図1を参照すると、本明細書の技術に従うシステムの一実施形態が示される。システム100は、試料分析を行うための分析機器又は科学機器など構成要素を含んでよい。一実施形態では、システム100は、液体クロマトグラフ(LC)機器104と、1つ以上の検出器112と、記憶装置114と、コンピュータ116と、を含んでよい。以下の段落において説明されるように、システム100は、試料102の分析を行って、対象の1つ又は2つ以上の化合物を検出するために使用することができる。LC104は、試料102を受容する注入器106と、ポンプ108と、カラム110とを含むことができる。液体試料102は、LC104のカラム110によって分離するために導入され得る。図1には示されていないが、当該技術分野において既知であるように、LC104はまた、LCカラム110を取り囲むか、又は包囲する任意のカラムコンパートメントを含んでよく、このコンパートメントは、コンパートメント及びその中のカラムを加熱及び/又は冷却することに関連して使用される。カラムコンパートメントは、加熱器又は炉(例えば、コンパートメント内のカラムの温度を上げて、概ね周囲温度よりも高くするために使用され得る)であってよい。カラムコンパートメントは、追加的に又は代替的に、冷却をもたらしてよい(例えば、カラムの温度を下げて、概ね周囲温度よりも低くするために使用され得る)。更に、システム100の実施形態はまた、カラム110に入る前に流体を加熱及び/又は冷却するために使用される、106と108との間に(例えば、カラムの前に)配置された任意の構成要素(例えば、カラム予熱器又はカラム予冷器)も含んでよい。動作中、上述のカラムコンパートメント及び予熱器又は予冷器のそれぞれは、指定され得る別個の所望の定値制御を有してよい。上記のそれぞれの温度は、所望の新しい定値に到達する際に異なる構成要素の温度を監視することに関連して、本明細書の技術に関連して以下に記載するように測定又は観測され得る。同様の方法で、試料102を提供する構成要素はまた、試料102の温度をその中で制御するための加熱及び/又は冷却能力を含んでよい。
少なくとも1つの実施形態では、コンピュータ116を使用して、LC104及び検出器112など構成要素の動作を制御し、調整することができる。要素103aは、一般にLC104とコンピュータ116との間の1つ以上の電子通信接続を表し、かかる接続を使用して、コンピュータ116からLC104に信号を送信して、LC104の構成要素の動作、設定などを制御することができる。例えば、コンピュータ116は、接続部103aを介して制御信号を送信してポンプ108の動作を制御し、注入器106の動作を制御することなどによって、試料102の導入を制御することができる。加えて、本明細書の他の箇所に記載した監視対象データチャネルなどに関する情報は、本明細書の技術で使用するために、接続103aを介してコンピュータ116に送信されてよい。同様に、要素103bは、1つ以上の検出器112とコンピュータ116との間の1つ以上の電子通信接続を表し、かかる接続を使用して、コンピュータ116からLC104に信号を送信して、1つ以上の検出器112の構成要素の動作、設定などを制御することができる。加えて、本明細書の他の箇所に記載の監視対象データチャネルなどに関する情報は、本明細書の技術で使用するために、接続103bを介して1つ以上の検出器112からコンピュータ116に送信されてよい。当該技術分野において既知であるように、LC104及び検出器112などシステムの異なる構成要素はまた、かかる構成要素に組み込まれた、埋め込みハードウェア及び/又はソフトウェアを含んで、構成要素の制御及び操作、並びにコンピュータ116に対する情報の報告、つまり送信を行うコンピュータ116との通信を容易にしてよい。
実施例100に示す特定の実施形態では、コンピュータ100はまた、本明細書に記載するように、例えば、監視対象データチャネルのデータ処理を実行してよい。図1の例示的な実施形態では、単一のコンピュータ116が監視対象データチャネルの処理、並びに異なる構成要素の動作の制御及び調整に関連する処理を実行するものとして示される。より一般的には、要素116は、本明細書の自動化技術での使用について本明細書の他の箇所でより詳細に記載するように、構成要素の制御及び操作、データ監視及び評価などのための全てのかかる処理を実行するための1つ以上のコンピュータシステムの使用を表すことを特徴とし得る。
動作中に、試料102は、注入器106を介してLC104に注入される。ポンプ108は、カラム110を通して試料を圧送して、カラム110を通る保持時間に従って試料を構成部分に分離させる。ポンプ108及び注入器106によって提供されるクロマトグラフィ溶媒の高圧ストリームは、試料102を、LC104内のクロマトグラフィカラム110を通して移動させる。カラム110は、典型的に、その表面を化学的に修飾することができるシリカ、ポリマー、又は有機ハイブリッドシリカで作製された、多孔性、非多孔性、又は表面多孔性粒子の充填カラムを備える。カラム110からの出力は、分析のために検出器に入力される。
少なくとも1つの実施形態では、試料102を保存し、注入器106を介して試料を注入することに関連して実行される動作は、LC104の試料マネージャ構成要素に組み込まれてよく、溶媒を提供するポンプ108の動作は、LC104の溶媒マネージャ構成要素に組み込まれてよい。
要素112は、一般に、本明細書の技術による一実施形態においてLC104で使用するために連結され得る、任意の1つ以上の好適な検出器を示してよい。かかる検出器は、分離試料構成要素に関する様々な物理的及び/又は化学的特性を検出するために使用されてよい(例えば、かかる分離はLCカラム110によって行われている)。このようにして、検出器112は、被分析試料に対して実施される実験に関するデータ収集及び分析(例えば、定量的及び/又は定性的)の実行に関連して使用されてよい。一般的に、任意の1つ以上の好適な検出器112が使用され得るが、本明細書の技術による一実施形態で使用され得るかかる検出器の例としては、吸光度検出器(例えば、UV(紫外)分光検出器、VIS(可視)分光検出器、PDA(フォトダイオードアレイ検出器))、RI(屈折率)検出器、ELS(蒸発光散乱)検出器、MS(質量分析)検出器、FL(蛍光)検出器、EC(電気化学)検出器、及び当該技術分野において既知の他のものが挙げられる。
少なくともいくつかの実施形態では、要素112は、複数種類の検出を実行する複数の検出器を示してよい。かかる実施形態では、複数の検出器は、液体流路が直列で、ある検出器から次の検出器へと連続的に転送され得るように配置されてよい。場合によっては、流路は、結果として生じる2つの経路などに分割されてよく、各経路は、異なる検出器に通じてよい。加えて、当該技術分野において既知であるように、特定の検出技術、例えば、ELS及びMSは、被試験化合物にとって破壊的であり、一連の検出器の末尾においてのみ直列配列で構成されてよい。
1つの実施形態では、LC機器104は、例えば、Alliance(登録商標)HPLCシステムなど高速液体クロマトグラフィ(HPLC)システム、又はACQUITY UPLC(登録商標)システム(Waters Corporation,Milford Massachusetts)など超高速液体クロマトグラフィ(UPLC)システムであってよい。Waters Corporationによる前述のようなLC機器を含むシステムは、(例えば、一部のHPLCシステムについて例示的に)5000PSI~(例えば、一部のUPLCシステムについて例示的に)18000PSIの範囲などの、高圧下で動作することができる。
本明細書における他の考察と一致して、要素103a及び103bは、コンピュータ116からの制御信号が、104及び112などシステム100の構成要素に提供され得る接続を表す。このようにして、システム100の実施形態は、コンピュータ制御機器104、112を含むことを特徴とし得る。
記憶装置114は、任意の1つ以上の異なる種類のコンピュータ記憶媒体及び/又はデバイスであってよく、かかる媒体又はデバイスは、コンピュータ116に対してローカルである、並びにネットワーク(例えば、クラウドベースのストレージ)を通じて提供される記憶装置を使用するなど、コンピュータ116にリモート接続されてよい。当業者に認識されるように、記憶装置114は、コンピュータ可読命令、データ構造、プログラムモジュール、又は他のデータなど情報を記憶するための任意の方法又は技術で実装される、揮発性及び不揮発性媒体、取り外し可能及び取り外し不可能な媒体など、様々な異なる形態のうちの任意の1つを有する、任意の種類のコンピュータ可読媒体であり得る。コンピュータ記憶媒体としては、RAM、ROM、EEPROM、フラッシュメモリ若しくは他のメモリ技術、CD-ROM、(DVD)若しくは他の光記憶装置、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスク記憶装置若しくは他の磁気記憶デバイス、又はコンピュータプロセッサによってアクセスすることができる、所望のコード、データなどを記憶するために使用することができる任意の他の媒体が挙げられるが、それらに限定されない。当該技術分野において既知であるように、データは、ファイル、データベース、又はより一般的には、オペレーティングシステム及び/又は他のソフトウェアの機能を使用して実装され得るような任意の好適なデータコンテナなど任意の好適な形式又はフォーマットで記憶装置114に記憶されてよい。
コンピュータ116は、任意の市販の若しくは専用のコンピュータシステム、プロセッサボード、ASIC(特定用途向け集積回路)、又はコンピュータ可読媒体に記憶されたコードを実行するように構成されたプロセッサを含む他の構成要素とすることができる。プロセッサは、コードを実行するときに、コンピュータシステム116に、記憶装置114に記憶されたデータにアクセスし、それを分析するなどの処理ステップを行わせることができる。また、本明細書の他の箇所でより詳細に記載するように、コンピュータシステム116上で実行されるコードは、システム及びその構成要素のリアルタイムの状態の自動監視及びフィードバックのための本明細書の技術を実行するために使用されて、平衡状態を定義する際に使用されるなど所望の条件が達成された時点を判定することができる。コンピュータシステム、プロセッサボードなどは、より一般的には、コンピューティングデバイスと呼ばれることがある。コンピューティングデバイスはまた、コンピュータプロセッサに処理工程を行わせる実行可能コードが記憶された、114によって表されるようなコンピュータ可読媒体を含むこと、又は別の方法でそれにアクセスするように構成することもできる。1つ以上の分子種は、カラム110通って移動し、それぞれカラム110から現れるか、又は溶出し、そして、検出器112によって検出される。分子がカラムを通って横断するのにかかる時間は、分子の保持時間と称される。つまり、保持時間tにカラムから溶出する分子は、実際には、時間tを本質的に中心とする時限にわたって溶出する。この期間の溶出プロファイルは、クロマトグラフィピークと呼ばれ、それにより、分子の保持時間は、プロファイルの頂点に対応する。典型的で模範的なクロマトグラフィピークの溶出プロファイルは、正規(ガウス)分布によって説明することができる。少なくともいくつかの実施形態では、ピークは、半値全幅、又は半値半幅(FWHM)でよって表される幅を有してよい。他の実施形態では、ピーク幅は、ピーク高さのより小さい部分又は部分に対して表すことができる。
