JP7213086B2 - 銅合金板材およびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、銅合金板材およびその製造方法に関し、特に、コネクタ、リードフレーム、リレー、スイッチなどの電気電子部品に使用するCu-Cr-Ti-Si-Fe系銅合金板材およびその製造方法に関する。
コネクタ、リードフレーム、リレー、スイッチなどの電気電子部品に使用される材料には、通電によるジュール熱の発生を抑制するために良好な導電性が要求されるとともに、電気電子機器の組立時や作動時に付与される応力に耐えることができる高い強度が要求されている。また、コネクタなどの電気電子部品間の接触信頼性を確保するために、接触圧力が時間とともに低下する現象(応力緩和)に対する耐久性、すなわち、耐応力緩和特性に優れていることも要求されている。
このようなコネクタなどの電気電子部品に使用される材料として、ZrおよびTiのうちの一種または二種を合計で0.01~0.50質量%含有し、Ag、Fe、Co、Ni、Cr、Mn、Zn、Mg、Si、P、SnおよびBのうちの一種以上を1.0質量%以下含有し、残部が銅およびその不可避的不純物からなり、70%IACS以上の導電率と、330MPa以上の0.2%耐力を有し、150℃で1000時間保持後の応力緩和率が15%以下である銅合金板が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
また、Crを0.1~0.8質量%、Mg、Ti、Zr、Zn、Fe、Sn、Ag、Siの一種または二種以上を合計で0.005~0.5質量%含有(あるいは、Crを0.1~0.8質量%、Mgを0.01~0.5質量%、Zn、Sn、Ag、Siの一種または二種以上を合計で0.005~0.5質量%含有)し、残部が銅と不可避不純物からなり、平均結晶粒径が15~80μmで、結晶粒径の変動係数(結晶粒径の標準偏差/平均結晶粒径)が0.40以下であり、引張強度が400MPa以上、導電率が75%IACS以上、応力緩和率が25%以下、曲げ加工性(R/t)が1以下である銅合金材が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
さらに、Crを0.10~0.50質量%、Tiを0.005~0.50質量%、Siを0.005~0.20質量%、FeおよびAlの少なくとも一種を0.10質量%以下、Niを0.10質量%以下、Snを2.0質量%以下、Znを2.0質量%以下含有し、Oが150ppm以下、Hが5ppm以下に制限され、残部がCuおよび不可避的不純物からなり、断面SEM観察による圧延方向の平均結晶粒径が15μm以下で板厚方向の平均結晶粒径が10μm以下の金属組織を有し、CrおよびSiとその他の元素を含む化合物が粒径5μm以下であるとともに500μm内に30個以下である電気電子部品用銅合金材が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
特開2014-101574号公報(段落番号0011-0014) 特開2013-129889号公報(段落番号0010) 特開2016-20543号公報(段落番号0017-0021)
しかし、特許文献1の銅合金板は、0.2%耐力とばね限界値の差が小さく、銅合金板をプレス加工した後のダレが大きくなって形状にばらつきが生じる。また、特許文献1の銅合金板は、Zrを含有しないと、高強度にすることができず、例えば、0.2%耐力が550MPa以上の高強度にするためには、Zrを含有する必要がある。Zrは非常に活性が高く、Zrを含有する銅合金を溶製するために真空炉などが必要になり、銅合金板の製造コストが増大する。
また、特許文献2の銅合金材は、結晶粒径が大きいため、銅合金板をプレス加工した後のダレが大きくなって形状にばらつきが生じる。
さらに、特許文献3の銅合金材は、多量のTiを含有しないと、高強度にすることができず、例えば、0.2%耐力が550MPa以上の高強度にすることができず、多量のTiを含有すると、導電率の大幅な低下を招く。
したがって、本発明は、このような従来の問題点に鑑み、強度および導電率が高く、耐応力緩和特性に優れ、プレス打ち抜きによるダレ量が少ない安価な銅合金板材およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、0.20~0.70質量%のCrと0.01~0.15質量%のTiと0.01~0.10質量%のSiと0.02~0.20質量%のFeを含み、残部がCuおよび不可避不純物である組成を有する銅合金の原料を溶解して鋳造し、950℃以上の温度で加熱した後、最終パス温度を700℃以上として熱間圧延を行い、次いで、再結晶しないように維持したまま、総圧下率90%以上で冷間圧延を行った後、350℃以上の温度で1時間以上保持する時効処理を行い、次いで、圧下率20%以下で仕上げ冷間圧延を行った後に最終焼鈍として歪み取り焼鈍を行うことによって、時効処理を行った後で仕上げ冷間圧延を行う前のばね限界値より、仕上げ冷間圧延と最終焼鈍を行った後のばね限界値を30MPa以上低下させることにより、強度および導電率が高く、耐応力緩和特性に優れ、プレス打ち抜きによるダレ量が少ない安価な銅合金板材を製造することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明による銅合金板材の製造方法は、0.20~0.70質量%のCrと0.01~0.15質量%のTiと0.01~0.10質量%のSiと0.02~0.20質量%のFeを含み、残部がCuおよび不可避不純物である組成を有する銅合金の原料を溶解して鋳造し、950℃以上の温度で加熱した後、最終パス温度を700℃以上として熱間圧延を行い、次いで、再結晶しないように維持したまま、総圧下率90%以上で冷間圧延を行った後、350℃以上の温度で1時間以上保持する時効処理を行い、次いで、圧下率20%以下で仕上げ冷間圧延を行った後に最終焼鈍として歪み取り焼鈍を行うことによって、時効処理を行った後で仕上げ冷間圧延を行う前のばね限界値より、仕上げ冷間圧延と最終焼鈍を行った後のばね限界値を30MPa以上低下させて、銅合金板材を製造することを特徴とする。
この銅合金板材の製造方法において、加熱を0.5時間以上行うのが好ましい。また、熱間圧延と前記冷間圧延の間において、圧下率45%以上で冷間圧延を行った後に670℃以下の温度で中間焼鈍を行ってもよい。また、最終焼鈍が200℃以上の温度で0.1時間以上保持する焼鈍であるのが好ましい。さらに、銅合金板材が、Mg、P、Mn、Co、Ag、Ni、Zn、CaおよびBからなる群から選ばれる1種以上の元素を合計0.50質量%以下の範囲でさらに含む組成を有してもよい。
また、本発明による銅合金板材は、0.20~0.70質量%のCrと0.01~0.15質量%のTiと0.01~0.10質量%のSiと0.02~0.20質量%のFeを含み、残部がCuおよび不可避不純物である組成を有する銅合金板材において、導電率が75%IACS以上であり、銅合金板材から採取した長手方向が圧延方向(LD)で幅方向が圧延方向および板厚方向に対して垂直な方向(TD)の試験片LDの0.2%耐力が570MPa以上であり、この試験片LDの長手方向一端側の部分を片持梁ブロック式のたわみ変位負荷用試験ジグに固定し、その板厚方向がたわみ変位の方向になるように長手方向他端側の部分に0.2%耐力の80%に相当する負荷応力を加えた状態で固定し、この試験片LDを200℃で1000時間保持した後のたわみ変位を測定し、その変位の変化率から算出した応力緩和率(%)が25%以下であり、試験片LDについてJIS H3130の繰り返したわみ試験に準拠して測定したばね限界値に対する0.2%耐力の比が1.3以上であることを特徴とする。
