以下、本発明に係る画像形成装置を図面に則して更に詳しく説明する。
[実施例1]
1.画像形成装置の全体的な構成及び動作
図1は、本実施例の画像形成装置100の概略断面図である。本実施例の画像形成装置100は、電子写真方式を用いてフルカラー画像を形成することが可能な、中間転写方式を採用したタンデム型の複合機(複写機、プリンタ、ファクシミリ装置の機能を有する。)である。
画像形成装置100は、複数の画像形成部として、それぞれイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の画像を形成する第1、第2、第3、第4の画像形成ユニットUY、UM、UC、UKを有する。各画像形成ユニットUY、UM、UC、UKにおける同一又は対応する機能あるいは構成を有する要素については、いずれかの色用の要素であることを示す符号の末尾のY、M、C、Kを省略して総括的に説明することがある。画像形成ユニットUは、後述する感光ドラム101、帯電ローラ102、露光装置103、現像装置104、一次転写ローラ105、ドラムクリーニング装置106などを有して構成される。
画像形成ユニットUは、第1の像担持体としての、回転可能なドラム型(円筒形)の感光体(電子写真感光体)である感光ドラム101を有する。感光ドラム101は、図中矢印R1方向に所定の周速度で回転駆動される。回転する感光ドラム101の表面は、帯電手段としてのローラ型の帯電部材である帯電ローラ102によって、所定の極性(本実施例では負極性)の所定の電位に一様に帯電処理される。帯電処理された感光ドラム101の表面は、露光手段としての露光装置(レーザースキャナ)103によって走査露光され、感光ドラム101上に静電像(静電潜像)が形成される。感光ドラム101上に形成された静電像は、現像手段としての現像装置104によって現像剤としてのトナーが供給されて現像(可視化)され、感光ドラム101上にトナー像(現像剤像)が形成される。本実施例では、一様に帯電処理された後に露光されることで電位の絶対値が低下した感光ドラム101上の露光部(イメージ部)に、感光ドラム101の帯電極性と同極性(本実施例では負極性)に帯電したトナーが付着する。
4個の感光ドラム101に対向するように、第2の像担持体としての、無端状のベルトで構成された回転可能な中間転写体である中間転写ベルト1が配置されている。中間転写ベルト1は、複数の張架ローラとしての駆動ローラ11、テンションローラ12、アイドラローラ13、及び二次転写内ローラ14に架け渡されて張架されている。中間転写ベルト1は、駆動ローラ11により駆動力が伝達されて、図中矢印R2方向に所定の周速度で回転(循環移動)する。中間転写ベルト1の内周面側には、各感光ドラム101に対応して、一次転写手段としてのローラ型の一次転写部材である一次転写ローラ105が配置されている。一次転写ローラ105は、中間転写ベルト1を介して感光ドラム101に向けて付勢され、感光ドラム101と中間転写ベルト1とが接触する一次転写部(一次転写ニップ)T1を形成する。上述のように感光ドラム101上に形成されたトナー像は、一次転写部T1において、一次転写ローラ105の作用によって、回転している中間転写ベルト1上に一次転写される。一次転写工程時に、一次転写ローラ105には、一次転写電源(高圧電源回路)(図示せず)により、トナーの正規の帯電極性(現像時のトナーの帯電極性)とは逆極性(本実施例では正極性)の直流電圧である一次転写バイアス(一次転写電圧)が印加される。例えば、フルカラー画像の形成時には、各感光ドラム101上に形成されたY、M、C、Kの各色のトナー像が、各一次転写部T1において、中間転写ベルト1上に重ね合わされるようにして順次一次転写される。
中間転写ベルト1の外周面側において、二次転写内ローラ14に対向する位置には、二次転写手段としてのローラ型の二次転写部材である二次転写外ローラ2が配置されている。二次転写外ローラ2は、中間転写ベルト1を介して二次転写内ローラ14に向けて付勢され、中間転写ベルト1と二次転写外ローラ2とが接触する二次転写部(二次転写ニップ)T2を形成する。上述のように中間転写ベルト1上に形成されたトナー像は、二次転写部T2において、二次転写外ローラ2の作用によって、中間転写ベルト1と二次転写外ローラ2とに挟持されて搬送される紙などの記録材(記録媒体、シート)Pに二次転写される。本実施例では、二次転写工程時に、二次転写外ローラ2には、二次転写電源(高圧電源回路)20により、トナーの正規の帯電極性とは逆極性(本実施例では正極性)の直流電圧である二次転写バイアス(二次転写電圧)が印加される。
記録材Pは、記録材収容部(図示せず)から、ピックアップローラ(図示せず)などによって1枚ずつ送り出され、搬送ローラ対(図示せず)などにより搬送される。その後、この記録材Pは、搬送部材としてのレジストレーションローラ対5によって、中間転写ベルト1上のトナー像とタイミングが合わされて二次転写部T2へと搬送される。記録材Pの搬送方向において、レジストレーションローラ対5よりも下流かつ二次転写部T2よりも上流には、二次転写部T2に記録材Pを案内する搬送ガイド6が設けられている。搬送ガイド6は、記録材Pのオモテ面(搬送ガイド6を通過した直後にトナー像が転写される面)に接触可能な第1ガイド部材61と、記録材Pのウラ面(オモテ面とは反対側の面)に接触可能な第2ガイド部材62と、を有して構成される。第1ガイド部材61と第2ガイド部材62とは対向して配置され、これら両部材の間を記録材Pが通過する。第1ガイド部材61は、記録材Pの中間転写ベルト1に近づく方向への移動を規制する。第2ガイド部材62は、記録材Pの中間転写ベルト1から遠ざかる方向への移動を規制する。
トナー像が転写された記録材Pは、定着手段としての定着装置108へと搬送される。定着装置108は、未定着のトナー像を担持した記録材Pを加熱及び加圧することで、トナー像を記録材Pに定着(溶融、固着)させる。トナー像が定着された記録材Pは、排出ローラ対(図示せず)などにより画像形成装置100の装置本体の外部へと排出(出力)される。
また、一次転写工程時に中間転写ベルト1上に転写されずに感光ドラム101上に残留したトナー(一次転写残トナー)は、感光体クリーニング手段としてのドラムクリーニング装置106により感光ドラム101上から除去されて回収される。また、中間転写ベルト1の外周面側において、駆動ローラ11と対向する位置には、中間転写体クリーニング手段としてのベルトクリーニング装置107が配置されている。二次転写工程時に記録材Pに転写されずに中間転写ベルト1上に残留したトナー(二次転写残トナー)や紙粉は、ベルトクリーニング装置107により中間転写ベルト1上から除去されて回収される。