クロマトグラフィ支持マトリックス(例えば、カラム110の充填材料、又は試料溶液の化学化合物を分離するための他の分離媒体)から溶出する分子の保持時間及びクロマトグラフィピークのプロファイルは、支持マトリックスと移動相との間におけるその分子の物理的及び化学的相互作用の関数である。分子が支持マトリックスと移動相との間で有する相互作用の程度は、その分子のクロマトグラフィプロファイル及び保持時間を左右する。複雑な混合物では、各分子は化学的に異なる。その結果、各分子は、クロマトグラフィマトリックス及び移動相に対して異なる親和性を有することができる。結果的に、各分子は、固有の溶出プロファイルを呈することができる。
システム100を有効に使用するために、条件又は設定のセット(開始状態(start state)又は開始状態(starting state)を定義するために使用される基準に含まれ得る)は、試料分析を開始状態する前に存在する必要がある開始状態条件を示すように指定されてよい。機器設定(「セットアップ」)セットとして同時に適用されるかかる条件は、「メソッド」に含まれてよい。かかる条件は、LC104の態様に関連してよく、例えば、特定の溶媒流量及び初期担体溶媒(「移動相」)、組成物(水性及び有機成分の相対比率)、カラム温度などが挙げられる。加えて、開始状態に含まれるようなメソッドの開始条件は、実験及び試料分析の開始前に確立される必要がある。かかる開始状態の条件は、LC104、並びに、検出器112のうちの1つ以上などシステム内の他の構成要素の態様に関連し得る。例えば、検出器112として質量分析計を含む実施形態では、この条件は、MS検出器の動作、並びにMS検出器の結果の質に影響を及ぼす質量分析計の動作及び/又は状態に関連し得る。LC104に対して、メソッドは、試料の性質及び所望の結果に応じて、アイソクラティック(すなわち、一定)又は勾配(すなわち、時変)溶媒組成物などの条件を指定し得る。しかしながら、開始条件は、アイソクラティック(すなわち、非変動)である。メソッドは、組成物に加えて、又は組成物の代わりに、LC104の溶媒流量を変動させ得る。分離中に流量は変動しなくてもよいが、変動して、例えば、分離前に流量を増加させてよい(すなわち、圧力スパイクからカラムを保護する方法として)。
様々な化学的、物理的及び環境的要因のため、これらのシステムのユーザは、所望の分析に対して正確かつ再現可能な結果を確実に得るためには、システムが十分に平衡化される前に最小限の時間(又は累積流量)を要することを理解する。これらの要因の中でも、カラム温度設定点の変化は、平衡化時間の著しい延長を招き得る。カラムチャンバの物理的加熱又は冷却に関連する遅延に加えて、平衡状態を達成するために安定化を要するカラム自体の内部には、移動相及び固定相の複雑な熱効果が存在する。更に、次の試料が分析され得る前に必要とされる、分析後のカラム回復期間が存在し得る。これは、例えば勾配分離に必須であり得る。次の実験回又は試料分析の開始前に完了される、かかる分析後のカラム回復(例えば、本明細書の他の箇所では回復(recover)又は回復(recovery)とも呼ばれる)は、高度に保持された化合物をカラムから全て除去し、次いで、次の分離の開始前にシステムを初期、つまり開始状態に戻すことを含み得る。
したがって、実験又は試料分析の開始時点の開始状態を定義することに関連して使用される条件セットは、1つ以上の対応するパラメータ又はメトリックについて達成を要する1つ以上の条件を含み得る。1つ以上の条件は、LC104に関してなど、平衡状態が達成された時点を定義する値を指定し得る。上記及び本明細書の他の箇所に記載するように、開始状態の1つ以上の条件は、本明細書の他の箇所でより詳細に記載するように、システム又はLC圧力、カラム温度、試料温度、ポンプ圧縮(C/D)対減圧比などLC104の態様に関することであり得る。加えて、開始状態の1つ以上の追加条件はまた、1つ以上の検出器など、システムの他の構成要素又は機器に関連し得る。例えば、開始状態は、本明細書の技術によるシステムの一実施形態において達成されるMS検出器112の特定の設定点温度セットを指定する追加条件を含み得る。かかる1つ以上の追加条件は、LC104以外のシステム内の他構成要素の平衡、又はより一般的には安定性の態様に関し得る。したがって、一般に、開始状態は、システム100に関して平衡状態及び/又は安定状態が達成された時点を表す基準を使用して定義され得る。例えば、一実施形態では、開始状態は、LC104の側面のみに関する平衡状態を定義し得る。変形例として、少なくとも第2の実施形態において、開始状態は、LC104の態様に関する平衡状態を定義してよく、加えて、LC104に連結されているMS検出器などシステム100内の少なくとも1つの他の構成要素の平衡又は安定性を示す1つ以上の条件を更に含んでよい。かかる文脈では、開始状態の条件は、実験を進めるのに十分な他の構成要素の安定又は平衡の程度又は状態を概ね示す別の構成要素について指定され得る。一態様では、開始状態は、LC104に関してなど平衡状態が達成された時点を定義することを一般的に特徴とし得る。より一般的には、開始状態は、LC104に対して前述の平衡状態を定義し得、また、試料分析の開始前の達成を要する、1つ以上の他の開始条件を任意に指定してよく、かかる1つ以上の他の条件は、システム100の1つ以上の他の構成要素の平衡条件及び/又は安定条件のいずれかを定義する。したがって、少なくともいくつかの実施形態では、開始状態の条件(システムの平衡状態が達成された時点を定義する)は、LC104の平衡状態だけでなく、LC104に連結されている他の構成要素に関する安定性及び/又は平衡に関する他の条件も定義し得る。かかる1つ以上の他の構成要素は、実験に関連した試料分析及び/又は処理の実施に関連して使用されてよく、それにより、(他の構成要素の)かかる他の条件は、LC104の条件を超越して実験の質及び/又は再現性など実験の態様に影響を及ぼす。
LC104に関連して、平衡化は、試料の待ち行列(「試料リスト」又は「試料セット」)の最初の分析に必須であり、その後、個々の試料ごとに再設定/再確立される必要がある。試料リストの分析は、セットアップ-平衡化-分析-回復のパターンを試料分析ごとに1回繰り返すことを含む。これらの工程ごとに要する時間は、様々な化学的及び機器固有の考慮事項を検討して、経験豊富な科学者によって定義される(例えば、前述の時間は、同等のシステムを操作する誰もが同様の結果を達成することができるように、検査法に記録され得る)。平衡化及び回復時間は、保守的に、すなわち、システムの集団全体での成功を確実にするために、最小許容閾値をはるかに上回って記録される傾向にある。記録された手順が不在の場合、本明細書の技術を使用しない既存のシステムは、様々な経験レベル及び訓練レベルの異なる操作者を有し得、その場合、かかる各操作者は、平衡化時間を選択する際に個人的な解釈及び慣行を適用する傾向にあり得る。かかる場合、異なる操作者が、同じシステムでの平衡化時間に異なる値を選択し、それにより、実験条件の再現性に影響を及ぼすことがある。
LC104などにおける十分な平衡化時間の測定は、ポンプとLCカラムのヘッドとの間の物理的なシステム遅延、つまりシステム滞留容量に部分的に依存する。平衡化時間はまた、カラム内の移動相と固定相との間の化学的及び物理的平衡の影響を受ける。本明細書の技術による一実施形態は、時間ではなく「カラム容積」を単位として、平衡化時間(又はより一般的には、実験開始の前に必要とされる開始状態及び関連条件に達する、若しくは達成するまでの時間、並びに定常状態に必要とされる待機時間若しくは遅延、又は本明細書の他の箇所に記載するような静止時間)を表してよい(本明細書における他の考察と一致して、静止時間は、測定パラメータが、「平衡」と見なされる前に目標値に留まることを要する最小時間である)。測定の「カラム容積」(空隙容積としても知られる)単位は、カラムシリンダの物理的内容積、並びに充填材料の粒径及び多孔性に依存する近似値である。カラム容積又は空隙容積は、移動相によって占有されるカラム内の容積である。カラム容積は、マイクロリットル(μL)~ミリリットル(mL)などの範囲の単位であってよく、カラム粒子など特定の固定相を使用した特定のカラムサイズ/寸法の固定された特性と考えられ得る。少なくともいくつかの実施形態では、平衡化時間は、カラム容積の正の整数として表現され得る。特定のカラム容積及び所与のメソッドの流量の場合、平衡化時間は、代替的に分などの時間単位で表現されてよく、容易に決定され得る(例えば、10などカラム容積の数に2.5mLなどカラム容積を乗じることによって、平衡化には総量で25mLの移動相が必要とされる。平衡化には、1mL/分の流量で25分を要すると判定され得る)。カラム容積の単位でLC平衡化時間を特徴付けることの利点は、この測定値が、異なる分析スケール間で概して転換可能であることである(例えば、正規化を提供する)。カラムが大きいほど、一般的に、平衡化に時間を要する。しかしながら、それぞれ異なるカラム寸法を有するが、同じ固定相で充填された2つの異なるカラムの場合、平衡化に必要なカラム容積の数は同じままである。したがって、本明細書の技術による一実施形態は、以下の実施例で提供する分などの時間単位を単位としてX軸の時間値を表すことができる。代わりに、一実施形態は、異なる空隙容積(したがって、異なるカラム寸法)を有し、場合によっては異なる流量で動作するカラムにわたる正規化の手段としてカラム容積の数を単位として、平衡化時間など時間を表してよい。一実施形態は、テーブル、特定カラム及び粒子特性に関連付けられた電子記録、又は特定のLCカラムのカラム容積を検索する(既定のカラム容積)若しくは自動計算する他の手段を使用して、特定カラムのカラム容積を自動的に決定してよい。代わりに、カラム容積は、特定カラムのシリンダーの内部寸法及びカラム粒子特性(例えば、粒子寸法、粒子内の間隔(例えば、多孔性)及び粒子間の間隔など固定相特性)に基づいて計算され得る。一般に、以下の段落では、代替的に、及び互換的にカラム容積の単位で表現され得る時間単位を使用した特定の実施例が提供され得る。
以下の段落では、システム100の状態を監視し、開始状態に到達した時点を判定する態様の自動化に関連して使用され得る技術を説明する。以下の段落で説明する技術は、LCの平衡状態、並びに開始状態の任意の他の条件に到達した時点の自動監視、評価、及び判定を提供する。少なくとも1つの実施形態では、開始状態、より具体的には、別のシステム又は検出器など構成要素の任意の追加条件と組み合わせたLC平衡状態は、データ分析のための実験を開始する前に達成されることを要する、開始状態の1つ以上の条件を特定するパラメータ定義を使用して定義され得る。本明細書の技術を使用しない実施形態は、例えば、LC平衡の状態など開始状態条件への到達時点に関しては、個々の操作者による手動判定に依存し得る。更に、本明細書の技術に従わない一実施形態は、個々の操作者に依存して、試料の実験回間に一定時間待機し得る。対照的に、本明細書の技術による一実施形態は、LCがその必要な開始状態に達した時点を自動判定して、フィードバックループを使用して試料分析を開始し得、このフィードバックループでは、現在のシステム状態を記述するパラメータ又はメトリックについて現在の観測値が得られ、特定の平衡のパラメータ定義と比較され得る。必要な開始状態に到達した時点のかかる判定は、一連の試料分析の第1の分析及び後続の各試料分析の自動監視及び比較を通じて達成され得る。換言すれば、本明細書の技術を使用して、LCが第1の試料の所望の開始状態に平衡化された時点、また、LCがその後、後続の試料分析ごとに所望の開始状態に平衡化された時点を判定することができる。
