JP7222409B2 - 焼結磁石および焼結磁石の製造方法 - Google Patents
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Description
ハードフェライトを含む焼結磁石であって、
Cu、V、Ti、Agから選択される1種以上の特定元素を含み、
前記焼結磁石に含まれる前記特定元素の含有率が、200質量ppm以上、2500質量ppm以下である。
仮焼きしたハードフェライトの原料粉末を準備する工程と、
前記原料粉末と、樹脂と、所定の添加物とを混練して複合材を得る工程と、
前記複合材を用いて成形体を得る工程と、
前記成形体を脱脂処理後に焼成する工程と、を有し、
所定の前記添加物が、Co,Mn,Cu,V,Ti,Agから選択される1種以上の特定元素を含み、
前記樹脂100質量部に対する前記特定元素の添加量が、0.19質量部以上、2.90質量部以下である。
本実施形態の焼結磁石2は、ハードフェライトを主成分として含む永久磁石である。ここで、焼結磁石2の主成分とは、焼結磁石2の単位質量当たり90質量%以上含まれる成分を指し、本実施形態では、焼結磁石2におけるハードフェライトの含有率が95質量%以上であることが好ましい。
次に、焼結磁石2の製造方法の一例について説明する。本実施形態において、焼結磁石2は、フェライト粉末を製造する工程、複合材を製造する工程、成形工程、脱脂工程、および焼成工程を経て製造することができる。以下、各工程について詳述する。
ハードフェライトの粉末は、原料を所定の割合で混合した後に、その混合物を仮焼きし、粉砕することで得られる。まず、ハードフェライトを構成する元素を含む原料化合物を準備する。原料化合物は、粉末状であることが好ましく、その様態は、酸化物、または、焼成により酸化物となる化合物(窒化物、水酸化物、オキソ酸塩:炭酸塩、硝酸塩、硫酸縁など)とすることができる。また、原料化合物は、ハードフェライトを構成する元素を2種以上含む複合酸化物などの化合物であってもよい。たとえば、La-Co置換型のM型Caフェライトを主成分とする場合は、炭酸ストロンチウム(SrCO3)、水酸化ランタン(La(OH)3)、酸化鉄(Fe2O3)、炭酸カルシウム(CaCO3)、および、酸化コバルト(Co3O4)などを準備すればよい。なお、原料化合物粉末の平均粒径は、0.1μm~2.0μmとすることが好ましい。
次に、上記で得られたフェライト粉末40を、バインダ、ワックスなどと共に混練し(混練工程)、複合材(フィードストック、ペレット、顆粒などと称する場合もある)を得る。本実施形態では、バインダとワックスとを合わせて樹脂30と称する。
次に、上記の複合材を用いて、図2に示すようなグリーン成形体20を得る。図2は、グリーン成形体20の概略断面図であって、グリーン成形体20は、樹脂30の内部でフェライト粉末40と添加物10とが分散した構造を有する。本実施形態において、成形は、射出成形(CIM:Ceramic Injection Molding)で実施することが好ましい。
脱脂工程では、成形工程で得られたグリーン成形体20を熱処理して、グリーン成形体20に含まれる樹脂30を除去する。脱脂の雰囲気は、大気中または窒素中とすることができ、好ましくは大気雰囲気である。脱脂の最高到達温度は、100℃~600℃とすることができ、好ましくは200℃~350℃である。最高到達温度までの昇温速度は、0.01~1℃/分とすることが好ましく、0.1~1℃/分とすることがより好ましい。また、熱処理の合計時間は、5時間~120時間とすることができ、好ましくは10時間~40時間である。さらに、上記の熱処理を行う際の炉内には、空気や窒素などの雰囲気ガスを送風することが好ましく、その風速は、0.5~5.0m/sとすることが好ましい。
次に、脱脂処理したグリーン成形体20を焼成する。焼成の条件としては、雰囲気を大気中とすることが好ましく、保持温度を1050℃~1270℃とすることが好ましく(より好ましくは1160℃~1230℃)、保持時間を0.5時間~3時間とすることが好ましい(より好ましくは0.2時間~3時間)。なお、焼成は、前述した脱脂工程から連続して実施してもよく、脱脂工程後に室温まで冷却してから焼成を実施してもよい。
