JP7207513B2 - 物品および液体収納袋 - Google Patents
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Description
一方、液体収納袋に貫通傷部が生じたとき、使用者が貫通傷部を検知することが困難な場合も少なくない。上述したように、貫通傷部が生じたときは、物品においては、異物が混入する等の液体の信頼性が低下するリスクが高くなる。そのため、液体収納袋を用いた物品においては、使用者が貫通傷部によるリスクの有無を容易に判断できるようにすることが求められている。
本開示は、上記実情に鑑みてなされたものであり、使用者が貫通傷部を容易に検知することができる物品、およびこれに用いる液体収納袋を提供することを主目的とする。
本開示における「液体」は、例えば、溶質を含まない液状の物質のみであっても良く、溶質および溶媒を含む溶液であっても良い。
また、「液体」は、例えば、化学反応を起こすために用いられる化学薬品であっても良く、化学薬品でなくても良い。
「液体」の具体例としては、医療分野における輸液、薬液等が挙げられる。
本明細書において、「輸液」とは、輸液製剤協議会において規定される輸液製剤をいい、具体的には、静脈内などを経て体内に投与することによって治療効果を上げることを目的とした容量50mL以上の注射剤であって、水・電解質異常の是正・維持、または、経口摂取が不能あるいは不良な時のエネルギー代謝、蛋白代謝の維持を目的とした製剤、または、薬剤投与のための溶解・希釈剤をいう。輸液としては、典型的には、電解質輸液、栄養輸液、その他の輸液(血漿増量剤、浸透圧利尿剤)が挙げられる。
また、液体収納袋を用いた物品においては、例えば、悪意ある他人が、液体収納袋に対し意図的に貫通傷部を生じさせ、異物を混入させるといった、悪質ないたずらがされる場合がある。
一方、液体収納袋を用いた物品においては、使用者が、貫通傷部からの異物混入を検知することが困難な場合がある。特に、悪質ないたずらによる貫通傷部からの異物混入は、使用者が検知することが難しい傾向にある。
そのため、物品において、液体収納袋に貫通傷部が生じている場合は、実際に異物混入、液体の変質等が生じているか否かに関わらず、リスクを回避するため、液体の使用を回避する必要がある。具体的には、未使用の液体が収納された液体収納袋に貫通傷部が生じている場合、物品自体の使用を回避する必要がある。また、液体の使用時において液体収納袋に貫通傷部が生じた場合は、ただちに液体の使用を中止する必要がある。
使用者が上述したリスク回避の判断を正確にできるようにするため、液体収納袋を用いた物品においては、使用者が貫通傷部を容易に検知することができることが望まれている。
また、貫通傷部を検知するとの課題については開示、示唆もない。
上述した課題を解決するため、下記の物品および液体収納袋を提供する。
本開示の物品は、液体と、上記液体を収納するための袋部材と、上記袋部材の少なくとも一部を覆うように配置されたカバー部材とを有する物品であって、上記カバー部材の最外部よりも袋部材側には、上記袋部材の内部および上記物品の外部のそれぞれから隔離されたスペース部が配置されており、上記スペース部は、上記カバー部材の最外部に生じた貫通傷部が上記スペース部に到達したとき、使用者に対して、上記貫通傷部の検知を促す検知促進機能を有し、上記検知促進機能は、上記貫通傷部により生じた上記スペース部の状態の変化を、使用者に対して認識可能とすることにより、上記貫通傷部の検知を促す機能である。
以下の説明において、物品における袋部材およびカバー部材を合わせた構成を液体収納袋と称して説明する場合がある。
図1(a)~(c)および図2(a)~(c)においては、袋部材2が注出口2aを有する注出部材21と、注出部材21と接合され、液体を収納する胴体部2bを有する胴体部材22とを有する例について示している。また、物品10が、袋部材2における注出口2aを密封する密封部材4をさらに有する例を示している。また、カバー部材3が、袋部材2全体を覆う袋状の形態を有する例を示している。
