本発明の面状採暖具は、面状のヒータユニットの上下に複数の面状部材を積層された構成の本体と、前記本体に設置され、前記ヒータユニットの通電を制御する制御基板を内蔵するコントローラと、を含み、前記コントローラは、枠状の周壁を備えた一対のケースを備え、前記ケースの前記周壁には、前記周壁に連続して導電線を導入する導入溝を備える導電線固定部を備え、前記導電線固定部に装着され、前記導電線固定部の前記導入溝に重なり合う固定溝を有する導電線固定部材を備え、前記導電線固定部と前記導電線固定部材との間の空間は、シール材を注入して閉空間が形成され、前記導電線固定部と前記導電線固定部材との間に注入したシール材の漏れを許容する通路を形成した構成とするものである。
これにより、導電線固定部と導電線固定部材との間の空間は、外部から浸水することがない防水構造となっており、導電線固定部と導電線固定部材との間の空間の内部に設置された充電部材は、浸水により漏電および短絡による異常が発生することを防止することができ、安全な面状採暖具のコントローラを提供することができる。
導電線固定部材と導電線固定部との間の空間にシール材が充満すると、シール材が通路から漏出してくることを目視できる。シール材が通路から漏出した状態が、導電線固定部材と導電線固定部との間の空間にシール材が充満した状態の目安となる。
この構成により、導電線固定部と導電線固定部材との間の空間はシール材を注入して、導電線が制御基板に接続され、コントローラ外へ導出された状態で固定されケースの周壁の一部を形成する。シール材の注入時に通路からシール材が漏れ出る状態となると、導電線固定部と導電線固定部材との間が閉空間となる。内部のシール材の充填状態の確認が難しい構成にもかかわらず、シール材が漏れ出ることで充填されたことの目安とできる。この状態で、上下のケースを組み合わせると、コントローラから導電線が導出された状態で、ケースの周壁内部の制御基板と接続された導電線を含めた充電部の防水構造が実現される。
これにより、浸水により漏電および短絡による異常が発生することを防止することができ、安全な面状採暖具を提供することができる。
本発明の面状採暖具の前記通路は、前記導電線固定部材の前記導電線固定部材と前記ケースの前記周壁とが接触する位置に溝部を形成してもよい。
通路は、導電線固定部材の端部に位置しているので、導電線固定部材と固定リブとの間の空間にシール材が充満した状態になった際に、シール材が漏出することになり、シール
材が充満した状態の目安とする最適な位置となる。
本発明の面状採暖具の前記通路は、前記ケースの前記周壁の前記導電線固定部材と前記ケースの前記周壁とが接触する位置に溝部を形成してもよい。
通路は、導電線固定部材の端部に位置しているので、導電線固定部材と固定リブとの間の空間にシール材が充満した状態になった際に、シール材が漏出することになり、シール材が充満した状態の目安とする最適な位置となる。
本発明の面状採暖具の前記通路は、前記導電線固定部材を貫通する透孔により形成してもよい。
通路は、シール材の充填速度等、充填工法に応じて、任意の位置に設定することが可能となり、導電線固定部材と固定リブとの間の空間にシール材が充満した状態になった際に、シール材が漏出することになり、シール材が充満した状態の目安とする最適な位置に設定することが可能となる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
(実施の形態1)
<1>面状採暖具の構成
図1は、本発明の実施の形態1における面状採暖具の外観を示す斜視図である。
図1に示すように、面状採暖具100は、複数のシート状の部材で構成した略長方形の本体200と、本体200の角部に一体に設置されたコントローラ300と、無線でコントローラ300を操作するリモートコントローラ400で構成されている。
コントローラ300の側面には、面状採暖具100に電源を供給する電源コード110と、前面には、電源の「入」、「切」を操作する主電源スイッチ120と、コントローラ300の上面には、リモートコントローラ400の操作信号を受信する受信部130と表示灯140が設置される。
面状採暖具100は、住宅の床面に設置し、主電源スイッチ120とリモートコントローラ400の操作によってコントローラ300に接続した電源コード110で電力を供給することにより本体200を加熱して使用する採暖具である。
<2>本体の構成
図2は、面状採暖具の本体の構成部材を示す模式図であり、図3は、本体の完成状態を示す断面図であり、図4は、ヒータ線の詳細な構成を示す斜視図である。
