JP7209803B2 - Pcグラウト充填状態の非破壊診断方法 - Google Patents
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放射線透過法(X線法)は、X線を使用してコンクリート内部の詳細を検査する方法であり、物質の密度によりX線の透過度が変化する性質を利用して、シース内の空洞を非破壊的に検出する。
衝撃弾性波法(インパクトエコー法)は、反射波(インパクトエコー)の周波数特性に着目して、PCグラウトの未充填位置を特定する手法であり、コンクリート表面を鋼球で打撃することによりコンクリート内部へ弾性波を伝播させ、打撃面側に設置したセンサで対象物からの反射波を受信し、その周波数特性から部材厚さや内部の欠陥の有無やその深さを非破壊的に推定する。
衝撃弾性波法(打音振動法)は、衝撃入力により算出した弾性波の伝搬速度に着目して、シース内部の平均的なPCグラウト充填状況を把握する手法であり、PC鋼材端部から衝撃を与えた際に生じる弾性波を、もう一方の端部に設置したセンサで検出して、PC鋼材における伝播速度からシース内部のPCグラウト充填状況を非破壊的に把握する。
広帯域超音波法は、シース直上のコンクリート面に配置した発信探触子から超音波を入力し、シースからの反射波を受信、分析することでPCグラウトの充填性を非破壊的に推測する技術である。
PC構造物に埋設されたシース内においてPC鋼材の周囲に充填されたPCグラウトの充填状態を非破壊的に診断するPCグラウト充填状態の非破壊診断方法であって、
前記PC構造物のコンクリート表面への加振により生じた衝撃弾性波の振動波形を取得する振動波形取得ステップと、
取得された前記振動波形に基づいて、振動持続時間、周期および固有振動周波数の内の2つ以上を評価の指標として取得する評価指標取得ステップと、
取得された評価の指標に基づいて、PCグラウトの充填状態を診断する充填状態診断ステップとを備えていることを特徴とするPCグラウト充填状態の非破壊診断方法である。
前記充填状態診断ステップが、前記評価指標取得ステップにおいて取得された評価の指標の2つ以上を用いてPCグラウトの充填状態を診断する充填状態診断ステップであることを特徴とする請求項1に記載のPCグラウト充填状態の非破壊診断方法である。
前記振動持続時間を評価の指標とした充填状態診断ステップが、前記振動持続時間が長いほど、PCグラウトの充填状態が低いと診断することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のPCグラウト充填状態の非破壊診断方法である。
前記周期を評価の指標とした充填状態診断ステップが、前記周期が長いほど、PCグラウトの充填状態が低いと診断することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のPCグラウト充填状態の非破壊診断方法である。
前記固有振動周波数を評価の指標とした充填状態診断ステップが、前記固有振動周波数が低いほど、PCグラウトの充填状態が低いと診断することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のPCグラウト充填状態の非破壊診断方法である。
前記振動持続時間として、前記PC構造物のコンクリート表面への加振開始から、前記振動波形の振幅が最大振幅から所定の振幅以下に収まるまでの経過時間を用いることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載のPCグラウト充填状態の非破壊診断方法である。
前記経過時間が、前記振動波形の振幅が最大振幅の±10%以下に収まるまでの経過時間であることを特徴とする請求項6に記載のPCグラウト充填状態の非破壊診断方法である。
前記周期として、前記PC構造物のコンクリート表面への加振直後の振動波形に対して自己相関解析を施して得られた第一周期を用いることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載のPCグラウト充填状態の非破壊診断方法である。
前記固有振動周波数として、取得された前記振動波形を周波数解析して得られた周波数分布より抽出された固有振動ピークの周波数を用いることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載のPCグラウト充填状態の非破壊診断方法である。
