JP7220304B2 - クラッチ機構および動力工具 - Google Patents

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Description

本発明は、入力軸から出力軸へ伝達される回転トルクを制限するためのクラッチ機構、及びクラッチ機構を備える動力工具に関する。
電動モータを駆動部とする電動ドライバやエアモータを駆動部とするエアドリルなどの動力工具において、駆動部の回転駆動軸とドライバビットやドリルビットなどの加工工具が取り付けられる出力軸との間にクラッチ機構を設けて、駆動部から出力軸に加わる最大の回転トルクを制限するようにしたものがある(特許文献1、2)。例えば電動ドライバにクラッチ機構を設けることにより、ドライバビットを介してネジに加わる回転トルクを制限してネジが破損することを防止できる。また、ネジが着座して急激に回転トルクが大きくなることによりクラッチ機構が駆動連結を解除したときに、ねじ締めが完了したと判断してモータの駆動を停止させたりねじ締め本数をカウントしたりするようにすることもできる。
例えば上述の電動ドライバに設けられたクラッチ機構は、出力軸側に配置したクラッチボールが回転駆動軸側のクラッチ部材の突部に回転方向で係合するように配置され、クラッチボールをスプリングによってクラッチ部材の側に付勢してクラッチボールが突部に係合する状態を維持するようになっている。クラッチボールが突部に回転方向で係合している間は回転駆動軸から出力軸に回転トルクが伝達され、過大な回転トルクが作用するとクラッチボールがスプリングの付勢力に抗して回転軸線の方向に変位してクラッチボールと突部との回転方向での係合が解除され、回転トルクの伝達が解除されるようになっている。
国際公開2017/038846号公報 特開2017-42878号公報
クラッチ機構が伝達できる最大回転トルクは、スプリングの付勢力や、クラッチ機構が解除される際のクラッチボールの変位量、クラッチボールがクラッチ部材の突部に係合する径方向の位置などに依存する。そのため、例えばクラッチボールの大きさや配置を変更することによりクラッチ機構が伝達できる最大回転トルクを変更することができる。しかしながら、通常、クラッチボールが保持される保持孔の大きさはクラッチボールの大きさに合わせて設定されているため、異なる大きさのクラッチボールに交換することはできない。また、クラッチボールの位置は保持孔の位置で決まるため、クラッチボールの位置をずらすこともできない。そのため、最大回転トルクが異なるクラッチ機構を構成するためには、クラッチボールを保持する保持孔が異なる大きさや異なる位置で形成された部材を複数種類用意して、要求される最大回転トルクに合わせてその部材を選択して使用する必要がある。そうすると、用意しなければならない部品の種類が増えてコストが増加する。また、後から最大回転トルクを変更しようとしたときには、クラッチボールだけではなくそれを保持する部材も交換しなければならず、作業が繁雑になる。
そこで本発明は、係合部材(クラッチボール)を保持する部品を変更することなく、伝達できる最大回転トルクを変更できるようにしたクラッチ機構、及びそのようなクラッチ機構を備える動力工具を提供することを目的とする。
すなわち本発明は、
入力軸と出力軸との間に配置されて、該入力軸から該出力軸へ伝達される回転トルクを制限するためのクラッチ機構であって、
入力軸と出力軸とのうちの一方に駆動連結されて回転軸線の周りで回転可能に配置され、該回転軸線の方向に突出した係合突部を有する第1クラッチプレートと、
入力軸と出力軸とのうちの他方に駆動連結され、該第1クラッチプレートに対して該回転軸線の方向で対向し該回転軸線の周りで回転可能に配置された第2クラッチプレートであって、該回転軸線の方向で貫通した内側保持孔と、該内側保持孔よりも径方向外側の位置で該回転軸線の方向で貫通した外側保持孔とを有する第2クラッチプレートと、
該内側保持孔と該外側保持孔とのうちの一方の保持孔内に選択的に配置されて、該一方の保持孔内において該回転軸線の方向で変位可能に保持された係合部材と、