また、図1(a)~(c)においては、カバー部材3が一つの基材31を有する例を示しており、図2(a)~(c)においては、カバー部材3が基材31および基材32の二つの基材を重ね合わせた二重構造を有する例を示している。図1(a)~(c)および図2(a)~(c)においては、カバー部材3の端部に、基材31の袋部材側の面を直接接触させて接着させた接着部Hを有する例を示している。なお、以下に説明する図におけるHも接着部を有することを示している。
また、この場合、袋部材2とカバー部材3との間には、スペース部S、および物品10の外部と隔離された隔離部Tが配置されていても良い。なお、図1(c)および図2(c)においては、説明の容易のため、カバー部材の袋部材側において、スペース部S以外の部分はハッチングをかけて示している。
なお、図1(a)および図2(a)においては説明の容易の為、液体については省略して示している。また、カバー部材3に覆われた袋部材2については破線で示している。以下に説明する図においても同様とする。
具体的には、本開示の物品においては、貫通傷部により生じたスペース部の変化を、使用者が認識することができるため、貫通傷部を容易に検知することができる。特に、本開示においては、使用者が物品を触ることで、スペース部の変化を認識することができるため、使用者がより直観的に貫通傷部を検知することができる。
また、本開示の物品においては、使用者が貫通傷部を容易に検知することができるため、内容物である液体の信頼性の低下の有無を容易に判断することができ、リスクある液体の使用を回避することができる。
以下、本開示の物品の詳細を説明する。
本開示の物品は、スペース部を有する。
スペース部は、カバー部材の最外部よりも内側に配置され、袋部材の内部および物品の外部のそれぞれから隔離された部分であり、検知促進機能を有する部分である。
なお、本開示の物品は、カバー部材の最外部よりも内側に配置され、袋部材の内部および物品の外部のそれぞれから隔離された部分であり、検知促進機能を有しない隔離部をさらに有していても良い。本開示におけるスペース部と隔離部との違いは、検知促進機能の有無である。具体的には、スペース部においては、その内部の状態が貫通傷部によって使用者が認識可能な程度に変化する。一方、隔離部においては、その内部の状態が貫通傷部によって使用者が認識可能な程度に変化しない、もしくは状態の変化が使用者に認識されない。
スペース部は、カバー部材の最外部に生じた貫通傷部がスペース部に到達したとき、使用者に対して、貫通傷部の検知を促す検知促進機能を有する。検知促進機能は、貫通傷部により生じたスペース部の状態の変化を、使用者に対して認識可能とすることにより、貫通傷部の検知を促す機能である。
「使用者に対して認識可能とする」とは、使用者の目視および触感の少なくとも一方により認識できるようにすることをいう。
検知促進機能においては、通常、使用者に対し、変化後のスペース部の状態を認識可能とすることで、貫通傷部の検知を促すが、例えば、使用者に対し、変化の途中にあるスペース部の状態を認識可能とすることで、貫通傷部の検知を促しても良い。
なお、本開示におけるスペース部の状態の変化は、通常、少なくとも物理的な変化を伴う。スペース部の状態の変化が物理的な変化であることにより、短時間で使用者に対し貫通傷部を検知させることができる。なお、本開示におけるスペース部の状態の変化は、例えば、化学的な変化であっても良い。化学的な変化の一例としては、スペース部の状態の変化が、検知用液の漏出である場合、検知用液および空気が化学反応することによる検知用液の色の変化が挙げられる。
本開示においては、上記スペース部の状態は、気体が充填された状態であり、上記スペース部の状態の変化が、上記スペース部からの気体の漏出であっても良い。この場合、図3(c)および図3(d)に示すように、貫通傷部Pが生じたとき、使用者はスペース部Sからの気体Gasの漏出を、カバー部材3の萎みとして目視で認識することができる。
