以下、本発明について、例をあげてさらに具体的に説明する。ただし、本発明は、以下の説明により限定されない。
本発明の製造方法は、例えば、前記反応工程において、前記反応系に光照射してもよい。前記化合物ラジカル存在下、さらに光照射することにより、例えば、前記原料を酸化し、前記原料の酸化反応生成物を生成してもよい。本発明の製造方法は、例えば、前記反応工程において、少なくとも前記気相に光照射する。
本発明の製造方法は、例えば、前記16族元素が、O、S、Se、およびTeからなる群から選択された少なくとも一つであり、前記17族元素が、F、Cl、Br、およびIからなる群から選択された少なくとも一つであってもよい。本発明において、16族、および17族は、周期表の族である。
本発明の製造方法は、例えば、前記化合物ラジカルが、前記17族元素の酸化物ラジカルであってもよい。
本発明の製造方法は、例えば、前記17族元素が、ハロゲンであってもよい。
本発明の製造方法は、例えば、前記化合物ラジカルが、二酸化塩素ラジカルであってもよい。
本発明の製造方法は、例えば、さらに、前記化合物ラジカルを生成させる化合物ラジカル生成工程を含んでいてもよい。
本発明の製造方法は、例えば、前記化合物ラジカル生成工程の反応系が、水相を含み、前記化合物ラジカル生成工程において、前記水相が、前記化合物ラジカルの発生源を含み、前記化合物ラジカルの発生源から前記化合物ラジカルを生成させてもよい。そして、例えば、生成した前記化合物ラジカルを前記気相に導入して、前記気相において、前述の前記原料に対する反応工程を行ってもよい。
本発明の製造方法は、例えば、前記化合物ラジカル生成工程において、前記化合物ラジカルの発生源にルイス酸およびブレーンステッド酸の少なくとも一方を作用させて、前記化合物ラジカルを生成させてもよい。
本発明の製造方法は、例えば、前記化合物ラジカルが、二酸化塩素ラジカルであり、前記化合物ラジカル生成工程において、前記二酸化塩素ラジカルの発生源が亜塩素酸イオン(ClO2
-)であってもよい。
本発明の製造方法は、例えば、前記反応工程において、前記反応系に酸素(O2)が存在する状態で、前記反応を行なってもよい。
本発明の製造方法は、例えば、温度がマイナス100~200℃であり、圧力が0.1~10MPaである雰囲気下で、前記反応を行なってもよい。または、本発明の製造方法は、例えば、温度が0~100℃または0~40℃であり、圧力が0.1~1.0MPaまたは0.1~0.5MPaである雰囲気下で、前記反応を行なってもよい。
本発明の製造方法は、前記原料が、例えば、ガス状であり、また、前記原料が、例えば、前記反応工程における反応温度以下の沸点である。本発明によれば、前記反応系として前記気相を使用することから、例えば、ガス状の原料についても、容易に酸化反応を行うことができる。前記反応工程において、前記原料としてガス状の原料を使用する際は、例えば、前記反応工程における反応条件下でガス状であるものが好ましく、この場合、前述のように、例えば、反応温度以下の沸点を有する原料が使用できる。
本発明の製造方法は、例えば、前記原料が、メタン、エタンおよびプロパンからなる群から選択される少なくとも一つであってもよい。
本発明の製造方法は、例えば、前記原料の酸化反応生成物が、アルコール、カルボン酸、アルデヒド、ケトン、過カルボン酸、およびヒドロペルオキシドからなる群から選択される少なくとも一つであってもよい。
本発明の製造方法において、例えば、前記原料における前記炭化水素が、飽和炭化水素であってもよい。前記飽和炭化水素は、例えば、前述のとおり、メタン、エタンまたはプロパンでもよいし、例えば、シクロヘキサン等であってもよい。
また、本発明の製造方法において、例えば、前記原料は、例えば、アルコール、アルデヒド、およびカルボン酸等の酸化物でもよく、本発明によれば、これらの原料(酸化物)を、さらに酸化することもできる。前記アルコールは、例えば、メタノール、エタノール等、前記アルデヒドは、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド等、前記カルボン酸は、例えば、酢酸等が例示できる。本発明の製造方法によれば、例えば、前記アルコールを、さらに前記アルデヒドまたは前記カルボン酸に酸化したり、前記アルデヒドを、さらに前記カルボン酸に酸化することもできる。このようなさらなる酸化は、例えば、原料となる酸化物を本発明の製造方法で得る際の温度よりも、さらに高温で行ってもよい。
本発明の製造方法において、例えば、前記原料における前記炭化水素が、非芳香族不飽和炭化水素であってもよい。
本発明の製造方法において、例えば、前記原料における前記炭化水素が、芳香族炭化水素であってもよい。前記芳香族炭化水素は、例えば、ベンゼンであってもよい。
本発明の製造方法において、前記原料における前記炭化水素が、飽和炭化水素または非芳香族不飽和炭化水素の場合、前記酸化反応生成物は、例えば、前述のとおり、アルコール、カルボン酸、アルデヒド、ケトン、過カルボン酸、およびヒドロペルオキシドからなる群から選択される少なくとも一つであってもよい。
本発明の製造方法において、前記原料における前記炭化水素がメタンの場合、例えば、前記酸化反応生成物が、メタノール、ギ酸、ホルムアルデヒド、およびメチルヒドロペルオキシドの少なくとも一つを含んでいてもよい。
本発明の製造方法において、前記原料における前記炭化水素がエタンの場合、例えば、前記酸化反応生成物が、エタノール、酢酸、アセトアルデヒド、およびエチルヒドロペルオキシドの少なくとも一つを含んでいてもよい。
本発明の製造方法において、前記原料における前記炭化水素がプロパンの場合、例えば、前記酸化反応生成物が、1-プロパノール、2-プロパノール(イソプロピルアルコール)、プロピオン酸、プロピオンアルデヒド、アセトン、およびプロピルヒドロペルオキシドの少なくとも一つを含んでいてもよい。
本発明の製造方法において、前記原料における前記炭化水素がシクロヘキサンの場合、例えば、前記酸化反応生成物が、シクロヘキサノール、シクロヘキサノン、シクロヘキサンヒドロペルオキシド、および開環酸化物(例えばアジピン酸など)の少なくとも一つを含んでいてもよい。
本発明の製造方法において、前記原料における前記炭化水素が芳香族炭化水素の場合、例えば、前記酸化反応生成物が、フェノールおよびキノンの少なくとも一方を含んでいてもよい。なお、「フェノール」は、ヒドロキシベンゼンを意味する場合と、芳香族(例えば芳香族炭化水素またはヘテロ芳香族)核の水素原子をヒドロキシ基(水酸基)で置換した芳香族ヒドロキシ化合物全般(ヒドロキシベンゼンを含む)を意味する場合とがあるが、本発明では、特に断らない限り、後者とする。また、「キノン」は、p-ベンゾキノンを意味する場合と、芳香族(例えば芳香族炭化水素またはヘテロ芳香族)中の芳香環(例えばベンゼン環)の水素2原子を酸素2原子で置換した構造のジカルボニル化合物全般(p-ベンゾキノンおよびo-ベンゾキノンを含む)を意味する場合とがあるが、本発明では、特に断らない限り、後者とする。
