JP7203874B2 - コイル装着装置及びコイル装着方法 - Google Patents
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Description
本発明は、コイル装着装置及びコイル装着方法に関する。
従来、円環状に巻かれたコイルをステータコアの内側に挿入し、コイルのスロット収容部をステータコアのスロットに対して内方から外方に向かって移動させることによって、ステータコアのスロットに装着する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
上記従来技術は、外周に溝を有する円筒状の挿入治具にコイルを巻き付け、ステータコアの内側に挿入した後、挿入治具に巻き付けられたコイルを拡張治具によって拡径させるようにしている。
しかしながら、上記従来技術では、ステータコアの内側に挿入したコイルを拡径させてスロット内に挿入するための具体的な装置及び方法は開示されていない。
本発明は、円環状に巻き取られた帯状コイルを、ステータコアの内側からスロット内に簡単且つ確実に挿入することができるコイル装着装置及びコイル装着方法を提供することを目的とする。
(1) 本発明に係るコイル装着装置は、帯状コイル(例えば、後述の帯状コイル100)の直状部(例えば、後述の直状部102)をステータコア(例えば、後述のステータコア2)の内方からスロット(例えば、後述のスロット22)に挿入することによって、前記帯状コイルを前記ステータコアの周方向に沿って装着するコイル装着装置(例えば、後述のコイル装着装置1)であって、前記ステータコアと、外周に櫛歯状溝(例えば、後述の櫛歯状溝43)が放射状に配列されるとともに、外径が前記ステータコアの内径よりも小径に形成され、前記帯状コイルの前記直状部を前記櫛歯状溝に外方から挿入することによって、前記帯状コイルを円環状に巻き取るコイル巻取治具(例えば、後述のコイル巻取治具4)と、前記ステータコアを所定の位置及び姿勢に固定するステータコア固定治具(例えば、後述のステータコア固定治具3)と、前記コイル巻取治具に巻き取られた前記帯状コイルを、前記帯状コイルの内方から外方に向けて拡張させるコイル拡張機構部(例えば、コイル拡張機構部5)と、を備え、前記コイル拡張機構部は、前記帯状コイルが巻き取られた前記コイル巻取治具を、前記ステータコア固定治具に固定された前記ステータコアの内側において、前記スロットに対して前記櫛歯状溝の位相を合わせた状態で保持する保持部(例えば、後述の保持部52)と、前記保持部によって保持された前記コイル巻取治具における前記帯状コイルの前記直状部よりも側端寄りの位置(例えば、後述のコイルエンド部103の位置)を、前記帯状コイルの内方から外方に向けて拡張させるように押圧することによって、前記帯状コイルを拡張させ、前記直状部を前記スロットに挿入するコイル拡張部(例えば、後述のコイル拡張部53)と、を有する。
(2) 上記(1)に記載のコイル装着装置において、コイル拡張部は、前記保持部の外周に円環状に配列される複数の駒部材(例えば、後述の駒部材533)を有し、前記複数の駒部材は、前記コイル巻取治具に巻き取られた前記帯状コイルの前記直状部よりも前記側端寄りの位置の内側に挿入されて隣り合う前記駒部材間の距離を互いに広げるように移動することによって拡径可能に設けられてもよい。
(3) 上記(1)又は(2)に記載のコイル装着装置において、前記コイル拡張機構部は、前記ステータコアの内側に保持される前記コイル巻取治具の軸方向の両側に、それぞれ前記コイル巻取治具に対して当接する方向及び離隔する方向に設けられてもよい。
(4) 本発明に係るコイル装着方法は、帯状コイル(例えば、後述の帯状コイル100)の直状部(例えば、後述の直状部102)をステータコア(例えば、後述のステータコア2)の内方からスロット(例えば、後述のスロット22)に挿入することによって、前記帯状コイルを前記ステータコアの周方向に沿って装着するコイル装着方法であって、外周に櫛歯状溝(例えば、後述の櫛歯状溝43)が放射状に配列されるとともに、外径が前記ステータコアの内径よりも小径に形成されるコイル巻取治具(例えば、後述のコイル巻取治具4)の前記櫛歯状溝に、前記直状部を外方から挿入することによって前記帯状コイルを円環状に巻き取るコイル巻取工程と、前記帯状コイルが巻き取られた前記コイル巻取治具を前記ステータコアの内側に挿入し、前記スロットに対して前記櫛歯状溝の位相を合わせた状態で保持するコイル巻取治具保持工程と、保持された前記コイル巻取治具における前記帯状コイルの前記直状部よりも側端寄りの位置(例えば、後述のコイルエンド部103の位置)を、前記帯状コイルの内方から外方に向けて拡張させるように押圧することによって、前記帯状コイルを拡張させ、前記直状部を前記ステータコアの前記スロットに挿入するコイル拡張工程と、を備える。
