードフェライトの組成が得られるように、秤量し、混合する。混合では、湿式アトライタやボールミルを用い、0.1~20時間程度、混合、粉砕処理することで、原料混合物を得る。なお、特定元素α以外の副成分を添加する場合は、上記の混合工程で、副成分の原料化合物(元素単体や酸化物など)を主成分の原料化合物と一緒に配合してもよい。また、上記の混合工程では、主成分の原料化合物および副成分の原料化合物を全量混合する必要はなく、一部の原料化合物を後述する仮焼き後に添加してもよい。
次に、混合工程で得られた原料混合物を仮焼処理する。仮焼は、大気雰囲気中などの酸化雰囲気で行うことが好ましく、仮焼の温度は、1100℃~1400℃の温度範囲とすることが好ましく、1100℃~1300℃がより好ましく、1100℃~1250℃がさらに好ましい。また、仮焼の事件は、1秒間~10時間とすることができ、3時間以下とすることが好ましい。上記の条件で原料混合物を仮焼処理することで、フェライトの合成反応が進み、ハードフェライトの主相を含む仮焼体が得られる。
次に、仮焼処理で得られた仮焼体を、所定の粒度になるまで粉砕する。この際、上記の混合工程で配合しなかった一部の原料化合物を添加してもよい。また、粉砕は、粗粉砕と微粉砕の2段階で実施することが好ましい。
粗粉砕は、たとえば、振動ミルを用いて実施し、平均粒径が5.0μm以下となるまで粉砕することが好ましい。微粉砕では、粗粉砕で得られた粗粉砕材を、さらに、湿式アトライタ、ボールミル、ジェットミルなどによって粉砕する。この際、微粉砕材の平均粒径が、好ましくは0.08μm~2.0μm、より好ましくは0.1μm~1.0μm、さらに好ましくは0.2μm~0.8μm程度となるように粉砕の条件を設定する。また、微粉砕材の比表面積(BET法で得られる比表面積)を、7~12m/g程度とすることが好ましい。好適な粉砕時間は、粉砕方法によって異なり、たとえば、湿式アトライタを使用する場合は、30分間~10時間とすることが好ましく、ボールミルによる湿式粉砕では、10~50時間程度とすることが好ましい。
なお、湿式で粉砕する場合は、適宜分散剤を添加してもよく、粉砕処理後に微粉砕材を適宜乾燥させる。乾燥の条件は、特に限定されず、たとえば、乾燥温度を80℃~150℃(好ましくは100℃~120℃)とし、乾燥時間を1時間~40時間(好ましくは5時間~25時間)とすればよい。上記の粉砕工程により、ハードフェライトの主相を含むフェライト粉末40が得られる。
<複合材の製造>
次に、上記で得られたフェライト粉末40を、バインダ、ワックスなどと共に混練し(混練工程)、複合材(フィードストック、ペレット、顆粒などと称する場合もある)を得る。本実施形態では、バインダとワックスとを合わせて樹脂30と称する。
バインダとしては、熱可塑性樹脂などの高分子化合物を用いることができる。より具体的に、バインダとしては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、アタクチックポリプロピレン、アクリルポリマー、ポリスチレン(PS)、ポリアセタール(POM)、ポリアミド、ポリエチレンテレフタラート(PET)などが例示され、これらのうちの1種、または2種以上を混合して用いることができる。上記のなかでも、特に、ポリプロピレンをバインダとして用いることが好ましい。
一方、ワックスは、上記のバインダよりも分子量が少なく、分解温度および軟化点が低い有機成分を意味する。ワックスとしては、カルナバワックス、モンタンワックス、蜜蝋などの天然ワックス、もしくは、パラフィンワックス、ウレタン配合ワックス、ポリエチレングリコール、マイクロクリスタリンワックスなどの合成ワックスが例示され、これらのうちの1種、または2種以上を混合して用いることができる。
混練工程において、バインダの添加量をR1、ワックスの添加量をR2、R1とR2の和である樹脂30の添加量をR、フェライト粉末40の添加量をFとする。そして、F+R=F+R1+R2=100wt%とした場合、樹脂30の添加量Rは、6wt%~20wt%とすることが好ましく、8~12wt%であることがより好ましい。また、バインダの添加量R1は、3~20wt%とすることができ、4~6wt%とすることが好ましい。ワックスの添加量R2についても、3~20wt%とすることができ、4~6wt%とすることが好ましい。