本発明の製造方法において、前記原料における前記炭化水素がベンゼンの場合、例えば、前記酸化反応生成物が、ヒドロキシベンゼン、p-ベンゾキノン、о-ベンゾキノン、ヒドロキノン、レゾルシノール、およびカテコールの少なくとも一つを含んでいてもよい。本発明の製造方法により得られる生成物には、例えば、副生成物として、クロロベンゼン等の塩素化物が含まれてもよい。
本発明の製造方法は、より具体的には、例えば、以下のようにして行なうことができる。
[1.炭化水素またはその誘導体]
まず、原料(基質ともいう)である炭化水素またはその誘導体を準備する。前記原料は、炭化水素自体でもよいが、その誘導体であってもよい。前記炭化水素またはその誘導体は、例えば、非ポリマーである。
前記炭化水素は、特に制限されず、例えば、非芳香族でも芳香族でもよいし、飽和でも不飽和でもよい。より具体的には、前記炭化水素は、例えば、直鎖状または分枝状の飽和または不飽和炭化水素(例えば、直鎖状または分枝状のアルカン、直鎖状または分枝状のアルケン、直鎖状または分枝状のアルキン等)でもよい。また、前記炭化水素は、例えば、非芳香族の環状構造を含む飽和または不飽和炭化水素(例えば、シクロアルカン、シクロアルケン等)でもよい。また、前記炭化水素は、芳香族炭化水素でもよい。また、前記炭化水素は、その構造中に、芳香族または非芳香族の環をそれぞれ1または複数有しても有していなくてもよく、直鎖状または分枝状の飽和もしくは不飽和炭化水素の炭化水素基を、それぞれ1または複数有しても有していなくてもよい。前記炭化水素の具体例は、例えば、メタン、エタン、プロパン、n-ブタン、2-メチルプロパン、n-ペンタン、n-ヘキサン、エチレン、プロピレン、1,3-ブタジエン、アセチレン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、メチルシクロヘキサン、シクロヘキセン、ベンゼン、トルエン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン、メシチレン、デュレン、ビフェニル、ナフタレン、1-メチルナフタレン、2-メチルナフタレン、アントラセン、フェナントレン、ピレン、スチレン等があげられる。
前記炭化水素は、例えば、飽和炭化水素またはその誘導体があげられる。前記飽和炭化水素は、例えば、いわゆるアルカンであり、特に限定されない。前記飽和炭化水素は、例えば、直鎖状でも分枝状でもよく、環状でもよい(例えば、シクロアルカン)。前記飽和炭化水素の炭素数は、2以上であり、例えば、2~20、2~6、2~5、2~4である。前記飽和炭化水素の具体例としては、例えば、エタン、プロパン、n-ブタン、2-メチルプロパン、n-ペンタン、n-ヘキサン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、メチルシクロヘキサン等があげられる。
本発明において、炭化水素の「誘導体」は、例えば、ヘテロ元素(炭素および水素以外の元素)を含む有機化合物とする。前記ヘテロ元素としては、特に制限されず、例えば、酸素(O)、窒素(N)、硫黄(S)、ハロゲン等があげられる。前記ハロゲンとしては、例えば、フッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)、ヨウ素(I)等があげられる。前記誘導体は、例えば、炭化水素基と、任意の置換基または原子団とが、結合した構造の有機化合物でもよい。また、例えば、複数の炭化水素基が任意の原子団により結合された構造の化合物でもよく、さらに、前記炭化水素基が任意の1または複数の置換基により置換されていてもよいし、置換されていなくてもよい。そして、前記炭化水素基の部分を、前記反応工程において酸化反応により酸化することで、前記炭化水素の誘導体の酸化反応生成物を製造してもよい。前記炭化水素基は、特に制限されず、例えば、前記炭化水素から誘導される1価または2価以上の基があげられる。前記炭化水素基は、例えば、その炭素原子の1または2以上がヘテロ原子に置き換わっていてもよい。具体的には、例えば、フェニル基の1つの炭素原子(およびそれに結合した水素原子)が窒素原子に置き換わっていることで、ピリジル基を形成していてもよい。また、前記置換基または原子団としては、特に制限されず、例えば、ヒドロキシ基、ハロゲン基(フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、ヨード基等)、アルコキシ基、アリールオキシ基(例えばフェノキシ基等)、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基(例えばフェノキシカルボニル基等)、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基(例えばフェニルチオ基等)、置換基を有するか有しないアミノ基(例えば、アミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基等)、エーテル結合(-O-)、エステル結合(-CO-O-)、チオエーテル結合(-S-)等があげられる。
本発明において、鎖状化合物(例えば、アルカン、不飽和脂肪族炭化水素等)または鎖状化合物から誘導される鎖状置換基(例えば、アルキル基、不飽和脂肪族炭化水素基等の炭化水素基)は、特に制限されず、直鎖状でも分枝状でもよく、その炭素数は、特に制限されず、例えば、1~40、1~32、1~24、1~18、1~12、1~6、または1~2(不飽和炭化水素基の場合は2以上)でもよい。また、本発明において、環状の化合物(例えば、環状飽和炭化水素、非芳香族環状不飽和炭化水素、芳香族炭化水素、ヘテロ芳香族化合物等)または環状の化合物から誘導される環状の基(例えば、環状飽和炭化水素基、非芳香族環状不飽和炭化水素基、アリール基、ヘテロアリール基等)の環員数(環を構成する原子の数)は、特に制限されず、例えば、5~32、5~24、6~18、6~12、または6~10でもよい。また、置換基等に異性体が存在する場合は、特に制限されず、どの異性体でもよく、例えば、単に「ナフチル基」という場合は、1-ナフチル基でも2-ナフチル基でもよい。