図2に示すように、面状採暖具の本体200は、表面材210と、ヒータユニット230と、断熱シート240と、裏面材250とを主な構成部材とする。表面材210とヒータユニット230の間に第一接着シート220を介在させ、ヒータユニット230と断熱シート240の間に第二接着シート260を介在させ、断熱シート240と裏面材250との間に第三接着シート270を介在させた積層体で構成されている。
上記積層体を接着加工し、周辺部を圧縮および溶着することにより、図3に示すような断面形状の本体200を形成する。
表面材210は、面状採暖具の本体200における最上面の部材で、使用時には、使用者が直接接触する面である。表面材210は、機械的な強度はもちろん、意匠性や耐汚染性や触感等の必要な性能を備えたものである。本実施の形態では、表面材210は、塩化ビニル樹脂(以下PVCと表記)の発泡体を主成分とし、着色および柄付けした表面シート211の裏面にポリエステルの不織布212を接着剤213で接着した積層シートで厚さは約2mmである。
ヒータユニット230は、面状採暖具の発熱源であり、アルミニュームを主成分とするアルミシート231の片面に導電線であるヒータ線232を蛇行形状に配設したものである。
ヒータ線232は、図4に示すように、中心のガラス繊維232aの周囲に温度を検知する検知線232bを螺旋状に巻回し、その外周にナイロン樹脂で絶縁層232cを形成し、絶縁層232cの外周に発熱線232dを螺旋状に巻回し、その外周にPVCの絶縁層232eを形成し、絶縁層232eの外周にポリエチレン樹脂による接着層232fを形成したものである。本実施の形態では、ヒータ線232の外周の直径は、約2.7mmである。
ヒータユニット230は、ヒータ線232の始端をアルミシート231の1つの角部に配置し、アルミシート231の全域をカバーするように蛇行形状に配設し、終端を始端の近傍に配置している。ヒータ線232をアルミシート231に蛇行形状に配置した状態で熱を加えることにより、ヒータ線232の接着層232fが溶融し、アルミシート231に接着固定したものである。
断熱シート240は、ヒータユニット230で発熱した熱が床面に無駄に伝わるのを抑制する機能と面状採暖具のクッション性を得る目的で設けたものである。本実施の形態では、断熱シート240は、ポリエステル樹脂を主成分とする高融点樹脂繊維を約85%と低融点樹脂繊維を約15%の割合で混合し、厚さ約15mmのフェルト状に形成したものである。
上記構成の断熱シート240は、主に高融点樹脂繊維による高い弾力性を備えるとともに、低融点樹脂繊維により溶融温度近辺での加熱状態で塑性変形させることにより、変形状態を維持することができる加熱変形の特性を備えたものである。
上記加熱変形の特性を活用することにより、ヒータユニット230のヒータ線232を断熱シート250に埋設させることができ、ヒータユニット230のアルミシート231を平坦な状態に形成することができる。
裏面材250は、面状採暖具の本体200のうち直接床面に接触する部材であり、機械的強度はもちろんクッション性や滑り難さ等の性能を備えている。本実施の形態では、裏面材250は、ポリエチレン樹脂製のクロスシート両面をポリエチレン樹脂でコーティング処理をした三層構造に形成したものである。
第一接着シート220、第二接着シート260、第三接着シート270は、いずれもポリエチレン樹脂をシート状に成形したものであり、常温においては柔軟なシート状をなし、約85℃で溶融して接着剤としての機能を発揮する。
第一接着シート220と第二接着シート260と第三接着シート270とは、接着加工後は、不織布212や断熱シート240にほとんどが浸透するため、図3に示すように、その厚さはほとんど残らない。
<3>コントローラの構成
図5は、面状採暖具のコントローラの外観を示す斜視図であり、図6は、コントローラの主要な構成部材を示す模式図であり、図7は、コントローラの上ケースの下面の斜視図を示すものであり、図8は、上ケースにヒータ線、電源コード、主電源スイッチを設置した状態を示す斜視図であり、図9は、導電線固定部材の斜視図であり、図10は、導電線固定部材を設置した状態の要部拡大図であり、図11は、電源コード固定部材の斜視図であり、図12は、電源コード固定部材を設置した状態の要部拡大図であり、図13は、上ケースに導電線固定部材、電源コード固定部材を設置した状態を示す斜視図であり、図14は、コントローラの下ケースの平面図であり、図15(a)は、図12に示すA部の詳細を示す平面図、図15(b)は、図15(a)に示す調圧部に調圧シート設置した状態を示す平面図であり、図16は、コントローラの完成状態の断面図であり、図17は、コントローラの完成状態のヒータ線取付部の断面図であり、図18は、コントローラの完成状態の電源コード取付部の断面図である。