前記PC構造物のコンクリート表面への加振を、テストハンマを使用して行うことを特徴とする請求項1ないし請求項9のいずれか1項に記載のPCグラウト充填状態の非破壊診断方法である。
前記振動波形の取得を、AEセンサを用いて行うことを特徴とする請求項1ないし請求項10のいずれか1項に記載のPCグラウト充填状態の非破壊診断方法である。
PC構造物に埋設されたシース内においてPC鋼材の周囲に充填されたPCグラウトの充填状態を非破壊的に面全体に亘って診断するPCグラウト充填状態の非破壊診断方法であって、
評価対象のPC構造物の特定の面上に、所定の間隔で複数の測定点を設定する測定点設定ステップと、
各測定点への加振により生じた衝撃弾性波の振動波形を、各測定点毎に取得する振動波形取得ステップと、
取得された各振動波形に基づいて、各測定点毎に、振動持続時間、周期および固有振動周波数の内の2つ以上を評価の指標として取得する評価指標取得ステップと、
取得された評価の指標を、前記評価対象のPC構造物の特定の面上にプロットする評価指標プロットステップと、
プロットされた評価の指標の相対的な変化に基づいて、前記評価対象のPC構造物の特定の面上におけるPCグラウトの充填状態を診断する充填状態診断ステップとを備えていることを特徴とするPCグラウト充填状態の非破壊診断方法である。
前記充填状態診断ステップが、コンター図を作成してPCグラウトの充填状態を診断するステップであることを特徴とする請求項12に記載のPCグラウト充填状態の非破壊診断方法である。
前記充填状態診断ステップが、取得された評価の指標を前記シースの各々について平均化して、各シース毎の評価の指標として、PCグラウトの充填状態を診断するステップであることを特徴とする請求項12に記載のPCグラウト充填状態の非破壊診断方法である。
最初に、本発明の背景となる技術について説明する。
図1は、PC構造物の衝撃弾性波の振動持続時間とPCグラウトの充填状態との関係を説明する図であり、(a)はPCグラウトの充填率の程度により振動持続時間がどのように変化するかを示す図であり、(b)は振動持続時間に差異が生じる理由を説明する図である。なお、図1(b)において、1はPC構造物、2はコンクリート、3はシース、4はPC鋼材、5はPCグラウトである。そして、ここでは、理解を容易にするために、PCグラウトの低い充填率としては0%を、高い充填率としては100%を例にしている。
図2は、PC構造物の衝撃弾性波の周期とPCグラウトの充填状態との関係を説明する図であり、(a)はPCグラウトの充填率の程度により周期がどのように変化するかを示す図であり、(b)は周期に差異が生じる理由を説明する図である。
図3は、PC構造物の衝撃弾性波の固有振動周波数とPCグラウトの充填状態との関係を説明する図であり、(a)はPCグラウトの充填率の程度により固有振動周波数がどのように変化するかを示す図であり、(b)は固有振動周波数に差異が生じる理由を説明する図である。
次に、上記知見に基づいて行う本実施の形態に係るPCグラウト充填状態の診断方法について具体的に説明する。
はじめに、PC構造物のコンクリート表面への打撃(加振)により発生した振動波形を取得する。
次に、上記で取得された振動波形に基づいて、振動持続時間、周期および固有振動周波数の内の少なくとも1つを評価の指標として取得する。
振動持続時間は、上記したように、加振の開始から振動波形が一定の振幅以下に収まるまでの経過時間を求めて振動持続時間とする。
周期は、上記したように、振動波形における1サイクルの振動に要する時間を求めて周期とする。
固有振動周波数は、取得された振動波形を周波数解析することにより得ることができる。
次に、上記で取得された各指標、振動持続時間、周期および固有振動周波数を用いて、PCグラウトの充填状態を診断する。
診断に先だって、最初に、幅2000×奥行1500×高さ300mmの大きさのコンクリート製土台を作製した後、この土台の奥行中央部に、厚み400×高さ1800mmの大きさのPC構造物を作製し、コンクリート供試体とした。なお、PC構造物の厚み方向中央部には、PCグラウトの充填不足を模擬したシースを挿通させた。
