ところで、特許文献1記載の打設装置は、打撃ピストンの円滑な往復動を実現するために、シリンダー内に潤滑油を供給するのであるが、本発明者が特許文献1記載の打設装置等を運用したところ、打設対象物の打設作業時に、被嵌挿部の先部(ハンマ部と可動継手部の接続箇所)から圧縮空気と共に潤滑油が噴出して、打設装置の周囲を汚染する事例があった。この事例の原因は、以下の通りと想定される。
特許文献1記載の打設装置は、特許文献1の図4に記載されたように、可動継手部の接続軸の基端から接続板の裏面に至る通気可能な通気路が形成され、圧縮空気が打撃ピストンを復動させ、復動させた後の圧縮空気と潤滑油が可動継手部の先部から排出される構造である。
また、特許文献1記載の打設装置は、可動継手部の進出状態において、シリンダー先端と可動継手部の上面との間に隙間が生じ、かつ、打撃ピストンが往動して接続軸の基端側の通気路開口部が一時的に塞がる構造である。なお、前述の隙間が生じることで、シリンダー先端において、シリンダー内と機外とが一時的に連通することになる。
この可動継手部の進出状態において、シリンダー内の圧縮空気は、打撃ピストンの先端面によって被嵌挿部の方向へ急激に押し込まれ、打撃ピストン先端面と被嵌挿部との間の領域にある圧縮空気が更に圧縮されて高圧になる。
そして、この領域にある高圧化した圧縮空気は、可動継手部が進出したことにより生じた隙間(大気圧である機外との連通部分)に向かって回り込んで移動する。このとき、圧縮空気の移動に伴って、当該領域に分布する潤滑油も前述の隙間の方向に移動し、この結果、被嵌挿部の僅かな隙間から圧縮空気と潤滑油が噴出する。
つまり、特許許文献1記載の打設装置等は、打設装置を地上部に配置して使用するものであるため、稼働時に被嵌挿部の先部から圧縮空気と潤滑油が噴出すると、潤滑油が周囲に飛び散り、打設装置の周囲で作業を補助する作業従事者や周囲の土壌を汚染する可能性がありうる。
本発明は、以上の点を鑑みて創案されたものであり、打設対象物の打設作業時における打設装置の周囲の汚染可能性を低減する、打設装置、打設機、及び、打設方法を提供することを目的とする。
上記の目的を達成するために本発明の打設装置は、先端に被嵌挿部が設けられたシリンダー、及び、該シリンダー内に配置され、同シリンダーに供給される圧縮空気により同シリンダーの軸方向に往復動可能なピストンを有する、ハンマ部と、前記被嵌挿部内に進退動可能に嵌挿され、前記ピストンが往動し基端部分に衝突して生じる打撃力を以て前記シリンダーと反対方向に進出する接続軸、及び、該接続軸の先部に設けられた被接続部を有し、前記シリンダー外と連通した第1開口孔、及び、前記ピストンの復動時に前記シリンダー内と連通する構造の第2開口孔が形成された第1通気路が設けられていると共に、該第1通気路と連通した第3開口孔、及び、少なくとも前記ピストンの往動時かつ前記接続軸の進出時に、同接続軸と前記被嵌挿部の間の空隙と連通する構造の第4開口孔が形成された第2通気路が設けられた、可動継手部と、前記被接続部に接続可能に設けられた接続部、及び、打設対象物を挟持可能な挟持部を有し、挟持した該打設対象物に対し、前記可動継手部を介した前記打撃力を伝達可能なチャック部と、を備える。
ここで、ハンマ部は、前述のシリンダーを有することによって、内部にピストンを格納することができ、導入直後の圧縮空気がシリンダー外に漏出しない構造になっている。また、シリンダーは、被嵌挿部を設けた先端部分に、可動継手部の接続軸を嵌挿することができる。なお、圧縮空気は、例えば、機外のコンプレッサー又は打設装置の一部を構成するコンプレッサー部等により、シリンダー内に供給される。
更に、ハンマ部は、前述のピストンを有することによって、シリンダー内に供給される圧縮空気を動力源として、ピストンがシリンダー内を軸方向に往復動する。詳しくは、往動したピストンが、嵌挿された接続軸の基端部分を打撃することで、可動継手部に打撃力を伝達し、打撃後のピストンは、圧縮空気によってシリンダーの基端方向に復動する。このピストンの往復動は、高速かつ連続的に行われる。
可動継手部は、前述の接続軸を有することによって、ハンマ部と接続し、接続軸がシリンダーの被嵌挿部内で進退動することができる。そして、接続軸は、その基端部分に対して、往動したピストンの先端部分が衝突することで打撃力が生じ、接続軸(を含む可動継手部の全体)がシリンダーと反対方向に進出し、その後、接続軸はシリンダー内に後退する。この接続軸の往復動は、前述したピストンの往復動に伴って、高速かつ連続的に行われる。
そして、可動継手部は、前述の被接続部を有することによって、チャック部の接続部を介して、チャック部と接続することができる。この結果、可動継手部は、その往復動による打撃力がチャック部に伝達される。
更に、可動継手部は、前述の第1通気路が設けられていることにより、ピストンを往動させた後にシリンダー内に滞留する圧縮空気を、ピストンが復動時する際にシリンダー内と連通する第2開口孔から第1開口孔へ通過させ、シリンダー外に排気することができる。この排気によってシリンダー内の気圧が低下し、次回のピストンの往動に繋がると共に、新たな圧縮空気が流入可能となる(なお、この流入した新たな圧縮空気は、次回復動の原動力となる)。
更にまた、可動継手部は、前述の第2通気路が設けられていることにより、少なくともピストンが往動しかつ接続軸が進出した状態において、シリンダー内の被嵌挿部(換言すると、シリンダーの先部)と第1通気路とが、第2通気路を介して連通する。
この第2通気路と第1通気路とが連通した状態では、シリンダー内において被嵌挿部と可動継手部の接続軸との間の僅かな隙間(以下、同部分を「被嵌挿部と接続軸の隙間」という)に向かう圧縮空気が、第4開口孔を通じて第2通気路に流入し、第2通気路を通過して第3開口孔に至って第1通気路に流出する。
つまり、被嵌挿部と接続軸の隙間に至った圧縮空気は、第2通気路を経て第1通気路に抜けることで同隙間内における過剰な気圧上昇が抑止され、ハンマ部と可動継手部の接続箇所で生じうる圧縮空気の漏出可能性が低減する。そして、この圧縮空気の漏出可能性の低減に伴い、シリンダー内に供給された潤滑油が圧縮空気と共に漏出し、周囲を汚染する可能性も低減することができる。
チャック部は、接続部を有することによって、可動継手部の被接続部に取り付けることができ、可動継手部を介してハンマ部からの打撃力の伝達を受けることができる。また、チャック部は、挟持部を有することによって、打設対象物を挟持することができる。つまり、チャック部は、打設対象物に挟持し、伝達された打撃力を以て、打設対象物を打設箇所(主に地面)へ打設することができる。
このように、本発明の打設装置は、前述した構成の各部が協働することにより、シリンダー内を往復動するピストンの打撃力を以て、可動継手部に接続されたチャック部で挟持した打設対象物を打設することができ、加えて、作業時における打設装置の周囲の汚染可能性を低減することができる。
そして、本発明の打設装置は、従前の振動方式のバイブロハンマよりも強い打撃力による打設が可能で、かつ、稼働時の共振に起因する吊下機の破損を招くことがない。更に、本発明の打設装置は、ハンマ部の動力が圧縮空気である(いわゆるエアハンマ式である)ため、圧力の上げ下げによって打撃速度を容易に調節することができ、また、作動流体の生成及び排出の際における環境負荷が抑制されたものとなっている。