図5に示すように、コントローラ300の外形は、略直方体に形成されている。コントローラ300の側面には、面状採暖具100に電源を供給する導電線である電源コード110が設置される。コントローラ300の前面には、電源の「入」、「切」を操作する主電源スイッチ120が設置される。コントローラ300の上面には、リモートコントローラ400の操作信号を受信する受信部130と、表示灯140が設置される。
表示灯120は、コントローラ300に設置された主電源スイッチ120の「入」、「切」を表示する主電源表示灯142と、省エネルギの設定を表示する省エネルギ灯143の2個が設置される。
図6に示すように、コントローラ300の主な構成部材としては、樹脂材料で成型された上ケース310と下ケース320からなるケース301と、面状採暖具100の通電を制御する機能を備えた制御基板330と、ケース301の内部への浸水を防止するパッキン340と、本体200から導入されるヒータ線232を固定する導電線固定部材350と、電源コード110を固定する電源コード固定部材360とが含まれる。
ケース301は、略箱形状の上ケース310と略平板状の下ケース320をねじにより結合させて内部に空洞部が形成される構成としている。
上ケース310は、下面を開口した箱形状であり、外周に沿って略鉛直な外周壁311が一体に成型される。また、上ケース310は、外周壁311より内側に略鉛直な内周壁312が略全周に亘って一体に成型される。
上ケース310は、内周壁312の後方の一部に略コ字型屈曲した屈曲部312bが形成され、屈曲部312bの外側には、略平行に2枚の固定リブ313が内周壁312に連続して一体に成型される。固定リブ313は、内周壁312より低い高さに形成され、内周壁312の屈曲部312bと固定リブ313とで略箱型の導電線固定部314を形成する。導電線固定部314の内周壁312と固定リブ313には、縁端が解放された略U字状の導入溝312a、313aが幅方向に間隔を開けて複数形成される。
上ケース310は、外周壁311と内周壁312との間に複数のねじ受部315を一体に成型し、上ケース310と下ケース320とをねじで一体に固定することができる構成としている。
上ケース310の前面には、一部に外周壁311と内周壁312を一体に成型しており
、その部分に主電源スイッチ120を設置する電源スイッチ取付部316を形成している。電源スイッチ取付部316は、略長方形の貫通孔である。
主電源スイッチ120は、防水タイプのスイッチであり、電源スイッチ取付部316に押入することにより、主電源スイッチ120に付装された防水パッキンが電源スイッチ取付部316に密着し、防水構造が確保される。
上ケース310の側面には、外周壁311と内周壁312とを連接するリブを一体に成型しており、電源コード110を設置する電源コード取付部317を形成される。電源コード取付部317は、電源コード110の外周部分にインサート成型したゴム製のコードブッシュ111が装着できる形状に形成される。電源コード取付部317は、導電線固定部を構成する。
上ケース310の上面には、赤外線を透過する半透明の樹脂材料で成型された受光窓131と、透明な樹脂材料で成型された2個の表示窓141が密着固定される。
リモートコントローラ400は、赤外線の操作信号を送信し、送信される赤外線の操作信号は、受光窓131を透過して制御基板330に設置された受信部130で受信される。
制御基板330には、LEDの表示灯140が設置され、表示灯140は、表示窓141を介してコントローラ300の外部より視認できる。
図14に示すように、下ケース320は、略長方形の略平板状であり、下ケース320の周縁には、上ケースと接合する外周壁321が一体に成型される。外周壁321は、上ケース310の外周壁と略同形状に形成される。
外周壁321の内側には、平行な2本のリブ322が周回するように一体に成型され、2本のリブ322の間に連続して周回するパッキン溝323が形成される。パッキン溝323は、上ケース310に形成された内周壁312と略相似形を成し、上ケース310と下ケース320を重ねると、パッキン溝323の略中央に上ケース310の内周壁312が位置するように形成している。
図15(a)で示すように、リブ322の内方には、調圧部324が一体に形成される。調圧部324は、円形の突起部324aの中央部に複数の通気孔324bが形成される。
図15(b)に示すように、突起部324aには、調圧シート325を接着固定しており、調圧シート325は、空気は通過させるが、水は通過させない防水透湿性素材により形成する。コントローラ300は、内部と外部が通気孔324bと調圧シート325を介して通気可能な調圧手段を備えた構成としている。