(5) 上記(4)に記載のコイル装着方法において、前記コイル拡張工程は、前記ステータコアの内側に保持される前記コイル巻取治具の軸方向の両側からそれぞれ行われてもよい。
(6) 上記(4)又は(5)に記載のコイル装着方法において、前記コイル拡張工程は、円環状に配列される複数の駒部材(例えば、後述の駒部材533)を、前記コイル巻取治具に巻き取られた前記帯状コイルの前記直状部よりも前記側端寄りの位置の内側に挿入し、隣り合う前記駒部材間の距離を互いに広げるように移動させることによって拡径させるようにしてもよい。
上記(1)によれば、櫛歯状溝の位置をステータコアのスロットの位相に合わせた状態でコイル巻取治具を保持し、円環状に巻き取られた帯状コイルの直状部よりも側端寄りの位置をコイル拡張機構部によって、帯状コイルの内方から外方に向けて拡張させるように押圧することによって、帯状コイルの直状部を、櫛歯状溝をガイドとしてステータコアと干渉することなく、ステータコアの内側からスロット内に簡単且つ確実に挿入することができる。
上記(2)によれば、円環状に配列される複数の駒部材を広げるように移動させることによって、帯状コイルを内方から外方に向けて容易に拡張させることができる。
上記(3)によれば、コイル巻取治具の軸方向の両側からそれぞれ帯状コイルを拡張させることができるため、帯状コイルの直状部を効率良くスロット内に挿入することができる。
上記(4)によれば、櫛歯状溝の位置をステータコアのスロットの位相に合わせた状態でコイル巻取治具を保持し、円環状に巻き取られた帯状コイルの直状部よりも側端寄りの位置を、帯状コイルの内方から外方に向けて拡張させるように押圧することによって、帯状コイルの直状部を、櫛歯状溝をガイドとしてステータコアと干渉することなく、ステータコアの内側からスロット内に簡単且つ確実に挿入することができる。
上記(5)によれば、円環状に配列される複数の駒部材を広げるように移動させることによって、帯状コイルを内方から外方に向けて容易に拡張させることができる。
上記(6)によれば、コイル巻取治具の軸方向の両側からそれぞれ帯状コイルを拡張させることができるため、帯状コイルの直状部を効率良くスロット内に挿入することができる。
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。図1に示すように、コイル装着装置1は、ステータコア2と、ステータコア2を固定するステータコア固定治具3と、ステータコア2の内側に挿入され、帯状コイル100を円環状に巻き取ったコイル巻取治具4と、コイル巻取治具4に巻き取られた帯状コイル100を拡張させるコイル拡張機構部5と、を備える。
ステータコア2は、図2及び図3に示すように、例えば、薄肉のコアプレートが複数積層された積層体からなる円環部21を有する。ステータコア2は、ステータコア2の軸方向に貫通する複数のスロット22を有する。スロット22は、円環部21の周方向に沿って一定の間隔で放射状に配列され、円環部21の径方向の内方に向けて開口する開口部22aを有する。本実施形態のステータコア2は、72個のスロット22を有する。ステータコア2の円環部21の外周には、一定の間隔で突出する6つの耳部23を有する。
ステータコア固定治具3は、図1、図2及び図3に示すように、ステータコア2の軸方向の寸法に略等しい軸方向の寸法を有する六角柱形状を有し、ステータコア2を挿入して配置可能なステータコア挿入孔31を中央に有する。本実施形態のコイル装着装置1において、ステータコア固定治具3は、ステータコア挿入孔31内に固定されたステータコア2の軸方向が水平方向になるように、コイル装着装置1の基台11の中央部に固定される。
ステータコア固定治具3は、ステータコア挿入孔31内のステータコア2を所定の位置及び姿勢に固定する。詳しくは、ステータコア固定治具3は、図2及び図3に示すように、ステータコア2の6つの耳部23の位置に対応して、ステータコア挿入孔31内に対して突出及び後退するように移動可能な6つのコア押さえブロック32を有する。ステータコア固定治具3は、ステータコア挿入孔31内にステータコア2が挿入された後、コア押さえブロック32を、図示しないシリンダ等のアクチュエータの駆動によって、それぞれステータコア挿入孔31内に向けて突出させる。これによって、コア押さえブロック32は、図2に示すように、それぞれステータコア2の耳部23を把持し、ステータコア挿入孔31内のステータコア2を所定の位置及び姿勢に固定する。