また、本発明において、化合物に互変異性体または立体異性体(例えば、幾何異性体、配座異性体および光学異性体)等の異性体が存在する場合は、特に制限されず、いずれの異性体も本発明に用いることができる。化合物が塩を形成し得る場合は、特に制限されず、前記塩も本発明に用いることができる。前記塩は、酸付加塩でもよく、塩基付加塩でもよい。前記酸付加塩を形成する酸は、例えば、無機酸でも、有機酸でもよく、前記塩基付加塩を形成する塩基は、例えば、無機塩基でも有機塩基でもよい。前記無機酸は、特に制限されず、例えば、硫酸、リン酸、フッ化水素酸、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、次亜フッ素酸、次亜塩素酸、次亜臭素酸、次亜ヨウ素酸、亜フッ素酸、亜塩素酸、亜臭素酸、亜ヨウ素酸、フッ素酸、塩素酸、臭素酸、ヨウ素酸、過フッ素酸、過塩素酸、過臭素酸、および過ヨウ素酸等があげられる。前記有機酸も、特に制限されず、例えば、p-トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、シュウ酸、p-ブロモベンゼンスルホン酸、炭酸、コハク酸、クエン酸、安息香酸および酢酸等があげられる。前記無機塩基は、特に制限されず、例えば、水酸化アンモニウム、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、炭酸塩および炭酸水素塩等があげられ、より具体的には、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、水酸化カルシウムおよび炭酸カルシウム等があげられる。前記有機塩基も、特に制限されず、例えば、エタノールアミン、トリエチルアミンおよびトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン等があげられる。これらの塩の製造方法も、特に制限されず、例えば、前記化合物に、前記のような酸や塩基を、公知の方法により適宜付加させる等の方法で製造できる。
[2.化合物ラジカル]
本発明において、前記化合物ラジカルは、前記反応系に含まれる。前記反応系は、後述するように、気相を含む。前記化合物ラジカルは、例えば、前記反応系において生成させることで、前記反応系に含ませてもよいし、別途生成させた前記化合物ラジカルを前記反応系に含ませてもよい。前記化合物ラジカルの発生方法は、特に制限されない。なお、前記化合物ラジカルの発生に関しては、具体例を後述する。
前記化合物ラジカルは、前述のように、16族元素と、17族元素とを含むラジカルである。本発明において、前記化合物ラジカルは、例えば、いずれか1種類を使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。本発明において、前記化合物ラジカルは、例えば、処理する前記原料の種類や、反応条件等に応じて、適宜選択できる。
前記16族元素は、例えば、O、S、Se、またはTeであり、前記17族元素は、例えば、F、Cl、Br、またはIである。前記16族元素の中では、例えば、酸素、硫黄が好ましい例である。前記16族元素と前記17族元素とを含むラジカルは、例えば、ハロゲン酸化物ラジカル等があげられる。
前記ハロゲン酸化物ラジカルは、例えば、F2O・(二フッ化酸素ラジカル)、F2O2
・(二フッ化二酸素ラジカル)、ClO2
・(二酸化塩素ラジカル)、BrO2
・(二酸化臭素ラジカル)、I2O5
・(酸化ヨウ素(V))等のハロゲンの酸化物ラジカル等があげられる。これらの中でも、コスト、取扱い易さ、反応性、安全性等の観点から、二酸化塩素ラジカルが好ましい。前記化合物ラジカルは、例えば、後述するように、前記化合物ラジカルの発生源(ラジカル生成源)から生成させてもよい。
[3.反応系]
つぎに、前記反応系を準備する。前記反応系は、前述のとおり、気相を含む。したがって、以下において、前記反応系を「気相反応系」という場合がある。前記反応系は、例えば、前記気相のみでもよい。また、以下において、前記化合物ラジカルがハロゲン酸化物ラジカルの場合を例にあげて説明する。しかし、本発明はこれに制限されず、前記化合物ラジカルが前記ハロゲン酸化物ラジカル以外である場合も、同様に行うことができる。
前記気相反応系は、例えば、前記原料および前記ハロゲン酸化物ラジカルを含んでいればよい。前記原料および前記ハロゲン酸化物ラジカルについては、特に制限されず、例えば、前述のとおりである。前記気相反応系における気相の種類は、特に制限されず、空気、窒素、希ガス、酸素、これらの組合せ等である。
本発明は、例えば、前記反応工程前または前記反応工程と同時に、前記気相反応系に対して、前記ハロゲン酸化物ラジカルを導入してもよいし、前記気相反応系に、前記ハロゲン酸化物ラジカルを発生させてもよい。前者の場合、例えば、前記ハロゲン酸化物ラジカルを含むガスを、気相に導入すればよい。後者の場合、例えば、後述するように、ラジカル生成用反応系で発生させた前記ハロゲン酸化物ラジカルを、気相に移行させることで導入してもよい。
具体例として、前記ハロゲン酸化物ラジカルが前記二酸化塩素ラジカルの場合、例えば、前記気相に二酸化塩素ガスを導入することによって、前記気相中に前記二酸化塩素ラジカルを存在させることができる。前記二酸化塩素ラジカルは、例えば、電気化学的方法により、前記気相中に発生させてもよい。
前記気相は、前記原料(炭化水素またはその誘導体)および前記ハロゲン酸化物ラジカル以外の他の成分を含んでもよいし、含んでいなくてもよい。前記他の成分は、特に制限されず、例えば、酸素(O2)等があげられる。
前記ハロゲン酸化物ラジカルは、例えば、後述するハロゲン酸化物ラジカル生成工程において、前記ハロゲン酸化物ラジカルの発生源から生成させ、前記気相に導入してもよい。
[4.反応工程]
つぎに、前記反応工程を行う。以下、主に、前記ハロゲン酸化物ラジカルが二酸化塩素ラジカルの場合について、例をあげて説明する。前記反応工程は、例えば、前記ハロゲン酸化物ラジカルが二酸化塩素ラジカル以外である場合も、これと同様にして行なうことができる。
まず、前記反応工程を行なうに先立ち、前記気相に、前記ハロゲン酸化物ラジカルと前記原料とを共存させる。前記ハロゲン酸化物ラジカルは、例えば、前述のように、前記気相に導入できる。
つぎに、前記反応工程では、例えば、前述のとおり、前記気相に光照射する。前記気相中の二酸化塩素ラジカル(ClO2
・)に光照射した場合、例えば、図1のようになると予測される。図1は、UCAM-B3LYP/6-311+G(d,p) def2TZVによる計算結果である。図1の左側は、光照射する前の二酸化塩素ラジカル(ClO2
・)分子の状態を表し、右側は、光照射後の状態を表す。図示のとおり、光照射前は塩素原子Clに2つの酸素原子Oがそれぞれ結合し、Cl-Oの結合長は1.502Å(0.1502nm)である。これに対し、光照射後は、一方の酸素原子Oのみが塩素原子Clに結合し、Cl-Oの結合長は2.516Å(0.2516nm)となり、他方の酸素原子は前記一方の酸素原子に結合した状態となる。これにより、Cl-O結合が切断されて塩素ラジカル(Cl・)および酸素分子(O2)が発生すると考えられる。図1は、計算結果による予測の一例であり、本発明を何ら限定しない。
前記反応工程において起こる反応は、例えば、以下のようであると考えられる。まず、二酸化塩素ラジカル(ClO2
・)を含む前記反応系に光照射し、光エネルギーhν(hはプランク定数、νは光の振動数)を与えることで、二酸化塩素ラジカル(ClO2
・)が分解して塩素ラジカル(Cl・)および酸素分子(O2)が発生する。これにより、前記原料(基質)が酸化され、酸化反応生成物(例えばアルコール)を生成する。この説明は例示であって、本発明を何ら限定しない。前記酸化反応生成物は、例えば、アルコールに限定されず、任意である。