また、混練工程では、Cu、V、Ti、Agから選択される1種以上の特定元素αを含む添加物10を添加する。この添加物10は、粉末状であることが好ましく、その様態は、金属粉末、酸化物粉末(複合酸化物粉末を含む)、窒化物、有機金属塩、金属錯体、その他無機塩とすることができる。有機金属塩としては、酢酸塩、クエン酸塩、ステアリン酸塩、安息香酸塩などが挙げられ、無機塩としては、ハロゲン化物、水酸化物、およびオキソ酸塩(炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩等)などが挙げられる。添加物10の様態は、上記のなかでも、金属粉末、酸化物粉末、窒化物粉末、有機金属塩、金属錯体であることが好ましく、有機金属塩(特にステアリン酸塩)または金属錯体であることがさらに好ましい。
本実施形態では、特定元素αを含む添加物10を、フェライト粉末40の製造時に添加するのではなく、仮焼き後のフェライト粉末40に添加する。すなわち、添加物10をフェライト粉末40と反応させずに、混練工程において、バインダとワックスとからなる樹脂30の中に分散させる。
混練工程における添加物10の添加量は、以下に示すように設定することが好ましい。すなわち、焼成後に得られる焼結磁石2に含まれる添加元素αの含有率が200質量ppm~2500質量ppmの範囲内となるように、添加物10を配合する。具体的に、樹脂100質量部(すなわちR=R1+R2=100質量部)に対する特定元素αの添加量が、0.19質量部~2.90質量部となるように、添加物10を配合する。好ましくは、樹脂100質量部に対する特定元素αの添加量が、0.24質量部~2.50質量部であり、より好ましくはであり0.30質量部~2.0質量部であり、さらに好ましくは0.35質量部~1.65質量部である。
また、フェライト粉末40の添加量Fと、樹脂30の添加量Rとの合計(すなわちF+R1+R2)を100質量部とした場合、当該合計100質量部に対する特定元素αの添加量が、0.018質量部~0.235質量部であることが好ましく、0.026質量部~0.220質量部であることがより好ましく、0.035質量部~0.180質量部であることがさらに好ましい。
加えて、添加物10の平均粒径は、0.01μm~5.0μmとすることが好ましい。
混練工程では、上述した添加物10および樹脂30の他に、滑剤、可塑剤、分散剤、昇華性化合物などを添加してもよい。滑剤の種類や添加量は、特に限定されず、たとえば、脂肪酸エステルを用いることができ、滑剤の添加量をフェライト粉末100質量部に対して0.1~5質量部とすることができる。可塑剤の種類や添加量も、特に限定されず、たとえば、フタル酸エステルを用いることができ、可塑剤の添加量をバインダ100質量部に対して0.1~5質量部とすることができる。分散剤を添加する場合は、同一分子内に親水性基と疎水性基を有するシランカップリング剤などを用いることができ、この分散剤は、混練工程で添加してもよいし、フェライト粉末40の製造時における湿式粉砕工程(微粉砕)で添加してもよい。
混練工程では、ロールミル、攪拌羽根を有するニーダ、二軸押出機などの各種混練機を用いて、上述した原料(フェライト粉末40、樹脂30、添加物10など)を加熱しながらよく混ぜ練り合わせる。使用する混練機としては、二軸押出機を用いることが好ましい。
二軸押出機では、ヒータが設置された混練室内に、特殊な形状を有する2本のスクリュが取り付けてあり、この2本のスクリュが噛み合いながら回転することで、投入した材料を混練する。二軸押出機では、スクリュ間において強い剪断力および攪拌力が発生し、フェライト粉末40および添加物10を樹脂30の内部により均一に分散させることができる。また、二軸押出機では、押出口から排出される混練物を適宜カットすることで、ペレット状の複合材を得ることができ、1機の二軸押出機で混練と造粒とを実施することができる。
一方、ロールミルやニーダで混練を行う場合は、得られた混練物をペレタイザなどで切断(造粒)し、ペレット状や不定形状の複合材を得る。なお、ロールミルやニーダで混練した後に、混練物を二軸押出機に投入し、ペレット状に造粒してもよい。また、混練工程では、混練機に原料を投入する前に、V型混合機やヘンシェルミキサなどの各種混合機を用いて、フェライト粉末40と、樹脂30と、添加物10とを混合してもよい。
上記の混練工程により、樹脂30の内部にフェライト粉末40と添加物10とを分散させた複合材が得られる。
<成形工程>
次に、上記の複合材を用いて、図2に示すようなグリーン成形体20を得る。図2は、グリーン成形体20の概略断面図であって、グリーン成形体20は、樹脂30の内部でフェライト粉末40と添加物10とが分散した構造を有する。本実施形態において、成形は、射出成形(CIM:Ceramic Injection Molding)で実施することが好ましい。
射出成形では、まず、上記の複合材を装置内の押出部に投入し、この押出部内で複合材を加熱することで複合材中の樹脂30を溶融させる。この際の加熱温度は、バインダの種類によって適宜決定すればよく、たとえば、ポリプロピレンをバインダとする場合は、加熱温度を160℃~230℃とすればよい。