本明細書に記載のようにかかる自動化技術を使用することは、例えば、操作者によって手動で行われ得る、又は一定の時間遅延を使用して手動でプログラムされ得る手動技術を除去することによって、実験条件及び結果の再現性を強化し、確実にする。個々の各操作者によって実行されるかかる手動技術により、様々な又は不十分な技能レベル(例えば、カラム温度など異なるメトリックについての手動での機器の読み取り、個々の各操作者が、次の実験を開始するために十分な時間が経過した時点を判定するなど)に起因し得るものなど、人間のエラー及び実験変動の余地が生じ得る。したがって、本明細書の技術の使用は、本明細書の技術を使用しないことによる前述の欠点を回避する。
加えて、本明細書の技術の使用により、時間も節約される(例えば、本明細書の技術を使用しない場合、実験間で十分な時間が経過したかどうかに関する判定を個別に行う操作者は、したがって、過剰な時間を待機することがある)。これは、本明細書の技術を使用する自動パラメトリック平衡化が過剰な平衡化の可能性を低減するためである。本明細書の技術による一実施形態では、メソッド及び平衡化基準(又は、より一般的には、開始状態の基準)をまとめて、ソフトウェア制御下で成分化することにより、手動手順から生じる手順上のリスク及び/又は曖昧さが低減され、操作者及び研究室の母集団にわたる結果の再現性が改善される。
本明細書の技術による一実施形態では、平衡化、又はより一般的には、特定の開始状態が達成された時点の判定は、現在のシステム状態を示すパラメータ又はメトリックの定義されたセットに対する物理的機器の自動リードバック、パラメータ化された平衡の定義の開始状態の初期条件、及び現在のシステム状態がパラメータ化された平衡の定義を満たすかどうかを判定する、ソフトウェア制御下などでの自動判定に基づいてよい。
本明細書の技術による少なくとも1つの実施形態では、LC平衡化を判定するためのメトリック、又はより一般的には、実験試料分析の必要条件の開始状態、つまり初期条件には、例えば、1つ以上の監視対象パラメータ(例えば、勾配若しくはドリフト)の変化率、及び/又はパラメトリックノイズの振幅(変動性)が挙げられ得る。いくつかのパラメータでは、平衡を定義する開始状態の初期条件は、目標値及びマージン、つまり許容差(例えば、目標値内の範囲)を含み得る。いくつかの実施形態では、パラメータの現在値は、現在のシステムに関する1つ以上の現在値、つまり測定値から導出されてよい。例えば、開始状態のパラメータの現在値は、2次導関数をとるなど、1つ以上のチャネルについて得られた1つ以上の現在値の数学的フィルタリングによって平衡化が達成されたかどうかを判定する際に使用され得る。LC平衡化の包括的な評価を達成するために、本明細書の技術による実施形態は、システム圧力、カラム温度、検出器信号などメトリック又はパラメータの複数の主要機器値を使用してよく、かかる現在値、つまり観測値を同時に得てよい。
分析メソッドとは独立して、図1など科学機器又はシステムの製造業者は、かかる機器及びシステムの意図される使用に適合するアプリケーションの大部分を満たす、汎用平衡化基準、又はより一般的には、汎用開始状態基準をコード化できてよい。例えば、安定性の指標として、LC104、又はより一般的には、図1のシステム100は、LC圧力の2次導関数(本明細書ではシステム圧力とも称する)が、メソッド変更に続いて、その数値符号が最小回数にわたって逆転すると、「平衡化」を宣言してよい。アプリケーション依存のカスタマイズを更に可能にするために、本明細書の技術による一実施形態はまた、システム100のメソッド開発者又はユーザによる初期条件及びメトリック又はパラメータのカスタマイズなど開始状態の基準の態様の更なるカスタマイズも可能にしてよい。例えば、本明細書の技術による一実施形態は、開始状態の定義の一部としてLC平衡のデフォルト定義を提供してよく、LC平衡は、デフォルト目標値及びデフォルト許容差若しくは許容範囲(例えば、目標値±範囲は、温度範囲を定義する)を有する、カラム温度の第1のパラメータなど平衡化基準を使用して定義され得る。この実施形態は、カラム温度のデフォルト目標値又は範囲(例えば、初期条件)のカスタマイズを可能にし得る。この実施形態は、ユーザが第2のパラメータ及び第2のパラメータの関連初期条件を追加可能にすることによって更にカスタマイズできるようにしてよい。この場合、前述の第1のパラメータ及び第2のパラメータの両方がそれぞれの指定の初期条件を達成すると、LC平衡の状態、並びに開始状態条件がLC104によって達成されたと判定され得る。
図2を参照すると、本明細書の技術による一実施形態におけるシステムの様々な状態を示す一例が示されている。実施例200は、それぞれシステムの状態を示す円を含む。状態間の矢印は、ある状態から別の目標状態への移行を示す。実施例200は、状態SE1、SE2、SEn、A1、A2、An、及びFを含む。SE状態のそれぞれ(例えば、SE1、SE2、SEn)は、少なくとも1つの条件を含む基準の異なる開始状態又は同一の開始状態を示してよく、この条件は、満たされるとLC平衡の状態を定義し、したがって試料を分析する後続の実験が開始状態され得る。A状態のそれぞれ(例えば、A1、A2、An)は、直前のSE状態によって表される平衡の達成後の試料分析のために実行される処理を示す。したがって、実施例200は、「n」対の状態(nは1以上の正の整数)を含むことを特徴としてよく、各対は、対応するA状態が順に直後に続くSE状態を含み、それによって、SE状態の平衡が達成されると、SE状態から対応するA状態への移行が生じる。A状態によって表される試料分析が完了すると、最終のF状態又は別の後続のSE状態のいずれかへの移行が行われる。A2とSEnとの間の破線の移行矢印は、一般に、ゼロ又はそれ以上の追加の状態対を示し、各対は、直前に上述したようにSE状態及びその対応するA状態を含む。
例えば、SE1及びSE2がそれぞれ異なる開始状態、したがって異なる開始状態基準を示す場合をより詳細に考察する。したがって、SE1は第1の開始状態を示し、SE2は第2の開始状態を示す。例えば、本明細書の技術による一実施形態は、第1の試料の第1の実験(状態A1で示す)を行ってよく、第1の実験(SE1からA1への移行)は、本明細書の技術がSE1によって示されるLC平衡の第1の状態を判定すると開始される。現在のシステム状態が、SE1によって示される第1のLC平衡状態の条件を満たさない限り、システム状態は、A1など異なる状態に進む又は移行することができない(例えば、状態SE1に留まる)。現在のシステム状態がSE1によって示される第1の開始状態の条件を満たすと、状態SE1から状態A1への移行によって示されるように、実験を進めることができる。第1の試料分析及び第1の実験(A1によって示される)が完了すると、システムは状態A1から状態SE2へと移行して、第2の試料を使用した第2の実験を準備する。第2の試料の第2の実験(A2によって示される)は、SE2によって示される第2の開始状態の条件が達成されたと判定すると、開始される。現在のシステム状態がSE2によって示される条件を満たさない限り、第2の試料の実験を進めることはできず、したがって、状態SE2に留まる。現在のシステム状態がSE2によって示される第2の開始状態の条件を満たすと、状態SE2から状態A2への移行によって示されるように、実験2を進めることができる。同様に、(破線矢印で示されるように)1対以上の追加のSE-A状態が含まれてよく、(対のSE状態によって示されるように)平衡化又は開始状態条件は、対の対応するA状態への移行を可能にする前に達成され、追加の試料分析又は実験を進めることができる。この例では、最後/最終の平衡化状態SEn及び対応する最後/最終の実験試料分析Anが完了すると、システムは、Anから終了又は最終状態Fに移行する。
したがって、本明細書の技術は、状態SE1、SE2、及びSEnによって示されるように、現在のシステム状態が1つ以上の開始状態の条件を達成した時点を自動的に監視し、判定することに関連して使用されてよい。上述の特定の実施例では、開始状態SE1、SE2、SEnのそれぞれは、LC平衡の1つ以上の条件を定義し得る。SE1、SE2、及びSEnのそれぞれは、後続の試料分析に応じて、同一の1つ以上の条件セット、又は異なる条件を定義し得る。本明細書の技術は、システム状態を自動的に監視し、既存のシステム状態が、第1の実験A1を開始する前に第1の時点においてSE1の平衡状態を満たし、その後、第2の実験A2を開始する前に第2の時点においてSE2の条件も満たす時点を判定するために使用されてよい。SE1及びSE2の条件が達成されると、試料分析を実施するそれぞれの実験A1及びA2を進めることができる。
図3を参照すると、一実施形態における技術のシステム及び使用を示す実施例300が示されている。実施例300は、LC及びMS検出器など1つ以上の検出器を含む、図1に関連して記載した機器システムなどシステム302を含む。かかる実施形態では、本明細書の技術に関連して監視するために、複数の診断チャネル304を利用可能であり得る。この実施例では、チャネル304a~cを利用可能であり得、そのうち、304a及び304cは、システム302が開始状態の条件を達成した時点の判定に関連して使用するために監視される。要素314は、一般に、システム302について得られたメトリック又はパラメータ314a~cの現在値を示してよく、かかる現在値314a~cは、システム302が試料分析のための実験の開始に必要な開始状態の指定条件を達成したかどうかに関して、システム302の現在の状態を示し得る。
この実施例で更に説明するために、第1の診断チャネル304aは、第1の現在のメトリック又はパラメータ314aの値及び第2の現在のメトリック又はパラメータ314bの値を得るために監視され得、第2の診断チャネル304cは、第3の現在のメトリック又はパラメータ314cを得るために監視され得る。第1の診断チャネル304aは、一般に、現在のシステム302の観測値の計器読み取り値などの値を示してよい。第1及び第2のメトリック又はパラメータ314a~bの両方は、第1の診断チャネル304aからの観測値に基づいて決定されてよい。例えば、第1のメトリック又はパラメータ314aは、指定の目標値又は目標数値範囲として定義されるレベルと比較して、チャネル304aの現在の観測値であってよく、314aの開始状態の基準は、第1の診断チャネル304aの現在の観測値が、指定の時間間隔に対して指定の目標範囲内にあることを要することを示してよい。第2のメトリック又はパラメータ314bは、指定の時間間隔にわたって観測されたチャネル304aのピーク間変動であってよい。チャネル304cのピーク間変動としての第2のメトリック又はパラメータ314aは、チャネル304aの未加工値のビン化群のピーク間値を含むように生成されてよい。開始状態条件は、ピーク間パラメータ値314bが、指定の時間間隔にわたって観察したときに指定閾値を下回ることを示してよい。第3のメトリック又はパラメータ314cは、チャネル304cの現在値から決定されてよい。例えば、第3のメトリック又はパラメータ314aは、勾配又は一次導関数であってよい。勾配は、例えば、最小二乗法又は他の好適な方法によって、指定の時間間隔(例えば、短い時間窓、又は特定数の未加工データ点)にわたってチャネル304cの離散観測現在値から形成された信号に関して決定されてよい。
