[ダイシング装置の構成]
図1は、ダイシング装置10の上面図である。図2は、ダイシング装置10の側面図である。なお、図中のXYZの各軸方向は互いに垂直である。本実施形態ではXY軸方向は水平方向(本発明の垂直方向)に平行(略平行を含む)な方向であり、且つZ軸方向は上下方向に平行(略平行を含む)な方向である。
図1及び図2に示すように、ダイシング装置10は、ダイシングフレームにマウントされた半導体ウェハ等の円板状(略円板形状を含む)のワークWを切削加工する。このダイシング装置10は、回転テーブル18上へのワークWのセットと、回転テーブル18の回転軸C1及びワークWの中心であるワーク中心C2の位置合わせ作業と、をオペレータの手作業で行う所謂マニュアル型(セミオートマチック型)の装置である。
ダイシング装置10は、ブレード12と、スピンドル14と、撮影ユニット16と、ワーク保持用の回転テーブル18と、を備える。
ブレード12は、Y軸方向に平行なブレード回転軸を中心として回転自在にスピンドル14に保持されている。スピンドル14は、高周波モータを内蔵しており、ブレード回転軸を中心としてブレード12を高速回転させる。
撮影ユニット16は、スピンドル14に固定されている。この撮影ユニット16は、ワークWを撮影する。
図3は、図1に示したブレード12、スピンドル14、撮影ユニット16、及び回転テーブル18の拡大図である。図3と既述の図1及び図2とに示すように、スピンドル14及び撮影ユニット16は、後述のYガイド28、Yキャリッジ30、及びZキャリッジ32により、Y軸方向とZ軸方向とに移動自在に保持されている。
回転テーブル18は、その上面であるテーブル面18a上にワークWを吸着保持する。このテーブル面18aは、ワークWを保持するためにポーラス状(多孔質状)に形成されている。なお、テーブル面18aには、図示は省略するが、複数の吸引孔が形成されている。各吸引孔は、後述の吸引部56(図4参照)に接続されている。吸引部56により各吸引孔からエアの吸引を行うことで、テーブル面18a上にワークWが保持される。
また、回転テーブル18は、後述のXキャリッジ22によりX軸方向に移動自在に保持され、且つ回転ユニット24により回転軸C1を中心として回転自在に保持されている。
ダイシング装置10は、Xガイド20と、Xキャリッジ22と、回転ユニット24と、Yガイド28と、Yキャリッジ30と、Zキャリッジ32と、を備える。
Xガイド20(図1参照)は、X軸方向に延びた形状を有しており、Xキャリッジ22をX軸方向に沿って移動自在に支持する。Xキャリッジ22は、例えばリニアモータ等により構成されるX駆動部36(図4参照)により、Xガイド20に沿ってX軸方向に移動(駆動)される。
回転ユニット24は、Xキャリッジ22の上面に設けられている。また、回転ユニット24の上面には、回転テーブル18が設けられている。回転ユニット24は、モータ及びギヤ等により構成される回転駆動部を有しており、回転テーブル18をその回転軸C1を中心としてθ方向に回転させる。
ワークWは、回転テーブル18(テーブル面18a)により吸着保持されることで、回転テーブル18と一体に移動及び回転する。これにより、回転テーブル18等を介して、切削加工前のアライメント時におけるワークWのθ方向の回転、及びワークWの切削加工時におけるワークWのX方向への切削送り等が行われる。
Yガイド28は、Xガイド20の上方に設けられ、且つ上方向側から見てXガイド20と交差するようにY軸方向に延びた形状を有している。このYガイド28は、Yキャリッジ30をY軸方向に沿って移動自在に支持する。
Yキャリッジ30は、ステッピングモータ及びボールスクリュー等により構成されるY駆動部38(図4参照)により、Yガイド28に沿って移動される。また、Yキャリッジ30は、Z軸方向に延びた形状を有しており、Zキャリッジ32をZ軸方向に沿って移動自在に支持する。