そして、押出部に搭載してあるスクリュやその他加圧機により、溶融した複合材を金型の内部に射出する。この際に使用する金型には、目的形状に対応したキャビティが形成してあり、成形過程では、金型を加熱するとともに、金型に対して磁場が印加される。金型の温度は、バインダなどの種類に応じて適宜決定すればよく、たとえば、20~80℃とすることができる。金型への印加磁場は、フェライト粉末40の種類に応じて適宜決定すればよく、たとえば、398~1592kA/m(約0.5T~2.0T)程度とすることができる。
上記の射出成形により、グリーン成形体20が得られる。
ここで、射出成形の特徴について説明しておく。フェライトを含む焼結磁石の製造では、射出成形の他に乾式成形や湿式成形が採用される場合があるが、射出成形では、これら他の成形法に比べて以下に示すようなメリットがある。まず、射出成形では、フェライト粉末40に流動性を付与した状態で成形することができ、他の成形法に比べて形状自由度が高く、得られるグリーン成形体20の密度をより均一にすることができる。また、成形時の流動性に起因して、射出成形では、主相粒子4の配向性をより高めることができる。さらに、射出成形では、得られるグリーン成形体20の強度が高く、他の成形法では製造が困難な薄型(3mm以下)の焼結磁石の製造にも適用できる。
一方、射出成形では、グリーン成形体に含まれる有機成分の割合が多いため、後述する脱脂工程(脱ワックス処理および脱バインダ処理)が必要となる。脱脂工程では、熱分解により樹脂を除去するが、樹脂が除去される過程でグリーン成形体の内部に構造欠陥が生じることがある。また、樹脂が除去しきれずに焼結磁石中に樹脂由来の炭素が残留することもある。このように構造欠陥や残留炭素が生じると、焼結磁石の密度低下や強度低下を引き起こす恐れがある。
上記の問題への対応策としては、脱脂工程における温度勾配を緩やかにすること(すなわち昇温速度を遅くする)が考えられる。ただし、当該対策では、脱脂工程に長時間を要することとなり、エネルギーコストなどの製造コストが嵩むこととなる。本実施形態では、添加元素αを含む添加物10を樹脂30中に分散させることで、添加元素αが樹脂30の熱分解における触媒として作用する。すなわち、添加元素αが樹脂30の熱分解を効率的に促進し、上述した構造欠陥や残留炭素の発生を抑制できる。特定元素αの触媒作用については、脱脂工程の説明で詳述する。
<脱脂工程>
脱脂工程では、成形工程で得られたグリーン成形体20を熱処理して、グリーン成形体20に含まれる樹脂30を除去する。脱脂の雰囲気は、大気中または窒素中とすることができ、好ましくは大気雰囲気である。脱脂の最高到達温度は、100℃~600℃とすることができ、好ましくは200℃~350℃である。最高到達温度までの昇温速度は、0.01~1℃/分とすることが好ましく、0.1~1℃/分とすることがより好ましい。また、熱処理の合計時間は、5時間~120時間とすることができ、好ましくは10時間~40時間である。さらに、上記の熱処理を行う際の炉内には、空気や窒素などの雰囲気ガスを送風することが好ましく、その風速は、0.5~5.0m/sとすることが好ましい。
この脱脂工程では、以下に示すような機構で樹脂30の熱分解が起こる。バインダなどの高分子には、ポリオレフィン(RH)が含まれるが、このポリオレフィンに熱が加わるとアルキルラジカル(R・)を生成する。このアルキルラジカルは、酸素共存下で酸素と反応して、ペルオキシラジカル(ROO・)を生成する。さらに、このペルオキシラジカルは、高分子中に含まれる他のポリオレフィンRHから水素を引き抜くことでアルキルラジカルR・を生成させる(すなわちROO・が高分子のポリマー鎖を攻撃する)。この際、ペルオキシラジカル自体は、水素と結びつくことで過酸化物であるハイドロペルオキサイド(ROOH)となる。通常の脱脂工程では、上記の反応が繰り返されることで高分子(樹脂30)の熱分解(酸化劣化)が進行する。
ただし、上記の反応で生成するハイドロペルオキサイドは、比較的に分解され難く、高分子の熱分解が十分に進行しない要因となり得る。高分子が十分に分解されずに長鎖のまま除去されると、構造欠陥の要因となる。
本実施形態では、フェライト粉末40と反応していない特定元素αが、樹脂30中に分散しており、この特定元素αがハイドロペルオキサイドを分解する際の触媒として作用する。具体的に、特定元素αがハイドロペルオキサイドの分解を促し、ハイドロペルオキサイドが分解されることで、アルコキシラジカル(RO・)やペルオキシラジカル(ROO・)が生成する。この際に生成したラジカル(RO・、ROO・)が、高分子のポリマー鎖を攻撃し、高分子の熱分解が連鎖的に進行することとなる。すなわち、特定元素αが存在することにより、上記の連鎖反応が効率的に進行し、高分子が短鎖となって除去されることとなる。その結果、グリーン成形体20や焼結磁石2における構造欠陥を抑制できる。