ところで、第2通気路の第4開口孔は、「少なくともピストンの往動時かつ接続軸の進出時に、同接続軸と被嵌挿部の間の空隙と連通する構造」であればよく、空隙との連通は、連続的(「常時」とも換言できる)であってもよいし、間欠的なものであってもよい。
接続軸の構造の一例としては、接続軸が、基部方向が自由端である筒形で、第1通気路が同接続軸の軸方向に設けられ、先端に第1開口孔が形成されると共に、基端に第2開口孔が形成されており、第2通気路が第1通気路と交差する方向に設けられ、第4開口孔が、ピストンの復動時かつ接続軸の後退時に被嵌挿部の内面によって閉塞される位置、かつ、ピストンの往動時かつ接続軸の進出時に同接続軸と被嵌挿部の間の空隙と連通する位置、となる接続軸の外周面に形成されている構造であってもよい。
本構造によれば、第1通気路は、前述の構成であることにより、比較的加工が容易であり、圧縮空気の通りが円滑な構造となっている。第2通気路は、前述の構成であることにより、比較的加工が容易であり、圧縮空気の通りが円滑な構造となっている。そして、第4開口孔が、前述の構成であることにより、ピストンの復動時かつ接続軸の後退時に被嵌挿部の内面によって閉塞されるので、流入した圧縮空気の仕事効率が良い。
更に、接続軸の構造の他の例としては、接続軸が、基部方向が自由端である筒形で、第1通気路が、同接続軸の軸方向に設けられ、先端に第1開口孔が形成されると共に、基端に第2開口孔が形成されており、第2通気路が、第1通気路と交差する方向に設けられ、第4開口孔が、常時(すなわち、ピストンの往復時かつ接続軸の進退時のいずれの間でも)接続軸と被嵌挿部の間の空隙と連通する位置となる、接続軸の外周面に形成されている構造であってもよい。
なお、第4開口孔が、前述の構成であることにより、第4開口孔がピストンの復動時かつ接続軸の後退時に被嵌挿部の内面によって閉塞される構造と比較して、流入した圧縮空気の仕事効率は若干低下するが、圧縮空気の流量を増加させるか、あるいは、気圧を高めることでカバーできる。一方、この第2通気路は、その形成に高度な加工精度が不要であり、製造効率の向上、あるいは、製造コストの低減化を図ることができる。加えて、前述の第4開口孔の構成によれば、製品が摩耗により多少劣化した場合でも稼働可能であることから、分解整備や頻繁な部品交換といったメンテナンスの頻度を減らすこともでき、作業負担の軽減化を図ることができる。
また、可動継手部とチャック部の間に配置され、可動継手部の被接続部に接続可能な可動継手部接続部、チャック部の接続部に接続可能なチャック部接続部、及び、周壁によって気密に形成された胴部を有し、第1開口孔と連通する通気穴が形成されると共に、胴部内に流入した圧縮空気を排気する排気穴が形成された、スペーサ部を更に備える場合は、可動継手部とチャック部を所定間隔で接続することができる。そして、スペーサ部は、可動継手部から伝達される衝撃力でチャック部が傷まないように衝撃を緩和することができる。
可動継手部接続部は、これ以て可動継手部と接続することができる。また、チャック部接続部は、これ以てチャック部に接続することができる。胴部は、気密である周壁によって、通気穴から流入した圧縮空気が一気に周囲に拡散しない構造となっている。これにより、圧縮空気と共に流入する潤滑油も周囲に拡散しない構造となっている。なお、通気穴と排気穴は、例えば、通気穴を可動継手部接続部に形成し、排気穴を胴部に形成した態様が挙げられるが、その形成箇所を限定するものではなく、他の態様であってもよい。
また、スペーサ部の排気穴に一端側が接続された排出管、及び、同排出管の他端側に接続された回収部を有する、回収構造部を更に備える場合は、スペーサ部の排気穴を介して、排出された圧縮空気(排気)及び潤滑油を回収することができる。これにより、打設装置は、その周囲の汚染可能性を更に低減することができる。
なお、回収構造部は、打設装置自体に組み込まれた構造であってもよいし、別体であって打設作業時において打設装置と接続される構造であってもよい。また、回収構造部は、圧縮空気及び潤滑油の両方を(廃棄又は再利用のために)回収可能な構造であってもよいし、潤滑油のみ回収可能な構造(圧縮空気は大気中に放出(排気)する)であってもよい。
また、ハンマ部が、着脱可能なウエイト部を有する場合は、ハンマ部の全体重量を変更することができる。これにより、例えば、打設対象物を地中深くまで打設する必要がある場合は、ウエイト部をハンマ部に取着することによって全体重量を増加させ、荷重も加わることで、作業時における打設装置の打撃力を向上させることができる。
一方、打設対象物を地中深くまで打設する必要がない場合は、ウエイト部をハンマ部から外してよく、その場合でもハンマ部の自重のみで打設作業を行うことができる。また、ウエイト部の取着が不要な際には、ハンマ部から外すことで、ハンマ部の全体重量の軽量化を図ることができ、運搬や保管の際の利便性が向上する。
なお、ウエイト部は、ハンマ部のみならず、可動継手部またはチャック部(以下、本段落中では「可動継手部等」という)への着脱を除外するものではない。しかしながら、可動継手部等は、それ自体が高速で動く箇所であるため、ウエイト部を取着することによって可動継手部等に加わる応力が更に増す。この結果、可動継手部等の構成材の疲労破壊が起きるおそれがあり、また、作業に伴う振動増加のおそれもあるため、好ましくない。
また、防音材により形成され、少なくとも、ハンマ部からチャック部に至る領域の外周部分を覆う、被覆部を更に備える場合は、前述したハンマ部と可動継手部の接続箇所を含む領域が覆われているので、仮に同接続箇所から圧縮空気(とこれに含まれる潤滑油)が漏出したとしても、周囲に飛散して汚染することがない。そして、被覆部は、主たる騒音発生源となるハンマ部からチャック部に至る領域を覆っていることにより、打設装置の稼働時に生じる騒音を低減することができる。
なお、被覆部は、例えば、メンテナンス性等を考慮して着脱可能な構造なものが挙げられるが、これに限定するものではない。また、被覆部は、例えば、シート状で打設装置を覆うように巻着するものが挙げられるが、これに限定するものではなく、例えば、打設装置の外径よりと略同じ内径を有する単なる筒形状のもの等であってもよい。
また、被覆部が、チャック部よりも先部方向に、挟持部で挟持する打設対象物の外周の一部又は全部を被覆可能な延長被覆部を有する場合は、打設装置の稼働時に生じる騒音を更に低減することができる。
前述の通り、ハンマ部からチャック部に至る領域の外周部分を被覆部で覆うことで、主たる騒音発生源はカバーされているが、チャック部と打設対象物の挟持部分からも騒音が漏れ、挟持した打設対象物に伝達する打撃に起因して打設対象物からも騒音が生じうる。
しかし、この延長被覆部によれば、チャック部と打設対象物の挟持部分や、挟持した打設対象物も被覆することができるので、これらに起因する騒音が周囲に漏れないようにして低減することができる。つまり、本打設装置は、その稼働で生じる打設装置の側部方向からの騒音を被覆部で低減させ、かつ、打設装置の先部方向から漏出する騒音を延長被覆部で低減することができる。
延長被覆部は、一例として、打設対象物等を巻くような筒状の態様が挙げられる。また、延長被覆部は、他の例として、長手方向の先部が自由端である複数の垂れ幕状の幕部分、及び、隣接する該幕部分の間に設けた結合具を有し、結合具によって隣接する幕部分を繋いで筒状にすることができる態様が挙げられる。なお、延長被覆部は、前述の態様に限定するものではなく、他の態様を除外するものではない。