ステータコア2のスロット22には、図2及び図3に示すように、それぞれ絶縁紙24が予め装着されている。絶縁紙24は、ステータコア2を軸方向から見たときのスロット22の略コ字状の内面形状に倣うように、略コ字状に折り曲げられて形成される。スロット22内に装着された絶縁紙24は、図4に示すように、スロット22からステータコア2の軸方向に所定の高さで突出するカフス部24aを有する。カフス部24aは、スロット22からステータコア2の軸方向の両外側にそれぞれ突出している。
図2に示すように、予めステータコア2が固定されたステータコア固定治具3の軸方向の両端面3a,3aには、それぞれ複数のカフスガイド33が周方向に沿って一定の間隔で放射状に配列するように取り付けられる。カフスガイド33は、それぞれ図示しないシリンダ等のアクチュエータの駆動によって、ステータコア2の径方向に沿って移動可能に設けられる。なお、図3では、コア押さえブロック32の説明の理解を容易にするため、カフスガイド33は図示を省略している。
カフスガイド33は、ステータコア2の径方向に沿って長尺な薄板状に形成される。図5に示すように、カフスガイド33の内端33a側には、ステータコア固定治具3の内方に向けて開口し、絶縁紙24のカフス部24aを両側から支持するガイド溝331がカフスガイド33の長さ方向に沿って設けられる。ガイド溝331は、ステータコア2のスロット22の周方向に沿う幅よりも僅かに狭い切り欠き幅を有してコ字状に切り欠かれている。カフスガイド33のガイド溝331よりも外端33b側には、カフスガイド33の径方向の移動範囲を規制する長孔332が設けられる。
ステータコア固定治具3の両端面3a,3aには、カフスガイド33にそれぞれ対応して一対ずつ設けられる内径側規制ピン34a及び外径側規制ピン34bを有する。カフスガイド33の長孔332は、一対の内径側規制ピン34a及び外径側規制ピン34bを内側に係合させて、ステータコア固定治具3の両端面3a,3aに取り付けられる。
内径側規制ピン34aは、カフスガイド33がステータコア固定治具3の径方向外側に向けて移動した際に、長孔332の内端部332aに当接することによって、図2に示すように、カフスガイド33を最も径方向外側の非ガイド位置に位置決めする。非ガイド位置では、カフスガイド33の内端33aは、ステータコア挿入孔31よりも径方向の外側に配置される。
外径側規制ピン34bは、カフスガイド33がステータコア固定治具3の径方向内側に向けて移動した際に、長孔332の外端部332bに当接することによって、カフスガイド33を最も径方向内側のガイド位置に位置決めする。このとき、カフスガイド33の内端33aは、コイル巻取治具4よりも径方向外側に配置される(図18及び図19参照)。
なお、ステータコア2は、ステータコア固定治具3のステータコア挿入孔31に、軸方向のいずれか一方側から挿入されるため、ステータコア2の挿入側と反対側に配置されるカフスガイド33は、図5に示すように、外径側規制ピン34bが長孔332の内端部332aに当接した状態で、内端33a側がステータコア2の円環部21に干渉するように配置されていてもよい。しかし、内径側規制ピン34a及び外径側規制ピン34bは、ステータコア固定治具3の内部に設けたシリンダ等のアクチュエータを有する図示しない進退機構によって、ステータコア固定治具3の表面に対する突出及び陥没を選択可能に構成してもよい。これによって、図5に示すようにカフスガイド33が配置される場合、必要に応じて、内径側規制ピン34a及び外径側規制ピン34bをステータコア固定治具3の表面に対して陥没させることによって、カフスガイド33をさらに径方向外側に移動させ、図2に示すように、カフスガイド33をステータコア2の円環部21から完全に退避させた状態にすることができる。
本実施形態のステータコア固定治具3の両端面3a,3aには、それぞれ36個ずつのカフスガイド33を有する。カフスガイド33は、ステータコア固定治具3の径方向内側に移動してガイド位置に位置決めされた際に、隣り合うカフスガイド33,33間の内端33a側の周方向の離隔距離が、カフスガイド33のガイド溝331の切り欠き幅に一致するように配置される。
コイル巻取治具4は、図6に示すように、略円筒状の治具本体41と、治具本体41の外周に放射状に突出する複数の櫛歯部42と、周方向に隣り合う櫛歯部42の間によって形成される複数の櫛歯状溝43と、治具本体41の中心に開口する軸孔44と、を有する。