ここで、中間転写ベルト1としては、ポリイミド、ポリアミドなどの樹脂若しくはそのアロイ、又は各種ゴムなどに、カーボンブラックなどの帯電防止剤を適当量含有させたものが用いられる。本実施例では、中間転写ベルト1は、その表面抵抗率が1×109~5×1013Ω/□となるように形成されている。また、本実施例では、中間転写ベルト1は、その厚みが例えば0.04~0.5mm程度のフィルム状の無端ベルトとなるように形成されている。本実施例では、中間転写ベルト1は、上述のように、駆動ローラ11、テンションローラ12、アイドラローラ13、及び二次転写内ローラ14に張架されている。駆動ローラ11は、定速性に優れたモーターにより駆動されて中間転写ベルト1を循環移動(回転)させる。テンションローラ12は、中間転写ベルト1に対して一定の張力を与える。テンションローラ12は、その回転軸線方向の両端部において、付勢手段としての弾性部材であるバネ(図示せず)によって、中間転写ベルト1の内周面側から外周面側に向けて付勢されている。アイドラローラ13は、二次転写部T2の上流側近傍の中間転写ベルト1の面を形成する。二次転写内ローラ14は、二次転写外ローラ2の対向部材(対向電極)として機能する。なお、画像形成装置100は、テンションローラ12に対する中間転写ベルト1のテンションが3~12kgf程度になるように構成されている。
なお、中間転写ベルト1としては、単層又は多層構造の樹脂系材料で構成されたものを使用することができる。また、中間転写ベルト1としては、厚みが40μm以上、ヤング率が1.0GPa以上、表面抵抗率が1.0×109~5.0×1013Ω/□であるものを好ましく用いることができる。
また、本実施例では、一次転写ローラ105は、SUMあるいはSUSなどの金属材料で形成された金属ローラで構成されている。なお、本実施例では、一次転写ローラ105は、スラスト方向にストレートの形状(回転軸線方向の略全域で外径が略同一)である。また、本実施例では、一次転写ローラ105の外径は6~10mm程度とされている。
また、本実施例では、二次転写内ローラ14は、金属製の芯金(基材)の外周に、EPDMゴムで形成された弾性層(ゴム層)が設けられて構成されている。本実施例では、二次転写内ローラ14は、その外径が20mm、弾性層の厚さが0.5mmとなるように形成されている。また、二次転写内ローラ14の弾性層の硬度は、例えば70°(アスカーC)程度に設定される。
また、本実施例では、二次転写外ローラ2は、金属製の芯金(基材)の外周に、金属錯体、カーボンなどの導電剤を含有したNBRゴムやEPDMゴムなどで形成された弾性層(ゴム層)が設けられて構成されている。本実施例では、二次転写外ローラ2は、芯金の外径が20mm、弾性層の厚さが1mmとされ、二次転写外ローラ2の外径が22mmになるように形成されている。
なお、本実施例の画像形成装置100は、記録材Pの種類にかかわらず、中間転写ベルト1を周速度が400mm/secとなるように回転駆動して画像形成を行う。
2.二次転写部の構成
図2は、本実施例における二次転写部T2の構成を説明するための模式的な断面図(二次転写内ローラ14の回転軸線方向と略直交する断面)である。ここでは、中間転写ベルト1の張架ローラ11~14、二次転写外ローラ2、後述するバックアップローラ3の配置などに関し上流、下流とは、それぞれ特に言及しない場合は中間転写ベルト1の回転方向における上流、下流を意味する。また、記録材Pに関し先端、後端とは、それぞれ特に言及しない場合は記録材Pの搬送方向における先端、後端を意味する。なお、本実施例では、中間転写ベルト1の張架ローラ11~14、二次転写外ローラ2、後述するバックアップローラ3のそれぞれの回転軸線方向は略平行である。
本実施例では、二次転写外ローラ2の芯金には、二次転写電源20が接続されている。本実施例では、二次転写電源20は、定電圧/定電流の切換が可能な高圧電源である。また、本実施例では、二次転写内ローラ14の芯金は電気的に接地(接地電位(グランド)に接続)されている。本実施例では、二次転写内ローラ14と二次転写外ローラ2とにより、二次転写部T2においてトナー像を中間転写ベルト1から記録材Pに転写させるための電界が形成される。本実施例では、二次転写外ローラ2にトナーの正規の帯電極性とは逆極性の二次転写バイアスが印加され、二次転写内ローラ14が電気的に接地されている。別法として、二次転写内ローラ14にトナーの正規の帯電極性と同極性の二次転写バイアスを印加し、二次転写外ローラ2を電気的に接地してもよい。
また、二次転写内ローラ14の上流側近傍に、中間転写ベルト1の内周面に接触して中間転写ベルト1を支持する支持部材としての、ローラ型の部材で構成されたバックアップローラ3が配置されている。より詳細には、バックアップローラ3は、二次転写内ローラ14よりも上流、かつ、アイドラローラ13よりも下流で中間転写ベルト1の内周面に接触するように配置されている。バックアップローラ3は、二次転写内ローラ14よりも上流において二次転写内ローラ14と隣り合って配置され、またアイドラローラ(上流ローラ)13よりも下流においてアイドラローラ13と隣り合って配置されている。本実施例では、バックアップローラ3は、金属製(本実施例ではSUS製)のローラ(金属ローラ)である。バックアップローラ3の回転軸線方向の長さは、中間転写ベルト1の回転方向と略直交する幅方向の長さと同等であり、バックアップローラ3は中間転写ベルト1の略全幅にわたり当接する。バックアップローラ3は、中間転写ベルト1に接触した状態で中間転写ベルト1の回転に伴って従動して回転する。本実施例では、バックアップローラ3の外径は8mmである。
本実施例では、バックアップローラ3は、上述のように導電性材料(本実施例では金属材料)であるSUSで形成されている。このバックアップローラ3は、例えばバリスタなどの抵抗体を介して電気的に接地(接地電位(グランド)に接続)することが好ましい。バックアップローラ3を抵抗体を介して電気的に接地することで、二次転写外ローラ2に二次転写バイアスが印加された際にバックアップローラ3に電流が流れ込むことを抑制して、転写電流が不足することを抑制することができる。抵抗体としてバリスタを用いる場合、例えば二次転写外ローラ2への印加電圧が0.5~8kVで、中間転写ベルト1の表面抵抗率が1.0×109~5.0×1013Ω/□であれば、バリスタ電圧が1.0kV以上のバリスタであることが好ましい。本実施例では、バックアップローラ3を、バリスタ電圧1.5kVのバリスタ32を介して電気的に接地した。
