JP2020105546A - 銅合金板材およびその製造方法 - Google Patents
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銅合金板材の原料として、0.20〜0.70質量%(好ましくは0.25〜0.68質量%)のCrと0.01〜0.15質量%(好ましくは0.02〜0.13質量%)のTiと0.01〜0.10質量%(好ましくは0.015〜0.09質量%)のSiと0.02〜0.20質量%(好ましくは0.03〜0.18質量%)のFeを含み、残部がCuおよび不可避不純物である組成を有する銅合金の原料を使用する。また、銅合金板材の強度を高めるために、銅合金の原料の組成が、Mg、P、Mn、Co、Ag、Ni、Zn、CaおよびBからなる群から選ばれる1種以上の元素を合計0.50質量%以下(好ましくは20質量%以下)の範囲でさらに含んでもよい。
高周波真空溶解炉などの設備を用いて上記の組成の銅合金の原料を溶解した後、鋳片を製造する。
得られた鋳片を950℃以上(好ましくは950〜1050℃)に設定した炉に(好ましくは0.5時間以上、さらに好ましくは1〜10時間)保持して加熱する。この加熱により、鋳造時に析出した粗大なCrなどの添加元素を一旦Cu母相中に強制的に固溶させて溶体化の効果を得ることができる。この加熱の適正な温度は、銅合金の結晶粒が粗大化するため、950〜1050℃の範囲であるのが好ましく、975〜1025℃の範囲であるのがさらに好ましい。このように950〜1050℃の温度域で加熱した後、熱間圧延を複数パス、好ましくは5〜20パス程度行う。この熱間圧延は、最終パス温度を700℃以上(好ましくは700〜900℃)として、総圧下率を好ましくは50%以上、さらに好ましくは85%以上に設定して行う。総圧下率を50%以上に設定するのは、大きな歪を形成させて結晶粒の成長を抑制して、結晶粒を微細化する効果を得るためである。この熱間圧延後、水冷による急冷を行うのが好ましい。
熱間圧延後、再結晶しないように維持したまま、総圧下率90%以上で冷間圧延を行う。この冷間圧延により、Cu母相中に固溶したCrなどの添加元素を含む化合物を(次の時効処理工程で)効率良く析出させる効果を得ることができる。熱間圧延と冷間圧延の間で再結晶しないように維持することができれば、中間焼鈍などの他の処理を行わなくてもよいし、熱間圧延後と冷間圧延の間において、圧下率45%以上(好ましくは45〜65%)で冷間圧延を行った後に670℃以下の温度で中間焼鈍を行ってもよい。なお、総圧下率は、熱間圧延後から時効処理前に行った冷間圧延の圧下率をいい、総圧下率(%)={熱間圧延後の板厚(mm)−時効処理前の板厚(mm)}×100/熱間圧延後の板厚(mm)であり、熱間圧延後の板厚は、熱間圧延後に面削したときはその面削後の板厚である。
冷間圧延後に350℃以上(好ましくは350〜500℃)で1時間以上(好ましくは2〜10時間)保持する時効処理を行う。この時効処理により、Cu母相中に固溶したCrなどの添加元素の単体またはいずれかを含む化合物を析出させ、強度と導電率を向上させることができる。これらの特性の向上させるためには、350〜500℃で時効処理を行うのが好ましく、350℃より低いと、析出に要する時間が極端に長くなり、500℃より高いと、析出物が粗大化して強度の低下と曲げ加工性の悪化を招く。また、効率良く析出させて結晶粒の粗大化を防ぎ、高強度且つ高導電率で良好な曲げ加工性を有する銅合金板材を得るためには、時効処理を400〜490℃で行うのが好ましい。
時効処理後に圧下率20%以下(好ましくは3〜20%)で仕上げ冷間圧延を行う。この仕上げ冷間圧延により、銅合金板材の強度を高めるとともに、ばね限界値を低下させることができる。圧下率が20%より高いと、銅合金板材の耐応力緩和特性が低下するおそれがある。
仕上げ冷間圧延後に最終焼鈍として歪み取り焼鈍を行ってばね限界値を30MPa以上(好ましくは30〜150MPa、さらに好ましくは35〜130MPa)低下させる。このように歪み取り焼鈍を行うことにより、銅合金板材の導電率を高めるとともに耐応力緩和特性と曲げ加工性を向上させることができる。このような歪み取り焼鈍は、200℃以上(好ましくは200〜400℃)の温度で0.1時間以上(好ましくは0.1〜1時間)保持することによって行うことができる。