該係合部材に該回転軸線の方向で当接して該係合部材を該第1クラッチプレートに向かって押圧するスライド部材と、
を備え、
該係合部材が該係合突部に回転方向で係合することにより該第1クラッチプレートと該第2クラッチプレートとの間で回転トルクが伝達され、所定の最大回転トルク以上の負荷が作用したときに該係合突部によって該係合部材が該スライド部材とともに該回転軸線の方向で変位されて該係合突部と該係合部材との該回転方向での係合が解除されることにより、該回転トルクの伝達が解除されるようにされており、
該係合部材が該内側保持孔に選択的に配置された場合よりも該外側保持孔に選択的に配置された場合の方が、該最大回転トルクが大きくなるようにされた、クラッチ機構を提供する。
当該クラッチ機構においては、第2クラッチプレートに内側保持孔と内側保持孔よりも径方向外側に位置する外側保持孔とが形成されており、係合部材を内側保持孔と外側保持孔とのうちの一方に選択的に配置するようになっている。組み立て時に係合部材を内側保持孔に配置するか外側保持孔に配置するかを選択するだけで、第2クラッチプレートを交換することなく、クラッチ機構が伝達できる最大回転トルクを変更することが可能となる。
また、該内側保持孔よりも該外側保持孔の方が大径とされ、該係合部材が、該内側保持孔に対応した小径の球状係合部材と、該小径の係合部材よりも大径とされて該外側保持孔に対応した大径の球状係合部材とのうちから該一方の保持孔に対応するように選択された球状係合部材であるようにすることができる。
このような構成により、異なる大きさの球状係合部材を用意する必要はあるが、設定可能な最大回転トルクの差をより大きくすることが可能となる。
また、該第1クラッチプレートが、該内側保持孔内に該小径の球状係合部材が配置されたときに該小径の球状係合部材と係合する内側係合面と、該外側保持孔内に該大径の球状係合部材が配置されたときに該大径の球状係合部材と係合する外側係合面とを有し、該内側係合面が、該小径の球状係合部材と該大径の球状係合部材との直径の差の分だけ該外側係合面よりも該第2クラッチプレートの側に突出しているようにすることができる。
また本発明は、
入力軸と出力軸との間に配置されて、該入力軸から該出力軸へ伝達される回転トルクを制限するためのクラッチ機構であって、
入力軸と出力軸とのうちの一方に駆動連結されて回転軸線の周りで回転可能に配置され、該回転軸線の方向に突出した係合突部を有する第1クラッチプレートと、
入力軸と出力軸とのうちの他方に駆動連結され、該第1クラッチプレートに対して該回転軸線の方向で対向し該回転軸線の周りで回転可能に配置された第2クラッチプレートであって、該回転軸線の方向で貫通した小径保持孔と、該小径保持孔よりも大径とされ該回転軸線の方向で貫通した大径保持孔とを有する第2クラッチプレートと、
該小径保持孔に対応した小径の係合部材と該小径の係合部材よりも大径とされて該大径保持孔に対応した大径の係合部材とのうちから選択された係合部材であって、該小径保持孔と該大径保持孔とのうちの対応した保持孔内に配置されて、該対応した保持孔内において該回転軸線の方向に変位可能に保持された係合部材と、
該係合部材に該回転軸線の方向で当接して該係合部材を該第1クラッチプレートに向かって押圧するスライド部材と、
を備え、
該係合部材が該係合突部に回転方向で係合することにより該第1クラッチプレートと該第2クラッチプレートとの間で回転トルクが伝達され、所定の最大回転トルク以上の負荷が作用したときに該係合突部によって該係合部材が該スライド部材とともに該回転軸線の方向で変位されて該係合突部と該係合部材との該回転方向での係合が解除されることにより、該回転トルクの伝達が解除されるようにされており、
該小径の係合部材が該小径保持孔に選択的に配置された場合よりも該大径の係合部材が該大径保持孔に選択的に配置された場合の方が、該最大回転トルクが大きくなるようにされた、クラッチ機構を提供する。
