JP7213721B2 - スクロール圧縮機 - Google Patents
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Description
本発明の課題は、背圧の過不足を抑制することである。
固定端板の一端面に固定渦巻きが形成された固定スクロールと、
固定端板の一端側に配置され、可動端板の他端面に固定渦巻きに噛み合う可動渦巻きが形成された可動スクロールと、
固定端板、固定渦巻き、可動端板、及び可動渦巻きによって囲まれた空間であり、導入された熱媒体を圧縮する圧縮室と、
可動端板の一端側に形成され、固定スクロールに対して可動スクロールを押圧する背圧室と、
圧縮室の圧力を受けて背圧室の圧力を調整する調整弁と、を備える。
《構成》
図1は、第1実施形態の圧縮機を示す断面図である。
圧縮機11は、例えばカーエアコンの冷媒回路で用いられる電動型のスクロール圧縮機であり、冷媒(熱媒体)を吸入し、圧縮してから排出する。
以下の説明では、便宜的に、圧縮機11における軸方向の一方側を前側とし、軸方向の他方側を後側とする。
フロントハウジング12は、図示しない吸入口に連通した吸入室21を備え、この吸入室21に電動モータ22が収容されている。電動モータ22の回転軸23は、前側がフロントハウジング12によって回転自在に支持され、後側がセンタハウジング13によって回転自在に支持されている。
固定スクロール24は、フロントハウジング12の後側を閉塞するように固定されており、円板状に形成された固定端板26と、この固定端板26の前面に形成された固定渦巻き27と、を備える。
可動スクロール25は、固定端板26の前側に配置されており、円板状に形成された可動端板28と、この可動端板28の後面に形成され、固定渦巻き27と噛み合う可動渦巻き29と、を備える。
可動端板28の前面には、ボス33が形成され、回転軸23の後端には、偏心させたクランク端部34が形成され、クランク端部34がボス33に回転自在の状態で嵌め込まれている。回転軸23の回転運動は、クランク端部34によって旋回運動として可動スクロール25に伝達される。可動スクロール25は、例えばピン&ホールを介して自転が阻止され、且つ固定スクロール24に対する公転が許容されている。
固定スクロール24に対して可動スクロール25が公転すると、圧縮室31は、前後方向から見て、スクロール中心に向かって変位してゆき、且つ容積が縮小してゆく。圧縮室31は、スクロール外側にあるときに、図示しない吸入口と連通して冷媒を吸入し、スクロール中心にあるときに吐出孔35と連通して圧縮した冷媒を吐出する。吐出弁37は、吐出圧を受けるときに、吐出室36に冷媒を吐出させる。吐出された冷媒は、図示しない吐出口から外部へ排出される。
固定端板26には、軸方向に貫通し、圧縮室31に連通した連通路52が形成されている。連通路52は、リアハウジング14に形成された連通路53を介して取付穴42に連通している。
図2は、第1実施形態の調整弁を示す断面図である。
ここでは、便宜的に、調整弁41における軸方向の一方側を上側とし、軸方向の他方側を下側とする。
調整弁41は、上側ボディ61と下側ボディ62とを接続して構成されている。上側ボディ61は、略円筒状に形成されており、下端側の内周面に雌ねじ部が形成されている。下側ボディ62は、略円筒状に形成されており、上端側の外周面に雄ねじ部が形成されている。これら雌ねじ部と雄ねじ部とが嵌め合わされている。上側ボディ61と下側ボディ62との上下方向の間には、ホルダ63が設けられている。
上側ボディ61の内部には、上から下に向かって、圧力室H1と、圧力室H2と、圧力室H3と、圧力室H4と、が順に形成されている。各圧力室は、Oリング等のシール部材によって気密性が保たれている。
弁体71の外周面には、ポート66よりも下側となる位置に、径方向の外側に向かって突出する大径部73が形成されている。隔壁72及び大径部73によって圧力室H2が形成され、圧力室H2はポート66を介して圧縮室31に連通する。隔壁72の下面と大径部73の上面との間には、コイルスプリング74が設けられている。コイルスプリング74は、弁体71を下降させる方向に付勢している。
ホルダ63は、ハウジング81と、ダイアフラム82と、作動ピン83と、を備える。ハウジング81は、上端側が閉塞された略円筒状であり、下側ボディ62の内側に配置されている。ハウジング81の上端には、径方向の外側に突出したフランジ84が形成されており、このフランジ84を上側ボディ61内の段差と下側ボディ62の上端とで挟み込むことで、ハウジング81を固定している。ダイアフラム82は、円板状の弾性薄膜であり、その外周縁部が上側ボディ61内の段差とフランジ84とに挟み込まれることで固定されている。弁体71が弁座部材68に当接しているときに、連結部材77の下端はダイアフラム82の上面に接触している。
ハウジング81の上端面には、凹部85が形成され、凹部85の底面を作動ピン83が進退可能な状態で貫通している。作動ピン83が貫通する穴には隙間があり、凹部85とハウジング81の内側とは連通している。ダイアフラム82及び凹部85によって圧力室H4が形成され、圧力室H4は大気開放されている。