0.56質量%のCrと0.09質量%のTiと0.03質量%のSiと0.09質量%のFeと0.11質量%のAgを含み、残部がCuからなる銅合金(実施例1)、0.60質量%のCrと0.10質量%のTiと0.05質量%のSiと0.06質量%のFeと0.10質量%のCoを含み、残部がCuからなる銅合金(実施例2)、0.27質量%のCrと0.13質量%のTiと0.08質量%のSiと0.07質量%のFeと0.12質量%のMgと0.07質量%のCaを含み、残部がCuからなる銅合金(実施例3)、0.65質量%のCrと0.03質量%のTiと0.02質量%のSiと0.03質量%のFeと0.03質量%のNiを含み、残部がCuからなる銅合金(実施例4)、0.44質量%のCrと0.07質量%のTiと0.06質量%のSiと0.17質量%のFeを含み、残部がCuからなる銅合金(実施例5)、0.32質量%のCrと0.05質量%のTiと0.05質量%のSiと0.06質量%のFeと0.04質量%のMnと0.40質量%のZnを含み、残部がCuからなる銅合金(実施例6)、0.50質量%のCrと0.09質量%のTiと0.07質量%のSiと0.10質量%のFeと0.03質量%のBを含み、残部がCuからなる銅合金(実施例7)、0.47質量%のCrと0.04質量%のTiと0.02質量%のSiと0.08質量%のFeを含み、残部がCuからなる銅合金(比較例1)、0.49質量%のCrと0.06質量%のTiと0.07質量%のSiと0.08質量%のFeと0.10質量%のAgを含み、残部がCuからなる銅合金(比較例2)、0.52質量%のCrと0.06質量%のTiと0.03質量%のSiと0.07質量%のFeと0.09質量%のAgを含み、残部がCuからなる銅合金(比較例3)、0.50質量%のCrと0.06質量%のSiと0.04質量%のFeとを含み、残部がCuからなる銅合金(比較例4)、0.44質量%のCrと0.05質量%のTiと0.10質量%のFeを含み、残部がCuからなる銅合金(比較例5)、0.37質量%のCrと0.10質量%のTiと0.05質量%のSiを含み、残部がCuからなる銅合金(比較例6)、0.77質量%のCrと0.03質量%のTiと0.03質量%のSiと0.06質量%のFeを含み、残部がCuからなる銅合金(比較例7)、0.33質量%のCrと0.17質量%のTiと0.02質量%のSiと0.11質量%のFeを含み、残部がCuからなる銅合金(比較例8)、0.47質量%のCrと0.09質量%のTiと0.15質量%のSiと0.06質量%のFeを含み、残部がCuからなる銅合金(比較例9)、0.40質量%のCrと0.05質量%のTiと0.06質量%のSiと0.24質量%のFeを含み、残部がCuからなる銅合金(比較例10)、0.15質量%のCrと0.07質量%のTiと0.07質量%のSiと0.12質量%のFeを含み、残部がCuからなる銅合金(比較例11)、0.64質量%のCrと0.08質量%のTiと0.04質量%のSiと0.10質量%のFeと0.09質量%のAgを含み、残部がCuからなる銅合金(比較例12)、0.56質量%のCrと0.09質量%のTiと0.04質量%のSiと0.09質量%のFeと0.10質量%のAgを含み、残部がCuからなる銅合金(比較例13)、0.51質量%のCrと0.08質量%のTiと0.03質量%のSiと0.10質量%のFeを含み、残部がCuからなる銅合金(比較例14)をそれぞれ溶解して鋳造することにより得られた鋳塊から、それぞれ5000mm×500mm×220mmの鋳片を切り出した。
δ ダレ量
a せん断面
b 破断面
t 板厚
Claims (19)