当該クラッチ機構においては、第2クラッチプレートに小径保持孔と、小径保持孔よりも大径な大径保持孔とが形成されており、小径の係合部材と大径の係合部材とのうちの一方を対応する保持孔に選択的に配置するようになっている。組み立て時に小径の係合部材を小径保持孔に配置するか大径の係合部材を大径保持孔に配置するかを選択するだけで、第2クラッチプレートを交換することなく、クラッチ機構が伝達できる最大回転トルクを変更することが可能となる。
さらに本発明は、
入力軸を有する駆動部と、
加工工具が取り付けられる工具取付部を有する出力軸と、
該入力軸と該出力軸との間に配置された、上述のクラッチ機構と、
を備える動力工具を提供する。
以下、本発明に係る動力工具の実施形態を添付図面に基づき説明する。
本発明の一実施形態に係る電動ドライバの断面図である。 図1の電動ドライバの機能ブロック図である。 図1の電動ドライバのクラッチ機構とその周囲の拡大図である。 出力軸の筒状軸部が押込まれた状態を示す、クラッチ機構とその周囲の拡大図である。 クラッチ機構を構成する部品の上方から見た分解斜視図である。 クラッチ機構を構成する部品の下方から見た分解斜視図である。 クラッチ機構が回転トルクの伝達を解除した状態と示す、クラッチ機構とその周囲の拡大図である。 摩耗状態を判定する際の動作を示すフローチャートである。 内側保持孔に小径の球状係合部材を配置したときの、クラッチ機構とその周囲の拡大図である。 図9のクラッチ機構においてクラッチが回転トルクの伝達を解除した状態を示す、クラッチ機構とその周囲の拡大図である。
本発明の一実施形態に係る電動ドライバ(動力工具)1は、図1に示すように、工具ハウジング10と、工具ハウジング10内に配置された電動モータ(駆動部)12と、ドライバビット(加工工具)が着脱可能に取り付けられる工具取付部14を有する出力軸16と、電動モータ12の回転駆動軸(入力軸)18の回転を減速して伝達する遊星歯車機構20と、遊星歯車機構20と出力軸16との間に配置されたクラッチ機構22とを備える。電動モータ12の回転トルクは、遊星歯車機構20及びクラッチ機構22を介して出力軸16に伝達される。工具ハウジング10内にはさらに、電動モータ12の駆動を開始させるためのスタート用光電センサ24と、電動モータ12の駆動を停止させるためのブレーキ用光電センサ26とが設けられており、後述するようにこれらの光電センサ24、26の出力値に基づいて電動モータ12の駆動と停止を制御するようになっている。
工具ハウジング10内に配置された制御回路28には、図2に示すように、演算部30と、電動モータ12の駆動制御を行うためのモータ制御部32と、制御プログラムや制御パラメータ等を記憶するためのメモリ34が設けられている。スタート用光電センサ24及びブレーキ用光電センサ26は演算部30に接続され、演算部30がスタート用光電センサ24及びブレーキ用光電センサ26の出力値に基づいて、電動モータ12の駆動の開始と停止を制御する。また、当該電動ドライバ1は、作業者から見やすい位置に配置されたエラー表示部36も備える。エラー表示部36はLEDを有しており、何らかのエラーが生じた場合にLEDの発光でその状態を作業者に表示するようになっている。なお、スタート用光電センサ24は、互いに対向する投光部(図示しない)と受光部24aを有し、投光部から出射された光を受光部24aで受けて、受光部24aが受光した光量に応じた出力値を出力するようになっている。ブレーキ用光電センサ26も同様に、互いに対向する投光部(図示しない)と受光部26aを有し、投光部から出射された光を受光部26aで受けて、受光部26aが受光した光量に応じた出力値を出力するようになっている。当該実施形態においては、スタート用光電センサ24及びブレーキ用光電センサ26は、受光部24a、26aで受光する光量が低下するとそれに応じて出力値が上昇するように構成されている。