上記の目的を達成するために本発明の打設機は、先端に被嵌挿部が設けられたシリンダー、及び、シリンダー内に配置され、同シリンダーに供給される圧縮空気により同シリンダーの軸方向に往復動可能なピストンを含む、ハンマ部と、被嵌挿部内に進退動可能に嵌挿され、ピストンが往動し基端部分に衝突して生じる打撃力を以てシリンダーと反対方向に進出する接続軸、及び、接続軸の先部に設けられた被接続部を含み、シリンダー外と連通した第1開口孔、及び、ピストンの復動時にシリンダー内と連通する構造の第2開口孔が形成された第1通気路が設けられていると共に、第1通気路と連通した第3開口孔、及び、少なくともピストンの往動時かつ接続軸の進出時に、同接続軸と被嵌挿部の間の空隙と連通する構造の第4開口孔が形成された第2通気路が設けられた、可動継手部と、被接続部に接続可能に設けられた接続部、及び、打設対象物を挟持可能な挟持部を含み、挟持した打設対象物に対し、可動継手部を介した打撃力を伝達可能なチャック部と、を有する打設装置と、打設装置を、チャック部が地面の方向に向き、かつ、シリンダーの軸方向が地面に対して垂直または略鉛直な状態となるように吊り下げ可能な吊下機と、を備える。
ここで、ハンマ部は、前述のシリンダーにより、内部にピストンを格納することができ、導入直後の圧縮空気がシリンダー外に漏出しない構造になっている。シリンダーは、被嵌挿部を設けた先端部分に、可動継手部の接続軸を嵌挿することができる。ピストンは、シリンダー内を軸方向に往復動して接続軸の基端部分を打撃し、この結果、可動継手部に打撃力が伝達される。打撃後のピストンは、圧縮空気によってシリンダーの基端方向に復動する。ピストンの往復動は高速かつ連続的に行われる。
可動継手部は、前述の接続軸によりハンマ部と接続し、同接続軸がシリンダーの被嵌挿部内で進退動することができる。そして、接続軸は、その基端部分に対して、往動したピストンの先端部分が衝突することで打撃力が生じ、接続軸(を含む可動継手部の全体)がシリンダーと反対方向に進出し、その後、接続軸はシリンダー内に後退する。この接続軸の往復動は、前述したピストンの往復動に伴って、高速かつ連続的に行われる。そして、可動継手部は、前述の被接続部により、接続部を介してチャック部と接続することができ、可動継手部の往復動による打撃力がチャック部に伝達される。
更に、可動継手部は、前述の第1通気路が設けられていることにより、ピストンを往動させた後にシリンダー内に滞留する圧縮空気を、ピストンが復動時する際にシリンダー内と連通する第2開口孔から第1開口孔へ通過させ、シリンダー外に排気することができる。この排気によってシリンダー内の気圧が低下し、次回のピストンの往動に繋がると共に、新たな圧縮空気が流入可能となる(なお、この流入した新たな圧縮空気は、次回復動の原動力となる)。
更にまた、可動継手部は、前述の第2通気路が設けられていることにより、少なくともピストンが往動しかつ接続軸が進出した状態において、シリンダー内の被嵌挿部と第1通気路とが、第2通気路を介して連通する。この第2通気路と第1通気路とが連通した状態では、シリンダー内において被嵌挿部と接続軸の隙間に向かう圧縮空気が、第4開口孔を通じて第2通気路に流入し、第2通気路を通過して第4開口孔に至り、第3開口孔から第1通気路に流出する。なお、第2通気路の第4開口孔は、空隙との連通は、連続的(「常時」とも換言できる)であってもよいし、間欠的なものであってもよい。
つまり、被嵌挿部と接続軸の隙間に至った圧縮空気が、第1通気路に抜けることで同隙間内における過剰な気圧上昇が抑止され、ハンマ部と可動継手部の接続箇所で生じうる圧縮空気の漏出可能性が低減する。そして、この圧縮空気の漏出可能性の低減に伴い、シリンダー内に供給された潤滑油が圧縮空気と共に漏出し、周囲を汚染する可能性も低減することができる。
チャック部は、接続部により、可動継手部の被接続部に取り付けることができ、可動継手部を介してハンマ部からの打撃力の伝達を受けることができる。また、チャック部は、挟持部により、打設対象物を挟持することができる。つまり、チャック部は、打設対象物に挟持し、伝達された打撃力を以て、打設対象物を打設箇所(主に地面)へ打設することができる。
吊下機は、チャック部を地面の方向に向け、かつ、シリンダーの軸方向が地面に対して垂直または略鉛直な状態となるように吊り下げることができる。これによって、打設対象物に対して、地中へ斜めに埋入することに起因する作業障害が起きにくくすることができる。なお、作業障害とは、例えば、打設対象物を所望する位置や深さまで打設できないか、あるいは、土による固定力と打設機からの打撃力によって打設作業の途中で中間部が曲がる等が挙げられる。
このように、本発明の打設機は、前述した打設装置の各部が協働することにより、シリンダー内を往復動するピストンの打撃力を以て、可動継手部に接続されたチャック部で挟持した打設対象物を打設することができ、加えて、作業時における打設装置の周囲の汚染可能性を低減することができる。
そして、本発明の打設機は、従前の振動方式のバイブロハンマを使用した打設機よりも強い打撃力による打設が可能で、かつ、稼働時の共振に起因する吊下機の破損を招くことがない。更に、本発明の打設機は、打設装置のハンマ部がエアハンマ式であるため、圧縮空気の圧力の上げ下げによって打撃速度を容易に調節することができ、また、作動流体の生成及び排出の際における環境負荷が抑制されたものとなっている。
加えて、本発明の打設機は、可動継手部にのみ打撃力を発揮する構造であるので、使用する吊下機には、打設装置の稼働に起因する振動がほとんど伝達されず、吊下機での共振が起きにくい。つまり、本発明の打設機は、作業時において、共振に起因する吊下機の破損を抑制することができる。
上記の目的を達成するために本発明の打設方法は、先端に被嵌挿部が設けられたシリンダー、及び、シリンダー内に配置され、同シリンダーに供給される圧縮空気により同シリンダーの軸方向に往復動可能なピストンを含む、ハンマ部と、被嵌挿部内に進退動可能に嵌挿され、ピストンが往動し基端部分に衝突して生じる打撃力を以てシリンダーと反対方向に進出する接続軸、及び、接続軸の先部に設けられた被接続部を含み、シリンダー外と連通した第1開口孔、及び、ピストンの復動時にシリンダー内と連通する構造の第2開口孔が形成された第1通気路が設けられていると共に、第1通気路と連通した第3開口孔、及び、少なくともピストンの往動時かつ接続軸の進出時に、同接続軸と被嵌挿部の間の空隙と連通する構造の第4開口孔が形成された第2通気路が設けられた、可動継手部と、被接続部に接続可能に設けられた接続部、及び、打設対象物を挟持可能な挟持部を含み、挟持した打設対象物に対し、可動継手部を介した打撃力を伝達可能なチャック部と、を有する打設装置を使用し、チャック部および挟持した打設対象物を地面に向け、かつ、地面に対してシリンダーの軸方向が略鉛直方向になるようにセットするか、または、シリンダーの軸方向が地面に対して直角方向になるようにセットする、第1の工程と、シリンダー内に供給する圧縮空気でピストンが軸方向に往復動し、往復動で生じた打撃力を以て打設対象物を地面に打設する、第2の工程とを備える。