- 0.20〜0.70質量%のCrと0.01〜0.15質量%のTiと0.01〜0.10質量%のSiと0.02〜0.20質量%のFeを含み、残部がCuおよび不可避不純物である組成を有する銅合金の原料を溶解して鋳造し、950℃以上の温度で加熱した後、最終パス温度を700℃以上として熱間圧延を行い、次いで、再結晶しないように維持したまま、総圧下率90%以上で冷間圧延を行った後、350℃以上の温度で1時間以上保持する時効処理を行い、次いで、圧下率20%以下で仕上げ冷間圧延を行った後に最終焼鈍として歪み取り焼鈍を行うことによって、時効処理を行った後で仕上げ冷間圧延を行う前のばね限界値より、仕上げ冷間圧延と最終焼鈍を行った後のばね限界値を30MPa以上低下させて、銅合金板材を製造することを特徴とする、銅合金板材の製造方法。
- 前記加熱を0.5時間以上行うことを特徴とする、請求項1に記載の銅合金板材の製造方法。
- 前記熱間圧延と前記冷間圧延の間において、圧下率45%以上で冷間圧延を行った後に670℃以下の温度で中間焼鈍を行うことを特徴とする、請求項1または2に記載の銅合金板材の製造方法。
- 前記最終焼鈍が200℃以上の温度で0.1時間以上保持する焼鈍であることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれかに記載の銅合金板材の製造方法。
- 前記銅合金板材が、Mg、P、Mn、Co、Ag、Ni、Zn、CaおよびBからなる群から選ばれる1種以上の元素を合計0.50質量%以下の範囲でさらに含む組成を有することを特徴とする、請求項1乃至4のいずれかに記載の銅合金板材の製造方法。
- 0.20〜0.70質量%のCrと0.01〜0.15質量%のTiと0.01〜0.10質量%のSiと0.02〜0.20質量%のFeを含み、残部がCuおよび不可避不純物である組成を有する銅合金板材において、導電率が75%IACS以上であり、銅合金板材から採取した長手方向が圧延方向(LD)で幅方向が圧延方向および板厚方向に対して垂直な方向(TD)の試験片LDの0.2%耐力が570MPa以上であり、この試験片LDの長手方向一端側の部分を片持梁ブロック式のたわみ変位負荷用試験ジグに固定し、その板厚方向がたわみ変位の方向になるように長手方向他端側の部分に0.2%耐力の80%に相当する負荷応力を加えた状態で固定し、この試験片LDを200℃で1000時間保持した後のたわみ変位を測定し、その変位の変化率から算出した応力緩和率(%)が25%以下であり、試験片LDについてJIS H3130の繰り返したわみ試験に準拠して測定したばね限界値に対する0.2%耐力の比が1.3以上であることを特徴とする、銅合金板材。
- 前記銅合金板材から金型により15mm×15mmの大きさの試験片を板厚に対する各辺のクリアランスの比(クリアランス/板厚)が10%になるように打ち抜いて、試験片の各辺の端面をレーザー顕微鏡により観察してダレ量を求め、このダレ量の板厚に対する百分率(ダレ量×100/板厚)をダレ率(%)として算出したときに、ダレ率が7.0%以下であることを特徴とする、請求項6に記載の銅合金板材。
- 前記銅合金板材から長手方向が圧延方向(LD)で幅方向が圧延方向および板厚方向に対して垂直な方向(TD)の試験片LDについてTDを曲げ軸にしてJIS H3130に準拠した90°W曲げ試験を行うとともに、長手方向がTDで幅方向がLDの試験片TDについてLDを曲げ軸にしてJIS H3130に準拠した90°W曲げ試験を行った後、曲げ加工部の表面および断面を光学顕微鏡によって100倍の倍率で観察して、割れが発生しない最小曲げ半径Rを求め、この最小曲げ半径Rを銅合金板材の板厚tで除することによって求めたR/t値が、いずれの試験片でも1.5以下であることを特徴とする、請求項6または7に記載の銅合金板材。
- 前記銅合金板材が、Mg、P、Mn、Co、Ag、Ni、Zn、CaおよびBからなる群から選ばれる1種以上の元素を合計0.50質量%以下の範囲でさらに含む組成を有することを特徴とする、請求項6乃至8のいずれかに記載の銅合金板材。