前記反応工程において、照射光の波長は、特に制限されず、例えば、200nm以上でもよく、800nm以下でもよい。光照射時間も、特に制限されず、例えば、1min以上でもよく、1000h以下でもよい。反応温度も、特に制限されず、例えば、0℃以上でもよく、100℃以下でもよく、40℃以下でもよい。反応時の雰囲気圧も、特に制限されず、例えば、0.1MPa以上でもよく、100MPa以下でもよい。本発明によれば、例えば、後述の実施例に示すように、加熱、加圧、減圧等を一切行わずに、常温(室温)および常圧(大気圧)下で、前記反応工程またはそれを含めた全ての工程を行なうことも可能である。「室温」とは、特に制限されず、例えば、5~35℃である。また、本発明によれば、例えば、後述の実施例に示すように、不活性ガス置換等を行なわずに、大気中で、前記反応工程またはそれを含めた全ての工程を行なうことも可能である。
前記光照射において、光源は、特に制限されず、例えば、太陽光等の自然光に含まれる可視光を利用すれば、簡便に励起可能である。また、例えば、前記自然光に代えて、またはこれに加え、キセノンランプ、ハロゲンランプ、蛍光灯、水銀ランプ等の光源を、適宜用いてもよいし、用いなくてもよい。さらに、必要波長以外の波長をカットするフィルターを、適宜用いてもよいし、用いなくてもよい。
例として、エタンの酸化反応によりエタノールが生成されるメカニズム(機構)は、例えば、下記スキーム2のように推測される。下記スキーム2は、推測されるメカニズムの一例であり、本発明を何ら限定しない。下記スキーム2について具体的に説明する。まず、図1でも示したように、二酸化塩素ラジカルが光照射により分解されて、塩素ラジカル(Cl・)と酸素分子(O2)とが発生する。前記塩素ラジカルは、エタンに対して水素引き抜き剤として働いて、エチルラジカル(CH3CH2
・)を発生させる。そして、前記酸素分子が、下記スキーム2に示すようにして、前記エチルラジカルを酸化して、エタノールを生成させる。
また、例として、亜塩素酸ナトリウムを用いて、メタンの酸化反応によりメタノールおよびギ酸が生成される場合の反応式は、例えば、下記スキーム3のようになる。下記スキーム3も一例であって、本発明を用いたメタンの酸化反応は、これに限定されない。
例として、メタンの酸化反応によりメタノールが生成されるメカニズム(機構)は、例えば、下記スキーム4のように推測される。下記スキーム4は、推測されるメカニズムの一例であり、本発明を何ら限定しない。下記スキーム4について具体的に説明する。エタンからエタノールが生成する場合(スキーム2)と同様に、まず、二酸化塩素ラジカルが光照射により分解されて、塩素ラジカル(Cl・)と酸素分子(O2)とが発生する。前記塩素ラジカルは、メタンに対して水素引き抜き剤として働いて、メチルラジカル(CH3
・)を発生させる。そして、前記酸素分子が、下記スキーム4に示すようにして、前記メチルラジカルを酸化して、メタノールを生成させる。
例として、メタンの酸化反応は、例えば、下記スキーム5のような反応も考えられる。これも例示であって、本発明を何ら限定しない。
本発明において、前記原料(基質)は、エタンまたはメタンに限定されず、前述のとおり、任意の炭化水素またはその誘導体でもよい。前記原料(基質)である前記炭化水素またはその誘導体の例については、例えば、前述のとおりである。
本発明において、例えば、下記スキームAのように、前記原料が下記化学式(A1)で表され、その酸化反応生成物が、下記化学式(A2)で表されるアルコールと、下記化学式(A3)で表されるカルボン酸との少なくとも一方であってもよい。下記スキームAにおいて、Rは、任意の原子または原子団であり、例えば、水素原子、炭化水素基またはその誘導体である。前記炭化水素基は、任意であり、例えば、直鎖状でも分枝状でも、飽和でも不飽和でも、環状構造を含んでも含んでいなくてもよく、前記環状構造は、芳香環でも非芳香環でもよい。また、例えば、下記スキームAにおいて、酸化反応生成物が、アルコールおよびカルボン酸の少なくとも一方に加え、またはそれに代えて、アルデヒドを含んでいてもよい。
前記スキームAにおいて、前記原料(基質)(A1)がメタンの場合、例えば、下記スキームA1のように、その酸化反応生成物が、メタノールおよびギ酸の少なくとも一方を含んでいてもよい。また、前記原料(基質)(A1)がエタンの場合、例えば、下記スキームA2のように、その酸化反応生成物が、エタノールおよび酢酸の少なくとも一方を含んでいてもよい。下記スキームA1およびA2も例示であり、本発明の製造方法において、メタンまたはエタンの酸化反応は、これに限定されない。
また、例えば、下記スキームBのように、前記原料が下記化学式(B1)で表され、その酸化反応生成物が、下記化学式(B2)で表されるアルコールと、下記化学式(B3)で表されるカルボニル化合物(例えばケトン)との少なくとも一方でもよい。下記スキームBにおいて、Rは、任意の原子または原子団であり、例えば、炭化水素基またはその誘導体である。前記炭化水素基は任意であり、例えば、直鎖状でも分枝状でも、飽和でも不飽和でも、環状構造を含んでも含んでいなくてもよく、前記環状構造は、芳香環でも非芳香環でもよい。各Rは、互いに同一でも異なっていてもよい。また、例えば、下記化学式(B1)、(B2)および(B3)のそれぞれにおいて、2つのRが一体となって、それらが結合する炭素原子とともに環状構造を形成していてもよい。
前記スキームBにおいて、前記原料(基質)(B1)がシクロヘキサンの場合、例えば、下記スキームB1のように、その酸化反応生成物が、シクロヘキサノールおよびシクロヘキサノンの少なくとも一方を含んでいてもよい。下記スキームB1も例示であり、本発明の製造方法において、シクロヘキサンの酸化反応は、これに限定されない。
本発明において、例えば、下記スキームCのように、前記原料が下記化学式(C1)で表される芳香族化合物であり、その酸化反応生成物が、下記化学式(C2)で表されるフェノールと、下記化学式(C3)で表されるキノンとの少なくとも一方であってもよい。下記スキームCにおいて、各Rは、任意の原子または原子団であり、例えば、水素原子、炭化水素基またはその誘導体である。前記炭化水素基は任意であり、例えば、直鎖状でも分枝状でも、飽和でも不飽和でも、環状構造を含んでいても含んでいなくてもよく、前記環状構造は、芳香環でも非芳香環でもよい。各Rは、互いに同一でも異なってもよい。また、例えば、下記化学式(C1)、(C2)および(C3)のそれぞれにおいて、2つ以上のRが一体となって、それらが結合するベンゼン環とともに環状構造を形成していてもよい。下記スキームCは例示であって、本発明を限定しない。すなわち、前述のとおり、本発明の製造方法において、前記原料(基質)である芳香族化合物は、下記化学式(C1)には限定されず、前記芳香族化合物の酸化反応生成物も、下記(C2)および(C3)には限定されない。
前記スキームCにおいて、前記原料(基質)(C1)がベンゼンの場合、例えば、下記スキームA1のように、酸化反応生成物が、ヒドロキシベンゼンおよびp-ベンゾキノンの少なくとも一方を含んでいてもよい。下記スキームC1も例示であり、本発明の製造方法において、ベンゼンの酸化反応は、これに限定されない。
