JP7214805B1 - 磁気軸受装置及び真空ポンプ - Google Patents
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Abstract
【課題】磁気軸受を用いた浮上系において、回転体の固有振動モードを高感度に測定できる磁気軸受装置及び真空ポンプを提供する。【解決手段】ステップ1で第2の運転モードの運転が開始される。ステップ3で制御器7のゲインが第1の運転モードのときのゲインよりも増大される。ステップ5ではこの状態で固有振動数が測定される。測定対象となる固有振動は、回転体103の曲げモード、回転翼102の固有振動モード、ステータに起因した振動モード、回転体103の剛体モードである。制御装置の中央演算処理装置(CPU)で演算処理されるが、外部にて演算処理が行われてもよい。ステップ5での固有振動数の測定後、ステップ7で制御器7のゲインが第1の運転モードのときのゲインに戻される。ステップ9で第2の運転モードの運転が終了する。従って、高感度に固有振動モードを検出できる。【選択図】図4
Description
本発明は磁気軸受装置及び真空ポンプに係わり、特に磁気軸受を用いた浮上系において、回転体の固有振動モードを高感度に測定できる磁気軸受装置及び真空ポンプに関する。
近年のエレクトロニクスの発展に伴い、メモリや集積回路といった半導体の需要が急激に増大している。
これらの半導体は、きわめて純度の高い半導体基板に不純物をドープして電気的性質を与えたり、エッチングにより半導体基板上に微細な回路を形成したりなどして製造される。
そして、これらの作業は空気中の塵等による影響を避けるため高真空状態のチャンバ内で行われる必要がある。このチャンバの排気には、一般に真空ポンプが用いられているが、特に残留ガスが少なく、保守が容易等の点から真空ポンプの中の一つであるターボ分子ポンプが多用されている。
これらの半導体は、きわめて純度の高い半導体基板に不純物をドープして電気的性質を与えたり、エッチングにより半導体基板上に微細な回路を形成したりなどして製造される。
そして、これらの作業は空気中の塵等による影響を避けるため高真空状態のチャンバ内で行われる必要がある。このチャンバの排気には、一般に真空ポンプが用いられているが、特に残留ガスが少なく、保守が容易等の点から真空ポンプの中の一つであるターボ分子ポンプが多用されている。
また、半導体の製造工程では、さまざまなプロセスガスを半導体の基板に作用させる工程が数多くあり、ターボ分子ポンプはチャンバ内を真空にするのみならず、これらのプロセスガスをチャンバ内から排気するのにも使用される。
更に、ターボ分子ポンプは、電子顕微鏡等の設備において、粉塵等の存在による電子ビームの屈折等を防止するため、電子顕微鏡等のチャンバ内の環境を高度の真空状態にするのにも用いられている。
このターボ分子ポンプは回転体を磁気浮上制御するため磁気軸受装置を備えている。そして、この磁気軸受装置では、回転体の加速運転中に共振点を通過する際や定速運転中に外乱が発生した際等に、高速かつ強い力での回転体の位置制御をする必要がある。
更に、ターボ分子ポンプは、電子顕微鏡等の設備において、粉塵等の存在による電子ビームの屈折等を防止するため、電子顕微鏡等のチャンバ内の環境を高度の真空状態にするのにも用いられている。
このターボ分子ポンプは回転体を磁気浮上制御するため磁気軸受装置を備えている。そして、この磁気軸受装置では、回転体の加速運転中に共振点を通過する際や定速運転中に外乱が発生した際等に、高速かつ強い力での回転体の位置制御をする必要がある。
この回転体の位置制御はフィードバック制御で行われている。フィードバック制御では、回転体に振動が発生すると、振動に同期した磁力によって振動を抑制しようとする。このため、フィードバック制御の設計が不適切なときに、発振現象が起こることがある。この発振現象を防ぐためには、固有振動モードを事前に把握し、例えば回転体の固有振動数に対応する周波数帯域の信号をカットする等の適切なフィルタを設定する必要がある(特許文献1を参照)。このフィルタの設定が適切でない場合、振動の増加や、回転体の故障の可能性を生じたり、フィルタの再調整が必要となるおそれがある。
ところで、この固有振動モードの数は多い。特に数が多い例は、ロータ軸の曲げモードや、ターボ分子ポンプの回転翼の固有振動モードである。このため、すべての固有振動モードを事前に把握することは難しい。従って、事前に把握できていない固有振動モードによって、回転体の温度変化や形状変化、経時変化等の系の状態変化時に回転体が発振しうる。そこで、なるべく高感度に固有振動モードを測定する工夫が必要となる。
また、固有振動モードを測定するうえでは、信号のS/N比を上げる必要がある。特に、固有振動モードによる振動成分の信号がセンサ分解能よりも小さい場合には、固有振動モードを検出することができない。
この現象を以下に図に基づき説明する。ここに、磁気軸受の制御系のモデルブロックに基づく閉ループ伝達関数ゲイン特性を図12に示す。図12から分かるように、例えばセンサ分解能が点線の場合に、固有振動を示すゲインのピーク点Aはセンサ分解能を超えているために観測できるが、ピーク点Bはセンサ分解能よりもピークが小さいために観測できない。
このため、ある状態では影響の小さいピーク点Bにおける固有振動モードも、前述のように系の状態が変化した場合には発振の原因となりうる。
この現象を以下に図に基づき説明する。ここに、磁気軸受の制御系のモデルブロックに基づく閉ループ伝達関数ゲイン特性を図12に示す。図12から分かるように、例えばセンサ分解能が点線の場合に、固有振動を示すゲインのピーク点Aはセンサ分解能を超えているために観測できるが、ピーク点Bはセンサ分解能よりもピークが小さいために観測できない。