また、本実施例では、画像形成装置100は、バックアップローラ3の位置を可変とする移動手段(位置可変手段)としての移動機構(位置可変機構)4を有している。移動機構4は、後述するように、偏心カム、ソレノイドなどの作動部材を有して構成される。そして、この移動機構4によって、バックアップローラ3は、中間転写ベルト1の略面内方向に、二次転写内ローラ14に対して離れる方向及び近づく方向に移動可能とされている。本実施例では、バックアップローラ3は、上記方向にスライド移動可能(往復移動可能)とされている。
ここで、図2において、中間転写ベルト1が掛け回される側の二次転写内ローラ14とアイドラローラ13との共通の接線を基準線Lとする。中間転写ベルト1の略面内方向の移動とは、基準線Lに沿って、二次転写内ローラ14に対して離れる方向及び近づく方向に移動可能であることを言う。基準線Lに沿って移動可能であるとは、基準線Lと直交する方向への移動距離よりも基準線Lと平行な方向への移動距離の方が大きくなるように移動可能であればよい。バックアップローラ3を、基準線Lと直交する方向への移動距離よりも基準線Lと平行な方向への移動距離の方が大きくなるように移動可能とすることで、これを基準線と平行な方向への移動距離よりも基準線Lと直交する方向への移動距離の方が大きくなるように移動可能とする場合よりも、搬送ガイド6などと干渉するリスクを低減することができる。ただし、基準線Lと平行な方向への移動距離は、基準線Lと直交する方向への移動距離の好ましくは5倍以上、より好ましくは10倍以上である。基準線Lと平行な方向への移動距離と基準線Lと直交する方向への移動距離との割合を上記範囲とすることで、搬送ガイド6などと干渉するリスクをより確実に低減することができる。具体的には、中間転写ベルト1の略面内方向の移動には、以下に説明する本実施例における移動態様、及び後述する実施例における移動態様が含まれる。
図3(a)は、本実施例におけるバックアップローラ3の移動態様を説明するための模式的な断面図(二次転写内ローラ14の回転軸線方向と略直交する断面)である。図3(a)に示すように、本実施例では、バックアップローラ3は、二次転写内ローラ14とバックアップローラ3とで張架されて形成された中間転写ベルト1の面(張架面)と略平行な線上にバックアップローラの回転中心(定点)が位置するように移動可能とされている。つまり、図3(a)に示すように、本実施例では、バックアップローラ3は、中間転写ベルト1が掛け回される側の二次転写内ローラ14とバックアップローラ3との共通の接線と略平行に移動可能とされている。斯かる構成により、本実施例では、バックアップローラ3の移動によって二次転写部T2の上流側近傍の中間転写ベルト1の面の角度(後述する基準線Lに対する角度)は変化しない。ここで、図2において、中間転写ベルト1が掛け回される側の、二次転写内ローラ14と、二次転写内ローラ14に最も近い位置にある場合のバックアップローラ3と、の共通の接線を近位時接線L1とする。このとき、本実施例では、バックアップローラ3は、近位時接線L1と略平行に移動可能とされている。なお、近位時接線L1と略平行に移動可能であるとは、完全に平行に移動可能である場合の他、誤差範囲程度に平行からずれた方向に移動可能である場合も含む。換言すれば、バックアップローラ3の定点が近位時接線L1と略平行な線上に位置するように移動可能であるとは、完全に該線上を移動可能である場合の他、誤差範囲程度に該線からずれた方向に移動可能である場合も含む。例えば、近位時接線L1と直交する方向への移動距離が近位時接線L1と平行な方向への移動距離の15%以下程度、場合によっては25%以下程度までとなる移動方向のずれは許容できることがある。
図3(b)は、移動機構4の概略構成を示す模式図である。本実施例では、バックアップローラ3は、回転軸線方向の両端部において軸受部材31によって回転自在に支持されている。本実施例では、移動機構4は、バックアップローラ3の回転軸線方向の両端部にそれぞれ、作動部材としての偏心カム41と、付勢手段としての弾性部材である引っ張りばね42と、を有する。また、移動機構4は、バックアップローラ3の回転軸線方向の両端部の偏心カム41を駆動する駆動部43を有する。バックアップローラ3の軸受部材31は、移動可能なように画像形成装置100の装置本体や中間転写ベルト1を含むユニットの筐体などに保持されている。本実施例では、この軸受部材31は、二次転写内ローラ14とバックアップローラ3とで張架されて形成された中間転写ベルト1の張架面と略平行に、二次転写内ローラ14に対して離れる方向及び近づく方向に移動可能とされている。また、本実施例では、引っ張りバネ42は、この軸受部材31を二次転写内ローラ14から離れる方向に付勢する。偏心カム41が駆動部43によって回転させられることで、偏心カム41による軸受部材31に対する押圧が解除される(図3(b)左図)。これにより、引っ張りバネ42によって軸受部材31が二次転写内ローラ14から離れる方向に移動させられる。また、偏心カム41が駆動部43によって回転させられることで、偏心カム41によって軸受部材31が引っ張りバネ42の付勢力に抗して押圧される(図3(b)右図)。これにより、軸受部材31が二次転写内ローラ14に近づく方向に移動させられる。
図2において、中間転写ベルト1が掛け回される側の二次転写内ローラ14とアイドラローラ13との共通の接線を基準線Lとする。また、二次転写内ローラ14の回転中心を通り基準線Lと略直交する直線を内ローラ中心線Laとする。また、バックアップローラ3の回転中心を通り基準線Lと略直交する直線をバックアップローラ中心線Lbとする。なお、バックアップローラ中心線Lbは、支持部材とベルトとの接触領域のベルトの回転方向における略中央を通り基準線Lと略直交する直線の一例である。このとき、内ローラ中心線Laとバックアップローラ中心線Lbとの間の距離を、バックアップローラ3の位置(ただし、バックアップローラ中心線Lbが内ローラ中心線Laよりも上流にあるとき正の値)Dとする。本実施例では、バックアップローラ3の位置Dは、「Near(近位)」、「Mid(中間位)」、「Far(遠位)」をとることが可能とされている。「Near」は「Mid」よりも二次転写内ローラ14に近い位置であり、「Mid」は「Far」よりも二次転写内ローラ14に近い位置である。本実施例では、「Near」は16mm、「Mid」は18.5mm、「Far」は21mmである。これに限定されるものではないが、典型的には、バックアップローラ3は、中間転写ベルト1と二次転写内ローラ15とが接触する領域から上流側へ25mm以内の中間転写ベルト1の内周面に接触可能なように配置される。