<焼成工程>
次に、脱脂処理したグリーン成形体20を焼成する。焼成の条件としては、雰囲気を大気中とすることが好ましく、保持温度を1050℃~1270℃とすることが好ましく(より好ましくは1160℃~1230℃)、保持時間を0.5時間~3時間とすることが好ましい(より好ましくは0.2時間~3時間)。なお、焼成は、前述した脱脂工程から連続して実施してもよく、脱脂工程後に室温まで冷却してから焼成を実施してもよい。
以上の工程により、本実施形態に係る焼結磁石2が得られる。
(実施形態のまとめ)
本実施形態の焼結磁石2は、主成分としてハードフェライトを含むとともに、Cu、V、Ti、Agから選択される1種以上の特定元素αを含む。この特定元素αは、微量添加されており、焼結磁石2に含まれる特定元素αの含有率が、200質量ppm以上、2500質量ppm以下である。
上記のとおり、特定元素αが所定の含有率で含まれることで、クラックなどの構造欠陥を抑制することができ、十分な密度と高い抗折強度とが得られる。なお、特定元素αのなかでも、Cu>V>Ti>Agの順で上記の効果がより高まる傾向となる。
また、本実施形態の焼結磁石2では、特定元素αが粒界相6に存在しており、主相粒子4には固溶していない。当該条件を満たすことで、高い磁気特性(BrおよびHcJ)が得られる。
本実施形態の焼結磁石2の製造方法は、ハードフェライトで構成されるフェライト粉末40を準備する工程と、フェライト粉末40と、樹脂30(バインダおよびワックス)と、特定元素αを含む添加物10とを混練して複合材を得る工程と、複合材を用いて射出成形によりグリーン成形体20を得る工程と、グリーン成形体20を脱脂処理後に焼成する工程とを有する。当該製造過程において、樹脂100質量部に対する特定元素αの添加量を、0.19質量部以上、2.90質量部以下とする。
上記の製造方法では、脱脂工程において、特定元素αが、樹脂30の熱分解に対する触媒として作用し、焼結磁石2にクラックなどの構造欠陥が生じることを抑制できる。その結果、本実施形態の製造方法で得られた焼結磁石2は、十分な密度と高い抗折強度を有する。
なお、添加物10は、フェライト粉末40の製造時に添加するのではなく、フェライト粉末40の仮焼後の混練工程で、樹脂30中に分散させる。特に、二軸押出機などを用いて混練することで、樹脂30中に添加物10を均一に分散させる。これにより、脱脂工程における樹脂30の熱分解がより効率的に進行し、構造欠陥の発生をさらに抑制することができる。
(変形例)
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々に改変することができる。
たとえば、上記の実施形態では、微量に添加する特定元素αとして、Cu、V、Ti、Agを挙げたが、特定元素αに変えて、Co,Mnから選択される1種以上の特定元素βを採用してもよい。この場合、特定元素βは、上記の実施形態と同様に、特定元素βを含む添加物(金属粉末、酸化物粉末、窒化物、有機金属塩、錯体、その他無機塩などのいずれかの様態)として、混練工程で樹脂30中に分散させればよい。この際、特定元素βの添加量は、特定元素αの添加量と同程度とすればよい。特定元素βも、特定元素αと同様に、樹脂30の熱分解において触媒として作用することが期待できる。
ただし、特定元素β(Co、Mn)は、主成分であるハードフェライトの構成元素でもあり、完成品である焼結磁石においては、触媒として作用する微量な特定元素βと、主成分を構成する元素(Co、Mn)と、を識別して定量することが極めて困難である。そのため、特定元素βを採用した場合には、焼結磁石中の含有率ではなく、製造過程における特定元素βを含む添加物の添加量に基づいて、本発明の実施の有無を判断する。なお、フェライト粉末40中のCo元素やMn元素は、フェライト粒子から遊離し難く、前述した触媒としての作用が期待できない。
また、上記の実施形態では、射出成形でグリーン成形体20を製造したが、成形方法は、必ずしも射出成形に限定されない。製造方法に係る本発明は、脱脂工程を経る焼結磁石の製造に適用でき、バインダを使用し脱脂工程を実施する場合であれば、CIP成形法などのプレス成形でグリーン成形体20を製造してもよい。
以下、実施例および比較例を用いて、本発明をさらに詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
実験1
実験1では、特定元素α(Cu、V、Ti、Ag)を添加した実施例1~4に係る焼結磁石と、特定元素αとは異なるBa元素を添加した比較例に係る焼結磁石とを製造し、その特定を評価した。以下、各実施例の詳細を説明する。