このため、ある状態では影響の小さいピーク点Bにおける固有振動モードも、前述のように系の状態が変化した場合には発振の原因となりうる。
本発明はこのような従来の課題に鑑みてなされたもので、磁気軸受を用いた浮上系において、回転体の固有振動モードを高感度に測定できる磁気軸受装置及び真空ポンプを提供することを目的とする。
このため本発明(請求項1)は、回転体と、該回転体を磁力で空中に浮上支持する磁気軸受と、該磁気軸受を制御する磁気軸受制御器とを備えた磁気軸受装置であって、前記磁気軸受制御器による磁気軸受制御には、前記回転体の通常運転を第1の磁気軸受制御ゲインで行う第1の運転モードと、前記回転体の一時運転を第2の磁気軸受制御ゲインで行いつつ前記磁気軸受装置の固有振動数を測定する第2の運転モードとを有し、前記第2の磁気軸受制御ゲインが前記第1の磁気軸受制御ゲインよりも大きいことを特徴とする。
第2の運転モードのときの磁気軸受制御ゲインは第1の運転モードのときよりも大きい。このため、磁気軸受装置の出力に含まれる固有振動モードに対応した信号が大きくなり、信号のS/N比が改善し、高感度に固有振動モードを検出できる。
また、本発明(請求項2)は磁気軸受装置の発明であって、前記第2の運転モードの固有振動数の測定が前記回転体の回転中に行われることを特徴とする。
第2の運転モードの磁気軸受制御ゲインの増加は回転体の回転中に行っても良い。この場合には、ジャイロ効果などの影響が含まれた、回転体の回転時の固有振動モードを高感度に測定可能である。
更に、本発明(請求項3)は磁気軸受装置の発明であって、前記第2の運転モードの固有振動数の測定が前記回転体の回転の停止中に行われることを特徴とする。
第2の運転モードの固有振動数の測定は回転体の停止中にて行うことが可能である。そして、このように回転体の停止中で磁気軸受制御ゲインの増加を行った場合には、万が一磁気軸受制御ゲインの増加により制御が不安定化しタッチダウンした場合、回転体やタッチダウンベアリングへの衝撃が回転時と比べて小さく、安全性が高い。
更に、本発明(請求項4)は磁気軸受装置の発明であって、前記第2の運転モードで測定された固有振動数に基づき前記第1の運転モードにおける前記磁気軸受を制御する少なくとも一つの制御パラメータの調整が行われることを特徴とする。
これにより、より最適なフィルタ設計が可能であり、磁気軸受制御がより安定する。
更に、本発明(請求項5)は磁気軸受装置の発明であって、前記制御パラメータの調整が前記回転体の回転中に行われることを特徴とする。
パラメータの調整が回転体の回転中に行われることで、システムの運用を効率よく行うことができる。パラメータ調整のために停止に至るまでの時間の無駄がなく、回転体の定格運転にまで至る時間が短縮される。
更に、本発明(請求項6)は磁気軸受装置の発明であって、前記第2の運転モードが、前記第1の磁気軸受制御ゲインから前記第2の磁気軸受制御ゲインにまで前記磁気軸受制御のゲインを増大させる第1工程と、前記第2の磁気軸受制御ゲインで前記固有振動数を測定する第2工程と、該第2工程での測定が完了したときに前記第2の磁気軸受制御ゲインから前記第1の磁気軸受制御ゲインに戻す第3工程を備えて構成した。
第2の運転モードにおける磁気軸受制御ゲインの増大、磁気軸受制御ゲインの大きな段階での固有振動数の測定、第1の運転モードへの復帰が効率よく行える。
更に、本発明(請求項7)は磁気軸受装置の発明であって、前記第1の運転モードから前記第2の運転モードへの遷移と、前記第2の運転モードから前記第1の運転モードへの遷移とが繰り返し行われることを特徴とする。
第1の運転モードから第2の運転モードへの遷移と、第2の運転モードから第1の運転モードへの遷移とを繰り返し行うことで、複数の状態における固有振動モードの測定が可能となり、次第に制御を安定化させることができる。
更に、本発明(請求項8)は磁気軸受装置の発明であって、前記第1の運転モードから前記第2の運転モードへの遷移が前記回転体の回転数に応じて行われることを特徴とする。
回転体の回転数に応じて次第に制御を安定化させることができる。特に、ジャイロ効果などの回転数の変化に伴った固有振動数の変化に対して、より安定な制御を実現することができる。
更に、本発明(請求項9)は磁気軸受装置の発明であって、前記第2の運転モードにおいて、前記第1の運転モードにて前記磁気軸受制御の位相を進めるために配設されたフィルタの位相進み量を大きくすることを特徴とする。
磁気軸受制御には位相を進めるためのフィルタが必要である。このフィルタを利用し、位相の進み量を第1の運転モードよりも大きくすることで磁気軸受制御ゲインを増大する。これにより、余分なフィルタの個数を増やさずに測定感度を上げられる。このため、中央演算処理装置(CPU)の軽量化が可能である。
更に、本発明(請求項10)は磁気軸受装置の発明であって、前記第2の運転モードにおいて、前記第1の運転モードにて前記磁気軸受制御のゲインを下げるために配設されたフィルタのゲインの下げ量を弱めるように前記フィルタの制御パラメータを調整する、若しくは前記フィルタを削除することを特徴とする。
磁気軸受制御には磁気軸受制御ゲインを下げるためのフィルタが必要である。このフィルタを第2の運転モードの際にゲインの下げ量を弱めるように調整したりフィルタを解除することで磁気軸受制御ゲインを大きくする。フィルタを解除等し磁気軸受制御ゲインを大きくしたことで、第2の運転モードにおいて固有振動モードを観測し易い。特に、このフィルタによって抑制されていた固有振動モードの周波数変化を観測し易い。
更に、本発明(請求項11)は磁気軸受装置の発明であって、前記第2の運転モードの固有振動数測定時に、前記磁気軸受制御器の内部で生成された加振信号が前記磁気軸受制御に印加されることを特徴とする。