図3に示すように、出力軸16は、クラッチ機構22に連結された中実軸部38と、中実軸部38の外周面38a上を摺動するように配置された筒状軸部40とからなる。中実軸部38と筒状軸部40とは回転方向では固定されている。筒状軸部40に形成された施錠子保持孔42内には球状の施錠子44が配置され、筒状軸部40の外周面40a上にはスリーブ46が配置されている。スリーブ46が図示の位置から先端側(図で見て下側)に変位すると施錠子44が径方向外側に変位可能となる。この状態でドライバビットを筒状軸部40の挿入孔48内に挿入してスリーブ46を元の位置に戻すと、ドライバビットが出力軸16に固定される。このように、出力軸16の工具取付部14は、筒状軸部40、施錠子44、及びスリーブ46によって構成されている。ドライバビットが工具取付部14に取り付けられた状態で工具ハウジング10を把持してドライバビットをネジに押し付けるように操作すると、図4に示すように、出力軸16の筒状軸部40が工具ハウジング10内に押込まれる。筒状軸部40が押込まれると、筒状軸部40の後端部50に配置されたスイッチプレート52も筒状軸部40を一緒に変位する。そうすると、スイッチプレート52がスタート用光電センサ24の投光部と受光部24aとの間に進入して、投光部から受光部24aに向かって投光された光を部分的に遮るようになる。スイッチプレート52の進入量が大きくなるに従い受光部24aが受光する光量が小さくなり、そうするとスタート用光電センサの出力値は上昇していく。演算部30は、所定のスタート閾値よりも大きい出力値(駆動開始を指示する信号)をスタート用光電センサ24から受信したときに電動モータ12の駆動を開始する。
クラッチ機構22は、遊星歯車機構20を介して電動モータ12の回転駆動軸18に駆動連結された第1クラッチプレート54と、出力軸16の中実軸部38に固定して駆動連結された第2クラッチプレート56とを備える。第1クラッチプレート54と第2クラッチプレート56とは、それぞれ回転軸線Rの周りで回転可能に配置されている。また第2クラッチプレート56は第1クラッチプレート54に対して対向するように配置されている。図5及び図6に示すように、第2クラッチプレート56に対向する第1クラッチプレート54の対向面55には、径方向に延びる保持溝58が形成されており、保持溝58内において回転軸線Rの放射方向に延びる円柱状係合部材(係合突部)60が回転可能に保持されるようになっている。第2クラッチプレート56には、回転軸線Rの方向で貫通した2つの内側保持孔(小径保持孔)62と、内側保持孔62よりも径方向外側の位置で回転軸線Rの方向で貫通した2つの外側保持孔(大径保持孔)64が形成されている。外側保持孔64は、内側保持孔62よりも大径となっている。内側保持孔62には小径の球状係合部材(係合部材)66が保持されるようになっており、外側保持孔64には小径の球状係合部材66よりも大径とされた大径の球状係合部材(係合部材)68が保持されるようになっている。ただし、使用されるのは一方の係合部材だけであり、当該電動ドライバ1を組み立てる際に、内側保持孔62に対応した小径の球状係合部材66と外側保持孔64に対応した大径の球状係合部材68とのうちの一方の係合部材を選択して、選択された係合部材のみを対応した保持孔内に配置する。図1及び図3においては、外側保持孔64に大径の球状係合部材68が選択的に配置されている。図6に示すように、第1クラッチプレート54の対向面55には、内側保持孔62内に小径の球状係合部材66が配置されたときに小径の球状係合部材66と係合する内側係合面55aと、外側保持孔64内に大径の球状係合部材68が配置されたときに大径の球状係合部材68と係合する外側係合面55bとが形成されている。内側係合面55aは、小径の球状係合部材66と大径の球状係合部材68との直径の差の分だけ、外側係合面55bよりも第2クラッチプレート56の側に突出している。これにより、内側保持孔62内に小径の球状係合部材66を配置したときに小径の球状係合部材66が第2クラッチプレート56から突出する高さと、外側保持孔64内に大径の球状係合部材68を配置したときに大径の球状係合部材68が第2クラッチプレート56から突出する高さとが同じになる。