櫛歯部42及び櫛歯状溝43は、治具本体41の軸方向の両端部にそれぞれ設けられる。治具本体41の両端部の櫛歯部42及び櫛歯状溝43のそれぞれの位相は軸方向に揃えられている。治具本体41の周方向に配列される櫛歯状溝43の数は、ステータコア2に設けられるスロット22の数に一致している。したがって、本実施形態のコイル巻取治具4は、72個の櫛歯状溝43を有する。コイル巻取治具4は、ステータコア2の円環部21の内側に挿入可能となるように、櫛歯部42の先端の位置によって規定されるコイル巻取治具4の外径が、ステータコア2の内径よりも小径になるように形成されている。
コイル巻取治具4には、ステータコア2に装着するための帯状コイル100が円環状に巻き取られる。帯状コイル100は、断面形状が略矩形状の平角導線101によって形成される長尺帯状のコイルである。平角導線101は、例えば、銅、アルミニウム等の導電性の高い金属によって形成される。
帯状コイル100は、図7に示すように、複数の直状部102と複数のコイルエンド部103とを有する。直状部102は、ステータコア2のスロット22内に挿入される部位であり、それぞれ略直線状に延びて一定の間隔で平行に配置される。コイルエンド部103は、直状部102よりも帯状コイル100の側端寄りの位置にそれぞれ配置され、隣り合う直状部102の一方端部同士と他方端部同士とを山型状に交互に連結する。コイルエンド部103は、帯状コイル100がステータコア2のスロット22に装着された際に、スロット22からステータコア2の軸方向にそれぞれ突出するように配置される部位である。本実施形態の帯状コイル100は、複数の直状部102と複数のコイルエンド部103とがそれぞれ折り曲げ形成された6本の平角導線101を、直状部102が一定の間隔で平行に並列するように束ねることによって、長尺帯状に形成される。
コイル巻取治具4は、図8に示すように、ステータコア2の内側に挿入される前に、帯状コイル100の直状部102を櫛歯状溝43の外方からそれぞれ順次挿入することによって、帯状コイル100を多重に巻き取っている。これによって、図9に示すように、帯状コイル100が円環状に巻き取られたコイル巻取治具4が構成される(コイル巻取工程)。
コイル巻取治具4の周方向に沿う櫛歯状溝43の溝幅は、帯状コイル100の直状部102を収容可能な幅を有するが、ステータコア2の周方向に沿うスロット22の開口部22aの開口幅よりも僅かに狭く形成される。
治具本体41の軸方向の櫛歯部42間の距離は、帯状コイル100の直状部102の長さに対応している。そのため、コイル巻取治具4に巻き取られた帯状コイル100の直状部102は、治具本体41の両端部の同位相の櫛歯状溝43,43に亘って収容される。多重に巻き取られた帯状コイル100のコイルエンド部103は、櫛歯状溝43から治具本体41の軸方向にそれぞれ円筒状に突出する。このようにして帯状コイル100が円環状に巻き取られたコイル巻取治具4は、図1、図2及び図3に示すように、ステータコア固定治具3に固定されたステータコア2の内側に、例えば、図示しないロボットの動作によって挿入される。なお、図1では、コイル巻取治具4の帯状コイル100は図示を省略している。
ステータコア2の内側に挿入されたコイル巻取治具4は、ステータコア固定治具3を間に挟んでその両側にそれぞれ配置されるコイル拡張機構部5によって、所定の位置及び姿勢に保持される。本実施形態のコイル拡張機構部5は、図1に示すように、略円柱状の外観形状を有し、ステータコア2の内側に挿入されたコイル巻取治具4に対して軸方向から対向している。
図1及び10に示すように、コイル拡張機構部5には、ステータコア固定治具3を固定する基台11上に、ステータコア固定治具3を挟んで対面するように、一対の支持基板12,12が立設される。コイル拡張機構部5は、支持基板12からステータコア2の内側に挿入されるコイル巻取治具4に向けてそれぞれ水平方向に突出している。コイル拡張機構部5は、支持基板12が図示しないモータ等の駆動によって基台11上を直線的に移動することによって、コイル巻取治具4に対して当接する方向及び離隔する方向にそれぞれ移動可能に設けられる。
コイル拡張機構部5は、図10及び図11に示すように、支持基板12からステータコア2の内側に挿入されたコイル巻取治具4に向けて延びる主軸部51を中心に有する。主軸部51の先端には、ステータコア2の内側においてコイル巻取治具4を所定の位置及び姿勢に保持する保持部52が設けられる。保持部52は、主軸部51の先端に配置される円形状の端板部521の中心から突出する軸突部522と、軸突部522の径方向外側の端板部521から軸突部522と同一方向に突出する1つの位置決め突部523と、を有する。軸突部522は、コイル巻取治具4の軸孔44に嵌合する。位置決め突部523は、コイル巻取治具4の軸孔44の径方向外側に設けられる1つの位置決め孔45に嵌合する。