この銅合金板材において、銅合金板材から金型により15mm×15mmの大きさの試験片を板厚に対する各辺のクリアランスの比(クリアランス/板厚)が10%になるように打ち抜いて、試験片の各辺の端面をレーザー顕微鏡により観察してダレ量を求め、このダレ量の板厚に対する百分率(ダレ量×100/板厚)をダレ率(%)として算出したときに、ダレ率が7.0%以下であるのが好ましい。また、銅合金板材から長手方向が圧延方向(LD)で幅方向が圧延方向および板厚方向に対して垂直な方向(TD)の試験片LDについてTDを曲げ軸にしてJIS H3130に準拠した90°W曲げ試験を行うとともに、長手方向がTDで幅方向がLDの試験片TDについてLDを曲げ軸にしてJIS H3130に準拠した90°W曲げ試験を行った後、曲げ加工部の表面および断面を光学顕微鏡によって100倍の倍率で観察して、割れが発生しない最小曲げ半径Rを求め、この最小曲げ半径Rを銅合金板材の板厚tで除することによって求めたR/t値が、いずれの試験片でも1.5以下であるのが好ましい。さらに、銅合金板材が、Mg、P、Mn、Co、Ag、Ni、Zn、CaおよびBからなる群から選ばれる1種以上の元素を合計0.50質量%以下の範囲でさらに含む組成を有してもよい。
また、本発明による銅合金板材は、0.20~0.70質量%のCrと0.01~0.15質量%のTiと0.01~0.10質量%のSiと0.02~0.20質量%のFeを含み、残部がCuおよび不可避不純物である組成を有する銅合金板材において、銅合金板材の圧延方向および板厚方向に対して垂直な方向(TD)に対して垂直な断面の電子線後方散乱回折(EBSD)測定により得られた逆極点図(IPF)マップに基づいて、隣接するピクセル間の結晶方位差が15°以上である境界を結晶粒界とみなして、1つの結晶粒において基準となる測定点と隣接するピクセルの平均方位差を算出し、その結晶粒内の任意の20個の測定点で算出した平均方位差の平均値をその結晶粒のKAM値とし、各結晶粒のKAM値の平均値を銅合金板材のKAM値とすると、銅合金板材のKAM値が1.2°~1.6°であることを特徴とする。
この銅合金板材において、上記のIPFマップに基づいて、隣接するピクセル間の結晶方位差が15°以上である境界を結晶粒界とみなして、各結晶粒の板厚方向の結晶粒径の平均値を板厚方向の平均結晶粒径として求めると、板厚方向の平均結晶粒径が1.5μm以下であるのが好ましい。また、上記のIPFマップに基づいて、隣接するピクセル間の結晶方位差が15°以上である境界を結晶粒界とみなして、各結晶粒の板厚方向の結晶粒径の平均値を板厚方向の平均結晶粒径として求めるとともに、各結晶粒の圧延方向の結晶粒径の平均値を圧延方向の平均結晶粒径として求め、各結晶粒の板厚方向の平均結晶粒径に対する圧延方向の平均結晶粒径の比をアスペクト比とすると、アスペクト比が3以上であるのが好ましい。また、銅合金板材の導電率が75%IACS以上であるのが好ましい。また、銅合金板材から採取した長手方向が圧延方向(LD)で幅方向が圧延方向および板厚方向に対して垂直な方向(TD)の試験片LDの0.2%耐力が570MPa以上であるのが好ましい。また、銅合金板材から採取した長手方向が圧延方向(LD)で幅方向が圧延方向および板厚方向に対して垂直な方向(TD)の試験片LDの長手方向一端側の部分を片持梁ブロック式のたわみ変位負荷用試験ジグに固定し、その板厚方向がたわみ変位の方向になるように長手方向他端側の部分に0.2%耐力の80%に相当する負荷応力を加えた状態で固定し、この試験片LDを200℃で1000時間保持した後のたわみ変位を測定し、その変位の変化率から算出した応力緩和率(%)が25%以下であり、試験片LDについてJIS H3130の繰り返したわみ試験に準拠して測定したばね限界値に対する0.2%耐力の比が1.3以上であるのが好ましい。また、銅合金板材から金型により15mm×15mmの大きさの試験片を板厚に対する各辺のクリアランスの比(クリアランス/板厚)が10%になるように打ち抜いて、試験片の各辺の端面をレーザー顕微鏡により観察してダレ量を求め、このダレ量の板厚に対する百分率(ダレ量×100/板厚)をダレ率(%)として算出したときに、ダレ率が7.0%以下であるのが好ましい。また、銅合金板材から長手方向が圧延方向(LD)で幅方向が圧延方向および板厚方向に対して垂直な方向(TD)の試験片LDについてTDを曲げ軸にしてJIS H3130に準拠した90°W曲げ試験を行うとともに、長手方向がTDで幅方向がLDの試験片TDについてLDを曲げ軸にしてJIS H3130に準拠した90°W曲げ試験を行った後、曲げ加工部の表面および断面を光学顕微鏡によって100倍の倍率で観察して、割れが発生しない最小曲げ半径Rを求め、この最小曲げ半径Rを銅合金板材の板厚tで除することによって求めたR/t値が、いずれの試験片でも1.5以下であるのが好ましい。さらに、銅合金板材が、Mg、P、Mn、Co、Ag、Ni、Zn、CaおよびBからなる群から選ばれる1種以上の元素を合計0.50質量%以下の範囲でさらに含む組成を有してもよい。
さらに、本発明によるコネクタ端子は、上記の銅合金板材を材料として用いたことを特徴とする。
なお、本明細書中において、「再結晶しないように維持したまま」とは、熱間圧延と冷間圧延の間に加熱処理を行わないか、あるいは、熱間圧延と冷間圧延の間に加熱処理を行っても平均結晶粒径が5μm以下に維持されることをいう。
本発明によれば、強度および導電率が高く、耐応力緩和特性に優れ、プレス打ち抜きによるダレ量が少ない安価な銅合金板材を製造することができる。
本発明の銅合金板材の実施の形態のプレス打ち抜きによるダレ量を説明する図である。
本発明による銅合金板材の製造方法の実施の形態では、0.20~0.70質量%のCrと0.01~0.15質量%のTiと0.01~0.10質量%のSiと0.02~0.20質量%のFeを含み、残部がCuおよび不可避不純物である組成を有する銅合金の原料を溶解して鋳造し、950℃以上の温度で加熱した後、最終パス温度を700℃以上として熱間圧延を行い、次いで、再結晶しないように維持したまま、総圧下率90%以上で冷間圧延を行った後、350℃以上の温度で1時間以上保持する時効処理を行い、次いで、圧下率20%以下で仕上げ冷間圧延を行った後に最終焼鈍として歪み取り焼鈍を行うことによって、時効処理を行った後で仕上げ冷間圧延を行う前のばね限界値より、仕上げ冷間圧延と最終焼鈍を行った後のばね限界値を30MPa以上低下させる。
本発明による銅合金板材の製造方法の実施の形態では、熱間圧延と冷間圧延の間に均質化や再結晶焼鈍を行わずに総圧下率90%以上で冷間圧延を行うことにより、銅合金板材の強度を高めることができ、銅合金板材の結晶粒を微細化することができるとともに、銅合金板材の板厚方向の平均結晶粒径に対する圧延方向の平均結晶粒径(アスペクト比)を大きくすることができる。このような結晶粒の微細化とアスペクト比の増大により、銅合金板材のプレス打ち抜きによるダレ量を低減させることができる。また、均質化や再結晶焼鈍を行わないため、工程数を減らして、安価に銅合金板材を製造することができる。また、総圧下率90%以上で冷間圧延を行った後に、350℃以上の温度で1時間以上保持する時効処理を行うことにより、添加元素を析出させて、銅合金板材の導電率を高めるとともに、耐応力緩和特性を向上させることができる。また、時効処理を行った後、圧下率20%以下で仕上げ冷間圧延を行った後に最終焼鈍として歪み取り焼鈍を行うことによって、時効処理を行った後で仕上げ冷間圧延を行う前のばね限界値より、仕上げ冷間圧延と最終焼鈍を行った後のばね限界値を30MPa以上低下させることにより、銅合金板材のばね限界値に対する0.2%耐力の比を大きくして、銅合金板材のプレス打ち抜きによるダレ量を低減させて形状のばらつきを小さくすることができるとともに、導電率および強度を高めることができる。このようにして、本発明による銅合金板材の製造方法の実施の形態では、強度および導電率が高く、耐応力緩和特性に優れ、プレス打ち抜きによるダレ量が少ない安価な銅合金板材を製造することができる。