加振信号は磁気軸受制御器の内部でCPU等により簡単に生成可能である。この加振信号を印加することで、第2の運転モードにおいて固有振動モードを高感度に測定できるため、固有振動モードを観測し易い。また、外部の加振信号発生器やA/D変換装置が不要なので、小型化、コストダウンが図れる。
更に、本発明(請求項12)は磁気軸受装置の発明であって、前記第2の運転モードの固有振動数測定時に、前記磁気軸受制御に対して加振信号が印加されないことを特徴とする。
磁気軸受制御ゲインを大きくすることで自励振動が発生し易くなる。この自励振動を測定することで固有振動モードを測定できる。この構成では、外部の加振信号発生器やA/D変換装置、CPUにおける加振信号の演算が不要なので、小型化、コストダウンが図れる。
更に、本発明(請求項13)は磁気軸受装置の発明であって、前記第2の運転モードにおいて、前記第2の磁気軸受制御ゲインを所定時間をかけて次第に増大させ、該第2の磁気軸受制御ゲインの増大により生じた発振を検知したとき、あるいは、該第2の磁気軸受制御ゲインが所定の制御ゲイン量に到達したことを確認したときに該第2の磁気軸受制御ゲインの増大を停止させることを特徴とする。
第2の磁気軸受制御ゲインを所定時間をかけて次第に増大させる。そして、第2の磁気軸受制御ゲインの増大により生じた発振を検知したとき、あるいは、第2の磁気軸受制御ゲインが所定の制御ゲイン量に到達したことを確認したときに、第2の磁気軸受制御ゲインの増大を停止させる。このことにより、発振の急な増大を防げてより安全な磁気軸受制御が行える。
更に、本発明(請求項14)は真空ポンプの発明であって、請求項1~13のいずれか一項に記載の磁気軸受装置を搭載したことを特徴とする。
真空ポンプでは回転体を備える等固有振動モードの数が多く、その固有振動による発振が発生し易いが、固有振動数を精度よく測定できるので発振の抑制に効果的である。
以上説明したように本発明によれば、磁気軸受制御には、回転体の通常運転を第1の磁気軸受制御ゲインで行う第1の運転モードと、回転体の一時運転を第2の磁気軸受制御ゲインで行いつつ磁気軸受装置の固有振動数を測定する第2の運転モードとを有し、第2の磁気軸受制御ゲインが第1の磁気軸受制御ゲインよりも大きくなるように構成したので、高感度に固有振動モードを検出できる。その結果、より最適なフィルタ設計が可能となり、制御の安定化に繋がる。
以下、本発明の実施形態について説明する。図1に本発明の実施形態で使用するターボ分子ポンプの構成図を示す。図1において、ターボ分子ポンプ100は、円筒状の外筒127の上端に吸気口101が形成されている。そして、外筒127の内方には、ガスを吸引排気するためのタービンブレードである複数の回転翼102(102a、102b、102c・・・)が備えられている。回転体103は、回転翼102と伴って回転する部材の総称であり、回転翼102や、その中心に取り付けられたロータ軸113、及びロータ軸113に取り付けられた金属ディスク111などによって構成される。ロータ軸113は、例えば5軸制御の磁気軸受により空中に浮上支持かつ位置制御されている。
上側径方向電磁石104は、4個の電磁石がX軸とY軸とに対をなして配置されている。この上側径方向電磁石104に近接して、かつ上側径方向電磁石104のそれぞれに対応して4個の上側径方向センサ107が備えられている。上側径方向センサ107は、例えば伝導巻線を有するインダクタンスセンサや渦電流センサなどが用いられ、ロータ軸113の位置に応じて変化するこの伝導巻線のインダクタンスの変化に基づいてロータ軸113の位置を検出する。この上側径方向センサ107はロータ軸113、即ちそれに固定され一体となった回転体103の径方向変位を検出し、図示しない制御装置の中央演算処理装置(CPU)に送るように構成されている。
この中央演算処理装置においては、磁気軸受制御器の機能が搭載されており、例えばPID調節機能を有する補償回路が、上側径方向センサ107によって検出された位置信号に基づいて、上側径方向電磁石104の励磁制御指令信号を生成し、図示しない磁気軸受用インバータが、この励磁制御指令信号に基づいて、上側径方向電磁石104を励磁制御することで、ロータ軸113の上側の径方向位置が調整される。
そして、このロータ軸113は、高透磁率材(鉄、ステンレスなど)などにより形成され、上側径方向電磁石104の磁力により吸引されるようになっている。かかる調整は、X軸方向とY軸方向とにそれぞれ独立して行われる。また、下側径方向電磁石105及び下側径方向センサ108が、上側径方向電磁石104及び上側径方向センサ107と同様に配置され、ロータ軸113の下側の径方向位置を上側の径方向位置と同様に調整している。
更に、軸方向電磁石106A、106Bが、ロータ軸113の下部に備えた円板状の金属ディスク111を上下に挟んで配置されている。金属ディスク111は、鉄などの高透磁率材で構成されている。ロータ軸113の軸方向変位を検出するために軸方向センサ109が備えられ、その軸方向位置信号が図示しない制御装置の中央演算処理装置(CPU)に送られるように構成されている。
そして、中央演算処理装置に搭載された磁気軸受制御器において、例えばPID調節機能を有する補償回路が、軸方向センサ109によって検出された軸方向位置信号に基づいて、軸方向電磁石106Aと軸方向電磁石106Bのそれぞれの励磁制御指令信号を生成し、図示しない磁気軸受用インバータが、これらの励磁制御指令信号に基づいて、軸方向電磁石106Aと軸方向電磁石106Bをそれぞれ励磁制御することで、軸方向電磁石106Aが磁力により金属ディスク111を上方に吸引し、軸方向電磁石106Bが金属ディスク111を下方に吸引し、ロータ軸113の軸方向位置が調整される。