また、使用者は物品10を触ることで、カバー部材3の萎み、漏出した気体Gasの圧力を認識することができる。
スペース部の圧力としては、例えば、10kPa以上500kPa以下であることが好ましい。スペース部の圧力の測定方法は、例えば、株式会社クローネ製のデジタル圧力計KDM30を用い、穿孔針を刺してスペース部の圧力を測定する方法を挙げることができる。
スペース部の圧力は、例えば、物品の製造時において、気体をスペース部に充填する際の充填圧力と、通常、同等の圧力となる。
なお、気体が充填されたスペース部における検知促進機能は、例えば、袋部材の内部に気体を充填した場合においても発現すると推定される。
本開示においては、上記スペース部の状態は、上記物品の外部の圧力よりも減圧された状態であり、上記スペース部の状態の変化が、上記スペース部への気体の流入であっても良い。スペース部へ流入する気体は、物品の使用環境等に応じて適宜決定されるが、通常は空気である。スペース部の状態が、外部の圧力よりも減圧された状態である場合、図4(c)、(d)に示すように、貫通傷部Pが生じたとき、使用者はスペース部Sへの気体の流入を、カバー部材3の膨らみとして目視で認識することができる。また、使用者は物品10を触ることで、カバー部材3の膨らみを認識することができる。
スペース部の圧力は、例えば、標準気圧(0.1013MPa)に対し、-0.1MPa以上-0.01MPa以下であることが好ましい。
また、スペース部の圧力は、例えば、物品の製造時において、スペース部を減圧状態とするときの圧力と、通常、同等の圧力となる。より具体的には、カバー部材をヒートシール法を用いて形成する場合、陰圧雰囲気下にてヒートシールがされる。この場合、得られるスペース部の圧力は、例えば、陰圧雰囲気の気圧と同等の圧力となる。
本開示において、上記スペース部の状態は、検知用液が充填された状態であり、上記スペース部の状態の変化が、上記スペース部からの上記検知用液の漏出であっても良い。この場合、図5(c)、(d)に示すように、貫通傷部Pが生じたとき、使用者は、物品10を触ることで、スペース部Sからの検知用液Lの漏出を認識することができる。また、使用者は目視により検知用液Lの漏出を認識することもできる。
液体の充填率は、スペース部の容積に対する、液体の体積の比率の百分率で表される値である。
本開示におけるスペース部の位置は、カバー部材の最外部よりも袋部材側に位置していれば特に限定されない。例えば、スペース部は、袋部材およびカバー部材の間に配置されていても良い。また、例えば、カバー部材が少なくとも二つの基材を重ね合わせた多重構造を有する場合、スペース部は、カバー部材の二つの基材の間に配置されていても良い。
以下、それぞれの場合について説明する。
スペース部が、袋部材およびカバー部材の間に配置されている場合、スペース部は、袋部材における最もカバー部材側に位置する構成となる。例えば、図1(a)~(c)に示すように、一つのカバー部材3が一つの袋部材2全体を覆うように配置されている場合、スペース部Sは、一つの袋部材2全体と一つのカバー部材3との間に配置される。また、例えば、図6(a)~(c)に示すように、複数のカバー部材3a、3bが一つの袋部材2を部分ごとに覆うように配置されている場合は、スペース部Sは一つの袋部材2と個々のカバー部材3a、3bとの間に配置することができる。例えば、図6(a)~(c)においては、カバー部材3が、袋部材1の注出部材21を覆う第一のカバー部材3aと、胴体部材22を覆う第二のカバー部材3bとを有する場合を示している。
また、例えば、図7(a)~(c)に示すように、一つのカバー部材3が、一つの袋部材2の一部のみを覆うように配置されている場合、スペース部Sは、一つの袋部材2の一部と一つのカバー部材3との間に配置することができる。
なお、図6(a)~(c)、および図7(a)~(c)は本開示の物品を例示する模式図であり、図6(b)および図7(b)は図6(a)および図7(a)に示す物品における液体、袋部材およびカバー部材の配置を説明する説明図であり、図6(c)および図7(c)は図6(b)および図7(b)におけるスペース部を説明する説明図である。