Zキャリッジ32は、ステッピングモータ等により構成されるZ駆動部40(図4参照)により、Yキャリッジ30に沿ってZ軸方向に移動される。このZキャリッジ32には、既述のスピンドル14が固定されている。これにより、ワークWの切削加工時には、回転テーブル18に吸着保持されたワークWに対して、ブレード12がY軸方向にインデックス送りされると共にZ軸方向に切込み送りされる。
撮影ユニット16は、スピンドル14を介してZキャリッジ32に固定される。これにより、撮影ユニット16は、スピンドル14(ブレード12)に対する相対的な位置が固定され、且つYキャリッジ30及びZキャリッジ32の駆動によりスピンドル14と共にY方向及びZ方向に移動される。
また、撮影ユニット16は、高倍率顕微鏡16A及び低倍率顕微鏡16Bを備える。高倍率顕微鏡16A及び低倍率顕微鏡16Bは、本発明の複数のカメラに相当するものであり、Y軸方向に間隔をあけて設けられている。各顕微鏡16A,16Bは、図示は省略するが、それぞれ撮影光学系と撮像素子とを有している。なお、図3中の符号P1は高倍率顕微鏡16Aの撮影光軸であり、且つ符号P2は低倍率顕微鏡16Bの撮影光軸である。各撮影光軸P1,P2はZ軸方向に平行である。
各顕微鏡16A,16Bは、ワークWの切削加工時、及び後述の回転軸C1とワーク中心C2との位置合わせ作業時において、テーブル面18a(ワークW)に対向する位置に配置され、ワークWの表面を撮影(動画撮影)する。なお、ワークWの切削加工時における高倍率顕微鏡16Aによる撮影と低倍率顕微鏡16Bによる撮影とは選択的に実行される。また、回転軸C1とワーク中心C2との位置合わせ作業時には、高倍率顕微鏡16A及び低倍率顕微鏡16Bの双方による撮影(動画撮影)が同時に実行される。
高倍率顕微鏡16Aの撮影倍率は、低倍率顕微鏡16Bの撮影倍率よりも高く設定されている。換言すると低倍率顕微鏡16Bの撮影倍率は、高倍率顕微鏡16Aの撮影倍率よりも低く設定されている。
ダイシング装置10では、既述の通り、回転テーブル18の回転軸C1と、回転テーブル18のテーブル面18a上にセットされたワークWのワーク中心C2と、の位置合わせ作業(以下、単に位置合わせ作業という)をオペレータの手作業で行う。ここでいう手作業とは、オペレータの手で直接ワークWの水平方向の位置調整を行う作業である。このため、ダイシング装置10は、オペレータによる位置合わせ作業を補助する補助機能を有している。従って、ダイシング装置10は本発明の補助装置として機能する。
図4は、ダイシング装置10の統括制御部50の機能ブロック図である。図4に示すように、統括制御部50は、例えばパーソナルコンピュータのような演算装置であり、各種のプロセッサ(Processor)及びメモリ等から構成された演算回路を備える。各種のプロセッサには、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、及びプログラマブル論理デバイス[例えばSPLD(Simple Programmable Logic Devices)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、及びFPGA(Field Programmable Gate Arrays)]等が含まれる。なお、統括制御部50の各種機能は、1つのプロセッサにより実現されてもよいし、同種または異種の複数のプロセッサで実現されてもよい。
統括制御部50は、ダイシング装置10の各部の動作を統括制御する。なお、図4では、統括制御部50の複数の機能の中で、特に位置合わせ作業の補助に係る機能を図示し、ワークWの切削加工等のダイシング装置10の他の制御に係る機能は公知技術であるので図示は省略する。
統括制御部50には、既述の撮影ユニット16(高倍率顕微鏡16A及び低倍率顕微鏡16B)、回転ユニット24、X駆動部36、Y駆動部38、及びZ駆動部40の他に、記憶部54と吸引部56とモニタ58とが接続されている。