外周壁311とパッキン溝323との間には、複数のねじ孔324が一体に成型される。ねじ孔324の設置位置は、上ケース310のねじ受部315に対応する位置に配置され、上ケース310と下ケース320をねじで一体に固定することができる。
図6に示すように、パッキン340は、素材としてシリコンゴムを使用して断面略長方形の枠状に成型している。パッキン340は、下ケースのパッキン溝323に押入できる枠形状および寸法に形成している。
制御基板330は、マイクロコンピュータを含む複数の部材で構成し、電源の「入」、「切」をはじめ、本体200の温度検知および温度調節機能、リモートコントローラ400との通信機能等の面状採暖具100の全ての制御機能を備える。
図9に示すように、導電線固定部材350は、樹脂材料を素材として成型され、断面は略コ字形状である。導電線固定部材350は、底辺の外面に全長に亘りリブ351が一体に形成される。導電線固定部材350は、両方の長辺に底辺側の縁端が解放されたに略U字状の固定溝352が複数形成される。固定溝352は、上ケース310の固定壁313に形成された導入溝313aと同配置であり、同寸法である。
導電線固定部材350は、上ケース310の導電線固定部314の2枚の固定リブ313を跨ぐように設置できる形状である。導電線固定部材350は、底辺に一対のシール材注入口353が設けられる。シール材注入口353は、導電線固定部材350と固定リブ313で囲まれた空間にシール材150を注入するように設ける。
導電線固定部材350は、底辺の両端部に溝部を形成しており、溝部により導電線固定部材350と固定リブ313で囲まれた空間と外部とを連通する通路350aを構成する。
通路350aは、シール材注入口353からシール材150を導電線固定部材350と固定リブ313で囲まれた空間に注入する際に、導電線固定部材350と固定リブ313で囲まれた空間がシール材で満杯になると、シール材150が通路350aを通って外部に流出するよう構成する。
図13は、ヒータ線232と、本体200からコントローラ300に伸びるその他の導電線を上ケース310の導電線固定部314に配設した状態で、導電線固定部材350を設置した状態を示すものである。図10は、導電線固定部314に導電線固定部材350を設置した状態の要部拡大平面図を示すものである。
導電線固定部材350は、固定リブ313を跨ぐように設置される。導電線固定部材350を固定リブ313に設置した状態で、導電線固定部材350のリブ351は、隣接する内周壁312と連続した配置となり、高さも同一となる。また、導電線固定部材350は、上端部が上ケース310の内面に当接する。
導電線固定部材350は、固定リブ313に設置した状態で、上ケース310の導入溝313aと導電線固定部材350の固定溝352が重なり合い、導入溝313aの下端部と固定溝352の上端部との間にヒータ線232と、本体200からコントローラ300に伸びるその他の導電線が通過する挿入孔が形成される。
図10に示すように、導電線固定部材350は、固定リブ313に設置した状態で、両端部が内周壁312の屈曲部312bに当接する。導電線固定部材350には、両端部に通路350aが形成され、通路350aによって導電線固定部材350と固定リブ313で囲まれる空間と外部とが連通する。
導電線固定部材350は、導電線固定部314に設置した状態で、シール材注入口353aよりシール材150を注入することにより、図17に示すように、導電線固定部材350および固定リブ313で囲まれる空間にシール材150が充満され、密閉状態が形成される。シール材150は、空気中の水分と反応して硬化する材料が好ましく、本実施の形態では、シラン末端ポリマを主成分とする材料を用いている。
シール材注入口353aから導電線固定部材350と固定リブ313で囲まれる空間にシール材150を注入する。
シール材注入口353aは、ヒータ線232と対向する位置を避けて、ヒータ線232とヒータ線232の間に設けている。従って、シール材150は、固定リブ313と導電線固定部材350とで囲まれる空間のシール材注入口353aと対向する内底部から先に充填され、その後内部で回り込むことにより十分にヒータ線232の周囲に充填され、空間全体に充填される。シール材の流動性や充填速度などもふまえた効率のよいシール注入ができるようになる。
導電線固定部材350と固定リブ313との間の空間にシール材150が充満すると、シール材150が導入溝313aと固定溝352との間で形成される挿入孔とヒータ線232との間に形成される隙間から漏れ出す。さらに、通路350aからも漏出し、漏出したシール材150が角状に突出してくることを目視できる。