ここで、本実施例では、バックアップローラ3は、中間転写ベルト1を内周面側から外周面側に向けて押圧し、中間転写ベルト1を外周面側へ張り出させている。つまり、本実施例では、バックアップローラ3は、中間転写ベルト1に対して所定の侵入量を有して中間転写ベルト1に当接させられている。この侵入量は、概略、二次転写内ローラ14とアイドラローラ13とで張架された場合に形成される中間転写ベルト1の面(張架面)に対するバックアップローラ3の侵入量である。図2において、中間転写ベルト1が掛け回される側の二次転写内ローラ14とアイドラローラ13との共通の接線を基準線Lとする。また、基準線Lと略平行な、バックアップローラ3が中間転写ベルト1と接触する領域における中間転写ベルト1の接線を支持部接線Ldとする。このとき、基準線Lと押圧部接線Ldとの間の距離Xを、中間転写ベルト1に対するバックアップローラ3の侵入量(ただし、支持部接線Ldが基準線Lよりも中間転写ベルト1の外側にあるとき正の値)とする。本実施例では、バックアップローラ3が二次転写内ローラ14に最も近い位置であるNearにある場合に、侵入量Xは約1.5mmである。また、本実施例では、バックアップローラ3がNearにある場合とFarにある場合とで、侵入量Xは約0.5mm変化する(Farにある場合の方がNearにある場合よりも大きい。)。侵入量Xは、二次転写部T2の近傍で中間転写ベルト1が振動したり波打ちしたりして姿勢が安定せず、記録材Pと中間転写ベルト1との密着性が損なわれることがないように予め決められる。つまり、侵入量Xは、中間転写ベルト1の波打ちや振動を抑制して「転写抜け」を抑制する効果が得られるように適宜設定すればよい。本実施例では、侵入量Xは0mmよりも大きいが、Xは0mmであってもよい。また、これに限定されるものではないが、典型的には、侵入量Xは3.5mm以下程度とされる。侵入量Xが3.5mmよりも大きい場合、バックアップローラ3と中間転写ベルト1との接触面にかかる負荷が増加するので、中間転写ベルト1はスムーズに回転しにくくなる可能性がある。
また、本実施例では、二次転写外ローラ2は、二次転写内ローラ14に対して上流側にシフト(オフセット)して配置されている。本実施例では、二次転写外ローラ2は、中間転写ベルト1を介して二次転写内ローラ14と当接する。斯かる構成により、本実施例では、二次転写外ローラ2と中間転写ベルト1との接触領域である二次転写部T2の幅が、二次転写内ローラ14と中間転写ベルト1との接触領域の幅よりも上流側に広がっている。つまり、二次転写内ローラ14と中間転写ベルト1との接触領域の上流側の端部よりも、二次転写外ローラ2と中間転写ベルト1との接触領域の上流側の端部の方が上流に位置する。二次転写外ローラ2を二次転写内ローラ14に対して上流側にシフトして配置することで、二次転写部T2の上流側近傍における記録材Pと中間転写ベルト1との密着性を向上させ、転写性を向上させることができる。図2において、二次転写内ローラ14の回転中心を通り基準線Lと略直交する直線を内ローラ中心線Laとする。また、二次転写外ローラ2の回転中心を通り基準線Lと略直交する直線を外ローラ中心線Lcとする。このとき、内ローラ中心線Laと外ローラ中心線Lcとの間の距離が二次転写内ローラ14に対する二次転写外ローラ2のシフト量Z(ただし、外ローラ中心線Lcが内ローラ中心線Laよりも上流にあるとき正の値)である。本実施例では、このシフト量Zは0mmよりも大きい。
3.制御態様
図2には、本実施例の画像形成装置100の要部の制御態様を示す概略ブロックが示されている。制御部50は、演算処理を行う中心的素子である制御手段としてのCPU51、記憶手段としてのROM、RAMなどのメモリ(記憶媒体)52などを有して構成される。書き換え可能なメモリであるRAMには、制御部50に入力された情報、検知された情報、演算結果などが格納され、ROMには制御プログラム、予め求められたデータテーブルなどが格納されている。CPU51とメモリ52とは互いにデータの転送や読込みが可能となっている。
制御部50には、二次転写電源20が接続されている。制御部50は、二次転写電源20が備える電流検知部により検知される電流値が所定の電流値になるように二次転写電源20が出力する電圧を制御することで、二次転写電源20から二次転写外ローラ2に印加するバイアスを定電流制御することができる。また、制御部50は、二次転写電源20が備える電圧検知部により検知される電圧値が所定の電圧値になるように二次転写電源20が出力する電圧を制御することで、二次転写電源20から二次転写外ローラ2に印加するバイアスを定電圧制御することができる。また、制御部50には、移動機構4が接続されている。制御部50は、移動機構4の駆動を制御して、バックアップローラ3を前述のように移動させることができる。また、制御部50には、操作部(操作パネル)70が接続されている。操作部70は、制御部50の制御によって情報を表示する表示手段としての表示部、及び制御部50に情報を入力する入力手段としての入力部を有する。また、制御部50には、画像形成装置100に通信可能に接続されたパーソナルコンピュータなどの外部装置(図示せず)が接続されている。制御部50は、画像読取り装置(図示せず)から入力される画像データ及び操作部70から入力される記録材Pの種類などの画像形成条件に関する情報に基づいて、画像形成装置100の各部を制御して画像形成を行なわせることができる。また、制御部50は、外部装置(図示せず)から入力されるジョブの情報(画像データ及び記録材Pの種類などの画像形成条件に関する情報)に基づいて、画像形成装置100の各部を制御して画像形成を行わせることができる。なお、記録材Pの種類とは、普通紙、厚紙、薄紙、光沢紙、コート紙、エンボス紙などの一般的特徴に基づく属性、メーカー、銘柄、品番、坪量、厚さ、サイズなど、記録材Pを区別可能な任意の情報を包含するものである。本実施例では、設定可能な記録材Pの種類としては、少なくとも、普通紙、予め設定された平滑性が比較的低い紙、及び予め設定された厚紙などの剛度が比較的高い紙を選択できるようになっているものとする。