記憶部54には、ダイシング装置10の制御プログラム(図示は省略)が記憶されている。また、記憶部54には、位置合わせ作業に係る情報として、位置情報60、撮影倍率情報62、及び設計情報64等が記憶されている。
位置情報60は、位置合わせ作業時における回転テーブル18の回転軸C1の位置情報と、高倍率顕微鏡16Aの撮影光軸P1の位置情報と、低倍率顕微鏡16Bの撮影光軸P2の位置情報と、を含む。
回転軸C1の位置情報は、例えば、位置合わせ作業時における回転テーブル18の回転軸C1の位置を定めた位置座標(X座標)であり、ワークWの種類(直径)に関係なく一定の値に設定されている。
各撮影光軸P1,P2の位置情報は、例えば、各顕微鏡16A,16BでそれぞれワークWのエッジE(図5参照)を同時撮影可能な位置を示す位置座標(YZ座標)、すなわち各顕微鏡16A,16Bの双方の撮影範囲内にワークWのエッジEが収まる位置を示す位置座標であり、ワークWの種類(直径)ごとに個別に定められている。
なお、回転軸C1及び各撮影光軸P1,P2の位置座標の原点は、ダイシング装置10の任意の箇所に設定される。
撮影倍率情報62は、高倍率顕微鏡16A及び低倍率顕微鏡16Bの双方の撮影倍率に関する情報である。なお、本実施形態では各顕微鏡16A,16Bの撮影倍率は固定であるものとする。設計情報64は、ワークWの種類別の直径に関する情報である。
吸引部56は、例えば公知の真空ポンプ等の各種ポンプが用いられる。この吸引部56は、統括制御部50の制御の下、既述の回転テーブル18の吸引孔からエアの吸引を行う。これにより、テーブル面18a上にセット(載置)されているワークWが回転テーブル18に吸着保持される。そして、吸引部56による吸引孔からのエアの吸引が停止されると、回転テーブル18によるワークWの吸着保持が解除される。
モニタ58は、例えば液晶ディスプレイ及び有機EL(electro-luminescence)ディスプレイ等の公知の各種表示装置が用いられる。なお、本実施形態ではモニタ58として公知のタッチパネル式の液晶ディスプレイを用いる。モニタ58は、位置合わせ作業時には、統括制御部50の制御の下、オペレータによる位置合わせ作業を補助するための補助画面80の表示を行う。
また、モニタ58は、オペレータによる表示画面へのタッチ操作を検出することで、オペレータによる各種操作を受け付ける操作受付部として機能する。この位置合わせ作業に係る操作には、詳しくは後述するが、補助画面80の起動操作、撮影開始操作、吸引開始操作、吸引解除操作、回転操作、及び終了操作等が含まれる(図6参照)。なお、タッチパネル式のモニタ58を用いる代わりに、キーボード、マウス、操作パネル、及び操作ボタン等の各種操作部材にてオペレータの入力操作を受け付けてもよい。
統括制御部50は、記憶部54に記憶されている不図示の制御プログラムを実行することにより、位置合わせ作業時には移動制御部68、撮影制御部70、エッジ位置情報取得部72、表示制御部74、吸引制御部76、及び回転制御部78として機能する。
移動制御部68は、X駆動部36によるXキャリッジ22(回転テーブル18)のX軸方向の移動と、Y駆動部38によるYキャリッジ30のY軸方向の移動と、Z駆動部40によるZキャリッジ32のZ軸方向の移動と、を制御する。この移動制御部68は、位置合わせ作業時においては、モニタ58に対する撮影開始操作の入力に応じて各駆動部36,38,40の制御を開始する。具体的には、移動制御部68は、記憶部54に記憶されている位置情報60に基づき、X駆動部36、Y駆動部38、及びZ駆動部40を駆動して、回転テーブル18の回転軸C1の位置調整と、各顕微鏡16A,16Bの各撮影光軸P1,P2の位置調整と、を行う。
図5は、移動制御部68による位置合わせ作業時の回転テーブル18及び各顕微鏡16A,16Bの位置調整を説明するための説明図である。なお、図5では、図面の煩雑化を防止するため、撮影ユニット16、回転テーブル18、及びワークW以外の図示は省略している。