ここで、前述の第1の工程によれば、打設装置のハンマ部が、ピストンがシリンダー内を軸方向に往復動し、嵌挿された可動継手部に打撃力を伝達することができる。そして、可動継手部に取り付けられたチャック部が、挟持した打設対象物を打設する。すなわち、本発明の打設装置は、打設作業を行うための充分な打撃力を発生させ、この打撃力を以て打設対象物を打設することができる。
更に、前述の第1の工程によれば、打設装置において被嵌挿部と接続軸の隙間に至った圧縮空気が、第2通気路を通過し第1通気路に抜けることで、同隙間内における過剰な気圧上昇が抑止され、ハンマ部と可動継手部の接続箇所で生じうる圧縮空気の漏出可能性が低減する。そして、この圧縮空気の漏出可能性の低減に伴い、シリンダー内に供給された潤滑油が圧縮空気と共に漏出し、周囲を汚染する可能性も低減する。
更にまた、前述の第1の工程によれば、地面に対してシリンダーの軸方向が略鉛直方向になるようにセットするか、または、シリンダーの軸方向が地面に対して直角方向になるようにセットすることによって、シリンダーの軸方向が地面に対して垂直または略鉛直な状態となり、かつ、打設対象物も地面に対して垂直または略鉛直な状態にすることができる。これにより、打設対象物に対して、地中へ斜めに埋入することに起因する作業障害を起きにくくすることができる。
そして、前述の第2工程によれば、シリンダー内に供給する圧縮空気で打撃ピストンが軸方向に往復動することで打撃力が生じ、生じた打撃力をチャック部で挟持した打設対象物へ伝達することができる。そして、この打撃力を以て、打設対象物を地面に打設する。
このように、この打設方法は、前述した打設装置の各部が協働することにより、シリンダー内を往復動するピストンの打撃力を以て、可動継手部に接続されたチャック部で挟持した打設対象物を打設することができ、加えて、作業時における打設装置の周囲の汚染可能性を低減することができる。
加えて、この打設方法は、従前の振動方式のバイブロハンマを使用した打設機よりも強い打撃力による打設が可能で、かつ、稼働時の共振に起因する吊下機の破損を招くことがない。更に、この打設方法は、打設装置のハンマ部がエアハンマ式であるため、圧縮空気の圧力の上げ下げによって打撃速度を容易に調節することができ、また、作動流体の生成及び排出の際における環境負荷が抑制されたものとなっている。
本発明の打設装置、打設機および打設方法によれば、打設対象物の打設作業時における打設装置の周囲の汚染可能性を低減することができる。
図1~図12を参照して、本発明の実施の形態を更に詳細に説明する。なお、以下の説明は、〔第1実施形態〕、〔第2実施形態〕、〔変形例1〕の順序により行う。また、図面各図における符号は、煩雑さを軽減し理解を容易にする範囲内で付しており、同一符号が付される複数の同等物についてはその一部にのみ符号を付す場合がある。
〔第1実施形態〕
図1に示す打設機1は、打設装置2と、掘削装置2を吊り下げるためのクレーン車3(前述の「吊下機」に相当)と、打設装置2に接続されたタンク4を備える。各部について、以下で詳述する。
(打設装置2)
図1~図9を参照する。打設装置2は、ハンマ部21、ハンマ部21の基端に取り付けられたウエイト部22、ハンマ部21の先端に取り付けられた可動継手部23、可動継手部23に取り付けられたスペーサ部24、およびスペーサ部24に取り付けられたチャック部25を有する。
ハンマ部21は、機外にあるコンプレッサー(図示省略)から供給される圧縮空気を動力として駆動する、いわゆるエアハンマである。このハンマ部21は、圧縮空気の圧力を上げると打撃ピストン211(前述の「ピストン」に相当)の往復動の速度が速く(即ち、打撃速度が速く)なる一方、圧縮空気の圧力を下げると打撃ピストン211の往復動の速度が遅く(即ち、打撃速度が遅く)なる構造であり、打撃速度を容易に調節することができる。なお、本実施形態では、打設装置の構成は前述の通りであるが、コンプレッサーがハンマ部あるいは他の構造部と一体になった打設装置を除外するものではない。
ハンマ部21は、円筒形のシリンダー210の内部に、シリンダー210内を軸方向に往復動する打撃ピストン211(図3、図4参照)を有し、そのほかにも、いずれも符号を省略するが、チェックバルブ、エアディストリビュータ、バルブスプリング、メイクアップリング、O-リング、ピストンリタイナーリング、ビットリティーナリング等を有する構造であり、公知のダウンザホールハンマの駆動機構(例えば、特開昭61-92288号公報記載)とほぼ同様の構造である。
ハンマ部21の動作を簡単に説明する。シリンダー210に流入した圧縮空気は、まず、打撃ピストン211側面を通過してシリンダー210の先端側(図3、図4の下側)に回り、これにより、打撃ピストン211がシリンダー210の基端側(図3、図4の上側)へ移動する(本実施形態においては「打撃ピストン211が上昇する(または跳ね上がる)」とも換言できる)。
次に、この打撃ピストン211の移動に伴って、後述する可動継手部23の接続軸231基端(図3、図4における接続軸231上端)と打撃ピストン211先端(図3、図4における打撃ピストン211の下端)との間に隙間が生じ、この隙間から打撃ピストン211を押し上げた圧縮空気が打撃ピストン211内部に流入する。そして、打撃ピストン211に流入した圧縮空気は、接続軸231基端の開口部235から流入して接続軸231内を通過し、ハンマ部21側から可動継手部23側へ移動して、後述するスペーサ部24の空間部249内に排出される。
これにより、打撃ピストン211は、シリンダー210の先端側(図4の下側)へ移動(下降または落下)する。この動作の繰り返しにより打撃ピストン211が往復動し、打撃ピストン211が先端側へ移動(落下)した際の衝撃で可動継手部23へ打撃力が加わり、この打撃力によって可動継手部23が稼動する。
また、ハンマ部21は、基端側(図2、図3でハンマ部21の上側)に連結ジョイント212が設けられている。そして、ハンマ部21は、先端側(図2、図3でハンマ部21の下側)に可動継手部23が嵌装されている。
連結ジョイント212は、六角柱状であって、基部がハンマ部21に固着され、先部に開口部213が形成されている。連結ジョイント212は、その軸方向に沿った、通気可能な通気路214を有している。通気路214の一端は開口部213であり、他端はシリンダー210内部へ開口してシリンダー210内と連通している。なお、本実施の形態において、この連結ジョイント212は、ウエイト部22に接続されているが、これに限定するものではなく、例えば、ウエイト部22を外して、吊下軸体33に直接接続することもできる。
ウエイト部22は、ハンマ部21の基端(換言すると、ハンマ部21において可動継手部23とは反対側となる位置。図1、図2でハンマ部21の上段)に連設されている。ウエイト部22は、軸方向に沿って通気可能な通気路222が形成された所定長さの円柱状の鉄塊であるウエイト本体221と、ウエイト本体221の先端側に前述した連結ジョイント212を嵌挿可能な受け穴223と、ウエイト本体221の基端側に設けられた六角柱状の連結ジョイント224を有する。通気路222は、連結ジョイント224の基端から受け穴223まで通気可能に設けられている。