本実施形態の焼結磁石2は、主成分としてハードフェライトを含むとともに、Cu、V、Ti、Agから選択される1種以上の特定元素αを含む。この特定元素αは、微量添加されており、焼結磁石2に含まれる特定元素αの含有率が、200質量ppm以上、2500質量ppm以下である。
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々に改変することができる。
実験1では、特定元素α(Cu、V、Ti、Ag)を添加した実施例1~4に係る焼結磁石と、特定元素αとは異なるBa元素を添加した比較例に係る焼結磁石とを製造し、その特定を評価した。以下、各実施例の詳細を説明する。
まず、主成分の原料化合物として、酸化鉄粉末(Fe2O3;不純物としてMn,Cr,Al,Clを含む)、水酸化ランタン粉末(La(OH)3)、炭酸カルシウム粉末(CaCO3)、炭酸ストロンチウム粉末(SrCO3)、酸化コバルト粉末(Co3O4)を準備した。そして、これら原料化合物を、焼成後のハードフェライトが所定の組成となるように秤量した。なお、主成分であるハードフェライトは、La-Co置換M型フェライトであって、後述するすべての実施例および比較例において、同一の組成とした。また、副成分の原料化合物として、酸化ケイ素粉末(SiO2)を準備し、焼結磁石中のSiO2の含有率が0.65質量%となるように秤量した。副成分の種類およびその含有量も、後述するすべての実施例および比較例において、同一の組成とした。
実施例2では、添加物10として、Vを含むV2O5粉末と、VO粉末とを準備し、V(特定元素α)の添加量が表2に示す値となるように添加物10を秤量した。なお、実施例2では、添加物10の配合比を変えた14種の試料(試料番号2-1~2-14)を製造した。実施例2では、上記のとおり、添加した特定元素αの種類を変えた以外は、実施例1と同様の条件で焼結磁石を製造した。
実施例3では、添加物10として、Tiを含むTiO2粉末を準備し、Ti(特定元素α)の添加量が表3に示す値となるように添加物10を秤量した。なお、実施例3では、添加物10の配合比を変えた14種の試料(試料番号3-1~3-14)を製造した。実施例3では、上記のとおり、添加した特定元素αの種類を変えた以外は、実施例1と同様の条件で焼結磁石を製造した。
実施例4では、添加物10として、Agを含むAg2O粉末を準備し、Ag(特定元素α)の添加量が表4に示す値となるように添加物10を秤量した。なお、実施例4では、添加物10の配合比を変えた14種の試料(試料番号4-1~4-14)を製造した。実施例4では、上記のとおり、添加した特定元素αの種類を変えた以外は、実施例1と同様の条件で焼結磁石を製造した。
比較例では、特定元素αではなく、Baを含むBaO粉末を準備し、Ba元素の添加量が表5に示す値となるように当該化合物を秤量した。なお、比較例では、Ba元素の配合比を変えた14種の試料(試料番号5-1~5-14)を製造した。比較例では、上記のとおり、添加した元素の種類を変えた以外は、実施例1と同様の条件で焼結磁石を製造した。
焼結磁石サンプルに含まれる特定元素αの含有率を、ICP-OESにより測定した。特定元素αの含有率の測定は、各試料番号(1-1~5-14)につき3個の測定サンプルに対して実施し、その平均値を求めた。なお、表1~5に示す特定元素αの含有率は、焼結磁石の単位質量当たりに含まれる特定元素αの割合(質量ppm)であり、分析結果の平均値における下二桁目を四捨五入した値として示した(ただし、分析結果が100質量ppm未満のサンプルについては下一桁目を四捨五入した値を示した)。
実験1では、焼結磁石サンプルの磁気特性(残留磁束密度Brおよび保磁力HcJ)を、B-Hトレーサを用いて、室温(25℃)の大気雰囲気中で測定した。
また、焼結磁石サンプルに存在するクラックなどの構造欠陥の発生数を調査した。当該調査では、光学顕微鏡を用いて、焼結磁石サンプルの外表面を合計10cm2の範囲にわたって観察し、当該範囲内に含まれる構造欠陥の数を測定した。そして、欠陥発生数を、焼結磁石サンプルの単位面積当たりに存在する欠陥の個数(単位:pcs/cm2)として算出した。欠陥発生数については、1pcs/cm2以下を良好とし、0pcs/cm2をさらに良好と判断した。