(実施例1)
まず、主成分の原料化合物として、酸化鉄粉末(Fe;不純物としてMn,Cr,Al,Clを含む)、水酸化ランタン粉末(La(OH))、炭酸カルシウム粉末(CaCO)、炭酸ストロンチウム粉末(SrCO)、酸化コバルト粉末(Co)を準備した。そして、これら原料化合物を、焼成後のハードフェライトが所定の組成となるように秤量した。なお、主成分であるハードフェライトは、La-Co置換M型フェライトであって、後述するすべての実施例および比較例において、同一の組成とした。また、副成分の原料化合物として、酸化ケイ素粉末(SiO)を準備し、焼結磁石中のSiOの含有率が0.65質量%となるように秤量した。副成分の種類およびその含有量も、後述するすべての実施例および比較例において、同一の組成とした。
次に、秤量した各原料化合物を、湿式アトライタにて混合、粉砕し、スラリー状の原料混合物を得た。この原料混合物を乾燥させた後、1250℃で2時間保持することで仮焼きし、ハードフェライトの仮焼体を得た。
次に、上記の仮焼体を、振動ミルにて粗粉砕し、さらに、湿式ボールミルにて微粉砕して、スラリーを得た。そして、このスラリーを乾燥、整粒して、フェライト粉末40を得た。
次に、上記の工程で得られたフェライト粉末40を用いて複合材を製造した。複合材の製造では、バインダとしてポリプロピレン、ワックスとしてパラフィンワックスを準備した。そして、フェライト粉末40の添加量Fと樹脂30の含有量Rとの合計100wt%に対して、フェライト粉末40の添加量Fが88wt%、バインダの添加量R1が6.0wt%、ワックスの添加量R2が6.0wt%となるように各原料を秤量した。上記の他に、可塑剤としてフタル酸ジオクチル(DOP)を準備し、バインダ100質量部に対して2質量部、秤量した。
また、実施例1では、添加物10として、Cuを含むCuO粉末を準備し、Cu(特定元素α)の添加量が表1に示す値となるように添加物10を秤量した。なお、表1には、樹脂100質量部に対するCuの添加量(α/R)と、樹脂とフェライト粉末の合計100質量部に対するCuの添加量(α/(R+F))とを示している。表1に示すように、実施例1では、添加物10の配合比を変えた14種の試料(試料番号1-1~1-14)を製造した。
次いで、上記の原料(添加物10、樹脂30、フェライト粉末40)を、加圧加熱ニーダを用いて、165℃で2.5時間混練した。そして、この混練物を、二軸押出機を用いてペレット状に造粒し、複合材を得た。
次に、混練した複合材を用いて、射出成形によりグリーン成形体20を製造した。この際、射出温度(押出部における複合材の加熱温度)は185℃とし、金型温度は40℃とし、射出時の印加磁場は1T(約796kA/m)とした。当該射出成形で得られたグリーン成形体20は、円板状であり、直径が30mm、厚みが3mmであった。
次に、グリーン成形体20に対して、加湿した大気雰囲気中で脱脂処理を施した。脱脂処理の条件は、最高到達温度を300℃とし、室温から最高到達温度までの間の昇温速度を0.17℃/分とし、脱脂処理のトータル時間を20時間として、風速3.0m/sで空気を送風した。脱脂処理後は、連続して、1190℃~1230℃で1時間保持することで、焼成した。これにより、実施例1(試料番号1-1~1-14)に係る焼結磁石を得た。なお、焼成後の焼結磁石は、直径が26mmで厚みが2mmであった。
(実施例2)
実施例2では、添加物10として、Vを含むV粉末と、VO粉末とを準備し、V(特定元素α)の添加量が表2に示す値となるように添加物10を秤量した。なお、実施例2では、添加物10の配合比を変えた14種の試料(試料番号2-1~2-14)を製造した。実施例2では、上記のとおり、添加した特定元素αの種類を変えた以外は、実施例1と同様の条件で焼結磁石を製造した。
(実施例3)
実施例3では、添加物10として、Tiを含むTiO粉末を準備し、Ti(特定元素α)の添加量が表3に示す値となるように添加物10を秤量した。なお、実施例3では、添加物10の配合比を変えた14種の試料(試料番号3-1~3-14)を製造した。実施例3では、上記のとおり、添加した特定元素αの種類を変えた以外は、実施例1と同様の条件で焼結磁石を製造した。
(実施例4)
実施例4では、添加物10として、Agを含むAgO粉末を準備し、Ag(特定元素α)の添加量が表4に示す値となるように添加物10を秤量した。なお、実施例4では、添加物10の配合比を変えた14種の試料(試料番号4-1~4-14)を製造した。実施例4では、上記のとおり、添加した特定元素αの種類を変えた以外は、実施例1と同様の条件で焼結磁石を製造した。