本実施形態において、ウエイト部22は前述の構造であるが、これに限定するものではなく、例えば、筒状のウエイト本体に、ウエイト本体の内径よりも小さな外径を有する通気管を通し、ウエイト本体の内壁と通気管の外壁の間に砂や液体等を適宜充填して重量を調節可能な構造にしたものであってもよい。また、本実施形態において、ウエイト部22は1つであるが、これに限定するものではなく、例えば、同じ構造のウエイト部を複数接いだ態様であってもよいし、短尺に設けたウエイト部を複数接いで、所望の重量に調節できるようにした態様であってもよい。
可動継手部23は、ハンマ部21の先端に軸方向へ所定のストロークで進退可能に取り付けられ、打撃ピストン211で打撃される構造である。より詳しくは、可動継手部23は、ハンマ部21の先端側から嵌挿して取り付けられ、打撃ピストン211からの打撃力を基端で受ける接続軸231と、接続軸231の先端に設けされたフランジ状の第1接続板232を有する。なお、接続軸231は、前述したハンマビットリティーナリングとOリングにより、ハンマ部21側から外れないように装着されている。
接続軸231は、シリンダー210内に嵌挿可能な外径に形成された筒状で、基端に開口部235が形成された自由端であると共に、先端が第1接続板232(前述した「被接続部」に相当)に連設されている。そして、接続軸231は、第1通気路234及び第2通気路237が設けられている(図4、図7及び図8参照)。
第1通気路234は、接続軸231の基端から第1接続板232の裏面に至る通気可能な流路であり、シリンダー210外と連通した第1開口孔235、及び、打撃ピストン211の復動時にシリンダー210内と連通する構造の第2開口孔236が形成されている(図4及び図7参照)。なお、第1通気路234内には、スペーサ部24方向に流通する圧縮空気の逆流を防止可能な逆止弁(図示省略)を設けてある。
第2通気路237は、第1通気路234と連通した第3開口孔238、及び、接続軸231とその被嵌挿部の間の空隙と連通する構造の第4開口孔239が形成されている(図4及び図7参照)。第2通気路237は、縦断面視で、接続軸231外面から第1通気路234に向かって下り傾斜するように形成されている(図4及び図7参照)。そして、第2通気路237は、横断面視で、接続軸231の周方向に等間隔に合計4本形成されている(図8参照)。
なお、本実施形態では、第2通気路237は合計4本が等間隔で形成されているが、これに限定するものではなく、例えば、2本乃至3本であってもよいし、5本以上であってもよく、また、等間隔でない態様を除外するものではない。また、本実施形態では、第2通気路237は、接続軸231外面から第1通気路234に向かって下り傾斜するように形成されているが、これに限定するものではなく、例えば、接続軸231外面から第1通気路234に向かって水平であってもよいし、上り傾斜を除外するものではない。
加えて、接続軸231は、外周面の軸線方向中間から第1接続板232側の領域に、接続軸231の軸方向に沿った複数本のスプライン軸(符号省略)が形成されている。このスプライン軸は、シリンダー210への嵌挿時において、周方向への回転を防止し、進退方向への動きをガイドすることができる。
第1接続板232は、角丸長方形であり、中央に設けられた接続軸231と角丸となった短辺側の外周縁との間の領域に、表面から裏面に貫通したボルト挿通穴233が複数(本実施形態では3つずつ、合計6つ)形成されている(図5、図8参照)。
スペーサ部24は、可動継手部23とチャック部25の間に取り付けられ、可動継手部23とチャック部25を所定間隔で接続する構造である。より詳しくは、スペーサ部24は、筒状の胴部241と、胴部241の基端側(図1~図7でスペーサ部24の上側)に設けられたフランジ状の角丸長方形の板である第2接続板242(前述の「可動継手部接続部」に相当)と、胴部241の先端側(図1~図7でスペーサ部24の下側)に設けられたフランジ状の矩形板である第3接続板243(前述の「チャック部接続部」に相当)と、胴部241の外周面から放射状に突出する複数の板状部材で、第2接続板242と第3接続板243の間に配設された複数の補強リブ244を有する。
胴部241は、側壁の1箇所(図4~7における左側)に通気穴245(前述した「排気穴」に相当)が形成されている。そして、通気穴245は、排気ホース41が接続されており、これにより、ハンマ部21から可動継手部23を介して胴部241内に流入した圧縮空気を、外部に排出することができる。
第2接続板242は、外形が可動継手部23の第1接続板232と略同じ大きさであり、略中央に胴部241内の空間に貫通(連通)する通気穴248が形成されている。通気穴248は、可動継手部23の第1接続板232と接続した際に、第1通気路234の第1開口孔235と連通する(図4及び図7参照)。
また、第2接続板242は、通気穴245から外周縁との間の領域で、かつ可動継手部23に設けられたボルト挿通穴233と対応する位置に、表面から裏面に貫通したボルト挿通穴246が形成されている。そして、可動継手部23とスペーサ部24は、ボルト挿通穴233とボルト挿通穴246の位置を合わせて連通させ、各穴にボルトBを嵌挿してナットNで締着させて接続している。
第3接続板243は、外形が後述するチャック部25の第4接続板252と略同じ大きさに形成されている。また、第3接続板243は、短辺側外周縁近傍の領域に、表面から裏面に貫通したボルト挿通穴247が形成されている。なお、第3接続板243の外形やボルト挿通穴246の配置を変更したものを使用することで、後述するチャック部25以外の異なる形状のチャック部を接続することができるようにすることもできる。
補強リブ244は、図2~図4に示すように、上端が第2接続板242の下面に固着され、下端が第3接続板243の上面に固着されている。補強リブ244は、この位置に設けられていることによって、ハンマ部21からの荷重またはチャック部25からの反力で第2接続板242又は第3接続板243、胴部241が圧壊しないように補強すると共に、ハンマ部21から受けた打撃力をロス無く伝達することができる。
本実施の形態では、可動継手部23とスペーサ部24を別部材としているが、これらは一体に設けた態様であってもよい。しかしながら、接続軸は摩損するために交換頻度が比較的高いのに対し、その他の部分はこれよりも交換頻度が低く、接続軸の交換タイミングで全ての部分を含む全体を交換することは合理的ではないため、可動継手部23とスペーサ部24とが分割可能な構造にすることが好ましい。
チャック部25は、スペーサ部24に取り付けられ、打設対象物Aを挟持可能で、挟持した打設対象物Aに打撃を加える構造である。より詳しくは、チャック部25は、本体部251と、本体部251の基端側(図2~図7でチャック部25の上側)に設けられたフランジ状の矩形板である第4接続板252(前述の「接続部」に相当)と、本体部251の先端側(図2~図6でチャック部25の下側)に設けられた把持爪部253(前述の「挟持部」に相当)を有する。
第4接続板252は、外形が可動継手部23の第2接続板243と略同じ大きさに形成されている。また、第4接続板252は、短辺側外周縁近傍の領域で、かつ、可動継手部23に設けられたボルト挿通穴247と対応する位置に、表面から裏面に貫通したボルト挿通穴254が形成されている。そして、スペーサ部24とチャック部25は、ボルト挿通穴247とボルト挿通穴254の位置を合わせて連通させ、各穴にボルトBを嵌挿してナットNで締着させて接続している。