図5に示すように、移動制御部68は、位置情報60に基づき、X駆動部36、Y駆動部38、及びZ駆動部40を駆動して、回転テーブル18及び各顕微鏡16A,16Bの位置調整を行うことで、回転テーブル18及びワークWに対して、各顕微鏡16A,16Bの双方をワークWのエッジEの撮影位置に相対移動させる。
ここで、既述の位置情報60は、例えば、回転テーブル18の回転軸C1とワークWのワーク中心C2とが一致(略一致を含む、以下同じ)していると仮定した場合に、各顕微鏡16A,16Bの撮影光軸P1,P2がエッジEの互いに異なる2箇所上に位置するように設定されている。そして、各顕微鏡16A,16Bはそれぞれ一定の撮影範囲を有しているので、仮に回転軸C1とワーク中心C2との位置ずれが生じていても各顕微鏡16A,16Bの撮影範囲内にエッジEが位置する。これにより、各顕微鏡16A,16BによりエッジEの互いに異なる2つの撮影箇所を同時撮影することができる。
撮影制御部70は、高倍率顕微鏡16A及び低倍率顕微鏡16Bによる撮影(動画撮影)を制御する。撮影制御部70は、位置合わせ作業時においては、既述の撮影開始操作に応じた移動制御部68による位置調整後に作動する。この撮影制御部70は、各顕微鏡16A,16BによるエッジEの2つの撮影箇所の動画撮影を同時に実行させる。なお、ここでいう動画撮影には、静止画撮影を一定又は不定の時間間隔で繰り返し行うことも含まれる。
高倍率顕微鏡16Aにより動画撮影された動画像D1の画像データは高倍率顕微鏡16Aから表示制御部74に出力される。また同時に、低倍率顕微鏡16Bにより動画撮影された動画像D2の画像データは低倍率顕微鏡16Bから表示制御部74に出力される。
エッジ位置情報取得部72は、既述の撮影開始操作に応じて、記憶部54内の位置情報60と撮影倍率情報62と設計情報64とに基づき、動画像D1,D2ごとのエッジ位置情報を取得する。動画像D1に対応するエッジ位置情報は、回転軸C1とワーク中心C2とが位置合わせされている状態での動画像D1内のエッジEの位置を示す情報である。また、動画像D2に対応するエッジ位置情報は、回転軸C1とワーク中心C2とが位置合わせされている状態での動画像D2内のエッジEの位置を示す情報である。
具体的には、エッジ位置情報取得部72は、位置情報60に基づき位置合わせ作業時における回転軸C1及び各撮影光軸P1,P2の位置情報を判別し、且つ撮影倍率情報62に基づき各顕微鏡16A,16Bの撮影倍率を判別する。なお、各顕微鏡16A,16Bの撮影倍率が可変可能である場合、エッジ位置情報取得部72は、各顕微鏡16A,16Bから各々の撮影倍率情報62を取得してもよい。
また、エッジ位置情報取得部72は、モニタ58へのタッチ操作等でインプットされたワークWの種類に関する情報と、設計情報64と、に基づき、回転テーブル18上に載置されているワークWの直径を判別する。
次いで、エッジ位置情報取得部72は、回転軸C1及び各撮影光軸P1,P2の位置情報と、各顕微鏡16A,16Bの撮影倍率と、ワークWの直径と、に基づき、回転軸C1とワーク中心C2とが一致している状態での動画像D1,D2内のエッジEの位置を演算する。これにより、エッジ位置情報取得部72は、動画像D1,D2ごとのエッジ位置情報を取得することができる。そして、エッジ位置情報取得部72は、動画像D1,D2ごとのエッジ位置情報を表示制御部74へ出力する。
なお、エッジ位置情報取得部72が記憶部54内の各情報に基づき動画像D1,D2ごとのエッジ位置情報を求める代わりに、動画像D1,D2にそれぞれ対応するエッジ位置情報をワークWの種類ごとに予め求めて記憶部54に記憶させてもよい。この場合、エッジ位置情報取得部72は、ワークWの種類に対応する動画像D1,D2ごとのエッジ位置情報を記憶部54内から取得する。