コイル巻取治具4の位置決め孔45及び保持部52の位置決め突部523は、互いに嵌合した際に、ステータコア固定治具3に固定されるステータコア2のスロット22の位相と、ステータコア2の内側に挿入されたコイル巻取治具4の櫛歯状溝43の位相とが一致するように、予め位置決めされて設けられている。したがって、コイル拡張機構部5がステータコア固定治具3に向けて移動し、コイル巻取治具4の軸孔44及び位置決め孔45と保持部52の軸突部522及び位置決め突部523とが嵌合すると、図5に示すように、コイル巻取治具4は、ステータコア2のスロット22に対して櫛歯状溝43の位相を合わせた状態で保持される。これによって、ステータコア2のスロット22の内部とコイル巻取治具4の櫛歯状溝43の内部とが、径方向に連通する。
コイル拡張機構部5は、主軸部51の外周側にコイル拡張部53を有する。コイル拡張部53は、主軸部51の外周側に嵌合する可動筒部531と、可動筒部531のさらに外周側に配置される複数の可動腕部532と、可動腕部532の先端にそれぞれ設けられる複数の駒部材533と、を有する。
可動筒部531は、主軸部51の長さよりも短い長さを有し、支持基板12の後方に配置されるシリンダ等のアクチュエータ54の駆動によって、主軸部51の軸方向に沿って摺動可能に設けられる。
可動腕部532は、主軸部51の軸方向に沿って延び、可動筒部531の外周側において周方向に一定の間隔をおいて複数配置される。本実施形態のコイル拡張部53は、主軸部51の周方向に沿って配列される12本の可動腕部532を有する。支持基板12の表面には、主軸部51を中心にして径方向外側に向けて放射状に配列される12本のガイドレール121が設けられる。可動腕部532の後端532bは、それぞれガイドレール121に沿って移動可能に取り付けられる。可動腕部532は、ガイドレールから可動筒部531の軸方向に沿って屈曲して保持部52の外周近傍まで延びている。可動腕部532の先端532aは、それぞれ回動可能に取り付けられる2つずつのリンク部534を介して、可動筒部531の先端側の外周面に連結される。
駒部材533は、略扇形状を有し、可動腕部532の先端にそれぞれ1つずつ設けられる。したがって、本実施形態のコイル拡張部53は、12個の駒部材533を有する。図13及び図14に示すように、駒部材533は、周方向の一方端部に一対の係合突片533aをそれぞれ有し、周方向の他方端部に、一対の係合突片533aと係合する一対の係合溝533bをそれぞれ有する。一対の係合突片533aは、コイル拡張部53の軸方向に平行に配置され、それぞれコイル拡張部53の周方向に向けて平行に突出している。12個の駒部材533は、周方向に隣り合う駒部材533,533の一対の係合突片533aと一対の係合溝533bとが互いに係合し合うことによって、保持部52の外周側に円環状に配列される。
図10、図11及び図12に示すコイル拡張機構部5のコイル拡張部53は、可動筒部531が主軸部51の後端側(支持基板12側)に後退した状態を示す。このとき、可動腕部532は、それぞれ放射状のガイドレール121の内方端側に移動し、可動筒部531の外周面に最も近接するように配置される。これによって、コイル拡張部53は、図13及び図14に示すように、12個の駒部材533を互いに密接させるように最も縮径する。コイル拡張部53が最も縮径したときの外径は、帯状コイル100が巻き取られたコイル巻取治具4から軸方向に円筒状に突出するコイルエンド部103の内径よりも僅かに小さい。コイル拡張機構部5は、コイル拡張部53が縮径した状態で、コイル巻取治具4の軸方向に円筒状に突出するコイルエンド部103に挿入され、保持部52によってコイル巻取治具4を保持する。
次に、可動筒部531が、アクチュエータ54の駆動によって、主軸部51に沿ってコイル巻取治具4に向けて前進すると、可動筒部531に連結されるリンク部534が、それぞれ可動筒部531の径方向外側に向けて張り出すように回動し、可動腕部532をガイドレールに沿ってそれぞれ外側に平行移動させる。これによって、12本の可動腕部532は、可動筒部531から径方向外側に離隔する。このとき、コイル拡張部53は、図15、図16及び図17に示すように、隣り合う駒部材533間の距離を互いに広げるように移動させて拡径する。最も拡径したコイル拡張部53の外径は、コイル巻取治具4の外径よりもやや大きい。