シール材150が通路350aから角状に突出した状態が、導電線固定部材350と固定リブ313との間の空間にシール材150が充満した状態の目安となる。通路350aは、導電線固定部材350の両端部に形成しているので、導電線固定部材350と固定リブ313との間の空間にシール材150が充満した状態になった際に、シール材150が漏出することになり、シール材150が充満した状態の目安とする最適な位置となる。
導電線固定部材350は、上端部が上ケース310の内面に当接しており、導電線固定部材350を上ケース310に押し付けた状態でシール材150を充填するため、導電線固定部材350の上端部と上ケース310内面との間からのシール材150の漏れはほとんど生じない。
2つある注入口のうちの一方から注入すると、ヒータ線の周囲から漏れ出るものあるが、シール材注入口353aに近い通路350aからもシール材150が漏れ出てくるので、そこで注入をやめ、次に片方のシール材注入口353aから注入して一方の通路350aから漏れ出てくるまでシール材150を注入する。
なお、シール材150が漏出するのを目視しやすいように、導電線固定部材350を構成する樹脂材料の色をシール材150の色と異なる色にすることが好ましい。
漏れ出した不要なシール材150をふき取ると、通路350aがシール材150により埋められた状態となる。
本実施の形態では、導電線固定部材350と内周壁312の屈曲部312bとの間に通路350aを形成し、導電線固定部材350と固定リブ313で囲まれた空間にシール材150を注入する作業を行う際に、シール材150が通路350aから漏れ出すと、上記空間がシール材150で充満されたことの目安にできる。
本実施の形態では、導電線固定部材350の両端部に溝部を形成して通路350aを構成したが、内周壁312の屈曲部312bに溝部を形成して通路としてもよい。
これにより、通路350aは、導電線固定部材350の両端部に位置するので、導電線固定部材350と固定リブ313との間の空間にシール材150が充満した状態になった際に、シール材150が漏出することになり、シール材150が充満した状態の目安とする最適な位置となる。
また、導電線固定部材350の底辺、或いは、長辺に導電線固定部材350を貫通する透孔を形成し、透孔を通路としてもよい。
通路は、シール材の充填速度等、充填工法に応じて、任意の位置に設定することが可能となり、導電線固定部材と固定リブとの間の空間にシール材が充満した状態になった際に、シール材が漏出することになり、シール材150が充満した状態の目安とする最適な位置に設定することが可能となる。
図11に示すように、電源コード固定部材360は、樹脂材料を素材として成型され、断面は略コ字形状であり、底面361には、シール材150を注入するシール材注入口362が設置される。電源コード固定部材360には、電源コード取付部317に設置した状態で、外周壁311を挟持するように突出部360aが形成される。電源コード固定部材360は、導電線固定部材を構成する。
突出部360aには、上ケース310に設置した際に外周壁311と当接する面に、溝部を形成して通路360bを設けている。通路360bは、電源コード取付部317に電源コード固定部材360をはめ込んだ状態で、電源コード取付部317と電源コード固定部材360とコードブッシュ111とで囲まれる空間と外部とを連通する。
図8に示すように、電源コード取付部317に電源コード110を設置した状態においては、電源コード110のコードブッシュ111は、電源コード取付部317に設置される。電源コード110は、プラグ側が外周壁311の外方に、他方が内周壁312の内方に導入される。
図13に示すように、電源コード固定部材360は、電源コード取付部317を跨ぐように設置され、電源コード固定部材360の底面361は、内周壁312と連続して配置され、高さも同一となる。図12に、電源コード固定部材360の設置状態の要部拡大図を示す。
電源コード固定部材360の設置状態で、シール材注入口362よりシール材150を注入すると、図18に示すように、電源コード取付部317と電源コード固定部材360とコードブッシュ111とで囲まれる空間にシール材150が充填され、密閉状態が形成される。
シール材注入口362は、コードブッシュ111の位置とずらして設けてあり、シール材150が注入されると、電源コード取付部317と電源コード固定部材360とコードブッシュ111との間の空間にて、内底部からシール材150が充填される。電源コード取付部317と電源コード固定部材360とコードブッシュ111との間の空間にシール材150が充満すると、シール材150が突出部360aと外周壁311との間に形成した通路360bから漏れ出し、角状に突出することが目視できる。