把持爪部253は、油圧式であり、対抗する爪を有し、一方の爪(不動)に対して他方の爪(可動)が進退する構造(挟持部分が1つ)である。しかしながら、当該態様に限定するものではなく、例えば、機械式または空気式のもの等であってもよいし、鋼管の端面を、直径方向で対向する厚み部分を挟んで掴めるように、挟持部分が2つあるもの等であってもよい。また、チャック部25は、把持爪部253の作動方向(挟持方向)と、可動継手部23の第1接続板232の長手方向が一致するように取り付けられている。
本実施形態では、打設対象物AがH型鋼であるが、これに限定するものではなく、例えば、鋼板や矢板、杭等が挙げられ、チャック部25で直接又は(アタッチメント等を介して)間接的に挟持可能なものであれば特に限定されるものではない。
(クレーン車3)
図1を参照する。クレーン車3は、ブーム31と、ブーム31の先部に設けられた吊下軸体32と、自走可能な車体33を有する、クレーン車3は、打設装置2を、チャック部25を下向き(即ち、地面に向き)に、かつ、ハンマ部21のシリンダー210の軸方向が地面に対して垂直または略鉛直な状態となるように吊り下げ可能なものである。
吊下軸体32は、ブーム31から繰り出されるワイヤ(符号省略)によって吊り下げる高さが調節される。また、吊下軸体32には供給管34が接続されており、この供給管34を介して外部のコンプレッサー(圧縮空気の供給源)からハンマ部21へ圧縮空気が供給される。
なお、本実施形態では、クレーンとして移動式のクレーン車3を使用しているが、これに限定するものではなく、例えば、固定式のクレーンであってもよい。
(タンク4)
タンク4(前述した「回収部」に相当)は、打設装置2及びクレーン車3の近傍に配置され、排気ホース41(前述した「排出管」に相当)を介して、打設装置2の胴部241に接続されている。タンク4は、打設装置2において打撃ピストン211を駆動し、ハンマ部21側から胴部241に流入した圧縮空気と潤滑油が、排気ホース41を介して流入し、これらを受ける構造となっている(図7参照)。
(打設機1の作用、及び、打設機1を使用した打設方法)
打設機1の作用、及び、打設機1を使用した打設方法について説明する。
(1)打設機1を作業場所に移動する。吊下軸体32を介して、クレーン車3と打設装置2を接続する(図1参照)。そして、供給管34を介して、打設装置2とコンプレッサー(機外。図示省略)を接続する。加えて、打設装置2とコンプレッサーとの間の経路に、又は、別経路であって打設装置2に接続された経路に、潤滑油を供給するためのラインオイラーを接続する。
(2)チャック部25により打設対象物Aを挟持する(図5、図6参照)。次いで、クレーン車3で打設装置2を吊り上げ、打設対象物A及びチャック部25を打設予定箇所である地面Gに向け、かつ、地面Gに対してシリンダー210と打設対象物Aの軸方向が略鉛直方向になるようにセットするか、または、シリンダー210と打設対象物Aの軸方向が地面に対して直角方向になるようにセットする(図1参照)。
(3)コンプレッサー及びラインオイラーから圧縮空気及び潤滑油を供給する。これにより、打撃ピストン211がシリンダー210の軸方向に往復動(上下動)し、挟持した打設対象物Aに対して上方向からの打撃力が伝達される。このとき、打設装置2の重量による地面方向への押圧力も付加される。つまり、打設対象物Aは、自身の重量に打設装置2の重量が加わり、更に打設装置2による打撃力が加わることで、地面Gに対し、より安定的に打設される。
(4)ハンマ部21は、そのシリンダー210によって、内部に打撃ピストン211を格納すると共に、導入直後の圧縮空気がシリンダー210外に漏出しない。更に、ハンマ部21は、シリンダー210内に供給される圧縮空気を動力源として、打撃ピストン211がシリンダー210内を軸方向に往復動する。
(5)可動継手部23は、接続軸231がシリンダー210の被嵌挿部内で進退動する。そして、接続軸231は、その基端部分に対して、往動した打撃ピストン211の先端部分が衝突することで打撃力が生じ、接続軸231(を含む可動継手部23の全体)がシリンダー210と反対方向に進出し、その後、接続軸231はシリンダー210内に後退する。この接続軸231の往復動は、前述した打撃ピストン211の往復動に伴って、高速かつ連続的に行われる。
そして、可動継手部23は、その第1接続板232を介してスペーサ部24(の第2接続板242)と接続している。この結果、可動継手部23は、その往復動による打撃力がスペーサ部24に伝達される。
可動継手部23は、打撃ピストン211を往動させた後にシリンダー210内に滞留する圧縮空気を、打撃ピストン211が復動時する際にシリンダー210内と連通する第2開口孔236から第1開口孔235へ通過させ、シリンダー210外に排気することができる。この排気によってシリンダー210内の気圧が低下し、次回の打撃ピストン211の往動に繋がると共に、新たな圧縮空気が流入可能となる(図7参照)。
更に、シリンダー210内の被嵌挿部(換言すると、シリンダーの先部)と第1通気路234は、可動継手部23の第2通気路237を介し、常時連通している。この第2通気路237と第1通気路234との連通状態において、シリンダー210内における被嵌挿部と接続軸231の隙間に向かう圧縮空気が、第4開口孔239を通じて第2通気路237に流入し、第2通気路237を通過して第3開口孔238に至って第1通気路234に通過する(図7参照)。
つまり、被嵌挿部と接続軸231の隙間に至った圧縮空気は、第2通気路237を経て第1通気路234に抜けることで同隙間内における過剰な気圧上昇が抑止され、ハンマ部21と可動継手部の接続箇所(すなわち、シリンダー210の先端箇所)で生じうる圧縮空気の漏出可能性が低減する。そして、この圧縮空気の漏出可能性の低減に伴い、シリンダー210内に供給された潤滑油が圧縮空気と共にシリンダー210の先端から漏出し、周囲を汚染する可能性も低減する。
第1通気路234は、前述の構成であることにより、比較的加工が容易であり、圧縮空気の通りが円滑な構造となっている。第2通気路237は、前述の構成であることにより、比較的加工が容易であり、圧縮空気の通りが常時(すなわち、打撃ピストン211の往復時かつ接続軸の進退時のいずれの間でも)円滑な構造となっている。
なお、この第2通気路237は、その形成に高度な加工精度が不要である(換言すると、高度な部品精度が要求されない)ため、製造効率の向上、あるいは、製造コストの低減化を図ることができる。ところで、高度な部品精度による流路開閉機構の場合、摩耗劣化により稼働不能になるおそれがあるが、前述の第4開口孔239の構成によれば、製品が摩耗により多少劣化した場合でも稼働可能であることから、分解整備や頻繁な部品交換といったメンテナンスの頻度を減らすこともでき、作業負担の軽減化を図ることができる。
(6)スペーサ部24は、可動継手部23とチャック部25を所定間隔で接続する。詳しくは、スペーサ部24は、第2接続板242を以て可動継手部23に接続し、第3接続板243を以てチャック部に接続する。そして、スペーサ部24は、可動継手部23から伝達される衝撃力でチャック部25が傷まないように衝撃を緩和しつつも、可動継手部23からの衝撃力をチャック部25に伝達する。