- 0.20〜0.70質量%のCrと0.01〜0.15質量%のTiと0.01〜0.10質量%のSiと0.02〜0.20質量%のFeを含み、残部がCuおよび不可避不純物である組成を有する銅合金板材において、銅合金板材の圧延方向および板厚方向に対して垂直な方向(TD)に対して垂直な断面の電子線後方散乱回折(EBSD)測定により得られた逆極点図(IPF)マップに基づいて、隣接するピクセル間の結晶方位差が15°以上である境界を結晶粒界とみなして、1つの結晶粒において基準となる測定点と隣接するピクセルの平均方位差を算出し、その結晶粒内の任意の20個の測定点で算出した平均方位差の平均値をその結晶粒のKAM値とし、各結晶粒のKAM値の平均値を銅合金板材のKAM値とすると、銅合金板材のKAM値が1.2°〜1.6°であることを特徴とする、銅合金板材。
- 前記IPFマップに基づいて、隣接するピクセル間の結晶方位差が15°以上である境界を結晶粒界とみなして、各結晶粒の板厚方向の結晶粒径の平均値を板厚方向の平均結晶粒径として求めると、板厚方向の平均結晶粒径が1.5μm以下であることを特徴とする、請求項10に記載の銅合金板材。
- 前記IPFマップに基づいて、隣接するピクセル間の結晶方位差が15°以上である境界を結晶粒界とみなして、各結晶粒の板厚方向の結晶粒径の平均値を板厚方向の平均結晶粒径として求めるとともに、各結晶粒の圧延方向の結晶粒径の平均値を圧延方向の平均結晶粒径として求め、各結晶粒の板厚方向の平均結晶粒径に対する圧延方向の平均結晶粒径の比をアスペクト比とすると、アスペクト比が3以上であることを特徴とする、請求項10または11に記載の銅合金板材。
- 前記銅合金板材の導電率が75%IACS以上であることを特徴とする、請求項10乃至12のいずれかに記載の銅合金板材。
- 前記銅合金板材から採取した長手方向が圧延方向(LD)で幅方向が圧延方向および板厚方向に対して垂直な方向(TD)の試験片LDの0.2%耐力が570MPa以上であることを特徴とする、請求項10乃至13のいずれかに記載の銅合金板材。
- 前記銅合金板材から採取した長手方向が圧延方向(LD)で幅方向が圧延方向および板厚方向に対して垂直な方向(TD)の試験片LDの長手方向一端側の部分を片持梁ブロック式のたわみ変位負荷用試験ジグに固定し、その板厚方向がたわみ変位の方向になるように長手方向他端側の部分に0.2%耐力の80%に相当する負荷応力を加えた状態で固定し、この試験片LDを200℃で1000時間保持した後のたわみ変位を測定し、その変位の変化率から算出した応力緩和率(%)が25%以下であり、試験片LDについてJIS H3130の繰り返したわみ試験に準拠して測定したばね限界値に対する0.2%耐力の比が1.3以上であることを特徴とする、請求項10乃至14のいずれかに記載の銅合金板材。
- 前記銅合金板材から金型により15mm×15mmの大きさの試験片を板厚に対する各辺のクリアランスの比(クリアランス/板厚)が10%になるように打ち抜いて、試験片の各辺の端面をレーザー顕微鏡により観察してダレ量を求め、このダレ量の板厚に対する百分率(ダレ量×100/板厚)をダレ率(%)として算出したときに、ダレ率が7.0%以下であることを特徴とする、請求項10乃至15のいずれかに記載の銅合金板材。
- 前記銅合金板材から長手方向が圧延方向(LD)で幅方向が圧延方向および板厚方向に対して垂直な方向(TD)の試験片LDについてTDを曲げ軸にしてJIS H3130に準拠した90°W曲げ試験を行うとともに、長手方向がTDで幅方向がLDの試験片TDについてLDを曲げ軸にしてJIS H3130に準拠した90°W曲げ試験を行った後、曲げ加工部の表面および断面を光学顕微鏡によって100倍の倍率で観察して、割れが発生しない最小曲げ半径Rを求め、この最小曲げ半径Rを銅合金板材の板厚tで除することによって求めたR/t値が、いずれの試験片でも1.5以下であることを特徴とする、請求項10乃至16のいずれかに記載の銅合金板材。
- 前記銅合金板材が、Mg、P、Mn、Co、Ag、Ni、Zn、CaおよびBからなる群から選ばれる1種以上の元素を合計0.50質量%以下の範囲でさらに含む組成を有することを特徴とする、請求項10乃至17のいずれかに記載の銅合金板材。
- 請求項6乃至18のいずれかに記載の銅合金板材を材料として用いたことを特徴とする、コネクタ端子。
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