このように、制御装置は、この軸方向電磁石106A、106Bが金属ディスク111に及ぼす磁力を適当に調節し、ロータ軸113を軸方向に磁気浮上させ、空間に非接触で保持するようになっている。
一方、モータ121は、ロータ軸113を取り囲むように周状に配置された複数の磁極を備えている。各磁極は、ロータ軸113との間に作用する電磁力を介してロータ軸113を回転駆動するように、制御装置によって制御されている。また、モータ121には図示しない例えばホール素子、レゾルバ、エンコーダなどの回転速度センサが組み込まれており、この回転速度センサの検出信号によりロータ軸113の回転速度が検出されるようになっている。
更に、例えば下側径方向センサ108近傍に、図示しない位相センサが取り付けてあり、ロータ軸113の回転の位相を検出するようになっている。制御装置200では、この位相センサと回転速度センサの検出信号を共に用いて磁極の位置を検出するようになっている。
回転翼102(102a、102b、102c・・・)とわずかの空隙を隔てて複数枚の固定翼123(123a、123b、123c・・・)が配設されている。回転翼102(102a、102b、102c・・・)は、それぞれ排気ガスの分子を衝突により下方向に移送するため、ロータ軸113の軸線に垂直な平面から所定の角度だけ傾斜して形成されている。固定翼123(123a、123b、123c・・・)は、例えばアルミニウム、鉄、ステンレス、銅などの金属、又はこれらの金属を成分として含む合金などの金属によって構成されている。
回転翼102(102a、102b、102c・・・)とわずかの空隙を隔てて複数枚の固定翼123(123a、123b、123c・・・)が配設されている。回転翼102(102a、102b、102c・・・)は、それぞれ排気ガスの分子を衝突により下方向に移送するため、ロータ軸113の軸線に垂直な平面から所定の角度だけ傾斜して形成されている。固定翼123(123a、123b、123c・・・)は、例えばアルミニウム、鉄、ステンレス、銅などの金属、又はこれらの金属を成分として含む合金などの金属によって構成されている。
また、固定翼123も、同様にロータ軸113の軸線に垂直な平面から所定の角度だけ傾斜して形成され、かつ外筒127の内方に向けて回転翼102の段と互い違いに配設されている。そして、固定翼123の外周端は、複数の段積みされた固定翼スペーサ125(125a、125b、125c・・・)の間に嵌挿された状態で支持されている。
固定翼スペーサ125はリング状の部材であり、例えばアルミニウム、鉄、ステンレス、銅などの金属、又はこれらの金属を成分として含む合金などの金属によって構成されている。固定翼スペーサ125の外周には、わずかの空隙を隔てて外筒127が固定されている。外筒127の底部にはベース部129が配設されている。ベース部129には排気口133が形成され、外部に連通されている。チャンバ(真空チャンバ)側から吸気口101に入ってベース部129に移送されてきた排気ガスは、排気口133へと送られる。
固定翼スペーサ125はリング状の部材であり、例えばアルミニウム、鉄、ステンレス、銅などの金属、又はこれらの金属を成分として含む合金などの金属によって構成されている。固定翼スペーサ125の外周には、わずかの空隙を隔てて外筒127が固定されている。外筒127の底部にはベース部129が配設されている。ベース部129には排気口133が形成され、外部に連通されている。チャンバ(真空チャンバ)側から吸気口101に入ってベース部129に移送されてきた排気ガスは、排気口133へと送られる。
更に、ターボ分子ポンプ100の用途によって、固定翼スペーサ125の下部とベース部129の間には、ネジ付スペーサ131が配設される。ネジ付スペーサ131は、アルミニウム、銅、ステンレス、鉄、又はこれらの金属を成分とする合金などの金属によって構成された円筒状の部材であり、その内周面に螺旋状のネジ溝131aが複数条刻設されている。ネジ溝131aの螺旋の方向は、回転体103の回転方向に排気ガスの分子が移動したときに、この分子が排気口133の方へ移送される方向である。回転体103の回転翼102(102a、102b、102c・・・)に続く最下部には円筒部102dが垂下されている。この円筒部102dの外周面は、円筒状で、かつネジ付スペーサ131の内周面に向かって張り出されており、このネジ付スペーサ131の内周面と所定の隙間を隔てて近接されている。回転翼102及び固定翼123によってネジ溝131aに移送されてきた排気ガスは、ネジ溝131aに案内されつつベース部129へと送られる。
ベース部129は、ターボ分子ポンプ100の基底部を構成する円盤状の部材であり、一般には鉄、アルミニウム、ステンレスなどの金属によって構成されている。ベース部129はターボ分子ポンプ100を物理的に保持すると共に、熱の伝導路の機能も兼ね備えているので、鉄、アルミニウムや銅などの剛性があり、熱伝導率も高い金属が使用されるのが望ましい。
また、上側径方向センサ107と回転体103の間のステータコラム122の上端部には、タッチダウンベアリング141が配設されている。一方、下側径方向センサ108の下方には、タッチダウンベアリング143が配設されている。
また、上側径方向センサ107と回転体103の間のステータコラム122の上端部には、タッチダウンベアリング141が配設されている。一方、下側径方向センサ108の下方には、タッチダウンベアリング143が配設されている。
タッチダウンベアリング141及びタッチダウンベアリング143とも玉軸受で構成されている。タッチダウンベアリング141及びタッチダウンベアリング143は回転体103の回転異常時又は停電時等のように回転体103が何らかの要因で磁気浮上ができなくなったきに、回転体103が安全に非浮上状態に移行できるよう設けられている。