また、胴部241は、気密である周壁によって、第1開口孔235から流入した排気(圧縮空気)が通気穴245以外の箇所から漏出しないので、圧縮空気と共に流入する潤滑油も周囲に拡散しないようになっている。更に、スペーサ部24は、通気穴245に接続された排気ホース41を介して、排気ホース41に接続されたタンク4で、排出された圧縮空気(排気)及び潤滑油を回収することができる。これにより、打設装置2は、その周囲の汚染可能性を更に低減している(図1、図7参照)。
(7)チャック部25は、第4接続板252を以てスペーサ部24と接続し、スペーサ部24を介してハンマ部21からの打撃力が伝達される。また、チャック部25は、把持爪部253によって打設対象物Aを挟持し、伝達された打撃力を以て、打設対象物Aを地面Gへ打設する(図1参照)。
(8)ウエイト部22は、ハンマ部21の全体重量を増加させることができ、これにより、荷重も加わって打設装置の打撃力を向上させ、打設対象物Aを地中深くまで打設することができる(図1参照)。なお、ウエイト部22をハンマ部21から外すことで、ハンマ部21の全体重量の軽量化を図ることができ、運搬や保管の際の利便性が向上する。
(9)このように、打設機1及びこれを使用した打設方法は、前述した構成の各部が協働することにより、シリンダー21内を往復動する打撃ピストン211の打撃力を以て、チャック部25で挟持した打設対象物Aを打設することができ、加えて、作業時における打設装置2の周囲の汚染可能性を低減することができる。また、この打設機1(打設装置2)および打設方法によれば、ディーゼルハンマ式や油圧ハンマ式の打設装置と比較しても、作業時における振動および騒音の発生を低減することができる。
そして、打設機1および打設方法によれば、従前の振動方式のバイブロハンマよりも強い打撃力による打設が可能で、かつ、稼働時の共振に起因する吊下機の破損を招くことがない。更に、打設装置2は、ハンマ部21の動力が圧縮空気である(いわゆるエアハンマ式である)ため、圧力の上げ下げによって打撃速度を容易に調節することができ、また、作動流体の生成及び排出の際における環境負荷が抑制されたものとなっている。
(10)図11に示すガイド装置5は、打設装置2を沿わせて使用するものであり、地面Gに立設するH型鋼の支柱部52と、地面Gから所定の高さに配設され、支柱部52と交差して支柱部52に固定されたH型鋼のガイド部51により構成されている。ガイド部51は、ウェブ部分が地面に対し略平行になり、フランジ部分が地面に対し略鉛直になるように取り付けられている。
打設装置2は、把持した打設対象物A(本実施形態ではH型鋼)のフランジ部分を、ガイド部51のフランジ部分の表面に沿わせて打設作業を行う(図9参照)。このとき、打設装置2は、その可動継手部23の第1接続板232の形状が角丸長方形であり、特許文献1に記載の打撃装置の可動継手部の接続板(円形)と相違するため、幅方向における出っ張りが無い。このため、図9及び図10に示すH型鋼を組んで成るガイド装置5を使用した施工方法において、沈み込む打設装置2が、横架したガイド部51に当たって止まることなく、打設対象物Aを地面G近くまで打設することができる(図10の右側の図を参照)。
〔第2実施形態〕
(打設装置2a)
図11(a)に示す打設装置2aは、本発明の実施の一形態(第2実施形態)である。打設装置2aは、打設装置2と同様、ハンマ部21、ウエイト部22、可動継手部23、スペーサ部24、及びチャック部25(以下、これらをまとめて説明する際には「ハンマ部21等」という)を有し、加えて、被覆部26を有する点で打設装置2と相違する。図11を参照して、打設装置2aについて以下詳述する。なお、前述した第1実施形態と同様の構造及びその作用効果については説明を省略する。
(被覆部26)
被覆部26は、ハンマ部21、ウエイト部22、可動継手部23及びスペーサ部24の高さ方向側面の全域と、チャック部25の高さ方向側面の上半分の領域となる外周部分を覆う部材である。被覆部26は、使用状態で高さ方向となる方向に長尺な外套部261と、外套部261に重複して貼設された内套部262と、外套部261の長手方向となる両側の側部方向に亘って設けられた連結部材263と、使用状態で高さ方向上縁近傍に設けられた上部絞り部264と、使用状態で高さ方向下縁近傍に設けられた下部絞り部265と、を有する。
外套部261は、耐候性、耐摩耗性、耐水性及び遮音性を有する合成樹脂製シートにより形成されている。外套部261は、その幅方向(本実施形態においては短尺方向)の長さが、ハンマ部21等への巻着状態において、高さ方向となる側縁部分が相互に僅かに重なる長さに形成されている。
内套部262は、遮音性を有する所定の厚さの連続発泡構造の合成樹脂材であり、ハンマ部21等への巻着状態において、内側となる面(換言すると、外套部261のハンマ部21等に向く面)に貼設され、外套部261よりもやや小さい大きさである。
連結部材263は、ハンマ部21等への巻着状態において、外套部261の高さ方向となる各側縁部分を結着可能な長さの紐体により構成されている。
なお、本実施形態において、連結部材263は、外套部261の長手方向となる両側の側縁部分にそれぞれ設けた紐体により構成されるが、これに限定するものではなく、例えば、一方の側縁部分に紐体を配設し、他方の側縁部分にハトメを配設した態様であってもよい。更に、連結部材は、ハンマ部21等に巻着した外套部261が展開しない構造であればよく、例えば、一方の側縁部分にオス面を配設すると共に、他方の側縁部分にメス面を配設した面ファスナー構造等の態様であってもよい。
上部絞り部264は、外套部261上縁部分に亘って形成された筒状部分に、同筒状部分の長手方向よりも長い絞り紐を通して成る構造である。下部絞り部265は、外套部261下縁部分に亘って形成された筒状部分に、同筒状部分の長手方向よりも長い絞り紐を通して成る構造である。
打設装置2aの作用効果について説明する。被覆部26は、図11(b)に示す展開状態から、内套部262を内側にして、ハンマ部21、ウエイト部22、可動継手部23及びスペーサ部24の高さ方向側面の全域と、チャック部25の高さ方向側面の上半分の領域となる外周部分を覆うように巻き付け、連結部材263を相互に結着して取り付ける(図11(a)(b)参照)。そして、上部絞り部264と下部絞り部265の絞り紐を絞って結ぶ。これにより、打設装置2aの稼働時に、被覆部26が上下方向にズレにくく、隙間からの騒音漏出も抑制できる。
被覆部26を備える打設装置2aは、その稼働時において、ハンマ部21と可動継手部23の接続箇所を含む領域が覆われているので、仮に同接続箇所から圧縮空気及びこれに含まれる潤滑油が漏出したとしても、周囲に飛散して汚染することがない。
そして、被覆部26は、主たる騒音発生源となるハンマ部21からチャック部25に至る領域を覆っていることにより、打設装置2aの稼働時に生じる騒音を低減することができる。また、被覆部26は、着脱可能な構造であるため、メンテナンス時には容易に取り外すことができてメンテナンス性が良く、また、打設装置2aの運搬時や保管時には、取り外すことで、引っ掛ける等して被覆部26が破れることを防止することができる。
〔変形例1〕
図12に示す打設装置2bは、図11に示した打設装置2aの他の態様(変形例1)であり、同図を参照して変形例1について説明する。なお、打設装置2bは、後述する相違点を除き、第1実施形態及び第2実施形態と同様であるため、その構造および作用効果の説明は省略する。
(打設装置2b)