前記原料(基質)が芳香族化合物の場合、前記芳香族化合物の芳香環に電子供与基が結合していると、例えば、前記原料である芳香族化合物の酸化反応(酸化的置換反応を含む)が進行しやすいため好ましい。前記電子供与基は、1つでも複数でもよく、電子供与性の強いものが好ましい。より具体的には、前記原料芳香族化合物は、芳香環に、-OR100、-NR200
2、およびAr100からなる群から選択される少なくとも一つの置換基が共有結合していることがより好ましい。前記R100は、水素原子または任意の置換基であり、R100が複数の場合は、各R100は同一でも異なっていてもよい。前記R200は、水素原子または任意の置換基であり、各R200は同一でも異なっていてもよい。前記Ar100は、アリール基であり、Ar100が複数の場合は、各Ar100は同一でも異なっていてもよい。
前記Ar100は、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ピリジン環、チオフェン環、ピレン環等の任意の芳香環から誘導される基であってよい。前記芳香環は環上にさらに1または複数の置換基を有していてもよく、前記置換基は、複数の場合は同一でも異なっていてもよい。前記Ar100は、例えば、フェニル基等があげられる。
また、前記R100は、水素原子、アルキル基、アリール基、およびアシル基からなる群から選択される少なくとも一つであることが好ましい。前記アルキル基は、炭素数1~6の直鎖もしくは分子アルキル基が好ましく、メチル基が特に好ましい。前記アシル基は、炭素数1~6の直鎖もしくは分子アシル基が好ましい。前記アリール基は、例えば、前記Ar100と同様であり、例えばフェニル基である。
また、前記R200は、水素原子、アルキル基、アリール基、およびアシル基からなる群から選択される少なくとも一つであることが好ましい。前記アルキル基は、炭素数1~6の直鎖もしくは分子アルキル基が好ましく、メチル基が特に好ましい。前記アシル基は、炭素数1~6の直鎖もしくは分子アシル基が好ましい。前記アリール基は、例えば、前記Ar100と同様であり、例えばフェニル基である。前記-NR200
2としては、ジメチルアミノ基、ジフェニルアミノ基等、電子供与製置換基で置換されたアミノ基が、特に電子供与性が高いため好ましい。
また、前記原料(基質)である前記芳香族化合物は、例えば、芳香環にアルキル基等の置換基が共有結合しており、前記置換基を、前記反応工程により酸化してもよい。例えば、前記酸化剤が酸素原子を含み、前記芳香族化合物が、芳香環に共有結合したメチレン基(-CH2-)を含み、前記反応工程において、前記メチレン基(-CH2-)を酸化してカルボニル基(-CO-)に変換してもよい。この場合において、前記メチレン基およびカルボニル基に結合している原子または原子団は、特に制限されず、水素原子、アルキル基、アリール基等があげられる。前記アルキル基は、炭素数1~6の直鎖もしくは分枝アルキル基が好ましい。前記アルキル基、アリール基は、さらに1または複数の置換基で置換されていてもよく、前記置換基は、複数の場合は同一でも異なっていてもよい。例えば、前記メチレン基に水素が結合していれば、メチル基(-CH3)となり、酸化後はホルミル基(-CHO)となる。前記メチレン基にメチル基が結合していれば、エチル基(-CH2CH3)となり、酸化後はアセチル基(-COCH3)となる。前記メチレン基にフェニル基が結合していれば、ベンジル基(-CH2Ph)となり、酸化後はベンゾイル基(-COPh)となる。また、例えば、芳香環に共有結合した前記置換基(酸化される前)がホルミル基(-CHO)であり、酸化後にカルボキシ基(-COOH)となってもよい。
また、例えば、前記原料(基質)は、オレフィンでもよく、前記オレフィンは、例えば、芳香族オレフィンでもよいし、脂肪族オレフィンでもよい。前記オレフィンは、例えば、下記スキームD中の化学式(D1)で表されるオレフィンでもよい。また、前記オレフィンの酸化反応生成物は、特に制限されず、例えば、下記スキームDのように、エポキシドおよびジオールの少なくとも一方を含んでいてもよい。下記化学式(D1)、(D2)および(D3)中、Rは、それぞれ、水素原子または任意の置換基であり、各Rは、互いに同一でも異なっていてもよい。前記任意の置換基は、例えば、アルキル基、不飽和脂肪族炭化水素基、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲン、ヒドロキシ基(-OH)、メルカプト基(-SH)、またはアルキルチオ基(-SR、Rはアルキル基)であり、さらなる置換基で置換されていてもよいし、置換されていなくてもよい。前記アルキル基は、炭素数1~6の直鎖もしくは分枝アルキル基であることがより好ましい。また、被酸化物である前記オレフィンは、オレフィン結合(炭素-炭素二重結合)を1つのみ含むオレフィンでもよいし、オレフィン結合を複数(2つ以上)含むオレフィンでもよい。
前記オレフィンは、例えば、芳香族オレフィンでもよい。すなわち、例えば、前記化学式(D1)において、Rの少なくとも一つが、芳香環(アリール基またはヘテロアリール基)でもよい。本発明において、前記芳香族オレフィンは、特に制限されず、前記芳香族オレフィンの芳香環に電子供与基が結合していると、例えば、前記芳香族オレフィンの酸化反応(酸化的置換反応を含む)が進行しやすいため好ましい。前記電子供与基は、1つでも複数でもよく、電子供与性の強いものが好ましい。より具体的には、前記芳香族オレフィンは、芳香環に、前記-OR100、-NR200
2、およびAr100からなる群から選択される少なくとも一つの置換基が共有結合していることがより好ましい。
本発明の酸化反応生成物の製造方法において、前記オレフィンは、エチレン、プロピレン、スチレン、およびブタジエンからなる群から選択される少なくとも一つでもよい。また、前記酸化反応生成物は、例えば、前述のように、エポキシドおよびジオールの少なくとも一方でもよい。下記スキームD1~D3に、その例を示す。下記スキームD1~D3は例示であって、本発明において、エチレン、プロピレンおよびスチレンの酸化反応は、これに限定されない。
本発明の製造方法において、得られる酸化反応生成物の比率(例えば、アルコールとカルボン酸との比率、フェノールとキノンとの比率等)は、例えば、反応条件を適宜設定することで調整できる。
本発明の製造方法において、前記原料(基質)の酸化反応生成物は、前記アルコール、カルボン酸、アルデヒド、ケトン、フェノール、キノン等に限定されず、例えば、それらに加え、またはそれらに代えて、前記原料(基質)の塩素化物(クロロ化物)等を含んでいてもよい。なお、例えば、炭化水素の気相反応において塩素原子ラジカルCl・が二分子関与する場合(例えば、塩素ガスCl2を用いた気相反応)は、酸素分子O2の存在下であっても、塩素化が優先的に起こると推測される。なお、この推測は、本発明を何ら限定しない。