かかる構成において、回転翼102がロータ軸113と共にモータ121により回転駆動されると、回転翼102と固定翼123の作用により、吸気口101を通じて図示しないチャンバから排気ガスが吸気される。回転翼102の回転速度は通常20,000rpm~90,000rpmであり、回転翼102の先端での周速度は200m/s~400m/sに達する。吸気口101から吸気された排気ガスは、回転翼102と固定翼123の間を通り、ベース部129へ移送される。
ここに、磁気軸受の制御系のモデルブロック図を図2に示す。プラント1は例えばターボ分子ポンプの上側径方向電磁石104、下側径方向電磁石105、軸方向電磁石106A、106B、及び、回転体103である。そして、例えばプラント1の出力信号である回転体103の位置の変位Xをセンサ3で抽出し、減算器5で変位指令値X*との偏差信号を算出する。センサ3は、例えば上側径方向センサ107、下側径方向センサ108、軸方向センサ109である。偏差信号は制御器7で信号調整された後、位置調整用の制御信号としてプラント1に対し入力され、回転体の位置が調整される。
このモデルの閉ループ伝達関数ゲイン特性を図3に示す。図3において、第1の運転モードがターボ分子ポンプ100の通常の運転が行われているときの磁気軸受の系の閉ループ伝達関数ゲイン特性である。このときの固有振動を示すゲインのピーク点Aとピーク点Bが共にセンサ分解能を余裕をもって超えられるようにする。このため、制御器7の磁気軸受制御ゲインを一時的に上げる。このことにより、第1の運転モードの閉ループ伝達関数ゲイン特性は第2の運転モードの閉ループ伝達関数ゲイン特性にまでゲインが引き上げられる。
図4に第2の運転モードの運転フローを示す。図4において、ステップ1(図中S1と略す。以下同旨)で第2の運転モードの運転が開始される。ステップ3で制御器7の磁気軸受制御ゲインが第1の運転モードのときの磁気軸受制御ゲインよりも増大される。ステップ5ではこの状態で固有振動数が測定される。このときの固有振動数の測定方法は高速フーリエ変換が好ましく、離散フーリエ変換でもよい。測定対象となる固有振動は、回転体103の曲げモード、回転翼102の固有振動モード、ステータに起因した振動モード、回転体103の剛体モードである。制御装置の中央演算処理装置(CPU)で演算処理されるが、外部にて演算処理が行われてもよい。ステップ5での固有振動数の測定後、ステップ7で制御器7の磁気軸受制御ゲインが第1の運転モードのときの磁気軸受制御ゲインに戻される。そして、ステップ9で第2の運転モードの運転が終了する。
第2の運転モードのときの磁気軸受制御ゲインは第1の運転モードのときよりも大きい。このため、磁気軸受装置の出力に含まれる固有振動モードに対応した信号が大きくなり、信号のS/N比が改善し、高感度に固有振動モードを検出できる。その結果、より最適なフィルタ設計が可能となり、制御の安定化に繋がる。なお、この信号の種類としては、変位信号、電流信号などがある。
ターボ分子ポンプは回転翼102を備えており、その固有振動による発振が発生し易いが、回転翼102の固有振動数を精度よく測定できる
ターボ分子ポンプは回転翼102を備えており、その固有振動による発振が発生し易いが、回転翼102の固有振動数を精度よく測定できる
図5に各モード間遷移の運転フローを示す。図5において、ステップ11で示す第1の運転モードは通常運転が行われるモードである。ステップ13で示す第2の運転モードは固有振動数の測定が行われるモードである。
第1の運転モードから第2の運転モードに遷移するときの条件は、例えば、出荷直後や初期設定時、電源投入時、一定時間経過時、エラー状態からの復帰時、ユーザの操作時、ポンプの取り付けや取り外し時、ケーブル交換時、温度変化のあったとき等である。
第1の運転モードから第2の運転モードに遷移するときの条件は、例えば、出荷直後や初期設定時、電源投入時、一定時間経過時、エラー状態からの復帰時、ユーザの操作時、ポンプの取り付けや取り外し時、ケーブル交換時、温度変化のあったとき等である。
一方、第2の運転モードから第1の運転モードに遷移するときの条件は、例えば、固有振動の測定完了時であり、第2の運転モードにおいて固有振動モードが見つからなければそのまま第1の運転モードに戻る。一方、第2の運転モードにおいて固有振動モードが見つかれば第1の運転モードに戻ってからフィルタを設計する。
また、第2の運転モードにおいて固有振動モードが見つかった場合に、第2の運転モードから第1の運転モードに戻る前に、第1の運転モードのフィルタを更新してもよい。
更に、所定の値以上の変位や振動スペクトルを検出したときに第2の運転モードから第1の運転モードに遷移してもよい。即ち、発振が大きく危険な場合等には測定を中断して直ちに第1の運転モードに戻す。
また、第2の運転モードにおいて固有振動モードが見つかった場合に、第2の運転モードから第1の運転モードに戻る前に、第1の運転モードのフィルタを更新してもよい。
更に、所定の値以上の変位や振動スペクトルを検出したときに第2の運転モードから第1の運転モードに遷移してもよい。即ち、発振が大きく危険な場合等には測定を中断して直ちに第1の運転モードに戻す。
更に、第1の運転モードで通常運転が行われ、その後、必要時に例えば1秒以下程度で一瞬だけ第2の運転モードの運転が行われて、固有振動数が測定され、その後直ちに第1の運転モードに戻すようにしてもよい。この場合、第2の運転モードにおける磁気軸受制御ゲインの増大は瞬間的なものなので、一瞬だけ不安定な制御条件となっても発振が大きくなる前に第1の運転モードに戻せば安全である。瞬間波形データさえ取得すれば、第1の運転モードに戻ってからでもスペクトル解析はできる。