本実施例では、振動持続時間を指標として、PCグラウトの充填状態の診断が可能であることを確認した。
PC構造物12の面A(図8)のB1、B2、B3に対応する箇所にセンサを設置し、その近傍を5回ずつ打撃して、振動波形を取得した。取得された振動波形を図9に示す。なお、図9において、横軸は振動開始からの経過時間(10-3s)、縦軸は振幅(Amplitude)である。図9より、PCグラウトの充填率が高い状態から低い状態になるにつれて、破線で囲まれているように、振動波形が長く続いている(振動持続時間が長い)ことが分かる。
次に、取得された各振動波形に基づいて、各打撃における振動持続時間を求め、PCグラウトの各充填率における振動持続時間の平均値を、PCグラウトの充填率に対してプロットし、振動持続時間とPCグラウト充填率との関係を示す図10を得た。なお、図10においては、振動持続時間のバラツキを誤差棒(MAXとMINを結ぶ直線)として併せて記載している。
図10より、振動持続時間とPCグラウト充填率との間にはPCグラウト充填率が高くなるに従い振動持続時間が短くなるという相関性があることが分かり、振動持続時間を指標として用いることにより、PCグラウトの充填率を定量的に診断できることが確認できた。
本実施例では、振動波形における周期を指標として、PCグラウトの充填状態の診断が可能であることを確認した。なお、ここでは、PC構造物について面的な診断を行った。
図7および図8に示した供試体と同じPCコンクリート供試体11を用い、図11に○で示した箇所を測定点として、複数の振動波形を取得した。具体的な測定点は、各シースに対応する位置およびその中間位置では、間隔が200mmとなるように11個の測定点を設けると共に、シースA1の上方およびシースB2の下方では100mmとなるように21個の測定点を設けた。
次に、各測定点において取得された各振動波形に基づいて、周期を求めた。次いで、得られた各周期(ms)を、水平位置を横軸、高さ位置を縦軸とするグラフ上の対応する位置にプロットし、コンター図を作成した。得られたコンター図を図12に示す。
図12より、PC鋼棒が挿通されたシースA1、A2においては、PCグラウト充填率が100%から0%に減少すると、周期が長くなっている箇所が多く現れることが分かる。そして、PC撚り線が挿通されたシースB1、B2、B3においても、PCグラウト充填率が100%から50%、0%と減少するにつれて、周期が長くなっている箇所が多く現れることが分かる。
本実施例では、振動波形を周波数分析して得られる固有振動周波数を指標として、PCグラウトの充填状態の診断が可能であることを確認した。なお、ここでは、実施例2と同様に、PC構造物について面的な診断を行った。
本実施例において、振動波形としては、実施例2において取得された振動波形を用いた。
次に、各測定点において取得された各振動波形を周波数解析して、評価ピーク周波数を求めた。次いで、実施例2と同じように、得られた各評価ピーク周波数(Hz)を、水平位置を横軸、高さ位置を縦軸とするグラフ上の対応する位置にプロットし、コンター図を作成した。得られたコンター図を図13に示す。
図13より、PC鋼棒が挿通されたシースA1、A2においては、PCグラウト充填率が100%から0%に減少すると、評価ピーク周波数が低い箇所が多く現れることが分かる。そして、PC撚り線が挿通されたシースB1、B2、B3においても、PCグラウト充填率が100%から50%、0%と減少するにつれて、評価ピーク周波数が低い箇所が多く現れることが分かる。
2 コンクリート
3、A1、A2、B1、B2、B3 シース
4 PC鋼材
5 PCグラウト
11 PCコンクリート供試体
13 土台
21 空洞
Claims (14)
- PC構造物に埋設されたシース内においてPC鋼材の周囲に充填されたPCグラウトの充填状態を非破壊的に診断するPCグラウト充填状態の非破壊診断方法であって、
前記PC構造物のコンクリート表面への加振により生じた衝撃弾性波の振動波形を取得する振動波形取得ステップと、
取得された前記振動波形に基づいて、振動持続時間、周期および固有振動周波数の内の2つ以上を評価の指標として取得する評価指標取得ステップと、