さらに、前記反応工程後、必要に応じて、前記酸化反応生成物の回収工程を行なってもよい。前記回収工程は、特に制限されず、例えば、一般的な有機合成反応と同様の方法を用いてもよい。具体的には、例えば、有機溶媒による抽出、蒸留、分溜、ろ過等の方法を適宜用いて、前記反応系から前記酸化反応生成物を回収してもよい。さらに、必要に応じて、回収した酸化反応生成物を単離精製してもよい。単離精製方法は、特に制限されず、例えば、一般的な有機合成反応に準じて、蒸留、ろ過等の方法を適宜用いて、行なうことができる。
本発明によれば、例えば、前記二酸化塩素ラジカルおよび前記原料が共存する前記気相を含む反応系を使用するのみ、また任意でさらに光照射するという、極めて簡便な方法で、塩素原子ラジカルCl・および酸素分子O2を発生させ、酸化反応を行なうことができる。そして、そのような簡便な方法で、例えば、常温および常圧等の極めて温和な条件下でも、炭化水素またはその誘導体を効率よく酸化反応生成物に変換することが可能である。
前記気相反応系においては、例えば、反応効率等の観点から、前記気相反応系に光照射して前記反応工程を行なってもよい。しかし、これに限定されず、前記気相反応系に光照射せずに前記反応工程を行なってもよい。その場合は、例えば、後述する前記ハロゲン酸化物ラジカル生成工程においては、光照射により前記ハロゲン酸化物ラジカルを生成させ、前記反応工程は、反応系に光照射せずに行なってもよい。
前記気相反応系を用いれば、例えば、目的物である前記原料の酸化反応生成物を反応系から分離する際に、蒸留等の工程を省略して行なうことも可能である。これにより、例えば、前記原料の酸化反応生成物の製造工程の大幅な向上が可能である。
さらに、本発明によれば、例えば、有毒な重金属触媒等を用いずに、前記原料(炭化水素またはその誘導体)の酸化反応生成物を得ることも出来る。これによれば、前述のとおり常温および常圧等の極めて温和な条件下で反応が行えることと併せ、環境への負荷が極めて小さい方法で前記酸化反応生成物を効率よく得ることも可能である。
本発明の製造方法は、例えば、低コストで簡便に行うことが可能である。具体的には、例えば、高温・高圧等を必要とせずに、室温および大気圧下で反応を行なうことも可能である。このため、例えば、特殊な反応容器、設備等を必要とせずに反応を行なうことができ、反応容量のスケールアップも容易である。また、例えば、安全性に優れており安価な亜塩素酸ナトリウム等を用いてハロゲン酸化物ラジカルを生成させ、生成した前記ハロゲン酸化物ラジカルを含む気相において、反応を行なうこともできる。本発明の製造方法によれば、例えば、市場において広く利用されているメタノール、ギ酸等を低コストかつ安全に生産できるため、産業上利用価値は多大である。本発明の利用分野も、特に制限されず、例えば、前記原料の酸化反応生成物の一般的な利用分野と同様の分野に広く利用可能である。本発明の製造方法は、例えば、燃料合成、化成品原料の合成等に利用可能である。
本発明の製造方法によれば、前記原料から前記酸化反応生成物を製造できることから、本発明の製造方法は、前記原料に対する改質方法ということもできる。
[5.化合物ラジカル生成工程]
本発明において、前記気相反応系における前記化合物ラジカルは、例えば、前述のように、前記化合物ラジカルを含むガスを、気相に導入してもよいし、液相のラジカル生成用反応系で発生させた前記化合物ラジカルを、気相に移行させることで導入してもよい。後者の場合、本発明は、例えば、さらに、前記化合物ラジカルを生成させる化合物ラジカル生成工程を含んでもよい。
前記化合物ラジカルを生成させる前記ラジカル生成用反応系は、特に制限されず、例えば、水相のみを含む反応系でもよいし、水相と有機相とを含む二相反応系でもよい。前記水相は、例えば、前記化合物ラジカルの発生源を含み、前記化合物ラジカル生成工程において、前記化合物ラジカルの発生源から前記化合物ラジカルを生成させてもよい。前記水相は、例えば、前記化合物ラジカルの発生源を含む水性溶媒の相である。前記水性溶媒は、例えば、H2O、D2O等の水があげられる。前記二相反応系の場合、前記水相は、例えば、前記有機相で使用する溶媒と分離する溶媒である。
前記ラジカル生成用反応系が水相のみの場合、発生した前記化合物ラジカルは、例えば、気相に移行される。前記生成用反応系が前記二相の場合、例えば、前記水相で発生した前記化合物ラジカルが疎水性であれば、前記化合物ラジカルは、例えば、前記有機相に移行され、さらに、気相に移行される。この移行された前記化合物ラジカルを含む気相を、例えば、前述した、「4.反応工程」における気相反応系として使用できる。
前記有機相は、有機溶媒の相である。前記有機溶媒は、特に限定されない。前記有機溶媒は、例えば、1種類のみ用いてもよいし、複数種類を併用してもよい。本発明において、前記有機溶媒は、例えば、炭化水素溶媒、ハロゲン化溶媒、フルオラス溶媒等があげられる。前記生成用反応系が前記二相の場合、前記有機溶媒は、例えば、前記二相系を形成し得る溶媒、すなわち、前記水相を構成する後述する水性溶媒と分離する溶媒、前記水性溶媒に難溶性または非溶性の溶媒が好ましい。
前記炭化水素溶媒は、特に制限されず、例えば、芳香族系が好ましく、具体例としては、例えば、n-ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン等があげられる。
「ハロゲン化溶媒」は、例えば、炭化水素の水素原子の全てまたは大部分が、ハロゲンに置換された溶媒をいう。前記ハロゲン化溶媒は、例えば、炭化水素の水素原子数の50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、または90%以上が、ハロゲンに置換された溶媒でもよい。前記ハロゲン化溶媒は、特に制限されず、例えば、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、四臭化炭素、および後述するフルオラス溶媒等があげられる。
「フルオラス溶媒」は、前記ハロゲン化溶媒の1種であり、例えば、炭化水素の水素原子の全てまたは大部分がフッ素原子に置換された溶媒をいう。前記フルオラス溶媒は、例えば、炭化水素の水素原子数の50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、または90%以上がフッ素原子に置換された溶媒でもよい。前記フルオラス溶媒は、水と混和しにくいため、例えば、前記二相反応系の形成に適している。
前記フルオラス溶媒の例は、例えば、下記化学式(F1)~(F6)で表される溶媒等があげられ、中でも、例えば、下記式(F1)におけるn=4のCF3(CF2)4CF3等が好ましい。
前記有機相は、例えば、例えば、ブレーンステッド酸、ルイス酸、および酸素(O2)等を含んでもよい。これらの成分は、例えば、前記有機溶媒に溶解した状態でもよいし、溶解していない状態でもよい。後者の場合、前記他の成分は、例えば、前記有機溶媒に、分散された状態でもよいし、沈殿した状態でもよい。