スペース部の大きさとして、例えば、袋部材においてカバー部材に覆われた部分の体積に対する、カバー部材の体積の比率が、1.1倍以上、2倍以下となるように設けられていることが好ましい。
「袋部材においてカバー部材に覆われた部分」とは、スペース部から見たとき、物品の外部側に位置する、カバー部材の基材に覆われた袋部材の部分をいう。例えば、図1(b)に示す例においては、袋部材2全体が、「袋部材においてカバー部材に覆われた部分」に相当する。また、例えば、図7(b)に示す例においては、袋部材の胴体部の全体が、「袋部材においてカバー部材に覆われた部分」に相当する。
スペース部がカバー部材の多重構造における二つの基材の間に配置されている場合、スペース部は二つの基材により囲まれた位置に配置される。この場合、図2(a)~(c)に示すように、袋部材2およびカバー部材3の間には、隔離部Tが配置されていても良く、また、図8に示すように、袋部材2およびカバー部材3の間にもスペース部Sがさらに配置されていても良い。スペース部を重ね合わせて配置する場合、袋部材に近い内側のスペース部には不活性ガスを充填し、物品の外部側である外側のスペース部に液体を充填することで、スペース部に充填する液体が、袋部に充填される液体に何らかの影響を及ぼすリスクを低減することができる。
一方、図示はしないが、カバー部材が3つ以上の基材を重ね合わせた多重構造である場合、スペース部は、多重構造における少なくとも二つの基材の間に配置されていれば良いが、カバー部材の最外部に位置する基材と隣接する基材との間に配置されていることが好ましい。検知促進機能を発揮しやすいからである。本開示においては、二つの基材の間のみに配置されていても良く、多重構造における複数の基材の重なり方向に複数のスペース部が配置されていても良い。
本開示においては、貫通傷部をより検知しやすくする観点からは、スペース部の数は少ないことが好ましい。カバー部材の面方向に複数のスペース部が配置されている場合、カバー部材には、個々のスペース部を分けるため仕切り部が設けられる。仕切り部は、通常、空気、液体等が充填されない非充填部であり、検知促進機能を有しない。そのため、スペース部の数を少なくすることで、カバー部材全体の面積に占める仕切り部(非充填部)の面積を小さくすることができ、検知促進機能を有するスペース部の面積を大きくすることができる。
また、スペース部の平面視上の大きさは、物品の種類、大きさに応じて適宜選択することができ、特に限定されないが、例えば、0.5cm以上であっても良く、0.7cm以上であっても良く、1cm以上であっても良い。また、スペース部の平面視上の大きさは、例えば、10cm以下であっても良く、5cm以下であっても良い。
スペース部の平面視上の大きさは、一つのスペース部の平面視上の径の最大値をいい、例えば、図9(a)においてxで示される距離をいう。
本開示におけるスペース部は、使用者に対し、貫通傷部の検知を促す検知促進機能を有していれば良く、例えば、貫通傷部以外の傷部の検知を促す第二の検知促進機能を有していて良く、有していなくても良いが、後者がより好ましい。なお、貫通傷部以外の傷部の一例としては、擦り傷、凹みが挙げられる。
カバー部材は、袋部材の少なくとも一部を覆うように配置される部材である。また、カバー部材は物品において上述したスペース部を配置するために用いられる部材である。
本開示におけるカバー部材の配置は、袋部材の少なくとも一部を覆うことができれば特に限定されず、例えば、袋部材全体を覆うようにカバー部が配置されても良く、袋部材の一部のみを覆うようにカバー部材が配置されていても良い。