ここで、画像形成装置100は、一の開始指示(プリント指示)により開始される、単一又は複数の記録材Pに画像を形成して出力する一連の動作であるジョブ(プリント動作)を実行する。ジョブは、一般に、画像形成工程、前回転工程、複数の記録材Pに画像を形成する場合の紙間工程、及び後回転工程を有する。画像形成工程は、実際に記録材Pに形成して出力する画像の静電像の形成、トナー像の形成、トナー像の一次転写、二次転写を行う期間であり、画像形成時(画像形成期間)とはこの期間のことをいう。より詳細には、これら静電像の形成、トナー像の形成、トナー像の一次転写、二次転写の各工程を行う位置で、画像形成時のタイミングは異なる。前回転工程は、開始指示が入力されてから実際に画像を形成し始めるまでの、画像形成工程の前の準備動作を行う期間である。紙間工程は、複数の記録材Pに対する画像形成を連続して行う際(連続画像形成)の記録材Pと記録材Pとの間に対応する期間である。後回転工程は、画像形成工程の後の整理動作(準備動作)を行う期間である。非画像形成時(非画像形成期間)とは、画像形成時以外の期間であって、上記前回転工程、紙間工程、後回転工程、更には画像形成装置100の電源投入時又はスリープ状態からの復帰時の準備動作である前多回転工程などが含まれる。本実施例では、非画像形成時に、二次転写バイアスの制御(調整)や、バックアップローラ3の位置Dの変更動作が実行される。
本実施例では、二次転写バイアスは、ATVC制御(Active Transfer Voltage Control)によって制御される。つまり、二次転写部T2に記録材Pが存在しない所定のタイミングで、二次転写外ローラ2に流れる電流が所定の目標電流値Itgtに近づくように二次転写電源20の出力電圧値を調整しならが、定電流制御されたバイアスを二次転写外ローラ2に印加する。また、その際の二次転写電源20の出力電圧値をサンプリングする。所定の期間(あるいは回数)この動作を行って、サンプリングした出力電圧値の平均値を求める。そして、この求めた電圧値、又はこの電圧値に対して所定の演算処理を施した電圧値を、二次転写部分担電圧Vtとして決定する。そして、画像形成時(二次転写時)には、この二次転写部分担電圧Vtに記録材分担電圧Vpを加えた電圧値で定電圧制御された二次転写バイアスを、二次転写外ローラ2に印加する。目標電流値Itgtは、例えば環境などに応じて予め設定されて、テーブルデータなどとしてメモリ52に格納されている。また、上記記録材分担電圧Vpは、記録材Pの種類、環境などに応じて予め設定されて、テーブルデータなどとしてメモリ52に格納されている。
なお、本実施例では、上述のように、二次転写バイアスを調整するために、所定の電流値で定電流制御されたテストバイアスを印加した際の電圧値を検知する。別法として、二次転写バイアスを調整するために、所定の電圧値で定電圧制御されたテストバイアスを印加した際の電流値を検知してもよい。転写部の電気抵抗に関する情報が得られればよい。
4.バックアップローラの位置
図4は、バックアップローラ3の位置Dと、記録材Pの先端から前述の「白抜け」が発生した箇所までの記録材Pの搬送方向における距離(ここでは「白抜け距離」ともいう。)と、の関係を示すグラフ図である。なお、「白抜け距離」は、記録材Pの先端から最も後端側に発生した「白抜け」までの距離で代表するものとする。記録材Pとしては、坪量が比較的大きく剛度が比較的高い厚紙の一例である「アイベストwの坪量360gsm」を使用した。図4には、バックアップローラ3が無い場合、バックアップローラ3の位置DがNearの場合、バックアップローラ3の位置DがFarの場合の結果を示した。なお、上述のように、本実施例では、Nearは16mm、Midは18.5mm、Farは21mmである。
図4から、バックアップローラ3が無い場合、バックアップローラ3の位置DがFarの場合、バックアップローラ3の位置DがNearの場合の順に、白抜け距離が大きくなっていることが分かる。本実施例では記録材Pの先端の余白の目標値は3mm以下であるので、本実施例では厚紙の場合はバックアップローラ3の位置DをFarに設定することとした。
なお、ここでは、記録材Pの先端部の「白抜け」に関する検討結果を例として示したが、上記設定値の場合、記録材Pの先端近傍の他の画像不良(前述の「飛び散り」など)に関しても目標値に収まることが確認された。また、記録材Pの後端の余白の目標値が3mm以下の場合について検討したが、上記設定値の場合、記録材Pの後端近傍の「白抜け」や「飛び散り」などの画像不良に関しても目標値に収まることが確認された。
図5は、バックアップローラ3の位置Dと、「転写抜け」のランクと、の関係を示すグラフ図である。「転写抜け」のランクは、平滑性が比較的低い記録材Pの凹部に対する、二次色(ここでは、マゼンタの画像比率100%、シアンの画像比率100%の合計)の抜け具合を、0から9の10段階(ランク9が最も良好)でランク付けした評価指標である。記録材Pとしては、平滑性が比較的低い紙の一例である「Hammermill Great White 30% Recycled Copy Paperの坪量75gsm」を使用した。図5には、バックアップローラ3の位置DがNear、Mid、Farの場合の結果を示した。
図5から、バックアップローラ3の位置DがFarの場合、Midの場合、Nearの場合の順に、「転写抜け」のランクが高くなっていることが分かる。本実施例では「転写抜け」のランクの目標値は8以上であるので、本実施例では平滑性が比較的低い紙の場合はバックアップローラ3の位置DをNearに設定することとした。
なお、ここでは、二次色の「転写抜け」に関する検討結果を例として示したが、上記設定値の場合、中間転写ベルト1の波打ちや振動に起因する他の画像不良に関しても目標値に収まることが確認された。また、記録材Pの先後端近傍における「白抜け」や「飛び散り」に関しても目標値に収まっていた。
このような結果が得られた理由は、次のように考えられる。本実施例では、バックアップローラ3の位置を中間転写ベルト1の略面内方向に変更可能とする。これにより、記録材P及び二次転写外ローラ2によって中間転写ベルト1の外周面側から内周面側に向かう方向に与えられる力に対する中間転写ベルト1の反力を調整することができる。この反力は、二次転写内ローラ14とバックアップローラ3とで張架されて形成された中間転写ベルト1の張架面における中間転写ベルト1の反力である。つまり、この反力は、バックアップローラ3の位置DがNearの場合よりもMidの場合の方が小さく、バックアップローラ3の位置DがMidの場合よりもFarの場合の方が小さい。これにより、バックアップローラ3の位置Dを二次転写内ローラ14から遠くして、上記反力を小さくすることで、バックアップローラ3により中間転写ベルト1を外側に張り出させる量を低減するのと同等の効果を得ることができる。そのため、二次転写部T2の上流側近傍の中間転写ベルト1がループを形成することを抑制して、厚紙などの剛度が比較的高い記録材Pの先後端近傍における白抜けや飛び散りを抑制することができる。また、バックアップローラ3の位置Dを二次転写内ローラ14に近くして、上記反力を大きくすることで、バックアップローラ3により中間転写ベルト1を外側に張り出させる量を増加するのと同等の効果を得ることができる。そのため、二次転写部T2の上流側近傍の中間転写ベルト1の振動や波打ちを抑制して、平滑性が比較的低い記録材Pにおける転写抜けを抑制することができる。