シール材150が角状に突出した状態が、電源コード取付部317と電源コード固定部材360とコードブッシュ111との間の空間にシール材150が充満した状態の目安となる。
上記構成のコントローラ300の組立の基本手順としては、上ケース310の準備作業として、上ケース310に、制御基板330、電源コード110、主電源スイッチ120、導電線固定部材350、電源コード固定部材360等のすべての部材を設置した状態で、シール材150を充填する。
一方、下ケース320の準備作業としては、調圧部324の突起部324aに調圧シート325を接着固定し、パッキン溝323にパッキン340を押入する。
シール材150を充填した上ケース310と、パッキン溝323にパッキン340を押入した下ケース320とを重ね合わせ、複数のねじを下ケース320のねじ孔324を介して上ケース310のねじ受部315に螺合させる。
図16に示すように、複数のねじで螺合させたコントローラ300は、上ケース310内周壁312と下ケース320のパッキン溝323とがパッキン340を介して密着固定される。上ケース310の内周壁312と下ケース320のパッキン溝323とで形成される空間は、外部から浸水することがない防水空間302が形成される。
シール材150が漏れ出る通路350aの開口部は、上下のケースを組み合わせる際に、パッキン340に対向する当接部に設けている。これにより、通路530aがシール材150で充填された状態で、さらに、パッキン340を介して上ケース310と下ケース320を固定して、防水空間302を確実に防水することができる。
下ケース320のパッキン溝323に挿入されたパッキン340は、中央部分を上ケース310の内周壁312が押圧するので、シール性を向上することができる。
導電線固定部材350及び電源コード固定部材360は、下ケース320に装着した状態で、導電線固定部材350のリブ351が隣接する内周壁312と連続した配置となり、高さも同一となる。電源コード固定部材360の底面361は、内周壁312と連続して配置され、高さも同一となる。
これにより、導電線固定部材350と電源コード固定部材360においてもパッキン340によりシールされ、防水密閉構造が形成される。
上記のように形成されたコントローラ300の防水空間302は、調圧シート325を介して空気の流通は可能であるが、水の浸入は防止できる構成となる。これにより、防水空間302の調圧および調湿が調圧シート325を介して自動的に実施される構成となる。
<4>リモートコントローラの構成
図19は、リモートコントローラの外観を示す斜視図である。
図19に示すように、リモートコントローラ400は、樹脂材料で成型された略直方体のリモートコントローラケース410の前面に、赤外線送信部420が設置され、赤外線送信部420から操作信号を本体200に設置されたコントローラ300に送信する。
リモートコントローラケース410の上面には、複数の操作スイッチ430が設置される。操作スイッチ430としては、面状採暖具100の電源を「入」、「切」する通電スイッチ431と、面状採暖具100の温度を設定する温度調節スイッチ432と、面状採暖具100の加熱範囲を切換える面積切換スイッチ433と、室温の変化に応じて設定温度を自動的に変化させる省エネルギスイッチ434と、他の電気器具と同時に使用する時にブレーカ落ちを軽減する目的で、面状採暖具の面積の1/2を交互に通電する電力1/2スイッチ435が設置される。
リモートコントローラケース410の上面には、液晶の表示部436が設定されており、操作スイッチ430で操作された状態が表示部436の液晶画面に表示される。
リモートコントローラ410は、内蔵する乾電池により作動する構成である。操作スイッチ430の操作による操作データは、赤外線信号として送信部420より送信され、コントローラ300の受信部130により受信され、本体200のヒータユニット230が制御される。
<5>面状採暖具の動作および作用
面状採暖具100の基本的な使用方法は、電源コード110をコンセントに接続した状態で、コントローラ300の主電源スイッチ120を「入」にすることにより、コントローラ300の主電源表示灯142が点灯する。
リモートコントローラ400の通電スイッチ431を「入」にすることによりヒータユニット230への通電が開始され、本体200の昇温が開始される。
本体200の温度は、リモートコントローラ400により設定された温度に維持される。本体200の温度を変更する場合は、リモートコントローラ400の温度調節スイッチ432を操作することにより、設定温度を変更することができる。