表示制御部74は、位置合わせ作業時において、モニタ58に対する補助画面80の起動操作の入力に応じて、オペレータによる位置合わせ作業を補助する補助画面80を生成してモニタ58に表示させる。また、表示制御部74は、各顕微鏡16A,16Bから入力された動画像D1,D2の画像データと、エッジ位置情報取得部72から入力された動画像D1,D2ごとのエッジ位置情報と、に基づき、動画像D1及び電子ライン98A(図6参照)の重畳画像と、動画像D2及び電子ライン98B(図6参照)の重畳画像とを補助画面80内に表示させる。すなわち、表示制御部74は本発明の重畳表示制御部としても機能する。
図6は、モニタ58に表示される補助画面80の一例を示した説明図である。補助画面80には、撮影開始ボタン82と、吸引開始/吸引停止ボタン84と、90°回転ボタン86と、1°回転ボタン88と、終了ボタン90と、表示欄92と、表示欄94と、が設けられている。
撮影開始ボタン82は、オペレータによるタッチ操作での撮影開始操作の入力を受け付ける。吸引開始/吸引停止ボタン84は、オペレータによるタッチ操作での吸引開始操作及び吸引解除操作の入力を受け付ける。吸引開始操作及び吸引停止操作は、吸引部56による吸引のオンオフを切り替える切替操作である。
90°回転ボタン86は、オペレータによるタッチ操作での回転操作(90°回転操作)の入力を受け付ける。1°回転ボタン88は、オペレータによるタッチ操作での回転操作(1°回転操作)の入力を受け付ける。回転操作は、回転テーブル18(ワークW)を、回転軸C1を中心として一定角度(90°又は1°)だけ回転させる操作である。
終了ボタン90は、オペレータによるタッチ操作での終了操作の入力を受け付ける。終了操作は、位置合わせ作業の終了時に実行される操作である。
表示欄92には、2つの撮影箇所の一方のエッジEの動画像D1(ライブ画像)と、この動画像D1に対応するエッジ位置情報を示す電子ライン98Aとが重畳表示される。また、表示欄94には、2つの撮影箇所の他方のエッジEの動画像D2(ライブ画像)と、この動画像D2に対応するエッジ位置情報を示す電子ライン98Bとが重畳表示される。
具体的には、表示制御部74は、各顕微鏡16A,16Bから入力された動画像D1、D2の画像データに基づき表示欄92に動画像D1を表示させると共に表示欄94に動画像D2を表示させる。また同時に、表示制御部74は、エッジ位置情報取得部72から入力された各エッジ位置情報に基づき、動画像D1内でのエッジEの位置を示す電子ライン98Aの像を生成すると共に、動画像D2内でのエッジEの位置を示す電子ライン98Bの像を生成する。
そして、表示制御部74は、表示欄92内の動画像D1に対して電子ライン98Aを重畳表示させると共に、表示欄94内の動画像D2に対して電子ライン98Bを重畳表示させる。これにより、動画像D1及び電子ライン98Aの重畳画像と、動画像D2及び電子ライン98Bの重畳画像と、が補助画面80内に同時表示される。その結果、オペレータは、ワークWの2箇所のエッジEと電子ライン98A,98Bとの位置ずれ(位置ずれ方向及び位置ずれ量)、すなわち回転軸C1とワーク中心C2との位置ずれを認識することができる。
図4及び図6に示すように、吸引制御部76は、吸引部56による回転テーブル18のテーブル面18aの吸引孔からのエアの吸引、すなわち回転テーブル18によるワークWの吸引保持を制御する。
具体的には、吸引制御部76は、オペレータによる位置合わせ作業開始前、例えば上述の各重畳画像がモニタ58に同時表示された後、モニタ58に対する吸引停止操作の入力に応じて吸引部56によるエアの吸引を停止させる。これにより、回転テーブル18のテーブル面18a上でワークWが水平方向に位置調整可能になるので、オペレータは、各動画像D1,D2内でエッジEがそれぞれ電子ライン98A,98Bに一致するように、テーブル面18a上でのワークWの位置調整(図6中の矢印参照)を手作業で行うことができる。すなわち、手作業での位置合わせ作業が実行され、回転軸C1とワーク中心C2とが位置合わせされる。