第3のメトリック又はパラメータ314cは、チャネル304cの各観測値に対する瞬間勾配の値を用いて生成されてよい。開始状態条件は、勾配パラメータ314cが指定の目標範囲内にあることを示し得る。少なくとも1つの実施形態では、開始状態条件は、勾配パラメータ314cが、指定の時間間隔にわたってゼロ勾配に対して指定の目標閾値量内にあること(例えば、測定された勾配パラメータ314cは、指定の時間間隔にわたってゼロ勾配の閾値量内にあること)を示してよい。かかる実施形態では、本明細書の技術は、3つのメトリック又はパラメータ314a~cの前述の条件の全てが達成されたときに、開始状態の条件が達成されたことを自動的に判定してよい。
要素312は、一般に、試料分析の実行、並びに1つ以上の実験の実行に関連した機器の操作及び制御に使用される異なるアイテムを示してよい。要素312は、メソッド312a、基準312b、並びにシステム302のMS検出器など検出器のチューニング及び較正に関連して使用され得る他のアイテム312c~dを含んでよい。一実施形態では、多数のアプリケーション及びシステム302に適用可能な基準を概ね指定することを意図する、デフォルトの汎用基準セットは、基準312bの初期セットとして供給されてよい。基準312bの初期セットは、特定の実施形態で使用され得る特定のアプリケーション、システム、又は機器などのために、更に修正又は改良(例えば、カスタマイズ)されてよい。一般に、科学者310など熟練者は、302のMS検出器用のメソッド312a、基準312b、及び定義された手順312c~dなど312の任意の1つ以上のアイテムを定義及び/又は改良し得る。
基準312bは、一般に、到達すると開始状態が達成されたことを示す条件を含んでよい。本明細書に記載するような一実施形態では、基準312bのかかる条件は、メトリック又はパラメータ314a~cについて上述したような条件を含んでよい。基準312bのかかる条件及びパラメータは、システム302に含まれるようにLCなどの平衡化に関連し得る。加えて、本明細書における考察と一致して、基準312bのかかる条件及びパラメータはまた、システム302内の他の構成要素又は機器(例えば、MS検出器など1つ以上の検出器)の1つ以上の他の条件及びパラメータを含んでよい。例えば、基準312bによって示される開始状態の1つ以上の条件及び関連メトリック又はパラメータは、システム302のMS検出器に関連し得る。
平衡が達成された時点の開始状態又は初期条件を示すかかる基準312bは、現在値314a~cを考慮して評価され得る(316)。316によって示されるように、システム302の現在の観測された条件(例えば、314a~314c)が開始状態基準312bを満たすかどうかに関する判定が行われ得る。316でのかかる判定は、例えば、システム302が平衡状態を達成したかどうかを示す単一のブール結果をもたらし得る。要素316は、例えば、314a及び314cの現在の観測値と312bの指定の開始状態基準を示す指定の初期条件との比較を示す。314a~314cが、312bよって示されるような指定の開始状態基準を満たすか、又は達成する場合、準備完了インジケータは、工程316によって判定された、操作者318及び/又はデータシステム320に対する結果であり得る。データシステム320は、例えば、システム302内の機器の動作を制御し、処理用の試料をスケジュールするソフトウェアを含むコンピュータシステムであってよい。システム302が(基準312bの条件が達成されたことによって表されるように)所望の初期状態を達成したことを示す準備完了状態を示すこと(316)に応答して、データシステム302は、システム302による試料の実験及び分析のための処理を自動的に可能にして、ユーザの介入なしに進めることができる。かかるシステムでは、システム302による試料の実験及び分析のための処理はまた、システム302が、基準312bによって表される所望の開始状態を達成していないことを示す準備未了状態を316が示す場合、進めることができない。少なくとも1つの実施形態では、システム302による試料分析は、かかる処理及びシステム320、302に対する適切な制御信号の送信などを制御する適切なハードウェア及び/又はソフトウェアを使用して、自動的かつ制御された方法で進めることができてよい、又はできなくてよい。少なくとも1つの実施形態では、平衡が達成され、それによって、316において準備完了状態を示す場合、機器システム302は、試料分析を進める(例えば、試料分析を進めることができるように、構成要素を使用可能にする、あるいは別の方法で構成要素を好適な動作状態にする)ことができることを示す準備完了制御信号を受信してよい。さもなければ、平衡が達成されず、したがって316において準備未了状態が示される場合、機器システム302は、準備完了制御信号を受信しないことがあり、機器システムが試料分析を進めることを命じられない状態にあり得る(例えば、機器システムが使用不能になる、あるいは別の方法で機器システム302の構成要素を待機状態にし、そのために機器システムは試料分析を進めることができない)。
本明細書の技術の少なくとも1つの実施形態では、システム(例えば、図1でより詳細に示されるものなど図3の302)は、実験の開始状態が達成された時点を自己評価し、判定する能力と共に、システムの製造業者によって顧客に供給され得る。開始状態は、本明細書に概ね記載するように基準を使用して定義されてよく、この基準は、LCの平衡化、実験に関連してシステム内のLCの後に使用される1つ以上の検出器又は構成要素の平衡化、及び/又は安定性に関するものであってよい。更に、適切な資格、技能及び経験のレベル、並びに特権を有する、科学者又はシステムのユーザなど専門家は、開始状態を示す基準の初期セットを改良してよく、この基準の初期セットは、例えば、システム製造業者によって供給され得る。専門家は、専門家の特定のシステム構成、実験中に使用される化学物質の物理的特性、特定のメソッドなど既知の情報に従って基準の初期セットを更にカスタマイズして、又は改良して、実験条件及び実験回の再現性を更に確保し、効率的なシステム操作を確実にし得る。上記のように、本明細書の技術を用いたプロセスへの自動化の導入は、記録された手順の手動による繰り返しに関連する潜在的エラーの一部を緩和し、リソース(例えば、溶媒及び時間)の消費を潜在的に低減し、操作者が他のタスクを自由に実行できるようにする。自動パラメータリードバック平衡化はまた、手動で記録される、経験的に決定されたアプローチの評価、検証、及び妥当性確認の低減又は排除という潜在的な利益をもたらす。
一般に、基準312を自動的に読み取る、所望のデータチャネル304を監視する、パラメータ314a~cの観測値を決定する、316によって表される処理ロジックを実行する、準備完了/準備未了の結果を操作者318及びデータシステム320に通信するなどのための、図3に関連して説明されている処理は、本明細書に記載のように所望の処理をプログラムで実行するハードウェア及び/又はソフトウェアで具現化され得る。上記を実行するかかるソフトウェア及び/又はハードウェアは、カスタマイズされた特定用途向け集積回路(ASIC)などを使用して、プロセッサ上で実行するソフトウェアにおいて具現化され得る。かかるソフトウェア及び/又はハードウェアは、機器システム302とは別個の1つ以上の構成要素内で具現化されてよく、かかる1つ以上の構成要素及び関連する機能は、機器システム302に組み込まれてよい。より一般的には、図3に関連して説明するような処理を実行するハードウェア及び/又はソフトウェアは、別個の構成要素内で具現化されてよく、あるいは、機器システム302などの任意の他の好適な構成要素若しくはシステムと一体化されてよい。
かかる実施形態では、基準312bによって示される開始状態は、異なるメソッド、並びに単一メソッド内で実行される異なる実験の実行回、注入、又は試料分析に対して様々であり得る。例えば、本明細書の技術は、第1のメソッドで分析された全実行回、注入、又は試料と関連して1つの基準セットが定義され、使用されて、第1の開始状態を指定する。本明細書の技術はまた、第2のメソッドで分析された全実行回、注入、又は試料と関連して使用される第2の基準セットが定義され、使用されて、第2の開始状態を指定し、第1の開始状態とは異なる基準を使用してよい。一般に、本明細書の技術は、メソッドごとなど微細な粒度レベルで開始状態を変化させるために、並びに同一メソッドの異なる試料分析の間で同一開始状態が確実再確立されるようにする(したがって、平衡を示す、同一の開始状態又は初期条件セットを使用する)ために、柔軟性をもたらす。例えば、実行される処理は、N個の試料を分析するためのN回の注入を含んでよい。第1のシナリオでは、N回の注入ごとの開始状態の基準の条件セットは同一であり得、それにより、本明細書の技術は、N回の注入のそれぞれを連続して実行する前に、同一の開始状態を自動的に評価し、再確立することを提供してよい。第1のシナリオの変形例である第2のシナリオとして、N個の試料を分析するためのN回の注入のそれぞれは、異なる条件セット及び開始基準を必要とし得る。本明細書の技術は、N回の注入のそれぞれを連続的に実行する前に、N回の注入ごとに異なる開始状態及び関連基準を自動的に評価し、確立することを提供してよい。
以下により詳細に記載するように、本明細書の技術は、定量的物理システムパラメータ(並びに可能な化学物理的特性定数)を使用してよく、実行時統計的減少(runtime statistical reduction)を適用して、レベル、勾配(例えばドリフト)、及びピーク間(例えば、ノイズ)変動性、並びに必要に応じて他の数学的フィルタリングを適用し得る。所与のアプリケーション及びシステム構成については、前述の任意の組み合わせは、実験の開始状態を定義する基準に含まれてよい。開始状態は、LC平衡化が達成される時点に関する条件、並びに場合によっては、試料分析のための実験を実行するシステム内でLCと組み合わせて使用される他の構成要素及び/又は機器に対して安定性及び/又は平衡が達成される時点を示す他の条件を指定することができる。開始状態のかかる基準は、達成時にシステム準備完了又はシステム平衡化のベンチマークを確立し、システムは、システムの機器及び構成要素を使用して実験の実行を進める準備ができていると見なされる。
本明細書の技術は、定量的物理システムパラメータ(並びに可能な化学物理的特性定数)を使用し、実行時統計分析を適用して、レベル(例えば、平均又は平均値)、勾配、及びピーク間変動性、並びに必要に応じて他の数学的フィルタリングを決定し得る。所与のアプリケーション及びシステム構成については、これらの任意の組み合わせは、システム準備完了のベンチマークを確立するために平衡品質仕様に含まれてよい。