また、焼結磁石サンプルの寸法密度(単位:g/cm3)を測定した。寸法密度は、焼結磁石サンプルの寸法を計測することで得られた体積と、焼結磁石サンプルの重量とを測定し、測定重量を測定体積で除することで算出した。当該測定は、各試料番号(1-1~5-14)につき5個の測定試料に対して実施し、その平均値を求めた。上記測定で得られた寸法密度では、焼結磁石サンプルの表面や内部に含まれる空隙も密度に加味されることとなり、焼結磁石サンプルに構造欠陥が発生していると寸法密度が低下する傾向となる。寸法密度は、5.00g/cm3以上を良好と判断した。
また、実験1では、図4A,図4Bに示すような試験装置50を用いて、焼結磁石サンプルの抗折試験を実施した。抗折試験では、試験台51の表面に形成してある3つの支点52の上に、評価サンプル2a(焼結磁石サンプル)を設置する。そして、評価サンプル2aの圧接点25に対して、圧子53を一定の速度でZ軸上方から下方に向かって押し当てる。この際、圧子53を押し当てる圧接点25を、圧接点25と各支点52とのX-Y平面上の距離が均等となる位置に設定し、圧子53の加圧速度を1mm/分とした。そして、評価サンプル2aが破壊した際の負荷荷重に基づいて、抗折強度(単位:N)を算出した。当該測定は、各試料番号(1-1~5-14)につき5個の評価サンプル2aに対して実施し、平均値を算出した。抗折強度は、180N以上を良好とし、200N以上をより良好とし、260N以上をさらに良好と判断した。
実験2では、特定元素αの含有率の範囲をより詳細に評価するために、製造時に加える樹脂30(バインダおよびワックス)の配合比を変えて、実施例6~12に係る焼結磁石を製造した。
実施例6では、上述した実験1の実施例1と同じ条件で、焼結磁石を製造した。すなわち、混練工程において、フェライト粉末40の添加量Fと樹脂30(バインダおよびワックス)の含有量Rとの合計100wt%に対して、フェライト粉末40の配合比が88wt%、バインダの配合比が6.0wt%、ワックスの配合比が6.0wt%となるように各原料を配合した。そして、実施例6では、添加物10として、Cuを含むCuO粉末を準備し、Cu(特定元素α)の添加量が表6に示す値となるように、添加物10を配合し、試料番号6-1~6-14に係る焼結磁石サンプルを得た。
実施例7では、混練工程において、フェライト粉末40の添加量Fと樹脂30(バインダおよびワックス)の含有量Rとの合計100wt%に対して、フェライト粉末40の配合比が89wt%、バインダの配合比が5.5wt%、ワックスの配合比が5.5wt%となるように各原料を配合した。そして、実施例7では、添加物10として、Cuを含むCuO粉末を準備し、Cu(特定元素α)の添加量が表7に示す値となるように、添加物10を配合し、試料番号7-1~7-14に係る焼結磁石サンプルを得た。実施例7において、上記以外の製造条件は、実験1の実施例1と共通とした。
実施例8では、混練工程において、フェライト粉末40の添加量Fと樹脂30(バインダおよびワックス)の含有量Rとの合計100wt%に対して、フェライト粉末40の配合比が90wt%、バインダの配合比が5.0wt%、ワックスの配合比が5.0wt%となるように各原料を配合した。そして、実施例8では、添加物10として、Cuを含むCuO粉末を準備し、Cu(特定元素α)の添加量が表8に示す値となるように、添加物10を配合し、試料番号8-1~8-14に係る焼結磁石サンプルを得た。実施例8において、上記以外の製造条件は、実験1の実施例1と共通とした。
実施例9では、混練工程において、フェライト粉末40の添加量Fと樹脂30(バインダおよびワックス)の含有量Rとの合計100wt%に対して、フェライト粉末40の配合比が90.50wt%、バインダの配合比が4.75wt%、ワックスの配合比が4.75wt%となるように各原料を配合した。そして、実施例9では、添加物10として、Cuを含むCuO粉末を準備し、Cu(特定元素α)の添加量が表9に示す値となるように、添加物10を配合し、試料番号9-1~9-14に係る焼結磁石サンプルを得た。実施例9において、上記以外の製造条件は、実験1の実施例1と共通とした。