以下、本発明による銅合金板材の製造方法の実施の形態の各工程について詳細に説明する。
(合金組成)
銅合金板材の原料として、0.20~0.70質量%(好ましくは0.25~0.68質量%)のCrと0.01~0.15質量%(好ましくは0.02~0.13質量%)のTiと0.01~0.10質量%(好ましくは0.015~0.09質量%)のSiと0.02~0.20質量%(好ましくは0.03~0.18質量%)のFeを含み、残部がCuおよび不可避不純物である組成を有する銅合金の原料を使用する。また、銅合金板材の強度を高めるために、銅合金の原料の組成が、Mg、P、Mn、Co、Ag、Ni、Zn、CaおよびBからなる群から選ばれる1種以上の元素を合計0.50質量%以下(好ましくは20質量%以下)の範囲でさらに含んでもよい。
銅合金の原料としてCrを添加するのは、銅合金板材の強度の向上を図るためである。Cr含有量を0.20~0.70質量%としたのは、0.20質量%より少ないと、十分な析出硬化が得られないために析出硬化による強度の向上を図ることができず、0.70質量%を超えると、Crの析出物が粗大化して割れの起点となり易く、また、0.70質量%より多くしてもさらに強度を向上させることができないからである。
また、銅合金の原料としてTiを添加したのは、Cu母相中にTiが固溶して銅合金板材の耐応力緩和特性の向上を図るためである。また、Tiを添加すると、CrやSiと析出物を形成して、析出硬化により銅合金板材の強度を向上させるとともに、Cu母相中のCrやSiの固溶量を減少させて銅合金板材の導電率を高めることができる。Ti含有量を0.01~0.15質量%としたのは、0.01質量%より少ないと、その効果を十分に得ることができず、0.15質量%を超えると、Cu母相中のTiの固溶量が増加して銅合金板材の導電率が低下し、また、銅合金板材の生産効率が低下するおそれがあるからである。また、Ti含有量が0.15質量%を超えると、溶解炉の炉壁に付着するTi酸化物の量が増加して、鋳造工程において鋳塊の品質低下を招くおそれがあり、炉洗いの増加などにより生産効率が低下する。
また、銅合金の原料としてSiを添加したのは、CrとCr-Si系析出物を形成するとともに、TiとTi-Si析出物を形成して、析出硬化により銅合金板材の強度を向上させるとともに、Cu母相中のCrやTiの固溶量を減少させて銅合金板材の導電率を高めるためである。Si含有量を0.01~0.10質量%としたのは、0.01質量%より少ないと、その効果を十分に得ることができず、0.10質量%を超えると、銅合金板材の導電性が低下し易く、また、Siは酸化し易い元素であり、鋳造性を低下させ易いので、Si含有量は多過ぎない方がよいからである。
さらに、銅合金の原料としてFeを添加したのは、銅合金板材の強度の向上を図るためである。Fe含有量を0.02~0.20質量%としたのは、0.02質量%より少ないと、強度の向上が不十分であり、0.20質量%を超えると、導電率が低下するからである。
(溶解・鋳造工程)
高周波真空溶解炉などの設備を用いて上記の組成の銅合金の原料を溶解した後、鋳片を製造する。
(熱間圧延工程)
得られた鋳片を950℃以上(好ましくは950~1050℃)に設定した炉に(好ましくは0.5時間以上、さらに好ましくは1~10時間)保持して加熱する。この加熱により、鋳造時に析出した粗大なCrなどの添加元素を一旦Cu母相中に強制的に固溶させて溶体化の効果を得ることができる。この加熱の適正な温度は、銅合金の結晶粒が粗大化するため、950~1050℃の範囲であるのが好ましく、975~1025℃の範囲であるのがさらに好ましい。このように950~1050℃の温度域で加熱した後、熱間圧延を複数パス、好ましくは5~20パス程度行う。この熱間圧延は、最終パス温度を700℃以上(好ましくは700~900℃)として、総圧下率を好ましくは50%以上、さらに好ましくは85%以上に設定して行う。総圧下率を50%以上に設定するのは、大きな歪を形成させて結晶粒の成長を抑制して、結晶粒を微細化する効果を得るためである。この熱間圧延後、水冷による急冷を行うのが好ましい。
(冷間圧延工程)
熱間圧延後、再結晶しないように維持したまま、総圧下率90%以上で冷間圧延を行う。この冷間圧延により、Cu母相中に固溶したCrなどの添加元素を含む化合物を(次の時効処理工程で)効率良く析出させる効果を得ることができる。熱間圧延と冷間圧延の間で再結晶しないように維持することができれば、中間焼鈍などの他の処理を行わなくてもよいし、熱間圧延後と冷間圧延の間において、圧下率45%以上(好ましくは45~65%)で冷間圧延を行った後に670℃以下の温度で中間焼鈍を行ってもよい。なお、総圧下率は、熱間圧延後から時効処理前に行った冷間圧延の圧下率をいい、総圧下率(%)={熱間圧延後の板厚(mm)-時効処理前の板厚(mm)}×100/熱間圧延後の板厚(mm)であり、熱間圧延後の板厚は、熱間圧延後に面削したときはその面削後の板厚である。
(時効処理工程)
冷間圧延後に350℃以上(好ましくは350~500℃)で1時間以上(好ましくは2~10時間)保持する時効処理を行う。この時効処理により、Cu母相中に固溶したCrなどの添加元素の単体またはいずれかを含む化合物を析出させ、強度と導電率を向上させることができる。これらの特性の向上させるためには、350~500℃で時効処理を行うのが好ましく、350℃より低いと、析出に要する時間が極端に長くなり、500℃より高いと、析出物が粗大化して強度の低下と曲げ加工性の悪化を招く。また、効率良く析出させて結晶粒の粗大化を防ぎ、高強度且つ高導電率で良好な曲げ加工性を有する銅合金板材を得るためには、時効処理を400~490℃で行うのが好ましい。
(仕上げ冷間圧延工程)
時効処理後に圧下率20%以下(好ましくは3~20%)で仕上げ冷間圧延を行う。この仕上げ冷間圧延により、銅合金板材の強度を高めるとともに、ばね限界値を低下させることができる。圧下率が20%より高いと、銅合金板材の耐応力緩和特性が低下するおそれがある。
(最終焼鈍)
仕上げ冷間圧延後に最終焼鈍として歪み取り焼鈍を行ってばね限界値を30MPa以上(好ましくは30~150MPa、さらに好ましくは35~130MPa)低下させる。このように歪み取り焼鈍を行うことにより、銅合金板材の導電率を高めるとともに耐応力緩和特性と曲げ加工性を向上させることができる。このような歪み取り焼鈍は、200℃以上(好ましくは200~400℃)の温度で0.1時間以上(好ましくは0.1~1時間)保持することによって行うことができる。