面状採暖具100の使用を終了する場合は、本体200のコントローラ300の主電源スイッチ120を「切」にすることによりヒータユニット230への通電は停止する。
上記は通常状態での使用方法であるが、誤使用または異常環境での面状採暖具100の対応性能、特に最も重要な耐水性能を中心に以下に記述する。例えば、面状採暖具100全体が水深1m程度の水中に30分以上放置された場合を想定して記述する。
本実施の形態の面状採暖具100のコントローラ300は、上ケース310の内周壁312と下ケース320のパッキン溝323とが全周をパッキン340を介して密着されるので、内周壁312の内部は外部から浸水することがない防水空間302が形成される。
充電部材である制御基板330は、防水空間302の中に設置される。制御基板330に接続されている電源コード110、ヒータ線232、およびその他の導電線等の導入部は、シール材150で密閉される。
防水空間302に対応する下ケース320の底面には、調圧シート325を設置し、調圧シート325を介して空気は通過することはできるが、水は通過することができない構成としている。すなわち、防水空間302は、水に対しては密閉空間であるが、空気に対しては解放空間となる。
上記構成を備えることにより、コントローラ300が完全に水につかった状態においても、防水空間302に浸水することがなく、高い防水性能を備えている。
上記仕様の防水空間302は、温度変化により内部の温度および気圧が変化した場合、調圧シート325を介して通気することにより内部の気圧変動を抑制することができる。これにより、結露の発生を抑制することができ、結露による漏電および回路の短絡の発生を抑制することができる。
上記調圧シート325は、下ケース320の調圧部324の通気孔324bを介してコントローラ300の外面に接続されて開口した構成である。コントローラ300の組立完成後に通気孔324bより空気を送入し、送入した空気の漏れを検査することにより、防水空間302の気密状態を確認することができ、製品の安全性と信頼性を確保することが
できる。
(実施の形態2)
図20は、実施の形態2におけるコントローラの上ケースの調圧チューブ取付部の平面図である。
本実施の形態が実施の形態1と異なるのは、コントローラの防水空間の調圧手段を構成する調圧部の構成である。なお、以下の説明において、実施の形態1と同じ構成は、同一符号を附して説明を省略する。
図20に示すように、上ケース610の側面には、電源コード取付部612が配設され、電源コード取付部612近傍の外周壁611には、調圧チューブ620を設置する略U字状のチューブ取付溝613が形成される。また、電源コード取付部612は、内周壁615にリブ612aにより接続されており、リブ612aに略U字状のチューブ導入溝614が形成されている。電源コード取付部612は、導電線固定部を構成する。
調圧チューブ620は、チューブ取付溝613およびチューブ導入溝614に設置される。調圧チューブ620は、シリコンゴムを主成分とする軟質のチューブからなり、本実施の形態では、外形が1mm、内径が0.5mm、長さが約50mmに形成している。実験の結果、この寸法を採用することにより、調圧チューブ620は、空気は通過することはできるが、水は通過することができない仕様となる。
調圧チューブ620は、始端をチューブ取付溝613の外方に配置し、外周壁611と内周壁615の間で屈曲させ、チューブ導入溝614から電源コード取付部612の内部に導入する。そして、電源コード取付部612の内部で屈曲させて、内周壁615の内部に導入し、調圧チューブ620の終端は、内周壁615の内部に解放させる。以上のように、調圧チューブ620は、複数の屈曲と高低差を設けている。これにより、内部に水が浸入し難い構成となる。
調圧チューブ620を設置した後、電源コード110は、実施の形態1と同様に、電源コード取付部612に設置する。
下ケースは、実施の形態1で説明した、調圧部324を構成する突起部324aおよび通気孔324bは形成しておらず、密封された構成である。
上記構成の調圧チューブ620は、コントローラの組立完成後に、外周壁611の外方に露出した始端より空気を送入し、送入した空気の漏れを検査する。これにより、防水空間の気密状態を確認することができ、製品の安全性と信頼性を確保することができる。
調圧チューブ620は、検査終了後、何らかの原因により、チューブ取付溝613の外方に配置した始端が外周壁611の内側へ押し込まれることが想定される。その場合であっても、コントローラは、内周壁615で囲まれる空間が防水空間に構成されるので、製品の安全性と信頼性を確保できる。