少なくとも1つの実施形態では、各診断チャネル(例えば、304)からの監視対象機器のデータは2次元ストリームとして取得されてよく、時間は水平軸、つまりX軸上であり、このチャネルから観測されたデータ(観測された時間依存データ)は、垂直軸、つまりY軸上である。チャネルのデータ速度(チャネル全体のデータ点が読み取られるか、又は獲得される、1秒当たりの点)は、固定され、システムによって定義され得る。
図3に関連して記載するように、LC平衡状態及び検出器安定状態を定義するためなどの、開始状態の基準を指定することに関連した処理における第1の工程は、監視対象となる、利用可能なシステムの診断チャネルを識別することである。LC機器のシステム圧力など、少なくとも1つのチャネルが必要である。選択されたチャネルのみが、データチャネルに基づいて1つ以上のパラメータを計算することに関連して、以下の分析を受ける。
本明細書の技術による一実施形態は、平衡の達成が予想される最大時間、つまりタイムアウト期間を指定し得ることに留意されたい。システムがこの最大時間内で平衡化することができない場合、エラー状態が判定され、1つ以上の結果として生じる動作が取られ得る。例えば、かかる動作には、この最大時間内で平衡化することができないために、システムの操作者、管理者、又は他のユーザに通知することが挙げられ得る。これは、この最大時間内に平衡化できないことは、システムでの問題を示しており、使用を継続する前に、更なる分析及びトラブルシューティングを要し得る。本明細書の技術と一致して、平衡化の達成を待機している経過時間が最大時間を超えた時点の判定は、例えば、現在のシステム状態を監視して、指定の平衡化又は開始条件が達成されたかどうかを判定し、平衡化の達成を待機している経過時間を測定し、平衡化を待機する経過時間と最大時間とを比較し、経過時間が最大時間を超える前に平衡化条件が達成されない場合、自動的にユーザ通知を提供する、プロセッサ上で実行されるソフトウェアを使用して、自動的に実行されてもよい。
本明細書の技術による一実施形態は、監視するために1つ以上のデータチャネルを選択し得る。以下は、本明細書の技術に関連して監視するために以下の1つ以上が選択され得るデータチャネルのリストを含む。
カラム温度(例えば、観測された、又は測定されたカラム温度又はカラムを含むカラムコンパートメントの温度);
試料温度(例えば、試料を保存するコンパートメント又は構成要素など観測された、又は測定された試料温度);
検出器温度;
システム圧力(例えば、カラム内の流体の、又はより一般的にはシステムの圧力を示す)又は圧力(多次元クロマトグラフィの場合);
圧縮対減圧(C/D)比(例えば、減圧モータステップの数で除した、圧縮モータステップの数。各ポンプサイクルでは、一次ポンプヘッドが、吸気ストローク中に大気圧まで減圧される。デジタルポンプ制御は、ヘッドが大気圧に到達するのに要するモータステップの数を監視する。減圧が完了すると、吸気ストロークが行われる。吸気ストロークに続いて、一次ポンプヘッドが予圧縮する。その後、一次ポンプヘッドは、主要ヘッドがオンラインになり、流体をシステムに送達する前に、ヘッド内の流体を動作システム圧力へと圧縮する。電子機器及び制御アルゴリズムはまた、ヘッド内の流体をシステム圧力まで上昇させるのに要するモータステップの数を監視する。適切に機能するポンプでは、低圧縮性の流体を使用すると、比が理想的には1に近づく。したがって、C/D比チャネルの基準は、以下の1つ以上の所望のC/D比を含むように定義されてよい);
カラム予熱器又は予冷器の温度(例えば、中を通る流量をそれぞれ加熱又は冷却する、図1のカラムの前に構成要素として含まれる炉又は冷却ユニットの測定温度);並びに、
検出器信号(例えば、MS検出器について、検出された特定のm/z(質量対電荷)値での強度又はイオン数)。
加えて、一実施形態はまた、検出器の種類によって異なり得る追加の検出器データチャネルなど、監視するための他のデータチャネルを選択し得ることに留意されたい。例えば、MSである検出器に関連して、MS検出器の真空レベルが追加データチャネルとして監視され得る。一般に、特定の1つ以上の監視対象チャネル、並びに用いられる特定のパラメータ又はメトリックは、特定の実施形態によって異なり得る。
リアルタイムでは、線形回帰は、現時点に至る固定時間窓内で、各チャネルの取得されたデータ点上で行われ得る。時間窓は、(例えば、機器供給業者又は顧客が使用する時間窓を定義し得る他の経験/知識の豊富なユーザによって)定義されてよく、あるいは別の方法で、10秒などデフォルト値に設定されてよい(データ整理の対象となる点の実際の数は、データ速度を乗じた時間窓である)。時間窓内のデータ点について、データセットの平均値(「レベル」)が計算される。時間窓内のデータセット/データ点は、最小二乗線形適合に供され、勾配を生成し得る。加えて、データセット上の最大Y値と最小Y値との絶対差は、時間窓に対するデータセットのノイズを示すピーク間変動性として捕捉される。データ整理は公称速度で行われ、時間窓の増分前進(例えば、毎秒又は2秒に1回)に対応する。
図4を参照すると、本明細書の技術による一実施形態における単一の診断データチャネルの監視中に収集されたデータ点を示す、実施例400が示されている。実施例400は、診断データチャネルについて取得されたデータ点のグラフ図を含む。具体的には、410は、上述したような単一データチャネルの定義された時間窓中に取得されたデータ点を含む時間窓を示してよく、これは、例えば、410内のデータ点の線形回帰を使用するなど曲線適合及び分析、又はより一般的には当該技術分野において既知の任意の好適な技術に供され得る。
選択されたチャネルごとに、開始状態の基準は、以下の1つ以上の選択された種類のパラメータ又はメトリックの条件を含み得る。
1.レベルは、数値目標値±マージンとして指定されてよい。マージンは、整数又は他の数値的絶対値などパラメータ単位を単位として表現されてよく、又は目標値のパーセントとして表現されてよい(実施例:システム圧力が10000psi±500psi、又は10000psi±5%であることを要する)。
2.勾配は、絶対値(符号なし)として指定される、所与のピッチよりも小さいものとして定義されてよい。あるいは、勾配は、1分当たりの平均のパーセントとして指定され得る(実施例:勾配mは、-0.05≦m≦0.05AU/分、又は-0.5%≦m≦0.5%平均(y)/分であることを要する。前述の平均yは、特定の時間窓におけるデータ点の平均であってよい)。
3.ピーク間は、所与の閾値又は目標値(例えば、振幅目標)を下回る、負ではない値として指定されてよく、閾値又は目標値は数値として表現されてよく、又はパラメータ単位若しくは平均のパーセントの単位として表されてよい(実施例:ピーク間(pp)は、pp≦0.1AU、又はpp≦2%平均(y)であることを要し、yは、特定の時間窓におけるデータ点の集団の平均を示す)。
4.時間窓内のデータ点に対する2次導関数。例えば、システムは、安定性の指標として、システム圧力の2次導関数が、メソッド変更に続いて、その数値符号が最小回数にわたって逆転すると、「平衡化」を宣言してよい。
勾配及び/又はピーク間パラメータが決定される診断データチャネルの信号に関連して、勾配に必要される値又は範囲を示す、上記で指定された基準は、勾配の最小絶対値に近似してよく、ピーク間については、ノイズの最小量に近似してよく、したがって、データチャネルの所望の信号は滑らかな直線(勾配をほとんど有さない、又は全く有さず、したがって、ノイズを示さない、又は許容可能な限界/閾値内のノイズの量を示す)を示す。
少なくとも1つの実施形態では、特定の機器システムに応じて、いくつかの診断チャネルは、メソッドから導出される設定点に直接関連するリードバックであり得ることに留意されたい。例えば、カラム温度がメソッドで指定される場合、指定されたレベルは、有効になっている場合、例えば、構成設定ではなくメソッド自体から、又は一般的に任意の他の好適な手段から暗黙的にもたらされ得る。
一実施形態では、時間窓は、現在の点のレベル(例えば、平均)、勾配、及び他のパラメータを計算するときに、先行するデータ点を振り返り、考慮する時間を特定する。例えば、新しいデータ点が毎秒取得され、時間窓が10秒であると仮定する。新しいデータ点は、レベル及び勾配パラメータが選択される時間Nにおいてデータチャネルについて受信されてよい。時間Nにおける新たなデータ点に関して、レベル及び勾配パラメータ値は、時間Nにおいて取得された新しいデータ点を使用して、更に時間N-1~N-9において取得された9つの先行するデータ点を使用して決定される。前述のことは、データチャネルの新たに取得された各データ点と関連して実行されてよく、時間窓は、次の時点まで時間内で連続的に進み、それに応じて、現在新たに取得されたデータ点、及び時間窓によって示される9つの前の連続する時点において取得された9つの先行するデータ点を使用して、レベル及び勾配パラメータの計算を実行する。
更に、いくつかの実施形態は、複数のデータチャネルを使用して決定された時間依存のY値を有する、更に別の種類の導出パラメータ、つまり複合パラメータを含んでよい。例えば、本明細書の技術による一実施形態は、時間内の同一点における、2つの異なるデータチャネルからの2つの測定値の比である複合パラメータを含み得る。かかる比については、前述のデータチャネルのうちの任意の1つ以上が指定されてよい。更なる例示のために、一実施形態は、特定のデータチャネルの勾配及びピーク間測定値の比である、導出パラメータ、つまり複合パラメータを有し得る。別の例として、本明細書の技術による一実施形態は、システム圧力の本明細書に記載のような選択された種類のパラメータ又はメトリック(例えば、レベル、勾配、ピーク間、又は2次導関数)と、カラム温度の同一の、又は異なる選択された種類のパラメータ又はメトリック(例えば、レベル、勾配、ピーク間、又は2次導関数)との比である、導出パラメータ、つまり複合パラメータを有し得る。
最後に、データチャネルに対して選択されたパラメータごとに、基準は、最低限の独立した静止時間に対して定常を保持する必要がある。上記の勾配の例では、1.0分の静止時間は、勾配が最低1.0分にわたって範囲(0.05,0.05)内に留まる場合、必要条件が満たされるであろうことを示す。なお、本明細書に記載するように、かかる値は、時間の単位ではなく、カラム容積の単位で表現されてよい。それによって、開始状態条件を確立する準備が達成されたことは、全診断データチャネルに関する全パラメータの要件が満たされ、同時にそのように観測され得ると、判定される。
図4を参照して、時間窓410について、上述のように指定された基準のレベルパラメータ及び関連条件を有するデータチャネルを考慮する。この場合、平均(average)又は平均(mean)値MEANaは、時間窓410内のデータ点に関して決定されてよい。評価することは、(開始状態基準の条件に含まれるように)目標値であるLEVELe±指定のマージン値が満たされたかどうかを、MEANaがLEVELe±指定のマージン値の範囲に収まるかどうかを判定することによって判定することを含んでよい。要素420は、目標範囲が(開始状態基準の条件に含まれるように)LEVELe±指定のマージン値である、例示のデータチャネルのレベルパラメータの目標範囲を示す。時間窓の平均(mean)又は平均(average)は上述のように使用されるが、より一般的には、本明細書の技術による一実施形態は、現在の時点のレベルパラメータの実際値を決定することに関連して、他の好適な統計を使用してよい。例えば、一実施形態は、1つ以上の最新のデータ点が他のデータ点よりも多くの重みを有し得る時間窓内のデータ点の加重平均を使用してよい。