図3に示すように、クラッチ機構22はさらに、第2クラッチプレート56及び出力軸16の中実軸部38に対して回転軸線Rの方向で変位可能に配置された変位部材70を備える。変位部材70は、中実軸部38の外周面38a上を回転軸線Rの方向に摺動するスライド部材72と、ベアリング74によってスライド部材72に対して回転可能とされたスラスト受け部材76と、スプリング78によってスラスト受け部材76に押圧されてスライド部材72及びスラスト受け部材76と共に回転軸線Rの方向で変位するように配置されたセンサピン80とを有する。変位部材70のスラスト受け部材76は、クラッチスプリング82によって伝達ピン84を介して第2クラッチプレート56の側に押圧されている。大径の球状係合部材68は、スライド部材72の係合面72aに当接しているため、スラスト受け部材76及びスライド部材72を介して第1クラッチプレート54及び円柱状係合部材60の側に付勢されている。
図4に示すように出力軸16の筒状軸部40が押込まれて電動モータ12の駆動が開始されると、電動モータ12の回転駆動軸18に遊星歯車機構20を介して駆動連結された第1クラッチプレート54及び円柱状係合部材60が回転軸線Rの周りで回転される。そうすると、円柱状係合部材60が球状係合部材68と回転方向で係合して、球状係合部材68を介して回転トルクが第2クラッチプレート56に伝達される。第2クラッチプレート56は、出力軸16の中実軸部38に固定されているため、回転トルクは出力軸16に伝達される。円柱状係合部材60と球状係合部材68は曲面で係合しており、回転トルクが伝達されている状態では、球状係合部材68は円柱状係合部材60から回転軸線Rの方向で円柱状係合部材60から離れる向きに力を受ける。一方で、球状係合部材68はクラッチスプリング82によって第1クラッチプレート54の側に付勢されている。そのため、球状係合部材68が円柱状係合部材60から受ける回転軸線Rの方向での力がクラッチスプリング82の付勢力の範囲内である間は球状係合部材68は回転軸線Rの方向に変位せず、円柱状係合部材60と球状係合部材68とが回転方向で係合して回転トルクが伝達される状態が維持される。
クラッチ機構22に所定の最大回転トルク以上の負荷が作用すると、球状係合部材68は円柱状係合部材60によって回転軸線Rの方向に押されて、クラッチスプリング82を圧縮しながら変位部材70とともに第1クラッチプレート54から離れる向き(図で見て下向き)に変位する。図7に示すように、球状係合部材68が円柱状係合部材60に完全に乗り上げた状態にまで変位すると、円柱状係合部材60と球状係合部材68との回転方向での係合が解除され、第1クラッチプレート54から第2クラッチプレート56への回転トルクの伝達も一時的に解除される。このとき、変位部材70のセンサピン80がブレーキ用光電センサ26の投光部と受光部26aとの間に進入する。これにより、投光部から受光部26aに向かって投光された光をセンサピン80が部分的に遮るようになる。当該実施形態においては、受光部26aで受光される光量が低下すると、その低下した光量に応じてブレーキ用光電センサ26の出力値が上昇するようになっている。そのため、演算部30は、ブレーキ用光電センサ26の出力値に基づいて、投光部と受光部26aとの間におけるセンサピン80の位置を検出することができる。演算部30は、ブレーキ用光電センサ26の出力値が所定の解除判定基準値を超えたときに、クラッチ機構22が回転トルクの伝達を解除したと判断し、電動モータ12の駆動を停止する。
クラッチ機構22において、特に円柱状係合部材60と球状係合部材68とは比較的に大きな力を受けながら擦れ合う。そのため、当該電動ドライバ1を繰り返し使用していくと、円柱状係合部材60及び球状係合部材68が徐々に摩耗していく。また、球状係合部材68とスライド部材72との間や、スライド部材72とスラスト受け部材76との間でも互いに擦れ合う動きが生じ得るため、これら部材も摩耗していく虞がある。このようにしてクラッチ機構22を構成する部材が摩耗していくと、円柱状係合部材60に球状係合部材68が乗り上げてクラッチ機構22による回転トルクの伝達が解除されたときにセンサピン80がブレーキ用光電センサ26の投光部と受光部26aとの間に進入する量が小さくなっていく。当該電動ドライバ1においては、演算部30がブレーキ用光電センサ26の出力値を監視しており、ブレーキ用光電センサ26の出力値に基づいて投光部と受光部26aとの間でセンサピン80の位置を検出して、クラッチ機構22の摩耗状態を判定するようになっている。