作動ピン83における凹部85の底面よりも上側には、径方向の外側に突出したフランジ状のストッパ86が形成されている。ストッパ86が凹部85の底面に当接すると、作動ピン83がそれ以上下降することがない。ストッパ86が凹部85の底面に当接したときに、作動ピン83の上端はハウジング81の上端面よりも下側となる。
第1実施形態は、背圧室32の入口側に設けた調整弁41により、背圧室32に供給される圧力Pmを自律的に調整するものである。
ここでは、冷媒の流れを点線矢印で示し、オイルの流れを実線矢印で示す。なお、冷媒回路を循環するオイルについては説明を省略する。吸入室21に導入された冷媒は、圧縮室31で圧縮され、吐出室36に吐出され、オイルと分離させてから外部へ排出される。外部へ排出された冷媒の一部は、インジェクションによって圧縮室31に導入されることで、圧縮室31に対して冷媒の過給が行なわれる。
次に、第1実施形態の主要な作用効果について説明する。
インジェクションにおけるオン/オフの切り替えに応じて背圧を調整しないと、背圧に過不足が生じてしまう。すなわち、インジェクションのオン時に合わせて背圧を設定するとオフ時に背圧が過剰になってしまい、逆にインジェクションのオフ時に合わせて背圧を設定するとオン時に背圧が不足してしまう。
そこで、圧縮室31の圧力Pcによって背圧室32の圧力Pmを調整する調整弁41を設けている。
ここでは、クランク角度の増加に伴って圧縮されてゆく圧力を示しており、インジェクションのオン時の特性を太い実線で示し、インジェクションのオフ時の特性を太い点線で示している。また、圧縮室31でインジェクションパイプ51と連通路52とが連通しているクランク角度範囲を連通角度としている。図中の(a)は、インジェクションがオンとなるときの連通角度での平均圧力を示す。図中の(b)は、インジェクションがオフとなるときの連通角度での平均圧力を示す。この図から明らかなように、インジェクションがオフとなるときの平均圧力よりも、インジェクションがオンとなるときの平均圧力が高くなる。したがって、圧縮室31の圧力Pcを調整弁41に取り込むことで、インジェクションのオン/オフに順応して背圧の過不足を抑制することができる。
また、圧縮室31の圧力Pcは、固定端板26に形成された連通路52、及びリアハウジング14に形成された連通路53を介して調整弁41に供給される。このように、簡易な構造で、圧縮室31の圧力Pcを容易に調整弁41に取り込むことができ、圧縮機11全体に大きな設計変更が求められることもない。
本実施形態では、調整弁41の一例として図2のバルブ構造について説明したが、これに限定されるものではない。すなわち、吐出室36の圧力Pdを背圧室32の圧力Pmまで減圧し、且つ圧縮室31の圧力Pcに応じて背圧室32の圧力Pmを調整可能なものであれば、任意のバルブ構造を採用することができる。例えば、特開2017-115762号公報に開示された図4のバルブ構造を採用してもよく、この場合は吸入室21の圧力Psを取り込む代わりに、圧縮室31の圧力Pcを取り込む構成とすればよい。このバルブ構造を採用した場合でも、本実施形態と同様の作用効果が得られる。
《構成》
第2実施形態は、背圧室32の出口側に設けた調整弁101により、背圧室32の圧力Pmを自律的に調整するものである。
図5は、第2実施形態の圧縮機を示す断面図である。
ここでは、調整弁の配置、及びオイル戻し流路の経路に変更を加えたことを除いては、前述した第1実施形態と同様の構成であり、共通する部分には同一符号を付し、詳細な説明を省略する。
図6は、第2実施形態の調整弁を示す断面図である。
ここでは、便宜的に、調整弁101における軸方向の一方側を上側とし、軸方向の他方側を下側とする。
調整弁101は、バルブハウジング111と、エンドハウジング112と、ダイアフラム113と、を備える。バルブハウジング111は、略円筒状に形成され、エンドハウジング112は、バルブハウジング111よりも小さな略円筒状に形成され、バルブハウジング111の上端にエンドハウジング112が固定されている。
ポート114に連通した圧力室H11には、上側に向かうほど細くなるテーパ状の弁座面121が形成されている。弁座面121には、径方向の中心位置に、圧力室H12に連通する弁孔122が形成されている。圧力室H11には、弁孔122よりも大きな球体からなる弁体123が設けられている。弁体123は、コイルスプリング124によって上方に付勢されている。弁体123が上昇し、弁座面121に当接するときに弁孔122が閉塞される。一方、弁体123が下降し、弁座面121から離れるときに弁孔122が開放される。したがって、弁体123の進退位置によって弁孔122の開度が調整される。
第2実施形態は、背圧室32の出口側に設けた調整弁101により、背圧室32の圧力Pmを自律的に調整するものである。
ここでは、冷媒の流れを点線矢印で示し、オイルの流れを実線矢印で示す。なお、冷媒回路を循環するオイルについては説明を省略する。吸入室21に導入された冷媒は、圧縮室31で圧縮され、吐出室36に吐出され、オイルと分離させてから外部へ排出される。外部へ排出された冷媒の一部は、インジェクションによって圧縮室31に導入されることで、圧縮室31に対して冷媒の過給が行なわれる。