(比較例)
比較例では、特定元素αではなく、Baを含むBaO粉末を準備し、Ba元素の添加量が表5に示す値となるように当該化合物を秤量した。なお、比較例では、Ba元素の配合比を変えた14種の試料(試料番号5-1~5-14)を製造した。比較例では、上記のとおり、添加した元素の種類を変えた以外は、実施例1と同様の条件で焼結磁石を製造した。
実験1では、上記で得られた各試料番号の焼結磁石サンプルについて、以下に示す評価を実施した。
(焼結磁石中の特定元素αの測定)
焼結磁石サンプルに含まれる特定元素αの含有率を、ICP-OESにより測定した。特定元素αの含有率の測定は、各試料番号(1-1~5-14)につき3個の測定サンプルに対して実施し、その平均値を求めた。なお、表1~5に示す特定元素αの含有率は、焼結磁石の単位質量当たりに含まれる特定元素αの割合(質量ppm)であり、分析結果の平均値における下二桁目を四捨五入した値として示した(ただし、分析結果が100質量ppm未満のサンプルについては下一桁目を四捨五入した値を示した)。
(磁気特性の測定)
実験1では、焼結磁石サンプルの磁気特性(残留磁束密度Brおよび保磁力HcJ)を、B-Hトレーサを用いて、室温(25℃)の大気雰囲気中で測定した。
(欠陥発生数の測定)
また、焼結磁石サンプルに存在するクラックなどの構造欠陥の発生数を調査した。当該調査では、光学顕微鏡を用いて、焼結磁石サンプルの外表面を合計10cmの範囲にわたって観察し、当該範囲内に含まれる構造欠陥の数を測定した。そして、欠陥発生数を、焼結磁石サンプルの単位面積当たりに存在する欠陥の個数(単位:pcs/cm)として算出した。欠陥発生数については、1pcs/cm以下を良好とし、0pcs/cmをさらに良好と判断した。
(寸法密度の測定)
また、焼結磁石サンプルの寸法密度(単位:g/cm)を測定した。寸法密度は、焼結磁石サンプルの寸法を計測することで得られた体積と、焼結磁石サンプルの重量とを測定し、測定重量を測定体積で除することで算出した。当該測定は、各試料番号(1-1~5-14)につき5個の測定試料に対して実施し、その平均値を求めた。上記測定で得られた寸法密度では、焼結磁石サンプルの表面や内部に含まれる空隙も密度に加味されることとなり、焼結磁石サンプルに構造欠陥が発生していると寸法密度が低下する傾向となる。寸法密度は、5.00g/cm以上を良好と判断した。
(抗折強度の測定)
また、実験1では、図4A,図4Bに示すような試験装置50を用いて、焼結磁石サンプルの抗折試験を実施した。抗折試験では、試験台51の表面に形成してある3つの支点52の上に、評価サンプル2a(焼結磁石サンプル)を設置する。そして、評価サンプル2aの圧接点25に対して、圧子53を一定の速度でZ軸上方から下方に向かって押し当てる。この際、圧子53を押し当てる圧接点25を、圧接点25と各支点52とのX-Y平面上の距離が均等となる位置に設定し、圧子53の加圧速度を1mm/分とした。そして、評価サンプル2aが破壊した際の負荷荷重に基づいて、抗折強度(単位:N)を算出した。当該測定は、各試料番号(1-1~5-14)につき5個の評価サンプル2aに対して実施し、平均値を算出した。抗折強度は、180N以上を良好とし、200N以上をより良好とし、260N以上をさらに良好と判断した。
上述した各評価項目(磁気特性、欠陥発生数、寸法密度、抗折強度)の評価結果を表1~5に示す。また、表1~5に示した評価結果に基づいて、焼結磁石サンプル中の特定元素αの含有率(比較例ではBaの含有率)と、各評価項目との関係性を、図5~図9に示すグラフにまとめた。図5~図9では、X軸を特定元素αの含有率とし、Y軸を各評価項目として評価結果をプロットした。
Figure 0007222409000001
Figure 0007222409000002
Figure 0007222409000003
Figure 0007222409000004
Figure 0007222409000005
図5~7に示すように、特定元素αを含む実施例1~4では、特定元素αの含有率の増加に伴い、欠陥発生数が減少するとともに、寸法密度と抗折強度がそれぞれ増加していく傾向が確認できた。一方、Baを微量添加した比較例では、Baの含有率の増加に伴い、欠陥発生数が反って増加するとともに、寸法密度と抗折強度がそれぞれ低下していく傾向となった。この結果から、特定元素αとしてCu、V、Ti、Agを微量添加することで、構造欠陥の発生を抑制でき、寸法密度および抗折強度を向上できることが立証できた。
また、実施例1~4の結果を比較すると、Cu>V>Ti>Agの順で、構造欠陥の発生抑制効果や、寸法密度および抗折強度の向上効果がより高まることがわかった。