当該電動ドライバ1における摩耗状態の判定は、具体的には図8のフローチャートに示す動作により行われる。当該電動ドライバ1を電源に接続すると演算部30が起動する(S10)。演算部30は、スタート用光電センサ24の出力値を監視し、スタート用光電センサ24の出力値が所定のスタート閾値よりも大きくなったら(S12)、工具取付部14に取り付けられたドライバビットが押し込まれたと判断して電動モータ12の回転駆動を開始する(S14)。次に演算部30は、ブレーキ用光電センサ26の出力値を監視して、ブレーキ用光電センサ26の出力値が所定の解除判定基準値よりも大きくなり(S16)その後に解除判定基準値以下の値に戻ったときに(S17)、その間の出力値のうちの解除判定基準値からの差が最も大きい最大出力値をメモリ34に記憶して(S18)、電動モータ12の駆動を停止させる(S20)。演算部30は、再びスタート用光電センサ24の出力値を監視し、スタート用光電センサ24の出力値がスタート閾値よりも大きい値にまで変化したら(S22)、メモリ34に記憶されているブレーキ用光電センサ26の最大出力値を所定の摩耗判定基準値と比較する(S24)。最大出力値が摩耗判定基準値にまで上昇して摩耗判定基準値以上となっていた場合には、センサピン80は十分に大きく変位していてクラッチ機構22はそれほど摩耗していないと判断して、電動モータ12の駆動を再び開始する(S14)。一方で、最大出力値が摩耗判定基準値にまで至っておらず、よって摩耗判定基準値よりも小さい場合には、センサピン80が十分に変位しておらずクラッチ機構22が摩耗していると判断して、エラー信号を発する(S26)。エラー信号が発せられると、クラッチ機構22の摩耗が一定以上進行していることを示すようにエラー表示部36が発光する。この場合には電動モータ12の駆動は開始されない。なお、スタート用光電センサ24及びブレーキ用光電センサ26は、受光部26aで受光する光量が低下したときに出力値が低下するようになっていてもよい。この場合には、スタート用光電センサ24の出力値がスタート閾値よりも小さな値にまで変化したときに電動モータ12の駆動が開始される。またブレーキ用光電センサ26の出力値が、解除判定基準値よりも小さな値にまで変化してから解除判定基準値以上の値に戻ったときにクラッチ機構22が解除されたと判断し、その間の出力値のうちの解除判定基準値からの差が最も大きい最小出力値が摩耗判定基準値以下にまで至らず摩耗判定基準値よりも大きい値であった場合にはエラー信号が発せられる。なお、摩耗状態の判定は、摩耗が一定量を超えたか否かの2つの状態だけを示すのではなく、ブレーキ用光電センサ26の出力値に基づいて摩耗の進行具合を3段階以上またはアナログ的に無段階で示すようにしてもよい。
図9及び図10に示すように、大径の球状係合部材68に代えて、小径の球状係合部材66を内側保持孔62内に選択的に配置して組み立てることもできる。上述のように、内側保持孔62内に配置された小径の球状係合部材66は、第1クラッチプレート54の対向面55において、外側係合面55bよりも突出した内側係合面55aと係合する。これにより、クラッチ機構22が解除されていない図9の状態において、クラッチ機構22の変位部材70は、大径の球状係合部材68を配置した図3の状態と同じ位置となる。よって、ブレーキ用光電センサ26に対するセンサピン80の位置も同じになる。一方で、クラッチ機構22が解除された図10の状態においては、大径の球状係合部材68を配置した図7の状態よりも変位部材70の変位量が小さい。よって、センサピン80がブレーキ用光電センサ26の投光部と受光部26aとの間に進入する量は、図7の場合よりも小さい。そのため、小径の球状係合部材66を選択的に配置した場合には、解除判定基準値と摩耗判定基準値は大径の球状係合部材68を選択的に配置したときに比べて、小さな値に設定される。