次に、第2実施形態の主要な作用効果について説明する。
調整弁101は、背圧室32から吸入室21への経路上に設けられ、圧縮室31の圧力Pcが高いほど、背圧室32の圧力Pmを高くするように設定されている。これにより、インジェクションのオン時には、インジェクションの圧力Piを受けて上昇した圧力Pcが調整弁101の開度を小さくし、背圧室32の圧力Pmを上昇させる。一方、インジェクションのオフ時には、インジェクションの圧力Piを受けていない通常の圧力Pcが調整弁101の開度を大きくし、背圧室32の圧力Pmを減少させる。したがって、インジェクションのオン/オフが切り替わっても、背圧の過不足を抑制することができる。このように、圧縮室31の圧力Pcに応じて背圧室32の圧力Pmを調整することで、背圧の過不足を確実に抑制することができる。
その他、前述した第1実施形態と共通する部分については、同様の作用効果が得られるものとし、詳細な説明は省略する。
本実施形態では、調整弁101の一例として図6のバルブ構造について説明したが、これに限定されるものではない。すなわち、背圧室32の圧力Pmを吸入室21の圧力Psまで減圧し、且つ圧縮室31の圧力Pc、及び吐出室36の圧力Pdの双方に応じて、背圧室32の圧力Pmを調整可能なものであれば、任意のバルブ構造を採用することができる。例えば、特開2018-21520号公報に開示された図15のバルブ構造を採用してもよく、この場合はインジェクションの圧力Piを取り込む代わりに、圧縮室31の圧力Pcを取り込む構成とすればよい。このバルブ構造を採用した場合でも、本実施形態と同様の作用効果が得られる。
本実施形態では、調整弁101で吐出室36の圧力Pdも取り込み、圧力Pc及び圧力Pdの双方に応じて背圧室32の圧力Pmを調整しているが、これに限定されるものではない。連通角度は、連通路52の配置によって変化する。例えば、連通路52を吐出孔35に近づけると、連通角度を中圧域から高圧域に設定することができる。このように、連通路52を中圧域から高圧域となる領域に配置すれば、圧縮室31の圧力Pcだけに応じて調整弁101の開度を調整するとしても、圧縮室31の圧力が高圧となるクランク角度において、背圧の過不足を十分に抑制することができる。この場合、調整弁101で吐出室36の圧力Pdを取り込む構成を省略することができる。
ここでは、連通路94を省略したことを除いては、前述した第2実施形態と同様の構成である。
図9は、第2実施形態における変形例2の調整弁を示す断面図である。
ここでは、ポート116、圧力室H13、小径部133、及び隔壁135を省略し、ポート117を圧縮室31に連通させたことを除いては、前述した第2実施形態と同様の構成である。
図10は、第2実施形態における変形例2のブロック図である。
ここでは、吐出室36の圧力Pdを調整弁101に取り込む流路を省略したことを除いては、前述した第2実施形態と同様の構成である。
Claims (5)
- 固定端板の一端面に固定渦巻きが形成された固定スクロールと、
前記固定端板の一端側に配置され、可動端板の他端面に前記固定渦巻きに噛み合う可動渦巻きが形成された可動スクロールと、
前記固定端板、前記固定渦巻き、前記可動端板、及び前記可動渦巻きによって囲まれた空間であり、導入された熱媒体を圧縮する圧縮室と、
前記可動端板の一端側に形成され、前記固定スクロールに対して前記可動スクロールを押圧する背圧室と、
圧縮され外部へ排出された前記熱媒体の一部を、インジェクションによって前記圧縮室に導入するインジェクション流路と、
前記固定端板の他端側に形成され、前記圧縮室から前記熱媒体が吐出される吐出室と、
前記圧縮室の圧力、前記背圧室の圧力、及び前記吐出室の圧力を受けて、前記背圧室の圧力を調整し、前記インジェクションのオン時には前記背圧室の圧力を高くし、前記インジェクションのオフ時には前記背圧室の圧力を低くする調整弁と、を備えることを特徴とするスクロール圧縮機。 - 前記調整弁は、前記吐出室から前記背圧室への経路上に設けられ、前記圧縮室の圧力が高いほど、開度を大きくすることで前記背圧室の圧力を高くすることを特徴とする請求項1に記載のスクロール圧縮機。
- 前記熱媒体が吸入される吸入室を備え、
前記背圧室は、オリフィスを介して前記吐出室から圧力が供給され、
前記調整弁は、前記背圧室から前記吸入室への経路上に設けられ、前記圧縮室の圧力が高いほど、開度を小さくすることで前記背圧室の圧力を高くすることを特徴とする請求項1に記載のスクロール圧縮機。 - 前記調整弁は、前記吐出室の圧力を受け、前記吐出室の圧力が高いほど、開度を小さくすることで前記背圧室の圧力を高くすることを特徴とする請求項3に記載のスクロール圧縮機。
- 前記固定端板に形成され、前記圧縮室と前記調整弁とを連通する連通路を備えることを特徴とする請求項1~4の何れか一項に記載のスクロール圧縮機。
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