実施例10では、混練工程において、フェライト粉末40の添加量Fと樹脂30(バインダおよびワックス)の含有量Rとの合計100wt%に対して、フェライト粉末40の配合比が91wt%、バインダの配合比が4.50wt%、ワックスの配合比が4.50wt%となるように各原料を配合した。そして、実施例10では、添加物10として、Cuを含むCuO粉末を準備し、Cu(特定元素α)の添加量が表10に示す値となるように、添加物10を配合し、試料番号10-1~10-14に係る焼結磁石サンプルを得た。実施例10において、上記以外の製造条件は、実験1の実施例1と共通とした。
実施例11では、混練工程において、フェライト粉末40の添加量Fと樹脂30(バインダおよびワックス)の含有量Rとの合計100wt%に対して、フェライト粉末40の配合比が91.50wt%、バインダの配合比が4.25wt%、ワックスの配合比が4.25wt%となるように各原料を配合した。そして、実施例11では、添加物10として、Cuを含むCuO粉末を準備し、Cu(特定元素α)の添加量が表11に示す値となるように、添加物10を配合し、試料番号11-1~11-14に係る焼結磁石サンプルを得た。実施例11において、上記以外の製造条件は、実験1の実施例1と共通とした。
実施例12では、混練工程において、フェライト粉末40の添加量Fと樹脂30(バインダおよびワックス)の含有量Rとの合計100wt%に対して、フェライト粉末40の配合比が92wt%、バインダの配合比が4.0wt%、ワックスの配合比が4.0wt%となるように各原料を配合した。そして、実施例12では、添加物10として、Cuを含むCuO粉末を準備し、Cu(特定元素α)の添加量が表12に示す値となるように、添加物10を配合し、試料番号12-1~12-14に係る焼結磁石サンプルを得た。実施例12において、上記以外の製造条件は、実験1の実施例1と共通とした。
実験3では、特定元素αを含む添加物10に代えて、Coを含むCoO粉末を添加して実施例13に係る焼結磁石を製造した。また、実験3では、特定元素αを含む添加物10に代えて、Mnを含むMnO粉末を添加して実施例14に係る焼結磁石を製造した。実施例13および実施例14では、Co化合物またはMn化合物の樹脂30に対する添加量を振って実験を行い、それぞれ14種類の焼結磁石サンプルを得た。なお、実験3では、複合材中の配合比を、フェライト粉末(F):88wt%、バインダ(R1):6.0wt%、ワックス(R2):6.0wt%とした。また、実験3では、上記以外の実験条件は、実験1の実施例1と同様であり、実験1と同様の評価を実施した。評価結果を表13および表14に示す。
4 … 主相粒子
6 … 粒界相
20 … グリーン成形体
10 … 添加物
30 … 樹脂
40 … フェライト粉末
50 … 抗折試験装置
51 … 試験台
52 … 支点
53 … 圧子
2a … 評価サンプル
25 … 圧接点
Claims (4)
- ハードフェライトを含む焼結磁石であって、
Cu、V、Ti、Agから選択される1種以上の特定元素を含み、
前記焼結磁石に含まれる前記特定元素の含有率が、200質量ppm以上、2500質量ppm以下であり、
前記焼結磁石には、前記ハードフェライトからなる主相粒子と、前記主相粒子の間に存在する粒界相とが含まれ、
前記特定元素が前記粒界相に存在する焼結磁石。 - 前記特定元素が、前記主相粒子には固溶していない請求項1に記載の焼結磁石。
- 仮焼きしたハードフェライトの原料粉末を準備する工程と、
前記原料粉末と、樹脂と、所定の添加物とを混練して複合材を得る工程と、
前記複合材を用いて成形体を得る工程と、
前記成形体を脱脂処理後に焼成する工程と、を有し、
所定の前記添加物が、Co,Mn,Cu,V,Ti,Agから選択される1種以上の特定元素を含み、
前記樹脂100質量部に対する前記特定元素の添加量が、0.19質量部以上、2.90質量部以下である焼結磁石の製造方法。 - 前記添加物の様態が、金属粉末、酸化物、窒化物、有機金属塩、または錯体のいずれかである請求項3に記載の焼結磁石の製造方法。
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