前記化合物ラジカルが、前記16族元素と前記17族元素とを含むラジカルの場合、前記化合物ラジカルとしては、例えば、前記ハロゲンの酸化物ラジカルがあげられる。この場合、前記発生源は、例えば、前記化合物ラジカルに対応する、前記16族元素と前記17族元素とを含む化合物があげられる。前記ハロゲン酸化物ラジカルの発生源は、例えば、酸素とハロゲンとを含む化合物であり、具体例として、例えば、亜ハロゲン酸(HXO2)またはその塩があげられる。前記亜ハロゲン酸の塩は、特に制限されず、例えば、金属塩があげられ、前記金属塩は、例えば、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、希土類塩等があげられる。前記ハロゲン酸化物ラジカルの発生源は、例えば、酸素と、ハロゲンと、1族元素(例えば、H、Li、Na、K、Rb、およびCsからなる群から選択された少なくとも一つ)とを含む化合物でもよく、例えば、前記亜ハロゲン酸またはそのアルカリ金属塩である。前記ハロゲン酸化物ラジカルが前記二酸化塩素ラジカルの場合、その発生源は、特に制限されず、例えば、亜塩素酸(HClO2)またはその塩であり、具体的には、例えば、亜塩素酸ナトリウム(NaClO2)、亜塩素酸リチウム(LiClO2)、亜塩素酸カリウム(KClO2)、亜塩素酸マグネシウム(Mg(ClO2)2)、亜塩素酸カルシウム(Ca(ClO2)2)等である。中でも、コスト、取扱い易さ等の観点から、亜塩素酸ナトリウム(NaClO2)が好ましい。他の発生源としては、例えば、亜臭素酸ナトリウム等の臭素酸塩類、亜要素酸ナトリウム等の亜ヨウ素酸塩類等があげられる。前記化合物ラジカルの発生源は、特に制限されず、例えば、前記化合物ラジカルの種類によって、適宜選択できる。前記化合物ラジカルの発生源は、例えば、1種類のみを用いてもよく、複数種類を併用してもよい。以下、前記化合物ラジカルがハロゲン酸化物である例をあげて説明するが、これには制限されない。
また、前記水相は、例えば、さらに、ルイス酸およびブレーンステッド酸の少なくとも一方を含んでいてもよい。前記水相において、これらの任意の成分は、例えば、前記水性溶媒に溶解した状態でもよいし、溶解していない状態でもよい。後者の場合、前記任意の成分は、例えば、前記水性溶媒に、分散された状態でもよいし、沈殿した状態でもよい。前記水相は、例えば、前記ハロゲン酸化物ラジカルの発生源(例えば、亜塩素酸イオン(ClO2
-))とブレーンステッド酸とを含む。前記水相は、例えば、前記ハロゲン酸化物ラジカルの発生源(例えば、亜塩素酸ナトリウム(NaClO2))とブレーンステッド酸(例えば塩酸)が水に溶解した水相である。
前記水相は、例えば、前記ハロゲン酸化物ラジカルの発生源を水と混合して製造できる。また、さらに、前記ハロゲン酸化物ラジカルの発生源および水以外の他の成分を適宜混合してもよいし、しなくてもよい。前記他の成分としては、特に制限されず、例えば、前記ルイス酸、前記ブレーンステッド酸、および酸素(O2)があげられる。
前記水相中において、前記ハロゲン酸化物ラジカルの発生源の濃度は、特に制限されず、例えば、0.0001mol/L以上であってもよく、1mol/L以下であってもよい。前記ハロゲン酸化物ラジカルの発生源の濃度は、例えば、亜塩素酸またはその塩の場合、亜塩素酸イオン(ClO2
-)濃度に換算した濃度でもよい。また、前記亜塩素酸イオン(ClO2
-)のモル数は、例えば、前記「4.反応工程」で前記ハロゲン酸化物ラジカルと反応させる前記原料(炭化水素またはその誘導体)のモル数の1/100000倍以上であってもよく、1000倍以下であってもよい。他の発生源についても、例えば、前記濃度が援用できる。
前記ルイス酸およびブレーンステッド酸は、1種類のみ用いてもよいし、複数種類併用してもよい。また、ルイス酸およびブレーンステッド酸の一方のみを用いても両方を併用してもよいし、1つの物質がルイス酸およびブレーンステッド酸を兼ねていてもよい。なお、本発明において、「ルイス酸」は、例えば、前記二酸化塩素ラジカル発生源に対してルイス酸として働く物質をいう。
前記水相中における、前記ルイス酸およびブレーンステッド酸の少なくとも一方の濃度は、特に制限されず、例えば、前記「4.反応工程」で前記ハロゲン酸化物ラジカルと反応させる前記原料(炭化水素またはその誘導体)および目的生成物(前記原料の酸化反応生成物)の種類等に応じて適宜設定できるが、例えば、0.0001mol/L以上であってもよく、1mol/L以下であってもよい。
前記ルイス酸は、例えば、有機物質でもよいし無機物質でもよい。前記有機物質としては、例えば、アンモニウムイオン、有機酸(例えばカルボン酸)等であってもよい。前記無機物質は、金属イオンおよび非金属イオンの一方または両方を含んでいてもよい。前記金属イオンは、典型金属イオンおよび遷移金属イオンの一方または両方を含んでいてもよい。前記無機物質は、例えば、アルカリ土類金属イオン(例えばCa2+等)、希土類イオン、Mg2+、Sc3+、Li+、Fe2+、Fe3+、Al3+、ケイ酸イオン、およびホウ酸イオンからなる群から選択される少なくとも一つであってもよい。前記アルカリ土類金属イオンとしては、例えば、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、またはラジウムのイオンがあげられ、より具体的には、例えば、Ca2+、Sr2+、Ba2+、およびRa2+があげられる。また、「希土類」は、スカンジウム21Sc、イットリウム39Yの2元素と、ランタン57Laからルテチウム71Luまでの15元素(ランタノイド)の計17元素の総称である。希土類イオンとしては、例えば、前記17元素のそれぞれに対する3価の陽イオンがあげられる。また、前記ルイス酸のカウンターイオンとしては、例えば、トリフルオロメタンスルホン酸イオン(CF3SO3
-、またはOTf-とも表記する)、トリフルオロ酢酸イオン(CF3COO-)、酢酸イオン、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、硫酸イオン、硫酸水素イオン、亜硫酸イオン、硝酸イオン、亜硝酸イオン、リン酸イオン、亜リン酸イオン等があげられる。例えば、前記ルイス酸が、スカンジウムトリフレート(Sc(OTf)3)等であってもよい。
前記ルイス酸(カウンターイオンも含む)は、例えば、AlCl3、AlMeCl2、AlMe2Cl、BF3、BPh3、BMe3、TiCl4、SiF4、およびSiCl4からなる群から選択される少なくとも一つであってもよい。「Ph」はフェニル基を表し、「Me」はメチル基を表す。
前記ルイス酸のルイス酸性度は、例えば、0.4eV以上であるが、これには限定されない。前記ルイス酸性度の上限値は、特に制限されず、例えば、20eV以下である。前記ルイス酸性度は、例えば、Ohkubo, K.; Fukuzumi, S. Chem. Eur. J., 2000, 6, 4532、J. Am. Chem. Soc. 2002, 124, 10270-10271、またはJ. Org. Chem. 2003, 68, 4720-4726に記載の方法により測定でき、具体的には、下記の方法により測定できる。
(ルイス酸性度の測定方法)