クラッチ機構22が解除されるときの変位部材70の変位量が小さい方がより小さい回転トルクでクラッチ機構22が解除されることになる。また円柱状係合部材60に対して球状係合部材66、68が係合する位置が、回転軸線Rに対してより径方向内側にある方がより小さい回転トルクでクラッチ機構22が解除されることになる。したがって、当該電動ドライバ1においては、小径の球状係合部材66を内側保持孔62に選択的に配置した場合には、大径の球状係合部材68を外側保持孔64に選択的に配置した場合に比べて、より小さな回転トルクでクラッチ機構22が解除されることになる。すなわち、大径の球状係合部材68を外側保持孔64に配置するか、小径の球状係合部材66を内側保持孔62に配置するかで、クラッチ機構22が伝達可能な最大回転トルクの大きさを変更することが可能となる。なお、内側保持孔と外側保持孔の大きさを同じにして、内側保持孔と外側保持孔に配置される係合部材を同じものとすることもできる。この場合には、係合部材が円柱状係合部材60に係合する径方向での位置が異なるため、最大回転トルクを異なる大きさに設定できる。又は、小径保持孔と大径保持孔を径方向で同じ位置に形成してもよい。この場合には、配置する係合部材の大きさが異なりクラッチ機構が解除されるまでの変位部材70の変位量が異なるため、最大回転トルクを異なる大きさに設定できる。ただし、上記実施形態のように、保持孔の径方向での位置が異なるようにし且つ係合部材の大きさも異なるようにした方が、設定できる最大回転トルクの差をより大きくすることができる。
以上に本発明の実施形態について説明をしたが、本発明はこれら実施形態に限定されるものではない。例えば、係合突部を構成する円柱状係合部材は、円柱形状ではなく例えば球状とするなど他の形状の部材としてもよいし、第1クラッチプレートと一体に形成して第1クラッチプレートから突出した部分としてもよい。また、円柱状係合部材を出力軸の側に駆動連結し、係合部材を入力軸の側に駆動連結して、クラッチ機構が解除されるときに変位部材が入力軸側に変位するように構成することもできる。さらには、上記実施形態においては本発明にかかる動力工具を、電動モータを駆動部とする電動ドライバを例として説明をしているが、例えば電動ドリルや電動研磨機などの電動ドライバ以外の電動工具とすることもできるし、エアモータを駆動部とするエアー工具のような他の動力工具とすることもできる。また、クラッチ機構は動力工具以外の機械構造において使用することもできる。
1 電動ドライバ(動力工具)
10 工具ハウジング
12 電動モータ(駆動部)
14 工具取付部
16 出力軸
18 回転駆動軸(入力軸)
20 遊星歯車機構
22 クラッチ機構
24 スタート用光電センサ
24a 受光部
26 ブレーキ用光電センサ
26a 受光部
28 制御回路
30 演算部
32 モータ制御部
34 メモリ
36 エラー表示部
38 中実軸部
38a 外周面
40 筒状軸部
40a 外周面
42 施錠子保持孔
44 施錠子
46 スリーブ
48 挿入孔
50 後端部
52 スイッチプレート
54 第1クラッチプレート
55 対向面
55a 内側係合面
55b 外側係合面
56 第2クラッチプレート
58 保持溝
60 円柱状係合部材(係合突部)
62 内側保持孔(小径保持孔)
64 外側保持孔(大径保持孔)
66 小径の球状係合部材(係合部材)
68 大径の球状係合部材(係合部材)
70 変位部材
72 スライド部材
72a 係合面
74 ベアリング
76 スラスト受け部材
78 スプリング
80 センサピン
82 クラッチスプリング
84 伝達ピン
R 回転軸線

Claims (5)

  1. 入力軸と出力軸との間に配置されて、該入力軸から該出力軸へ伝達される回転トルクを制限するためのクラッチ機構であって、
    入力軸と出力軸とのうちの一方に駆動連結されて回転軸線の周りで回転可能に配置され、該回転軸線の方向に突出した係合突部を有する第1クラッチプレートと、
    入力軸と出力軸とのうちの他方に駆動連結され、該第1クラッチプレートに対して該回転軸線の方向で対向し該回転軸線の周りで回転可能に配置された第2クラッチプレートであって、該回転軸線の方向で貫通した内側保持孔と、該内側保持孔よりも径方向外側の位置で該回転軸線の方向で貫通した外側保持孔とを有する第2クラッチプレートと、