このように時効処理を行った後で仕上げ冷間圧延を行う前のばね限界値より、仕上げ冷間圧延と最終焼鈍を行った後のばね限界値を30MPa以上低下させることにより、銅合金板材のばね限界値に対する0.2%耐力の比を大きくして、銅合金板材のプレス打ち抜きによるダレ量を低減させて、形状のばらつきを小さくすることができる。このばね限界値の低下が30MPaより低いと、銅合金板材の板厚方向の平均結晶粒径に対する圧延方向の平均結晶粒径(アスペクト比)が大きくても、ばね限界値に対する0.2%耐力の比が(1.3以下と)小さくなり、銅合金板材のプレス打ち抜きによるダレ量を低減させることができなくなる。また、上記のばね限界値の低下が30MPaより低いと、銅合金板材のKAM値が低くなって、0.2%耐力が(570MPaよりも)低下するおそれがある。なお、一般に、仕上げ冷間圧延によってばね限界値が低下し、最終焼鈍(歪み取り焼鈍)によってばね限界値が上昇するが、仕上げ冷間圧延と最終焼鈍を調整してばね限界値を30MPa以上低下させることができる。
上述した銅合金板材の製造方法の実施の形態により、0.20~0.70質量%のCrと0.01~0.15質量%のTiと0.01~0.10質量%のSiと0.02~0.20質量%のFeを含み、残部がCuおよび不可避不純物である組成を有する銅合金板材において、導電率が75%IACS以上であり、銅合金板材から採取した長手方向が圧延方向(LD)で幅方向が圧延方向および板厚方向に対して垂直な方向(TD)の試験片LDの0.2%耐力が570MPa以上であり、この試験片LDの長手方向一端側の部分を片持梁ブロック式のたわみ変位負荷用試験ジグに固定し、その板厚方向がたわみ変位の方向になるように長手方向他端側の部分に0.2%耐力の80%に相当する負荷応力を加えた状態で固定し、この試験片LDを200℃で1000時間保持した後のたわみ変位を測定し、その変位の変化率から算出した応力緩和率(%)が25%以下であり、試験片LDについてJIS H3130の繰り返したわみ試験に準拠して測定したばね限界値に対する0.2%耐力の比が1.3以上である銅合金板材を製造することができる。
このように、0.20~0.70質量%のCrと0.01~0.15質量%のTiと0.01~0.10質量%のSiと0.02~0.20質量%のFeを含み、残部がCuおよび不可避不純物である組成を有する銅合金板材において、導電率が75%IACS以上、0.2%耐力が570MPa以上、ばね限界値に対する0.2%耐力の比が1.3以上であれば、強度および導電率が高く、耐応力緩和特性に優れ、プレス打ち抜きによるダレ量が少ない安価な銅合金板材を提供することができる。特に、銅合金板材のね限界値に対する0.2%耐力の比が1.3以上であれば、プレス打ち抜きによるダレ量を少なして、プレス打ち抜きにより加工精度を向上させることができる。
この銅合金板材において、銅合金板材から金型により15mm×15mmの大きさの試験片を板厚に対する各辺のクリアランスの比(クリアランス/板厚)が10%になるように打ち抜いて、試験片の各辺の端面をレーザー顕微鏡により観察して(図1においてδで示す)ダレ量を求め、このダレ量の板厚に対する百分率(ダレ量×100/板厚)をダレ率(%)として算出したときに、ダレ率が7.0%以下であるのが好ましい。なお、図1において、tは銅合金板材の厚さ、δはダレ量、aはせん断面、bは破断面を示している。
また、銅合金板材から長手方向が圧延方向(LD)で幅方向が圧延方向および板厚方向に対して垂直な方向(TD)の試験片LDについてTDを曲げ軸にしてJIS H3130に準拠した90°W曲げ試験を行うとともに、長手方向がTDで幅方向がLDの試験片TDについてLDを曲げ軸にしてJIS H3130に準拠した90°W曲げ試験を行った後、曲げ加工部の表面および断面を光学顕微鏡によって100倍の倍率で観察して、割れが発生しない最小曲げ半径Rを求め、この最小曲げ半径Rを銅合金板材の板厚tで除することによって求めたR/t値が、いずれの試験片でも1.5以下であるのが好ましい。
さらに、銅合金板材が、Mg、P、Mn、Co、Ag、Ni、Zn、CaおよびBからなる群から選ばれる1種以上の元素を合計0.50質量%以下の範囲でさらに含む組成を有してもよい。
また、上述した銅合金板材の製造方法の実施の形態により、0.20~0.70質量%のCrと0.01~0.15質量%のTiと0.01~0.10質量%のSiと0.02~0.20質量%のFeを含み、残部がCuおよび不可避不純物である組成を有する銅合金板材において、銅合金板材の圧延方向および板厚方向に対して垂直な方向(TD)に対して垂直な断面の電子線後方散乱回折(EBSD)測定により得られた逆極点図(IPF)マップに基づいて、隣接するピクセル間の結晶方位差が15°以上である境界を結晶粒界とみなして、1つの結晶粒において基準となる測定点と隣接するピクセルの平均方位差を算出し、その結晶粒内の任意の20個の測定点で算出した平均方位差の平均値をその結晶粒のKAM値とし、各結晶粒のKAM値の平均値を銅合金板材のKAM値とすると、銅合金板材のKAM値が1.2°~1.6°である銅合金板材を製造することができる。
この銅合金板材において、上記のIPFマップに基づいて、隣接するピクセル間の結晶方位差が15°以上である境界を結晶粒界とみなして、各結晶粒の板厚方向の結晶粒径の平均値を板厚方向の平均結晶粒径として求めると、板厚方向の平均結晶粒径が1.5μm以下であるのが好ましく、0.3~1.3μmであるのがさらに好ましい。また、上記のIPFマップに基づいて、隣接するピクセル間の結晶方位差が15°以上である境界を結晶粒界とみなして、各結晶粒の板厚方向の結晶粒径の平均値を板厚方向の平均結晶粒径として求めるとともに、各結晶粒の圧延方向の結晶粒径の平均値を圧延方向の平均結晶粒径として求め、各結晶粒の板厚方向の平均結晶粒径に対する圧延方向の平均結晶粒径の比をアスペクト比とすると、アスペクト比が3以上であるのが好ましい。
このように、0.20~0.70質量%のCrと0.01~0.15質量%のTiと0.01~0.10質量%のSiと0.02~0.20質量%のFeを含み、残部がCuおよび不可避不純物である組成を有する銅合金板材において、KAM値が1.2°~1.6°、板厚方向の平均結晶粒径が1.5μm以下、板厚方向の平均結晶粒径に対する圧延方向の平均結晶粒径の比(アスペクト比)が3以上であれば、強度および導電率が高く、耐応力緩和特性に優れ、プレス打ち抜きによるダレ量が少ない安価な銅合金板材を提供することができる。特に、アスペクト比が3以上であれば、銅合金板材の結晶粒の異方性(銅合金板材のTD(圧延方向および板厚方向に対して垂直な方向)とLD(圧延方向)との間の異方性(TDとLDの間の差))を大きくして、ばね限界値に対する強度(0.2%耐力)を高くして、プレス打ち抜きによるダレ量を少なして、プレス打ち抜きにより加工精度を向上させることができる。また、KAM値(結晶粒内において任意の測定点とその近接した測定点との間の方位差を定量化した値)が1.2°~1.6°であれば、銅合金板材の歪み量を適当な量にすることができ、強度(0.2%耐力)が高く、耐応力緩和特性に優れた銅合金板材を得ることができる。
以下、本発明による銅合金板材およびその製造方法の実施例について詳細に説明する。
[実施例1~7、比較例1~14]