下記化学反応式(1a)中のコバルトテトラフェニルポルフィリン、飽和O2およびルイス酸性度の測定対象物(例えば金属等のカチオンであり、下記化学反応式(1a)ではMn+で表される)を含むアセトニトリル(MeCN)を、室温において紫外可視吸収スペクトル変化の測定をする。得られた反応速度定数(kcat)からルイス酸性度の指標であるΔE値(eV)を算出できる。kcatの値は大きいほど強いルイス酸性度を示す。また、有機化合物のルイス酸性度は、量子化学計算によって算出される最低空軌道(LUMO)のエネルギー準位からも、見積もることができる。正側に大きい値であるほど強いルイス酸性度を示す。
前記ブレーンステッド酸としては、特に制限されず、例えば、無機酸でも有機酸でもよく、例えば、トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、酢酸、フッ化水素酸、塩化水素酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、亜硫酸、硝酸、亜硝酸、リン酸、亜リン酸等があげられる。前記ブレーンステッド酸の酸解離定数pKaは、例えば10以下である。前記pKaの下限値は、特に制限されず、例えば、-10以上である。
前記酸素(O2)については、例えば、前記ハロゲン酸化物ラジカル発生源、前記ルイス酸、前記ブレーンステッド酸等を加える前または加えた後の水中および有機相の少なくとも一方に、空気または酸素ガスを吹き込むことにより、酸素を溶解させてもよい。このとき、例えば、前記水中を、酸素(O2)で飽和させてもよい。
前記水相における水は、前述のとおり、ルイス酸、ブレーンステッド酸、ラジカル発生源等を溶解してもよいが、溶解しなくてもよい。例えば、ルイス酸、ブレーンステッド酸、ラジカル発生源等が、水中に分散したり沈殿したりした状態でもよい。
前記ハロゲン酸化物ラジカル生成工程は、特に限定されない。以下、主に、前記ハロゲン酸化物ラジカルが二酸化塩素ラジカルの場合について、例をあげて説明するが、前記ハロゲン酸化物ラジカル生成工程は、これには限定されない。
前記ハロゲン酸化物ラジカル生成工程は、例えば、前記二酸化塩素ラジカル発生源(例えば、亜塩素酸またはその塩)を水に溶解させて静置し、亜塩素酸イオンから二酸化塩素ラジカルを自然発生させることで行なうことができる。このとき、例えば、前記水中に前記ルイス酸およびブレーンステッド酸の少なくとも一方が存在することで、二酸化塩素ラジカルの発生がさらに促進される。また、例えば、前述のとおり、前記水相に光照射することで前記二酸化塩素ラジカルを発生させてもよい。しかしながら、前述のとおり、光照射せずに単に静置するのみでも、二酸化塩素ラジカルを発生させることができる。
水中において亜塩素酸イオンから二酸化塩素ラジカルが発生するメカニズム(機構)については、例えば、下記スキーム1のように推測される。下記スキーム1は、推測されるメカニズムの一例であり、本発明を何ら限定しない。下記スキーム1の第1の(上段の)反応式は、亜塩素酸イオン(ClO2
-)の不均化反応であり、水中にルイス酸およびブレーンステッド酸の少なくとも一方が存在することで、平衡が右側に移動しやすくなると考えられる。下記スキーム1中の第2の(中段の)反応式は、二量化反応であり、第1の反応式で生成した次亜塩素酸イオン(ClO-)と亜塩素酸イオンが反応して二酸化二塩素(Cl2O2)を生成する。この反応は、水中にプロトンH+が多いほど、すなわち酸性であるほど進行しやすいと考えられる。下記スキーム1中の第3の(下段の)反応式は、ラジカル生成である。この反応では、第2の反応式で生成した二酸化二塩素が、亜塩素酸イオンと反応して二酸化塩素ラジカルを生成する。
例えば、前記水相で前記二酸化塩素ラジカルを発生させ、発生した前記二酸化塩素ラジカルを前記気相中に放出させた後、前記気相を、前記「4.反応工程」においてその気相反応系として使用することもできる。
以下、本発明の実施例について説明する。ただし、本発明は、以下の実施例には限定されない。
[実施例1]
容量5mLのガラス容器中に、空気とともに、メタンガス(CH4)1000ppm、二酸化塩素ガス(ClO2)1000ppm、および酸素ガス(O2)1000ppmを封入し、気相(気相反応系)を作製した。前記気相に、室温(約25℃)および大気圧条件下、500WのXeランプで1時間光照射した。このようにして、前記二酸化塩素ガスからの二酸化塩素ラジカル生成(ハロゲン酸化物ラジカル生成工程)と、前記メタンおよび前記二酸化塩素ラジカルの反応(反応工程)とを同時に行った。1時間光照射後、前記容器内に1mLの重水(D2O)を入れ、前記容器の内容物を前記重水に溶解させ、1H NMRで定量分析した。前記1H NMRにより、原料(メタン)の酸化反応生成物であるメタノールおよびギ酸の生成が確認された。1H NMRのピーク強度から、原料(メタン)に基づく酸化反応生成物の収率を算出したところ、メタノールが1%、ギ酸が1%であった。
[実施例2]
メタンガス(CH4)1000ppmに代えてエタンガス(C2H6)1000ppmを用いたこと以外は実施例1と同様にして気相中でエタンの酸化反応を行なった。1時間光照射後、1H NMRにより、原料(エタン)の酸化反応生成物であるエタノールおよび酢酸の生成が確認された。1H NMRのピーク強度から、原料(エタン)に基づく酸化反応生成物の収率を算出したところ、エタノールが5%、酢酸が6%であった。
[実施例3]
メタンガス(CH4)1000ppmに代えてプロパンガス(C3H8)1000ppmを用いたこと以外は実施例1と同様にして気相中でプロパンの酸化反応を行なった。2時間光照射後、1H NMRにより、原料(プロパン)の酸化反応生成物である2-プロパノール(イソプロピルアルコール)、プロピオン酸およびアセトンの生成が確認された。1H NMRのピーク強度から、原料(プロパン)に基づく酸化反応生成物の収率を算出したところ、2-プロパノールが1%、プロピオン酸が20%、アセトンが25%であった。
実施例1~3に示すとおり、大気中、常温、常圧下において光照射するのみで、炭化水素から、アルコール、カルボン酸、ケトン等の酸化反応生成物を効率よく製造できた。また、本実施例では、光源としてキセノンランプを用いたが、太陽光またはLED等を光源として用いれば、さらなる省エネルギーおよびコスト低減が可能である。
実施例1~3に示すとおり、本発明によれば、炭化水素を原料(基質)として用いて、産業上利用価値が極めて高い酸化反応生成物を、前記気相の反応系において効率よく得ることが可能である。例えば、実施例1で得られたメタノールおよびギ酸、実施例2で得られたエタノールおよび酢酸は、いずれも、燃料、溶媒、化成品の原料等の各種用途に、多大な利用価値がある。すなわち、本実施例によれば、本発明が、産業上利用の観点から、多大な価値を有することが確認された。
以上、実施形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は、上記実施形態に限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。