420と同様の方法で、要素430は、図示されたデータチャネルの勾配パラメータの指定の目標範囲を示す。この場合、SLOPEaの実際の勾配値は、時間窓410内のデータ点に関して決定されてよい。評価することは、(開始状態基準の条件に含まれるように)目標勾配値であるSLOPEe±特定のマージン値が満たされたかどうかを、SLOPEaがSLOPEe±特定のマージン値の範囲に収まるかどうかを判定することによって判定することを含んでよい。要素430は、目標範囲が(開始状態基準の条件に含まれるように)SLOPEe±指定のマージン値である、例示のデータチャネルの勾配パラメータの目標範囲を示す。
420及び430と同様の方法で、要素440は、図示されたデータチャネルのP2P、つまりピーク間パラメータの指定の目標範囲を示す。この場合、実際のP2P値であるP2Paは、時間窓410内のデータ点に関して決定されてよい。評価することは、(開始状態基準の条件に含まれるように)実際のP2Pa値が指定のデルタ値、つまりマージン値(P2Peとして示す)よりも小さいかどうかを判定することを含んでよい。換言すれば、P2Paが基準のP2Peによって示される目標範囲内にあるかどうかの判定が行われる。
本明細書の考察と一致して、本明細書の技術がシステム内での開始状態の確立を判定するために、LC平衡、場合によっては、検出器などシステムの他の構成要素の安定性の1つ以上の他の条件を示す開始状態は、一般に指定の時間にわたって存在するとの判定を要する目標、つまり初期条件を示す、1つ以上のパラメータ及び関連条件の関数として表すことができる。
本明細書の技術による少なくともいくつかの実施形態は、3つの監視対象チャネルとして、少なくともシステム圧力、カラム温度、及び検出器信号を含み得る。かかる実施形態では、上述のパラメータ種類(例えば、勾配、レベル、ピーク間、2次導関数)のうちの任意の1つ以上が、監視対象チャネルごとに指定されてよい。例えば、検出器信号の場合、勾配及びピーク間パラメータのいずれかが、開始状態の基準に含まれてよい。
一実施形態はまた、システムの健全性の指標として機能する、一般的な診断に使用され得る追加メトリックを決定してよい。かかる追加メトリックには、例えば、準備完了までの時間(現在の開始状態を達成するためにシステムが要した時間)及び準備完了からの時間(連続的な開始状態で経過した時間、又は現在の開始状態が維持されている時間)が挙げられ得る。前述のメトリック及び他の好適なメトリックは、内部診断目的に関連して使用される潜在的な値を有する。例えば、準備完了までの時間が予想閾値を超える場合、システムの1つ以上の構成要素が不健全であり、したがって交換又は修理を必要とし得ることを意味してよい。
一実施形態はまた、データチャネル信号が予想特性シグネチャ若しくは曲線、又はその特性と一致するかどうかを認識し、判定するパターンマッチングなど追加の拡張データ解析を含んでよい。例えば、診断データチャネルの信号の予想曲線は、ほぼゼロ又は最小の勾配、及びほぼゼロ又は最小のノイズを有する、一直線の水平線に近似しないことがあり得る。かかる場合、信号の予想曲線はシグネチャとして表され、任意の好適なパターンマッチング技術を使用して観測された、つまり実際の信号トレースと比較され得る。例えば、実際の信号トレースは、多数のピークを有することが予想され得、したがって、勾配の符号の変化は、2次導関数の符号の多数の変化などを有することが予想され得る。前述のことは、場合により本明細書に記載の他の基準条件と組み合わせて使用され得る。例えば、データチャネルの信号は、多数のピークを有することが予想され得、したがって、勾配の符号の変化は、上述のように2次導関数の符号の多数の変化などを有することが予想され得る。前述のことが検出されると、信号は、上述の目標パラメータに関連して指定値を有すること、又は信号が、ほぼゼロ若しくは最小の勾配、及びほぼゼロ若しくは最小のノイズを有する一直線の水平線に近似することが続いて予想され得る。上述のことは、図5の実施例500を参照して例示され得る。実施例500では、図示されるグラフは、2つのプロットされたY値を含んでよく、左側のY軸は、PSI単位のシステム圧力であり、右側のY軸は、摂氏度の温度である。X軸は、分単位の水平時間軸である。線L1は、LCカラムの経時的に観測された、つまり測定された温度を示し得、線L2は、経時的に観測された、又は測定されたシステム圧力を示し得る。動作中、このメソッドは、時間T1において、(例えば、カラムの加熱器又は炉の設定点を45度まで上昇させることによって)カラム温度設定点を25~45度に変化させ得る。かかる温度の上昇に応答して、流体粘度は低下し、システム圧力は、時間T1とT2との間の線L2によって示されるように低下する。カラムはまた、時間T2に続く時間間隔T3中に温度の上昇を経験することが予想される。T3によって示される期間中に観測されるカラム温度の前述の上昇は、カラム内での摩擦加熱に起因し得る。T3の間に示される前述の曲線、つまりピークに続いて、カラム温度は低下し、水平になって、ほぼゼロ又はゼロの勾配、及びほぼゼロ又はゼロのノイズを有する、一直線の水平線に近似することが予想される。前述のカラム温度の水平化は、例えば、時間T4で開始することが検出され得る。L2の前述のシグネチャ曲線は、システム圧力データチャネルの観測されたデータ点セットに関連して、例えば、異なる時点における勾配及び/又は勾配サインの予想変化(例えば、T1~T2間の負の勾配符号、T2~T3間の正の勾配符号、T3~T4間の負の勾配符号、次いで、時間T4から指定期間にわたってほぼゼロ又はゼロの勾配、及び時間T4から指定期間にわたってほぼゼロ又はゼロのピーク間ノイズ)などに基づくなど、任意の好適な技術を使用して認識されてよい。
加えて、図5と関連して、T1~T2間の線L2の勾配における前述の最初の負号は、温度が増加して、時間T1の後にL1によって示されるように正の勾配を有する、共通の時点で生じる、つまり重複するべきである。したがって、パターンマッチング(partem matching)又はパターン認識技術は、時間T1における温度上昇間の経時的依存性を認識することを含んでよく、結果としてT1~T2間にL2の負の圧力勾配を生じさせる。
図6Aを参照すると、左側のある開始状態から右側の第2の開始状態へと移行(例えば、左側の平衡状態、つまり安定状態から右側の平衡状態又は安定状態への移行)するときに監視され得るいくつかの信号の実施例700が示されている。実施例700に関連する監視対象信号は、本明細書の他の箇所に記載し、当該技術分野において既知のようなPDA検出器及びLCを含んでよい。要素710、730、及び750は、LCに関連する監視対象チャネルの信号であり(したがって、LC平衡の判定及び定義に関連して使用され得る)、要素720及び740は、PDA検出器に関連する監視対象チャネルの信号である(したがって、検出器の安定性及び/又は平衡の判定及び定義に関連して使用され得る)。
実施例700は、X軸の下に、原点A1の左端の点における-40.00から点A2における右端の値0.0(現在の時間に対応する)までの範囲の分単位の時間寸法を含む。-26分の印(A3によって示される)において、又はその付近で、0.4mL/分~0.6mL/分の流量を変化させる新メソッドがロードされる。一番上のトレース(信号)710は、少なくともいくつかの実施形態において、設定点の指定などによっては設定することができないシステム圧力である。むしろ、710に経時的に示されるシステム圧力信号トレースは、上述の流量、及び以下に記載するカラム温度など他のセットなどメソッドの他のパラメータの変化又は設定に対する反応として生じ得る。システム圧力710は、4000~6000PSI(ポンド毎平方インチ)の範囲のPSI単位での圧力値のY軸を含む。
新メソッドはまた、新カラム温度(プロット730に示すように上から3番目の信号)を、前の30℃(摂氏)から50℃に設定し、新試料コンパートメント温度を10℃~20℃に設定する(例えば、試料コンパートメントの設定、つまり一番下の信号トレース750を変更する)。カラム温度設定点は、例えば、カラムコンパートメントの炉又は加熱器を50℃の新設定点に設定し、次いで、新設定点に応答して、経時的に実際のカラム温度の変化を観測することによって修正され得る。トレース信号730は、観測されたカラム温度値を示してよい。最後に、新メソッドはまた、210nm~230nmのPDA波長(上から4番目の信号トレース740)を変更した。屈折率(RI)検出器(上から2番目の信号トレース720)は変化しなかったが、温度に対して非常に敏感であり、カラム温度の前述の変化に応答する。
プロット720は、時間(X軸)にわたってのRI(Y軸)の変化を示し、Y軸上のRI値はμRIU、つまりマイクロ屈折率単位であり、Y軸は720の原点における最小-5.50~最大3.0μRIUの範囲を指定する。一般に、RIは、空気又は水など基準媒体の光速と比較した、試料中の光速の比として説明され得る。
は、RIUの1/1000000であり、大部分のLC分離に使用される便利な基準である。
プロット730は、カラム設定点の変更に応答して測定された、つまり観測されたカラム温度の変化(例えば、既存の30℃から新メソッドでの50℃に指定される)を示す。プロット730は、経時的(X軸)に測定された、つまり観測されたカラム温度(Y軸)の変化を示し、Y軸での温度は摂氏度であり、Y軸は、30℃の最低温度~52℃の最高温度の範囲を指定する。
プロット740は、経時的(X軸)なPDA吸光度(Y軸)の変化を示し、Y軸はランベルト-ベールの法則から導出された吸光度単位(AU)であり、およそ-0.004の最小値~およそ0.000AUの範囲である。
プロット750は、新メソッドで指定された、新試料温度に応答して、経時的(X軸)に測定された、つまり観測された試料温度(Y軸、摂氏度単位)の変化を示す。750のY軸は、最低10.0~最大20.0℃の範囲を指定する。
一般に、図6Aの実施例700の様々なプロットにおける指定の範囲及び値は、実施形態ごとに異なることに留意されたい。実施例700のプロットに関連して、また本明細書に記載するように、様々な信号の変化が重要であることに留意されたい。
本明細書の技術による一実施形態では、開始状態の基準は、実施例700の5つの信号に対して指定されて、上記のLC及びPDA検出器を含むシステムが開始状態に達した時点を判定し得る。例えば、開始状態基準は、710の勾配(ドリフトを示す)である第1のパラメータ、及び710のノイズを表すピーク間測定値である第2のパラメータを調べることによって、710のシステム圧力信号が平坦、つまり滑らかな線に近似する(例えば、最小の勾配又は勾配なし、かつピーク間パラメータで示される、最小のノイズ又はノイズなし)ことを要求し得る。本明細書の他の箇所に記載するように、前述の2つのパラメータは、指定期間にわたって指定許容範囲内に留まることが基準によって要求され得る。