カバー部材が胴体部を覆うように配置されている場合は、物品としたとき、未開封時においてカバー部材に生じた貫通傷部を検知することができる。また、液体の使用中に、カバー部材に貫通傷部が生じたとき、貫通傷部を検知して液体の使用を中止することができる。具体的に図7(a)~(c)に示すように、カバー部材3が袋部材2の胴体部材22を覆うように配置されている場合は、未開封時および液体の使用中において、カバー部材3に貫通傷部が生じたとき、貫通傷部を検知して、物品自体の使用の中止、または液体の使用の中止をすることができる。
また、カバー部材が胴体部を覆うように配置されている場合は、コストを安くすることができる。
なお、上述したように、カバー部材が袋部材の全体を覆うように配置され、両者が分離している場合、袋部材を一次袋、カバー部材を二次袋と捉えることもできる。
本開示におけるカバー部材は、通常、少なくとも一つの基材を有する。カバー部材は、一つの基材のみを有していても良く、複数の基材を重ね合わせた多重構造を有していても良い。複数の基材を重ね合わせた多重構造である場合、基材の数は特に限定されないが、二つ以上四つ以下であることが好ましく、二つであることがより好ましい。
また、カバー部材に用いられる樹脂のフィルム材料としては、スペース部の状態に応じて適宜選択することが好ましい。例えば、スペース部の状態が気体が充填された状態である場合、または減圧された状態である場合には、ガスバリア性の高いフィルムであることが好ましく、例えば、ポリエチレンおよびナイロンの積層フィルム、エチレン-ビニルアルコール共重合体を含むフィルム等を挙げることができる。
一方、カバー部材が袋部材の一部を覆う袋状である場合、カバー部材は袋部材における胴体部を覆う袋状であることが好ましい。また、この場合、カバー部材と袋部材との一部が接合されていることが好ましい。
また、カバー部材を袋状の形態で形成する場合は、例えばインフレーション成形法を好適に用いることができる。基材同士を接着させる部分を少なくすることができ、検知促進機能を発揮することが可能な部分の面積を広くすることができるからである。
袋部材は、液体を収納する部材である。袋部材は、液体を収納することができればその形態について特に限定されない。通常、袋部材の内外へ液体を出し入れする注出口と、液体を保持する胴体部とを有する。注出口および胴体部は1つの部材で構成されていても良く、複数の部材で構成されていても良い。袋部材が複数の部材で構成されている場合、典型的には、注出口を有する注出部材と、胴体部を有する胴体部材とを有する構成を挙げることができる。注出部材としては、典型的には樹脂の射出成形体を用いることができる。
また、胴体部材としては、典型的にはフィルム材料を用いることができる。
袋部材に用いられる材料、形態等については、液体収納袋の用途等に応じて適宜選択される。公知の液体収納袋に用いられる材料、形態と同様とすることができるため、ここでの記載は省略する。
本開示における液体は、袋部材に収納される内容物である。液体の例は、上述した「液体」の定義の項で説明したため、ここでの説明は省略する。本開示における液体は、薬液、輸液であることがより好ましい。薬液、輸液はその信頼性が極めて高い必要がある。また、薬液、輸液を有する物品は、異物混入等のリスクを回避するため、使用者が短時間で容易に貫通傷部の検知を行うことが要望される。
本開示の物品は、使用者が貫通傷部を容易に検知することができるため、信頼性の低下した薬液を使用するリスクを減らすことができる。
本開示の物品は、袋部材の内容物として、上述した液体以外に、更に固形物を有していても良い。
本開示の物品は、述した「液体」の定義、説明の項目で例示した液体を有する物品に用いることができるが、中でも、医療用途であることが好ましい。
図10(a)、図11(a)に示すように、袋部材2、開口部3Aを有する袋状のカバー部材3を準備する。次に、袋部材に液体を収納する。次に、カバー部材3の開口部3Aから、気体を充填する処理、減圧する処理、または検知用液を充填する処理等のスペース部の状態を調整する処理をする。次に、カバー部材3の基材同士を熱溶着により直接接着させることで、開口部3Aを閉じることにより、図10(b)、図11(b)に示す物品10を製造することができる。なお、図11(a)、(b)に示すように、カバー部材3が袋部材2の注出部材21を覆わず、胴体部材22のみを覆うように配置されている場合は、液体を充填する前に、スペース部の状態を調整する処理を行っても良い。