ここで、バックアップローラ3を中間転写ベルト1の面外方向、すなわち、中間転写ベルト1の内周面側から外周面側に向かう方向及びその逆方向に移動可能として、上記白抜けや飛び散りの抑制と、転写抜けの抑制と、を両立することが考えられる。しかし、この場合、記録材Pの搬送ガイド6などと干渉するリスクがある。また、この干渉のリスクを低減するために必要となるバックアップローラ3の位置精度が高くなり、装置が大型化したり、イニシャルコストが高くなったりすることがある。これに対して、本実施例によれば、バックアップローラ3を中間転写ベルト1の略面内方向に移動可能としているため、搬送ガイド6などと干渉するリスクを低減することが可能である。また、バックアップローラ3に必要となる位置精度も緩和することができ、装置の大型化やイニシャルコストの上昇を抑制することが可能である。
また、バックアップローラ3を中間転写ベルト1の面外方向に移動可能とした場合には、二次転写部T2の上流側近傍の中間転写ベルト1の面の角度が比較的大きく変化し、二次転写部T2の上流側近傍での記録材Pの搬送経路が比較的大きく変化する。そのため、バックアップローラ3の位置の変更によって、二次転写バイアスの設定を変更する必要が生じたり、二次転写部T2の下流側での記録材Pの排出角度が変化して良好な記録材Pの搬送が難しくなったりすることが考えられる。これに対し、本実施例では、バックアップローラ3を中間転写ベルト1の略面内方向に移動可能としているため、二次転写部T2の上流側近傍の中間転写ベルト1の面の角度は略一定であり、二次転写部T2の上流側近傍での記録材Pの搬送経路は略一定である。これにより、バックアップローラ3の位置の変更が二次転写バイアスの設定や二次転写部T2の下流側での記録材Pの排出角度に与える影響を低減することができる。
5.制御フロー
図6は、本実施例におけるジョブの制御手順の概略を示すフローチャート図である。制御部50は、ジョブの開始指示が入力されると、前回転工程においてATVC制御(設定電圧決定動作)を行う(S101)。本実施例では、ATVC制御は、バックアップローラ3の位置DをFarとした状態で行い、二次転写部分担電圧Vtを決定する。制御部50は、ATVC制御が終了すると、操作部70や外部装置(図示せず)から入力される制御指令に基づいて、次に給送される記録材の種類を判定する(S102)。そして、制御部50は、記録材Pが平滑性が比較的低い紙であると判断した場合は、バックアップローラ3の位置DをNearとすることを決定する(S103)。また、制御部50は、記録材Pが厚紙であると判断した場合は、バックアップローラ3の位置DをFarとすることを決定する(S104)。また、制御部50は、記録材Pが普通紙であると判断した場合は、バックアップローラ3の位置をMidとすることを決定する(S105)。なお、本実施例では、普通紙の場合はバックアップローラ3の位置をMidとするが、この場合にNear又はFarとするようにしてもよい。そして、制御部50は、画像形成工程を開始させる(S106)。画像形成工程では、二次転写バイアスは、ATVC制御で決定した二次転写分担電圧Vtに記録材Pの種類などに応じて予め決定されている記録材分担電圧Vpを加えた電圧値で定電圧制御される。また、記録材Pの先端が二次転写部T2(より詳細には二次転写部T2の上流側近傍)に到達する前に、バックアップローラ3がS103、S104、又はS105で決定した位置Dに配置される。その後、制御部50は、ジョブの全ての画像の形成が終了したか否かを判断し、終了していない場合にはS102の処理に戻り、終了している場合にはジョブを終了させる(S107)。このようにして、本実施例では、二次転写部T2(より詳細には二次転写部T2及びその上流側近傍)に記録材Pが無い時に、バックアップローラ3の位置Dの変更が行われる。なお、上記二次転写部T2の上流側近傍は、より詳細には、中間転写ベルト1の回転方向におけるバックアップローラ3と中間転写ベルト1との接触領域から二次転写部T2までの、中間転写ベルト1との対向領域である。
坪量が比較的大きく剛度が比較的高い厚紙の一例である「アイベストwの坪量360gsm」を1枚目、2枚目以降に平滑性が比較的低い紙の一例である「Hammermill Great White 30% Recycled Copy Paperの坪量75gsm」を使用して、本実施例の効果を確認した。この場合、1枚目と2枚目の紙間、すなわち、2枚目の平滑性が比較的低い紙が二次転写部T2(より詳細には二次転写部T2の上流側近傍)に到達する前に、バックアップローラ3の位置Dが変更される。その結果、全ての記録材Pにおいて、「白抜け」や「飛び散り」、あるいは「転写抜け」といった画質に関する指標のすべてが目標値に収まっていた。
このように、本実施例の画像形成装置100は、画像形成位置T1で担持されたトナー像を搬送する回転可能な無端状のベルト1と、ベルト1の外周面に接触し、ベルト1から記録材Pへトナー像を転写する転写部T2を形成する外ローラ2と、を有する。また、画像形成装置100は、ベルト1を張架する複数の張架ローラを有する。この張架ローラは、転写部T2に対応して配置された内ローラ14と、ベルト1の回転方向において画像形成位置T1よりも下流かつ内ローラ14よりも上流に配置された上流ローラ13と、を含む。また、画像形成装置100は、ベルト1の回転方向において内ローラ14よりも上流かつ上流ローラ13よりも下流でベルト1の内周面に接触する支持部材3を有する。また、画像形成装置100は、支持部材3を移動させる移動手段4を有する。そして、支持部材3は、内ローラ14の回転軸線方向と略直交する断面において、ベルト1と接触する第1位置と、ベルト1と接触する第2位置と、にそれぞれ移動可能に設けられ、ベルト1が掛け回される側の内ローラ14と上流ローラ13との共通の接線を基準線Lとしたとき、第1位置から第2位置への移動距離は、基準線Lと直交する方向への移動距離よりも基準線Lと平行な方向への移動距離の方が大きい。本実施例では、支持部材3は、内ローラ14の回転軸線方向と略直交する断面において、ベルト1が掛け回される側の内ローラ14と支持部材3との共通の接線と略平行に移動可能である。また、本実施例では、支持部材3は、内ローラ14の回転軸線方向と略直交する断面において、基準線Lよりもベルト1の外周面側にベルト1を張り出させるように配置されている。また、本実施例では、画像形成装置100は、移動手段4を制御する制御部50を有する。そして、本実施例では、制御部50は、第1種類の記録材Pに転写を行う場合に、支持部材3を第1位置に配置させ、第1種類とは異なる第2種類の記録材Pに転写を行う場合に、支持部材3を第1位置よりも内ローラ14から遠い第2位置に配置させる制御を行う。典型的には、第2種類の記録材Pの坪量は、第1種類の記録材Pの坪量よりも大きい。