なお、図16及び図17に示すように、コイル拡張部53が最も拡径した際、隣り合う駒部材533,533同士は離隔するが、駒部材533,533間には係合溝533bから離れた一対の係合突片533aが周方向に張り出している。そのため、コイル拡張部53を周方向に見た場合、隣り合う駒部材533,533の間は一対の係合突片533aによって連続し、コイル拡張部53を径方向に貫通するような溝部は形成されない。
次に、コイル装着装置1において、コイル巻取治具4に巻き取られた帯状コイル100を、ステータコア固定治具3に固定されたステータコア2の内側からスロット22に挿入する方法について説明する。
コイル巻取治具4は、ステータコア2の内側に挿入される前に、上記のように、コイル巻取工程において帯状コイル100が円環状に巻き取られる。帯状コイル100が円環状に巻き取られたコイル巻取治具4がステータコア固定治具3に固定されたステータコア2の内側に挿入された後は、図18に示すように、カフスガイド33が、図示しないアクチュエータの駆動によって径方向内側に向けて移動する。
カフスガイド33が径方向内側に向けて移動すると、図19に示すように、カフスガイド33のガイド溝331が、対応するスロット22内の絶縁紙24のカフス部24aを周方向の両側から挟み込むように支持する。このとき、周方向に隣り合うカフスガイド33,33の内端33a,33a同士の間も、ガイド溝331と同様にして、カフスガイド33,33間に配置されるスロット22内の絶縁紙24のカフス部24aを周方向の両側から挟み込むように支持する。ガイド溝331の切り欠き幅及び隣り合うカフスガイド33,33の内端33a,33a同士の離隔距離は、スロット22の周方向に沿う幅よりも僅かに狭いため、ガイド溝331及びカフスガイド33,33間によってカフス部24aが両側から支持された絶縁紙24は、それぞれスロット22内の所定の位置に位置決めされる。
なお、図18では、コイル巻取治具4を保持するコイル拡張機構部5は図示されていないが、カフスガイド33によるカフス部24aの支持動作は、ステータコア固定治具3にステータコア2が固定された後で、後述するコイル拡張部53の動作によって帯状コイル100がステータコア2のスロット22内に挿入される前までの適宜のタイミングで行われる。
ステータコア2の内側に挿入されたコイル巻取治具4は、コイル拡張部53を縮径させた状態のコイル拡張機構部5がコイル巻取治具4に向けてそれぞれ移動することによって、コイル拡張機構部5の保持部52によって保持される(コイル巻取治具保持工程)。
さらに、カフスガイド33によってスロット22内の絶縁紙24が位置決めされた後、図20及び図21に示すように、コイル拡張機構部5のコイル拡張部53がそれぞれアクチュエータ54の駆動によって拡径する。これによって、コイル拡張部53は、コイル巻取治具4に巻き取られた帯状コイル100のコイルエンド部103を、帯状コイル100の内方から外方に向けて拡張させるように押圧する。コイル拡張部53によって押圧された帯状コイル100は徐々に拡張する。これに伴い、直状部102は、櫛歯状溝43にガイドされながら、櫛歯状溝43と連通するステータコア2のスロット22に向けて移動する。これによって、帯状コイル100の直状部102は、ステータコア2のスロット22に干渉することなく、スロット22の開口部22aからスロット22内に挿入される(コイル拡張工程)。このとき、スロット22内の絶縁紙24は、それぞれカフスガイド33によって所定の位置に位置決めされ、しかも、櫛歯状溝43の溝幅は、スロット22の開口部22aの開口幅よりも僅かに狭く形成されるため、帯状コイル100の直状部102は、スロット22の開口部22aを円滑に通過することができるとともに、絶縁紙24をかみ込むことは抑制される。
2つのコイル拡張機構部5のコイル拡張部53がそれぞれ最も拡径すると、コイル巻取治具4の帯状コイル100の直状部102は、図22に示すように、ステータコア2のスロット22内にそれぞれ完全に挿入され、帯状コイル100はステータコア2のスロット22内に装着される。2つのコイル拡張機構部5のコイル拡張部53は、同時に拡径するように動作してもよいし、直状部102がスロット22の開口部22aに対して径方向に斜めに挿入されるように、時間差を設けて順次拡径するように動作してもよい。
その後、カフスガイド33が径方向外側に移動してステータコア2の端面から完全に退避するとともに、コイル拡張部53がそれぞれ縮径し、コイル拡張機構部5はそれぞれコイル巻取治具4から離隔する。これによって、図23に示すように、ステータコア2のスロット22内に帯状コイル100が装着されたステータ200が得られる。