本開示の液体収納袋は、上述した「A.物品」に記載の物品に用いられる液体収納袋であって、上記袋部材と、上記カバー部材とを有し、上記カバー部材の最外部よりも上記袋部材側に上記スペース部が配置されている。
袋部材、カバー部材、およびスペース部の詳細については、上述した「A.物品」の項で説明した内容と同様であるため、ここでの説明は省略する。
袋部材として、厚さ250μmのポリプロピレンフィルム製であり、サイズが13cm×20cmである袋を準備した。上記袋部材に水を充填させて封止して、サンプルを得た。なお、厚さ250μmのポリプロピレンフィルムは、一般的な輸液バッグの材料として用いられるフィルムである。
上記サンプルに対し、外部から針を刺して貫通傷部を生じさせ、下記の確認方法1~3により、貫通傷部の検知の可否を評価した。針として、33G(外径0.2mm)の針および18G(外径1.2mm)の針を用いた場合をそれぞれ評価した。なお、後述する実施例の評価2~6においても、針としては33Gの針、および18Gの針を用いた場合をそれぞれ評価した。
確認方法1として、サンプルを机の上に置いた状態で目視により、5分以内に水の漏出が観察された場合を○、5分経過後も水の漏出が観察されなかった場合は×として評価した。また、確認方法2として、サンプルを手で持った際、水の漏出が確認された場合を○、水の漏出が確認されなかった場合を×として評価した。確認方法3として、サンプルに対し手で圧をかけた際、水の漏出が確認された場合を○、水の漏出が確認されなかった場合を×として評価した。結果を表1に示す。
スペース部に気体が充填された状態の物品を作製し、気体の漏出による検知促進機能を評価した。
比較例のサンプルと同様にして、厚さ250μmのポリプロピレンフィルム製であり、サイズ13cm×20cmの袋部材を準備し、水を充填させて封止した。次に、厚みが20μmであるポリエチレンフィルムの三方をヒートシールして袋状のカバー部材を作製した。カバー部材のサイズは、18cm×30cmであった。水が充填された袋部材を、上記袋状のカバー部材に入れ、スペース部の圧力が30kPa(0.03MPa)になるように空気を充填し、四方目をヒートシールした。以上の手順により、物品を得た。
カバー部材として、厚みが40μm、90μm、200μmであるポリエチレンフィルムをそれぞれ用いたこと以外は、実施例1-1と同様の方法により物品を得た。
実施例1-1~実施例1-4で得られた物品のカバー部材に対し、外部側から針を刺し、空気が抜けたことによる貫通傷部の検知の可否を評価した。確認方法4として、物品を机の上に置いた状態で目視により、5分以内にカバー部材の萎みが観察された場合を○、5分経過後も袋のカバー部材の萎みが観察されなかった場合を×として評価した。結果を表1に示す。
また、確認方法5として、物品を手で持った際、空気の漏出が確認された場合を○、空気の漏出が確認されなかった場合を×として評価した。結果を表2に示す。
また、33Gの針を用いた貫通傷部に対しては、カバー部材の厚さが20μm、40μm、90μmである実施例1-1~実施例1-3は、確認方法4および確認方法5のいずれの確認方法によっても、気体の漏出による検知を容易に行うことができることが確認された。比較例では、目視および手触りによる検知が難しかったのに対し、実施例1-1~実施例1-3では、目視および手触りによる検知が可能となることが確認された。一方、実施例1-4においては、確認方法4および確認方法5のいずれの確認方法によっても、気体の漏出による検知を行うことが難しいことが確認された。その理由としては、カバー部材の厚さが200μmと厚く、気体の漏出が十分に進まなかったためであると推測される。
カバー部材が複数のスペース部を有し、各スペース部に気体が充填された状態の物品、すなわち、エアーキャップ状のカバー部材を有する物品を作製し、気体の漏出による検知促進機能を評価した。