また、吸引制御部76は、オペレータによる位置合わせ作業の完了後、モニタ58に対する吸引開始操作の入力に応じて吸引部56によるエアの吸引を開始させる。これにより、回転軸C1とワーク中心C2とが位置合わせされた状態で、回転テーブル18のテーブル面18a上にワークWが吸着保持(固定)される。
回転制御部78は、回転ユニット24による回転テーブル18の回転を制御する。この回転制御部78は、オペレータによる位置合わせ作業の完了後で且つ既述の吸引開始操作の前に、モニタ58に対する回転操作(90°回転操作又は1°回転操作)の入力に応じて、回転ユニット24を駆動して回転テーブル18を一定角度(90°又は1°)だけ回転させる。これにより、回転テーブル18と一体にワークWも回転軸C1を中心として90°又は1°回転される。なお、上述の一定角度は90°及び1°に限定されるものではなく、任意の角度であってよい。
回転テーブル18及びワークWが一定角度だけ回転されると、統括制御部50は、撮影制御部70及び表示制御部74を繰り返し作動させる繰り返し制御を実行する。
繰り返し制御が実行されると、ワークWにおいて先に動画撮影されたエッジEの2つの撮影箇所とは異なる2つの撮影箇所が各顕微鏡16A,16Bによりそれぞれ動画撮影されると共に、各表示欄92,94に表示される動画像D1,D2が更新される。これにより、エッジEの新たな2つの撮影箇所に対応した上述の2種類の重畳画像が補助画面80内に同時表示されるので、オペレータは各動画像D1,D2内でエッジEがそれぞれ電子ライン98A,98Bに一致しているか否かを確認することができる。そして、エッジEと電子ライン98A,98Bとの位置ずれが生じている場合には、オペレータは位置合わせ作業を再び実行する。
以下、回転テーブル18の回転と、前述の繰り返し制御及び位置合わせ作業と、を複数回繰り返すことによって、回転軸C1とワーク中心C2との位置合わせをより高精度に行うことができる。
統括制御部50は、オペレータにより終了操作がなされると、位置合わせ作業の補助を終了する。
[ダイシング装置の作用]
図7は、ダイシング装置10における位置合わせ作業の補助方法の流れを示すフローチャートである。オペレータは位置合わせ作業を開始する場合、モニタ58に対してタッチ操作による補助画面80の起動操作を行う。この起動操作を受けて、表示制御部74は、モニタ58に補助画面80を表示させる(ステップS1)。
オペレータは、モニタ58に補助画面80が表示されると、撮影開始ボタン82に対してタッチ操作を行うことで撮影開始操作を入力する(ステップS2)。この撮影開始操作を受けて、移動制御部68が、既述の図5に示したように、位置情報60に基づき、X駆動部36、Y駆動部38、及びZ駆動部40を駆動して、回転テーブル18及び各顕微鏡16A,16Bの位置調整を行う(ステップS3)。これにより、各顕微鏡16A,16Bの双方がワークWのエッジEの撮影位置に相対移動される。
移動制御部68による位置調整が完了すると、撮影制御部70が、各顕微鏡16A,16Bの双方を制御して、双方によるエッジEの2つの撮影箇所の動画撮影を同時に実行させる(ステップS4、本発明の撮影ステップに相当)。これにより、表示制御部74が、各顕微鏡16A,16Bから出力された動画像D1,D2の画像データを取得する(ステップS5)。
一方、エッジ位置情報取得部72は、上述の撮影開始操作に応じて、記憶部54内の位置情報60と撮影倍率情報62と設計情報64とに基づき、動画像D1,D2ごとのエッジ位置情報を取得し、各エッジ位置情報を表示制御部74へ出力する(ステップS6、本発明のエッジ位置情報取得ステップに相当)。
そして、表示制御部74は、既述の図6に示したように、各顕微鏡16A,16Bから入力された動画像D1、D2の画像データに基づき表示欄92に動画像D1を表示させると共に表示欄94に動画像D2を表示させる。また同時に、表示制御部74は、エッジ位置情報取得部72から入力された各エッジ位置情報に基づき、電子ライン98A,98Bの像を生成して、表示欄92内の動画像D1に対して電子ライン98Aを重畳表示させると共に、表示欄94内の動画像D2に対して電子ライン98Bを重畳表示させる。これにより、動画像D1及び電子ライン98Aの重畳画像と、動画像D2及び電子ライン98Bの重畳画像と、が補助画面80内に同時表示される(ステップS7)。なお、ステップS7は本発明の表示ステップ及び重畳表示ステップに相当する。