次に、固有振動モード測定後における第1の運転モードの制御パラメータの調整方法について説明する。この調整には後に詳述するものも加え、例えば以下のような方法があげられる。
1、測定された固有振動モードに基づき新しくフィルタを作成する。
2、既存のフィルタの中心周波数、線幅、大きさ等のパラメータを変更する。
3、回転数、温度等の情報との相関を取り、フィルタのパラメータそれらに合わせて変更する。
4、制御パラメータの比例ゲインや積分ゲインを変更する。
5、固有振動の影響が十分小さいと考えられる場合には特に何も変更しない。
1、測定された固有振動モードに基づき新しくフィルタを作成する。
2、既存のフィルタの中心周波数、線幅、大きさ等のパラメータを変更する。
3、回転数、温度等の情報との相関を取り、フィルタのパラメータそれらに合わせて変更する。
4、制御パラメータの比例ゲインや積分ゲインを変更する。
5、固有振動の影響が十分小さいと考えられる場合には特に何も変更しない。
次に、磁気軸受制御ゲインを増大する方法について説明する。まず、位相進み量を増加させることで磁気軸受制御ゲインを増大させる方法について図6に基づき説明する。図6は、図2に示す磁気軸受の制御系のモデルブロック図の変位指令値X*から変位Xまでの開ループ伝達関数特性について、第1の運転モードと第2の運転モードの制御系のゲインと位相を比較したものである。
磁気軸受制御として制御器7には通常PID制御としての微分ゲイン又は位相進みフィルタが必要である。微分ゲインは完全微分若しくは不完全微分のフィルタで構成される。
第2の運転モードでは、この微分ゲイン又は位相進みフィルタの位相の進み量を第1の運転モードよりも大きくすることで磁気軸受制御ゲインを増大する。
磁気軸受制御として制御器7には通常PID制御としての微分ゲイン又は位相進みフィルタが必要である。微分ゲインは完全微分若しくは不完全微分のフィルタで構成される。
第2の運転モードでは、この微分ゲイン又は位相進みフィルタの位相の進み量を第1の運転モードよりも大きくすることで磁気軸受制御ゲインを増大する。
図6の開ループ伝達関数の位相特性に示すように位相を大きく進めた結果、ゲイン特性に示すようにこの位相進みに伴って高周波側のゲインが上がる。図7の位相進みフィルタのボード線図例に示すように、位相を進ませれば進ませる程、高周波側でのゲインが増大することが分かる。なお、この図7に示す位相進みフィルタは次数が2次、中心周波数100Hzで構成した例である。位相進みは、いわゆるPID制御の「D」の機能であり、磁気軸受制御に必要なので、余分なフィルタの個数を増やさずに測定感度を上げられる。このため、中央演算処理装置(CPU)の軽量化が可能である。
次に、ノッチフィルタやローパスフィルタを一時的に解除することで磁気軸受制御ゲインを増大させる方法について図8、図9に基づき説明する。
磁気軸受制御として制御器7には通常ノッチフィルタやローパスフィルタが配設されている。このノッチフィルタやローパスフィルタを第2の運転モードの際に解除することで磁気軸受制御ゲインを大きくする。例えば、図8には中心周波数1000Hzのノッチフィルタのボード線図の例を示す。このノッチフィルタを第2の運転モードの際に解除することで磁気軸受制御ゲインを大きくする。
磁気軸受制御として制御器7には通常ノッチフィルタやローパスフィルタが配設されている。このノッチフィルタやローパスフィルタを第2の運転モードの際に解除することで磁気軸受制御ゲインを大きくする。例えば、図8には中心周波数1000Hzのノッチフィルタのボード線図の例を示す。このノッチフィルタを第2の運転モードの際に解除することで磁気軸受制御ゲインを大きくする。
図9は、図2に示す磁気軸受の制御系のモデルブロック図の変位指令値X*から変位Xまでの閉ループ伝達関数特性について、第1の運転モードと第2の運転モードの制御系のゲインを比較したものである。図9に示すように、ノッチフィルタを解除しゲインを大きくしたことで、第2の運転モードにおいて固有振動モードを観測し易い。特に、このフィルタによって抑制されていた固有振動モードの周波数変化を観測し易い。
なお、第1の運転モードにて磁気軸受制御ゲインを下げるために配設されたフィルタのゲインの下げ量を、第2の運転モードにおいて弱めるように、フィルタの制御パラメータを調整するようにしてもよい。この場合にも同様の効果を奏することができる。
なお、第1の運転モードにて磁気軸受制御ゲインを下げるために配設されたフィルタのゲインの下げ量を、第2の運転モードにおいて弱めるように、フィルタの制御パラメータを調整するようにしてもよい。この場合にも同様の効果を奏することができる。
次に、磁気軸受制御器の内部で生成された加振信号を磁気軸受制御に印加する方法について説明する。
第2の運転モードにおいて、制御器7では中央演算処理装置(CPU)で生成した加振信号を磁気軸受制御系に印加し、変位Xでこの加振信号に対する応答を観測する。加振信号は、例えば、ステップ信号、インパルス信号、ホワイトノイズ、単一周波数での正弦波、周波数スイープによる正弦波、スウェプトサイン信号である。このように第2の運転モードで一時的に加振信号を印加することで、変位Xにおける固有振動モードの応答が大きくなり、固有振動モードを高感度に測定できるため固有振動モードを観測し易い。外部の加振信号発生器やA/D変換装置が不要なので、小型化、コストダウンが図れる。
なお、外部の加振信号発生器を用いることでも、同様に固有振動モードを高感度に測定することができる。