さらに、図8,図9に示す結果から、焼結磁石に含まれる特定元素αの含有率が2500質量ppm以下である場合には、BrおよびHcJが高い水準で維持されていることが確認できる。この結果から、2500質量ppm以下の範囲では、微量添加した特定元素αがハードフェライトの主相に影響を与えていない、すなわち、特定元素αが主相粒子4には固溶せずに粒界相6に存在するとみなすことができる。なお、特定元素αの含有率の上限値は、主相粒子4への影響度の観点から、2000質量ppm以下であることがより好ましく、1500質量ppm以下であることがさらに好ましいことがわかった。
実験2
実験2では、特定元素αの含有率の範囲をより詳細に評価するために、製造時に加える樹脂30(バインダおよびワックス)の配合比を変えて、実施例6~12に係る焼結磁石を製造した。
(実施例6)
実施例6では、上述した実験1の実施例1と同じ条件で、焼結磁石を製造した。すなわち、混練工程において、フェライト粉末40の添加量Fと樹脂30(バインダおよびワックス)の含有量Rとの合計100wt%に対して、フェライト粉末40の配合比が88wt%、バインダの配合比が6.0wt%、ワックスの配合比が6.0wt%となるように各原料を配合した。そして、実施例6では、添加物10として、Cuを含むCuO粉末を準備し、Cu(特定元素α)の添加量が表6に示す値となるように、添加物10を配合し、試料番号6-1~6-14に係る焼結磁石サンプルを得た。
(実施例7)
実施例7では、混練工程において、フェライト粉末40の添加量Fと樹脂30(バインダおよびワックス)の含有量Rとの合計100wt%に対して、フェライト粉末40の配合比が89wt%、バインダの配合比が5.5wt%、ワックスの配合比が5.5wt%となるように各原料を配合した。そして、実施例7では、添加物10として、Cuを含むCuO粉末を準備し、Cu(特定元素α)の添加量が表7に示す値となるように、添加物10を配合し、試料番号7-1~7-14に係る焼結磁石サンプルを得た。実施例7において、上記以外の製造条件は、実験1の実施例1と共通とした。
(実施例8)
実施例8では、混練工程において、フェライト粉末40の添加量Fと樹脂30(バインダおよびワックス)の含有量Rとの合計100wt%に対して、フェライト粉末40の配合比が90wt%、バインダの配合比が5.0wt%、ワックスの配合比が5.0wt%となるように各原料を配合した。そして、実施例8では、添加物10として、Cuを含むCuO粉末を準備し、Cu(特定元素α)の添加量が表8に示す値となるように、添加物10を配合し、試料番号8-1~8-14に係る焼結磁石サンプルを得た。実施例8において、上記以外の製造条件は、実験1の実施例1と共通とした。
(実施例9)
実施例9では、混練工程において、フェライト粉末40の添加量Fと樹脂30(バインダおよびワックス)の含有量Rとの合計100wt%に対して、フェライト粉末40の配合比が90.50wt%、バインダの配合比が4.75wt%、ワックスの配合比が4.75wt%となるように各原料を配合した。そして、実施例9では、添加物10として、Cuを含むCuO粉末を準備し、Cu(特定元素α)の添加量が表9に示す値となるように、添加物10を配合し、試料番号9-1~9-14に係る焼結磁石サンプルを得た。実施例9において、上記以外の製造条件は、実験1の実施例1と共通とした。
(実施例10)
実施例10では、混練工程において、フェライト粉末40の添加量Fと樹脂30(バインダおよびワックス)の含有量Rとの合計100wt%に対して、フェライト粉末40の配合比が91wt%、バインダの配合比が4.50wt%、ワックスの配合比が4.50wt%となるように各原料を配合した。そして、実施例10では、添加物10として、Cuを含むCuO粉末を準備し、Cu(特定元素α)の添加量が表10に示す値となるように、添加物10を配合し、試料番号10-1~10-14に係る焼結磁石サンプルを得た。実施例10において、上記以外の製造条件は、実験1の実施例1と共通とした。
(実施例11)
実施例11では、混練工程において、フェライト粉末40の添加量Fと樹脂30(バインダおよびワックス)の含有量Rとの合計100wt%に対して、フェライト粉末40の配合比が91.50wt%、バインダの配合比が4.25wt%、ワックスの配合比が4.25wt%となるように各原料を配合した。そして、実施例11では、添加物10として、Cuを含むCuO粉末を準備し、Cu(特定元素α)の添加量が表11に示す値となるように、添加物10を配合し、試料番号11-1~11-14に係る焼結磁石サンプルを得た。実施例11において、上記以外の製造条件は、実験1の実施例1と共通とした。
(実施例12)