取得された評価の指標に基づいて、PCグラウトの充填状態を診断する充填状態診断ステップとを備えていることを特徴とするPCグラウト充填状態の非破壊診断方法。 - 前記充填状態診断ステップが、前記評価指標取得ステップにおいて取得された評価の指標の2つ以上を用いてPCグラウトの充填状態を診断する充填状態診断ステップであることを特徴とする請求項1に記載のPCグラウト充填状態の非破壊診断方法。
- 前記振動持続時間を評価の指標とした充填状態診断ステップが、前記振動持続時間が長いほど、PCグラウトの充填状態が低いと診断することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のPCグラウト充填状態の非破壊診断方法。
- 前記周期を評価の指標とした充填状態診断ステップが、前記周期が長いほど、PCグラウトの充填状態が低いと診断することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のPCグラウト充填状態の非破壊診断方法。
- 前記固有振動周波数を評価の指標とした充填状態診断ステップが、前記固有振動周波数が低いほど、PCグラウトの充填状態が低いと診断することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のPCグラウト充填状態の非破壊診断方法。
- 前記振動持続時間として、前記PC構造物のコンクリート表面への加振開始から、前記振動波形の振幅が最大振幅から所定の振幅以下に収まるまでの経過時間を用いることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載のPCグラウト充填状態の非破壊診断方法。
- 前記経過時間が、前記振動波形の振幅が最大振幅の±10%以下に収まるまでの経過時間であることを特徴とする請求項6に記載のPCグラウト充填状態の非破壊診断方法。
- 前記周期として、前記PC構造物のコンクリート表面への加振直後の振動波形に対して自己相関解析を施して得られた第一周期を用いることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載のPCグラウト充填状態の非破壊診断方法。
- 前記固有振動周波数として、取得された前記振動波形を周波数解析して得られた周波数分布より抽出された固有振動ピークの周波数を用いることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載のPCグラウト充填状態の非破壊診断方法。
- 前記PC構造物のコンクリート表面への加振を、テストハンマを使用して行うことを特徴とする請求項1ないし請求項9のいずれか1項に記載のPCグラウト充填状態の非破壊診断方法。
- 前記振動波形の取得を、AEセンサを用いて行うことを特徴とする請求項1ないし請求項10のいずれか1項に記載のPCグラウト充填状態の非破壊診断方法。
- PC構造物に埋設されたシース内においてPC鋼材の周囲に充填されたPCグラウトの充填状態を非破壊的に面全体に亘って診断するPCグラウト充填状態の非破壊診断方法であって、
評価対象のPC構造物の特定の面上に、所定の間隔で複数の測定点を設定する測定点設定ステップと、
各測定点への加振により生じた衝撃弾性波の振動波形を、各測定点毎に取得する振動波形取得ステップと、
取得された各振動波形に基づいて、各測定点毎に、振動持続時間、周期および固有振動周波数の内の2つ以上を評価の指標として取得する評価指標取得ステップと、
取得された評価の指標を、前記評価対象のPC構造物の特定の面上にプロットする評価指標プロットステップと、
プロットされた評価の指標の相対的な変化に基づいて、前記評価対象のPC構造物の特定の面上におけるPCグラウトの充填状態を診断する充填状態診断ステップとを備えていることを特徴とするPCグラウト充填状態の非破壊診断方法。
- 前記充填状態診断ステップが、コンター図を作成してPCグラウトの充填状態を診断するステップであることを特徴とする請求項12に記載のPCグラウト充填状態の非破壊診断方法。
- 前記充填状態診断ステップが、取得された評価の指標を前記シースの各々について平均化して、各シース毎の評価の指標として、PCグラウトの充填状態を診断するステップであることを特徴とする請求項12に記載のPCグラウト充填状態の非破壊診断方法。
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