0.56質量%のCrと0.09質量%のTiと0.03質量%のSiと0.09質量%のFeと0.11質量%のAgを含み、残部がCuからなる銅合金(実施例1)、0.60質量%のCrと0.10質量%のTiと0.05質量%のSiと0.06質量%のFeと0.10質量%のCoを含み、残部がCuからなる銅合金(実施例2)、0.27質量%のCrと0.13質量%のTiと0.08質量%のSiと0.07質量%のFeと0.12質量%のMgと0.07質量%のCaを含み、残部がCuからなる銅合金(実施例3)、0.65質量%のCrと0.03質量%のTiと0.02質量%のSiと0.03質量%のFeと0.03質量%のNiを含み、残部がCuからなる銅合金(実施例4)、0.44質量%のCrと0.07質量%のTiと0.06質量%のSiと0.17質量%のFeを含み、残部がCuからなる銅合金(実施例5)、0.32質量%のCrと0.05質量%のTiと0.05質量%のSiと0.06質量%のFeと0.04質量%のMnと0.40質量%のZnを含み、残部がCuからなる銅合金(実施例6)、0.50質量%のCrと0.09質量%のTiと0.07質量%のSiと0.10質量%のFeと0.03質量%のBを含み、残部がCuからなる銅合金(実施例7)、0.47質量%のCrと0.04質量%のTiと0.02質量%のSiと0.08質量%のFeを含み、残部がCuからなる銅合金(比較例1)、0.49質量%のCrと0.06質量%のTiと0.07質量%のSiと0.08質量%のFeと0.10質量%のAgを含み、残部がCuからなる銅合金(比較例2)、0.52質量%のCrと0.06質量%のTiと0.03質量%のSiと0.07質量%のFeと0.09質量%のAgを含み、残部がCuからなる銅合金(比較例3)、0.50質量%のCrと0.06質量%のSiと0.04質量%のFeとを含み、残部がCuからなる銅合金(比較例4)、0.44質量%のCrと0.05質量%のTiと0.10質量%のFeを含み、残部がCuからなる銅合金(比較例5)、0.37質量%のCrと0.10質量%のTiと0.05質量%のSiを含み、残部がCuからなる銅合金(比較例6)、0.77質量%のCrと0.03質量%のTiと0.03質量%のSiと0.06質量%のFeを含み、残部がCuからなる銅合金(比較例7)、0.33質量%のCrと0.17質量%のTiと0.02質量%のSiと0.11質量%のFeを含み、残部がCuからなる銅合金(比較例8)、0.47質量%のCrと0.09質量%のTiと0.15質量%のSiと0.06質量%のFeを含み、残部がCuからなる銅合金(比較例9)、0.40質量%のCrと0.05質量%のTiと0.06質量%のSiと0.24質量%のFeを含み、残部がCuからなる銅合金(比較例10)、0.15質量%のCrと0.07質量%のTiと0.07質量%のSiと0.12質量%のFeを含み、残部がCuからなる銅合金(比較例11)、0.64質量%のCrと0.08質量%のTiと0.04質量%のSiと0.10質量%のFeと0.09質量%のAgを含み、残部がCuからなる銅合金(比較例12)、0.56質量%のCrと0.09質量%のTiと0.04質量%のSiと0.09質量%のFeと0.10質量%のAgを含み、残部がCuからなる銅合金(比較例13)、0.51質量%のCrと0.08質量%のTiと0.03質量%のSiと0.10質量%のFeを含み、残部がCuからなる銅合金(比較例14)をそれぞれ溶解して鋳造することにより得られた鋳塊から、それぞれ5000mm×500mm×220mmの鋳片を切り出した。
それぞれの鋳片を1000℃(実施例1、4、6、7、比較例1、3~14)、1050℃(実施例2)、980℃(実施例3)、1025℃(実施例5、比較例2)で5時間加熱した後に抽出して、熱間圧延を行った。この熱間圧延では、680℃~1050℃の温度域において総圧下率がそれぞれ92.6%(実施例1)、95.1%(実施例2)、94.0%(実施例3)、91.5%(実施例4)、93.7%(実施例5)、94.8%(実施例6)、94.7%(実施例7)、96.5%(比較例1)、95.5%(比較例2)、96.4%(比較例3)、94.1%(比較例4~11、14)、92.8%(比較例12)、93.8%(比較例13)で最終パス温度がそれぞれ860℃(実施例1、比較例13)、840℃(実施例2、4)、740℃(実施例3)、855℃(実施例5)、800℃(実施例6、比較例1、11)、850℃(実施例7、比較例4~6)、700℃(比較例2)、680℃(比較例3)、880℃(比較例7~10、12、14)として8パス行われるようにパススケジュールを設定した。なお、この熱間圧延後のそれぞれ板材(熱延材)の両面を1.5mm程度面削を行った。
次に、実施例5では、圧下率60%で冷間圧延した後に650℃で15秒間保持する中間焼鈍を行い(この中間焼鈍後の平均結晶粒径は2.8μm)、実施例6では、圧下率50%で冷間圧延した後に650℃で15秒間保持する中間焼鈍を行い(この中間焼鈍後の平均結晶粒径は3.2μm)、比較例1では、圧下率80%で冷間圧延した後に700℃で3分間保持する中間焼鈍(再結晶焼鈍)行い(この再結晶焼鈍後の平均結晶粒径は10μm)、比較例2では、圧下率70%で冷間圧延した後に720℃で5分間保持する中間焼鈍(再結晶焼鈍)を行い(この再結晶焼鈍後の平均結晶粒径は16μm)、比較例3では、圧下率82%で冷間圧延した後に975℃で50秒間保持する中間焼鈍(再結晶焼鈍)を行った(この再結晶焼鈍後の平均結晶粒径は18μm)。なお、平均結晶粒径は、上記の中間焼鈍または再結晶焼鈍後の板材のTD(圧延方向(LD)および板厚方向(ND)に対して垂直な方向(板幅方向))に対して垂直な断面(TD面)をクロスセクションポリッシャーによりミリング処理して鏡面とし、この断面について、電子線後方散乱回折(Electron BackScatter Diffraction(EBSD))分析装置(株式会社TSLソリューションズ製のOIM4.0)を備えた電界放出形走査電子顕微鏡(FE-SEM)(日本電子株式会社製のJSM-7001)を使用して、加速電圧15kV、倍率200倍、測定視野500μm×500μm、分解能(ステップサイズ)0.5μmとしてEBSD測定を行い、この測定結果から、データ収集用ソフト(株式会社TSLソリューションズ製のOIM-DC)とデータ解析用ソフト(株式会社TSLソリューションズ製のOIM-Analysis7.0)を用いて、逆極点図(Inverse Pole Figure(IPF))マップを作成し、このIPFマップに基づいて、上記のデータ解析用ソフトにより解析された信頼性指数(Confidence Index(CI)値)が0.1以下である測定点を除き、隣接するピクセル間の結晶方位差が15°以上である境界を結晶粒界とみなして、上記のデータ解析用ソフトによりArea Fraction法に基づいて算出した。
次に、それぞれ圧下率95.8%(実施例1、比較例13)、93.3%(実施例2)、95.0%(実施例3、比較例4~12、14)、96.4%(実施例4)、90.0%(実施例5、6)、94.2%(実施例7)、40.0%(比較例1)、20.0%(比較例2)、25.0%(比較例3)で冷間圧延を行った。なお、この冷間圧延前に予め冷間圧延を行った実施例5~6および比較例1~3では、それぞれ冷間圧延の総圧下率が96.3%(実施例5)、95.3(実施例6)、89.2%(比較例1)、92.8%(比較例2)、89.9%(比較例3)であった。
次にそれぞれ430℃で4時間(実施例1、4、6、7、比較例13)、470℃で2時間(実施例2、比較例12)、450℃で4時間(実施例3、比較例1、4~10)、450℃2時間(実施例5、比較例3、14)、720℃で5分間(比較例2)、420℃で4時間(比較例11)保持して時効処理を行った。