オペレータは、補助画面80内の各重畳画像を確認することで、ワークWの2箇所のエッジEと電子ライン98A,98Bとの位置ずれ、すなわち回転軸C1とワーク中心C2との位置ずれの有無、方向、及び大きさを判別する。
次いで、オペレータは、回転テーブル18のテーブル面18a上にワークWが吸着保持されている場合、吸引開始/吸引停止ボタン84に対してタッチ操作を行うことで吸引停止操作を入力する。この吸引停止操作を受けて、吸引制御部76は、吸引部56によるエアの吸引を停止させる(ステップS8、本発明の解除ステップに相当)。これにより、テーブル面18a上でのワークWの吸着保持が解除されて、ワークWの水平方向の位置調整可能になる。
なお、ステップS8は、ステップS1からステップS7の間のいずれの段階で実施してもよい。また、ステップS8の前の段階でテーブル面18a上にワークWが吸着保持されていない場合にはステップS8は省略される。
ワークWの吸着保持が解除されると、オペレータは、各動画像D1,D2内でエッジEがそれぞれ電子ライン98A,98Bに一致するように、ワークWの水平方向の位置調整、すなわち回転軸C1とワーク中心C2との位置合わせ作業を手作業で行う(ステップS9でNO)。各重畳画像を補助画面80内に同時表示することで、オペレータは、ワークWの2箇所のエッジEをそれぞれ対応する電子ライン98A,98Bに位置合わせすることができる。その結果、1箇所のエッジEのみで位置合わせを行う場合と比較して、位置合わせ作業を高精度且つ簡単に行うことができる。
この際に、各顕微鏡16A,16Bの撮影倍率が互いに異なるので、表示欄92内の動画像D1はエッジEを拡大した拡大画像となり、表示欄94内の動画像D2はエッジE及びその周辺領域を含む広域画像となる。このため、オペレータは、表示欄94内の動画像D2及び電子ライン98Bの重畳画像に基づきエッジEと電子ライン98Bの位置ずれを手作業で調整する概略調整を行った上で、表示欄92内の動画像D1及び電子ライン98Aの重畳画像に基づきエッジEと電子ライン98Aの位置ずれを手作業で調整する精密調整を行うことができる。このように概略調整を行った後で精密調整を行うことで、高倍率顕微鏡16Aの撮影倍率が高い場合であっても、オペレータがエッジEと電子ライン98Aとの位置合わせを容易に行うことができる。
また、各顕微鏡16A,16Bを用いてエッジEの2つ撮影箇所の同時撮影を行うことで、ステップS3の位置調整を1回で済ませることができる。その結果、2箇所のエッジEの撮影を順番に行う場合と比較して、位置合わせ作業が短時間で完了する。
オペレータは、位置合わせ作業が完了すると、必要に応じて90°回転ボタン86又は1°回転ボタン88に対してタッチ操作を行うことで、回転操作(90°回転操作又は1°回転操作)の入力を行う(ステップS10でYES)。この回転操作の入力を受けて、回転制御部78は、回転ユニット24を駆動して、回転テーブル18及びワークWを一体に一定角度だけ回転させる(ステップS11、本発明の回転ステップに相当)。
次いで、統括制御部50は、撮影制御部70及び表示制御部74を繰り返し作動させる繰り返し制御を実行する。これにより、ステップS4からステップS7までの処理が繰り返し実行され(本発明の繰り返し制御ステップに相当)、エッジEの新たな2つの撮影箇所に対応した上述の2種類の重畳画像が補助画面80内に同時表示される。以下、ステップS9の位置合わせ作業(ステップS8は省略)が実行される。このようにステップS4~S7、S9~S11の処理を繰り返すことで、回転軸C1とワーク中心C2との位置合わせをより高精度に行うことができる。