実施例12では、混練工程において、フェライト粉末40の添加量Fと樹脂30(バインダおよびワックス)の含有量Rとの合計100wt%に対して、フェライト粉末40の配合比が92wt%、バインダの配合比が4.0wt%、ワックスの配合比が4.0wt%となるように各原料を配合した。そして、実施例12では、添加物10として、Cuを含むCuO粉末を準備し、Cu(特定元素α)の添加量が表12に示す値となるように、添加物10を配合し、試料番号12-1~12-14に係る焼結磁石サンプルを得た。実施例12において、上記以外の製造条件は、実験1の実施例1と共通とした。
また、実験2でも、実験1と同様の評価を実施した。評価結果を表6~表12に示す。
Figure 0007222409000006
Figure 0007222409000007
Figure 0007222409000008
Figure 0007222409000009
Figure 0007222409000010
Figure 0007222409000011
Figure 0007222409000012
表6~表12に示すように、混練工程で配合する樹脂30の割合が少なくなると、特定元素αの含有率が実験1より少ない場合であっても、欠陥発生数が減少するとともに、寸法密度と抗折強度がそれぞれ増加することが確認できた。この結果から、特定元素αの含有率の下限値は、200質量ppm以上とすることができ、300質量ppm以上であることが好ましく、500質量ppm以上であることがさらに好ましいことが確認できた。
実験3
実験3では、特定元素αを含む添加物10に代えて、Coを含むCoO粉末を添加して実施例13に係る焼結磁石を製造した。また、実験3では、特定元素αを含む添加物10に代えて、Mnを含むMnO粉末を添加して実施例14に係る焼結磁石を製造した。実施例13および実施例14では、Co化合物またはMn化合物の樹脂30に対する添加量を振って実験を行い、それぞれ14種類の焼結磁石サンプルを得た。なお、実験3では、複合材中の配合比を、フェライト粉末(F):88wt%、バインダ(R1):6.0wt%、ワックス(R2):6.0wt%とした。また、実験3では、上記以外の実験条件は、実験1の実施例1と同様であり、実験1と同様の評価を実施した。評価結果を表13および表14に示す。
Figure 0007222409000013
Figure 0007222409000014
まず、実施例13および実施例14でも、ICPによる成分分析を実施したが、混練工程で微量添加した(すなわち、フェライトの合成反応後に微量添加した)添加元素β(CoまたはMn)と、主相であるハードフェライトに含まれる元素(CoまたはMn)とを識別することが困難であった。ただし、表13および表14に示すように、添加元素βを微量添加していない試料番号13-1,14-1に比べて、他の試料番号の評価結果が良好となっていることがわかる。この結果から、主成分のフェライトとは反応していない添加元素βを微量添加することで、構造欠陥の発生抑制効果や、寸法密度および抗折強度の向上効果が得られることが立証できた。
2 … 焼結磁石
4 … 主相粒子
6 … 粒界相
20 … グリーン成形体
10 … 添加物
30 … 樹脂
40 … フェライト粉末
50 … 抗折試験装置
51 … 試験台
52 … 支点
53 … 圧子
2a … 評価サンプル
25 … 圧接点

Claims (4)

  1. ハードフェライトを含む焼結磁石であって、
    Cu、V、Ti、Agから選択される1種以上の特定元素を含み、
    前記焼結磁石に含まれる前記特定元素の含有率が、200質量ppm以上、2500質量ppm以下であり、
    前記焼結磁石には、前記ハードフェライトからなる主相粒子と、前記主相粒子の間に存在する粒界相とが含まれ、
    前記特定元素が前記粒界相に存在する焼結磁石。
  2. 前記特定元素が、前記主相粒子には固溶していない請求項1に記載の焼結磁石。
  3. 仮焼きしたハードフェライトの原料粉末を準備する工程と、
    前記原料粉末と、樹脂と、所定の添加物とを混練して複合材を得る工程と、
    前記複合材を用いて成形体を得る工程と、
    前記成形体を脱脂処理後に焼成する工程と、を有し、
    所定の前記添加物が、Co,Mn,Cu,V,Ti,Agから選択される1種以上の特定元素を含み、
    前記樹脂100質量部に対する前記特定元素の添加量が、0.19質量部以上、2.90質量部以下である焼結磁石の製造方法。
  4. 前記添加物の様態が、金属粉末、酸化物、窒化物、有機金属塩、または錯体のいずれかである請求項3に記載の焼結磁石の製造方法。


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