カラム温度など新しい設定点を指定することに関連して、プロット730は、上述のように、時間A3における新メソッドの設定点の指定に応答した、カラムの測定温度を示す。開始状態の基準は、測定されたカラム温度信号730に関連する3つのパラメータ、つまり、レベル、勾配(ドリフトを示す)、及び信号ノイズを示すピーク間測定値に関連して計算され、監視され得る。本明細書の他の箇所に記載するように、前述の3つのパラメータは、指定期間にわたって指定許容範囲内に留まることが基準によって要求され得る。一般に、本明細書の技術による一実施形態は、カラム温度について決定された、第1のパラメータであるレベルのかかる基準が、経時的に(又はカラム容積)指定設定点からほとんど変動しない、又は全く変動しない、一定の定常温度を示すことを所望する。カラム温度について決定された勾配パラメータ及びピーク間パラメータのかかる基準は、平坦、つまり滑らかな線に近似する(例えば、最小の勾配又は勾配なし、かつピーク間パラメータで示される、最小のノイズ又はノイズなし)。
RI指標720及びPDA波長740に関連して、本明細書の技術による一実施形態は、前述の2つのチャネルの値が検出器の安定状態を示す時点を定義する基準を指定し得る。例えば、開始状態の基準は、RI指標のレベルパラメータを含んでよく、例えば、RI指標値が最小時間にわたって指定範囲内にあることを要求する。この基準はまた、PDA波長が最小時間にわたって指定範囲内にあることを要求する、PDA波長のレベルパラメータを含み得る。
更に図6Aを参照すると、本明細書の技術による一実施形態はまた、パターンマッチング及びパターン認識を実行して、異なる診断チャネル710、720、730、740、及び750間での変化の時間的因果関係及び重複又は変化の依存性を認識することを含み得る。例えば、新メソッドが様々な動作パラメータを変更する、例えば、流量、カラム温度設定点などを変更する時間A3が注目され得、観測対象データチャネルの予想変化が同時に観測されるか、又は共通の時点で観測される。
加えて、本明細書に記載の技術の使用は、汎用システムの健全性及び監視のための他の診断データチャネルに関連してより一般的に更に使用されてよい。LCのポンプストローク品質について、データチャネルは、(図1のような)ポンプ108の検出されたプランジャ速度、モータステップ、及び/又は他の動作に関連して監視され得る。当該技術分野において既知のように、Waters Corporationからの様々なLC機器システム及び構成要素に関連して、溶媒の移動に関連して、ポンプ108は、溶媒が流体経路へとポンプ注入されて試料を搬送するポンプヘッドを含んでよい。少なくとも1つの実施形態では、ポンプストローク品質の監視(パターン認識を要する)という診断目的のために、ポンプヘッドの圧力のデータチャネルが監視され得、例えば、ポンプAの一次ヘッド圧力及びポンプBの一次ヘッド圧力が含まれ得る。ポンプサイクル中、一次ヘッドは、アキュムレータヘッドと同様に機能するという役割を有する。かかる構成要素が健全であり、ポンプサイクルを正常に完了する場合、それぞれが独自の圧力パターン、つまりシグネチャを有する。正常ではない場合、圧力パターンは、ポンプサイクル時間にわたって予想圧力のかかるシグネチャから逸脱し得る。したがって、かかる予想圧力パターンは、動作中の観測圧力と比較されて、LCシステムが健全であり、したがって試料分析を行う準備が完了しているかどうかを判定するために、観測圧力が予想圧力に一致するかどうか(例えば、指定の制限内であるかどうか)を判定し得る。更なる例として、ポンプサイクル中、これもまた当該技術分野において既知であるように、システムフロー全体が主要ヘッドに移動するときに移動相であり、その結果、アキュムレータヘッドは、プランジャを後退させ、再充填することができる。移動相はまた、正常であるときに十分に特徴付けられた圧力パターン(pressure partem)を有し、それにより、かかる予想圧力パターンは、LCシステムの健全性の態様を決定するために、動作中の観測圧力と比較され得る。一般に、観測値は、健全状態に関連付けられたパターンの予想値と比較され得、観測値が予想値(特定の制限内)に一致する場合、健全状態が判定され得(そのため、LCシステムは試料分析を実行する準備が完了している)、そうでなければ、不健全状態が判定され得る(そのため、LCシステムは試料分析を実行する準備が完了していないと判定され得る)。
前述の段落は、一般に、ポンプ圧力に関連する技術について説明しており、それにより、観測値は、既知のパターン、つまりシグネチャの予想値と比較され得ることに留意されたい。当業者には理解されるように、かかる技術は、より一般的に、任意の好適な構成要素及び関連パラメータ又はデータ値に対して適用され、これらで使用され、例示の目的で上述した特定の使用事例に限定されるものではない。
加えて、コンピュータ116は、様々な処理アルゴリズム(例えば、人工知能アルゴリズム、機械学習アルゴリズムなど)を使用して、監視対象データチャネルを介して受信したデータを処理して、システム100の適切な機能を判定することができる。例えば、処理アルゴリズムを使用することによって、コンピュータ116は、システム100の様々な構成要素の新たな予想閾値を生成し得る。同様に、コンピュータ116は、既存の予想閾値を修正し得る。次いで、かかる新たな、及び/又は修正された予想閾値は、後続の実験及び/又は分析で使用され得るシステム100の平衡状態、健全な動作条件、及び/又は開始条件を定義するために使用され得る。いくつかの実施形態では、システムの新たな、及び/又は修正された予想閾値、定義された平衡状態、健全な動作条件、及び/又は開始条件は、承認を得るためにユーザに出力され得る。
例えば、コンピュータ116は、プログラムされたクロマトグラフィ勾配の適切な圧力プロファイルを決定し得る。一実施形態では、コンピュータ116は、適切な圧力プロファイルを指定する入力を受信し得る。次いで、コンピュータ116は、後続の実験及び/又は分析中に、指定の制限(又は閾値)に対して適切な圧力プロファイルを監視し得る。他の実施形態では、コンピュータ116は、圧力レベル、圧力ノイズ、及び圧力勾配などデータチャネルから受信したデータの品質属性を、かかる品質属性が許容値を満たすまで監視し得る。次いで、コンピュータ116は、処理アルゴリズムを品質属性に適用することによって、適切な圧力プロファイルを修正し得る(及び/又は新たな適切な圧力プロファイルを定義する)。次いで、修正した圧力プロファイルを使用して、後続の実験及び/又は分析にわたって一貫した、適切な性能を維持し得る。
本明細書の技術による実施形態では、監視対象データチャネル(又は他のデータ源)は、LCカラムのインピーダンス、溶媒の物理的特性、流量、及び命じられた勾配テーブルを指定するデータを含み得る。動作中、システム100は、圧力軌道の要件を満たすことを試み得、コンピュータ116は、データチャネルを介してカラム圧力及び流量に関する品質属性を監視し得る。例えば、監視対象の品質属性には、圧力変調(ノイズ)、圧力勾配、及びC/D比が挙げられてよい。監視を介して受信したデータに適用された処理アルゴリズムに基づいて、コンピュータ116は、システムが圧力軌道エンベロープの境界内に留まっているだけでなく、勾配の伝搬中に許容可能な制限内でポンプが実行されたことを判定し得る。このようにして、コンピュータ116は、圧力軌道は正しく、ポンプ性能が許容可能であったことを判定し得る。したがって、コンピュータ116は、勾配圧力プロファイルが正しく生成されたと判定し、将来使用するために勾配圧力プロファイルの表示を記憶し得る。そうすることにより、システム100は、後続のクロマトグラフ実行回に対して記憶された勾配圧力プロファイルを参照して、システムが開始状態に達したかどうか、及び/又は適切に動作しているかどうかを判定することができる。
更に、一般的なシステムの健全性インジケータに関連して、検出器信号は、漏洩、圧力変動、溶媒品質などに関連する独特のピーク形状など他のパラメータについて監視され得る。長期診断として、本明細書の技術は、平衡化されたシステム圧力レベル(例えば、カラムの経年劣化に起因して、多数の実行回にわたって増加し得るか、又は配管の漏洩若しくは弾性に起因して減少し得る)、カラム平衡化時間(例えば、LCがLC平衡に達するのに要する時間、開始状態の基準の条件で定義され得、かかる時間は、損傷した炉の封止部など1つ以上の不健全条件に起因して増加し得る)などの傾向を蓄積し、分析し得る。
監視対象データチャネルのデータ点を収集することに関して、一実施形態では、いくつかの代替的なアプローチが使用され得る。(図4のように)移動時間窓410に含まれる点のデータ整理を改善するために、分析は、所望により、統計的に有意ではない外れ値を除外するソフトウェアローパスフィルタの適用を含んでよい。フィルタリングされたストリームは、次いで、上記のように、例えば、線形回帰、曲線適合、パターン認識技術など本明細書に記載の後続の処理に供され得る。
本明細書の技術による一実施形態はまた、流体システムの完全性を確実にするために典型的に必要な機器制御の一部を自動化し得る。例えば、いくつかのメソッドは、溶媒切替弁を利用して(利用可能な場合)、代替溶媒源の中から選択する。弁を作動させると、弁の内容積、並びに関連する配管は、新しい溶媒で洗い流される必要がある。この制御は、溶媒源を切り替えるメソッドに応答するなど、本明細書の技術を実行するソフトウェアの指示に従って実行されることができる。
分離メソッドは、十分に特徴付けられた化学物質を消費する。これらの化学物質の物理的特性、例えば、互いとの混和性及びシステムの既知の流体インピーダンスなどに基づいて、理論的な動作システム圧力が数学的に決定され得、かかる値は、開始状態を示す様々な基準で使用され得る(例えば、レベルパラメータで使用するための指定目標値)。
システムが、試料ごとに有意に異なる溶媒の組み合わせを使用するという方法で動作する場合、化学的に不適合な混合物を連続して使用するリスクが現実のものとなる。不適合な混合から生じる粘度の急変は、例えばシステム圧力に対する望ましくない変化又は悪影響を引き起こす可能性がある。更に、溶質沈殿は、分析及び物理的測定機器類の両方の問題である。適切な溶媒特性データ及び熟練ユーザによる定義を使用して、本明細書の技術は自動化を使用して、かかる懸念を軽減し得る。
図6Bを参照すると、本明細書の技術による一実施形態において、システムの平衡化を示すなど開始状態を定義する基準に含まれ得る情報の例900が示されている。実施例900は、表示を目的とした表形式のかかる情報を含むが、任意の好適な構造で記憶されてよい。実施例900は、選択された診断データチャネルの列910と、選択されたパラメータの列912と、システムの平衡化状態を示す開始状態が確立されたという判定を下すために、912のパラメータについて決定された実際値に対して満たされる条件の列914と、を含む。902、904、906、及び908など各行は、単一のパラメータに指定された基準の情報を示す。行902は、診断データチャネル1が監視され、パラメータ1の実際値が診断データチャネル1を使用して決定されることを示す。行902、列914の条件は、開始状態を確立する一環として、パラメータ1の実際値によって満たされる条件を指定する。914の条件は、特定のパラメータによって異なり得る。例えば、行902は、システム圧力であり得るチャネル1を監視することを示してよく、パラメータ1は勾配パラメータであってよい。したがって、システム内で開始状態が確立されているかどうかを判定するための処理は、システム圧力の勾配の実際値を決定することと、実際勾配値が、列914(行902)内の条件の指定の勾配目標を満たしているかどうかを判定することと、を含む。同様に、かかる処理は、行904、906、及び908に対して実行されて、かかるパラメータの実際値が指定の条件を満たすかどうかを判定し得る。開始状態を確立するために、列914内の条件は、列912内の全パラメータについて決定された全ての実際値によって同時に満たされる必要がある。加えて、かかる実際値は、本明細書に記載のように、少なくとも静止時間、つまり待機時間を示す最小時間にわたって、914の条件を満たす必要がある。