次に、比較例13を除いて、それぞれ圧下率10%(実施例1、4、比較例1、4~11)、5%(実施例2、3、6)、7%(実施例5)、20%(実施例7)、70%(比較例2)、25%(比較例3)、30%(比較例12)、3%(比較例14)で仕上げ冷間圧延を行って、それぞれ板厚を0.5mm(実施例1~4、比較例1~3)、0.4mm(実施例5~7)、0.45mm(比較例4~13)、0.49mm(比較例14)にした。
次に、比較例13を除いて、それぞれ300℃で0.5時間保持(実施例1、5、比較例4~12)、250℃で0.2時間保持(実施例2、6)、270℃で0.5時間保持(実施例3)、350℃で0.2時間保持(実施例4)、250℃で0.2時間保持(実施例6、7)、250℃で0.5時間保持(比較例1)、500℃で60秒間保持(比較例2)、600℃で60秒間保持(比較例3)、350℃で0.1時間保持(比較例14)する最終焼鈍(歪み取り焼鈍)を行った。この仕上げ冷間圧延と最終焼鈍によって、得られた銅合金板材のばね限界値がそれぞれ108MPa(実施例1)、51MPa(実施例2)、68MPa(実施例3)、92MPa(実施例4)、88MPa(実施例5)、40MPa(実施例6)、116MPa(実施例7)、39MPa(比較例1)、42MPa(比較例2)、55MPa(比較例3)、102MPa(比較例4)、92MPa(比較例5)、87MPa(比較例6)、62MPa(比較例7)、81MPa(比較例8)、78MPa(比較例9)、104MPa(比較例10)、111MPa(比較例11)、105MPa(比較例12)、20MPa(比較例14)低下した。なお、このばね限界値は、仕上げ冷間圧延と最終焼鈍後のそれぞれの銅合金板材から長手方向がLD(圧延方向)で幅方向がTD(圧延方向および板厚方向に対して垂直な方向)の試験片LD(JIS Z2201の5号試験片)を採取し、それぞれの試験片についてJIS H3130の繰り返したわみ試験に準拠して測定した。
このようにして得られた実施例1~7および比較例1~14の銅合金板材について、板厚方向(ND)の平均結晶粒径、板厚方向(ND)の平均結晶粒径に対する圧延方向(LD)の平均結晶粒径の比(アスペクト比)、KAM(Kernel Average Misorientation)値(結晶粒内において任意の測定点とその近接した測定点との間の方位差を定量化した値)を求めた。
銅合金板材の板厚方向(ND)の平均結晶粒径、アスペクト比およびKAM値について、銅合金板材のTD(圧延方向(LD)および板厚方向(ND)に対して垂直な方向)に対して垂直な断面(TD面)をクロスセクションポリッシャーによりミリング処理して鏡面とし、この断面について、電子線後方散乱回折(Electron BackScatter Diffraction(EBSD))分析装置(株式会社TSLソリューションズ製のOIM4.0)を備えた電界放出形走査電子顕微鏡(FE-SEM)(日本電子株式会社製のJSM-7001)を使用して、加速電圧15kV、倍率5000倍、測定視野35μm×50μm、分解能(ステップサイズ)100nmとしてEBSD測定を行い、この測定結果から、データ収集用ソフト(株式会社TSLソリューションズ製のOIM-DC)とデータ解析用ソフト(株式会社TSLソリューションズ製のOIM-Analysis7.0)を用いて、逆極点図(Inverse Pole Figure(IPF))マップを作成し、このIPFマップに基づいて、上記のデータ解析用ソフトにより解析された信頼性指数(Confidence Index(CI)値)が0.1以下である測定点を除き、隣接するピクセル間の結晶方位差が15°以上である境界を結晶粒界とみなして、各結晶粒の板厚方向(ND)の結晶粒径の平均値を板厚方向(ND)の平均結晶粒径とし、各結晶粒の板厚方向(ND)の平均結晶粒径に対する圧延方向(LD)の平均結晶粒径の比をアスペクト比とし、また、1つの結晶粒において基準となる測定点(任意のピクセル)と隣接するピクセルの平均方位差を算出し、その結晶粒内の任意の20個の測定点で算出した平均方位差の平均値をその結晶粒のKAM値とし、各結晶粒のKAM値の平均値を銅合金板材のKAM値とした。その結果、銅合金板材の板厚方向(ND)の平均結晶粒径は、それぞれ0.4μm(実施例1、7、比較例8)、0.6μm(実施例2、比較例4)、0.7μm(実施例3、比較例6、11、14)、0.8μm(実施例4、5)、1.0μm(実施例6)、3.4μm(比較例1)、5.6μm(比較例2)、11.2μm(比較例3)、0.5μm(比較例5、7、9、10、13)、0.3μm(比較例12)であった。また、銅合金板材の板厚方向(ND)の平均結晶粒径に対する圧延方向(LD)の平均結晶粒径の比(アスペクト比)は、それぞれ4.9(実施例1)、4.0(実施例2)、4.1(実施例3)、4.8(実施例4)、3.8(実施例5)、3.4(実施例6)、5.5(実施例7)、2.5(比較例1)、3.2(比較例2)、1.8(比較例3)、4.2(比較例4)、4.4(比較例5)、4.0(比較例6)、4.7(比較例7)、5.0(比較例8)、4.8(比較例9)、4.3(比較例10)、4.3(比較例11)、6.0(比較例12)、4.2(比較例13)、3.6(比較例14)であった。さらに、銅合金板材のKAM値は、それぞれ1.34°(実施例1)、1.28°(実施例2)、1.30°(実施例3)、1.37°(実施例4)、1.36°(実施例5)、1.26°(実施例6)、1.54°(実施例7)、0.88°(比較例1)、0.95°(比較例2)、0.82°(比較例3)、1.34°(比較例4)、1.29°(比較例5)、1.29°(比較例6)、1.31°(比較例7)、1.32°(比較例8)、1.28°(比較例9)、1.25°(比較例10)、1.30°(比較例11)、1.66°(比較例12)、1.15°(比較例13)、1.14°(比較例14)であった。
また、得られた銅合金板材について、導電率、0.2%耐力、耐応力緩和特性、曲げ加工性、ばね限界値、プレス打ち抜き性を以下のように調べた。
銅合金板材の導電率は、JIS H0505の導電率測定方法に従って測定した。その結果、導電率は、それぞれ80.9%IACS(実施例1)、78.9%IACS(実施例2)、75.9%IACS(実施例3)、75.8%IACS(実施例4)、76.0%IACS(実施例5)、77.2%IACS(実施例6)、77.1%IACS(実施例7)、78.3%IACS(比較例1)、78.7%IACS(比較例2)、79.4%IACS(比較例3)、88.6%IACS(比較例4)、71.8%IACS(比較例5)、72.1%IACS(比較例6)、67.2%IACS(比較例7)、56.1%IACS(比較例8)、70.3%IACS(比較例9)、70.9%IACS(比較例10)、84.0%IACS(比較例11)、77.5%IACS(比較例12)、78.9%IACS(比較例13)、77.4%IACS(比較例14)であった。
銅合金板材の機械的特性としての引張強さとして、銅合金板材から長手方向がLD(圧延方向)で幅方向がTD(圧延方向および板厚方向に対して垂直な方向)の引張試験用の試験片LD(JIS Z2201の5号試験片)を採取し、その試験片についてJIS Z2241に準拠した引張試験を行って0.2%耐力を求めた。その結果、LDの0.2%耐力は、それぞれ610MPa(実施例1)、596MPa(実施例2)、588MPa(実施例3)、614MPa(実施例4)、590MPa (実施例5)、577MPa(実施例6)、639MPa(実施例7)、472MPa(比較例1)、482MPa(比較例2)、480MPa (比較例3)、509MPa(比較例4)、544MPa(比較例5)、576MPa(比較例6)、641MPa(比較例7)、654MPa(比較例8)、559MPa(比較例9)、606MPa(比較例10)、452MPa(比較例11)、642MPa(比較例12)、562MPa(比較例13)、560MPa(比較例14)であった。