厚みが20μmであるポリエチレンフィルムの袋に、容積の8割程度まで空気を充填させて、サイズ17cm×24cmの袋を2個作製した。作製した2個の袋の長辺同士を貼り合せてスペース部が2個であるエアーキャップ状のカバー部材を作製した。2個のエアーキャップ状のカバー部材を間に、水が充填された袋部材を挿入し、物品を得た。なお、袋部材のサイズは13cm×20cmであった。
カバー部材として、厚みが40μm、90μm、200μmであるポリエチレンフィルムをそれぞれ用いたこと以外は、実施例2-1と同様の方法により物品を得た。
実施例2-1~実施例2-4で得られた物品のカバー部材に対し、外部側から針を刺し、空気が抜けたことによる貫通傷部の検知の可否を、上述した確認方法4および確認方法5で評価した。結果を表3に示す。
また、33G(φ0.2mm)の針を用いた貫通傷部に対しては、カバー部材の厚さが20μm、40μm、90μmである実施例2-1~実施例2-3は、確認方法4および確認方法5のいずれの確認方法によっても、気体の漏出による検知を容易に行うことができることが確認された。比較例では、目視および手触りによる検知が困難であったのに対し、実施例2-1~実施例2-3では、目視および手触りによる検知が可能となることが確認された。一方、実施例2-4においては、確認方法4および確認方法5のいずれの確認方法によっても、気体の漏出による検知を行うことが難しいことが確認された。その理由としては、カバー部材の厚さが200μmと厚く、気体の漏出が十分に進まなかったためであると推測される。
スペース部に検知用液が充填された状態の物品を作製し、検知用液の漏出による検知促進機能を評価した。
比較例のサンプルと同様にして、厚さ250μmのポリプロピレンフィルム製であり、サイズ13cm×20cmの袋部材を準備し、水を充填させて封止した。次に、厚みが20μmであるポリエチレンフィルムの三方をヒートシールして袋状のカバー部材を作製した。カバー部材のサイズは、18cm×30cmであった。水が充填された袋部材を、上記袋状のカバー部材に入れ、スペース部の容積の約8割程度まで検知用液を充填した後、四方目をヒートシールして物品を得た。検知用液として、水に界面活性剤を加えたものを用いた。
カバー部材として、厚みが40μm、90μmであるポリエチレンフィルムをそれぞれ用いたこと以外は、実施例3-1と同様の方法により物品を得た。
実施例3-1~実施例3-3で得られた物品のカバー部材に対し、外部側から針を刺し、検知用液が漏出したことによる貫通傷部の検知の可否を評価した。確認方法6として、物品を机の上に置いた状態で目視により、5分以内に検知用液の漏出が観察された場合を○、5分経過後も検知用液の漏出が観察されなかった場合を×として評価した。また、確認方法7として、物品を手で持った際、検知用液の漏出が確認された場合を○、検知用液の漏出が確認されなかった場合を×として評価した。また、確認方法8として、物品に対し手で圧をかけた際、検知用液の漏出が確認された場合を○、検知用液の漏出が確認されなかった場合を×として評価した。結果を表4に示す。
また、33Gの針を用いた貫通傷部に対しては、確認方法6による検知は難しかったものの、確認方法7および確認方法8のいずれの確認方法によっても、検知用液の漏出による検知を容易に行うことができることが確認された。比較例では、33Gの針を用いた貫通傷部に対しては、手触りによる検知が困難であったのに対し、実施例3-1~実施例3-3では、手触りによる検知が可能となることが確認された。
カバー部材が複数のスペース部を有し、各スペース部に検知用液が充填された状態の物品を作製し、検知用液の漏出による検知促進機能を評価した。
厚みが20μmであるポリエチレンフィルムの袋に、容積の8割程度まで検知用液として水を充填させた、サイズ17cm×24cmの袋を2個作製した。作製した2個の袋の長辺同士を貼り合せてスペース部が2個であるエアーキャップ状のカバー部材を作製した。2個のエアーキャップ状のカバー部材を間に、水が充填された袋部材を挿入し、物品を得た。なお、液収納袋のサイズは13cm×20cmであった。