第2の運転モードにおいて、制御器7では中央演算処理装置(CPU)で生成した加振信号を磁気軸受制御系に印加し、変位Xでこの加振信号に対する応答を観測する。加振信号は、例えば、ステップ信号、インパルス信号、ホワイトノイズ、単一周波数での正弦波、周波数スイープによる正弦波、スウェプトサイン信号である。このように第2の運転モードで一時的に加振信号を印加することで、変位Xにおける固有振動モードの応答が大きくなり、固有振動モードを高感度に測定できるため固有振動モードを観測し易い。外部の加振信号発生器やA/D変換装置が不要なので、小型化、コストダウンが図れる。
なお、外部の加振信号発生器を用いることでも、同様に固有振動モードを高感度に測定することができる。
次に、磁気軸受制御に対して加振信号が印加されない構成について説明する。第2の運転モードにおいては、磁気軸受制御ゲインが大きいため、磁気軸受の電流高調波やモータ121や外部からの衝撃などによる外乱、信号ノイズなどを起源とする自励振動が発生し易くなる。この自励振動を測定することで固有振動モードを測定できる。この構成では、外部の加振信号発生器やA/D変換装置、CPUにおける加振信号の演算が不要なので、小型化、コストダウンが図れる。
次に、制御器7の磁気軸受制御ゲインを徐々に上げていく方法について説明する。第2の運転モードにおいて、制御器7の磁気軸受制御ゲインを徐々に上げていく。そして、発振を検知したとき、若しくは制御器7の磁気軸受制御ゲイン増加が所定のゲイン値に到達したとき第2の磁気軸受制御ゲインの増大を停止させる。
このことにより、磁気軸受制御がより不安定になることを防ぐことができ、発振の急な増大を防げてより安全な磁気軸受制御が行える。なお、発振を検知した場合には、第2の磁気軸受制御ゲインの増大停止後、直ちに第2の運転モードから第1の運転モードに遷移させ、磁気軸受制御ゲインを小さくするのが望ましい。
このことにより、磁気軸受制御がより不安定になることを防ぐことができ、発振の急な増大を防げてより安全な磁気軸受制御が行える。なお、発振を検知した場合には、第2の磁気軸受制御ゲインの増大停止後、直ちに第2の運転モードから第1の運転モードに遷移させ、磁気軸受制御ゲインを小さくするのが望ましい。
次に、フィルタを追加することで磁気軸受制御ゲインを増大させる方法について説明する。このとき追加するのは、微分器、位相進みフィルタ、ハイパスフィルタ、ローパスフィルタ、バンドパスフィルタ等が望ましい。磁気軸受制御ゲインを増大させるためには、微分器、位相進みフィルタ、ハイパスフィルタなどのフィルタを、PID制御器に対して直列に接続する。また、微分器、位相進みフィルタ、ハイパスフィルタ、ローパスフィルタ、バンドパスフィルタ等のフィルタを、PID制御器に対して並列に接続してもよい。
なお、上述した各態様での第2の運転モードの磁気軸受制御ゲインの増加は回転体103の停止中にて行うことが可能である。そして、このように回転体103の停止中に磁気軸受制御ゲインの増加を行った場合には、万が一磁気軸受制御ゲインの増加により制御が不安定化しタッチダウンした場合、回転体103やタッチダウンベアリング141、143への衝撃が回転時と比べて小さく、安全性が高い。
また、上述した各態様での第2の運転モードの磁気軸受制御ゲインの増加は回転体103の回転中に行っても良い。この場合には、ジャイロ効果などの影響が含まれた、回転体の回転時の固有振動モードを高感度に測定可能である。特に、複数の回転数にて第2の運転モードを用いた固有振動モードの測定を行った場合には、ジャイロ効果などを想定したときの回転数の変化による固有振動モードの変化を高感度に追跡可能である。図10にジャイロ効果に伴う回転数による固有振動モード周波数の変化を示す。ジャイロ効果のあった場合、図10に示すように回転数の変化に伴って固有振動数が変化する。この変化を回転体103の回転中に確認し、各回転数においてフィルタのパラメータを適切に設定する。例えば、ノッチフィルタの中心周波数を測定値に合わせて変化させることで、より最適なフィルタ設計が可能であり、制御がより安定する。このパラメータの設定は回転体103が回転中の際に行っても良いし、あるいは、回転体103が回転していない状態のときに行っても良い。
次に、出荷直後の初期設定を行う場合を例にフィルタの調整方法について説明する。図11に、回転体103を回転させていない状態での固有振動モードの観測と、回転体103を回転させている状態での固有振動モードの観測とを組み合わせた形で好適にフィルタを調整する手順を示す。まず、ステップ15で出荷直後の初期設定を開始する。ステップ17では第1の運転モードで磁気軸受を動作させるが、回転体103は回転させない。ステップ19では回転体103は回転させない状態で第2の運転モードを実施する。即ち、この時点で大まかにフィルタの調整が完了する。
続いてステップ21で第1の運転モードに戻り、ステップ23で回転数ω1にて第2の運転モードを実施する。同様に回転数ω2、回転数ω3・・で同様の処理を行う。回転数の設定例としては、ω=0~定格回転数までを5~10区域程度に分割をする。例えば定格30,000rpmに対して、0、6,000、12,000、18,000、24,000、30,000rpmで第1の運転モードと第2の運転モードを実施する。各第2の運転モードの時間は1秒以下程度が望ましい。これは、磁気軸受制御ゲインが大きく不安定な時間を短く、かつ、フーリエ変換の周波数分解能(=1/(測定時間))をある程度小さくしたいためである。例えば、時間1秒のデータを測定した場合、フーリエ変換スペクトルの周波数分解能は1Hzである。
その後、ステップ29で第1の運転モードに戻り、ステップ31で定格回転数にて第2の運転モードを実施する。このようにフィルタを徐々に調整する。ステップ33でフィルタの調整を完了し第1の運転モードに戻す。そして、ステップ35で出荷直後の初期設定が完了する。フィルタの調整は第2の運転モード時に行っても良いが、第2の運転モード時ではデータの収集だけを行い、データの解析とフィルタの調整とは次の第1の運転モードにおいて行うようにしてもよい。図11の処理は、工場内で製造時等に行っても良いが、出荷納品後に行うことで、製造ばらつきや使用環境を考慮したフィルタ調整が行えるので、より安定な制御を行うことができる。