打設装置2bは、打設装置2aと同様、ハンマ部21等及び被覆部27を有し、被覆部27が、ハンマ部21、ウエイト部22、可動継手部23、スペーサ部24及びチャック部25の高さ方向側面の全域と、チャック部25で挟持した打設対象物Aの一部領域となる外周部分を覆うものである点で、被覆部26の構成と相違する。
(被覆部27)
被覆部27は、第1被覆部分271と、第2被覆部分272と、延長被覆部273を有し、各々が分割された構造である。より詳しくは、第1被覆部分271はハンマ部21及びウエイト部22の外周を、第2被覆部分272は可動継手部23、スペーサ部24及びチャック部25上半分の外周を、延長被覆部273はチャック部25上半分及び打設対象物Aの上端近傍領域の外周を、それぞれ被覆する構造である。
第1被覆部分271は、使用状態で高さ方向となる方向の長さが、ハンマ部21及びウエイト部を含んだ長さと略同じ長さの外套部271aと、外套部271aに重複して貼設された内套部271bと、外套部271aの長手方向となる両側の側部方向に亘って設けられた連結部材271cと、使用状態で高さ方向上縁近傍に設けられた上部絞り部271dと、使用状態で高さ方向下縁近傍に設けられた下部絞り部271eと、を有する構造である。なお、第1被覆部分271の各部の構造は、被覆部26において対応する各部と同じであるため、説明を省略する。
第2被覆部分272は、使用状態で高さ方向となる方向の長さが、可動継手部23、スペーサ部24及びチャック部25上半分を含んだ長さと略同じ長さの外套部272aと、外套部272aに重複して貼設された内套部272bと、外套部272aの長手方向となる両側の側部方向に亘って設けられた連結部材272cと、使用状態で高さ方向上縁近傍に設けられた上部絞り部272dと、使用状態で高さ方向下縁近傍に設けられた下部絞り部272eと、を有する構造である。なお、第2被覆部分272の各部の構造は、被覆部26において対応する各部と同じであるため、説明を省略する。
延長被覆部273は、幅方向に4分割された袋仕立て暖簾形状であり、巻着状態において、チャック部25よりも先部方向(図12で下方向。把持爪部253と、把持爪部253で挟持する打設対象物A)の外周を被覆可能な構造である。
延長被覆部273は、4分割された各部が、使用状態で高さ方向となる方向の長さが、チャック部25下半分(把持爪部253)及び打設対象物Aの上部の一部領域を含んだ長さと略同じ長さの外套部273aと、外套部273aに重複して貼設された内套部273bと、外套部273aの高さ方向となる両側の側部方向に亘って設けられた連結部材273cと、使用状態で高さ方向上縁近傍に設けられた上部絞り部273dと、使用状態で高さ方向下縁近傍に設けられた下部絞り部273eと、を有する構造である。
そして、延長被覆部273は、4分割された各部が、上部絞り部272dにより幅方向に連結されている。なお、延長被覆部273は、上部絞り部273dを除く各部(外套部、内套部、連結部材、下部絞り部)の構造は、被覆部26において対応する各部と同じであるため、説明を省略する。
打設装置2bの作用効果について説明する。被覆部27は、第1被覆部分271、第2被覆部分272、延長被覆部273が各々取り付けられる。
より詳しくは、第1被覆部分271は、図12(b)に示す展開状態から、内套部271bを内側にして、ハンマ部21及びウエイト部22の高さ方向側面の全域となる外周部分を覆うように巻き付け、連結部材271cを相互に結着して取り付ける(図12(a)(b)参照)。そして、上部絞り部271dと下部絞り部271eの絞り紐を絞って結ぶ。これにより、打設装置2b稼働時に、第1被覆部分271が上下方向にズレにくく、隙間からの騒音漏出も抑制できる。
被覆部27を備える打設装置2bは、その稼働時において、第1被覆部分271がハンマ部21と可動継手部23の接続箇所を含む領域を覆っているので、仮に同接続箇所から圧縮空気及びこれに含まれる潤滑油が漏出したとしても、周囲に飛散して汚染することがない。
第2被覆部分272は、図12(b)に示す展開状態から、内套部272b内側にして、可動継手部23及びスペーサ部24の高さ方向側面の全域と、チャック部25の高さ方向側面の上半分の領域となる外周部分を覆うように巻き付け、連結部材272cを相互に結着して取り付ける(図12(a)(b)参照)。そして、上部絞り部272dと下部絞り部272eの絞り紐を絞って結ぶ。これにより、打設装置2b稼働時に、第2被覆部分272が上下方向にズレにくく、隙間からの騒音漏出も抑制できる。
延長被覆部273は、図12(b)に示す展開状態から、各内套部262を内側にして、チャック部25下半分(把持爪部253)及び打設対象物Aの上部の一部を含んだ領域となる外周部分を覆うように巻き付け、連結部材273cを相互に結着して取り付ける(図12(a)(b)参照)。そして、上部絞り部273dの絞り紐を絞って結ぶ。
これにより、打設装置2bの稼働時に、延長被覆部273が上下方向にズレにくく、チャック部25と打設対象物Aの挟持部分や、挟持した打設対象物Aも一部被覆することができる。つまり、延長被覆部273は、打設装置2bの稼働で生じる打設装置の側部方向からの騒音を低減させ、かつ、打設装置2bの先部方向から漏出する騒音をも低減することができる。
また、打設作業が進み、打設対象物Aが地中に埋設されて短くなった際には、延長被覆部273全体を第2被覆部分272と重なるように捲り上げ、隣接する下部絞り部273eを相互に結着することで、被覆部273が巻き込まれて破損したり、作業の邪魔になったりしないようにすることができる。(図12(c)参照)。
つまり、被覆部27は、その各構成部分(第1被覆部分271、第2被覆部分272、延長被覆部273)が、主たる騒音発生源となるハンマ部21からチャック部25先部に至る領域を覆っていることにより、打設装置2bの稼働時に生じる騒音を低減することができる。
加えて、被覆部27の各構成部分は、着脱可能な構造であるため、メンテナンス時には容易に取り外すことができてメンテナンス性が良く、また、打設装置2bの運搬時や保管時には、取り外すことで、引っ掛ける等して被覆部27が破れることを防止することができる。
更に、被覆部27は、その各構成部分が分割構造であるので、傷んだ部分のみを交換することができる。これにより、被覆部27の中の傷んでいない部分が無駄にならず、調達コストの低減化も図ることができる。
なお、下部絞り部273eについては、隣接する絞り紐を結んで一体化して絞った状態(一体化状態)にしてもよいし、隣接する絞り紐を結ばずに延長被覆部273の先部(図12(a)において下方)を自由端にした状態(自由端状態)にしておいてもよい。
一体化状態にした場合は、図12(a)のような作業状態における遮音性がより高まり、打設作業が進んで延長被覆部273先部が接地しそうになれば、絞り紐を外し、図12(c)に示すように捲り上げてもよい。
一方、自由端状態にした場合は、一体化状態のように隣接する絞り紐を結ぶ手間が省け、一体化状態程ではないにせよ、チャック部25と打設対象物Aの挟持部分が被覆されているため、ある程度の遮音性を発揮する。打設作業が進んで延長被覆部273先部が接地しそうになれば、図12(c)に示すように捲り上げてもよいし、多少巻き込みを起こす危険性はあるが、自然に捲れるよう任せてもよい。
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