銅合金板材の耐応力緩和特性は、日本電子材料工業会標準規格EMAS-1011に規定された片持ち梁ブロック式の応力緩和試験により評価した。具体的には、銅合金板材から長手方向がLD(圧延方向)で幅方向がTD(圧延方向および板厚方向に対して垂直な方向)の(長さ60mm×幅10mmの)試験片LDを採取し、その試験片の長手方向一端側の部分を片持梁ブロック式のたわみ変位負荷用試験ジグ(の試験片保持ブロック)に固定し、その板厚方向がたわみ変位の方向になるように長手方向他端側の部分(自由端部)に(たわみ変位調整ブロックとくさび形ブロックにより)0.2%耐力の80%に相当する負荷応力を加えた状態で固定し、この試験片を200℃で1000時間保持した後のたわみ変位を測定し、その変位の変化率から応力緩和率(%)を算出することにより評価した。その結果、LDの応力緩和率は、それぞれ20%(実施例1)、17%(実施例2)、18%(実施例3)、22%(実施例4)、20%(実施例5)、17%(実施例6)、24%(実施例7)、16%(比較例1)、12%(比較例2)、13%(比較例3)、30%(比較例4)、26%(比較例5)、18%(比較例6)、12%(比較例7)、14%(比較例8)、21%(比較例9)、14%(比較例10)、28%(比較例11)、27%(比較例12)、17%(比較例13)、20%(比較例14)であった。
銅合金板材の曲げ加工性を評価するために、銅合金板材から長手方向がLD(圧延方向)で幅方向がTD(圧延方向および板厚方向に対して垂直な方向)になるように(幅10mmの)曲げ加工試験片LDを切り出すとともに、長手方向がTDで幅方向がLDになるように(幅10mmの)試験片TD(JIS Z2201の5号試験片)を切り出し、曲げ加工試験片LDについてTDを曲げ軸(GoodWay曲げ(G.W.曲げ))にしてJIS H3130に準拠した90°W曲げ試験を行うとともに、曲げ加工試験片TDについてLDを曲げ軸(BadWay曲げ(B.W.曲げ))にしてJIS H3130に準拠した90°W曲げ試験を行った。この試験後の試験片について、曲げ加工部の表面および断面を光学顕微鏡によって100倍の倍率で観察して、割れが発生しない最小曲げ半径Rを求め、この最小曲げ半径Rを銅合金板材の板厚tで除することによって、それぞれのR/t値を求めた。その結果、曲げ加工試験片LDとTDのR/tは、それぞれ1.0と1.0(実施例1、5、6、比較例5、13)、0.8と0.8(実施例2、比較例1~4)、1.2と1.0(実施例3、比較例6)、1.2と1.2(実施例4、比較例9、10、14)、1.5と1.5(実施例7)、2.0と2.0(比較例7、8)、0.8と1.0(比較例11)、1.5と2.0(比較例12)であった。
銅合金板材のばね限界値は、銅合金板材から長手方向がLD(圧延方向)で幅方向がTD(圧延方向および板厚方向に対して垂直な方向)の試験片LD(JIS Z2201の5号試験片)を採取し、それぞれの試験片についてJIS H3130の繰り返したわみ試験に準拠して測定した。その結果、試験片LDのばね限界値は、それぞれ326MPa(実施例1)、394MPa(実施例2)、376MPa(実施例3)、356MPa(実施例4)、368MPa(実施例5)、400MPa(実施例6)、332MPa(実施例7)、423MPa(比較例1)、455MPa(比較例2)、442MPa(比較例3)、298MPa(比較例4)、355MPa(比較例5)、352MPa(比較例6)、348MPa(比較例7)、338MPa(比較例8)、318MPa(比較例9)、316MPa(比較例10)、283MPa(比較例11)、359MPa(比較例12)、464MPa(比較例13)、457MPa(比較例14)であり、試験片LDのばね限界値に対する0.2%耐力の比(0.2%耐力/ばね限界値)は、それぞれ1.87(実施例1)、1.51(実施例2)、1.56(実施例3)、1.72(実施例4)、1.60(実施例5)、1.44(実施例6)、1.92(実施例7)、1.12(比較例1)、1.06(比較例2)、1.09(比較例3)、1.71(比較例4)、1.53(比較例5)、1.64(比較例6)、1.84(比較例7)、1.93(比較例8)、1.76(比較例9)、1.62(比較例10)、1.60(比較例11)、1.79(比較例12)、1.21(比較例13)、1.23(比較例14)であった。
銅合金板材のプレス打ち抜き性を評価するために、銅合金板材から金型により15mm×15mmの大きさの試験片を板厚に対する各辺のクリアランスの比(クリアランス/板厚)が10%になるように打ち抜いて、試験片の各辺の端面をレーザー顕微鏡(株式会社キーエンス製のVK-X100)により400倍で観察してダレ量δを求め、このダレ量の板厚に対する百分率(ダレ量×100/板厚)をダレ率(%)として算出し、このダレ率が7.0%以下のときにプレス打ち抜き性が良好であると評価した。その結果、銅合金板材のプレス打ち抜きによるダレ率は、それぞれ4.8%(実施例1)、5.7%(実施例2)、5.6%(実施例3)、5.1%(実施例4)、5.4%(実施例5)、6.6%(実施例6)、4.9%(実施例7)、7.8%(比較例1)、8.4%(比較例2)、8.1%(比較例3)、5.0%(比較例4)、5.8%(比較例5)、5.3%(比較例6)、4.7%(比較例7)、4.6%(比較例8)、4.9%(比較例9)、5.5%(比較例10)、6.0%(比較例11)、4.9%(比較例12)、7.4%(比較例13)、7.5(比較例14)であった。
これらの実施例および比較例の銅合金板材の製造条件および特性を表1~表5に示す。
Figure 0007213086000001
Figure 0007213086000002
Figure 0007213086000003
Figure 0007213086000004
Figure 0007213086000005
10 銅合金板材
δ ダレ量
a せん断面
b 破断面
t 板厚

Claims (14)

  1. 0.20~0.70質量%のCrと0.01~0.15質量%のTiと0.01~0.10質量%のSiと0.02~0.20質量%のFeを含み、残部がCuおよび不可避不純物である組成を有する銅合金の原料を溶解して鋳造し、950℃以上の温度で加熱した後、最終パス温度を700℃以上として熱間圧延を行い、次いで、再結晶しないように維持したまま、総圧下率90%以上で冷間圧延を行った後、350℃以上の温度で1時間以上保持する時効処理を行い、次いで、圧下率20%以下で仕上げ冷間圧延を行った後に最終焼鈍として歪み取り焼鈍を行うことによって、時効処理を行った後で仕上げ冷間圧延を行う前のばね限界値より、仕上げ冷間圧延と最終焼鈍を行った後のばね限界値を30MPa以上低下させて、銅合金板材を製造する方法であって、導電率が75%IACS以上であり、銅合金板材から採取した長手方向が圧延方向(LD)で幅方向が圧延方向および板厚方向に対して垂直な方向(TD)の試験片LDの0.2%耐力が570MPa以上であり、この試験片LDの長手方向一端側の部分を片持梁ブロック式のたわみ変位負荷用試験ジグに固定し、その板厚方向がたわみ変位の方向になるように長手方向他端側の部分に0.2%耐力の80%に相当する負荷応力を加えた状態で固定し、この試験片LDを200℃で1000時間保持した後のたわみ変位を測定し、その変位の変化率から算出した応力緩和率(%)が25%以下であり、試験片LDについてJIS H3130の繰り返したわみ試験に準拠して測定したばね限界値に対する0.2%耐力の比が1.3以上である銅合金板材を製造することを特徴とする、銅合金板材の製造方法。