なお、第2の運転モードにおいては発振が発生し易いが、この発振が危険でない場合には運転停止することなくパラメータを再調整し、一方、危険な場合には直ちに運転停止するようにしてもよい。
本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変をなすことができ、そして、本発明が当該改変されたものにも及ぶことは当然である。また、上述した各実施形態は種々組み合わせても良い。
本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変をなすことができ、そして、本発明が当該改変されたものにも及ぶことは当然である。また、上述した各実施形態は種々組み合わせても良い。
1 プラント
3 センサ
5 減算器
7 制御器
100 ターボ分子ポンプ
102 回転翼
103 回転体
104 上側径方向電磁石
105 下側径方向電磁石
106A、106B 軸方向電磁石
107 上側径方向センサ
108 下側径方向センサ
109 軸方向センサ
111 金属ディスク
113 ロータ軸
121 モータ
141、143 タッチダウンベアリング
3 センサ
5 減算器
7 制御器
100 ターボ分子ポンプ
102 回転翼
103 回転体
104 上側径方向電磁石
105 下側径方向電磁石
106A、106B 軸方向電磁石
107 上側径方向センサ
108 下側径方向センサ
109 軸方向センサ
111 金属ディスク
113 ロータ軸
121 モータ
141、143 タッチダウンベアリング
Claims (14)
- 回転体と、
該回転体を磁力で空中に浮上支持する磁気軸受と、
該磁気軸受を制御する磁気軸受制御器とを備えた磁気軸受装置であって、
前記磁気軸受制御器による磁気軸受制御には、前記回転体の通常運転を第1の磁気軸受制御ゲインで行う第1の運転モードと、前記回転体の一時運転を第2の磁気軸受制御ゲインで行いつつ前記磁気軸受装置の固有振動数を測定する第2の運転モードとを有し、
前記第2の磁気軸受制御ゲインが前記第1の磁気軸受制御ゲインよりも大きいことを特徴とする磁気軸受装置。 - 前記第2の運転モードの固有振動数の測定が前記回転体の回転中に行われることを特徴とする請求項1記載の磁気軸受装置。
- 前記第2の運転モードの固有振動数の測定が前記回転体の回転の停止中に行われることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の磁気軸受装置。
- 前記第2の運転モードで測定された固有振動数に基づき前記第1の運転モードにおける前記磁気軸受を制御する少なくとも一つの制御パラメータの調整が行われることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の磁気軸受装置。
- 前記制御パラメータの調整が前記回転体の回転中に行われることを特徴とする請求項4記載の磁気軸受装置。
- 前記第2の運転モードが、前記第1の磁気軸受制御ゲインから前記第2の磁気軸受制御ゲインにまで前記磁気軸受制御のゲインを増大させる第1工程と、前記第2の磁気軸受制御ゲインで前記固有振動数を測定する第2工程と、該第2工程での測定が完了したときに前記第2の磁気軸受制御ゲインから前記第1の磁気軸受制御ゲインに戻す第3工程を備えたことを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の磁気軸受装置。
- 前記第1の運転モードから前記第2の運転モードへの遷移と、前記第2の運転モードから前記第1の運転モードへの遷移とが繰り返し行われることを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の磁気軸受装置。
- 前記第1の運転モードから前記第2の運転モードへの遷移が前記回転体の回転数に応じて行われることを特徴とする請求項7記載の磁気軸受装置。
- 前記第2の運転モードにおいて、前記第1の運転モードにて前記磁気軸受制御の位相を進めるために配設されたフィルタの位相進み量を大きくすることを特徴とする請求項1~8のいずれか一項に記載の磁気軸受装置。
- 前記第2の運転モードにおいて、前記第1の運転モードにて前記磁気軸受制御のゲインを下げるために配設されたフィルタのゲインの下げ量を弱めるように前記フィルタの制御パラメータを調整する、若しくは前記フィルタを削除することを特徴とする請求項1~8のいずれか一項に記載の磁気軸受装置。
- 前記第2の運転モードの固有振動数測定時に、前記磁気軸受制御器の内部で生成された加振信号が前記磁気軸受制御に印加されることを特徴とする請求項1~10のいずれか一項に記載の磁気軸受装置。
- 前記第2の運転モードの固有振動数測定時に、前記磁気軸受制御に対して加振信号が印加されないことを特徴とする請求項1~10のいずれか一項に記載の磁気軸受装置。
- 前記第2の運転モードにおいて、前記第2の磁気軸受制御ゲインを所定時間をかけて次第に増大させ、該第2の磁気軸受制御ゲインの増大により生じた発振を検知したとき、あるいは、該第2の磁気軸受制御ゲインが所定の制御ゲイン量に到達したことを確認したときに該第2の磁気軸受制御ゲインの増大を停止させることを特徴とする請求項1~12のいずれか一項に記載の磁気軸受装置。
- 請求項1~13のいずれか一項に記載の磁気軸受装置を搭載した真空ポンプ。
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