カバー部材として、厚みが40μm、90μmであるポリエチレンフィルムをそれぞれ用いたこと以外は、実施例4-1と同様の方法により物品を得た。
検知用液として水の代わりに、水に界面活性剤を加えたものを用いた点以外は、実施例4-1~実施例4-3と同様の方法により物品を得た。
実施例4-1~実施例4-6で得られた物品のカバー部材に対し、外部側から針を刺し、検知用液が漏出したことによる貫通傷部の検知の可否を、上述した確認方法6~確認方法8で評価した。結果を表5に示す。
また、実施例4-4~実施例4-6の結果から、18Gおよび33Gのいずれの針を用いた貫通傷部に対して、確認方法6~確認方法8のいずれの確認方法によっても、検知用液の漏出による検知を容易に行うことができることが確認された。
実施例3-1~実施例3-3および実施例4-4~実施例4-6の結果から、複数のスペース部に検知用液を充填させることで、貫通傷部の検知がより容易に行えることが示唆された。
スペース部の圧力が外部の圧力よりも減圧された状態の物品を作製し、気体の流入による検知促進機能を評価した。
サイズ13cm×20cmの袋部材を準備し、空気が入らないように水を充填させた。
次に、厚みが20μmであるポリエチレンフィルムの三方をヒートシールして袋状のカバー部材を作製した。カバー部材のサイズは、18cm×30cmであった。水が充填された袋部材を、上記袋状のカバー部材に入れ、-0.1MPaの雰囲気下で四方目をシールした。以上の手順により、物品を得た。
カバー部材として、厚みが40μm、90μm、200μmであるポリエチレンフィルムをそれぞれ用いたこと以外は、実施例5-1と同様の方法により物品を得た。
実施例5-1~実施例5-4で得られた物品のカバー部材に対し、外部側から針を刺し、空気の流入による貫通傷部の検知の可否を評価した。確認方法9として、物品を机の上に置いた状態で目視により、5分以内にカバー部材の膨らみが観察された場合を○、5分経過後も上記カバー部材の膨らみが観察されなかった場合を×として評価した。結果を表6に示す。
2 … 袋部材
3 … カバー部材
10 … 物品
20 … 液体収納袋
S … スペース部
Claims (5)
- 液体と、前記液体を収納するための袋部材と、前記袋部材の少なくとも一部を覆うように配置されたカバー部材とを有する物品であって、
前記カバー部材の最外部よりも前記袋部材側には、前記袋部材の内部および前記物品の外部のそれぞれから隔離されたスペース部が配置されており、
前記スペース部は、前記カバー部材の最外部に生じた貫通傷部が前記スペース部に到達したとき、使用者に対して、前記貫通傷部の検知を促す検知促進機能を有し、
前記検知促進機能は、前記貫通傷部により生じた前記スペース部の状態の変化を、使用者に対して認識可能とすることにより、前記貫通傷部の検知を促す機能であり、
前記カバー部材は、少なくとも二つの基材を重ね合わせた多重構造を有し、
前記スペース部は、前記二つの基材の間に配置され、前記カバー部材の面方向に複数個配置されており、
前記複数個のスペース部は、両面が前記スペース部に接する仕切り部により仕切られている、物品。 - 前記スペース部には、不活性ガスが充填されている、請求項1に記載の物品。
- 前記スペース部の数は、2個以上1000個以下である、請求項1または請求項2に記載の物品。
- 前記スペース部の大きさは、0.5cm以上10cm以下である、請求項1から請求項3までのいずれかの請求項に記載の物品。
- 請求項1から請求項4までのいずれかの請求項に記載の物品に用いられる液体収納袋であって、
前記袋部材と、前記カバー部材とを有し、前記カバー部材の最外部よりも前記袋部材側に前記スペース部が配置されている、液体収納袋。
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