  2. 0.20~0.70質量%のCrと0.01~0.15質量%のTiと0.01~0.10質量%のSiと0.02~0.20質量%のFeを含み、残部がCuおよび不可避不純物である組成を有する銅合金の原料を溶解して鋳造し、950℃以上の温度で加熱した後、最終パス温度を700℃以上として熱間圧延を行い、次いで、再結晶しないように維持したまま、総圧下率90%以上で冷間圧延を行った後、350℃以上の温度で1時間以上保持する時効処理を行い、次いで、圧下率20%以下で仕上げ冷間圧延を行った後に最終焼鈍として歪み取り焼鈍を行うことによって、時効処理を行った後で仕上げ冷間圧延を行う前のばね限界値より、仕上げ冷間圧延と最終焼鈍を行った後のばね限界値を30MPa以上低下させて、銅合金板材を製造する方法であって、銅合金板材の圧延方向および板厚方向に対して垂直な方向(TD)に対して垂直な断面の電子線後方散乱回折(EBSD)測定により得られた逆極点図(IPF)マップに基づいて、隣接するピクセル間の結晶方位差が15°以上である境界を結晶粒界とみなして、1つの結晶粒において基準となる測定点と隣接するピクセルの平均方位差を算出し、その結晶粒内の任意の20個の測定点で算出した平均方位差の平均値をその結晶粒のKAM値とし、各結晶粒のKAM値の平均値を銅合金板材のKAM値とすると、銅合金板材のKAM値が1.2°~1.6°であり、前記IPFマップに基づいて、隣接するピクセル間の結晶方位差が15°以上である境界を結晶粒界とみなして、各結晶粒の板厚方向の結晶粒径の平均値を板厚方向の平均結晶粒径として求めると、板厚方向の平均結晶粒径が1.5μm以下であり、前記IPFマップに基づいて、隣接するピクセル間の結晶方位差が15°以上である境界を結晶粒界とみなして、各結晶粒の板厚方向の結晶粒径の平均値を板厚方向の平均結晶粒径として求めるとともに、各結晶粒の圧延方向の結晶粒径の平均値を圧延方向の平均結晶粒径として求め、各結晶粒の板厚方向の平均結晶粒径に対する圧延方向の平均結晶粒径の比をアスペクト比とすると、アスペクト比が3以上である銅合金板材を製造することを特徴とする、銅合金板材の製造方法。
  3. 前記加熱を0.5時間以上行うことを特徴とする、請求項1または2に記載の銅合金板材の製造方法。
  4. 前記熱間圧延と前記冷間圧延の間において、圧下率45%以上で冷間圧延を行った後に670℃以下の温度で中間焼鈍を行うことを特徴とする、請求項1乃至3のいずれかに記載の銅合金板材の製造方法。
  5. 前記最終焼鈍が200℃以上の温度で0.1時間以上保持する焼鈍であることを特徴とする、請求項1乃至のいずれかに記載の銅合金板材の製造方法。
  6. 前記銅合金板材が、Mg、P、Mn、Co、Ag、Ni、Zn、CaおよびBからなる群から選ばれる1種以上の元素を合計0.50質量%以下の範囲でさらに含む組成を有することを特徴とする、請求項1乃至のいずれかに記載の銅合金板材の製造方法。
  7. 0.20~0.70質量%のCrと0.01~0.15質量%のTiと0.01~0.10質量%のSiと0.02~0.20質量%のFeを含み、残部がCuおよび不可避不純物である組成を有する銅合金板材において、導電率が75%IACS以上であり、銅合金板材から採取した長手方向が圧延方向(LD)で幅方向が圧延方向および板厚方向に対して垂直な方向(TD)の試験片LDの0.2%耐力が570MPa以上であり、この試験片LDの長手方向一端側の部分を片持梁ブロック式のたわみ変位負荷用試験ジグに固定し、その板厚方向がたわみ変位の方向になるように長手方向他端側の部分に0.2%耐力の80%に相当する負荷応力を加えた状態で固定し、この試験片LDを200℃で1000時間保持した後のたわみ変位を測定し、その変位の変化率から算出した応力緩和率(%)が25%以下であり、試験片LDについてJIS H3130の繰り返したわみ試験に準拠して測定したばね限界値に対する0.2%耐力の比が1.3以上であることを特徴とする、銅合金板材。
  8. 前記銅合金板材から金型により15mm×15mmの大きさの試験片を板厚に対する各辺のクリアランスの比(クリアランス/板厚)が10%になるように打ち抜いて、試験片の各辺の端面をレーザー顕微鏡により観察してダレ量を求め、このダレ量の板厚に対する百分率(ダレ量×100/板厚)をダレ率(%)として算出したときに、ダレ率が7.0%以下であることを特徴とする、請求項に記載の銅合金板材。
  9. 前記銅合金板材から長手方向が圧延方向(LD)で幅方向が圧延方向および板厚方向に対して垂直な方向(TD)の試験片LDについてTDを曲げ軸にしてJIS H3130に準拠した90°W曲げ試験を行うとともに、長手方向がTDで幅方向がLDの試験片TDについてLDを曲げ軸にしてJIS H3130に準拠した90°W曲げ試験を行った後、曲げ加工部の表面および断面を光学顕微鏡によって100倍の倍率で観察して、割れが発生しない最小曲げ半径Rを求め、この最小曲げ半径Rを銅合金板材の板厚tで除することによって求めたR/t値が、いずれの試験片でも1.5以下であることを特徴とする、請求項またはに記載の銅合金板材。
  10. 前記銅合金板材が、Mg、P、Mn、Co、Ag、Ni、Zn、CaおよびBからなる群から選ばれる1種以上の元素を合計0.50質量%以下の範囲でさらに含む組成を有することを特徴とする、請求項乃至のいずれかに記載の銅合金板材。
  11. 前記銅合金板材の圧延方向および板厚方向に対して垂直な方向(TD)に対して垂直な断面の電子線後方散乱回折(EBSD)測定により得られた逆極点図(IPF)マップに基づいて、隣接するピクセル間の結晶方位差が15°以上である境界を結晶粒界とみなして、1つの結晶粒において基準となる測定点と隣接するピクセルの平均方位差を算出し、その結晶粒内の任意の20個の測定点で算出した平均方位差の平均値をその結晶粒のKAM値とし、各結晶粒のKAM値の平均値を銅合金板材のKAM値とすると、前記銅合金板材のKAM値が1.2°~1.6°であることを特徴とする、請求項7乃至10のいずれかに記載の銅合金板材。
  12. 前記IPFマップに基づいて、隣接するピクセル間の結晶方位差が15°以上である境界を結晶粒界とみなして、各結晶粒の板厚方向の結晶粒径の平均値を板厚方向の平均結晶粒径として求めると、板厚方向の平均結晶粒径が1.5μm以下であることを特徴とする、請求項11に記載の銅合金板材。
  13. 前記IPFマップに基づいて、隣接するピクセル間の結晶方位差が15°以上である境界を結晶粒界とみなして、各結晶粒の板厚方向の結晶粒径の平均値を板厚方向の平均結晶粒径として求めるとともに、各結晶粒の圧延方向の結晶粒径の平均値を圧延方向の平均結晶粒径として求め、各結晶粒の板厚方向の平均結晶粒径に対する圧延方向の平均結晶粒径の比をアスペクト比とすると、アスペクト比が3以上であることを特徴とする、請求項11または12に記載の銅合金板材。
  14. 請求項乃至13のいずれかに記載の銅合金板材を材料として用いたことを特徴とする、コネクタ端子。
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