    該内側保持孔と該外側保持孔とのうちの一方の保持孔内に選択的に配置されて、該一方の保持孔内において該回転軸線の方向で変位可能に保持された係合部材と、
    該係合部材に該回転軸線の方向で当接して該係合部材を該第1クラッチプレートに向かって押圧するスライド部材と、
    を備え、
    該係合部材が該係合突部に回転方向で係合することにより該第1クラッチプレートと該第2クラッチプレートとの間で回転トルクが伝達され、所定の最大回転トルク以上の負荷が作用したときに該係合突部によって該係合部材が該スライド部材とともに該回転軸線の方向で変位されて該係合突部と該係合部材との該回転方向での係合が解除されることにより、該回転トルクの伝達が解除されるようにされており、
    該係合部材が該内側保持孔に選択的に配置された場合よりも該外側保持孔に選択的に配置された場合の方が、該最大回転トルクが大きくなるようにされた、クラッチ機構。
  2. 該内側保持孔よりも該外側保持孔の方が大径とされ、該係合部材が、該内側保持孔に対応した小径の球状係合部材と、該小径の係合部材よりも大径とされて該外側保持孔に対応した大径の球状係合部材とのうちから該一方の保持孔に対応するように選択された球状係合部材である、請求項1に記載のクラッチ機構。
  3. 該第1クラッチプレートが、該内側保持孔内に該小径の球状係合部材が配置されたときに該小径の球状係合部材と係合する内側係合面と、該外側保持孔内に該大径の球状係合部材が配置されたときに該大径の球状係合部材と係合する外側係合面とを有し、該内側係合面が、該小径の球状係合部材と該大径の球状係合部材との直径の差の分だけ該外側係合面よりも該第2クラッチプレートの側に突出している、請求項2に記載のクラッチ機構。
  4. 入力軸と出力軸との間に配置されて、該入力軸から該出力軸へ伝達される回転トルクを制限するためのクラッチ機構であって、
    入力軸と出力軸とのうちの一方に駆動連結されて回転軸線の周りで回転可能に配置され、該回転軸線の方向に突出した係合突部を有する第1クラッチプレートと、
    入力軸と出力軸とのうちの他方に駆動連結され、該第1クラッチプレートに対して該回転軸線の方向で対向し該回転軸線の周りで回転可能に配置された第2クラッチプレートであって、該回転軸線の方向で貫通した小径保持孔と、該小径保持孔よりも大径とされ該回転軸線の方向で貫通した大径保持孔とを有する第2クラッチプレートと、
    該小径保持孔に対応した小径の係合部材と該小径の係合部材よりも大径とされて該大径保持孔に対応した大径の係合部材とのうちから選択された係合部材であって、該小径保持孔と該大径保持孔とのうちの対応した保持孔内に配置されて、該対応した保持孔内において該回転軸線の方向に変位可能に保持された係合部材と、
    該係合部材に該回転軸線の方向で当接して該係合部材を該第1クラッチプレートに向かって押圧するスライド部材と、
    を備え、
    該係合部材が該係合突部に回転方向で係合することにより該第1クラッチプレートと該第2クラッチプレートとの間で回転トルクが伝達され、所定の最大回転トルク以上の負荷が作用したときに該係合突部によって該係合部材が該スライド部材とともに該回転軸線の方向で変位されて該係合突部と該係合部材との該回転方向での係合が解除されることにより、該回転トルクの伝達が解除されるようにされており、
    該小径の係合部材が該小径保持孔に選択的に配置された場合よりも該大径の係合部材が該大径保持孔に選択的に配置された場合の方が、該最大回転トルクが大きくなるようにされた、クラッチ機構。
  5. 入力軸を有する駆動部と、
    加工工具が取り付けられる工具取付部を有する出力軸と、
    該入力軸と該出力軸との間に配置された、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のクラッチ機構と、
    を備える動力工具。
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