以上のように、本実施形態のコイル装着装置1は、帯状コイル100の直状部102をステータコア2の内方からスロット22に挿入することによって、帯状コイル100をステータコア2の周方向に沿って装着するコイル装着装置1である。コイル装着装置1は、ステータコア2と、外周に櫛歯状溝43が放射状に配列されるとともに、外径がステータコア2の内径よりも小径に形成され、帯状コイル100の直状部102を櫛歯状溝43に外方から挿入することによって、帯状コイル100を円環状に巻き取るコイル巻取治具4と、ステータコア2を所定の位置及び姿勢に固定するステータコア固定治具3と、コイル巻取治具4に巻き取られた帯状コイル100を、帯状コイル100の内方から外方に向けて拡張させるコイル拡張機構部5と、を備え、コイル拡張機構部5は、帯状コイル100が巻き取られたコイル巻取治具4を、ステータコア固定治具3に固定されたステータコア2の内側において、スロット22に対して櫛歯状溝43の位相を合わせた状態で保持する保持部52と、保持部52によって保持されたコイル巻取治具4における帯状コイル100の直状部102よりも側端寄りの位置であるコイルエンド部103を、帯状コイル100の内方から外方に向けて拡張させるように押圧することによって、帯状コイル100を拡張させ、直状部102をスロット22に挿入するコイル拡張部53と、を有する。これによって、帯状コイル100の直状部102を、櫛歯状溝43をガイドとしてステータコア2と干渉することなく、ステータコア2の内側からスロット22内に簡単且つ確実に挿入することができる。
本実施形態のコイル装着装置1において、コイル拡張部53は、保持部52の外周に円環状に配列される複数の駒部材533を有する。複数の駒部材533は、コイル巻取治具4に巻き取られた帯状コイル100の直状部102よりも側端寄りの位置であるコイルエンド部103の内側に挿入されて隣り合う駒部材533間の距離を互いに広げるように移動することによって拡径可能に設けられる。これによって、帯状コイル100を内方から外方に向けて容易に拡張させることができる。
本実施形態のコイル装着装置1において、コイル拡張機構部5は、ステータコア2の内側に保持されるコイル巻取治具4の軸方向の両側に、それぞれコイル巻取治具4に対して当接する方向及び離隔する方向に移動可能に設けられる。これによれば、コイル巻取治具4の軸方向の両側からそれぞれ帯状コイル100を拡張させることができるため、帯状コイル100の直状部102を効率良くスロット22内に挿入することができる。
本実施形態のコイル装着方法は、帯状コイル100の直状部102をステータコア2の内方からスロット22に挿入することによって、帯状コイル100をステータコア2の周方向に沿って装着するコイル装着方法である。コイル装着方法は、外周に櫛歯状溝43が放射状に配列されるとともに、外径がステータコア2の内径よりも小径に形成されるコイル巻取治具4の櫛歯状溝43に、直状部102を外方から挿入することによって帯状コイル100を円環状に巻き取るコイル巻取工程と、帯状コイル100が巻き取られたコイル巻取治具4をステータコア2の内側に挿入し、スロット22に対して櫛歯状溝43の位相を合わせた状態で保持するコイル巻取治具保持工程と、保持されたコイル巻取治具4における帯状コイル100の直状部102よりも側端寄りの位置であるコイルエンド部103を、帯状コイル100の内方から外方に向けて拡張させるように押圧することによって、帯状コイル100を拡張させ、直状部102をステータコア2のスロット22に挿入するコイル拡張工程と、を備える。これによれば、帯状コイル100の直状部102を、櫛歯状溝43をガイドとしてステータコア2と干渉することなく、ステータコア2の内側からスロット22内に簡単且つ確実に挿入することができる。
本実施形態のコイル装着方法において、コイル拡張工程は、円環状に配列される複数の駒部材533を、コイル巻取治具4に巻き取られた帯状コイル100の直状部102よりも側端寄りの位置であるコイルエンド部103の内側に挿入し、隣り合う駒部材533間の距離を互いに広げるように移動させることによって帯状コイル100を拡張させる。これによれば、帯状コイル100を内方から外方に向けて容易に拡張させることができる。
本実施形態のコイル装着方法において、コイル拡張工程は、ステータコア2の内側に保持されるコイル巻取治具4の軸方向の両側からそれぞれ行われる。これによれば、帯状コイル100の両側からそれぞれ拡張させることができるため、帯状コイル100の直状部102を効率良くスロット22内に挿入することができる。