回転軸C1とワーク中心C2とが位置合わせが完了すると(ステップS10でNO)、オペレータは、吸引開始/吸引停止ボタン84に対してタッチ操作を行うことで吸引開始操作を入力する。この吸引開始操作を受けて、吸引制御部76は、吸引部56によるエアの吸引を開始させる(ステップS12)。これにより、テーブル面18a上にワークWが吸着保持されて、ワークWの切削加工が可能となる。
そして、オペレータは、終了ボタン90に対してタッチ操作を行うことで終了操作を入力する。この終了操作を受けて、統括制御部50は位置合わせ作業の補助を終了する。これにより、ワークWの切削加工が可能となる。
[本実施形態の効果]
以上のように本実施形態では、ワークWの2箇所のエッジEを各顕微鏡16A,16Bで同時撮影して、動画像D1及び電子ライン98Aの重畳画像と、動画像D2及び電子ライン98Bの重畳画像と、を補助画面80内に同時表示させるので、回転軸C1とワーク中心C2との位置合わせ作業を短時間で且つ簡単且つ高精度に行うことができる。
[その他]
上記実施形態では、2台の各顕微鏡16A,16BによりエッジEの2箇所のを同時に動画撮影しているが、3台以上の複数の顕微鏡によりエッジEの3箇所以上を同時に動画撮影してもよい。これにより、エッジEの3以上の撮影箇所に対応した3種類以上の重畳画像が補助画面80内に同時表示されるので、オペレータは位置合わせ作業をより高精度に行うことができる。
上記実施形態では、各顕微鏡16A,16BによりエッジEの互いに異なる2箇所を同時に動画撮影しているが、各顕微鏡16A,16Bの撮影光軸P1,P2を互いに非平行とすることで、エッジEの同一箇所を各顕微鏡16A,16Bで同時に動画撮影してもよい。この場合にも、1台の顕微鏡のみでエッジEの撮影及び位置合わせ作業を行う場合と比較して、位置合わせ作業を高精度且つ簡単に行うことができる。
図8は、オペレータによる位置合わせ作業の変形例を説明するための説明図である。上記実施形態では、オペレータによる位置合わせ作業を手作業で行っている。これに対して、例えば図8に示すように、回転テーブル18のテーブル面18a上に複数設けられたマイクロメータ100を用いてワークWを水平方向に押し引きすることにより位置合わせ作業を行ってもよい。すなわち、ダイシング装置10に、テーブル面18a上でのワークWの位置を水平方向に調整する位置調整部を設けてもよい。
上記実施形態では、各顕微鏡16A,16BによりワークWのエッジEの動画撮影を行っているが、各顕微鏡16A,16Bの代わりに撮像素子及び撮像光学系を有する各種のカメラを用いてもよい。
上記実施形態では、各顕微鏡16A,16Bの撮影倍率が異なっているが、各顕微鏡16A,16Bの撮影倍率が同じであってもよい。
上記実施形態では、ワークWが円板状に形成されている場合を例に挙げて説明したが、ワークWの形状は板状であれば特に限定はされない。
上記実施形態では、各動画像D1,D2に対してそれぞれ電子ライン98A,98Bを重畳させているが、各動画像D1,D2内でのエッジEの目標位置を示すものであれば、電子ライン98A,98Bの代わりに、指標、マーク、及び記号等の任意のエッジ位置情報を用いてもよい。
上記実施形態では、吸引部56によるエア吸引によりテーブル面18a上にワークWを保持させているが、例えばテーブル面18a上にワークWを保持する保持部材を設けてもよく、テーブル面18a上にワークWを保持させる方法は特に限定されない。
上記実施形態では、マニュアル型のダイシング装置10における回転テーブル18の回転軸C1とワークWのワーク中心C2との位置合わせ作業を例に挙げて説明したが、例えば、公知の全自動型のダイシング装置でマニュアルモード(手動での位置合わせ)を実行する場合にも本発明を適用可能である。また、本発明はダイシング装置10に限定されるものではなく、ワークWが載置される回転テーブル18を有する各種装置に本発明を適用することができる。