以上のように、本実施例によれば、装置の大型化やコストの上昇を抑制しつつ、平滑性が比較的低い記録材Pに対する転写性の向上と、厚紙などの剛度が比較的高い記録材Pの先後端近傍の画像不良の抑制と、の両立が可能となる。
[実施例2]
次に、本発明の他の実施例について説明する。本実施例の画像形成装置の基本的な構成及び動作は、実施例1の画像形成装置のものと同じである。したがって、本実施例の画像形成装置において実施例1の画像形成装置のものと同一又は対応する機能あるいは構成を有する要素については、実施例1と同一の符号を付して詳しい説明は省略する。
本実施例では、バックアップローラ3を中間転写ベルト1の略面内方向に移動させるためのバックアップローラ3の移動態様が実施例1とは異なる。
図7は、本実施例におけるバックアップローラ3の移動態様を説明するための模式的な断面図(二次転写内ローラ14の回転軸線方向と略直交する断面)である。図7に示すように、本実施例では、バックアップローラ3は、基準線L上にバックアップローラ3の回転中心(定点)が位置するように移動可能とされている。前述のように、基準線Lは、二次転写内ローラ14とアイドラローラ13とで張架された場合に形成される中間転写ベルト1の面(張架面)に対応する。つまり、本実施例では、バックアップローラ3は、基準線Lと略平行に移動可能とされている。なお、基準線Lと略平行に移動可能であるとは、完全に平行に移動可能である場合の他、誤差範囲程度に平行からずれた方向に移動可能である場合も含む。換言すれば、バックアップローラ3の定点が基準線L上に位置するように移動可能であるとは、完全に基準線L上を移動可能である場合の他、誤差範囲程度に基準線Lからずれた方向に移動可能である場合も含む。例えば、基準線Lと直交する方向への移動距離が基準線Lと平行な方向への移動距離の15%以下程度、場合によっては25%以下程度までとなる移動方向のずれは許容できることがある。
本実施例では、実施例1とは異なり、バックアップローラ3の移動によって二次転写部T2の上流側近傍の中間転写ベルト1の面の角度(基準線Lに対する角度)はわずかに変化するが、この角度の変化は十分に小さい。本実施例についても、実施例1と同様にして効果を確認したところ、実施例1と同様の効果を得ることができることがわかった。また、本実施例によっても、実施例1の場合と同様に、バックアップローラ3の移動による搬送ガイド3などとの干渉のリスクなども十分に低減することができる。
以上説明したように、本実施例の構成によっても、実施例1と同様の効果を得ることができる。
[実施例3]
次に、本発明の他の実施例について説明する。本実施例の画像形成装置の基本的な構成及び動作は、実施例1の画像形成装置のものと同じである。したがって、本実施例の画像形成装置において実施例1の画像形成装置のものと同一又は対応する機能あるいは構成を有する要素については、実施例1と同一の符号を付して詳しい説明は省略する。
実施例2で説明したように、バックアップローラ3の移動によって二次転写部T2の上流側近傍の中間転写ベルト1の面の角度はわずかに変化することは許容できる。実施例2では、バックアップローラ3の回転中心が基準線L上を移動可能な構成としたが、これに限定されるものではない。
図8は、本実施例におけるバックアップローラ3の移動態様を説明するための模式的な断面図(二次転写内ローラ14の回転軸線方向と略直交する断面)である。図8(a)に示すように、バックアップローラ3は、近位時接線L1と略平行な線に対してなす角度αが-30°≦α≦30°の線上にバックアップローラ3の回転中心(定点)が位置するように移動可能とすることができる。前述のように、近位時接線L1は、二次転写内ローラ14と、二次転写内ローラ14に最も近い位置にある場合のバックアップローラ3と、で張架されて形成される中間転写ベルト1の面(張架面)に対応する。
換言すれば、図8(b)において、中間転写ベルト1が掛け回される側の、二次転写内ローラ14と、二次転写内ローラ14に最も近い位置にある場合のバックアップローラ3と、の共通の接線を近位時接線L1とする。また、中間転写ベルト1が掛け回される側の、二次転写内ローラ14と、二次転写内ローラ14に最も遠い位置にある場合のバックアップローラ3と、の共通の接線を遠位時接線L2とする。このとき、近位時接線L1と遠位時接線L2とのなす角度αが-30°≦α≦30°を満たしていればよい。
上述のような角度αの範囲について、実施例1と同様にして効果を確認したところ、実施例1と同様の効果を得ることができることがわかった。また、このような角度αの範囲であれば、実施例1の場合と同様に、バックアップローラ3の移動による搬送ガイド3などとの干渉のリスクなども十分に低減することができる。
以上説明したように、本実施例の構成によっても、実施例1と同様の効果を得ることができる。
[実施例4]
次に、本発明の他の実施例について説明する。本実施例の画像形成装置の基本的な構成及び動作は、実施例1の画像形成装置のものと同じである。したがって、本実施例の画像形成装置において実施例1の画像形成装置のものと同一又は対応する機能あるいは構成を有する要素については、実施例1と同一の符号を付して詳しい説明は省略する。