以上説明した実施形態のコイル装着装置1は、ステータコア2及びコイル巻取治具4の軸方向が水平方向に配置されるように構成されるが、ステータコア2及びコイル巻取治具4の軸方向が垂直方向等の水平方向以外の方向に配置されるように構成されてもよい。
帯状コイル100が円環状に巻き取られたコイル巻取治具4は、いずれか一方のコイル拡張機構部5の保持部52にと付けられて保持された状態で、ステータコア固定治具3に固定されたステータコア2の内側に挿入されてもよい。
1 コイル装着装置
2 ステータコア
22 スロット
3 ステータコア固定治具
4 コイル巻取治具
43 櫛歯状溝
5 コイル拡張機構部
52 保持部
53 コイル拡張部
533 駒部材
100 帯状コイル
102 直状部
103 コイルエンド部
2 ステータコア
22 スロット
3 ステータコア固定治具
4 コイル巻取治具
43 櫛歯状溝
5 コイル拡張機構部
52 保持部
53 コイル拡張部
533 駒部材
100 帯状コイル
102 直状部
103 コイルエンド部
Claims (6)
- 帯状コイルの直状部をステータコアの内方からスロットに挿入することによって、前記帯状コイルを前記ステータコアの周方向に沿って装着するコイル装着装置であって、
前記ステータコアと、
外周に櫛歯状溝が放射状に配列されるとともに、外径が前記ステータコアの内径よりも小径に形成され、前記帯状コイルの前記直状部を前記櫛歯状溝に外方から挿入することによって、前記帯状コイルを円環状に巻き取るコイル巻取治具と、
前記ステータコアを所定の位置及び姿勢に固定するステータコア固定治具と、
前記コイル巻取治具に巻き取られた前記帯状コイルを、前記帯状コイルの内方から外方に向けて拡張させるコイル拡張機構部と、を備え、
前記コイル拡張機構部は、
前記帯状コイルが巻き取られた前記コイル巻取治具を、前記ステータコア固定治具に固定された前記ステータコアの内側において、前記スロットに対して前記櫛歯状溝の位相を合わせた状態で保持する保持部と、
前記保持部によって保持された前記コイル巻取治具における前記帯状コイルの前記直状部よりも側端寄りの位置を、前記帯状コイルの内方から外方に向けて拡張させるように押圧することによって、前記帯状コイルを拡張させ、前記直状部を前記スロットに挿入するコイル拡張部と、を有する、コイル装着装置。 - 前記コイル拡張部は、前記保持部の外周に円環状に配列される複数の駒部材を有し、
前記複数の駒部材は、前記コイル巻取治具に巻き取られた前記帯状コイルの前記直状部よりも前記側端寄りの位置の内側に挿入されて隣り合う前記駒部材間の距離を互いに広げるように移動することによって拡径可能に設けられる、請求項1に記載のコイル装着装置。 - 前記コイル拡張機構部は、前記ステータコアの内側に保持される前記コイル巻取治具の軸方向の両側に、それぞれ前記コイル巻取治具に対して当接する方向及び離隔する方向に移動可能に設けられる、請求項1又は2に記載のコイル装着装置。
- 帯状コイルの直状部をステータコアの内方からスロットに挿入することによって、前記帯状コイルを前記ステータコアの周方向に沿って装着するコイル装着方法であって、
外周に櫛歯状溝が放射状に配列されるとともに、外径が前記ステータコアの内径よりも小径に形成されるコイル巻取治具の前記櫛歯状溝に、前記直状部を外方から挿入することによって前記帯状コイルを円環状に巻き取るコイル巻取工程と、
前記帯状コイルが巻き取られた前記コイル巻取治具を前記ステータコアの内側に挿入し、前記スロットに対して前記櫛歯状溝の位相を合わせた状態で保持するコイル巻取治具保持工程と、
保持された前記コイル巻取治具における前記帯状コイルの前記直状部よりも側端寄りの位置を、前記帯状コイルの内方から外方に向けて拡張させるように押圧することによって、前記帯状コイルを拡張させ、前記直状部を前記ステータコアの前記スロットに挿入するコイル拡張工程と、を備える、コイル装着方法。 - 前記コイル拡張工程は、円環状に配列される複数の駒部材を、前記コイル巻取治具に巻き取られた前記帯状コイルの前記直状部よりも前記側端寄りの位置の内側に挿入し、隣り合う前記駒部材間の距離を互いに広げるように移動させることによって前記帯状コイルを拡張させる、請求項4に記載のコイル装着方法。
- 前記コイル拡張工程は、前記ステータコアの内側に保持される前記コイル巻取治具の軸方向の両側からそれぞれ行われる、請求項4又は5に記載のコイル装着方法。
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