調圧チューブは、比較的低価格の部材であり、コントローラおよび面状採暖具のコスト削減を図ることができる。
(実施の形態3)
図21は、実施の形態3における本体の構成を示す模式図である。
本実施の形態が実施の形態1および実施に形態2と異なるのは、本体の部材の構成と、コントローラが漏電検知機能を備える点である。なお、以下の説明において、実施の形態1と同じ構成は、同一符号を附して説明を省略する。
図21に示すように、本体500は、表面材210と、ヒータユニット230と、均熱シート510と、断熱シート240と、裏面材250とを主な構成部材とする。本体500は、表面材250とヒータユニット230の間に第一接着シート220を介在させ、均熱シート510と断熱シート240の間に第二接着シート260を介在させ、断熱シート240と裏面材との間に第三接着シート270を介在させた積層体で構成している。
均熱シート510は、ヒータユニット230で発熱した熱を本体200全面に均一に拡散するとともに、導電線であるヒータ線232からの漏電を検知する目的の部材である。本実施の形態では、均熱シート510は、熱伝導率が高い金属シートであるアルミニュームを主成分とする厚さ約0.01mmのアルミシートを基材とし、両面にポリエチレン樹脂とEVA(エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂)からなる接着樹脂512をコーティングして形成したものであり、接着樹脂を約85℃以上に加熱することにより溶融して接着剤としての機能を発揮する。
均熱シート510の端部には、導電線であるリード線511を接続しており、リード線511は、ヒータ線232と同様にコントローラの内部に導入され、制御基板の漏電検知回路に接続される。漏電検知回路は、漏電を検知するとともに、ヒータ線232の通電を遮断する通電遮断回路を備える。
ヒータユニット230のアルミシート231の端部には、導電線であるリード線233が接続され、制御基板の漏電検知回路に接続される。
リード線233は、実施の形態1で説明したヒータ線と同様に、導電線固定部材350と固定リブ313を介してコントローラ内部に引き込まれる。これにより、防水性能が維持され、製品の安全性と信頼性を確保できる。
本体500の内部でヒータ線232が漏電した場合、均熱シート510、またはヒータユニット230のアルミシート231に流れる電流を漏電検知回路が検知することにより、通電遮断回路が作動し、ヒータ線232の通電が遮断される。これにより、使用者が感電等の損傷を受けること、および面状採暖具の発火等を抑制することができるため、安全性をより向上することができる。
本実施の形態の面状採暖具は、調圧手段325は、通気は可能であるが、水は通過させない防水透湿性素材で形成している。
これにより、調圧手段325は、簡単な構成で実施することが可能であり、シンプルで確実な調圧手段を実施することができる。
本実施の形態の面状採暖具は、コントローラ300の外方と防水空間302を導通する調圧チューブ620を備え、調圧チューブ620は、通気可能であるが、通水不可能な寸法に形成している。
これにより、比較的低価格の部材で調圧手段を実施することができ、低コストで安全性の高い面状採暖具を提供することができる。
本実施の形態の面状採暖具は、本体200は、略全面に亘る均熱シート510を内蔵し
、均熱シート510の一端にリード線511を備え、制御基板は、漏電検知回路を備え、リード線511は、制御基板330の漏電検知回路に接続することにより、ヒータ線232の漏電検知および遮断の機能を備えている。
これにより、漏電検知回路の情報によりヒータ線の通電を遮断することが可能となり、使用者が感電等の損傷を受けること、および面状採暖具の発火等を抑制することができ、安全性をより向上することができる。
本実施の形態の面状採暖具は、ヒータユニット230を内蔵する本体200とコントローラ300とを含み、コントローラ300の上ケース310の周壁312は、パッキン340を介して下ケース320と密着固定し、周壁312の内部に防水性能を備えた防水空間302が形成され、防水空間302にヒータ線232が接続された制御基板330が配設され、防水空間302内への通気は可能であるが、浸水を遮断する調圧手段325を備えることにより、防水空間は防水構造となっており、防水空間の内部に設置された充電部材である制御基板は浸水により漏電および短絡による異常が発生することを防止することができる。また、調圧手段により防水空間内部の気圧変動と温度変化を抑制し、結露の発生を抑制することができ、結露による充電部の漏電および回路の短絡の発生を抑制することができ、安全な面状採暖具を提供することができる。