前述のように、記録材Pの先後端近傍の部分の「白抜け」や「飛び散り」は、厚紙などの剛度が比較的高い紙で発生しやすい。しかし、程度の差はあるが、より坪量が小さく、剛度がより低い記録材Pでも発生する可能性がある。そのため、記録材Pの種類によらず、記録材Pの先後端近傍が二次転写部T2及びその上流側近傍を通過する際には、バックアップローラ3の位置Dを二次転写内ローラ14から相対的に遠い位置として中間転写ベルト1の反力を小さくすることが有効である。ここで、上記二次転写部T2の上流側近傍は、より詳細には、中間転写ベルト1の回転方向におけるバックアップローラ3と中間転写ベルト1との接触領域から二次転写部T2までの、中間転写ベルト1との対向領域である。一方、前述のように、「転写抜け」を抑制するために、記録材Pの中央部が二次転写部T2を通過する際には、バックアップローラ3の位置を二次転写内ローラ14に相対的に近い位置として中間転写ベルト1の反力を大きくすることが有効である。
そこで、本実施例では、記録材Pの先端から後端側に所定の幅の第1領域、及び記録材Pの後端から先端側に所定の幅の第2領域が二次転写部T2及びその上流側近傍を通過している間は、バックアップローラ3の位置DをFarとする。一方、記録材Pの第1領域と第2領域との間の第3領域が二次転写部T2及びその上流側近傍を通過している間は、バックアップローラ3の位置DをNearとする。記録材Pの搬送方向における第1領域、第2領域の幅は、記録材Pの先後端近傍における「白抜け」や「飛び散り」の抑制効果、記録材Pの中央部における「転写抜け」の抑制効果、あるいは画像形成領域や余白領域の幅などに応じて適宜設定できる。
図9は、本実施例におけるジョブの制御手順の概略を示すフローチャート図である。制御部50は、ジョブの開始指示が入力されると、前回転工程においてATVC制御(設定電圧決定動作)を行う(S201)。本実施例では、ATVC制御は、バックアップローラ3の位置DをFarとした状態で行い、二次転写部分担電圧Vtを決定する。制御部50は、ATVC制御が終了すると、画像形成工程を開始させる(S202)。次に、制御部50は、記録材Pの先端側の第1の領域が二次転写部T2の上流側近傍を通過し終えるタイミングに合わせて(典型的には略同時に)(S203)、バックアップローラ3の位置DをNearに変更する(S204)。次に、制御部50は、記録材Pの後端側の第2の領域が二次転写部T2の上流側近傍に到達するタイミングに合わせて(典型的には略同時に)(S205)、バックアップローラ3の位置DをFarに変更する(S206)。なお、画像形成工程では、二次転写バイアスは、ATVC制御で決定した二次転写分担電圧Vtに記録材Pの種類などに応じて予め決定されている記録材分担電圧Vpを加えた電圧値で定電圧制御される。その後、制御部50は、ジョブの全ての画像の形成が終了したか否かを判断し、終了していない場合にはS203の処理に戻り、終了している場合にはジョブを終了させる(S206)。
本実施例では、記録材Pの先端から後端側に20mmの領域を第1領域、後端から先端側に20mmの領域を第2領域とする。ここで、記録材Pの搬送方向における第1領域の幅と第2領域の幅とは、同一であっても、異なっていてもよい。また、第1領域と第2領域とのうち少なくとも一方に関して、上記同様にしてバックアップローラ3の位置Dを二次転写内ローラ14から相対的に遠い位置とする制御を行うことができる。また、第1領域、第2領域に関してバックアップローラ3の位置Dを二次転写内ローラ14から相対的に遠い位置とするタイミングは、典型的には、次のようにすることができる。つまり、記録材Pの先端、後端が、それぞれ記録材Pの搬送方向における第1ガイド部材61の二次転写部T2側の先端を通過する際までには、バックアップローラ3の位置Dを二次転写内ローラ14から相対的に遠い位置にするようにする。なお、上記通過する際とは、通過する時、通過する直前、あるいは通過した直後であってよい。制御部50は、記録材Pのサイズ、搬送経路の長さ、搬送タイミングなどから記録材Pの位置を検知することができる。あるいは、制御部50が、記録材Pの先端などを検知する記録材検知手段としての記録材センサの検知結果に基づいて記録材Pの位置を検知するようにしてもよい。
なお、本実施例に従う1枚の記録材Pごとのバックアップローラ3の位置の変更は、全ての種類の記録材Pにおいて行ってもよいし、特定の単数又は複数の種類の記録材Pにおいて行ってもよい。
また、バックアップローラ3の移動態様は、実施例1~3で説明したいずれの移動態様であってもよい。
このように、本実施例では、制御部50は、記録材Pの先端から後端側に所定の幅の第1領域と、記録材Pの後端から先端側に所定の幅の第2領域と、の間の第3領域が転写部T2を通過している間は、支持部材3を第1位置に配置させる。また、制御部50は、記録材Pの第1領域及び第2領域のうちの少なくとも一方が転写部T2を通過している間は、支持部材3を第1位置よりも内ローラ14から遠い第2位置に配置させる。
以上のように、本実施例によれば、記録材Pの種類によらず、転写性の向上と記録材Pの先後端近傍の画像不良の抑制とを両立が可能となる。したがって、本実施例によっても、特に、平滑性が比較的低い記録材Pに対する転写性の向上と、厚紙などの剛度が比較的高い記録材Pの先後端近傍の画像不良の抑制と、の両立が可能となる。
[その他]
以上、本発明を具体的な実施例に即して説明したが、本発明は上述の実施例に限定されるものではない。
上述の実施例では、支持部材の位置が2段階又は3段階に変更される場合について説明したが、更に多段階に変更されるようになっていたり、実質的に連続的に変更されるようになっていたりしてもよい。
上述の実施例では、支持部材はローラ状の部材であったが、パッド状の部材、シート状(フィルム状)の部材、ブラシ状の部材などの任意の形態の部材であってよい。
上述の実施例では、ベルト状の像担持体が中間転写ベルトである場合について説明したが、画像形成位置で担持されたトナー像を搬送する無端状のベルトで構成された像担持体であれば、本発明を適用することができる。このようなベルト状の像担持体としては、上述の実施例における中間転写ベルトの他、感光体ベルトや静電記録誘電体ベルトが例示できる。
上述の実施例では、支持部材はカムを使って直線的に移動させていたが、ベルトに沿って移動するのであれば、回動移動であってもよい。すなわち、支持部材を回動部材(アーム)で回動可能に支持させてもよい。
本発明は、上述の実施形態の構成の一部または全部を、その代替的な構成で置き換えた別の実施形態でも実施できる。したがって、ベルト状の像担持体を用いる画像形成装置であれば、タンデム型/1ドラム型、帯電方式、静電像形成方式、現像方式、転写方式、定着方式の区別無く実施できる。上述の実施例では、トナー像の形成/転写に係る主要部を中心に説明したが、本発明は、必要な機器、装備、筐体構造を加えて、プリンタ、各種印刷機、複写機、FAX、複合機など、種々の用途で実施できる。