少なくとも1つの実施形態では、全データチャネル及びパラメータに適用可能であり得る単一のグローバル静止時間が指定され得、それにより、グローバル静止時間中に、全ての観測対象値が標的範囲内に留まる必要がある。前述の変形例として、一実施形態は、監視対象データチャネルごとに、又はより具体的には、各監視データチャネルの個々のパラメータごとに独立した静止時間を提供してよく、それにより、全監視対象チャネル及び関連パラメータが、個々に指定された静止時間に対する目標を個々に満たすと、平衡が確認される/達成される。更なる例示のために、データチャネルAのパラメータP1は、指定の静止時間T1を有してよく、それにより、P1の指定条件は、指定の静止時間T1にわたって保持又は維持される必要がある。加えて、データチャネルBのパラメータP2は、指定の静止時間T2を有してよく、それにより、P2の指定の条件は、指定の静止時間T2にわたって保持又は維持される必要がある。P1が、時間期間T1にわたってその関連条件を維持し、かつP2が、時間期間T2にわたってその関連条件を維持すると、平衡が達成される/確認される。P1及びP2のうちの1つ以上が、それぞれの個々の静止時間T1及びT2にわたって関連条件を同時に維持できないと、平衡は満たされない/確認されないことになる。
行908に関連して、パラメータ4は、本明細書の他の箇所に記載する比率パラメータなど、複数の診断データチャネル3及び4に基づいた複合パラメータであり得ることに留意されたい。
図7を参照すると、本明細書の技術による一実施形態で実行され得る、処理工程のフローチャートが示されている。フローチャート800は上述の処理を要約している。工程802において、1つ以上の診断データチャネルを、監視するために選択してよい。工程804において、選択したデータチャネルごとに、1つ以上のパラメータ及び関連条件を指定する。選択したデータチャネルのかかるパラメータ及び関連条件の集合は、開始状態を定義する基準に含まれる。本明細書の考察と一致して、開始状態は、システムの平衡化状態を示し得、LC平衡化のパラメータ及び条件のみを含む基準、又は1つ以上の追加構成要素(例えば、1つ以上の検出器)の平衡状態又は安定状態を表す1つ以上の追加パラメータ及び条件と組み合わせた基準を使用して表され得る。更に、期間又静止状態は、開始状態の指定条件が同時に維持される必要がある、最小の連続時間を示すように指定されてよい(例えば、N時点にわたって全パラメータ及び関連条件の全実際値に対して維持され、Nは期間又は静止時間を示す)。開始状態が達成されるために、現在のシステム状態を示す、選択した全チャネルの全パラメータの実際値は、パラメータごとに指定され得る特定の静止時間、つまり待機時間にわたって同時に維持される必要がある。本明細書の考察と一致して、かかる時間、つまり静止時間はまた、カラム容積の数として表現され得る。したがって、開始状態は、選択した全データチャネル及び指定の目標条件(例えば、目標値又は目標、並びに指定の静止時間に関する)にわたる、異なるパラメータの関数として表され得る。開始状態は、前述の全パラメータが指定の目標条件(例えば、目標値又は目標、並びに指定された静止時間に関する)を満たすと判定されると、満たされ得る、又は達成され得る。例えば、LCシステムの2つの選択したデータチャネル、つまりLC圧力及びLCカラム温度を使用して開始状態を検討する。かかる場合、開始状態は、検出器の安定性又は平衡に関連するなど追加のパラメータ及び条件を使用せずに、LC平衡のみを表現又は定義することができる。
この実施例では、LCカラム温度データチャネルについて、レベルパラメータが、X1によって示されるように選択されてよい。圧力データチャネルについては、2つのパラメータ、つまり、システム圧力の勾配パラメータを示すX2、及びシステム圧力のピーク間、つまりノイズパラメータを示すX3が選択されてよい。前述のパラメータX1、X2、及びX3のそれぞれは、独自の定義された目標(例えば、実際値と、平衡を達成するために必要とされる1つの特定条件を示す目標値との許容差)を有する。更に、前述のパラメータX1、X2、及びX3のそれぞれは、独自の個々の静止時間を有してよい。例えば、D1、D2、及びD3はそれぞれ、X1、X2、及びX3の個々の静止時間を示してよい。前述の開始状態基準を使用した平衡状態は、指定の3つのパラメータのそれぞれが、指定の目標を満たし、個々のパラメータの指定の静止期間にわたってかかる目標条件を維持する実際値(特定の関連データチャネルのデータを使用して計算されるパラメータの測定値又は観測値から決定される)を有すると達成され得る。したがって、平衡、又はより一般的には、開始状態が確立されるか、又は達成されるかは、最初に、パラメータX1、X2、及びX3のそれぞれの実際値が指定の目標を満たすかどうかを判定し(例えば、パラメータごとに、パラメータの現在の実際値が指定の静止期間にわたって目標を満たすかどうかを示す個々のブール結果を判定する)、次いで、全パラメータの個々のブール結果の論理積をとることによって、指定のパラメータのそれぞれについて論理積演算を実行することによって判定され得る。例えば、上述のように3つのパラメータX1、X2、及びX3を有するシステムでは、パラメータX1の第1の実際値O1が、期間D1にわたってその指定の目標T1を満たすとき、パラメータX2の第2の実際値O2が、期間D2にわたってその指定の目標T2を満たすとき、かつパラメータX3の第3の実際値O3が、期間D3にわたってその指定の目標T3を満たすと、平衡状態、又はより一般的には開始状態が確立される。加えて、前述の条件は、異なるパラメータX1、X2、及びX3について、指定の個々の静止期間D1、D2、及びD3にわたって同時に満たされ維持される必要がある。
したがって、工程804の完了後、開始状態を定義する基準を指定する。工程804から、制御は工程806に進む。工程806では、選択したデータチャネルの自動監視のための処理を実行して、異なる時点において選択した全データチャネルに関するデータを収集する。現在のデータ点が収集される監視対象データチャネルについては、処理により、選択した各パラメータの現在のデータ点の実際値が決定され得る。実際値は、指定の時間窓に従って決定され、指定条件に基づいて評価されて(例えば、比較され)、実際値がパラメータに指定された条件を満たすかどうかを判定する。加えて、かかる条件は、指定の期間(例えば、必要とされる開始状態条件が少なくとも最小の時間にわたって維持されることを示す、待機時間つまり静止時間を示す)にわたって維持される必要がある。
工程808では、選択した全データチャネルの全パラメータが、指定の静止時間の連続時間(代替的に指定の数のカラム容積として表現され得る)にわたって指定の条件を同時に満たすかどうかを判定する。工程808が「はい」と評価すると、制御は工程810に進み、開始状態が達成されたと判定する。LCに関連し、検出器に関連しない3つのパラメータX1、X2、及びX3を含む上記の実施例では、開始状態は、LCの平衡化を示すことを更に特徴とし得る。工程808が「いいえ」と評価すると、制御は工程806に進んで、自動監視を続行する。なお、工程808で「はい/真」と評価するためには、平衡を定義する開始状態基準の全パラメータが関連パラメータ条件を同時に満たし、かつ、そのそれぞれの指定期間にわたってかかる条件を連続的に満たすことも必要であることに留意されたい。パラメータのうちの1つでも、指定の連続時間(静止時間、つまり待機時間によって示される)にわたってその関連条件を満たすことができない場合、測定時間(平衡を達成するための静止時間、つまり待機時間に等しくなければならない)がリセットされる。したがって、全パラメータは、それぞれの指定期間にわたってそれらの関連条件を同時に満たし、かつ保持することを特徴とし得、それにより、かかる条件が満たされている、かかるそれぞれの全期間が重複する。例えば、基準は、パラメータP1が期間T1にわたって条件C1を満たす必要があり、パラメータP2は、期間T2にわたって条件C2を満たす必要があることを示してよい。本明細書の処理は、P1が期間T1にわたって条件C1を満たし、同時に、P2が期間T2にわたって条件C2を満たすときに平衡化されたものとしてシステムを判定し得る(例えば、T1及びT2が重複する)。パラメータごとに、パラメータが最初にその関連条件を満たす開始点から経過時間を測定し得る。平衡開始状態は、(関連条件を満たし、かつ保持する全パラメータの)重複する測定経過時間が、それらのそれぞれの指定期間に等しくなると、達成されたものとして判定される。個々の基準のパラメータが、指定期間又は定義された静止時間にわたってその関連条件を満たし、かつ保持することができない場合、その個々のパラメータの経過時間測定値はリセットされ得る。更に、個々のパラメータが少なくともその定義された静止時間にわたって関連条件を満たし、かつ保持することができない場合、及び/又は、他の全パラメータも「準備完了」になるまで関連条件を満たし、かつ保持する(すなわち、指定の静止時間わたって関連条件を満たし、かつ保持する)ことができない場合、個々のパラメータのかかる測定経過時間はリセットされ得る。このようにして、平衡化状態は、全パラメータが、少なくとも指定の静止時間にわたってそれらの関連条件を同時に満たし、かつ保持するときに達成される。
フローチャート800の工程は、開始状態が、試料を分析する実験の実行を開始するために確立を要する基準を定義するメソッドに関連して、処理の一環として実行され得る。各試料を分析する前に、同一の開始状態を再確立することが要求され得る。続いて、第2の異なるメソッドが実行するために選択され得、第2のメソッドは、第2の開始状態を示す、異なる第2の基準セットを有し、試料を分析する実験の実行を開始するために確立することが要求される基準を定義する。第2のメソッドで各試料を分析する前に、同一の第2の開始状態を再確立することが要求され得る。したがって、本明細書の技術を使用して、新たな開始状態を確立し、実験試料を分析する実験回の間に開始状態を再確立し得る。
本明細書における他の考察と一致して、フローチャート800の工程は、例えば、取得したデータ点のローパスフィルタリング、パターンマッチング又はパターン認識の実行、システムの健全性の他の側面に関連した値に対する追加処理の実行など、1つ以上の追加工程と組み合わされ得る。
本明細書に記載されるものの変形、修正、及び他の実現は、請求される本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、当業者には想到されるであろう。したがって、本発明は、前述の例証的説明によってではなく、その代わりに以下の特許請求の範囲の趣旨及び範囲によって定義されるものとする。